説明

4−メチル−1−ペンテン(共)重合体および該重合体から得られるブロー成形体

【課題】射出ブロー成形が可能で、透明性、耐熱性に優れ、さらに機械特性に優れた成形体を与える、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を提供すること。
【解決手段】下記(a)〜(d)の要件を満たす4−メチル−1−ペンテン(共)重合体によって上記課題が解決される。
(a)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が100モル%〜80モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位が0モル%〜20モル%である
(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)が0.5〜5.0である
(c)DSCで測定した融点(T)が165℃〜250℃の範囲にある
(d)密度が820〜850(kg/m)である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含んでなる射出ブロー(インジェクションブロー)成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な樹脂製の容器としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン及びポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルが主に使用されている。
【0003】
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、液体容器・ボトル、燃料タンクなどに広く使用されており、射出成型やブロー成形で成形されるのが一般的である。しかし、当該成形体は透明性に劣ることがあった(特許文献1)。
【0004】
一方、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルは、主に飲料水容器として広く使用されており、射出ブロー(以下、インジェクションブローと呼ぶ場合もある)成形で成形されている。この成形方法は、射出成形によりプリフォームと呼ばれる成形体を作製した後、プリフォームを再加熱後ブロー成形して成形体を作製する。しかし、当該成形体は透明性に優れるものの、耐熱性に問題があった(特許文献2)。
【0005】
ここで、ポリエチレンテレフタレートに耐熱性を付与すべく、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフィドなどのエンジニアリングプラスチックなどを添加した系での成形体製造の試みも行われているが、残存モノマーによる衛生性やコストの面から一部の用途にのみ使用が留められている。(特許文献3)
近年、ポリエチレンテレフタレートの欠点である耐熱性を克服した成形体を得るために、ポリプロピレンを用いた射出ブロー成形体に関する種々の検討が行われている(特許文献4〜6)。しかし、ポリプロピレンの場合、成形温度幅が狭いため成型時のハンドリングが困難であることが多いことに加えて、ホモポリプロピレンを使用した場合、透明性が発現し難く、また、ランダムポリプロピレンを使用した場合、耐熱性が低い等、使用可能なポリプロピレン(種類、物性等)が少ないという欠点が存在していた。
【0006】
また、透明性や耐熱性に優れた樹脂として、4−メチル−1−ペンテン系重合体が知られている。しかしながら、従来より知られている通常市販されている4−メチル−1−ペンテン系重合体は、必ずしも成形性がよいとは言えない。例えば、ブロー成形により成形体を得る場合、同じポリオレフィンであるポリエチレンやポリプロピレンと比較して困難であるという問題があった。これは、4−メチル−1−ペンテン系重合体の機械的強度や溶融張力が低いことに起因している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−245911号公報
【特許文献2】特開平5−031792号公報
【特許文献3】特開平5−070659号公報
【特許文献4】特開11−255982号公報
【特許文献5】特開2003−268044号公報
【特許文献6】特開2009−298139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、射出ブロー成形が可能で、透明性、耐熱性に優れ、さらに機械特性に優れた成形体を与える、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の物性を有する4−メチル−1−ペンテン(共)重合体が、射出ブロー成形が可能であり、さらに透明性、耐熱性に優れ、さらに機械特性に優れる成形体を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明にかかる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、下記(a)〜(d)の要件を満たすことを特徴とする。
(a)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が100モル%〜80モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位が0モル%〜20モル%である
(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)が0.5〜5.0である
(c)DSCで測定した融点(T)が165℃〜250℃の範囲にある
(d)密度が820〜850(kg/m)である
本発明において、(a)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位は、99モル%〜90モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位が1モル%〜10モル%であることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含んでなるブロー成形体である。
【0012】
本発明において、前記ブロー成形体は、前記4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を成形体の少なくとも1層として含んでいることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記ブロー成形体は、射出ブロー成形法によって得られることが好ましい。
【0014】
さらに、本発明のかかる前記4−メチル−1−ペンテン(共)重合体からなるブロー成形体の好ましい態様としては、容器、ボトル、カップである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、従来市販されている4−メチル−1−ペンテン系重合体では困難であった射出ブロー成形が可能であり、当該成型法により得られる成形体は透明性、耐熱性に優れ、さらに機械特性に優れているという顕著な効果を奏している。そのため、本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含んでなる成形体は、容器、ボトル、カップ等の容器に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明にかかる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、当該4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含んでなる成形体について詳説する。
