説明

2線式交流スイッチ

【課題】内部に有する双方向スイッチ素子自体の発熱を抑制した2線式交流スイッチを提供する。
【解決手段】交流電源101と負荷102との間に接続されて用いられる2線式交流スイッチ100aであって、双方向に電流を流す構成を有するとともに当該電流の流れをオン又はオフするスイッチ素子であって、交流電源101及び負荷102と直列に接続され、かつ、交流電源101及び負荷102ととともに閉回路を構成する、III族窒化物半導体からなる双方向スイッチ素子103と、交流電源101から電源を全波整流する全波整流器104と、全波整流後の電圧を平滑化し、直流電源を供給する電源回路105と、双方向スイッチ素子103に制御信号を出力する第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート108と、第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート108を制御する制御回路106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式交流スイッチに関し、III族窒化物半導体からなる双方向スイッチ素子を有した2線式交流スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2線式交流スイッチとして住宅用の照明灯や換気扇の制御はメカスイッチが多く用いられきた。近年、双方向に電流を通電し、正負両極性の電圧に対して耐圧を有する双方向の交流スイッチが必要とされ、トライアックのような半導体を使用した、調光機能やリモコン機能、人センサー機能を有する高機能なスイッチが商品化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、トライアックを主スイッチとして使用した従来の2線式交流スイッチ151の概略回路図である。図12に示すように、従来の2線式交流スイッチ151は、商用交流電源101及び負荷102と直列に接続されて閉回路を構成するトライアック150と、そのトライアック150を駆動する駆動回路149等で構成され、駆動回路149によってトライアック150をオン/オフさせることで、商用交流電源101より負荷102に電力を供給/遮断するシステムになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭58−56477号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0189561号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シリコン(Si)を材料とする半導体素子を用いて双方向スイッチ素子を形成する場合には、Siの材料限界のために、双方向スイッチ素子のオン抵抗をこれ以上低減することが困難である。つまり、双方向スイッチとして使用されているトライアック150は、図13に示されるトライアックのオン特性図から分かるように、オン時にシリコンダイオードのオン特性と同様のバイポーラデバイスのオン動作と同様の動作をする為に低電流域でのオン抵抗が大きくなり、トライアックを用いた2線式交流スイッチでは、オン抵抗による導通損失が大きくなる。その為に、従来の2線式交流スイッチは、例えば、200W以上の負荷に対して使用することが難しく、使用できる負荷の消費電力に制限を設けて使用しているという課題がある。
【0006】
本発明は、前記の課題を解決する為に、内部に有する双方向スイッチ素子自体の発熱を抑制することができ、これにより、商用交流電源に接続されるより大きい負荷をスイッチすることを可能にする2線式交流スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
近年、材料限界を打破して導通損失を低減するために、GaNに代表されるIII族窒化物半導体又は炭化珪素(SiC)等のワイドギャップ半導体を用いた半導体素子の導入が検討されている(例えば、特許文献2参照)。ワイドギャップ半導体は絶縁破壊電界がSiと比べて約1桁高い。窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)と窒化ガリウム(GaN)とのヘテロ接合界面には自発分極及びピエゾ分極により電荷が生じる。これにより、アンドープ時においても1×1013cm-2以上のシートキャリア濃度と1000cm2V/sec以上の高移動度の2次元電子ガス(2DEG)層が形成される。このため、AlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(AlGaN/GaN−HFET)は、低オン抵抗及び高耐圧を実現するパワースイッチングトランジスタとして期待されている。
【0008】
特に、AlGaN/GaNのヘテロ接合を利用して2つのゲート電極を有する構造にすることにより、1つの半導体素子で、双方向スイッチ素子を形成することが可能となる。この構造を有した双方向スイッチ素子は、互いに逆方向に直列に接続した2個のトランジスタと回路的には等価で、図3に示されるオン特性の比較図のように、従来のトライアックよりもオン抵抗を低減が可能になり、第1のオーミック電極側から第2のオーミック電極側へ流れる電流も、第2のオーミック電極側から第1のオーミック電極側へ流れる電流も共に制御することができる。このため、III族窒化物半導体から構成される、2つのゲート電極を有する双方向スイッチ素子は、従来使用されているトライアック単体、パワーMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)又はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等のパワートランジスタを複数個組み合わせた従来の双方向スイッチよりも小型化で、かつ、省電力化を図ることができる素子として注目さえている。
【0009】
