説明

3本ローラー式生地充填機

【課題】高速での幅方向の均等な生地充填が可能であり、多様な生地への対応ができる3本ローラー式生地充填機を提供する。
【解決手段】生地が投入されるホッパー1と、大径ローラー4と、中径ローラー5と、小径ローラー6と、生地充填用の口金3と、大中小径ローラー4,5,6の駆動用電動機と、を含み、大径ローラー4と中径ローラー5間の生地引込み角度は、前記ハウジング2内で許容される最大値とし、大径ローラー4と中径ローラー5の外周の間隔と、大径ローラー4と小径ローラー6の外周の間隔と、の比は1.5〜2.0:1であり、中径ローラー5は小径ローラー6の外周と接触状態であり、大小径ローラー4,6は、同一の周速で回転され、中径ローラーは、大小径ローラーと同一の周速または生地の種類、特性などにより大小径ローラー4,6の周速と異なる周速で回転される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3本ローラー式生地充填機に係り、より詳しくは、クッキー生地のように比較的硬い生地や柔らかい生地などの多様な菓子生地に対応でき、それらの生地を傷めずに、また生地の吐出量を安定させることができる3本ローラー式生地充填機に関する。
【背景技術】
【0002】
菓子類の生地充填機には、2本ローラー式、3本ローラー式、4本ローラー式などがある。
2本ローラー式は、圧力が口金に直接掛かるので、抵抗により圧力が上に逃げる傾向があり、ローラーの回転数を上げると生地にストレスがかかり生地が荒れやすくなる。
4本ローラー式には、機構が複雑になり、コストがかかり、清掃がしにくいという欠点がある。
3本ローラー式は、2本ローラー式と比較すると、下部から口金までの容量が小さく、圧力が逃げ、口金の抵抗も少ないため、一定の割合で口金に直接生地の圧力がかかる。
【0003】
しかし、比較的硬い生地の場合、生地の引き込み力が弱く、ホッパー下部とローラー間で生地滞留が起こり易く、多様な生地の充填や高速充填(80〜200回/分)での安定した充填が困難等の問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−172938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点解決のためになされたものであって、本発明の目的は、
幅方向の均等な生地充填が可能であり、ホッパー内の生地滞留を防ぎ、生地にストレスを与えることなく多様な生地への対応ができる3本ローラー式生地充填機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、3本の異なる直径の生地充填ローラーからなる3本ローラー式生地充填機であって、生地が投入されるホッパーと、前記ホッパー下部のハウジングと、前記ハウジング内に収納された直径が160mm以上の大径ローラーと、直径が110乃至140mmの中径ローラーと、 直径が110mm以下の小径ローラーと、前記ハウジング下部に装着され、前記大中小径ローラーの軸心方向の複数個からなる生地充填用の口金と、前記大中小径ローラーの駆動用電動機と、を含み、前記大中小径ローラーの駆動用電動機は、大、小径ローラーの駆動用サーボ電動機と、中径ローラーの駆動用サーボ電動機からなり、大、小径ローラーは、前記大、小径ローラーの駆動用サーボ電動機から歯車を介して個別に駆動され、中径ローラーは、中径ローラーの駆動用サーボ電動機から歯車を介して駆動され、前記各ローラーの水平方向の位置関係は、中径ローラーの軸心が大径ローラーの軸心より上に位置し、中径ローラーの外周の最上部が大径ローラーの最上部より上に位置し、小径ローラーの軸心が大径ローラーの軸心より下に位置し、小径ローラーの外周の最下部が大径ローラーの最下部より下に位置し、大径ローラーと中径ローラー間の生地引込み角度は、前記ハウジング内で許容される最大値とし、 大径ローラーと中径ローラーの軸心を結ぶ直線上での大径ローラーと中径ローラーの外周の間隔と、 大径ローラーと小径ローラーの軸心を結ぶ直線上での大径ローラーと小径ローラーの外周の間隔と、の比は1.5〜2.0:1であり、中径ローラーは小径ローラーの外周と接触状態であり、大径ローラーと小径ローラーは、同一の周速で回転され、中径ローラーは、大径ローラーと小径ローラーと同一の周速または生地の種類、特性などにより大径ローラー及び小径ローラーの周速と異なる周速で回転されること、を特徴とする。
