説明

4−[4−({[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)−3−フルオロフェノキシ]−N−メチルピリジン−2−カルボキサミドの多形II

本発明は、4−[4−({[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)−3−フルオロフェノキシ]−N−メチルピリジン−2−カルボキサミドの多形II、その製造方法、それを含む医薬組成物および障害の制御におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−[4−({[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)−3−フルオロフェノキシ]−N−メチルピリジン−2−カルボキサミドの多形II、その製造方法、それを含む医薬組成物および障害の制御におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
4−[4−({[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)−3−フルオロフェノキシ]−N−メチルピリジン−2−カルボキサミドは、WO2005/009961で言及されており、式(I):
【化1】

の化合物に相当する。
【0003】
WO2005/009961は、式(I)の化合物を、酵素Rafキナーゼの阻害剤として記載しており、それは、血管新生および/過剰増殖が重要な役割を果たす障害、例えば腫瘍成長および癌の処置に使用し得る。
【0004】
式(I)の化合物は、WO2005/009961に記載の方法で製造され、それは、これ以後多形Iと名付ける、186−206℃の融点、特徴的なX線回折図、IRスペクトル、ラマンスペクトル、FIRスペクトル、NIRスペクトルおよび13C−固相−NMRスペクトルを有する多形に相当する(表2−7、図2−7)。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、式(I)の化合物の新しい多形を提供し、それは、181℃で融解し、多形IIと呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
(原文に記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0007】
式(I)の化合物の多形Iと比較して、多形IIは、明らかに区別できるX線回折図、IRスペクトル、ラマンスペクトル、FIRスペクトル、NIRスペクトルおよび13C−固相NMRスペクトルを有する(図2−7)。
驚くべきことに、式(I)の化合物の新しい多形IIは、水および有機溶媒中での高い溶解性を有する。
【0008】
本発明の多形IIの式(I)の化合物は、医薬製剤において高純度で使用される。安定性の理由で、医薬製剤は、多形IIの式(I)の化合物を主に含み、他の式(I)の化合物の形態、例えば、式(I)の化合物の他の多形または偽多形(pseudopolymorph)を有意な割合で含まない。医薬組成物は、組成物中に存在する式(I)の化合物の総量に対して、好ましくは、90重量パーセントより多い、より好ましくは95重量パーセントより多い、多形IIの式(I)の化合物を含有する。
【0009】
処置方法:
本発明は、また、哺乳動物の過剰増殖障害を処置するための多形IIの式(I)の化合物およびその組成物の使用方法にも関する。この方法は、それを必要としているヒトを含む哺乳動物に、その障害を処置するのに有効な量の本発明の多形IIの式(I)の化合物またはその組成物を投与することを含む。過剰増殖障害には、乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、泌尿器、眼、肝臓、皮膚、頭部および頸部、甲状腺、副甲状腺の癌およびそれらの遠隔転移などの固形腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。これらの障害には、また、リンパ腫、肉腫および白血病も含まれる。
【0010】
乳癌の例には、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、非浸潤性乳管癌および非浸潤性小葉癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
呼吸器の癌の例には、小細胞肺癌および非小細胞肺癌、並びに気管支腺腫および胸膜肺芽腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
脳の癌の例には、脳幹および視床下部(hypophtalmic)のグリオーマ、小脳および大脳の星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫、並びに、神経外胚葉および松果体の腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
雄性生殖器の腫瘍には、前立腺および精巣の癌が含まれるが、これらに限定されない。雌性生殖器の腫瘍には、子宮内膜、子宮頸、卵巣、膣および外陰部の癌、並びに、子宮の肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
消化器の腫瘍には、肛門、結腸、結腸直腸、食道、胆嚢、胃、膵臓、直腸、小腸および唾液腺の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0015】
泌尿器の腫瘍には、膀胱、陰茎、腎臓、腎盂、尿管および尿道の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0016】
眼の癌には、眼球内黒色腫および網膜芽細胞腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
肝臓癌の例には、肝細胞癌(線維層状の変化(fibrolamellar variant)が有る、または無い、肝細胞癌腫)、胆管癌(肝臓内の胆管の癌腫)および混合型の肝細胞性胆管癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
皮膚癌には、扁平上皮癌、カポジ肉腫、悪性黒色腫、メルケル細胞皮膚癌および非黒色腫皮膚癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
頭部および頸部の癌には、喉頭/下咽頭/鼻咽頭/口咽頭癌、および口唇および口腔の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
リンパ腫には、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病および中枢神経系のリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
