説明

3−ペンテンニトリルの製造方法

【課題】1,3−ブタジエンへのシアン化水素化により3−ペンテンニトリルを2−メチル−3−ブタジエンを実質的に含まないように製造し、1,3−ブタジエンを循環使用し、触媒をペンテンニトリルから回収して循環させる方法を提供する。
【解決手段】(a)1,3−ブタジエンを少なくとも1種の触媒上でシアン化水素と反応させて、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び1,3−ブタジエンを含む流1を得る段階、(b)流1を塔内で蒸留し、1,3−ブタジエンが濃縮された流2を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含みかつ1,3−ブタジエンが減少した流3を塔底生成物として得る段階、(c)流3を塔内で蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流4を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流5を塔の側方排出物として、上記少なくとも1種の触媒を含む流6を塔底生成物として得る段階、(d)流5を蒸留して、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流7を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリルを含む流8を塔底生成物として得る段階、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−ペンテンニトリルを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アジポニトリルはナイロンの製造において重要な出発材料であり、1,3−ブタジエンに2個のシアン化水素を付加させることにより得られる。第1段階のシアン化水素付加では、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加により3−ペンテンニトリルが得られる。形成される副生成物は、主として、2−メチル−3−ブテンニトリル、4−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、C9ニトリル及びメチルグルタロニトリルである。続く第2段階のシアン化水素付加では、3−ペンテンニトリルがシアン化水素と反応してアジポニトリルが得られる。両段階のシアン化水素付加が、ニッケル(0)−リン錯体によって触媒される。
【0003】
第2段階のシアン化水素付加において、使用される3−ペンテンニトリルが2−メチル−3−ブテンニトリルを含んでいないことが非常に重要である。というのは、そうしないと、2−メチル−3−ブテンニトリルにシアン化水素が付加して望ましくない副生成物のメチルグルタロニトリルが生成するからである。
【0004】
ニッケルが触媒するオレフィンへのシアン化水素付加についての一般的な知見は、Tolmanらによる“Adv.Cat.33,1−46(1985)”にまとめられている。
【0005】
式Ni[P(OR)34で表わされるニッケル触媒を使用した1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加は、US3496215号公報に記載されている。この方法の問題点は、1,3−ブタジエン又は触媒を完全に回収するための好適な技術がなんら示されていないことである。
【0006】
US5693843号公報、US5696280号公報、US5821378号公報及びUS5981772号公報は、多座配位リン配位子による1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加を開示しているが、それぞれの形態において触媒成分を回収するための好適な手順が開示されていない。
【0007】
1個以上の反応器におけるシアン化水素付加の実施及びこれらの反応器の接続はUS4810815号公報に記載されている。攪拌槽又は一連の攪拌槽の連続操作の可能性が記載されているものの、実施例には半回分法のみが詳細に記載されており、実施例の記載からは、連続的な攪拌槽ではどのような条件で操作を行えばよいのか、当業者は直接理解することができない。
【0008】
オレフィンへのシアン化水素付加における有機ニトリルから有機リン化合物及びその金属錯体を除去する方法は、US3773809号公報に記載されている。この除去は、生成物をシクロパラフィン又はパラフィン系炭化水素に接触することにより行われる。この操作により、液体多相系が形成される。この触媒成分を抽出によって除去、回収する方法は、1,3−ブタジエンのシアン化水素付加には適用できない。というのは、反応生成物におけるジニトリルの濃度が低すぎるからである。
【0009】
【特許文献1】US3496215号公報
【特許文献2】US5693843号公報
【特許文献3】US5696280号公報
【特許文献4】US5821378号公報
【特許文献5】US5981772号公報
【特許文献6】US4810815号公報
【特許文献7】US3773809号公報
【非特許文献1】Adv.Cat.33,1−46(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加によって3−ペンテンニトリルを製造するための統合された方法であって、3−ペンテンニトリルを2−メチル−3−ブタジエンを実質的に含まないように製造し、使用された1,3−ブタジエンを好ましくは生産収率を向上させるために循環させ、触媒を好ましくはペンテンニトリルから回収してその経済的な使用のために循環させる方法を提供することである。
【0011】
2−メチル−3−ブテンニトリルがシアン化水素付加の条件下で特にニッケル(0)錯体の存在下で反応し、メチルグルタロニトリルが生成することが知られている。従って本発明の別の目的は、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加によって3−ペンテンニトリルを製造する方法であって、好ましくは2−メチル−3−ブテンニトリルがほとんどシアン化水素付加工程に循環されない方法を提供することである。従って、本発明の方法では、循環された触媒流又は1,3−ブタジエンのうちの循環された部分には、実質的に2−メチル−3−ブテンニトリルが含まれないのが望ましい。
【0012】
その上、均一に溶解したシアン化水素付加触媒は熱的に不安定であることが知られている。従って本発明の更なる目的は、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加によって3−ペンテンニトリルを製造する方法であって、触媒が好ましくは熱応力にほとんど晒されない方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的は、本発明の3−ペンテンニトリルの製造方法によって達成される。
【0014】
本発明の方法は、以下に示す各段階によって特徴づけられる。
【0015】
(a)1,3−ブタジエンを少なくとも1種の触媒上でシアン化水素と反応させて、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び1,3−ブタジエンを含む流1を得る段階、
(b)流1を塔内で蒸留し、1,3−ブタジエンが濃縮された流2を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含みかつ1,3−ブタジエンが減少した流3を塔底生成物として、得る段階、
(c)流3を塔内で蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流4を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流5を塔の側方排出物として、上記少なくとも1種の触媒を含む流6を塔底生成物として、得る段階、
(d)流5を蒸留して、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流7を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリルを含む流8を塔底生成物として、得る段階。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
段階(a)は、1,3−ブタジエンとシアン化水素との少なくとも1種の触媒上での反応を含む。使用される触媒は、ニッケル(0)錯体触媒である。
【0017】
リン配位子を含むNi(0)錯体及び/又は遊離リン配位子は、均一に溶解しているのが好ましい。
【0018】
ニッケル(0)錯体のリン配位子及び遊離リン配位子は、単座配位又は二座配位のホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット、及びホスホニットから選択されるのが好ましい。
【0019】
これらのリン配位子として、式(I)
P(X11)(X22)(X33) (I)
で表わされる化合物が好ましい。本発明に関する限り、式(I)で表わされる化合物は単一の化合物であっても良く、上述の式で表わされる異なる化合物の混合物であっても良い。
【0020】
本発明では、X1、X2、及びX3はそれぞれ独立に酸素又は単結合を表わす。X1、X2、及びX3の全部が単結合の場合には、化合物(I)は式P(R123)で表わされるホスフィンである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
【0021】
1、X2、及びX3のうちの2個が単結合であり、1個が酸素である場合には、化合物(I)は式P(OR1)(R2)(R3)又はP(R1)(OR2)(R3)又はP(R1)(R2)(OR3)で表わされるホスフィニットである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
【0022】
1、X2、及びX3のうちの1個が単結合であり、2個が酸素である場合には、化合物(I)は式P(OR1)(OR2)(R3)又はP(R1)(OR2)(OR3)又はP(OR1)(R2)(OR3)で表わされるホスホニットである。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
【0023】
好ましい形態では、X1、X2、及びX3の全てが酸素である。すなわち、化合物(I)は式P(OR1)(OR2)(OR3)で表わされるホスフィットであるのが好ましい。R1、R2、及びR3の意味は以下に示す。
【0024】
本発明において、R1、R2、及びR3はそれぞれ互いに独立に同一であっても異なっていても良い有機基である。R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に、アルキル基、好ましくは炭素原子数が1〜10個であるアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、アリール基、例えばフェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、1−ナフチル、2−ナフチル、又はヒドロカルビル基、好ましくは炭素原子数が1〜20個のヒドロカルビル基、例えば1,1´−ビフェノール、1,1´−ビナフトールである。R1、R2、及びR3は互いに直接結合していても良く、すなわち中心リン原子を介して単独で結合していなくとも良い。R1、R2、及びR3は互いに直接結合していないのが好ましい。
【0025】
好ましい形態では、R1、R2、及びR3は、フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリルからなる群から選択される基である。特に好ましい形態では、R1、R2、及びR3のうちの最大2個がフェニル基である。
【0026】
他の好ましい形態では、R1、R2、及びR3のうちの最大2個がo−トリル基である。
【0027】
使用可能な特に好ましい化合物Iは、式Ia
(o−トリル−O−)w(m−トリル−O−)x(p−トリル−O−)y(フェニル−O−)zP (Ia)
で表わされる化合物である。式中、w、x、y、zはそれぞれ自然数であるが、w+x+y+z=3であり、w,z≦2である。
【0028】
このような式(Ia)で表わされる化合物としては、例えば、(p−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(m−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(o−トリル−O−)(フェニル−O−)2P、(p−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)2(フェニル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(フェニル−O−)P、(p−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)3P、(o−トリル−O−)(m−トリル−O−)2P、(o−トリル−O−)2(m−トリル−O−)P、又はこれらの化合物の混合物が挙げられる。
【0029】
(m−トリル−O−)3P、(m−トリル−O−)2(p−トリル−O−)P、(m−トリル−O−)(p−トリル−O−)2P、及び(p−トリル−O−)3Pを含む混合物は、例えば、原油を蒸留精製して得られるm−クレゾール及びp−クレゾールを含む混合物、特に2:1のモル比でm−クレゾール及びp−クレゾールを含む混合物を、三ハロゲン化リン、例えば三塩化リンと反応させることによって得ることができる。
【0030】
他の同様に好ましい形態では、リン配位子はDE−A−19953058に詳細に記載されているような、式Ib
