説明

2流体ノズルおよび洗浄装置

【課題】溶剤の供給量を容易に制御することができる2流体ノズルおよび洗浄装置を提供する。
【解決手段】2流体ノズル1は、気体供給管4を介して蒸気供給装置11に接続され、蒸気供給装置11は100℃以上に加熱した水蒸気を2流体ノズル1の気体流路8に供給する。また、気体流路8には、液体供給管5および液体供給路先端部管2を介してエタノール等の溶剤が供給される。液体供給路先端部管2の内径は、液体供給管5の内径よりも小さい。液体供給路先端部管2を支持する支持部3は、液体供給路先端部管2が気体流路内に気体流路の内径の1/3〜2/3張り出すように、気体流路8の側面よりも奥まった部分に配置される。溶剤を吐出する液体供給路先端部管2の開口部は、気体流路内の水蒸気の進行方向側に向けて設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2流体ノズルおよび洗浄装置に関し、特に、蒸気洗浄に用いられる2流体ノズルおよび洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルの端子部の洗浄方法として、溶剤拭き洗浄、プラズマ洗浄、蒸気洗浄等が知られている。溶剤拭き洗浄は、アセトン等の溶剤を含ませた綿棒等で拭き取ることで異物(例えば、液晶表示パネルの端子部に付着した液晶、細かなゴミ等)を除去する洗浄方式である。また、汗、皮膚等の人体分泌物も異物として除去する必要があるが、溶剤拭き洗浄では人体分泌物を十分に除去することができない。また、プラズマ洗浄には、高価な設備を要するという問題があった。
【0003】
人体分泌物を有効に除去することができ、高価な設備を必要としない洗浄方法として蒸気洗浄が注目されている。蒸気洗浄では、高温の蒸気を被洗浄物に吹き付けることによって、異物を除去する。蒸気洗浄の例が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1には、純水または超純水の水蒸気を被洗浄物に吹き付けることが記載されている。
【0004】
また、洗浄後の乾燥時間を短縮したり、洗浄力を向上させるために、純水または超純水の水蒸気に、溶剤(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等)をミスト(微細な液滴)として混入し、その蒸気を被洗浄物に吹き付ける場合もある。
【0005】
気体中に霧状の液体を発生させるためのノズルとして、2流体ノズルがある。2流体ノズルの例が、例えば特許文献2に記載されている。
【0006】
図7は、従来の2流体ノズルの例を示す説明図である。従来の2流体ノズル91は、気体供給管93を介して例えば蒸気供給装置92に接続される。また、液体供給管94が2流体ノズル91に接続されている。気体供給管93や液体供給管94の内径は、例えば4mmである。蒸気供給装置92は、蒸気を発生させ、気体供給管93を介して蒸気を2流体ノズル91に供給する。なお、混合室95の大きさは、気体供給管93や液体供給管94の内径に比べて大きく形成される。
【0007】
2流体ノズル91の混合室95には、タンク(図7において図示せず。)からエアーによって押し出された溶剤が、液体供給管94を介して供給される。2流体ノズル91の混合室95に供給される溶剤の量(単位時間当たりの溶剤供給量)は、例えば液体供給管94に設けられるバルブ(図7において図示せず。)によって調整される。
【0008】
蒸気供給装置92は、混合室95内での蒸気の流速が所定の速度以上になるように蒸気を供給する。また、バルブによって調節された供給量で、溶剤が混合室95内に供給される。この結果、所定の速度以上で混合室95内を流れる蒸気に、開口部97に供給される溶剤がミストとなって混合され、その蒸気は2流体ノズル91から噴出される。
【0009】
また、特許文献3には、液体供給パイプの先端が混合管の内部まで到達する構造の洗浄装置が記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開2006−128442号公報(段落0023−0027)
【特許文献2】特開2003−77824号公報(図2)