そこで、本発明者らは、III族窒化物半導体から構成されるスイッチ素子のすぐれた特性を生かした2線式交流スイッチを完成するに至った。具体的には、前記の目的を達成するため、本発明の2線式交流スイッチの一実施の形態は、交流電源と負荷との間に接続されて用いられる2線式交流スイッチであって、双方向に電流を流す構成を有するとともに当該電流の流れをオン又はオフするスイッチ素子であって、前記交流電源及び前記負荷と直列に接続され、かつ、前記交流電源及び前記負荷ととともに閉回路を構成する双方向スイッチ素子を備え、前記双方向スイッチ素子は、基板と、前記基板上に形成され、III族窒化物半導体から構成される半導体積層体と、前記半導体積層体に形成され、前記交流電源及び前記負荷の一方及び他方のそれぞれと電気的に接続される第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、前記半導体積層体上における、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極とを有し、前記2線式交流スイッチはさらに、前記第1のオーミック電極端子と前記第2のオーミック電極端子との間に接続され、前記交流電源を全波整流する全波整流器と、前記全波整流器から出力される全波整流後の電圧を平滑化し、直流電源を供給する電源回路と、前記電源回路から直流電源の供給を受けるとともに、前記第1ゲート電極及び第2ゲート電極に制御信号を出力する駆動回路と、前記電源回路から直流電源の供給を受けるとともに、前記交流電源より前記負荷に電力を与える場合には、前記駆動回路が、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極に対して、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極の閾値電圧より高い電圧をもつ制御信号を出力することによって前記双方向スイッチ素子をオン状態にさせるように、前記駆動回路を制御する制御回路とを備える。
【0010】
これにより、交流電源の供給をオン・オフする双方向スイッチ素子はIII族窒化物半導体で構成されるので、そのような双方向スイッチ素子を備える2線式交流スイッチは、オン抵抗の低く、発熱が抑えられ、従来よりも大きい負荷に接続して用いることができる。
【0011】
ここで、前記駆動回路が前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極に抵抗を介して前記制御信号を伝達する構成としてもよい。これにより、駆動回路と第1のゲート電極及び第2のゲート電極との間に抵抗が挿入されるので、駆動回路から第1のゲート電極及び第2のゲート電極への制御信号の電流及び電圧が制限され、それにより、制御信号の変動が抑制されてスイッチング動作が安定化されたり、サージ電圧の侵入によって双方向スイッチ素子が破壊されてしまうことが回避されたりする。
【0012】
また、前記駆動回路が前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極に電流もしくは定電流の前記制御信号を出力する構成としてもよい。これにより、駆動回路から電流もしくは定電流の制御信号が第1のゲート電極及び第2のゲート電極に入力されるので、過負荷状態にある負荷に電力を供給する過渡的な状態であっても、第1のゲート電極及び第2のゲート電極に対して電流が制限された制御信号が入力され、スイッチング動作が安定化される。
【0013】
また、前記制御回路は、前記双方向スイッチにおいて、前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極のうち、電位の高い方の第1又は第2のオーミック電極に近い第1又は第2のゲート電極に、先に前記閾値電圧より高い電圧を前記制御信号として印加し、次に他方の第2又は第1のゲート電極に、前記閾値電圧より高い電圧を記制御信号として印加することによって前記双方向スイッチ素子をオン状態にさせるように、前記駆動回路を制御する構成としてもよい。これにより、より低い電位で双方向スイッチ素子をオンさせ得る第1のゲート電極又は第2のゲート電極に信号を与えるタイミングで2線式スイッチ素子がオンされるので、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の2つに同時に制御信号を送る方式よりも正確なタイミングで2線式スイッチ素子をオンさせることが可能となる。
【0014】
また、前記基板がアース接地されている構成としたり、前記基板がある電位に固定されている構成としたりしてもよい。これにより、双方向スイッチ素子の基板電位を安定化したり、双方向スイッチ素子に放熱板を装着した時にも絶縁が必要なくなったり、ノイズ発生を抑制したりできるという効果が奏される。
【0015】
また、さらに、前記基板に電気的に接続された基板端子と、前記基板端子と前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極それぞれとの間に、前記基板端子から前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極に電流が流れる向きに接続された2つのダイオードとを備える構成としてもよい。これにより、双方向スイッチ素子の基板電位は、2つのスイッチ端子(第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極)のうち、電位の低い方のスイッチ端子の電位に近い電位となるので、双方向スイッチ素子の低い電圧側の制御端子(第1又は第2のゲート電極)による安定した制御が可能となる。
【0016】
また、さらに、前記基板に電気的に接続された基板端子と、前記基板端子と前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極それぞれとの間に、前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極から前記基板端子に電流が流れる向きに接続された2つのダイオードとを備える構成としてもよい。これにより、双方向スイッチ素子の基板電位は、2つのスイッチ端子(第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極)のうち、電位の高い方のスイッチ端子の電位に近い電位となるので、双方向スイッチ素子の高い電圧側の制御端子(第1又は第2のゲート電極)による安定した制御が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る2線式交流スイッチによれば、III族窒化物半導体からなる双方向スイッチ素子で構成することにより、オン抵抗によって生じる損失を低減できる為、双方向スイッチ素子自体の発熱を抑制することができ、安定して動作する2線式交流スイッチを実現できる。よって、住宅の壁に取り付けられる2線式交流スイッチが実現される。
【0018】
また、より大きい負荷をスイッチングすることが可能となったり、負荷に制限を設けることなく使用できる2線式交流スイッチが実現されたりする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図2】本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチが備える双方向スイッチ素子の断面構造図
