説明

4炭素アルコールの発酵性産生

四炭素アルコールの発酵生産方法が提供される。具体的にはブタノール、好ましくは1−ブタノール生合成経路を発現する組み換え細菌の発酵的生育によって、1−ブタノールが生成される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条に基づく、2005年9月29日に出願された米国仮出願第60/721677号明細書、および2006年6月16日に出願された米国仮出願第60/814470号明細書からの優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、工業微生物学分野およびアルコールの生成に関する。より具体的には、組み換え微生物の工業発酵を通じて1−ブタノールが生成される。
【背景技術】
【0003】
ブタノールは重要な工業化学物質であり、燃料添加剤として、プラスチック工業における原材料化学物質として、および食物および香料工業における食物等級抽出剤として有用である。毎年、100〜120億ポンドのブタノールが石油化学的手段によって生成され、この汎用化学物質に対する需要は増大すると思われる。
【0004】
オキソ法、レッペ法、およびクロトンアルデヒドの水素付加などの1−ブタノールの化学合成法が知られている(非特許文献1)。これらの方法は、石油化学物質に由来する出発原料を使用し、一般に高価であり環境を損なう。植物由来原料からの1−ブタノール生成は温室効果ガス排出を最小化し、当該技術分野における進歩に相当する。
【0005】
その他の有機化学物質の生体内変換によって1−ブタノール製造する方法もまた、知られている。例えばムラモト(Muramoto)らは特許文献1で、シュードモナス(Pseudomonas)の菌株を使用して、アルデヒドからブタノールをはじめとするアルコールを生成する方法について述べている。さらにクーンレ(Kuehnle)らは特許文献2で、ロドコッカス・ルバー(Rhodococcus ruber)の様々な株による炭化水素の酸化によって、1−ブタノールおよび2−ブタノールを調製する方法について述べている。
【0006】
発酵によってブタノールを製造する方法もまた知られており、最も普及している方法はアセトン、1−ブタノール、およびエタノールの混合物を生成し、ABE法と称される(ブラチェク(Blaschek)らに付与された特許文献3)。クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)によるアセトン−ブタノール−エタノール(ABE)発酵は、最古の既知の工業発酵の一つであり、これらの溶剤の生成を担う経路および遺伝子について報告されている(非特許文献2)。しかし実際の発酵はかなり複雑で、制御が困難であった。ABE発酵は1950年代以来継続して衰退し、現在ほとんど全てのブタノールは上述のように石油化学的経路によって生産されている。典型的なABE発酵では、最初に酪酸、プロピオン酸、乳酸、および酢酸がC.アセトブチリカム(acetobutylicum)によって生成され、培養pHが下がって代謝「バタフライ」シフトを被り、次に1−ブタノール、アセトン、イソプロパノール、およびエタノールが形成される。従来のABE発酵では、グルコースからの1−ブタノールの収率は低く、典型的に15%前後で25%を超えることは稀である。したがって従来のABE発酵中の1−ブタノール濃度は、通常1.3%よりも低い。
【0007】
その他の全ての溶剤副産物の排除によって、ABE法からの1−ブタノール生成を最大化する試みは完全に成功しておらず、したがって方法はガソリン添加剤として有用でない顕著な量のアセトンを生じる。1−ブタノールが唯一の産物であるブタノールの発酵的生産方法は、当該技術分野における進歩に相当する。
【0008】
【特許文献1】特開昭63−017695号公報
【特許文献2】欧州特許第1149918号明細書
【特許文献3】米国特許第6,358,717号明細書
【非特許文献1】「ウルマンの工業化学百科事典(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry)」第6版、第5巻、716〜719頁、Wiley−VCHVerlag GmbH and Co.、Weinheim,Germany、2003年
【非特許文献2】ギルバル(Girbal)ら、Trends in Biotechnology 16:11〜16頁、1998年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって単一産物としての1−ブタノール生成のための、環境的に責任を持てる、対費用効果の高い方法が必要とされている。本発明は、1−ブタノール生合成経路を発現する組み換え微生物生成宿主の発見を通じて、この必要性に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、改変された1−ブタノール生合成経路を有する組み換え微生物を提供する。改変された微生物を1−ブタノールの商業的生成のために使用してもよい。したがって本発明は、
a)アセチル−CoAからアセトアセチル−CoAへ、
b)アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへ、
c)3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAへ、
d)クロトニル−CoAからブチリル−CoAへ、
e)ブチリル−CoAからブチルアルデヒドへ、および
f)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへ
よりなる群から選択される、基質から産物への変換を触媒するポリペプチドをコードする少なくとも1つのDNA分子を含んでなる組み換え微生物宿主細胞を提供し、少なくとも1つのDNA分子は前記微生物宿主細胞に対して異種であり、前記微生物宿主細胞は1−ブタノールを生成する。
【0011】
別の実施態様では、本発明は、
i)a)アセチル−CoAからアセトアセチル−CoAへ、
b)アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへ、
c)3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAへ、
d)クロトニル−CoAからブチリル−CoAへ、
e)ブチリル−CoAからブチルアルデヒドへ、および
f)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへ
よりなる群から選択される、基質から産物への変換を触媒するポリペプチドをコードして、前記微生物宿主細胞に対して異種である、少なくとも1つのDNA分子を含んでなる組み換え微生物宿主細胞を提供し、そして
ii)1−ブタノールが生成される条件下で、(i)の宿主細胞と発酵性炭素基質とを接触させる
ことを含んでなる1−ブタノールの生成方法を提供する。
【0012】
配列説明
本願明細書の一部を形成する次の詳細な説明、図、および添付の配列説明によって、本発明をより完全に理解できるであろう。
【0013】
以下の配列は、37C.F.R.1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures − the Sequence Rules)」)を満たし、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998年)およびEPOおよびPCTの配列表要件(規則5.2および49.5(aの2)、および実施細則第208号および附属書C)に一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および型式は、37C.F.R.§1.822で述べられる規則に従う。
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
配列番号17〜44は、1−ブタノール生合成経路の遺伝子を増幅するのに使用されるオリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド配列である。
【0017】
配列番号45〜72は、配列決定のために使用されるオリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド配列である。
【0018】
配列番号73〜75は、実施例9で述べられる形質転換ベクターを構築するために使用されるオリゴヌクレオチドプライマーのヌクレオチド配列である。
【0019】
配列番号76は、ここでCaTERと称されるコドン最適化CAC0462遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0020】
配列番号77は、ここでEgTER(opt)と称されるコドン最適化EgTER遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0021】
配列番号78は、ここでald(opt)と称されるコドン最適化ald遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0022】
配列番号79は、プラスミドpFP988のヌクレオチド配列である。
【0023】
配列番号80〜127、160〜185、および190〜207は、ここで述べられ表4および5でより詳細に述べられる、1−ブタノール生合成経路の遺伝子のクローニング、配列決定、またはスクリーニングのために使用される、クローニング、配列決定、またはPCRスクリーニングプライマーの核酸配列である。
【0024】
配列番号156は、cscBKA遺伝子クラスターのヌクレオチド配列である。
【0025】
配列番号157は、スクロースヒドロラーゼ(CscA)のアミノ酸配列である。
【0026】
配列番号158は、D−フルクトキナーゼ(CscK)のアミノ酸配列である。
【0027】
配列番号159は、スクロースパーミアーゼ(CscB)のアミノ酸配列である。
【0028】
配列番号186は、実施例17で述べられるコドン最適化tery遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0029】
配列番号187は、コドン最適化tery遺伝子(配列番号186)によってコードされるブチル−CoAデヒドロゲナーゼ(ter)のアミノ酸配列である。
【0030】
配列番号188は、実施例17で述べられるコドン最適化aldy遺伝子のヌクレオチド配列である。
【0031】
配列番号189は、コドン最適化aldy遺伝子(配列番号188)によってコードされるブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ald)のアミノ酸配列である。
【0032】
