説明

3D表示システム

【課題】見込み角によって発生する輝度ムラを改善した時分割方式3D表示システムの提供。
【解決手段】視認側に配置される第1の偏光膜と、前記第1の偏光膜の視認側表面に配置される、λ/4機能を有する保護部材A1と、を少なくとも有する画像表示装置(1);及びλ/4板Bを少なくとも有し、前記画像表示装置に同期して作動する時分割画像表示遮断機器(2);を備えた時分割3D表示システムであって、前記保護部材Aの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、前記λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、|Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nmを満たす時分割方式3D表示システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割方式及び空間分割方式の3D表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体(3D)表示方法には従来からさまざまな方式が提案されており、その一つに液晶シャッターメガネ等を使用する時分割方式がある。この方式では、左目用と右目用の画像を時間的に交互に表示しながら、画像の表示に同期してメガネのシャッターを開閉し、それぞれの画像が対応する眼に入るように制御する方式である(例えば特許文献1)。この方式による3D表示装置として、表示モニタに液晶パネルを利用するものが提案されている(例えば特許文献2)。また、3D表示の他の方式として、いわゆる空間分割方式と呼ばれる、偏光眼鏡方式(パッシブ眼鏡)がある(例えば特許文献3)。この空間分割方式では、表示パネルからの出射光を異なる2種の偏光状態(例えば、右偏光と左偏光)にし、一方の偏光のみを透過する偏光板を右眼用に、及び他方の偏光のみを透過する偏光板を左眼用にして構成された偏光眼鏡を通じて表示画面を観察させることで、立体感のある画像として認識させるものである。
【0003】
しかし、いずれの3D表示方式でも、偏光メガネを到着した観察者が顔を傾けた時に生じる、輝度低下やクロストークの悪化の問題がある。時分割方式については、画像表示装置側表面及びシャッターメガネの表面に、λ/4板をそれぞれ配置し、円偏光画像を利用することでこの問題を解決することが提案されている(例えば特許文献4)。
【0004】
しかし、λ/4板を利用する時分割方式及び空間分割方式の3D表示方法では、正面(表示面に対して法線方向)から画面を観察した際、画面の隅が暗くなるという問題があった。この問題は、画面が大型化する場合に、益々顕著になる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−51917号公報
【特許文献2】特開2003−259395号公報
【特許文献3】米国特許第5,327,285号明細書
【特許文献4】特開2002−82307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、正面方向から観察した際の輝度ムラが軽減された時分割方式及び空間分割方式3D表示システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
正面方向から画面の隅を観察すると、見込み角が生じた状態で画面を観察することになる。本発明者らが鋭意検討した結果、この見込み角に起因する輝度ムラは、時分割方式及び空間分割方式3D表示システムに利用されているλ/4板のRthが影響しているとの知見を得た。理想のλ/4板はRthが0であり、画像表示装置及びシャッター等の偏光メガネ側のいずれにも理想のλ/4板を利用すれば、正面方向から見込み角のある状態で画面を観察しても、輝度ムラの問題は生じない。一方で、理想のλ/4板の作製は困難であり、実用に沿わない。本発明者がさらに鋭意検討した結果、画像表示装置及びシャッター等の偏光メガネ側に配置されるλ/4板のRthの合計の絶対値が、所定の範囲であると、見込み角が生じた状態で画面を観察しても輝度ムラが生じず、上記問題を解決できるとの知見を得、本発明を完成するに至った。本発明では理想のλ/4板を使用しなくても、上記課題を解決でき、実用に沿うものである。
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 視認側に配置される第1の偏光膜と、前記第1の偏光膜の視認側表面に配置される、λ/4機能を有する保護部材A1と、を少なくとも有する画像表示装置;及びλ/4板Bを少なくとも有し、前記画像表示装置に同期して作動する時分割画像表示遮断機器;を備えた時分割3D表示システムであって、前記保護部材A1の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、前記λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする時分割方式3D表示システム:
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm 。
[2] 下記式(II)の関係を満たす[1]の時分割3D表示システム:
(II): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦120nm 。
[3] 前記保護部材A1及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、セルロースアシレートフィルム及び環状オレフィン系ポリマーフィルムの少なくともいずれかを含む[1]又は[2]の時分割方式3D表示システム。
[4] 前記保護部材A1及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を少なくとも含む[1]〜[3]のいずれかの時分割方式3D表示システム。
[5] 前記液晶化合物が、円盤状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記円盤状液晶化合物が垂直に配向している[4]の時分割方式3D表示システム。
[6] 前記液晶化合物が、棒状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記棒状液晶化合物が水平に配向している[4]の時分割方式3D表示システム。
[7] 前記保護部材A1が、視認側表面に反射防止層を有する[1]〜[6]のいずれかの時分割方式3D表示システム。
[8] 前記保護部材A1が、紫外線吸収剤を含有する[1]〜[7]のいずれかの時分割方式3D表示システム。
[9] 前記画像表示装置が、液晶パネルである[1]〜[8]のいずれかの時分割方式3D表示システム。
[10] 前記時分割画像表示遮断機器が、液晶セル及び第2の偏光膜をさらに有し、前記画像表示装置に対向する側から、前記λ/4板B、前記液晶セル、及び前記第2の偏光膜の順に、又は前記第2の偏光膜、前記液晶セル、及び前記λ/4板Bの順に配置されている[9]の時分割3D表示システム。
[11] 前記時分割画像表示遮断機器が、第3の偏光膜をさらに有し、前記画像表示装置に対向する側から、前記λ/4板B、前記第3の偏光膜、前記液晶セル、及び前記第2偏光膜の順に、又は前記第2の偏光膜、前記液晶セル、前記第3の偏光膜、及び前記λ/4板Bの順に配置されている[9]又は[10]の時分割3D表示システム。
[12] 視認側に配置される第1の偏光膜と、前記第1の偏光膜の視認側に配置される液晶セルと、前記液晶セルの視認側表面に配置されるλ/4機能を有する保護部材A1と、を少なくとも有する画像表示装置;及びλ/4板Bを少なくとも有するメガネ;を備えた時分割3D表示システムであって、前記液晶セルは、画像表示装置に同期して作動し、前記保護部材A1の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、前記λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする時分割方式3D表示システム:
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm 。
【0009】
[13] 視認側に配置される第1の偏光膜と、
前記第1の偏光膜の視認側表面に配置される、互いに異なる方向に面内遅相軸を有し、それぞれλ/4機能を有する第1及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を有する保護部材A2と、
を少なくとも有する画像表示装置;及び
λ/4板Bを少なくとも有する偏光変換素子;
を備えた3D表示システムであって、
前記保護部材A2の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、前記λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする3D表示システム:
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm 。
[14] 下記式(II)の関係を満たす[13]の3D表示システム:
(II): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦120nm 。
[15] 前記保護部材A2及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、セルロースアシレートフィルム及び環状オレフィン系ポリマーフィルムの少なくともいずれかを含む[13]又は[14]の3D表示システム。
[16] 前記保護部材A2及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を少なくとも含む[13]〜[15]のいずれかの3D表示システム。
[17] 前記液晶化合物が、円盤状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記円盤状液晶化合物が垂直に配向している[16]の3D表示システム。
[18] 前記液晶化合物が、棒状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記棒状液晶化合物が水平に配向している[16]の3D表示システム。
[19] 前記保護部材A2が、視認側表面に反射防止層を有する[13]〜[18]のいずれかの3D表示システム。
[20] 前記保護部材A2が、紫外線吸収剤を含有する[13]〜[19]のいずれかの3D表示システム。
[21] 前記画像表示装置が、液晶パネルである[13]〜[20]のいずれかの3D表示システム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正面方向から観察した際の輝度ムラが軽減された時分割方式及び空間分割方式の3D表示システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の時分割方式3D表示システムの一例を示した模式図である。
【図2】本発明の時分割方式3D表示システムの一例の断面模式図である。
【図3】本発明の時分割方式3D表示システムの一例の断面模式図である。
【図4】保護部材A1又はA2及びλ/4板B層の一例の断面模式図である。
【図5】第1の偏光板の一例の断面模式図である。
【図6】第1の偏光板の一例の断面模式図である。
【図7】本発明の時分割方式3D表示システムの一例の断面模式図である。
【図8】本発明の空間分割方式3D表示システムの一例の断面模式図である。
【図9】偏光膜の吸収軸とパターン光学異方性層の面内遅相軸との関係の一例を示した概略図である。
【図10】実施例で作製したパターン光学異方性層の上面模式図である。
【図11】実施例で作製した空間分割方式3D画像表示装置の断面模式図である。
【図12】実施例で使用した露光マスクの上面模式図である
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、実施の形態を挙げて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
まず、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0013】
Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルタをマニュアルで交換するか、または測定値をプログラム等で変換して測定することができる。測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(B)よりRthを算出することもできる。
【0014】
【数1】

なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(B)
【0015】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0016】
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10゜未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5゜未満であることが好ましく、±2゜未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。
なお、屈折率の測定波長は、特に断らない限り、可視光域のλ=550nmでの値であり、Re及びRthの測定波長については、特に断らない限り、550nmとする。
【0017】
また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。なお、「λ/4板」は、「λ/4フィルム」及び「λ/4層」と同義である。
【0018】
まず、本発明の時分割方式3D表示システムの実施態様について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の時分割方式3D表示システムの一態様の概略模式図である。図1に示す時分割方式3D表示システムは、画像表示装置1と、シャッター機能を有するメガネ2(時分割画像表示遮断機器)とを備え、画像表示装置1の画像を、メガネ2を装着した観察者が観察する。図1中には示さないが、画像表示装置1の表示面側には、偏光膜とλ/4機能を有する保護部材が配置されていて、画像表示装置1からは、円偏光画像が観察者側に表示され、且つメガネ2もλ/4層を含み、円偏光画像の透過率をON−OFFするシャッター機能を有する。
【0019】
画像表示装置1には、例えば、所定の周波数(例えば、60Hz以上の周波数)で左目用画像及び右目用画像が交互に表示される。一例では、立体視用の画像信号は、画像処理部において、左目用画像信号と右目用画像信号とに処理された後、表示用モニタ駆動回路に送られ、画像表示装置1の各々の画素部に、左目用画像信号と右目用画像信号とがフィールド毎に交互に割り当てられて、所定の時間毎に、左目用画像と右目用画像とが画像表示装置1の同一画面上に交互に表示され、視認側表面に配置されている偏光膜とλ/4機能を有する保護部材によって、左目用円偏光画像と右目用円偏光画像に変換される。
【0020】
画像表示装置1の左目用及び右目用画像表示の切り替えに同期回路3により同期させて、メガネ2に、駆動電圧等が印加され、具体的には、左目用画像が表示されているときは、左目シャッター2aの円偏光に対する透過率が最大になり、左目に画像が入力され、且つ右目シャッター2bの円偏光に対する透過率は最小になり、右目には画像は入力されず、一方、右目用画像が表示されているときは、右目シャッター2bの円偏光透過率が最大になり、右目に画像が入力され、且つ左目シャッター2aの円偏光透過率は最小になり左目には画像は入力されなくなっている。観察者は、左目用画像を左目だけで、右目用画像を右目だけで選択的に見ることで、表示画像を立体画像として認識する。なお、メガネ2の透過率のON/OFFの機構については特に制限はない。液晶セルによるシャッター機能を利用したメガネが好ましい。
【0021】
上記した通り、画像表示装置1の表示面側には、偏光膜とλ/4機能を有する保護部材A1が配置されていて、円偏光画像が観察者に対して表示され、またメガネ2もλ/4板Bを含み、円偏光画像の透過率をON−OFFするシャッター機能を有する。従来、λ/4板を利用した時分割3D表示システムでは、正面方向から画像を観察した際に、画面の隅が暗くなるという問題があった。この問題は、画面の隅を正面から観察する場合には、見込み角が生じていることに起因するものである。本発明では、画像表示装置1に配置されているλ/4機能を有する保護部材A1の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、メガネ2に含まれるλ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)(より好ましくは下記式(II))の関係を満たしているので、見込み角がある状態で正面方向から観察しても、輝度の低下がなく、正面方向から観察した際に、輝度ムラのない、良好な3D表示が可能になる。
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm
(II): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦120nm
【0022】
保護部材A1の波長550nmの面内レターデーションRe(550)Aと、メガネ2に含まれるλ/4板Bの波長550nmの面内レターデーションRe(550)Bは、理想値(137.5nm)を中心として、25nm程度の誤差があってもよく、例えば、115nm〜160nmであるのが好ましい。一方で、Re(550)AとRe(550)Bの差はより小さいほうが、表示特性の観点で好ましい。具体的には、下記式(III)の関係を満たすことが好ましく、下記式(IV)の関係を満たすことがより好ましい。
(III): |Re(550)A−Re(550)B|≦30nm
(IV): |Re(550)A−Re(550)B|≦16nm
【0023】
画像表示装置1の構成については特に制限はない。例えば、液晶層を含む液晶パネルであっても、有機EL層を含む有機EL表示パネルであってもよい。いずれの態様でも、種々の可能な構成を採用することができる。また、メガネ2のシャッター機能についても特に制限はなく、種々の構成を採用できる。好ましくは液晶セルのシャッター機能を利用したメガネである。
図2に、画像表示装置1として液晶パネルを、メガネ2として、液晶シャッターメガネをそれぞれ利用した構成例を、断面模式図として示す。なお、図中、各層の厚みの相対的関係は、実際の画像表示装置等の各層の厚みの相対的関係と必ずしも一致しているものではない。
【0024】
画像表示装置1は、液晶セル13を有する液晶パネルであり、その視認側に第1の偏光膜12、さらにその視認側表面に保護部材11を有する。液晶シャッターメガネ2は、液晶セル23、及びその視認側にλ/4フィルム21を有する液晶シャッターメガネである。保護部材11はλ/4機能を有し、そのRth(550)とλ/4フィルム21のRth(550)とは、上記式(I)を満足する。
【0025】
画像表示装置1の液晶セル13の後方には、バックライト4が配置され、バックライト4と液晶セル13との間には偏光板14が配置され、透過モードとして構成されている。偏光板14の吸収軸は、第1の偏光膜12の吸収軸と直交になっている。また、第1の偏光膜12と液晶セル13との間には、視野角補償のための、及び/又は偏光膜12の保護のためのフィルム15が配置されている。偏光板14も、偏光膜とともに、偏光膜の液晶セル側表面及びバックライト側表面に、保護フィルムを有していてもよい。
【0026】
液晶セル13の構成については特に制限はなく、一般的な構成の液晶セルを採用することができる。液晶セル13は、例えば、図示しない対向配置された一対の基板と、該一対の基板間に挟持された液晶層とを含み、必要に応じて、カラーフィルタ層などを含んでいてもよい。液晶セル13の駆動モードについても特に制限はなく、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等の種々のモードを利用することができる。
【0027】
表示側に配置される第1の偏光膜12は、視認側表面に、λ/4機能を有する保護部材11を有する。保護部材11の構成については特に制限はなく、単層構造であっても、積層構造であってもよい。λ/4機能を有する部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差ポリマーフィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられる。保護部材11が、ポリマーフィルムを含んでいると、偏光膜11の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。また、保護部材11は、視認側表面に反射防止層を有しているのも好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。
【0028】
メガネ2は、λ/4板21、偏光膜22、液晶セル23、及び偏光膜24を有し、液晶画像装置部1の画像表示と同期するシャッター機能を備えている。メガネ2の構成としては、図2に示すような偏光板2枚方式であってもよく、図2に示す構成以外に、図3(a)、図3(b)に示す偏光板1枚方式の構成であってもよい。
【0029】
λ/4板21の構成についても特に制限はない。単層構造であっても、積層構造であってもよい。観察者が装着することを考慮すると、軽量且つ薄層であるのが好ましく、従って、単層構造であるのが好ましい。λ/4板21に利用可能な部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差フィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられる。λ/4板21が、ポリマーフィルムを含んでいると、偏光膜22の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。また、λ/4板21は、表面にハードコート層や反射防止層を有しているのも好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。
【0030】
画像表示装置1の第1の偏光膜12の吸収軸と、λ/4機能を有する保護部材11の遅相軸とは、45°を中心として±10°、即ち35〜55°であるか、又は135°を中心として±10°、即ち125〜145°であるのが好ましい。また、第1の偏光膜12の吸収軸及び偏光膜22の吸収軸は、直交又は平行に配置するのが好ましく、且つ保護部材11及びλ/4板21の遅相軸は直交又は平行であるのが好ましい。
なお、保護部材11及びλ/4板21が複数の位相差層及び/又は位相差フィルムを含む態様では、遅相軸は、保護部材11及びλ/4板21全体で測定したときの遅相軸として特定される。
【0031】
本発明の時分割方式3D表示システムは、図2に示す部材以外に、さらに、立体視用の画像信号を左目用画像信号と右目用画像信号とに処理する画像処理部、当該画像信号をディスプレイに送る表示用モニタ駆動回路、当該画像信号に応じて、液晶シャッターメガネに信号を送り、左右液晶シャッターの透過率をON/OFFさせる、同期回路を備えているのが好ましい。
【0032】
図2の構成は、観察者が、液晶セル23を利用したシャッター機能を有するメガネ2を介して画像を観察することで3D表示する構成であるが、液晶セル23を、図7に示すように画像表示装置1に配置させても、同様の効果が得られる。この場合、液晶セル23は画像表示装置1の出射光を右円偏光と左円偏光に時分割で変換するアクティブリターダー用のセルとして機能する。一方、偏光メガネ20側にはシャッター機能は不要となる。画像表示装置が時分割で表示する左右目用円偏光画像が、それぞれ左目のみ又は右目のみに入射するのを可能にするために、互いに逆向きの円偏光板を左右目用に有する偏光メガネ20が用いられる。
【0033】
本発明は、空間分割方式の3D表示システムにも関する。
図8は、本発明の空間分割方式3D表示システムの一態様の概略模式図である。図8中、図1〜図7中の部材と同一の部材については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
図8に示す空間分割方式3D表示システムは、画像表示装置10と、偏光メガネ20(偏光変換素子)とを備え、画像表示装置10の画像を、偏光メガネ20を装着した観察者が観察する。画像表示装置10の表示面側には、偏光膜と、互いに異なる方向に面内遅相軸を有し、それぞれλ/4機能を有する第1及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を有する保護部材31(保護部材A2)が配置されている。例えば、互いに直交する方向に面内遅相軸を有する第1及び第2領域をそれぞれ通過した直線偏光画像は、それぞれ逆向きの円偏光画像に変換されて、観察者に対して表示される。偏光メガネ20も、直線偏光膜とλ/4層(λ/4板B)を含み、互いに逆向きの円偏光画像の一方を左目のみに、及び他方を右目のみに入射する機能を有する。従来、λ/4板を利用した空間分割3D表示システムでは、偏光メガネを装着した観察者が、正面方向から画像を観察した際に、画面の隅が暗くなるという問題があった。この問題は、画面の隅を正面から観察する場合には、見込み角が生じていることに起因するものである。本発明では、画像表示装置10に配置されているλ/4機能を有する保護部材31(保護部材A2)の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、偏光メガネ20に含まれるλ/4層21(λ/4板B)の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)(より好ましくは下記式(II))の関係を満たしているので、見込み角がある状態で正面方向から観察しても、輝度の低下がなく、正面方向から観察した際に、輝度ムラのない、良好な3D表示が可能になる。
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm
(II): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦120nm
【0034】
保護部材31(保護部材A2)の波長550nmの面内レターデーションRe(550)Aと、メガネ20に含まれるλ/4層21(λ/4板B)の波長550nmの面内レターデーションRe(550)Bは、理想値(137.5nm)を中心として、25nm程度の誤差があってもよく、例えば、115nm〜160nmであるのが好ましい。一方で、Re(550)AとRe(550)Bの差はより小さいほうが、表示特性の観点で好ましい。具体的には、下記式(III)の関係を満たすことが好ましく、下記式(IV)の関係を満たすことがより好ましい。
(III): |Re(550)A−Re(550)B|≦30nm
(IV): |Re(550)A−Re(550)B|≦16nm
【0035】
表示側に配置される第1の偏光膜12は、視認側表面に、互いに異なる方向に面内遅相軸を有し、それぞれλ/4機能を有する第1及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を有する保護部材31(保護部材A2)を有する。保護部材31の構成については特に制限はなく、単層構造であっても、積層構造であってもよい。一例は、液晶組成物の配向を固定して形成されるパターン光学異方性層と、該パターン光学異方性層を支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられる。保護部材31が、ポリマーフィルムを含んでいると、偏光膜11の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。また、保護部材31は、視認側表面に反射防止層を有しているのも好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。
【0036】
偏光メガネ20は、λ/4層21(λ/4板B)、及び偏光膜24を有する。シャッター機能は不要である。左右目用のレンズが、互いに逆向きの円偏光板となる構成が好ましい。
【0037】
λ/4層21の構成についても特に制限はない。単層構造であっても、積層構造であってもよい。観察者が装着することを考慮すると、軽量且つ薄層であるのが好ましく、従って、単層構造であるのが好ましい。λ/4層21に利用可能な部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差フィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられる。λ/4層21が、ポリマーフィルムを含んでいると、偏光膜22の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。また、λ/4層21は、表面にハードコート層や反射防止層を有しているのも好ましい。これらの部材の詳細については、後述する。
【0038】
画像表示装置10の第1の偏光膜12の吸収軸と、保護部材31の、第1及び第2位相差領域の面内遅相軸とは、45°で交差させて配置する。45°を中心として±10°、即ち35〜55°であるのが好ましい。一例を図9に示す。図9に示す例では、第1の偏光膜12の吸収軸pは左右方向にあり、及び保護部材31の第1及び第2位相差領域31a及び31bそれぞれの互いに直交する面内遅相軸a及びbは、左右方向を0°方向とすると、それぞれ±45°の方向にあり、即ち、吸収軸pと面内遅相軸a及びbのそれぞれとは45°で交差している。
【0039】
なお、保護部材31及びλ/4層21が複数の位相差層及び/又は位相差フィルムを含む態様では、遅相軸は、保護部材31及びλ/4層21全体で測定したときの遅相軸として特定される。
【0040】
以下、本発明の3D表示システムに用いられる種々の部材について詳細に説明する。
【0041】
1.λ/4機能を有する部材
本発明の時分割方式の態様では、画像表示装置の視認側に配置される第1の偏光膜の、視認側表面に配置される保護部材A1として、及び時分割画像表示遮断器が有するλ/4板Bとして、λ/4機能を有する部材が用いられる。また、本発明の空間分割方式の態様では、画像表示装置の視認側に配置される第1の偏光膜の、視認側表面に配置される保護部材A2として、互いに異なる方向に面内遅相軸を有し、λ/4機能を有するパターン光学異方性層を有する部材が用いられ、及び偏光変換素子が有するλ/4板Bとして、λ/4機能を有する部材が用いられる。
なお、λ/4板Bは、図2及び図3(a)に示す態様では、液晶セル23よりも画像表示装置1側にある層すべての総称であり、図3(b)に示す態様では、偏光膜24と液晶セル23の間にある層すべての総称である。
【0042】
本発明では、保護部材A1又は保護部材A2の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとは、下記式(I)の関係を満たし、下記式(II)の関係を満たすことが好ましい。
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm
(II): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦120nm
【0043】
理想的なλ/4フィルムは、Re(550)=137.5nm、Rth(550)=0nm、Nz=Rth/Re+0.5=0.5である。しかし、このようなλ/4フィルムは製造困難なことが多い。本発明では、Rth(550)A及びRth(550)Bが上記関係式(I)を満足する限り、保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bに対して、Rth=0は要求されない。Rthの観点で理想的でなくても、上記式(I)を満足すれば、正面方向から見込み角がある状態で画面を観察しても、輝度ムラのない良好な3D表示が可能である。但し、Rth(550)A及びRth(550)Bの絶対値が過度に高いと、斜め方向から見た場合の輝度ムラの点で好ましくない場合があり、その観点では、Rth(550)Aは、−160〜160nmが好ましく、−100〜100nmがより好ましく、−80〜80nmが特に好ましい。Rth(550)Bは、−200〜200nmが好ましく、−150〜150nmがより好ましく、−100〜100nmが特に好ましい。
【0044】
保護部材A1又は保護部材A2の波長550nmの面内レターデーションRe(550)Aと、メガネ2に含まれるλ/4板Bの波長550nmの面内レターデーションRe(550)Bは、理想値(137.5nm)を中心として、25nm程度の誤差があってもよく、例えば、115nm〜160nmであるのが好ましい。一方で、Re(550)AとRe(550)Bの差はより小さいほうが、表示特性の観点で好ましい。具体的には、下記式(III)の関係を満たすことが好ましく、下記式(IV)の関係を満たすことがより好ましい。
(III): |Re(550)A−Re(550)B|≦30nm
(IV): |Re(550)A−Re(550)B|≦16nm
【0045】
なお、保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bがそれぞれ積層体である態様では、Re(550)AとRth(550)A、及びRe(550)BとRth(550)Bは、それぞれ積層体全体のRth(550)及びRe(550)を意味する。
【0046】
保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bはそれぞれ、単層構造であっても、積層構造であってもよい。λ/4板Bは、メガネとして観察者が装着する時分割画像表示遮断機器に含まれるので、より軽量且つ薄層であるのが好ましい。また、保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bが、ポリマーフィルムを含んでいると、隣接して配置される偏光膜の保護フィルムとしても利用できるので好ましい。また、表面に反射防止層を含んでいるのも好ましい。λ/4機能を有する部材としては、位相差ポリマーフィルム、位相差ポリマーフィルムの積層体、液晶組成物の配向を固定して形成される光学異方性層、及び該光学異方性層とそれを支持するポリマーフィルムとの積層体が挙げられ、いずれも用いることができる。位相差ポリマーフィルムの例には、ポリマーフィルムを延伸してフィルム中の高分子を配向させて発現させた光学異方性を有するフィルムが含まれる。1枚又は2枚以上の二軸性フィルムによって構成することができるし、またCプレートとAプレートとの組合せ等、一軸性フィルムを2枚以上組合せることでも構成することができる。勿論、1枚以上の二軸性フィルムと、1枚以上の一軸性フィルムとを組み合わせることによっても構成することもできる。前記光学異方性層は、液晶性化合物の分子の配向によって発現された光学異方性を示す層である。光学異方性層単独でλ/4機能を有していてもよいし、支持体となるポリマーフィルムとともに、全体として、λ/4機能を有していてもよい。
【0047】
保護部材A2は、互いに異なる方向(一例は互いに直交する方向)に面内遅相軸を有する第1及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を有する。パターンの形状等については特に制限はないが、左右画像が不均一とならないようにするためには、、第1及び第2位相差領域は、互いに等しい形状であるのが好ましく、またそれぞれの配置は、均等且つ対称的であるのが好ましい。一例は、同一の幅のストライプ状の第1及び第2位相差領域が交互に配置されたパターン光学異方性層である。
【0048】
図4及び以下に、保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bの構成例を示す。なお、図中及び以下の説明では、「光学異方性支持体」とは、位相差ポリマーフィルムを意味し、「支持体」とは、位相差ポリマーフィルムと低位相差の光学的に等方性に近いポリマーフィルムの双方を含む意味とする。また、光学異方性層については、保護部材A1及びλ/4板Bでは、一様な光学異方性層を、及び保護部材A2では互いに異なる方向に面内遅相軸を有する第1及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を意味するものとする。
後述する図5及び図6においても同様である。
光学異方性支持体(図4(i))
光学異方性支持体/ハードコート層(図4(ii))
光学異方性支持体/低屈折率層(図4(iii))
光学異方性支持体/ハードコート層/低屈折率層(図4(iv))
光学異方性支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図4(v))
光学異方性支持体/支持体/ハードコート層(図4(vi))
光学異方性支持体/支持体/低屈折率層(図4(vii))
光学異方性支持体/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図4(viii))
光学異方性支持体/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図4(ix))
支持体/光学異方性層(図4(x))
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層(図4(xi))
支持体/光学異方性層/支持体/低屈折率層(図4(xii))
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図4(xiii))
支持体/光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図4(xiv))
光学異方性層/支持体(図4(xv))
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層(図4(xvi))
光学異方性層/支持体/支持体/低屈折率層(図4(xvii))
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図4(xviii))
光学異方性層/支持体/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図4(xix))
光学異方性層/支持体/ハードコート層(図4(xx))
光学異方性層/支持体/低屈折率層(図4(xxi))
光学異方性層/支持体/ハードコート層/低屈折率層(図4(xxii))
光学異方性層/支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図4(xxiii))
支持体/光学異方性層/ハードコート層(図4(xxiv))
支持体/光学異方性層/低屈折率層(図4(xxv))
支持体/光学異方性層/ハードコート層/低屈折率層(図4(xxvi))
支持体/光学異方性層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層(図4(xxvii))
【0049】
(1)ポリマーフィルム
前記位相差ポリマーフィルム、又は前記光学異方性層の支持体として用いられるポリマーフィルムの材料については、特に制限はない。種々のポリマーフィルム、例えば、セルロースアシレート(例えば、セルローストリアセテートフィルム、セルロースジアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン系ポリマー、エチレン・プロピレン共重合体の如きポリオレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロンや芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、又は前記ポリマーを混合したポリマー等が挙げられる。1種又は2種以上のポリマーを、主成分として用いることができる。市販品を用いても良く、環状オレフィン系ポリマーであるアートン(JSR社製)、非晶質ポリオレフィンであるゼオネックス(日本ゼオン社製))などを用いてもよい。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィン系ポリマーが好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0050】
前記位相差ポリマーフィルム等の製造方法については特に制限はない。溶液製膜方法及び溶融製膜方法のいずれも利用することができる。所望の特性とするために、製膜後に延伸処理を行ってもよい。また、その上に、液晶組成物からなる光学異方性層を形成する場合は、ポリマーフィルムを表面処理(例、グロー放電処理、コロナ放電処理、紫外線(UV)処理、火炎処理、鹸化処理)等してもよい。
【0051】
前記位相差ポリマーフィルムの厚みについては特に制限はないが、通常25μm〜1000μm程度のものが使用される。
【0052】
なお、後述する液晶組成物からなる光学異方性層の支持体として用いるポリマーフィルムは、低Reであってもよく、例えば、0〜50nm、0〜30nm、又は0〜10nmであってもよい。また、支持体として用いられるポリマーフィルムのRthについても、特に制限はなく、例えば、−300nm〜300nm、−100nm〜200nm、又は−60nm〜60nmであってもよい。支持体の光学特性は、その上に設けられる光学異方性層との組み合わせによって選択することが好ましい。
【0053】
支持体のRe、Rthについては各種公知のレターデーション調整剤、延伸などにより調整することもできる。
【0054】
(2)液晶性化合物を含む光学異方性層
前記保護部材A1、保護部材A2又はλ/4板Bは、液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を1以上有していてもよい。液晶性化合物の種類については特に制限されない。例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後はもはや液晶性を示す必要はない。重合性液晶性化合物は、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。また、液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物でもよいし、棒状液晶性化合物でもよい。
【0055】
前記光学異方性層において、液晶化合物の分子は、垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向及び傾斜配向のいずれかの配向状態に固定化されていることが好ましい。一例は、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に垂直に配向している例であり、他の例は、棒状液晶性化合物の長軸がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に水平に配向している例である。ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面(光学異方性層面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度の平均値が70°〜90°の範囲内であることを意味する。80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が更に好ましい。棒状液晶性化合物が実質的に水平とは、フィルム面(光学異方性層面)と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が0°〜20°の範囲内であることを意味する。0°〜10°がより好ましく、0°〜5°が更に好ましい。
液晶化合物の分子をハイブリッド配向させて視野角依存性が非対称である光学補償フィルムを作製する場合、液晶化合物のダイレクターの平均傾斜角は5〜85°であることが好ましく、10〜80°であることがより好ましく、15〜75°であることが更に好ましい。
【0056】
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物又は円盤状(ディスコティック)液晶性化合物等の液晶性化合物と、所望により、後述する重合開始剤や配向制御剤や他の添加剤を含む塗布液を、支持体上に塗布することで形成することができる。支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成するのが好ましい。
【0057】
[棒状液晶性化合物]
光学異方性層の形成に利用可能な棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。棒状液晶性化合物を重合によって配向を固定することがより好ましい。液晶性化合物には活性光線や電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。その部分構造の個数は好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物を用いることができる。
【0058】
[ディスコティック液晶性化合物]
前記光学異方性層の形成に利用可能なディスコティック液晶性化合物については、特に制限はない。ディスコティック液晶性化合物は、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0059】
ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。例えば、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、但し、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。即ち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表される化合物であることが好ましい。
D(−L−P)n
式中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは1〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、二価の連結基(L)及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)であり、同公報に記載の内容を好ましく用いることができる。なお、液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、30〜300℃が好ましく、30〜170℃が更に好ましい。
【0060】
下記式(I)で表わされるディスコティック液晶性化合物は、面内レターデーションの波長分散性が低く、高い面内レターデーションを発現可能であり、また特殊な配向膜や添加剤を使用しなくても高い平均傾斜角で均一性に優れた垂直配向を達成できるので、光学異方性層の形成に利用するのが好ましい。更に該液晶性化合物を含有する塗布液は、その粘度が比較的低くなる傾向があり、塗布性が良好である点でも好ましい。
【0061】
(1)−1 一般式(I)で表されるディスコティック液晶化合物
【化1】

