4・5ポート切換弁
【課題】4・5ポート切換弁において、スプールのシール部材が弁孔における弁座に乗り上げるのを容易にすると共に、弁ボディの成形性及び加工性を改善する。
【解決手段】供給流路P、出力流路A,B及び排出流路E1,E2を設けた弁ボディ11の弁孔12内に摺動自在に嵌挿されたスプール13を有し、該スプールの外周に設けたシール部材25a,25bが弁孔12における流体圧の低い排出流路E1,E2側から流体圧の高い出力流路A,B側に摺動して弁座19a,19bに乗り上げる部分に、乗り上げ方向に縮径するテーパー面26a,26bを形成し、シール部材24a,24bが流体圧の高い供給流路P側から流体圧の低い出力流路A,B側に乗り上げる該弁座の乗り上げ部分は、上記テーパー面のない定径に形成する。弁孔12における上記テーパー面よりも両端側の内径を、テーパー面の最大径部分と同一又はそれよりも大径にする。
【解決手段】供給流路P、出力流路A,B及び排出流路E1,E2を設けた弁ボディ11の弁孔12内に摺動自在に嵌挿されたスプール13を有し、該スプールの外周に設けたシール部材25a,25bが弁孔12における流体圧の低い排出流路E1,E2側から流体圧の高い出力流路A,B側に摺動して弁座19a,19bに乗り上げる部分に、乗り上げ方向に縮径するテーパー面26a,26bを形成し、シール部材24a,24bが流体圧の高い供給流路P側から流体圧の低い出力流路A,B側に乗り上げる該弁座の乗り上げ部分は、上記テーパー面のない定径に形成する。弁孔12における上記テーパー面よりも両端側の内径を、テーパー面の最大径部分と同一又はそれよりも大径にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体からなるシール部材を備えたスプールが弁ボディの弁孔内を摺動して流路を切り換える4・5ポート切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弁孔に連通する供給流路、その両側に連通する出力流路及びそれらの出力流路の弁孔端側に連通する排出流路を備えた弁ボディの上記弁孔内に、弾性体からなる環状のシール部材を設けたスプールを摺動自在に嵌挿し、該スプールの摺動により流体の流れを切り換える5ポート切換弁が記載されている。該5ポート切換弁においては、弁孔内の供給流路(入力ポート)と出力流路(出力ポート)との間の弁座に対し、シール部材が出力流路側から乗り上げるようにして、その弁座の出力流路側の端部に、シール部材の屈曲角度との関連ではあるが、テーパー面を形成し、また、出力流路(出力ポート)と排出流路(排出ポート)との間の弁座に対しても、シール部材が出力流路側から乗り上げるようにして、その弁座の出力流路側の端部にテーパー面を形成している。
【0003】
このような弁孔を設けた弁ボディでは、一対の出力流路の各両側にシール部材が乗り上げるテーパー面を形成しているので、弁ボディに対する弁孔の加工に手数が掛かり、すなわち、弁孔の内部の出力流路の両側部分に、該弁孔の端部から工具を挿入してテーパー面を加工する必要があり、その加工に技術と時間が必要になって製造コストを高める原因になる。
しかしながら、上記弁孔をその中央部から両端側に行くに従って大径化するように、上記テーパー面が形成できれば、該テーパー面により弁座に対するシール部材の乗り上げが円滑化されると同時に、弁ボディの成形性や加工性の改善にも繋がることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−20539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、上述した切換弁において、スプールのシール部材が弁ボディの弁孔における弁座に乗り上げるのを円滑化すると共に、弁ボディの成形性及び加工性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、弁孔の長手方向の中央部に連通する供給流路、その両側に連通する二つの出力流路及びそれらの出力流路の弁孔端側に連通する二つの排出流路を設けた弁ボディと、上記弁孔内に摺動自在に嵌挿されたスプールと、該スプールの外周に設けた弾性体からなるシール部材と、上記弁孔内における供給流路と出力流路との間及び出力流路と排出流路との間に形成した上記シール部材が接離する弁座とを備えた4・5ポート切換弁において、上記シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の低い側から高い側に摺動して弁座に乗り上げる部分に、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面を形成すると共に、シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の高い側から低い側に乗り上げる弁座の乗り上げ部分を上記テーパー面のない定径に形成し、それによって、上記弁孔に形成される二つのテーパー面はそれらの縮径側が弁孔における供給流路の連通部側を向き、該弁孔における上記各テーパー面よりも両弁孔端側の内径は該テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成していることを特徴とする4・5ポート切換弁が提供される。
【0007】
本発明に係る上記4・5ポート切換弁は、上記スプールが、弁孔における供給流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、排出流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、排出流路側から出力流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であり、あるいは、上記スプールが、弁孔における出力流路側から供給流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、出力流路側から排出流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、出力流路側から供給流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であるものとして構成することができる。
また、本発明に係る上記4・5ポート切換弁においては、上記弁孔の両端部における上記各テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成したシール用円筒部の内面に、上記スプールに備えたエンドシールをシール状態で摺接させたものとすることができる。上記テーパー面が弁孔の軸線となす傾斜角度θは、10°〜40°とすることが望まれる。
【発明の効果】
【0008】
