説明

3次元の成形部品の特性変化を電子によって行うための装置および方法と、該方法の使用

本発明は、3次元の成形部品(2)の特性変化を電子によって行うための装置および方法に関し、加速された電子を生成するための少なくとも1つの電子加速器(3a;3b)と2つの電子出射窓(5a;5b)とを有し、両電子出射窓(5a;5b)は相互に対向して配置されており、両電子出射窓(5a;5b)と少なくとも1つの反射器(7a1;7a2;7b1;7b2)とが処理室の境界を決定し、該処理室内で、該成形部品(2)の表面または縁部層に電極が印加され、センサシステムによって、該処理室内部のエネルギー密度分布が少なくとも1つの空間的次元において検出されるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元の成形部品の表面および縁部領域の材料特性を電子のエネルギーによって変性するための装置および方法に関する。さらに、本方法の使用も開示する。
【0002】
電子によってエネルギーを空間的および時間的に決定して材料に入力することにより、該材料の表面、縁部層または体積の特性を変化させることができる。このために必要な電子は電子加速器で生成され、成形および加速された後に、たいていは平坦な電子出射窓を介して高真空から、処理空間内のより高い圧力レベルに導かれる。その際にはたいてい、電子出射窓の全体的なサイズにわたって電子密度が一定であることが望まれる。電子出射窓と製品との間の間隔にある気体層(たとえば空気)を通過した後に電子は、処理すべき製品表面に達する。
【0003】
電子加速器として、バンド放射源とも称される面ビーム生成器が使用されるか、またはアキシャルビーム生成器が使用される。従来技術にしたがってアキシャルビームとして構成された電子加速器は付加的に、ビーム偏向システムを有する電子ビーム偏向室を有する。これは、生成された電子ビームを周期的に電子出射窓全体にわたって、時間平均で該電子出射窓のすべての部分で、近似的に等しい滞留時間で偏向するために使用される。
【0004】
たとえばパッケージ、医療用のインプラント、OP器具、種々の材料(たとえばプラスチック、紙、金属、セラミック)から成る人工機能補完装具等である3次元の成形部品が異なる分野で(たとえばパッケージング産業、製薬分野、医療技術、プラスチック産業)で使用される。特定のアプリケーションでは、成形部品の表面全体および縁部層の特性変化(たとえば殺菌、表面機能化、架橋、硬化)が必要である。
【0005】
従来技術
成形部品を複数回の通過で(DE19942142A1)、位置を変更して電子出射窓のそばを通過させることにより、3次元の成形部品の表面全体の特性に電子エネルギーによって作用することが公知である。成形部品特性を変性させるための電子を生成するための公知の装置は、電子出射窓全体にわたって近似的に一定の電子エネルギー密度が生成されて出力されるように構成されている。
【0006】
成形部品の位置を変更することにより、成形部品表面全体に電子エネルギーが印加されることが保証される。このような装置の欠点は、複数回通過することが比較的大きな時間的手間に繋がることである。個々の通過の間の成形部品の位置を無作為に変更することもできるが、この位置の変更は、個々の表面領域がすべて、異なる電子エネルギー密度が与えられないように整合していなければならない。さもないと、特性が異なってしまう。
【0007】
従来技術では、3次元の成形部品の表面全体を1回の通過だけで電子エネルギーによって変性するためには、複数(少なくとも2つまたは3つ)の電子出射窓が、成形部品の断面を包囲するように配置され、該成形部品がこれらの電子出射窓間を通過することにより、3次元の表面全体に電子が印加されるようにする。
【0008】
LINAC Technologies 社から(技術説明『ELECTRON BEAM SURFACE STERILISATION SYSTEM 200 KeV - The Ke VAC S』)、成形部品の表面を電子エネルギーによって殺菌するための装置が公知である。この装置では、3つの電子加速器に所属する電子出射窓が、正三角形の断面を有する体積を包囲するように該3つの電子加速器が配置され、該体積を、殺菌すべき成形部品に1回通過させる。このような装置によって確かに、成形部品に複数回の通過で電子が印加される公知の構成に対し、時間的な手間は低減されるが、3つの電子加速器を使用するので技術的な手間は非常に大きくなる。
【0009】
