説明

3次元モデル表示装置、3次元モデル表示方法、及び、3次元モデル表示プログラム

【課題】 利用者が意図する構成要素のみを表示して不要な構成要素を非表示にすることで、利用者の作業効率の向上を実現する、3次元モデル表示装置等を提供する。
【解決手段】 3次元構造のモデルを構成する構成要素を表示する3次元モデル表示装置100であって、表示された前記モデルに対して利用者が指定した指定領域に対応する指定空間に、前記モデルの構成要素が一部でも含まれる場合に当該構成要素を表示対象の候補とし、前記モデルの構成要素が全く含まれない場合に当該構成要素を非表示対象とする表示候補選択処理部206と、前記候補とした構成要素のそれぞれの体積に対する、前記指定空間における当該構成要素の体積の包含率を算出する体積算出処理部208と、前記包含率と予め設定された閾値とを比較して当該構成要素を表示対象とするかどうかを判定する判定処理部210と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元で描画されたモデルを構成する構成要素のうち利用者が意図する構成要素のみを表示する3次元モデル表示装置、3次元モデル表示方法、及び、3次元モデル表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元モデル表示装置において3次元で描画されたモデルを構成する構成要素の一部を拡大表示する際に、その拡大表示しようとする構成要素がモデルの外側表面を構成している場合には、その構成要素に対して利用者が注視したい領域を拡大表示する指示を行うことで、3次元モデル表示装置が指示された領域を拡大表示する。
ここで、3次元で描画されたモデルの構成要素の一部を表示する従来の方法について図を用いて説明する。図9は、モデルの構成要素を表示する従来技術を示した模式図である。
【0003】
図9(a)において、モデル401の内部に配置されているシートのみを表示したい場合、マウス操作などでシートが存在するであろう位置を含む領域403を指定すると、図9(b)に示すように内部のシートは表示されずにドアだけが拡大表示された状態になる。これはモデル401の内部に配置するシートは手前のドアによって視界が遮られているために起こる。
【0004】
そこで、モデル401の内部に配置されたシートのみを表示するためには以下の操作が必要となる。図9(c)において、シートが奥行方向に存在していると考えられるドア領域403を矩形選択し、その矩形領域に対応する空間に含まれる構成要素のみを表示する。ここで、3次元のモデル空間で矩形選択を行うと、奥行方向は無限遠に選択されることになる。よって、図9(d)に示すように左側ドア406、シート404及び右側ドア405のみが表示された状態となる。そして、左側ドア406及び右側ドア405をそれぞれ選択して非表示にすることで、シート404のみを画面上に表示することができる。
【0005】
これら一連の利用者による指示とは別の方法として、次の操作であってもよい。まず、前輪及びフロントパネルなどの普通乗用車の前側領域を矩形選択し、この矩形領域内にある構成要素を非表示にする。前述したように3次元のモデル空間で矩形選択を行うと、奥行方向は無限遠に選択されるため、前側領域に対応した奥行空間の内部にあるエンジン、ラジエータなどの構成要素も非表示になる。同様に後側領域を矩形選択して、この矩形領域に対応した奥行空間内にある構成要素を非表示にする。これらの構成要素を非表示にする処理が円滑になされて、左側ドア、シート及び右側ドアのみが表示された状態となった場合、上記の方法と同様に左右のドアを選択して非表示にすることでシートのみを画面上に表示することができる。
【0006】
さらに、3次元形状モデルを表示する装置において、3次元形状の内部構造を表示することができる技術として特許文献1に示す技術がある。この特許文献1の3次元形状支援装置は、3次元形状モデルの形状データを保持する3次元形状データ記憶部と、表示された3次元形状モデルの部分領域と表示変更情報とを入力する入力部と、前記部分領域に存在する3次元形状モデルを前記3次元形状データ記憶部から抽出する選択部と、前記選択部により抽出された3次元形状モデルに対して、前記表示変更情報により表示状態を変更する表示設定部と、前記表示設定部で変更された表示状態で3次元形状モデルを表示する表示部を備えるものである。これによれば、3次元形状モデルの内部構造をユーザに理解しやすく表示することができる。
【特許文献1】特開2007−25929号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のように注視したい構成要素の領域のみを画面上に表示したい場合には、利用者がそれ以外の構成要素を非表示に設定しなければいけないため大変手間が掛かる。