肉腫には、軟部組織の肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫および横紋筋肉腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
白血病には、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病および有毛細胞白血病が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
これらの障害は、ヒトでは十分に特徴解析されているが、他の動物にも同様の病因で存在し、本発明の医薬組成物の投与により処置できる。
【0024】
過剰増殖障害の処置に有用な化合物を評価するために知られている標準的な実験室の技法に基づき、標準的な毒性試験により、そして、哺乳動物の上記で特定される症状の処置を決定するために標準的な薬理アッセイにより、そして、これらの結果をこれらの症状の処置に使用される既知の医薬の結果と比較することにより、本発明の化合物の有効な投与量を、各々の所望の適応症の処置のために容易に決定できる。これらの症状の1つの処置において投与される有効成分の量は、特定の化合物および用いる用量単位、投与様式、処置期間、処置される患者の年齢および性別、処置される症状の性質および程度などの考慮事項に応じて、幅広く変動し得る。
【0025】
本発明は、さらに、上述の障害の処置用の医薬組成物を製造するための多形IIの式(I)の化合物の使用を提供する。
【0026】
他の医薬物質との組合せ:
本発明の多形IIの式(I)の化合物を、単独の医薬物質として、または、組合せが許容できない有害作用をもたらさない場合、1種またはそれ以上の他の医薬物質と組み合わせて、投与できる。例えば、本発明の多形IIの式(I)の化合物は、既知の抗過剰増殖剤または他の適応を有する物質など、並びにそれらの混合物および組合せと、組み合わせることができる。
【0027】
組成物に添加できる場合による抗過剰増殖剤には、出典明示により本明細書の一部とする Merck Index 第11版(1996)の癌の化学療法薬のレジメンに挙げられている化合物、例えば、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、コラスパーゼ(colaspase)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン(adriamycine))、エピルビシン、エトポシド、5−フルオロウラシル、ヘキサメチルメラミン、ヒドロキシウレア、イホスファミド、イリノテカン、ロイコボリン、ロムスチン、メクロレタミン、6−メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシンC、ミトキサントロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、プロカルバジン、ラロキシフェン、ストレプトゾシン、タモキシフェン、チオグアニン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビンデシンが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の組成物と共に使用するのに適する他の抗過剰増殖剤には、出典明示により本明細書の一部とする Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics (第9版)、Molinoff ら編、McGraw-Hill 刊行、1225−1287頁、(1996)で、新生物性疾患の処置に使用できると認められている化合物、例えば、アミノグルテチミド、L−アスパラギナーゼ、アザチオプリン、5−アザシチジン、クラドリビン、ブスルファン、ジエチルスチルベストロール、2',2'−ジフルオロデオキシシチジン、ドセタキセル、エリスロヒドロキシノニルアデニン(erythroヒドロキシnonyladenine)、エチニルエストラジオール、5−フルオロデオキシウリジン、5−フルオロデオキシウリジン一リン酸塩、リン酸フルダラビン、フルオキシメステロン、フルタミド、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、イダルビシン、インターフェロン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、メルファラン、ミトタン、パクリタキセル、ペントスタチン、N−ホスホノアセチル−L−アスパラギン酸(PALA)、プリカマイシン、セムスチン、テニポシド、プロピオン酸テストステロン、チオテパ、トリメチルメラミン、ウリジンおよびビノレルビンが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の組成物と共に使用するのに適する他の抗過剰増殖剤には、他の抗癌剤、例えば、エポチロンおよびその誘導体、イリノテカン、ラロキシフェンおよびトポテカンが含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
一般的に、本発明の化合物または組成物との組合せにおける、細胞傷害性および/または細胞分裂停止性の物質の使用は、以下に役立つ:
(1)いずれかの物質を単独で投与するのと比較して、腫瘍の成長を低減させるのにより良好な効力を達成するか、または、腫瘍を除去しさえする、
(2)投与される化学療法剤のより少ない量での投与を提供する、
(3)有害な薬理的合併症が単剤の化学療法およびある種の併用療法で観察されるものよりも少ない、患者に良好に耐容される化学療法を提供する、
(4)哺乳動物、特にヒトにおいて、より幅広い範囲の様々な癌のタイプの処置を提供する、
(5)処置される患者の間に、より高い応答率を提供する、
(6)標準的な化学療法の処置と比較して、処置される患者の間により長い生存時間を提供する、
(7)腫瘍の進行により長い時間をもたらす、および/または、
(8)他の癌作用物質の組合せが拮抗作用を奏する既知の例と比較して、単独で使用される物質のものと少なくとも同程度に良好な効力および耐容性の結果を達成する。
【0031】
「組合せ」は、本発明の目的上、全ての成分を含有する投与形(いわゆる固定された組合せ)および相互に分離した成分を含有する組合せパックのみならず、それらが同じ疾患の予防または処置に用いられる限り、同時または連続的に投与される成分も意味する。
【0032】
本発明による組合せの有効成分は、既知方法で、液体または固体製剤であり得る通常の製剤に変換できる。例は、錠剤、被覆錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、エアゾール剤、シロップ剤、乳剤、懸濁液、液剤である。
【0033】