3つの電子出射窓の同様の構成が公知であるが、この構成では電子は1つの電子加速器でのみ生成され、偏向システムによって3つの電子出射窓に分配される。
【0010】
3つの電子出射窓を有する公知の構成はすべて、電子加速器が3角形に配置されることにより、相互間の作用が無いかまたは無視できる程度であるという利点を利用する。すなわち、1つの電子加速器の加速された電子が別の電子加速器に出力するエネルギーの割合は大きくないという利点を利用する。このことは、電子出射窓で吸収されるエネルギーの割合をクリティカルでない程度に制限し、ひいては電子出射窓の動作温度をクリティカルでない程度に制限するために必要である。こうしないと、材料使用温度を超えた場合に窓カバーの高感度の材料が、外部から加えられる次のような大気圧の機械的負荷によって、すなわちビーム生成器の内部の高真空と比較して負荷となる機械的負荷によって破壊されてしまう。通常は電子出射窓に挿入されるチタン膜の場合、約400℃の最高温度を決して超えてはならない。持続動作の場合、最大200〜250℃を出発点とする。
【0011】
2つの相互に対向する電子出射窓を配置することも公知である。電子出射窓間で技術的に必要とされる間隔が小さい場合、対向する電子出射窓に入るエネルギーの割合は著しく大きく、これによって、構成に応じて2〜5倍の温度上昇が生じる。最大温度の必要な制限は、ビーム流の比例的な制限によってのみ実現することができる。しかしこのことにより、システム全体の性能が制限される。
【0012】
2つの相互に対向する電子出射窓の温度を制限するための別の構成に、該電子出射窓間のたとえば(少なくとも部分透明な)輸送ベルトを配置する構成がある(US2741704)。これによって、エネルギーの著しく大きい割合が吸収体に入射することにより、対向する電子出射窓に付加的なエネルギーが入射するのが制限される。
【0013】
また、2つの電子出射窓を相互に対向させ、製品輸送方向に横方向にずらして配置する構成も公知である。この構成により、それぞれ対向する電子加速器にパワーが入射するのが阻止され、ひいては該電子加速器の過熱が阻止される。
【0014】
次のような公知の装置、すなわち、2つ以上の電子出射窓が成形部品を包囲し、電子出射窓全体にわたってほぼ均一の電子エネルギー密度が出力され、成形部品に1回の通過だけで電子が印加される装置の場合、該成形部品のジオメトリと該ジオメトリから得られる該成形部品の個々の表面部分領域と電子出射窓との間の異なる間隔とに依存して、該個々の表面部分領域に電子エネルギーを異なる投与量(単位面積あたりのエネルギーまたは単位質量あたりのエネルギー)を印加することができる。
【0015】
成形部品に所定の特性を実現するためには、所定の投与量の電子エネルギーが必要である。最小投与量が到達する表面領域において、該表面領域に到達する投与量が、特性の変性に必要な投与量に正確に等しいかまたは少なくとも相応するように、電子生成器の出力を調整するのが目的に適っている。成形部品の他のすべての表面領域には必然的に、より高い投与量が印加される。エネルギーのこのようにより高い投与量は、過剰投与量とも称される。成形部品の個々の領域における過剰投与量が高いほど、これらの領域における特性は目標パラメータから大きく偏差する。しかし、過剰投与量の電子エネルギーは、成形部品の変性すべき特性に悪影響を及ぼすだけでなく、不所望の反応生成物(たとえばオゾン)が処理ガス(たとえば空気)中に形成されることによって不所望または完全に処理に有害な副作用が生じる原因にもなる。
【0016】
過剰投与係数とも称されるパラメータが、所望の特性に調整するのに必要な投与量を何倍超えたかを示す。公知の装置では、変性すべき成形部品のジオメトリに依存して個々の表面領域において、多くの用途では面積全体にわたって十分に均質な特性を実現するためには許容できない過剰投与係数に達し、このことによっても、既述の不所望の副作用が生じる。
【0017】
高い生産性を実現するためには、成形部品の輸送速度が適切に高いことが必要である。輸送速度およびビーム流とは比例関係にあるため、技術的に予め決定される最小投与量(殺菌の適用領域ではたとえば25kGy)を実現するためには、輸送速度に比例してビーム流を上昇する必要があるが、電子出射窓の動作温度の上昇の比率が過度に高くなってしまう。2つの電子加速器を付加的な吸収体またはシステムの横方向のずれなしで相互に配置する場合、現在は実用に耐える解決手段は存在しない。
【0018】
本発明の課題提起