<4−メチル−1−ペンテン(共)重合体>
本発明における4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は下記の(a)〜(d)の要件を満たすことを特徴とする。なお、本発明において、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体とは、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体、および、4−メチル−1−ペンテンと他のα−オレフィンとの共重合体を含む意味で用いられる。
(a)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が100モル%〜80モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位が0モル%〜20モル%である。
(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)が0.5〜5.0である。
(c)DSCで測定した融点(T)が165℃〜250℃の範囲にある。
(d)密度が820〜850(kg/m)である。
【0017】
以下に、(a)〜(d)の各要件について説明する。
[要件(a)]
本発明における、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位を100モル%〜80モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位を0モル%〜20モル%の割合で含む重合体である。
【0018】
ここで、耐熱性の観点から、構成単位の割合として好ましくは、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位は100モル%〜85モル%であり、より好ましくは100モル%〜90モル%であり、さらに好ましくは99モル%〜90モル%である。一方、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位は、上記4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位に対応する形として、好ましくは0モル%〜15モル%であり、より好ましくは0モル%〜10モル%であり、さらに好ましくは1モル%〜10モル%である。
【0019】
ここで、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体が炭素原子数2〜20のα−オレフィンを包含する場合、4−メチル−1−ペンテン共重合体は、4−メチル−1−ペンテンと炭素原子数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を含むランダム共重合体であっても、4−メチル−1−ペンテンと炭素原子数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を含むブロック共重合体であってもよいが、耐熱性、ブロー成形性と透明性の観点から好ましくは4−メチル−1−ペンテンと炭素原子数2〜20のα−オレフィンのランダム共重合体である。
【0020】
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体が炭素原子数2〜20のα−オレフィンを包含する場合、4−メチル−1−ペンテン以外の炭素原子数2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが好適な例として挙げられる。
【0021】
これらのうち、共重合性の観点から好ましくは、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンである。
【0022】
これらの炭素原子数2〜20のα−オレフィンは、単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
また、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、これらの単位の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、他の重合性モノマーから導かれる単位を含有していてもよい。
【0024】
このような他の重合性モノマーとしては、たとえばスチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等のビニル化合物類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;無水マレイン酸等の不飽和有機酸またはその誘導体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等の共役ジエン類;1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペンル−2−ノルボルネン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等の非共役ポリエン類などが挙げられる。なお、非共役ジエン、非共役ポリエンを含まないことも好ましい態様の一つである。
【0025】
本発明における4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、このような他の重合性モノマーから導かれる単位を、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体に含まれる全モノマー種に対して、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下の量で含有していてもよい。
[要件(b)]
本発明における、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]は、0.5〜5.0(dL/g)である。
【0026】
ここで、極限粘度[η]は、好ましくは1.0〜4.0(dL/g)であり、さらに好ましくは1.2〜3.5(dL/g)である。
【0027】
上記、極限粘度[η]の値は、重合時の水素の添加量により調整することが可能である。
【0028】
極限粘度[η]の値が上記範囲にある4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、射出ブロー成形時に、射出成形工程では良好な流動性を示し、ブロー成形工程では良好な延伸性を示し、透明性に優れた成形品が得られる傾向にある。
[要件(c)]
本発明における、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体のDSCで測定した融点(T)は、165℃〜250℃である。
