説明

2,4,5−トリアリール置換イミダゾール化合物及び1,2,4,5−テトラアリール置換イミダゾール化合物

式(1)で表されるイミダゾール化合物は、青色発光効率が高く、かつ、安定であるため、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機太陽電池用の発光材料として好適である。


(式中、R1はフェニル基等を表し、R2は水素原子等を表し、R3、R4、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子等を表し、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基等を表す。但し、R5〜R9のうち少なくとも一つは水素原子以外の置換基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アリール置換イミダゾール化合物に関し、さらに詳述すると、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光材料等として好適な2,4,5−トリアリール置換イミダゾール化合物及び1,2,4,5−テトラアリール置換イミダゾール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面型光源としては、無機エレクトロルミネッセンス素子が使用されてきた。この無機エレクトロルミネッセンス素子は、それを駆動させるために交流高電圧が必要である上、青色発光が難しいことから、RGBの三原色によるフルカラー化が困難である。
一方、有機材料を用いたエレクトロルミネッセンス素子についても、これまで様々な検討が行われてきている。例えば、蛍光性有機化合物として単結晶アントラセン等を用いた素子(特許文献1参照)、正孔輸送層と発光層とを組み合わせた素子(特許文献2参照)、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とを組み合わせた素子(非特許文献1参照)等が報告されている。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子の発光材料は、エネルギー変換効率、発光効率及び化合物の安定性が求められる。また、フルカラーディスプレイ用の場合、三原色を構成する赤、緑、青それぞれの発光材料が必要となる上、それぞれの色純度が問題となる。
特に、従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光材料は、赤色発光の発光効率が悪いため、さらなる改善が必要とされている。
【0004】
この赤色発光効率を改善すべく、有機発光材料からの青色又は青緑色の発光を、蛍光色素で色変調して赤色発光を得る有機エレクトロルミネッセンス素子(特許文献4参照)が開示されている。しかし、青又は青緑を吸収し、赤色に蛍光を持つ色素は少なく、青から赤色への色変換を複数の色素で段階的に行う必要があるため、この場合も発光効率に問題がある。
また、青紫領域の発光材料と、青紫領域の光を吸収する蛍光色素とを組み合わせた有機エレクトロルミネッセンス素子(特許文献5参照)も開示されている。この素子では、青紫領域に吸収を有する蛍光色素を用いることができるため、赤色への一段階変換が可能となり、変換効率を高めることができる。しかし、この青紫領域の有機発光材料は、それ自体の発光効率に課題があった。
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,530,325号明細書
【特許文献2】特開昭59−194393号公報
【特許文献3】特開昭63−295695号公報
【特許文献4】特開平3−152897号公報
【特許文献5】特開2001−76878号公報
【非特許文献1】「ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックス(Jpn. J. Appl. Phys.)」、日本、社団法人 応用物理学会、1988年、第27巻、p.L269−L271
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、青色発光効率が高く、かつ、安定な有機発光材料となり得るアリール置換イミダゾール化合物及びその使用、並びに当該イミダゾール化合物を含む有機薄膜層を備える有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機太陽電池素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記式(1)で示されるアリール置換イミダゾール化合物が、青色発光効率が高く、かつ、安定であるため、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機太陽電池用の有機発光材料として好適であることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 式(1)で表されるイミダゾール化合物、
【化1】

