説明

2層錠剤

2層錠剤は、溶解性錠剤マトリックスからアンギオテンシンII受容体アンタゴニストのテルミサルタンを即時放出するために配合された第1層及び崩壊性又は侵食性錠剤マトリックスからHMG-CoA還元酵素阻害剤のシンバスタチンを即時放出するために配合された第2層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性錠剤マトリックス中にアンギオテンシンII受容体アンタゴニストのテルミサルタンを含む第1層及び崩壊性又は侵食性(eroding)錠剤マトリックス中にHMG-CoA還元酵素阻害剤のシンバスタチンを含む第2層を含む医薬錠剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
テルミサルタンは、欧州特許出願公開第502314号明細書に開示されているように高血圧症及びその他の医療適応症の治療のために開発されたアンギオテンシンII受容体アンタゴニストである。その化学名は、4'-[2-n-プロピル-4-メチル-6-(1-メチルベンゾイミダゾール-2-イル)-ベンゾイミダゾール-1-イルメチル]-ビフェニル-2-カルボン酸であり、以下の構造を有する:
【化1】

【0003】
テルミサルタンは、遊離酸の形で生産及び供給される。それは、胃腸管のpH1から7の間の生理的pH範囲における水系への溶解度がとても低いことを特徴とする。国際公開第00/43370号パンフレットにおいて開示されているように、結晶のテルミサルタンは、異なる融点を持つ2つの多形体で存在する。熱及び湿度の影響を受けて、融点のより低い多形体Bは、融点のより高い多形体Aに不可逆的に転換する。
欧州特許出願公開第033538号明細書に開示されているシンバスタチンは、持続性HMG-CoA還元酵素阻害剤であり、その化学名は、(1S,3R,7S,8S,8aR)-8-[2-[(2R,4R)-4-ヒドロキシ-6-オキソ-テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]エチル]-3,7-ジメチル-1,2,3,7,8,8a-ヘキサヒドロナフタレン-1-イル-2,2-ジメチルブタノアート又は(βR,δR,1S)-8β-(2,2-ジメチルブチリルオキシ)-1,2,6,7,8,8aα-ヘキサヒドロ-β,δ-ジヒドロキシ-2α,6β-ジメチル-1α-ナフタレン-ヘプタン酸δ-ラクトンであり、以下の構造を有する:
【化2】