配列番号208は、実施例14で使用されるテンプレートDNAのヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明は、組み換え微生物を使用した1−ブタノール生成方法に関する。本発明は、いくつかの商業的および工業的ニーズを満たす。ブタノールは多様な用途がある重要な汎用工業化学物質であり、燃料または燃料添加剤としてのその可能性は特に顕著である。四炭素のみのアルコールでありながら、ブタノールはガソリンに類するエネルギー含量を有してあらゆる化石燃料と混合できる。ブタノールを標準内燃エンジン内で燃焼させるとCOのみが生じ、SOまたはNOは微量または全く生じないので、それは燃料または燃料添加剤として好まれている。さらにブタノールは、今までのところ最も好ましい燃料添加剤であるエタノールよりも腐食性が低い。
【0034】
生物燃料または燃料添加剤としてのその有用性に加えて、ブタノールは、新興の燃料電池産業における水素流通問題に影響を及ぼす可能性を有する。今日の燃料電池は、水素輸送および流通に関連した安全性への懸念に悩まされている。ブタノールはその水素含量を容易に改善でき、既存の給油所を通じて、燃料電池または車両のいずれかのために必要な純度で流通させることができる。
【0035】
最後に本発明は植物由来炭素源からブタノールを生成し、ブタノール生成のための標準石油化学法に関連する環境への悪影響を回避する。
【0036】
次の定義および略語が、特許請求の範囲および明細書の解釈のために使用される。
【0037】
「発明」または「本発明」という用語は、ここでの用法では非限定的用語であり、特定の発明のいかなる単一実施態様を指すことも意図されず、明細書および特許請求の範囲で述べられるような全ての可能な実施態様を包含する。
【0038】
「ABE」は、アセトン−ブタノール−エタノール発酵法の略語である。
【0039】
「1−ブタノール生合成経路」という用語は、アセチル−補酵素A(アセチル−CoA)から1−ブタノールを生成するための酵素経路を意味する。
【0040】
「アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ」という用語は、2個のアセチル−CoA分子からアセトアセチル−CoAおよび補酵素A(CoA)への変換を触媒する酵素を指す。より幅広い基質範囲の酵素(E.C.2.3.1.16)もまた機能できるが、好ましいアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼは、短鎖アシル−CoAおよびアセチル−CoAに対して基質優先傾向がある(順方向反応)アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼであり、E.C.2.3.1.9と分類される[酵素命名法(Enzyme Nomenclature)、Aademic Press、San Diego、1992年、]。アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼは、例えば大腸菌(Escherichia coli)(ジェンバンク番号:NP_416728(配列番号129)、NC_000913(配列番号128);NCBI(国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information))アミノ酸配列、NCBIヌクレオチド配列)、クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(ジェンバンク番号:NP_349476.1(配列番号2)、NC_003030(配列番号1);NP_149242(配列番号4)、NC_001988(配列番号3)、枯草菌(Bacillus subtilis)(ジェンバンク番号:NP_390297(配列番号131)、NC_000964(配列番号130))、およびサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)(ジェンバンク番号:NP_015297(配列番号133)、NC_001148(配列番号132))などのいくつかの供給源から入手できる。
【0041】
「3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ」という用語は、アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへの変換を触媒する酵素を指す。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)依存性であってもよく、(S)−3−ヒドロキシブチリル−CoAまたは(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAに対して基質選好性があり、それぞれE.C.1.1.1.35およびE.C.1.1.1.30と分類される。さらに3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)依存性であってもよく、(S)−3−ヒドロキシブチリル−CoAまたは(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAに対して基質選好性があり、それぞれE.C.1.1.1.157およびE.C.1.1.1.36と分類される。3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、例えばC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ジェンバンク番号:NP_349314(配列番号6)、NC_003030(配列番号5))、枯草菌(B.subtilis)(ジェンバンク番号:AAB09614(配列番号135)、U29084(配列番号134))、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)(ジェンバンク番号:YP_294481(配列番号137)、NC_007347(配列番号136))、およびアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)(ジェンバンク番号:AAA21973(配列番号139)、J04987(配列番号138))などのいくつかの供給源から入手できる。
【0042】
「クロトナーゼ」という用語は、3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAおよびHOへの変換を触媒する酵素を指す。クロトナーゼは(S)−3−ヒドロキシブチリル−CoAまたは(R)−3−ヒドロキシブチリル−CoAに対する基質選好性を有してもよく、それぞれE.C.4.2.1.17およびE.C.4.2.1.55と分類される。クロトナーゼは、例えば大腸菌(E.coli)(ジェンバンク番号:NP_415911(配列番号141)、NC_000913(配列番号140))、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ジェンバンク番号:NP_349318(配列番号8)、NC_003030(配列番号6))、枯草菌(B.subtilis)(ジェンバンク番号:CAB13705(配列番号143)、Z99113(配列番号142))、およびアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)(ジェンバンク番号:BAA21816(配列番号145)、D88825(配列番号144))などのいくつかの供給源から入手できる。
【0043】
「ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ」という用語は、クロトニル−CoAからブチリル−CoAへの変換を触媒する酵素を指す。ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、NADH依存性またはNADPH依存性のいずれかであってもよく、それぞれE.C.1.3.1.44およびE.C.1.3.1.38と分類される。ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼは、例えばC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ジェンバンク番号:NP_347102(配列番号10)、NC_003030(配列番号9)))、ミドリムシ(Euglena gracilis)(ジェンバンク番号:Q5EU90配列番号147)、AY741582配列番号146))、ストレプトミセス・コリヌス(Streptomyces collinus)(ジェンバンク番号:AAA92890(配列番号149)、U37135(配列番号148))、およびストレプトミセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)(ジェンバンク番号:CAA22721(配列番号151)、AL939127(配列番号150))などのいくつかの供給源から入手できる。
【0044】
「ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ」という用語は、補助因子としてNADHまたはNADPHを使用して、ブチリル−CoAからブチルアルデヒドへの変換を触媒する酵素を指す。NADHに対する選好性があるブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼはE.C.1.2.1.57として知られており、例えばクロストリジウム・バイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)(ジェンバンク番号:AAD31841(配列番号12)、AF157306(配列番号11))、およびC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ジェンバンク番号:NP_149325(配列番号153)、NC_001988(配列番号152))から入手できる。
【0045】
「ブタノールデヒドロゲナーゼ」という用語は、補助因子としてNADHまたはNADPHのいずれかを使用して、ブチルアルデヒドから1−ブタノールの変換を触媒する酵素を指す。ブタノールデヒドロゲナーゼは、例えばC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ジェンバンク番号:NP_149325(配列番号153)、NC_001988配列番号152;注記:この酵素はアルデヒドおよびアルコールデヒドロゲナーゼ活性の双方を有する);NP_349891(配列番号14)、NC_003030(配列番号13);およびNP_349892(配列番号16)、NC_003030(配列番号15))、および大腸菌(E.coli)(ジェンバンク番号:NP_417484(配列番号155)、NC_000913(配列番号154))から入手できる。
【0046】