以上に詳述した本発明の4・5ポート切換弁によれば、シール部材が弁孔における上記流路間の流体圧の低い側から高い側に摺動して弁座に乗り上げる部分に、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面を形成したので、該テーパー面が流体圧で扁平化されたシール部材に対して径方向内側に圧縮する力を作用させることになり、そのため該力でシール部材が縮径してシール部材が流体圧に抗して弁座に乗り上げるのが円滑になると共に、上記弁孔における弁孔端側に拡径するテーパー面よりも弁孔端側の内径を、該テーパー面の最大径部分と同一に形成しているので、弁孔の内径がその中央部から両端側に行くにしたがって同径か大径化し、少なくとも小径化することがないので、弁ボディの成形性及び加工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る4・5ポート切換弁の第1実施例の全体的構成を示す要部縦断面図である。
【図2】同第1実施例の弁ボディの拡大縦断面図である。
【図3】図2におけるX−X位置での断面図である。
【図4】第1実施例の弁ボディとスプールとの関係を示す拡大断面図である。
【図5】同第1実施例のスプールの変形例を示す拡大断面図である。
【図6】同第1実施例のスプールの他の変形例を示す拡大断面図である。
【図7】本発明に係る4・5ポート切換弁の変形例における弁ボディの縦断面図である。
【図8】図7におけるY−Y位置での断面図である。
【図9】本発明に係る4・5ポート切換弁の第2実施例の全体的構成を示す要部縦断面図である。
【図10】同第2実施例の弁ボディの拡大縦断面図である。
【図11】同第2実施例の弁ボディとスプールとの関係を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1実施例に係る4・5切換弁10の全体的構成を、図2及び図3はその切換弁10の弁ボディ11の詳細を、図4はその切換弁10における弁ボディ11の弁孔12にスプール13を挿入した状態の詳細を示すものである。この切換弁10は、弁ボディ11に開設された弁孔12の内部に上記スプール13が軸方向に摺動自在に嵌挿され、このスプール13が、その両端部当接したピストン22a,22bのいずれかに作用する流体圧操作力により駆動され、弁孔12内を二つの切換位置に摺動するように構成されている。
【0011】
上記弁ボディ11は、弁孔12の長手方向の中央部に連通する供給流路P、その両側に連通する二つの出力流路A,B、更にそれらの出力流路A,Bの弁孔端側に連通する二つの排出流路E1,E2を備え、図2〜図4に明瞭に示すように、それらの各流路は、弁孔12を取り囲むような幅を有する(図3参照)ものとして、該弁孔12を弁ボディ11の外面に連通させるように形成され、それによって、弁孔12の周囲に拡大溝14,15a,15b,16a,16bが形成されている。また、弁孔12における上記供給流路Pと出力流路A,Bとの間に弁座18a,18bを形成し、出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間に弁座19a,19bを形成している。
【0012】
一方、上記スプール13は、図4に明瞭に示すように、スプール軸21の外周に設けた溝に上記各弁座に接離する環状の弾性体からなるシール部材24a,24b及び25a,25bを嵌着することにより構成され、更に具体的には、供給流路Pと出力流路A,Bとの間の弁座18a,18bに接離する環状のシール部材24a,24b、及び出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間の弁座19a,19bに接離する環状のシール部材25a,25bを備えている。それによって、弁孔12に開口した供給流路Pが出力流路AまたはBに連通すると共に、出力流路BまたはAが排出流路E2またはE1に連通するように、上記流路が切り換えられることになる。
【0013】
図4は、スプール13が弁孔12の左端に位置する状態を示し、この状態からの流路を切り換えるためには、後述するように、図1におけるピストン22aに作用するパイロット流体圧によりスプール13が押圧駆動されて弁孔12の右端まで移動するものである。この図4からわかるように、上記スプール13のシール部材24a,24bは、弁孔12内の弁座18a,18bに対してそれぞれ供給流路P側から乗り上げるものであり、また、上記シール部材25a,25bは、弁孔12内の弁座19a,19bに対してそれぞれ排出流路E1,E2側から乗り上げるものである。
【0014】
そして、上記弁孔12における弁座18a,18b及び弁座19a,19bのうち、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の低い側から高い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、弁座19a,19bにおいて、出力流路A,Bの流体圧に抗して、流体圧が低い排出流路E1,E2側からシール部材25a,25bが乗り上げる部分には、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面26a,26bを形成している。
【0015】
このようなテーパー面26a,26bを形成すると、シール部材25a,25bが弁座19a,19bに乗り上げる初期に、出力流路AあるいはBの流体圧が、弾性体からなる該シール部材25a,25bに対してそれらをスプール13の軸線方向に押圧扁平化するように作用するが、該テーパー面26a,26bの存在により、上記扁平化されるシール部材25a,25bに対して径方向内側に圧縮する力が作用することになり、そのため、シール部材25a,25bが円滑に縮径して弁座19a,19b上に移動し、出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間の連通が遮断される。
【0016】
一方、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の高い側から低い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、シール部材24a,24bが流体圧の高い供給流路P側から流体圧の低い出力流路A,B側の弁座18a,18bに乗り上げる部分においては、該乗り上げ部分に上述したようなテーパー面を設けることなく、該弁座を上記テーパー面のない定径の円筒面状に形成している。
このような弁座18a,18bに対してシール部材24a,24bが乗り上げる場合には、該シール部材24a,24bが供給流路Pの供給流体圧に後押しされて該弁座に押し込まれるので、該供給流体圧がシール部材24a,24bを縮径させる力として弁座への乗り上げに有効に作用し、したがって、前述したテーパー面等の乗り上げを介助する手段がなくても、シール部材24a,24bを弁座18a,18bに円滑に乗り上げさせることができる。
