説明

20位にてインテグリンアンタゴニストと接合した7−t−ブトキシイミノメチルカンプトテシン

式(I)の化合物が記載される:


(I)
式中、R1 基は明細書中に定義するとおりであり、7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシンの20位にて RGD 配列を含むシクロペプチドとの縮合を含む。該化合物はインテグリン受容体αvβ3およびαvβ5との高親和性およびマイクロモル濃度でのヒト腫瘍細胞株に対する選択的細胞毒性活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、RGD 配列を含むシクロペプチドおよびカンプトテシン誘導体からなる、細胞毒性活性を有する化合物、その調製方法、その医薬としての使用およびそれを含む組成物に関する。
【0002】
特に、本発明に記載する化合物は、インテグリンαvβ3およびαvβ5に対する高親和性と、マイクロモル濃度でのヒト細胞株に対する選択的細胞毒性活性との両方を備えている。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
化学療法用抗癌薬は、治療濃度域が非常に制限された薬剤である。実際、それらの細胞毒性活性は非選択的であるため、それらはそれらが接触した体の細胞のすべてに無差別に損傷を与え得る。
【0004】
現在、薬剤の活性を健康な周囲組織の細胞には損傷を与えずに発揮させ、あるいは少なくとも可能な限り損傷を制限する、選択的に腫瘍細胞に向かわせる細胞毒性薬の問題が存在している。
【0005】
文献によると、選択的シクロペプチドの使用により(その参照化合物はシクロペンタペプチド c(Arg-Gly-Asp-D-Phe-Val)とされている)(JACS 1997、119、1328-35; 国際特許出願 WO 97/06791)、あるいはモノクローナル抗体の使用により(Cell、1994、79、1157-64)、インテグリンαvβ3およびαvβ5をブロックすることにより、血管新生が阻害され、腫瘍増殖が低減されることが報告されている。さらに、抗転移作用も観察されている(J. Clin. Invest.、1995、96、1815)。Brooks et al.(Science、1994、264、569-71)は、腫瘍脈管構造の内皮細胞および腫瘍細胞自体が、正常組織の静止状態の細胞と比較してインテグリン αvβ3を優先的に発現することを報告している。臨床開発の発展段階にある化合物のなかで、本発明者らは、c(Arg-Gly-Asp-D-Phe-MeVal)、またはEMD121974またはシレンギチド(cilengitide)に言及しうる。
【0006】
Ruoslatiおよびその同僚ら(Current Opinion in Oncology、1998、10、560-5)は、腫瘍内皮に結合するRGD アナログは、細胞毒性薬であるドキソルビシンと一度接合すると、ドキソルビシンのみよりもより有効かつ低毒性の化合物を形成することを示した。かかる著者らは、結合が遊離のペプチド自体によりアンタゴナイズされるため、合理的疑いの余地無く、その効果はRGDとの接合に起因することを示した (Arap、Pasqualini and Ruoslati、Science、1998、279、377-380)。後に、同著者らはアポトーシス促進性ペプチド配列のRGD アナログへの化学的結合についての別の実験を行い、その新規化合物が血管新生内皮細胞に対して選択的に毒性であり、マウスにおいて抗癌活性を有することを示した (Ruoslati、Nature Medicine、1999、5、1032-8)。
【0007】
Marcus et al.は国際特許出願 WO 01/17563において、1以上のアミノ酸からなるスペーサーによって、インテグリンαvβ3およびαvβ5.の非ペプチド性阻害剤アンタゴニストに接合したカンプトテシンなどの細胞毒性薬についての特異的抗癌活性について記載している。
【0008】
Aoki et al.は、Cancer Gene Therapy、2001、8、783-787において、RGD 配列に接合したヒスチジル化(histidylated)オリゴリシンの特異的抗癌活性について記載しており、マウスにおける腫瘍に対するホーミング(homing)効果を明らかにした。
【0009】
インテグリンにより媒介される細胞表面での結合の概念は遺伝子輸送に関して提案されている (Hart、et al.、J. Biol. Chem.、1994、269、12468-12474)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
7-tert-ブトキシイミノメチルカンプトテシン (またはCPT184またはST 1481またはギマテカン(Gimatecan))は、経口的に活性であるカンプトテシン誘導体であり、欧州特許 EP 1 044 977に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このたび、任意に好適なスペーサーによって、RGD 配列を含むシクロペプチド誘導体に20位にて接合した7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシンが、強い選択的な抗癌活性を有しており、腫瘍の治療のための医薬の調製に有利なことに使用できる、化合物を与えることが見いだされた。
【0012】
腫瘍細胞に対する選択的細胞毒性活性のため、本発明による化合物により、副作用が少ないか、あるいは重篤ではない医薬が提供される。
【0013】
発明の説明
本発明の目的は、RGD配列を含むシクロペプチド誘導体に接合した7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシン誘導体である。その結果得られる分子は、元のカンプトテシンの細胞毒性と、非接合シクロペプチドについて観察されるものと匹敵する親和性を有するインテグリン結合特性の、両方を変化させずに有している。この組合せの結果は、αvβ3 および αvβ5 型のインテグリンを大量に発現する細胞における細胞毒性薬の集中に有利である(ホーミング(homing))。この細胞毒性薬は酵素または加水分解作用を介して接合形態および/または遊離形態においてその細胞内活性を発揮する。
【0014】
本発明の主な目的はそれゆえ式(I)の化合物、そのN1-オキシド、ラセミ混合物、その単一エナンチオマー、その単一ジアステレオアイソマー、EおよびZ形態、それらの混合物、医薬上許容される塩である:
【化1】

