説明

3色成形方法

【課題】ボックスの開口を覆うように組み付けられるパネルと、このパネルの一部に設けられる透明板と、この透明板の内面側とボックスの内部に配置された表示手段の表示面との間を密封するためのクッションとを、異なる3つの樹脂部材によって3色成形する場合でも、透明板を通したときの表示手段の視認性が悪化することを防止できる3色成形方法を提供すること。
【解決手段】3色成形方法は、パネルXを射出成形する第1の成形工程と、透明板Yを射出成形する第2の成形工程と、透明板Yの内面側の縁にクッションZを射出成形する第3の成形工程とを備えている。第2の成形工程では、透明板Yの内面側の縁にフランジY1が一体的に成形されるように透明板Yの成形キャビティ10を形成し、この形成した成形キャビティ10のうち、フランジY1が成形される成形キャビティ10から樹脂を射出して透明板Yを成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3色成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のインストルメントパネルには、車両内に設けられた電装品を操作するためのコントロールユニットが組み付けられている。このコントロールユニットは、例えば、内部に表示手段(例えば、液晶ディスプレ)が配置されているボックスと、このボックスの開口を覆うように組み付けられる樹脂製のパネル(例えば、ヒーコンパネル)とから構成されている。そして、このコントロールユニットは、乗員がパネルの一部に設けられた樹脂製の透明板を通して表示手段の表示内容を見ながら、パネルに設けられているスイッチを操作することができるように構成されている。例えば、車両内に設けられた電装品が車両内の空調設備である場合、乗員が車内の温度表示を見ながら、空調の調節スイッチを操作することができるように構成されている。この透明板の内面側と表示手段の表示面との間には、これら両面の間を密封するために略矩形枠状に形成された樹脂製のクッションが配置されている。これにより、表示手段の表示面に車室内からの塵や煙草の煙等が付着することを防止することができるため、表示手段の視認性が悪化することを防止できる。なお、特許文献1には、3色成形によって樹脂部材を成形する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−108450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したパネル、透明板およびクッションを特許文献1に示される3色成形によって、例えば、パネル、透明板、クッションの順に成形する場合、透明板を成形するためのゲート(樹脂流路)がクッションを成形するキャビティを横切る格好となるため、上述した密封ができなくなり、結果として、表示手段の視認性が悪化するという問題が発生していた。また、例えば、パネル、クッション、透明板の順に成形する場合、透明板を成形するためのゲートが透明板の内面側に配置される格好となるため、出来上がった透明板の内面側にヒケが生じることとなり、結果として、表示手段の視認性が悪化するという問題が発生していた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、ボックスの開口を覆うように組み付けられるパネルと、このパネルの一部に設けられる透明板と、この透明板の内面側とボックスの内部に配置された表示手段の表示面との間を密封するためのクッションとを、異なる3つの樹脂部材によって3色成形する場合でも、透明板を通したときの表示手段の視認性が悪化することを防止できる3色成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、厚み方向に貫通孔を有するようにパネルを射出成形する第1の成形工程と、第1の成形工程によって成形されたパネルの貫通孔を塞ぐように透明板を射出成形する第2の成形工程と、第2の成形工程によって成形された透明板の内面側の縁にクッションを射出成形する第3の成形工程と、を備えており、第2の成形工程において、透明板の内面側の縁にフランジが一体的に成形されるように透明板の成形キャビティを形成し、この形成した成形キャビティのうち、フランジが成形される成形キャビティから樹脂を射出して透明板を成形し、第3の成形工程において、透明板におけるフランジの内面側にクッションを射出成形することを特徴とする方法である。
この方法によれば、透明板とクッションとを備えたパネルを3色成形するとき、透明板の内面側の縁にフランジが一体的に成形されるように透明板を成形するキャビティを形成し、この形成したキャビティのうち、フランジが成形されるキャビティから溶融樹脂を流し込んで透明板を成形することができる。そのため、パネル、透明板、クッションの順に成形する場合でも、透明板を成形するためのゲートがクッションを成形するキャビティを横切る格好となることがないため、従来技術で説明した密封ができなくなることがない。したがって、表示手段の視認性が悪化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の実施例に係る3色成形方法を説明する成形金型の模式図であり、成形金型が初期状態にあるときを示している。