【特許文献3】特開2006−223995号公報(図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図7に例示する2流体ノズル91では、蒸気が混合室95内を所定の速度以上で流れる。その結果、混合室95の内圧は液体供給管94の内圧よりも低くなる。すると、内圧の差によって、液体供給管94の開口部97から混合室95に多くの溶剤が吸い出されてしまう。エアーによって押し出された溶剤を混合室95に供給する量の調節は、液体供給管94に設けられるバルブ(図7において図示せず。)によって行われるが、混合室95および液体供給管94の内圧の差によって混合室95内に吸い出される溶剤の量が多いため、溶剤の供給量の制御が困難であった。すなわち、所望の供給量より多くの溶剤が混合室95に吸い出されてしまっていた。
【0012】
混合室95に吸い出される溶剤の量が多いと、蒸気に混合される溶剤のミストの大きさが大きくなる。すると、ミストを含む蒸気が被洗浄物に噴射され、異物が溶剤に溶けたとしても、乾燥時にその異物がむら状に残ってしまう。このむらを乾燥むらという。
【0013】
ミストの大きさを小さくするには、混合室95に供給する溶剤の量を減少させればよいが、上述のように混合室95への溶剤の供給量を制御することは困難であった。
【0014】
そこで、本発明は、溶剤の供給量を容易に制御することができる2流体ノズルおよび洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の2流体ノズルは、気体中に液体を混合させる2流体ノズルであって、気体が流される気体流路と、液体を収容するタンクから当該2流体ノズルまで液体を送る液体供給管よりも内径の小さい管であって、液体供給管と気体流路との接続部に設けられる管である液体供給路先端部管とを備え、液体供給路先端部管が、気体流路内に張り出し、気体流路内における液体供給路先端部管の開口部が、気体流路内の気体の進行方向側に向けて設けられることを特徴とする。
【0016】
気体流路に100℃以上に加熱された蒸気が供給され、液体供給路先端部管の気体流路内に張り出した部分の長さが、気体流路の内径の1/3〜2/3である構成であってもよい。
【0017】
液体供給路先端部管を加熱する加熱手段(例えば、加熱コイル41)を備える構成であってもよい。
【0018】
液体供給路先端部管を振動させる振動手段(例えば、アーム42)を備える構成であってもよい。
【0019】
また、本発明の洗浄装置は、2流体ノズルから液体が混合された気体を噴出して被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、気体中に液体を混合させる2流体ノズルと、液体を収容するタンクと、タンクから2流体ノズルまで液体を送る液体供給管と、2流体ノズルに気体を供給する気体供給装置(例えば、蒸気供給装置11)と、気体供給装置から2流体ノズルまで気体を送る気体供給管とを備え、2流体ノズルが、気体が流される気体流路と、液体供給管よりも内径の小さい管であって、液体供給管と気体流路との接続部に設けられる管である液体供給路先端部管とを有し、液体供給路先端部管が、気体流路内に張り出し、気体流路内における液体供給路先端部管の開口部が、気体流路内の気体の進行方向側に向けて設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、液体供給路先端部管が、気体流路内に張り出し、気体流路内における液体供給路先端部管の開口部が、気体流路内の気体の進行方向側に向けて設けられるので、気体流路に多くの液体が吸い出されてしまうことを防止することができ、気体流路への液体の供給量を容易に制御することができる。その結果、被洗浄物における乾燥むらの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の2流体ノズルの構成例を示す断面図である。本発明の2流体ノズル1には、気体を供給する気体供給装置11から気体が供給される。気体供給装置11から供給された気体は、2流体ノズルに設けられた気体流路8に導かれ、気体流路8内を流れる。また、2流体ノズル1には、液体供給管5および液体供給路先端部管2を介して液体が供給される。この液体は、加熱され(例えば、気体供給装置11から供給される加熱された気体によって加熱され)、一部が気化した状態で液体供給路先端部管2から気体流路8に供給される。2流体ノズル1は、気体流路8において、気体供給装置11から供給される気体に、液体(加熱により一部が気化した気体を含む液体)を混合し、その液体が混合された気体を噴出する。本実施の形態では、2流体ノズル1に液体として溶剤が供給され、気体供給装置11が水蒸気を供給する場合を例にして説明し、以下、気体供給装置11を蒸気供給装置11と記す。