(I)
[式中:
R1は、U-X-Y 基、ここで:
Uは、非存在 または以下の基のいずれか1つである:-COCHR10NH-または CON[(CH2)n2NHR7]-CH2-、ここで、R10はHまたは以下からなる群から選択される : C6-C14 アリールにより置換されていてもよい直鎖状または分枝状 C1-C4 アルキル、またはアミノ-アルキル C1-C4; R7は、Hまたは直鎖状または分枝状 C1-C4 アルキル; n2は、2〜6の整数;
Xは、非存在またはHまたは以下のなかから選択される基:
-COCHR3NH-、-COCHR6(CH2)n3R4-、-R4-CH2(OCH2CH2)n4OCH2R4-、-R4(Q)R4-、-R5[Arg-NH(CH2)n5CO]n6R5-、-R5-[N-グアニジノプロピル-Gly]n6R5-、ここで、n3は、0〜5の整数、n4は、0〜50の整数、n5 は、2〜6の整数、n6は、2〜7の整数;
R3は、 Hまたは-COOH、-CONH2、-NH2 または-OHにより置換されていてもよい直鎖状または分枝状 C1-C4 アルキル;
R4は、以下からなる群から選択される: -NH-、-CO-、-CONH-、-NHCO-;
R5は、非存在または基 -R4(Q)R4-;
R6は、HまたはNH2;
Qは、以下からなる群から選択される: 直鎖状または分枝状 C1-C6 アルキレン; 直鎖状または分枝状 C3-C10 シクロアルキレン; 直鎖状または分枝状 C2-C6 アルケニレン; 直鎖状または分枝状 C3-C10 シクロ-アルケニレン; C6-C14 アリーレン; アリーレン (C6-C14)-アルキレン; (C1-C6),アルキレン (C1-C6)-アリーレン (C6-C14);O、N、Sからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む芳香族または非芳香族ヘテロサイクリル (C3-C14);
Yは、非存在またはHまたは以下の基:
c(Arg-Gly-Asp-AA1-AA2)、
ここで:
c は環状を意味する;
AA1は、以下からなる群から選択される: (D)-Phe、(D)-Trp、(D)-Tyr、(D)-2-ナフチルAla、(D)-4-terブチル-Phe、(D)-4,4'-ビフェニル-Ala、(D)-4-CF3-Phe、(D)-4-アセチルアミノ-Phe;
AA2は、以下からなる群から選択される: NW-CH[(CH2)n7-CO]-CO、NW-CH[(CH2)n7-NH]-CO、NW-[4-(CH2)n7-CO]-Phe、NW-[4-(CH2)n7-NH]-Phe、[NW]-Gly、NW-Val、ここで、Wは、H、直鎖状または分枝状 C1-C6 アルキル、-(CH2)n7-COOHから選択され、ここで、n7は、0〜5の整数、4-カルボキシベンジル、4-アミノメチルベンジル;
ただし、XおよびYが共に非存在であることはない]。
【0015】
本発明は、トポイソメラーゼI阻害剤として有用な医薬のための活性成分としての上記式(I)の化合物の使用を含む。トポイソメラーゼI阻害に起因する治療用途のなかでも、本発明者らは寄生虫またはウイルス感染に言及する。
【0016】
特定の薬理学的特性があるため、式(I)の化合物はまた、腫瘍およびその転移形態の治療用医薬の調製に有用である。
【0017】
本発明はまた、少なくとも1つの 医薬上許容される媒体および/または賦形剤と混合して、活性成分として式(I)の化合物を含む医薬組成物も含む。
【0018】
本発明による化合物は、20位にて官能化された、7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシンと、Arg-Gly-Asp (RGD) 配列を含むシクロペプチドとの縮合の結果得られる。この構造的組合せは、αvβ3 および αvβ5 型のインテグリンを高発現する細胞に細胞毒性薬 (カンプトテシン)を集中させやすいという利点を有する。細胞毒性薬はその活性を、酵素または加水分解作用を介して接合形態および/または 遊離形態において発揮する。
【0019】
上記式(I)に示される様々な官能基および残基の定義、ならびに医薬上許容される塩の定義は、化学分野の当業者の周知技術の範囲内であり、特定の定義は必要ではない。しかしながら、かかる基への言及は、例えば国際特許出願WO 00/53607、WO 03/101995およびWO 03/101996などの技術および特許文献においてみることが出来る。
【0020】
好ましい化合物の第一の群は、U および/または Xが非存在ではない式(I)の化合物である。
【0021】
本発明による好ましい化合物は以下の通りである:
【化2】