【図3】本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチが備えるIII族窒化物半導体から構成される双方向スイッチ素子のオン特性とトライアックのオン特性との比較示す概要図
【図4】本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチが備える双方向スイッチ素子のレイアウトを示す概要図
【図5】本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチが備える双方向スイッチ素子のパッケージを示す概要図
【図6】双方向スイッチ素子と第1及び第2のゲート駆動回路との間に抵抗を挿入した、本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図7】双方向スイッチ素子のゲート駆動を電流もしくは定電流で実施する、本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図8A】双方向スイッチ素子の基板電位をアース接地した、本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図8B】双方向スイッチ素子の基板電位をアース接地した、本発明の別の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図9A】双方向スイッチ素子の基板電位を任意の電位の固定した、本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図9B】双方向スイッチ素子の基板電位を任意の電位の固定した、本発明の別の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図10】双方向スイッチ素子の基板電位を商用交流電位の低い方の電位と近い電位を基板に印加した、本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図11】双方向スイッチ素子の基板電位を商用交流電位の高い方の電位と近い電位を基板に印加した、本発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチの回路図
【図12】トライアックを用いて構成された従来の2線式交流スイッチの回路図
【図13】トライアックのオン特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の2線式交流スイッチの実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る2線式交流スイッチ100aの回路の構成を示している。この2線式交流スイッチ100aは、商用交流電源101と照明器具等の負荷102との間に接続されて用いられる交流スイッチであり、双方向スイッチ素子103と、全波整流器104と、電源回路105と、駆動回路(第1のゲート駆動回路107、第2のゲート駆動回路108)と、制御回路106とを備える。
【0021】
図1に示すように、双方向スイッチ素子103は、双方向に電流を流す構成を有するとともに当該電流の流れをオン又はオフする、III族窒化物半導体から構成されるダブルゲートのスイッチ素子であり、スイッチング(導通/非導通)の対象となるスイッチ端子S1及びスイッチ端子S2と、電流の流れのオン及びオフを制御するための2つのゲートに接続された制御端子G1及び制御端子G2と、この双方向スイッチ素子103を形成している基板と電気的に接続された基板端子SUBとを有する。ここで、商用交流電源101と、負荷102と、双方向スイッチ素子103(そのスイッチ端子S1及びスイッチ端子S2)とは、閉回路を構成するように、直列に接続されている。
【0022】
全波整流器104は、スイッチ端子S1とスイッチ端子S2との間に接続され、商用交流電源101から供給される交流電源を全波整流するブリッジダイオード等である。
【0023】
電源回路105は、全波整流器104から出力される全波整流後の電圧を平滑化し、直流電源を供給する回路である。第1のゲート駆動回路107、第2のゲート駆動回路108及び制御回路106に必要な電源は、電源回路105から供給されている。
【0024】
制御回路106は、商用交流電源101から負荷102に電力を供給する場合には、第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート駆動回路108が、それぞれ、双方向スイッチ素子103の制御端子G1及び制御端子G2に対して、制御端子G1及び制御端子G2に対応するゲートの閾値電圧より高い電圧をもつ制御信号を出力することによって双方向スイッチ素子103をオン状態にさせ、一方、商用交流電源101から負荷102への電力供給を遮断する場合には、第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート駆動回路108が、それぞれ、双方向スイッチ素子103の制御端子G1及び制御端子G2に対して、制御端子G1及び制御端子G2に対応するゲートの閾値電圧より低い電圧をもつ制御信号を出力することによって双方向スイッチ素子103をオフ状態にさせるように、第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート駆動回路108を制御する回路である。
【0025】
より詳しくは、外部設定部109より、商用交流電源101から負荷102に電力を供給するか否かを示す信号が制御回路106に伝達される。その伝達された信号に基づいて、制御回路106は、第1のゲート駆動回路107の入力端子SIN1及び第2のゲート駆動回路108の入力端子SIN2に、制御信号を出力する。
【0026】
