説明

2重窓用内窓

【課題】既存の窓に後付けでき、気密性,断熱性,防音性,防露性に優れ、既存の窓枠の寸法精度の誤差にも対応可能な2重窓用の木製の内窓を提供する。
【解決手段】内窓は、既存の外窓に合わせて取り付けられる窓枠内で、一組の窓本体60A,60Bが引き違い式に開閉する構造であって、ガラス板を支持する額縁64は、その表面が戸枠66の表面から突出している。戸枠66の上框68及び下框70と左右の縦框72,74との継目のうち、一組の窓本体を閉めたときに表側から見えない部分となる窓本体60Aの継目を、額縁64の表面と同じ高さとなるベラ状シール材78で覆う。窓本体60Bの縦框74の背面側に、窓本体60Aの額縁64の縦縁及びベラ状シール材78と接触する隙間部材92を設け、木製サッシの構造上生じる隙間を塞ぎ気密性を高める。必要に応じて他の隙間部材を設けることで寸法誤差を吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の窓に取り付けて利用される2重窓用の内窓に関し、更に具体的には、木製の内窓による断熱性,気密性,防音性,防露性などの改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓枠と引戸の隙間を塞ぐ技術としては、例えば、下記特許文献1及び特許文献2に記載の技術がある。前記特許文献1には、可撓性材料からなる帯状のひれを、窓枠と引戸の間に設けることが開示されており、前記特許文献2には、引き違い式の左右の障子単体の召し合わせ用気密材,縦かまち用気密材,上下かまち用気密材からなる木障子用気密材が開示されている。また、下記特許文献3の内窓用木製サッシには、前記実施例2と同様の部位の気密性を保つために、気密パッキンと気密モヘアを用いた内窓用木製サッシが開示されている。
【0003】
一方、従来の木製サッシの窓本体は、例えば、図6(A)及び(B)に示すような構造となっている。同図に示すように、窓本体100は、開口部を有する木製の戸枠102に対して、木製の縁体106A,106B,108A,108B,110A,110B,112A,112Bを用いてガラス板104を固定した構造となっている。図示の例では、縁体106B,108B,110B,112Bを釘114などによって戸枠102に固定した後、ガラス板104を挟むように、縁体106A,108A,110A,112Aを釘114などによって戸枠102に固定している。このような構造では、前記縁体106A〜112A,106B〜112Bと戸枠102の間に隙間116が空くことがあり、気密性を十分に保つことができない。そこで、図6(C)及び(D)に示す窓本体120のように、ガラス板104を一組の額縁122A,122Bで両側から挟み込み、額部124A,124Bで戸枠102の開口部の縁を覆う構造も採用されている。額縁を利用した構造では、前記額部124A,124Bが、戸枠102の開口部の縁に被さるため、多少の寸法のずれが生じても隙間を隠して気密性を保つことができ、また、作り置きもでき、位置合わせも容易であることから、作業効率がよいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−131489号公報
【特許文献2】実開昭58−126392号公報
【特許文献3】特開2005−200999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記図6(C)及び(D)に示した構造の窓本体120において、上述した特許文献2又は3に示すような召し合わせ部の隙間を塞ぐための措置をとっても、前記額縁122A,122Bにより戸枠102の表面に生じた段差部分の隙間が残るため、気密性を十分に保つことができないという不都合がある。また、既存の窓に、後付けで内窓として取り付ける場合には、既存の窓枠の寸法に合わせた内窓用の窓枠に取り付けることになるが、既存の窓枠は経年により歪みが生じていることも少なくない。このような歪みが既存の窓枠に生じると、内窓用の外枠の寸法に狂いが生じ、窓本体との間に隙間が生じやすくなり、気密性を保つことが困難になるが、前記特許文献1〜3の背景技術では、前記歪み等による窓枠の寸法誤差に関する対策は何ら講じられていない。
【0006】
