説明

3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−t−ブチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物、およびと当該二無水物から調製されたポリイミド樹脂を含む液晶配列剤

3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−?−ブチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物を提供する。当該テトラカルボン酸二無水物は明細書に記載の式1で表される。当該テトラカルボン酸二無水物を用いて調製される液晶配列剤がさらに提供される。具体的には、当該液晶配列剤は前記テトラカルボン酸二無水物および溶媒を用いて調製されたポリイミドを含む。当該液晶配列剤を用いて形成された液晶配列層がさらに提供される。当該液晶配列層は印刷性能の点で優れた電気光学特性と良好な加工適正を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶ディスプレイ(LCD)装置の液晶層の上下で液晶分子の配列および移動を制御するのに機能する液晶配列層を形成するための組成物に関する。より詳細には、本発明は、高いプレチルト角を有し、電圧保持率や残留直流電圧の点で優れた電気特性、良好な印刷特性、高洗浄耐性、および高欠損耐性を示す組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの市場は拡大しており、高性能のディスプレイ装置は継続的に求められている。液晶ディスプレイ装置は急速に利用範囲を拡大しており、液晶ディスプレイ装置の製造において高い生産性を有する配列層の需要は増してきている。これらの状況の下、製造工程における欠損がほとんどなく、優れた電気光学特性を有し、高い信頼性を有する、多様な液晶ディスプレイ装置に十分合致した高性能材料の需要が増してきている。特に、液晶配列層の性質に依存している液晶分子の配列特性および電気特性は、液晶配列層を使用するLCDの画質に大きく影響する。LCDの高いディスプレイ解像度に応えるために、配列層の特性に対する要求はより厳しくなってきている。
【0003】
最近、オールプラスチックディスプレイ(AOD)の開発が盛んに行われている。代表的なオールプラスチックディスプレイでは、表面張力の低い有機材料上に配列剤が被覆されている。それにより、従来型のLCD製造過程はLCDの性能を改善するためによりよい電気光学特性を必要とし、同様によりよい印刷性能と低温で迅速な硬化を発現する配列剤の使用を必要としている。従来のポリイミドベースの配列剤は溶解性が低く、そのため配列剤の印刷性能を改善するために表面張力の低い非溶剤を多く使用することはできなかった。
【0004】
現在までに開発されている配列層の特性には、配列層の原料のモノマーとしての二無水物の構造および特性が大きく影響していることが知られている(特許第2743460号および特許第3322089号)。
【発明の概要】
【0005】
技術的課題
本発明の目的は、電圧保持率および残留直流電圧および溶媒への溶解性の観点から優れた電気光学特性を付与し、これにより表面張力の低い基板上への良好な印刷性を達成すべく、優れた電気光学特性および被覆特性を発揮するように設計された二無水物を用いて合成されたポリイミドを含む液晶配列層を形成するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的解決手段
本発明の一形態によれば、式1で表される3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−t−ブチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物(以下、「テトラカルボン酸二無水物(TTDA)」と称する)が提供される。
【0007】
【化1】

【0008】
本発明の他の形態によれば、式1の3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−t−ブチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物および少なくとも1つのジアミン化合物と、溶媒と、から調製されるポリイミドを含む液晶配列剤が提供される。
【0009】
好ましくは、前記ポリイミドは式2の構造単位を含む。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、Rはジアミン化合物由来の二価の有機基を表し、特にRの1〜40mol%はC10〜C30の直鎖、分枝、または脂環式アルキル基、C〜C30のアリール基、C〜C30のアリールアルキル基、またはC〜C30のアルキルアリール基由来の二価の有機基であり、前記アルキル基は、無置換かまたは1もしくは2以上のハロゲン原子によって置換されたものである。
【0012】
好ましくは、上記ポリイミドの数平均分子量は5,000〜500,000g/molである。
【0013】
上記ポリイミドは、好ましくは、ポリアミック酸のイミド化によって調製される。
【0014】
本発明のさらに他の形態によれば、上記液晶配列剤を用いて作製された液晶ディスプレイ装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
有利な効果
本発明の液晶配列剤は、液晶配列性能や電圧保持率、プレチルト角、残留直流電圧の点で優れた電気性能を発現し、高印刷性能、高洗浄耐性、高欠損耐性を発現する。さらに、本発明の液晶配列剤は低温で迅速に硬化する液晶配列層の形成においても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1で調製された3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−t−ブチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物のH−NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明を実施するための最良の形態
本発明の具体的実施例を、より詳しく示す。
【0018】
本発明は、式1のテトラカルボン酸二無水物(TTDA)を提供する。
【0019】
【化3】

