説明

3次元インタラクティブディスプレイ

【課題】マルチタッチセンシングや3次元ジェスチャー認識などを行うことができ、しかも薄型に構成することができる3次元インタラクティブディスプレイを提供する。
【解決手段】3次元インタラクティブディスプレイは、検出しようとする物体15に光を照射するための光源11と、光源11から物体15に光16を照射することにより発生する散乱光17が入射し、この散乱光17の強度を変調する機能を少なくとも有する光変調層12と、光変調層12を透過した光を受光するための透明受光層13と、透明受光層13に関して光変調層12と反対側に設けられたディスプレイパネル14またはバックライトパネルとを有する。透明受光層13は受光素子Dの2次元アレイを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元インタラクティブディスプレイに関し、例えば、マルチタッチセンシングや3次元ジェスチャー認識などが可能なフラットパネルディスプレイに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
複数の接触点を同時に認識するための技術であるマルチタッチセンシング技術は、携帯電話やフラットパネルディスプレイなどにおいて広く採用されている。しかしながら、従来のほとんどのマルチタッチセンシングデバイス、例えば、静電容量式マルチタッチタブレット(非特許文献1参照。)や感力式マルチタッチセンサ(非特許文献2参照。)などは、スクリーンから離れた位置でのジェスチャーを検出する能力を有していない。ほとんどの3次元ジェスチャー認識デバイスは、空間情報を得るためにカメラを使用することによって実現される。しかしながら、カメラを用いると、像を得るために物体とカメラとの間に空間が必要となることから、これらの技術はフラットパネルテレビ、タブレット、携帯電話、携帯ゲーム機などの薄型あるいは携帯デバイスには適していない。ほとんどの関連研究(非特許文献3参照。)においては、マルチタッチセンシングおよび3次元ジェスチャー認識は、液晶ディスプレイ(LCD)を双方向マスクとして使用することによって実現され、これにより、バックライトの拡散板の背後のカメラがスクリーンの前方の物体の像を得ることが可能となる。しかしながら、このデバイスも、カメラで像を得るために、ディスプレイとカメラとの間に比較的大きな空間が必要であることから、薄型あるいは携帯デバイスには適していない。一方、バックライトの背後に像検出面を配置すると、バックライトに発光ダイオード(LED)を採用することが難しくなる。それはLEDあるいは有機LED(OLED)の基板は一般に不透明であるためである。また、OLEDディスプレイ、プラズマディスプレイパネル(PDP)、Eインクディスプレイなどの、より高輝度、より高コントラスト、より広い視野角あるいはより高い電力効率を有するディスプレイの技術を利用することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】LEE, S., BUXTON, W., AND SMITH, K. C. 1985. A multi-touch three dimensional touch-sensitive tablet. In ACM SIGCHI, 21-25
【非特許文献2】HILLIS, W. D. 1982. A high-resolution imaging touch sensor.Int'l. J. of Robotics Research 1, 2, 33-44
【非特許文献3】Matthew Hirsch, Douglas Lanman et al. A Thin, Depth-SensingLCD for 3D Interaction using Light Fields, SIGGRAPH Asia, 2009
【非特許文献4】Fenimore et al. Codes 1978. Codes aperture imaging with uniformly redundant arrays. Appl. Optics 17, 3, pp337-347, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、従来は、マルチタッチセンシングや3次元ジェスチャー認識などを行うことができ、しかも薄型に構成することができる3次元インタラクティブディスプレイは提案されていなかった。
【0005】
そこで、本開示が解決しようとする課題は、マルチタッチセンシングや3次元ジェスチャー認識などを行うことができ、しかも薄型に構成することができる3次元インタラクティブディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、
検出しようとする物体に光を照射するための光源と、
上記光源から上記物体に光を照射することにより発生する散乱光が入射し、この散乱光の強度を変調する機能を少なくとも有する光変調層と、
上記光変調層を透過した光を受光するための透明受光層と、
上記透明受光層に関して上記光変調層と反対側に設けられたディスプレイパネルまたはバックライトパネルとを有する3次元インタラクティブディスプレイである。
【0007】
光源は、典型的には、ディスプレイパネルまたはバックライトパネルからの可視光と重ならない波長の光、すなわち紫外光または赤外光を発生するものが用いられる。この光源は、この3次元インタラクティブディスプレイのスクリーンに接近する物体を検出することができるようにプローブ光を発生するものである限り、基本的にはどのようなものを用いてもよい。この光源は、好適には、光源から発生する光がスクリーンの前方の空間全体に照射されるように構成される。光変調層は、光源からの光が、スクリーンに接近する物体により散乱されることにより発生する散乱光に対して空間フィルター(マスク)となるものである限り、基本的にはどのようなものであってもよい。この光変調層としては、好適には、液晶パネルなどが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0008】
ディスプレイパネルは、画像を表示することができるものである限り、特に限定されないが、例えば、有機発光ダイオードディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、液晶ディスプレイパネルなどである。
【0009】
透明受光層は、光変調層を透過した光を受光することができるように受光素子が、典型的には複数の受光素子が配列されたものである。受光素子としては、光源からの光がスクリーンに接近する物体により散乱されることにより発生する散乱光を検出することができるものである限り、基本的にはどのようなものであってもよく、必要に応じて選ばれる。この受光素子としては、最も好適には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体と少なくとも一つの、長寿命励起状態を有する色素を含むタンパク質、有機色素または無機色素との複合体からなる光伝導体を用いた受光素子が用いられ、この受光素子が複数配列される。この受光素子は、透明基板上に設けてもよいし、そうでなくてもよい。この受光素子は、光変調層の後面上に設けてもよい。
【0010】
上記の光伝導体においては、典型的には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素とは非共有結合または共有結合により互いに結合する。典型的には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体は全体としてネットワークを形成している。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体はp型のものが多いが、n型であってもよい。タンパク質に含まれる、長寿命励起状態を有する色素の「長寿命」とは、蛍光性ないしは燐光性を有するような色素に一般的な励起寿命を意味し、典型的には数十ピコ秒以上であるが、これに限定されるものではない。タンパク質は、例えば、電子伝達タンパク質、補酵素を含むタンパク質、グロビン類、蛍光タンパク質および蛍光タンパク質の変異種からなる群より選ばれた少なくとも一種である。電子伝達タンパク質としては、従来公知の電子伝達タンパク質を用いることができる。より具体的には、電子伝達タンパク質としては、金属を含む電子伝達タンパク質または金属を含まない(金属フリー)電子伝達タンパク質を用いることができる。電子伝達タンパク質に含まれる金属は、好適には、d軌道以上の高エネルギーの軌道に電子を有する遷移金属(例えば、亜鉛や鉄など)である。有機色素または無機色素としては従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれる。必要に応じて、タンパク質、有機色素および無機色素のうちの二種類または三種類を一緒に用いてもよい。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素との複合体は、機械的強度の向上を図るために、必要に応じて、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体より機械的強度が高い他のポリマーをさらに含む。こうすることで、光伝導体を基板上に支持する必要がなくなる。
【0011】
上記の受光素子においては、典型的には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体が第1の電極と第2の電極との間に電気的に接続されている。必要に応じて、機械的支持のために、光伝導体、第1の電極および第2の電極が基板上に設けられる。この基板は透明であっても透明でなくてもよい。例えば可視光に対して透明な光電変換素子を得るためには、これらの基板、第1の電極および第2の電極は可視光に対して透明に構成される。
【0012】
上記の光伝導体の製造方法においては、典型的には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素とを非共有結合または共有結合により互いに結合させる。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素との複合体は、例えば、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素とを含む溶液を用いて形成することができる。また、この複合体は、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素とを含む溶液にリンカーを添加して導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素とをこのリンカーにより結合させた後、この溶液を用いて形成することができる。さらに、この複合体は、例えば、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体を形成するためのモノマーと上記の色素とを含む溶液を用いて電気化学的重合法によりそのモノマーから導電性ポリマーおよび/または高分子半導体を形成した後、この溶液にアポタンパク質を添加して上記色素を含むタンパク質を形成し、この溶液を用いて形成することもできる。受光素子の製造方法においては、典型的には、基板上に第1の電極および第2の電極を形成した後、基板上に上記の光伝導体を導電性ポリマーおよび/または高分子半導体が第1の電極と第2の電極との間に電気的に接続されるように形成する。
【0013】
上述の本開示においては、光源からの光がスクリーンに接近する物体に照射されることにより発生する散乱光を光変調層に入射させると、この光変調層により光強度の空間変調が行われ、この空間変調が行われた光が透明受光層に入射して受光される。こうすることでレンズを用いずに物体の像を受光面に結像させることが可能である。また、このとき、この光変調層と透明受光層との間の距離は、レンズにより結像させる場合に比べて、ずっと小さくすることができる。また、ディスプレイパネルを用いる場合には、このディスプレイパネルに画像を表示することができ、バックライトパネルを用いる場合には光変調層そのものをディスプレイパネルとして用いることができる。
【0014】
また、受光素子が、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体と少なくとも一つの、長寿命励起状態を有する色素を含むタンパク質、有機色素または無機色素との複合体からなる光伝導体を用いたものであるときには、この光伝導体に光が入射したとき、タンパク質に含まれる色素あるいは有機色素または無機色素が光子を吸収して電子−正孔対が発生する。この電子−正孔対は電荷分離され、一方はタンパク質、有機色素または無機色素から出て導電性ポリマーおよび/または高分子半導体に注入され(光ドーピング)、他方はタンパク質、有機色素または無機色素の近傍に局在化する。例えば、電子−正孔対のうちの正孔が導電性ポリマーおよび/または高分子半導体に注入され、電子はタンパク質、有機色素または無機色素の近傍に局在化する。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体が第1の電極と第2の電極との間に電気的に接続され、第1の電極と第2の電極との間にバイアス電圧が印加されると、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体中に注入された電子または正孔が導電性ポリマーおよび/または高分子半導体を伝導して第1の電極と第2の電極との間に光電流が流れる。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質との複合体を用いる場合には、タンパク質を構成するポリペプチドが電子または正孔に対するバリアとなるため、一つのタンパク質に含まれる色素で発生した電子または正孔と他のタンパク質に含まれる色素で発生した正孔または電子と再結合して消滅するのが防止される。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体とタンパク質、有機色素または無機色素との複合体からなる光伝導体に光が入射しないとき、光伝導体は絶縁体として振る舞う。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、マルチタッチセンシングや3次元ジェスチャー認識などを行うことができ、しかも薄型に構成することができる3次元インタラクティブディスプレイを実現することができる。特に、受光素子が、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体と少なくとも一つの、長寿命励起状態を有する色素を含むタンパク質との複合体からなる光伝導体を用いたものであるときには、光により励起されたキャリアが再結合により消滅するのを防止することができ、光電変換効率が高く、感度が高い受光素子を実現することができる。そして、この優れた受光素子を用いて透明受光層を形成することにより、優れた3次元インタラクティブディスプレイを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイを示す略線図である。