【0004】
「スタチン類」は、肝臓によるコレステロールの生産を低減することによって血中のコレステロールのレベルを下げるタイプの薬剤である。スタチン類は、コレステロールを作る原因となる肝臓の酵素をブロックする。この酵素は、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンチーム-A還元酵素又はβ-ヒドロキシ-β-メチルグルタリル-コエンチーム-A還元酵素(HMG-CoA還元酵素)と呼ばれる。科学的には、スタチン類はHMG-CoA還元酵素阻害剤と呼ばれる。
スタチン類は、アテローム性動脈硬化症の危険を有する又はその危険がある個体の胸痛、心臓発作、脳卒中及び間欠性跛行の原因になるアテローム性動脈硬化症を予防及び治療するために使用される。アテローム性動脈硬化症の危険因子としては、異常に高いコレステロールレベル、心臓発作の家族歴(特に、若くして)、年齢の増加及び肥満などが挙げられる。たいていの個体は、高いレベルのコレステロールのためにスタチン類に頼る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の目的)
テルミサルタン及びシンバスタチンの作用のメカニズムは、脳卒中、心筋梗塞症、一過性脳虚血発作、鬱血性心不全、心臓血管疾患、糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、前糖尿病、2型糖尿病、代謝症候群(シンドロームX)、肥満症、高トリグリセリド血症、C反応性タンパク質の高血清中濃度、リポタンパク質(a)の高血清中濃度、ホモシステインの高血清中濃度、低密度リポタンパク質(LDL)-コレステロールの高血清中濃度、リポタンパク質会合ホスホリパーゼ(A2)の高血清中濃度、高密度リポタンパク質(HDL)-コレステロールの低血清中濃度、HDL(2b)-コレステロールの低血清中濃度、アディポネクチンの低血清中濃度、認知低下及び痴呆からなる群より選ばれる状態の治療又は予防において、単独で、又は高血圧症の治療と組み合わせて、有利に協同すると考えら得る。
この仮定は、臨床データの量を増やすことによって支持されるようになるので、活性成分であるテルミサルタン及びシンバスタチンを含む一定投与量配合剤の要求が高まっている。しかしながら、テルミサルタン及びシンバスタチンは、ともに取り扱いが困難な化合物である。したがって、薬理効果、適切な薬剤安定性及び信頼性のある健全な製造方法の特徴を組み合わせた経口一定投与量配合剤は、多くの技術的な問題を克服しなければならない。本発明の目的は、そのような一定投与量配合剤を提供することである。
【0006】
種々のタイプの一定投与量剤形が考えられるが、これらの剤形のどれが製品安定性、薬理学的有効性及び信頼性のある製品というような特徴を併せ持つ最も良いものであるかは、予測できない。そのような剤形の例は、経口浸透圧系(OROS)、被覆錠剤、マトリックス錠剤、2層錠剤などである。本発明は、テルミサルタン及びシンバスタチンの組合せに関して適切な薬剤安定性、両活性成分の最適な薬剤放出、薬理学的有効性及び信頼性のある製品というような特徴を併せ持つ最も良い剤形が2層錠剤であるという認識に基づいている。
一般に、即時放出を対象とした薬剤の一定投与量の組合せは、2つの活性成分の粉末混合物又は混合顆粒を必要な賦形剤とともに生成し、正常に対応する単一薬剤製剤の基本配合を維持し、単に第2薬剤成分を加えることによって調製される。
テルミサルタン及びシンバスタチンの組合せにより、このアプローチは、従来のテルミサルタン配合物の成分に対するシンバスタチンの配合禁忌(incompatibility)のために実現可能であるとは思われない。
別のアプローチは、テルミサルタン及びシンバスタチンのための別個のフィルムコート錠剤を、カプセルに詰めることができる大きさ及び形状で生成することである。大きなカプセルが高い投与量の組み合わせのために要求され、患者のコンプライアンスに関して望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要約)
本発明によれば、テルミサルタン及びシンバスタチンを含む一定投与量配合剤の調製に関する問題は、溶解性錠剤マトリックス中にテルミサルタンを(好ましくは、実質的にアモルファスの形態で)含む第1層及び崩壊性又は侵食性錠剤マトリックス中にシンバスタチンを含む第2層を含む2層医薬錠剤によって最も良く取り扱うことができる。
本発明の錠剤は、水溶性が不十分なテルミサルタンを、ほぼpH非依存性で溶解させ、これによって生理学的pHレベルで薬剤の溶解を容易にし、シンバスタチンの適切な安定性及び薬剤放出を与える。また、錠剤構造は、テルミサルタンの基本的な成分(constitutents)とのシンバスタチンの配合禁忌によって生じる安定性の問題を克服する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(定義)
本明細書で使用される「実質的にアモルファス」という用語は、X線粉末回折測定によって決定される場合に、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の割合でアモルファス成分を含む生成物を意味する。