P(O−R1x(O−R2y(O−R3z(O−R4p (Ib)
で表わされるホスフィットである。
【0031】
式中、R1は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo位の位置にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo位の位置に芳香族置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo位の位置に縮合芳香族環を有している芳香族基を意味し、
2は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してm位の位置にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してm位の位置に芳香族置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してm位の位置に縮合芳香族環を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo位の位置に水素を有する芳香族基を意味し、
3は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してp位の位置にC1−C18−アルキル置換基を有している芳香族基、又は芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してp位の位置に芳香族置換基を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo位の位置に水素を有する芳香族基を意味し、
4は、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo、m、及びp位の位置にR1、R2及びR3に対して上述した基以外の基を有している芳香族基であって、芳香族環におけるリン原子と結合している酸素に対してo位の位置に水素を有する芳香族基を意味し、
xは1又は2を意味し、
y、z、pはそれぞれ独立に0、1又は2を意味し、x+y+z+p=3である。
【0032】
好ましい式(Ib)で表わされるホスフィットは、DE−A−19953058号公報に記載されている。R1は、好ましくはo−トリル、o−エチルフェニル、o−n−プロピルフェニル、o−イソプロピルフェニル、o−n−ブチルフェニル、o−s−ブチルフェニル、o−t−ブチルフェニル、(o−フェニル)フェニル、又は1−ナフチルであることができる。
【0033】
2は、好ましくはm−トリル、m−エチルフェニル、m−n−プロピルフェニル、m−イソプロピルフェニル、m−n−ブチルフェニル、m−s−ブチルフェニル、m−t−ブチルフェニル、(m−フェニル)フェニル、又は2−ナフチルであることができる。
【0034】
3は、好ましくはp−トリル、p−エチルフェニル、p−n−プロピルフェニル、p−イソプロピルフェニル、p−n−ブチルフェニル、p−s−ブチルフェニル、p−t−ブチルフェニル、(p−フェニル)フェニルであることができる。
【0035】
4は、好ましくはフェニルである。pは好ましくは0である。式(Ib)におけるx,y,z及びpに対して、以下のような可能性が存在する。
【0036】
【表1】

【0037】
好ましい式(Ib)で表わされるホスフィットは、pが0であり、R1、R2及びR3がそれぞれ独立にo−イソプロピルフェニル、m−トリル、及びp−トリルから選択され、R4がフェニルである化合物である。
【0038】
特に好ましい式(Ib)で表わされるホスフィットは、R1がo−イソプロピルフェニル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上表に示された値を有する化合物、R1がo−トリル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上表に示された値を有する化合物、さらに、R1が1−ナフチル、R2がm−トリル、R3がp−トリルで各指数が上表に示された値を有する化合物、R1がo−トリル、R2が2−ナフチル、R3がp−トリルで各指数が上表に示された値を有する化合物、及び、R1がo−イソプロピルフェニル、R2が2−ナフチル、R3がp−トリルで各指数が上表に示された値を有する化合物及びこれらのホスフィットの混合物である。
【0039】
式(Ib)で表わされるホスフィットは、
a)三ハロゲン化リンをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させ、ジハロゲン化リンモノエステルを生成させ、
b)得られたジハロゲン化リンモノエステルをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させ、モノハロゲン化リンジエステルを生成させ、
c)得られたモノハロゲン化リンジエステルをR1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールと反応させ、式(Ib)で表わされるホスフィットを生成させる、
ことにより得ることができる。
【0040】
反応は、3段階の分離した段階で行うことができる。同様に、上述の3段階のうちの2段階、すなわち、a)段階とb)段階又はb)段階とc)段階、を組み合わせることもできる。また、a)、b)、c)段階の全てを互いに組み合わせることもできる。
【0041】
1OH、R2OH、R3OH及びR4OH又はこれらの混合物からなる群から選択されたアルコールの量及び反応に適したパラメーターは、数回の簡単な予備実験により決定することができる。
【0042】
有用な三ハロゲン化リンは、原則として全ての三ハロゲン化リンであるが、使用されるハロゲンがCl、Br、I、特にClである化合物又はこれらの混合物が好ましい。三ハロゲン化リンとして、種々の同一の又は異なるハロゲンで置換されたホスフィンの混合物を使用することもできる。特に好ましいのはPCl3である。ホスフィット(Ib)の製造における反応条件及び精製に関する詳細は、DE−A−19953058号公報に記載されている。
【0043】
ホスフィット(Ib)はまた、異なるホスフィット(Ib)の混合物の形態で、配位子として使用することができる。このような混合物は、例えばホスフィット(Ib)の製造において得ることができる。
【0044】
しかしながら、多座配位、特に二座配位のリン配位子が好ましい。したがって、好ましく使用される配位子は、式(II)
【0045】
【化1】

で表わされる配位子である。式中、X11、X12、X13、X21、X22、X23は、それぞれ独立に酸素又は単結合を意味し、
11、R12はそれぞれ同一であっても異なっていても良く、単独の又は架橋した有機基を意味し、
21、R22はそれぞれ同一であっても異なっていても良く、単独の又は架橋した有機基を意味し、
Yは架橋基を意味する。
【0046】
本発明に関する限り、化合物IIは単一の化合物でも良く、上述の式で表わされる異なる化合物の混合物であっても良い。
【0047】
好ましい形態では、X11、X12、X13、X21、X22、X23は酸素であることができる。このような場合には、架橋基Yはホスフィット基に結合している。
【0048】
他の好ましい形態では、X11、X12、X13で囲まれているリン原子がホスホニットの中心原子であるように、X11及びX12が酸素であり、X13が単結合であることができ、又はX11及びX13が酸素であり、X12が単結合であることができる。この場合には、X21、X22、X23で囲まれているリン原子がホスフィット、ホスホニット、ホスフィニット又はホスフィン、好ましくはホスホニットの中心原子であるように、X21、X22、X23はそれぞれ酸素であることができ、又はX21及びX22が酸素であり、X23が単結合であることができ、又は、X21及びX23が酸素であり、X22が単結合であることができ、又は、X23が酸素であり、X21及びX23がそれぞれ単結合であることができ、又は、X21が酸素であり、X22及びX23がそれぞれ単結合であることができ、又はX21、X22、X23がそれぞれ単結合であることができる。
【0049】
他の好ましい形態では、X11、X12、X13で囲まれているリン原子がホスフィニットの中心原子であるように、X13が酸素であり、X11及びX12が単結合であることができ、又はX11が酸素であり、X12及びX13が単結合であることができる。この場合には、X21、X22、X23で囲まれているリン原子がホスフィット、ホスフィニット又はホスフィン、好ましくはホスフィニットの中心原子であるように、X21、X22、X23はそれぞれ酸素であることができ、又はX23が酸素であり、X21及びX22が単結合であることができ、又は、X21が酸素であり、X22及びX23が単結合であることができ、又はX21、X22、X23がそれぞれ単結合であることができる。
【0050】
他の好ましい形態では、X11、X12、X13で囲まれているリン原子がホスフィンの中心原子であるように、X11、X12、X13はそれぞれ単結合であることができる。このような場合には、X21、X22、X23で囲まれているリン原子がホスフィット又はホスフィン、好ましくはホスフィンの中心原子であるように、X21、X22、X23はそれぞれ酸素であることができ、又はX21、X22、X23がそれぞれ単結合であることができる。
【0051】
架橋基Yは、例えばC1−C4−アルキル、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、ハロゲン化アルキル、例えばトリフルオロメチル、アリール、例えばフェニルで置換されたアリール基又は非置換のアリール基であるのが好ましく、好ましくは芳香族環に6〜20個の炭素原子を有する基、特にピロカテコール、ビス(フェノール)又はビス(ナフトール)である。
【0052】
11、R12はそれぞれ同一であっても異なっていても良い有機基を意味することができる。好ましいR11、R12は、非置換であっても良く又は1個以上の置換基、特にC1−C4アルキル、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、ハロゲン化アルキル、例えばトリフルオロメチル、アリール、例えばフェニル、又は非置換アリール基で置換されていても良いアリール基、好ましくは炭素原子数が6〜10個のアリール基である。
【0053】
21、R22はそれぞれ同一であっても異なっていても良い有機基を意味することができる。好ましいR21、R22は、非置換であっても良く又は1個以上の置換基、特にC1−C4アルキル、ハロゲン、例えばフッ素、塩素、臭素、ハロゲン化アルキル、例えばトリフルオロメチル、アリール、例えばフェニル、又は非置換アリール基で置換されていても良いアリール基、好ましくは炭素原子数が6〜10個のアリール基である。
【0054】
11、R12は、それぞれ単独の基であっても良く架橋していても良い。R21、R22もまた、それぞれ単独の基であっても良く架橋していても良い。R11、R12、R21、R22はそれぞれが単独の基であっても良く、2つが単独の基であって2つが架橋していても良く、4つ全てが上述のように架橋していても良い。
【0055】
特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5723641号公報において特定されている式I、II、III、IV及びVで表わされる化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5512696号公報において特定されている式I、II、III、IV、V、VI、VIIで表わされる化合物、特に例1〜31で使用されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5821378号公報において特定されている式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV及びXVで表わされる化合物、特に例1〜73で使用されている化合物である。
【0056】
特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5512695号公報において特定されている式I、II、III、IV、V、VIで表わされる化合物、特に例1〜6で使用されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5981772号公報において特定されている式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、及びXIVで表わされる化合物、特に例1〜66で使用されている化合物である。
【0057】
特に好ましい形態では、有用な化合物はUS6127567号公報において特定されている化合物、特に例1〜29で使用されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はUS6020516号公報において特定されている式I、II、III、IV、V、VI、VII、VIII、IX及びXで表わされる化合物、特に例1〜33で使用されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5959135号公報において特定されている化合物、特に例1〜13で使用されている化合物である。
【0058】