「通性嫌気性菌」という用語は、好気性および嫌気性環境の双方において生育できる微生物を指す。
【0047】
「炭素基質」または「発酵性炭素基質」という用語は、本発明の宿主生物によって代謝されることができる炭素源を指し、特に単糖類、オリゴ糖類、多糖類、および一炭素基質またはそれらの混合物よりなる群から選択される炭素源を指す。
【0048】
「遺伝子」という用語は、特定のタンパク質として発現されることができ、場合によりコード配列に先行し(5’非コード配列)および後続する(3’非コード配列)、制御配列を含む核酸断片を指す。「天然遺伝子」とは、それ自体の制御配列と共に天然に見られる遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」とは、天然には一緒に見られない調節およびコード配列を含んでなる、天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。したがってキメラ遺伝子は、異なる供給源に由来する制御配列およびコード配列を含んでもよく、または同一供給源に由来するが天然に見られるのとは異なる様式に配列された制御配列およびコード配列を含んでなってもよい。「内在性遺伝子」とは、生物のゲノム中のその自然な位置にある天然遺伝子を指す。「外来性」または「異種遺伝子」とは、常態では宿主生物中に見られないが、遺伝子移入により宿主生物中に導入される遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然生物中に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含んでなることができる。「導入遺伝子」とは、形質転換手順によってゲノム中に導入された遺伝子である。
【0049】
ここでの用法では「コード配列」という用語は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な制御配列」とは、コード配列上流(5’非コード配列)、その中、または下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、それは関連したコード配列の転写、RNAプロセシングまたは安定性、または翻訳に影響する。制御配列はプロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、およびステムループ構造を含んでもよい。
【0050】
「プロモーター」という用語は、コード配列または機能性RNAの発現を制御できるDNA配列を指す。一般にコード配列は、プロモーター配列に対して3’に位置する。プロモーターはその全体が天然遺伝子に由来してもよく、または天然に見られる異なるプロモーターに由来する異なる要素から構成されてもよく、または合成DNAセグメントを含んでなってもよい。当業者は、異なる組織または細胞タイプにおいて、または異なる発生ステップにおいて、または異なる環境的または生理学的条件に応じて、異なるプロモーターが遺伝子の発現を指示してもよいことを理解する。ほとんどの場合にほとんどの細胞タイプで遺伝子の発現を引き起こすプロモーターは、一般に「構成的プロモーター」と称される。ほとんどの場合、制御配列の正確な境界は完全に画定されていないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有してもよいこともさらに認識される。
【0051】
「作動的に結合する」という用語は、一方の機能が他方の機能によって影響される、単一核酸断片上の核酸配列のつながりを指す。例えばプロモーターはコード配列の発現に影響できる(すなわちコード配列がプロモーターの転写調節の下にある)場合、そのコード配列と作動的に結合する。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で制御配列に作動的に結合できる。
【0052】
「発現」と言う用語は、ここでの用法では、発明の核酸断片から誘導されるセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定した蓄積を指す。発現はまた、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指してもよい。
【0053】
ここでの用法では「形質転換」とは、遺伝的に安定した遺伝形質をもたらす宿主生物への核酸断片の転移を指す。形質転換された核酸断片を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」または「組み換え」または「形質転換」生物と称される。
【0054】
「プラスミド」、「ベクター」、および「カセット」という用語は、細胞の中央代謝の一部ではない遺伝子を有することが多く、通常環状二本鎖DNA断片の形態である染色体外要素を指す。このような要素は、一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAの直鎖または環状の自律的に複製される配列、ゲノム一体化配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってもよく、それはその中で適切な3’非翻訳配列と共に、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を細胞中に導入することができる独自の構成に、いくつかのヌクレオチド配列が結合または組み換えされるあらゆる供給源に由来する。「形質転換カセット」とは、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にする要素を有する特定のベクターを指す。「発現カセット」とは、外来性遺伝子を含有し、外来性遺伝子に加えて外来性宿主におけるその遺伝子の促進された発現を可能にする要素を有する、特定のベクターを指す。
【0055】
ここでの用法では「コドン縮重」という用語は、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響することなく、ヌクレオチド配列の変更を可能にする遺伝コードにおける性質を指す。当業者は、任意のアミノ酸を特定化するためのヌクレオチドコドンの利用において、特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」を十分承知している。したがって宿主細胞中での改善された発現のために遺伝子を合成する場合、コドン使用頻度が宿主細胞の好ましいコドン使用頻度に近くなるようように、遺伝子をデザインすることが望ましい。
【0056】
「コドン最適化」と言う用語は、様々な宿主の形質転換のための遺伝子または核酸分子のコーディング領域について言及する場合、DNAによってコードされるポリペプチドを改変することなく、宿主生物体の典型的なコドン使用を反映させる、遺伝子中のコドンまたは核酸分子のコーディング領域の改変を指す。
【0057】
ここで使用される標準リコンビナントDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野で良く知られており、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチュ(Fritsch),E.F.、およびマニアティス(Maniatis),T.、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press:Cold Spring Harbor、NY、1989年(以下「Maniatis」);シルハビー(Silhavy),T.J.、ベンナン(Bennan),M.L.およびエンクイスト(Enquist),L.W.、「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,NY、1984年;およびオースベル(Ausubel),F.M.ら、「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版、1987年、で述べられている。
【0058】
1−ブタノール生合成経路
炭水化物利用微生物は、中心的代謝経路として、エムデン−マイヤーホフ−パーナス(EMP)経路、エントナー−ドウドロフ経路、およびペントースリン酸回路を用いて、生育および維持のためのエネルギーおよび細胞前駆物質を提供する。これらの経路は共通して中間体グリセルアルデヒド−3−リン酸を有し、究極的にピルビン酸が直接に、またはEMP経路と組み合わさって形成される。続いてピルビン酸は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体、ピルビン酸−ギ酸リアーゼ、およびピルビン酸−フェレドキシンオキシドレダクターゼとの反応をはじめとする多様な手段を通じて、アセチル−補酵素A(アセチル−CoA)に転換される。アセチル−CoAは、例えば脂肪酸、アミノ酸、および二次代謝産物を発生させる上で、重要な中間体の役割を果たす。アセチル−CoAへの糖変換反応の組み合わせは、エネルギー(例えばアデノシン−5’−三リン酸、ATP)および還元等価物(例えば還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、NADH、および還元ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、NADPH)を生じる。NADHおよびNADPHはそれらの酸化形態(それぞれNADおよびNADP)に再生されなくてはならない。無機電子受容体(例えばO、NO、およびSO2−)の存在下で還元等価物を使用してエネルギープールを増強してもよく、あるいは還元炭素副産物を形成してもよい。炭水化物の発酵に起因するエタノールおよび1−ブタノール生成は、後者の例である。
【0059】
本発明は、図1に示すようにアセチル−CoAから1−ブタノールへの完全な1−ブタノール生合成経路を提供することで、組み換え微生物によって炭水化物源から1−ブタノールが生成できるようにする。遺伝子の不在または適切な遺伝子制御の欠如のために、一般に微生物群生中に欠如しているこの生合成経路は、以下の基質から産物への変換を含んでなる。
a)例えばアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼによって触媒されるようなアセチル−CoAからアセトアセチル−CoAへ、
b)例えば3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼによって触媒されるようなアセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへ、
c)例えばクロトナーゼによって触媒されるような3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAへ、
d)例えばブチリル−CoAデヒドロゲナーゼによって触媒されるようなクロトニル−CoAからブチリル−CoAへ、
