説明

3次元画像表示装置及び3次元画像表示方法

【課題】3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側を容易に把握できるようにすることで、観察者の視点を安定化させて、該観察者の疲労感を軽減する。
【解決手段】3次元画像表示装置22Aは、観察者20の右目46r用の2次元画像である右目画像42rを表示する右目画像表示部36と、観察者20の左目46l用の2次元画像である左目画像42lを表示する左目画像表示部34と、右目画像42r及び左目画像42lに基づく3次元画像を観察者20に視認させる3次元画像表示部40と、前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側のうち、少なくとも一方に、前記3次元画像と共に写るマーカ画像を3次元画像表示部40に表示させる表示制御部160とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者の右目用の2次元画像(右目画像)と、前記観察者の左目用の2次元画像(左目画像)とに基づく3次元画像を前記観察者に視認させる3次元画像表示装置及び3次元画像表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、観察者の右目用の2次元画像(右目画像)を右目画像表示部に表示すると共に、前記観察者の左目用の2次元画像(左目画像)を左目画像表示部に表示し、前記観察者が立体視眼鏡等の3次元画像表示部を介して前記右目画像及び前記左目画像を視ることにより、前記右目画像及び前記左目画像を3次元画像として視認できるようにした3次元画像表示装置が知られている。
【0003】
なお、観察者による3次元画像の視認に関する従来技術として、特許文献1〜8が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−178662号
【特許文献2】特開2006−230906号
【特許文献3】特許第4176504号
【特許文献4】特開2003−245289号
【特許文献5】特開2004−73349号
【特許文献6】特開2004−271604号
【特許文献7】特開2007−75630号
【特許文献8】特開2003−24321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、観察者が3次元画像表示部を介して3次元画像を視認する際、前記3次元画像の奥行方向に沿った該3次元画像の手前側や奥側が目視では判断しづらい場合がある。このように、前記3次元画像の手前側及び奥側を把握できなければ、該3次元画像の奥行範囲を認識することができなくなる。この結果、前記観察者の視点が安定せず(定まらず)、該観察者の疲労感が増大するおそれがある。
【0006】
しかしながら、特許文献1〜4には、2次元画像又は3次元画像にマーカを重畳表示させることは提案されているが、該マーカは、前記観察者の視点の安定性や疲労感の軽減を目的として表示されるものではないため、特許文献1〜4の技術を3次元画像表示装置に適用しても上記の問題を解決することはできない。また、特許文献5〜8には、3次元画像表示に関する技術は提案されているが、いずれも、上記の問題を解決するための技術ではない。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側を容易に把握できるようにすることで、観察者の視点を安定化させて、該観察者の疲労感を軽減するための3次元画像表示装置及び3次元画像表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る3次元画像表示装置は、観察者の右目用の2次元画像である右目画像を表示する右目画像表示部と、前記観察者の左目用の2次元画像である左目画像を表示する左目画像表示部と、前記右目画像及び前記左目画像に基づく3次元画像を前記観察者に視認させる3次元画像表示部と、前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側のうち、少なくとも一方に、前記3次元画像と共に写るマーカ画像を前記3次元画像表示部に表示させる表示制御部とを有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る3次元画像表示方法は、観察者の右目用の2次元画像である右目画像を右目画像表示部に表示すると共に、前記観察者の左目用の2次元画像である左目画像を左目画像表示部に表示し、且つ、前記右目画像及び前記左目画像に基づく3次元画像を3次元画像表示部により前記観察者に視認させる場合に、前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側のうち、少なくとも一方に、前記3次元画像と共に写るマーカ画像を前記3次元画像表示部に表示することを特徴としている。
【0010】
これらの発明によれば、3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側のうち、少なくとも一方には、前記3次元画像と共に写るマーカ画像が表示される。
【0011】
これにより、観察者は、前記マーカ画像を視認することで、前記3次元画像の奥行範囲を明確に認識することができ、該3次元画像の空間把握が容易となる。すなわち、前記観察者は、前記3次元画像を安定的に視認する際のサポートとして前記マーカ画像を利用することで、前記3次元画像の手前側と奥側とを容易に把握して、該3次元画像の奥行範囲を明確に認識することが可能となる。この結果、前記3次元画像を視認する際に、前記観察者の視線が安定化すると共に、該観察者の疲労感を軽減することができる。
【0012】
従って、本発明によれば、前記3次元画像の手前側又は奥側に前記マーカ画像を表示することにより、前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側を容易に把握することができると共に、前記観察者の視点を安定化させて、該観察者の疲労感を軽減することが可能となる。
【0013】
この場合、前記3次元画像の前記奥行方向に沿った最前部及び最奥部のうち、少なくとも一方に前記マーカ画像を表示することにより、前記観察者の視線の安定化や疲労感の軽減を容易に実現することができる。
【0014】
また、前記右目画像や前記左目画像にノイズが存在する場合、通常は、視野角が揃わないので、該ノイズが立体視されることはない。しかしながら、僅かではあるが、立体視される関係となるノイズが存在する場合があり、このときには、立体視像(3次元画像)の上でもノイズとなる。読影診断では小さな点も診断対象とするため、当該ノイズは極力低減できることが望ましい。本発明では、このようなノイズが、前記マーカ画像の表示される前記最奥部よりも深い(奥側)の箇所、あるいは、前記最前部よりも浅い(前側の)箇所であれば、該ノイズを取り除くことができる。
【0015】
また、前記3次元画像の前記奥行方向に沿った手前側及び奥側の双方に前記マーカ画像をそれぞれ表示すれば、前記観察者は、前記3次元画像を視認した際に、該3次元画像に対してボリューム感(奥行感)を感じやすくなるので、前記観察者の視線のさらなる安定化や疲労感のさらなる軽減を図ることができる。
【0016】
さらに、前記表示制御部は、前記右目画像表示部に前記右目画像及び右目用マーカ画像を表示させ、前記左目画像表示部に前記左目画像及び左目用マーカ画像を表示させることにより、前記3次元画像表示部に前記3次元画像、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を共に表示させてもよい。
【0017】
これにより、前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び/又は奥側に2つのマーカ画像(前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像)が表示されるので、前記3次元画像の奥行範囲を容易に認識することができる。
【0018】
ここで、前記右目画像は、放射線検出器に対する一方の角度から放射線源が被写体を介して前記放射線検出器に放射線を照射した際に、前記被写体を透過した前記放射線を前記放射線検出器が検出することにより取得した一方の放射線画像であり、前記左目画像は、前記放射線検出器に対する他方の角度から前記放射線源が前記被写体を介して前記放射線検出器に放射線を照射した際に、前記被写体を透過した前記放射線を前記放射線検出器が検出することにより取得した他方の放射線画像であってもよい。
【0019】
この場合、前記放射線源と前記被写体との間、及び、前記被写体と前記放射線検出器との間のうち、少なくとも一方にマーカが配置されている場合に、前記右目用マーカ画像は、前記一方の角度から前記放射線源が前記被写体及び前記マーカに前記放射線を照射したときに、前記一方の放射線画像に写り込む前記マーカの画像であり、前記左目用マーカ画像は、前記他方の角度から前記放射線源が前記被写体及び前記マーカに前記放射線を照射したときに、前記他方の放射線画像に写り込む前記マーカの画像である。
【0020】