【図2】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイの動作原理を説明するための略線図である。
【図3】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイの動作原理を説明するための略線図である。
【図4】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイの動作原理を説明するための略線図である。
【図5】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおけるディスプレイパネルからの発光スペクトルおよび透明受光層の受光素子の吸収スペクトルの一例を示す略線図である。
【図6】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子に用いられる光伝導体を示す略線図である。
【図7】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子に用いられる光伝導体の構造例を示す略線図である。
【図8】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子に用いられる光伝導体の他の構造例を示す略線図である。
【図9】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子に用いられる光伝導体の製造方法の一例を説明するための略線図である。
【図10】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子に用いられる光伝導体の製造方法の一例を説明するための略線図である。
【図11】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子に用いられる光伝導体の他の例を示す略線図である。
【図12】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子を示す略線図である。
【図13】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子の具体的な構成例を示す断面図である。
【図14】光電流発生実験に用いた受光素子を示す平面図である。
【図15】図14に示す受光素子のくし型電極部を拡大して示す平面図である。
【図16】図14に示す受光素子の光電流アクションスペクトルの測定結果および光電流のバイアス電圧依存性を示す略線図である。
【図17】亜鉛プロトポルフィリンとポリアニリンとの複合体の光電流アクションスペクトルの測定結果を示す略線図である。
【図18】亜鉛置換シトクロムcとポリアニリンとの複合体の光電流アクションスペクトルの測定結果を示す略線図である。
【図19】亜鉛プロトポルフィリンとポリアニリンとの複合体および亜鉛置換シトクロムcとポリアニリンとの複合体の光電流およびオン/オフ比を比較して示す略線図である。
【図20】亜鉛置換シトクロムcとポリアニリンとの複合体の光電流アクションスペクトルの測定結果を示す略線図である。
【図21】導電性ポリマーおよび/または高分子半導体に加えて他のポリマーを添加した光伝導体を用いた受光素子の光電流の測定結果を示す略線図である。
【図22】透明受光層の受光素子アレイの第1の例を示す平面図である。
【図23】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子の他の例を示す略線図である。
【図24】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子アレイの第2の例を示す回路図および断面図である。
【図25】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子アレイの第3の例を示す回路図である。
【図26】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおける透明受光層の受光素子アレイの第4の例を示す回路図である。
【図27】第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイの応用例を示すブロック図である。
【図28】図27に示す3次元インタラクティブディスプレイのスタンバイモードおよびキャプチャーモードを示す略線図である。
【図29】第2の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイを示す略線図である。
【図30】第3の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイを示す略線図である。
【図31】第3の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおけるスクリーンからの物体の高さに対する物体の空間的不確定性の依存性を示す略線図である。
【図32】第3の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおけるスクリーンからの半球状の物体の離散化モデリングを示す略線図である。
【図33】第3の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおいて光変調層として用いられる液晶パネルの液晶マスクを通して透明受光層の受光面上に投影された粗画像を示す略線図である。
【図34】第3の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイにおいて光変調層として用いられる液晶パネルの液晶マスクを通して透明受光層の受光面上に照射された光が受光素子により受光されることにより得られた画像を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」とする)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(3次元インタラクティブディスプレイ)
2.第2の実施の形態(3次元インタラクティブディスプレイ)
3.第3の実施の形態(3次元インタラクティブディスプレイ)
【0018】
〈1.第1の実施の形態〉
[3次元インタラクティブディスプレイ]
図1は第1の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイを示す。
【0019】
図1に示すように、この3次元インタラクティブディスプレイは、紫外光または赤外光を発生する光源11、光変調層12、透明受光層13およびディスプレイパネル14を有する。光変調層12、透明受光層13およびディスプレイパネル14は、これらの順に、典型的には互いに平行に配置されている。光変調層12と透明受光層13との間は互いに所定距離離れている。透明受光層13とディスプレイパネル14とは、互いに直接接していてもよいし、互いに所定距離離れていてもよい。
【0020】
光源11は、この3次元インタラクティブディスプレイのスクリーンの前面、例えば光変調層12の前面に接近する物体15を検出するためにこの物体15に紫外光または赤外光からなるプローブ光16を照射するためのものである。この光源11は、点光源であっても線光源であってもよく、ランプ、発光ダイオード、半導体レーザなどのいずれであってもよい。この光源11は、光変調層12の周辺部の少なくとも一箇所に設けられる。この光源11は、光変調層12の前面に接近する物体15を正確に検出するためには、最も好適には、光変調層12の前面の前方から見たときに前面の全面にプローブ光16が照射されるように設けられる。プローブ光16の強度は、このプローブ光16を物体15に照射したときの散乱光17が、光変調層12を透過して透明受光層13に入射して検出することができる限り、基本的には任意であるが、好適には、可能な限り低く選ばれる。
【0021】
光変調層12には、スクリーンから離れた位置にある物体15に紫外光または赤外光のプローブ16が照射されたときに発生する散乱光17が入射するようになっている。この光変調層12は、光強度の空間変調のための一方向または双方向のマスクとして働く。言い換えると、この光変調層12は、この光変調層12に入射した散乱光17およびディスプレイパネル14からの光の空間フィルターである。この光変調層12は、光の透過/非透過を電気信号により個別に制御することができるセル12aが2次元アレイ状に配置されたものである。この光変調層12としては、好適には、複数の液晶セルが2次元アレイ状に配置された液晶パネルが用いられる。液晶セルは、偏光軸が互いに直角に配置された一対の偏光フィルタの間に液晶が挟まれた構造を有する。光変調層12が液晶パネルである場合には、3次元インタラクティブディスプレイのスクリーンの前面の物体15からの散乱光17あるいはディスプレイパネル14からの光がこの光変調層12に入射すると、一方の偏光フィルタにより直線偏光の偏光となる。この偏光が液晶を通過すると、この一方の偏光フィルタに対して偏光軸が互いに直交する他方の偏光フィルタによりその透過が妨げられる。各液晶セルに電界を印加することにより、各液晶セル内の液晶分子を特定の方向に配列させることができ、それによって入射光の偏光面を回転させることができる。このため、各液晶セルの透過率を強度変調のために制御することができる。
【0022】
透明受光層13は、透明基板13a上に受光素子D(画素)が2次元アレイ状に配置されたものであり、この2次元アレイ状の受光素子Dが形成された面が受光面となる。この透明受光層13は、この3次元インタラクティブディスプレイのスクリーン面の前方の物体15に光源11から紫外光または赤外光からなるプローブ光16が照射されたときに発生する紫外光または赤外光からなる散乱光17を検出するためのものである。散乱光17は光変調層12により透過を制御することができるため、互いに異なる角度方向からの物体15の像を受光面に結像させることができる。この場合、受光素子Dの吸収スペクトルは、好適には、ディスプレイパネル14の発光スペクトルと重ならないか、重なっているとしても重なりが最小となるようにする。すなわち、受光素子Dの吸収スペクトルは紫外光または赤外光の波長帯に吸収帯が存在するのに対し、ディスプレイパネル14の発光スペクトルは可視光の波長帯に発光ピークを有する。このため、受光素子D、したがって透明受光層13の受光面に結像する像とディスプレイパネル14に表示される像との間の干渉を防止することができる。受光素子Dについては後に詳述する。
【0023】
ディスプレイパネル14は、基板14a上に画素Pが2次元アレイ状に配置されたものである。このディスプレイパネル14は、電気信号により画素Pを制御して所望の画像を表示するためのものである。このディスプレイパネル14としては、例えば、OLEDディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)パネルなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。液晶ディスプレイ(LCD)パネルを用いる場合には、その背面にバックライトが設けられる。一例としてこのディスプレイパネル14が液晶パネルである場合を考える。この場合、光変調層12、例えば液晶パネルは、単に、物体15からの散乱光17の透過を制御するマスクとしての機能を有する一方向の光変調体として働く。光変調層12のセル12aの大きさおよび位置は、ディスプレイパネル14の画素Pの大きさおよび位置と同一であっても同一でなくてもよい。これは、光変調層12は物体15からの散乱光17を用いて物体15の像を結像するためのものであるのに対し、ディスプレイパネル14は単に画像の表示のためのものであるからである。したがって、例えば、ディスプレイパネル14は高解像度に保持しながら、光変調層12および透明受光層13は低解像度とすることができる。
【0024】
[3次元インタラクティブディスプレイの動作]
光変調層12および透明受光層13は一体として、レンズレスカメラと考えることができる。スクリーンの前方の物体15からの散乱光17は光変調層12により空間的に光変調され、透明受光層13により受光されて受光面に結像される。一例を図2Aに示す。
【0025】
図2Aに示すように、最も簡単なレンズレスカメラはピンホールカメラである。光変調層12のセル12aの透過率を制御することによって、ピンホールアレイ、言い換えると、ピンホールカメラアレイを形成することができる。ピンホールマスクの一例の上面図を図2Bに示す。図2Bに示すように、一つのセル12aだけが透明(白色の部分)となっており、他のセル12aは不透明(黒色の部分)となっている。ピンホールカメラアレイは、この3次元インタラクティブディスプレイの前面の互いに異なる角度方向からの像を得ることができ、したがって物体15の3次元的輪郭を再生することができる。さらに、物体15(例えば、指や手のひらなど)の3次元的ジェスチャーをパターン認識アルゴリズムにより得ることができる。
【0026】
一方、マスクとしてピンホールを用いることによる欠点は、光変調層12がほとんど不透明になり、このため、ディスプレイパネル14からの光のほとんどを遮ってしまうことである。これに関しては、改良されたピンホールカメラ、すなわちいわゆるシールドフィールド法が、画像表示のために比較的大きな透明領域を得ながら、画像を得るのに有効であることが分かっている。マスクパターンの一例は、図3Aに示すように、1978年に提案された改良された一様冗長アレイ(Modified Uniformly Redundant Arrays,MURA)である(非特許文献4参照。)。コード化されたマスクの上面図の一例を図3Bに示す。図3Bに示すように、透明(白色の部分)なセル12aと不透明(黒色の部分)なセル12aとが複雑なパターンを形成している。
【0027】