【0023】
気体供給管4は、蒸気供給装置11から供給される水蒸気を2流体ノズル1に送る管である。2流体ノズル1が有する気体流路8の入り口には、気体供給管4の一端が接続される。気体供給管4の他端は蒸気供給装置11に接続される。2流体ノズル1の気体流路8の内径は、気体供給管4の内径と同程度であってもよい。
【0024】
蒸気供給装置11は、水を加熱して水蒸気に変化させ、気体供給管4を介して、その水蒸気を2流体ノズル1に供給する。このとき、蒸気供給装置11は、水蒸気を100℃以上に加熱して2流体ノズル1に供給する。蒸気供給装置11は、例えば、ヒーターやボイラ等によって水を加熱して水蒸気を発生させればよい。水蒸気に変化させる水は、純水あるいは超純水であることが好ましい。また、蒸気供給装置11は、気体流路8内での水蒸気の流速が所定の速度以上になるように水蒸気を供給する。蒸気供給装置11によって100℃以上に加熱された水蒸気は、気体供給管4を介して、2流体ノズル1に送られ、2流体ノズル1の気体流路8内を流れる。
【0025】
液体供給管5は、溶剤を収容するタンクから2流体ノズル1に溶剤を送る管である。タンクについては図4を参照して後述する。2流体ノズル1には、液体供給管5の一端が接続される。液体供給管5の他端はタンクに接続される。タンクは、溶剤として、例えば、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等の溶剤を収容し、2流体ノズル1には、その溶剤が供給される。
【0026】
2流体ノズル1は、液体供給管5と2流体ノズル1との接続部に液体供給路先端部管2を備える。液体供給路先端部管2は、タンクから液体供給管5に流された溶剤を2流体ノズル1の気体流路8内に導く。液体供給路先端部管2の内径は、液体供給管5の内径よりも小さい。ここで、液体供給路先端部管2の内径が0.4〜1.0mmであることが好ましい。例えば、液体供給路先端部管2の内径を0.6mmとすることが好ましい。また、液体供給路先端部管としては、金属製の注射針が例示できる。
【0027】
液体供給路先端部管2は、気体流路8の内側に張り出すように設けられる。図1に示す例では、液体供給路先端部管2を通すための穴を有し、その穴に液体供給路先端部管2を通すことによって液体供給路先端部管2を支持する支持部3が設けられている。支持部3に設けられた穴は、2流体ノズル1の外側から気体流路8まで突き抜けている。この穴に液体供給路先端部管2が通され、液体供給路先端部管2は気体流路8の内側に張り出した状態で支持部3によって支持される。また、2流体ノズル1の外側に張り出した液体供給路先端部管2を収めるようにして、支持部3に液体供給管5の一端が取り付けられる。
【0028】
液体供給路先端部管2の気体流路8の内側に張り出した部分の長さ(図1に示すL)は、気体流路の内径(図1に示すD)の1/3〜2/3である。液体供給路先端部管2の気体流路8の内側に張り出した部分の長さを気体流路の内径の1/3〜2/3とすることによって、液体供給路先端部管2内の溶剤を十分に加熱することができる。すなわち、気体流路8には、蒸気供給装置11によって100℃以上に加熱された水蒸気が流れているので、液体供給路先端部管2の気体流路8の内側に張り出した部分の長さを気体流路の内径の1/3〜2/3とすれば、その水蒸気によって液体供給路先端部管2内の溶剤を効率的に加熱することができる。加熱された溶剤は、その一部が気化し、気化した気体を含む溶剤が気体流路8に吐出される。
【0029】
また、図1に示すように、気体流路8の側面よりも奥まった部分に支持部3を配置する。この結果、気体流路8の側面よりも奥まった部分から液体供給路先端部管2を張り出すようにすることができ、液体供給路先端部管2の水蒸気により加熱される部分の長さを長くできる。
【0030】
図2は、溶剤を吐出する液体供給路先端部管の開口部の例を示す説明図である。図1に示す構成要素と同一の構成要素については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。液体供給路先端部管2のうち、気体流路8側の先端には、溶剤を吐出する開口部7が設けられる。溶剤は、液体供給路先端部管2の液体供給管5側の端部から液体供給路先端部管2内に送られ、その溶剤は、液体供給路先端部管2の開口部7から吐出される。開口部7から吐出される溶剤31には、水蒸気による加熱により溶剤の一部が気化して生じた気体が含まれている。