【0062】
式中、Y11、Y12及びY13は、それぞれ独立に置換されていてもよいメチン又は窒素原子を表し;L1、L2及びL3は、それぞれ独立に単結合又は二価の連結基を表し;H1、H2及びH3は、それぞれ独立に一般式(I−A)又は(I−B)の基を表し;R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(I−R)を表す;
【化2】

【0063】
一般式(I−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
【0064】
【化3】

【0065】
一般式(I−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し;XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し;*は上記一般式(I)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し;**は上記一般式(I)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す;
【0066】
一般式(I−R)
*−(−L21−Q2n1−L22−L23−Q1
一般式(I−R)中、*は、一般式(I)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す;L21は単結合又は二価の連結基を表す;Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す;n1は、0〜4の整数を表す;L22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、**−NH−、**−SO2−、**−CH2−、**−CH=CH−又は**−C≡C−を表す;L23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−SO2−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及び−C≡C−並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す;Q1は重合性基又は水素原子を表す。
【0067】
前記式(I)で表される3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物の各符号の好ましい範囲、及び前記式(I)の化合物の具体例については、特開2010−244038号公報の段落[0013]〜[0077]記載を参照することができる。但し、本発明に使用可能なディスコティック液晶化合物は、前記式(I)の3置換ベンゼン系ディスコティック液晶化合物に限定されるものではない。
【0068】
トリフェニレン化合物としては、特開2007−108732号公報の段落[0062]〜[0067]記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
なお、前記3置換ベンゼン又はトリフェニレン化合物とともに、下記一般式(II)(より好ましくは一般式(II’))で表されるピリジニウム化合物の少なくとも1種、及び下記一般式(III)で表されるトリアジン環基を含む化合物の少なくとも1種を含有させ逆ハイブリッド配向状態を達成可能な組成物としてもよい。前記ピリジニウム化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.5〜3質量部であるのが好ましい。また、前記トリアジン環基を含む化合物の添加量は、ディスコティック液晶性化合物100質量部に対し、0.2〜0.4質量部であるのが好ましい。
【0070】
【化4】

【0071】
式中、L23及びL24はそれぞれ二価の連結基であり;R22は水素原子、無置換アミノ基、又は炭素原子数が1〜20の置換アミノ基であり;Xはアニオンであり;Y22及びY23はそれぞれ、置換されていてもよい5又は6員環を部分構造として有する2価の連結基であり;Z21はハロゲン置換フェニル、ニトロ置換フェニル、シアノ置換フェニル、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基および炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基からなる群より選ばれる一価の基であり;pは1〜10の数であり;並びにmは1又は2である。
【0072】
【化5】

【0073】
式中、R31、R32及びR33は、末端にCF3基を有するアルキル基又はアルコキシ基を表し、但し、アルキル基(アルコキシ基中のアルキル基も含む)中の隣接していない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子に置換されていてもよい;X31、X32及びX33は、アルキレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−、−SO2−及びそれらの群より選ばれる二価の連結基を少なくとも二つ組み合わせた基を表し;m31、m32及びm33はそれぞれ、1〜5の数である。上記式(III)中、R31、R32及びR33はそれぞれ、下記式で表される基であるのが好ましい。
−O(Cn2nn1O(Cm2mm1−Ck2k+1
式中、n及びmはそれぞれ1〜3であり、n1及びm1はそれぞれ1〜3であり、kは1〜10である。
【化6】