パターン化されたマスクはディスプレイパネル14からの光に対する開口率を極めて大きく増加させることができるが、マスクされた領域は依然として暗くなる。したがって、この場合は、好適には、マスクのダイナミック変調が行われる。パターン化されたマスクのダイナミック変調の例を図4に示す。図4に示すように、透明な領域と不透明な領域とが互いに反転した二つのマスクパターン1およびマスクパターン2間を周期的に切り替えることにより特定のパターンの暗い領域におけるシャドー効果を避けることができる。
【0028】
次に、3次元インタラクティブディスプレイの省エネモードについて説明する。
3次元インタラクティブディスプレイの輝度の向上および節電のために、光変調層12の全てのセル12aが透明に保持されているスタンバイモードを導入することができる。スタンバイモードにおいては、光変調層12の全体が透明に保持される。3次元インタラクティブディスプレイのスクリーンに物体15が接近すると、光源11からの紫外光または赤外光のプローブ光16が物体15で散乱されることにより発生する紫外光または赤外光の散乱光17が光変調層12を通って透明受光層13により検出され、それによって3次元インタラクティブディスプレイは直ちに図4に示すセンシングモードに切り替わる。このスタンバイモードは、取り分け、携帯電話などの携帯デバイスにおいて信号処理の負担の軽減および節電のために用いるのに適している。また、このスタンバイモードにおいてはより高輝度が得られるため、この3次元インタラクティブディスプレイは、映像を見るのに適している。
【0029】
次に、透明受光層13の詳細について説明する。
既に述べたように、ディスプレイパネル14からの可視光との干渉を防止するために、透明受光層13の受光素子Dの吸収スペクトルは、ディスプレイパネル14からの発光スペクトルと重ならないか、重なったとしても重なりが最小となるようにすることが望ましい。ディスプレイパネル14からの発光スペクトルおよび受光素子Dの吸収スペクトルの一例を図5に示す。
【0030】
[受光素子Dの構成]
受光素子Dは、紫外光または赤外光を検出することができるものである限り、基本的にはどのようなものであってもよいが、ここでは、本発明者らが開発した新規な光伝導体を用いた受光素子について説明する。
【0031】
[光伝導体]
図6はこの光伝導体の第1の例を示す。
図6に示すように、この光伝導体は、ネットワーク状の導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21と、一つまたは複数のタンパク質22との複合体からなる。タンパク質22は、長寿命励起状態を有し、発光中心となる色素22aがポリペプチド22bに包被され、所定の位置に配向したものである。典型的には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とは、非共有結合または共有結合により互いに結合している。非共有結合は、例えば、静電相互作用、ファンデルワールス相互作用、水素結合相互作用、電荷移動相互作用などである。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とは、リンカー(図示せず)により互いに結合してもよい。この光伝導体の全体形状は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば膜状あるいは板状である。また、この光伝導体の表面形状は任意であり、例えば凹面、凸面、凹凸面などのいずれであってよい。さらに、この光伝導体の平面形状は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形、六角形など)、円形、楕円形などである。
【0032】
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22との混合比(質量比または重量比)は特に限定されず、光伝導体に持たせる光伝導度などに応じて適宜選ばれるが、一般的には導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に対してタンパク質22を多く含ませることにより光伝導度が高くなる。
【0033】
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21は、p型であってもn型であってもよい。導電性ポリマーは、大きく分けて炭化水素系導電性ポリマーとヘテロ原子含有系導電性ポリマーとがある。炭化水素系導電性ポリマーとしては、例えば、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレンなどが挙げられる。ヘテロ原子含有系導電性ポリマーとしては、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテンなどが挙げられる。
【0034】
色素22aがポリペプチド22bに包被されたタンパク質22としては、以下の各種のタンパク質に蛍光性を持たせたり、蛍光性を持つ化合物で修飾したりしたものを用いることができる。以下のタンパク質の誘導体(骨格のアミノ酸残基が化学修飾されたもの)またはその変異体(骨格のアミノ酸残基の一部が他のアミノ酸残基に置換されたもの)を用いることもできる。
【0035】
(1)シトクロムc類(電子伝達タンパク質)
シトクロムc、シトクロムc1 、シトクロムc2 、シトクロムc3 、シトクロムc4 、シトクロムc5 、シトクロムc6 、シトクロムc7 、シトクロムc8 、シトクロムc’、シトクロムc’’、シトクロムcL、シトクロムcM、シトクロムcS、シトクロムc544 、シトクロムc545 、シトクロムc546 、シトクロムc547 、シトクロムc548 、シトクロムc549 、シトクロムc550 、シトクロムc551 、シトクロムc551.5 、シトクロムc552 、シトクロムc553 、シトクロムc554 、シトクロムc555 、シトクロムc556 、シトクロムc557 、シトクロムc558 、シトクロムc559 、シトクロムc560 、シトクロムc561 、シトクロムc562 、シトクロムc563 など。
【0036】
(2)シトクロムb類(電子伝達タンパク質)
シトクロムb、シトクロムb1 、シトクロムb2 、シトクロムb3 、シトクロムb4 、シトクロムb5 、シトクロムb6 、シトクロムb7 、シトクロムb8 、シトクロムb9 、シトクロムb550 、シトクロムb551 、シトクロムb552 、シトクロムb553 、シトクロムb554 、シトクロムb555 、シトクロムb556 、シトクロムb557 、シトクロムb558 、シトクロムb559 、シトクロムb560 、シトクロムb561 、シトクロムb562 、シトクロムb563 、シトクロムb564 、シトクロムb565 、シトクロムb566 、シトクロムb567 、シトクロムb568 、シトクロムb569 、シトクロムP450など。
【0037】
(3)シトクロムa類(電子伝達タンパク質)
シトクロムa、シトクロムa1、シトクロムa2、シトクロムa3、シトクロムo、シトクロムo3 など。
【0038】
(4)その他の電子伝達タンパク質
フェレドキシン、ルブレドキシン、プラストシアニン、アズリン、シュードアズリン、ステラシアニン、チオレドキシンなど。
【0039】
(5)下記の補酵素を含むタンパク質
ヌクレオチド系:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、フラビンアデニンヌクレオチド(FADH)、フラビンモノヌクレオチド(FMN)など。
キノン系:ユビキノン、プラストキノン、メナキノン、カルダリエキノン、補酵素F420、ロドキノンなど。
ポルフィリン系:ヘム、クロロフィル、フェオフィチン、クロリンなど。
【0040】
(6)グロビン類
ミオグロビン、ヘモグロビン、ニューログロビン、サイトグロビンなど。
【0041】
(7)蛍光タンパク質およびその変異種
緑色蛍光タンパク質(GFP)、DsRed、クサビラオレンジ、TagBFP(Evrogen社)、クロンテック社製フルーツ蛍光タンパク質(http://catalog.takara-bio.co.jp/clontech/product/basic_info.asp?unitid=U100005040)、MBL社製CoralHueシリーズ(https://ruo.mbl.co.jp/product/flprotein/)など。
【0042】
蛍光性を持つ化合物としては、例えば、以下の蛍光色素が挙げられる。
・4−アセトアミド−4’−イソチオシアナトスチルベン−2,2’ジスルホン酸
・アクリジン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、アクリジンレッド、アクリジンイソチオシアネートなどのアクリジンおよび誘導体
・5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−l−スルホン酸(EDANS)
・4−アミノ−N−[3−(ビニルスルホニル)フェニル]ナフタルイミド−3,5ジスルホン酸(ルシファーイエローVS)
・N−(4−アニリノ−l−ナフチル)マレイミド
・アントラニルアミド
・ブリリアントイエロー
・クマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC、クマリン120)、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクルアリン(7−amino−4−trifluoromethylcouluarin)(クマラン151(coumaran151))などのクマリンおよび誘導体
・シアノシン、Cy3、Cy5、Cy5.5およびCy7などのシアニンおよび誘導体
・4’,6−ジアミジノ−2−フェニリンドール(DAPI)
・5’,5”−ジブロモピロガロール−スルホンフタレイン(ブロモピロガロールレッド)
・7−ジエチルアミノ−3−(4’−イソチオシアナトフェニル)−4−メチルクマリン
・ジエチルアミノクマリン
・ジエチレントリアミンペンタアセテート
・4,4’−ジイソチオシアナトジヒドロスチルベン−2,2’ジスルホン酸
・4,4’−ジイソチオシアナトスチルベン−2,2’ジスルホン酸
・5−[ジメチルアミノ]ナフタレン−l−スルホニルクロライド(DNS、塩化ダンシル)
・4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)
・4−ジメチルアミノフェニルアゾフェニル−4’−イソチオシアネート(DABITC)
・エオシン、エオシンイソチオシアネートなどのエオシンおよび誘導体
・エリトロシンB、エリトロシンイソチオシアネートなどのエリトロシンおよび誘導体
・エチジウム;5−カルボキシフルオレセイン(FAM)、5−(4,6−ジクロロトリアジン−2−イル)アミノフルオレセイン(DTAF)、2’7’−ジメトキシ−4’5’−ジクロロ−6−カルボキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインクロロトリアジニル、ナフトフルオレセイン、QFITC(XRITC)などのフルオレセインおよび誘導体
・フルオレサミン
・IR144
・IR1446
・緑色蛍光タンパク質(GFP)
・サンゴ礁由来蛍光タンパク質(RCFP)
・リサミン(商標)
・リサミンローダミン、ルシファーイエロー
・マラカイトグリーンイソチオシアネート
・4−メチルウンベリフェロン
・オルトクレゾールフタレイン
・ニトロチロシン
・パラローズアニリン
・ナイルレッド
・オレゴングリーン
・フェノールレッド
・B−フィコエリトリン
・o−フタルジアルデヒド
・ピレン、ピレン酪酸、1−ピレン酪酸スクシンイミジルなどのピレンおよび誘導体
・リアクティブレッド4(シバクロン(商標)ブリリアントレッド3B−A)
・6−カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、6−カルボキシローダミン(R6G)、4,7−ジクロロローダミンリサミン、塩化ローダミン−B−スルホニル、ローダミン(Rhod)、ローダミンB、ローダミン123、ローダミンXイソチオシアネート、スルホロダミンB、スルホロダミン101、スルホロダミン101の塩化スルホニル誘導体(テクサスレッド)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA)、テトラメチルローダミン、イソチオシアン酸テトラメチルローダミン(TRITC)などのローダミンおよび誘導体
・リボフラビン
・ロゾール酸およびテルビウムキレート誘導体
・キサンテン
・上記の組合せ
上記以外に、当業者に知られている他の蛍光色素、例えばMolecular Probes社(米国オレゴン州ユージン(Eugene))およびExcitors社(米国オハイオ州デイトン(Dayton))から購入可能なもの、またはそれらの組み合わせも使用してよい。
【0043】
この光伝導体は、この光伝導体を機械的に支持するためなどの目的により、必要に応じて基板上に形成される。基板としては従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれ、透明基板であっても不透明基板であってもよい。透明基板の材料は必要に応じて選ばれるが、例えば、石英やガラスなどの透明無機材料や透明プラスチックなどが挙げられる。フレキシブルな透明基板としては透明プラスチック基板が用いられる。透明プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などが挙げられる。不透明基板としては例えばシリコン基板が用いられる。
【0044】
図7に、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とが非共有結合により互いに結合している様子の一例を模式的に示す。また、図8に、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とがリンカー23により互いに結合している様子の一例を模式的に示す。
【0045】
リンカー23としては従来公知のものを用いることができ、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とに応じて適宜選ばれるが、具体的には、例えば、次のようなものを用いることができる。
【0046】
(1)導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とをアミン−アミン結合で結合するもの
・グルタルアルデヒド(反応基はアルデヒド基)
【化1】