【0031】
開口部7は、気体流路内の水蒸気の進行方向側に向けて設けられる。図2は、液体供給路先端部管2の先端近傍の側面に開口部7となる穴を開けた場合を示している。
【0032】
図3は、液体供給路先端部管の開口部の他の例を示す説明図である。図3では、液体供給路先端部管2の先端を斜めに切断し、その切断面を開口部7とする場合を示している。図3に示すように、斜めに切断された切断面を開口部7とする場合においても、開口部7の向きは、気体流路内の水蒸気の進行方向側に向けられる。
【0033】
開口部7の大きさは、液体供給路先端部管2の内径の0.5倍以上2.0倍以下とすることが好ましいが、液体供給路先端部管2の内径の0.5倍以上2.0倍以下の大きさと同程度であればよい。なお、図3に例示するように、斜めに切断された切断面を開口部7とする場合には、開口部7の大きさは、液体供給路先端部管2の内径よりも大きくなる。
【0034】
図4は、本発明の洗浄装置の構成例を示す説明図である。本発明の洗浄装置は、上述の2流体ノズル1を含む。本発明の洗浄装置は、2流体ノズル1と、気体供給管4と、液体供給管5と、蒸気供給装置11と、バルブ21と、タンク22と、エアー供給装置24と、エアー供給管23とを備える。なお、2流体ノズル1、気体供給管4、液体供給管5、および蒸気供給装置11は、それぞれ、図1に示す2流体ノズル1、気体供給管4、液体供給管5、および蒸気供給装置11と同一である。
【0035】
タンク22は、溶剤(例えば、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等)を収容する。液体供給管5の一端は2流体ノズル1に接続され(図1、図2参照。)、液体供給管5の一端はタンク22に接続される。タンク22に収容された溶剤は、液体供給管5を介して2流体ノズル1に供給される。
【0036】
また、液体供給管5には、液体供給管5内を流れる溶剤の量を調節するバルブ21が設けられる。
【0037】
エアー供給装置24は、エアーをタンク22に送り込み、タンク22内の気圧を調節する装置である。なお、蒸気供給装置11が2流体ノズル1に供給する気体と区別して、エアー供給装置24からタンク22に送られる気体をエアーと記す。
【0038】
エアー供給管23の一端はタンク22に接続され、エアー供給管23の他端はエアー供給装置24に接続される。エアー供給装置24から送り出されるエアーは、エアー供給管23を通過してタンク22に送られる。
【0039】
タンク22において、エアー供給管23との接続部および液体供給管5との接続部以外は封止されている。すなわち、タンク22は、エアー供給装置24からのエアー以外の気体が浸入しないように封止された構造となっている。タンク22に送られたエアーの気圧は、エアー供給装置24によって調節され、その気圧によって、タンク22内の溶剤は液体供給管5に送り出される。
【0040】
エアーの気圧によってタンク22から送り出された溶剤は、液体供給管5を通過し、さらに液体供給路先端部管2(図1、図2参照。)を通過して、2流体ノズル1の気体流路8に供給される。このとき、エアー供給装置24がタンク22内の気圧を上昇させるほど、タンク22から2流体ノズル1に供給される溶剤の供給量(単位時間当たりの溶剤供給量)は増加する。また、バルブ21が、バルブ配置箇所における気体供給管4の内径を広げるほどタンク22から2流体ノズル1に供給される溶剤の供給量(単位時間当たりの溶剤供給量)は増加し、バルブ配置箇所における気体供給管4の内径を狭めるほどタンク22から2流体ノズル1に供給される溶剤の供給量は減少する。すなわち、タンク22から2流体ノズル1に供給される溶剤の単位時間当たりの供給量は、エアー供給装置24によるタンク22内の気圧調節と、バルブ21の開閉によって制御することができる。
【0041】
また、タンク22は、透明な部材によって形成され、タンク22に収容された溶剤の量を示す目盛29が記載されていることが好ましい。そのような構成とすれば、洗浄装置の管理者は、目盛29のどの位置に溶剤の液面が存在するかを目視で確認することによってタンク22内の溶剤の残量を把握することができる。さらに、一定時間に溶剤の液面がどれだけ移動したかを計測することによって、2流体ノズル1に供給される溶剤の単位時間当たりの供給量を把握することができる。