【図2】図2は、図1の次工程を説明する図である。
【図3】図3は、図2の次工程を説明する図である。
【図4】図4は、図3の次工程を説明する図である。
【図5】図5は、図4の次工程を説明する図である。
【図6】図6は、(A)は、本発明の3色成形方法によって成形したヒーコンパネルをボックスに組み付けた状態の正面図であり、(B)は、(A)のVIB−VIB線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態を、図1〜6を用いて説明する。この実施例では、成形金型1によって、透明板YとクッションZとを備えたヒーコンパネルXを3色成形する方法を説明する。はじめに、図1を参照して、成形金型1の構成を説明する。
【0009】
成形金型1は、固定型2と、この固定型2に対して4本のロッド3、・・・3を介して型締め方向と型開き方向にスライド可能な可動型4とから構成されている。以下に、これら固定型2と可動型4とを個別に説明していく。
【0010】
まず、固定型2から説明する。固定型2は、床フロアに固定されるベース(いずれも図示しない)に組み付けられる固定側の型である。この固定型2には、後述する可動型4と向かい合う面にキャビティ10が形成されている。このキャビティ10は、ヒーコンパネルXを成形するための凹み空間だけでなく、透明板Yを成形するための第1の入れ子12と、クッションZを成形するための第2の入れ子14とを配置させる凹み空間を兼ねた構成となっている。
【0011】
この第1の入れ子12には、凸部12aが形成されている。これにより、ヒーコンパネルXを成形するとき、ヒーコンパネルXの厚み方向に貫通する貫通孔X1を形成することができるだけでなく、透明板Yを成形するとき、透明板Yの内面側(背面側)の縁にフランジY1を形成することができる。一方、第2の入れ子14は、第1の入れ子12の縁に接する格好を成すように(摺動可能に)形成されている。
【0012】
また、この固定型2には、キャビティ10に配置させた第1の入れ子12を可動型4のスライド方向(型締め方向、型開き方向)にスライドさせることができる駆動源としての第1の可動プレート16と、キャビティ10に配置させた第2の入れ子14を可動型4のスライド方向にスライドさせることができる駆動源としての第2の可動プレート18とを備えている。なお、これら第1の可動プレート16と第2の可動プレート18とは、上述した第1の入れ子12と第2の入れ子14とにそれぞれ締結されている。これにより、第1の入れ子12と第2の入れ子14とを個別にスライドさせることができる。
【0013】
また、この固定型2には、例えば、ポリカーボネートから成る光透過性を有する透明板Yを射出成形するための第2の射出ユニット20と、例えば、エラストマ樹脂から成る軟質材であるクッションZを射出成形するための第3の射出ユニット24とが設けられている。この第1の射出ユニット20のゲート(樹脂流路)22は、キャビティ10のうち、透明板YのフランジY1を成形するキャビティ10に連通するように構成されている。一方、この第2の射出ユニット24のゲート(樹脂流路)26も、キャビティ10のうち、クッションZを成形するキャビティ10に連通するように構成されている。
【0014】
次に、可動型4を説明する。可動型4は、図示しないシリンダによって、上述した固定型2に対して型締め方向と型開き方向にスライドさせることができる可動側の型である。この可動型4には、例えば、ABS樹脂から成る不透明の意匠パネルであるヒーコンパネルXを射出成形するための第1の射出ユニット30が設けられている。この第1の射出ユニット30のゲート(樹脂流路)32は、キャビティ10のうち、両型2、4を型締したときのキャビティ10に連通するように構成されている。
【0015】
成形金型1は、上述した固定型2と可動型4とから構成されている。
【0016】
続いて、図1〜5を参照して、上述した成形金型1によって、透明板YとクッションZとを備えたヒーコンパネルXを3色成形する方法(成形と同時に組み付けを行う方法)を説明する。まず、図1に示す状態から、固定型2と可動型4との型締めを行う。次に、この型締め状態のまま、キャビティ10の形状がヒーコンパネルXの形状を成すように、両可動プレート16、18を両入れ子12、14がキャビティ10側に進出する方向にスライドさせる。
【0017】
そして、このスライドさせた状態のまま、第1の射出ユニット30からキャビティ10に溶融樹脂を流し込み、流し込んだ溶融樹脂を冷却固化させる(図2参照)。これにより、ヒーコンパネルXが成形される。この記載が、特許請求の範囲に記載の「第1の成形工程」に相当する。