・DSG(反応基はNHSエステル、分子量326.26、スペーサアーム長7.7Å)
【化2】

・BS(PEG)5 (反応基はNHSエステル、PEGスペーサ、分子量532.50)
【化3】

・BS(PEG)9 (反応基はNHSエステル、PEGスペーサ、分子量708.71)
【化4】

・DSP(反応基はNHSエステル、チオール開裂可、分子量404.42、スペーサアーム長12.0Å)
【化5】

・DST(反応基はNHSエステル、misc開裂可、分子量344.24、スペーサアーム長6.4Å)
【化6】

・DMA(反応基はイミドエステル、分子量245.15、スペーサアーム長8.6Å)
【化7】

・DTBP(反応基はイミドエステル、チオール開裂可、分子量309.28、スペーサアーム長11.9Å)
【化8】

・HBVS(vinylsulfone)(分子量266.38、スペーサアーム長14.7Å)
【化9】

【0047】
(2)導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とをアミン−メルカプト(あるいはスルフヒドリル)結合で結合するもの
・BMPS(反応基はNHSエステル/マレイミド、分子量266.21、スペーサアーム長5.9Å)
【化10】

・SM(PEG)n (反応基はNHSエステル/マレイミド、PEGスペーサ)
【化11】

・SM(PEG)2 (反応基はNHSエステル/マレイミド、PEGスペーサ、n=2、4、6、8、12、24)
【化12】

・SMPT(反応基はNHSエステル/ピリジルジチオール、開裂可、分子量388.46、スペーサアーム長20.0Å)
【化13】

・SIA(反応基はNHSエステル/ハロアセチル、分子量283.02、スペーサアーム長1.5Å)
【化14】

【0048】
(3)導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とをアミン−カルボキシ結合で結合するもの
・EDC(反応基はカルボジイミド、分子量191.70)
【化15】

【0049】
(4)導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とをメルカプト(あるいはスルフヒドリル)−カルボハイドレート結合で結合するもの
・BMPH(反応基はマレイミド/ハイドラザイド、分子量297.19、スペーサアーム長8.1Å)
【化16】

【0050】
(5)ポリマーネットワーク21とタンパク質22とをヒドロオキシル−メルカプト(あるいはスルフヒドリル)結合で結合するもの
・PMPI(反応基はイソシアネート/マレイミド、分子量214.18、スペーサアーム長8.7Å)
【化17】

【0051】
この光伝導体には、光伝導体全体の機械的強度の向上を図るために、必要に応じて、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に加えて、機械的強度に優れた一種または二種以上の他のポリマーを混合してもよい。こうすることで、光伝導体の機械的強度の向上を図るために、この光伝導体を機械的支持用の基板上に形成する必要がなくなる。あるいは、この光伝導体には、この光伝導体を形成するときに用いる溶液または懸濁液の粘度を調整するために、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に加えて、粘度調整用の一種または二種以上の他のポリマーが混合されることもある。この粘度調整用のポリマーは、この光伝導体全体の吸収波長の光に対して透明であること、光伝導体形成用の溶液または懸濁液にこの粘度調整用のポリマーを加えることにより粘度が増加すること、絶縁性で安定であることなどが必要である。あるいは、この光伝導体には、この光伝導体の耐酸化性や耐湿性の向上を図るために、耐酸化性や耐湿性に優れた一種または二種以上の他のポリマーを混合してもよい。これらの目的で用いられる他のポリマーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリ−4−ビニルフェノール(poly-4-vinyl phenol,PVP)などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0052】
[光伝導体の製造方法]
この光伝導体の製造方法について説明する。
図7に示す光伝導体を製造するためには、まず、溶媒に導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21およびタンパク質22を溶かして混合する。溶媒としては水や有機溶媒などを用いることができ、必要に応じて選ばれる。こうして得られた溶液を基板上に塗布する。塗布方法としては、ディップコーティング、スピンコーティング、バーコーティング、インクジェット印刷などを挙げることができ、必要に応じて選ばれる。基板の表面形状は問わず、平面、曲面などのいずれであってもよい。次に、基板から溶媒を蒸発させる。こうして、基板上に光伝導体が形成される。
【0053】
図8に示す光伝導体を製造するためには、まず、溶媒に導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とを溶かして混合する。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に加えて他のポリマーも用いる場合には、溶媒にこの他のポリマーも混合する。溶媒としては水や有機溶媒などを用いることができ、必要に応じて選ばれる。次に、こうして得られた溶液にリンカー23を添加し、このリンカー23により導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22とを共有結合により結合させて析出させる。この後、未反応のリンカー23とリンカー23により結合していない導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21ならびにタンパク質22とを除去する。こうして、基板上に光伝導体が形成される。
【0054】
図7に示す光伝導体は次のようにして製造することもできる。この製造方法では、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21を電気化学的重合法(電解重合法)により形成する。すなわち、まず、図9に示すように、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21を形成するためのモノマー21aおよび色素22aを溶媒に溶かして混合する。こうして得られた溶液に電極24(作用電極)を浸漬して電位掃引を行うことにより、電極24の表面に複数のモノマー21aが重合した導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21を形成するとともに、色素22aを導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に結合させる。次に、図10に示すように、こうして得られたポリマー溶液に、アポタンパク質(ポリペプチド)25を混合する。そして、このポリマー溶液の状態(pH、温度など)を調節することにより、アポタンパク質25が再度フォールディング(refold)して色素22aを包被する。こうして、ポリペプチド21aにより色素22aが包被されたタンパク質22が形成される。その後、溶媒および未反応のモノマー21aを除去することにより、電極24上に光伝導体が形成される。
【0055】
図11はこの光伝導体の第2の例を示す。
図11に示すように、この光伝導体は、基板26上に多層積層されたタンパク質22とネットワーク状の導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21との複合体からなる。図11においては、タンパク質22が三層積層された例が示されているが、これに限定されるものではなく、タンパク質22の積層数は必要に応じて選ばれる。基板26は、必要に応じて選ばれる。
【0056】
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21、タンパク質22および基板26の一例を挙げると、次の通りである。導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21はp型のポリアニリンスルホン酸(PASA)
【化18】

やポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチル−ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン
ビニレン](poly[2-methoxy-5-(2’-ethyl-hexyloxy)-1,4-phenylene vinylene ],MEH−PPV)
【化19】