したがって、本発明の基礎となる技術的課題は、従来技術の欠点を克服する装置および方法を提供することである。装置および方法はとりわけ、成形部品の表面全体または縁部層の変性が十分に均質に行われ、かつ、電子加速器の全体の構成から、生産性を制限する欠点を有しないように、3次元の成形部品の特性を時間的かつ技術的な小さい手間で変性するのに適している必要がある。また、過剰投与係数が成形部品の技術的/工学的な要件に相応するように該過剰投与係数を低くしなければならない。
【0019】
上記の技術的課題は請求項1および19の特徴部分に記載されている構成によって解決される。従属請求項に本発明の別の有利な実施形態が記載されている。
【0020】
従来技術では、3次元の成形部品の断面周縁に1回の通過で完全に電子を印加して所望の特性変化を引き起こすことができるようにするためには、横方向にずれた少なくとも2つの電子出射窓、または相互間に吸収体を有する少なくとも2つの電子出射窓、またはビーム流が制限される少なくとも2つの電子出射窓が必要であるか、ないしは3つの電子出射窓が必要であると考えられていた。本発明では、電子出射窓を相互に対向させて配置することによって生じるビーム流の制限は必要なく、付加的に、近似的に均等に分布するエネルギー投与量を成形部品表面に印加することが可能であることが判明した。
【0021】
3次元の成形部品の特性変化を電子によって行うための本発明による装置は、加速電子を生成するための少なくとも1つの電子加速器と2つの電子出射窓とを有し、両電子出射窓は相互に対向して配置されている。少なくとも1つの反射器とともに両電子出射窓は処理室の境界を決定し、該処理室内において成形部材に電子が印加される。電子出射窓は、対向する電子出射窓の放出エネルギーによって該電子出射窓へ及ぼされる影響が無視できる程度になるような間隔で離隔される。こうするために必要な間隔は実質的に、電子の加速電圧と、電子出射窓の膜の厚さおよび密度と、電子出射窓の相互間の気体の密度とに依存する。
【0022】
このような間隔で、変性すべき成形部品のすべての表面領域に(とりわけ、電子出射窓の表面に対してだいたい垂直に延在する領域に)十分に電子が印加されないという欠点を補償するためには、成形部品に当たらない電子(とりわけ電子出射窓の縁部領域からの電子)が前記反射器によって、電子の印加時に欠点を有する成形部品の表面領域へ反射されるように、前記反射器は成形および配置される。
【0023】
さらに本発明による装置は、処理室内のエネルギー密度分布を少なくとも1つの空間的次元で検出するためのセンサシステムを有する。ここで検出されたデータに依存して、電子出射窓を介して出力されるエネルギー密度を、エネルギー密度分布が検出された次元内で電子が成形部品表面に均質に印加されるように制御することができる。
【0024】
このような装置は、だいたい円形、楕円形または台形の断面を有する成形部品に特に適している。また、異なる形態の断面を有する成形部品を変性することもできる。
【0025】
加速電子を生成するためには、電子を相応の偏向制御によって両電子出射窓に分配する電子加速器を使用することができる。また択一的に、各電子出射窓に別個の電子加速器を所属させることもできる。電子加速器としては、バンド放射源とも称される面加速器や、アキシャルビーム生成器も適している。
【0026】
同様に構成され相互に対向する2つの電子出射窓を最適な間隔で平行に方向付けし、本発明にしたがって反射システムを配置した場合、実質的に台形の断面を有する成形部品の電子処理中に、値4を下回る過剰投与係数が実現された。それに対して、3つの電子出射窓を有するかまたは2つの相互に対向する電子出射窓と該電子出射窓間に設けられた吸収体とを有する従来技術による装置で同じ成形部品を処理した場合、4を大きく上回る過剰投与量になってしまう。したがって公知の解決手段と比較して、高い生産性とエネルギーの削減が実現され、3次元の製品の表面がビーム化学的な損傷から保護され、オゾンの衝突の減少により、処理に損傷を与える副作用が低減される。
【0027】
本発明の1つの実施形態では、処理室の境界を決定して鏡面対称的に相互に対向して配置された2つの反射器が設けられる。このような構成では両反射器はそれぞれ、多数の部分反射器から構成することができる。
【0028】