本発明による組合せは、良好に耐容され、低用量でさえ有効な場合もあるので、幅広い製剤の変形が可能である。従って、一つの可能性は、本発明による組合せの個々の有効成分を別々に製剤化することである。この場合、個々の有効成分を同時に摂取することが絶対的に必要なわけではない;それどころか、連続的摂取は、最良の効果を達成するのに有利であり得る。そのような分離した投与では、個々の有効成分の製剤、例えば錠剤またはカプセル剤を、同時に適する一次包装中に組み合わせることが適切である。これらの有効成分は、一次包装中で、各場合で分離した容器中に存在し、それは、例えば、チューブ、ボトルまたはブリスターパックであり得る。そのような一体となった一次包装中に成分を分けて包装したものは、また、キットと呼ばれる。
【0034】
本発明による組合せに適し、かつ好ましいさらなる製剤の変形は、また、固定された組合せである。「固定された組合せ」は、本明細書では、成分が固定された量の比で一体となって存在する医薬形態を意味すると企図する。そのような固定された組合せは、例えば、経口液剤の形態であり得るが、好ましくは固体経口医薬製剤、例えばカプセル剤または錠剤である。
【0035】
医薬組成物:
本発明は、また、本発明の多形IIの式(I)の化合物を含有する医薬組成物に関する。これらの組成物は、それを必要としている患者に投与することにより、所望の薬理的効果を達成するために利用できる。本発明の目的上、患者は、特定の症状または疾患の処置を必要としている、ヒトを含む哺乳動物である。従って、本発明は、医薬的に適する担体および医薬的に有効な量の本発明の多形IIの式(I)の化合物を含む医薬組成物を含む。医薬的に許容し得る担体は、担体に起因するいかなる副作用も有効成分の有益な効果を損なわないように、有効成分の有効な活性と矛盾しない濃度で患者に対して相対的に非毒性かつ無害である担体である。医薬的に有効な量の化合物は、処置されている特定の症状に対してある成果をもたらすか、または、影響を及ぼす量である。本発明の多形IIの式(I)の化合物は、当分野で周知の医薬的に許容し得る担体と共に、即時放出、徐放および定時放出製剤を含む任意の有効な常套の単位投薬形を使用して、経口で、非経腸で、局所に、鼻腔に、眼に、耳に、皮下に、直腸に、膣になど、投与できる。
【0036】
経口投与のために、多形IIの式(I)の化合物を、固体分散体(固体 dispersion)、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、ドロップ剤(lozenge)、溶融剤(melt)、粉末剤、液剤、懸濁剤または乳剤などの固体または液体製剤に製剤化でき、医薬組成物の製造のために当分野で知られている方法に従い製造し得る。これらの固体単位投薬形は、カプセル剤であり得、これは、例えば、表面活性剤、滑沢剤および不活性賦形剤、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウムおよびトウモロコシデンプンなどを含有する通常のハードまたはソフトゼラチンタイプのものであり得る。
【0037】
他の実施態様では、ラクトース、スクロースおよびトウモロコシデンプンなどの常套の錠剤基剤を、結合剤、例えばアカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチン、投与後の錠剤の崩壊および溶解を補助することを意図する崩壊剤、例えば、ジャガイモデンプン、アルギン酸、トウモロコシデンプン、および、グアーガム、ガムトラガカント、アカシア、錠剤顆粒の流動を改善し、打錠機の臼および杵の表面への錠剤材料の接着を防止することを意図する滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸、または、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムもしくは亜鉛、錠剤の美的品質を高め、患者にとってより許容し得るものにすることを意図する、染料、着色剤、および、香味料、例えばペパーミント、冬緑油、サクランボ香料と組み合わせて用いて、本発明の多形IIの式(I)の化合物を錠剤化し得る。経口液体投与形における使用に適する補助剤には、リン酸二カルシウム、および、希釈剤、例えば水およびアルコール類、例えば、エタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコール類が含まれる(医薬的に許容し得る表面活性剤、懸濁化剤または乳化剤を添加して、または、添加せずに)。様々な他の物質が、被覆として、または、その他の方法で投薬単位の物理的形態を改変するために、存在し得る。例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤は、セラック、糖または両方で被覆し得る。
【0038】
分散性の粉末および顆粒は、水性懸濁剤の製造に適する。それらは、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1種またはそれ以上の防腐剤との混合物中の有効成分を提供する。適する分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、既に上記で挙げたものにより例示される。さらなる補助剤、例えば上記の甘味料、香味料および着色剤も存在し得る。
【0039】
本発明の医薬組成物は、また、水中油乳剤の形態であり得る。油相は、液体パラフィンまたは植物油混合物などの植物油であり得る。適する乳化剤は、(1)天然産生ガム、例えばガムアカシアおよびガムトラガカント、(2)天然産生ホスファチド、例えばダイズおよびレシチン、(3)脂肪酸およびヘキシトール(hexitol)無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、(4)該部分エステルの、エチレンオキシドとの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。乳剤は、甘味料および香味料も含有し得る。
【0040】
油性懸濁剤は、有効成分を、植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油、または、鉱油、例えば液体パラフィンに懸濁することにより、製剤化し得る。油性懸濁剤は、増粘剤、例えば、蜜蝋、ハードパラフィン、または、セチルアルコールを含有し得る。懸濁剤は、1種またはそれ以上の防腐剤、例えば、エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート;1種またはそれ以上の着色剤;1種またはそれ以上の香味料;および、1種またはそれ以上の甘味料、例えばスクロースまたはサッカリンを含有し得る。
【0041】
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味料、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを用いて製剤化し得る。そのような製剤は、粘滑薬および防腐剤、例えば、メチルおよびプロピルパラベン、および、香味料および着色料も含有し得る。
【0042】
