説明

4−ピリミジンスルファミド誘導体

本発明は、構造式(I)の化合物、
【化1】


及びその塩に関する。当該化合物は、エンドセリンレセプター拮抗剤として有用である。本発明はさらに、当該化合物を製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、{5−(4−ブロモ−フェニル)−6−[2−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルオキシ)−エトキシ]−ピリミジン−4−イル}−スルファミド及びその塩、その化合物を製造する方法並びにその医薬としての使用に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
{5−(4−ブロモ−フェニル)−6−[2−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルオキシ)−エトキシ]−ピリミジン−4−イル}−スルファミドは、式I
【0003】
【化1】

【0004】
の構造を有する。
【0005】
式Iの化合物はエンドセリンレセプター阻害剤であり、エンドセリンレセプター拮抗剤として有用である。式Iの化合物は、以前に、国際公開公報第02/053557号に包括的に開示された化学構造の新しいメンバーである。
【0006】
本願出願人は、国際公開公報第02/053557号に具体的に開示された、近い構造を有する化合物と比べ、驚くべきことに、式Iの化合物が改良された特性を有することを見出した。特に、式Iの化合物は、エンドセリンレセプター拮抗活性に加えて、対応するアルキル化誘導体と比較して、in vivoにおいて、はるかに長い半減期及びはるかに短いクリアランスを示す。この事実は、式Iの化合物を、特に持続性の薬学的組成物に向いたものとしている。
【0007】
式Iの化合物は、そのエンドセリン結合阻害活性により、エンドセリンに起因する血管収縮、増殖又は炎症に関連した疾患の治療に用いることができる。そのような疾患の例は、高血圧、肺性高血圧、冠状動脈疾患、心不全、腎虚血、心筋虚血、腎不全、脳虚血、痴呆、片頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍及び門脈圧亢進症である。それらはまた、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症の治療及び予防、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛、高脂血症、並びに現在エンドセリンに関連があることが既知のその他の疾患の治療又は予防にも使用することができる。
【0008】
従って、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩は、医薬として、例えば経腸又は非経口投与のための医薬組成物の形態で使用することができる。
「薬学的に許容される塩」という用語は、無毒性の無機若しくは有機酸及び/又は塩基付加塩を意味する。“Salt selection for basic drugs”、Int. J. Pharm.(1986)、33、201−217を参照してもよい。
【0009】
従って、本発明は、第一に、式Iの化合物又はその塩(特に、薬学的に許容される塩)に関する。
【0010】
本発明はまた、医薬としての式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0011】
さらに、本発明は、式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を活性成分として、そして少なくとも1つの治療上不活性な賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0012】
さらに、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩は、医薬の製造のために使用してもよく、そして、高血圧、肺性高血圧(特に、肺動脈高血圧)、冠状動脈疾患、心不全、腎虚血、心筋虚血、腎不全、脳虚血、痴呆、片頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍及び門脈圧亢進症の治療に適切であり、また、アテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛又は高脂血症の治療又は予防に適切である。
【0013】
より詳細には、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩は、医薬の製造のために使用してもよく、そして、高血圧、(肺動脈高血圧を含む)肺性高血圧、糖尿病性動脈疾患、心不全、勃起不全及び狭心症から成る群より選択される疾患の治療に適切である。
【0014】
本発明の特に好ましい変形によれば、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩は、医薬の製造のために使用してもよく、そして、高血圧、(特に、肺動脈高血圧)の治療に適切である。
【0015】
本発明の別の特に好ましい変形によれば、式Iの化合物及びその薬学的に許容される塩は、医薬の製造のために使用してもよく、そして、肺性高血圧(特に、肺動脈高血圧)の治療に適切である。
【0016】
式Iの化合物は、国際公開公報第02/053557号に説明されるように、又は本明細書において(特に、実施例において)後述されるように、製造することができる。
【0017】
医薬組成物の製造は、いずれの当業者によく知られた様式で(例えば、Remington、The Science and Practice of Pharmacy、21st Edition(2005)、Part 5、“Pharmaceutical Manufacturing”[published by Lippincott Williams & Wilkins]を参照されたい。)、記述された式(I)の化合物又はこれらの薬学的に許容される塩を、任意にその他の治療的に有益な物質と組み合わせて、適切な無毒の不活性な治療上許容される固体又は液体の担体材料及び必要に応じて、通常の薬学的アジュバントと共に、製剤投与形態とすることにより遂行することができる。
【0018】
式Iの化合物は、以下に記述する手順を用いて、本発明に従って製造することができる。
【0019】
式Iの化合物の製造
略語:
明細書及び実施例を通して、以下の略語が使われる:
Ac アセチル
aq. 水性
br. 広域
Boc tert−ブトキシカルボニル
t−Bu tert−ブチル
DAD ダイオードアレイディテクター
DBU 1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデス−7−エン
(undec−7−ene)
DCM ジクロロメタン
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DME 1,2−ジメトキシエタン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EA 酢酸エチル
ET エンドセリン
エーテル ジエチルエーテル
Hex ヘキサン
HV 高真空条件
LC 液体クロマトグラフィー
MeOH メタノール
MS 質量分析法
NMR 核磁気共鳴
org. 有機
rt 室温
TEA トリエチルアミン
THF テトラヒドロフラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
保持時間
【0020】
一般的製造方法:
式(I)の化合物は、下記に概説した反応の一般的順序に従って、実施例に示された方法によって、又は類似の方法によって製造することができる。最適反応条件は、使用する具体的反応物又は溶媒によって変わるが、このような条件は、当業者により、ルーチンの最適化手順によって決定することができる。式(I)の化合物を生じる合成の可能性のうちの少数のみを記述してある。
【0021】
このように得られた式Iの化合物は、必要に応じ、標準的な方法により、その塩、特にその薬学的に許容される塩に変換してもよい。
【0022】
式Iの化合物は、式I−1の化合物、
【0023】
【化2】