また、注視したい構成要素を含む空間を指定すると、上述のように、通常は、表示する必要がない不要な構成要素が含まれるために、利用者が当該表示不要な構成要素を非表示にする操作を行わなければならず、非常に手間がかかる作業になるという課題を有する。
【0008】
ところで、前記特許文献1に示す技術は、利用者から指示された注視したい部分の3次元形状モデルの内部構造を利用者に分かりやすく表示するが、この特許文献1によっても、前記課題を解決するには至らない。
【0009】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、利用者が、必要な構成要素のみを表示して不要な構成要素を非表示にすることで、利用者の作業効率の向上を実現する、3次元モデル表示装置、3次元モデル表示方法、及び、3次元モデル表示方法をコンピュータに実行させることが可能なプログラムを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1.体積の包含率で判定)
本発明に係る3次元モデル表示装置は、3次元構造のモデルを構成する構成要素の一部または全部を表示する3次元モデル表示装置であって、表示された前記モデルに対して利用者が指定した指定領域に対応する指定空間に、前記モデルの構成要素が一部でも含まれる場合に当該構成要素を表示対象の候補とし、前記モデルの構成要素が全く含まれない場合に当該構成要素を非表示対象とする候補選択手段と、前記候補選択手段が表示対象の候補とした前記構成要素のそれぞれの体積に対する、前記指定空間における当該構成要素の体積の包含率を算出する算出手段と、前記算出手段が算出したそれぞれの前記構成要素に対応する前記包含率と、予め設定された閾値とを比較して当該構成要素を表示対象とするかどうかを判定する判定手段と、を備える。
【0011】
このように、本発明においては表示したい構成要素がモデルの内部や他の構成要素に被覆されている場合であっても、利用者が指定した領域に対応する空間(以下、指定空間とする)に含まれるそれぞれの構成要素の体積に対する、指定空間における当該構成要素の体積の包含率から、表示対象となる構成要素かどうかを判定するため、利用者は領域を指定するだけで意図する構成要素のみを容易に表示することができる。従って、利用者の作業効率を向上することができる。
指定空間におけるそれぞれの構成要素の包含率は、以下の式で算出する。
包含率 = (指定空間における各構成要素の体積)/(各構成要素の体積)
【0012】
(2.閾値を設定)
本発明に係る3次元モデル表示装置は、請求項1記載の3次元モデル表示装置であって、予め設定された前記閾値を利用者の指示に基づいて設定する閾値設定手段と、前記算出手段が算出したそれぞれの前記構成要素に対応する前記包含率と、前記閾値設定手段が設定した閾値とを比較して当該構成要素を表示対象とするかどうかを再判定する再判定手段と、を備える。
【0013】
このように、本発明においては利用者が閾値の値を変更し、その変更された値に応じて構成要素の表示、非表示の再判定を行う。これにより、万が一利用者が厳密に指定空間を選択できずに、不要な構成要素が表示されてしまった場合、または、必要な構成要素が表示されなかった場合でも、閾値を変更することにより、利用者にとって必要な構成要素のみを容易に表示することができるという効果を有する。
【0014】
(3.表示サイズの調整)
本発明に係る3次元モデル表示装置は、請求項1または2記載の3次元モデル表示装置であって、表示対象となる前記構成要素を、利用者が指定した前記指定領域のサイズに合わせて描画する描画手段を備える。
このように、本発明においては利用者が指定した領域のサイズに合わせて、必要な構成要素のみが表示されるため、利用者が注視したい領域を拡大表示したり、縮小表示したりすることができるという効果を有する。
【0015】
(4.表示サイズの変更)
本発明に係る3次元モデル表示装置は、請求項3記載の3次元モデル表示装置であって、前記指定領域のサイズは前記描画手段が前記構成要素を描画した後でも変更することが可能であることを特徴とする。
【0016】
このように、本発明においては利用者が指定した領域のサイズに合わせて構成要素が表示された後であっても、当該指定領域のサイズを変更することができる。従って、当初領域を指定する際に構成要素の一部のみを指定して表示された場合であっても、指定した領域を変更して全体を表示したりすることができるという効果を有する。また、その逆も可能である。
【0017】