第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート駆動回路108は、制御回路106からの制御信号に基づいて、それぞれ、その出力端子OU1及びOUT2から双方向スイッチ素子103の制御端子G1及びG2に制御信号を出力することにより、双方向スイッチ素子103のスイッチング動作を制御する。具体的には、第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート駆動回路108から、それぞれ、双方向スイッチ素子103(より詳しくは、そのゲート)の閾値電圧より高い電圧が制御端子G1と制御端子G2に印加されると、双方向スイッチ素子103のスイッチ端子S1とスイッチ端子S2とが導通状態になり、負荷102に電力が供給される。一方、第1のゲート駆動回路107及び第2のゲート駆動回路108の少なくとも一方から、それぞれ、双方向スイッチ素子103(より詳しくは、そのゲート)の閾値電圧より低い電圧が制御端子G1、制御端子G2に印加されると、双方向スイッチ素子103のスイッチ端子S1とスイッチ端子S2とが非導通状態になり、負荷102への電力供給が遮断される。これにより、III族窒化物半導体から構成される双方向スイッチ素子103を用いた2線式交流スイッチが実現され、オン抵抗が大幅に低減され、より大きい負荷をスイッチできることが可能となる。
【0027】
以下に、本実施の形態の2線式交流スイッチ100aに用いたIII族窒化物半導体から構成される双方向スイッチ素子103についてさらに具体的に説明する。まず、双方向スイッチ素子103の構造について説明する。図2は双方向スイッチ素子103の断面を示している。
【0028】
図2に示すように、双方向スイッチ素子103は、導電性のシリコン(Si)基板126の上に形成された厚さが約1μmのバッファ層127と、バッファ層127の上に形成された半導体積層体(第1の半導体層128と第2の半導体層129)とを有している。バッファ層127は、交互に積層された厚さが10nm程度の窒化アルミニウム(AlN)と厚さが10nm程度の窒化ガリウム(GaN)とからなる。半導体積層体は、基板126側から順次積層された、第1の半導体層128と、第1の半導体層128と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層129とから構成される。本実施の形態においては、第1の半導体層128は、厚さが2μm程度のアンドープの窒化ガリウム(GaN)層である。第2の半導体層129は、厚さが20nm程度のn型の窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層である。これにより、図3に示される本実施の形態におけるIII族窒化物半導体双方向スイッチ素子(双方向スイッチ素子103)と従来のトライアックのオン特性比較図に示されるように、極めてオン抵抗が低い双方向スイッチ素子、つまり、極めてオン抵抗が低い2線式交流スイッチが実現される。
【0029】
GaNからなる第1の半導体層128とAlGaNからなる第2の半導体層129とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより、シートキャリア濃度が1×1013cm-2以上で、且つ、移動度が1000cm2V/sec以上の2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が生成される。
【0030】
半導体積層体の上、つまり、半導体層128と半導体層129との上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極123Aと第2のオーミック電極123Bとが形成されている。第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bは、いずれも、チタン(Ti)とアルミニウム(Al)とが積層されており、上述したチャネル領域とオーミック接触している。この図2においては、コンタクト抵抗を低減するために、第2の半導体層129の一部を除去すると共に第1の半導体層128を40nm程度掘り下げて、第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bが第1の半導体層128と第2の半導体層129との界面に接するように形成した例が示されている。なお、第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bは、第2の半導体層129の上に形成してもよい。
【0031】
第1のオーミック電極123Aの上に、AuとTiからなる第1のオーミック電極配線122Aが形成されており、第1のオーミック電極123Aと電気的に接続されている。同様に、第2のオーミック電極123Bの上にAuとTiからなる第2のオーミック電極配線122Bが形成されており、第2のオーミック電極123Bと電気的に接続されている。
【0032】
第2の半導体層129の上における、第1のオーミック電極123Aと第2のオーミック電極123Bとの間の領域には、双方向スイッチ素子103のダブルゲートを構成する第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bとが互いに間隔をおいて選択的に形成されている。第1のp型半導体層125Aの上には第1のゲート電極124Aが形成され、第2のp型半導体層125Bの上には第2のゲート電極124Bが形成されている。第1のゲート電極124A及び第2のゲート電極124Bは、いずれも、パラジウム(Pd)と金(Au)との積層体からなり、第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bとオーミック接触している。
【0033】
第1のオーミック電極配線122A、第1のオーミック電極123A、第2の半導体層129、第1のp型半導体層125A、第1のゲート電極124A、第2のp型半導体層125B、第2のゲート電極124B、第2のオーミック電極123B及び第2のオーミック電極配線122Bを覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜130が形成されている。
【0034】
Si基板126の裏面には、ニッケル(Ni)とクロム(Cr)と銀(Ag)とが積層された厚さ800nm程度の裏面電極131が形成されており、裏面電極131はSi基板126とオーミック接合している。
【0035】
第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bは、それぞれ厚さが300nm程度で、マグネシウム(Mg)がドープされたp型のGaNからなる。第1のp型半導体層125A及び第2のp型半導体層125Bと、第2の半導体層129とによりpn接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極123Aと第1のゲート電極124Aとの間の電圧が例えば0V以下の場合には、第1のp型半導体層125Aからチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。同様に、第2のオーミック電極123Bと第2のゲート電極124Bとの間の電圧が、例えば0V以下の場合には、第2のp型半導体層125Bからチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。従って、いわゆるノーマリーオフ動作をするダブルゲートのスイッチ素子が実現できる。また、第1のp型半導体層125Aと第2のp型半導体層125Bとの間の距離は、第1のオーミック電極123A及び第2のオーミック電極123Bに印加される最大電圧に耐えられるように設計する。