やポリ(3−ヘキシルチオフェン)(poly(3-hexylthiophene),P3HT)
【化20】

などである。なお、n型の導電性ポリマーおよび/または高分子半導体としては、例えば、Poly(p-pyridyl vinylene)Poly(isothianaphthene)を用いることができる。タンパク質22の一例を挙げると亜鉛置換シトクロムcである。基板26の一例を挙げるとインジウム−スズ複合酸化物(ITO)基板である。
【0057】
[光伝導体の製造方法]
この光伝導体の製造方法について説明する。
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21を溶媒に溶かしたポリマー溶液およびタンパク質22を溶媒に溶かしたタンパク質溶液(例えば、pH5.0)をそれぞれ調製する。溶媒としては水や有機溶媒などを用いることができ、必要に応じて選ばれる。
【0058】
まず、基板26をタンパク質溶液に浸漬したり、基板26上にタンパク質溶液を塗布したりした後、溶媒を除去して一層目のタンパク質22を形成する。次に、こうして一層目のタンパク質22が形成された基板26をポリマー溶液に浸漬したり、基板26上にポリマー溶液を塗布したりする。このとき、一層目のタンパク質22の表面の電荷とこの電荷と逆極性の電荷を有する部分の導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21との間に静電引力が働き、この静電引力によりタンパク質22と導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とが結合する。
【0059】
次に、溶媒を除去した後、一層目のタンパク質22および導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21が形成された基板26を再びタンパク質溶液に浸漬したり、基板26上にタンパク質溶液を塗布したりする。このとき、基板26上に形成された導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21の表面の電荷とこの電荷と逆極性を有する部分のタンパク質22との間に静電引力が働き、この静電引力により導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とその上のタンパク質22とが結合する。次に、溶媒を除去した後、同様にして再び導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21を形成する。このプロセスを必要な回数繰り返し行って、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21ならびにタンパク質22を必要な層数だけ積層する。
【0060】
図12は新規な光伝導体を用いた受光素子Dを示す。
図12に示すように、この受光素子Dにおいては、光伝導体27のネットワーク状の導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21が、互いに異なる部位でそれぞれ第1の電極28および第2の電極29と電気的に接続されている。例えば、光伝導体27が第1の電極28および第2の電極29の両方に跨がるようにして形成され、この光伝導体27が第1の電極28および第2の電極29と接触する部分で導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21が第1の電極28および第2の電極29と電気的に接続される。第1の電極28と第2の電極29との間の距離は特に限定されず、必要に応じて選ばれるが、例えば、1μm以上30μm以下、典型的には5μm以上20μm以下、例えば10μmである。第1の電極28および第2の電極29の材料としては従来公知の導電材料を用いることができ、必要に応じて選ばれるが、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、金(Au)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)および白金(Pt)からなる群より選ばれた少なくとも一種の金属からなる純金属または合金を用いることができる。第1の電極28および第2の電極29を透明に構成する場合、透明電極材料としては、例えば、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ネサガラス(SnO2 ガラス)などの透明金属酸化物のほか、光の透過が可能な極薄い金属膜、例えばAu膜などを用いることができる。第1の電極28および第2の電極29を透明に構成し、以下のように基板を用いる場合にはその基板も透明に構成することにより、透明受光素子を得ることができる。
【0061】
この受光素子Dは、この受光素子Dを機械的に支持するためなどの目的により、必要に応じて基板上に形成される。具体的には、基板上に光伝導体27、第1の電極28および第2の電極29が形成される。基板としては従来公知のものを用いることができ、必要に応じて選ばれ、透明基板であっても不透明基板であってもよい。透明基板の材料は必要に応じて選ばれるが、例えば、石英やガラスなどの透明無機材料や透明プラスチックなどが挙げられる。フレキシブルな透明基板としては透明プラスチック基板が用いられる。透明プラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフッ化ビニリデン、アセチルセルロース、ブロム化フェノキシ、アラミド類、ポリイミド類、ポリスチレン類、ポリアリレート類、ポリスルホン類、ポリオレフィン類などが挙げられる。不透明基板としては例えばシリコン基板が用いられる。
【0062】
図13に受光素子Dの具体的な構成例を示す。図13に示すように、この受光素子Dにおいては、基板26上に第1の電極28および第2の電極29が互いに離れて形成され、これらの第1の電極28および第2の電極29の両方に跨がって光伝導体27が形成されている。
【0063】
[受光素子Dの製造方法]
この受光素子Dの製造方法について説明する。
まず、基板26上に第1の電極28および第2の電極29を形成する。第1の電極28および第2の電極29を形成するためには、例えば、基板26上に導電材料からなる膜を形成した後、この膜をリソグラフィーおよびエッチングによりパターニングする。
【0064】
次に、こうして第1の電極および第2の電極が形成された基板26上に上記と同様にして光伝導体27を形成する。
以上により、目的とする受光素子Dが製造される。
【0065】
[受光素子Dの動作]
図13を参照してこの受光素子Dの動作を説明する。
この受光素子Dにおいては、光が照射されていないとき(暗状態)には、光伝導体27を構成する導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21ならびにタンパク質22ともに絶縁体であり、したがって光伝導体27は絶縁体である。
【0066】
一方、この受光素子Dの光伝導体27に、タンパク質22の色素22aの励起に必要な光子エネルギーを有する光が照射されると、色素22aが励起されて電子−正孔対(励起子)が発生する。こうして発生した電子−正孔対のうちの電子または正孔は色素22aから、タンパク質22に形成された経路を通って導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に注入される(光ドーピング)。こうして電子または正孔が注入されると、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21の電気伝導度は急激に増加し、ひいては光伝導体27の電気伝導度が急激に増加する。このとき、第1の電極28と第2の電極29との間にバイアス電圧が印加されていると、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に注入された正孔または電子は、第1の電極28および第2の電極29のうちの電位が低い方または高い方に移動し、第1の電極28と第2の電極29との間に光電流が流れる。例えば、第1の電極28と第2の電極29との間に第1の電極28の方が電位が高くなるようにバイアス電圧が印加されている場合には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に注入された正孔は第2の電極29に移動し、第1の電極28から第2の電極29に光電流が流れる。光電流は光伝導体27に照射される光の強度が高いほど多くなる。第1の電極28と第2の電極29との間にバイアス電圧が印加されていないとき(バイアス電圧=0)には、光伝導体27に光が照射されても、第1の電極28と第2の電極29との間に光電流は流れない。第1の電極28と第2の電極29との間に流れる光電流の向きは、第1の電極28と第2の電極29との間に印加するバイアス電圧の極性により制御することができる。また、光伝導体27に入射する光の強度を一定とすると、第1の電極28と第2の電極29との間に流れる光電流は、入射光の波長および第1の電極28と第2の電極29との間に印加するバイアス電圧によって制御することができる。
【0067】
この場合、タンパク質22同士はその外殻のポリペプチド22aにより互いに絶縁されているため、タンパク質22間で電子と正孔とが再結合して消滅してしまうのを防止することができる。このため、光伝導体27に入射した光により色素22aで発生する電子−正孔対の光電流に対する寄与度の大幅な向上を図ることができる。加えて、光伝導体27に光が照射されていない暗状態で第1の電極28と第2の電極29との間に流れるリーク電流(暗電流)の大幅な低減を図ることができる。
【0068】
[受光素子Dの光電流発生実験]
受光素子Dを作製し、光電流発生実験を行った。
受光素子Dは次のようにして作製した。
【0069】
図14に示すように、大きさが15mm×25mmで厚さが1mmのガラス基板30上に所定形状の一対のITO電極31、32を形成した。これらのITO電極31、32は第1の電極28および第2の電極29に対応する。ITO電極31、32の各部の寸法は図14に示す通りである。ITO電極31、32の厚さは100nmである。図15に示すように、これらのITO電極31、32のそれぞれの先端部はくし型電極部31a、32aを有し、これらのくし型電極部31a、32aが互いに噛み合って、所定の距離離れて互いに対向している。このくし型電極部31a、32aにおける電極ピッチは20μm、電極間距離は10μmである。くし型電極部31a、32aの全体の面積は4mm×4mm=16mm2 である。
【0070】
ウマ心筋シトクロムcの中心金属の鉄を亜鉛で置換した亜鉛置換シトクロムcを調製した。この亜鉛置換シトクロムcを水に溶かして0.73mMのタンパク質溶液を調製した。また、ポリアニリンスルホン酸(PASA)を水に溶かして5.1mg/mLのPASA溶液を調製した。
【0071】
こうして調製したPASA溶液を水酸化ナトリウム(NaOH)で中和してPASAナトリウム塩溶液を得た。PASAナトリウム塩は下記の式で表される。
【化21】

次に、こうして調製されたPASAナトリウム塩溶液を上記のタンパク質溶液に添加してタンパク質−ポリマー水溶液を調製した。このタンパク質−ポリマー水溶液における亜鉛置換シトクロムcとPASAナトリウム塩との重量比は10:1である。このタンパク質−ポリマー水溶液の亜鉛置換シトクロムcの濃度は約0.6mMであった。次に、こうして調製したタンパク質−ポリマー水溶液をディッピング法により、くし型電極部31a、32a上に塗布した。ディッピング後、ITO電極31、32を真空中に約3時間保持することにより水を除去した。その後、ITO電極31、32を試験前に一晩乾燥容器中に保管した。
【0072】
この受光素子を用いて室温で波長380〜600nmの光電流アクションスペクトルを測定した。ITO電極31、32間に印加する電圧は−1000mVから+1000mV間で250Vずつ変化させた。得られた光電流アクションスペクトルを図16Aに示す。光電流アクションスペクトルの極大は、亜鉛置換シトクロムcの溶液吸収スペクトルと同様、408、540、578nmに見られ、これは、電気伝導度の変化は亜鉛置換シトクロムcに由来することを示す。波長408nmは可視光の波長帯の紫外端波長である。波長を408nmに固定したときの光電流Ip のバイアス電圧依存性を図16Bに示す。図16Bに示すバイアス電圧依存性は光伝導体の性質を示している。図16Bのバイアス電圧依存性はまた、この受光素子の光に対する感度をバイアス電圧の調節によって変化させることができることを示す。このため、例えば、微弱光を検出する際には、バイアス電圧を大きくして感度を高くし、逆に強い光を検出する際には、バイアス電圧を小さくして感度を低くすることにより、増幅器の飽和を防ぐことができる。なお、波長540、578nmのピークは可視光の波長にあるが、これらのピークは光電流検出の際に所定のしきい値電流を設定することにより無視することができる。
【0073】
光伝導体27において、色素22aを含むタンパク質22を用いることによる利点を検証するために、比較実験を行った。そのために、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21と色素22aとの複合体をくし型電極部31a、32a上に形成した試料(試料1)と、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22との複合体をくし型電極部31a、32a上に形成した試料(試料2)とを作製した。
【0074】
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21と色素22aとの複合体をくし型電極部31a、32a上に形成した試料1は次のようにして作製した。
【0075】
色素22aとして亜鉛プロトポルフィリン(ZPP)を1−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶かして2mg/mLの色素溶液を調製した。また、ポリアニリン(PANI)をNMPに溶かして2mg/mLのPANI溶液を調製した。次に、このPANI溶液を上記の色素溶液に添加して色素−ポリマー水溶液を調製した。この色素−ポリマー水溶液におけるZPPとPANIとの重量比は10:1である。次に、こうして調製した色素−ポリマー水溶液をPANI濃度が0.24mg/mLとなるように希釈した後、ディッピング法により、くし型電極部31a、32a上に塗布した。ディッピング後、ITO電極31、32を真空中に48時間保持することにより水およびNMPを除去した。その後、ITO電極31、32を試験前に一晩乾燥容器中に保管した。
【0076】
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22との複合体をくし型電極部31a、32a上に形成した試料2は次のようにして作製した。
【0077】
亜鉛置換シトクロムcを水に溶かして0.73mMのタンパク質溶液を調製した。また、ポリアニリン(PANI)をNMPに溶かして2mg/mLのPANI溶液を調製した。次に、このPANI溶液を上記のタンパク質溶液に添加してタンパク質−ポリマー水溶液を調製した。このタンパク質−ポリマー水溶液における亜鉛置換シトクロムcとPANIとの重量比は10:1である。次に、こうして調製したタンパク質−ポリマー水溶液をPANI濃度が0.24mg/mLとなるように希釈した後、ディッピング法により、くし型電極部31a、32a上に塗布した。ディッピング後、電極を真空中に48時間保持することにより水およびNMPを除去した。その後、ITO電極31、32を試験前に一晩乾燥容器中に保管した。
【0078】
試料1、2を用いて室温で波長380〜600nmの光電流アクションスペクトルを測定した。ITO電極31、32間に印加する電圧は100mV、200mV、400mV、800mV、1600mVに変えた。試料1、2について得られた光電流アクションスペクトルをそれぞれ図17および図18に示す。図17に示すように、試料1では、ソーレー帯(428nm)のピークおよびQ帯のピーク(550nmおよび580nm)が観察される。また、図18に示すように、試料2では、ソーレー帯(408nm)のピークおよびQ帯のピーク(550nmおよび580nm)が観察される。
【0079】
試料1、2から得られる光電流Ip のバイアス電圧依存性を図19Aに、試料1、2のオン/オフ比のバイアス電圧依存性を図19Bに示す。図19AおよびBから明らかなように、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22との複合体を用いた試料2は、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21と色素22aとの複合体を用いた試料1と比べて、光電流値およびオン/オフ比とも、格段に優れている。
【0080】
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21とタンパク質22との複合体からなる光伝導体27を用いた試料2に正負のバイアス電圧を印加したときの挙動を確認するために、−800mV〜+800mVのバイアス電圧をITO電極31、32間に印加した。そのときの光電流アクションスペクトルを図20に示す。図20から明らかなように、ITO電極31、32間に印加するバイアス電圧が+800mVのときと−800mVのときとで光電流の符号が逆で対称的になっている。
【0081】
[光伝導体27に導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に加えて他のポリマーを添加した例]
導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に加えて他のポリマーを添加したときの影響を検証するために、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21としてMEH−PPV、他のポリマーとして下記の構造式で表されるPMMAを用いた。
【化22】