{式中、R1は、フェニル基、ナフチル基又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、フッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、フッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基(該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。]を表し、R2は、水素原子、フェニル基、又はナフチル基(該フェニル基及びナフチル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基で任意に置換されていてもよい。)を表し、R3、R4、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基を表し、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基を表す。但し、R5〜R9のうち少なくとも一つは水素原子以外の置換基を表す。}
2. 前記R1が、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、トリフルオロメチル基、又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はハロゲン原子、シアノ基、メチル基、フェニル基、又はビフェニル基(該フェニル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基)で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。]である1のイミダゾール化合物、
3. 前記R2が、水素原子又はフェニル基(該フェニル基はシアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基で任意に置換されていてもよい。)である1のイミダゾール化合物、
4. 前記R3、R4、R10及びR11が、水素原子であり、前記R5、R6、R7、R8及びR9が、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基である(但し、R5〜R9のうち少なくとも一つは水素原子以外の置換基を表す。)1のイミダゾール化合物、
5. 前記R1が、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はシアノ基、又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はフェニル基又はビフェニル基(該フェニル基及びビフェニル基はジフェニルアミノ基で任意に置換されていてもよい)で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。]であり、R2が、水素原子又はフェニル基であり、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10及びR11が、水素原子であり、R7がメトキシ基又はジフェニルアミノ基である請求項1記載のイミダゾール化合物、
6. 1〜5のいずれかに記載のイミダゾール化合物の発光材料への使用、
7. 陰極及び陽極と、これら各極間に介在する有機薄膜層とを備え、この有機薄膜層が、1〜5のいずれかに記載のイミダゾール化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子、
8. 陰極及び陽極と、これら各極間に介在する有機薄膜層とを備え、この有機薄膜層が、1〜5のいずれかに記載のイミダゾール化合物を含む有機太陽電池素子
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高い青色蛍光強度を有し、安定な2,4,5−トリアリール置換イミダゾール化合物及び1,2,4,5−テトラアリール置換イミダゾール化合物を提供することができる。
これらのイミダゾール化合物を発光材料として用いることで、省電力で面状発光するフレキシブル有機エレクトロルミネッセンス素子を得ることができる。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光光源、照明装置、表示デバイスとして好適に用いることができる。
また、上記イミダゾール化合物は、これを含む有機薄膜層を陰極と陽極との間に備えた有機太陽電池素子として応用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。まず、各置換基を具体的に説明する。
式(1)中、R1は、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、フッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、フッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基(該フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、又は炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。]を表す。
【0011】
具体的には、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、及びイソプロピルオキシ基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノーマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノーマルペンチル基、アミル基、イソアミル基、ターシャリーアミル基、ネオペンチル基、ノーマルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等が挙げられる。
フッ素原子又は塩素原子で任意に置換されてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、及び2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0012】
好ましくは、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、トリフルオロメチル基、又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はハロゲン原子、シアノ基、メチル基、フェニル基、又はビフェニル基(該フェニル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基)で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。]であり、より好ましくは、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基は、シアノ基、ジフェニルアミノ基、又はイミダゾール基(該イミダゾール基はジアミノフェニル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。]である。
【0013】
式(1)中、R2は、水素原子、フェニル基、又はナフチル基(該フェニル基及びナフチル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基で任意に置換されていてもよい。)を表す。
具体的には、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、及びイソプロピルオキシ基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノーマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノーマルペンチル基、アミル基、イソアミル基、ターシャリーアミル基、ネオペンチル基、ノーマルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等が挙げられる。
【0014】
フッ素原子又は塩素原子で任意に置換されてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、及び2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等が挙げられる。
好ましくは、水素原子、又はフェニル基(該フェニル基はシアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基で任意に置換されていてもよい。)であり、より好ましくは、水素原子又は置換されていないフェニル基である。
【0015】
式(1)中、R3、R4、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基を表す。
具体的には、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、及びイソプロピルオキシ基が挙げられる。
【0016】
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノーマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノーマルペンチル基、アミル基、イソアミル基、ターシャリーアミル基、ネオペンチル基、ノーマルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等が挙げられる。
フッ素原子又は塩素原子で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基としてはトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、及び2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは、水素原子である。
【0017】
式(1)中、R5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3からなるアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基(但し、R5〜R9のうち少なくとも一つは水素原子以外の置換基を表す。)を表す。
【0018】
具体的には、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
炭素数1〜3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、及びイソプロピルオキシ基が挙げられる。
炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ノーマルブチル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ターシャリーブチル基、ノーマルペンチル基、アミル基、イソアミル基、ターシャリーアミル基、ネオペンチル基、ノーマルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、及びデシル基等が挙げられる。
フッ素原子又は塩素原子で任意に置換されてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2,2−ペンタフルオロエチル基、及び2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基等が挙げられる。
好ましくは、水素原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、より好ましくは、R5、R6、R8及びR9は水素原子、R7はメトキシ基又はジフェニルアミノ基である。
【0019】
式(1)で示される化合物の中でも、R3、R4、R10及びR11が水素原子であり、R5、R6、R7、R8及びR9が、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基である(但し、R5〜R9のうち少なくとも一つは水素原子以外の置換基を表す。)イミダゾール化合物が好適である。
特に、式(1)中、R1がフェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はシアノ基、又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はフェニル基又はビフェニル基(該フェニル基及びビフェニル基はジフェニルアミノ基で任意に置換されていてもよい〉で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。]、R2が水素原子又はフェニル基、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10及びR11が水素原子、R7がメトキシ基又はジフェニルアミノ基であるイミダゾール化合物が好ましい。
【0020】
次に、本発明の式(1)で示される化合物の合成法について説明する。式(1)で示される化合物は、以下のスキームに示される方法で合成できる。具体的には、ベンゾイル体(A)、アルデヒド体(B)及びアミン体(C)を、酢酸アンモニウム存在下、酢酸溶液中で加熱還流することにより、目的とするイミダゾール化合物(1)を得ることができる。
【0021】
【化2】