【0036】
なお、第1のオーミック電極123Aと接続された端子S1、第1のゲート電極124Aと接続された端子G1、第2のゲート電極124Bと接続された端子G2及び第2のオーミック電極123Bと接続された端子S2は、それぞれ、図1のスイッチ端子S1、制御端子G1、制御端子G2及びスイッチ端子S2に対応する。また、裏面電極131と接続された端子Subは、図1の基板端子SUBに対応する。
【0037】
図4は双方向スイッチ素子103のチップ(双方向スイッチチップ137)表面のレイアウトを示す図である。この双方向スイッチチップ137の表面の右側領域には、第1のオーミック電極配線133A、その第1のオーミック電極配線133Aの上面に形成された第1のオーミック電極パッド134A、図2に示された第1のゲート電極124Aと電気的に接続される第1のゲート配線132A、その第1のゲート配線132Aの上面に形成された第1のゲート電極パッド135Aが配置されている。
【0038】
また、この双方向スイッチチップ137の表面の左側領域には、第2のオーミック電極配線133B、その第2のオーミック電極配線133Bの上面に形成された第2のオーミック電極パッド134B、図2に示された第2のゲート電極124Bと電気的に接続される第2のゲート配線132B、その第2のゲート配線132Bの上面に形成された第2のゲート電極パッド135Bが配置されている。
【0039】
また、この双方向スイッチチップ137の表面の中央領域には、(i)第2のオーミック電極配線133Bと電気的に接続され、かつ、その第2のオーミック電極配線133Bから中央領域に向けて延びるフィンガー配線である第2のオーミック電極配線122B、(ii)第1のゲート配線132Aと電気的に接続され、かつ、その第1のゲート配線132Aから中央領域に向けて延びるフィンガー状の電極である第1のゲート電極124A、(iii)第2のゲート配線132Bと電気的に接続され、かつ、その第2のゲート配線132Bから中央領域に向けて延びるフィンガー状の電極である第2のゲート電極124B、及び、(iv)第1のオーミック電極配線133Aと電気的に接続され、かつ、その第1のオーミック電極配線133Aから中央領域に向けて延びるフィンガー配線である第1のオーミック電極配線122Aが配置されている。なお、この双方向スイッチチップ137の表面の中央領域には、上述したチャネル領域である活性領域136も併せて図示されている。
【0040】
このような双方向スイッチチップ137の表面の中央領域における点線(c)で切断した断面が、図2に相当する。
【0041】
図5は双方向スイッチ素子103のPKG(パッケージ)実装例を示している。ここでは、ダイパッド138の上に固定された双方向スイッチチップ137の表面における各パッド134A、135A、134B及び135Bと、図1及び図2に示された各端子(スイッチ端子S1、スイッチ端子S2、制御端子G1、制御端子G2、基板端子SUB)用のリード144〜147との接続の様子が示されている。つまり、第1のオーミック電極パッド134Aは2本のワイヤ139でスイッチ端子S1用のリード147と接続され、第1のゲート電極パッド135Aはワイヤ140で制御端子G1用のリード146と接続され、第2のゲート電極パッド135Bはワイヤ142で制御端子G1用のリード144と接続され、第2のオーミック電極パッド134Bは2本のワイヤ141でスイッチ端子S2用のリード145と接続されている。
【0042】
なお、ダイパッド138は基板端子SUB用のリード148と接続されている。また、ダイパッド138、双方向スイッチチップ137、各ワイヤ139〜142、及び、各リード144〜148の根元部分は、樹脂143でモールドされている。
【0043】
以上のような構造を有する本実施の形態における双方向スイッチ素子103の動作原理は次の通りである。つまり、図1の第1のゲート駆動回路107より制御端子G1とスイッチ端子S1との間に与える電位が第1のゲート電極124Aの閾値電圧よりも低くすることにより、図2における第1のゲート電極124Aの下側に空乏層が拡がるようにし、同様に、第2のゲート駆動回路108より制御端子G2とスイッチ端子S2との間に与える電位を第2のゲート電極124Bの閾値電圧よりも低くすることにより、図2における第2のゲート電極124Bの下側に空乏層が拡がるようにする。このようにすれば、第1のオーミック電極123Aであるスイッチ端子S1と第2のオーミック電極123Bであるスイッチ端子S2との間にはどちらの方向にも電流が流れない状態になり、双方向スイッチ素子103のスイッチ端子S1とスイッチ端子S2との間が遮断された状態になり、商用交流電源101より負荷102に電力が供給されないオフ状態になる。
【0044】
一方、第1のゲート駆動回路107より制御端子G1とスイッチ端子S1との間に与える電位が第1のゲート電極124Aの閾値電圧よりも高くすることにより、図2における第1のゲート電極124Aの下側に空乏層が拡がらないようにし、同様に、第2のゲート駆動回路108より制御端子G2とスイッチ端子S2との間に与える電位を第2のゲート電極124Bの閾値電圧よりも高くすることにより、図2における第2のゲート電極124Bの下側に空乏層が拡がらないようにする。このようにすれば、第1のオーミック電極123Aであるスイッチ端子S1と第2のオーミック電極123Bであるスイッチ端子S2との間にはどちらにも電流がれるようになり、双方向スイッチ素子103のスイッチ端子S1とスイッチ端子S2との間が導通された状態になり、商用交流電源101より負荷102に電力が供給される状態になる。
【0045】
この原理で図1に示した2線式交流スイッチ100aの双方向スイッチ素子103の制御端子G1とスイッチ端子S1との間及び制御端子G2とスイッチ端子S2との間に、閾値電圧より高い電圧を印加することで、商用交流電源101に接続された負荷102に電力を与えることが可能になり、制御端子G1とスイッチ端子S1との間及び制御端子G2とスイッチ端子S2との間を閾値電圧以下の電圧にすることにより、商用交流電源101に接続された負荷102に電力を遮断できるようになる。このようにして商用交流電源101に接続された負荷102を選択的にオン状態及びオフ状態にする制御が可能となる。