1つの有利な実施形態では、反射器は同時に、エネルギー密度分布を検出するためのセンサシステムの構成部分でもある。このような構成ではたとえば、有利には高原子番号を有する材料(たとえば金、タングステンまたはモリブデン)から成る複数の反射器ないしは部分反射器は、抵抗器を介して接地または別の電位に電気的に接続することができる。このような構成により、反射器/部分反射器によって反射されない電子は電流を形成し、反射器/部分反射器に所属する抵抗器で電圧を検出することができる。個々の反射器/部分反射器で検出された電圧の値によって、反射器から反射された電子のエネルギー密度に関して相応の予測を行うことができ、均質なエネルギー密度分布を実現するための適切な制御ステップを開始することができる。
【0029】
特に有利なのは、このようにしてエネルギー密度分布を直角座標系のx方向とy方向とz方向とで検出し、適切に評価することである。
【0030】
反射器およびセンサシステムのこのような組み合わせによってたとえば、成形部品が処理室内に存在するか否かを検出することもできる。このことに依存して電子の生成を制御することができ、たとえば、成形部品が処理室内に存在する場合には電子加速器の出力を処理固有の値に設定し、そうでない場合には低減するかないしは0まで低減することができる。
【0031】
本発明による装置では、発生する最大の過剰投与係数ないしは成形部品表面への電子の均質な印加を次のようにしてさらに最適化すること、すなわち、処理すべき成形部品のジオメトリに依存して両電子出射窓を相互間の角度で方向付けし、成形部品の可能な限り多くの表面セグメントが近似的に等しく、そのつどエネルギーを入射する電子出射窓から離隔されるようにしてさらに最適化することができる。
【0032】
同様に成形された電子出射窓の他に、この電子出射窓をたとえば成形部品に向かって凹形に形成するか、または成形部品のジオメトリに適合することもできる。このことによっても、成形部品の可能な限り多くの表面セグメントが近似的に等しく、そのつどエネルギーを入射する電子出射窓から離隔され、過剰投与係数をより小さくすることができる。
【0033】
1つの実施形態では電子生成器は次のような装置、すなわち、少なくとも1つの電子出射窓の個々の部分領域を介して出力される電子エネルギー密度が異なるように、該少なくとも1つの電子出射窓の面を介して出力される電子エネルギー密度を制御するための装置を有する。たとえば、成形部品の表面領域に対して大きい間隔で対向する窓の部分領域において電子エネルギー密度を、該成形部品の表面領域から小さい間隔で対向する該窓の部分領域より上昇することにより、該成形部品の可能な限りすべての表面領域が吸収する投与量が等しくなり、表面すべてにわたって、変性すべき処理深さ(表面または縁部層)で、均質な特性を形成することができる。電子出射窓の個々の部分領域で電子エネルギー密度を変性するための手段として、(電磁的なビーム偏向部を有さない)面ビーム生成器内において電子光学系にかみ合う構造的な次のようなシステム、すなわち電子流の分布に影響するシステムを使用することができ、たとえば遮蔽部、補助電極またはカソードの温度に影響する部材等を使用することができる。
【0034】
別の構成では、加速電子の方向に影響する手段が電子加速器の外側に配置され、とりわけ磁気的または/および電気的システムが設けられる。
【0035】
本発明の別の実施形態は、少なくとも1つの電子出射窓が可動に構成されることを特徴とする。このような電子出射窓はたとえば、成形部品が両電子出射窓間において処理室内に挿入される開始時に、成形部品の端面に向かって傾斜されることにより、端面において電子の印加を改善することができる。処理室を通って成形部品がさらに輸送されると、この電子出射窓は、対向する電子出射窓に対して平行な方向に、処理室から出る際には成形部品の裏面の方向に傾斜される。また、電子出射窓で別の移動の形態をとることもできる。たとえば電子出射窓は、一時的に成形部品の移動方向に一緒に案内することができる。
【0036】
成形部品の表面全体にわたって特性を均質に変性するという目標設定でのさらなる最適化が、次のような手段によって可能である。すなわち、磁気的および/または電気的な偏向システムを介して、電子が電子出射窓から出るポイントのみを制御するだけでなく、このポイントでの電子の出射方向を制御する手段によって可能である。このような手段によってさらに所期のように、成形部品の特定の領域に電子を印加することができる。
【0037】
1つの有利な実施形態では、少なくとも1つの電子出射窓が真空密のフィルムとして、ひいてはビームガイド空間と処理室との間の圧力バリアとして形成される。択一的に電子出射窓を、電子発生器と処理室との間の気体透過性の圧力段構成体として構成することもできる。
【0038】