【0024】
(式中、PGは適宜な保護基を表す。)から、保護基PGの開裂により得ることができる。適宜な保護基PGは、例えば、(例えば、クロロホルム等の溶媒中で)BCl又はBBrにより開裂することができる例えばベンジル基、又は、例えば、(例えば、アセトニトリルと水の混合物等の溶媒中で)硝酸セリウムアンモニウム若しくは(例えば、DCM、1,2−ジクロロエタン、アセトン又はトルエン等の溶媒中で、水の存在下又は非存在下にて)2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−ベンゾキノンにより、酸化的に開裂することができる4−メトキシ−若しくは2,4−ジメトキシベンジル基である。
【0025】
式I−1の化合物は、式I−2の化合物、
【0026】
【化3】

【0027】
を、式I−3の化合物、
【0028】
【化4】

【0029】
(式中、Gは、塩素若しくは臭素原子、又はメチルスルホニル若しくはエチルスルホニル基等の反応基を表す。)と、LiH、NaH、CaH等の強塩基の存在下、THF、DMF、ジオキサン等、又はそれらの混合物等の溶媒中で反応させることにより得ることができる。式I−3の化合物のいくつかは、購入可能であり;他の化合物は、標準的な方法論を適用することにより、当業者が合成することができる。
【0030】
式I−2の化合物は、式I−4の化合物、
【0031】
【化5】

【0032】
(式中、Gは、ハロゲン原子、好ましくは塩素等の反応基を表す。)を、カリウムtert−ブトキシド、NaH、LiH等の塩基の存在下、1,2−ジメトキシエタン、THF、ジオキサン等の追加の溶媒の存在下又は非存在下において(特に、1,2−ジメトキシエタンの存在下において)、好ましくは高温にて(例えば、50と100℃の間、特に、80〜100℃の温度にて)、エチレングリコールと反応させることにより製造することができる。
【0033】
式I−4の化合物は、式I−5の化合物、
【0034】
【化6】

【0035】
を、式I−6の化合物、
【0036】
【化7】

【0037】
と、カリウムtert−ブトキシド、TEA、エチル−ジイソプロピルアミン等の塩基の存在下で、又は、好ましくは、式I−6の化合物の塩、好ましくはカリウム塩と、DMSO、DMF、THF等、又はこれらの混合物等の溶媒中で、追加の溶媒の存在下又は非存在下において、20と80℃の間の温度にて、好ましくは20と40℃の間の温度にて反応させることにより製造してもよい。
【0038】
式I−5の化合物は、例えば、式I−7の化合物、
【0039】
【化8】

【0040】
を、テトラエチルアンモニウムクロリド、トリエチルアミン又はジメチル−若しくはジエチルアニリンの存在下又は非存在下において、そしてクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、トルエン、キシレン又はアセトニトリル等の追加の溶媒の存在下又は非存在下において、高温にて(例えば、60と120℃の間)、POCl、PCl、PCl若しくはそれらの混合物、又はPOBrで処理することにより製造される。
【0041】
式I−7の化合物は、式の化合物I−8、
【0042】
【化9】

【0043】
(式中、Rはアルキル基、そして好ましくはメチル又はエチル基を表す。)を、ホルムアミジン、又はその塩と、文献(例えば、A.Gomtsyanら、J. Med. Chem. (2002)、45、3639−3648; W. Neidhartら、Chimia (1996)、50、519−524)に記載された手順に従って反応させることにより製造される。
【0044】
式I−8の2−(4−ブロモ−フェニル)−マロン酸エステルは、購入可能な4−ブロモフェニル酢酸から、文献(例えば、J. Lee、J.−H. Lee、S. Y. Kim、N. A. Perry、N. E. Lewin、J. A. Ayres、P. M. Blumberg、Bioorg. Med. Chem. 14 (2006)、2022−2031)の手順に従って製造してもよい。
【0045】
式I−6のスルファミドは、クロロスルホニルイソシアネートから、文献(例えば、G. Dewynterら、Tetrahedron (1993)、49、65−76; S. Ghassemi、K. Fuchs、Molecular Diversity (2005)、9、295−299; J.−Y. Winumら、Organic Letters (2001)、3、2241−2243)の手順に従って、3工程の手順で製造してもよい。第1工程では、クロロスルホニルイソシアネートをtert−ブタノールと、次いで、第2工程では、適宜なアミンPG−NH2と反応させ、式I−6の化合物のBoc−保護中間体を得る。第3工程では、酸性条件下でBoc−基を開裂し、式I−6の化合物を得る。別法として、式I−6の化合物は、式I−9の適宜なスルファモイルクロリド中間体、
【0046】
【化10】