【0046】
さらに双方向スイッチ素子103の制御端子G1とスイッチ端子S1との間及び制御端子G2とスイッチ端子S2との間への信号の与え方について説明する。双方向スイッチ素子103をオン状態にするためには制御端子G1とスイッチ端子S1との間及び制御端子G2とスイッチ端子S2との間の両方に閾値電圧より高い電圧を与える必要があり、実質的に同時に印加することでオン状態にすることは可能である。しかしながら、より好ましくは、次のように制御するのが望まれる。
【0047】
つまり、双方向スイッチ素子103をオフ状態からオン状態するには、スイッチ端子S1及びスイッチ端子S2のうち電位が高い方に近い制御端子に閾値電圧より高い電圧を与え、一定の時間をおいて、スイッチ端子S1及びスイッチ端子S2のうち電位の低い方に近い制御端子に閾値電圧より高い電圧を与える。一方、双方向スイッチ素子103をオン状態からオフ状態するには、スイッチ端子S1及びスイッチ端子S2のうち電位の低い方に近い制御端子に閾値電圧より低い電圧を与え、一定の時間をおいて、スイッチ端子S1及びスイッチ端子S2のうち電位の高い方に近い制御端子に閾値電圧より低い電圧を与える。
【0048】
例えば、双方向スイッチ素子103をオフ状態からオン状態するには、スイッチ端子S1とスイッチ端子S2の内、スイッチ端子S2の電位が高い時は、先に制御端子G2とスイッチ端子S2との間に閾値電圧より高い電圧を印加し、一定の時間をおいて制御端子G1とスイッチ端子S1との間に閾値電圧より高い電圧を与えることで、両方の制御端子に閾値電圧より高い電圧が印加されることとなり、双方向スイッチ素子103がオン状態になる。一方、双方向スイッチ素子103をオン状態からオフ状態にするには、電位が低い側であるスイッチ端子S1に近い制御端子G1とスイッチ端子S1との間に閾値電圧より低い電圧与え、一定の時間をおいて、制御端子G2とスイッチ端子S2との間の両方に閾値電圧より低い電圧を印加する。
【0049】
このような制御端子G1とスイッチ端子S1との間及び制御端子G2とスイッチ端子S2との間への信号の与え方にすることで、双方向スイッチ素子103は、実質的には、電位の低い方の制御端子に電位を与えるタイミングで、オン状態及びオフ状態が制御(決定)できるので、2つの制御端子に同時に制御電圧を印加する方式よりも正確に双方向スイッチ素子103の制御が可能となる。なお、この双方向スイッチ素子103の制御端子G1とスイッチ端子S1との間及び制御端子G2とスイッチ端子S2との間への信号の与え方については、図6から図11の実施の形態においても同じ効果がある。
【0050】
図6は本発明の別の実施の形態に係る2線式交流スイッチ100bの回路の構成を示す図である。ここでは、制御端子G1と第1のゲート駆動回路107との間、制御端子G2と第2のゲート駆動回路108との間に、それぞれ、ゲート保護用の抵抗111及び抵抗110を挿入した構成が示されている。この構成は、双方向スイッチ素子103の制御端子G1及び制御端子G2に閾値電圧以上の電圧が印加され、負荷102に電力が供給される過渡状態において、制御端子G1からスイッチ端子S1に印加される電流及び電圧、並びに、制御端子G2からスイッチ端子S2に印加される電流及び電圧が変動することを抑制したり、他からのサージ電圧による素子破壊を保護したりするので、効果的な方法である。
【0051】
図7は発明のさらに別の実施の形態に係る2線式交流スイッチ100cの回路の構成を示す図である。ここでは、制御端子G1及び制御端子G2に、それぞれ、電流源である第1のゲート駆動回路112及び第2のゲート回路駆動部113から電流を印加する構成が示されている。この構成によれば、双方向スイッチ素子103をオン状態にする為に、制御端子G1及びG2に定電流を印加することになるので、過負荷状態にある負荷102に電力を供給する過渡的な状態において、制御端子G1及び制御端子G2に印加される電流及び電圧が安定化される。
【0052】
続いて、図8A〜図11は、それぞれ、発明のさらに別の実施の形態に係る2線式交流スイッチ100d−1〜100gの回路の構成を示す図である。ここでは、双方向スイッチ素子103の基板端子SUBの電位のとり方についての各種実施例が示されている。先に説明した図1、図6、図7に示される構成では、基板端子SUBは電位を固定しないフローティング状態である。
【0053】
図8Aは発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチ100d−1の回路の構成を示す図である。ここでは、双方向スイッチ素子103の基板端子SUBを接地した例が示されている。つまり、基板端子SUB端子と、第1のゲート駆動回路107、第2のゲート駆動回路108、制御回路106及び電源回路105の共通接地部とを、配線114で接続した例が記載されている。基板端子SUBを接地することにより、双方向スイッチ素子103の基板電位を安定化でき、双方向スイッチ素子103に放熱板を装着した時にも絶縁が必要なくなり、ノイズ発生を抑制できる効果がある。なお、この2線式交流スイッチ100d−1は、図8Bに示される2線式交流スイッチ100d−2ように、基板端子SUBを接地する為の配線114にサージ電圧に対する保護のための抵抗114aを挿入して構成してもよい。これにより、図8Aに示される2線式交流スイッチ100d−1と同様に基板端子SUBを安定化できる。基板端子SUBを接地する方法は別の形態を取っても同様の効果がある。
【0054】
図9Aは発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチ100e−1の回路の構成を示す図である。ここでは、双方向スイッチ素子103の基板端子SUBを任意の電位に固定した例が示されている。つまり、基板端子SUBと、任意の電位端子を有する電源回路105(その電位端子)とを、配線115で接続した例が記載されている。基板端子SUBを任意の電位に固定することにより、双方向スイッチ素子103に放熱板を装着した時には絶縁が必要になるが、その時であっても双方向スイッチ素子103の基板電位を安定化できる。なお、この2線式交流スイッチ100e−1は、図9Bに示される2線式交流スイッチ100e−2ように、基板端子SUBと任意の電位端子を接続する配線115にサージ電圧に対する保護のための抵抗115aを挿入して構成してもよい。これにより、図9Aに示される2線式交流スイッチ100e−1と同様に基板端子SUBを安定化できる。