【0007】
前記生地充填用の口金は、前記大中小径ローラーの軸心方向の生地の流れを前記軸心方向に分流させる複数個の仕切りガイドを含むことを特徴とする。
【0008】
前記生地引込み角度は、前記3本ローラー式生地充填機の生地進行方向の断面において、前記大径ローラー側の前記ホッパーと前記ハウジングの結合点から前記大径ローラーの外周に引いた接線と、前記中径ローラー側の前記ホッパーと前記ハウジングの結合点から前記中径ローラーの外周に引いた接線とのなす角度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各ローラー径を大きくして大・小ローラー用および中ローラー用2系統の駆動系統とすることにより生地引込み力が改善され、硬い生地にも対応できるため多種の生地に対応できるようになった。
また、生地を傷めずに、幅方向の均等な生地充填が可能であり、生地吐出量の安定化と高速充填ができる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の3本ローラー式生地充填機の全体図である。
【図2】本発明の3本ローラー式生地充填機のホッパー及びローラー部の生地進行方向の断面図である。
【図3】本発明の3本ローラー式生地充填機の仕切りガイド及び口金部の生地流れを示す図である。
【図4】本発明の3本ローラー式生地充填機の駆動系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、3本の異なる直径の生地充填ローラーからなる3本ローラー式生地充填機であって、生地が投入されるホッパー1と、ホッパー1下部のハウジング2と、生地充填用の口金3と、生地を送り出す大中小のローラー4,5.6から構成されている。
大中小のローラー4,5.6は、ハウジング2内に収納され、大径ローラー4の直径は160mm以上、中径ローラー5の直径は110乃至140mm、小径ローラー6の直径は110mm以下のものを使用する。
【0012】
各ローラーの水平方向の位置関係については、中径ローラー5の軸心が大径ローラー4の軸心より上に位置し、中径ローラー5の外周の最上部が大径ローラー4の最上部より上に位置するようになっている。
そして、小径ローラー6の軸心は大径ローラー4の軸心より下に位置し、小径ローラー6の外周の最下部が大径ローラー4の最下部より下に位置するようになっている。
【0013】
大径ローラー4と中径ローラー5間の生地引込み角度は、ハウジング1内で許容される最大値とする。
生地引込み角度は、3本ローラー式生地充填機の生地進行方向の断面である図2において、大径ローラー4側のホッパー1とハウジング2の結合点から大径ローラー4の外周に引いた接線と、中径ローラー5側のホッパー1とハウジング2の結合点から中径ローラー5の外周に引いた接線とのなす角度である。
この生地引込み角度が大きいとホッパー1から流入して大径ローラー4と中径ローラー5の間を通過する生地がストレスを受けることなく下方に流れやすくなる。
【0014】
大径ローラー4と中径ローラー5の軸心を結ぶ直線上での大径ローラー4と中径ローラー5の外周の間隔と、 大径ローラー4と小径ローラー6の軸心を結ぶ直線上での大径ローラー4と小径ローラー6の外周の間隔と、の比は1.5〜2.0:1であり、中径ローラー5は小径ローラー6の外周と接触状態としている。
上記大径ローラー4と中径ローラー5の間隔と大径ローラー4と小径ローラー6の間隔比を1.5〜2.0:1に保つことにより、ホッパー1から大径ローラー4と中径ローラー4の間を流下してきた生地はストレスを受けることなく円滑に下方に流れることができる。
【0015】
大径ローラー4と小径ローラー6は、同一の周速で回転され、大径ローラー4と中径ローラー5の間を流下してきた生地は大径ローラー4と小径ローラー6の周速差によるストレスを受けることがない。