e)例えばブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼによって触媒されるようなブチリル−CoAからブチルアルデヒドへ、および
f)例えばブタノールデヒドロゲナーゼによって触媒されるようなブチルアルデヒドから1−ブタノールへの変換。
【0060】
経路はATPを必要とせずNADおよび/またはNADPを発生させるので、アセチル−CoAを発生させる中央代謝経路と釣り合う。天然生物が発酵によって1−ブタノールを生成する能力は稀であり、最も顕著にはクロストリジウム・バイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)およびクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)によって例証される。クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)の遺伝子構成および遺伝子制御については述べられている(L.ギルバル(Girbal)およびP.スーカイ(Soucaille)、Trends in Biotechnology、216:11〜16頁、1998年)。しかしこれらの酵素活性の多くは、例えば炭化水素利用、脂肪酸酸化、およびポリヒドロキシアルカノアート代謝などの代案の経路とも結びついている。したがってアセチル−CoAから1−ブタノールへの組み換え経路を提供する上で、個々の反応ステップを満たすいくつかの選択があり、当業者は公的に入手可能な配列を利用して、関連する経路を構築できるであろう。当該技術分野で知られており、1−ブタノール生合成経路の構築において有用である、代表的ないくつかの遺伝子の一覧を下の表2に列挙する。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
1−ブタノール生成のための微生物宿主
1−ブタノール生成のための微生物宿主は、細菌、ラン藻、糸状菌類、および酵母から選択されてもよい。1−ブタノール生成のために使用される微生物宿主は、ブタノール毒性によって収率が制限されないように、好ましくは1−ブタノールに耐性である。1−ブタノールの高力価レベルで代謝的に活性の微生物については、当該技術分野であまり知られていない。溶剤起源クロストリジウム(Clostridia)からブタノール耐性突然変異体が単離さているが、その他の潜在的に有用な細菌株のブタノール耐性に関する情報はほとんどない。細菌におけるアルコール耐性の比較に関する研究のほとんどは、ブタノールがエタノールよりも毒性が高いことを示唆する(デ・カバルホ(de Cavalho)ら、Microsc.Res.Tech.64:215〜22頁、2004年;およびカベリッツ(Kabelitz)ら、FEMS Microbiol.Lett.220:223〜227頁、2003年)。トーマス(Tomas)ら、J.Bacteriol.186:2006〜2018頁、2004年、はクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)中での発酵におけるブタノールの収率が、ブタノール毒性によって制限されるかもしれないことを報告する。クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)に対するブタノールの主要効果は、膜機能の破壊である(ヘルマン(Hermann)ら、Appl.Environ.Microbiol.50:1238〜1243頁、1985年)。
【0066】
1−ブタノール生成について選択される微生物宿主は好ましくは1−ブタノールに対して耐性であり、炭水化物を1−ブタノールに転換できる。適切な微生物宿主選択のための判定基準としては、以下が挙げられる。1−ブタノールに対する内因的耐性、高率のグルコース使用、遺伝子操作のための遺伝的ツールの利用可能性、および安定した染色体の改変を発生させる能力。
【0067】
1−ブタノールに対して耐性の適切な宿主株は、株の内因的耐性に基づいたスクリーニングによって同定してもよい。1−ブタノールに対する微生物の内因的耐性は、最少培地中で生育させた際に、生育速度の50%阻害(IC50)を引き起こす1−ブタノールの濃度を判定することで測定してもよい。IC50値は、当該技術分野で既知の方法を使用して判定してもよい。例えば様々な量の1−ブタノールの存在下で対象とする微生物を生育させ、600ナノメートルにおける光学濃度を測定することで生育速度をモニターしてもよい。生育曲線の対数部分から倍加時間を計算して、生育速度の尺度として使用してもよい。生育の50%阻害を生じる1−ブタノールの濃度は、1−ブタノール濃度に対する%生育阻害のグラフから判定してもよい。好ましくは宿主株は、1−ブタノールに対して約0.5%重量/容積を超えるIC50を有するべきである。
【0068】
1−ブタノール生成のための微生物宿主はまた、グルコースも高率で利用する。ほとんどの微生物は炭水化物を利用できる。しかし特定の環境的微生物は炭水化物を高い効率で利用できないので、適切な宿主ではない。
【0069】
宿主を遺伝的に改変する能力は、あらゆる組み換え微生物の生成に必須である。遺伝子移入技術の様式は、電気穿孔、接合、形質導入または自然形質転換であってもよい。広範な宿主接合性プラスミドおよび薬剤抵抗性マーカーが利用できる。クローニングベクターは、宿主中で機能できる抗生物質抵抗性マーカーの性質に基づいて、宿主生物に合わせて調整される。
【0070】
微生物宿主はまた、炭素流動について競合する経路を不活性化するために、様々な遺伝子を削除することで操作されなくてはならない。これは、不活性化を指示するトランスポゾンまたは染色体組み込みベクターのいずれかを利用可能であることが必要である。さらに内因的1−ブタノール耐性を改善する突然変異が得られるように、生成宿主は化学的突然変異誘発を容易に受け入るべきである。
【0071】
上述の判定基準に基づいて、1−ブタノール生成のための適切な微生物宿主としては、限定されるものではないが、クロストリジウム(Clostridium)、ザイモモナス(Zymomonas)、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、腸球菌(Enterococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ(Klebsiella)、パエニバチルス(Paenibacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ピヒア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、およびサッカロミセス(Saccharomyces)属のメンバーが挙げられる。好ましい宿主としては、大腸菌(Escherichia coli)、アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)、バチルス・リチェニホルミス(Bacillus licheniformis)、パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、枯草菌(Bacillus subtilis)、およびサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。
【0072】
生成宿主の構築
発酵性炭素基質から1−ブタノールへの変換のための酵素的経路をコードする必要な遺伝子を含有する組み換え生物は、当該技術分野でよく知られている技術を使用して構築してもよい。本発明では、1−ブタノール生合成経路の酵素、すなわちアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、クロトナーゼ、ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、およびブタノールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子は、上述のように様々な供給源から単離してもよい。
【0073】
細菌ゲノムから所望の遺伝子を得る方法は、分子生物学技術分野で一般的であり、よく知られている。例えば遺伝子配列が既知であれば、制限エンドヌクレアーゼ消化によって適切なゲノムのライブラリーを作り出し、所望の遺伝子配列に相補的なプローブでスクリーンしてもよい。ひとたび配列が単離されると、ポリメラーゼ連鎖反応などの標準プライマー誘導増幅方法(マリス(Mullis)、米国特許第4,683,202号明細書)を使用してDNAを増幅し、適切なベクターを使用した形質転換に適した量のDNAを得てもよい。異種の宿主中での発現のためのコドン最適化ツールは、容易に入手できる。コドン最適化のためのいくつかのツールは、宿主生物のGC含量に基づいて利用できる。いくつかの例示的な微生物宿主のGC含量を表3に示す。
【0074】
【表7】

【0075】
ひとたび関連する経路遺伝子を同定および単離したら、それらを当該技術分野でよく知られている手段によって適切な発現宿主に形質転換してもよい。多様な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットは一般的であり、ウィスコンシン州マディソンのエピセンター(EPICENTRE(登録商標)(Madison,WI))、カリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA))、カリフォルニア州ラホヤのストラタジーン(Stratagene(La Jolla,CA))、およびマサチューセッツ州ベヴァリーのニュー・イングランド・バイオラブズ・インコーポレーテッド(New England Biolabs,Inc.(Beverly,MA))などの会社から市販される。典型的にベクターまたはカセットは、関連遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、および自己複製または染色体組み込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始制御を内部に有する遺伝子の5’領域、および転写終結を制御するDNA断片の3’領域を含んでなる。どちらの制御領域も形質転換宿主細胞に相同的な遺伝子に由来してもよいが、このような制御領域はまた、生成宿主として選択された特定の種に天然でない遺伝子に由来してもよいものと理解される。
【0076】