【0017】
また、上記弁孔12に形成される二つのテーパー面26a,26bは、それらの縮径側が弁孔12における供給流路Pの連通部側を向き、該弁孔12における上記各テーパー面26a,26bよりも両弁孔端側の内径を、該テーパー面26a,26bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成している。
上記テーパー面26a,26bが弁孔12の軸線となす傾斜角度θは、10°〜40°とするのが一般的であるが、シール部材25a,25bがこのテーパー面26a,26bに乗り上げるとき、該テーパー面26a,26bに沿って径方向内側に圧縮されながら弁座に乗り上げていくので、該テーパー面26a,26bの大径側と小径側との径差はほぼシール部材の圧縮代に相当することになり、この点を配慮して上記傾斜角度θ及びテーパー部分の軸方向長さを決める必要がある。
【0018】
図4からわかるように、上記弁ボディ11における弁孔12の両端部には、上記スプール13の安定的な摺動のために、上記各テーパー面26a,26bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成したシール用円筒部28a,28bを設け、その内面に、上記スプール13の両端部に設けたエンドシール29a,29bをシール状態で摺接させている。
【0019】
上記二つのテーパー面26a,26bを設けた弁孔12は、それらのテーパー面26a,26bの縮径側が弁孔12における供給流路Pとの連通部側を向き、該弁孔12における上記各テーパー面26a,26bよりも両弁孔端側におけるシール用円筒部28a,28bの内径を該テーパー面26a,26bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成しているので、弁孔12の内径はその中央部から両端側に行くにしたがって同径か大径化し、少なくとも小径化することがないので、弁ボディ11の成形性及び加工性を改善することができ、アルミ材によるダイキャスト成形や合成樹脂による射出成形における弁孔の型抜き、あるいは弁座やテーパー面の研磨等の加工を容易に行うことが可能になる。
【0020】
上記弁ボディ11は、その弁孔12の軸線方向の両端において、アダプタプレート31及びエンドカバー32により挟持され、該アダプタプレート31に上記スプール13を切換駆動するための周知のダブルパイロット電磁弁33が固定されている。
上記アダプタプレート31及びエンドカバー32は、弁孔12の両端部に位置するピストン室34a,34bを備え、これらのピストン室にそれぞれスプール13の端部に当接する前記ピストン22a,22bを収容して、それらのピストン22a,22bの背後に形成した圧力室35a,35bに、上記ダブルパイロット電磁弁33におけるそれぞれのパイロット弁33a,33bの出力ポートを図示しない流路により連通させ、いずれかの圧力室35aまたは35bに該パイロット弁33a,33bからのパイロット流体圧を供給すると共に、他方の圧力室35bまたは35aの流体圧を外部に排出することにより、ピストン22a,22bを介してスプール13を切換駆動できるように構成している。
【0021】
図1〜図4に示す弁ボディ11は、供給流路P及び出力流路A,Bが弁ボディ11の上下方向に延び、配管を上下の希望する側に接続できるものであり、図1においては上側の流路をカバー24で閉鎖した状態を示している。しかしながら、図7及び図8に示す変形例の弁ボディのように、該弁ボディ11Aを上側の供給流路及び出力流路がないものとして構成することもできる。なお、図7及び図8に示す弁ボディ11Aは上述した点を除いて第1実施例のものと変わるところがないので、主要部に第1実施例と同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0022】
図5及び図6に示すスプール13A,13Bは、図1及び図4に示したスプール13に代えて使用できるもので、図1及び図4のスプール13におけるシール部材24a,24bは、スプール軸21の径方向の長さが該スプール軸21の軸方向の厚みよりも2倍程度大きなものとして構成されているのに対し、図5のスプール13Aにおいては、シール部材24a,24bを、弁座18a,18bに対する乗り上げ側が径方向に立ち上がった断面L字形とし、シール部材25a,25bは図4の場合と同形にしているが、エンドシール29a,29bは断面はV字形とし、また、図6のスプール13Bにおいては、シール部材24a,24bは、図5の場合と同じ断面L字形であるが、その対向部分をスプール軸21における凸壁21aのかしめにより該スプール軸21に保持させいる。このスプール13Bにおけるシール部材25a,25b及びエンドシール29a,29bは図4の場合と同形である。
【0023】
上記スプール13,13A,13Bにおけるシール部材は、その形態が一部において相違しているが、前記弁座18a,18b,19a,19b及びテーパー面26a,26bとの関連におけるそれらのシール部材の機能は、図4のスプール13に関連して説明したところと変わるところがない。
【0024】
次に、上記第1実施例の動作について説明する。
図1及び図4においては、スプール13が左端位置にあり、シール部材24b,25aは供給流路Pに通じる拡大溝14及び排出流路E1に通じる拡大溝16a内において弁座等と非接触の状態にあり、また、シール部材24aは供給流路Pと出力流路Aとの間の弁座18aに乗り上げ、シール部材25bは出力流路Bと排出流路E2との間の弁座19bに乗り上げた状態にある。そのため、供給流路Pからの圧力流体が弁座18bを通過して出力流路Bに流れ、出力流路Aの圧力流体が弁座19aを通過して排出流路E1に排出される状態にある。
【0025】
上述した切換状態から電磁弁33におけるパイロット弁33a,33bによりスプール13を駆動して流路を切り換えるには、図1におけるピストン22aの背後の圧力室35aにパイロット流体圧を供給すると共に、他方のピストン22bの背後の圧力室35bに供給されていたパイロット流体圧を排出するように該パイロット弁33a,33bを切り換えればよく、それによって、ピストン22aを介してスプール13が切換駆動され、スプール13が弁孔12の右端の切換位置まで移動する。
【0026】
この切換位置においては、シール部材24a,25bが供給流路Pに通じる拡大溝14及び排出流路E2に通じる拡大溝16b内において弁座等と非接触の状態になり、シール部材24bは供給流路Pと出力流路Bとの間の弁座18bに乗り上げ、シール部材25aは出力流路Aと排出流路E1との間の弁座19aに乗り上げた状態になり、その結果、供給流路Pからの圧力流体が弁座18aを通して出力流路Aに流れ、出力流路Bの圧力流体が弁座19bを通過して排出流路E2に排出される状態になる。