これまで、本発明を装置として示したが、所謂当業者であれば明らかであるように本発明をシステム、方法、及び、プログラムとして捉えることもできる。これら前記の発明の概要は、本発明に必須となる特徴を列挙したものではなく、これら複数の特徴のサブコンビネーションも発明となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。従って、本実施形態の記載内容のみで本発明を解釈すべきではない。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0019】
本実施の形態では、主に装置について説明するが、所謂当業者であれば明らかな通り、本発明はシステム、方法、及び、コンピュータを動作させるためのプログラムとしても実施できる。また、本発明はハードウェア、ソフトウェア、または、ハードウェア及びソフトウェアの実施形態で実施可能である。プログラムは、ハードディスク、CD−ROM、DVD−ROM、光記憶装置、または、磁気記憶装置等の任意のコンピュータ可読媒体に記録できる。さらに、プログラムはネットワークを介した他のコンピュータに記録することができる。
【0020】
(本発明の第1の実施形態)
[1. 構成]
[1.1 ハードウェア構成]
図1は、本実施形態に係る3次元モデル表示装置のハードウェア構成の模式図である。
3次元モデル表示装置100は、CPU(Central Processing Unit)101と、メインメモリ102と、外部記憶装置103と、入力装置104と、出力装置105と、を備える。
【0021】
CPU101は、プログラムに従って実際の処理を行う。メインメモリ102は、プログラムやデータを一時的に記憶する。外部記憶装置103は、例えばハードディスク等の記憶装置であり、プログラムやデータを保存しておく。入力装置104は、例えばマウスやキーボードであり、利用者はこれらの装置を用いてデータや指示を入力することができる。出力装置105は、例えばディスプレイであり、3次元モデルをディスプレイに出力することで、利用者が視認することができる。これらの装置は全てバス110を介して接続している。
【0022】
なお、図1は本実施形態に係る3次元モデル表示装置のハードウェア構成を模式的に示した一例に過ぎず、本実施形態を実現可能であれば、他の構成を採ることもできる。
3次元モデル表示装置100は、3次元モデル表示プログラムを、ハードディスクを備える外部記憶装置103に複製し、メインメモリ102に複製した3次元モデル表示プログラムがロード可能に構成する所謂インストール(ここで説示したインストールは例示に過ぎない)を行うことで実現できる。そして、コンピュータを制御するOS(Operating System)へ利用者が3次元モデル表示装置の起動を命令することで3次元モデル表示プログラムがメインメモリ102にロードされて起動する。
なお、3次元モデル表示プログラムは、CD−ROM等の記録媒体から提供されるようにしてもよいし、ネットワークを介して他のコンピュータから提供されるようにしてもよい。
【0023】
[1.2 構成要素]
図2は、本発明の第1の実施形態に係る3次元モデル表示装置のモジュール構成図である。
3次元モデル表示装置100は、処理制御装置200と、入力部220と、出力部230と、記憶部240と、を備える。処理制御装置200は、モデルデータ読込処理部202と、空間設定処理部204と、表示候補選択処理部206と、体積算出処理部208と、判定処理部210と、描画部212と、を備える。
【0024】
モデルデータ読込処理部202は、表示の対象となるモデルのデータを読み込む処理を行う。利用者からの指示により、表示の対象となるモデルのデータを読み込み、そのモデルが画面上に表示される。
【0025】
空間設定処理部204は、利用者が指定した矩形領域に対応する空間を指定空間として設定する処理を行う。例えば、モデルデータ読込処理部202で読み込んだモデルに対して、利用者が画面上の所定の領域を矩形選択した場合に、その矩形領域に対応する奥行無限遠方向の指定空間が設定の対象空間となる。
【0026】
表示候補選択処理部206は、表示の対象となるモデルの構成要素(以下、オブジェクトとする)の候補の選択を行う。空間設定処理部204により設定された指定空間内にオブジェクトが一部でも含まれている場合には、そのオブジェクトは表示対象の候補となる。逆に、指定空間内に全く含まれないオブジェクトは非表示の対象となる。
【0027】
なお、指定空間内にオブジェクトが含まれるかどうかを判定する境界判定技術は周知であり、当業者は適宜設計を行い実施することが可能であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0028】
体積算出処理部208は、モデルを構成している各オブジェクトの体積、空間設定処理部204により指定された空間におけるオブジェクトの体積、及び、各オブジェクトの体積に対する指定空間におけるオブジェクトの体積の比率(以下、包含率とする)を算出する。