3次元の成形部品を電子によって特性変化するための本発明の方法は、少なくとも1つの電子加速器によって電子を生成および加速し、2つの相互に対向する電子出射窓の面を介して放射し、両電子出射窓と少なくとも1つの電子反射器が処理室の境界を決定し、該処理室内で成形部品の表面または縁部層に電子を印加し、センサシステムによって該処理室内のエネルギー密度分布を少なくとも1つの空間的次元で検出し、対向する電子出射窓の放射されたエネルギーが1つの電子出射窓に及ぼされる影響が無視できる程度になるように該電子出射窓の間隔を調整することを特徴とする。
【0039】
有利には、電子出射窓の間隔を電子の加速電圧と該電子出射窓の厚さおよび密度とに依存して調整する。
【0040】
1つの実施形態では電子出射窓の間隔aは、以下の数式から得られる領域内に調整される。
【0041】
【数1】

【0042】
a=電子加速器の距離
Ub=加速電圧
ρ=水の密度
ρ=電子出射窓間の媒体の密度
ρ=窓フィルムの密度
=窓フィルムの厚さ
=1−1
=1(g/m−1
f=間隔係数(0.5<1<1.5)
間隔aの範囲はここでは、間隔係数fの値領域から決定され、1の値の間隔係数から、間隔aの最適な計算値が得られる。
【0043】
両電子出射窓間の処理室内で成形部品に照射するためには、種々の択一的な手段が存在する。
【0044】
成形部品を一定の速度で処理室に通過させ、その間に該成形部品に電子を印加することができる。
【0045】
択一的に、成形部品を処理室内に案内し、定常状態で1回または複数回の照射工程で電子を印加することもできる。
【0046】
別の択一的な実施形態では、いわゆるステップアンドリピート方式で成形部品に電子を印加する。このステップアンドリピートは、成形部品の少なくとも1つの断片が処理室内に突き出されるように該成形部品を処理室内部に案内することを意味する。このようにして、定常状態ではこの成形部品には、電子出射窓からの電子が印加される。その後に、後続の区間ないしは処理室を通って成形部品を移動させる再度の輸送ステップが続く。その次に移動なしの状態で、成形部品に再び電子を印加する照射ステップが行われる。このようにして、成形部品が処理領域を完全に通過し終わるまで、輸送ステップと照射ステップとを交互に行う。この実施形態では各輸送ステップは、各輸送ステップ後に電子が印加される個々の表面領域が相互に接するように行うか、または択一的な変形形態では相互にオーバーラップするように行うことができる。
【0047】
最後に、成形部品を処理室内で、両電子出射窓間に延在する軸を中心として回転し、その間に、1回または複数回の照射工程によって電子を印加することによって、成形部品の変性を行うこともできる。
【0048】
本発明による方法はたとえば、製薬産業および医療技術の製品を殺菌およびパッケージングするために使用するか、または、果物、卵または別の天然物等である製品の殺菌/消毒または滅菌するために使用するか、またはプラスチックの変性に使用するか、またはコーティングの硬化に使用するか、または物の殺菌/消毒に使用することができる。
【0049】
実施例
以下で本発明を、有利な実施例に基づき詳細に説明する。
【0050】
図面
図1 本発明による装置の概略的な断面図である。
図2 図1の相互に対向する電子出射窓5aおよび5bによって放射される電子の深さ方向の投与量の分布を示すグラフである。
図3 図1の反射器7a1および7b1を含むセンサシステムの概略図である。
【0051】
図1に、成形部品2の表面を殺菌する目的で電子処理を行うための装置1の断面が概略的に示されている。成形部品2は、台形の断面を有する細長い物である。装置1は、面ビーム生成器として構成された2つの電子加速器3a,3bから成り、これらはそれぞれ、電子加速室4a,4bと電子出射窓5a,5bとを有する。ここでは、電子出射窓は11μmの厚さのチタンフィルムとして形成されている。電子加速器3a,3bは、同様に成形された電子出射窓5a,5bが相互に対向して平行に方向づけされるように配置される。両電子出射窓5a,5b間において成形部品2が、電子出射窓5bの高さで途切れ図1中で点線で示されたベルトコンベヤシステム6上で連続的に通過案内され、該成形部品2の表面全体に電子エネルギーが印加される。成形部品2の斜行する側面ではそのつど、電子出射窓から最も遠く離れたポイントで伝送されるエネルギー投与量は最小であり、このことは、金から成る電子反射器7a1,7b1,7a2,7b2を配置することによって補償される。このことは、両電子加速器3a,3bのそのつどの電子ビームのうちで使用されない縁部ビーム8a1,8a2,8b1,8b2が、そのつど最近傍の電子反射器に当たって反射され、最小の投与量の領域において反射器を角度配置することによって成形部品に導かれることによって行われる。このような全体的な構成により、成形部品の表面全体や縁部層におけるエネルギー投与量が、最小の過剰投与係数と、電子流の最大限の活用と、空気区間で生じる反応性のオゾンが最小限になることとをもって実現される。