「溶解性錠剤マトリックス」という用語は、生理学的水性媒体中で容易に溶解する即時放出(高速溶解)の特性を有する医薬錠剤ベース配合物を意味する。
「崩壊性又は浸食性錠剤マトリックス」という用語は、生理学的水性媒体中で容易に崩壊又は浸食する即時放出の特性を有する医薬錠剤ベース配合物を意味する。
【0009】
(詳細な説明)
本発明の一定投与量配合剤は、実質的にアモルファスの形態のテルミサルタンの第1層及び崩壊性又は侵食性錠剤マトリックス中にシンバスタチンを含む第2層を含む2層医薬錠剤を表す。
活性成分のテルミサルタンは、一般にその遊離塩の形態で供給されるが、ナトリウム塩のような薬剤的に容認できる塩を使用してもよい。その後の処理で、テルミサルタンは、通常溶解され、実質的にアモルファスの形態に変換されるため、その初期結晶形態及び粒子サイズは、得られる2層錠剤配合物の物理的及び生物薬剤学的性質にあまり重要ではない。しかしながら、その後の処理で、濡れ及び溶解を容易にするために、出発物質の塊を、例えば篩い分けによって除去することは好ましい。
実質的にアモルファスのテルミサルタンを、当業者に公知の任意の適した方法、例えば水溶液の凍結乾燥、流動床での担体粒子のコーティング及び糖ペレット又はその他の担体への溶媒堆積によって生成してもよい。しかしながら、好ましくは、国際公開第03/059327号パンフレットに記載される特定の噴霧乾燥法によって、実質的にアモルファスのテルミサルタンを調製する。
【0010】
本発明の2層錠剤は、一般に10〜160mg、好ましくは20〜80mg又は40〜80mgのテルミサルタン及び1〜100mg、好ましくは5〜80mgのシンバスタチンを含む。
テルミサルタンの好ましい投与量は、20mg、40mg及び80mgであり、シンバスタチンの好ましい投与量は、5mg、10mg、20mg、40mg及び80mgである。
現時点での好ましい形態は、20/80mg、40/80mg、80/80mg、20/40mg、40/40mg、80/40mg、20/20mg、40/20mg、80/20mg、20/10mg、40/10mg、80/10mg、20/5mg、40/5mg及び80/5mgのテルミサルタン/シンバスタチンを含む2層錠剤である。
第1錠剤層は、即時放出(高速溶解)の特性を有する溶解性錠剤マトリックスに分散させた実質的にアモルファスの形態のテルミサルタンを含む。溶解性錠剤マトリックスは、中性又は塩基性を有してもよいが、塩基性錠剤マトリックスが好ましい。
【0011】
そのような好ましい実施態様では、テルミサルタン層の溶解性マトリックスは、塩基性物質、水溶性希釈剤を含み、必要によりその他の賦形剤及びアジュバントを含んでもよい。
適した塩基性物質の具体的な例は、NaOH及びKOHのようなアルカリ金属水酸化物、アルギニン及びリジンのような塩基性アミノ酸、及びメグルミン(N-メチル-D-グルカミン)であり、NaOH及びメグルミンが好ましい。
適した水溶性希釈剤の具体的な例としては、グルコースなどの単糖類;スクロース、無水ラクトース及びラクトース一水和物などのオリゴ糖類;及びソルビトール、マンニトール、エリトロール及びキシリトールなどの糖アルコールのような炭水化物である。ソルビトールが好ましい希釈剤である。
その他の賦形剤及び/又はアジュバントは、例えば結合剤、担体、フィラー、潤滑剤、流れ調節剤、結晶化抑制剤、可溶化剤、着色剤、pH調節剤、界面活性剤及び乳化剤から選ばれ、その具体的な例は、第2錠剤層組成物に関連して下記で与えられる。第1錠剤層組成物のための賦形剤及び/又はアジュバントは、好ましくは非酸性の高速溶解性錠剤マトリックスが得られるように選択される。
【0012】
第1錠剤層組成物は、一般に3〜50重量%、好ましくは5〜35重量%の活性成分;0.25〜20重量%、好ましくは0.40〜15重量%の塩基性物質;及び30〜95重量%、好ましくは60〜80重量%の水溶性希釈剤(フィラー)を含む。
(必要に応じて含んでもよい)その他の成分は、例えば表示された量の以下の賦形剤及び/又はアジュバントの1又は2以上から選ばれてもよい:
10〜30重量%、好ましくは15〜25重量%の結合剤、担体及びフィラー、これによって水溶性希釈剤を置き換える;
0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の潤滑剤;
0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%の流れ調節剤;
1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の結晶化抑制剤;
1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の可溶化剤;
0.05〜1.5重量%、好ましくは0.1〜0.8重量%の着色剤;
0.5〜10重量%、好ましくは2〜8重量%のpH調節剤;
0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%の界面活性剤及び乳化剤。