【0042】
次に、気体供給装置11から2流体ノズル1に供給される水蒸気とタンク22から2流体ノズル1に供給される溶剤の動きについて説明する。
【0043】
蒸気供給装置11は、水を加熱して100℃以上の水蒸気に変化させ、その水蒸気を気体供給管4に送り出す。100℃以上に加熱された水蒸気は、気体供給管4を通過し、2流体ノズル1の気体流路8に導かれ、気体流路8内を流れる。
【0044】
また、タンク22に収容された溶剤は、タンク22内のエアーの気圧によりタンク22から液体供給管5に送り出される。液体供給管5に送り出された溶剤は、液体供給管5を通過し、液体供給管5と2流体ノズル1との接続部において液体供給路先端部管2(図1、図2参照。)に送り出される。液体供給路先端部管2に送り出された溶剤は、液体供給路先端部管2を通過し、開口部7(図2参照。)から2流体ノズル1の気体流路8内に吐出される。単位時間当たりに開口部7から2流体ノズル1の気体流路8内に吐出(供給)される溶剤の量は、エアー供給装置24およびバルブ21によって制御される。
【0045】
液体供給路先端部管2の全長のうち、少なくとも先端の部分は、気体流路8内に気体流路の内径の1/3〜2/3程度張り出している。そして、気体流路8内には、100℃以上に加熱された水蒸気が流れている。従って、液体供給路先端部管2内を流れる溶剤は、液体供給路先端部管2のうち、気体流路8内に張り出した部分を流れるときに、100℃以上の水蒸気によって加熱される。すると、溶剤の一部は、加熱されることによって気化する。この結果、溶剤は、気化した気体を含む液体として開口部7(図2参照。)から吐出される。具体的には、泡(溶剤が気化した気泡)を含む液体として溶剤が開口部7から吐出される。あるいは、溶剤が霧状の液体として開口部7から吐出される。
【0046】
気化した気体を含む液体(泡を含む液体、あるいは霧状の液体)として溶剤が開口部7から吐出されると、その溶剤は、気体流路8内で水蒸気に混合される。このとき、溶剤はミストとして水蒸気内にむらなく分散する。
【0047】
気体流路8には、液体供給管5から直接溶剤が供給されるのではなく、液体供給管5よりも細い液体供給路先端部管2から溶剤が供給される。また、液体供給路先端部管2の開口部7は、水蒸気の流れの下流側(気体流路8内における水蒸気の進行方向側)に向けられている。このような構成により、水蒸気の流れによって、エアー供給装置24およびバルブ21で制御した供給量以上に、液体供給路先端部管2から溶剤が吸い出されてしまうことを防止することができる。
【0048】
さらに、気化した気体を含む液体(泡を含む液体、あるいは霧状の液体)として溶剤が開口部7から吐出される。そのため、水蒸気の流れによって、エアー供給装置24およびバルブ21で制御した供給量以上に、液体供給路先端部管2から溶剤が吸い出されてしまうことを防止することができる。
【0049】
このように、本発明では、気体流路8の内圧と液体供給路先端部管2の内圧との差に起因して、制御した供給量以上に液体供給路先端部管2から溶剤が吸い出されてしまうことを防止することができ、エアー供給装置24およびバルブ21によって、溶剤の供給量を容易に制御することができる。すなわち、洗浄装置の管理者は、エアー供給装置24およびバルブ21によって溶剤の供給量を制御して供給量を微調整し、容易に所望の供給量で溶剤を気体流路8に供給することができる。
【0050】
溶剤のミストを含む水蒸気は、気体流路8の出口から噴出される。気体流路8から被洗浄物(例えば、液晶表示パネルの端子部に設けられている接続リード端子)に対して、溶剤のミストを含む水蒸気を噴出することによって、被洗浄物を洗浄することができる。
【0051】
本発明の2流体ノズルや洗浄装置によれば、液体供給管5よりも細い液体供給路先端部管2から気体流路8に溶剤が供給され、液体供給路先端部管2の開口部7は、気体流路8内における水蒸気の進行方向側に向けられているので、エアー供給装置24およびバルブ21で制御した供給量以上に、液体供給路先端部管2から溶剤が吸い出されてしまうことを防止でき、従って、エアー供給装置24およびバルブ21によって、溶剤の供給量を容易に制御することができる。
【0052】