特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5847191号公報において特定されている式I、II、IIIで表わされる化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はUS5523453号公報において特定されている化合物、特に式1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20及び21で表わされる化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はWO01/14392号パンフレットにおいて特定されている化合物であり、特に式V、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、XV、XVI、XVII、XXI、XXII、XXIIIで表わされる化合物である。
【0059】
特に好ましい形態では、有用な化合物はWO98/27054号パンフレットにおいて特定されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はWO99/13983号パンフレットにおいて特定されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はWO99/64155号パンフレットにおいて特定されている化合物である。
【0060】
特に好ましい形態では、有用な化合物はドイツ特許出願DE10038037号公報において特定されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はドイツ特許出願DE10046025号公報において特定されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はドイツ特許出願DE10150285号公報において特定されている化合物である。
【0061】
特に好ましい形態では、有用な化合物はドイツ特許出願DE10150286号公報において特定されている化合物である。特に好ましい形態では、有用な化合物はドイツ特許出願DE10207165号公報において特定されている化合物である。本発明のさらに別の特に好ましい形態では、有用なリンキレート配位子はUS2003/100442A1号公報において特定されている化合物である。
【0062】
本発明のさらに別の特に好ましい形態では、有用なリンキレート配位子は、本出願の優先日より前の優先日を有するものの本出願の優先日の時点ではまだ公開されていない2003年10月30日のドイツ特許出願DE10350999.2号において特定されている化合物である。
【0063】
上述の化合物I、Ia、Ib、II及びその製造方法自体は公知である。使用されるリン配位子は、化合物I、Ia、Ib、IIのうちの少なくとも2種を含む混合物であっても良い。
【0064】
本発明の方法における特に好ましい形態では、ニッケル(0)錯体のリン配位子及び/又は遊離リン配位子は、トリトリルホスフィット、二座配位リンキレート配位子、及び式(Ib)
P(O−R1x(O−R2y(O−R3z(O−R4p (Ib)
で表わされ、R1、R2及びR3がそれぞれ独立にo−イソプロピルフェニル、m−トリル、及びp−トリルから選択され、R4がフェニルであり、xが1又は2であり、y、z、pがそれぞれ独立に0、1、又は2であり、x+y+x+p=3であるホスフィット又はこれらの混合物である。
【0065】
本発明の方法における段階(a)は、当業者に公知の適当な装置で行うことができる。反応のために有用な装置は、この目的のために慣用的な、例えば、Kirl−Othmerの“Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.,Vol.20,John Wiley & Sons,New York,(1996)”の1040〜1055頁に記載されている装置、例えば攪拌槽反応器、ループ反応器、ガス循環反応器、気泡塔反応器又は管状反応器であり、これらの反応器は必要に応じて反応熱除去装置を有していても良い。反応は、複数の、例えば2個又は3個の装置内で行うことができる。
【0066】
本発明の方法の好ましい形態では、逆混合が可能な反応器又は一連の逆混合が可能な反応器が好ましいことがわかっている。シアン化水素の導入に関して十字流モードで操作される一連の逆混合が可能な反応器が、特に有用であることがわかっている。
【0067】
シアン化水素付加は、溶媒の存在下又は不存在下で行うことができる。溶媒を使用する場合には、溶媒は設定された反応温度及び反応圧力の下で液体であり、上記不飽和炭化水素及び上記少なくとも1種の触媒に対して不活性である必要がある。一般に、使用される溶媒は炭化水素、例えばベンゼン若しくはキシレン、又はニトリル、例えばアセトニトリル若しくはベンゾニトリルである。しかしながら、配位子を溶媒として使用するのが好ましい。
【0068】
反応は、回分法、連続法又は半回分法により行うことができる。
【0069】
シアン化水素付加反応は、装置に全ての反応物を充填して行うことができる。しかしながら、装置に触媒、上記不飽和有機化合物及び場合により溶媒を充填するのが好ましい。気体状のシアン化水素を、反応混合物の表面上を通過させるか、又は反応混合物中を流通させるのが好ましい。装置内への供給手順に関しては、さらに、装置に触媒、シアン化水素及び場合により溶媒を充填し、上記不飽和化合物をゆっくりと反応混合物中に導入する手順が挙げられる。その代わりに、反応物を反応器に導入し、反応混合物を反応温度下に置き、この温度下でシアン化水素を液体の形態で反応混合物に添加しても良い。さらに、シアン化水素を反応温度に加熱する前に添加しても良い。反応は、慣用的なシアン化水素付加の温度、雰囲気、反応時間等の条件下で行われる。
【0070】
シアン化水素付加を1以上の攪拌工程で連続的に行うのが好ましい。複数の工程を使用する場合には、各工程を直列につなげて行うのが好ましい。この場合には、生成物がある工程から直接次の工程に移送される。シアン化水素は、第1の工程に直接供給することができ、又はそれぞれの工程の間に直接供給することができる。
【0071】
本発明の方法を半回分法で行う場合には、まず触媒成分と1,3−ブタジエンを反応器に導入し、シアン化水素を反応時間の間中反応混合物に供給するのが好ましい。
【0072】
反応は、絶対圧力が好ましくは0.1〜500MPa、より好ましくは0.5〜50MPa、特に好ましくは1〜5MPaで行われ、温度が好ましくは273〜473K、より好ましくは313〜423K、特に好ましくは333〜393Kの条件で行われる。有利な液体反応器相の平均滞留時間は、1反応器当たり、0.001〜100時間、好ましくは0.05〜20時間、より好ましくは0.1〜5時間の範囲であることが判っている。
【0073】
一形態では、反応を液相において気相及び場合により固体懸濁相の存在下で行うことができる。出発材料であるシアン化水素と1,3−ブタジエンは、それぞれ液体又は気体の形態で導入することができる。
【0074】
他の形態では、反応器の圧力を、1,3−ブタジエン、シアン化水素及び上記少なくとも1種の触媒のような全ての供給原料が液体の形態で導入されかつこれらが反応混合物中に液相で存在するように調整し、反応を液相で行うことができる。固体懸濁相が反応混合物中に存在しても良く、例えば特にニッケル(II)化合物を含む触媒組成物の分解生成物からなる少なくとも1種の触媒と共に導入されても良い。
【0075】
段階(a)では、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び未転化の1,3−ブタジエン、さらにまた未転化のシアン化水素の残留物を含む流1が得られる。この流1は、以下の組成、即ち、それぞれ流1の全組成に対して、1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%の上記少なくとも1種の触媒、0.1〜50質量%、より好ましくは1〜25質量%の1,3−ブタジエン、1〜80質量%、より好ましくは10〜50質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル及び他のペンテンニトリル異性体を含むペンテンニトリル、0.1質量ppm〜10質量%、より好ましくは10質量ppm〜1質量%のシアン化水素、を有しているのが好ましい。
【0076】
3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び未転化の1,3−ブタジエンを含む流1は、次いで、段階(b)で蒸留装置に移送される。この蒸留装置では、流1を蒸留し、1,3−ブタジエンが濃縮された流2を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含みかつ1,3−ブタジエンが減少した流3を塔底生成物として得る。
【0077】
本発明の方法の段階(b)は、当業者に公知の適当な装置で行うことができる。蒸留のための好適な装置は、例えば、Kirl−Othmerの“Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.,Vol.8,John Wiley & Sons,New York,(1996)”の334〜348頁に記載されている、網目段塔、泡錘段塔、構造化充填物若しくは不規則な充填物を備えた塔、一段式蒸発器、例えば、流下薄膜型蒸発器、薄膜型蒸発器、フラッシュ蒸発器、多相螺旋管蒸発器、自然循環蒸発器、強制循環フラッシュ蒸発器、のような装置である。蒸留は、複数の装置、例えば2個若しくは3個の装置で行うことができるが、単一の装置で行うのが好ましい。
【0078】
本発明の方法の好ましい形態では、構造化充填物を備えた塔内部部品が蒸留装置内に存在し、この内部部品の分離段数は、好ましくは2〜60段、より好ましくは3〜40段、特に好ましくは4〜20段である。
【0079】
本発明の方法の特に好ましい形態では、段階(b)の蒸留装置に関連する少なくとも1個の蒸発処理装置は、例えば流下薄膜型蒸発器、多相螺旋管蒸発器、薄膜型蒸発器又は短経路蒸発器によって達成されるように、蒸発されるべき材料の蒸発器の表面との接触時間が短くかつ蒸発器表面の温度が極めて低く、従って蒸発されるべき材料の熱損傷が極めて少なくなるように設計される。
【0080】
本発明の方法の好ましい形態では、段階(b)の蒸留装置は、分離した塔底と共に操作される。この場合には、一般に流3の量の数倍の量の循環流が、問題の蒸留塔の第1の塔底から蒸発器に導かれ、この蒸発器からの液体流出物流が直接第1の塔底に戻されず、その代わりに第1の塔底とは分離した第2の塔底に収集され、流3が第2の塔底から得られ、蒸留器の循環流の残余の部分が第1の塔底へと流れ込む。第2の塔底から流3として得られる混合物は、第1の塔底から排出された蒸発器の循環流に比較して、低沸点物が減少した混合物である。
【0081】
本発明の方法の別の好ましい形態では、1個以上の蒸留装置の塔底域における液相の平均滞留時間の合計が10時間未満、より好ましくは5時間未満、特に好ましくは1時間未満である条件で、蒸留が行われる。
【0082】
本発明の方法のさらに好ましい形態では、蒸留装置の塔頂での凝縮が、塔頂の流出物の支流が凝縮器内に戻って流れるように行われる。
【0083】
本発明の方法の別の好ましい形態では、直接凝縮器で蒸留を行うことができ、この場合には、好ましくは構造化充填物、この充填物の下方の収集器、この収集器からの液体排出口、この液体排出口に取り付けられかつポンプと熱交換器を備えたポンプ式循環路、及び循環路でポンプでくみ上げられた液体流を上記収集器の上の充填物に流す少なくとも1個の装置を備えた塔部内で、凝縮が行われる。
【0084】
1,3−ブタジエンの段階(a)における転化が部分的であっても本発明の方法における1,3−ブタジエンの歩留まりを向上させるために、1,3−ブタジエンが濃縮された流2を段階(a)に循環させるのが好ましい。流2の段階(a)への循環は、所望により流の一部であっても良い。
【0085】
別の形態では、段階(a)における反応のために付加的に必要な1,3−ブタジエンを、塔の搭頂域または流2に添加することができる。
【0086】
別の形態では、“Ullmann´s Encyclopedia Of Industrial Chemistry,6th Edition,2000 Electronic Release, chapter ‘Butadiene−6.Stabilization,Storage and Transportation’”の記載に従って、添加された1,3−ブタジエンがt−ブチルピロカテコール又は2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールのような安定剤を含む。
【0087】
本発明の方法の特に好ましい形態では、段階(a)で直接使用されるか又は段階(b)において添加されて流2を介して段階(a)に移送される1,3−ブタジエンから、これを細孔サイズが10オングストローム未満であるモレキュラーシーブに接触させるか又はアルミナと接触させることによって、水及び存在する場合には安定剤を除去する。
【0088】
別の特に好ましい形態では、段階(a)で直接使用されるか又は流2に供給される1,3−ブタジエンを安定剤を用いずに使用し、この場合には、1,3−ブタジエンの重合を防止し、特にポップコーン状のポリマー塊が成長するのを防止するために、圧力条件を適当に選択して、段階(b)の蒸留装置の塔頂域における凝縮温度を293K未満に維持する。
【0089】
段階(b)における絶対圧は、0.001〜100barが好ましく、0.01〜10barがより好ましく、0.5〜5barが特に好ましい。蒸留は、蒸留装置の塔底の温度が、好ましくは30〜140℃、より好ましくは50〜130℃、特に好ましくは60〜120℃になるように行う。蒸留は、蒸留装置の搭頂の凝縮温度が好ましくは−50〜140℃、より好ましくは−15〜60℃、特に好ましくは5〜45℃になるように行う。本発明の方法の特に好ましい形態では、上述の温度範囲が蒸留装置の塔頂と塔底の両方で維持される。
【0090】
蒸留装置の搭頂での還流比は、流2が1〜1000ppm、より好ましくは5〜500ppm、特に好ましくは10〜200ppmの2−メチル−3−ブテンニトリルを含むように調整するのが好ましい。