【0027】
上記スプール13の切換駆動に際しては、シール部材25aが出力流路Aからの流体圧に抗して弁座19aに乗り上げるが、その乗り上げ部分に上記テーパー面26aが存在するので、該テーパー面26aがシール部材25aを径方向内側に圧縮することになり、そのため、シール部材25aが円滑に縮径して弁座19a上に移動し、出力流路Aと排出流路E1との間の連通が遮断される。
一方、シール部材24bは供給流路Pからの流体圧力に後押しされて弁座18bに乗り上げ、その乗り上げ部分には上述したようなテーパー面が存在しないが、該供給流体圧がシール部材24bの弁座への乗り上げに有効に作用するので円滑な乗り上げが行われる。
【0028】
図9〜図11は、本発明に係る第2実施例の4・5切換弁50の構成を示している。この第2実施例における弁ボディ51は、上記第1実施例の弁ボディ11と比べて、弁孔におけるテーパー面を設ける位置を異にしているが、その他の点においては変わるところがない。また、この第2実施例におけるスプール53は、上記第1実施例のスプール13と比べてシール部材の設置位置及び弁座への乗り上げ態様を異にしているが、その他の点においては変わるところがない。
従って、以下においては、主として第1実施例と相違する部分について説明し、共通部分については図中に第1実施例と同じ符号を付してそれらの説明を省略する。
【0029】
図8に明瞭に示すとおり、上記弁ボディ51には、第1実施例と同じ配列で、供給流路P、出力流路A,B及び排出流路E1,E2を設けているが、スプール53においては、供給流路Pと出力流路A,Bとの間の弁座58a,58bに接離する環状のシール部材64a,64b、及び出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間の弁座59a,59bに接離する環状のシール部材65a,65bを備え、上記シール部材64a,64bは弁座58a,58bに対してそれぞれ出力流路AまたはB側から乗り上げ、上記シール部材65a,65bも、弁座59a,59bに対してそれぞれ出力流路AまたはB側から乗り上げるように構成している。
【0030】
そして、上記弁孔12における弁座58a,58b及び弁座59a,59bのうち、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の低い側から高い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、弁座58a,58bにおいて、供給流路Pの流体圧に抗して、流体圧が低い出力流路A,B側からシール部材64a,64bが乗り上げる部分には、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面66a,66bを形成している。
一方、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の高い側から低い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、シール部材65a,65bが流体圧の高い出力流路A,B側から流体圧の低い排出流路E1,E2側の弁座59a,59bに乗り上げる部分においては上述したようなテーパー面を設けることなく、該弁座を上記テーパー面のない定径の円筒面状に形成している。
【0031】
また、上記弁孔12に形成される二つのテーパー面66a,66bは、それらの縮径側が弁孔12における供給流路Pの連通部側を向き、該弁孔12における上記各テーパー面66a,66bよりも両弁孔端側の内径を、該テーパー面66a,66bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成している。上記テーパー面26a,26bが弁孔12の軸線となす傾斜角度θは、第1実施例の場合と同様に、10°〜40°とするのが一般的である。
更に、第2実施例の4・5切換弁50の動作は、シール部材が弁座に乗り上げる方向が異なるだけで、流路の切換機能に変わるところはない。
【符号の説明】
【0032】
10,50 4・5切換弁
11,11A,51 弁ボディ
12 弁孔
13,53 スプール
18a,18b,19a,19b 弁座
24a,24b,25a,25b シール部材
26a,26b テーパー面
58a,58b,59a,59b 弁座
64a,64b,65a,65b シール部材
66a,66b テーパー面
P 供給流路
A,B 出力流路
E1,E2 排出流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性体からなるシール部材を備えたスプールが弁ボディの弁孔内を摺動して流路を切り換える4・5ポート切換弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、弁孔に連通する供給流路、その両側に連通する出力流路及びそれらの出力流路の弁孔端側に連通する排出流路を備えた弁ボディの上記弁孔内に、弾性体からなる環状のシール部材を設けたスプールを摺動自在に嵌挿し、該スプールの摺動により流体の流れを切り換える5ポート切換弁が記載されている。該5ポート切換弁においては、弁孔内の供給流路(入力ポート)と出力流路(出力ポート)との間の弁座に対し、シール部材が出力流路側から乗り上げるようにして、その弁座の出力流路側の端部に、シール部材の屈曲角度との関連ではあるが、テーパー面を形成し、また、出力流路(出力ポート)と排出流路(排出ポート)との間の弁座に対しても、シール部材が出力流路側から乗り上げるようにして、その弁座の出力流路側の端部にテーパー面を形成している。
【0003】
このような弁孔を設けた弁ボディでは、一対の出力流路の各両側にシール部材が乗り上げるテーパー面を形成しているので、弁ボディに対する弁孔の加工に手数が掛かり、すなわち、弁孔の内部の出力流路の両側部分に、該弁孔の端部から工具を挿入してテーパー面を加工する必要があり、その加工に技術と時間が必要になって製造コストを高める原因になる。