本発明の多形IIの式(I)の化合物は、また、非経腸で、即ち、皮下に、静脈内に、眼内に、滑液嚢内に、筋肉内に、または、腹腔内に、化合物の注射可能な投与量で、生理的に許容し得る希釈剤中で、滅菌液体または液体の混合物、例えば、水、塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコール、グリコール類、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール、グリセロールケタール類、例えば、2,2−ジメチル−1,1−ジオキソラン−4−メタノール、エーテル類、例えば、ポリ(エチレングリコール)400、油、脂肪酸、脂肪酸エステル、または、脂肪酸グリセリド、または、アセチル化脂肪酸グリセリドであり得る医薬的担体と共に、医薬的に許容し得る表面活性剤、例えばセッケンまたは洗剤、懸濁化剤、例えば、ペクチン、カルボマー(carbomer)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または、カルボキシメチルセルロース、または、乳化剤および他の医薬的補助剤を添加して、またはせずに、投与し得る。
【0043】
本発明の非経腸製剤で使用できる油の例は、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、石油および鉱油である。適する脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸およびミリスチン酸が含まれる。適する脂肪酸エステルは、例えば、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルである。適するセッケンには、脂肪酸アルカリ金属、アンモニウム、および、トリエタノールアミン塩が含まれ、適する洗剤には、陽イオン性洗剤、例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハロゲン化物、アルキルピリジニウムハロゲン化物、および、アルキルアミンアセテート類;陰イオン性洗剤、例えば、アルキル、アリールおよびオレフィンスルホネート類、アルキル、オレフィン、エーテル、および、モノグリセリドサルフェート類、および、スルホスクシネート類;非イオン性洗剤、例えば、脂肪アミンオキシド類、脂肪酸アルカノールアミド類、および、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)類またはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドコポリマー類;および、両性洗剤、例えば、アルキル−ベータ−アミノプロピオネート類、および、2−アルキルイミダゾリン第四級アンモニウム塩、並びに、混合物が含まれる。
【0044】
本発明の非経腸組成物は、典型的には、約0.5重量%ないし約25重量%の有効成分を溶液中に含有する。保存料およびバッファーも有利に使用し得る。注射部位での刺激作用を最小化または排除するために、そのような組成物は、親水−親油バランス(HLB)約12ないし約17を有する非イオン性表面活性剤を含有し得る。そのような製剤における表面活性剤の量は、約5重量%ないし約15重量%の範囲にある。表面活性剤は、上記のHLBを有する単一の成分であり得るか、または、所望のHLBを有する2種またはそれ以上の成分の混合物であり得る。
【0045】
非経腸製剤で使用される表面活性剤の例示は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルのクラス、例えば、モノオレイン酸ソルビタンおよび疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子量付加体(プロピレンオキシドとプロピレングリコールの縮合により形成される)である。
【0046】
医薬組成物は、無菌の注射可能な水性懸濁剤の形態であり得る。そのような懸濁剤は、適する分散剤または湿潤剤、および、懸濁化剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、ガムトラガカントおよびガムアカシア;天然産生ホスファチド、例えばレシチン、アルキレンオキシドの脂肪酸との縮合産物、例えば、ポリオキシエチレンステアレート、エチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合産物、例えば、ヘプタデカ−エチレンオキシセタノール、エチレンオキシドの、脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分エステルとの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、または、エチレンオキシドの、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合産物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る分散剤または湿潤剤を使用して、既知方法に従い製剤化し得る。
【0047】
滅菌注射可能製剤は、非毒性の非経腸的に許容し得る希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な液剤または懸濁剤であり得る。用い得る希釈剤および溶媒は、例えば、水、リンガー液、等張塩化ナトリウム溶液および等張グルコース溶液である。加えて、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒体として、常套に用いられる。この目的で、合成モノまたはジグリセリド類を含む任意の無刺激の固定油を用い得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は、注射可能製剤の製造において使用できる。
【0048】
本発明の組成物は、また、薬物の直腸投与用の坐剤の形態で投与し得る。これらの組成物は、常温では固体であるが、直腸温度では液体であり、従って直腸内で融解して薬物を放出する、適する非刺激性の補助剤と、薬物を混合することにより製造できる。そのような物質は、例えば、カカオバターおよびポリエチレングリコールである。
【0049】
本発明の方法で用いる他の製剤は、経皮送達装置(「パッチ」)を用いる。そのような経皮パッチを使用して、本発明の化合物の制御された量での連続的または非連続的注入を提供し得る。医薬物質の送達用の経皮パッチの構築および使用は、当分野で周知である(例えば、出典明示により本明細書の一部とする1991年6月11日発行の米国特許第5,023,252号参照)。そのようなパッチは、医薬物質の連続的、パルス状、または、応需型の送達のために構築し得る。
【0050】
非経腸投与用の制御放出製剤には、当分野で知られているリポソームの、重合性ミクロスフェアの、および、重合性ゲルの製剤が含まれる。
【0051】
機械的送達装置を介して医薬組成物を患者に導入することが望ましいか、または、必要であり得る。医薬物質の送達用の機械的送達装置の構築および使用は、当分野で周知である。例えば薬物を脳に直接投与するための直接的技法は、通常、血液脳関門を迂回するために、患者の脳室系への薬物送達カテーテルの設置を含む。身体の特定の解剖学的領域に物質を輸送するために使用される、そのような移植可能な送達システムの1つは、1991年4月30日発行の米国特許第5,011,472号に記載されている。