【0091】
このことにより、段階(a)において反応してメチルグルタロニトリルを形成する2−メチル−3−ブテンニトリルがほとんど含まれていない1,3−ブタジエンを還流させることができる。
【0092】
段階(b)では、1,3−ブタジエンが濃縮された流2が搭頂生成物として、1,3−ブタジエンが減少した流3が塔底生成物として、得られる。“1,3−ブタジエンが濃縮された”、“1,3−ブタジエンが減少した”という表現は、段階(b)において使用された流1の1,3−ブタジエン含有量との比較に基づいている。
【0093】
本発明の方法の好ましい形態では、1,3−ブタジエンが濃縮された流2が、合計で50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは85〜99質量%の1,3−ブタジエン及びブテン異性体を含み、さらに合計で0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%、特に10質量ppm〜1質量%のペンテンニトリルを含む。ペンテンニトリルとしては、流2中に、実質的に2−メチル−3−ブテンニトリルとトランス−3−ペンテンニトリルとが存在する。
【0094】
本発明の方法の好ましい形態では、1,3−ブタジエンが減少した流3が、それぞれ流3の全組成に対して合計で0〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%、特に好ましくは2〜20質量%の1,3−ブタジエン及びブテン異性体を含む。本発明の方法の特に好ましい形態では、1,3−ブタジエンに関する上述の条件が流2と流3の両方において達成されている。
【0095】
段階(b)で得られかつ3−ペンテンニトリル、上記少なくとも1種の触媒、及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む1,3−ブタジエンが減少した流3は、次いで段階(c)の蒸留装置に移送される。この蒸留装置では、流3を蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流4を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流5を塔の側方排出物として、上記少なくとも1種の触媒を含む流6を塔底生成物として得る。
【0096】
本発明の方法の段階(c)は、当業者に公知の適当な装置で行うことができる。蒸留のための好適な装置は、例えば、Kirl−Othmerの“Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.,Vol.8,John Wiley & Sons,New York,(1996)”の334〜348頁に記載されている、網目段塔、泡錘段塔、構造化充填物若しくは不規則な充填物を備えた塔、一段式蒸発器、例えば、流下薄膜型蒸発器、薄膜型蒸発器、フラッシュ蒸発器、多相螺旋管蒸発器、自然循環蒸発器、強制循環フラッシュ蒸発器、のような装置である。蒸留は、複数の装置、例えば2個若しくは3個の装置で行うことができるが、単一の装置で行うのが好ましい。
【0097】
特に好ましい形態では、段階(c)における蒸留装置は、ストリップ部を有する少なくとも1個の蒸留塔を含む。特に好ましいのは、段階(c)の蒸留装置として、ストリップモードで操作される単一の蒸留塔を含む形態である。
【0098】
蒸留装置における蒸留塔は、理論段数が2〜50段、より好ましくは3〜40段、特に好ましくは4〜30段である構造化充填物を備えているのが好ましい。
【0099】
本発明の方法の特に好ましい形態では、段階(c)の蒸留装置に関連する少なくとも1個の蒸発処理装置は、例えば流下薄膜型蒸発器、多相螺旋管蒸発器、薄膜型蒸発器又は短経路蒸発器によって達成されるように、蒸発されるべき材料の蒸発器の表面との接触時間が短くかつ蒸発器表面の温度が極めて低く、従って蒸発されるべき材料の熱損傷が極めて少なくなるように設計される。
【0100】
段階(c)における絶対圧は、0.001〜10barが好ましく、0.01〜1barがより好ましく、0.02〜0.5barが特に好ましい。蒸留は、蒸留装置の塔底の温度が、好ましくは30〜140℃、より好ましくは50〜130℃、特に好ましくは60〜120℃になるように行う。蒸留は、蒸留装置の搭頂の凝縮温度が好ましくは−50〜140℃、より好ましくは−15〜60℃、特に好ましくは5〜45℃になるように行う。本発明の方法の特に好ましい形態では、上述の温度範囲が蒸留装置の塔頂と塔底の両方で維持される。
【0101】
本発明の方法の別の好ましい形態では、段階(b)と段階(c)において140℃以上の塔底温度にはならない。
【0102】
本発明の方法の別の好ましい形態では、1個以上の蒸留装置の塔底域における液相の平均滞留時間の合計が10時間未満、より好ましくは5時間未満、特に好ましくは1時間未満である条件で、蒸留が行われる。
【0103】
段階(c)の蒸留において、流4が搭頂生成物として得られる。この流4は、好ましくは合計で50〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは90〜99.9質量%の1,3−ブタジエン及びブテン異性体を含み、さらに合計で0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%、特に10質量ppm〜1質量%のペンテンニトリルを含む。ペンテンニトリルとしては、流4中に、実質的に2−メチル−3−ブテンニトリルとトランス−3−ペンテンニトリルとが存在する。
【0104】
本発明の方法の好ましい形態では、流4が、蒸留装置の塔頂の少なくとも1個の凝縮器において気体の形態で得られ、段階(c)の蒸留装置の蒸気流から得られるペンテンニトリル成分の少なくとも一部が、上述の圧力及び温度の凝縮条件の範囲で、上記少なくとも1個の凝縮器において凝縮し、少なくとも一部がペンテンニトリル、1,3−ブタジエン及びブテン異性体を含む流として液体の形態で塔に循環される。
【0105】
本発明の方法において使用される1,3−ブタジエンの歩留まりを向上させるために、流4を段階(a)に循環させるのが好ましい。場合により、流4の一部を段階(a)に循環させても良い。この流を循環させる前に、流4に追加的に本発明の方法のための操作、例えば高圧への圧縮処理、を施すことができる。
【0106】
本発明の方法の特に好ましい形態では、流4が段階(b)を介して段階(a)に循環され、蒸留条件に依存して流4中に存在することがあるペンテンニトリル成分が段階(b)の蒸留装置に流4を循環させることによって流4から好ましく除去され、流4中の1,3−ブタジエンとブテン異性体の部分のみが流2を介して段階(a)に最終的に循環される。
【0107】
段階(c)では、流4に加えて、さらに塔の側方排出口から回収される流5が得られる。この流5は、3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの他、他のペンテンニトリル異性体及び1,3−ブタジエンとブテン異性体の残留成分を含む。流5における3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの割合は、それぞれ流5に対して合計で好ましくは80〜100質量%、より好ましくは85〜99.998質量%、特に好ましくは90〜99.9質量%である。流5における1,3−ブタジエンとブテン異性体の割合は、それぞれ流5に対して好ましくは0〜20質量%、より好ましくは10質量ppm〜5質量%、特に好ましくは50質量ppm〜2質量%である。流5は、好ましくは蒸気形態で排出される。
【0108】
蒸留装置の側方排出口は、好ましくは流3の供給位置の下方、より好ましくは流3の供給口から蒸留分離段数が1〜20段、特に2〜10段下方に離れた位置に設けられる。
【0109】
段階(c)で得られる塔底生成物は、上記少なくとも1種の触媒、トランス−3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流6である。流6におけるペンテンニトリル異性体の割合は、合計でそれぞれ流6に対して好ましくは0.1〜80質量%、より好ましくは5〜50質量%、特に好ましくは10〜40質量%である。
【0110】
流6の少なくとも一部を、段階(a)のシアン化水素付加段階に循環させるのが極めて好ましい。再生は、DE−A−10351002号公報に記載されているように行われる。本発明の方法の別の好ましい形態では、段階(c)の蒸留装置を、廃棄物又は循環流を排出するための1個以上の別の側方液体排出口又は側方気体排出口をこの装置の流3の供給点の上下に設け、操作しても良い。
【0111】
さらに、段階(c)で得られた流6の一部又は全部を、他のシアン化水素付加のための触媒組成物として、例えば3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加のための触媒組成物として使用することもできる。触媒流6を3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加のために使用する場合には、この触媒流6における2−メチル−3−ブテンニトリルの含有量が極めて少量であるのが好ましい。
【0112】
本発明の方法の段階(c)の好ましい形態では、段階(c)の蒸留装置の側方排出口の位置及び総理論段数は、トランス−3−ペンテンニトリルの濃度に対する2−メチル−3−ブテンニトリルの濃度の割合に基づいて2−メチル−3−ブテンニトリルの濃度低下を表すと、流5に比較して塔底から得られる流6における2−メチル−3−ブテンニトリルの濃度が低下するように選定される。特に好ましいのは、側方排出口の位置と塔底の間の蒸留分離段数が1〜50段、特に2〜20段の場合である。この2−メチル−3−ブテンニトリルの減少は、場合により、ストリップ部を有する蒸留塔として設計された分離装置で行うこともできる。触媒流6における2−メチル−3−ブテンニトリルの割合は、触媒流6に対して好ましくは0〜5質量%、より好ましくは10質量ppm〜2質量%、特に好ましくは50質量ppm〜0.5質量%である。本発明の方法の別の形態では、廃棄、再生、又は他のシアン化水素付加、例えば3−ペンテンニトリルからのアジポニトリルの製造のための支流6aを除去した後の流6に、段階(a)における少なくとも1種の触媒の必要量を確保するために、新鮮な触媒流を追加することができる。新鮮な触媒流は、選択的合成工程、再生工程、又はシアン化水素付加工程からの触媒の回収工程、特に3−ペンテンニトリルにシアン化水素を付加してアジポニトリルを得る工程における抽出工程、から得ることができる。
【0113】
好ましい形態において、新鮮な触媒流は直接段階(a)に供給されるか、又は支流6bが排出される点の下流側で流6に供給される。
【0114】
別の好ましい形態では、新鮮な触媒流が段階(c)の蒸留装置に導入される。このことにより、段階(a)への全触媒流のペンテンニトリル量を上述の範囲に制御できるようになる。
【0115】
本発明の方法の別の好ましい形態では、触媒廃棄量、従って追加する必要がある新鮮な触媒の量は、触媒循環流中のメチルグルタロニトリルの含有量が、触媒循環流に対して50質量%以下、より好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下になるように調整される。このことにより、再生段階における廃棄された触媒流のメチルグルタロニトリルによるニッケル(0)の取り込みへの妨害作用を最小限に抑えることができる。
【0116】
本発明の方法の別の好ましい形態では、触媒廃棄量、従って追加する必要がある新鮮な触媒の量は、触媒循環流におけるニッケル(0)錯体の含有量が、金属ニッケルとして計算した場合に、触媒循環流に対して0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.2質量%以上になるように調整される。このことにより、段階(a)における反応の間又は段階(b)及び(c)における蒸留の間、好ましくは段階(a)における反応の間のニッケル(0)錯体の損失にもかかわらず、シアン化水素付加触媒の活性が確保される。
【0117】
本発明の方法では、流5が段階(c)において側方排出口から蒸気形態で得られるのが特に好ましい。
【0118】
本発明の方法の別の好ましい形態では、段階(a)で得られた流1を、段階(b)を省略して直接段階(c)に移送することができる。
【0119】
流5は、次に段階(d)における別の蒸留装置に移送される。この蒸留装置では、流5を蒸留して、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流7と、3−ペンテンニトリルを含む流8を得る。流7は蒸留装置の塔頂から得られ、流8は蒸留装置の塔底から得られる。
【0120】
本発明の方法の特に好ましい形態では、場合によっては側方気体排出物として得られる流5を気体の形態で段階(d)の蒸留装置に移送し、段階(d)の蒸留装置における流5の供給点の位置における圧力を、段階(c)の蒸留装置における流5の側方排出口の位置における圧力以下の圧力にする。
【0121】
本発明では、段階(d)の圧力を自由に設定することを排除しておらず、気体流5を、場合により、圧縮して段階(c)における排出位置における圧力より高くして段階(d)に供給する。
【0122】
本発明の方法の段階(d)は、当業者に公知の適当な装置で行うことができる。この蒸留のための好適な装置は、例えば、Kirl−Othmerの“Encyclopedia of Chemical Technology,4th ed.,Vol.8,John Wiley & Sons,New York,(1996)”の334〜348頁に記載されている、網目段塔、泡錘段塔、構造化充填物若しくは不規則な充填物を備えた塔、一段式蒸発器、例えば、流下薄膜型蒸発器、薄膜型蒸発器、フラッシュ蒸発器、多相螺旋管蒸発器、自然循環蒸発器、強制循環フラッシュ蒸発器、のような装置である。蒸留は、複数の装置、例えば2個若しくは3個の装置で行うことができるが、単一の装置で行うのが好ましい。