【0029】
ここで、融点(T)は、好ましくは170℃〜240℃であり、さらに好ましくは175℃〜240℃である。
【0030】
上記、融点(T)の値は、重合体の立体規則性に依存して変化する値であり、所望の立体規則性重合体を与える重合用触媒を用いることにより、調整することが可能である。
【0031】
融点(T)の値が上記範囲にある4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、耐熱性とブロー成形性の観点から好ましい。
[要件(d)]
本発明における、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の密度は、820〜850(kg/m)である。
【0032】
ここで、密度は、好ましくは825〜850(kg/m)であり、さらに好ましくは825〜845(kg/m)である。
【0033】
上記、密度の値は、4−メチル−1−ペンテンと共に重合する他のモノマー種の種類や配合量を選択することにより、調整することが可能である。
【0034】
密度の値が上記範囲にある4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、耐熱性の観点から好ましい。
<4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の製造方法>
上記の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、従来公知の触媒、例えば、バナジウム系触媒、チタン系触媒、マグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3−193796号公報あるいは特開平02−41303号公報中に記載のメタロセン触媒などを用いて、4−メチル−1−ペンテンと、必要に応じて前記炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)や前記他の重合性モノマーを重合することにより得ることができる。
【0035】
なお、本発明における4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、4−メチル−1−ペンテンと、必要に応じて前記炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)や前記他の重合性モノマーを1段で重合することにより得ることができるが、別々の工程で製造した4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)および4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)を混合することにより得ることもできるし、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)および4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)を多段で連続して重合することにより得ることもできる。いずれの場合も、樹脂全体の物性が前記範囲になるように調製する。
【0036】
別々の工程で製造した4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)および4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)を混合する場合に使用する物質として、例えば、4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン(共)重合体(A)は一般的な市販の4−メチル−1−ペンテン系の重合体を用いることができ、例示としては、三井化学株式会社製のTPX(商標)を用いることができる。
【0037】
また、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)としては、下記の要件(e)〜(g)をそれぞれ満たすものが好ましく用いられる。
【0038】
なお、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)と4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)の混合物は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)1〜99重量部と4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(C)を99〜1重量部(ただし、(A)と(B)の合計を100重量部とする)を含んでなり、好ましくは、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(A)20〜80重量部と4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体(B)を80〜20重量部(ただし、(A)と(B)の合計を100重量部とする)を含んでなる。
【0039】
このように、2種の4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィン共重合体を混合することにより、耐熱性、透明性を保持しながら、良好なブロー成形性などを確保することができる。
[要件(e)]
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)は、4−メチル−1−ペンテン由来の構成単位を80モル%以上、99モル%以下の量、および、炭素原子数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位を1モル%以上、20モル%以下の量で含有する(ここで4−メチル−1−ペンテン由来の構成単位と炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種から由来の構成単位との合計を100モル%とする)。
【0040】
好ましい構成単位の割合としては、4−メチル−1−ペンテン由来の構成単位を85モル%以上、99モル%以下の量で、および炭素原子数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から導かれる構成単位を1モル%以上15モル%以下の量で含有する。
[要件(f)]
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)の、DSCで測定した融点(T)が120℃〜220℃の範囲である。ここで融点(T)の値は、好ましくは130℃〜210℃の範囲である。
[要件(g)]
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)は、メタロセン触媒を用いて、要件(e)に記載のオレフィンを重合することによって得られる。
【0041】
ここで、本発明において、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)を得るに当たり、好ましいメタロセン触媒としては、上記のとおり、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3−193796号公報、特開平02−41303号公報中あるいは国際公開第2006/025540号パンフレット中に記載のメタロセン触媒が挙げられる。