【0029】
なお、モデルを構成している各オブジェクトの体積はモデルデータ読込処理部202がオブジェクトを読み込む際に算出しておき、属性データとしてオブジェクトごとに保持するようにしてもよい。また、体積の算出単位は、例えば、部品単位、ユニット単位、アセンブリ単位等の意味のあるまとまりであればよい。さらに、意味のあるまとまりのグループ単位は利用者の指示により任意に設定することができるようにしてもよい。
【0030】
また、体積の計算方法として、オブジェクトの体積を大まかに算出する場合は、オブジェクトを覆う8頂点のBOX計算で算出することができる。この場合、凹凸や孔穴は無視した体積の値となる。また、オブジェクトの体積を厳密に算出する場合は、体積の算出が可能な閉じたソリッドの単位で体積を算出し、それぞれの和を求めてオブジェクトの体積とすることもできる。その他、周知となっている一般的な体積の算出方法を利用して体積の算出を行うこともできる。
【0031】
判定処理部210は、体積算出部208が算出した包含率と予め設定された閾値の大小を比較して、オブジェクトを画面上に表示するかどうかを判定する処理を行う。表示候補選択処理部206で表示対象の候補となったオブジェクトについて、それぞれの包含率と閾値を比較し、包含率が閾値以上であるオブジェクトについては表示フラグがONに設定され、表示対象となる。
描画部212は、判定処理部210で表示フラグがONに設定されたオブジェクトのみを出力部230に出力する処理を行う。その結果、表示対象となるオブジェクトのみが画面上に表示され、利用者の作業効率が上がる。
【0032】
[2 動作]
本発明の第1の実施形態における3次元モデル表示装置の動作を説明する。図3は、本発明の第1の実施形態に係る3次元モデル表示装置の処理を示すフローチャートである。
まず、図2のモデルデータ読込処理部202がモデルデータを読み込む処理を行う(ステップS301)。これにより、利用者が作業対象としているモデルが画面上に初期表示される。次に、初期表示されたモデルを構成するオブジェクトの全てに対して図2の体積算出処理部208が体積の算出処理を行う(ステップS302)。ここで算出した体積データは、一時領域にデータとして保持してもよいし、前述したようにオブジェクトの属性データとして保持するようにしてもよい。次に、図2の空間設定処理部204が、利用者が選択した画面上の矩形領域に対応する奥行無限遠方向の空間を指定空間として設定する処理を行う(ステップS303)。
【0033】
図2の表示候補選択処理部206は、ステップS303で指定された空間にオブジェクトが一部でも含まれているかどうかを判定する(ステップS304)。指定空間内に全く含まれていないオブジェクトについては表示の対象とはならずに、次のオブジェクトを判定する処理に進む(ステップS304のNOに進む)。指定空間内に一部でも含まれるオブジェクトについては、図2の体積算出処理部208により指定空間に含まれる部分のオブジェクトの体積が算出される(ステップS305)。次に、予め算出しておいたそれぞれのオブジェクトの体積と、指定空間に含まれる部分のオブジェクトの体積から、包含率を算出する(ステップS306)。算出された包含率と予め設定された閾値の大小を比較して(ステップS307)、包含率が閾値以上であれば、そのオブジェクトについては表示フラグがONに設定され(ステップS308)、包含率が閾値より小さければ、そのオブジェクトについては表示フラグが初期値(OFF)のままとなる。ステップS304からステップS308の処理はモデルデータを構成する全てのオブジェクトについて繰り返して行われる。
【0034】
なお、ステップS307の大小比較では、包含率が閾値以上であれば、そのオブジェクトについては表示フラグがONに設定され、包含率が閾値より小さければ、そのオブジェクトについては表示フラグが初期値のままとしたが、その逆でもよい。
【0035】
全てのオブジェクトについてステップS304からステップS308の処理が完了すると、表示フラグがONになっているオブジェクトについてのみ描画が行われ(ステップS309)、画面上に表示されて処理を終了する。
なお、オブジェクトの描画に関して、上記では表示フラグを利用して、表示フラグがONのオブジェクトのみを描画するようにしたが、表示フラグを用いずにステップS307の比較の結果、表示対象となったオブジェクトを順次描画するようにしてもよい。
【0036】
[3. 表示オブジェクトの決定]
表示するオブジェクトが決定される過程を、図4を用いてさらに詳細に説明する。図4は、表示オブジェクトを決定する過程を示した模式図である。