【0052】
この構成で選択される両電子出射窓5aおよび5bの間隔は、だいたい以下の関係式に相応する。
【0053】
【数2】

【0054】
a=電子加速器の距離
Ub=加速電圧
ρ=水の密度
ρ=電子出射窓間の媒体の密度
ρ=窓フィルムの密度
=窓フィルムの厚さ
=1−1
=1(g/m−1
f=間隔係数(0.5<1<1.5)
ここでは、f=1が最適な間隔を定義する。
【0055】
11μmの厚さのチタンフィルムが電子出射窓5a,5bであり、該電子出射窓間の媒体が空気(ここでは1188g/mと仮定する)である場合、最適な間隔は196mmとなる。
【0056】
図2に、図1に示された2つの電子加速器の本発明の構成の深さ方向の投与量の分布の一例が示されている。ここでは、電子出射窓膜(チタン)の厚さは11μmであり、加速電圧は150kVであり、電子出射窓の最適な間隔は196mmである。曲線10は、電子の侵入深さに対して、電子加速度3aによって生成されたエネルギー投与量の分布を示す。電子のエネルギーはポイント11において、280g/mの面積質量(1000g/mの密度の場合、この数値をmmで表した侵入深さに相応し、ここで挙げられた事例では280mmに相応する)の場合、0に降下する。この間隔で初めて、電子出射窓5bが設けられ、この電子出射窓の面積質量は、図2において細密斜線の面12として示されている。このような同じ条件は電子加速器3bでも形成され、電子加速器3bの生成されたエネルギー投与量は曲線13で示されており、ポイント14で0にまで低減されている(図2では、約50g/m)。ポイント11と14との間の間隔は両電子出射窓5aと5bとの間の間隔を示し、約230g/mの面積質量に相応する。これは、空気の密度(ここでは1188g/mと仮定される)と乗算されて約196mmに相応する。本発明ではここで仮定された条件では、それぞれ対向する電子出射窓にパワーが吸収されない最適な間隔も196mmとなる。この間隔は、間隔係数に相応して変化することができる。
【0057】
図2には、エネルギー投与量が最大となるポイント16も示されている。このエネルギー投与量は、約100g/mで電子加速器3aによって生成される。ほぼこのポイントに、電子反射器7a1および7a2が配置される。細密斜線面15として示された電子出射窓5aの面積質量が約50g/mであることを考慮すると、空気で反射器7a1および7a2から電極出射面5aまでの最適な間隔は約42mmとなる。電極加速器3bと反射器7b1および7b2にも同様の関係が当てはまる。
【0058】
図2に、図1の反射器7a1および7b1を含む反射システムの詳細が示されている。これらの反射器は同時に、センサシステムの構成部分としても構成されている。図3には、反射器7a1および7b1がy方向に、すなわち成形部品2の移動方向に、部分反射器7a1.1と7a1.2とに、ないしは7b1.1と7b1.2とに下位分割されているのが示されている。ここでは、各部分反射器は他のすべての部分反射器から電気的に絶縁されて配置されている。部分反射器7a1.1には測定装置9a1.1が所属するように、他の部分反射器にもそれぞれ、所属の部分反射器に入射した電子流を検出するための測定装置が所属する。
【0059】
反射器7a1および7b1に関しても説明したように、反射器7a1および7b1に対して鏡面対称的に配置された反射器7a2および7b2も部分反射器に下位分割され、これらの部分反射器は同時に、所属の測定装置とともにセンサシステムの構成部分である。
【0060】
このようにして、x方向とy方向とz方向とにそれぞれ、相応の測定結果が得られる少なくとも2つの測定ポイントが存在し、これらの測定結果によって、x方向とy方向とz方向とに電子流密度分布に関する予測が可能である。この予測では、x方向および/またはy方向および/またはz方向に形成された部分反射器の数が高くなるほど、電子流密度分布に関して行われる予測が正確になることが理解できるはずである。
【0061】