【0123】
塔は、構造化充填物を含むのが好ましい。構造化充填物の理論段数は、好ましくは5〜100段、より好ましくは10〜80段、特に好ましくは15〜50段である。
【0124】
段階(d)における絶対圧は、0.001〜100barが好ましく、0.01〜20barがより好ましく、0.05〜2barが特に好ましい。蒸留は、蒸留装置の塔底の温度が、好ましくは30〜250℃、より好ましくは50〜200℃、特に好ましくは60〜180℃になるように行う。蒸留は、蒸留装置の搭頂の凝縮温度が好ましくは−50〜250℃、より好ましくは0〜180℃、特に好ましくは15〜160℃になるように行う。本発明の方法の特に好ましい形態では、上述の温度範囲が蒸留装置の塔頂と塔底の両方で維持される。
【0125】
本発明の方法の一形態では、段階(d)において得られた流7が段階(a)及び/又は段階(b)に循環され、段階(a)における反応条件又は段階(b)の塔底における液相の滞留時間が、2−メチル−3−ブテンニトリルの少なくとも一部がトランス−3−ペンテンニトリルに異性化されるように選択される。
【0126】
本発明の方法の別の形態では、流7が段階(d)の蒸留装置において側方排出流として得られ、この蒸留塔の搭頂で得られる生成物は、2−メチル−3−ブテンニトリルの他に、実質上(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルと、場合により1,3−ブタジエン及びブテン異性体、そしてビニルシクロヘキセン及びエチリデンシクロヘキサンを含む。
【0127】
流7におけるトランス−3−ペンテンニトリルの含有量は、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは100質量ppm〜20質量%、特に好ましくは1〜15質量%である。流8における2−メチル−3−ブテンニトリルの含有量は、好ましくは0〜10質量%、より好ましくは5質量ppm〜5質量%、特に好ましくは50質量ppm〜1質量%である。
【0128】
本発明の方法では、3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルの製造を統合された方法で行うことができ、事実上全量の1,3−ブタジエン流と触媒流とを循環させることができるため、供給材料の歩留まりを高めることができる。触媒流から1,3−ブタジエン及びペンテンニトリル異性体を蒸留除去するのに必要な温度及び圧力の条件は、第一に、本発明の方法を生産規模で工業的に達成しうる滞留時間で行う場合に、蒸発器の塔底の温度を触媒の損傷を引き起こさないような低温にすることであり、第二に、特別な蒸留段階の搭頂生成物の凝縮を生産規模での熱除去が経済的に許容できる価格で可能な温度で行うことである。
【0129】
以下、図1を使用して本発明の方法の一形態を詳細に説明する。
【0130】
図1は、本発明の方法の一形態の概略図である。反応器R1に、1,3−ブタジエン、シアン化水素、及び均一ニッケル(0)触媒を導入する。この反応器内で、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加が起こる。ここで、実質的に3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、ニッケル(0)触媒、1,3−ブタジエン及びシアン化水素を含む流1が形成される。この流を、次いで蒸留塔K1に移送する。ここで、流1から、1,3−ブタジエンを含み反応器R1に循環される流2と、3−ペンテンニトリル、ニッケル(0)触媒及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流3とが分離する。
【0131】
流3を、次いで第二の蒸留塔K2に移送する。ここで、残留した1,3−ブタジエン(流4)が塔頂を介して流3から除去され、塔K1に循環される。また、触媒は、3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルとが減少した流6と共に塔底から除去される。流6は反応器R1に循環される。塔K2の側方排出口からは、流5が得られる。この流5は3−ペンテンニトリルと2−メチル−3−ブテンニトリルを含む。流4は塔K1に循環される。
【0132】
流5は、次いで第三の蒸留塔K3に移送される。ここで、ペンテンニトリルを含み塔底から排出される流8と、2−メチル−3−ブテンニトリルを含み蒸留塔の塔頂から排出される流7に分離される。
【0133】
3−ペンテンニトリルを含む流8は、さらにアジポニトリル製造におけるシアン化水素付加のために供給することができる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例を使用して詳細に説明する。
【0135】
以下の実施例における各記号は、以下の意味を表す:
HCN:シアン化水素
CAT:触媒
BD:1,3−ブタジエン
REG:再生工程。
【0136】
例1:
例1を、図2を参照して説明する。
【0137】
例1において、配位子混合物を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物が、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加のために使用される。シアン化水素付加のための配位子混合物は、約60モル%のトリ(m/p−トリル)ホスフィットと40モル%の以下のキレートのホスホニット1とを含んでいる。
【0138】
【化2】

【0139】
段階(a)では、ノズル、衝撃交換チューブ、外部ポンプ循環路、及び、反応エネルギーを除去するために外部ポンプ循環路に設けられた熱交換器を備えた容量25Lのループ反応器R1に、以下の流を供給し、357Kに加熱する。
【0140】
(1)10kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(2)22kg/hの、0.25質量%のシス−2−ブテンを含むt−ブチルピロカテコールで安定化された市販の1,3−ブタジエンであって、水と上記安定剤を除去するためにアルミナに接触させて処理した1,3−ブタジエン。
【0141】
(3)8kg/hの、反応器R1に供給される全1,3−ブタジエンが30kg/hの流になるように段階(b)の塔K1から循環させた1,3−ブタジエン(流2)であって、90質量%の1,3−ブタジエン、5質量%のシス−2−ブテン及び5質量%の1−ブテンを含む1,3−ブタジエン、
(4)21kg/hの、以下に示すように段階(c)の塔K2からの流6aとして得られたニッケル(0)触媒溶液。
【0142】
反応器R1から排出された流1(63kg/h)は、1,3−ブタジエンの転化率が79%に相当する、合計で11質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテン、合計で63質量%のペンテンニトリル、及び触媒成分、触媒分解成分、メチルグルタロニトリルを含んでいる。このペンテンニトリルは、31質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、29質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、小量のシス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリル、シス−2−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、及び、微量の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む。
【0143】
段階(b)では、流1を、精留部とストリップ部を有するように操作されかつ流下薄膜型蒸発器、分離した塔底、及び理論段数が10段の構造化充填物を備えた塔内部部品を備えた蒸留塔K1に供給する。塔K1は、塔頂に、構造化充填物、収集器、ポンプ循環路、及び外部熱交換器を備えた塔部からなる直接凝縮器を備えて操作される。塔K1は、塔頂の絶対圧が2.0bar、搭頂温度が288K、及び塔底排出物温度が363Kの条件で操作される。
【0144】
塔K1の搭頂を介して、上述したような、循環流として反応器R1に導入される流2が得られる。塔K1の塔頂における還流比は、流2が約100ppmの2−メチル−3−ブテンニトリルを含むように調整される。
【0145】
塔K1の塔底を介して、2.9質量%の1,3−ブタジエン、4.6質量%のシス−2−ブテン、67質量%のペンテンニトリルの他、触媒成分を含む流3が、59kg/hの量で得られる。1,3−ブタジエンに対するシス−3−ブテンは、供給物と比較して明確に濃縮されている。
【0146】
段階(c)では、流3をストリップモードで操作されかつ流下薄膜型蒸留器、後続凝縮器を備えた搭頂の凝縮器、及び理論段数が10段である構造化充填物を有する搭内部部品を備えた蒸留塔K2に導入する。この搭は、塔頂の絶対圧が150mbar、搭頂温度が329K、及び塔底排出物温度が373Kの条件で操作される。搭の蒸気流の一部は308Kで凝縮され、263Kで後続凝縮器で処理される。得られた2−メチル−3−ブテンニトリルと他のペンテンニトリルが減少した流4を圧縮器V1で絶対圧1.2barに圧縮する。圧縮された気流のほとんどを279Kで凝縮して流4a(5kg/h)を得、支流4b(約50L(STP)/h、44質量%のシス−2−ブテン含有)を気体の形態で廃棄する。流4aを液体の形態で搭K1の分離した塔底の還流部に循環させる。
【0147】
塔K2の側方気体排出口から、約50ppmの1,3−ブタジエン、46質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、及び48質量%のトランス−3−ペンテンニトリルと、少量の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、その他のペンテンニトリル異性体を含む流5(40kg/h)が得られる。側方排出口の位置は、塔底を介して得られた流6におけるトランス−3−ペンテンニトリルと比較した2−メチル−3−ブテンニトリル成分の量が側方排出口の下方のストリップ部で減少するように選択される。
【0148】
流3の他に、13kg/hの全体で73質量%のペンテンニトリル、0.5質量%のNi(0)、18質量%の配位子混合物及び約5質量%のアジポニトリルを含む触媒流(流10)を、搭K2に導入する。
【0149】
塔K2の塔底を介して、0.5質量%のニッケル(0)、約100ppmの2−メチル−3−ブテンニトリル、35質量%の残留ペンテンニトリルを含む触媒流6が得られる。流6の一部(流6a)が反応器R1に循環される(21kg/h)。残余の部分(流6b:5.4kg/h)が再生工程(REG)に供給される。この流は、再生処理の後で、例えばDE−A−102004004683号公報の3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加方法の実施例1において使用される。
【0150】
段階(d)では、流5を、循環蒸発器、搭頂凝縮器、理論段数が30段の構造化充填物を備えた蒸留塔K3に導入する。搭K3は、塔頂の絶対圧が180mbar、搭頂温度が345K、及び塔底排出物温度が363Kの条件で操作される。
【0151】
39kg/hの、54質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、23質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、16質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの他、少量の他のペンテンニトリル異性体を含有する流9を、搭K3に導入する。流9は、例えば、DE−A−102004004671号公報の実施例1に記載されているような2−メチル−3−ブテンニトリルから3−ペンテンニトリルへの異性化の工程から循環されたペンテンニトリル流として得ることができる。
【0152】
塔K3の搭頂を介して、10質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、68質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、16質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、合計で0.1質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテンを含む流7が、40kg/hの量で得られる。この流は、DE−A−102004004671号公報の実施例1に記載されているような2−メチル−3−ブテンニトリルから3−ペンテンニトリルへの異性化の工程に供給することができる。
【0153】
塔K3の搭底を介して、合計で97質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル及び4−ペンテンニトリル、約100ppmの2−メチル−3−ブテンニトリル、約1質量%の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流8が、39kg/hの量で得られる。
【0154】
例1より、どのようにしてシアン化水素付加工程におけるブタジエンと触媒を事実上完全に回収することができるかがわかる。例1では、触媒を塔K1と塔K2の2段階で温和な条件で除去している。ニトリル流は、塔K2において実質上ブタジエンを含まない流として回収することができる。