式(II’)中、式(II)と同一の符号は同一の意義であり;L25はL24と同義であり;R23、R24及びR25はそれぞれ、炭素原子数が1〜12のアルキル基を表し、n3は0〜4、n4は1〜4、及びn5は0〜4を表す。
る。
【0074】
[他の添加剤]
前記光学異方性層の形成に用いられる液晶性組成物は、他の添加剤の1種以上を含有していてもよい。使用可能な添加剤の例として、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等について説明する。
【0075】
空気界面配向制御剤:
前記組成物は、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶性組成物に含まれる液晶性化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。
【0076】
前記チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができるが、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族基、又は炭素原子数が6〜40の置換もしくは無置換脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1本以上有する化合物が好ましく、分子内に2本以上有する化合物が更に好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
また、特開2009−193046号公報等に記載のフルオロ脂肪族基含有ポリマーも同様な作用があるので空気界面配向制御剤として添加することができる。
【0077】
空気界面側の配向制御用添加剤の添加量としては、前記組成物(塗布液の場合は固形分、以下同様である)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%が更に好ましく、0.1質量%〜5質量%がより更に好ましい。
【0078】
ハジキ防止剤:
前記組成物に添加し、該組成物の塗布時のハジキを防止するための材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。
使用するポリマーとしては、前記組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。
ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
前記組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの添加量は、前記組成物に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0079】
重合開始剤:
前記組成物は、重合開始剤を含有しているのが好ましい。重合開始剤を含有する前記組成物を用いると、液晶相形成温度まで加熱した後、重合させ冷却することによって液晶状態の配向状態を固定化して、光学異方性層を作製することもできる。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応と電子線照射による重合反応が含まれるが、熱により支持体等が変形、変質するのを防ぐためにも、光重合反応又は電子線照射による重合反応が好ましい。
【0080】
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)等が挙げられる。
光重合開始剤の使用量は、前記組成物の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0081】
重合性モノマー:
前記組成物には、重合性のモノマーを添加してもよい。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、併用される液晶化合物と相溶性を有し、液晶性組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は、併用される液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜との密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0082】
前記組成物は、塗布液として調製してもよい。塗布液の調製に使用する溶剤としては、汎用の有機溶剤が好ましく用いられる。汎用の有機溶剤の例には、アミド系溶剤(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド系溶剤(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環系溶剤(例、ピリジン)、炭化水素系溶剤(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド系溶剤(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル系溶剤(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン系溶剤(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル系溶剤(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。エステル系溶剤及びケトン系溶剤が好ましく、特にケトン系溶剤が好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0083】
前記光学異方性層は、前記組成物を、配向状態とし、その配向状態を固定することで、作製することができる。以下に、製造方法の一例について説明するが、この方法に限定されるものではない。
まず、重合性液晶性化合物を少なくとも含有する組成物を支持体の表面上(配向膜を有する場合は配向膜表面)に塗布する。所望により加熱等して、所望の配向状態で配向させる。次に、重合反応等を進行させて、その状態を固定して、光学異方性層を形成する。この方法に用いられる前記組成物に添加可能な添加剤の例としては、前記した空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合開始剤、重合性モノマー等が挙げられる。
【0084】
塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により行うことができる。
【0085】
均一に配向した状態を実現するためには、配向膜を利用するのが好ましい。配向膜は、ポリマー膜(例えば、ポリビニルアルコール膜及びイミド膜等)の表面をラビング処理することで形成されるものが好ましい。本発明に利用するのに好ましい配向膜の例には、特開2006−276203号公報の[0130]〜[0175]に記載のあるアクリル酸コポリマー又はメタクリル酸コポリマーの配向膜が含まれる。当該配向膜を利用すると、液晶化合物のゆらぎを抑制でき高コントラスト化が達成できるので好ましい。
【0086】
次に、配向状態を固定するために、重合を実施するのが好ましい。前記組成物中に光重合開始剤を含有させ、光照射により重合を開始するのが好ましい。光照射には、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ/cm2〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ/cm2〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
【0087】
本発明で配向状態が固定化された状態とは、その配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様ではあるが、それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該固定化された組成物に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を指すものである。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性層が形成された際に、前記組成物はもはや液晶性を示す必要はない。例えば、結果的に熱、光等による反応により重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性化合物が液晶性を失ってもよい。
【0088】
前記光学異方性層の厚さについては特に制限されないが、一般的には、0.1〜10μm程度であるのが好ましく、0.5〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0089】
前記光学異方性層の形成には、配向膜を利用してもよく、配向膜としては、ポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを主成分とする膜の表面をラビング処理したもの等を利用することができる。
【0090】
なお、本発明に利用する前記位相差フィルム及び光学異方性層は、長尺の状態で連続的に製造されることが好ましい。更に、長手方向に対して遅相軸が平行でも直交でもない方向にあることが、ロールツーロールの方式で、偏光膜と、その遅相軸を偏光膜の吸収軸に対して45°又は135°として貼り合わせできるので好ましい。すなわち、位相差フィルム及び光学異方性層の遅相軸と長辺とのなす角度は、5〜85°であることが好ましい。
液晶組成物から形成される光学異方性層の遅相軸の角度は、ラビングの角度で調整できる。延伸フィルムの遅相軸は、延伸方向によって遅相軸の角度が調整できる。
【0091】
上記した通り、保護部材A2は、互いに異なる方向に面内遅相軸を有し、それぞれλ/4機能を有する第1及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を有する。パターン光学異方性層は、液晶組成物から形成することができる。
【0092】
パターン光学異方性層の形成方法として、以下の態様が挙げられる。
第1の態様は、液晶の配向制御に影響を与える複数の作用を利用し、その後、外部刺激(熱処理等)によりいずれかの作用を消失させて、所定の配向制御作用を支配的にする方法である。例えば、配向膜による配向制御能と、液晶組成物中に添加される配向制御剤の配向制御能との複合作用により、液晶を所定の配向状態とし、それを固定して一方の位相差領域を形成した後、外部刺激(熱処理等)により、いずれかの作用(例えば配向制御剤による作用)を消失させて、他の配向制御作用(配向膜による作用)を支配的にし、それによって他の配向状態を実現し、それを固定して他方の位相差領域を形成する。例えば、後述する所定のピリジニウム化合物又はイミダゾリウム化合物は、ピリジニウム基又はイミダリウム基が親水的であるため前記親水的なポリビニルアルコール配向膜表面に偏在する。特に、ピリジニウム基が、さらに、水素原子のアクセプターの置換基であるアミノ基が置換されていると、ポリビニルアルコールとの間に分子間水素結合が発生し、より高密度に配向膜表面に偏在すると共に、水素結合の効果により、ピリジニウム誘導体がポリビニルアルコールの主鎖と直交する方向に配向するため、ラビング方向に対して液晶の直交配向を促進する。後述する所定のピリジニウム誘導体等は、分子内に複数個の芳香環を有しているため、液晶、特にディスコティック液晶との間に強い分子間π−π相互作用が起こり、ディスコティック液晶の配向膜界面近傍における直交配向を誘起する。特に、親水的なピリジニウム基に疎水的な芳香環が連結されていると、その疎水性の効果により垂直配向を誘起する効果も有する。しかし、その効果は、ある温度を超えて加熱すると、水素結合が切断され、前記ピリジニウム化合物等の配向膜表面における偏在性及び密度が低下し、その作用を消失する。その結果、ラビング配向膜そのものの規制力により液晶が配向し、液晶は平行配向状態になる。この方法の詳細については、特願2010−141346号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0093】
第2の態様は、パターン配向膜を利用する態様である。この態様では、互いに異なる配向制御能を有するパターン配向膜を形成し、その上に、液晶組成物を配置し、液晶を配向させる。液晶は、パターン配向膜のそれぞれの配向制御能によって配向規制され、互いに異なる配向状態を達成する。それぞれの配向状態を固定することで、配向膜のパターンに応じて第1及び第2の位相差領域のパターンが形成される。パターン配向膜は、印刷法、ラビング配向膜に対するマスクラビング、光配向膜に対するマスク露光等を利用して形成することができる。また、配向膜を一様に形成し、配向制御能に影響を与える添加剤(例えば、上記オニウム塩等)を別途所定のパターンで印刷することによって、パターン配向膜を形成することもできる。大掛かりな設備が不要である点や製造容易な点で、印刷法を利用する方法が好ましい。この方法の詳細については、特願2010−173077号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0094】
また、第1及び第2の態様を併用してもよい。一例は、配向膜中に光酸発生剤を添加する例である。この例では、配向膜中に光酸発生剤を添加し、パターン露光により、光酸発生剤が分解して酸性化合物が発生した領域と、発生していない領域とを形成する。光未照射部分では光酸発生剤はほぼ未分解のままであり、配向膜材料、液晶、及び所望により添加される配向制御剤の相互作用が配向状態を支配し、液晶を、その遅相軸がラビング方向と直交する方向に配向させる。配向膜へ光照射し、酸性化合物が発生すると、その相互作用はもはや支配的ではなくなり、ラビング配向膜のラビング方向が配向状態を支配し、液晶は、その遅相軸をラビング方向と平行にして平行配向する。前記配向膜に用いられる光酸発生剤としては、水溶性の化合物が好ましく用いられる。使用可能な光酸発生剤の例には、Prog. Polym. Sci., 23巻、1485頁(1998年)に記載の化合物が含まれる。前記光酸発生剤としては、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が特に好ましく用いられる。この方法の詳細については、特願2010−289360号明細書に記載があり、その内容は本明細書に参照として取り込まれる。
【0095】
(3)表面層
前記保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bの表面には、目的に応じて必要な表面層を単独又は複数層設けてもよい。好ましい態様としては、光学異方性層の上にハードコート層が積層された態様、光学異方性層の上に反射防止層が積層された態様、光学異方性層の上にハードコート層が積層され、その上に更に反射防止層が積層された態様、等が挙げられる。
【0096】
[反射防止層]
反射防止層は、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して設計された,少なくとも一層以上の層からなる層である。
反射防止層は、最も単純な構成では、フィルムの最表面に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8−122504号公報、特開平8−110401号公報、特開平10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、膜厚変動に対するロバスト性に優れる3層構成の反射防止フィルムは特開2008−262187号公報に記載されている。上記3層構成の反射防止フィルムは、画像表示装置の表面に設置した場合、反射率の平均値を0.5%以下とすることができ、映り込みを著しく低減することができ、立体感に優れる画像を得ることができる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層、防眩性のハードコート層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報、特開2007−264113号公報等)等が挙げられる。
【0097】
ハードコート層や反射防止層を有する場合の具体的な層構成の例を下記に示す。以下表記中−*/は表面層が積層される基材を表す。具体的には、−*/は、上述の光学異方性支持体、光学異方性層、支持体などを表す。
・−*/ハードコート層、
・−*/低屈折率層、
・−*/防眩層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/低屈折率層、
・−*/ハードコート層/防眩層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/ハードコート層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/防眩層/高屈折率層/低屈折率層
・−*/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
上記の各構成のなかでも、光学異方性層の上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の表面層を直接形成することが好ましい。また、光学異方性層を含む光学フィルムと、別途、支持体上にハードコート層、防眩層、反射防止層等の層を設けた光学フィルムとを貼合積層して製造してもよい。
【0098】
[ハードコート層]
保護部材A1又は保護部材A2に設ける表面フィルムには、フィルムの物理的強度を付与するために、ハードコート層を設けることができる。本発明においては、ハードコート層を設けなくてもよいが、ハードコート層を設けた方が鉛筆引掻き試験などの耐擦傷性面が強くなり、好ましい。
好ましくは、ハードコート層上に低屈折率層が設けられ、更に好ましくはハードコート層と低屈折率層の間に中屈折率層、高屈折率層が設けられ、反射防止フィルムを構成する。ハードコート層は、二層以上の積層から構成されてもよい。
【0099】
本発明におけるハードコート層の屈折率は、反射防止性の表面フィルムを得るための光学設計から、屈折率が1.48〜2.00の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.48〜1.70である。
【0100】
ハードコート層の膜厚は、表面フィルムに充分な耐久性、耐衝撃性を付与する観点から、通常0.5μm〜50μm程度とし、好ましくは1μm〜20μm、更に好ましくは5μm〜20μmである。
ハードコート層の強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。更に、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0101】
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性官能基を有する化合物が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基及び−C(O)OCH=CH2が好ましい。
【0102】
電離放射線硬化性化合物の具体例としては、アルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類、エチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類、エポキシ(メタ)アクリレート類、ウレタン(メタ)アクリレート類、ポリエステル(メタ)アクリレート類等を挙げることができる。
【0103】
(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレート系化合物類は市販されているものを用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKエステル A−TMMT、日本化薬(株)製KAYARAD DPHA等を挙げることができる。多官能モノマーについては、特開2009−98658号公報の段落[0114]〜[0122]に記載されており、本発明においても同様である。
【0104】
電離放射線硬化性化合物としては、水素結合性の置換基を有する化合物であることが、支持体との密着性、低カール性の点から好ましい。水素結合性の置換基とは、窒素、酸素、硫黄、ハロゲンなどの電気陰性度が大きな原子と水素結合とが共有結合で結びついた置換基を指し、具体的にはOH−、SH−、−NH−、CHO−、CHN−などが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレート類や水酸基を有する(メタ)アクリレート類が好ましい。市販されている化合物を用いることもでき、新中村化学工業(株)社製NKオリゴ U4HA、同NKエステルA−TMM−3、日本化薬(株)製KAYARAD PET−30等を挙げることができる。
【0105】
ハードコート層には、内部散乱性付与の目的で、平均粒径が1.0〜10.0μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子を含有してもよい。
【0106】
ハードコート層のバインダーには、ハードコート層の屈折率を制御する目的で、各種屈折率モノマー又は無機粒子、或いは両者を加えることができる。無機粒子には屈折率を制御する効果に加えて、架橋反応による硬化収縮を抑える効果もある。本発明では、ハードコート層形成後において、前記多官能モノマー及び/又は高屈折率モノマー等が重合して生成した重合体、その中に分散された無機粒子を含んでバインダーと称する。
【0107】
[防眩層]
防眩層は、表面散乱による防眩性と、好ましくは表面フィルムの硬度、耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。
防眩層については特開2009−98658号公報の段落[0178]〜[0189]に記載されており、本発明においても同様である。
【0108】
[高屈折率層及び中屈折率層]
高屈折率層の屈折率は、1.70〜1.74であることが好ましく、1.71〜1.73であることがより好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層の屈折率は、1.60〜1.64であることが好ましく、1.61〜1.63であることが更に好ましい。
高屈折率層及び中屈折率層の形成方法は化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、オールウェット塗布による方法が好ましい。
【0109】
上記中屈折率層は、上記高屈折率層と屈折率を異ならせた以外は同様の材料を用いて同様に調整できるので、以下、特に高屈折率層について説明する。
上記高屈折率層は、無機微粒子、3官能以上の重合性基を有する硬化性化合物(以下、「バインダー」と称する場合もある)、溶媒及び重合開始剤を含有する塗布組成物を塗布し、溶媒を乾燥させた後、加熱、電離放射線照射あるいは両手段の併用により硬化して形成されたものであるのが好ましい。硬化性化合物や開始剤を用いる場合は、塗布後に熱及び/又は電離放射線による重合反応により硬化性化合物を硬化させることで、耐傷性や密着性に優れる中屈折率層や高屈折率層が形成できる。
【0110】
[低屈折率層]
本発明における低屈折率層は、屈折率が1.30〜1.47であることが好ましい。表面フィルムが多層薄膜干渉型の反射防止フィルム(中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層)の場合の低屈折率層の屈折率は1.33〜1.38であることが望ましく、更に望ましくは1.35〜1.37が望ましい。上記範囲内とすることで反射率を抑え、膜強度を維持することができ、好ましい。低屈折率層の形成方法も化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により、無機物酸化物の透明薄膜を用いることもできるが、低屈折率層用組成物を用いてオールウェット塗布による方法を用いることが好ましい。
低屈折率層は、含フッ素硬化性ポリマー、含フッ素硬化性モノマー、非含フッ素硬化性モノマー、低屈折率粒子などを構成成分として形成することができる。これら化合物は、特開2010−152311号公報[0018]〜[0168]段落に記載のものを用いることができる。
【0111】
低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましく、1%以下であることが最も好ましい。
低屈折率層まで形成した反射防止フィルムの強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が95゜以上であることが好ましい。更に好ましくは102゜以上である。特に、接触角が105°以上であると、指紋に対する防汚性能が著しく良化するため、特に好ましい。また、水の接触角が102°以上で、かつ、表面自由エネルギーが25dyne/cm以下であることがより好ましく、23dyne/cm以下であることが特に好ましく、20dyne/cm以下であることが更に好ましい。最も好ましくは、水の接触角が105°以上で、かつ、表面自由エネルギーが20dyne/cm以下である。
【0112】
(4)紫外線吸収剤
本発明では、保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bは、紫外線吸収剤を含有しているのが好ましい。保護部材A1又は保護部材A2及びλ/4板Bが積層構造体である態様では、少なくとも1つの層が紫外線吸収剤を含有しているのが好ましい。例えば、透明支持体、光学異方性層、反射防止層、又はそれらを接着する接着剤を有する態様では、これらのいずれかに紫外線吸収剤を含有させることが好ましい。また、表面フィルムのハードコート層及び/又は反射防止層には、紫外線吸収剤を含有させることができる。紫外線吸収剤としては、紫外線吸収性を発現できるもので、公知のものがいずれも使用できる。そのような紫外線吸収剤のうち、紫外線吸収性が高く、電子画像表示装置で用いられる紫外線吸収能(紫外線カット能)を得るためにベンゾトリアゾール系又はヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤が好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用することができる。
【0113】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−ter―ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、ベンゼンプロパン酸−3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1、1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C7〜9−ブランチ直鎖アルキルエステル、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0114】
ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2'−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチルオキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5,5′−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩等が挙げられる。
【0115】
紫外線吸収剤の含有量は、求める紫外線透過率や紫外線吸収剤の吸光度にもよるが、前記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、通常20質量部以下、好ましくは1〜20質量部である。紫外線吸収剤の含有量が20質量部よりも多い場合には、硬化性組成物の紫外線による硬化性が低下する傾向があると共に、光学フィルムの可視光線透過率が低下するおそれもある。一方、1質量部より少ない場合には、光学フィルムの紫外線吸収性を十分に発揮することができなくなる。
【0116】
2.偏光膜
本発明の時分割式3D表示システムに利用される画像表示装置は、その視認側に少なくとも1つの偏光膜(第1の偏光膜)を有する。画像表示装置が、透過モードの液晶パネルである態様では、液晶セルのバックライト側にも偏光膜を有する。また、本発明のシステムに利用される、時分割画像表示遮断器が液晶セルのシャッター機能を利用した態様では、偏光膜を1枚、又は液晶セルを挟んで2枚配置する。
【0117】
本発明に利用される偏光膜については特に制限はなく、通常用いられている偏光膜を利用することができ、例えば、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を利用した染料系偏光膜、及びポリエン系偏光膜のいずれも用いることができる。ヨウ素系偏光膜、及び染料系偏光膜は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素又は二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
【0118】
なお、偏光膜は、その両面に保護フィルムが貼合された偏光板として用いられることが一般的である。本発明でも、偏光板を用いてもよい。図5及び図6に、保護部材A1又は保護部材A2又はλ/4板Bを有する偏光板の例を示すがこれに限定されるものではない。図6中の光学補償フィルムは、液晶セルの視野角を補償する機能を有するものである。
【0119】
3.液晶セル
本発明の時分割方式3D表示システムに用いられる画像表示装置及び時分割画像表示遮断器の構成については特に制限はない。一例は、いずれも液晶セルを利用した態様である。利用可能な液晶セルの構成については特に制限はない。液晶セルは、一対の基板及び液晶層の他に、各種の方式の液晶セルとするのに必要な各種の構成要素を備えていてもよい。液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、STN(SuperTwisted Nematic)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA(Multidomain Vertical Alignment)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)方式、ハーフトーングレイスケール方式、ドメイン分割方式、あるいは強誘電性液晶、反強誘電性液晶を利用した表示方式等の各種の方式が挙げられる。また、液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、並びにTFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であってもよい。カラーフィルタを使用しないフィールドシーケンシャル方式であってもよい。
【0120】
画像表示装置に利用される液晶セルは、VAモード、OCBモード、IPSモード、又はTNモードであることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer-Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の透過軸は直交している。光学補償シートを用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
【0121】
例えば、画像表示装置用の液晶セルは、表示性能の観点で選択されるであろうし、また時分割画像表示遮断器のシャッター機能に利用する液晶セルは、右目と左目の映像に対応した応答を行うので、応答速度及び透過率の観点で選択され、速いTNモードの液晶セルを用いることが好ましい。
【実施例】
【0122】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
なお、実施例および比較例において、Re(550)、Rth(550)及びRe波長分散は、特に断りがない限り、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて波長550nmにおいて測定した値を用いた。
【0123】
1.時分割方式3D表示システム
(1)λ/4フィルムの作製
(λ/4フィルム1aの作製)
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)を固定端二軸延伸し、ノルボルネン系λ/4フィルム1aを作製した。ノルボルネン系λ/4フィルム1aのRe(550)は、141nm、Rth(550)は、155nmであった。また、λ/4フィルム1aのRe波長分散はフラット分散であった。
【0124】
(λ/4フィルム2aの作製)
市販のノルボルネン系ポリマーフィルム「ZEONOR ZF14」((株)オプテス製)を、温度156℃にて、延伸倍率45%で自由端一軸延伸を行いうことで、ノルボルネン系λ/4フィルム2aを作製した。ノルボルネン系λ/4フィルム2aのRe(550)は141nm、Rth(550)は85nmであった。また、λ/4フィルム2aのRe波長分散はフラット分散であった。
【0125】
(λ/4フィルム3aの作製)
市販のポリカーボネート系フィルム「ピュアエースWR W−142」(帝人化成(株)製)をλ/4フィルム3aとして使用した。λ/4フィルム3aのRe(550)は138nm、Rth(550)は72nmであった。
【0126】
(λ/4フィルムAの準備)
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT1)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液(内層用ドープA及び外層用ドープB)を調製した。
【0127】
──────────────────────────────────────
セルロースアセテート溶液組成(質量部) 内層 外層
──────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアセテート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子 0 0.8
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
下記レターデーション上昇剤(A) 1.7 0
──────────────────────────────────────
【0128】
【化7】