【0052】
本発明の医薬組成物は、また、固体分散体の形態であり得る。固体分散体は、固溶体、ガラス溶液(glass solution)、ガラス懸濁液(glass suspension)、結晶性担体中の無定形沈殿、共晶または偏晶(monotecic)、化合物または複合体形態、および、これらの組合せであり得る。
【0053】
特に関心のある本発明の態様は、マトリックスが医薬的に許容し得るポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/ビニルアセテートコポリマー、ポリアルキレングリコール(即ち、ポリエチレングリコール)、ヒドロキシアルキルセルロース(即ち、ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシアルキルメチルセルロース(即ち、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ビニルアルコール/ビニルアセテートコポリマー、ポリグリコール化グリセリド類、キサンタンガム、カラゲナン、キトサン、キチン、ポリデキストリン、デキストリン、デンプンおよびタンパク質を含む、固体分散体を含む医薬組成物である。
【0054】
本発明の他の態様は、マトリックスが糖および/または糖アルコールおよび/またはシクロデキストリン、例えば、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、ラフィノース、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、マルチトール、エリスリトール、イノシトール、トレハロース、イソマルト(isomalt)、イヌリン、マルトデキストリン、β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンまたはスルホブチルエーテルシクロデキストリンを含む、固体分散体を含む医薬組成物である。
【0055】
固体分散体のマトリックスの形成において有用であるさらなる適する担体には、アルコール類、有機酸、有機塩基、アミノ酸、リン脂質、蝋、塩、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよび尿素が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
マトリックス中の多形IIの式(I)の化合物の固体分散体は、ある種の付加的な医薬的に許容し得る成分、例えば表面活性剤、賦形剤、崩壊剤、再結晶阻害剤、可塑剤、消泡剤、抗酸化剤、分離剤(detackifier)、pH調節剤、流動剤および滑沢剤を含有し得る。
【0057】
本発明の固体分散体は、固体分散体の製造のために当分野で知られている方法、例えば、溶融/溶解技法、熱溶解押出(hot melt extrusion)、溶媒蒸発(即ち、顆粒の粉末の凍結乾燥、噴霧乾燥または層積)、共沈、超臨界流体技法および静電スピン法に従い製造する。
【0058】
本発明の組成物は、必要または所望により、一般的に担体または希釈剤と呼ばれる、他の常套の医薬的に許容し得る配合成分も含有できる。適当な投与形におけるそのような組成物の製造のための常套の操作を利用できる。そのような成分および操作は、各々出典明示により本明細書の一部とする以下の参考文献に記載されているものを含む:Powell, M.F. et al, "Compendium of Excipients for Parenteral Formulations" PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 1998, 52(5), 238-311; Strickley, R.G "Parenteral Formulations of Small Molecular Therapeutics Marketed in the United States (1999)-Part-1" PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 1999, 53(6), 324-349; および Nema, S. et al, "Excipients and Their Use in Injectable Products" PDA Journal of Pharmaceutical Science & Technology 1997, 51 (4), 166-171。
【0059】
その意図する投与経路のために組成物を製剤化するのに必要に応じて使用できる、一般的に使用される医薬成分には、以下のものが含まれる:
酸性化剤(例には、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸が含まれるが、これらに限定されない);
アルカリ化剤(例には、アンモニア溶液、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロラミン(trolamine)が含まれるが、これらに限定されない);
吸着剤(例には、セルロース粉末および活性炭が含まれるが、これらに限定されない);
エアロゾル噴霧剤(例には、二酸化炭素、CCl2、ClC−CClFおよびCClFが含まれるが、これらに限定されない)
空気置換剤(air displacement agents)(例には、窒素およびアルゴンが含まれるが、これらに限定されない);
抗真菌性防腐剤(例には、安息香酸、ブチルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない);
抗菌性防腐剤(例には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、塩化セチルピリジニウム、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀およびチメロサールが含まれるが、これらに限定されない);
抗酸化剤(例には、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜燐酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない);
【0060】
結合剤(例には、ブロックポリマー類、天然および合成ゴム、ポリアクリレート類、ポリウレタン類、シリコン類、ポリシロキサン類およびスチレン−ブタジエンコポリマー類が含まれるが、これらに限定されない);
緩衝剤(例には、メタリン酸カリウム、リン酸二カリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム無水物およびクエン酸ナトリウム二水和物が含まれるが、これらに限定されない)
坦体(carrying agent)(例には、アカシアシロップ、芳香性シロップ、芳香性エリキシル剤、サクランボシロップ、カカオシロップ、オレンジシロップ、シロップ、コーン油、鉱油、ピーナッツ油、ゴマ油、静菌性塩化ナトリウム注射液および静菌性注射用水が含まれるが、これらに限定されない)