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、既存の窓に後付けでき、気密性,断熱性,防音性,防露性などに優れるとともに、既存の窓枠の寸法や形状の誤差にも対応可能な2重窓用の内窓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、建築物の既存の窓に取り付けられる2重窓用の内窓であって、上枠,下枠,左右の縦枠からなり、前記既存の窓の枠に合わせて取り付けられる窓枠と、上框,下框,左右の縦框からなる戸枠に対し、該戸枠の表面から突出する額部を有する額縁によってガラス板が支持されており、前記上框と左右の縦框のそれぞれの継目と、前記下框と左右の縦框のそれぞれの継目が、前記額縁の縦縁の延長上に位置するとともに、前記窓枠内で、引き違い式にスライドして開閉される一組の窓本体と、を備えており、前記一組の窓本体のうち、前記外窓側に配置される窓本体において、一組の窓本体を閉じたときに室内側に配置される窓本体と重なり合う部分の前記継目を、前記額部の高さと同じ厚みを有するベラ状シール材で覆い、前記一組の窓本体のうち、前記室内側に配置される窓本体において、一組の窓本体を閉じたときに前記外窓側の窓本体と重なり合う縦框の背面に、前記外窓側の窓本体の額縁の縦縁及び前記ベラ状シール材と接触する弾性を有する第1の隙間部材を、前記縦框の延長方向に沿って設けるとともに、前記窓枠,額縁,戸枠,ベラ状シール材が木製であることを特徴とする。
【0008】
主要な形態の一つは、前記上枠及び下枠には、前記一組の窓本体がそれぞれ独立してスライドするための2列の溝がそれぞれ平行に形成されており、前記上枠の2列の溝間であって、前記一組の窓本体を閉じたときに、前記第1の隙間部材の真上となる位置に設けられた弾性を有する第2の隙間部材と、前記下枠の2列の溝間であって、前記一組の窓本体を閉じたときに、前記第1の隙間部材の真下となる位置に設けられた繊維体からなる第3の隙間部材と、を備えたことを特徴とする。好ましくは、前記第2の隙間部材を構成する繊維体が、モヘアであることを特徴とする。
【0009】
他の形態は、前記一組の窓本体を閉じたときの戸枠の上下左右の縁部のうち、少なくともいずれかの縁部と、前記窓枠との間に、弾性を有する第4の隙間部材を、前記各縁部の延長方向に沿って設けたことを特徴とする。更に他の形態は、前記戸枠の左右の縁部と前記窓枠の間に設けられる第4の隙間部材を、前記窓枠の左右の縦枠に設けた戸当たり部側に取り付けたことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明の内窓は、既存の窓に合わせて取り付けられる窓枠内で、引き違い式に開閉する一組の窓本体が、ガラス板を戸枠に固定するための額縁の表面が前記戸枠の表面から突出する構造であって、前記戸枠を構成する上框及び下框と左右の縦框のそれぞれの継目のうち、一組の窓本体を閉めたときに表側から見えない部分の継目を、前記額縁の表面と同じ高さとなるようにベラ状シール材で覆う。また、ベラ状シール材を設けていない方の窓本体の縦框には、他方の窓本体の額縁の縦縁及びベラ状シール材と接触する弾性を有する隙間部材を設ける。そして、必要に応じて、前記隙間部材の上下や、戸枠と窓枠の間にも他の弾性を有する隙間部材を設けることとしたので、木製サッシの構造上生じる隙間を塞ぎ、気密性,断熱性,防音性,防露性などを改善することができるという効果が得られる。また、既存の窓枠に取り付ける際に、前記窓枠側に寸法や形状の誤差が生じていても、前記隙間部材によって誤差を吸収するため施工が可能となり、窓本体の取り付け後は、気密性等も良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1の全体構成を示す外観斜視図である。
【図2】前記実施例1の木製サッシの窓本体の構造を示す外観斜視図である。
【図3】前記実施例1の断面図であり、(A)は前記図1の内窓を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た端面図,(B)は前記図1の内窓を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