【0129】
得られた内層用ドープA及び外層用ドープBを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアセテートフィルム(厚み80μm(外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm))を製造した。作製したセルロースアセテートフィルムT1のRe(550)は5nm、Rth(550)は90nmであった。
【0130】
<液晶性化合物を含む光学異方性層の形成>
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアシレートフィルムT1を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムのバンド面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0131】
<アルカリ溶液組成>
────────────────────────────────────
アルカリ溶液組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0132】
<配向膜の形成>
上記のように鹸化処理した長尺状のセルロースアセテートフィルムに、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥した。
【0133】
────────────────────────────────────
配向膜塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー2959、チバ・ジャパン製) 0.3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0134】
【化8】

【0135】
<ディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層の形成>
上記作製した配向膜に連続的にラビング処理を施した。このとき、長尺状のフィルムの長手方向と搬送方向は平行であり、フィルム長手方向に対して、ラビングローラーの回転軸は時計回りに45°の方向とした。
【0136】
下記の組成のディスコティック液晶化合物を含む塗布液Aを上記作製した配向膜上にワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度(V)は36m/minとした。塗布液の溶媒の乾燥及びディスコティック液晶化合物の配向熟成のために、120℃の温風で90秒間加熱した。続いて、80℃にてUV照射を行い、液晶化合物の配向を固定化し厚さ1.77μmの光学異方性層を形成し、λ/4フィルムAを得た。
【0137】
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液(A)の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――───
下記のディスコティック液晶化合物 91質量部
アクリレートモノマー *1 5質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のピリジニウム塩 0.5質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP1) 0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(FP3) 0.1質量部
メチルエチルケトン 189質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――───
*1:アクリレートモノマーは、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)を使用した。
【0138】
【化9】

【化10】

【0139】
作製したフィルムλ/4フィルムAは、550nmにおけるRe(550)が138nm、Rth(550)が54nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0140】
(λ/4フィルム4aの作製)
上記のセルロースアセテートフィルムT1の作製おいて、ドープAの流量を調節してフィルムの全層の膜厚を80μmから55μmに変えた以外は同様にして、セルロースアセテートフィルムT2を作製した。セルロースアセテートフィルムT2のRe(550)は2nm、Rth(550)は60nmであった。
【0141】
作製したλ/4フィルムAとセルロースアセテートフィルムT2を準備した。続いて、λ/4フィルムAのセルロースアセテートフィルム側に易接着層を介してセルロースアセテートフィルムT2を貼合し、λ/4フィルム4aとして使用した。
【0142】
(λ/4フィルム5aの作製)
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT3)の作製>
セルロースアセテートフィルムT1の作製おいて、ドープAの流量を調節してフィルムの全層の膜厚を80μmから49μmに変えた以外は同様にして、セルロースアセテートフィルムT3を作製した。セルロースアセテートフィルムT3のRe(550)は2nm、Rth(550)は53nmであった。
【0143】
作製したλ/4フィルムAとセルロースアセテートフィルムT3を準備した。続いて、λ/4フィルムAのセルロースアセテートフィルム側に易接着層を介してセルロースアセテートフィルムT3を貼合し、λ/4フィルム5aとして使用した。
【0144】
(λ/4フィルム6aの作製)
λ/4フィルムAの準備において、光学異方性層形成時のワイヤーバー種及び塗布液のメチルエチルケトンの量を適宜調整し、フィルム長手方向に対するラビングローラーの回転軸を反時計回りに45°の方向とした以外はλ/4フィルムAの準備と同様にしてλ/4フィルム6aを作製した。光学異方性層の厚さは1.60μmであった。作製したλ/4フィルム6aの550nmにおけるRe(550)が125nm、Rth(550)が60nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0145】
(λ/4フィルム7aの作製)
λ/4フィルムAの準備において、セルロースアセテートフィルムT1を市販のセルロースアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)とし、光学異方性層の厚さを1.77μmから1.60μmとした以外はフィルムAの準備と同様の方法でλ/4フィルム7aを作製した。
【0146】
作製したλ/4フィルム7aは、550nmにおけるRe(550)が125nm、Rth(550)が8nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、塗布面を上に向けたときに遅相軸は反時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0147】
(λ/4フィルム8aの作製)
λ/4フィルム7aの作製において、光学異方性層形成時のワイヤーバー種及び塗布液のメチルエチルケトンの量を適宜調整し、光学異方性層の厚さを1.77μmから1.87μmとした以外はλ/4フィルム7aの作製と同様の方法でλ/4フィルム8aを作製した。
作製したλ/4フィルム8aは、550nmにおけるRe(550)が145nm、Rth(550)が0nmであった。λ/4フィルム8aの光学異方性層についても、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0148】
(λ/4フィルム9aの作製)
λ/4フィルム7aの作製において、光学異方性層形成時のワイヤーバー種及び塗布液のメチルエチルケトンの量を適宜調整し、光学異方性層の厚さを1.77μmから1.48μmとした以外はλ/4フィルム7aの作製と同様の方法でλ/4フィルム9aを作製した。
作製したλ/4フィルム9aは、550nmにおけるRe(550)が115nm、Rth(550)が12nmであった。λ/4フィルム9aの光学異方性層についても、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0149】
(λ/4フィルム10aの作製)
λ/4フィルム7aの作製において、光学異方性層形成時のワイヤーバー種及び塗布液のメチルエチルケトンの量を適宜調整し、光学異方性層の厚さを1.77μmから1.67μmとした以外はλ/4フィルム7aの作製と同様の方法でλ/4フィルム10aを作製した。
作製したλ/4フィルム10aは、550nmにおけるRe(550)が130nm、Rth(550)が6nmであった。λ/4フィルム10aの光学異方性層についても、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0150】
(λ/4フィルム11aの作製)
λ/4フィルム7aの作製において、光学異方性層形成時のワイヤーバー種及び塗布液のメチルエチルケトンの量を適宜調整し、光学異方性層の厚さを1.77μmから2.08μmとした以外はλ/4フィルム7aの作製と同様の方法でλ/4フィルム11aを作製した。作製したλ/4フィルム11aは、550nmにおけるRe(550)が160nm、Rth(550)が−6nmであった。λ/4フィルム11aの光学異方性層についても、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0151】
(λ/4フィルム12aの作製)
λ/4フィルム7aの作製において、光学異方性層の支持体としてTD80ULを以下のように作製したセルロースアシレートフィルムT4に変えた以外は、フィルム7aの作製と同様の方法でフィルム12aを作製した。
λ/4フィルム12aの光学異方性層についても、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。λ/4フィルム12aのRe(550)は130nm、Rth(550)は−59nmであった。
【0152】
<セルロースアシレートフィルムT4の作製>
全置換度2.97(アセチル置換度0.45、プロピオニル置換度2.52)のセルロースアシレートを調製した。触媒としての硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)とカルボン酸無水物との混合物を−20℃に冷却してからパルプ由来のセルロースに添加し、40℃でアシル化を行った。この時、カルボン酸無水物の種類及びその量を調整することで、アシル基の種類及びその置換比を調整した。またアシル化後に40℃で熟成を行って全置換度を調整した。
【0153】
<<セルロースアシレート溶液の調製>>
1)セルロースアシレート
調製したセルロースアシレートを120℃に加熱して乾燥し、含水率を0.5質量%以下とした後、30質量部を溶媒と混合させた。
2)溶媒
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール(81/15/4質量部)を溶媒として用いた。なお、これらの溶媒の含水率は、いずれも0.2質量%以下であった。
3)添加剤
全ての溶液調製に際し、トリメチロールプロパントリアセテート0.9質量部を添加した。また、全ての溶液調製に際し、二酸化ケイ素微粒子(粒径20nm、モース硬度:約7)0.25質量部を添加した。
4)膨潤、溶解
攪拌羽根を有し外周を冷却水が循環する400リットルのステンレス製溶解タンクに、上記溶媒、添加剤に加え、下記UV吸収剤Aを3.0%投入して撹拌、分散させながら、上記セルロースアシレートを徐々に添加した。投入完了後、室温にて2時間撹拌し、3時間膨潤させた後に再度撹拌を実施し、セルロースアシレート溶液を得た。
なお、攪拌には、15m/sec(剪断応力5×104kgf/m/sec2)の周速で攪拌するディゾルバータイプの偏芯攪拌軸及び中心軸にアンカー翼を有して周速1m/sec(剪断応力1×104kgf/m/sec2)で攪拌する攪拌軸を用いた。膨潤は、高速攪拌軸を停止し、アンカー翼を有する攪拌軸の周速を0.5m/secとして実施した。
【0154】
【化11】

5)ろ過
上記で得られたセルロースアシレート溶液を、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(#63、東洋濾紙(株)製)で濾過し、更に絶対濾過精度2.5μmの濾紙(FH025、ポール社製)にて濾過してセルロースアシレート溶液を得た。
【0155】
上記セルロースアシレート溶液を30℃に加温し、流延ギーサー(特開平11−314233号公報に記載)を通して15℃に設定したバンド長60mの鏡面ステンレス支持体上に流延した。流延スピードは15m/分、塗布幅は200cmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをバンドから剥ぎ取り、45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、更に140℃で10分乾燥して、セルロースアシレートフィルムT4を作製した。
得られたセルロースアシレートフィルムT4のRe(550)は0nm、Rth(550)は−25nmであった。
【0156】
(λ/4フィルム13aの作製)
λ/4フィルム7aの作製において、光学異方性層の支持体としてTD80ULを以下のように作製したセルロースアシレートフィルムT5に変えた以外は、フィルム7aの作製と同様の方法でフィルム13aを作製した。
λ/4フィルム13aの光学異方性層についても、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。λ/4フィルム13aのRe(550)は125nm、Rth(550)は−31nmであった。
【0157】
<セルロースアシレートフィルムT5の作製>
セルロースアシレートフィルムT4の作製において、UV吸収剤Aの添加量を1.2%にし、さらに下記のRth低減剤Bを11%入れた以外はセルロースアシレートフィルムT4の製造方法と同様にしてセルロースアシレートフィルムT5を作製した。面内レターデーションRe(550)は1nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は−1nmであった。
【0158】
【化12】

【0159】
(λ/4フィルム14aの作製)
市販のセルロースアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)をアルカリ溶液でケン化後、このフィルム上に下記の組成の配向膜塗布液をワイヤーバーコーターで20ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜に長手方向に対して、45°方向にラビング処理を施して配向膜を形成した。なお、ケン化は、セルロースアシレートフィルムT1と同様の処理にて行った。
【0160】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
配向膜塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0161】
【化13】

【0162】
次に、下記の組成の光学異方性層塗布液を、ワイヤーバーで塗布した。
────────────────────────────────────
光学異方性層塗布液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶性化合物 1.8g
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 0.2g
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 0.06g
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 0.02g
メチルエチルケトン 3.9g
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0163】
【化14】