このように、前記放射線源と前記被写体との間や、前記被写体と前記放射線検出器との間に前記マーカを配置し、前記放射線の照射時に、前記マーカの画像を前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像として上述のステレオ撮影により得られた前記各放射線画像に写り込ませることで、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を容易に得ることができる。
【0021】
このようなステレオ撮影により得られた前記各放射線画像、及び、該各放射線画像に基づく3次元画像を前記観察者(医師)が読影診断する際には、下記の順序で画像診断が行われ、以下に示すさらなる顕著な効果を得ることができる。
【0022】
先ず、前記医師は、前記各放射線画像を読影診断する。この場合、前記各放射線画像には、前記右目用マーカ画像又は前記左目用マーカ画像が表示されている。従って、その後、前記3次元画像が表示されて、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像が共に表示された場合でも、前記医師は、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を手掛かりにして前記3次元画像に対する読影診断を行うことが可能となる。
【0023】
次に、前記医師は、前記各放射線画像に基づく前記3次元画像を読影診断する。この場合、前記3次元画像には、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像が共に表示されているので、前記3次元画像に写り込んだ被写体の(撮影部位の)奥行範囲が認識しやすくなると共に、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像が読影診断中における前記医師の視点を安定化させるためのサポートとなる。この結果、前記読影診断中における前記医師の視線の安定性や疲労感の軽減が図られるので、前記3次元画像に対する診断性能を向上させることができる。
【0024】
また、前記放射線検出器は、前記被写体の乳房を保持する撮影台に収容され、前記乳房は、前記放射線源側から前記撮影台に指向して変位する圧迫板と該撮影台とによって圧迫され、前記マーカは、前記圧迫板、及び、前記撮影台における前記乳房側と前記放射線検出器との間のうち、少なくとも一方に設けられ、前記圧迫板と前記撮影台とによって前記乳房が圧迫保持された状態で、前記放射線源から前記乳房を介して前記放射線検出器に前記放射線が照射される。
【0025】
前記乳房の各放射線画像に基づく3次元画像に対する読影診断であっても、該3次元画像に前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像が写り込んでいるので、前記乳房に対する診断性能を向上させることができる。
【0026】
また、前記放射線検出器は、前記被写体に対向する撮影台に収容され、前記マーカは、前記被写体における前記放射線源側及び前記撮影台側のうち、少なくとも一方に配置されてもよい。
【0027】
このような一般撮影(例えば、前記被写体の胸部撮影)でのステレオ撮影により前記各放射線画像が取得された場合に、これらの放射線画像に基づく3次元画像に対し読影診断を行っても、該3次元画像に前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像が写り込んでいるので、前記被写体に対する診断性能を向上させることができる。
【0028】
さらに、前記マーカが前記被写体とは異なる形状であると共に、前記放射線を吸収可能であれば、前記医師が前記3次元画像に対する読影診断を行う際に、前記被写体の画像と、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像とを容易に区別することができる。
【0029】
上述の説明では、前記被写体の近傍に前記マーカを配置し、前記被写体及び前記マーカに対して前記放射線を照射することにより前記放射線画像、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を得るものであった。
【0030】
本発明は、上記の説明に限定されるものではなく、仮想的なマーカに基づく前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を前記3次元画像と共に表示させることも可能である。
【0031】
すなわち、前記3次元画像表示装置は、前記被写体の厚み、前記一方の角度、前記他方の角度、及び、前記放射線源と前記放射線検出器との間の距離に基づいて、前記右目用マーカ画像と前記左目用マーカ画像とのずれ量を算出するずれ量算出部をさらに有し、前記表示制御部は、前記ずれ量に基づいて、前記右目画像表示部に前記右目用マーカ画像を表示させると共に、前記左目画像表示部に前記左目用マーカ画像を表示させる。
【0032】
この場合でも、前記3次元画像には、前記ずれ量に基づく前記右目用マーカ画像と前記左目用マーカ画像とが共に表示されるので、前記医師は、前記3次元画像に対する読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【0033】
また、前記ずれ量算出部は、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を前記奥行方向に沿った最前部に表示させる際の最小ずれ量を算出するか、並びに/又は、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を前記奥行方向に沿った最奥部に表示させる際の最大ずれ量を算出する。
【0034】
これにより、前記最前部には、前記最小ずれ量に基づく前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像が表示され、前記最奥部には、前記最大ずれ量に基づく前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像が表示されるので、前記医師は、前記3次元画像を視認した際に、該3次元画像に対してボリューム感(奥行感)を感じやすくなる。この結果、前記医師の視線の安定化や疲労感の軽減を容易に図ることができ、該3次元画像に対する診断性能をさらに向上させることができる。
【0035】
また、前記3次元画像表示装置は、前記右目画像表示部での前記右目用マーカ画像の表示、及び、前記左目画像表示部での前記左目用マーカ画像の表示の可否を前記表示制御部に指示する表示指示部をさらに有してもよい。
【0036】
さらに、前記表示制御部は、前記右目画像及び前記左目画像の形状及び/又は大きさに基づいて、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像の形状及び/又は大きさを変更可能であってもよい。
【0037】
さらにまた、前記表示制御部は、前記右目画像及び前記左目画像の形状及び/又は大きさに基づいて、前記奥行方向に沿った前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像の表示位置を変更可能であってもよい。
【0038】
これらの機能を前記3次元画像表示装置に付加することにより、前記医師による読影診断を一層効率よく行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、3次元画像の手前側又は奥側にマーカ画像を表示することにより、前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側を容易に把握することができると共に、観察者の視点を安定化させて、該観察者の疲労感を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】第1実施形態に係る3次元画像表示装置を備えた放射線画像撮影システムの概略構成ブロック図である。
【図2】図1の放射線画像撮影システムを構成するマンモグラフィ装置の斜視図である。
【図3】図2のマンモグラフィ装置の一部側面図である。
【図4】ステレオ撮影を示す正面図である。
【図5】図1の3次元画像表示装置の斜視図である。
【図6】図5の3次元画像表示装置の側面図である。
【図7】図7Aは、右目画像の説明図であり、図7Bは、左目画像の説明図であり、図7Cは、3次元画像(3D画像)の説明図である。
【図8】図1の放射線画像撮影システムの構成をより詳細に図示したブロック図である。
【図9】図1及び図8の放射線画像撮影システムの動作を示すフローチャートである。
【図10】図10A及び図10Bは、他の3D画像の説明図である。
【図11】図11Aは、一般撮影を示す側面図であり、図11Bは、一般撮影でのステレオ撮影を示す平面図である。
【図12】図12Aは、右目画像の説明図であり、図12Bは、左目画像の説明図であり、図12Cは、3D画像の説明図である。
【図13】第2実施形態に係る3次元画像表示装置を備えた放射線画像撮影システムのブロック図である。
【図14】図13の放射線画像撮影システムにおけるステレオ撮影を示す正面図である。
【図15】図13の放射線画像撮影システムの一部動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明に係る3次元画像表示装置について、3次元画像表示方法との関係で、好適な実施形態を、図1〜図15を参照しながら説明する。
【0042】
先ず、第1実施形態に係る3次元画像表示装置22Aを組み込んだ放射線画像撮影システム10Aについて、図1〜図12Cを参照しながら説明する。