【0013】
第2錠剤層組成物は、即時放出(高速溶解)の特性を有する崩壊性又は侵食性錠剤マトリックスに分散させたシンバスタチンを含む。崩壊性又は侵食性錠剤マトリックスは、弱い酸性、中性又は弱い塩基性を有し、中性錠剤マトリックスが好ましい。
好ましい実施態様では、崩壊性又は侵食性マトリックスは、1又は2以上のフィラー、潤滑剤及び酸化防止剤を含み、必要により結合剤又はポリマー、崩壊剤、その他の賦形剤及びアジュバントを含んでもよい。
第2層のための好ましいフィラーは、アルファ化でんぷん、微結晶性セルロース、セルロース、マンニトール、エリスリトール、ラクトース一水和物、リン酸水素カルシウム、ソルビトール及びキシリトールからなる群より選ばれる。アルファ化でんぷん、微結晶性セルロース及びラクトース一水和物が特に好ましい。
好ましい潤滑剤は、フマル酸ステアリルナトリウム及びステアリン酸マグネシウムである。ステアリン酸マグネシウムが特に好ましい。
好ましい酸化防止剤は、ブチルヒドロキシアニソール、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ブチルヒドロキシトルエン及びメタ重亜硫酸ナトリウムである。ブチルヒドロキシアニソールが特に好ましい。
好ましい崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウム塩(セルロースカルボキシメチルエーテルナトリウム塩、架橋)、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、コーンスターチ及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる。デンプングリコール酸ナトリウム及びクロスカルメロースナトリウム塩が特に好ましい。
好ましい結合剤は、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ビニルピロリドンと他のビニル誘導体とのコポリマー(コポビドン)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選ばれる。ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びコポビドンが特に好ましい。
【0014】
第2錠剤層組成物は、一般に1〜80重量%、好ましくは5〜40重量%のシンバスタチン及び10〜99重量%、好ましくは25〜95重量%のフィラーを含む。
その他の賦形剤及び/又はアジュバントは、例えば結合剤(0〜7重量%、好ましくは1〜4重量%)、崩壊剤(0〜10重量%、好ましくは1〜4重量%)、潤滑剤(0.25〜3重量%、好ましくは0.5〜2重量%)、酸化防止剤、キレート剤、着色剤から選ばれ、その具体的な例は、また下記で与えられる。第2錠剤層組成物のための賦形剤及び/又はアジュバントは、好ましくは中性の崩壊性又は侵食性錠剤マトリックスが得られるように選択される。
造粒液のための溶媒(最終生成物には残らない揮発性成分)として、メタノール、エタノール、イソプロパノール又は精製水が使用でき、好ましい溶媒はエタノール及び精製水である。
使用する場合、その他の賦形剤及びアジュバントは、染料及び酸化鉄のような顔料などの着色剤である。キレート剤の例は、クエン酸及びクエン酸ナトリウムである。
前記層は、異なる色を用いて区別してもよい。
【0015】
本発明の2層錠剤を調製するために、第1及び第2錠剤層組成物は、2層錠剤プレス、例えば2層錠剤化モードでの高速ロータリープレスにおいて通常の方法で圧縮してもよい。しかしながら、第1錠剤層のための過剰な圧縮力が用いられないように注意する必要がある。好ましくは、第1錠剤層の圧縮の際に適用される圧縮力の、第1及び第2錠剤層の圧縮の際に適用される圧縮力に対する比は、1:10〜1:2の範囲である。例えば、第1錠剤層は、4〜8kNの中程度の力で圧縮してもよく、第1プラス第2層のメインの圧縮は、10〜20kNの力で行われる。
2層錠剤圧縮中に、離れた(distance)引力(分子間力)及び粒子間の機械的連動の効果によって、2層間の適切な結合形成が達成される。
得られる2層錠剤は、活性成分を素早く、かつ、ほぼpH非依存性の態様で放出し、すべての放出は60分以内で生じ、過半量の放出は15分以内で生じる。
本発明によれば、活性成分、特にテルミサルタンの実質的に高められた溶出速度が達成される。通常、薬剤含有量(drug load)の少なくとも70%、典型的には少なくとも90%が30分後に溶解する。
本発明の2層錠剤は、わずかに吸湿性であり、したがって好ましくはアルミホイルブリスターパックのような水を通さない包装材料、又はポリプロピレンチューブ及びHDPEボトル(好ましくは、乾燥剤を含む)を用いて包装される。
【0016】
本発明の2層錠剤を製造する好ましい方法は、
(i)以下によって第1錠剤層組成物を供給し、
a)テルミサルタン及び少なくとも1つの塩基性物質の水溶液(必要により、可溶化剤及び/又は結晶化抑制剤を含んでもよい)を調製する;
b)前記水溶液を噴霧乾燥して噴霧乾燥粒状化物を得る;