式(I)の化合物は、本発明による好ましい化合物について以下に記載され、例証されている方法によって調製することが出来る。この方法は本発明のさらなる目的を構成する。
【0022】
基本的に、本発明の目的である式(I)の化合物は、任意に好適な架橋(「U1-X1」と示す)により官能化されていてもよい、7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシン (「7-t-but-CP」と示す)と、シクロペプチド誘導体 (「Y1」と示す)との縮合によって調製される。
【0023】
縮合反応は以下の反応スキームのいずれかによって行うことが出来る:
7-t-but-CP + U1-X1-Y1 または、
7-t-but-CP-U1 + X1-Y1 または、
7-t-but-CP-U1-X1 + Y1 または、
7-t-but-CP + U1 + X1 + Y1 または、
7-t-but-CP-U1 + X1 + Y1 ;
ここで、7-t-but-CPは7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシンを表し、U1、X1およびY1はそれぞれ、式Iの接合化合物が得られるように、最終的に適当に官能化および/または保護されている、式Iにおいて定義した基U、XおよびYを表す。
【0024】
かかる反応は常套方法、例えば、Journal of Controlled Release 2003、91、61-73; S.S. Dharap et al.; Journalの Medicinal Chem. 2003、46、190-3、R.Bhattに記載の方法を用いて実施される。
【0025】
シクロペプチドY1は、実施例1〜6に記載のように常套のペプチド合成技術にしたがって調製することが出来る。ペプチド合成は固相または溶液中のいずれにおいても達成できる。
【0026】
所望のシクロペプチドが得られると、それは保護形態において縮合反応に用いられ、保護基は最終化合物が得られた後に除去する。脱保護は、公知方法、例えば、純粋なトリフルオロ酢酸の使用による酸性条件または塩素化有機溶媒の存在下で行われる。
【0027】
本発明に記載される化合物は、トポイソメラーゼI阻害剤であり、それゆえ医薬、特に該トポイソメラーゼの阻害により恩恵を受ける疾患の治療用医薬として有用である。特に、本発明による化合物は抗増殖活性を示し、それゆえその治療特性のために使用され、そして医薬組成物における製剤のために好適なものとする物理化学的特性を有する。
【0028】
医薬組成物は、例えば、有意な治療効果をもたらす量の少なくとも1つの 式(I)の化合物を活性成分として含む。本発明による組成物は完全に常套のものであり、医薬業界において慣行である方法を用いて得られる。選択した投与経路に応じて、組成物は経口、非経口または静脈内投与に好適な固体または液体形態であろう。本発明による組成物は、活性成分とともに、少なくとも1つの医薬上許容される媒体または賦形剤を含む。特に有用なものは、製剤補助剤、例えば、可溶化剤、分散剤、懸濁剤または乳化剤であり得る。
【0029】
式(I)の化合物は、例えば抗癌薬または抗寄生虫または抗ウイルス活性を有するその他の薬物などのその他の活性成分と組み合わせて、別々の形態および単一用量形態のいずれにおいても用いることが出来る。
【0030】
本発明による化合物は例えば以下において、抗癌活性を有する医薬として有用である:非小細胞癌(non-microcytoma)および小細胞肺癌、または結腸直腸癌または 前立腺癌、神経膠芽腫および神経芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、消化器癌、肝臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、肉腫および骨肉腫、精巣癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫、膀胱癌および頭頸部癌。本発明による化合物により得られる利益の1つは、分子のカンプトテシン部分に固有の抗トポイソメラーゼ活性と、分子のシクロペプチド部分によって提供されるインテグリン阻害活性の組合せである。その結果、本発明による化合物により可能な組合せ作用は、腫瘍学分野における当業者に有益であると認識される。実際、Arg-Gly-Asp 配列を含むシクロペプチド部分は、分子をインテグリンを発現する腫瘍に向かわせるだけでなく、いったん標的に到達すると、分子の細胞毒性部分のインターナリゼーションからインテグリン阻害活性に及ぶ多様な機能を発揮することが出来、その結果、特に腫瘍血管新生の阻害に関する利益がもたらされる。シクロペプチド部分も、いったんカンプトテシン部分と離れると、腫瘍部位から離れた部位にて作用を発揮することが出来、それゆえ本発明による化合物は、転移形態の予防または治療において有用である。
【0031】
本発明の目的である医薬はまた、寄生虫疾患の治療においても有用であり得る。
【実施例】
【0032】
以下の実施例により本発明をさらに説明する。
【0033】
使用した略語は以下の通りである:
Aad (アミノアジピン酸);
Amb (アミノメチルベンジル);
Amp (アミノメチルフェニルアラニン);
Boc (tert-ブトキシカルボニル);
CSA (カンファースルホン酸);
CTH (触媒的移動水素化);
DCC (ジシクロヘキシルカルボジイミド);
DCM (ジクロロメタン);
DIEA (ジイソプロピルエチルアミン);
DMF (ジメチルホルムアミド);
Dy(OTf)3 ジスプロシウムトリフラート;
Fmoc (9-フルオレニルメチルオキシカルボニル);
HOBT (ヒドロキシベンゾトリアゾール);
NMP (N-メチル-ピロリドン);
Pht (フタロイル);
Pmc (ペンタメチルクロマン-6-スルホニル);
ST1481 (7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシン、ギマテカンとも称される)
TBTU(テトラフルオロボラート-O-ベンゾトリアゾール-1-イル-テトラメチルウロニウム);
TFA (トリフルオロ酢酸)。
【0034】
実施例 1
c(Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Amp) (保護された ST2581) の合成
1.587 mmolの Fmoc-Gly-Res (Res = Sasrin 樹脂(登録商標)、Bachem)を30 分間撹拌しながら75 mlの DMFに懸濁し、その後 18 mlの ピペリジンを添加しさらに30 分間撹拌を続けた。ろ過し、DMFで洗浄した樹脂を、50 mlの NMP (N-メチル-ピロリドン)に15 分間懸濁した。その後 Fmoc-Arg(Pmc)-OH、HOBT、TBTU および DIEAを添加した(各3.174 mmol); 2 時間の撹拌の後、懸濁液をろ過し、DMFで洗浄した。ピペリジンによる脱保護の後、連続してそれぞれ上記のように行う次のアミノ酸とのカップリングを繰り返した。即ち: Fmoc-Amp(Cbz)-OH、Fmoc-D-Phe-OH、および Fmoc-Asp(OtBu)-OH。Fmoc-N-末端の最後の脱保護の後、直鎖状ペンタペプチドをDCM中の45 mlの 1% TFAを用いて樹脂から遊離させた。これをおよそ 1 lのCH3CNに溶解し、4.761 mmolの HOBT および TBTU および 10 mlの DIEAを添加した;溶液を30 分間撹拌しながら維持し、溶媒を蒸発させて少容量とし、生成物の沈降を水を用いて完了した。ろ過した粗生成物を27 mlの MeOH および DMFの1:1混合物に溶解した; 5 mmolのアンモニウムホルミエート および 0.55 gの10% Pd/Cを添加し、室温で30 分間撹拌しながら放置した。懸濁液をセライトでろ過し、乾燥させた。 残渣を分取 RP-HPLC (カラム: Alltima(登録商標)C-18、Alltech; 移動相水中50% CH3CN + 0.1% TFA; 保持時間 (Rt) = 9.13 分間)により精製した。483 mgの白色粉末を得た。
【0035】
1H-NMR (DMSO-d6) δ 8.3、8.07、8.04、7.90、7.80、7.33、7.15、7.07、4.62、4.50、4.35、4.12、4.01、3.15、3.03、2.96-2.65、2.58、2.48、2.32、2.02、1.75、1.50、1.35、1.23
【0036】
分子量 (Maldi-Tof): 973
【0037】
実施例 2
c(Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Aad) (保護された ST2650) の合成
0.69 mmolの Fmoc-Gly-Resを実施例 1に記載のようにして処理し、ただしこの場合、第3および第4アミノ酸をジペプチド Fmoc-D-Phe-Aad(OBzl)-OH の形態で添加した。CTHによる脱保護、および粗生成物の分取 RP-HPLC (移動相: 水中 66% CH3CN + 0.1% TFA; Rt = 17.29 分間)による精製の後、187 mgの 純粋なペプチドを得た。
【0038】
1H-NMR (DMSO-d6) δ 7.23、4.58、4.20-3.90、3.28、3.05、2.99、2.85、2.74-2.35、2.15、2.05、1.85-1.25
【0039】
分子量 (Maldi-Tof): 940
【0040】
実施例 3
c(Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-N-Me-Amp) (保護された ST2700) の合成