【0042】
本発明において、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体(B)をメタロセン触媒を用いて製造すると、分子量分布が狭く、低分子量成分が少なくいため、べた付きがない点、およびブロー成形改質性の点で好ましい。
【0043】
また本発明にかかる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体には、その成形性をさらに改善させる、すなわち結晶化温度を高め結晶化速度を速めるために、特定の任意成分である核剤が配合されていてもよい。この場合、例えば核剤はジベンジリデンソルビトール系核剤、リン酸エステル塩系核剤、ロジン系核剤、安息香酸金属塩系核剤、フッ素化ポリエチレン、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム、ピメリン酸やその塩、2,6−ナフタレン酸ジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド等であり、配合量は特に制限はないが、4−メチル−1−ペンテン共重合体(A)100重量部に対して0.1〜1重量部程度があることが好ましい。配合タイミングに特に制限は無く、重合中、重合後、あるいは成形加工時での添加が可能である。
【0044】
本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体には、本発明の目的を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、充填剤などを配合することができる。
【0045】
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、イオウ系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種類組み合わせたものが使用できる。
【0046】
滑剤としては、例えばラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などがあげられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。またかかる滑剤の配合量は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体100重量部に対して通常0.1〜3重量部、好ましくは0.1〜2重量部程度であることが望ましい。
【0047】
スリップ剤としては、ラウリル酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、ヘベニン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のアミド、あるいはこれらの飽和または不飽和脂肪酸のビスアマイドを用いることが好ましい。これらのうちでは、エルカ酸アミドおよびエチレンビスステアロアマイドが特に好ましい。これらの脂肪酸アミドは本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲で配合することが好ましい。
【0048】
アンチブロッキング剤としては、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、微粉末クレー、粉末状、もしくは液状のシリコン樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、微粉末架橋樹脂、例えば架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末等をあげることができる。これらのうちでは、微粉末シリカおよび架橋されたアクリル、メタクリル樹脂粉末が好ましい。
【0049】
本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体において、前記した添加剤を配合するには、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体と、添加剤等とをヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーブレンダー、リボンブレンダーなどを用いて混合した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを用いて溶融混合することによって、上記各成分および添加剤が均一に分散混合された高品質の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を得ることができる。
<ブロー成形体>
本発明のかかるブロー成形体は、前記4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含んでなることを特徴とする。ここで、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含んでなるとは、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体単独で得られるものであっても、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体と他の重合体が混合・複合して得られるものであってもよい。具体的には、前記4−メチル−1−ペンテン(共)重合体からなるブロー成形体は4−メチル−1−ペンテン(共)重合体単層、もしくは4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を少なくとも1層以上含む多層の構造を備えていても良い。これらのうち、本発明にかかるブロー成形体としては、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を少なくとも1層以上含む多層の構造を備えているものが好ましい。
ここで、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体からなるブロー成形体が多層構成の場合の具体的な構成としては、例えば、以下のような構成を挙げることができる。
【0050】
・4−メチル−1−ペンテン(共)重合体/機能付与樹脂/4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、の順で積層された多層成形体
・4−メチル−1−ペンテン(共)重合体/接着層/機能付与樹脂/接着層/4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、の順で積層された多層成形体