【0020】
本発明のテトラカルボン酸二無水物は、反応式1に示すように、4−tert−ブチルスチレンおよびマレイン酸無水物の2,4−環化付加反応およびエン反応により合成される。:
【0021】
【化4】

【0022】
本発明のテトラカルボン酸二無水物は、ジアミン化合物と反応しポリイミドを与える。当該ポリイミドは液晶配列剤の有効成分として用いられうる。
【0023】
本発明はまた、式1の3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−t−ブチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物と少なくとも1つのジアミン化合物とから調製されるポリイミドと、溶媒と、を含む液晶配列剤も提供し、当該ポリイミドは式2の構造単位を有する。
【0024】
【化5】

【0025】
式中、Rはジアミン化合物由来の二価の有機基を表し、特にRの1〜40mol%はC10〜C30の直鎖、分枝、または脂環式アルキル基、C〜C30のアリール基、C〜C30のアリールアルキル基、またはC〜C30のアルキルアリール基由来の二価の有機基であり、前記アルキル基は、無置換かまたは1もしくは2以上のハロゲン原子によって置換されたものである。
【0026】
好ましくは、上記ポリイミドの数平均分子量は5,000〜500,000g/molである。
【0027】
ポリイミドの重合に通常用いられるものであれば、いかなるジアミン化合物も本発明において用いられうる。
【0028】
以下に限定されるわけではないが、かようなジアミン化合物の例としては、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、4,4‐メチレンジアニリン(MDA)、4,4−オキシジアニリン(ODA)、m−ビスアミノペノキシジフェニルスルフォン(m−BAPS)、p‐ビスアミノフェノキシジフェニルスルフォン(p−BAPS)、2,2−ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、2,2−ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HF−BAPP)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、およびこれらの混合物が挙げられる。液晶配列剤を用いて形成される液晶配列層の電気的特性や長期安定性を改善するには、p−フェニレンジアミン(p−PDA)を用いることが特に好ましい。
【0029】
上記ジアミン化合物に加えて、式3、4、5および6の化合物から選択される少なくとも1つの機能性ジアミン化合物を使用することが好ましい。:
【0030】
【化6】