【0043】
放射線画像撮影システム10Aは、図1に概略的に示すように、基本的には、被写体12のマンモ(乳房)14に対して異なる2つの角度から放射線16b、16cを照射するステレオ撮影を行うことにより、該マンモ14が写り込んだ2枚の放射線画像を取得するマンモグラフィ装置(放射線画像撮影装置)18Aと、マンモグラフィ装置18Aが取得した2枚の放射線画像のうち、一方の放射線画像を医師又は技師等の観察者20の右目46r用の2次元画像(右目画像42r)とし、且つ、他方の放射線画像を観察者20の左目46l用の2次元画像(左目画像42l)とすることにより、右目画像42r及び左目画像42lに基づく3次元画像を観察者20に視認させる3次元画像表示装置22Aとから構成される。
【0044】
この場合、マンモグラフィ装置18Aは、マンモ14の略中心を通る中心軸24上のA位置(θ=0°)に対して+θ1の角度だけ回転したB位置、あるいは、−θ1の角度だけ回転したC位置からマンモ14に放射線16b、16cをそれぞれ照射する放射線源26と、マンモ14を透過した放射線16b、16cを検出して放射線画像(右目画像42r及び左目画像42l)に変換する固体検出器(放射線検出器)28と、固体検出器28を収容し、且つ、マンモ14を保持する撮影台30と、放射線源26側から撮影台30に指向して変位することにより撮影台30と共にマンモ14を圧迫保持する圧迫板32とを有する。
【0045】
なお、図1では、B位置に配置された放射線源26からマンモ14に対して放射線16bを照射し、該マンモ14を透過した放射線16bを固体検出器28で検出することにより右目画像42rを取得し、一方で、C位置に配置された放射線源26からマンモ14に対して放射線16cを照射し、該マンモ14を透過した放射線16cを固体検出器28で検出することにより左目画像42lを取得する場合を図示している。また、中心軸24は、マンモ14の略中心を通り、且つ、撮影台30の上面及び固体検出器28と略直交する垂直軸である。
【0046】
3次元画像表示装置22Aは、左目画像42lを表示する左目画像表示部34と、左目画像表示部34に対して所定角度回転した位置に配置され、且つ、右目画像42rを表示する右目画像表示部36と、左目画像表示部34と右目画像表示部36との間の所定位置に配置され、且つ、左目画像表示部34が表示した左目画像42lの表示光44lを透過して観察者20側に出力すると共に、右目画像表示部36が表示した右目画像42rの表示光44rを観察者20側に反射して出力するハーフミラー38と、観察者20が装着する立体視眼鏡(3次元画像表示部)40とを有する。
【0047】
この場合、観察者20は、立体視眼鏡40を介して、ハーフミラー38からの表示光44rの示す右目画像42rを右目46rで視ると共に、ハーフミラー38からの表示光44lの示す左目画像42lを左目46lで視ることにより、右目画像42r及び左目画像42l(の合成画像)を3次元画像(3D画像)として視認することができる。
【0048】
次に、マンモグラフィ装置18Aの具体的な構成について、図2〜図4を参照しながら説明する。
【0049】
このマンモグラフィ装置18Aは、基本的には、立設状態に設置される基台50と、該基台50の略中央部に配設された旋回軸52の先端部に固定されるアーム部材54と、放射線源26を収容し、アーム部材54の一端部に固定される放射線源収容部56と、アーム部材54の他端部に固定される撮影台30と、放射線源収容部56と撮影台30との間に設けられた圧迫板32とを備える。また、基台50には、被写体12の撮影部位等の撮影条件や被写体12のID情報等を表示すると共に、必要に応じてこれらの情報を設定可能な表示操作部64が配設される。
【0050】
放射線源収容部56及び撮影台30を連結するアーム部材54は、旋回軸52を中心として旋回することで、被写体12のマンモ14に対する方向が調整可能に構成される。また、放射線源収容部56は、ヒンジ部58を介してアーム部材54に連結されており、矢印θ方向に撮影台30とは独立に旋回可能に構成される。
【0051】
アーム部材54には、被写体12が対向する側部(正面側)に矢印Z方向に沿って溝部60が設けられ、一方で、矢印Y方向の両側部には、被写体12が把持するための取手部62r、62lがそれぞれ設けられている。圧迫板32は、その基端部を溝部60に挿入して図示しない取付部と嵌合することにより、放射線源収容部56と撮影台30との間に配設されると共に、前記取付部が溝部60に沿って矢印Z方向に変位することにより、該取付部と一体的に矢印Z方向に変位可能である。
【0052】
また、圧迫板32の下部における放射線16b、16cの照射範囲(照射野)内には、放射線16b、16cを吸収可能であると共に、マンモ14とは明らかに異なる形状のマーカ70が設けられている。さらに、撮影台30の上面と固体検出器28との間における放射線16b、16cの照射範囲内にも、放射線16b、16cを吸収可能であると共に、マンモ14及びマーカ70とは明らかに異なる形状のマーカ72が設けられている。
【0053】
このようなマーカ70、72としては、例えば、放射線16b、16cを吸収可能な金属からなる球体、枠体、リング、金属片が採用される。また、マーカ70、72の形状についても、一目で互いに異なる形状であることが分かることが望ましく、例えば、平面視で、一方のマーカが三角形状であり、他方のマーカが球状であればよい。
【0054】
さらに、図2〜図4では、一例として、一方のマーカ70を圧迫板32の下部に配設し、他方のマーカ72を撮影台30に配設した場合を図示しているが、この例に限定されることはない。すなわち、一方のマーカ70は、マンモ14と放射線源26との間における放射線16b、16cの照射範囲内の任意の位置に設けられると共に、他方のマーカ72は、マンモ14と固体検出器28との間における放射線16b、16cの照射範囲内の任意の位置に設けられていればよい。つまり、固体検出器28に対して、マーカ72が矢印Z方向に沿ったマンモ14の手前側(固体検出器28側)に配置されると共に、マーカ70が矢印Z方向に沿ったマンモ14の奥側(放射線源26側)に配置されていればよく、より望ましくは、固体検出器28に対して、マーカ72が矢印Z方向に沿ったマンモ14の最前部(撮影台30の上面)に配設され、且つ、マーカ70が矢印Z方向に沿ったマンモ14の最奥部(圧迫板32の底面)に配設されていればよい。
【0055】
従って、図4に示すように、B位置に配置された放射線源26からマンモ14に対して放射線16bを照射した際に、該放射線16bのうち、マーカ70に照射される放射線74bは、該マーカ70によって吸収され、この結果、右目画像42rには、該マーカ70の投影像がマーカ画像76bとして写り込む(図7A参照)。また、放射線16bのうち、マーカ72に照射される放射線78bは、該マーカ72によって吸収され、この結果、右目画像42rには、該マーカ72の投影像がマーカ画像80bとして写り込む。
【0056】
一方、C位置に配置された放射線源26からマンモ14に対して放射線16cを照射した際に、該放射線16cのうち、マーカ70に照射される放射線74cは、該マーカ70によって吸収され、この結果、左目画像42lには、該マーカ70の投影像がマーカ画像76cとして写り込む。また、放射線16cのうち、マーカ72に照射される放射線78cは、該マーカ72によって吸収され、この結果、左目画像42lには、該マーカ72の投影像がマーカ画像80cとして写り込む。
【0057】
なお、右目画像42r及び左目画像42lは、同じ固体検出器28によりそれぞれ取得されるので、右目画像42rに写り込んだマーカ画像76bと、左目画像42lに写り込んだマーカ画像76cとのずれ量をΔl1´とし、右目画像42rに写り込んだマーカ画像80bと、左目画像42lに写り込んだマーカ画像80cとのずれ量をΔl2´とすれば、固体検出器28に対してマーカ72が相対的に近い位置に配設され、一方で、マーカ70が相対的に遠い位置に配設されているので、これらのずれ量の間には、Δl1´>Δl2´の関係が成り立つ(図4参照)。
【0058】
また、図2〜図4では、マンモグラフィ装置18Aに2つのマーカ70、72が配設される場合について図示しているが、第1実施形態は、上記の構成に限定されることはなく、2つのマーカ70、72のうち、少なくとも1つのマーカがマンモグラフィ装置18Aに配設されていればよい。
【0059】
次に、3次元画像表示装置22Aの具体的な構成について、図5〜図7Cを参照しながら説明する。
【0060】
3次元画像表示装置22Aは、机100の上面に配置された基台102と、該基台102から上方に延在する支持部材104と、該支持部材104によって立設状態に支持された液晶ディスプレイ等の左目画像表示部34と、左目画像表示部34の背後側から上方に湾曲して延在する支持部材106と、支持部材106によって左目画像表示部34に対し傾斜状態に支持された液晶ディスプレイ等の右目画像表示部36と、支持部材106によって支持され、且つ、左目画像表示部34の前方における机100の上面と右目画像表示部36との間の空間に延在するハーフミラー支持機構107と、ハーフミラー支持機構107によって左目画像表示部34と右目画像表示部36との間の所定位置に支持されるハーフミラー38と、観察者20が操作するキーボード等の操作部116と、観察者20が装着する立体視眼鏡40とから構成される。