【0164】
これを125℃の恒温槽中で3分間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。次に、120W/cm高圧水銀灯を用いて、30秒間UV照射し棒状液晶性化合物を架橋した。UV硬化時の温度を80℃として、光学異方性層を得た。光学異方性層の厚さは、1.81μmであった。その後、室温まで放冷した。このようにして、λ/4フィルム14aを製作した。形成した光学異方性層の状態を調べ、塗布ムラ(塗布液が配向膜にはじかれて生じたムラ)や配向の乱れがないことを確認した。
作製したλ/4フィルム14aは、550nmにおけるRe(550)が125nm、Rth(550)が95nmであった。
【0165】
(λ/4フィルム15aの作製)
λ/4フィルム7aの作製において、光学異方性層の支持体としてTD80ULを以下のように作製したセルロースアシレートフィルムT6に変えた以外は、フィルム7aの作製と同様の方法でフィルム15aを作製した。
作製したλ/4フィルム15aは、550nmにおけるRe(550)が138nm、Rth(550)が0nmであり、光学異方性層の厚さは1.77μmであった。λ/4フィルム15aの光学異方性層についても、ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0166】
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT6)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、固形分濃度22質量%のセルロースアセテート溶液(ドープ6A)を調製した。
【0167】
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアセテート溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢化度60.7〜61.1%のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン328 チバ・ジャパン製) 0.9質量部
紫外線吸収剤(チヌビン326 チバ・ジャパン製) 0.2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 336質量部
メタノール(第2溶媒) 29質量部
1−ブタノール(第3溶媒) 11質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0168】
上記ドープ6Aに平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)をセルロースアセテート100質量部に対して0.02質量添加したマット剤入りドープ6Bを調製した。ドープ6Aと同じ溶剤組成で固形分濃度が19質量%になるように調節した。
【0169】
ドープ6Aを主流とし、マット剤入りドープ6Bを最下層及び最上層になるようにして、バンド延伸機を用いて流延した。バンド上での膜面温度が40℃となってから、70℃の温風で1分乾燥し、バンドからフィルムをはがし140℃の乾燥風で10分乾燥し、残留溶剤量が0.3質量%のセルロースアセテートフィルムT6を作製した。マット剤入りの最下層及び最上層はそれぞれ3μmに、主流は74μmになるように流量を調節した。
【0170】
得られた長尺状のセルロースアセテートフィルムT6の幅は2300mmであり、厚さは80μmであった。また、面内レターデーションRe(550)は0nm、厚み方向のレターデーションRth(550)は39nmであった。
【0171】
(λ/4フィルム16aの作製)
λ/4フィルムAの準備において、光学異方性層形成時のワイヤーバー種及び塗布液のメチルエチルケトンの量を適宜調整し、フィルム長手方向に対するラビングローラーの回転軸を反時計回りに45°の方向とした以外はλ/4フィルムAの準備と同様にしてλ/4フィルム16aを作製した。光学異方性層の厚さは2.06μmであった。作製したλ/4フィルム16aの550nmにおけるRe(550)が160nm、Rth(550)が45nmであった。遅相軸の方向はラビングローラーの回転軸と直交していた。すなわち、支持体の長手方向に対して、遅相軸は時計回りに45°の方向であった。ディスコティック液晶性分子の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶がフィルム面に対して垂直に配向していることを確認した。
【0172】
作製したλ/4フィルム1a〜16aの面内レターデーションRe(550)及び厚み方向のレターデーションRth(550)をまとめた表を以下に示す。
【0173】
【表1】

【0174】
(λ/4積層体1bの作製)
<表面フィルムの準備>
<<ハードコート層用塗布液の調製>>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過してハードコート層用塗布液(固形分濃度58質量%)とした。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハードコート層用塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
酢酸メチル 36.2質量部
メチルエチルケトン 36.2質量部
(a)モノマー:下記構造のPETA(新中村化学工業(株)製) 77.0質量部
(b)下記構造のウレタンモノマー 20.0質量部
光重合開始剤 *1 3.0質量部
下記構造のレベリング剤(SP-13) 0.02質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製
【化15】

【化16】

【化17】

【0175】
<<低屈折率層用塗布液の調製>>
各成分を下記のように混合し、MEK/MMPG−Acの85/15混合物(質量比)に溶解して固形分5質量%の低屈折率層塗布液を調製した(MEKは、メチルエチルケトンを意味し、MMPG−Acは、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを意味する。)。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
低屈折率層塗布液の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記のパーフルオロオレフィン共重合体 15質量部
DPHA *1 7質量部
ディフェンサMCF−323 *2 5質量部
下記の含フッ素重合性化合物 20質量部
中空シリカ粒子固形分 *3 50質量部
イルガキュア127 *4 3質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
*2:ディフェンサMCF−323:フッ素系界面活性剤、大日本インキ化学工業(株)製
*3:中空シリカ:中空シリカ粒子分散液(平均粒子サイズ45nm、屈折率1.25、表面をアクリロイル基を有するシランカップリング剤で表面処理、MEK分散液濃度20%)
*4:イルガキュア127:光重合開始剤、チバ・ジャパン(株)製
【化18】

【0176】
<<ハードコート層及び低屈折率層の形成>>
ガラス板上に、調製したハードコート層用塗布液をダイコーターを用いて塗布した(固形分塗布量:12g/m2)。100℃で60秒乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層(反射防止層)付きガラス板を作製した。このハードコート層の上に、上記低屈折率層用塗布液を塗布した。低屈折率層の乾燥条件は70℃、60秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量300mJ/cm2の照射量とした。低屈折率層の屈折率は1.34、膜厚は95nmであった。以上のように、ハードコート層、低屈折率層がこの順で積層されたガラス板を作製した。
【0177】
ガラス板上にハードコート層、低屈折率層を形成した後、ハードコート層及び低屈折率層をガラスから剥離した。この層を粘着剤を用いて、λ/4フィルム1aに貼合し、λ/4積層体1bを作製した。λ/4積層体1bのRe(550)は141nm、Rth(550)は155nmであった。
【0178】
(λ/4積層体2bの作製)
λ/4積層体1bの作製において、λ/4フィルム1aをλ/4フィルム2aに代えた以外はλ/4積層体1bの作製と同様にしてλ/4積層体2bを作製した。λ/4積層体2bのRe(550)は141nm、Rth(550)は85nmであった。
【0179】
(λ/4積層体2b2の作製)
市販のセルロースアシレート系フィルムを支持体とする低反射フィルムのクリアLR「CV−LC」(富士フイルム社製)を準備した。続いて、λ/4フィルム2aに易接着層を介してCV-LCの支持体面を貼合し、λ/4積層体2b2を作製した。λ/4積層体2b2のRe(550)は141nm、Rth(550)は125nmであった。
【0180】
(λ/4積層体3bの作製)
λ/4積層体1bの作製において、λ/4フィルム1aをλ/4フィルム3aに代えた以外はλ/4積層体1bの作製と同様にしてλ/4積層体3bを作製した。λ/4積層体3bのRe(550)は138nm、Rth(550)は72nmであった。
【0181】
(λ/4積層体4bの作製)
λ/4積層体2b2の作製において、λ/4フィルム2aをλ/4フィルム4aに代えた以外はλ/4積層体2b2の作製と同様にしてλ/4積層体4bを作製した。λ/4積層体4bのRe(550)は138nm、Rth(550)は155nmであった。
【0182】
(λ/4積層体5bの作製)
λ/4積層体4bの作製において、λ/4フィルム4aをλ/4フィルム5aに代えた以外はλ/4積層体4bの作製と同様にしてλ/4積層体5bを作製した。λ/4積層体5bのRe(550)は138nm、Rth(550)は148nmであった。
【0183】
(λ/4積層体6bの作製)
λ/4積層体1bの作製において、λ/4フィルム1aをλ/4フィルム6aに代えた以外はλ/4積層体1bの作製と同様にしてλ/4積層体6bを作製した。なお、ハードコート層などの表面フィルムは、λ/4フィルム6aの光学異方性層側にハードコート層を形成した。λ/4積層体6bのRe(550)は125nm、Rth(550)は60nmであった。
【0184】
(λ/4積層体6b2の作製)
λ/4積層体2b2の作製において、λ/4フィルム2aをλ/4フィルム6aに代えた以外はλ/4積層体2b2の作製と同様にしてλ/4積層体6b2を作製した。なお、λ/4フィルム6aの光学異方性層側に易接着層を介してCV-LCの支持体面を貼合した。λ/4積層体6b2のRe(550)は125nm、Rth(550)は100nmであった。
【0185】
(λ/4積層体7bの作製)
λ/4積層体1bの作製において、λ/4フィルム1aをλ/4フィルム7aに代えた以外はλ/4積層体1bの作製と同様にしてλ/4積層体7bを作製した。なお、λ/4フィルム7aの支持体側に表面フィルムを形成した。λ/4積層体7bのRe(550)は125nm、Rth(550)は8nmであった。
【0186】
(λ/4積層体9bの作製)
λ/4積層体7bの作製において、λ/4フィルム7aをλ/4フィルム9aに代えた以外はλ/4積層体7bの作製と同様にしてλ/4積層体9bを作製した。λ/4積層体9bのRe(550)は115nm、Rth(550)は12nmであった。
【0187】
(λ/4積層体10bの作製)
λ/4積層体7bの作製において、λ/4フィルム7aをλ/4フィルム10aに代えた以外はλ/4積層体7bの作製と同様にしてλ/4積層体10bを作製した。λ/4積層体10bのRe(550)は130nm、Rth(550)は6nmであった。
【0188】
(λ/4積層体11bの作製)
λ/4積層体7bの作製において、λ/4フィルム7aをλ/4フィルム11aに代えた以外はλ/4積層体7bの作製と同様にしてλ/4積層体11bを作製した。λ/4積層体11bのRe(550)は160nm、Rth(550)は−6nmであった。
【0189】
(λ/4積層体12bの作製)
λ/4積層体7bの作製において、λ/4フィルム7aをλ/4フィルム12aに代えた以外はλ/4積層体7bの作製と同様にしてλ/4積層体12bを作製した。λ/4積層体12bのRe(550)は130nm、Rth(550)は−59nmであった。
【0190】
(λ/4積層体13bの作製)
λ/4積層体7bの作製において、λ/4フィルム7aをλ/4フィルム13aに代えた以外はλ/4積層体7bの作製と同様にしてλ/4積層体13bを作製した。λ/4積層体13bのRe(550)は125nm、Rth(550)は−31nmであった。
【0191】
(λ/4積層体14bの作製)
λ/4積層体7bの作製において、λ/4フィルム7aをλ/4フィルム14aに代えた以外はλ/4積層体7bの作製と同様にしてλ/4積層体14bを作製した。λ/4積層体14bのRe(550)は125nm、Rth(550)は95nmであった。
【0192】
(λ/4積層体15bの作製)
λ/4積層体7bの作製において、λ/4フィルム7aをλ/4フィルム15aに代えた以外はλ/4積層体7bの作製と同様にしてλ/4積層体15bを作製した。λ/4積層体15bのRe(550)は138nm、Rth(550)は0nmであった。
【0193】
(λ/4積層体16bの作製)
λ/4積層体2b2の作製において、λ/4フィルム2aをλ/4フィルム16aに代えた以外はλ/4積層体2b2の作製と同様にしてλ/4積層体16bを作製した。なお、λ/4フィルム16aの光学異方性層側に易接着層を介してCV-LC(富士フイルム社製)の支持体面を貼合した。λ/4積層体16bのRe(550)は160nm、Rth(550)は85nmであった。
【0194】
作製したλ/4積層体1b〜16bの面内レターデーションRe(550)及び厚み方向のレターデーションRth(550)をまとめた表を以下に示す。
【0195】
【表2】

【0196】
(2) 画像表示装置1の作製(実施例1)
(偏光板の作製)
<画像表示装置用偏光板の作製>
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
アルカリ鹸化処理したVA用位相差フィルム(富士フイルム社製 Re(550)=50nm、Rth(550)=125nm)を用意し、片面を前記VA用位相差フィルムで、もう片面を作製した前記λ/4積層体5bのλ/4フィルム5aを偏光膜側にして粘着剤及び接着剤を用いて貼合し、画像表示装置用偏光板1を作製した。
【0197】
<液晶シャッターメガネ用偏光板の作製>
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)を用意し、片面を前記TD80ULで、もう片面を作製したλ/4フィルム3aで偏光膜を挟んで、粘着剤及び接着剤を用いて貼合し、液晶シャッターメガネ用偏光板1を作製した。
【0198】
(画像表示装置の作製)
SHARP製の3D液晶テレビ「LC−46LV3」を用意し、フロント偏光板をはがし、作製した画像表示装置用偏光板1のVA用位相差フィルムを液晶セル側にして粘着剤及び接着剤を用いて貼合した。
【0199】
(液晶シャッターメガネの作製)
続いて、SHARP製の液晶シャッターメガネ「AN−3DG10」を用意した。この「AN−3DG10」は、λ/4フィルムを有さない偏光板2枚方式の液晶シャッターメガネである。「AN−3DG10」の目と反対側(画像表示装置と対峙する側)の偏光板をはがし、そこに上記作製した液晶シャッターメガネ用偏光板1のTD80UL側を易接着層を介して「AN−3DG10」を貼合し、図2に示すような構成の液晶シャッターメガネWを作製した。このとき、液晶シャッターメガネ用偏光板の吸収軸は、「AN−3DG10」の目側の偏光板(剥がさずに残した偏光板)の吸収軸と直交するように貼合した。液晶シャッターメガネWを装着して顔を傾斜しない状態で画像表示装置と対峙したときに、液晶シャッターメガネ用偏光板のλ/4フィルム3aの遅相軸が、画像表示装置の画像表示装置用偏光板のλ/4フィルム5aの遅相軸と直交するように貼合した。
【0200】
(3) 時分割方式3D画像表示装置の作製(実施例2〜19、比較例1〜3)
下記表に示すように、λ/4フィルム及びλ/4積層体を代えた以外は実施例1と同様にして時分割方式3D画像表示装置2〜25を作製した。
【0201】
(4)評価
(画面輝度ムラ)
暗室において、画像表示装置に両目に白を表示する3Dコンテンツを表示した。液晶シャッターメガネを装着して画像表示装置の正面に立ち、液晶シャッターメガネと画像表示装置の画面が平行となる位置関係を保ったまま、顔を動かしたときの画面を観察し、以下の基準で画面輝度ムラを評価した。結果を下記表に示す。
[評価基準]
◎:画面輝度ムラが視認されない。
○:画面隅のいずれかにわずかな輝度ムラが視認されるが、許容できる程度。
×:画面隅に輝度ムラがはっきり視認され、許容できない。
【0202】
(輝度低下率)
上記した画面輝度ムラの評価基準を定量化するため、液晶シャッターメガネと画像表示装置の画面が平行となる位置関係を保持した状態で、極角は0度〜60度まで10度ステップで、方位角は0度〜350度まで10度ステップの方向で画像表示装置から液晶シャッターメガネを透過した光の輝度をBM5A(TOPCON社製)にて測定した。続いて、極角0度の輝度で規格化した極角10度〜60度まで10度ステップ、方位角0度〜350度まで10度ステップ方向の輝度の平均値を求め(参考例1に示した基準形態に対する)、各形態の輝度低下率を下記式で算出した。なお、基準形態(参考例1)は、理想的なλ/4フィルムを画像表示装置と液晶シャッターメガネの両方に使用した形態である。