還流している無水トルエン中のFmoc-Phe(4-Pht-N-CH2)-COOHの懸濁液に、2 当量のCSAおよび20 当量のパラホルムアルデヒドを添加し、15 分の間隔で4 部に分けた。混合物を放置して冷却し、120 mlの トルエンで希釈し、5% NaHCO3 および水で洗浄した。溶媒の蒸発後、残渣を15 mlの CHCl3 + 15 mlの TFA + 700 μlの Et3SiHに溶解した; 混合物を暗所で42 時間放置して撹拌した。溶媒の蒸発後、残渣をシリカゲルでのろ過により精製した。総収率: 90%
【0041】
直鎖状ペプチドを実施例 1に記載のように固相で合成し、上記のように調製した第3 アミノ酸としてのFmoc-N-Me-Phe-(4-Pht-N-CH2)-COOHを挿入した。この場合は樹脂でのN-Fmoc-末端の脱保護をDMF中の溶液中の30% ジイソプロピルアミン (300 当量) を用いて行った(フタルイミドが存在したため)。閉環後、500 mgのペプチドを10 mlの熱い無水 EtOHに溶解し、それに、エタノール中の0.9 mlのNH2-NH2・H2O 1 M溶液を添加した。還流しながら2 時間加熱した後、溶媒を蒸発させ、残渣を10 mlの DCM + 10 mlの Na2CO3 溶液で激しく撹拌しながら処理した。粗最終生成物を有機相から回収し、蒸発後、分取 RP-HPLC (移動相: 水中52%CH3CN + 0.1% TFA; Rt = 10 分間)により精製した。
【0042】
1H-NMR (CDCl3) δ 8.29-7.66、7.38-7.07、4.95-4.77、4.09、3.41、3.05-2.81、2.51、2.05、1.74、1.40、1.26
【0043】
分子量 (Maldi-Tof): 987
【0044】
実施例 4
c[Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Amp(CO-(CH2)2 -COOH)] (保護された ST2649)の合成
120 mgのシクロペプチド c[Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Amp]・TFA (実施例 1に記載のように調製)を3.6 mlの DCM-DMFの2:1混合物に、化学量論の TEA および 無水コハク酸とともに溶解した。1 時間後、反応混合物を30 mlの DCMで希釈し、水で洗浄した。有機相を、乾燥させ濃縮し、100 mgの 純粋な生成物の残渣を得た。
【0045】
分析 RP-HPLC: カラム: Purosphere STAR(登録商標)、Merck; 移動相: 水中 45% CH3CN + 0.1% TFA; Rt = 13.17 分間
【0046】
1H-NMR(DMSO-d6) δ 8.20-7.75、7.19-7.02、4.58、4.45、4.36、4.30、4.20、4.05、3.00、2.97-2.57、1.83、1.62、1.32
【0047】
分子量 (Maldi-Tof): 1073
【0048】
実施例 5
c(Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-N-Amb-Gly) (保護された ST2701) の合成
6 mlの THF中の1-22 mmolの Boc-一保護 p-キシリレンジアミンの溶液に、1.83 mmolの TEAを添加し、2 mlの THF中の1.22 mmolの ベンジル ブロモアセテートの溶液を滴下した。混合物を撹拌しながら一晩放置し、その後、溶媒を蒸発させ、残渣をフラッシュカラム (CHCl3-EtOAc、9:1)で精製した。0.69 mmolの N-(4-Boc-NH-CH2-ベンジル)-グリシン ベンジルエステルを得た。
【0049】
250 mgの Fmoc-D-Phe-OHを27 mlの DCMに溶解し、40 μlの ジホスゲン および 230 μlの sym-コリジンを添加した; 15 分後、190 mgの先に調製したエステルを添加し、3 mlの DCMに溶解した。3 時間後、80 μlの N-Me-ピペラジンを反応混合物に添加し、10 分間撹拌し、その後混合物を10 mlの DCMで希釈し、抽出を水、HCl 0.5N、水、5% NaHCO3 および 水により行った。溶媒の蒸発後、残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー (DCM-EtOAc、9:1)により精製した。収率: 80%
【0050】
こうして得た6 mlの MeOHに溶解した100 mgの生成物に、76 μlの AcOH および 42 mgの HCOONH4を添加し、混合物を0℃に冷却し、50 mgの 10% Pd/Cを添加した。30 分後、反応混合物をセライトでろ過した。ろ液を乾燥させ、フラッシュカラム (CHCl3-MeOH 9:1) で精製した。収率:90%
【0051】
こうして得た190 mgの生成物を1.2 mlの TFAに溶解し、乾燥させた (Bocの脱保護); 残渣を9 mlの 10% Na2CO3 + 6 mlの ジオキサンに再溶解し、0℃に冷却し、3 mlの ジオキサンで希釈した120 μlの ベンジルオキシカルボニルクロリド溶液を滴下した。室温で1 時間撹拌後、減圧下で蒸発を行い、少容量とし、その後混合物を水で希釈し、pHをHClにより1に下げ、抽出をEtOAcにより行った。溶媒の蒸発後、残渣をシリカゲルでのろ過により精製し、CHCl3-MeOH (8:2)で洗浄した。純粋なジペプチド収率: 82%
【0052】
0.69 mmolの Fmoc-Gly-Resを実施例 1に記載のように処理し、Argの後、先に調製した ジペプチド Fmoc-D-Phe-N(4-Cbz-NH-CH2-ベンジル)-Glを順に添加した。CTHによるCbzの脱保護の後、粗生成物 c(Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-N-Amp-Gly) を分取 RP-HPLC (移動相: 水中50% CH3CN + 0.1% TFA; Rt = 10.5 分間)により精製した。
【0053】
1H-NMR (DMSO-d6) δ 8.29-7.66、7.44-6.90、5.15、4.72-4.18、4.20、4.05-3.32、3.15、3.06、2.70、2.51、2.49、2.01、1.80-1.35、1.49、1.35、1.23
【0054】
分子量 (Maldi-Tof): 973
【0055】
実施例 6
c(Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Amp(CO-CH2-(OCH2CH2)n-O-CH2-COOH)) の合成
4 mlの 3:1 DCM-DMF 混合物中の200 mgの c(Arg(Pmc)-Gly-Asp(OtBu)-D-Phe-Amp)・TFA (実施例 1に記載のように得た)の溶液に、実質的に過剰のグリコールジ酸を添加した。DIEA (3 当量) および DCC (2 当量)を同溶液に添加した。混合物を一晩撹拌しながら放置し、その後DCMで希釈し、水で洗浄した。
【0056】
粗生成物を有機相の蒸発により回収し、フラッシュクロマトグラフィー (移動相: CHCl3-MeOH 7:3 + 1% AcOH) により精製した; 生成物を含むフラクションをプールし、水で洗浄し、脱水し、乾燥させ、157 mgの純粋な生成物の残渣を得た。
【0057】
分析 RP-HPLC: (カラム: Purosphere STAR(登録商標)、Merck; 移動相: 水中50% CH3CN 50% + 0.1% TFA; Rt = 10.96)
1H-NMR (DMSO-d6) δ 8.35-7.92、7.20-7.00、4.65、4.50、3.94、3.60-3.45、3.00-2.60、2.55、2.45、2.30、2.00、1.70、1.50、1.30、1.20
【0058】
分子量 (Maldi-Tof): 様々な分子量の様々な使用したグリコール類に対応
【0059】
ギマテカン誘導体の合成
【0060】
実施例 7
20-O-Val-ギマテカン - ST2678の合成
特許 EP 1 044 977の実施例 2に記載のように調製した1mmolの ST1481、0.6 mmolの Dy(OTf)3、3 mmolのジメチルアミノピリジンおよび 3 mmolの Boc-Val-OH を15 mlの 無水 CH2Cl2 に懸濁し、-10℃とした; 30 分後、3.1 mmolの DCC を添加し、さらに-10℃で30 分後、反応混合物を室温まで加熱した。2 時間後、反応をさらに20 mlの CH2Cl2で希釈し、1N HCl、NaHCO3で洗浄し、 Na2SO4で乾燥させた。粗生成物をCH2Cl2/MeOH 97:3を用いたSiO2でのクロマトグラフィーにより精製し、生成物を黄色固体として収率 92%にて得た。CH2Cl2/MeOH 96:4中Rf = 0.72
【0061】
分析 RP-HPLC: (カラム: Luna C18、Phenomenex(登録商標); 移動相: 水中45% CH3CN; Rt = 23.0)
1H-NMR (CDCl3) δ 9.05、8.3-8.2、7.9-7.7、7.3、5.8-5.7、5.5-5.4、5.05-4.95、4.4-4.3、2.4-2.2、1.6-1.4、1.1-0.9
【0062】
分子量 (ESI): 646
【0063】
中間体生成物 ST2678 [N-Boc]を0℃でDCM/TFA (75/25)中で定量的収率で脱保護した。このようにして得たST 2678はRGD 誘導体への結合に直接用いることが出来、あるいは、さらなる中間体として、第二の残基 (実施例8-9参照)への結合に用いることが出来る。
【0064】
実施例 8
20-O-Val-Asp-ギマテカン - ST2676 [N-Boc] の合成
【化3】