キレート化剤(例には、エデト酸二ナトリウムおよびエデト酸が含まれるが、これらに限定されない)
着色剤(例には、FD&C赤色3号、FD&C赤色20号、FD&C黄色6号、FD&C青色2号、D&C緑色5号、D&C橙色5号、D&C赤色8号、カラメルおよび赤酸化鉄が含まれるが、これらに限定されない);
清澄剤(例には、ベントナイトが含まれるが、これに限定されない);
乳化剤(例には、アカシア、セトマクロゴール、セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレン50モノステアレートが含まれるが、これらに限定されない);
カプセル化剤(例には、ゼラチンおよび酢酸フタル酸セルロースが含まれるが、これらに限定されない)
【0061】
香味料(例には、アニス油、シナモン油、カカオ、メンソール、オレンジ油、ペパーミント油およびバニリンが含まれるが、これらに限定されない);
保湿剤(humectant)(例には、グリセロール、プロピレングリコールおよびソルビトールが含まれるが、これらに限定されない);
研磨剤(levigating agent)(例には、鉱油およびグリセリンが含まれるが、これらに限定されない);
油(例には、ラッカセイ油、鉱油、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油および植物油が含まれるが、これらに限定されない);
軟膏基剤(例には、ラノリン、親水性軟膏、ポリエチレングリコール軟膏、ワセリン、親水性ワセリン、白色軟膏、黄色軟膏およびバラ水軟膏(rose water ointment)が含まれるが、これらに限定されない);
浸透促進剤(経皮送達)(例には、モノヒドロキシまたはポリヒドロキシアルコール類、一価または多価アルコール類、飽和または不飽和脂肪アルコール類、飽和または不飽和脂肪エステル類、飽和または不飽和ジカルボン酸類、精油、ホスファチジル誘導体、セファリン、テルペン類、アミド類、エーテル類、ケトン類および尿素類が含まれるが、これらに限定されない)
可塑剤(例には、フタル酸ジエチルおよびグリセロールが含まれるが、これらに限定されない);
溶媒(例には、エタノール、コーン油、綿実油、グリセロール、イソプロパノール、鉱油、オレイン酸、ピーナッツ油、精製水、注射用水、無菌注射用水および無菌洗浄(irrigation)用水が含まれるが、これらに限定されない);
硬化剤(例には、セチルアルコール、セチルエステル蝋、微結晶性蝋、パラフィン、ステアリルアルコール、白蝋および黄蝋が含まれるが、これらに限定されない);
【0062】
坐剤基剤(例には、カカオバターおよびポリエチレングリコール(混合物)が含まれるが、これらに限定されない);
表面活性剤(例には、塩化ベンザルコニウム、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポリソルベート80、ラウリル硫酸ナトリウムおよびソルビタンモノパルミテートが含まれるが、これらに限定されない);
懸濁化剤(例には、寒天、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カオリン、メチルセルロース、トラガカントおよびビーガム(veegum)が含まれるが、これらに限定されない);
甘味料(例には、アスパルテーム、デキストロース、グリセロール、マンニトール、プロピレングリコール、サッカリンナトリウム、ソルビトールおよびスクロースが含まれるが、これらに限定されない);
錠剤抗接着剤(例には、ステアリン酸マグネシウムおよびタルクが含まれるが、これらに限定されない);
錠剤結合剤(例には、アカシア、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースナトリウム、圧縮糖(compressible sugar)、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、メチルセルロース、非架橋ポリビニルピロリドンおよびアルファ化デンプンが含まれるが、これらに限定されない);
錠剤およびカプセル剤希釈剤(例には、リン酸水素カルシウム、カオリン、ラクトース、マンニトール、結晶セルロース、セルロース粉末、炭酸カルシウム沈殿、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、ソルビトールおよびデンプンが含まれるが、これらに限定されない);
【0063】
錠剤被覆剤(例には、液体グルコース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースおよびセラックが含まれるが、これらに限定されない);
錠剤直接圧縮補助剤(例には、リン酸水素カルシウムが含まれるが、これに限定されない);
錠剤崩壊剤(例には、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、ポラクリン(polacrillin)カリウム、架橋ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムデンプングリコレートおよびデンプンが含まれるが、これらに限定されない);
錠剤流動剤(例には、コロイド状シリカ、トウモロコシデンプンおよびタルクが含まれるが、これらに限定されない);
錠剤滑沢剤(例には、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、ステアリン酸およびステアリン酸亜鉛が含まれるが、これらに限定されない);
錠剤/カプセル剤の不透明化剤(opaquant)(例には、二酸化チタンが含まれるが、これに限定されない);
錠剤の光沢剤(例には、カルナウバロウおよび白蝋が含まれるが、これらに限定されない);
増粘剤(例には、蜜蝋、セチルアルコールおよびパラフィンが含まれるが、これらに限定されない);
等張化剤(例には、ブドウ糖および塩化ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない);
粘性増強剤(例には、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムおよびトラガカントが含まれるが、これらに限定されない);および、
湿潤剤(例には、ヘプタデカエチレンオキシセタノール、レシチン、ソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートおよびポリオキシエチレンステアレートが含まれるが、これらに限定されない)。
【0064】
当業者は、上記の情報を利用して、本発明を最大限に利用できると考えられる。それにも拘わらず、以下は、本発明の方法で使用できる医薬製剤の例である。それらは、例示のためだけのものであり、本発明を限定するものと解釈するべきではない。
【0065】
本発明による医薬組成物は、以下の通りに例示できる:
滅菌IV液剤:無菌の注射可能な水を使用して、本発明の所望の化合物5mg/mlの溶液を作成し、必要であればpHを調節する。この溶液を投与のために滅菌5%ブドウ糖で1−2mg/mlに希釈し、IV点滴として60分間かけて投与する。
【0066】
IV投与用の凍結乾燥粉末剤:(i)凍結乾燥粉末として、本発明の所望の化合物100−1000mg、(ii)クエン酸ナトリウム32−327mg/ml、および(iii)デキストラン40 300−3000mgを用いて、無菌製剤を製造できる。無菌の注射可能な塩水またはブドウ糖5%を用いて、10ないし20mg/mlの濃度に製剤を再構成し、それをさらに塩水またはブドウ糖5%で0.2−0.4mg/mlに希釈し、IVボーラスまたは15−60分間のIV点滴により投与する。
【0067】
筋肉内の懸濁剤:筋肉内注射のために、以下の液剤または懸濁剤を製造できる:
本発明の所望の水不溶性の化合物50mg/ml
ナトリウムカルボキシメチルセルロース5mg/ml
TWEEN80 4mg/ml
塩化ナトリウム9mg/ml
ベンジルアルコール9mg/ml
【0068】
硬殻カプセル剤:標準的な2片のハードゼラチンカプセルを、各々、有効成分粉末100mg、ラクトース150mg、セルロース50mgおよびステアリン酸マグネシウム6mgで充填することにより、多数の単位カプセル剤を製造する。
【0069】
ソフトゼラチンカプセル剤:ダイズ油、綿実油またはオリーブ油などの消化可能な油中の有効成分の混合物を製造し、容積式ポンプを利用して融解したゼラチンに注入し、有効成分100mgを含有するソフトゼラチンカプセルを形成させる。カプセルを洗浄し、乾燥する。有効成分をポリエチレングリコール、グリセリンおよびソルビトールの混合物に溶解し、水混和性医薬混合物を製造できる。
【0070】
錠剤:投与単位が有効成分100mg、コロイド状二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、結晶セルロース275mg、デンプン11mgおよびラクトース98.8mgであるように、常套の操作により多数の錠剤を製造する。嗜好性を高めるか、美しさ(elegance)と安定性を改善するか、または、吸収を遅らせるために、適する水性および非水性被覆を適用し得る。
【0071】
即時放出錠剤/カプセル剤:これらは、常套および新規の方法により製造される固体の経口投与形である。これらの単位は、医薬の即時的溶解および送達のために、水なしで摂取される。有効成分を、糖、ゼラチン、ペクチンおよび甘味料などの成分を含有する液体中で混合する。これらの液体を、凍結乾燥および固相抽出技法により、固形の錠剤またはカプレットに凝固させる。薬物の化合物を、粘弾性および熱弾性の糖およびポリマーまたは発泡性成分と圧縮し、水を必要としない即時放出を意図する多孔性マトリックスを産生し得る。
【0072】
本発明の医薬組成物の投与量
過剰増殖障害の処置に有用な化合物を評価するために知られている標準的な実験室の技法に基づいて、標準的な毒性試験により、そして、哺乳動物における上記で指定された症状の処置の決定のために標準的な薬理学的アッセイにより、そして、これらの結果をこれらの症状の処置に使用される既知の医薬の結果と比較することにより、各々の所望の適応症の処置のために、本発明の化合物の有効投与量を容易に決定できる。これらの症状の1つの処置において投与すべき有効成分の量は、用いる特定の化合物および投与単位、投与様式、処置期間、処置される患者の年齢および性別、処置される症状の性質および程度などの考慮事項によって幅広く変動できる。
【0073】
投与すべき有効成分の総量は、一般的に、1日当たり、約0.001mg/体重kgないし約200mg/体重kg、好ましくは約0.01mg/体重kgないし約20mg/体重kgの範囲にあろう。単位投与量は、約0.5mgないし約1500mgの有効成分を含有し得、1日に1回またはそれ以上の回数で投与できる。静脈内、筋肉内、皮下および非経腸注射を含む注射、および、点滴技法の使用による投与の一日投与量は、好ましくは、0.01ないし200mg/全体重kgであろう。1日の直腸投与量レジメンは、好ましくは0.01ないし200mg/全体重kgであろう。1日の膣投与量レジメンは、0.01ないし200mg/全体重kgであろう。1日の局所投与量レジメンは、好ましくは、1日1回ないし4回投与される0.1ないし200mgであろう。経皮濃度は、好ましくは、0.01ないし200mg/kgの1日用量を維持するのに必要とされるものであろう。1日の吸入投与量レジメンは、好ましくは、0.01ないし100mg/全体重kgであろう。
【0074】
当然、各患者のための具体的な当初および連続投与量レジメンは、担当の診断者によって決定される症状の性質および重篤度、用いる特定の化合物の活性、患者の年齢および全般的状態、投与時間、投与経路、薬物の排出速度、薬物の組合せなどに従って変動するであろう。所望の処置様式および本発明の化合物またはその医薬的に許容され得る塩またはエステルまたはその組成物の投与量/回数は、常套の処置試験を使用して当業者により確認できる。
【0075】
製造方法:
本発明は、さらに、購入できる4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)−フェニルイソシアネートを、WO2005/009961に記載の通りに得られる4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドと、35ないし50℃、好ましくは約40℃の温度で、不活性溶媒中、式(I)の化合物の他の多形の種結晶の非存在下で反応させることによる、多形IIの式(I)の化合物の製造方法を提供する。室温に冷却後、得られる結晶を単離し、乾燥させ、多形IIの式(I)の化合物を得る。
【0076】
適する不活性溶媒は、アルカン類、例えば、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンまたはテトラヒドロフラン、または、アセトニトリル、または、トルエン、または、酢酸エチル、または、上述の溶媒の混合物である。好ましいのは、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、トルエン、酢酸エチル、上述の溶媒の混合物である。不活性溶媒として、最も好ましくは酢酸エチルを使用する。
【0077】
これらの方法は、一般的に大気圧で実施する。しかしながら、加圧または減圧(例えば0.5ないし5barの範囲)で行うことも可能である。
【0078】
当業者は、上記の情報および当分野で利用可能な情報を使用して、本発明を最大限に利用できると考えられる。
本明細書に記載の本発明の精神または範囲から逸脱せずに、本発明に変更および改変を行い得ることが、当業者には明らかである。
上記および下記で引用する全刊行物、出願および特許は、出典明示により本明細書の一部とする。
【0079】
以下の試験および実施例における重量のデータは、断りのない限り、重量パーセントである;部は、重量による部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および濃度のデータは、各場合で体積に基づく。
【0080】