また、液体供給路先端部管が気体流路内に少なくとも気体流路の内径の1/3〜2/3張り出していることによって、100℃以上に加熱された水蒸気で液体供給路先端部管2内の溶剤の一部を気化させることができる。よって、気化した気体を含む溶剤を開口部7から吐出させることができ、エアー供給装置24およびバルブ21で制御した供給量以上に、液体供給路先端部管2から溶剤が吸い出されてしまうことを防止できる。
【0053】
さらに、このように、溶剤の供給量を容易に制御することができるので、水蒸気内に分散する溶剤のミストの大きさを小さくすることができ、被洗浄物に乾燥むらが生じてしまうことを防止することができる。
【0054】
また、本発明の2流体ノズルや洗浄装置では、2流体ノズル1の気体流路8の内径は、気体供給管4の内径と同程度でよく、径の大きさが気体供給管4や液体供給管5の内径よりも大きな混合室を設けなくてもよい。
【0055】
上記の実施の形態では、水蒸気によって液体供給路先端部管2内の溶剤を加熱する場合を示したが、他の態様で液体供給路先端部管2内の溶剤を加熱してもよい。例えば、液体供給路先端部管2の外側に発熱コイルを巻き付け、その発熱コイルによって液体供給路先端部管2内の溶剤を加熱してもよい。発熱コイルによって液体供給路先端部管2内の溶剤を加熱する場合でも、液体供給路先端部管2内の溶剤の一部を気化させ、気化した気体を含む溶剤を開口部7から吐出させることができる。その結果、水蒸気で溶剤を加熱して気化させる場合と同様の効果を得ることができる。ここでは、発熱コイルで溶剤を加熱する場合を示したが、他の加熱装置によって液体供給路先端部管2内の溶剤を加熱してもよい。
【0056】
また、図1では、気体流路8の側面よりも奥まった部分に支持部3を配置する場合を示したが、加熱コイル等の加熱装置を用いて液体供給路先端部管2内の溶剤を加熱する場合には、気体流路8の側面に沿って支持部3を配置し、その支持部3から液体供給路先端部管2が張り出す構成であってもよい。図5は、気体流路8の側面に沿って配置された支持部3から液体供給路先端部管2が張り出す構成の2流体ノズルの例を示している。図5に示す例では、液体供給路先端部管2の外側に加熱コイル41が巻き付けられている。加熱コイル41は、発熱することによって液体供給路先端部管2内を通過する溶剤を加熱し、その溶剤の一部を気化させる。
【0057】
また、液体供給路先端部管2は、ばね弾性を有する金属によって形成されることが好ましい。液体供給路先端部管2が弾性を有する金属で形成されている場合には、液体供給路先端部管2を振動によって揺らせ易くなる。液体供給路先端部管2を揺らした状態で開口部7から気体流路8に溶剤を供給すれば、ミストとなった溶剤をより均一に水蒸気内に分散させることができる。
【0058】
図6は、液体供給路先端部管2を振動させる2流体ノズルの例を示す説明図である。図1と同一の構成要素については、図1と同一の符号を付し説明を省略する。アーム42は、2流体ノズル1の内側に取り付けられる棒状部材である。アーム42の先端は液体供給路先端部管2を保持可能な形状に形成されていて、液体供給路先端部管2を保持する。2流体ノズル1は、アーム42を振動させるアームの駆動装置(図示せず。)によってアーム42を振動させる。すると、アーム42に保持された液体供給路先端部管2も振動する。この状態で、開口部7から気体流路8に溶剤を供給すれば、ミストとなった溶剤は水蒸気内でより均一に分散する。
【0059】
上記のアーム42以外の装置で液体供給路先端部管2を振動させてもよい。例えば、2流体ノズル1全体を振動させる振動装置(図示せず。)を2流体ノズル1に設けてもよい。そして、その振動装置が2流体ノズル1全体を振動させることで液体供給路先端部管2を振動させてもよい。
【0060】
また、上記の実施の形態では、溶剤を吐出する開口部7が液体供給路先端部管2に1つ設けられている場合を示した。液体供給路先端部管2に設けられる開口部7は、複数であってもよい。例えば、図2に示す液体供給路先端部管2において、液体供給路先端部管2の長軸方向に開口部7を複数並べて設けてもよい。この場合も、複数の開口部7は、いずれも気体流路内の水蒸気の進行方向側に向けて設けられる。
【0061】
開口部7を複数設けることによって、溶剤のミスト化が容易になり、溶剤と水蒸気とが混合しやすくなる。
【0062】
なお、本発明の2流体ノズルおよび洗浄装置は、例えば、液晶表示パネルの端子部に設けられている接続リード端子(図示せず。)の洗浄に利用することができる。ただし、本発明の2流体ノズルおよび洗浄装置は、そのような接続リード端子だけでなく、他の部材の洗浄に利用してもよい。