【0022】
上記イミダゾール化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子や有機太陽電池素子などの発光材料として好適に用いることができる。
具体的には、陰極及び陽極と、これら各極間に介在する有機薄膜層とを備える有機エレクトロルミネッセンス素子や有機太陽電池において、この有機薄膜層として上述のイミダゾール化合物を含む層を用いる。
この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子では、陽極から正孔が、陰極から電子が薄膜層に注入され、それらが有機分子上で再結合することによりエネルギーが得られ、その結果、発光することとなる。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光光源、照明装置、表示デバイスなどに応用できる。
なお、有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機太陽電池の陰極、陽極、及び有機薄膜層を構成するその他の材料などは、公知のものから適宜選択して用いればよい。また、上記各素子は、陰極と有機薄膜層との間に電子輸送材料を含む電子輸送層を備えていてもよく、陽極と有機薄膜層との間に正孔輸送材料を含む正孔輸送層を備えていてもよい。これらの電子輸送材料や正孔輸送材料も公知の材料を適宜用いればよい。
【実施例】
【0023】
次に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
実施例で得られた化合物は、それぞれ融点(mp)、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴法(1H NMR、13C NMR)、質量分析法(EI-MS,FAB-MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び紫外・可視分光法(UV-Vis)を用いて、同定した。また、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率は、電流と輝度で表され、その効率は、発光材料を含む薄膜中の電荷の注入、移動度、電荷の再結合割合、発光材料の蛍光量子収率が影響する。以下の実施例ではこれらのうち蛍光量子収率を用いて各化合物の評価を行った。
実施例にて採用した分析条件等は、下記の通りである。なお、その他の分析条件は、実施例中にも記載している。
【0024】
(A)1H NMR (270 MHz)及び13C NMR (67.8 MHz)測定条件:
装置:JEOL JNM-EX 270
測定溶媒:DMSO-d6、又はCDCl3
基準物質:テトラメチルシラン(TMS) (δ 0.0 ppm for 1H and 13C)
(B)1H NMR (90 MHz) 測定条件:
装置:JEOL JNM-EX 90
測定溶媒:DMSO-d6
基準物質:テトラメチルシラン(TMS) (δ 0.0 ppm for 1H)
(C)IR測定装置:JASCO FT/IR-7000
(D)UV/Vis測定装置:JASCO 220A
(E)EI-MS測定装置:JEOL JMS-AX500
(F)FAB-MS測定装置:JEOL JMS-70
(G)融点測定装置:Yanaco MP-J3
【0025】
[1]イミダゾール化合物の合成
[実施例1] 4,5−ビス(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾールの合成
【化3】

(式中、Meはメチル基を表す。)
【0026】
酢酸アンモニウム(0.62g,8.0mmol)、ベンズアルデヒド(0.14g,1.3mmol)、及び4,4’−ビス(4−メトキシフェニル)ベンジル(0.42g,1.0mmol)を、酢酸(10mL)に順に加え、4時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を水(50mL)に加えた後、析出した沈殿をろ取し、それを水(40mL×3)で洗浄し吸引ろ過した。ろ取した白色固体(0.54g)をカラムクロマトグラフィー(BW−300)に付し、ベンゼンで溶出後、活性炭で脱色した。得られた白色固体(0.42g,82%)をTHF−シクロヘキサン(1/3)から再結晶することにより、表題化合物(0.39g,76%,mp240−241℃)を淡緑色針状晶として得た。
【0027】
淡緑色針状晶[THF-シクロヘキサン (1/3)]; mp 240-241 ℃.
IR (KBr) 3360 (NH), 3006, 2838 (CH), 1605, 1491, 1460 (C=C), 1243, 1038 (C-O), 824, 698 cm-1 (CH).
1H NMR (90MHz, DMSO-d6) δ 3.79, 3.80 (each 3H, s, O-CH3), 7.00, 7.04 (each 2H, d, J = 8.8 Hz, 7"-H), 7.25-7.92 (15H, m, Ar-H), 8.00-8.24 (2H, m, Ar-H), 12.72 (1H, br s , NH).
EI-MS m/z (rel. int., %) 508 (M+, 100), 493 ([M-CH3]+, 10), 464 (4), 421 (2), 254 (14), 211 (4), 152 (3).
HPLC(ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.60 min.
UV-Vis (CH2Cl2, 1.0×10-5 mol/L, 24 ℃) λmax, nm (ε) 323 (44650).
【0028】
[実施例2] 4,5−ビス(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−2−(4−シアノ−フェニル)−1H−イミダゾールの合成
【化4】