【0047】
を、アンモニアと反応させることにより、文献(例えば、R. E. Olsonら、J. Med. Chem. (1999)、42,1178−1192及びそれに引用されている文献)の手順と同様に得てもよい。
【0048】
発明の方法:
従って、本発明はまた、上記の式Iの化合物を製造するための方法に関し、その方法は、下記の工程を含む:
a) 式I−2の化合物、
【0049】
【化11】

【0050】
を、式I−3の化合物、
【0051】
【化12】

【0052】
(式中、Gは、塩素若しくは臭素原子、又はメチルスルホニル若しくはエチルスルホニル基(そして、特に塩素原子)を表す。)と、強塩基の存在下で反応させる工程;及び
b) 工程a)で得られた式I−1の化合物、
【0053】
【化13】

【0054】
のベンジル基を、BCl又はBBrを用いて開裂させる工程。
【0055】
好ましくは、上記方法の工程a)は、THF、DMF及びジオキサンから成る群より選択される溶媒、又は、THF、DMF及びジオキサンから成る群より選択される溶媒の混合物中で(例えば、THF及びDMFの混合物中で)行われる。上記方法の工程a)の強塩基は、好ましくは、LiH、NaH及びCaHから成る群より選択される。工程a)において、反応は、好ましくは、20℃から溶媒の沸点までの温度で行われ、特に、20℃と70℃の間の温度で行われる。
【0056】
好ましくは、上記方法の工程b)は、クロロホルム及びDCMから成る群より選択される溶媒、又はクロロホルムとDCMの混合物中で(例えば、クロロホルム中で)、好ましくは、20℃から40℃の温度にて、特に20℃から30℃の温度にて行われる。
【0057】
上記方法の好ましい変形に従えば、式I−2の化合物は、「一般的製造方法」(PGはベンジル)の部に定義された式I−4の化合物から、同じ部に記載された追加の工程により製造される。好ましくは、当該変形に従えば、式I−4の化合物自体は、共に「一般的製造方法」の部に定義された式I−5の化合物及び式I−6の化合物(式中、PGはベンジルである。)から、同じ部に記載された追加の工程により製造される(式I−5の化合物及び式I−6の化合物自体は、「一般的製造方法」の部に記載された追加の工程により製造される。)。
【0058】
上記の方法により、式Iの化合物の塩(特に、薬学的に許容される塩)の製造を行ってもよい。この場合、上記方法は、工程b)で得られた式Iの化合物を、その塩(特に、薬学的に許容される塩)に変換する追加の工程を含むことになる。
【0059】
本発明の特定の態様を下記の実施例に記載するが、それらは、本発明をさらに詳細に説明するためのものであり、発明の範囲をいかなる意味においても限定するものではない。
【0060】
実施例
以下の実施例は、下記の手順に従って製造された。すべての化合物は、H−NMR(300MHz)によって、そして場合によっては13C−NMR(75MHz)によって(Varian Oxford、300MHz;化学シフトは、使用する溶媒と関連して、ppmで示してある;多重度:s=一重項、d=二重項、t=三重項、m=多重項)、LC−MSによって(HP 1100 Binary Pump及びDADを備えたFinnigan Navigator、カラム:4.6x50mm、Develosil RP Aqueous、5μm、120A、勾配:5−95%アセトニトリル水溶液、1分、0.04%のトリフルオロ酢酸含有、流速:4.5 ml/分)、tは、分で示してある;TLCによって(MerckからのTLC−プレート、Silica gel 60 F254);及び場合によっては融点によって特徴付けてある。
【0061】
製造A:ベンジルスルファミドカリウム塩:
A.i. ベンジルスルファミド:
クロロスルホニルイソシアネート(14.14g)をDCM(50mL)中に溶解し、そして0℃に冷却した。t−BuOH(9.6mL)のDCM(50mL)中の溶液を30分以内に添加した。攪拌をrtにてさらに30分継続した。次いで、このようにして得た溶液を、0℃にて、1時間以内に、ベンジルアミン(10.7g)及びTEA(15.32mL)の、DCM(200mL)中の溶液に添加した。攪拌をrtにて10時間継続する。混合物を真空濃縮し、EA(500mL)中に取り、そして水(2x40mL)と塩水(30mL)で洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過した。ろ液を真空濃縮し、そして粗生成物をEAから結晶化し、そしてHV下で乾燥して、N−ベンジル−N’−tert−ブトキシカルボニルスルファミド(13.68g)を得た。
【0062】
H NMR(CDCl):δ 1.46(s,9H);4.25(s,2H);5.42(s br.、1H);7.30−7.40(m,5H)。LC−MS:t=0.90分、[M+H]=287.09。
【0063】
この物質をジオキサン(20ml)中に溶解し、そしてジオキサン中4M HCl(120mL)を、1時間以内にrtにて添加した。混合物を8時間攪拌した後、溶媒を蒸発させ、そして残渣をHV下で乾燥して、ベンジルスルファミドを灰白色の粉末(9.47g)として得た。
【0064】
H NMR(D−DMSO):δ 4.05(d,J=6.4Hz、2H);6.60(s,2H);7.04(s,J=6.4Hz、1H);7.20−7.36(m,5H)。LC−MS:t=0.60分、[M+H+CH3CN]=228.17。
【0065】
A.ii. ベンジルスルファミドカリウム塩:
ベンジルスルファミド(17.98g)のMeOH(300mL)中の溶液に、カリウムtert−ブトキシド(10.8g)を注意深く添加した。混合物をrtにて15分間攪拌した後、溶媒を蒸発させた。残った残渣をHV下で乾燥させて、ベンジルスルファミドカリウム塩を灰白色の粉末(21.73g)として得た。
【0066】
製造B: 5−(4−ブロモ−フェニル)−4,6−ジクロロ−ピリミジン:
B.i. 4−ブロモフェニル酢酸メチル エステル:
反応混合物の温度を0−5℃に保ちながら、4−ブロモフェニル酢酸(50g)のメタノール(250ml)中の溶液に、チオニルクロリド(34.2mL)を滴下した。添加完了後速やかに冷却を止め、混合物をrtに温めた。攪拌を75分間継続した後、溶媒を真空除去した。黄色の油状物をベンゼン中に溶解し、そして再び濃縮した。残渣をEA中に溶解し、水、塩水、2N aq.NaCO、そして再び塩水で洗浄した。有機抽出物をMgSO上で乾燥し、ろ過し、濃縮し、そしてHV下、85℃にて30分間乾燥して、所望の生成物を黄色の油状物(52.4g)として得た。
【0067】
H−NMR(D−DMSO):δ 3.60(s,3H);3.67(s,2H);7.22(d,8.5、2H);7.50(d,J=8.5Hz、2H)。
【0068】
B.ii. 2−(4−ブロモフェニル)−マロン酸ジメチル エステル:
40℃にて、中間体B.i(52g)のTHF(100mL)中の溶液を、40分間にわたって、NaH(15.6g)の乾燥THF(450mL)中の懸濁液に注意深く添加した。加熱せずに攪拌を70分間継続し、そして温度を27℃に下げた。ガスの発生が止まった後、混合物の温度を29−31℃に保ちながら、炭酸ジメチル(76.42mL)を滴下した。攪拌をrtにて22h継続した。混合物を−10℃に冷却し、次いで、aq.HClを用いてpH6−7に注意深く中和した後、THFの大半を真空除去した。残渣をEA(700mL)中に溶解し、1N HCl−水溶液で3回、塩水で1回洗浄し、MgSO上で乾燥した。EAのほとんどを蒸発させた後、Hexを添加した。生成物を4℃にて一晩結晶化させた。結晶を集め、Hexで洗浄し、そして乾燥して、所望の生成物を薄黄色の結晶(45.9g)として得た。
【0069】
H−NMR(D−DMSO):δ 3.66(s,6H);5.07(s,1H);7.30−7.34(m,2H);7.55−7.59(m,2H)。
【0070】
B.iii. 5−(4−ブロモフェニル)−ピリミジン−4,6−ジオール:
中間体B.ii(11.73g)のMeOH(100mL)中の溶液を、0℃にて、ナトリウム(2.83g)のMeOH(100mL)中の溶液に添加した。混合物をrtにて18時間攪拌した後、ホルムアミジンヒドロクロリド(4.10g)を添加した。懸濁液をrtにて4時間攪拌した。溶媒を除去し、残渣を10% aq.クエン酸(100mL)に懸濁し、そして10分間攪拌した。白色の沈殿を集め、10% aq.クエン酸、水で洗浄し、シクロヘキサンから3回蒸発させ、そしてHV下、40℃にて乾燥して、5−(4−ブロモフェニル)−ピリミジン−4,6−ジオールを、薄ベージュ色の粉末(9.90g)として得た。
【0071】
H−NMR(D−DMSO):δ 7.43−7.48(m,2H)、7.50−7.55(m,2H)、8.13(s,1H)、12.1(s br.、2H)。LC−MS:t=0.62分、[M+H]=266.89/268.89(Br−アイソトープ)。
【0072】
B.iv. 5−(4−ブロモ−フェニル)−4,6−ジクロロ−ピリミジン:
5−(4−ブロモフェニル)−ピリミジン−4,6−ジオール(9.90g)の、POCl(130mL)中の懸濁液に、N,N−ジメチルアニリン(13.5mL)を注意深く添加した。混合物を130℃に2時間加熱した。暗茶色の溶液を真空濃縮し、そして残渣を氷/水中に注いだ。懸濁液を2N HCl及び水で希釈し、そして20分間攪拌した。形成した沈殿を集め、水で洗浄した。固形物をEA中に溶解し、1N aq.HClと塩水で洗浄した。有機相をMgSO上で乾燥し、蒸発させた。この物質を、Hex:EA 95:5〜1:1で溶出するシリカゲル上のカラムクロマトグラフィーでさらに精製し、次いでHex/EAから−20℃にて結晶化して、4,6−ジクロロ−5−(4−ブロモフェニル)−ピリミジンを薄黄色の結晶(8.3g)として得た。
【0073】
H−NMR(D−DMSO):δ 7.39−7.44(m,2H)、7.72−7.76(m,2H)、8.94(s,1H)。LC−MS:t=1.02分。
【0074】
実施例1:{5−(4−ブロモ−フェニル)−6−[2−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルオキシ)−エトキシ]−ピリミジン−4−イル}−スルファミド:
1.i. ベンジル−スルファミン酸[6−クロロ−5−(4−ブロモフェニル)−ピリミジン−4−イル]−アミド:
5−(4−ブロモフェニル)−4,6−ジクロロ−ピリミジン(4.00g、13.2mmol)及びベンジルスルファミドカリウム塩(7.38g、32.9mmol)の、DMSO(30mL)中の溶液を、rtにて24時間攪拌した後、10%クエン酸水溶液(200mL)で希釈した。形成した懸濁液をろ過した。固形物を集めて、水でよく洗浄し、HV下、40℃で48時間で乾燥して、所望の生成物を白色の粉末(6.15g)として得た。
【0075】
H NMR(CDCl):δ 4.23(d,J=5.9Hz、2H);5.94(t br.、J=6Hz、1H);7.05(d,J=8.2Hz、2H);7.20−7.35(m,5H);7.68(d,J=8.2Hz、2H);8.61(s,1H)。LC−MS:t=1.02分、[M+H]=452.95。
【0076】
1.ii. ベンジル−スルファミン酸[5−(4−ブロモフェニル)−6−(2−ヒドロキシエトキシ)ピリミジン−4−イル]−アミド:
t−BuOK(18.5g、164.5mmol)を、中間体1.i(7.46g、16.4mmol)の、エチレングリコール(50mL)中の懸濁液に少しずつ添加した。温かくかつ濃厚になった混合物をDME(75mL)で希釈した。混合物を95℃で24時間攪拌した後、rtに冷却し、水(50mL)及び10%クエン酸水溶液(250mL)で希釈した。乳濁液をEA(2x300mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO上で乾燥し、ろ過し、そしてろ液を濃縮した。残った結晶固体をMeOH中に懸濁し、集め、MeOHでよく洗浄し、そしてHV下で乾燥して、所望の生成物を白色の結晶粉末(6.49g)として得た。
【0077】
H NMR(CDCl):δ 2.50(t br.、J=6Hz、1H);3.80−3.88(m,2H);4.20(d,J=5.9Hz、2H);4.46−4.50(m,2H);5.99(t br.、J=6.4Hz、1H);6.85(s br.、1H);7.12(d,J=8.2Hz、2H);7.23−7.34(m,5H);7.64(d,J=8.2Hz、2H);8.44(s,1H)。LC−MS:t=0.93分、[M+H]=479.08。
【0078】
1.iii. ベンジル−スルファミン酸[5−(4−ブロモフェニル)−6−{2−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルオキシ)−エトキシ}−ピリミジン−4−イル]−アミド:
中間体1.ii(6.49g、13.5mmol)のTHF(120mL)中の溶液に、NaH(1.77g、40.6mmol、鉱油中の55%分散体)を注意深く添加した。混合物を10分間攪拌した後、2−クロロ−5−ブロモ−ピリミジン(3.93g、20.3mmol)を添加した。混合物をDMF(15mL)で希釈し、次いでrtにて20分間攪拌した。混合物を60℃に加熱し、3時間加熱した後、再びrtに冷却した。反応を水と10%クエン酸水溶液(250mL)でクェンチし、混合物をEA(2x300mL)で抽出した。有機抽出物を水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過し、そしてろ液の溶媒を蒸発させた。粗生成物をMeOH/エーテルから結晶化した。結晶物質を集め、MeOH/エーテルでさらに洗浄し、そしてHV下で乾燥して、所望の生成物を白色の粉末(6.47g)として得た。