【0055】
図10は発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチ100fの回路の構成を示す図である。ここでは、双方向スイッチ素子103の基板端子SUBを交流電圧の低い電位に近い電圧に固定する例が示されている。この構成では、基板端子SUBとスイッチ端子S1との間にダイオード118と抵抗117とが並列に接続され、かつ、基板端子SUBとスイッチ端子S2との間にも同様にダイオード119と抵抗116とが並列に接続されている。この構成により、基板端子SUBを交流電圧の低い電位に近い電圧に固定することが可能となる。このことにより、双方向スイッチ素子103の低い電圧側の制御端子による安定した制御が可能となる。なお、双方向スイッチ素子103の基板端子SUBを交流電圧の低い電位に近い電圧に固定する方法は別の形態を取っても良い。
【0056】
図11は発明の一実施の形態に係る2線式交流スイッチ100gの回路の構成を示す図である。ここでは、双方向スイッチ素子103の基板端子SUBを交流電圧の高い電位に近い電圧に固定する例が示されている。この構成では、基板端子SUBとスイッチ端子S1との間にダイオード120が接続され、基板端子SUBとスイッチ端子S2との間にダイオード121が接続されている。この構成により、基板端子SUBを交流電圧の高い電位に近い電圧に固定することが可能となり、双方向スイッチ素子103の高い電圧側の制御端子による安定した制御が可能となる。なお、双方向スイッチ素子103の基板端子SUBを交流電圧の高い電位に近い電圧に固定する方法は別の形態を取っても良い。
【0057】
以上のように、本実施の形態における2線式交流スイッチは、III族窒化物半導体からなる双方向スイッチ素子103を用いて交流電源をスイッチングするので、従来使用されているトライアックと比較してスイッチ素子のオン抵抗によって生じる損失を大幅に低減できる為、高負荷の交流スイッチとして省電力化が図れ、種々の負荷に対して安定して動作することができる。
【0058】
以上、本発明に係る2線式交流スイッチについて、実施の形態及びその変形例を用いて説明したが、本発明は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で、これらの実施の形態及び変形例に対して当業者が思いつく種々の変形を施して得られる形態や、これらの実施の形態及び変形例を任意に組み合わせて得られる形態も、本発明に含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施の形態においては、双方向スイッチ素子103は、ゲート電極がp型半導体層(第1のP型半導体層125A及び第2のP型半導体層125B)の上に形成されたノーマリオフ型のダブルゲートの半導体素子であった。しかし、本発明に係る双方向スイッチ素子のゲートは、このような構造に限定されない。たとえば、ゲートリセスを形成したり、第2の半導体層129の膜厚を薄くしたりすることにより、ノーマリオフ特性を実現してもよい。つまり、本発明に係る双方向スイッチ素子のゲートの構造として、ゲート電極下のp型半導体に代えて絶縁層を設けることで絶縁型のゲートとしたり、ゲート電極下のp型半導体を設けることなくゲート電極と半導体積層体とがショットキー接合するような接合型のゲートとしてもよい。
【0060】
また、回路構成によっては、双方向スイッチ素子103は、ノーマリオン型のダブルゲートの半導体素子として実現することも可能である。
【0061】
また、双方向スイッチ素子103の基板については、Si基板である例を示したが、本発明はSi基板に限定されるものではない。窒化物半導体が形成できる基板であればよく、Si基板に代えて炭化珪素(SiC)基板又はサファイア基板又は他の基板としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るIII族窒化物半導体からなる双方向スイッチ素子と用いた2線式交流スイッチは、従来使用されているトライアックと比較してスイッチ素子のオン抵抗によって生じる損失を大幅に低減できる為、高負荷の交流スイッチとして省電力化が図れ、種々の負荷に対して安定して動作することができ、例えば、調光機能をもつ住宅の照明灯や換気扇の制御用の2線式交流スイッチとして有用である。
【符号の説明】
【0063】
100a、100b、100c、100d−1、100d−2、100e−1、100e−2、100f、100g 2線式交流スイッチ
101 商用交流電源
102 負荷
103 双方向スイッチ素子
104 全波整流器
105 電源回路
106 制御回路
107 第1のゲート駆動回路
108 第2のゲート駆動回路
109 外部設定部
110、111、114a、115a、116、117 抵抗
112 第1のゲート駆動回路
113 第2のゲート駆動回路
114、115 配線
118〜121 ダイオード
122A 第1のオーミック電極配線
122B 第2のオーミック電極配線
123A 第1のオーミック電極
123B 第2のオーミック電極
124A 第1のゲート電極配線
124B 第2のゲート電極配線
125A 第1のP型半導体層
125B 第2のP型半導体層
126 シリコン(Si)基板
127 バッファー層
128 第1の半導体層
129 第2の半導体層
130 保護膜
131 裏面電極
132A 第1のゲート配線
132B 第2のゲート配線
133A 第1のオーミック電極配線
133B 第2のオーミック電極配線
134A 第1のオーミック電極パッド
134B 第2のオーミック電極パッド
135A 第1のゲーと電極パッド
135B 第2のゲート電極パッド
136 活性領域
137 双方向スイッチチップ
138 ダイパッド
139〜142 ワイヤ
143 樹脂
144〜148 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源と負荷との間に接続されて用いられる2線式交流スイッチであって、
双方向に電流を流す構成を有するとともに当該電流の流れをオン又はオフするスイッチ素子であって、前記交流電源及び前記負荷と直列に接続され、かつ、前記交流電源及び前記負荷ととともに閉回路を構成する双方向スイッチ素子を備え、
前記双方向スイッチ素子は、
基板と、
前記基板上に形成され、III族窒化物半導体から構成される半導体積層体と、
前記半導体積層体に形成され、前記交流電源及び前記負荷の一方及び他方のそれぞれと電気的に接続される第1のオーミック電極及び第2のオーミック電極と、