所望の宿主細胞において関連する経路コード領域の発現を駆動するのに有用な開始制御領域またはプロモーターは多数あり、当業者にはなじみが深い。限定されるものではないが、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI、CUP1、FBA、GPD、およびGPM(サッカロミセス(Saccharomyces)中での発現に有用);AOX1(ピヒア(Pichia)中での発現に有用);およびlac、ara、tet、trp、lP、lP、T7、tac、およびtrc(大腸菌(Escherichia coli)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、およびシュードモナス(Pseudomonas)中での発現に有用);amy、apr、nprプロモーターおよび様々なファージプロモーター(枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リチェニホルミス(Bacillus licheniformis)、およびパエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)中での発現に有用);nisA(グラム陽性細菌での発現に有用、アイヘンバウム(Eichenbaum)ら、Appl.Environ.Microbiol.64(8):2763〜2769頁、1998年);および合成P11プロモーター(ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)中での発現に有用、ラッド(Rud)ら、Microbiology、152:1011〜1019頁、2006年)をはじめとする、これらの遺伝的要素を駆動できるあらゆるプロモーターが事実上、本発明に適する。
【0077】
終結制御領域は、好ましい宿主に天然である様々な遺伝子に由来してもよい。場合により終結部位は不必要であってもよいが、含まれれば最も好ましい。
【0078】
特定のベクターは広範な宿主細菌中で複製することができ、接合によって転移できる。pRK404、および3つの関連ベクターpRK437、pRK442、およびpRK442(H)の完全な注釈付き配列が入手できる。これらの誘導体は、グラム陰性細菌中の遺伝的操作のための有益なツールであることが証明されている(スコット(Scott)ら、Plasmid 50(1):74〜79頁、2003年)。広宿主範囲Inc P4プラスミドRSF1010のいくつかのプラスミド誘導体もまた、グラム陰性細菌中で機能できるプロモーターと共に入手できる。プラスミドpAYC36およびpAYC37は、複数クローニング部位と共に活性プロモーターを有し、グラム陰性細菌中での異種遺伝子の発現を可能にする。
【0079】
染色体の遺伝子置換ツールもまた、広く入手できる。例えば広宿主範囲レプリコンpWV101の熱感受性変異型が改変されてプラスミドpVE6002が構築されており、これは一連のグラム陽性細菌中に遺伝子置換を作り出すのに使用できる(モーガン(Maguin)ら、J.Bacteriol.174(17):5633〜5638頁、1992年)。さらに生体外トランスポゾームを利用して、エピセンター(EPICENTRE)(登録商標)などの商業的供給源からの多様なゲノム中にランダム突然変異を作り出せる。
【0080】
様々な好ましい微生物宿主中での1−ブタノール生合成経路の発現については、下でより詳細に述べる。
【0081】
大腸菌(E.coli)中の1−ブタノール生合成経路の発現
大腸菌(E.coli)の形質転換に有用なベクターまたはカセットは一般的であり、上に列挙した会社から市販される。例えば実施例11で述べられるように、1−ブタノール生合成経路の遺伝子を様々なクロストリジウム(Clostridium)株から単離して、改変pUC19ベクター中にクローニングし、大腸菌(E.coli)NM522に形質転換してもよい。いくつかのその他の大腸菌(E.coli)株中での1−ブタノール生合成経路の発現については、実施例13で述べられる。
【0082】
ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)中での1−ブタノール生合成経路の発現
pRhBR17およびpDA71をはじめとするがこれに限定されるものではない、一連の大腸菌(E.coli)−ロドコッカス(Rhodococcus)シャトルベクターが、R.エリスロポリス(erythropolis)中での発現のために利用できる(コスチクカ(Kostichka)ら、Appl.Microbiol.Biotechnol 62:61〜68頁、2003年)。さらにR.エリスロポリス(erythropolis)中での異種の遺伝子発現のために、一連のプロモーターが利用できる(例えばナカシマ(Nakashima)ら、Appl.Envir.Microbiol.70:5557〜5568頁、2004年;およびタオ(Tao)ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.2005年、DOI10.1007/s00253−005−0064を参照されたい)。タオ(Tao)ら(前出)およびブランズ(Brans)ら、Appl.Envir.Microbiol.66:2029〜2036、2000年、で述べられる方法を使用して、R.エリスロポリス(erythropolis)中の染色体遺伝子の標的を定めた遺伝子破壊を作り出してもよい。
【0083】
上述のように1−ブタノール生成に必要な異種の遺伝子は、最初にpDA71またはpRhBR71中でクローニングして、大腸菌(E.coli)に形質転換してもよい。次にコスチクカ(Kostichka)ら(前出)が述べるように、ベクターを電気穿孔によってR.エリスロポリス(erythropolis)に形質転換してもよい。組換え体はグルコースを含有する合成培地中で生育させてもよく、当該技術分野で既知の方法を使用した1−ブタノール生成がそれに続く。
【0084】
枯草菌(Bacillus subtilis)中での1−ブタノール生合成経路の発現
枯草菌(B.subtilis)中での遺伝子発現および突然変異作成の方法もまた、当該技術分野でよく知られている。例えば実施例12で述べられるように、1−ブタノール生合成経路の遺伝子を様々なクロストリジウム(Clostridium)株から単離し、改変pUC19ベクター中にクローニングして枯草菌(Bacillus subtilis)BE1010に形質転換してもよい。さらに実施例14で述べられるように、1−生合成経路の6つの遺伝子を発現のために2つのオペロンに分割できる。経路の最初の3つの遺伝子(thl、hbd、およびcrt)を枯草菌(Bacillus subtilis)BE1010の染色体に組み込む(ペイン(Payne)およびジャクソン(Jackson)、J.Bacteriol.173:2278〜2282頁、1991年)。最後の3つの遺伝子(EgTER、ald、およびbdhB)は発現プラスミド中にクローニングされて、組み込まれた1−ブタノール遺伝子を保有するバチルス(Bacillus)株に形質転換される。
【0085】
バチルス・リチェニホルミス(Bacillus licheniformis)における1−ブタノール生合成経路の発現
プロトプラスト形質転換または電気穿孔のどちらかによって、B.リチェニホルミス(licheniformis)を形質転換するのに、枯草菌(B.subtilis)中で複製されるプラスミドおよびシャトルベクターのほとんどが使用できる。例えば1−ブタノール生成に必要な遺伝子をプラスミドpBE20またはpBE60誘導体中でクローニングしてもよい(ナガラージャン(Nagarajan)ら、Gene 114:121〜126頁、1992年)。B.リチェニホルミス(licheniformis)を形質転換する方法は当該技術分野で知られている(例えばフレミング(Fleming)ら、Appl.Environ.Microbiol.、61(11):3775〜3780頁、1995年、を参照されたい)。枯草菌(B.subtilis)中での発現のために構築されたプラスミドは、B.リチェニホルミス(licheniformis)に形質転換されて、1−ブタノールを生成する組み換え微生物宿主を生じる。
【0086】
パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)中での1−ブタノール生合成経路の発現
上述のように枯草菌(B.subtilis)中での発現のためにプラスミドを構築し、プロトプラスト形質転換によってパエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)に形質転換し、1−ブタノールを生成する組み換え微生物宿主を生成してもよい。
【0087】
アルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)(ラルストニア・ユートロファス(Ralstonia eutrophus))中での1−ブタノール生合成経路の発現
ラルストニア・ユートロファス(Ralstonia eutrophus)中での遺伝子発現および突然変異発生の方法は、当該技術分野で知られている(例えばタガビ(Taghavi)ら、Appl.Environ.Microbiol.、60(10):3585〜3591頁、1994年、を参照されたい)。1−ブタノール生合成経路のための遺伝子を上述の広宿主範囲ベクターのいずれかの中でクローニングし、電気穿孔して1−ブタノールを生成する組換え体を発生させてもよい。ラルストニア(Ralstonia)中のポリヒドロキシブチレート経路については詳細に記述され、ラルストニア・ユートロファス(Ralstonia eutrophus)ゲノムを改変する多様な遺伝子工学技術が知られており、1−ブタノール生合成経路を操作するためにこれらのツールが応用できる。
【0088】
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)中での1−ブタノール生合成経路の発現
シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)中での遺伝子発現のための方法は、当該技術分野で知られている(例えば参照によって本明細書に援用するベン−バサット(Ben−Bassat)らに付与された米国特許第6,586,229号明細書を参照されたい)。例えばブタノール経路遺伝子をpPCU18中に挿入してもよく、このライゲーションしたDNAをエレクトロコンピテントなシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)DOT−T1C5aAR1細胞中に電気穿孔して、1−ブタノールを生じる組換え体を発生させてもよい。
【0089】
サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)中での1−ブタノール生合成経路の発現
サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)中での遺伝子発現のための方法は、当該技術分野で知られている(例えばクリスティン・ガスリー(Christine Guthrie)およびジェラルドR.フィンク(Gerald R.Fink)編、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」、第194巻、「酵母の遺伝学と分子および細胞生物学ガイド(Guide to Yeast Genetics and Molecular and Cell Biology)」(パートA)、Elsevier Academic Press、San Diego,CA)2004年、を参照されたい)。酵母中での遺伝子発現は、典型的にプロモーターとそれに続く対象とする遺伝子、および転写ターミネーターを必要とする。1−ブタノール生合成経路をコードする遺伝子のための発現カセットを構築する上で、構成的プロモーターFBA、GPD、およびGPM、および誘導性プロモーターGAL1、GAL10、およびCUP1をはじめとするが、これに限定されるものではない、いくつかの酵母プロモーターを使用できる。適切な転写ターミネーターとしては、限定されるものではないが、FBAt、GPDt、GPMt、ERG10t、およびGAL1tが挙げられる。1−ブタノール生合成経路の適切なプロモーター、転写ターミネーター、および遺伝子は、実施例17で述べられるように酵母2ミクロン(2μ)プラスミド中にクローニングしてもよい。
【0090】
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)中での1−ブタノール生合成経路の発現
乳酸桿菌(Lactobacillus)属は乳酸杆菌科に属し、枯草菌(Bacillus subtilis)および連鎖球菌(Streptococcus)の形質転換で使用される多くのプラスミドおよびベクターは、乳酸桿菌(Lactobacillus)のために使用してもよい。適切なベクターの非限定的例としては、pAMβ1およびその誘導体(ルノー(Renault)ら、Gene 183:175〜182頁、1996年、およびオサリバン(O’Sullivan)ら、Gene 137:227〜231、1993年);pMBB1およびpHW800、pMBB1誘導体(ワイコフ(Wyckoff)ら、Appl.Environ.Microbiol.62:1481〜1486頁、1996年);pMG1、接合性プラスミド(タニモト(Tanimoto)ら、J.Bacteriol.184:5800〜5804頁、2002年);pNZ9520(クレールベゼム(Kleerebezem)ら、Appl.Environ.Microbiol.63:4581〜4584頁、1997年);pAM401(フジモト(Fujimoto)ら、Appl.Environ.Microbiol.67:1262〜1267頁、2001年);およびpAT392(アーサー(Arthur)ら、Antimicrob.Agents Chemother.38:1899〜1903頁、1994年)が挙げられる。ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)からのいくつかのプラスミドもまた報告されている(例えばバンクラーネンブルクR(van Kranenburg R)、ゴーリックN(Golic N)、ボンジャースR(Bongers R)、レールRJ(Leer RJ)、デボスWM(de Vos WM)、シーゼンRJ(Siezen RJ)、クレールベゼムM(Kleerebezem M)、Appl.Environ.Microbiol.;71(3):1223〜1230頁、2005年3月)。例えばラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)中での1−ブタノール生合成経路の発現については、実施例18で述べられる。
【0091】
エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)、およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)中における1−ブタノール生合成経路の発現
腸球菌(Enterococcus)属は乳酸菌科(Lactobacillales)に属し、乳酸桿菌(Lactobacillus)、枯草菌(Bacillus subtilis)、および連鎖球菌(Streptococcus)の形質転換において使用される多くのプラスミドおよびベクターが、腸球菌(Enterococcus)のために使用できる。適切なベクターの非限定的例としては、pAMβ1およびその誘導体(ルノー(Renault)ら、Gene 183:175〜182頁、1996年、およびオサリバン(O’Sullivan)ら、Gene 137:227〜231、1993年);pMBB1およびpHW800、pMBB1誘導体(ワイコフ(Wyckoff)ら、Appl.Environ.Microbiol.62:1481〜1486頁、1996年);pMG1、接合性プラスミド(タニモト(Tanimoto)ら、J.Bacteriol.184:5800〜5804頁、2002年);pNZ9520(クレールベゼム(Kleerebezem)ら、Appl.Environ.Microbiol.63:4581〜4584頁、1997年);pAM401(フジモト(Fujimoto)ら、Appl.Environ.Microbiol.67:1262〜1267頁、2001年);およびpAT392(アーサー(Arthur)ら、Antimicrob.Agents Chemother.38:1899〜1903頁、1994年)が挙げられる。ラクトコッカス(Lactococcus)からのnisA遺伝子を使用したE.フェカーリス(faecalis)のための発現ベクターもまた使用してもよい(アイヘンバウム(Eichenbaum)ら、Appl.Environ.Microbiol.64:2763〜2769頁、1998年。さらにE.フェシウム(faecium)染色体中での遺伝子置換のためのベクターを使用してもよい(ナラパレディ(Nallaapareddy)ら、Appl.Environ.Microbiol.72:334〜345頁、2006年)。例えばエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)中での1−ブタノール生合成経路の発現については、実施例19で述べられる。
【0092】
発酵培地
本発明における発酵培地は、適切な炭素基質を含有しなくてはならない。適切な基質としては、限定されるものではないが、グルコースおよびフルクトースなどの単糖類、乳糖またはスクロースなどのオリゴ糖類、デンプンまたはセルロースなどの多糖類、またはそれらの混合物、および乳清透過液、コーンスティープリーカー、甜菜モラセス、および大麦の麦芽などの再生可能原材料からの未精製混合物が挙げられる。さらに炭素基質は、重要な生化学的中間体への代謝転換が実証されている二酸化炭素、またはメタノールなどの一炭素基質であってもよい。メチロトローフ生物体はまた、一または二炭素基質に加えて、代謝活性のためにメチルアミン、グルコサミン、および多様なアミノ酸などのいくつかのその他の炭素含有化合物を利用することが知られている。例えばメチロトローフ酵母菌は、メチルアミンからの炭素を利用してトレハロースまたはグリセロールを形成することが知られている(マレル,J.コリン(Murrell,J.Collin)、ケリー,ドンP.(Kelly,Don P.)編、第7回国際シンポジウム、ベリオン(Bellion)ら、「C1化合物上における微生物の生育(Microb.Growth C1 Compd.)」、415〜32頁、1993年、Interceptによる出版、Andover,UK)。同様に様々なカンジダ(Candida)種がアラニンまたはオレイン酸を代謝する(サルター(Sulter)ら、Arch.Microbiol.153:485〜489頁、1990年)。したがって本発明で用いられる炭素源は多種多様な炭素含有基質を包含してもよく、生物体の選択によってのみ制限されることが考察される。
【0093】
前述の全ての炭素基質およびそれらの混合物は、本発明で適切であることが考察されるが、好ましい炭素基質はグルコース、フルクトース、およびスクロースである。
【0094】
適切な炭素源に加えて、発酵培地は、適切な無機物、塩、補助因子、緩衝液、および培養物の生育と1−ブタノール生成に必要な酵素的経路の促進に適した、当業者に既知のその他の構成成分を含有しなくてはならない。
【0095】
培養条件
典型的に細胞は、約25℃〜約40℃の範囲の温度で適切な培地中で生育させる。本発明における適切な増殖培地は、ルリア・ベルターニ(LB)ブロス、サブローデキストロース(SD)ブロスまたは酵母培地(YM)ブロスなどの一般的で商業的に調製された培地である。その他の合成(defined)または合成(synthetic)増殖培地もまた使用してもよく、特定の微生物生育に適した培地は、微生物学または発酵科学当業者に知られている。例えば環式アデノシン2’:3’−一リン酸などの、異化産物抑制を直接または間接的に調節することが知られている作用物質の使用もまた、発酵培地中に組み込んでもよい。
【0096】
発酵に適したpH範囲はpH5.0〜pH9.0の間であり、pH6.0〜pH8.0が初期条件として好ましい。
【0097】
発酵は好気性または嫌気性条件下で実施してもよく、嫌気性または微好気条件が好ましい。
【0098】
発酵培地中に生成する1−ブタノールの量は、例えば高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)またはガスクロマトグラフィー(GC)などの当該技術分野で知られているいくつかの方法を使用して判定できる。
【0099】
工業的バッチおよび連続発酵
本方法はバッチ発酵法を用いる。古典的なバッチ発酵は閉鎖システムであり、そこでは培養液の組成が発酵の最初に設定され、発酵プロセス中に人為的変化を受けない。したがって発酵プロセス開始時に培養液に所望の生物体または生物体群を接種して、システムには何も添加せずに発酵を生じさせる。しかし典型的には「バッチ」発酵は、炭素源の添加に関してバッチであり、pHおよび酸素濃度などの因子の調節が試みられることが多い。バッチシステムでは、システムの代謝産物およびバイオマス組成は、発酵を停止させる時点まで常に変化する。バッチ培養内で細胞は、静的な遅滞期から高い対数増殖期へ、そして最後に成長率が減退または停止する静止期へ調節される。処置を施さない場合、静止期にある細胞はやがて死滅する。一般に対数期にある細胞が、最終生成物または中間体の生成の大部分を担う。
【0100】