【0079】
H NMR(CDCl):δ 4.20(d,J=6.4Hz、2H);4.59−4.64(m,2H);4.69−4.74(m,2H);5.98(t br.、J=6.4Hz、1H);6.83(s br.、1H);7.06−7.10(m,2H);7.24−7.34(m,5H);7.54−7.58(m,2H);8.44(s,1H);8.50(s,2H)。LC−MS:t=1.06分、[M+H]=634.98。
【0080】
1.iv. {5−(4−ブロモ−フェニル)−6−[2−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルオキシ)−エトキシ]−ピリミジン−4−イル}−スルファミド:
三臭化ホウ素(25.5mL、DCM中1M)を、中間体1.iii(6.50g、10.2mmol)のクロロホルム(250mL)中の溶液にゆっくりと添加する。混合物が濁り、油性の残渣を分離する。混合物をrtにて攪拌する。6、24及び33時間後に、BBr3溶液(5mL)をさらに添加した。BBr3を最後に添加した後、ベージュ色の懸濁液を、さらに2時間激しく攪拌し、次いで、MeOHで注意深くクェンチする。混合物がわずかに温まり、澄んでくる。溶液を冷水(0℃、2x150mL)で洗浄する。洗浄液をDCMで再抽出した。合わせた有機抽出物を再び水で洗浄し、MgSO上で乾燥し、ろ過し、そして濃縮した。粗生成物を、ヘプタン:EA 1:1で溶出するシリカゲル上のCCで精製し、次いで、DCMから結晶化した。精製した結晶生成物を、HV下、45℃にて48時間乾燥して、所望の生成物を、白色の結晶粉末(1.62g)として得た。
【0081】
H NMR(CDCl):δ 4.60−4.65(m,2H)、4.71−4.74(m,2H)、5.50(s br.、2H)、7.10(s br.、1H)、7.13−7.17(m,2H)、7.55−7.59(m,2H)、8.49(s,2H)、8.50(s,1H)。LC−MS:t=0.93分、[M+H]=544.70。
【0082】
発明化合物の薬理学的特性
1) ヒトETレセプターを有するCHO細胞からの膜に対するエンドセリン結合の阻害
実験法:
競合的結合試験のため、ヒトリコンビナントET又はETレセプターを発現するCHO細胞の膜を使用した。リコンビナントCHO細胞からのミクロソーム膜を調製し、以前に記述したように、結合試験を行った(Breu V.ら、FEBS Lett. (1993)、334、210)。
【0083】
アッセイは、ポリプロピレン製マイクロタイタープレート内で、25mM MnCl、1mM EDTA及び0.5%(w/v)BSAを含む50mM Tris/HClバッファー、pH7.4、200μl中で行う。蛋白質0.5μgを含む膜を、8pM[125I]ET−1(4000cpm)及び低濃度から高濃度までの未標識の拮抗薬と、20℃で2時間インキュベートした。最大及び最小結合量を、100nM ET−1の非存在及び存在下のサンプルで各々決定した。2時間後、その膜を、GF/Cフィルター(Canberra Packard S.A.(チューリヒ、スイス)のUnifilterplates)を持つフィルタープレート上でろ過した。各ウェルにシンチレーション カクテル50μlを添加し(Canberra Packard S.A.(チューリヒ、スイス)のMicroScint 20)、そのフィルタープレートを、マイクロプレートカウンター(Canberra Packard S.A.(チューリヒ、スイス)のTopCount)で計測した。
【0084】
全ての試験化合物をDMSOに溶解し、希釈し、そして添加した。アッセイは、結合に有意に干渉しないことが見出された2.5% DMSO存在下で実施する。IC50値は、ET−1の特異的結合を50%阻害する拮抗薬の濃度として計算される。標準化合物のIC50値は、以下の通りであった:ET細胞:ET−1に対して0.075nM(n=8)、ET−3に対して118nM(n=8);ET細胞:ET−1に対して0.067nM(n=8)、ET−3に対して0.092nM(n=3)。
【0085】
結果:
式Iの化合物に対して得られたIC50値を表1に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
2)ラットの摘出大動脈リング(ETレセプター)及びラットの摘出気管リング(ETレセプター)のエンドセリン誘発性収縮の阻害:
実験法:
エンドセリン拮抗薬の機能的阻害効力は、ラット大動脈リング(ETレセプター)に対するエンドセリン−1誘発性収縮、及びラット気管リング(ETレセプター)に対するサラフォトキシンS6c誘発性収縮の阻害によって評価された。成熟ウィスターラットを麻酔し、放血した。胸部大動脈又は気管を切除し、解剖し、3−5mmリングに切断した。内皮/外皮層は、内膜表面を軽度に摩擦にすることにより除去した。各リングを、37℃に保持されたクレブス−ヘンゼライト液(mMで、NaCl115、KCl4.7、MgSO1.2、KHPO1.5、NaHCO25、CaCl2.5、グルコース10を含む)で満たした10mlの摘出臓器用バスに懸垂し、95%O及び5%COで通気した。リングを張力トランスジューサーに接続し、等張性張力を記録した(EMKA Technologies SA(パリ、フランス))。リングを、3g(大動脈)又は2g(気管)の静止張力になるように牽引した。ET−1(大動脈)又はサラフォトキシンS6c(気管)の蓄積用量を、試験化合物又はそのビヒクルとの10分間のインキュベーション後に添加した。試験化合物の機能的阻害効力は、濃度比、例えば、試験化合物の各種濃度により惹起されたEC50値の右方シフトを計算することにより評価された。EC50値は最大収縮の1/2を得るために必要なエンドセリン濃度であり、pAはEC50値の2倍シフトを誘導する拮抗薬濃度の負対数である。
【0088】
結果:
式Iの化合物(n=3)に対して得られたpA値を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
ラットにおける単回経口投与後の薬物動態
実験法:
試験に用いた動物
体重200〜250gの雄性ウィスター系ラットを、少なくとも7日間の順応期間の後、薬物動態実験に用いた。すべての被検動物は、NIHガイドラインに従った条件下で飼育された。実験の2日前に、ケタミン(90mg/kg)とキシラジン2%(10mg/kg)の混合物を用いて、i.p.にてラットを麻酔した。複数回の血液採取を行うために、無菌条件下で、カテーテルを頚静脈中に挿入した。全身麻酔からの回復後、被検動物を、金網の蓋と柔らかい木材の床敷を備えたMakrolon3型ケージ内において、標準実験室条件下で個別に飼育した。回復期間及び実験の全期間にわたり、被検動物は、水と餌を自由に摂取することができた。