【0018】
次に、図2に示す状態から、キャビティ10の形状が透明板Yの形状を成すように、両可動プレート16、18を両入れ子12、14がキャビティ10側から退行する方向にスライドさせる。そして、このスライドさせた状態のまま、第2の射出ユニット20からキャビティ10に溶融樹脂を流し込み、流し込んだ溶融樹脂を冷却固化させる(図3参照)。これにより、透明板YがヒーコンパネルXの貫通孔X1に一体的に成形される。このとき、透明板Yの内面側(背面側)の縁にフランジY1も一体的に成形される。この記載が、特許請求の範囲に記載の「第2の成形工程」に相当する。
【0019】
続いて、図3に示す状態から、キャビティ10の形状がクッションZの形状を成すように、第2の可動プレート18を第2の入れ子14がキャビティ10側からさらに退行する方向にスライドさせる。そして、このスライドさせた状態のまま、第3の射出ユニット24からキャビティ10に溶融樹脂を流し込み、流し込んだ溶融樹脂を冷却固化させる(図4参照)。これにより、クッションZが透明板YのフランジY1の内面側(背面側)に一体的に成形される。すなわち、透明板YとクッションZとを備えたヒーコンパネルXが成形される。この記載が、特許請求の範囲に記載の「第3の成形工程」に相当する。
【0020】
最後に、図4に示す状態から、固定型2と可動型4との型開きを行って、透明板YとクッションZとを備えたヒーコンパネルXを取り出す。このようにして、ヒーコンパネルXが出来上がる。なお、出来上がったヒーコンパネルXのゲート32に相当する部位X2は、カットして再利用されることとなる。
【0021】
次に、図6の(A)、(B)を参照して、出来上がったヒーコンパネルXをコントロールユニット40に適用した例を説明する。この例では、コントロールユニット40は、従来技術の説明と同様に、内部に液晶ディスプレ44が配置されているボックス42と、このボックス42の開口を覆うように組み付けられるヒーコンパネルXとから構成されている。なお、このヒーコンパネルXは、上述した3色成形によって成形されたものである。そして、このコントロールユニット40は、乗員が透明板Yを通して液晶ディスプレ44の表示内容を見ながら、ヒーコンパネルXに設けられているスイッチ46を操作することができるように構成されている。そのため、従来技術の説明と同様に、液晶ディスプレ44の表示面に塵や煙草の煙等が付着することを防止することができるため、液晶ディスプレ44の視認性が悪化することを防止できる。
【0022】
本発明の実施例に係る3色成形は上述した方法によって行われている。この方法によれば、透明板YとクッションZとを備えたヒーコンパネルXを3色成形するとき、透明板Yの内面側の縁にフランジY1が一体的に成形されるように透明板Yを成形するキャビティ10を形成し、この形成したキャビティ10のうち、フランジY1が成形されるキャビティ10から溶融樹脂を流し込んで透明板Yを成形することができる。そのため、ヒーコンパネルX、透明板Y、クッションZの順に成形する場合でも、透明板Yを成形するためのゲート22がクッションZを成形するキャビティ10を横切る格好となることがないため、従来技術で説明した密封ができなくなることがない。したがって、液晶ディスプレ44の視認性が悪化することがない。
【符号の説明】
【0023】
10 キャビティ
X ヒーコンパネル(パネル)
X1 貫通孔
Y 透明板
Y1 フランジ
Z クッション




【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に貫通孔を有するようにパネルを射出成形する第1の成形工程と、第1の成形工程によって成形されたパネルの貫通孔を塞ぐように透明板を射出成形する第2の成形工程と、第2の成形工程によって成形された透明板の内面側の縁にクッションを射出成形する第3の成形工程と、を備えており、
第2の成形工程において、透明板の内面側の縁にフランジが一体的に成形されるように透明板の成形キャビティを形成し、この形成した成形キャビティのうち、フランジが成形される成形キャビティから樹脂を射出して透明板を成形し、
第3の成形工程において、透明板におけるフランジの内面側にクッションを射出成形することを特徴とする3色成形方法。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156749(P2011−156749A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20102(P2010−20102)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(308013436)小島プレス工業株式会社 (386)
【Fターム(参考)】