【0155】
例1における回収された触媒流の組成は、ペンテンニトリルへのシアン化水素付加によるアジポニトリルの製造方法における使用に特に好適である。なぜなら、流6及び従って流6bは、実質的に2−メチル−3−ブテンニトリルとブタジエンを含まない流として得られるからである。
【0156】
例2:
例2を、図3を参照して説明する。
【0157】
例2において、配位子としてキレートのホスフィット2を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物が、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加のために使用される。
【0158】
【化3】

【0159】
段階(a)では、ノズル、衝撃交換チューブ、外部ポンプ循環路、及び、反応エネルギーを除去するために外部ポンプ循環路に設けられた熱交換器を備えた容量12Lの2個の反応器R1a及びR1bからなる装置に、以下の流を供給し、363Kに加熱する。
【0160】
(1)反応器R1aに供給される、6kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(2)反応器R1bに供給される、6kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(3)反応器R1aに供給される、25kg/hの、0.25質量%のシス−2−ブテンを含む市販の1,3−ブタジエンであって、水と安定剤を除去するためにアルミナに接触させて処理した1,3−ブタジエン。
【0161】
(4)2kg/hの、反応器R1に供給される全1,3−ブタジエンが27kg/hの流になるように段階(b)の塔K1から循環させた1,3−ブタジエン(流2)であって、98質量%の1,3−ブタジエン、合計で2質量%のシス−2−ブテン及び1−ブテンを含む1,3−ブタジエン、
(5)14kg/hの、以下に示すように段階(c)の塔K2からの流6aとして得られたニッケル(0)触媒溶液。
【0162】
反応器R1bから排出された流1(54kg/h)は、1,3−ブタジエンの転化率が94%に相当する、合計で4質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテンを含み、また合計で74質量%のペンテンニトリル。及び触媒成分、触媒分解成分、メチルグルタロニトリルを含んでいる。このペンテンニトリルは、33質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、37質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、小量のシス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリル、シス−2−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、及び、微量の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む。
【0163】
段階(b)では、流1を、精留塔として操作されかつ流下薄膜型蒸発器及び理論段数が4段の構造化充填物を備えた塔内部部品を備えている蒸留塔K1に供給する。塔K1は、塔頂に、不規則充填物、収集器、ポンプ循環路、及び外部熱交換器を備えた塔部からなる直接凝縮器を備えて操作される。塔K1は、塔頂の絶対圧が0.8bar、搭頂温度が263K、及び塔底排出物温度が393Kの条件で操作される。
【0164】
塔K1の搭頂を介して、上述したような、循環流として反応器R1aに導入される流2が得られる。塔K1の塔頂における還流比は、流2が0.1質量%の2−メチル−3−ブテンニトリルを含むように調整される。
【0165】
塔K1の塔底を介して、0.3質量%の1,3−ブタジエン、0.1質量%のシス−2−ブテン、76質量%のペンテンニトリルの他、触媒成分を含む流3が、52kg/hの量で得られる。
【0166】
段階(c)では、流3をストリップモードで操作されかつ流下薄膜型蒸留器、後続凝縮器を備えた搭頂の凝縮器、及び理論段数が4段である構造化充填物を有する搭内部部品を備えた蒸留塔K2に導入する。この搭は、塔頂の絶対圧が70mbar、搭頂温度が333K、及び塔底排出物温度が373Kの条件で操作される。
【0167】
塔K2の搭頂気体排出口から、0.4質量%の1,3−ブタジエン、54質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、及び42質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、少量の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル及び(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、その他のペンテンニトリル異性体を含む流5(40kg/h)が得られる。
【0168】
全体で45質量%のペンテンニトリル、例えばニッケル(0)(シクロオクタジエニル)2錯体とキレートのホスフィット2との反応により得られた、1.5質量%のNi(0)及びキレート配位子を含む触媒流(流4)を、3kg/hの量で搭K2に導入する。
【0169】
塔K2の塔底を介して、1.2質量%のニッケル(0)、0.3質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、17質量%の残留ペンテンニトリルを含む触媒流6が得られる。流6の一部(流6a)が反応器R1に循環される(14kg/h)。残余の部分(流6b:3.8kg/h)が再生工程(REG)に供給される。この流は、再生処理の後で、例えば、3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加において使用することができ、あるいは、本発明の方法における1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加に循環することができる。
【0170】
段階(d)では、流5を、循環蒸発器、搭頂凝縮器、理論段数が45段の構造化充填物を備えた蒸留塔K3に導入する。搭K3は、塔頂の絶対圧が1.0bar、搭頂温度が395K、及び塔底排出物温度が416Kの条件で操作される。
【0171】
70質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、14質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、7質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの他、少量の他のペンテンニトリル異性体を含有する循環流9を、24kg/hの量で搭K3に導入する。流9は、例えば、DE−A−102004004671号公報の実施例2に記載されているような2−メチル−3−ブテンニトリルから3−ペンテンニトリルへの異性化の工程から循環されたペンテンニトリル流として得ることができる。
【0172】
塔K3の搭頂を介して、1質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、85質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、8質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、合計で3質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテンを含む流7が、30kg/hの量で得られる。塔K3の還流比は、1質量%の3−ペンテンニトリルが搭頂で得られるように調整される。この流は、例えば、DE−A−102004004671号公報の実施例2に記載されているような2−メチル−3−ブテンニトリルから3−ペンテンニトリルへの異性化の工程に供給することができる。
【0173】
塔K3の塔底を介して、合計で97質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリル、シス−2−ペンテンニトリル、及び4−ペンテンニトリル、約10ppmの2−メチル−3−ブテンニトリル、約2質量%の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル、少量のメチルグルタロニトリルを含む流8が、38kg/hの量で得られる。流8は、DE−A−102004004683号公報の実施例2に記載されているような3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加によるアジポニトリルの製造の工程に供給することができる。
【0174】
例2では、塔K2で、問題の分離段階を行わずに流6及び支流6bが得られ、これらの流は2−メチル−3−ブテンニトリルをかなりの量(例1では触媒流のニトリル含有量に対して約0.1質量%であるのに対し、例2では約1.5質量%)含んでいる。このことは、この触媒流を再生工程の跡で3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加によるアジポニトリルの製造に使用した場合に、価値のある生成物がメチルグルタロニトリルの生成により減少することにつながる。
【0175】
例3:
例3を、図4を参照して説明する。
【0176】
例3において、配位子混合物を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物が、1,3−ブタジエンのシアン化水素付加のために使用される。シアン化水素付加のための配位子混合物は、約80モル%のトリ(m/p−トリル)ホスフィットと20モル%のキレートのホスフィット2とを含んでいる。
【0177】
段階(a)では、それぞれ容量10Lの3個の直列に接続された攪拌槽R1a、R1b及びR1cからなる装置に、以下の流を供給し、373Kに加熱する。
【0178】
(1)反応器R1aに供給される、5.2kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(2)反応器R1bに供給される、4.0kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(3)反応器R1aに供給される、23kg/hの、段階(b)の蒸発器B1の凝縮器から流2として得られた1,3−ブタジエンであって、92質量%の1,3−ブタジエン、2質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、4質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、及び約2質量%のシス−2−ブテンを含む1,3−ブタジエン、
(4)4.1kg/hの、以下に示すように段階(c)の精留塔K2からの流6aとして得られたニッケル(0)触媒溶液、
(5)R1aに供給される、合計で45質量%のペンテンニトリル、1.1質量%のニッケル(0)、38質量%の配位子混合物、及び約12質量%のアジポニトリルを含むニッケル(0)触媒溶液。
【0179】
反応器R1cは、反応器R1bから排出された流出物による後続反応器として353Kで操作される。
【0180】
反応器R1cから排出された流1(37kg/h)は、1,3−ブタジエンの転化率が86%に相当する、7質量%の1,3−ブタジエン、合計で77質量%のペンテンニトリル、及び触媒成分、触媒分解成分、メチルグルタロニトリルを含んでいる。このペンテンニトリルは、33質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、41質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、小量のシス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリル、シス−2−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、及び、微量の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む。
【0181】
段階(b)では、流1を、循環蒸発器を備えた蒸発処理装置B1に供給する。蒸発処理装置B1は搭頂凝縮器を備えており、この凝縮器に還流器からの凝縮物質が流される。蒸発処理装置B1は、塔頂の絶対圧が0.5bar、凝縮温度が253K、及び塔底排出物温度が363Kの条件で操作される。
【0182】
18.5kg/hの0.25質量%のシス−2−ブテンを含む市販の1,3−ブタジエンを、蒸発処理装置B1の凝縮物収集器に導入する。但し、市販の1,3−ブタジエンのモレキュラーシーブとの接触処理により、使用される1,3−ブタジエンの水含有量が10質量ppm未満に低下している。
【0183】
蒸発処理装置B1の凝縮物収集器から、循環された1,3−ブタジエンと新しく導入された1,3−ブタジエンとが併せられた流2が排出され、上述のように反応器R1aに循環される。
【0184】
蒸発処理装置B1の塔底を介して、合計で1質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテン、82質量%のペンテンニトリルの他、触媒成分を含む流3が、37kg/hの量で得られる。
【0185】
段階(f)では、下流の遅延域を備えた攪拌槽として設計されておりかつ383Kに加熱された反応器R2に流3を導入し、2−メチル−3−ブテンニトリルをニッケル触媒とルイス酸の存在下でトランス−3−ペンテンニトリルに異性化する。
【0186】