【図4】前記実施例1を示す図であり、(A)及び(B)は手前側の窓本体の取付の様子を示す正面図,(C)は前記(B)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た端面図である。
【図5】前記実施例1の内窓と外窓のガラス中央部の表面温度の測定結果を示す図である。
【図6】背景技術の木製サッシの窓本体の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
最初に、図1〜図5を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。図1は、本実施例の全体構成を示す斜視図,図2は、本実施例の木製サッシの窓本体の構造を示す外観斜視図である。図3(A)は、前記図1の内窓を#A−#A線に沿って切断し矢印方向に見た端面図,図3(B)は前記図1の内窓を#B−#B線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図4(A)及び(B)は本実施例の手前側の窓本体の取付の様子を示す正面図,図4(C)は前記(B)を#C−#C線に沿って切断し矢印方向に見た端面図であり、図1の#C−#C線切断端面図にも相当する。図5については、後述する。図1に示すように、本実施例の内窓20は、建築物の既存の窓を外窓12として、屋内側に後付けすることにより、2重窓10を構成するものである。前記外窓12は、窓枠14内で、2枚の窓本体16及び18が引き違い式に開閉するもので、例えば、前記窓枠14はアルミ製であり、窓本体16及び18は、ガラス板をアルミ製の戸枠で支持したアルミサッシである。
【0014】
前記内窓20は、木製の窓枠(ないし窓枠)22の内側で、一組の窓本体60A及び60Bが引き違い式に開閉する構造となっており、図示の例では、窓本体60Aが奥側(外窓12側),窓本体60Bが手前側(室内側)に設置されている。窓本体60Aと窓本体60Bの構造は、一部分を除いて同じである。前記窓枠22は、上枠(ないし鴨居)24と、下枠(ないし敷居)34と、右側の縦枠44と、左側の縦枠50から構成されており、前記外窓12の窓枠14に合わせて取り付けられる。該窓枠22は、例えば、スギやヒノキなどの木材を利用した木製である。
【0015】
前記上枠24には、図3(A)に示すように、前記一組の窓本体60A,60Bが、それぞれ独立してスライドするための2本の溝26A,26Bが略平行に形成されており、これら溝26A,26Bには、カバー28A,28Bが設けられている。前記溝26Aと溝26Bの間の中間部30には、図4(A)〜(C)に示すように、前記窓本体60Aの右側の縦框72と、窓本体60Bの左側の縦框74の重なり合う位置に、弾性を有する隙間部材32が設けられている。図示の例では、前記隙間部材32は、一対の折り曲げ部32A,32Bを有している。また、前記下枠34にも、図3(A)に示すように、前記一組の窓本体60A,60Bのための2本の溝36A,36Bが略平行に形成されており、これら溝36A,36Bには、カバー38A,38Bが設けられている。前記溝36Aと溝36Bの間の中間部40には、図4(A)〜(C)に示すように、前記隙間部材32と対応する位置に、繊維体からなる隙間部材42が設けられている。本実施例では、前記隙間部材42を構成する繊維体として、モヘアを利用している。
【0016】
また、前記窓枠22の右側の縦枠44側には、図3(B)に示すように、手前側の窓本体60Bを閉めたときに、該窓本体60Bの右側の縦框72との隙間を遮断して気密性を高めるための弾性を有する隙間部材48が設けられている。該隙間部材48は、前記縦枠44に設けられた戸当たり46の溝46Aに、一方の縁部48Aが嵌め込まれ、他方の縁部48Bが窓本体60Bの縦框72と接触するように屈曲した形状となっている。更に、前記窓枠22の左側の縦枠50側には、図3(B)に示すように、奥側の窓本体60Aを閉めたときに、該窓本体60Aの左側の縦框74との隙間を遮断して気密性を高めるための弾性を有する隙間部材54が設けられている。該隙間部材54は、前記縦枠50に設けられた戸当たり52の溝52Aに、一方の縁部54Aが嵌め込まれ、他方の縁部54Bが窓本体60Aの縦框74と接触するように屈曲した形状となっている。
【0017】