ここではモデル401の内部に配置されているシート404を表示する場合の表示オブジェクトの決定過程について説明する。図4(a)は、画面上に表示されたモデルの斜視図である。利用者は内部に配置されているシート404の位置を予測し矩形領域403を指定する。指定された矩形領域403に対して矩形領域403に対応する奥行無限遠方向の空間402が指定される。
【0037】
図4(b)は、指定された空間402に一部でも含まれる全てのオブジェクト(ここではシート404、右側ドア405、左側ドア406)を選択して示している。ここで選択されたオブジェクトは表示の候補となるオブジェクトである。各オブジェクトの体積、及び、選択された各オブジェクトの空間402における体積から包含率を算出する(ここではシート404が0.9、右側ドア405及び左側ドア406が0.6である)。ここで、予め設定された閾値を0.8とすると、それぞれのオブジェクトの包含率と閾値を大小比較して、包含率が閾値以上であるシート404のみが表示される(図4(c))。
【0038】
[4. 表示オブジェクトの拡大表示]
また、本発明を適用して拡大操作を行うことでシート404のみを拡大表示することができる。図5に、本発明を適用して拡大操作をした場合の模式図を示す。
図5(a)は、モデル401の側面図である。利用者は上記と同様に、シート404が配置されている位置を予測し矩形領域403を指定する。そして、図4に示した場合と同様の処理が行われて、シート404のみが画面に表示される(図5(b))。その際に、シート404のみが拡大表示され、左右に配置していたドアは表示されない。また、この時利用者が指定した矩形領域403のサイズに合わせてオブジェクトが表示される。さらに、図5(b)中の矢印で示すようにオブジェクト表示後であっても矩形領域403のサイズを変更することで、シート404全体を表示することができる。
【0039】
このように、本実施形態によれば、選択したいオブジェクトがモデルの内部や画面上での選択が困難な位置に配置されているオブジェクトに対して、利用者が表示したいオブジェクトのみを容易に画面上に表示することができる。また、その際に表示したいオブジェクトのみを拡大表示することも可能である。
【0040】
なお、矩形領域の選択の際に通常の技術者であれば、モデルの内部に配置している画面上で視認不可能なシートの位置を予測するのは容易であるが、未熟な技術者や技術者以外の者がシートの位置を予測するのは困難である。従って、ワイヤーフレームモデルやサーフェスモデルを利用して、モデルの内部を透過的に表示するようにしてもよい。
また、図5(b)において、表示対象(ここではシート404)のサイズに合わせて、表示対象の全体が表示されるように、表示領域を自動で変更できるようにしてもよい。
【0041】
(本発明の第2の実施形態)
[1. 構成]
[1.1 ハードウェア構成]
本発明の第2の実施形態において、装置のハードウェア構成は第1の実施形態と同じであるため説明は省略する。
【0042】
[1.2 構成要素]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る3次元モデル表示装置のモジュール構成図である。
3次元モデル表示装置100は、処理制御装置200と、入力部220と、出力部230と、記憶部240と、を備える。処理制御装置200は、モデルデータ読込処理部202と、空間設定処理部204と、表示候補選択処理部206と、体積算出処理部208と、閾値設定部209と、判定処理部210と、描画部212と、を備える。
【0043】
モデルデータ読込処理部202、空間設定処理部204、表示候補選択処理部206、体積算出処理部208、判定処理部210、及び、描画部212の機能についての説明は第1の実施形態と同じであるため省略する。
【0044】
閾値設定部209は、利用者が指示した任意の閾値の値を設定する処理を行う。この処理により、表示対象となるオブジェクトが複数存在した場合や万が一必要とするオブジェクトが表示されなかった場合に、利用者は自分が表示したいオブジェクトを選択的に表示することが可能となる。
なお、閾値設定部209において閾値が設定されるのと同時に描画部212が描画処理を行うことで、利用者は閾値の設定に応じてリアルタイムにオブジェクトを表示したり、非表示にしたりすることができる。
【0045】
[2 動作]
本発明の第2の実施形態における3次元モデル表示装置の動作を説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る3次元モデル表示装置の処理を示すフローチャートである。