各形態の輝度低下率(%)=100−(各形態の輝度平均値/基準形態(参考例1)の輝度平均値)×100

上式で算出した輝度低下率をもとに、画面輝度ムラの評価基準を定量化した。
[評価基準]
◎:輝度低下率が1%未満
○:輝度低下率が1%以上3%未満
×:輝度低下率が3%以上
【0203】
(3D表示性能)
λ/4フィルムがない画像表示装置および液晶シャッターメガネからなる時分割方式3D画像表示装置24を用意した。続いて、暗室において、時分割方式3D画像表示装置1〜24に、左目に白を、右目に黒を表示する3Dコンテンツを表示した。液晶シャッターメガネを装着して画像表示装置の正面に立ち、液晶シャッターメガネと画像表示装置の画面が平行となる位置関係を保ったまま画面を観察し、以下の基準で3D表示性能を評価した。結果を下記表に示す。
[評価基準]
◎:右目の黒表示が画像表示装置24と同等(λ/4フィルム起因のクロストークが視認されない。)。
○:右目の黒表示が画像表示装置24に比べてわずかに明るいが許容できる程度(λ/4フィルム起因のクロストークがわずかに視認される。)。
×:右目の黒表示が画像表示装置24に比べて明るいことがはっきり視認され、許容できない(λ/4フィルム起因のクロストークが許容できない。)。
【0204】
【表3】

【0205】
【表4】

【0206】
表から、保護部材A1として用いたλ/4積層体のRth(550)Aと、液晶シャッターメガネのλ/4層Bとして用いたλ/4フィルムのRth(550)Bとが、式(I)の関係を満たすと、画面隅の輝度ムラ、輝度低下率が向上していることがわかる。
【0207】
上記実施例及び比較例は液晶シャッターメガネWを使用したが、下記のように作製した液晶シャッターメガネSを作製し、同様の試験をしたところ、同様の結果を得た。
【0208】
(液晶シャッターメガネSの作製)
「AN−3DG10」を別途用意し、「AN−3DG10」の目と反対側(画像表示装置と対峙する側)の偏光板をはがし、そこに作製したλ/4フィルム3aを易接着層を介して貼合し、図3(a)に示すような構成の液晶シャッターメガネSを作製した。このとき、液晶シャッターメガネSを装着して顔を傾斜しない状態で画像表示装置と対峙したときに、液晶シャッターメガネSのλ/4フィルム3aの遅相軸が、画像表示装置の中に配置したλ/4フィルム5aの遅相軸と直交するように貼合した。
【0209】
また、図7のように作製した3D表示システムを作製し、上記実施例及び比較例と同様の試験をしたところ、同様の結果を得た。
【0210】
2.空間分割方式3D表示システム
(1)空間分割方式用光学フィルムA、並びにそれを有する偏光板及び画像表示装置の作製
<透明支持体(セルロースアセテートフィルムT7)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアシレート溶液Aの組成
────────────────────────────────────
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 300質量部
メタノール(第2溶媒) 54質量部
1−ブタノール 11質量部
────────────────────────────────────
【0211】
別のミキシングタンクに、下記の組成物を投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、添加剤溶液Aを調製した。
────────────────────────────────────
添加剤溶液Aの組成
────────────────────────────────────
下記化合物B1(Re低下剤) 40質量部
下記化合物B2(波長分散制御剤) 4質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 80質量部
メタノール(第2溶媒) 20質量部
────────────────────────────────────
【0212】
【化19】

【0213】
<<セルロースアセテート透明支持体T7の作製>>
セルロースアシレート溶液Aを477質量部に、添加剤溶液Bの40質量部を添加し、充分に攪拌して、ドープを調製した。ドープを流延口から0℃に冷却したドラム上に流延した。溶媒含有率70質量%の場外で剥ぎ取り、フィルムの巾方向の両端をピンテンター(特開平4−1009号の図3に記載のピンテンター)で固定し、溶媒含有率が3乃至5質量%の状態で、横方向(機械方向に垂直な方向)の延伸率が3%となる間隔を保ちつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、さらに乾燥し、厚み60μmのセルロースアセテート保護フィルム(透明支持体T7)を作製した。透明支持体T7は紫外線吸収剤を含有しておらず、Re(550)は0nmであり、Rth(550)は12nmであった。
【0214】
<<アルカリ鹸化処理>>
セルロースアセテート透明支持体T7を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。続いて、同じくバーコーターを用いて、純水を3ml/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアセテート透明支持体T7を作製した。
【0215】
────────────────────────────────────
アルカリ溶液の組成(質量部)
────────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
界面活性剤
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20H 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
────────────────────────────────────
【0216】
<ラビング配向膜付透明支持体の作製>
上記作製した支持体の、鹸化処理を施した面に、下記の組成のラビング配向膜塗布液を#8のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、さらに100℃の温風で120秒乾燥し、配向膜を形成した。次に、透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスクをラビング配向膜上に配置し、室温空気下にて、UV−C領域における照度2.5mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を4秒間照射して、光酸発生剤を分解し酸性化合物を発生させることにより第1位相差領域用配向層を形成した。その後に、ストライプマスクのストライプに対して45°の角度を保持して500rpmで一方向に1往復、ラビング処理を行い、ラビング配向膜付透明支持体を作製した。なお、配向膜の膜厚は、0.5μmであった。
────────────────────────────────────
配向膜形成用塗布液の組成
────────────────────────────────────
配向膜用ポリマー材料 3.9質量部
(PVA103、クラレ(株)製ポリビニルアルコール)
光酸発生剤(S−2) 0.1質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
────────────────────────────────────
【0217】
【化20】

【0218】
<パターン化された光学異方性層Aの作製>
下記の光学異方性層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布量4ml/m2で塗布した。次いで、膜面温度110℃で2分間加熱熟成した後、80℃まで冷却し空気下にて20mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を20秒間照射して、その配向状態を固定化することによりパターン光学異方性層Aを形成した。マスク露光部分(第1位相差領域)は、ラビング方向に対し遅相軸方向が平行にディスコティック液晶が垂直配向しており、未露光部分(第2位相差領域)は直交に垂直配向していた。なお、光学異方性層の膜厚は、0.9μmであった。
【0219】
────────────────────────────────────
光学異方性層用塗布液の組成
────────────────────────────────────
ディスコティック液晶E−1 100質量部
配向膜界面配向剤(II−1) 3.0質量部
空気界面配向剤(P−1) 0.4質量部
光重合開始剤 3.0質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.0質量部
メチルエチルケトン 400質量部
────────────────────────────────────
【0220】
【化21】

【0221】
形成されたパターン光学異方性層Aの第1位相差領域及び第2位相差領域をそれぞれTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法、ION−TOF社製TOF−SIMS V)により分析したところ、第1位相差領域と第2位相差領域では、対応する配向層中における光酸発生剤S−2の存在比が8対92であり、第1位相差領域ではS−2がほとんど分解していることがわかった。また、光学異方性層においては、第1位相差領域の空気界面に、II−1のカチオン及び光酸発生剤S−2から発生した酸HBF4のアニオンBF4-が存在していることが確認された。第2位相差領域の空気界面には、これらのイオンはほとんど観測されず、II−1のカチオン及びBr-が配向膜界面近傍に存在していることがわかった。空気界面におけるそれぞれのイオンの存在比は、II−1のカチオンは93対7、BF4-は90対10であった。このことから、第2位相差領域中、配向膜界面配向剤(II−1)は配向膜界面に偏在しているが、第1位相差領域では偏在性が減少し、空気界面にも拡散していること、及び第1位相差領域においては、発生した酸HBF4とII−1がアニオン交換することによってII−1カチオンの拡散が促進されていることが理解できる。
【0222】
パターン化された光学異方性層Aを、第1位相差領域又は第2位相差領域のいずれか一方の遅相軸が、直交位に組合された2枚の偏光板のいずれか一方の偏光軸と平行になるように、偏光板の間に入れ、さらに、位相差530nmの鋭敏色板を、その遅相軸が偏光板の偏光軸と45°の角度をなすように、光学異方性層の上においた。次に、光学異方性層を+45°回転させた状態を偏光顕微鏡(NIKON製 ECLIPE E600W POL)で観察した。観察結果から明らかなように、+45°回転させた場合、第1位相差領域の遅相軸と鋭敏色板の遅相軸が平行になっているため、位相差は530nmよりも大きくなり、その色は青色(白黒図面では濃淡の濃い部分)に変化している。一方、第2位相差領域の遅相軸は鋭敏色板の遅相軸と直交しているため、位相差は530nmよりも小さくなり、その色は白色(白黒図面では濃淡の淡い部分)に変化する。即ち、図10に上面図を示す通りの第1及び第2位相差領域が形成されたことが確認できた。
【0223】
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体から剥離した後、KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて前記方法に従って、配向膜界面のディスコティック液晶のチルト角、空気界面のディスコティック液晶のチルト角、遅相軸の方向、及びRe、Rthをそれぞれ測定した。結果を下記表に示す。下記表中、垂直とは、チルト角70°〜90°を表す。
【0224】
下記表に示す結果から、ディスコティック液晶を、ピリジニウム塩化合物、及びフルオロ脂肪族基含有共重合体の存在下で、光酸発生剤を含有したPVA系ラビング配向膜にマスク露光した後、一方向にラビング処理した該配向膜上で配向させることによって、垂直配向であるとともに、遅相軸が直交した第1位相差領域と第2位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0225】
<表面フィルムAの作製>
<<反射防止膜の作製>>
[ハードコート層用塗布液の調製]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
メチルエチルケトン900質量部に対して、シクロヘキサノン100質量部、部分カプロラクトン変性の多官能アクリレート(DPCA−20、日本化薬(株)製)750質量部、シリカゾル(MIBK−ST、日産化学工業(株)製)200質量部、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50質量部、を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0226】
[中屈折率層用塗布液Aの調製]
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])5.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)1.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.05質量部、メチルエチルケトン66.6質量部、メチルイソブチルケトン7.7質量部及びシクロヘキサノン19.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して中屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0227】
[中屈折率層用塗布液Bの調製]
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)4.5質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.14質量部、メチルエチルケトン66.5質量部、メチルイソブチルケトン9.5質量部及びシクロヘキサノン19.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して中屈折率層用塗布液Bを調製した。
【0228】
屈折率1.36、膜厚90μmとなるように、中屈折率用塗布液Aと中屈折率用塗布液Bとを適量混合し、中屈折率塗布液を調製した。
【0229】
[高屈折率層用塗布液の調製]
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、光重合開始剤含有、溶剤組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])14.4質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)0.75質量部、メチルエチルケトン62.0質量部、メチルイソブチルケトン3.4質量部、シクロヘキサノン1.1質量部を添加して攪拌した。充分に攪拌の後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルタで濾過して高屈折率層用塗布液Cを調製した。
【0230】
[低屈折率層用塗布液の調製]
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0231】
【化22】

【0232】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7g及び過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。更にヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。更にこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100mlに溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.422、質量平均分子量は50000であった。
【0233】
[中空シリカ粒子分散液Aの調製]
中空シリカ粒子微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シエル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31)500質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン30質量部、及びジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート1.51質量部加え混合した後に、イオン交換水9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の分散液Aを得た。得られた分散液AのIPA残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5質量%以下であった。
【0234】
[低屈折率層用塗布液の調製]
各成分を下記のように混合し、メチルエチルケトンに溶解して固形分濃度5質量%の低屈折率層用塗布液Ln6を作製した。下記各成分の質量%は、塗布液の全固形分に対する、各成分の固形分の比率である。
【0235】
────────────────────────────────────────・P−1:パーフルオロオレフィン共重合体(1) 15質量%
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリト
ールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製) 7質量%
・MF1:国際公開第2003/022906号パンフレットの実施例記載の下
記含フッ素不飽和化合物(重量平均分子量1600) 5質量%
・M−1:日本化薬(株)製KAYARAD DPHA 20質量%
・分散液A:前記中空シリカ粒子分散液A(アクリロイルオキシプロピルトリメ
トキシシランで表面修飾した中空シリカ粒子ゾル、固形分濃度18.2%) 50質量%
・Irg127:光重合開始剤イルガキュア127(チバ・スペシャルティ・
ケミカルズ(株)製) 3質量%
────────────────────────────────────────
【0236】
【化23】