したがって、このようにして検出された電子流密度分布に依存して、装置1は、相互に対向する両電子加速器3aおよび3bのビーム流密度分布の監視と場合によっては制御によって、連続的なプロセス監視を行うのに適している。それゆえ本発明の装置1によって、電子出射窓5a,5bが2つのみであるにもかかわらず成形部品2の表面全体の全面積に電子を印加することができ、かつこの工程を、すべての表面セグメントに十分に均等なエネルギー投与量が印加されるように制御することもできる。
【0062】
反射システムとセンサシステムから成る組み合わせによってさらに、処理ゾーン内の成形部品2の滞留を空間的かつ時間的に監視することもできる。成形部品2が存在しない場合、縁部ビーム8は、それぞれ対向する反射器に当たり(たとえば縁部ビーム8a1は反射器7a1に当たった後に反射器7a2に当たる)、センサシステムにおいて電子流値の上昇として記録される。それに対して成形部品2が処理ゾーン内に存在する場合、成形部品2はこの反射された縁部ビームを吸収し、記録される信号は低減される。さらに、センサシステムに当たる他の散乱電子の割合も低減する。このようにして、成形部品2が処理室内に存在するか否かの予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による装置の概略的な断面図である。
【図2】図1の相互に対向する電子出射窓5aおよび5bによって放射される電子の深さ方向の投与量の分布を示すグラフである。
【図3】図1の反射器7a1および7b1を含むセンサシステムの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元の成形部品(2)の特性変化を電子によって行うための装置であって、
加速された電子を生成するための少なくとも1つの電子加速器(3a;3b)と2つの電子出射窓(5a;5b)とを有し、
両電子出射窓(5a;5b)は相互に対向して配置されている装置において、
両電子出射窓(5a;5b)と少なくとも1つの反射器(7a1;7a2;7b1;7b2)とが処理室の境界を決定し、
該処理室内で、該成形部品(2)の表面または縁部層に電極が印加され、
センサシステムによって、該処理室内部のエネルギー密度分布が少なくとも1つの空間的次元において検出されるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記電子出射窓(5a;5b)の面は同様に形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記電子出射窓(5a;5b)の面は相互に平行に方向づけされている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記電子出射窓の面は相互間に角度を成す、請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの電子出射窓の面は前記成形部品に向かって凹形に形成されている、請求項1記載の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの電子出射窓の面は、前記成形部品のジオメトリに適合されている、請求項1記載の装置。
【請求項7】
次のような第1の装置を有する、すなわち、少なくとも1つの電子出射窓(5a,5b)の個々の部分領域を介して出力される電子エネルギー密度が異なるように、該少なくとも1つの電子出射窓(5a,5b)の面を介して出力される電子エネルギー密度を制御するための第1の装置を有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つの反射器(7a1と7a2、7b1と7b2)は鏡面対称的に、前記処理室の対向する側面に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記反射器(7a1;7a2;7b1;7b2)は、前記処理室内のエネルギー密度分布を検出するためのセンサシステムの構成部分である、請求項8記載の装置。
【請求項10】
少なくとも2つの反射器または部分反射器において、接地または別の電位に対する電圧が検出されるように構成されている、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記エネルギー密度分布は、直角座標系のx方向および/またはy方向および/またはz方向に検出されるように構成されている、請求項8から10までのいずれか1項記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの電子出射窓は、前記成形部品のジオメトリおよび/または該電子出射窓間の該成形部品の位置に依存して可動に設けられている、請求項1から11までのいずれか1項記載の装置。