しかしながら、上記弁孔をその中央部から両端側に行くに従って大径化するように、上記テーパー面が形成できれば、該テーパー面により弁座に対するシール部材の乗り上げが円滑化されると同時に、弁ボディの成形性や加工性の改善にも繋がることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−20539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の技術的課題は、上述した切換弁において、スプールのシール部材が弁ボディの弁孔における弁座に乗り上げるのを円滑化すると共に、弁ボディの成形性及び加工性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明によれば、弁孔の長手方向の中央部に連通する供給流路、その両側に連通する二つの出力流路及びそれらの出力流路の弁孔端側に連通する二つの排出流路を設けた弁ボディと、上記弁孔内に摺動自在に嵌挿されたスプールと、該スプールの外周に設けた弾性体からなるシール部材と、上記弁孔内における供給流路と出力流路との間及び出力流路と排出流路との間に形成した上記シール部材が接離する弁座とを備えた4・5ポート切換弁において、上記シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の低い側から高い側に摺動して弁座に乗り上げる部分に、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面を形成すると共に、シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の高い側から低い側に乗り上げる弁座の乗り上げ部分を上記テーパー面のない定径に形成し、それによって、上記弁孔に形成される二つのテーパー面はそれらの縮径側が弁孔における供給流路の連通部側を向き、該弁孔における上記各テーパー面よりも両弁孔端側の内径は該テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成していることを特徴とする4・5ポート切換弁が提供される。
【0007】
本発明に係る上記4・5ポート切換弁は、上記スプールが、弁孔における供給流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、排出流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、排出流路側から出力流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であり、あるいは、上記スプールが、弁孔における出力流路側から供給流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、出力流路側から排出流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、出力流路側から供給流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であるものとして構成することができる。
また、本発明に係る上記4・5ポート切換弁においては、上記弁孔の両端部における上記各テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成したシール用円筒部の内面に、上記スプールに備えたエンドシールをシール状態で摺接させたものとすることができる。上記テーパー面が弁孔の軸線となす傾斜角度θは、10°〜40°とすることが望まれる。
【発明の効果】
【0008】
以上に詳述した本発明の4・5ポート切換弁によれば、シール部材が弁孔における上記流路間の流体圧の低い側から高い側に摺動して弁座に乗り上げる部分に、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面を形成したので、該テーパー面が流体圧で扁平化されたシール部材に対して径方向内側に圧縮する力を作用させることになり、そのため該力でシール部材が縮径してシール部材が流体圧に抗して弁座に乗り上げるのが円滑になると共に、上記弁孔における弁孔端側に拡径するテーパー面よりも弁孔端側の内径を、該テーパー面の最大径部分と同一に形成しているので、弁孔の内径がその中央部から両端側に行くにしたがって同径か大径化し、少なくとも小径化することがないので、弁ボディの成形性及び加工性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る4・5ポート切換弁の第1実施例の全体的構成を示す要部縦断面図である。
【図2】同第1実施例の弁ボディの拡大縦断面図である。
【図3】図2におけるX−X位置での断面図である。
【図4】第1実施例の弁ボディとスプールとの関係を示す拡大断面図である。
【図5】同第1実施例のスプールの変形例を示す拡大断面図である。
【図6】同第1実施例のスプールの他の変形例を示す拡大断面図である。
【図7】本発明に係る4・5ポート切換弁の変形例における弁ボディの縦断面図である。
【図8】図7におけるY−Y位置での断面図である。
【図9】本発明に係る4・5ポート切換弁の第2実施例の全体的構成を示す要部縦断面図である。
【図10】同第2実施例の弁ボディの拡大縦断面図である。
【図11】同第2実施例の弁ボディとスプールとの関係を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の第1実施例に係る4・5切換弁10の全体的構成を、図2及び図3はその切換弁10の弁ボディ11の詳細を、図4はその切換弁10における弁ボディ11の弁孔12にスプール13を挿入した状態の詳細を示すものである。この切換弁10は、弁ボディ11に開設された弁孔12の内部に上記スプール13が軸方向に摺動自在に嵌挿され、このスプール13が、その両端部当接したピストン22a,22bのいずれかに作用する流体圧操作力により駆動され、弁孔12内を二つの切換位置に摺動するように構成されている。
【0011】
上記弁ボディ11は、弁孔12の長手方向の中央部に連通する供給流路P、その両側に連通する二つの出力流路A,B、更にそれらの出力流路A,Bの弁孔端側に連通する二つの排出流路E1,E2を備え、図2〜図4に明瞭に示すように、それらの各流路は、弁孔12を取り囲むような幅を有する(図3参照)ものとして、該弁孔12を弁ボディ11の外面に連通させるように形成され、それによって、弁孔12の周囲に拡大溝14,15a,15b,16a,16bが形成されている。また、弁孔12における上記供給流路Pと出力流路A,Bとの間に弁座18a,18bを形成し、出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間に弁座19a,19bを形成している。
【0012】
一方、上記スプール13は、図4に明瞭に示すように、スプール軸21の外周に設けた溝に上記各弁座に接離する環状の弾性体からなるシール部材24a,24b及び25a,25bを嵌着することにより構成され、更に具体的には、供給流路Pと出力流路A,Bとの間の弁座18a,18bに接離する環状のシール部材24a,24b、及び出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間の弁座19a,19bに接離する環状のシール部材25a,25bを備えている。それによって、弁孔12に開口した供給流路Pが出力流路AまたはBに連通すると共に、出力流路BまたはAが排出流路E2またはE1に連通するように、上記流路が切り換えられることになる。
【0013】