【0061】
ハーフミラー支持機構107は、支持部材106を水平方向に貫通する円柱状の軸部108と、軸部108の両端部に軸支され、該軸部108を中心軸として左目画像表示部34と右目画像表示部36との間を回動可能な略U字状の回動部材112と、回動部材112に連結され、ハーフミラー38の周縁部を支持するフレーム部材114とを有する。
【0062】
なお、回動部材112、フレーム部材114及びハーフミラー38は、観察者20がハンドル110を回して該ハンドル110を軸部108側へ変位させることにより、軸部108を中心とする回動が規制される。この結果、左目画像表示部34及び右目画像表示部36に対して回動部材112、フレーム部材114及びハーフミラー38を所望の角度に固定することができる。
【0063】
また、フレーム部材114には、その開口部分に連通する図示しない溝部が形成されており、前記溝部にハーフミラー38の周縁部が嵌合することにより、該ハーフミラー38をフレーム部材114で保持することができる。
【0064】
立体視眼鏡40は、フレーム118と、該フレーム118に固定された右目46r用の偏光レンズ120rと、該フレーム118に固定された左目46l用の偏光レンズ120lとを有する。
【0065】
そして、3次元画像表示装置22Aは、図5、図7A及び図7Bに示すように、左目画像表示部34の表示画面122に、マンモ14を示すマンモ画像130lを含む左目画像42lを表示する。この場合、表示画面122には、マーカ70を示すマーカ画像76cと、マーカ72を示すマーカ画像80cとが左目画像42lと共に表示されている。また、3次元画像表示装置22Aは、右目画像表示部36の表示画面124に、マンモ14を示すマンモ画像130rを含む右目画像42rを表示する。この場合、表示画面124には、マーカ70を示すマーカ画像76bと、マーカ72を示すマーカ画像80bとが右目画像42rと共に表示されている。
【0066】
ハーフミラー38は、前述したように、2次元画像である左目画像42lの表示光44lを透過させて観察者20の立体視眼鏡40側に出力すると共に、2次元画像である右目画像42rの表示光44rを反射して立体視眼鏡40側に出力する。立体視眼鏡40の偏光レンズ120rは、該偏光レンズ120rの吸収軸に平行な表示光44rのみ透過させ、一方で、偏光レンズ120lは、該偏光レンズ120lの吸収軸に平行な表示光44lのみ透過させる。これにより、立体視眼鏡40を装着した観察者20は、右目46rで表示光44rの示す右目画像42rを視ると共に、左目46lで表示光44lの示す左目画像42lを視るので、図7Cに示す3次元画像(3D画像)140を視認することが可能となる。
【0067】
この場合、観察者20は、表示画面122、124に応じた仮想の表示画面144に写る3次元画像140を視認する。この3次元画像140は、マンモ14(図1、図3及び図4参照)を示す3次元画像表示のマンモ画像142を含む。そして、仮想の表示画面144には、3次元画像140と共に、マーカ70を示すマーカ画像132r、132lと、マーカ72を示すマーカ画像134r、134lとが表示されている。
【0068】
マーカ画像132rは、マーカ画像76bが表示画面144にそのまま写り込んだ画像であると共に、マーカ画像132lは、マーカ画像76cが表示画面144にそのまま写り込んだ画像である。また、マーカ画像134rは、マーカ画像80bが表示画面144にそのまま写り込んだ画像であり、マーカ画像134lは、マーカ画像80cが表示画面144にそのまま写り込んだ画像である。
【0069】
前述したように、マーカ画像132r、132l(76b、76c)に応じたマーカ70は、固体検出器28に対して矢印Z方向に沿ったマンモ14の奥側(最奥部)に配設され、一方で、マーカ画像134r、134l(80b、80c)に応じたマーカ72は、固体検出器28に対して矢印Z方向に沿ったマンモ14の手前側(最前部)に配設されている。また、マーカ画像76b、76cのずれ量Δl1´と、マーカ画像80b、80cのずれ量Δl2´との間には、Δl1´>Δl2´の関係がある。
【0070】
そのため、マーカ画像76b、76c、80b、80cを表示画面144に写し込んで、3次元画像140(のマンモ画像142)と共にマーカ画像132r、132l、134r、134lを表示した際に、マーカ72に応じたマーカ画像134r、134lは、3次元画像140(のマンモ画像142)の奥行方向に沿った手前側(最前部)に表示され、一方で、マーカ70に応じたマーカ画像132r、132lは、マンモ画像142の奥行方向に沿った奥側(最奥部)に表示されることになる。しかも、仮想の表示画面144において、ずれ量Δl1´に対応するマーカ画像132r、132l間のずれ量Δl1と、ずれ量Δl2´に対応するマーカ画像134r、134l間のずれ量Δl2との間にも、Δl1>Δl2の関係が成り立つ。
【0071】
なお、3次元画像140(のマンモ画像142)の奥行方向とは、該マンモ画像142の厚み方向をいい、前述したマンモ14の厚み方向としての矢印Z方向に対応する。また、前述したように、第1実施形態では、2つのマーカ70、72のうち、少なくとも1つのマーカがマンモグラフィ装置18Aに配設されていればよいので、仮想の表示画面144には、4つのマーカ画像132r、132l、134r、134lのうち、少なくとも、マーカ画像132r、132l、あるいは、マーカ画像134r、134lが表示されていればよい。
【0072】
さらに、図7Cでは、マーカ画像132r、132l、134r、134lは、マンモ画像142の外側に表示されているが、観察者20による読影診断の妨げにならない範囲内で、マンモ画像142の内側に表示されるようにしてもよい。この場合、マーカ画像132r、132l、134r、134lがマンモ画像142の内側に表示されるような、マンモグラフィ装置18A内の所定位置にマーカ70、72を配置すればよい。
【0073】
図8は、放射線画像撮影システム10Aの詳細なブロック図である。
【0074】
ここでは、図1〜図7Cで説明しなかった構成要素を中心に説明する。
【0075】
マンモグラフィ装置18Aは、撮影条件記憶部150、放射線源駆動制御部152、検出器制御部154、画像情報記憶部156及び圧迫板駆動制御部158をさらに有する。
【0076】
撮影条件記憶部150は、放射線源26の管電流及び管電圧、放射線16b、16cの照射線量及び照射時間、ステレオ撮影時の撮影角度(+θ1、−θ1)や撮影順序、前記撮影角度における放射線源26の三次元位置(放射線源26と固体検出器28との間の距離)等を含む撮影条件を記憶する。前記撮影条件は、医師又は技師(観察者20)による表示操作部64の操作に起因して撮影条件記憶部150に設定(記憶)することができる。放射線源駆動制御部152は、前記撮影条件に従って放射線源26を駆動制御する。圧迫板駆動制御部158は、圧迫板32を矢印Z方向に移動させる。検出器制御部154は、固体検出器28を制御して、該固体検出器28で放射線16b、16cからそれぞれ変換された右目画像42r及び左目画像42lを画像情報記憶部156に記憶する。
【0077】
3次元画像表示装置22Aは、制御部(表示制御部)160、画像処理部162及び画像情報記憶部164をさらに有する。
【0078】
制御部160は、画像情報記憶部156に記憶された右目画像42r及び左目画像42lを取得し、画像処理部162に対して所定の画像処理を行わせる。また、制御部160は、画像処理後の左目画像42lを左目画像表示部34の表示画面122(図5参照)に表示させると共に、画像処理後の右目画像42rを右目画像表示部36の表示画面124に表示させる。さらに、制御部160は、観察者20による操作部116の操作入力に従った処理も実行可能である。画像情報記憶部164は、画像処理後の右目画像42r及び左目画像42lを記憶する。
【0079】
第1実施形態に係る3次元画像表示装置22A及びマンモグラフィ装置18Aを備えた放射線画像撮影システム10Aの構成は、上述した通りである。
【0080】
次に、該放射線画像撮影システム10Aの動作(3次元画像表示装置22Aにおいて実施される3次元画像表示方法)について、図9のフローチャートを参照しながら説明する。
【0081】
ステップS1において、医師又は技師(観察者20)は、被写体12のマンモ14(図1〜図4及び図8参照)に対するステレオ撮影に先立ち、マンモグラフィ装置18Aの表示操作部64を操作して、撮影条件記憶部150にマンモ14に応じた撮影条件を記憶させる。
【0082】
ステップS2において、医師又は技師は、圧迫板32の基端部を溝部60に挿入して前記取付部と嵌合することにより、放射線源収容部56と撮影台30との間に該圧迫板32を配設する。
【0083】
ステップS3において、医師又は技師は、被写体12のマンモ14のポジショニングを行う。すなわち、医師又は技師は、マンモ14を撮影台30における圧迫板32との対向位置に配置した後、表示操作部64を操作して圧迫板駆動制御部158を駆動させ、矢印Z方向に沿って圧迫板32を撮影台30に向かって移動させる。これにより、マンモ14は、撮影台30及び圧迫板32により圧迫固定される。
【0084】
このようにして、ステップS1〜S3の撮影準備が完了した後のステップS4において、マンモグラフィ装置18Aは、放射線源26を駆動して、マンモ14に対するステレオ撮影を行う。