実験の都合上、タンパク質22の代わりに[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル([6,6 ]-Phenyl-C61-Butyric Acid Methyl Ester,PCBM)を用いた。これらのMEH−PPV、PMMAおよびPCBMを用いて光伝導体を形成した。PCBMを用いることにより、光伝導体の形成時に150℃以上の温度で乾燥を行うことができることから、光伝導体の形成に要する時間の大幅な短縮を図ることができる。この光伝導体を用いて図14に示すものと同様な受光素子を形成した。PMMAの添加量を変えて光伝導体を形成し、受光素子を形成した。これらの受光素子のITO電極31、32間に8Vのバイアス電圧を印加した状態で波長550nmの光を照射し、光電流Ip を測定した。その結果を図21に示す。図21の横軸は光伝導体におけるPMMAに対する(MEH−PPV+PCBM)の質量比である。図21から分かるように、(MEH−PPV+PCBM)/PMMA質量比が約8以上、言い換えると、光伝導体に占めるPMMAの質量の割合が約11%以下では光電流Ip はほぼ一定であり、PMMAの添加による光電流Ip の減少は観測されない。
【0082】
[受光素子アレイの第1の例]
透明受光層13に形成する受光素子アレイの第1の例について説明する。
図22はこの受光素子アレイを示す。図22に示すように、この受光素子アレイにおいては、例えばガラス基板などの基板(図示せず)上に2次元アレイ状(マトリックス状)に受光素子Dが設けられている。ここでは、4×4配列で合計16個の受光素子Dが設けられている場合について説明するが、これに限定されるものではなく、受光素子Dの配列パターンや個数などは必要に応じて選択される。各受光素子Dにおいては、例えばITOなどからなる電極35、36が互いに離れて対向している。図示は省略するが、各受光素子Dにおいては、電極35、36を覆うように、かつこれらの電極35、36と電気的に接続されて光伝導体が設けられている。第1列の各受光素子Dの電極35の両端には電極E1 の細線部が接続され、第2列の各受光素子Dの電極35には電極E2 の細線部が接続され、第3列の各受光素子Dの電極35には電極E3 の細線部が接続され、第4列の各受光素子Dの電極35には電極E4 の細線部が接続されている。また、第1行の各受光素子Dの電極36には電極E5 の図示省略した細線部が接続され、第2行の各受光素子Dの電極36には電極E6 の図示省略した細線部が接続され、第3行の各受光素子Dの電極36には電極E7 の図示省略した細線部が接続され、第4行の各受光素子Dの電極36には電極E8 の図示省略した細線部が接続されている。基板の形状および大きさは必要に応じて選ばれるが、形状は例えば正方形または長方形である。電極35、36および電極E1 〜E8 の形状および各部の寸法は必要に応じて選ばれる。また、電極E1 〜E8 の材料は必要に応じて選ばれるが、例えば、Al、Cr、Auなどである。各受光素子Dの大きさの一例を挙げると、3.5mm×3.5mmである。
【0083】
〈受光素子Dの他の例〉
図23は受光素子Dの他の例を示す。この受光素子Dは電界効果トランジスタ(FET)型受光素子である。
図23に示すように、このFET型の受光素子Dにおいては、透明基板41上に透明導電層42が設けられ、その上に光伝導体43が設けられている。この光伝導体43上に所定形状のゲート絶縁膜44が設けられ、その上に所定形状のゲート電極45が設けられている。これらのゲート絶縁膜44およびゲート電極45は透明に構成される。ゲート絶縁膜44の両側の部分における光伝導体43上にソース電極46およびドレイン電極47が設けられている。
【0084】
透明基板41としては、例えば、透明基板13aと同様なものを用いることができる。透明基板41は透明基板13aそのものであってもよいし、透明基板13a上に設けたものであってもよい。透明導電層42は、例えば、ITO、FTO、グラフェンなどからなる。光伝導体43は光伝導体27と同様である。ゲート絶縁膜44は、例えば、SiO2 膜などからなる。ゲート電極45、ソース電極46およびドレイン電極47は、例えば、第1の電極28および第2の電極29と同様な透明材料からなる。
【0085】
このFET型の受光素子Dにおいては、光が照射されていないとき(暗状態)には、ゲート電極45に、ゲート絶縁膜44と光伝導体43との界面の近傍における光伝導体43中に伝導チャネルを形成するのに必要な電圧(ゲート電圧)が印加されたとしても、光伝導体43中の自由電荷密度(キャリア密度)が非常に低いため、光伝導体43とゲート絶縁膜44との界面の近傍の光伝導体43中に伝導チャネルが形成されない。このため、ソース電極46とドレイン電極47との間に光電流は流れない。
【0086】
一方、この受光素子Dの光伝導体43に、タンパク質22の色素22aの励起に必要な光子エネルギーを有する光が照射されると、色素22aが励起されて電子−正孔対(励起子)が発生する。こうして発生した電子−正孔対のうちの電子または正孔は色素22aから、タンパク質22に形成された経路を通って導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に注入される(光ドーピング)。こうして電子または正孔が注入されると、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21中の自由電荷密度(キャリア密度)が急激に増加する。このため、ソース電極46とドレイン電極47との間にバイアス電圧が印加され、かつ、ゲート電極45に、ゲート絶縁膜44と光伝導体43との界面の近傍における光伝導体43中に伝導チャネルを形成するのに必要なゲート電圧が印加されると、ゲート絶縁膜44と光伝導体43との界面の近傍における光伝導体43中に伝導チャネルが形成される。これによって、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に注入された正孔または電子は、例えば図23中矢印で示すように、ソース電極46およびドレイン電極47のうちの電位が低い方または高い方に移動し、ソース電極46とドレイン電極47との間に光電流が流れる。例えば、ソース電極46とドレイン電極47との間にソース電極46の方が電位が高くなるようにバイアス電圧が印加されている場合には、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に注入された正孔はドレイン電極47に移動し、ソース電極46からドレイン電極47に光電流が流れる。光電流は光伝導体43に照射される光の強度が高いほど多くなる。ソース電極46とドレイン電極47との間にバイアス電圧が印加されていないとき(バイアス電圧=0)には、光伝導体43に光が照射されても、ソース電極46とドレイン電極47との間に光電流は流れない。ソース電極46とドレイン電極47との間に流れる光電流の向きは、ソース電極46とドレイン電極47との間に印加するバイアス電圧の極性により制御することができる。また、光伝導体43に入射する光の強度を一定とすると、ソース電極46とドレイン電極47との間に流れる光電流は、入射光の波長およびソース電極46とドレイン電極47との間に印加するバイアス電圧によって制御することができる。
【0087】
〈受光素子アレイの第2の例〉
図24Aは受光素子アレイの第2の例を示す回路図、図24Bはこの受光素子アレイの要部の断面図である。この受光素子アレイは、液晶ディスプレイと同様に画素選択用スイッチングトランジスタとして薄膜トランジスタ(TFT)を用いる受光素子Dの2次元アレイである。この受光素子アレイは、従来公知のフラットパネルディスプレイの製造技術を組み合わせることよって大面積のものを容易に形成することができる。
【0088】
図24AおよびBに示すように、この受光素子アレイにおいては、ガラスなどからなる透明基板51上に透明電極52および光伝導体53が順次設けられている。光伝導体53上に透明な上部電極Eが各受光素子D毎に設けられている。言い換えると、各受光素子Dは、光伝導体53が透明電極52および上部電極Eにより挟まれた構造を有する。この受光素子Dが2次元アレイ状に配列されて受光素子アレイが形成されている。この受光素子アレイにおいては、行選択線R1 、R2 、R3 、…および列選択線C1 、C2 、C3 、…が設けられている。行選択線R1 、R2 、R3 、…と列選択線C1 、C2 、C3 、…との交差部にnチャネルTFTからなる画素選択用のスイッチングトランジスタTが形成されている。より詳細には、行選択線R1 、R2 、R3 、…のそれぞれは行方向の各スイッチングトランジスタTのソース電極に接続され、列選択線C1 、C2 、C3 、…は列方向の各スイッチングトランジスタTのゲート電極に接続されている。上部電極Eは、各スイッチングトランジスタTのドレイン電極に接続されている。行選択線R1 、R2 、R3 、…はそれぞれ電流入力アナログ−ディジタル(A/D)変換IC54、55、56、…に接続されている。スイッチングトランジスタTは従来公知の技術によって形成することができ、使用材料も問わない。
【0089】
この受光素子アレイにおいては、光が照射されていないとき(暗状態)には、光伝導体53を構成する導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21ならびにタンパク質22ともに絶縁体であり、したがって光伝導体53は絶縁体である。
【0090】
一方、受光素子Dの光伝導体53に、タンパク質22の色素22aの励起に必要な光子エネルギーを有する光が照射されると、色素22aが励起されて電子−正孔対(励起子)が発生する。こうして発生した電子−正孔対のうちの電子または正孔は色素22aから、タンパク質22に形成された経路を通って導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21に注入される(光ドーピング)。こうして電子または正孔が注入されると、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体21の電気伝導度は急激に増加し、ひいては光伝導体53の電気伝導度が急激に増加する。
【0091】
例えば、透明電極52に所定の正電圧を印加しておく。今、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線に所定の正のゲート電圧を印加し、行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線は例えば接地電位とする。このとき、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線と行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線との交差部のスイッチングトランジスタTがオンし、このスイッチングトランジスタTに接続された上部電極Eは接地電位となる。受光素子Dに光が入射して光伝導体53の電気伝導度が増加すると、透明電極52から上部電極Eに向かって電流が流れ、さらにこの電流はスイッチングトランジスタTを通って行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線に流れ、この行選択線に接続されたA/D変換ICにより変換されて光電流として検出される。この光電流の検出により、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線と行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線との交差部の受光素子Dに入射した光が検出される。
【0092】
〈受光素子アレイの第3の例〉
図25は受光素子アレイの第3の例を示す回路図である。図24AおよびBに示す受光素子アレイの第2の例では、受光素子Dは光伝導体53が透明電極52および上部電極Eにより挟まれた構造を有するのに対し、この受光素子アレイの第3の例においては、受光素子Dは、光伝導体57上に設けられた一対のくし型電極58、59を有し、これらのくし型電極58、59が互いに噛み合って、所定の距離離れて互いに対向している。くし型電極58は各スイッチングトランジスタTのドレイン電極に接続されている。くし型電極59はバイアス印加用の配線W1 、W2 、W3 、…に接続されている。この受光素子アレイの上記以外の構成は受光素子アレイの第2の例と同様である。
【0093】
この受光素子アレイの動作は次の通りである。例えば、配線W1 、W2 、W3 、…に所定の正電圧を印加しておく。今、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線に所定の正のゲート電圧を印加し、行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線は例えば接地電位とする。このとき、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線と行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線との交差部のスイッチングトランジスタTがオンし、このスイッチングトランジスタTに接続されたくし型電極58は接地電位となる。受光素子Dに光が入射して光伝導体53の電気伝導度が増加すると、くし型電極59からくし型電極58に向かって電流が流れ、さらにこの電流はスイッチングトランジスタTを通って行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線に流れ、この行選択線に接続されたA/D変換ICにより変換されて光電流として検出される。この光電流の検出により、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線と行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線との交差部の受光素子Dに入射した光が検出される。
【0094】
〈受光素子アレイの第4の例〉
図26は受光素子アレイの第4の例を示す回路図である。