次に、窓本体60A,60Bの構造について説明する。まず、奥側(外窓12側)に配置される窓本体60Aについて説明すると、該窓本体60Aは、ガラス板62の周囲縁部を額縁64が支持しており、該額縁64を、上框68,下框70,右側の縦框72,左側の縦框74からなる戸枠66に固定した構造となっている。前記額縁64によるガラス板62の支持の手法については、上述した背景技術で示した図6(C)及び(D)の例と同様であり、前記額縁64の表面は、前記戸枠66の表面66Aから突出している。額縁64で支持する構造とすると、ガラス板62が破損等したときに、サッシ全体を交換することなく、ガラス板62のみを容易に交換することができる。このような戸枠66は、図2に示すように、上框68と左右の縦框72,74との間にそれぞれ継目76が生じ、下框70と左右の縦框72,74との間にもそれぞれ継目76が生じる。これら継目76は、前記額縁64の縦縁の延長上に位置している。本発明では、前記窓本体60Aの右側の縦框72と上框68との継目76と、縦框72と下框70の間の継目76を、前記額縁64の突出部分の高さと同じ厚みを有するベラ状シール材78で覆っている。すなわち、図1に示すように窓本体60Aと窓本体60Bを閉めたときに見えなくなる部分の継目76のみをベラ状シール材78で覆うこととしている。前記額縁64,戸枠66,ベラ状シール材78も、前記窓枠22と同様に木製である。
【0018】
また、前記戸枠66の上方には、図2及び図3(A)に示すように、前記上枠24の溝26Aに沿ってスライドするための凸部80が形成されており、該凸部80の側面80Bには、弾性を有する断面略V字状の隙間部材84が、戸枠66の上縁に沿って設けられている。該隙間部材84によって、窓本体60Aと上枠24の間に生じる隙間82を、前記凸部側面80B側で遮断している。一方、前記戸枠66の下方には、図3(A)に示すように、前記下枠34の溝36Aに沿ってスライドするための凸部86が形成されている。該凸部86の底面86Aには戸車87が設けられている。
【0019】
手前側(室内側)の窓本体60Bは、基本的な構造は、上述した奥側の窓本体60Aと同じであるが、継目76にはベラ状シール材は設けられていない。また、窓本体60Aと窓本体60Bを閉じたときに、これらの戸枠の重なり合う位置に生じる隙間96を遮断するための隙間部材92が、図2及び図3(B)に示すように、前記手前側の窓本体60Bの左側の縦框74の背面に設けられている。前記隙間部材92は、弾性を有しており、本実施例では、前記縦框74の背面に設けた溝67に、取付部92Aを嵌め込むことで、厚みを有する本体部92Bが、前記縦框74の延長方向に沿うように設けられる。前記隙間部材92は、窓本体60A,60Bを閉めたときに、前記本体部92Bが、前記窓本体60Aの額縁64の右側の縦縁と、その上下に設けたベラ状シール材78と接触する位置に設けられている。また、前記隙間部材92の真上には、前記上枠24の隙間部材32が位置し、隙間部材92の真下には、前記下枠34の隙間部材42が位置している。これにより、窓本体60A,60Bを閉めたときに、窓本体60Aの右側の縦框72と、窓本体60Bの左側の縦框74の間に生じる隙間96と室内側を遮断して、気密性を高めることができる。
【0020】
以上のような一組の窓本体60A,60Bは、図4(C)に示すように、まず、奥側の窓本体60Aを、凸部80が上枠24の溝26Aに入るように斜めに差込んでから垂直に立て、底面側の凸部86を、下枠34の溝36Aに嵌めるように窓本体60Aを下す(図4(A)も参照)。次に、手前側の窓本体60Bを、上側の凸部80が上枠24の溝26Bに入るように斜めに差し込む。そして、窓本体60Bを垂直に立てながら、段部底面80Cによって、前記隙間部材32の一対の折り曲げ部32A,32Bを取付側32Cに押し付けながら、下側の凸部86が下枠34の溝36B上に位置するように完全に垂直に立てる。このように位置合わせをしたら、凸部86が溝36Bに嵌るように窓本体60Bを下す。すると、上側の段部底面80Cと上枠24の隙間が隙間部材32の折り曲げ部32A,32Bの形状復元により遮断され、下側の段部上面88と下枠34の隙間が、前記隙間部材42により遮断される。
【0021】