(式中、Meはメチル基を表す。)
【0029】
酢酸アンモニウム(0.40g,5.0mmol)、4−シアノベンズアルデヒド(0.14g,1.3mmol)、及び4,4’−ビス(4−メトキシフェニル)ベンジル(0.42g,1.0mmol)を、酢酸(15mL)に順に加え、4時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を水(30mL)に加えた後、析出した沈殿をろ取し、それを水(50mL×4)で洗浄し吸引ろ過した。ろ取した黄色固体(0.52g,97%,mp263−265℃)をカラムクロマトグラフィー(BW−300)に付し、ベンゼン−酢酸エチル(5/1)溶出分より黄色固体(0.50g,94%,mp265−266℃)を得た。これを酢酸エチルから再結晶することにより、表題化合物(0.14g,26%,mp265−266℃)を黄色針状晶として得た。
【0030】
黄色針状晶(酢酸エチル); mp 265-266 ℃.
IR (KBr) 3316 (NH), 3040, 2836 (CH), 2230 (C≡N), 1607, 1504, 1493 (C=C), 1251, 1038 (C-O), 824 cm-1 (CH).
1H NMR (270MHz, DMSO-d6) δ 3.79, 3.81 (each 3H, s, O-CH3), 7.00 (2H, d, J = 8.9 Hz, 7"-H), 7.04 (2H, d, J = 9.3 Hz, 7"-H), 7.54-7.77 (12H, m, Ar-H), 7.94, 8.28 (each 2H, d, J = 8.4 Hz, 2', 3'-H), 13.03 (1H, br s, NH).
13C NMR (67.8MHz, DMSO-d6) δ 55.06 (O-CH3), 109.97, 114.28, 118.83 (CN), 125.42, 125.82, 126.14, 127.53, 128.82, 129.32, 131.50, 131.93, 132.68, 133.08, 134.16, 137.81, 137.93, 139.14, 143.74, 158.74, 159.01.
EI-MS m/z (rel. int., %) 533 (M+, 100), 518 ([M-CH3]+, 13), 489 (5), 446 (3), 195 (3), 138 (5).
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.75 min.
UV-Vis (CH2Cl2, 1.0×10-5 mol/L, 24 ℃) λmax, nm (ε) 345 (41630).
【0031】
[実施例3] 4,5−ビス(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−2−(ナフタレン−2−イル)−1H−イミダゾールの合成
【化5】

(式中、Meはメチル基を表す。)
【0032】
酢酸アンモニウム(0.77g,10mmol)、2−ナフトアルデヒド(0.41g,2.6mmol)、及び4,4’−ビス(4−メトキシフェニル)ベンジル(0.85g,2.0mmol)を、酢酸(20mL)に順に加え、4時間30分加熱還流した。反応終了後、反応混合物を水(30mL)に加え、ろ取した沈殿物を水(50mL×4)で洗浄し吸引ろ過した。ろ取した黄色固体(0.97g,87%,mp292−294℃)をカラムクロマトグラフィー(BW−300)に付し、トルエンで未反応の原料を溶出後、トルエン−酢酸エチル(20/1)溶出分及び酢酸エチル溶出分より得た黄色固体をTHF−エタノール(2/3)から再結晶することにより、表題化合物(0.56g,50%,mp288−289℃)を淡黄色針状晶として得た。
【0033】
淡黄色針状晶[THF-エタノール(2/3)]; mp 288-289 ℃.
IR (KBr) 3398 (NH), 3050, 3006, 2834 (CH), 1605, 1499 (C=C), 1249, 1040 (C-O), 822 cm-1 (CH).
1H NMR (270MHz, DMSO-d6) δ 3.79, 3.81 (each 3H, s, O-CH3), 7.01 (2H, d, J = 8.9 Hz, 7"-H), 7.04 (2H, d, J = 8.4 Hz, 7"-H), 7.50-7.77 (14H, m, Ar-H), 7.92-8.00 (2H, m, Ar-H), 8.03 (1H, d, J = 8.4 Hz, Ar-H), 8.30 (1H, dd, J = 8.4, 1.7 Hz, Ar-H), 8.66 (1H, br s, Ar-H), 12.91 (1H, br s, NH).
13C NMR(67.8MHz, DMSO-d6) δ 55.06 (O-CH3), 114.28, 123.41, 123.59, 125.95, 126.25, 126.63, 127.46, 127.65, 127.69, 128.03, 128.19, 128.73, 129.20, 131.66, 131.93, 132.63, 132.92, 133.44, 137.09, 137.72, 138.83, 145.57, 158.79.
EI-MS m/z (rel. int., %) 558 (M+, 100), 543 ([M-CH3]+, 9), 514 (4), 446 (4), 279 (22), 258 (4), 138 (6),77 ([C6H5]+, 5).
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.69 min.
UV-Vis (CH2Cl2, 1.0×10-5 mol/L, 24 ℃) λmax, nm (ε) 333 (48420).
【0034】
[実施例4]4,5−ビス(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−1,2−ジフェニル−1H−イミダゾールの合成
【化6】