【0091】
実験手順
薬物動態実験は、連続的な血液採取のために頚静脈にカニューレを挿入した後、ウィスター系ラット(m=2−3)内で行われた。被検化合物を、10mg/kgの用量にて、強制的に経口投与した。次いで、24時間にわたって、所定の時点で血液を採取し、遠心により血漿を調製した。血漿中の薬物濃度を、質量分析装置(定量限界:4.6ng/mL)と結合した液体クロマトグラフィーを用いて定量した。ノンコンパートメント解析を用いて、薬物動態評価を行った。
【0092】
結果:
式Iの化合物及び国際公開公報第02/053557号の対照化合物に対して、ラットで測定された半減期t1/2及びクリアランス率CLを、表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
ヒトにおける反復経口投与後の薬物動態
実験法:
この試験は、二重盲検、プラセボ対照、無作為化、用量漸増第1相試験として行われた。
【0095】
本試験に参加した被検者
スクリーニング試験において適格性を判断した後、試験用量のレベル毎に、8名の健常男性被検者が臨床試験に参加した。
【0096】
適格性を有する被検者は、以下の組み入れ基準のすべてを満たさなければならない:
・20歳以上50歳以下の間の男性であること;
・病歴及びスクリーニングで行われた評価に基づいて健常であること;
・ボディマス指数が18と28kg/mの間であること;
・10分間の仰臥位の後、血圧(BP)及び脈拍(PR)が正常、すなわち、SBP:100−140mmHg、DBP:50−90mmHg及びPR:45−90bpmであること(両端値含有);
・12誘導心電図で臨床上重要な異常がないこと;
・血液、生化学及び尿検査結果が、臨床上の重要性という意味において正常範囲内にあること;
・薬物スクリーニングの結果が陰性であること(コカイン、カンナビノイド類、オピエート類、ベンゾジアゼパン類、バルビタツレート類、三環系抗鬱薬類、メタドン及びアンフェタミン類);
・試験者と現地の言語でコミュニケートし、試験上の要求を理解し、それに応じる能力。
【0097】
適格性を有する被検者は、以下の除外基準のいずれをも満たしてはならない:
・スクリーニング前3年以内における、アルコール中毒又は薬物濫用の経歴又は臨床的証拠;
・スクリーニング前3年以内における、治験薬剤の吸収、分布、代謝又は排泄に干渉する可能性のある疾患及び/又は外科的若しくは内科的状況の存在の経歴又は臨床的証拠(すなわち、肝又は腎機能障害、糖尿病、循環障害、膵疾患、著しい便秘若しくは下痢の慢性的症状又は胃腸管に関するその他の急性症状。ただし、虫垂切除又はヘルニア切除のみは許容される。);
・B又はC型肝炎の経歴及び/又は急性若しくは慢性のB若しくはC型肝炎について、肝炎血清学検査の結果が陽性であること(予防接種の場合を除く。);
・HIV血清学検査の結果が陽性であること;
・喫煙;
・薬剤に対する臨床的に重要な過敏性又は重篤な副反応の経歴;
・スクリーニング検査前3カ月の間における、別の臨床試験への参加;
・薬剤の最初の摂取前2週間以降における、医薬(処方されたものであるか、OTCによるものかを問わない。)による前治療又は併用治療;
・試験前3カ月以内における250ml以上の血液の損失;
・スクリーニング前4週間以内における、臨床的に重要な疾病の症状(例えば、急性の細菌、ウイルス又は真菌感染)。
【0098】
併用薬、食事、アルコール、喫煙、身体活動
副作用の治療を除いては、併用薬は許容しなかった。
【0099】
第1及び第2試験日において、被検者は、薬剤の摂取前10時間から摂取後4時間まで絶食した。試験中、被検者は、以下の標準食を摂食した:
・第−1及び第2〜11試験日における朝食(第1及び第10試験日は朝食なし);
・第−1、1及び10試験日における昼食(正午頃又は薬剤摂取後約4時間後);
・第−1、1及び10試験日における軽食(薬剤投与後約8時間後);及び
・第−1、1及び10試験日における夕食(だいたい19時頃、又は薬剤投与後約11時間後)。
【0100】
異なる用量を投与される群の被検者も、それぞれの試験日において同じ食事を摂食した。第1及び10試験日における食事は同じであった。水の摂取は自由であった。
【0101】
スクリーニングから試験の終了まで、被検者は、強い肉体運動及び消耗するスポーツ活動(持久系スポーツ)を控え、アルコール含有飲料、グレープフルーツ又はグレープフルーツジュースを摂取しなかった。病院におけるキサンチン含有飲料の摂取は禁止された。
【0102】
実験手順
プロピルスルファミン酸[5−(4−ブロモ−フェニル)−6−[2−(5−ブロモ−ピリミジン−2−イルオキシ)−エトキシ]−ピリミジン−4−イル]−アミド(国際公開公報02/053557号又は国際公開公報2007/031933号を見よ;以後、「参照化合物」と記載する。)は、臨床試験用の遊離塩基として、1及び10mgの強度で製剤された経口投与用のハードゼラチンカプセルが入手可能である。対応するプラセボカプセルは、同じ賦型剤を含むが、参照化合物を含有しない。
【0103】
参照化合物は、(それぞれ、1mgのカプセル1個、1mgのカプセル3個、10mgのカプセル1個及び10mgのカプセル3個の形態にて)1、3、10及び30mgの漸増する複数の用量で投与された。被検者は10日間処置された。被検者の同定のための番号及びコードの割り当ては、匿名性の義務に基づいて行われた。被検者番号及び誕生日のみにより、被検者を同定した。
【0104】
この試験は、二重盲検方式で行われた。参照化合物による処置については、各用量につき6名の被検者が、プラセボによる処置については2名の被検者が無作為に選ばれた。
【0105】
薬剤は、第1及び第10試験日においては、少なくとも10時間の絶食の後に、150mlの水とともに、朝に立位で被検者に与えられた。他の試験日においては、治験薬の投与は、朝食の摂取の30分前に行われた。各被検者に対し、薬剤摂取の間隔は24±0.5時間であったが、薬剤の摂取は、常に7.00時と9.00時の間に行われた。
【0106】
すべての薬剤の投与は、医師による直接的な監督の下に行われた。薬剤の各投与後、速やかにマウスチェックを行った。分析段階においての参照化合物及び/又はその代謝物、すなわち式Iの化合物、の血漿レベルの測定により、服薬の履行がさらにチェックされた。
【0107】
参照化合物及び/又はその代謝物、すなわち式Iの化合物、の血漿及び尿中の濃度は、LC−MSを用いて測定された。両分析において、定量限界は1ng/mlであると推定された。
【0108】
結果:
式Iの化合物及び参照化合物に対し、第10試験日に、ヒトで測定されたみかけの消失半減期(t1/2)を、各投与用量毎(それぞれ1、3、10及び30mg/日)に以下の表4に示す。
【0109】
【表4】