前記機能付与樹脂としては、例えば、従来公知のポリオレフィン樹脂(本発明にかかる重合体を除く。以下同じ。);具体的には、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、1−ブテン・α−オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン。オレフィン系熱可塑性エラストマーポリアミド樹脂;具体的には、脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)、芳香族ポリアミド。熱可塑性ポリエステル樹脂;具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル系エラストマー。芳香族ポリエステルスチレン樹脂;具体的には、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、スチレン系エラストマー(スチレン・ブタジエン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソプレン・スチレンブロックポリマー、スチレン・イソブチレン・スチレンブロックポリマー、前述の水素添加物)。熱可塑性ポリウレタン、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体、アイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、フッ素系樹脂ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイドポリイミド、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンロジン系樹脂、テルペン系樹脂および石油樹脂等が例示される。本発明の組成物は、これらの熱可塑性樹脂の中から1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0051】
これらのうち、水蒸気、ガスバリアー性などを付与することができるという観点から、好ましくは、低密度、中密度、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、ポリ1−ブテン、環状オレフィン共重合体、酢酸ビニル共重合体、エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体、アイオノマー、スチレン系エラストマー、フッ素系樹脂、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、熱可塑性ポリエステル樹脂、芳香族ポリエステル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、熱可塑性ポリウレタン、スチレン樹脂などが挙げられる。
【0052】
前記接着層として、一般的にコロナ処理、イトロ処理などの表面処理、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、オレフィン系接着剤などの接着剤に加えて、ポリオレフィンに極性基を共重合またはグラフトした極性オレフィン材料などが挙げられる。
【0053】
このうち、接着性からの観点から、好ましくは上記した重合方法によって得られる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、または他のポリオレフィン材料の一部が極性モノマーによりグラフト変性されているものが挙げられる。
【0054】
グラフト変性に用いる極性モノマーとしては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸またはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、ビニル基含有有機ケイ素化合物、カルボジイミド化合物などが挙げられる。これらのうち、不飽和カルボン酸またはその誘導体およびビニル基含有有機ケイ素化合物が特に好ましい。
【0055】
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。これらの化合物は従来公知のものが使用でき、特に制限はないが具体的な化合物としては、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸〔商標〕(エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)等の不飽和カルボン酸;またはその誘導体、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステル等が挙げられる。かかる誘導体の具体例としては、例えば塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらの不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸〔商標〕またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
【0056】
ビニル基含有有機ケイ素化合物としては、従来公知のものが使用でき、特に制限はないが具体的には、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシーエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルートリピルトリーメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジメメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが使用できる。好ましくは、γ−グリシドキシプロピルトリピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン、さらに好ましくは、立体障害が小さくグラフト変性効率の高いビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0057】
本発明における4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の変性体を用いる場合、当該変性体は、前記4−メチル−1−ペンテン(共)重合体100重量部に対して、極性モノマーを通常1〜100重量部、好ましくは5〜80重量部の量でグラフと重合させることにより得ることができる。このグラフト重合は、通常ラジカル開始剤の存在下に行なわれる。
【0058】
グラフと重合に用いられるラジカル開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物などが挙げられる。ラジカル開始剤は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、および極性モノマーにそのまま混合して使用することもできるが、少量の有機溶媒に溶解してから使用することもできる。この有機溶媒としては、ラジカル開始剤を溶解し得る有機溶媒であれば特に限定することなく用いることができる。
【0059】
また、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体に極性モノマーをグラフト重合させる際には、還元性物質を用いてもよい。還元性物質を用いると、極性モノマーのグラフト量を向上させることができる。
【0060】