ステップS301からステップS309までは、第1の実施形態と同じであるため省略する。ステップS309で、表示対象のオブジェクトのみが画面に表示される。利用者は画面を見ながら、不要なオブジェクトが表示されていないか、または、表示が必要なオブジェクトが非表示になっていないかを確認し、それらの対象となるオブジェクトがある場合は、閾値を変更して調整を行うことができる。ステップS310では、閾値が変更されたかどうかが判定される。閾値が変更されていない場合は、そのまま処理を終了する。閾値が変更された場合は、指定空間に一部でも含まれるオブジェクト(表示対象の候補となるオブジェクト)に関して、再度新たに設定された閾値と、包含率の大小を比較する処理が行われる(ステップS311)。包含率が閾値以上であれば、そのオブジェクトについては表示フラグがONに設定され(ステップS312)、包含率が閾値より小さければ、そのオブジェクトについては表示フラグがOFFに設定される(ステップS313)。ステップS311からここまでの処理は表示対象の候補となる全てのオブジェクトについて繰り返して行われる。そして、表示対象の候補となる全てのオブジェクトについて処理が完了すると、表示フラグがONになっているオブジェクトについてのみ描画が行われ(ステップS314)、画面上に表示されて処理を終了する。
【0046】
なお、第1の実施形態でも記述した通り、ここでもオブジェクトの描画に関しては、ステップS307またはステップS311の比較の結果、表示対象となったオブジェクトを順次描画するようにしてもよい。
また、上記ではステップS311からステップS313までの処理を表示対象の候補となる全てのオブジェクト(指定空間内に一部でも含まれるオブジェクト)に関して行っているが、ステップS307の判定結果において既に表示の対象とはなり得ないと判定できる表示候補オブジェクトについては処理を省略することもできる。
【0047】
[3. 閾値を変更した場合の表示オブジェクトの決定]
閾値を変更した場合に表示するオブジェクトが決定される過程を、図8を用いてさらに詳細に説明する。図8は、閾値を変更した場合の表示オブジェクトを決定する過程を示した模式図である。
【0048】
第1の実施形態で説明したように、閾値を0.8に設定した場合は、図8(c)のようにシート404のみが表示対象のオブジェクトとして画面に表示される。ここで、例えば利用者がシート404と右側ドア405及び左側ドア406の関係を知るために右側ドア405及び左側ドア406も同時に表示したいとする。その場合、利用者は画面上から閾値の値を0.5に変更する。そうすることで、図8(d)に示すように、シート404、右側ドア405、及び、左側ドア406が画面に表示され、3者の関係を知ることが可能となる。
【0049】
なお、閾値の設定は0.5〜0.8のように範囲で設定できるようにしてもよい。これにより、ドアのみを表示することも可能となる。また、表示対象の候補となっている各オブジェクトの包含率(ここでは右側ドア405及び左側ドア406の0.6とシート404の0.9)とオブジェクト名を画面上に表示し、その情報を見ながら利用者が閾値を任意に選択できるようにしてもよい。さらに、閾値を設定する方法は、スライドバー、直接入力、リストボックスによる選択など画面上でマウス及びキーボードを利用して値を変更できればよい。
【0050】
このように、本実施形態によれば、閾値を変更することで利用者が選択的にオブジェクトの表示を行うことが可能となる。従って、画面表示が利用者にとってより意図を反映しやすい状態となり、利用者の作業効率を上げることができる。
なお、上記実施形態は、CAD装置や分子構造のシミュレーション装置のように、コンピュータグラフィクス技術を用いてモデルを3次元で表示させ、そのモデルを構成するオブジェクトの選択を受け付け、選択を受け付けたオブジェクトを表示する装置で適用可能である。
【0051】
以上の前記各実施形態により本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は実施形態に記載の範囲には限定されず、これら各実施形態に多様な変更又は改良を加えることが可能である。そして、かような変更又は改良を加えた実施の形態も本発明の技術的範囲に含まれる。このことは、特許請求の範囲及び課題を解決する手段からも明らかなことである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態に係る3次元モデル表示装置のハードウェア構成の模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る3次元モデル表示装置のモジュール構成図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る3次元モデル表示装置の処理を示すフローチャートである。
【図4】表示オブジェクトを決定する過程を示した模式図である。