図4は、スプール13が弁孔12の左端に位置する状態を示し、この状態からの流路を切り換えるためには、後述するように、図1におけるピストン22aに作用するパイロット流体圧によりスプール13が押圧駆動されて弁孔12の右端まで移動するものである。この図4からわかるように、上記スプール13のシール部材24a,24bは、弁孔12内の弁座18a,18bに対してそれぞれ供給流路P側から乗り上げるものであり、また、上記シール部材25a,25bは、弁孔12内の弁座19a,19bに対してそれぞれ排出流路E1,E2側から乗り上げるものである。
【0014】
そして、上記弁孔12における弁座18a,18b及び弁座19a,19bのうち、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の低い側から高い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、弁座19a,19bにおいて、出力流路A,Bの流体圧に抗して、流体圧が低い排出流路E1,E2側からシール部材25a,25bが乗り上げる部分には、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面26a,26bを形成している。
【0015】
このようなテーパー面26a,26bを形成すると、シール部材25a,25bが弁座19a,19bに乗り上げる初期に、出力流路AあるいはBの流体圧が、弾性体からなる該シール部材25a,25bに対してそれらをスプール13の軸線方向に押圧扁平化するように作用するが、該テーパー面26a,26bの存在により、上記扁平化されるシール部材25a,25bに対して径方向内側に圧縮する力が作用することになり、そのため、シール部材25a,25bが円滑に縮径して弁座19a,19b上に移動し、出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間の連通が遮断される。
【0016】
一方、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の高い側から低い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、シール部材24a,24bが流体圧の高い供給流路P側から流体圧の低い出力流路A,B側の弁座18a,18bに乗り上げる部分においては、該乗り上げ部分に上述したようなテーパー面を設けることなく、該弁座を上記テーパー面のない定径の円筒面状に形成している。
このような弁座18a,18bに対してシール部材24a,24bが乗り上げる場合には、該シール部材24a,24bが供給流路Pの供給流体圧に後押しされて該弁座に押し込まれるので、該供給流体圧がシール部材24a,24bを縮径させる力として弁座への乗り上げに有効に作用し、したがって、前述したテーパー面等の乗り上げを介助する手段がなくても、シール部材24a,24bを弁座18a,18bに円滑に乗り上げさせることができる。
【0017】
また、上記弁孔12に形成される二つのテーパー面26a,26bは、それらの縮径側が弁孔12における供給流路Pの連通部側を向き、該弁孔12における上記各テーパー面26a,26bよりも両弁孔端側の内径を、該テーパー面26a,26bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成している。
上記テーパー面26a,26bが弁孔12の軸線となす傾斜角度θは、10°〜40°とするのが一般的であるが、シール部材25a,25bがこのテーパー面26a,26bに乗り上げるとき、該テーパー面26a,26bに沿って径方向内側に圧縮されながら弁座に乗り上げていくので、該テーパー面26a,26bの大径側と小径側との径差はほぼシール部材の圧縮代に相当することになり、この点を配慮して上記傾斜角度θ及びテーパー部分の軸方向長さを決める必要がある。
【0018】
図4からわかるように、上記弁ボディ11における弁孔12の両端部には、上記スプール13の安定的な摺動のために、上記各テーパー面26a,26bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成したシール用円筒部28a,28bを設け、その内面に、上記スプール13の両端部に設けたエンドシール29a,29bをシール状態で摺接させている。
【0019】
上記二つのテーパー面26a,26bを設けた弁孔12は、それらのテーパー面26a,26bの縮径側が弁孔12における供給流路Pとの連通部側を向き、該弁孔12における上記各テーパー面26a,26bよりも両弁孔端側におけるシール用円筒部28a,28bの内径を該テーパー面26a,26bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成しているので、弁孔12の内径はその中央部から両端側に行くにしたがって同径か大径化し、少なくとも小径化することがないので、弁ボディ11の成形性及び加工性を改善することができ、アルミ材によるダイキャスト成形や合成樹脂による射出成形における弁孔の型抜き、あるいは弁座やテーパー面の研磨等の加工を容易に行うことが可能になる。
【0020】
上記弁ボディ11は、その弁孔12の軸線方向の両端において、アダプタプレート31及びエンドカバー32により挟持され、該アダプタプレート31に上記スプール13を切換駆動するための周知のダブルパイロット電磁弁33が固定されている。
上記アダプタプレート31及びエンドカバー32は、弁孔12の両端部に位置するピストン室34a,34bを備え、これらのピストン室にそれぞれスプール13の端部に当接する前記ピストン22a,22bを収容して、それらのピストン22a,22bの背後に形成した圧力室35a,35bに、上記ダブルパイロット電磁弁33におけるそれぞれのパイロット弁33a,33bの出力ポートを図示しない流路により連通させ、いずれかの圧力室35aまたは35bに該パイロット弁33a,33bからのパイロット流体圧を供給すると共に、他方の圧力室35bまたは35aの流体圧を外部に排出することにより、ピストン22a,22bを介してスプール13を切換駆動できるように構成している。
【0021】
図1〜図4に示す弁ボディ11は、供給流路P及び出力流路A,Bが弁ボディ11の上下方向に延び、配管を上下の希望する側に接続できるものであり、図1においては上側の流路をカバー24で閉鎖した状態を示している。しかしながら、図7及び図8に示す変形例の弁ボディのように、該弁ボディ11Aを上側の供給流路及び出力流路がないものとして構成することもできる。なお、図7及び図8に示す弁ボディ11Aは上述した点を除いて第1実施例のものと変わるところがないので、主要部に第1実施例と同じ符号を付してそれらの説明は省略する。
【0022】