(式中、Meはメチル基を表す。)
【0035】
酢酸アンモニウム(7.71g,100.0mmol)、アニリン(0.19g,2.0mmol)、ベンズアルデヒド(0.21g,2.0mmol)、及び4,4’−ビス(4−メトキシフェニル)ベンジル(0.85g,2.0mmol)を酢酸(20mL)に加え、30時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物に水(50mL)を加えた後、析出した沈殿をろ取し、それを水(50mL×5)で洗浄し吸引ろ過した。ろ取した白色固体を、デシケーター中で一日乾燥すると白色固体(1.13g)が得られた。これにベンゼンを加え、黄色の不溶物(0.35g,mp237−240℃)をろ別後、ろ液を減圧濃縮した。残さをカラムクロマトグラフィー(BW−300)に付し、ベンゼンで未反応の原料を溶出後、ベンゼン−酢酸エチル(20/1)溶出分より白色固体の表題化合物(0.38g,33%,mp264−267℃)、ついで4,5−ビス(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(実施例1)を含む黄色固体(0.40g,40%,mp239−242℃)が得られた。白色固体の表題化合物をTHF−シクロヘキサン(2/1)から再結晶し、無色針状晶(0.14g,12%,mp265−266℃)が得られた。
【0036】
無色針状晶[THF-シクロへキサン(2/1)]; mp 265-266 ℃.
IR (KBr) 3050, 2934, 2838 (CH), 1607, 1499 (C=C), 1251, 1040 (C-O), 826, 698 cm-1 (CH).
1H NMR (270MHz, DMSO-d6) δ 4.09, 4.10 (each 3H, s, O-CH3), 7.30, 7.32 (each 2H, d, J = 8.9 Hz, 7"-H) 7.53-7.78 (12H, m, Ar-H), 7.81-8.04 (10H, m, Ar-H).
13C NMR(67.8MHz, DMSO-d6) δ 55.02, 55.06 (O-CH3), 114.21, 114.28, 125.77, 126.77, 127.33, 127.56, 128.07, 128.17, 128.53, 128.71, 129.13, 130.28, 130.91, 131.10, 131.52, 131.89, 132.74, 136.60, 136.66, 137.55, 139.10, 146.11, 158.69, 159.01.
EI-MS m/z (rel. int., %) 584 (M+, 100), 569 ([M-CH3]+, 7), 540 (3), 446 (2), 292 (13), 138 (19), 113 (7).
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.55 min.
UV-Vis (CH2Cl2, 1.0×10-5 mol/L, 24 ℃) λmax, nm (ε) 315 (43820).
【0037】
[実施例5] 4,5−ビス(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−2−(4−シアノ−フェニル)−1−フェニル−1H−イミダゾールの合成
【化7】

(式中、Meはメチル基を表す。)
【0038】
酢酸アンモニウム(7.71g,100.0mmol)、アニリン(0.19g,2.0mmol)、シアノベンズアルデヒド(0.26g,2.0mmol)、及び4,4’−ビス(4−メトキシフェニル)ベンジル(0.85g,2.0mmol)を、酢酸(20mL)に加え、32時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物に水(50mL)を加えた後、析出した沈殿をろ取し、それを水(50mL×5)で洗浄し吸引ろ過した。ろ取した淡黄色固体を、デシケーター中で一日乾燥すると淡黄色固体(1.09g,mp149−153℃)が得られた。これにベンゼンを加え、黄色の不溶物(0.17g,mp170−174℃)をろ別後、ろ液を減圧濃縮した。残さをカラムクロマトグラフィー(BW−300)に付し、ベンゼンで未反応の原料を溶出後、ベンゼン−酢酸エチル(20/1)溶出分より白色固体の表題化合物(0.24g,20%,mp182−183℃)、ヘキサン−THF(2/1)溶出分より黄色固体の4,5−ビス(4’−メトキシ−ビフェニル−4−イル)−2−(4−シアノ−フェニル)−1H−イミダゾール(実施例2)(0.42g,40%,mp268−269℃)、THF溶出分より淡黄色固体(0.36g,mp170−174℃)を得た。得られた白色固体の表題化合物を酢酸エチル−シクロヘキサン(1/4)から再結晶すると無色針状晶(0.15g,12%,mp219−220℃)が得られた。
【0039】
無色針状晶[酢酸エチル−シクロヘキサン(1/4)]; mp 219-220 ℃.
IR (KBr) 3036, 2934, 2838 (CH), 2228 (C≡N), 1607, 1502 (C=C), 1249, 1040 (C-O), 826, 698 cm-1 (CH).
1H NMR (270MHz, DMSO-d6) δ 3.77, 3.78 (each 3H, s, O-CH3), 6.98, 6.99 (each 2H, d, J = 8.9 Hz, 7"-H), 7.24-7.46 (7H, m, Ar-H), 7.47-7.70 (12H, m, Ar-H), 7.77 (2H, d, J = 8.4 Hz, 3'-H).
13C NMR(67.8MHz, DMSO-d6) δ 55.02, 55.06 (O-CH3), 110.46, 114.21, 114.28, 118.43 (CN), 125.80, 126.79, 127.35, 127.58, 128.05, 128.41, 128.59, 129.16, 129.40, 131.03, 131.48, 131.80, 132.09, 132.32, 134.41, 136.19, 137.43, 137.84, 139.33, 144.20, 158.74, 159.06.
EI-MS m/z (rel. int., %) 609 (M+, 100), 594 ([M-CH3]+, 9), 565 (3), 305 (13), 253 (3), 189 (2), 113 (2), 77 ([C6H5]+,3).
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.49min.
UV-Vis (CH2Cl2, 1.0×10-5 mol/L, 24 ℃) λmax, nm (ε) 322 (37400).
【0040】
[実施例6] 2,4,5−トリス(4’−(N,N−ジフェニルアミノ)−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾールの合成
(1)2,4,5−トリス(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾールの合成
【化8】