【図5】本発明を適用して拡大操作をした場合の模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る3次元モデル表示装置のモジュール構成図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る3次元モデル表示装置の処理を示すフローチャートである。
【図8】閾値を変更した場合に表示オブジェクトを決定する過程を示した模式図である。
【図9】モデルの構成要素を表示する従来技術を示した模式図である。
【符号の説明】
【0053】
100 3次元モデル表示装置
101 CPU
102 メインメモリ
103 外部記憶装置
104 入力装置
105 出力装置
110 バス
200 処理制御装置
202 モデルデータ読込処理部
204 空間設定処理部
206 表示候補選択処理部
208 体積算出処理部
209 閾値設定部
210 判定処理部
212 描画部
220 入力部
230 出力部
240 記憶部
401 モデル
402 指定空間
403 指定領域
404 シート
405 右側ドア
406 左側ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元構造のモデルを構成する構成要素の一部または全部を表示する3次元モデル表示装置であって、
表示された前記モデルに対して利用者が指定した指定領域に対応する指定空間に、前記モデルの構成要素が一部でも含まれる場合に当該構成要素を表示対象の候補とし、前記モデルの構成要素が全く含まれない場合に当該構成要素を非表示対象とする候補選択手段と、
前記候補選択手段が表示対象の候補とした前記構成要素のそれぞれの体積に対する、前記指定空間における当該構成要素の体積の包含率を算出する算出手段と、
前記算出手段が算出したそれぞれの前記構成要素に対応する前記包含率と、予め設定された閾値とを比較して当該構成要素を表示対象とするかどうかを判定する判定手段と、を備える3次元モデル表示装置。
【請求項2】
予め設定された前記閾値を利用者の指示に基づいて設定する閾値設定手段と、
前記算出手段が算出したそれぞれの前記構成要素に対応する前記包含率と、前記閾値設定手段が設定した閾値とを比較して当該構成要素を表示対象とするかどうかを再判定する再判定手段と、を備える請求項1記載の3次元モデル表示装置。
【請求項3】
表示対象となる前記構成要素を、利用者が指定した前記指定領域のサイズに合わせて描画する描画手段を備える、請求項1または2記載の3次元モデル表示装置。
【請求項4】
前記指定領域のサイズは前記描画手段が前記構成要素を描画した後でも変更することが可能であることを特徴とする、請求項3記載の3次元モデル表示装置。
【請求項5】
3次元構造のモデルを構成する構成要素の一部または全部を表示する3次元モデル表示方法であって、
表示された前記モデルに対して利用者が指定した指定領域に対応する指定空間に、前記モデルの構成要素が一部でも含まれる場合に当該構成要素を表示対象の候補とし、前記モデルの構成要素が全く含まれない場合に当該構成要素を非表示対象とする候補選択ステップと、
前記候補選択ステップで表示対象の候補とした前記構成要素のそれぞれの体積に対する、前記指定空間における前記構成要素の体積の包含率を算出する算出ステップと、
前記算出ステップで算出したそれぞれの前記構成要素に対応する前記包含率と、予め設定された閾値とを比較して当該構成要素を表示対象とするかどうかを判定する判定ステップと、を含む3次元モデル表示方法。
【請求項6】
3次元構造のモデルを構成する構成要素の一部または全部を表示するようにコンピュータを動作させるための3次元モデル表示プログラムであって、
表示された前記モデルに対して利用者が指定した指定領域に対応する指定空間に、前記モデルの構成要素が一部でも含まれる場合に当該構成要素を表示対象の候補とし、前記モデルの構成要素が全く含まれない場合に当該構成要素を非表示対象とする候補選択手段と、
前記候補選択手段で表示対象の候補とした前記構成要素のそれぞれの体積に対する、前記指定空間における前記構成要素の体積の包含率を算出する算出手段と、
前記算出手段で算出したそれぞれの前記構成要素に対応する前記包含率と、予め設定された閾値とを比較して当該構成要素を表示対象とするかどうかを判定する判定手段としてコンピュータを動作させるための3次元モデル表示プログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−242610(P2008−242610A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79395(P2007−79395)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】