【0085】
この場合、医師又は技師が表示操作部64を操作して、ステレオ撮影の開始を指示すると、放射線源駆動制御部152は、ヒンジ部58を中心として放射線源収容部56を回動させ、B位置に放射線源26を配置する。次に、医師又は技師が表示操作部64に表示された図示しない曝射スイッチを操作すると、放射線源駆動制御部152は、撮影条件記憶部150に記憶された撮影条件に従って、B位置に配置された放射線源26を駆動制御する。
【0086】
これにより、B位置の放射線源26から出力された放射線16bは、圧迫板32を介してマンモ14に照射され、マンモ14を透過した放射線16bは、固体検出器28によって1枚目の放射線画像(右目画像42r)として検出される。圧迫板32の下部にはマーカ70が配設され、撮影台30における固体検出器28と該撮影台30の上面との間にはマーカ72が配設されているので、放射線16bのうち、マーカ70、72にそれぞれ照射される放射線74b、78bは、マーカ70、72により吸収される。この結果、マーカ70、72の投影像がマーカ画像76b、80bとして右目画像42rにそれぞれ写り込む。
【0087】
検出器制御部154は、固体検出器28を制御して1枚目の放射線画像(右目画像42r)を取得し、取得した右目画像42rを画像情報記憶部156に一旦記憶させる。
【0088】
B位置での右目画像42rの撮影が完了した時点で、マンモグラフィ装置18Aは、今度は、C位置に放射線源26を移動させ、上述したB位置での撮影と同様にして、C位置での2枚目の放射線画像の撮影を実行する。
【0089】
この場合、右目画像42rの撮影完了の通知が表示操作部64に表示されると、医師又は技師は、表示操作部64を操作して、2枚目の放射線画像の撮影開始を指示する。
【0090】
放射線源駆動制御部152は、前記撮影開始の指示に従って、ヒンジ部58を中心として放射線源収容部56を回動させ、B位置からC位置に放射線源26を配置する。次に、医師又は技師が表示操作部64の前記曝射スイッチを操作すると、放射線源駆動制御部152は、前記撮影条件に従って、C位置に配置された放射線源26を駆動制御する。
【0091】
これにより、C位置の放射線源26から出力された放射線16cは、圧迫板32を介してマンモ14に照射され、マンモ14を透過した放射線16cは、固体検出器28によって2枚目の放射線画像(左目画像42l)として検出される。この場合でも、放射線16cのうち、マーカ70、72にそれぞれ照射される放射線74c、78cは、マーカ70、72により吸収されるので、マーカ70、72の投影像は、マーカ画像76c、80cとして左目画像42lにそれぞれ写り込む。検出器制御部154は、固体検出器28を制御して2枚目の放射線画像(左目画像42l)を取得し、取得した左目画像42lを画像情報記憶部156に一旦記憶させる。
【0092】
従って、ステップS4のステレオ撮影が完了した時点で、画像情報記憶部156には、2枚の放射線画像(2次元画像としての右目画像42r及び左目画像42l)がそれぞれ記憶されることになる。
【0093】
このようにして、マンモグラフィ装置18Aにおけるステレオ撮影が完了した後のステップS5において、3次元画像表示装置22A(図1、図5、図6及び図8参照)の制御部160は、観察者20による操作部116の操作に起因した放射線画像の取得指示に基づいて、あるいは、自動的に、マンモグラフィ装置18Aの画像情報記憶部156から右目画像42r及び左目画像42lを取得し、取得した右目画像42r及び左目画像42lを画像処理部162に出力する。画像処理部162は、右目画像42r及び左目画像42lに対して所定の画像処理を行い、画像処理後の右目画像42r及び左目画像42lを制御部160を介して画像情報記憶部164に記憶させる。
【0094】
次のステップS6において、制御部160は、左目画像表示部34の表示画面122に左目画像42lを表示させると共に、右目画像表示部36の表示画面124に右目画像42rを表示させる。これにより、表示画面122に表示された左目画像42lの表示光44lは、ハーフミラー38に向かって斜め上方に進行すると共に、表示画面124に表示された右目画像42rの表示光44rは、ハーフミラー38に向かって下方に進行する(図6参照)。
【0095】
ハーフミラー38は、表示光44lを透過させて観察者20の立体視眼鏡40側に出力すると共に、表示光44rを反射させて立体視眼鏡40側に出力する。これにより、立体視眼鏡40の偏光レンズ120rは、該偏光レンズ120rの吸収軸に平行な表示光44rのみ透過させると共に、偏光レンズ120lは、該偏光レンズ120lの吸収軸に平行な表示光44lのみ透過させる。この結果、立体視眼鏡40を装着した観察者20は、右目46rで表示光44rの示す右目画像42rを視ると共に、左目46lで表示光44lの示す左目画像42lを視ることになるので、3次元画像140(図7C参照)を容易に視認することができる。
【0096】
この場合、マンモ14を示す3次元画像表示のマンモ画像142を含む3次元画像140には、右目画像42rのマーカ画像76b、80b(図7A参照)がそのまま写り込んでマーカ画像132r、134rとして表示されると共に、左目画像42lのマーカ画像76c、80c(図7B参照)がそのまま写り込んでマーカ画像132l、134lとして表示される(図7C参照)。従って、観察者20は、3次元画像140のマンモ画像142と同時に、マーカ画像132r、132l、134r、134lも視認することができる。
【0097】
その際、マーカ72(のマーカ画像80b、80c)に応じたマーカ画像134r、134lは、3次元画像140(のマンモ画像142)の奥行方向に沿った手前側(最前部)に表示され、一方で、マーカ70(のマーカ画像76b、76c)に応じたマーカ画像132r、132lは、マンモ画像142の奥行方向に沿った奥側(最奥部)に表示される。
【0098】
これにより、観察者20は、これらのマーカ画像132r、132l、134r、134lを手掛かりとして(サポートにして)、マンモ画像142の最前部及び最奥部を認識し、該マンモ画像142の奥行範囲を把握することができる。しかも、マーカ画像132r、132l間のずれ量Δl1と、マーカ画像134r、134l間のずれ量Δl2との間で、Δl1>Δl2の関係があるので、どちらのマーカ画像132r、132l、134r、134lがマンモ画像142の手前側又は奥側であるのかを容易に判断することができ、この結果、マンモ画像142に対する空間把握が一層容易なものとなる。
【0099】
以上説明したように、第1実施形態に係る3次元画像表示装置22A、及び、3次元画像表示方法によれば、3次元画像140(のマンモ画像142)の奥行方向に沿った手前側及び奥側のうち、少なくとも一方に3次元画像140と共に写るマーカ画像132r、132l、134r、134lが表示される。
【0100】
これにより、観察者20は、マーカ画像132r、132l、134r、134lを視認することで、3次元画像140(のマンモ画像142)の奥行範囲を明確に認識することができ、該3次元画像140の空間把握が容易となる。すなわち、観察者20は、3次元画像140を安定的に視認する際のサポートとしてマーカ画像132r、132l、134r、134lを利用することで、3次元画像140の手前側と奥側とを容易に把握して、該3次元画像140の奥行範囲を明確に認識することが可能となる。この結果、3次元画像140を視認する際に、観察者20の視線が安定化すると共に、該観察者20の疲労感を低減することができる。
【0101】
従って、第1実施形態によれば、3次元画像140の手前側又は奥側にマーカ画像132r、132l、134r、134lを表示することにより、3次元画像140の奥行方向に沿った手前側及び奥側を容易に把握することができると共に、観察者20の視点を安定化させて、該観察者20の疲労感を軽減することが可能となる。
【0102】
この場合、3次元画像140の奥行方向に沿った最前部及び最奥部のうち、少なくとも一方にマーカ画像132r、132l、134r、134lを表示することにより、観察者20の視線の安定化や疲労感の軽減を容易に実現することができる。
【0103】
また、右目画像42rや左目画像42lにノイズが存在する場合、通常は、視野角が揃わないので、該ノイズが立体視されることはない。しかしながら、僅かではあるが、立体視される関係となるノイズが存在する場合があり、このときには、立体視像(3次元画像140)の上でもノイズとなる。読影診断では小さな点も診断対象とするため、当該ノイズは極力低減できることが望ましい。このようなノイズが、マーカ画像132r、132lの表示される最奥部よりも深い(奥側)の箇所、あるいは、マーカ画像134r、134lの表示される最前部よりも浅い(前側の)箇所であれば、該ノイズを取り除くことができる。
【0104】
また、3次元画像140の奥行方向に沿った手前側及び奥側の双方にマーカ画像132r、132l、134r、134lをそれぞれ表示すれば、観察者20は、3次元画像140を視認した際に、該3次元画像140のマンモ画像142に対してボリューム感(奥行感)を感じやすくなるので、観察者20の視線のさらなる安定化や疲労感のさらなる軽減を図ることができる。
【0105】