図26に示すように、この受光素子アレイにおいては、受光素子Dは、図23に示すFET型の構成を有する。この受光素子Dが2次元アレイ状に配列されて受光素子アレイが形成されている。この受光素子アレイにおいては、行選択線R1 、R2 、R3 、…および列選択線C1 、C2 、C3 、…が設けられているが、図26においては行選択線R1 および列選択線C1 のみが示されている。行選択線R1 、R2 、R3 、…と列選択線C1 、C2 、C3 、…との交差部にnチャネルTFTからなる画素選択用のスイッチングトランジスタTが形成されている。より詳細には、行選択線R1 、R2 、R3 、…のそれぞれは行方向の各スイッチングトランジスタTのゲート電極に接続され、列選択線C1 、C2 、C3 、…は列方向の各スイッチングトランジスタTのソース電極に接続されている。FET型受光素子Dのソース電極は、各スイッチングトランジスタTのドレイン電極に接続されている。列選択線C1 、C2 、C3 、…はそれぞれA/D変換IC54、55、56、…に接続されているが、図26においてはA/D変換IC54のみが示されている。FET型受光素子Dのゲート電極は、例えば薄膜トランジスタからなる駆動用トランジスタQのドレイン電極と接続されている。この駆動用トランジスタQのソース電極には電圧Von/offが供給されるようになっている。この駆動用トランジスタQのゲート電極は行選択線R1 と接続されている。
【0095】
この受光素子アレイの動作は次の通りである。今、行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択されたから選択された一つの列選択線に所定の正のゲート電圧を印加し、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの行選択線は例えば接地電位とする。このとき、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線と行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線との交差部のスイッチングトランジスタTがオンし、これと同時に駆動用トランジスタQもオンする。こうして駆動用トランジスタQがオンすることにより、FET型受光素子Dのゲート電極に電圧Von/offが印加される。FET型受光素子Dのドレイン電極には電圧VDDが印加されている。FET型受光素子Dに光が入射して光伝導体43の電気伝導度が増加すると、このFET型受光素子Dのソース電極46およびドレイン電極47間に電流が流れ、さらにこの電流はスイッチングトランジスタTを通って列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの行選択線に流れ、この行選択線に接続されたA/D変換ICにより変換されて光電流として検出される。この光電流の検出により、列選択線C1 、C2 、C3 、…から選択された一つの列選択線と行選択線R1 、R2 、R3 、…から選択された一つの行選択線との交差部のFET型受光素子Dに入射した光が検出される。
【0096】
〈3次元インタラクティブディスプレイの応用例〉
この3次元インタラクティブディスプレイは、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレットなどの入力装置である光学タッチパネルとして使用することができる。パーソナルコンピュータに適用した一例を図27に示す。
【0097】
図27に示すように、この光学タッチパネルOTPは、光学マスクOMおよび物体検出モジュールODMを有する。物体検出モジュールODMは受光素子アレイDAおよび検出回路DCを有する。受光素子アレイDAからの出力信号は検出回路DCに供給される。検出回路DCの出力信号は信号処理装置DSP2に供給される。信号処理装置DSP2の出力信号はパーソナルコンピュータPCに位置情報として供給される。パーソナルコンピュータPCではこの位置情報に基づいて表示信号が生成される。この表示信号は信号処理装置DSP1に供給される。この信号処理装置DSP1の出力信号は光学マスクOMに供給され、光変調層12により形成されるマスクパターンの制御が行われる。信号処理装置DSP1から信号処理装置DSP2にフレーム同期信号が供給され、これによって受光素子アレイDAからの信号と光学マスクOMに対する信号とを互いに同期させることができるようになっている。
【0098】
光学マスクOMは、マスクパターンとパーソナルコンピュータPCからのコンテンツとを交互に表示するように構成されている。光学マスクモードにおいては、マスクパターンが二つの信号処理装置DSP1、DSP2のバッファに蓄積され、光変調層12、例えば液晶パネルの駆動回路(図示せず)に交互に転送される。マスクパターンは容易に決定することができるため、メモリへの書き込みは不要であり、したがってマスクパターンの切り替え速度の向上を図ることができる。一方、ディスプレイモードにおいては、第3の信号処理装置(図示せず)のバッファから映像コンテンツが供給され、液晶パネルの駆動回路に書き込まれる。信号のタイミングおよび信号処理能力によっては、いくつかのフレームを省略することが可能である。この三つの信号処理装置のバッファにより順次、線状に走査を行うことにより、ディスプレイモードと光学マスクモードとが、安定なフレーム速度で動作することが保証される。
【0099】
この3次元インタラクティブディスプレイの機能は、この3次元インタラクティブディスプレイのスクリーンに接近する物体の位置を検出することであるため、受光素子アレイを常時、全走査(フルスキャン)する必要はない。この3次元インタラクティブディスプレイは、何も物体が検出されないときには、スタンバイモードに設定することができる。この状態を図28Aに示す。図28Aに示すように、スタンバイモードでは、受光素子アレイの縦横に配置された受光素子D(画素)の一部だけ、例えば一つおきの受光素子Dだけをアクティブ(図28A中、アクティブな受光素子Dに斜線を施した。図28Bにおいても同様。)にして物体検出のための走査が行われる。一旦、物体が受光素子アレイのある領域で検出されたら、この3次元インタラクティブディスプレイはキャプチャーモードに切り替わる。この状態を図28Bに示す。図28Bに示すように、このキャプチャーモードでは、物体が検出された領域(例えば、図28B中、一点鎖線で囲んだ領域)の全ての受光素子Dがアクティブとなり、物体の位置を高精度で検出することができる。
【0100】
この第1の実施の形態によれば、次のような種々の利点を得ることができる。すなわち、この3次元インタラクティブディスプレイのスクリーンに接近する物体15にプローブ光16を照射することにより発生する散乱光17を光変調層12により空間変調して透明受光層13により受光していることにより、物体15がスクリーンから離れた位置にあっても、マルチタッチセンシングや3次元ジェスチャー認識などを高分解能で容易に行うことができる。また、ディスプレイパネル14が独立に設けられているため、物体15の検出とは独立して画像の表示を行うことができ、しかも光変調層12の分解能とは無関係に、ディスプレイパネル14を高解像度に構成することができる。また、物体15の像をレンズを用いずに透明受光層13の受光面に結像させることができるので、レンズを設置するための空間が不要となり、ひいては3次元インタラクティブディスプレイを薄型に構成することができる。この3次元インタラクティブディスプレイは、例えば、3次元インタラクティブテレビ、タブレット、携帯電話、携帯ゲーム機などに用いて好適なものである。また、ディスプレイパネル14をEインクなどを用いて構成することにより、小電力かつ小型の携帯デバイス、例えばタッチコントロール電子ブックなどを実現することができる。
【0101】
また、新規な光伝導体27を用いた受光素子Dを用いていることにより、光伝導体27のタンパク質22同士で電子と正孔とが再結合により消滅するのを防止することができるため、従来のフォトダイオードに比べて高い光電変換効率を得ることができる。さらに、従来のフォトダイオードでは光電変換効率は100%が限界であるのに対し、この受光素子Dでは、100%を超える光電変換効率を得ることが可能である。また、従来のフォトダイオードは逆バイアスで動作させるために光電変換効率を調整することはできなかったのに対し、この受光素子Dによれば、第1の電極28と第2の電極29との間に印加するバイアス電圧により光電変換効率を容易に調整することができる。また、この受光素子Dでは、暗電流の大幅な低減を図ることができる。また、光伝導体27はフレキシブルに構成することができるため、この受光素子Dもフレキシブルに構成することができ、基板を用いる場合でもフレキシブルな基板を用いることにより受光素子D、ひいては透明受光層13をフレキシブルに構成することができる。また、光伝導体27の形状および大きさは自在に選ぶことができるため、この受光素子Dの形状および大きさも自在に選ぶことができる。
【0102】
〈2.第2の実施の形態〉
[3次元インタラクティブディスプレイ]
図29は第2の実施の形態によるマルチタッチ3次元インタラクティブディスプレイを示す。
【0103】
図29に示すように、この3次元インタラクティブディスプレイは、紫外光または赤外光を発生する光源61、光変調層62、透明受光層63およびバックライトパネル64を有する。光変調層62、透明受光層63およびディスプレイパネル64は、これらの順に、典型的には互いに平行に配置されている。光変調層62と透明受光層63との間は互いに所定距離離れている。透明受光層63とバックライトパネル64とは、互いに直接接していてもよいし、互いに所定距離離れていてもよい。図示は省略するが、必要に応じて、透明受光層63とバックライトパネル64との間に、バックライトパネル64からの光を拡散させて均一なバックライトを得るための拡散板が設けられる。バックライトパネル64としては、基本的にはどのようなものを用いてもよいが、例えば、冷陰極蛍光管や基板上にLEDアレイを形成したLEDバックライトなどを用いることができる。
【0104】
光源61は、第1の実施の形態と同様に、この3次元インタラクティブディスプレイのスクリーンの前面、例えば光変調層62の前面に接近する物体65を検出するためにこの物体65に紫外光または赤外光からなるプローブ光66を照射するためのものである。この光源61は、光源11と同様なものであってよい。
【0105】
この場合、第1の実施の形態と異なり、ディスプレイパネル14を用いていないため、光変調層62は、この光変調層62に入射した散乱光67の空間フィルターの役割に加えて、画像を表示するためのディスプレイパネルの役割を果たす。このため、この光変調層62は、物体の像を得る検出モードと、この光変調層62に画像を表示するディスプレイモードとの二つのモードに切り替えることができるようになっている。すなわち、この光変調層62は、スクリーンの前面に接近する物体65を検出する場合は検出モードに設定し、光変調層62に画像を表示する場合にはディスプレイモードに設定する。
【0106】
透明受光層63は、 透明受光層13と同様な構成を有する。
この3次元インタラクティブディスプレイの上記以外のことは、第1の実施の形態によ3次元インタラクティブディスプレイと同様である。
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0107】
〈3.第3の実施の形態〉
[3次元インタラクティブディスプレイ]
図30は第3の実施の形態による3次元インタラクティブディスプレイを示す。
図30に示すように、この3次元インタラクティブディスプレイは、光変調層としての液晶パネル71および透明受光層72を有する。図示は省略するが、この3次元インタラクティブディスプレイにおいてはさらに、液晶パネル71のスクリーンの前方の物体73を検出するための紫外光または赤外光の光源がこの液晶パネル71の周辺部に設けられ、透明受光層72の背面にディスプレイパネルまたはバックライトパネルが設けられている。ディスプレイパネルとしては、ディスプレイパネル14と同様なものを用いることができ、バックライトパネルとしてはバックライトパネル64と同様なものを用いることができる。
【0108】
液晶パネル71においては、透明なガラス基板711の上面に液晶層712が設けられ、この液晶層712上に偏光フィルター713が設けられ、透明なガラス基板711の下面に偏光フィルター714が設けられている。図示は省略するが、一般的な液晶パネルと同様に、液晶層711と偏光フィルター712との間に画素毎に透明電極が設けられ、液晶層712と偏光フィルター713との間に共通の透明電極が設けられている。画素毎に設けられた透明電極と共通の透明電極との間に所定の電圧を印加することより、各画素の液晶層712の液晶分子の配向を制御することにより各画素の液晶層712の透明/不透明を制御することができる。
【0109】
透明受光層72は、偏光フィルター714の下面に設けられた受光素子Dからなる受光素子アレイからなる。受光素子Dとしては、第1の実施の形態で述べたものと同様なものを用いることができる。この場合は、受光素子Dを形成するための透明基板は不要である。
【0110】
種々の視野角からの物体73の像を得るために、液晶パネル71の画素は、周期的に配列された一つまたは複数の画素からなる画素グループに分割されている。そして、各画素グループの直下の受光素子アレイを一つの受光素子で置き換える。
【0111】
種々の視野角からの物体73からの散乱光74を検出するために、各画素グループのピンホールがそれぞれ変更される。例えば、物体73から液晶パネル71に垂直に入射する散乱光74を検出するためには、ピンホールは各画素グループの中心に設定されていなければならない。また、物体73から液晶パネル71に対して斜めの方向から入射する散乱光74を検出するためには、ピンホールは各画素グループの他の位置に設定しなければならない。
【0112】
この方法の検出精度は、二つのパラメータで表すことができる。一つのパラメータは液晶パネル71の面に垂直な方向の垂直分解能Δzである。もう一つのパラメータは横方向分解能Δxである。これらの二つのパラメータは、受光素子D、より詳細には受光面の大きさds 、液晶パネル71の画素のサイズdm 、液晶層711dと受光素子Dとの間の距離h0 および液晶パネル71の画素グループのサイズdG によって決められる(図30参照。)。液晶パネル71の画素の大きさは、散乱光74の波長に比べて3桁以上大きく、液晶層712と受光素子Dとの間の距離h0 はピンホールのサイズと同程度であるため、以下においては、ピンホールを通過する際の回折効果を無視する。
【0113】
図30に基づく幾何学的関係より、横方向分解能Δxは
【数1】