1mmolのST2678および 3.7 mmolの DIPEAをこの順番で、DMF中0℃の1.2 mmolの好適に保護されたアスパラギン酸、1.8 mmolの HOBt および 1.4 mmolの EDCの溶液に添加した。反応混合物を一晩室温で放置した後、水およびジクロロメタンに分配し、このようにして得た粗生成物をCH2Cl2/MeOH 96:4を用いるSiO2 でのクロマトグラフィーにより精製し、生成物を黄色固体として収率66%にて得た。Rf = CH2Cl2/MeOH 96:4中0.5
【0065】
分析 RP-HPLC: (カラム: Luna C18、Phenomenex(登録商標); 移動相: 水中45% CH3CN; Rt = 23.3)
【0066】
1H-NMR (CDCl3) δ 9.05、8.3-8.2、7.9-7.7、7.4-7.2、6.0-5.9、5.7-5.6、5.5-5.4、5.1、4.8-4.7、4.6-4.5、3.3-3.1、3.0-2.8、2.4-2.2、1.6-1.4、1.-0.9
【0067】
分子量: (ESI): 851
【0068】
カルボキシル基の脱保護
ベンジルエステルをH2/10%Pd-Cにより20 psiにて水素化し、CH2Cl2/MeOH 94:6による精製後、収率は70%であった。Rf = CH2Cl2/MeOH 92:8中 0.52
【0069】
分析 RP-HPLC: (カラム: Luna C18、Phenomenex(登録商標); 移動相: 水中45% CH3CN; Rt = 22.9)
1H-NMR (CDCl3) δ 9.05、8.3-8.2、7.9-7.7、7.5、6.0-5.9、5.7-5.6、5.5-5.4、4.8-4.7、4.5-4.4、3.3-3.1、2.9-2.8、2.4-2.2、1.6-1.4、1.1-0.9
【0070】
分子量 (ESI): 761
【0071】
実施例 9
化合物 [ST2677] の合成
【化4】