さらに、右目画像表示部36にマーカ画像76b、80bを含む右目画像42rを表示させ、左目画像表示部34にマーカ画像76c、80cを含む左目画像42lを表示させることにより、マンモ画像142と共に、マーカ画像132r、132l、134r、134lを確実に表示させることができる。これにより、3次元画像140の奥行方向に沿った手前側及び奥側に2つのマーカ画像が表示されるので、観察者20は、3次元画像140の奥行範囲を容易に認識することができる。
【0106】
さらにまた、放射線源26とマンモ14との間や、マンモ14と固体検出器28との間にマーカ70、72を配置し、放射線16b、16cの照射時に、マーカ70、72の画像をマーカ画像76b、76c、80b、80cとして右目画像42r及び左目画像42lにそれぞれ写り込ませることで、マーカ画像76b、76c、80b、80cに応じたマーカ画像132r、132l、134r、134lを容易に得ることができる。
【0107】
また、ステレオ撮影により得られた右目画像42r及び左目画像42lや、3次元画像140を医師である観察者20が読影診断する際には、下記の順序で画像診断が行われ、以下に示すさらなる顕著な効果を得ることができる。
【0108】
先ず、観察者20は、右目画像42r及び左目画像42lを読影診断する。この場合、右目画像42r及び左目画像42lには、マーカ画像76b、76c、80b、80cが表示されている。従って、その後、3次元画像140が表示されて、マーカ画像76b、76c、80b、80cに応じたマーカ画像132r、132l、134r、134lがマンモ画像142と共に表示された場合でも、観察者20は、マーカ画像132r、132l、134r、134lを手掛かりにして3次元画像140に対する読影診断を行うことが可能となる。
【0109】
次に、医師は、3次元画像140を読影診断する。この場合、3次元画像140には、マーカ画像132r、132l、134r、134lがマンモ画像142と共に表示されているので、マンモ画像142の奥行範囲が認識しやすくなると共に、マーカ画像132r、132l、134r、134lが読影診断中における観察者20の視点を安定化させるためのサポートとなる。この結果、読影診断中における観察者20の視線の安定性や疲労感の軽減が図られるので、3次元画像140に対する診断性能を向上させることができる。
【0110】
さらに、マーカ70、72がマンモ14とは異なる形状であると共に、放射線16b、16cを吸収可能であるため、観察者20が3次元画像140に対する読影診断を行う際に、マンモ画像142と、マーカ画像132r、132l、134r、134lとを容易に区別することができる。
【0111】
なお、図7A〜図7Cでは、一例として、マーカ画像76b、76c、132r、132l(に応じたマーカ70)の形状が三角形状であると共に、マーカ画像80b、80c、134r、134l(に応じたマーカ72)の形状が球状である場合について図示したが、第1実施形態は、この一例に限定されるものではなく、図10A及び図10Bに変更することも可能である。
【0112】
図10Aは、マーカ70に応じた矩形状のマーカ画像170r、170lと、マーカ72に応じた線状のマーカ画像172r、172lとを3次元画像140に表示させた場合を図示している。また、図10Bは、マーカ70に応じた枠状のマーカ画像174r、174lと、マーカ72に応じたリング状のマーカ画像176r、176lとを3次元画像140に表示させた場合を図示している。これらの変形例においても、上述した各効果を容易に得ることができる。
【0113】
また、図1〜図10Bでは、マンモ14に対するステレオ撮影について説明したが、図11A〜図12Cに示すように、被写体180に対する一般撮影(胸部撮影)に第1実施形態を適用することも可能である。
【0114】
この場合、固体検出器182を収容する撮影台184と、放射線源186との間に被写体180を配置した状態でステレオ撮影を行う。
【0115】
この場合、中心軸194のD位置(θ=0°)に対して+θ1の角度だけ回転したE位置に放射線源186を配置して、被写体180に対する放射線188eの照射を行い、その後、D位置に対して−θ1の角度だけ回転したF位置に放射線源186を配置して、被写体180に対する放射線188fの照射を行う。
【0116】
被写体180には、放射線188e、188fの照射範囲内であって、放射線源186側の位置(被写体180の背中)にマーカ190が貼着され、一方で、放射線188e、188fの照射範囲内であって、撮影台184側の位置(被写体180の胸部)にマーカ192が貼着されている。
【0117】
従って、E位置に配置された放射線源186から被写体180に対して放射線188eを照射した際に、該放射線188eのうち、マーカ190に照射される放射線196eは、該マーカ190によって吸収され、この結果、右目画像210rには、該マーカ190の投影像がマーカ画像198eとして写り込む(図12A参照)。また、放射線188eのうち、マーカ192に照射される放射線200eは、該マーカ192によって吸収され、この結果、右目画像210rには、該マーカ192の投影像がマーカ画像202eとして写り込む。なお、図12Aにおいて、右目画像210rは、被写体180の胸部画像212rを含む2次元画像である。
【0118】
一方、F位置に配置された放射線源186から被写体180に対して放射線188fを照射した際に、該放射線188fのうち、マーカ190に照射される放射線196fは、該マーカ190によって吸収され、この結果、左目画像210lには、該マーカ190の投影像がマーカ画像198fとして写り込む(図12B参照)。また、放射線188fのうち、マーカ192に照射される放射線200fは、該マーカ192によって吸収され、この結果、左目画像210lには、該マーカ192の投影像がマーカ画像202fとして写り込む。なお、図12Bにおいて、左目画像210lは、被写体180の胸部画像212lを含む2次元画像である。
【0119】
この結果、立体視眼鏡40を装着した観察者20(図5及び図6参照)は、右目46rで右目画像210rを視ると共に、左目46lで左目画像210lを視て、図12Cに示す3次元画像218を視認した際に、仮想の表示画面144には、胸部画像212r、212lに応じた胸部画像220が表示されると共に、マーカ画像198e、198f、202e、202fが表示画面144にそのまま写り込んだマーカ画像214r、214l、216r、216lも表示される。なお、図12Cにおいて、マーカ画像214r、214l間のずれ量Δl3と、マーカ画像216r、216l間のずれ量Δl4との間でも、Δl3>Δl4の関係が成り立つ。
【0120】
このような一般撮影でのステレオ撮影においても、3次元画像218(の胸部画像220)に対する読影診断の際に、該3次元画像218にマーカ画像214r、214l、216r、216lが写り込んでいるので、上述したマンモ14の3次元画像140に対する読影診断の場合と同様に、被写体180に対する診断性能を向上させることができる。
【0121】
以上説明した第1実施形態では、マンモ14又は被写体180の近傍にマーカ70、72、190、192を配置し、マンモ14及びマーカ70、72に対して放射線16b、16cを照射し、あるいは、被写体180及びマーカ190、192に対して放射線188e、188fを照射することに起因して、3次元画像140、218、及び、マーカ画像132r、132l、134r、134l、170r、170l、172r、172l、174r、174l、176r、176l、214r、214l、216r、216lを得るものであった。すなわち、第1実施形態は、ハードウェア的にマンモグラフィ装置18Aにマーカ70、72、190、192に配設することにより、マーカ画像132r、132l、134r、134l、170r、170l、172r、172l、174r、174l、176r、176l、214r、214l、216r、216lを得る技術である。
【0122】
次に、このようなハードウェア的なマーカ70、72、190、192ではなく、ソフトウェア的に仮想的なマーカを設定し、この仮想的なマーカに基づいて、マーカ画像を生成し3次元画像と共に表示させる技術(第2実施形態)について説明する。すなわち、第2実施形態に係る3次元画像表示装置22B及びマンモグラフィ装置18Bを備えた放射線画像撮影システム10Bについて、図13〜図15を参照しながら説明する。なお、図13〜図15の説明において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ参照符号を付けて、詳細な説明を省略する。
【0123】
図13に示すように、マンモグラフィ装置18Bには、マーカ70、72(図2〜図4及び図8参照)やマーカ190、192(図11A及び図11B参照)が設けられておらず、従って、画像情報記憶部156に記憶される右目画像42r及び左目画像42lには、いずれも、マーカ画像が写り込んでいないことは勿論である。また、マンモグラフィ装置18Bは、撮影台30に対する圧迫板32の位置を算出する圧迫板位置情報算出部230をさらに有する。なお、圧迫板32及び撮影台30によってマンモ14が圧迫保持されているときの圧迫板32の位置は、圧迫保持状態のマンモ14の厚みdを示しているので、圧迫板位置情報算出部230は、算出した圧迫板32の位置(マンモ14の厚みd)を制御部160に出力する。
【0124】