【実施例】
【0063】
図4に示す構成の洗浄装置において、図1に示す構成の2流体ノズル1を用いた。気体供給装置11からは、50ml/secで2流体ノズル1に水蒸気を供給した。また、液体供給路先端部管2の内径は、0.6mmとした。タンク22には、溶剤としてエタノールを収容した。そして、エアー供給装置24およびバルブ21によって、2流体ノズル1に供給される溶剤(エタノール)の供給量を0.04〜0.5ml/secに調整した。
【0064】
この洗浄装置で表示パネルを洗浄したところ、乾燥むらの発生しない良好な洗浄を行うことができた。
【0065】
[比較例]2流体ノズルとして、図7に示す従来の2流体ノズルを用いる点を除いて、実施例と同様の洗浄装置を用いて表示パネルを洗浄した。エアー供給装置24およびバルブ21によって調整を行っても、エタノールの供給量は、所望の量よりも多くなってしまい、2流体ノズルへのエタノール供給量は、1.0ml/secとなった。また、洗浄後の表示パネルには、乾燥むらが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、蒸気洗浄を行うための2流体ノズルや、蒸気洗浄を行う洗浄装置に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の2流体ノズルの構成例を示す断面図。
【図2】液体供給路先端部管の開口部の例を示す説明図。
【図3】液体供給路先端部管の開口部の他の例を示す説明図。
【図4】本発明の洗浄装置の構成例を示す説明図。
【図5】気体流路の側面に沿って配置された支持部から液体供給路先端部管が張り出す構成例を示す説明図。
【図6】液体供給路先端部管を振動させる2流体ノズルの例を示す説明図。
【図7】従来の2流体ノズルの例を示す説明図。
【符号の説明】
【0068】
1 2流体ノズル
2 液体供給路先端部管
3 支持部
4 気体供給管
5 液体供給管
7 開口部
8 気体流路
11 蒸気供給装置(気体供給装置)
21 バルブ
22 タンク
23 エアー供給管
24 エアー供給装置
41 加熱コイル
42 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中に液体を混合させる2流体ノズルであって、
気体が流される気体流路と、
液体を収容するタンクから当該2流体ノズルまで液体を送る液体供給管よりも内径の小さい管であって、液体供給管と気体流路との接続部に設けられる管である液体供給路先端部管とを備え、
液体供給路先端部管は、気体流路内に張り出し、
気体流路内における液体供給路先端部管の開口部は、気体流路内の気体の進行方向側に向けて設けられる
ことを特徴とする2流体ノズル。
【請求項2】
気体流路に100℃以上に加熱された蒸気が供給され、
液体供給路先端部管の気体流路内に張り出した部分の長さは、気体流路の内径の1/3〜2/3である
請求項1に記載の2流体ノズル。
【請求項3】
液体供給路先端部管を加熱する加熱手段を備える
請求項1または請求項2に記載の2流体ノズル。
【請求項4】
液体供給路先端部管を振動させる振動手段を備える
請求項1、2、または3に記載の2流体ノズル。
【請求項5】
2流体ノズルから液体が混合された気体を噴出して被洗浄物を洗浄する洗浄装置であって、
気体中に液体を混合させる2流体ノズルと、
液体を収容するタンクと、
タンクから2流体ノズルまで液体を送る液体供給管と、
2流体ノズルに気体を供給する気体供給装置と、
気体供給装置から2流体ノズルまで気体を送る気体供給管とを備え、
2流体ノズルは、
気体が流される気体流路と、
液体供給管よりも内径の小さい管であって、液体供給管と気体流路との接続部に設けられる管である液体供給路先端部管とを有し、
液体供給路先端部管は、気体流路内に張り出し、
気体流路内における液体供給路先端部管の開口部は、気体流路内の気体の進行方向側に向けて設けられる
ことを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−183538(P2008−183538A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21234(P2007−21234)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】