段階(e)において塔4の塔底生成物として得られた60質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、合計で10質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、その他のペンテンニトリル異性体、ビニルシクロヘキセン、及び微量の1,3−ブタジエンを含有する循環流9を、反応器R2に導入する(10kg/h)。
【0187】
反応器R2から、2−メチル−3−ブテンニトリルからトランス−3−ペンテンニトリルへの転化率が70%に当る、62質量%のトランス−3−ペンテンニトリルと14質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、及び触媒成分を含む流4が得られる(45kg/h)。
【0188】
段階(c)では、流下薄膜型蒸発器と凝縮器を備えておりかつ絶対圧が50mbar、蒸留分離段数を10段にすることができる塔内部部品を備えており塔底排出物温度が393Kの条件下でストリップ塔として操作されている精留塔K2に、流4を導入する。
【0189】
精留塔K2の凝縮器から、91質量%のペンテンニトリル異性体、約1質量%の1,3−ブタジエン、及びさらに少量の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、ビニルシクロヘキセンを含む流5が得られる(38kg/h)。
【0190】
精留塔K2の塔底を介して、1.3質量%のニッケル(0)、約20ppmの2−メチル−3−ブテンニトリル、17質量%の残留ペンテンニトリル、残留触媒成分、アジポニトリル及びメチルグルタロニトリルを含む触媒流6が得られる(7kg/h)。流6の一部(流6a)を反応器R1に循環させる(4.4kg/h)。残余の部分(流6b)は、再生工程(REG)に供給し、次いで例えば(US2003/0100442号公報の方法又はDE−A−10351002号公報の方法に従って)3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加において使用することができる。さらに、触媒を、本発明の方法において、場合による塩化亜鉛を除去した後で1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加のために再び使用しても良い。
【0191】
段階(d)では、流5を、強制循環蒸発器、搭頂凝縮器、理論段数が30段の塔内部部品を備えた蒸留塔K3に導入する。搭K3は、塔頂の絶対圧が0.12bar、搭頂温度334K、及び塔底排出物温度352Kの条件で操作される。
【0192】
5質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、60質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、4質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの他、合計で4質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテンを含有する流7が、10kg/hの量で搭K3の塔頂から得られる。塔K3の還流比は、5質量%の3−ペンテンニトリルが搭頂で得られるように調整される。
【0193】
塔K3の塔底を介して、合計で98質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル、及び4−ペンテンニトリル、約1000ppmの2−メチル−3−ブテンニトリル、約2質量%の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流8が、27kg/hの量で得られる。
【0194】
段階(e)では、精留塔として操作されかつ強制循環蒸発器、搭頂凝縮器、還流分割器、及び理論段数が15段の構造化充填物を含む塔内部部品を備えている蒸留塔K4に、流7を導入する。塔K4は、塔頂の絶対圧が380mbar、搭頂温度が361K、及び塔底排出物温度が365Kの条件で操作される。
【0195】
塔K4では、搭頂で、合計で4質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテン、54質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、38質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、2.5質量%のビニルシクロヘキせンを含む液体流10が得られる(0.6kg/h)。塔K4の塔頂から排出される流10の量は、塔K3の搭頂から得られる流7が合計で30質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル及びビニルシクロヘキセンを含有するように調整される。塔K4において、部分凝縮器(195l(STP)/h)として操作される搭頂凝縮器で、実質的に1,3−ブタジエンを含有する気体流が得られる。
【0196】
塔K4において、3−ペンテンニトリルに加えて、実質的に上記異性化段階で転化されなかった2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流9が塔底を介して得られ(9.4kg/h)、段階(f)の異性化反応器R2に循環される。
【0197】
例3では、例1における蒸留装置K1が単一段階の蒸発処理装置B1として設計されている。このことは、例1と比較すると、循環されるブタジエン中のニトリル、特に2−メチル−3−ブテンニトリルの濃度が明確に上昇すること、及びブタジエンの損失量が増加することにつながる。
【0198】
例4:
例4を、図5を参照して説明する。
【0199】
例4において、配位子混合物を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物が、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加のために使用される。シアン化水素付加のための配位子混合物は、約80モル%のトリ(m/p−トリル)ホスフィットと20モル%のキレートのホスホニット1とを含んでいる。
【0200】
段階(a)において、それぞれ容量50Lの2個の直列に接続された連続式攪拌槽R1a及びR1bから成りかつ363Kに加熱された装置に、以下の流を供給する。
【0201】
(1)反応器R1a及びR1bに等しい量で供給される、18kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(2)応器R1aに供給される、62kg/hの、段階(b)の蒸発器B1の搭頂から流2として得られた1,3−ブタジエンであって、87質量%の1,3−ブタジエン、3質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、6質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、及び約2質量%のシス−2−ブテンを含む1,3−ブタジエン、
(3)応器R1aに供給される、61kg/hの、以下に示すように段階(c)の蒸発処理装置B2からの流6aとして得られたニッケル(0)触媒溶液、
(4)R1aに供給される、6.7kg/hの、合計で45質量%のペンテンニトリル、1.1質量%のニッケル(0)、38質量%の配位子混合物、及び約12質量%のアジポニトリルを含む、DE−A−102004004683号公報の実施例1に記載されているように、この出願の例2の段階(4)における塔K4の塔底排出物として得られた、ニッケル(0)触媒溶液(但し、上記1,3−ブタジエン流と触媒流とを、シアン化水素と接触される前に予備混合する)。
【0202】
(5)29kg/hの、以下に示すように塔K4の塔底排出物として得られる19質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、62質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、他のニトリル、及びビニルシクロヘキセンを含むニトリル循環流9。
【0203】
反応器R1bから排出された流1(177kg/h)は、1,3−ブタジエンの転化率が66%に相当する、11質量%の1,3−ブタジエン、合計で64質量%のペンテンニトリル、触媒成分、触媒分解生成物を含んでいる。ペンテンニトリルは、32質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、30質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、少量のシス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリル、シス−2−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、微量の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む。
【0204】
段階(b)では、流下薄膜型蒸発器を備えた蒸発処理装置B1に流1を導入する。蒸発処理装置B1は、塔頂に、還流器からの凝縮材料が流れ込む凝縮器を備えて操作される。蒸発処理装置B1は、搭頂の絶対圧が1.3bar、凝縮温度が278K、塔底排出物温度が403Kの条件で操作される。
【0205】
37kg/hの0.25質量%のシス−2−ブテンを含む市販の1,3−ブタジエンを、蒸発処理装置B1の凝縮物収集器に導入する。但し、市販の1,3−ブタジエンのモレキュラーシーブとの接触処理により、使用される1,3−ブタジエンの水含有量が5質量ppm未満に低下しており、使用される1,3−ブタジエン中に存在するt−ブチルピロカテコール安定剤はppmの規模の濃度で凝縮物収集器及び凝縮器のフラッシュ循環路中に導入される。
【0206】
蒸発処理装置B1の凝縮物収集器から、循環された1,3−ブタジエンと新しく導入された1,3−ブタジエンとが併せられた流2が排出され、上述のように反応器R1aに循環される。
【0207】
蒸発処理装置B1の塔底を介して、0.9質量%の1,3−ブタジエン、16質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、51質量%のトランス−3−ペンテンニトリルの他、他のペンテンニトリル異性体、さらに触媒成分を含む流3が、152kg/hの量で得られる。この蒸留処理装置の塔底流出物の組成によると、導入される蒸発器の塔底における2−メチル−3−ブテンニトリルからトランス−3−ペンテンニトリルへの転化率は50%である。
【0208】
段階(c)では、流下薄膜型蒸発器と凝縮器を備えておりかつ絶対圧が260mbar、塔底排出物温度が383Kの条件下で操作される蒸発処理装置B2に流3を導入する。
【0209】
蒸発処理装置B2から、93質量%のペンテンニトリル異性体、約1質量%の1,3−ブタジエン、及びさらに少量の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、ビニルシクロヘキセンを含む流5が、気体の形態で得られる(83kg/h)。流5は、段階(d)における蒸留塔K3に導入される。
【0210】
蒸発処理装置B2の塔底を介して、0.6質量%のニッケル(0)、2質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、42質量%の残留ペンテンニトリルを含む触媒流6が得られる(69kg/h)。流6のほとんど(流6a)を反応器R1に循環させる(61.4kg/h)。残余の部分(流6b)は、例えばDE−A−10351002に従って再生工程に供給し、例えばDE−A−102004004号公報の方法に従って3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加において使用することができる。
【0211】
段階(d)では、強制循環フラッシュ蒸発器、搭頂凝縮器、理論段数が30段の構造化充填物を備えた蒸留塔K3に、流5を気体の形態で導入する。搭K3は、塔頂の絶対圧が80mbar、搭頂温度が375K、及び塔底排出物温度が343Kの条件で操作される。
【0212】
15質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、64質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、3質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルの他、合計で4質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテンを含有する流7が、36kg/hの量で、搭K3の塔頂から得られる。塔K3の還流比は、15質量%の3−ペンテンニトリルが搭頂で得られるように調整される。
【0213】
塔K3の塔底を介して、合計で98質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリル、シス−2−ペンテンニトリル及び4−ペンテンニトリル、100ppmの2−メチル−3−ブテンニトリル、約1質量%の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流8が、47kg/hの量で得られる。
【0214】
段階(e)では、精留塔として操作されかつ強制循環蒸発器、搭頂凝縮器、還流分割器、及び理論段数が45段の構造化充填物を含む塔内部部品を備えている蒸留塔K4に、流7を導入する。塔K4は、塔頂の絶対圧が320mbar、凝縮温度が288K、及び塔底排出物温度363Kの条件で操作される。
【0215】