【0031】
【化7】

【0032】
式中、aは10〜30の整数である。
【0033】
【化8】

【0034】
式中、bは10〜30の整数である。
【0035】
【化9】

【0036】
機能性ジアミン化合物の含有量は、ポリイミドの調製に用いられるジアミン化合物の全モル数の1〜40モル%であってよく、好ましくは3〜30モル%である。
【0037】
上記機能性ジアミン化合物を1モル%未満の量で用いると、配列剤の十分なプレチルトが達成されない。一方、上記機能性ジアミン化合物を40モル%超の量で用いると、配列層の形成のための高分子量ポリマーの合成が難しい。
【0038】
本発明での使用に適した溶媒の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールジメチルエーテル、およびジプロピレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
【0039】
液晶配列剤の固形分は1〜30%であり、好ましくは3〜15%であり、さらに好ましくは5〜10%である。
【0040】
固形分が1%未満であると、液晶配列剤の印刷がLCD装置の基板の表面の影響を受け、液晶配列剤を使用して形成される層が劣化する原因となる。一方、固形分が30%を超えると(すなわち、液晶配列剤が高粘度であると)、液晶配列剤の印刷後に形成される層の均一性が劣化し、LCD装置中の層の伝達が低下する可能性がある。
【0041】
式2の構造単位に加えて、液晶配列剤を用いて形成した配列層の電気的特性や機械的特性を改善するため、ポリイミドはさらに他のテトラカルボン酸二無水物、または他の少なくとも1つのその誘導体とジアミン化合物との反応によって調製される構造単位を含んでもよい。
【0042】
以下に制限されないが、適当な追加のテトラカルボン酸二無水物およびその誘導体の例としては、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ビフタル酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、およびヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6−FDA)のような芳香族環化二無水物、並びに、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロオクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、3,4−ジカルボン酸−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物(TDA)、および2,3,5−トリカルボキシシクロペンタン酢酸二無水物(TCA−AH)のような脂環式二無水物が挙げられる。
【0043】
追加のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体は、TTDAの性質が損なわれない限り、TTDAと混合して使用することも可能である。この際、追加のテトラカルボン酸二無水物またはその誘導体の含有量は、ポリイミドの調製に用いられるテトラカルボン酸二無水物の全モル数の1〜60モル%でありうる。
【0044】
本発明に係る液晶配列剤の配列特性を改善するため、ポリイミドはアニリンまたはマレイン酸無水物を用いて末端化されうる。液晶配列剤を用いて形成される層の強度を増強する目的で、シランカップリング剤またはエポキシ化合物がさらに用いられてもよい。
【0045】
ポリイミドは、ポリアミック酸前駆体の熱硬化または化学的イミド化によって調製されうる。ポリアミック酸前駆体は、溶媒中、0.5:1〜1.5:1の当量比で、テトラカルボン酸二無水物をジアミン化合物と反応させることにより調製される。反応条件は、ポリアミック前駆体の数平均分子量が5,000〜500,000g/molとなるように制御される。溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ‐ブチロラクトン(GBL)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、またはテトラヒドロフラン(THF)のような一般的な非プロトン性極性溶媒でありうる。反応は、−10〜100℃、好ましくは0〜60℃の温度で行われる。
【0046】
その後、ポリアミック酸を、溶媒中、常圧で70〜200℃まで加熱し、もしくは加圧下で200〜350℃まで加熱し、または、溶媒中、ピリジンおよび無水酢酸を用いた化学的イミド化を行い、最終ポリアミドを調製する。溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ‐ブチロラクトン(GBL)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などである。
【0047】
本発明はまた、液晶配列剤を透明な電極基板上に塗布し、次いで加熱することにより形成される液晶配列層も提供する。さらに本発明は、上記液晶配列層を含む液晶ディスプレイ装置も提供する。
【0048】
発明の形態
以下、本発明を、実施例を用いてより詳しく説明する。しかし、実施例は本発明を説明するために用いられており、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1
マレイン酸無水物100重量部、ベンゼン12重量部、およびトリルヒドロキノン0.8重量部を、攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた反応器に仕込んだ。混合物を約120℃に加熱し、続いてそこへ4−tert−ブチルスチレン208重量部をゆっくり添加した。添加完了後、得られた混合物を120℃で合計6時間還流し、そこへベンゼン300重量部を加えた。得られた混合物を室温まで冷却し、濾過して、TTDAを収率60%で得た。生成物の融点は199〜202℃であった。生成物の構造をH−NMR分光法により同定した(図1)。