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の極性モノマーによるグラフト変性は、従来公知の方法で行うことができ、たとえば4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を有機溶媒に溶解し、次いで極性モノマーおよびラジカル開始剤などを溶液に加え、70〜200℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させることにより行うことができる。
【0061】
また、押出機などを用いて、無溶媒で、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体と極性モノマーとを反応させて、変性4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を製造することもできる。この反応は、通常4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の融点以上、具体的には160〜320℃の温度で、通常0.5〜10分間行なわれることが望ましい。
【0062】
このようにして得られる変性4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の変性量(極性モノマーのグラフト量)は、通常0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜30重量%、さらに好ましくは0.2〜10重量%である。
【0063】
本発明のブロー成形体の製造に当たり、上記変性4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を接着剤として用いると、機能付与樹脂との接着性、相溶性に優れ、また成形体表面の濡れ性が改良される場合がある。
【0064】
本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体からなるブロー成形体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、通常0.05〜100mm、好ましくは0.05〜50mm、さらに好ましくは0.05〜20mmである。
<ブロー成形体の製造方法>
本発明において、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体からなるブロー成形体は、一般的な公知のブロー成形方法によって製造することができる。該成形方法の例示としては、溶融した樹脂からパリソンを成形し、そのパリソンを金型で挟んだ後、パリソン内部に加圧気体をブローして容器を成形するダイレクトブロー成形法や、一旦射出成形または押出成形でプリフォームを成形し、そのプリフォームをブロー成形する射出ブロー成形法等がある。
【0065】
さらに、射出ブロー成形法には射出成形機とブロー成形機が一体化した1ステージであるホットパリソン法、射出成形したプリフォームを完全に冷却した後、さらに再加熱してブロー成形を行なうコールドパリソン法がある。
<射出ブロー成形体の製造方法>
本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、従来から知られている市販されている4−メチル−1−ペンテン系重合体では製造が困難であった射出ブロー成形体を得ることができるという点で、画期的な重合体である。
【0066】
本発明にかかる射出ブロー成形体の製造する方法としては、具体的には前記4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を溶融して、金型内にこの樹脂を射出成形することによりプリフォームを成形する。続いて、このプリフォームを溶融状態あるいは軟化状態で、または冷却固化した状態で赤外線ヒーター等を用いて所定の温度まで再加熱して、加熱後に特定の金型内で気体を圧入して2軸延伸して所望の形態に成形する。
【0067】
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の溶融、射出温度は、通常180〜320℃の範囲で行われる。ブロー延伸温度は100〜250℃、縦・横延伸倍率は、1.5〜4.0倍で通常行われる。
【0068】
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体からなる射出ブロー成形体はブロー延伸成形する際の延伸性に優れているので、広い温度範囲で成形できるとともに、得られる延伸ブロー容器の厚薄むらが少ない。また本発明の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体からなる射出ブロー成形体は耐熱性、透明性および剛性に優れているので、得られる射出ブロー容器、ボトル、カップは耐熱性、透明性および剛性に優れている。また本発明の射出ブロー容器は軽量であり、焼却が容易であり、食品衛生性に優れている。
【0069】
したがって、当該特性を生かして食品、調味料、化粧品、整髪剤、飲料水、清涼飲料水、炭酸飲料、アルコール類、漂白剤、洗剤、シャンプー、リンス、コンディショナー、柔軟剤、柔軟仕上げ剤、薬剤、接着剤、農薬、医療用、哺乳ビン、実験器具、灯油缶、発電機や芝刈り機・二輪車・自動車等のガソリンタンク等の容器、ボトル、カップに好適に用いることができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において各物性は以下のように測定した。
【0071】
[極限粘度[η]]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した値である。すなわち重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[MFR]
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体のMFRは、JIS K−6721に準拠して、260℃で5kgの荷重、または230℃、2.16kgの荷重にて測定した。
【0072】
[ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン、α−オレフィン含量]
ポリマー中の4−メチル−1−ペンテンおよびα−オレフィン含量の定量化は、以下の装置および条件により13C−NMRにより測定した結果から行った。
【0073】
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒,試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。得られた13C−NMRスペクトルにより、4−メチル−1−ペンテン、α−オレフィンの組成を定量化した。
【0074】
[融点(T)]
セイコーインスツルメンツ社製DSC測定装置(DSC220C)を用い、測定用アルミパンに約5mgの試料をつめて、100℃/minで200℃まで昇温し、290℃で5分間保持した後、10℃/minで−150℃まで降温し、ついで10℃/minで290℃まで昇温させた時の結晶溶融ピークのピーク頂点から融点、ピークの積算値から融解熱量を算出した。
【0075】
[各種測定用プレスシートの作製法]