c)前記噴霧乾燥粒状化物を水溶性希釈剤と混合してプレミックスを得る;
d)前記プレミックスを潤滑剤と混合して第1層のための最終ブレンドを得る;
e)場合により、工程a)から工程d)において、その他の賦形剤及び/又はアジュバントを添加してもよい;
(ii)シンバスタチンを含む第2錠剤層組成物を供給し、
(iii)第1及び第2錠剤層組成物をそれぞれ圧縮して錠剤層を形成し、及び
(iv)別々の錠剤層を圧縮して2層錠剤を形成する
ことを含む。
【0017】
第1錠剤層組成物を供給するために、水酸化ナトリウム及びメグルミンのような1又は2以上の塩基性物質を用いて活性成分を精製水に溶解することによって、テルミサルタンのアルカリ性水溶液を調製する。必要により、可溶化剤及び/又は結晶化抑制剤を添加してもよい。出発水溶液の乾物含有量は、一般には10〜40重量%、好ましくは20〜30重量%である。
次いで、前記水溶液を室温で、又は好ましくは例えば50〜100℃の間の高温で、並流又は向流噴霧乾燥機で、例えば1〜4バールの噴霧圧で噴霧乾燥する。一般に、噴霧乾燥条件は、5重量%以下、好ましくは3.5重量%以下の残留湿度(residual humidity)を有する噴霧乾燥粒状化物が分離サイクロンで得られるように選択されるのが好ましい。そのためには、噴霧乾燥機の出口空気温度は、好ましくは約80〜90℃の範囲で維持され、噴霧圧、噴霧速度、入り口空気温度などのようなその他のプロセスパラメータは、適宜調整される。
得られる噴霧乾燥粒状化物は、好ましくは以下の粒子サイズ分布を有する微粉末である:
d10:20μm以下、好ましくは10μm以下
d50:80μm以下、好ましくは20〜55μm
d90:350μm以下、好ましくは50〜150μm。
【0018】
噴霧乾燥後、噴霧乾燥粒状化物に含まれる活性成分のテルミサルタン及び賦形剤は、実質的にアモルファス状態であり、結晶性は検出できない。物理的な観点から、噴霧乾燥粒状化物は、好ましくは50℃よりも高い、より好ましくは80℃よりも高いガラス転位温度Tgを有する固化溶液(solidified solution)又はガラスである。
100重量部の活性成分のテルミサルタンを基準として、噴霧乾燥粒状化物は、好ましくは5〜200重量部の塩基性物質を含み、必要により可溶化剤及び/又は結晶化抑制剤を含んでもよい。
水溶性希釈剤は、一般に第1錠剤層組成物の重量を基準として30〜95重量%、好ましくは60〜80重量%の量で使用される。
潤滑剤は、一般に第1錠剤層組成物の重量を基準として0.1〜5重量%、好ましくは0.3〜2重量%の量でプレミックスに添加される。
混合は、2段階、すなわち噴霧乾燥粒状化物及び希釈剤が、例えば高せん断混合機又はフリーフォール配合機を用いて混合される第1混合工程、及び潤滑剤がプレミックスと、好ましくは高せん断条件下でブレンドされる第2混合工程で行われる。しかしながら、本発明の方法は、これらの混合手順に限定されず、一般に別の混合手順を工程c)、d)、及び続く工程f)及びg)で使用してもよい(例えば、中間篩い分けを有する容器混合のような)。
【0019】
シンバスタチンを含む第2錠剤層組成物を供給するために、シンバスタチン及び賦形剤(例えば、ラクトース一水和物、微結晶性セルロース、アルファ化でんぷん、安定化剤)の一部を予め混合し、高せん断造粒機を用いて造粒液で粒状化してもよい。造粒液は、溶媒(例えば、精製水、エタノール)を含み、必要により安定化剤(例えば、アスコルビン酸及びブチルヒドロキシアニソールのような酸化防止剤)及び結合剤を含んでもよい。高せん断造粒後、粒状化物を適した篩によりウェット篩い分けし(wet sieved)、続いて流動層造流機又は真空トレイ乾燥機を用いて乾燥させる。乾燥粒状化物を適した篩により篩い分けする。潤滑剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム)を添加し、必要により崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム)を添加した後、混合物をフリーフォール配合機でブレンドする。造粒液により活性成分及び賦形剤の粒状化のための別の方法は、流動層粒状化又はワンポット粒状化である。
【0020】
上述の第1及び第2錠剤層組成物を、適した錠剤プレスを用いて、適したサイズ及び粉砕強度を有する目的の錠剤重量の2層錠剤に圧縮できる。必要により、錠剤の製造中に、ダイ及びパンチのために適した外部潤滑剤噴霧システムを使用して潤滑性を改善することができる。
本発明の2層錠剤の生成物のために、別個の錠剤層組成物を、2層錠剤プレス、例えば2層錠剤化モードでのロータリープレスで、上述の方法で圧縮してもよい。錠剤層間の交差汚染(シンバスタチンの分解をもたらし得る)を避けるために、粒状化物残渣は、錠剤化の際に、錠剤化チャンバー内のダイテーブルの激しい吸引(sucction)によって注意深く除去されなければならない。
本発明をさらに詳細に説明するために、以下の限定されない実施例が与えられる。
【実施例】
【0021】
(配合物の例)
(実施例1:テルミサルタン80mg/シンバスタチン80mg 2層錠剤)