中径ローラー5も、大径ローラー4及び小径ローラー6と同一の周速でホッパー1から大径ローラー4と中径ローラー4の間を流下する生地にストレスを与えないようになっているが、生地の種類が変わる場合や、時間経過により粘度、比重が変化する場合は円滑に生地の引き込みを行うために大径ローラー4及び小径ローラー6とは独立に中径ローラー5の周速を変更できるようにしている。
【0016】
ホッパー1から落下する生地12は、大径ローラー4と中径ローラー5の間と、大径ローラー4と小径ローラー6の間を通過して口金3から吐出される。
生地充填用の口金3の上流側には、大中小径ローラー4,5,6の軸心方向の生地の流れを軸心方向に分流させる複数個の仕切りガイド11が設けられ、大径ローラー4と小径ローラー6の間を通過した生地はガイド11によって分流された後、口金3から吐出される。
【0017】
大中小径ローラー4,5,6は、大、小径ローラーの駆動用電動機7と、中径ローラーの駆動用電動機9により駆動される。大、小径ローラー4,6は、大、小径ローラーの駆動用電動機7から歯車8を介して個別に駆動され、中径ローラー5は、中径ローラーの駆動用電動機9から歯車10を介して駆動される。
【0018】
以下、本発明の3本ローラー式生地充填機100の実施例について説明する。
本発明の3本ローラー式生地充填機100のホッパー1は、大中小径ローラー4,5,6の軸心方向の長さが1200mm、大中小径ローラー4,5,6の軸心に直角な方向の幅が190mmである。
ローラー径は、大径ローラー4が180mm、中径ローラー5が120mm、小径ローラー6が100mmであり、大径ローラー4と中径ローラー5の間隔、即ち、大径ローラー4と中径ローラー5の軸心を結ぶ直線上で大径ローラー4と中径ローラー4の外周の間隔が14.5mmであり、大径ローラー4と小径ローラー6の間隔、すなわち、大径ローラー4と小径ローラー6の軸心を結ぶ直線上で大径ローラー4と小径ローラー6の外周の間隔が8.5mmである。
【0019】
本発明の3本ローラー式生地充填機100では、従来の3本ローラー式生地充填機と比較して大中小径ローラー径を大きくして生地の引込み力を増加させた結果、硬い生地にも対応可能となり、多種の生地への対応ができるようになった。
ローラー径を大きくすると、生地の付着面積が広くなり生地をかみ込みやすくする効果がある。
【0020】
硬い生地は、ローラー通路に入りにくく、横に広がる傾向があるため、ローラー回転数を高くしてローラー表面速度を上げる必要があるが、そうすると生地がローラー上で滑りやすくなる。ローラー径を大きくすると、ローラーの高速回転時のスリップが減り、硬い生地の横広がりやローラー上での生地の滑りによる生地のストレスが防止できる。
引込み力の増加とともにローラー本体の強度も増加させたことにより充填生地の幅方向の均一化も図れる。
【0021】
上部の中径ローラー径を大きくすることでホッパー1と中径ローラー5の間の生地の滞留も防止できる効果があった。
生地の滞留が防止できると生地の粘度上昇や気泡が抜けることにより食感が大幅に向上する効果がある。
大径ローラー4と下部の小径ローラー6の間隔は、ローラー間通路下部への生地供給量及び充填量の均一化に影響を及ぼす。本実施例では、従来のものより5%狭くしたことで口金入り口の圧力が減少して充填量の均一化が可能となった。
【0022】
大中小径ローラー4,5,6の周速は、流下する生地にストレスが生じないよう同速にしているが、中径ローラー5は、大、小径ローラー4,6とは独立に周速を変更することにより、生地の種類が変わる場合や、時間経過により粘度、比重が変化する場合にも対応できるようになっている。
ローラーの駆動が1系統の場合は、充填量は回転数を変更することで調整できるが、生地の種類の変更には対応できない。本実施例の場合、ローラーの駆動を2系統としているため、上部中径ローラー5の回転数を大、小径ローラー4,6とは独立に変更することができ、生地の充填量の調整の外、比重や粘度の異なる生地への対応や、生地特性の経時変化や温度変化にも対応可能である。