実施例
Perkin-Elmer の DSC 7 または Pyris-1 示差走査熱量計および TGA 7 熱重量分析計を使用して、サーモグラムを得る。Stoe 透過型回折装置でX線回折図を記録する。Bruker の IFS 66v(IR、FIR)、IFS 28/N(NIR)および RFS 100 (ラマン) フーリエ分光計を使用して、IR、FIR、NIRおよびラマンスペクトルを記録する。Bruker のNMR分光計 DRX400 を使用して、13C−固相NMRスペクトルを記録する。
【0081】
実施例1:多形IIの4−[4−({[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)−3−フルオロフェノキシ]−N−メチルピリジン−2−カルボキサミドの製造
実施例1
WO2005/009961に記載の通りに得られる4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルアミド10gを、酢酸エチルに室温で懸濁する。懸濁液を40℃に加熱し、酢酸エチル10gに溶解した購入できる4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)−フェニルイソシアネート8,84gを、45分以内に40−45℃で添加する。懸濁液を45分以内に室温に冷却する。結晶を吸い出し、酢酸エチルで洗浄し、15時間室温で、40mbarで乾燥させる。生成物は熱分析的に試験され(DSC)、多形IIの式(I)の表題化合物に相当する。
【0082】
表1:示差走査熱量測定および熱重量分析
【表1】

【0083】
表2:X線回折法
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
表3:IR分光法
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
表4:ラマン分光法
【表6】

【0088】
【表7】

【0089】
表5:FIR分光法
【表8】

【0090】
表6:NIR分光法
【表9】

【0091】
表7:13C−固相−NMRスペクトル
【表10】

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多形IIの式(I)
【化1】

の化合物。
【請求項2】
X線回折で2シータ角22.4のピーク極大を示す、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
NIRスペクトルで6097cm−1のピーク極大を示す、請求項1または請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)−フェニルイソシアネートを、4−(4−アミノ−3−フルオロフェノキシ)ピリジン−2−カルボン酸メチルアミドと、35ないし50℃の温度で、不活性溶媒中で反応させる、多形IIの式(I)の化合物の製造方法。
【請求項5】
過剰増殖障害の処置用の、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多形IIの式(I)の化合物。
【請求項6】
固形腫瘍、リンパ腫、肉腫、白血病、乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、泌尿器、眼、肝臓、皮膚、頭部および頸部、甲状腺および/または副甲状腺の癌の処置用の、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多形IIの式(I)の化合物。
【請求項7】
過剰増殖障害の処置用の医薬組成物を製造するための、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多形IIの式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
固形腫瘍、リンパ腫、肉腫、白血病、乳房、呼吸器、脳、生殖器、消化器、泌尿器、眼、肝臓、皮膚、頭部および頸部、甲状腺および/または副甲状腺の癌の処置用の、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多形IIの式(I)の化合物を主として含み、有意な割合の他の形態の4−[4−({[4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]カルバモイル}アミノ)−3−フルオロフェノキシ]−N−メチルピリジン−2−カルボキサミドを含まず、1種またはそれ以上の不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤を含む、医薬組成物。
【請求項10】
組成物中に存在する多形IIの式(I)の化合物の総量に対して、90重量パーセントより多い請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多形IIの式(I)の化合物を含有する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
障害の処置用の、請求項9または請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
有効量の請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多形IIの式(I)の化合物または請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の医薬組成物を使用する、過剰増殖障害の処置方法。
【請求項13】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の多形IIの式(I)の化合物および1種またはそれ以上の他の医薬物質を含む、組合せ。
【請求項14】
1種またはそれ以上の他の医薬物質が、細胞傷害性物質、シグナル伝達阻害剤、抗癌剤および/または制吐剤である、請求項13に記載の組合せ。
【請求項15】
1種またはそれ以上の他の医薬物質を含む、請求項9ないし請求項11のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項16】
1種またはそれ以上の他の医薬物質が、抗過剰増殖剤、細胞傷害性物質、シグナル伝達阻害剤、抗癌剤および/または制吐剤である、請求項15に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−509382(P2010−509382A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536630(P2009−536630)
【出願日】平成19年11月3日(2007.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009546
【国際公開番号】WO2008/058644
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】