【請求項13】
少なくとも1つの電子出射窓(5a;5b)は真空密のフィルムとして形成されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つの電子出射窓(5a;5b)は、電子加速器と処理室との間の気体透過性の圧力段構成体として形成されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の装置。
【請求項15】
センサシステムが、前記電子加速器のパワーを、成形部品が前記処理室内に存在しないか否かに依存して、処理固有の値に調整可能に設けられている、請求項1から14までのいずれか1項記載の装置。
【請求項16】
1つの電子出射窓からの電子の出射方向を制御するための第2の装置が設けられている、請求項1から15までのいずれか1項記載の装置。
【請求項17】
前記電子加速器はバンド放射源またはアキシャルビーム生成器として構成されている、請求項1から16までのいずれか1項記載の装置。
【請求項18】
前記電子出射窓(5a;5b)は、
【数1】

から得られる範囲内にある間隔aを有し、ここでは、
Ub=加速電圧
ρ=水の密度
ρ=前記電子出射窓間の媒体の密度
ρ=窓フィルムの密度
=窓フィルムの厚さ
=1−1
=1(g/m−1
f=間隔係数(0.5<1<1.5)
である、請求項1から17までのいずれか1項記載の装置。
【請求項19】
3次元の成形部品(2)を電子によって特性変化するための方法であって、
少なくとも1つの電子加速器(3a;3b)によって電子を生成および加速し、2つの相互に対向する電子出射窓(5a;5b)の面を介して放射する方法において、
両電子出射窓(5a;5b)と少なくとも1つの電子反射器(7a1;7ab;7b1;7b2)とが処理室の境界を決定し、
該処理室内で成形部品(2)の表面または縁部層に電子を印加し、
センサシステムによって該処理室内のエネルギー密度分布を少なくとも1つの空間的次元で検出し、対向する電子出射窓(5a;5b)の放射されたエネルギーが1つの電子出射窓(5a;5b)に及ぼされる影響が無視できる程度になるように該電子出射窓の間隔を調整することを特徴とする方法。
【請求項20】
前記電子出射窓の間隔を電子の加速電圧と該電子出射窓(5a;5b)の厚さおよび密度とに依存して調整する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記電子出射窓(5a;5b)の間隔aを、
【数2】

から得られる範囲内に調整し、ここでは、
Ub=加速電圧
ρ=水の密度
ρ=電子出射窓間の媒体の密度
ρ=窓フィルムの密度
=窓フィルムの厚さ
=1−1
=1(g/m−1
f=間隔係数(0.5<1<1.5)
である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記成形部品(2)を一定の速度で前記処理室に通過させ、その間に電子を印加する、請求項19または21記載の方法。
【請求項23】
前記成形部品を前記処理室内に案内し、定常状態で1回または複数回の照射工程で電子を印加する、請求項19または21記載の方法。
【請求項24】
前記成形部品にステップアンドリピート方式で電子を印加する、請求項19または21記載の方法。
【請求項25】
前記成形部品を前記処理室内において、両電子出射窓間に延在する軸を中心として回転し、その間に、1回または複数回の照射工程で電子を印加する、請求項19または21記載の方法。
【請求項26】
請求項1から18までのいずれか1項記載の方法を、プラスチックの変性に使用するか、または、製薬産業の製品/中間生成物の殺菌に使用するか、または、パッケージの消毒および/または滅菌に使用するか、またはコーティングの硬化に使用するか、または、物、果物または別の天然物の消毒および/または殺菌に使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−529993(P2009−529993A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500763(P2009−500763)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002458
【国際公開番号】WO2007/107331
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】