と表すことができる。
【0114】
また、垂直方向の高さの不確定性Δyは
【数2】

と表すことができる。
【0115】
画素グループの大きさがピンホールおよび受光素子Dの大きさよりもずっと大きい時、Δyは
【数3】

と表すことができる。
【0116】
空間的な不確定性の公式は下記のことを示している。
(1)空間的な不確定さは、物体73と液晶パネル71のとの間の距離に従って直線的に増加する。
(2)ピンホールおよび受光素子Dが小さい程、両方向の不確定さが減少するのに役立つが、受光素子Dに入射する光子の量を制限し、従って感度が減少する。
(3)液晶パネル71と受光素子Dとの間の距離の増加により、両方向の不確定さを減少させることができるが、3次元インタラクティブディスプレイの厚さも増加してしまう。
(4)垂直方向の不確定さを減少させる観点からは、画素グループの大きさが大きい程好ましい。しかしながら、画素グループの大きさが大き過ぎると、物体73からの情報量が減少し、再構成される物体の分解能が減少してしまう。
【0117】
この3次元インタラクティブディスプレイについてシミュレーションを行った。このシミュレーションにおいては、以下のパラメータを採用した。
m =0.2mm、ds =0.1mm、dG =1.8mm、h0 =2mm
従って、空間的な不確定性は、mmの単位で
【数4】

と表すことができる。
【0118】
液晶パネル71のガラス基板の屈折率(約1.7)を考慮すると、空間的な不確定性は
【数5】

と表すことができる。
【0119】
物体73の高さと空間的な不確定性との間の関係を図31に示す。
モンテカルロシミュレーションにおいては、人間の指を模倣するために半径8mmの半球を設定した(図32)。半球の3/4は一様な確率分布であらゆる方向に光子をランダムに放出するように設定した。このモデルは、現実の拡散の妥当な減少である。
【0120】
球座標と直交座標との間の関係によると、cos(θ)およびφが一様に分布すると、放出される光子の分布はランダムで一様な球状分布となる。物体そのもの、あるいは、画素グループ間の境界に当たる全ての光子は無視される。例えば、物体73が、異なる角度でマスク面より40mmの高さにある時に得られる元の像は、図33AおよびBに示す通りである。ここで、図33Aは角度が23°の方向からの画像、図33Bは角度が−23°の方向からの画像である。
【0121】
受光面に到達することができない光子を除去することにより、種々の角度からの画像を再生することができ、図34AおよびBに示す通りである。ここで、図34Aは角度が23°の方向からの画像、図34Bは角度が−23°の方向からの画像である。物体73の底からの正確な位置の計算により、H=33mm(正確な高さは32mm)の結果が得られ、これは許容範囲の誤差である。
【0122】
この第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点に加えて、スクリーンから離れた位置にある物体73の位置を正確に検出することができることにより、より正確な3次元ジェスチャー認識を行うことが可能であるという利点を得ることができる。この3次元インタラクティブディスプレイは、例えば、携帯電話や携帯ゲーム機などに適用して好適なものである。
【0123】
以上、実施の形態について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0124】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、構成、形状、材料などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成、形状、材料などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0125】
11…光源、12…光変調層、12a…セル、13…透明受光層、13a…透明基板、D…受光素子、14…ディスプレイパネル、14a…基板、P…画素、15…物体、16…プローブ光、17…散乱光、21…導電性ポリマーおよび/または高分子半導体、22…タンパク質、22a…色素、22b…ポリペプチド、23…リンカー、24…電極、25…アポタンパク質、26…基板、27…光伝導体、28…第1の電極、29…第2の電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出しようとする物体に光を照射するための光源と、
上記光源から上記物体に光を照射することにより発生する散乱光が入射し、この散乱光の強度を変調する機能を少なくとも有する光変調層と、
上記光変調層を透過した光を受光するための透明受光層と、
上記透明受光層に関して上記光変調層と反対側に設けられたディスプレイパネルまたはバックライトパネルとを有する3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項2】
上記光源は紫外光または赤外光を発生する請求項1記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項3】
上記光源から発生する光がスクリーンの前方の空間全体に照射されるように上記光源が構成されている請求項2記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項4】
上記光変調層は液晶パネルである請求項3記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項5】
上記ディスプレイパネルは、有機発光ダイオードディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネルまたは液晶ディスプレイパネルである請求項4記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項6】
上記透明受光層は、導電性ポリマーおよび/または高分子半導体と少なくとも一つの、長寿命励起状態を有する色素を含むタンパク質、有機色素または無機色素との複合体からなる光伝導体を用いた受光素子が複数配列された受光素子アレイを有する請求項5記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項7】
上記導電性ポリマーおよび/または高分子半導体が第1の電極と第2の電極との間に電気的に接続されている請求項6記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項8】
上記導電性ポリマーおよび/または高分子半導体と上記タンパク質、上記有機色素または上記無機色素とは非共有結合または共有結合により互いに結合している請求項7記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項9】
上記導電性ポリマーおよび/または高分子半導体がネットワークを形成している請求項8記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項10】
上記色素は蛍光性または燐光性を有する請求項9記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項11】
上記タンパク質は電子伝達タンパク質、補酵素を含むタンパク質、グロビン類、蛍光タンパク質および蛍光タンパク質の変異種からなる群より選ばれた少なくとも一種である請求項10記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項12】
上記複合体は上記導電性ポリマーおよび/または高分子半導体より機械的強度が高い他のポリマーをさらに含む請求項11記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項13】
上記光伝導体、上記第1の電極および上記第2の電極が基板上に設けられている請求項11記載の3次元インタラクティブディスプレイ。
【請求項14】
上記基板、上記第1の電極および上記第2の電極が透明である請求項13記載の3次元インタラクティブディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2012−247910(P2012−247910A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117981(P2011−117981)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】