前記外窓12の窓枠14は、本実施例ではアルミフレームが用いられているが、経年により歪みが生じて傾き等が生じるおそれがある。例えば、窓枠14の寸法の狂いにより、内窓20の窓枠22の上枠24の寸法が狂い、窓本体60A,60Bの位置が多少ずれたとしても、前記隙間部材84で上側の気密性を保つことができる。また、窓枠14の寸法の狂いにより、内窓20の窓枠22の縦枠44,50の寸法が狂い、窓本体60A,60Bの位置がずれて戸先に隙間が生じたとしても、前記隙間部材48,54により気密性が保たれる。更に、これら2枚の窓本体60A,60Bを閉じたときに重なり合う部分(召し合わせ部)については、窓本体60Aに設けたベラ状シール材78及び額縁64の縦縁に、窓本体60Bに設けた隙間部材92が接触することで、前記窓枠66の寸法誤差にも対応して気密性を保つことができる。なお、前記隙間部材92の上下に設けた隙間部材32,42についても、前記歪み等による寸法や形状の誤差の吸収に有効である。なお、下側の隙間部材42として繊維体を利用するのは、切断により容易に長さ調節ができるためである。
【0022】
次に、本実施例の性能確認実験について説明する。
<結露観察>・・・まず、本実施例と比較例を用いて、結露実験を行った。比較例としては、実施例の額縁64に相当する部分がなく、かつ、隙間部材48,54,84を設けておらず、戸先に公知のスポンジ状の弾性体を設けた構造の窓を使用した。実験は、室内を加湿し、外窓12の結露状況を目視により観察し、その結露状況を記録した。観察は、午後3:30に1回目を行い、2回目以降は、午後8:30まで一時間おきに行った。結果を、下記表1に示す。
【表1】

【0023】
表1に示すように、比較例では、室内湿度が70%になった頃から結露が生じ始め、測定開始から5時間後には全面が結露したのに対し、本実施例では、実験開始から終了まで結露は観察されず、気密性があり、防露性を有することが確認された。すなわち、外窓12の窓本体16,18の外気温の影響による室内側の結露を防ぐことができるため、カビの発生も防止可能となり、住居の衛生面や耐久性の面でも有効性が高いと考えられる。
【0024】
<気密性実験>・・・次に、気密性の有無を目視により観察する実験を行った。具体的には、外窓12の左側の窓本体16を10cmほど開けておいて、外窓12と内窓20の間に煙を炊き、室内の換気扇を回したときの煙の流れを観察した。すると、内窓20の右側の窓本体60Bを10cm開けた状態では、煙は右側に流れて室内に入り、内窓20を閉めると煙はまっすぐに上昇した。すなわち、内窓のみで十分な気密性が確保できることが確認された。
【0025】
<騒音測定>・・・次に、防音性の試験を行った。外窓12及び内窓20ともに全開にした状態で、自動車の音が聞こえる室内で騒音レベルを測定すると69dBであったのに対し、外窓12のみを閉めた状態では騒音レベルは50dB,外窓12と内窓20をともに閉めた状態での騒音レベルは41dBであった。この結果から、内窓20のみで騒音レベルが9dB低下することが確認された。騒音は、10dB下がると半減したと感じられ、また、騒音レベルの40dBというのは、一般的に「静かな公園」の騒音数値と言われていることから、外窓12に加えて内窓20を閉めることで、十分な防音効果を得ることができることが確認された。
【0026】
<温度測定>・・・次に、断熱効果を確認するために温度測定実験を行った。実験は、赤外線レーザーを用い、外窓12のガラス中央部と、内窓20のガラス中央部の温度を計測した。これらの温度測定の結果と、天候,外部温度(℃),室内温度(℃)などの変化を示したものが図5に示されている。同図に示すように、全体的に、内窓20のガラス中央部の温度は、外窓12のガラス中央部の温度よりも変化が少ない。また、10月16日や11月5日の結果に示すように、外窓12のガラス温度が非常に高温になるときでも、内窓20のガラス温度は、それよりも約10℃程度低い状態を保っていた。逆に、10月30日の結果に示すように、外部温度よりも室内温度が高いときには、外窓12の温度よりも内窓20の温度の方が高い数値を示している。これは、外窓12と内窓20の間に形成される空気層が、外部と内部の熱の伝導を低下させて断熱性を発揮しているものと考えられる。なお、本実施例の内窓20を既存の窓に後付けすることで、室外と室内の熱貫流率のK値は、ガラス中央部で4.00W/m・K以下となる。この数値は、次世代省エネルギー基準対応地域区分のIV及びVに適合する値である。