【0237】
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を表面フィルム用支持体Aとして使用し、表面フィルム用支持体A上に、前記組成のハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。なお、TD80ULは、紫外線吸収剤を含んでいる。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ12μmのハードコート層Aを形成した。
更に中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。このようにして、表面フィルムAを作製した。
【0238】
<空間分割方式用光学フィルムAの作製>
上記作製した表面フィルムAのTD80UL面とパターン化された光学異方性層Aの光学異方性層面を接着剤で貼り合せ、空間分割方式用光学フィルムAを作製した。
【0239】
<空間分割方式用偏光板Aの作製>
TD80UL(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=2/40)を偏光板A用保護フィルムAとして使用し、この表面をアルカリ鹸化処理した。1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。
続いて、厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して厚さ20μmの偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、前記のアルカリ鹸化処理したTD80ULと、同様のアルカリ鹸化処理したIPS用位相差フィルム(富士フイルム社製 550nmにおけるRe/Rth=0/−5)を、これらの鹸化した面が偏光膜側となるようして偏光膜の間に挟んで貼り合せ、TD80ULとIPS用位相差フィルムが偏光膜の保護フィルムとなっている偏光板Aを作製した。
【0240】
<空間分割方式用光学フィルムA付偏光板Aの作製>
上記作製した空間分割方式用光学フィルムAの透明支持体面と空間分割方式用偏光板AのTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムA付偏光板Aを作製した。このときパターン化された光学異方性層の遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
【0241】
<空間分割方式3D画像表示装置Aの作製>
東芝社製32zp2の視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムA付偏光板AとLCセルを接着剤を介して貼り合せ、図11(a)の構成の空間分割方式3D表示装置Aを作製した。なお、偏光膜の透過軸の向きは、図9と同様である。
【0242】
(2)空間分割方式用光学フィルムB、並びにそれを有する偏光板及び画像表示装置の作製
<光配向膜付透明支持体Bの作製>
国際公開2010/090429号パンフレットに記載の棒状液晶及び配向膜を使用して立体表示装置Bを作製した。
上記作製した透明支持体T7の鹸化処理を施した面に、下記構造の光配向材料E−1 1%水溶液を塗布し、100℃で1分間乾燥した。得られた塗布膜に、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫
外線を照射した。このとき、ワイヤーグリッド偏光子(Moxtek社製, ProFlux PPL02)を図12(a)に示すように、方向1にセットして、さらにマスクA(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。その後、図12(b)に示すように、ワイヤーグリッド偏光子を方向2にセットして、さらにマスクB(透過部の横ストライプ幅285μm、遮蔽部の横ストライプ幅285μmのストライプマスク)を通して、露光を行った。露光マスク面と光配向膜の間の距離を200μmに設定した。この際用いる紫外線の照度はUV−A領域(波長380nm〜320nmの積算)において100mW/cm2、照射量はUV−A領域において1000mJ/cm2とした。
【0243】
【化24】

【0244】
<パターン化された光学異方性層Bの作製>
下記の光学異方性層用組成物を調製後、孔径0.2μmのポリプロピレン製フィルタでろ過して、塗布液として用いた。光配向膜付透明支持体B上に該塗布液を塗布、膜面温度105℃で2分間乾燥して液晶相状態とした後、75℃まで冷却して、空気下にて160W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて紫外線を照射して、その配向状態を固定化して、パターン化された光学異方性層Bの作製を試みた。光学異方性層の膜厚は、1.3μmであった。
【0245】
────────────────────────────────────────光学異方性層B用組成
────────────────────────────────────────棒状液晶(LC242、BASF(株)製) 100質量部
水平配向剤A 0.3質量部
光重合開始剤 3.3質量部
(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製) 1.1質量部
メチルエチルケトン 300質量部
────────────────────────────────────────
【0246】
【化25】

【0247】
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体から剥離した後、上記と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。下記表に、光学異方性層の遅相軸と配向膜の露光方向の方向との関係を示す。下記表に示す結果から、棒状液晶を光配向膜上で配向させて露光することによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0248】
<空間分割方式用光学フィルムBの作製>
パターン化された光学異方性層Bの透明支持体Bの表面に、上記実施例と同様の方法にて反射防止膜を形成し、空間分割方式用光学フィルムBを作製した。
【0249】
<空間分割方式用光学フィルムB付偏光板Bの作製>
上記作製した光学フィルムBのパターン化された光学異方性層面と上記実施例で作製した偏光板のTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムB付偏光板Bを作製した。このときパターン化された光学異方性層Bの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
【0250】
<立体表示装置Bの作製>
東芝社製32zp2の視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムB付偏光板BのIPS用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せ、図11(b)の構成の立体表示装置Bを作製した。なお、偏光膜の透過軸の向きは図9と同様であった。
【0251】
(3)空間分割方式用光学フィルムC、並びにそれを有する偏光板及び画像表示装置の作製
<パターン化された光学異方性層Cの作製>
パターン化された光学異方性層Aの作製において、透明支持体AをTD80ULに代えた以外は同様にして、パターン化された光学異方性層Cを作製した。
【0252】
(光学異方性層の評価)
作製した光学異方性層を透明支持体Cから剥離した後、上記と同様にして、光学異方性層の遅相軸の方向を決定した。下記表に、光学異方性層の遅相軸と配向膜の露光方向の方向との関係を示す。下記表に示す結果から、棒状液晶を光配向膜上で配向させて露光することによって、水平配向であるとともに、遅相軸が直交した第1の位相差領域と第2の位相差領域を有するパターン化された光学異方性層が得られることが理解できる。
【0253】
<空間分割方式用光学フィルムCの作製>
パターン化された光学異方性層Cの透明支持体の表面に、上記実施例と同様の方法にて反射防止膜を形成し、空間分割方式用光学フィルムCを作製した。
【0254】
<空間分割方式用光学フィルムC付偏光板Cの作製>
上記作製した光学フィルムCのパターン化された光学異方性層C面と上記実施例1で作製した偏光板のTD80UL面を接着剤で貼り合せ、光学フィルムC付偏光板Cを作製した。このときパターン化された光学異方性層Cの遅相軸と偏光膜の吸収軸のなす角度が±45度になるようにした。
【0255】
<立体表示装置Cの作製>
東芝社製32zp2の視認側の偏光板をはがし、上記作製した光学フィルムC付偏光板CのIPS用位相差フィルムとLCセルを接着剤を介して貼り合せ、図11(b)の構成の立体表示装置Cを作製した。なお、偏光膜の透過軸の向きは図9と同様であった。
【0256】
(4)円偏光メガネ用偏光板の作製
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム「TD80UL」(富士フイルム社製)を用意し、片面を前記TD80ULで、もう片面を作製したλ/4フィルム1aで偏光膜を挟んで、粘着剤及び接着剤を用いて貼合し、円偏光メガネ用偏光板1Rを作製した。このとき、偏光板の吸収軸とλ/4フィルムの遅相軸のなす角度は45度になるように貼合した。
続いて、偏光板の吸収軸とλ/4フィルムの遅相軸のなす角度が−45度になるように貼合した以外は同様にして、円偏光メガネ用偏光板1Lを作製した。
【0257】
<円偏光メガネ1の作製>
東芝社製32zp2に付属のメガネを用意した。偏光板をはがし、上記作製した円偏光メガネ用偏光板1Rと円偏光メガネ用偏光板1Lを簡易接着剤を介して、右目側と左目側に貼合し、円偏光メガネ1を作製した。
【0258】
<円偏光メガネ2及び3の作製>
円偏光メガネ1の作製で使用した、λ/4フィルム1aの代わりにλ/4フィルム6a、λ/4フィルム15aを使用した以外は同様にして、円偏光メガネ2及び3をそれぞれ作製した。
【0259】
4.空間分割方式3D画像表示装置の評価
(画面輝度ムラ)
暗室において、画像表示装置に両目に白を表示する3Dコンテンツを表示した。円偏光メガネを装着して画像表示装置の正面に立ち、円偏光メガネと画像表示装置の画面が平行となる位置関係を保ったまま、顔を動かしたときの画面を観察し、以下の基準で画面輝度ムラを評価した。結果を下記表に示す。
[評価基準]
◎:画面輝度ムラが視認されない。
○:画面隅のいずれかにわずかな輝度ムラが視認されるが、許容できる程度。
×:画面隅に輝度ムラがはっきり視認され、許容できない。
【0260】
(輝度低下率)
上記した画面輝度ムラの評価基準を定量化するため、円偏光メガネと画像表示装置の画面が平行となる位置関係を保持した状態で、極角は0度〜60度まで10度ステップで、方位角は0度〜350度まで10度ステップの方向で画像表示装置から円偏光メガネを透過した光の輝度をBM5A(TOPCON社製)にて測定した。続いて、極角0度の輝度で規格化した極角10度〜60度まで10度ステップ、方位角0度〜350度まで10度ステップ方向の輝度の平均値を求め(参考例2に示した基準形態に対する)、各形態の輝度低下率を下記式で算出した。なお、基準形態(参考例2)は、理想的なλ/4フィルムを画像表示装置と偏光メガネの両方に使用した形態である。

各形態の輝度低下率(%)=100−(各形態の輝度平均値/基準形態(参考例2)の輝度平均値)×100

上式で算出した輝度低下率をもとに、画面輝度ムラの評価基準を定量化した。
[評価基準]
◎:輝度低下率が1%未満
○:輝度低下率が1%以上3%未満
×:輝度低下率が3%以上
【0261】
(3D表示性能)
円偏光メガネからなる空間分割方式3D画像表示装置1〜3を用意した。続いて、暗室において、空間分割方式3D画像表示装置1〜3に、左目に白を、右目に黒を表示する3Dコンテンツを表示した。円偏光メガネを装着して画像表示装置の正面に立ち、円偏光メガネと画像表示装置の画面が平行となる位置関係を保ったまま画面を観察し、以下の基準で3D表示性能を評価した。結果を下記表に示す。
[評価基準]
◎:右目の黒表示が画像表示装置24と同等(λ/4フィルム起因のクロストークが視認されない。)。
○:右目の黒表示が画像表示装置24に比べてわずかに明るいが許容できる程度(λ/4フィルム起因のクロストークがわずかに視認される。)。
×:右目の黒表示が画像表示装置24に比べて明るいことがはっきり視認され、許容できない(λ/4フィルム起因のクロストークが許容できない。)
【0262】
【表5】

【0263】
【表6】

【符号の説明】
【0264】
1 画像表示装置
11 第1の偏光膜
12 保護部材
13 液晶セル
14 偏光板
15 光学補償/保護フィルム
2 時分割画像表示遮断機器(液晶シャッターメガネ)
2a 左目シャッター
2b 右目シャッター
21 λ/4板B
22 偏光膜
23 液晶セル
24 偏光膜
3 同期回路
4 バックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視認側に配置される第1の偏光膜と、
前記第1の偏光膜の視認側表面に配置される、λ/4機能を有する保護部材A1と、
を少なくとも有する画像表示装置;及び
λ/4板Bを少なくとも有し、前記画像表示装置に同期して作動する時分割画像表示遮断機器;
を備えた時分割3D表示システムであって、
前記保護部材A1の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、前記λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする時分割方式3D表示システム:
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm 。
【請求項2】
下記式(II)の関係を満たす請求項1に記載の時分割3D表示システム:
(II): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦120nm 。
【請求項3】
前記保護部材A1及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、セルロースアシレートフィルム及び環状オレフィン系ポリマーフィルムの少なくともいずれかを含む請求項1又は2に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項4】
前記保護部材A1及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を少なくとも含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項5】
前記液晶化合物が、円盤状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記円盤状液晶化合物が垂直に配向している請求項4に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項6】
前記液晶化合物が、棒状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記棒状液晶化合物が水平に配向している請求項4に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項7】
前記保護部材A1が、視認側表面に反射防止層を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項8】
前記保護部材A1が、紫外線吸収剤を含有する請求項1〜7のいずれか1項に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項9】
前記画像表示装置が、液晶パネルである請求項1〜8のいずれか1項に記載の時分割方式3D表示システム。
【請求項10】
前記時分割画像表示遮断機器が、液晶セル及び第2の偏光膜をさらに有し、前記画像表示装置に対向する側から、
前記λ/4板B、前記液晶セル、及び前記第2の偏光膜の順に、又は
前記第2の偏光膜、前記液晶セル、及び前記λ/4板Bの順に
配置されている請求項9に記載の時分割3D表示システム。
【請求項11】
前記時分割画像表示遮断機器が、第3の偏光膜をさらに有し、前記画像表示装置に対向する側から、
前記λ/4板B、前記第3の偏光膜、前記液晶セル、及び前記第2偏光膜の順に、又は
前記第2の偏光膜、前記液晶セル、前記第3の偏光膜、及び前記λ/4板Bの順に
配置されている請求項9又は10に記載の時分割3D表示システム。
【請求項12】
視認側に配置される第1の偏光膜と、
前記第1の偏光膜の視認側に配置される液晶セルと、
前記液晶セルの視認側表面に配置されるλ/4機能を有する保護部材A1と、を少なくとも有する画像表示装置;及び
λ/4板Bを少なくとも有するメガネ;を備えた時分割3D表示システムであって、
前記液晶セルは、画像表示装置に同期して作動し、
前記保護部材A1の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、前記λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする時分割方式3D表示システム:
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm 。
【請求項13】
視認側に配置される第1の偏光膜と、
前記第1の偏光膜の視認側表面に配置される、互いに異なる方向に面内遅相軸を有し、それぞれλ/4機能を有する第1及び第2位相差領域を含むパターン光学異方性層を有する保護部材A2と、
を少なくとも有する画像表示装置;及び
λ/4板Bを少なくとも有する偏光変換素子;
を備えた3D表示システムであって、
前記保護部材A2の波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Aと、前記λ/4板Bの波長550nmの厚み方向レターデーションRth(550)Bとが、下記式(I)の関係を満たすことを特徴とする3D表示システム:
(I): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦220nm 。
【請求項14】
下記式(II)の関係を満たす請求項13に記載の3D表示システム:
(II): |Rth(550)A+Rth(550)B|≦120nm 。
【請求項15】
前記保護部材A2及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、セルロースアシレートフィルム及び環状オレフィン系ポリマーフィルムの少なくともいずれかを含む請求項13又は14に記載の3D表示システム。
【請求項16】
前記保護部材A2及び前記λ/4板Bの少なくとも一方が、液晶化合物を含有する組成物からなる光学異方性層を少なくとも含む請求項13〜15のいずれか1項に記載の3D表示システム。
【請求項17】
前記液晶化合物が、円盤状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記円盤状液晶化合物が垂直に配向している請求項16に記載の3D表示システム。
【請求項18】
前記液晶化合物が、棒状液晶化合物であり、前記光学異方性層中、前記棒状液晶化合物が水平に配向している請求項16に記載の3D表示システム。
【請求項19】
前記保護部材A2が、視認側表面に反射防止層を有する請求項13〜18のいずれか1項に記載の3D表示システム。
【請求項20】
前記保護部材A2が、紫外線吸収剤を含有する請求項13〜19のいずれか1項に記載の3D表示システム。
【請求項21】
前記画像表示装置が、液晶パネルである請求項13〜20のいずれか1項に記載の3D表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−198491(P2012−198491A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196974(P2011−196974)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】