図5及び図6に示すスプール13A,13Bは、図1及び図4に示したスプール13に代えて使用できるもので、図1及び図4のスプール13におけるシール部材24a,24bは、スプール軸21の径方向の長さが該スプール軸21の軸方向の厚みよりも2倍程度大きなものとして構成されているのに対し、図5のスプール13Aにおいては、シール部材24a,24bを、弁座18a,18bに対する乗り上げ側が径方向に立ち上がった断面L字形とし、シール部材25a,25bは図4の場合と同形にしているが、エンドシール29a,29bは断面はV字形とし、また、図6のスプール13Bにおいては、シール部材24a,24bは、図5の場合と同じ断面L字形であるが、その対向部分をスプール軸21における凸壁21aのかしめにより該スプール軸21に保持させいる。このスプール13Bにおけるシール部材25a,25b及びエンドシール29a,29bは図4の場合と同形である。
【0023】
上記スプール13,13A,13Bにおけるシール部材は、その形態が一部において相違しているが、前記弁座18a,18b,19a,19b及びテーパー面26a,26bとの関連におけるそれらのシール部材の機能は、図4のスプール13に関連して説明したところと変わるところがない。
【0024】
次に、上記第1実施例の動作について説明する。
図1及び図4においては、スプール13が左端位置にあり、シール部材24b,25aは供給流路Pに通じる拡大溝14及び排出流路E1に通じる拡大溝16a内において弁座等と非接触の状態にあり、また、シール部材24aは供給流路Pと出力流路Aとの間の弁座18aに乗り上げ、シール部材25bは出力流路Bと排出流路E2との間の弁座19bに乗り上げた状態にある。そのため、供給流路Pからの圧力流体が弁座18bを通過して出力流路Bに流れ、出力流路Aの圧力流体が弁座19aを通過して排出流路E1に排出される状態にある。
【0025】
上述した切換状態から電磁弁33におけるパイロット弁33a,33bによりスプール13を駆動して流路を切り換えるには、図1におけるピストン22aの背後の圧力室35aにパイロット流体圧を供給すると共に、他方のピストン22bの背後の圧力室35bに供給されていたパイロット流体圧を排出するように該パイロット弁33a,33bを切り換えればよく、それによって、ピストン22aを介してスプール13が切換駆動され、スプール13が弁孔12の右端の切換位置まで移動する。
【0026】
この切換位置においては、シール部材24a,25bが供給流路Pに通じる拡大溝14及び排出流路E2に通じる拡大溝16b内において弁座等と非接触の状態になり、シール部材24bは供給流路Pと出力流路Bとの間の弁座18bに乗り上げ、シール部材25aは出力流路Aと排出流路E1との間の弁座19aに乗り上げた状態になり、その結果、供給流路Pからの圧力流体が弁座18aを通して出力流路Aに流れ、出力流路Bの圧力流体が弁座19bを通過して排出流路E2に排出される状態になる。
【0027】
上記スプール13の切換駆動に際しては、シール部材25aが出力流路Aからの流体圧に抗して弁座19aに乗り上げるが、その乗り上げ部分に上記テーパー面26aが存在するので、該テーパー面26aがシール部材25aを径方向内側に圧縮することになり、そのため、シール部材25aが円滑に縮径して弁座19a上に移動し、出力流路Aと排出流路E1との間の連通が遮断される。
一方、シール部材24bは供給流路Pからの流体圧力に後押しされて弁座18bに乗り上げ、その乗り上げ部分には上述したようなテーパー面が存在しないが、該供給流体圧がシール部材24bの弁座への乗り上げに有効に作用するので円滑な乗り上げが行われる。
【0028】
図9〜図11は、本発明に係る第2実施例の4・5切換弁50の構成を示している。この第2実施例における弁ボディ51は、上記第1実施例の弁ボディ11と比べて、弁孔におけるテーパー面を設ける位置を異にしているが、その他の点においては変わるところがない。また、この第2実施例におけるスプール53は、上記第1実施例のスプール13と比べてシール部材の設置位置及び弁座への乗り上げ態様を異にしているが、その他の点においては変わるところがない。
従って、以下においては、主として第1実施例と相違する部分について説明し、共通部分については図中に第1実施例と同じ符号を付してそれらの説明を省略する。
【0029】
図8に明瞭に示すとおり、上記弁ボディ51には、第1実施例と同じ配列で、供給流路P、出力流路A,B及び排出流路E1,E2を設けているが、スプール53においては、供給流路Pと出力流路A,Bとの間の弁座58a,58bに接離する環状のシール部材64a,64b、及び出力流路A,Bと排出流路E1,E2との間の弁座59a,59bに接離する環状のシール部材65a,65bを備え、上記シール部材64a,64bは弁座58a,58bに対してそれぞれ出力流路AまたはB側から乗り上げ、上記シール部材65a,65bも、弁座59a,59bに対してそれぞれ出力流路AまたはB側から乗り上げるように構成している。
【0030】
そして、上記弁孔12における弁座58a,58b及び弁座59a,59bのうち、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の低い側から高い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、弁座58a,58bにおいて、供給流路Pの流体圧に抗して、流体圧が低い出力流路A,B側からシール部材64a,64bが乗り上げる部分には、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面66a,66bを形成している。
一方、シール部材が弁孔12における上記流路の流体圧の高い側から低い側に摺動して乗り上げる弁座、つまり、シール部材65a,65bが流体圧の高い出力流路A,B側から流体圧の低い排出流路E1,E2側の弁座59a,59bに乗り上げる部分においては上述したようなテーパー面を設けることなく、該弁座を上記テーパー面のない定径の円筒面状に形成している。
【0031】
また、上記弁孔12に形成される二つのテーパー面66a,66bは、それらの縮径側が弁孔12における供給流路Pの連通部側を向き、該弁孔12における上記各テーパー面66a,66bよりも両弁孔端側の内径を、該テーパー面66a,66bの最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成している。上記テーパー面26a,26bが弁孔12の軸線となす傾斜角度θは、第1実施例の場合と同様に、10°〜40°とするのが一般的である。
更に、第2実施例の4・5切換弁50の動作は、シール部材が弁座に乗り上げる方向が異なるだけで、流路の切換機能に変わるところはない。
【符号の説明】
【0032】
10,50 4・5切換弁
11,11A,51 弁ボディ
12 弁孔
13,53 スプール
18a,18b,19a,19b 弁座