【0110】
発明化合物の薬理学的特性のまとめ
このように、式Iの化合物は、国際公開公報02/053557号の参照化合物よりも、(ラット及びヒトにおいて)はるかに高い半減期を有し、(ラットにおいて)はるかに低いクリアランスを有する(「ラットにおける単回経口投与後の薬物動態」、表3、及び「ヒトにおける反復経口投与後の薬物動態」、表4を見よ。)エンドセリンレセプター拮抗剤(「ヒトETレセプターを有するCHO細胞からの膜に対するエンドセリン結合の阻害」、表1、及び「ラットの摘出大動脈リング(ETレセプター)及びラットの摘出気管リング(ETレセプター)のエンドセリン誘発性収縮の阻害」、表2を見よ。)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、又はその塩;
【化1】


【請求項2】
医薬としての、請求項1に定義された式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1に定義された式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩を活性成分として、そして少なくとも1つの治療上不活性な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項4】
高血圧、肺性高血圧、冠状動脈疾患、心不全、腎虚血、心筋虚血、腎不全、脳虚血、痴呆、片頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍又は門脈圧亢進症の治療のための、及びアテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛又は高脂血症の治療又は予防のための医薬の製造のための、請求項1に定義された式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項5】
製造された医薬が、高血圧、肺性高血圧、糖尿病性動脈疾患、心不全、勃起不全及び狭心症から成る群より選択される疾患の治療を意図する、請求項4の使用。
【請求項6】
製造された医薬が高血圧の治療を意図する、請求項5の使用。
【請求項7】
製造された医薬が肺性高血圧の治療を意図する、請求項5の使用。
【請求項8】
製造された医薬が肺動脈高血圧の治療を意図する、請求項7の使用。
【請求項9】
高血圧、肺性高血圧、冠状動脈疾患、心不全、腎虚血、心筋虚血、腎不全、脳虚血、痴呆、片頭痛、くも膜下出血、レイノー症候群、指潰瘍又は門脈圧亢進症の治療のための、及びアテローム性動脈硬化、バルーン又はステント血管形成術後の再狭窄、炎症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、癌、黒色腫、前立腺癌、前立腺肥大、勃起不全、聴力損失、黒内障、慢性気管支炎、喘息、肺線維症、グラム陰性敗血症、ショック、鎌状赤血球貧血、糸球体腎炎、腎疝痛、緑内障、結合組織病、糖尿病合併症、血管若しくは心臓外科手術の、又は臓器移植後の合併症、シクロスポリン治療の合併症、疼痛又は高脂血症の治療又は予防のための、請求項1に定義された式Iの化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
高血圧、肺性高血圧、糖尿病性動脈疾患、心不全、勃起不全及び狭心症から成る群より選択される疾患の治療のための請求項9の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項11】
高血圧の治療のための請求項9の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項12】
肺性高血圧の治療のための請求項9の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項13】
肺動脈高血圧の治療のための請求項9の化合物、又は薬学的に許容される塩。
【請求項14】
以下の工程を含む、請求項1に記載の式Iの化合物の製造のための方法:
a) 式I−2の化合物、
【化2】