標準バッチシステムのバリエーションが、流加バッチシステムである。流加バッチ発酵プロセスも本発明において適切であり、発酵の進行と共に基質がステップ的に添加されること以外は、典型的なバッチシステムを含んでなる。流加バッチシステムは、異化代謝産物抑制が細胞の代謝を阻害する傾向があって、培地中に限定量の基質を有することが望ましい場合に有用である。流加バッチシステム中の実際の基質濃度の測定は困難であるので、pH、溶存酸素、およびCOなどの排ガス分圧などの測定可能因子の変化に基づいて推定される。バッチおよび流加バッチ発酵は当該技術分野で一般的で周知であり、実例は参照によってここに援用するトマスD.ブロック(Thomas D.Brock)、バイオテクノロジー:工業微生物学テキスト(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)、第2版、Sinauer Associates,Inc.、Sunderland,MA.1989年、またはデシュパンデ,ムカンドV(Deshpande,Mukund V.)、Appl.Biochem.Biotechnol.、36:227頁、1992年、にある。
【0101】
本発明はバッチ様式で実施されるが、方法は連続発酵法に適応できることが考察される。連続発酵は開放系であり、合成発酵培地がバイオリアクターに連続的に添加されて、同時に処理のために当量の熟成培地が除去される。連続発酵は、一般に細胞が主として対数生育期にある一定の高密度に培養物を維持する。
【0102】
連続発酵は、細胞生育または最終産物濃度に影響する1つの要因またはいくつもの要因を調節できるようにする。例えば一方法は炭素源または窒素などの制限的栄養物質のレベルを定率に維持して、その他の全パラメーターを加減できるようにする。その他のシステムでは、培地濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、生育に影響するいくつかの要素を連続的に改変できる。連続システムは定常状態生育条件を維持することを目指すので、培地が抜き取られることによる細胞損失は、発酵中の細胞生育速度に対して均衡を保たなくてはならない。連続発酵法のために栄養素および成長因子を調節する方法、ならびに生成物形成速度を最大化する技術については工業微生物学の技術分野でよく知られており、多様な方法が前出のブロック(Brock)で詳述されている。
【0103】
バッチ、流加または連続法のいずれを使用して本発明を実施してもよく、あらゆる既知の発酵様式が適切であることが考察される。さらにホールセル触媒として基質上に細胞を固定化し、1−ブタノール生成のための発酵条件に置いてもよいことが考察される。
【0104】
発酵培地からの1−ブタノール単離法
生物生産された1−ブタノールは、当該技術分野で知られている方法を使用して、発酵培地から単離してもよい。例えば遠心分離、濾過、デカンテーションなどによって、固形物を発酵培地から除去してもよい。次に蒸留、液体−液体抽出、または膜ベースの分離などの方法を使用して、上述のように固形物を除去するように処理された発酵培地から1−ブタノールを単離してもよい。1−ブタノールは水と低沸点の共沸混合物を形成するので、蒸留は、混合物がその共沸性組成物になるまで分離するためにのみ使用できる。蒸留を別の分離方法と組み合わせて使用して、共沸混合物周辺での分離を得てもよい。1−ブタノールを単離し精製するために蒸留と組み合わせて使用してもよい方法としては、限定されるものではないが、デカンテーション、液体−液体抽出、吸着、および膜ベースの技術が挙げられる。さらに1−ブタノールは、共留剤を使用した共沸蒸留を使用して単離してもよい(例えばドハーティ(Doherty)およびマロン(Malone)、「蒸留システムの概念設計(Conceptual Design of Distillation Systems)」、McGraw Hill、New York、2001年、を参照されたい)。
【0105】
1−ブタノール−水混合物は不均一共沸混合物を形成するので、デカンテーションと組み合わせた蒸留を使用して、1−ブタノールを単離し精製してもよい。この方法では、1−ブタノール含有発酵ブロスを共沸組成物近くまで蒸留する。次に共沸性混合物を濃縮し、デカンテーションによって1−ブタノールを発酵培地から分離する。デカントされた水相を還流として第1の蒸留カラムに戻してもよい。第2の蒸留カラム中での蒸留によって、1−ブタノールに富む有機相をさらに精製してもよい。
【0106】
1−ブタノールはまた、蒸留と組み合わせた液体−液体抽出を使用して発酵培地から単離してもよい。この方法では、適切な溶剤での液体−液体抽出を使用して、1−ブタノールが発酵ブロスから抽出される。次に1−ブタノール含有有機相を蒸留して、1−ブタノールを溶剤から分離する。
【0107】
発酵培地から1−ブタノールを単離するために、吸着と組み合わせた蒸留もまた使用してよい。この方法では、1−ブタノール含有発酵ブロスを共沸組成物近くに蒸留し、次に分子ふるいなどの吸着材の使用によって残留水を除去する(アデン(Aden)ら、「トウモロコシまぐさのための並流希釈酸前加水分解および酵素的加水分解を使用したリグノセルロース生物由来資源からのエタノール加工設計および経済学(Lignocellulosic Biomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co−Current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzymatic Hydrolysis for Corn Stover)」、NREL報告/TP−510−32438、国立再生可能エネルギー研究所(National Renewable Energy Laboratory)、2002年6月)。
【0108】
さらに浸透気化法と組み合わせた蒸留を使用して、発酵培地から1−ブタノールを単離、精製してもよい。この方法では、1−ブタノール含有発酵ブロスを共沸性組成物近くまで蒸留し、次に親水性膜を通じた浸透気化法によって水を除去する(グオ(Guo)ら、J.Membr.Sci.245、199〜210頁、2004年)。
【実施例】
【0109】
続く実施例で本発明をさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施態様を示しながら、あくまで例示のために提供されるものとする。上の考察およびこれらの実施例から、当業者は本発明の必須の特徴を見極められ、その趣旨と範囲を逸脱することなく、様々な用途および条件に適合するように本発明の様々な変更および修正ができる。
【0110】
一般法
実施例で使用される標準リコンビナントDNAおよび分子クローニング技術は当該技術分野で良く知られており、サムブルック(Sambrook),J.、フリッチュ(Fritsch),E.F.、およびマニアティス(Maniatis),T.、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、1989年、(マニアティス(Maniatis));およびT.J.シルハビー(Silhavy)、M.L.ベンナン(Bennan)、およびL.W.エンクイスト(Enquist)、「遺伝子融合実験(Experiments with Gene Fusions)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor,N.Y.、1984年;およびオースベル(Ausubel),F.M.ら、「分子生物学現代プロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」、Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscienceによる出版、1987年、で述べられている。
【0111】
細菌培養の維持および生育に適した材料および方法は、当該技術分野で良く知られている。以下の実施例で使用するのに適した技術については、次で述べられる。フィリップ・ゲアハルト(Phillipp Gerhardt)、R.G.E.マレー(R.G.E.Murray)、ラルフN.コスティロウ(Ralph N.Costilow)、ユージーンW.ネスター(Eugene W.Nester)、ウィリスA.ウッド(Willis A.Wood)、ノエルR.クリーグ(Noel R.Krieg)、およびG.ブリッグス・フィリップス(G.Briggs Phillips)編、「一般微生物学方法マニュアル(Manual of Methods for General Bacteriology」、米国微生物学会、Washington,D.C.、1994年、またはトーマスD.ブロック(Thomas D.Brock)、「バイオテクノロジー:工業微生物学テキストブック(Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology)」、第2版、Sinauer Associates,Inc.:Sunderland,MA、1989年。細菌細胞の生育および維持のために使用される全ての試薬および材料は、特に断りのない限りウィスコンシン州ミルウォーキーのアルドリッチ・ケミカルズ(Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI))、メリーランド州スパークスのBDダイアグノスティックス・システムズ(BD Diagnostics Systems(Sparks,MD))、メリーランド州ロックビルのライフ・テクノロジーズ(Life Technologies(Rockville、MD))、またはミズーリ州セントルイスのシグマケミカル(Sigma Chemical Company(St.Louis,MO))から得た。
【0112】
以下の実施例においてクローニングのために使用されるオリゴヌクレオチドプライマーを表4に示す。クローニングされた遺伝子の配列決定またはスクリーニングのために使用されるプライマーを表5に示す。全てのオリゴヌクレオチドプライマーは、テキサス州ウッドランドのシグマ・ジェノシス(Sigma−Genosys(Woodlands,TX))によって合成された。
【0113】
【表8】

【0114】
【表9】

【0115】
【表10】

【0116】
【表11】

【0117】
【表12】

【0118】
【表13】

【0119】
【表14】

【0120】
【表15】

【0121】
【表16】

【0122】
【表17】

【0123】
【表18】

【0124】
培養液中の1−ブタノール濃度を判定する方法