230〜290℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機(NS-50)を用い、ゲージ圧10MPaでシート成形した。1〜2mm厚のシート(ペーサー形状;240×240×2mm厚の板に200×200×1〜2mm)の場合、余熱を5〜7分程度し、ゲージ圧10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、ゲージ圧10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として5mm厚の真鍮板を用いた。上記方法により作製したサンプルを用いて各種物性評価試料に供した。
【0076】
[ヤング率(引張弾性率)(YM)、引張破断伸び(EL)、引張降伏応力(YS)、引張破断点応力(TS)]
引張特性であるヤング率(YM)、引張破断点伸(EL)、引張降伏点応力(YS)および引張破断点応力(TS)の評価は、上記プレスシートの作製法で得られた1mm厚プレスシートから打ち抜いたJIS K7113の2号型試験片1/2を評価用試料とし、インストロン社製引張試験機(Instron 1123)を用いて、23℃の雰囲気下で引張速度30mm/minで実施した。
【0077】
[内部ヘイズ(%)〕
厚さ2mmプレスシートを試験片として用いて、ベンジルアルコール中で日本電色工業(株)製のデジタル濁度計(NDH−20D)にて測定した。
【0078】
[密度]
密度測定は、上記の方法で得られた1mm厚プレスシートを30mm角に切り取り、JIS K6268に準拠して、電子比重計を用いて水中置換方法で測定した。
【0079】
[射出ブロー成形性評価]
日精樹脂工業(株)社製FE−10射出成形機を用い、射出樹脂温度;樹脂により任意、金型冷却温度18℃の条件で外径2.4mm、高さ55mm、重量10gの試験管形状のプリフォームを射出成形した。
【0080】
株式会社フロンティア製延伸ブロー成形機、FMB−1型を用い、得られたプリフォームをブロー成形した。工程ではプリフォームを回転させながら所定の温度に加熱して、125ccの容器(縦延伸倍率2.0倍、縦延伸倍率2.0倍)になるようなにブロー成形した。成形時のブロー圧力は1次圧力6.5kg/cm、2次圧力20kg/cmである。
【0081】
射出ブロー成形性は以下の観点で評価した。
射出ブロー成形品に破れなく成形できた場合:○
射出ブロー成形品がブロー時に延伸できずに破れた場合:×
【0082】
[実施例1]
〔固体状チタン触媒成分の調製〕
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン422mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱し均一溶液(マグネシウム化合物溶液)とした後、この溶液中に2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン31.1gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンをこの均一溶液に接触させた。
【0083】
このようにして得られた均一溶液(マグネシウム−ポリエーテル溶液)を室温に冷却した後、この均一溶液75mlを−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に1時間にわたって全量滴下装入した。装入終了後この混合液(マグネシウム−チタン溶液)の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところで、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン0.81gを添加し、これにより2時間同温度にて攪拌下保持した。その後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を四塩化チタン275mlにて再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃デカンおよびヘキサンにて洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0084】
以上の操作によって得られた固体状チタン触媒成分は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分の組成は、チタン2.7重量%、マグネシウム15重量%、塩素58重量%、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン19.3重量%、デカン4.8重量%、2−エチルヘキサノール(2−エチルヘキシル基)0.2重量%であった。
〔重合反応〕
乾燥窒素気流下で内容積1.5リットルのオートクレーブに、室温で4−メチル−1−ペンテン740ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、1−デセン10ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、0.75mmolのトリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム社製)を装入した。装入後、水素1000mlを導入し60℃に保った。ついで上記方法にて調整した固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.0075mmolを加え、オートクレーブ内を60℃に保ちながら1.0時間重合を行った。メタノールをオートクレーブ内に導入して重合を終了し、重合器からパウダーを取り出し濾過しポリマーを回収した。得られたポリマーは減圧下130℃で10時間乾燥し、101.6gのポリマーが得られた。このようにして得られたポリ4−メチル−1−ペンテン/1−デセン共重合体は4−メチル−1−ペンテンの含有量が98モル%、融点が232℃、極限粘度[η]が2.5dl/gであった。
【0085】
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0086】
当該評価用ペレットを用いてプレスシートを作成したのち、各種成形性評価を行った結果、および射出ブロー成形性評価を行った結果を表1に示す。
[実施例2]
乾燥窒素気流下で内容積1.5リットルのオートクレーブに、室温で4−メチル−1−ペンテン730ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、1−オクタデセン20ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、0.75mmolのトリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム社製)を装入した。装入後、水素750mlを導入し60℃に保った。ついで実施例1で調整した固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.0075mmolを加え、オートクレーブ内を60℃に保ちながら0.5時間重合を行った。メタノールをオートクレーブ内に導入して重合を終了し、重合液をメタノール中に注ぎ込んだ後、共重合体を濾過しポリマーを回収した。得られたポリマーは減圧下130℃で10時間乾燥し、58.5gのポリマーが得られた。このようにして得られた4−メチル−1−ペンテン/1−オクタデセン共重合体は4−メチル−1−ペンテンの含有量が97モル%、融点が228℃、極限粘度[η]が2.1dl/gであった。