24a,24b,25a,25b シール部材
26a,26b テーパー面
58a,58b,59a,59b 弁座
64a,64b,65a,65b シール部材
66a,66b テーパー面
P 供給流路
A,B 出力流路
E1,E2 排出流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁孔の長手方向の中央部に連通する供給流路、その両側に連通する二つの出力流路及びそれらの出力流路の弁孔端側に連通する二つの排出流路を設けた弁ボディと、上記弁孔内に摺動自在に嵌挿されたスプールと、該スプールの外周に設けた弾性体からなるシール部材と、上記弁孔内における供給流路と出力流路との間及び出力流路と排出流路との間に形成した上記シール部材が接離する弁座とを備えた4・5ポート切換弁において、
上記シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の低い側から高い側に摺動して弁座に乗り上げる部分に、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面を形成すると共に、シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の高い側から低い側に乗り上げる弁座の乗り上げ部分を上記テーパー面のない定径に形成し、
それによって、上記弁孔に形成される二つのテーパー面はそれらの縮径側が弁孔における供給流路の連通部側を向き、該弁孔における上記各テーパー面よりも両弁孔端側の内径は該テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成している、
ことを特徴とする4・5ポート切換弁。
【請求項2】
上記スプールが、弁孔における供給流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、排出流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、排出流路側から出力流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であることを特徴とする請求項1に記載の4・5ポート切換弁。
【請求項3】
上記スプールが、弁孔における出力流路側から供給流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、出力流路側から排出流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、出力流路側から供給流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であることを特徴とする請求項1に記載の4・5ポート切換弁。
【請求項4】
上記弁孔の両端部における上記各テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成したシール用円筒部の内面に、上記スプールに備えたエンドシールをシール状態で摺接させたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の4・5ポート切換弁。
【請求項5】
上記テーパー面が弁孔の軸線となす傾斜角度θを、10°〜40°としたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の4・5ポート切換弁。
【請求項1】
弁孔の長手方向の中央部に連通する供給流路、その両側に連通する二つの出力流路及びそれらの出力流路の弁孔端側に連通する二つの排出流路を設けた弁ボディと、上記弁孔内に摺動自在に嵌挿されたスプールと、該スプールの外周に設けた弾性体からなるシール部材と、上記弁孔内における供給流路と出力流路との間及び出力流路と排出流路との間に形成した上記シール部材が接離する弁座とを備えた4・5ポート切換弁において、
上記シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の低い側から高い側に摺動して弁座に乗り上げる部分に、その乗り上げ方向に縮径するテーパー面を形成すると共に、シール部材が弁孔において上記流路間を流れる流体の圧力の高い側から低い側に乗り上げる弁座の乗り上げ部分を上記テーパー面のない定径に形成し、
それによって、上記弁孔に形成される二つのテーパー面はそれらの縮径側が弁孔における供給流路の連通部側を向き、該弁孔における上記各テーパー面よりも両弁孔端側の内径は該テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成している、
ことを特徴とする4・5ポート切換弁。
【請求項2】
上記スプールが、弁孔における供給流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、排出流路側から出力流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、排出流路側から出力流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であることを特徴とする請求項1に記載の4・5ポート切換弁。
【請求項3】
上記スプールが、弁孔における出力流路側から供給流路との間の弁座に乗り上げるシール部材と、出力流路側から排出流路との間の弁座に乗り上げるシール部材とを備え、上記テーパー面を形成したのが、出力流路側から供給流路側に摺動して弁座に乗り上げる部分であることを特徴とする請求項1に記載の4・5ポート切換弁。
【請求項4】
上記弁孔の両端部における上記各テーパー面の最大径部分と同一またはそれよりも大径に形成したシール用円筒部の内面に、上記スプールに備えたエンドシールをシール状態で摺接させたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の4・5ポート切換弁。
【請求項5】
上記テーパー面が弁孔の軸線となす傾斜角度θを、10°〜40°としたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の4・5ポート切換弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−249186(P2010−249186A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97369(P2009−97369)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000102511)SMC株式会社 (344)
【Fターム(参考)】
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