前記半導体積層体上における、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極との間に、前記第1のオーミック電極側から順に形成された、第1のゲート電極及び第2のゲート電極とを有し、
前記2線式交流スイッチはさらに、
前記第1のオーミック電極端子と前記第2のオーミック電極端子との間に接続され、前記交流電源を全波整流する全波整流器と、
前記全波整流器から出力される全波整流後の電圧を平滑化し、直流電源を供給する電源回路と、
前記電源回路から直流電源の供給を受けるとともに、前記第1ゲート電極及び第2ゲート電極に制御信号を出力する駆動回路と、
前記電源回路から直流電源の供給を受けるとともに、前記交流電源より前記負荷に電力を与える場合には、前記駆動回路が、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極に対して、前記第1ゲート電極及び前記第2ゲート電極の閾値電圧より高い電圧をもつ制御信号を出力することによって前記双方向スイッチ素子をオン状態にさせるように、前記駆動回路を制御する制御回路とを備える
2線式交流スイッチ。
【請求項2】
前記双方向スイッチ素子がノーマリーオフ型のスイッチ素子である請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項3】
前記双方向スイッチ素子はさらに、前記第1のゲート電極と前記半導体積層体との間に、前記半導体積層体とpn接合を形成する第1の半導体層を有し、前記第2のゲート電極と前記半導体積層体との間に、前記半導体積層体とpn接合を形成する第2の半導体層を有する請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項4】
前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極が絶縁ゲート用の電極である請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項5】
前記第1のゲート電極及び第2のゲート電極が前記半導体積層体とショットキー接合を形成している請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項6】
前記双方向スイッチはさらに、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極のそれぞれとオーミック接触するp型のIII族窒化物半導体からなるゲートを有する請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項7】
前記基板がシリコン基板である請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項8】
前記基板が炭化珪素基板である請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項9】
前記基板がサファイア基板である請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項10】
前記駆動回路は、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極に、抵抗を介して前記制御信号を伝達する請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項11】
前記駆動回路は、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極に、電流もしくは定電流の前記制御信号を出力する請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項12】
前記制御回路は、前記双方向スイッチにおいて、前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極のうち、電位の高い方の第1又は第2のオーミック電極に近い第1又は第2のゲート電極に、先に前記閾値電圧より高い電圧を前記制御信号として印加し、次に他方の第2又は第1のゲート電極に、前記閾値電圧より高い電圧を記制御信号として印加することによって前記双方向スイッチ素子をオン状態にさせるように、前記駆動回路を制御する請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項13】
前記基板は、電位として、フローティングである請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項14】
前記基板は、アース接地されている請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項15】
前記基板は、ある電位に固定されている請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項16】
さらに、
前記基板に電気的に接続された基板端子と、
前記基板端子と前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極それぞれとの間に、前記基板端子から前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極に電流が流れる向きに接続された2つのダイオードと
を備える請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項17】
さらに、
前記基板に電気的に接続された基板端子と、
前記基板端子と前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極それぞれとの間に、前記第1のオーミック電極及び前記第2のオーミック電極から前記基板端子に電流が流れる向きに接続された2つのダイオードと
を備える請求項1に記載の2線式交流スイッチ。
【請求項18】
前記交流電源は、商用交流電源であり、
前記負荷は、照明器具であり、
前記2線式交流スイッチは、前記商用交流電源と前記照明器具との間に接続される請求項1に記載の2線式交流スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−176921(P2011−176921A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37957(P2010−37957)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】