仕切りガイド11は、生地を大小径ローラー4,6から内圧を下げて口金に均等に流れやすくするために設けたものであり、大中小径ローラー4,5,6の軸心方向に20個配列され、各ガイド11に口径35mmの口金3が取り付けられている。菓子の形状や大きさにより形状や列数を変更した口金と差し替えが出来る。
【0023】
本実施例では、大中小径ローラー4,5,6の直径と各ローラー間の隙間を所定の値に設定し、大中小径ローラー4,5,6の駆動系統を大小ローラー用と中ローラー用の2系統とすることで、充填量の均一化を図るとともに、異なる特性の生地を充填機の交換なしで処理できるようになった。
また、従来40〜50回/分であった充填回数は、生地を傷めることなく80〜200回/分に上げることができた。
【符号の説明】
【0024】
1 ホッパー
2 ハウジング
3 口金
4 大径ローラー
5 中径ローラー
6 小径ローラー
7 大・小径ローラーの駆動用電動機
8、10 歯車
9 中径ローラーの駆動用電動機
11 仕切りガイド
12 生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本の異なる直径の生地充填ローラーからなる3本ローラー式生地充填機であって、
生地が投入されるホッパーと、
前記ホッパー下部のハウジングと、
前記ハウジング内に収納された直径が160mm以上の大径ローラーと、
直径が110乃至140mmの中径ローラーと、
直径が110mm以下の小径ローラーと、
前記ハウジング下部に装着され、前記大中小径ローラーの軸心方向の複数個からなる生地充填用の口金と、
前記大中小径ローラーの駆動用電動機と、を含み、
前記大中小径ローラーの駆動用電動機は、前記大、小径ローラーの駆動用サーボ電動機と、前記中径ローラーの駆動用サーボ電動機からなり、前記大、小径ローラーは、前記大、小径ローラーの駆動用サーボ電動機から歯車を介して個別に駆動され、前記中径ローラーは、前記中径ローラーの駆動用サーボ電動機から歯車を介して駆動され、
前記各ローラーの水平方向の位置関係は、前記中径ローラーの軸心が前記大径ローラーの軸心より上に位置し、前記中径ローラーの外周の最上部が前記大径ローラーの最上部より上に位置し、
前記小径ローラーの軸心が前記大径ローラーの軸心より下に位置し、前記小径ローラーの外周の最下部が前記大径ローラーの最下部より下に位置し、
前記大径ローラーと前記中径ローラー間の生地引込み角度は、前記ハウジング内で許容される最大値とし、
前記大径ローラーと前記中径ローラーの軸心を結ぶ直線上での前記大径ローラーと前記中径ローラーの外周の間隔と、 前記大径ローラーと前記小径ローラーの軸心を結ぶ直線上での前記大径ローラーと前記小径ローラーの外周の間隔と、の比は1.5〜2.0:1であり、前記中径ローラーは前記小径ローラーの外周と接触状態であり、
前記大径ローラーと前記小径ローラーは、同一の周速で回転され、前記中径ローラーは、前記大径ローラーと前記小径ローラーと同一の周速または生地の種類、特性などにより前記大径ローラー及び前記小径ローラーの周速と異なる周速で回転されること、
を特徴とする3本ローラー式生地充填機。
【請求項2】
前記生地充填用の口金は、前記大中小径ローラーの軸心方向の生地の流れを前記軸心方向に分流させる複数個の仕切りガイドを含むことを特徴とする請求項1に記載の3本ローラー式生地充填機。
【請求項3】
前記生地引込み角度は、前記3本ローラー式生地充填機の生地進行方向の断面において、前記大径ローラー側の前記ホッパーと前記ハウジングの結合点から前記大径ローラーの外周に引いた接線と、前記中径ローラー側の前記ホッパーと前記ハウジングの結合点から前記中径ローラーの外周に引いた接線とのなす角度であることを特徴とする請求項1に記載の3本ローラー式生地充填機


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86905(P2013−86905A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227919(P2011−227919)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000191157)株式会社マスダック (16)
【Fターム(参考)】