【0041】
酢酸アンモニウム(1.93g,25.0mmol)、4-ブロモベンズアルデヒド(1.11g,6.0mmol)、及び4,4’−ジブロモベンジル(1.85g,5.0mmol)を、酢酸(75mL)に加え、6時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物に水(100mL)を加え、析出した不溶物をろ取し、それを水(50mL×5)で洗浄しながら吸引ろ過した。ろ取した固体を減圧下100℃で3時間加熱乾燥することにより白色固体(2.99g)が得られた。この得られた白色固体(2.99g)をカラムクロマトグラフィー(BW300)に付し、酢酸エチル溶出分より2,4,5−トリス(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾールを白色固体(2.17g,mp290−293℃, 81%)として得られた。得られた白色固体(2.17g)をTHF−ベンゼン(1:4)から再結晶後、減圧下100℃で2時間乾燥すると無色針状晶(1.92g,mp293−294℃,72%)が得られた。
【0042】
無色針状晶 [THF-Benzene (1:4)], mp 293-294 ℃.
IR (KBr) 3426 (N-H), 3034 (C-H), 1497, 1483 (C=C), 828 (C-H), 501 (C-Br) cm-1.
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ 7.39-7.57 (6H, m, 3', 3"-H), 7.66 (2H, d, J=8.4 Hz, 2"-H), 7.69 (2H, d, J=8.4 Hz, 2"-H), 8.02 (2H, d, J=8.9 Hz, 2'-H), 12.89 (1H, s, N-H).
13C NMR (67.8 MHz, DMSO-d6) δ 119.80, 121.11, 121.60, 127.11, 127.69, 129.02, 129.13, 129.63, 130.24, 131.23, 131.64, 133.85,136.49, 144.96.
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.87min.
FAB-MS (m-nitrobenzyl alcohol) m/z 537(MH+), 536(M+), 535(MH+), 534(M+), 533(MH+), 532(M+), 531(MH+), 530(M+).
【0043】
(2)2,4,5−トリス(4’−(N,N−ジフェニルアミノ)−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾールの合成
【化9】

【0044】
アルゴン気流下、ベンゼン(25mL)と2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(10mL)とをそれぞれ超音波照射下1時間脱気した後、アルゴンガスを溶液中に10分間吹き込みアルゴン置換した。アルゴン気流下、2,4,5−トリス(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール(0.27g,0.50mmol)のベンゼン溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.03g,0.02mmol)、2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(8mL)、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸(1.22g,1.50mmol)をこの順に加え、24時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物に水(30mL)を加えた後、有機層と水層とを分離した。水層をベンゼン(30mL×4)で洗浄後、ベンゼン層を前述の有機層と合わせてろ過し、不溶物をろ別した。ろ液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮すると黄緑色固体(1.39g)が得られた。得られた黄緑色固体(1.39g)をカラムクロマトグラフィー(BW300)に付し、ベンゼン溶出分より、黄色固体(0.39g,mp185−190℃)が得られた。得られた黄色固体(0.39g)をTHF−ヘキサン(1:4)から再結晶後、減圧下80℃で1時間乾燥すると淡黄色針状晶の表題化合物(0.33g,mp290−292℃,65%)が得られた。
【0045】
淡黄色針状晶[THF-Hexane (1:4)], mp 290-292 ℃.
IR (KBr) 3414 (N-H), 3034 (C-H), 1591, 1489 (C=C), 822, 752, 694 (C-H) cm-1.
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 6.96-7.06 (6H, m, 4"', 4""-H), 7.11 (18H, d, J=8.4 Hz, 2"', 2"", 7', 7"-H), 7.17-7.29 (12H, m, 3"', 3""-H),7.37-7.54 (12H, m, 2", 3", 6"-H), 7.58 (2H, d, J=8.4 Hz, 3'-H), 7.67 (2H, brs, 6'-H), 7.92 (2H, d, J=8.4 Hz, 2'-H), 9.88 (1H, brs, N-H).
13C NMR (67.8 MHz, CDCl3) δ 122.96, 123.04, 123.74, 123.84, 124.42, 124.49, 125.71, 126.63, 126.83, 127.51, 127.58, 128.16, 129.29, 133.96, 140.75, 146.09, 147.47, 147.56, 147.62.
FAB-MS (m-nitrobenzyl alcohol) m / z 1026 (MH+), 1025 (M+).
UV-Vis (CH2Cl2, 1.0×10-5 mol/L, 24 ℃) λmax, nm (ε) 363 (99700), 308 (51600).
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.43 min.
元素分析 Calcd for C75H55N5 : C, 87.77 ; H, 5.40 ; N, 6.82%.
Found : C, 87.52 ; H, 5.47 ; N, 6.83%.
【0046】
[実施例7] 1,3−ビス(4,5−ビス(4’−(N,N−ジフェニルアミノ)−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゼンの合成
(1)1,3−ビス(4,5−ビス(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゼンの合成
【化10】