(式中、PGは、ベンジル、4−メトキシ−ベンジル又は2,4−ジメトキシベンジルである。)を、式I−3の化合物、
【化3】

(式中、Gは、塩素若しくは臭素原子、又はメチルスルホニル若しくはエチルスルホニル基を表す。)と、強塩基の存在下で反応させる工程;及び
b) 工程a)で得られた式I−1の化合物、
【化4】

のベンジル基を、PGがベンジルの場合にはBCl若しくはBBrを用いて、又はPGが4−メトキシ−ベンジル若しくは2,4−ジメトキシベンジルの場合には、硝酸セリウムアンモニウム若しくは2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−ベンゾキノンを用いて開裂させる工程。
【請求項15】
式Iの化合物を得るために、式I−4の化合物、
【化5】

(式中、PGはベンジルを表し、Gはハロゲン原子を表す。)を、塩基の存在下、エチレングリコールと反応させる追加の工程を含む、請求項14の方法。

【公表番号】特表2010−536742(P2010−536742A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520674(P2010−520674)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/IB2008/053282
【国際公開番号】WO2009/024906
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(500226786)アクテリオン ファーマシューティカルズ リミテッド (151)
【氏名又は名称原語表記】Actelion Pharmaceuticals Ltd
【住所又は居所原語表記】Gewerbestrass 16,CH−4123 Allschwil,Switzerland
【Fターム(参考)】