1mmolの 脱保護ST2678-[N-Boc]を10 mlの 無水ピリジンに溶解し、溶液を0℃にした後、2.5 mmolの 無水コハク酸を添加した: 混合物を室温で1 時間回復させた(restored)。溶媒を除去し、残渣をCH2Cl2で処理し、有機相を0.5N HClで洗浄した。粗生成物をCH2Cl2/MeOH 95:5を用いるSiO2 でのクロマトグラフィーにより精製し、目的生成物を黄色固体として収率90%にて得た。Rf = CH2Cl2/MeOH 92:8中 0.41
【0072】
分析 RP-HPLC: (カラム; Luna C18、Phenomenex(登録商標); 移動相: 水中45% CH3CN; Rt = 17.0)
1H-NMR (CDCl3) δ 9.05、8.4-8.2、7.9-7.7、7.5、6.4-6.3、5.7-5.6、5.5-5.4、4.6-4.5、3.7、3.0-2.1、1.5、1.1-0.9
【0073】
分子量 (ESI): 646
【0074】
接合誘導体の合成
実施例 10
化合物ST2670 (または ST2671) の合成
【化5】

両者について同じ合成方法を用いた。
【0075】
0℃に冷却した無水 DMF中の1.2 mmolのST2676 [N-Boc] (またはST 2677)の溶液に、2.1 mmolの HOBt および 1.4 mmolの EDCを添加し、その結果得られた混合物を30 分間撹拌した後、1 mmolの ST2581およびDIPEAを順に添加した。一晩放置した後、混合物を水およびジクロロメタンに分配し、次いで有機相をNa2SO4で乾燥させ、粗生成物をCH2Cl2/MeOH 92:8を用いるSiO2でのクロマトグラフィーにより精製し、目的生成物、保護 ST2670 (または保護ST2671)を収率55%〜65%にて得た。
【0076】
分析 RP-HPLC: (カラム: Luna C18、Phenomenex(登録商標); 移動相: 水中45% CH3CN; Rt = 20.1 (保護ST2670)および Rt = 23.2 (保護 ST2671))
分子量 (ESI): 1718 (保護 ST2671)
分子量 (ESI): 1601 (保護ST2670)
【0077】
接合生成物の脱保護
2つの化合物 ST2670およびST2671を得るために、最後の脱保護を両化合物に対して行った。脱保護はCH2Cl2 /TFA 1:1により2 時間行い、混合物を0℃から室温とした; この操作の後、イオン交換樹脂により1ステップで、生成物をヒドロクロリドとして得た。
【0078】
分析 RP-HPLC: (カラム: Luna C18、Phenomenex(登録商標); 移動相: 水中35% CH3CN; Rt = 14.5 (ST2670)および Rt = 14.3(ST2671))
分子量 (ESI): 1294 (ST2671)
分子量 (ESI): 1279 (ST2670)
【化6】