【0022】
(実施例2:テルミサルタン80mg/シンバスタチン80mg 2層錠剤)

【0023】
(実施例3:テルミサルタン80mg/シンバスタチン20mg 2層錠剤)

【0024】
(実施例4:テルミサルタン20mg/シンバスタチン5mg 2層錠剤)

【0025】
(実施例5:テルミサルタン40mg/シンバスタチン40mg 2層錠剤)

【0026】
(実施例6:テルミサルタン40mg/シンバスタチン80mg 2層錠剤)

【0027】
(実施例7:テルミサルタン40mg/シンバスタチン20mg 2層錠剤)

【0028】
(実施例8:テルミサルタン40mg/シンバスタチン10mg 2層錠剤)

【0029】
(実施例9:テルミサルタン80mg/シンバスタチン40mg 2層錠剤)

【0030】
(実施例10:テルミサルタン80mg/シンバスタチン10mg 2層錠剤)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性錠剤マトリックス中にテルミサルタンを含む第1層及び崩壊性又は侵食性錠剤マトリックス中にシンバスタチンを含む第2層を含む医薬錠剤。
【請求項2】
テルミサルタンが実質的にアモルファスの形態である、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
溶解性錠剤マトリックスが即時放出の特性を有する、請求項1記載の錠剤。
【請求項4】
溶解性錠剤マトリックスが塩基性物質及び水溶性希釈剤を含み、必要により賦形剤及びアジュバントを含んでいてもよい、請求項1記載の錠剤。
【請求項5】
塩基性物質がアルカリ金属水酸化物、塩基性アミノ酸及びメグルミンから選ばれる、請求項4記載の錠剤。
【請求項6】
水溶性希釈剤がグルコースのような単糖類、スクロース及びラクトースのようなオリゴ糖類、及びソルビトール、マンニトール及びキシリトールのような糖アルコールから選ばれる、請求項4記載の錠剤。
【請求項7】
その他の賦形剤及びアジュバントが結合剤、担体、フィラー、潤滑剤、流れ調節剤、結晶化抑制剤、可溶化剤、着色剤、pH調節剤、界面活性剤及び乳化剤から選ばれる、請求項4記載の錠剤。
【請求項8】
テルミサルタン及び塩基性物質を含む水溶液を噴霧乾燥して噴霧乾燥粒状化物を得、前記噴霧乾燥粒状化物を水溶性希釈剤と混合してプレミックスを得、前記プレミックスを潤滑剤と混合して最終ブレンドを得、前記最終ブレンドを圧縮して第1錠剤層を形成することによって、テルミサルタンの第1層を生成する、請求項1記載の錠剤。
【請求項9】
第2層の崩壊性又は浸食性錠剤マトリックスがフィラー、潤滑剤及び酸化防止剤を含み、必要により結合剤、崩壊剤、その他の賦形剤及びアジュバントを含んでいてもよい、請求項1記載の錠剤。
【請求項10】
その他の賦形剤及びアジュバントがキレート剤及び着色剤から選ばれる、請求項9記載の錠剤。
【請求項11】
第1層が10〜160mg、好ましくは20〜80mg又は40〜80mgのテルミサルタンを含む、請求項1記載の錠剤。
【請求項12】
第2層が1〜100mg、好ましくは5〜80mgのシンバスタチンを含む、請求項1記載の錠剤。
【請求項13】
アルミホイルブリスターパックのような水を通さない包装材料、又はポリプロピレンチューブ及びHDPEボトルを用いて包装された請求項1記載の錠剤。
【請求項14】
脳卒中、心筋梗塞、一過性脳虚血発作、うっ血性心不全、心臓血管疾患、糖尿病、インスリン抵抗性、耐糖能異常、前糖尿病、2型糖尿病、代謝症候群(シンドロームX)、肥満症、高トリグリセリド血症、C反応性タンパク質の高血清中濃度、リポタンパク質(a)の高血清中濃度、ホモシステインの高血清中濃度、低密度リポタンパク質(LDL)-コレステロールの高血清中濃度、リポタンパク質会合ホスホリパーゼ(A2)の高血清中濃度、高密度リポタンパク質(HDL)-コレステロールの低血清中濃度、HDL(2b)-コレステロールの低血清中濃度、アディポネクチンの低血清中濃度、認知低下及び痴呆からなる群より選ばれる状態を、単独で、又は高血圧症の治療と組み合わせて、治療又は予防するための請求項1記載の錠剤の製造方法。

【公表番号】特表2008−515838(P2008−515838A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−535100(P2007−535100)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010812
【国際公開番号】WO2006/040085
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】