塔K4では、搭頂で、合計で10質量%の1,3−ブタジエンとシス−2−ブテン、80質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、8質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、0.5質量%のビニルシクロヘキサンを含む液体流10が得られる(6.8kg/h)。塔K4では、部分凝縮器(約250l(STP)/h)として操作される搭頂凝縮器で、実質的に1,3−ブタジエンを含有する気体流が得られる。
【0216】
塔K4において、3−ペンテンニトリルに加えて、実質的に上記異性化段階で転化されなかった2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流9が塔底を介して得られ(28.7kg/h)、シアン化水素付加のための反応器R1に循環される。
【0217】
例4では、例1における蒸留装置K1と蒸留装置K2が単一段階の蒸発処理装置B1、B2として設計されている。このことは、例1と比較すると、蒸発処理装置B1における条件が適合している場合でも、ブタジエンの損失量が大幅に増加することにつながり、また、触媒流が例1におけるよりも熱応力を大きく受ける。
【0218】
例5:
例5を、図6を参照して説明する。
【0219】
例5において、配位子としてキレートのホスホニット1を有するニッケル(0)錯体に基づく触媒組成物が、1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加のために使用される。
【0220】
段階(a)では、363Kに加熱されている容量30Lの連続式攪拌槽R1に、以下の流を供給する。
【0221】
(1)16kg/hの、蒸留によって水を除去した安定化されていない液体シアン化水素、
(2)50kg/hの、94質量%の1,3−ブタジエン、2質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、4質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、及び約1質量%のシス−2−ブテンを含む、段階(b)の蒸発器B1の搭頂から得られる流2としての1,3−ブタジエン、
(3)10kg/hの、以下に示すように段階(c)の蒸発処理装置B2から得られた流6aとしての、合計で42質量%のペンテンニトリル、23質量%の配位子、0.9質量%のニッケル(0)、約10質量%のアジポニトリル、約10質量%のメチルグルタロニトリルを含むニッケル(0)触媒溶液、
(4)4kg/hの、反応器R1に供給される合計で45質量%のペンテンニトリル、1.5質量%のニッケル(0)及び48質量%の配位子を含むニッケル(0)触媒溶液。
【0222】
反応器R1から排出された流1(89kg/h)は、1,3−ブタジエンの転化率が71%に相当する、17質量%の1,3−ブタジエン、合計で73質量%のペンテンニトリル、触媒成分、触媒分解成分を含んでいる。このペンテンニトリルは、32質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、36質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、小量のシス−3−ペンテンニトリル、トランス−2−ペンテンニトリル、シス−2−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル、及び、微量の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む。
【0223】
段階(b)では、流1を、蒸留分離段数を8段にすることができる塔内部部品を備えたストリップ塔として操作されかつ流下薄膜型蒸発器を備えている蒸留塔K1に供給する。蒸留塔K1は、塔頂に、還流器からの凝縮物質が流れる凝縮器を備えて操作される。蒸留塔K1は、塔頂の絶対圧が1.3bar、凝縮温度が278K、及び塔底排出物温度が403Kの条件で操作される。
【0224】
以下に示すように、塔K3からのニトリル循環流7が蒸留塔K1に循環される。
【0225】
34kg/hの0.25質量%のシス−2−ブテンを含む市販の1,3−ブタジエンを、蒸留塔K1の凝縮物収集器に導入する。但し、市販の1,3−ブタジエンのアルミナとの接触処理により、使用される1,3−ブタジエンの水含有量が10質量ppm未満に低下しており、t−ブチルピロカテコール安定剤は10ppm未満である。
【0226】
蒸発処理装置の凝縮物収集器から、循環された1,3−ブタジエンと新しく導入された1,3−ブタジエンとが併せられた流2が排出され、上述のように反応器R1aに循環される。
【0227】
蒸留塔K1の塔底を介して、0.8質量%の1,3−ブタジエン、12質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、69質量%のトランス−3−ペンテンニトリルの他、他のペンテンニトリル異性体、触媒成分を含む流3が、76kg/hの量で得られる。蒸発処理装置の塔底流出物の組成は、蒸留塔K1の塔底における2−メチル−3−ブテンニトリルからトランス−3−ペンテンニトリルへの転化率が75%であることに対応する。
【0228】
段階(c)では、流3を、流下薄膜型蒸留器及び凝縮器を備えた蒸発処理装置B2に導入する。この搭は、絶対圧が220mbar、塔底排出物温度が381Kの条件で操作される。
【0229】
蒸発処理装置B2から、97質量%のペンテンニトリル異性体、約1質量%の1,3−ブタジエン、さらに少量の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリル、(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、ビニルシクロヘキセンを含む流5(58kg/h)が気体の形態で得られる(58kg/h)。
【0230】
蒸発処理装置B2の塔底を介して、0.9質量%のニッケル(0)、0.3質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、42質量%の残留ペンテンニトリルを含む触媒流6が得られる(17kg/h)。流6のほとんど(流6a)を反応器R1に循環させる(10kg/h)。残余の部分(流6b)は、例えばUS2003/0100442号公報の方法に従って再生工程に供給し、再生の後に、3−ペンテンニトリルへのシアン化水素付加において使用することができ、又は、本発明の方法における1,3−ブタジエンへのシアン化水素付加の段階において使用することができる。
【0231】
流5を凝縮し、液体の形態で、段階(d)において、強制循環蒸発器、搭頂凝縮器、及び理論段数が50段の構造化充填物を備えた蒸留塔K3に導入する。塔K3は、塔頂の絶対圧が0.2bar、搭頂温度が342K、塔底排出物温度が366Kの条件下で操作される。
【0232】
蒸留塔K3の搭頂では、10質量%の1,3−ブタジエン、18質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、68質量%の2−メチル−3−ブテンニトリルの他、別のペンテンニトリル異性体及びビニルシクロヘキセンを含む流10が得られる。塔K3の還流比は、搭頂排出物流が18質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含むように調整される。
【0233】
塔K3の側方液体排出口では、0.5質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、85質量%の2−メチル−3−ブテンニトリル、5質量%の(Z)−2−メチル−2−ブテンニトリル、及び10質量%のビニルシクロヘキセンを含む流7が、8kg/hの量で得られる。流7は段階(b)の蒸留塔K1に循環される。
【0234】
塔K3の塔底を介して、合計で98質量%のトランス−3−ペンテンニトリル、シス−3−ペンテンニトリル及び4−ペンテンニトリルの他、100ppmの2−メチル−3−ブテンニトリル、約1質量%の(E)−2−メチル−2−ブテンニトリルを含む流8が、47kg/hの量で得られる。
【0235】
例5では、例1における蒸留装置K1がストリップ部を備えた蒸留塔として設計されている。例1における蒸留塔K2を単一段階の蒸発処理装置B2として設計することができる。蒸留処理装置B2への供給物における2−メチル−3−ブテンニトリル含有量が例1、2、3に比較すると、前の異性化段階によって顕著に減少しているからである。例4と比較すると、例5の手順によりブタジエンの損失量が減少するが、触媒流は依然として例1、2におけるよりも不純物を多く含む。
【図面の簡単な説明】
【0236】
【図1】本発明の方法の一形態を示す概略図である。
【図2】例1の方法を示す概略図である。
【図3】例2の方法を示す概略図である。
【図4】例3の方法を示す概略図である。
【図5】例4の方法を示す概略図である。
【図6】例5の方法を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−ペンテンニトリルを製造する方法であって、
(a)1,3−ブタジエンを少なくとも1種の触媒上でシアン化水素と反応させて、3−ペンテンニトリル、2−メチル−3−ブテンニトリル、前記少なくとも1種の触媒、及び1,3−ブタジエンを含む流1を得る段階、
(b)流1を塔内で蒸留し、1,3−ブタジエンが濃縮された流2を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル、前記少なくとも1種の触媒、及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含みかつ1,3−ブタジエンが減少した流3を塔底生成物として、得る段階、
(c)流3を塔内で蒸留して、1,3−ブタジエンを含む流4を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリル及び2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流5を塔の側方排出物として、前記少なくとも1種の触媒を含む流6を塔底生成物として、得る段階、
(d)流5を蒸留して、2−メチル−3−ブテンニトリルを含む流7を塔頂生成物として、3−ペンテンニトリルを含む流8を塔底生成物として、得る段階、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
段階(a)における反応をリン配位子で安定化されている均一に溶解したニッケル(0)触媒上で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン配位子がホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット、及びホスホニットから成る群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
段階(b)で得られた1,3−ブタジエンが濃縮された流2の少なくとも一部を段階(a)に循環させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(c)において、トランス−3−ペンテンニトリルの濃度に対する2−メチル−3−ブテンニトリルの濃度の比に基づいて2−メチル−3−ブテンニトリルの濃度低下を表わすと、流5に比較して2−メチル−3−ブテンニトリルの濃度が低下した流6が塔底を介して得られる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階(c)で得られた流6の少なくとも一部を段階(a)に循環させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階(c)で得られた流4の少なくとも一部を段階(a)及び/又は(b)に循環させる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
流5を段階(c)において側方排出口から蒸気の形態で排出させる、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
流1を段階(b)を省略して段階(c)に直接移送する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
段階(d)で得られた流7の少なくとも一部を段階(a)及び/又は(b)に循環させる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
段階(c)において、側方排出口の位置と塔底との間の蒸留分離段数が1〜50段である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
段階(c)で得られた触媒流6における2−メチル−3−ブテンニトリルの割合が0〜5質量%である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
段階(b)と(c)において、塔底温度が140℃以下である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
段階(b)と(c)の蒸留装置における平均滞留時間の合計が10時間以下である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−519672(P2007−519672A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550097(P2006−550097)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000774
【国際公開番号】WO2005/073171
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】