【0079】
生物学的結果
インテグリン αvβ3 受容体への結合
精製した αvβ3 受容体 (Chemicon、カタログ番号CC1020)をバッファー (20 mM Tris、pH 7.4、150 mM NaCl、2 mM CaCl2、1 mM MgCl2、1 mM MnCl2)に希釈して濃度0.5μg/mlとした。100 μlのアリコットを96-ウェルプレートに添加し、一晩+4℃でインキュベートした。プレートを1回バッファー (50 mM Tris、pH 7,4、100 mM NaCl、2 mM CaCl2、1 mM MgCl2、1 mM MnCl2、1% ウシ血清アルブミン)で洗浄し、次いでさらに2 時間室温でインキュベートした。プレートを同じバッファーで2回洗浄し、3 時間 室温で放射性リガンド [125I]エキスタチン0.05 nM(Amersham Pharmacia Biotech)とともに競合リガンドの存在下でインキュベートした。インキュベーションの最後に、ウェルを洗浄し、放射能をガンマカウンター (Packard)を用いて測定した。リガンドの非特異的結合は過剰の非放射性エキスタチン(1 μM)の存在下で測定した。
【0080】
インテグリン αvβ5 受容体への結合
精製した αvβ5 受容体 (Chemicon、カタログ番号CC1020)をバッファー (20 mM Tris、pH 7.4、150 mM NaCl、2 mM CaCl2、1 mM MgCl2、1 mM MnCl2)に希釈して濃度1 μg/mlとした。100 μlのアリコットを96-ウェルプレートに添加し、一晩+4℃でインキュベートした。プレートを1回バッファー (50 mM Tris、pH 7.4、100 mM NaCl、2 mM CaCl2、1 mM MgCl2、1 mM MnCl2、1% ウシ血清アルブミン) で洗浄し、次いでさらに2 時間 室温でインキュベートした。プレートを同じバッファーで2回洗浄し、 3 時間室温で放射性リガンド [125I]エキスタチン0.15 nM (Amersham Pharmacia Biotech) とともに競合リガンドの存在下でインキュベートした。インキュベーションの最後に、ウェルを洗浄し、放射能をガンマカウンター (Packard) を用いて測定した。非特異的リガンド結合は過剰の非放射性エキスタチン(1 μM) の存在下で測定した。
【0081】
IC50 パラメーターの評価
ビトロネクチン受容体に対する生成物の親和性を、IC50 値 ±SD、即ち、特異的放射性リガンド-受容体結合の50%を阻害することが出来る濃度として表した。IC50 パラメーターは「ALLFIT」 ソフトウェアを用いて算出した。
【0082】
結果
以下の表に、カンプトテシン-RGD 接合体およびRGD ペプチドの、ビトロネクチンαvβ3およびαvβ5 受容体に対する親和性の結果を示す。接合体はRGD ペプチドについて観察されたものに匹敵する両方のインテグリン受容体に対する強力な親和性を示した。
【0083】
表 1
ビトロネクチン αvβ3 および αvβ5 受容体に対するカンプトテシン-RGD 接合体の親和性
【表1】

【0084】
表 2
ビトロネクチン αvβ3 および αvβ5 受容体に対するRGD ペプチドの親和性
【表2】

【0085】
様々な腫瘍細胞株に対する接合体の細胞毒性
化合物の生存細胞に対する効果を評価するために、スルホローダミン B試験を用いた。化合物の細胞増殖に対する効果を試験するために、PC3 ヒト前立腺癌、A498 ヒト腎臓癌、A2780 ヒト 卵巣癌細胞および NCI-H460 非小細胞肺癌を用いた。A2780、NCI-H460 およびPC3 腫瘍細胞は10% 胎児ウシ血清 (GIBCO)を含むRPMI 1640で培養し、A498 腫瘍細胞は10% 胎児ウシ血清 (GIBCO)を含むEMEMで培養した。
【0086】
腫瘍細胞を96-ウェル組織培養プレート(Corning)におよそ 10% 集密にて播種し、少なくとも 24時間付着させ、回復させた。様々な濃度の薬物を各ウェルに添加し、そのIC50値(細胞生存を50%阻害する濃度)を算出した。プレートを72時間37℃または2時間インキュベートし、次いで72時間回復させた。処理の最後に、プレートを上清の除去とPBS の添加を3回行うことによって洗浄した。200μl PBSと50 μlの冷80%TCA を添加した。プレートを氷上で少なくとも 1時間インキュベートした。TCAを除去し、プレートを蒸留水に3回浸漬させて洗浄し、紙で40℃で5分間乾燥させた。
【0087】
次いで1% 酢酸中の200 μlの 0.4%スルホローダミン Bを添加した。プレートを室温でさらに30分間インキュベートした。スルホローダミン Bを除去し、プレートを1% 酢酸に3回浸漬させて洗浄し、紙で40℃で5分間乾燥させた。
【0088】
次いで200 μlのTris 10 mM を添加し、プレートを撹拌下に 20分間維持した。生存細胞をMultiskan 蛍光光度計で540 nmの吸光度として測定した。死滅した細胞の量を対照培養と比較してのスルホローダミン B結合のパーセンテージ低下として算出した。
【0089】
IC50値は「ALLFIT」プログラムを用いて算出した。
【0090】
接合体 ST2670はIC50 値0.4 μMにてA2780 卵巣腫瘍細胞に対してもっとも強力な細胞毒性活性を示した。さらに、接合体 ST2670は腫瘍細胞に対してST2677 (遊離カンプトテシン)について観察されるものに匹敵する細胞毒性を示した(表 3)。接合体ST2671も遊離カンプトテシン ST2676にてみられるものに匹敵するPC3 腫瘍細胞に対する強力な細胞毒性を示した。
【0091】
表 3
接合体 ST2670および ST2671および遊離カンプトテシン(ST2676およびST2677)のPC3、A498および A2780 腫瘍細胞に対する細胞毒性(72時間処理)
【表3】

n.d.=測定せず
【0092】
表 4
遊離カンプトテシン 20-O 誘導体(ST2676、ST2677、ST2678)のH460 非小細胞肺癌細胞に対する細胞毒性(2時間処理)
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物、N1-オキシド、ラセミ混合物、その単一エナンチオマー、その単一ジアステレオアイソマー、形態EおよびZ、その混合物、医薬上許容される塩:
【化1】