また、3次元画像表示装置22Bは、マーカ位置ずれ量算出部232をさらに有する。制御部160は、圧迫板位置情報算出部230から圧迫板32の位置を取得すると共に、撮影条件記憶部150から撮影条件に含まれる撮影角度+θ1、−θ1や放射線源26と固体検出器28との間の距離Lも取得し、取得したこれらの情報をマーカ位置ずれ量算出部232に出力する。
【0125】
マーカ位置ずれ量算出部232は、圧迫板32の位置(マンモ14の厚みd)、撮影角度+θ1、−θ1、及び、距離Lに基づいて、マーカ画像76b、76c間のずれ量Δl1´と、マーカ画像80b、80c間のずれ量Δl2´とを求める。この場合、ステレオ撮影時におけるマンモ14の厚みd、撮影角度+θ1、−θ1及び距離Lや、圧迫板32、撮影台30及び固体検出器28の各サイズは、既知であるため、マーカ位置ずれ量算出部232は、図14に示すように、マーカ70に対応する仮想的なマーカ234と、マーカ72に対応する仮想的なマーカ236とを設定し、設定した仮想的なマーカ234、236を矢印X方向、矢印Y方向及び矢印Z方向に移動させながら、移動したマーカ234、236の位置での各ずれ量Δl1´、Δl2´を算出する。従って、マーカ位置ずれ量算出部232は、仮想的なマーカ234、236を矢印Z方向に移動させながら、ずれ量Δl1´の最大値や、ずれ量Δl2´の最小値を算出することも可能である。
【0126】
なお、ずれ量Δl1´の最大値は、仮想的なマーカ234がマンモ14に最も近接したとき、すなわち、固体検出器28に対して仮想的なマーカ234がマンモ14における矢印Z方向に沿った最奥部(奥側)に位置したときに得られる。また、ずれ量Δl2´の最小値は、仮想的なマーカ236がマンモ14に最も近接したとき、すなわち、固体検出器28に対して仮想的なマーカ236がマンモ14における矢印Z方向に沿った最前部(手前側)に位置したときに得られる。
【0127】
また、マーカ位置ずれ量算出部232では、各ずれ量Δl1´、Δl2´に加え、右目画像42rにおけるマーカ画像76b、80bの位置や、左目画像42lにおけるマーカ画像76c、80cの位置も算出することは勿論である。
【0128】
そして、制御部160は、マーカ位置ずれ量算出部232にて算出された、各マーカ画像76b、76c、80b、80cの位置や、各ずれ量Δl1´、Δl2´を画像処理部162に出力して、画像処理部162に対して、右目画像42rにマーカ画像76b、80bを写り込ませる画像処理を行わせると共に、左目画像42lにマーカ画像76c、80cを写り込ませる画像処理を行わせる。さらに、制御部160は、画像処理後の右目画像42rを右目画像表示部36の表示画面124に表示させると共に、画像処理後の左目画像42lを左目画像表示部34の表示画面122に表示させる。
【0129】
次に、第2実施形態に係る3次元画像表示装置22Bの動作(3次元画像表示方法)について、図9及び図15のフローチャートを参照しながら説明する。
【0130】
ステップS4後のステップS7において、制御部160は、画像情報記憶部156からマーカ画像の写り込んでいない右目画像42r及び左目画像42lを取得し、圧迫板位置情報算出部230から圧迫板32の位置を取得し、さらに、撮影条件記憶部150から撮影角度+θ1、−θ1及び放射線源26と固体検出器28との間の距離Lを取得する。制御部160は、取得した右目画像42r及び左目画像42lを画像処理部162に出力する一方で、圧迫板32の位置、撮影角度+θ1、−θ1及び距離Lをマーカ位置ずれ量算出部232に出力する。
【0131】
ステップS8において、マーカ位置ずれ量算出部232は、仮想的なマーカ234、236を設定し、設定した仮想的なマーカ234、236を矢印X方向、矢印Y方向及び矢印Z方向に移動させながら、移動したマーカ234、236の位置での各ずれ量Δl1´、Δl2´を、圧迫板32の位置(マンモ14の厚みd)、撮影角度+θ1、−θ1、及び、距離Lに基づき算出する。この場合、マーカ位置ずれ量算出部232は、ずれ量Δl1´、Δl2´を算出した際の右目画像42rにおけるマーカ画像76b、80bの位置や、左目画像42lにおけるマーカ画像76c、80cの位置も算出する。
【0132】
そして、マーカ位置ずれ量算出部232は、得られた各ずれ量Δl1´、Δl2´から、ずれ量Δl1´の最大値及び該最大値におけるマーカ画像76b、76cの各位置と、ずれ量Δl2´の最小値及び該最小値におけるマーカ画像80b、80cの各位置とを求める。
【0133】
次のステップS9において、制御部160は、観察者20による操作部116の操作に起因したマーカ画像132r、132l、134r、134lの表示/非表示の指示を受けているか否かを判定し、マーカ画像132r、132l、134r、134lの表示指示を受けている場合には(ステップS9:YES)、マーカ位置ずれ量算出部232において得られた、ずれ量Δl1´の最大値、該最大値におけるマーカ画像76b、76cの各位置、ずれ量Δl2´の最小値、及び、該最小値におけるマーカ画像80b、80cの各位置を画像処理部162に出力し、該画像処理部162に対して、右目画像42rにマーカ画像76b、80bを写り込ませる画像処理を行わせると共に、左目画像42lにマーカ画像76c、80cを写り込ませる画像処理を行わせる(ステップS10)。画像処理後の右目画像42r及び左目画像42lは、画像情報記憶部164に記憶される。
【0134】
そして、制御部160は、ステップS6の画像表示処理を行って、図7Cに示すマーカ画像132r、132l、134r、134lの写り込んだ3次元画像140を表示させる。この場合、マーカ画像132r、132l、134r、134lは、前述した仮想的なマーカ234、236に基づき生成されたマーカ画像76b、76c、80b、80cを仮想の表示画面144にそのまま表示させたものであり、従って、マーカ画像132r、132lのずれ量Δl1は、上述したずれ量Δl1´の最大値に応じた最大値となり、マーカ画像134r、134lのずれ量Δl2は、上述したずれ量Δl2´の最小値に応じた最小値となる。
【0135】
なお、ステップS9において、マーカ画像132r、132l、134r、134lの非表示指示を受けている場合には(ステップS9:NO)、制御部160は、ずれ量Δl1´の最大値、該最大値におけるマーカ画像76b、76cの各位置、ずれ量Δl2´の最小値、及び、該最小値におけるマーカ画像80b、80cの各位置の画像処理部162への出力は行わず、マーカ画像の写り込んでいない右目画像42r及び左目画像42lを用いた3次元画像140のみの画像表示処理を行う(ステップS6)。
【0136】
以上説明したように、第2実施形態に係る3次元画像表示装置22B、及び、3次元画像表示方法によれば、マーカ位置ずれ量算出部232は、マンモ22の厚みd、撮影角度+θ1、−θ1、及び、放射線源26と固体検出器28との間の距離Lに基づいて、ずれ量Δl1´、Δl2´を算出し、制御部160は、ずれ量Δl1´を示すマーカ画像76b、80bが写り込んだ右目画像42rを右目画像表示部36に表示させると共に、ずれ量Δl2´を示すマーカ画像76c、80cが写り込んだ左目画像42lを左目画像表示部34に表示させる。従って、これらのずれ量Δl1´、Δl2´に応じたずれ量Δl1、Δl2のマーカ画像132r、132l、134r、134lが3次元画像140と共に表示される。この結果、観察者20は、3次元画像140に対する読影診断を効率よく行うことが可能となる。
【0137】
また、マーカ位置ずれ量算出部232は、ずれ量Δl1´の最大値や、ずれ量Δl2´の最小値を算出するので、3次元画像140には、ずれ量Δl1´の最大値に基づく(最大のずれ量Δl1の)マーカ画像132r、132lが表示されると共に、ずれ量Δl2´の最小値に基づく(最小のずれ量Δl2の)マーカ画像134r、134lが表示される。これにより、観察者20は、3次元画像140を視認した際に、該3次元画像140に対してボリューム感(奥行感)を感じやすくなる。この結果、観察者20の視線の安定化や疲労感の軽減を容易に図ることができ、該3次元画像140に対する診断性能をさらに向上させることができる。
【0138】
また、観察者20が操作部116を操作して、マーカ画像132r、132l、134r、134lの表示/非表示を制御部160に指示可能であるため、観察者20による読影診断を一層効率よく行うことが可能となる。
【0139】
なお、第2実施形態において、制御部160は、右目画像42r及び左目画像42lの形状及び/又は大きさに基づいて、マーカ画像76b、76c、80b、80cの形状及び/又は大きさを変更するように画像処理部162に指示してもよい。このような機能を3次元画像表示装置22Bにさらに付加することにより、観察者20による読影診断を一層効率よく行うことが可能となる。
【0140】
また、前述したように、マーカ位置ずれ量算出部232は、仮想的なマーカ234、236を矢印X方向、矢印Y方向及び矢印Z方向に移動させたときのずれ量Δl1´、Δl2´や、該ずれ量Δl1´、Δl2´に応じたマーカ画像76b、76c、80b、80cの位置を算出する。そこで、制御部160は、マーカ位置ずれ量算出部232の算出結果を用い、右目画像42r及び左目画像42lの形状及び/又は大きさに基づいて、マーカ画像76b、76c、80b、80cの位置を変更するように画像処理部162に指示することも可能となる。これにより、3次元画像140における、奥行方向に沿ったマーカ画像132r、132l、134r、134lの位置を変更することが可能となり、観察者20による読影診断を一層効率よく行うことが可能となる。