【0047】
酢酸アンモニウム(1.93g,25.0mmol)、イソフタルアルデヒド(0.35g,2.5mmol)、及び4,4’−ジブロモベンジル(1.84 g,5.0mmol)を、酢酸(75mL)に加え、8時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物を放冷し、析出した結晶をろ取し、それを水(30mL×4)で洗浄しながら吸引ろ過した。ろ取した固体を減圧下100 ℃で4時間加熱乾燥することにより1,3−ビス(4,5−ビス(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゼンが無色針状晶(1.18g,61%)として得られた。この得られた無色針状晶(1.18g)をTHF−メタノール(1:2)から再結晶後、減圧下100℃で3時間乾燥すると無色針状晶(1.06g,mp>300℃, 55%)が得られた。
【0048】
無色針状晶 [THF-Methanol (1:2)], mp>300 ℃.
IR (KBr) 3402 (N-H), 3074 (C-H), 1497, 1483 (C=C), 830 (C-H), 524 (C-Br) cm-1.
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ 7.41-7.73 (17H, m, 5', 2", 3"-H), 8.08 (2H, dd, J=7.6, 1.7 Hz, 4', 6'-H), 8.78 (1H, brt, J=1.7 Hz, 2'-H), 12.98 (2H, s, N-H).
13C NMR (67.8 MHz, DMSO-d6) δ 119.76, 121.02, 122.37, 125.19, 127.58, 129.14, 129.72, 130.31, 130.55, 131.21, 131.62, 134.00, 136.49, 145.75.
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 4.15min.
FAB-MS (m-nitrobenzyl alcohol) m/z 835(MH+), 834(M+), 833(MH+), 832(M+), 831(MH+), 830(M+), 829(MH+), 828(M+), 827(MH+), 826(M+).
【0049】
(2)1,3−ビス(4,5−ビス(4’−(N,N−ジフェニルアミノ)−ビフェニル−4−イル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゼンの合成
【化11】