【0050】
実施例2
フェニレンジアミン0.95モル、およびN−3,5−ジアミノフェニル−3−ドデシルスクシンイミド0.05molを、窒素ガス流動下、攪拌機、サーモスタット、窒素注入システム、および冷却器を備えた4つ首フラスコに仕込んだ。この混合物をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に溶解した。当該溶液中に、実施例1で調製したTTDA0.6mol、および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)0.4molを加え、激しく攪拌した。この混合物の固形分を測定したところ、15重量%であった。温度を30℃に維持しながら、この混合物を24時間反応させて、ポリアミック酸(PA−1)の溶液を調製した。無水酢酸3.0モル、およびピリジン5.0モルを、このポリアミック酸と80℃にて6時間反応させた。反応混合物を減圧下で蒸留し、触媒および溶媒を除去して、可溶性ポリイミド(PI−I)を得た。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により確認したところ、このポリイミドの固形分は30%であり、数平均分子量は120,000g/モルであった。
【0051】
この可溶性ポリイミドをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(1:1)を用いて希釈し、配列層形成用溶液(固形分:5%)を調製した。
【0052】
実施例3
フェニレンジアミン0.85モルおよびN−3,5−ジアミノフェニル−3−ドデシルスクシンイミドを用いたこと以外は、実施例2と同様の手法により、可溶性ポリイミド(PI−2)を調製した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により確認したところ、当該可溶性ポリイミドの数平均分子量は120,000g/molであった。実施例2に記載の手順に従い、当該可溶性ポリイミドを用いて、配列層形成用溶液を調製した。
【0053】
実施例4
フェニレンジアミン0.85モル、N−3,5−ジアミノフェニル−3−ドデシルスクシンイミド0.15モル、およびTTDA1.0モルを用いたこと以外は、実施例2と同様の手法により、可溶性ポリイミド(PI−3)を調製した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により確認したところ、当該可溶性ポリイミドの数平均分子量は100,000g/molであった。実施例2に記載の手順に従い、当該可溶性ポリイミドを用いて、配列層形成用溶液を調製した。
【0054】
比較例1
TTDAに代えて2,3,5−トリカルボキシシクロペンタン酢酸二無水物(TCA−AH)1.0モルを用いてポリアミック酸の溶液を調製したこと以外は、実施例2と同様の手法により、可溶性ポリイミド(PI−4)を調製した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により確認したところ、当該可溶性ポリイミドの数平均分子量は120,000g/molであった。実施例2に記載の手順に従い、当該可溶性ポリイミドを用いて、配列層形成用溶液を調製した。
【0055】
比較例2
TTDAに代えて3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物(TDA)を用いたこと以外は、実施例4と同様の手法により、可溶性ポリイミド(PI−5)を調製した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により確認したところ、当該可溶性ポリイミドの数平均分子量は140,000g/molであった。実施例2に記載の手順に従い、当該可溶性ポリイミドを用いて、配列層形成用溶液を調製した。
【0056】
比較例3
TTDAに代えて2,3,5−トリカルボキシシクロペンタン酢酸二無水物(TCA−AH)を用いたこと以外は、実施例2と同様の手法により、可溶性ポリイミド(PI−6)を調製した。ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により確認したところ、当該可溶性ポリイミドの数平均分子量は140,000g/molであった。実施例2に記載の手順に従い、当該可溶性ポリイミドを用いて、配列層形成用溶液を調製した。
【0057】
実施例2〜4、および比較例1〜3で調製した溶液を用いて、LCDセルを作製し、当該溶液の特性を評価した。その結果を下記の表1に示す。
【0058】
1)LCDセルの作製:
それぞれの溶液を、ITOガラス(10cm×10cm)上に0.1μmの厚さで印刷し、70℃で10分間、および220℃で10分間続けて硬化させて、配列層を形成した。当該溶液の印刷状態を観察した。配列層を磨き、イソプロピルアルコールおよび純水を用いて十分に洗浄し、組み立ててLCDセルを作製した。
【0059】
2)印刷適性の評価:
それぞれの溶液を、ITOガラス基板に塗布して、配列層を形成した。当該溶液の展延性を目視または光学顕微鏡により評価した。
【0060】
展延性の評価基準:
それぞれの溶液0.001mlを、きれいなITO被覆ガラス基板上に、マイクロシリンジを用いて滴下し、10〜30分間保持した。滴下された液晶配列剤の位置から広がった液晶配列剤の距離を測定することにより、液晶配列剤の展延性を評価した。具体的には、液晶配列剤の展延性について、10mm以上を「良い」、5〜10mmを「普通」、5mm以下を「悪い」と判断した。
【0061】
3)プレチルト角の測定:
LCDセルの配列層のプレチルト角を、結晶回転法によって測定した。
【0062】
4)電圧保持率の測定方法:
LCDセルの電圧保持率を、VHRM105(Atronics)を用いて室温で測定した。その後、LCDセルを60℃のオーブンに100時間放置して、電圧保持率を測定した。下記式により、LCDセルの信頼性水準を決定した。
【0063】
【数1】