【0027】
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)既存の外窓12に合わせて取り付けられる窓枠22内で、引き違い式に開閉する一組の窓本体60A,60Bが、ガラス板62を戸枠66に固定するための額縁64の表面が前記戸枠66の表面から突出する構造であって、前記戸枠66を構成する上框68と左右の縦框72,74との継目と、下框70と左右の縦框72,74との継目76のうち、一組の窓本体60A,60Bを閉めたときに表側から見えない部分の継目76を、前記額縁64の表面の高さと同じ厚みを有するベラ状シール材78で覆う。また、ベラ状シール材78を設けていない窓本体60Bの縦框74の背面側には、前記窓本体60Aの額縁64の縦縁及びベラ状シール材78と接触する弾性を有する隙間部材を設けることとしたので、木製サッシの構造上生じる隙間を塞ぎ、気密性,断熱性,防音性,防露性などを改善することができる。
【0028】
(2)窓枠12を構成する上枠24に平行に形成された2列の溝26A、26Bの間であって、一組の窓本体60A,60Bを閉めたときに前記隙間部材92の真上となる位置に弾性を有する隙間部材32を設け、下枠34に平行に形成された2列の溝36A,36Bの間であって、前記一組の窓本体60A,60Bを閉めたときに前記隙間部材92の真下となる位置には、繊維体からなる隙間部材42を設けることとした。このため、既存の窓枠14に取り付ける際に、寸法や形状の誤差が生じていても、前記上枠24側の隙間部材32と、下枠34側の隙間部材42によって前記誤差を吸収するため、既存の窓の寸法誤差に対応する施工が可能となり、サッシの取付後は、前記隙間部材92の上下部分の気密性等を良好に保つこともできる。
【0029】
(3)前記戸枠66と窓枠22の間に弾性を有する隙間部材48,54,84を設けることとしたので、窓本体60A,60Bと窓枠14の間の隙間を遮断し、更に気密性,断熱性,防音性,防露性などを高めることができる。
(4)内窓20を構成する窓枠22,額縁64,戸枠66,ベラ状シール材78を木製としたので、従来の樹脂やアルミサッシの内窓と比べて、木材による温かみのある質感を与えることができ、省資源にも貢献できる。
【0030】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。
(2)内窓20に使用する木材も、スギやヒノキのほか、他の公知の各種の木材を用いてよい。また、その木目の色調についても、部屋の内装などに応じて適宜変更してよい。
(3)前記実施例で示した隙間部材32,42も一例であり、同様の効果を奏する範囲内で、素材や形状を適宜変更してよい。例えば、前記実施例では、隙間部材42を構成する繊維体としてモヘアを利用することとしたが、他の繊維体を用いることを妨げるものではない。他の隙間部材48,54,84,92についても、同様の効果を奏するものであれば、公知の各種の隙間部材を用いてよい。
(4)前記実施例では、戸当たり46,52側に、縦枠44,50と、サッシの縦框72,74の隙間を塞ぐ隙間部材48,54を設けることとしたが、窓本体60A,60B側の戸先以外の部分に同様の効果を奏する隙間部材を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明によれば、窓枠内で引き違い式に開閉する一組の窓本体が、ガラス板を戸枠に固定するための額縁の表面が前記戸枠の表面から突出する構造であって、前記戸枠を構成する上框及び下框と左右の縦框のそれぞれの継目のうち、一組の窓本体を閉めたときに表側から見えない部分の継目を、前記額縁の表面と同じ高さとなるようにベラ状シール材で覆う。また、ベラ状シール材を設けていない方の窓本体の縦框には、他方の窓本体の額縁の縦縁及び前記ベラ状シール材と接触する弾性を有する隙間部材を設ける。そして、必要に応じて、前記隙間部材の上下や、戸枠と窓枠の間にも他の隙間部材を設けて気密性等を高めることとしたので、2重窓用の木製の内窓の用途に適用できる。特に、前記隙間部材により、既存の窓枠の寸法や形状の誤差を吸収するため、後付け用の2重窓用内窓の用途に好適である。
【符号の説明】
【0032】
10:2重窓
12:外窓
14:窓枠
16,18:窓本体