【0050】
アルゴン気流下、ベンゼン(30mL)と2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(30mL)をそれぞれ超音波照射下1時間脱気した後、アルゴンガスを溶液中に10分間吹き込みアルゴン置換した。アルゴン気流下、1,3−ビス(4,5−ビス(4−ブロモフェニル)−1H−イミダゾール−2−イル)ベンゼン(0.47g,0.60mmol)のベンゼン溶液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.06g,0.06mmol)、2mol/L炭酸ナトリウム水溶液(28ml)、4−(N,N−ジフェニルアミノ)フェニルボロン酸(0.84g,2.88mmol)をこの順に加え、24時間加熱還流した。反応終了後、反応混合物に水(60ml)を加えた後、有機層と水層とを分離した。水層をベンゼン(50mL×4)で洗浄後、ベンゼン層を前述の有機層と合わせてろ過し、不溶物をろ別した。ろ液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮すると暗黄色固体(1.06g)が得られた。得られた暗黄色固体(1.06g)をフラッシュカラムクロマトグラフィー (BW300)に付し、酢酸エチル溶出分より黄色固体(0.84g,mp229−232℃)が得られた。得られた黄色固体(0.84g)をベンゼン−酢酸エチル(1:3)から再結晶後、減圧下100℃で4時間乾燥すると黄色粉末の表題化合物(0.64g,mp235−237℃,72%)が得られた。
【0051】
黄色粉末 [Benzene-Ethyl acetate (1:3)], mp 235-237 ℃.
IR (KBr) 3416 (N-H), 3032 (C-H), 1591, 1489 (C=C), 820, 750, 694 (C-H) cm-1.
1H NMR (270 MHz, CDCl3) δ 6.83-7.57(73H, m, 5', 2",3", 6", 7", 2"', 3"', 4"'-H), 7.70 (2H, brs, 4', 6'-H), 8.39 (1H, brs, 2'-H), 10.86 (2H, brs, N-H).
13C NMR (67.8 MHz, CDCl3) δ 122.80, 122.89, 123.79, 124.06, 124.29, 124.36, 124.76, 126.40, 127.31, 127.42, 128.17, 129.25, 129.65, 130.11, 134.23, 134.63, 134.89, 139.08, 146.25, 146.43, 146.57, 146.72, 147.10, 147.44, 147.56, 147.69.
FAB-MS (m-nitrobenzyl alcohol) m / z 1488 (M++2).
HPLC (ODS, CHCl3, flow rate 1mL/min, wavelength 341nm) retention time 2.41 min.
UV-Vis (CH2Cl2, 1.0×10-5 mol/L, 24 ℃) λmax, nm(ε) 353 (149700), 311 (90900).
元素分析 Calcd for C108H78N8 : C, 87.18 ; H, 5.28 ; N, 7.53%.
Found : C, 86.91 ; H, 5.27 ; N, 7.39%.
【0052】
[2]蛍光スペクトルの測定
[実施例8]
実施例1〜5の化合物をジクロロメタンに溶解(1.0×10-6mol/L)し、1cm幅のセルを用いて蛍光スペクトルを測定した。極大蛍光波長(λEm(nm))、及び蛍光量子収率(φ、標準物質:硫酸キニーネ)を表1に示す。
実施例6〜7の化合物をジクロロメタンに溶解(5.0×10-7mol/L)し、1cm幅のセルを用いて蛍光スペクトルを測定した。極大蛍光波長(λEm(nm))を表2に示す。
なお、蛍光スペクトルは、蛍光スペクトル測定装置〔F−4500、(株)日立製作所製〕を使用して測定した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
表1,2に示されるように上記実施例1〜7で得られたイミダゾール化合物は、高い青色蛍光強度を有していることがわかる。
このような高い青色蛍光強度を有し、安定な2,4,5−トリアリール置換イミダゾール化合物及び1,2,4,5−テトラアリール置換イミダゾール化合物を発光材料として用いることで、省電力で面状発光するフレキシブル有機エレクトロルミネッセンス素子等を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるイミダゾール化合物。
【化1】

{式中、R1は、フェニル基、ナフチル基又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、フッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、フッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はビフェニル基(該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基又は炭素数1〜10のアルキル基で任意に置換されていてもよい。)で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。]を表し、
2は、水素原子、フェニル基又はナフチル基(該フェニル基及びナフチル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基で任意に置換されていてもよい。)を表し、
3、R4、R10及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基を表し、
5、R6、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、水素原子、フェニル基、ハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜10のアルキル基、又はフッ素もしくは塩素で任意に置換されていてもよい炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基を表す。但し、R5〜R9のうち少なくとも一つは水素原子以外の置換基を表す。}
【請求項2】
前記R1が、フェニル基、ナフチル基又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、トリフルオロメチル基又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はハロゲン原子、シアノ基、メチル基、フェニル基又はビフェニル基(該フェニル基及びビフェニル基はハロゲン原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基又はトリフルオロメチル基)で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。]である請求項1記載のイミダゾール化合物。
【請求項3】
前記R2が、水素原子又はフェニル基(該フェニル基はシアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基で任意に置換されていてもよい。)である請求項1記載のイミダゾール化合物。
【請求項4】
前記R3、R4、R10及びR11が、水素原子であり、
前記R5、R6、R7、R8及びR9が、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、ジフェニルアミノ基、メトキシ基、メチル基、又はトリフルオロメチル基である(但し、R5〜R9のうち少なくとも一つは水素原子以外の置換基を表す。)請求項1記載のイミダゾール化合物。
【請求項5】
前記R1が、フェニル基、ナフチル基又はビフェニル基[該フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基はシアノ基、又はイミダゾール基〈該イミダゾール基はフェニル基又はビフェニル基(該フェニル基及びビフェニル基はジフェニルアミノ基で任意に置換されていてもよい)で任意に置換されていてもよい。〉で任意に置換されていてもよい。]であり、
2が、水素原子又はフェニル基であり、
3、R4、R5、R6、R8、R9、R10及びR11が、水素原子であり、
7が、メトキシ基又はジフェニルアミノ基である請求項1記載のイミダゾール化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のイミダゾール化合物の発光材料への使用。
【請求項7】
陰極及び陽極と、これら各極間に介在する有機薄膜層とを備え、この有機薄膜層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイミダゾール化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
陰極及び陽極と、これら各極間に介在する有機薄膜層とを備え、この有機薄膜層が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイミダゾール化合物を含む有機太陽電池素子。

【国際公開番号】WO2005/085208
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510653(P2006−510653)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003110
【国際出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】