【0064】
5)化学的耐性の評価:
2〜4Vの電圧を印加してLCDセルを駆動し、洗浄溶液によって欠陥やドメインが生成するか否かを確認した。
【0065】
6)硬化温度の評価
それぞれの溶液を、ITOガラス基板に塗布し、10分間硬化させた。硬化中、溶媒の5%が残留する温度を測定した。
【0066】
7)溶媒の残留量の測定:
それぞれの溶液を、ITOガラス基板に0.1μmの厚さで印刷し、70℃で1分間、および220℃で10分間続けて硬化させた。第1および第2の硬化段階後に残留した溶媒の量を、熱重量分析計(TGA)を用いて測定し、その比を計算した。
【0067】
【表1】

【0068】
表1の結果から、実施例2〜4で調製した液晶配列剤および当該配列剤を用いて形成された液晶配列層は、比較例1〜3で調製した配列剤および当該配列剤を用いて形成された液晶配列層と比較して、良好な印刷適性、低い硬化温度、化学的耐性およびドメイン形成の点での優れた性能を示すことがわかる。さらに、実施例2〜4で調製した配列剤および当該試剤を用いて形成された液晶配列層は、60℃で高い電圧保持率を示し、比較例1〜3で調製した配列剤および当該配列剤を用いて形成された液晶配列層よりも良好な信頼性を示した。さらに、実施例2〜4で調製された配列剤を用いて形成された配列層に残存した溶媒の量は少なく、当該配列層は優れた安定性を有することが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−t−ブチル−1−ナフタレンコハク酸二無水物。
【化1】

【請求項2】
式1の酸二無水物と少なくとも1つのジアミン化合物との重合により調製されたポリイミドと、溶媒と、を含む、液晶配列剤。
【化2】

【請求項3】
前記ポリイミドが、式2:
【化3】

式中、Rはジアミン化合物由来の二価の有機基を表し、特にRの1〜40mol%はC10〜C30の直鎖、分枝、または脂環式アルキル基、C〜C30のアリール基、C〜C30のアリールアルキル基、またはC〜C30のアルキルアリール由来の二価の有機基であり、前記アルキル基は、無置換かまたは1もしくは2以上のハロゲン原子によって置換されたものである、
の構造単位を含み、ポリイミドの数平均分子量が5,000〜500,000g/molである、請求項2に記載の液晶配列剤。
【請求項4】
前記ジアミン化合物が、p−フェニレンジアミン(p−PDA)、4,4−メチレンジアニリン(MDA)、4,4−オキシジアニリン(ODA)、m−ビスアミノフェノキシジフェニルスルフォン(m−BAPS)、p−ビスアミノフェノキシジフェニルスルフォン(p−BAPS)、2,2−ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(BAPP)、2,2−ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(HF−BAPP)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の液晶配列剤。
【請求項5】
前記ジアミン化合物が、式3、4、5、および6の化合物から選択される少なくとも1つの化合物である、請求項2に記載の液晶配列剤。
【化4】

【化5】

式中、aは10〜30の整数である。
【化6】

式中、bは10〜30の整数である。
【化7】

【請求項6】
前記ポリイミドがポリアミック酸のイミド化により調製される、請求項2に記載の液晶配列剤。
【請求項7】
前記溶媒が、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、テトラヒドロフラン(THF)、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の液晶配列剤。
【請求項8】
1〜30%の固形分を有する、請求項2に記載の液晶配列剤。
【請求項9】
前記ポリイミドが、ジアミン化合物のピロメリット酸二無水物(PMDA),ビフタル酸二無水物(BPDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物(6−FDA)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフリル)−3−メチルシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物(DOCDA)、ビシクロオクテン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BODA)、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物(CPDA)、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(CHDA)、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物(TDA)、および2,3,5−トリカルボキシシクロペンタン酢酸二無水物(TCA−AH)からなる群から選択される少なくとも1つのテトラカルボン酸二無水物との反応によって調製された構造を含む、請求項2に記載の液晶配列剤。
【請求項10】
前記構造単位の含有量が、ポリイミド全体の構造単位に対して1〜60mol%である、請求項9に記載の液晶配列剤。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれか1項に記載の液晶配列剤を用いて形成された液晶配列層。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶配列層を含む、液晶ディスプレイ装置。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2010−524041(P2010−524041A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502924(P2010−502924)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006898
【国際公開番号】WO2008/126978
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】