20:内窓
22:窓枠
24:上枠(鴨居)
26A,26B:溝
28A,28B:カバー
30:中間部
32:隙間部材
32A,32B:折り曲げ部
32C:取付側
34:下枠(敷居)
36A,36B:溝
38A,38B:カバー
40:中間部
42:隙間部材
44:縦枠
46:戸当たり
46A:溝
48:隙間部材
48A,48B:縁部
50:縦枠
52:戸当たり
52A:溝
54:隙間部材
54A,54B:縁部
60A,60B:窓本体
62:ガラス板
64:額縁
66:戸枠
66A:表面
66B:背面
67:溝
68:上框
70:下框
72,74:縦框
76:継目
78:ベラ状シール材
80:凸部
80A:上面
80B:側面
80C:段部底面
82:隙間
84:隙間部材
86:凸部
86A:底面
87:戸車
92:隙間部材
92A:取付部
92B:本体部
96:隙間
100:窓本体
102:戸枠
104:ガラス板
106A,106B,108A,108B,110A,110B,112A,112B:縁体
114:釘
116:隙間
120:窓本体
122A,122B:額縁
124A,124B:額部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の既存の窓に取り付けられる2重窓用の内窓であって、
上枠,下枠,左右の縦枠からなり、前記既存の窓の枠に合わせて取り付けられる窓枠と、
上框,下框,左右の縦框からなる戸枠に対し、該戸枠の表面から突出する額部を有する額縁によってガラス板が支持されており、前記上框と左右の縦框のぞれぞれの継目と、前記下框と左右の縦框のそれぞれの継目が、前記額縁の縦縁の延長上に位置するとともに、前記窓枠内で、引き違い式にスライドして開閉される一組の窓本体と、
を備えており、
前記一組の窓本体のうち、前記外窓側に配置される窓本体において、一組の窓本体を閉じたときに室内側に配置される窓本体と重なり合う部分の前記継目を、前記額部の高さと同じ厚みを有するベラ状シール材で覆い、
前記一組の窓本体のうち、前記室内側に配置される窓本体において、一組の窓本体を閉じたときに前記外窓側の窓本体と重なり合う縦框の背面に、前記外窓側の窓本体の額縁の縦縁及び前記ベラ状シール材と接触する弾性を有する第1の隙間部材を、前記縦框の延長方向に沿って設けるとともに、
前記窓枠,額縁,戸枠,ベラ状シール材が木製であることを特徴とする2重窓用内窓。
【請求項2】
前記上枠及び下枠には、前記一組の窓本体がそれぞれ独立してスライドするための2列の溝がそれぞれ平行に形成されており、
前記上枠の2列の溝間であって、前記一組の窓本体を閉じたときに、前記第1の隙間部材の真上となる位置に設けられた弾性を有する第2の隙間部材と、
前記下枠の2列の溝間であって、前記一組の窓本体を閉じたときに、前記第1の隙間部材の真下となる位置に設けられた繊維体からなる第3の隙間部材と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の2重窓用内窓。
【請求項3】
前記第3の隙間部材を構成する繊維体が、モヘアであることを特徴とする請求項2記載の2重窓用内窓。
【請求項4】
前記一組の窓本体を閉じたときの戸枠の上下左右の縁部のうち、少なくともいずれかの縁部と、前記窓枠との間に、弾性を有する第4の隙間部材を、前記各縁部の延長方向に沿って設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の2重窓用内窓。
【請求項5】
前記戸枠の左右の縁部と前記窓枠の間に設けられる第4の隙間部材を、前記窓枠の左右の縦枠に設けた戸当たり部側に取り付けたことを特徴とする請求項4記載の2重窓用内窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−14978(P2013−14978A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149714(P2011−149714)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(507059037)加藤木材工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】