(I)
[式中:
R1は、U-X-Y 基、ここで:
Uは、非存在または以下の基のいずれか1つ:-COCHR10NH-または CON[(CH2)n2NHR7]-CH2-、ここで R10は、Hまたは以下からなる群から選択される : C6-C14 アリールにより置換されていてもよい直鎖状または分枝状 C1-C4 アルキルまたはアミノ-アルキル C1-C4; R7は、Hまたは直鎖状または分枝状 C1-C4 アルキル; n2は、2〜6の整数;
Xは、非存在または Hまたは以下のなかから選択される基:
-COCHR3NH-、-COCHR6(CH2)n3R4-、-R4-CH2(OCH2CH2)n4OCH2R4-、-R4(Q)R4-、-R5[Arg-NH(CH2)n5CO]n6R5-、-R5-[N-グアニジノプロピル-Gly]n6R5-、ここでn3は、0〜5の整数、n4は、0〜50の整数、n5は、2〜6の整数、n6は、2〜7の整数;
R3は、Hまたは、-COOH、-CONH2、-NH2または-OHにより置換されていてもよい、直鎖状または分枝状 C1-C4 アルキル;
R4 は、以下からなる群から選択される: -NH-、-CO-、-CONH-、-NHCO-;
R5 は、非存在または基 -R4(Q)R4-;
R6 は、HまたはNH2;
Qは、以下からなる群から選択される: 直鎖状または分枝状 C1-C6 アルキレン; 直鎖状または分枝状 C3-C10 シクロアルキレン; 直鎖状または分枝状 C2-C6 アルケニレン; 直鎖状または分枝状 C3-C10 シクロ-アルケニレン; C6-C14 アリーレン; アリーレン (C6-C14)-アルキレン; (C1-C6),アルキレン (C1-C6)-アリーレン (C6-C14); O、N、Sからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む 芳香族または非芳香族 ヘテロサイクリル (C3-C14);
Yは、非存在またはHまたは以下の基
c(Arg-Gly-Asp-AA1-AA2)、
ここで:
c は環状を意味する;
AA1は、以下からなる群から選択される: (D)-Phe、(D)-Trp、(D)-Tyr、(D)-2-ナフチルAla、(D)-4-terブチル-Phe、(D)-4,4'-ビフェニル-Ala、(D)-4-CF3-Phe、(D)-4-アセチルアミン-Phe;
AA2は、以下からなる群から選択される: NW-CH[(CH2)n7-CO]-CO、NW-CH[(CH2)n7-NH]-CO、NW-[4-(CH2)n7-CO]-Phe、NW-[4-(CH2)n7-NH]-Phe、[NW]-Gly、NW-Val、ここで、WはH、直鎖状または分枝状 C1-C6 アルキル、-(CH2)n7-COOHから選択され、ここでn7は、0〜5の整数、4-カルボキシベンジル、4-アミノメチルベンジル;
ただし、XおよびYがともに非存在であることはない]。
【請求項2】
UおよびXが非存在ではない、請求項1の化合物。
【請求項3】
下記式を有する請求項1の化合物、N1-オキシド、ラセミ混合物、その単一エナンチオマー、その単一ジアステレオアイソマー、形態EおよびZ、その混合物、医薬上許容される塩。
【化2】

【請求項4】
下記式を有する請求項1の化合物、N1-オキシド、ラセミ混合物、その単一エナンチオマー、その単一ジアステレオアイソマー、形態EおよびZ、その混合物、医薬上許容される塩。
【化3】

【請求項5】
以下の反応スキームのいずれかによって行われる請求項1-4の化合物の調製方法:
7-t-but-CP + U1-X1-Y1 または、
7-t-but-CP-U1 + X1-Y1 または、
7-t-but-CP-U1-X1 + Y1 または、
7-t-but-CP + U1 + X1 + Y1 または、
7-t-but-CP-U1 + X1 + Y1 ;
ここで、7-t-but-CPは7-t-ブトキシイミノメチルカンプトテシンを表し、U1、X1およびY1はそれぞれ最終的に適宜に官能化および/または保護される式Iで定義した基U、X およびYを表す。
【請求項6】
請求項1-4の少なくとも1つの化合物を活性成分として、少なくとも1つの医薬上許容される賦形剤 および/または媒体と混合して含む医薬組成物。
【請求項7】
医薬の調製のための請求項1-4の化合物の使用。
【請求項8】
トポイソメラーゼ1阻害活性を有する医薬の調製のための請求項1-4の化合物の使用。
【請求項9】
抗癌活性を有する医薬の調製のための請求項8の使用。
【請求項10】
該医薬が、非小細胞および小細胞肺癌、結腸直腸腫瘍、前立腺癌、神経膠芽腫および神経芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、消化器癌、肝臓癌、カポジ肉腫、腎臓癌、肉腫および骨肉腫、精巣癌、乳癌、膵臓癌、黒色腫、膀胱癌および頭頸部癌の治療に有用である、請求項9の使用。
【請求項11】
転移形態の予防または治療に有用な医薬の調製のための請求項1-4の化合物の使用。
【請求項12】
抗寄生虫活性を有する医薬の調製のための請求項8の使用。
【請求項13】
抗ウイルス活性を有する医薬の調製のための請求項8の使用。

【公表番号】特表2007−537243(P2007−537243A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512729(P2007−512729)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【国際出願番号】PCT/IT2005/000245
【国際公開番号】WO2005/110486
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591043248)シグマ−タウ・インドゥストリエ・ファルマチェウチケ・リウニテ・ソシエタ・ペル・アチオニ (92)
【氏名又は名称原語表記】SIGMA−TAU INDUSTRIE FARMACEUTICHE RIUNITE SOCIETA PER AZIONI
【出願人】(591030835)
【氏名又は名称原語表記】ISTITUTO NAZIONALE PER LO STUDIO E LA CURA DEI TUMORI
【Fターム(参考)】