【0141】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0142】
10A、10B…放射線画像撮影システム
12、180…被写体
14…マンモ
16b、16c、74b、74c、78b、78c、188e、188f、196e、196f、200e、200f…放射線
18A、18B…マンモグラフィ装置
20…観察者
22A、22B…3次元画像表示装置
26、186…放射線源
28、182…固体検出器
30、184…撮影台
32…圧迫板
34…左目画像表示部
36…右目画像表示部
38…ハーフミラー
40…立体視眼鏡
42l、210l…左目画像
42r、210r…右目画像
44l、44r…表示光
46l…左目
46r…右目
70、72、190、192、234、236…マーカ
76b、76c、80b、80c、132l、132r、134l、134r、170l、170r、172l、172r、174l、174r、176l、176r、198e、198f、202e、202f、214l、214r、216l、216r…マーカ画像
107…ハーフミラー支持機構
116…操作部
120r、120l…偏光レンズ
122、124、144…表示画面
130l、130r、142…マンモ画像
140、218…3次元画像
150…撮影条件記憶部
160…制御部
212l、212r…胸部画像
230…圧迫板位置情報算出部
232…マーカ位置ずれ量算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の右目用の2次元画像である右目画像を表示する右目画像表示部と、
前記観察者の左目用の2次元画像である左目画像を表示する左目画像表示部と、
前記右目画像及び前記左目画像に基づく3次元画像を前記観察者に視認させる3次元画像表示部と、
前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側のうち、少なくとも一方に、前記3次元画像と共に写るマーカ画像を前記3次元画像表示部に表示させる表示制御部と、
を有することを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、
前記表示制御部は、前記3次元画像の前記奥行方向に沿った最前部及び最奥部のうち、少なくとも一方に前記マーカ画像を表示させることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の装置において、
前記表示制御部は、前記3次元画像の前記奥行方向に沿った手前側及び奥側に前記マーカ画像をそれぞれ表示させることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置において、
前記表示制御部は、前記右目画像表示部に前記右目画像及び右目用マーカ画像を表示させ、前記左目画像表示部に前記左目画像及び左目用マーカ画像を表示させることにより、前記3次元画像表示部に前記3次元画像、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を共に表示させることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項5】
請求項4記載の装置において、
前記右目画像は、放射線検出器に対する一方の角度から放射線源が被写体を介して前記放射線検出器に放射線を照射した際に、前記被写体を透過した前記放射線を前記放射線検出器が検出することにより取得した一方の放射線画像であり、
前記左目画像は、前記放射線検出器に対する他方の角度から前記放射線源が前記被写体を介して前記放射線検出器に放射線を照射した際に、前記被写体を透過した前記放射線を前記放射線検出器が検出することにより取得した他方の放射線画像であり、
前記放射線源と前記被写体との間、及び、前記被写体と前記放射線検出器との間のうち、少なくとも一方にマーカが配置されている場合に、
前記右目用マーカ画像は、前記一方の角度から前記放射線源が前記被写体及び前記マーカに前記放射線を照射したときに、前記一方の放射線画像に写り込む前記マーカの画像であり、
前記左目用マーカ画像は、前記他方の角度から前記放射線源が前記被写体及び前記マーカに前記放射線を照射したときに、前記他方の放射線画像に写り込む前記マーカの画像であることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の装置において、
前記放射線検出器は、前記被写体の乳房を保持する撮影台に収容され、
前記乳房は、前記放射線源側から前記撮影台に指向して変位する圧迫板と該撮影台とによって圧迫され、
前記マーカは、前記圧迫板、及び、前記撮影台における前記乳房側と前記放射線検出器との間のうち、少なくとも一方に設けられ、
前記圧迫板と前記撮影台とによって前記乳房が圧迫保持された状態で、前記放射線源から前記乳房を介して前記放射線検出器に前記放射線が照射されることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項7】
請求項5記載の装置において、
前記放射線検出器は、前記被写体に対向する撮影台に収容され、
前記マーカは、前記被写体における前記放射線源側及び前記撮影台側のうち、少なくとも一方に配置されることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の装置において、
前記マーカは、前記被写体とは異なる形状であると共に、前記放射線を吸収可能であることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項9】
請求項4記載の装置において、
前記右目画像は、放射線検出器に対する一方の角度から放射線源が被写体を介して前記放射線検出器に放射線を照射した際に、前記被写体を透過した前記放射線を前記放射線検出器が検出することにより取得した一方の放射線画像であり、
前記左目画像は、前記放射線検出器に対する他方の角度から前記放射線源が前記被写体を介して前記放射線検出器に放射線を照射した際に、前記被写体を透過した前記放射線を前記放射線検出器が検出することにより取得した他方の放射線画像であり、
前記3次元画像表示装置は、前記被写体の厚み、前記一方の角度、前記他方の角度、及び、前記放射線源と前記放射線検出器との間の距離に基づいて、前記右目用マーカ画像と前記左目用マーカ画像とのずれ量を算出するずれ量算出部をさらに有し、
前記表示制御部は、前記ずれ量に基づいて、前記右目画像表示部に前記右目用マーカ画像を表示させると共に、前記左目画像表示部に前記左目用マーカ画像を表示させることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項10】
請求項9記載の装置において、
前記ずれ量算出部は、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を前記奥行方向に沿った最前部に表示させる際の最小ずれ量を算出するか、並びに/又は、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像を前記奥行方向に沿った最奥部に表示させる際の最大ずれ量を算出することを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載の装置において、
前記右目画像表示部での前記右目用マーカ画像の表示、及び、前記左目画像表示部での前記左目用マーカ画像の表示の可否を前記表示制御部に指示する表示指示部をさらに有することを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の装置において、
前記表示制御部は、前記右目画像及び前記左目画像の形状及び/又は大きさに基づいて、前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像の形状及び/又は大きさを変更可能であることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか1項に記載の装置において、
前記表示制御部は、前記右目画像及び前記左目画像の形状及び/又は大きさに基づいて、前記奥行方向に沿った前記右目用マーカ画像及び前記左目用マーカ画像の表示位置を変更可能であることを特徴とする3次元画像表示装置。
【請求項14】
観察者の右目用の2次元画像である右目画像を右目画像表示部に表示すると共に、前記観察者の左目用の2次元画像である左目画像を左目画像表示部に表示し、且つ、前記右目画像及び前記左目画像に基づく3次元画像を3次元画像表示部により前記観察者に視認させる場合に、
前記3次元画像の奥行方向に沿った手前側及び奥側のうち、少なくとも一方に、前記3次元画像と共に写るマーカ画像を前記3次元画像表示部に表示することを特徴とする3次元画像表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−172713(P2011−172713A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38596(P2010−38596)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】