【0087】
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0088】
当該評価用ペレットを用いてプレスシートを作成したのち、各種成形性評価を行った結果、および射出ブロー成形性評価を行った結果を表1に示す。
[実施例3]
乾燥窒素気流下で内容積1.5リットルのオートクレーブに、室温で4−メチル−1−ペンテン725ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、1−オクタデセン25ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、0.75mmolのトリエチルアルミニウム(東ソー・ファインケム社製)を装入した。装入後、水素750mlを導入し60℃に保った。ついで実施例1で調整した固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.0075mmolを加え、オートクレーブ内を60℃に保ちながら0.5時間重合を行った。メタノールをオートクレーブ内に導入して重合を終了し、重合液をメタノール中に注ぎ込んだ後、共重合体を濾過しポリマーを回収した。得られたポリマーは減圧下130℃で10時間乾燥し、58.5gのポリマーが得られた。このようにして得られた4−メチル−1−ペンテン/1−オクタデセン共重合体は4−メチル−1−ペンテンの含有量が96モル%、融点が224℃、極限粘度[η]が2.2dl/gであった。
【0089】
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度270℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0090】
当該評価用ペレットを用いてプレスシートを作成したのち、各種成形性評価を行った結果、および射出ブロー成形性評価を行った結果を表1に示す。
[実施例4]
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃で4−メチル−1−ペンテンを750ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
【0091】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.15MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.005mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0092】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を130℃、減圧下で12時間乾燥した。得られたポリマーは45.9gで、ポリマー中の4−メチル−1−ペンテン含量は、91.3mol%、プロピレン含量は、8.7mol%であった。ポリマーのT=170℃であり、極限粘度[η]は1.4dl/gであった。
【0093】
該共重合体100重量部に対して、二次抗酸化剤としてのトリ(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェートを0.1重量部、耐熱安定剤としてのn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピネートを0.1重量部、塩酸吸収剤としてのステアリン酸カルシウムを0.1重量部配合した。然る後に、(株)プラスチック工学研究所社製2軸押出機BT−30(スクリュー系30mmφ、L/D=46)を用い、設定温度230℃、樹脂押出量60g/minおよび200rpmの条件で造粒して評価用ペレットを得た。
【0094】
当該評価用ペレットを用いてプレスシートを作成したのち、各種成形性評価を行った結果、および射出ブロー成形性評価を行った結果を表1に示す。
[比較例1]
ホモポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 品番:J106G、MFR=15g/10分(230℃、2.16kg荷重)))を用いて実施例1と同様の評価を実施した。
【0095】
各種物性ならびに成形性評価結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係る4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、従来より知られている通常市販されている4−メチル−1−ペンテン系重合体では成し得ることのできなかった射出ブロー成形が可能であり、さらに当該成形体は透明性、耐熱性に優れ、さらに機械特性に優れるため、容器、ボトル、カップなどの用途に好ましく用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)の要件を満たす、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体。
(a)4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位が100モル%〜80モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位が0モル%〜20モル%である
(b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)が0.5〜5.0である
(c)DSCで測定した融点(T)が165℃〜250℃の範囲にある
(d)密度が820〜850(kg/m)である
【請求項2】
前記要件(a)において、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位は、99モル%〜90モル%であり、炭素数2〜20のα−オレフィン(4−メチル−1−ペンテンを除く)から選ばれる少なくとも1種のから導かれる構成単位が1モル%〜10モル%である、請求項1に記載の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含んでなるブロー成形体。
【請求項4】
請求項1または2に記載の4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を成形体の少なくとも1層として含んでなるブロー成形体。
【請求項5】
射出ブロー成形法によって得られる、請求項3または4に記載のブロー成形体。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか1項に記載のブロー成形体からなる容器、ボトル、カップ。

【公開番号】特開2012−97208(P2012−97208A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246700(P2010−246700)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】