培養液中の1−ブタノール濃度は、当該技術分野で知られているいくつかの方法によって判定できる。例えば特定の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)法では、どちらもマサチューセッツ州ミルフォードのウォーターズ、コーポレーション(Waters Corporation(Milford,MA))から購入される、ショウデックス(Shodex)SH−Gガードカラム付きショウデックス(Shodex)SH−1011カラムと共に、屈折率(RI)検出を利用した。クロマトグラフィーの分離は、流速0.5mL/分の移動相として0.01MHSOを使用してカラム温度50℃で達成した。1−ブタノールは使用した条件下で52.8分間の滞留時間を有した。あるいは、ガスクロマトグラフィー(GC)方法が利用できる。例えば特定のGC法では、デラウェア州ウィルミントンのアジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies(Wilmington,DE))からのHP−イノワックス(INNOWax)カラム(内径30m×0.53mm、フィルム厚1μm)と共に水素炎イオン化検出器(FID)を利用した。キャリアガスは、一定の上部圧力下、150℃における測定で流速4.5mL/分のヘリウムであり、注入器スプリットは200℃で1:25であり、オーブン温度は45℃で1分間、10℃/分で45から220℃、および220℃で5分間であり、FID検出を26mL/分のヘリウム補給ガスと共に240℃で用いた。1−ブタノールの滞留時間は5.4分間であった。カリフォルニア州パロアルトのバリアン・インコーポレーテッド(Varian,Inc.(Palo Alto,CA)からのバリアン(Varian)CP−WAX58(FFAP)CBカラム(内径25m×0.25mm×フィルム厚0.2μm)を使用した同様のGC法もまた使用した。
【0125】
略語の意味は次のとおり。「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「psi」は平方インチあたりポンドを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「d」は日を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「μmole」はマイクロモルを意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「PCR」はポリメラーゼ連鎖反応を意味し、「OD」は光学濃度を意味し、「OD600」は波長600nmで測定される光学濃度を意味し、「OD550」は、波長550nmで測定される光学濃度を意味し、「kDa」はキロダルトンを意味し、「g」は、重力定数を意味し、「rpm」は毎分回転数を意味し、「bp」は塩基対を意味し、「kbp」はキロ塩基対を意味し、「%w/v」は重量/容積%を意味し、「%v/v」は容積/容積%を意味し、「HPLC」は高性能液体クロマトグラフィーを意味し、「GC」はガスクロマトグラフィーを意味する。
【0126】
実施例1
アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼのクローニングおよび発現
本実施例の目的は、ここでアセトアセチル−CoAチオラーゼとも称される酵素アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼを大腸菌(E.coli)中で発現することであった。C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)からアセトアセチル−CoAチオラーゼ遺伝子thlAをクローニングして、大腸菌(E.coli)中で発現した。thlA遺伝子は、PCRを使用してC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAから増幅され、1.2kbpの生成物中で得られた。
【0127】
クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(ATCC 824)からのゲノムDNAは、バージニア州マナッサスの米国微生物系統保存機関(ATCC)から購入され、あるいは下で述べられるようにクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(ATCC 824)培養物から単離された。
【0128】
クロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(ATCC 824)からのゲノムDNAは、嫌気的に生育させた培養物から調製された。クロストリジウム(Clostridium)株は、30℃の嫌気性チャンバー内で、ニュージャージー州バインランドのベルコ・ガラス・インコーポレーテッド(Bellco Glass Inc.(Vineland,NJ))からの栓をして圧着した100mLベルコ(Bellco)血清ボトル内の10mLのクロストリジウム属増殖培地(ロペズ−コントレラス(Lopez−Contreras)ら、Appl.Env.Microbiol.69(2)、869〜877頁、2003年)中で生育させた。接種材料はニューヨーク州ニューヨークの三菱ガス化学アメリカ・インコーポレーテッド(Mitsubishi Gas Chemical America Inc.(New York,NY))からの2.5L MGCアナエロパック(AnaeroPak)(商標)内で37℃で生育させた2×YTGプレートからの単一コロニーであった(キシイ(Kishii)ら、Antimicrobial Agents & Chemotherapy、47(1)、77〜81頁、2003年。
【0129】
製造業者の使用説明書に修正を加えて、ミネソタ州ミネアポリスのジェントラシステムズ・インコーポレーテッド(Gentra Systems Inc.(Minneapolis,MN))からのジェントラ・ピュアジーン(Gentra Puregene)(登録商標)キット(カタログ番号D−6000A)を使用して、ゲノムDNAを調製した(ウォン(Wong)ら、Current Microbiology、32、349〜356頁、1996年)。それぞれ配列番号21および22で示されるプライマーN7およびN8(表4参照)を使用して、PCRによりクロストリジウム・アセトブチリカム(Clostridium acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからthlA遺伝子を増幅した。その他のPCR増幅試薬は、例えばウィスコンシン州マディソンのノバジェン・インコーポレーテッド(Novagen Inc.(Madison,WI))からのKod HiFi DNAポリメラーゼ(カタログ番号71805−3)などの製造業者のキット内で提供され、製造業者のプロトコルに従って使用した。カリフォルニア州フォスター・シティのPEアプライド・バイオシステムズ(PE Applied Biosystems(Foster city,CA))からのDNAサーモサイクラーGeneAmp 9700内で増幅を実施した。
【0130】
発現研究のために、カリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA))からのゲートウェイ(Gateway)クローニング技術を使用した。エントリーベクターpENTR/SD/D−TOPOは定方向性クローニングを可能にし、対象とする遺伝子のためのシャイン・ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列を提供した。目的ベクターpDEST14は、タグのない遺伝子の発現のためにT7プロモーターを使用した。順方向プライマーには翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CACC)が組み込まれてインビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPOthlAを発生させた。製造業者の推奨に従ってpENTRコンストラクトをインビトロジェン(Invitrogen)からの大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換して播種した。形質転換体を一晩生育させ、製造業者の推奨に従ってカリフォルニア州バレンシアのキアゲン(Qiagen(Valencia,CA))からのキアプレップ(QIAprep)スピン・ミニプレップキット(カタログ番号27106)を使用して、プラスミドDNAを調製した。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマー(表5参照)によってクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認して配列を確認した。PCR生成物を完全に配列決定するために、それぞれ配列番号47および48で示される追加的配列決定プライマーN7SeqF1およびN7SeqR1(表5参照)が必要であった。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列、および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1および配列番号2で示される。
【0131】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってthlA遺伝子をpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14thlAを発生させた。pDEST14thlAベクターをBL21−AI細胞に形質転換した。形質転換体を50μg/mLのアンピシリンで栄養強化されたLB培地に接種して一晩生育させた。一晩培養物のアリコートを使用して、50μg/mLのアンピシリンで栄養強化された50mLのLBに接種した。培養物を振盪しながら、37℃でOD600が0.6〜0.8に達するまでインキュベートした。培養物を2つの25mL培養物に分割し、フラスコの1つにアラビノースを添加して最終濃度を0.2重量%にした。負の対照フラスコはアラビノースで誘導しなかった。フラスコを振盪しながら37℃で4時間インキュベートした。細胞を遠心分離によって収集し、細胞ペレットを50mMのMOPS緩衝液(pH7.0)中に再懸濁した。細胞を超音波処理によって、またはフレンチ・プレッシャー・セル(French Pressure Cell)を通過させることで破壊した。ホールセル溶解産物を遠心分離すると、上清または無細胞抽出物およびペレットまたは不溶性の画分が生じた。各画分のアリコート(ホールセル溶解産物、無細胞抽出物および不溶性画分)をインビトロジェン(Invitrogen)からのSDS(MES)ローディング緩衝液中に再懸濁し、85℃で10分間加熱してSDS−PAGE分析(インビトロジェン(Invitrogen)からのニューページ(NuPAGE)4−12%ビス−トリスゲル、カタログ番号NP0322Box)を行った。核酸配列から推定されたような約41kDaの予想された分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在したが、非誘導対照中には存在しなかった。
【0132】
無細胞抽出物中のアセトアセチル−CoAチオラーゼ活性は、303nmにおける吸光度の減少をモニタリングすることで、Mg2+−アセトアセチル−CoA複合体の分解として測定された。標準アッセイ条件は、100mMのトリス−HCl pH8.0、1mMのDTT(ジチオスレイトール)、および10mMのMgClであった。37℃で5分間カクテルを平衡化し、次に無細胞抽出物を添加した。0.05mMのアセトアセチル−CoAと0.2mMのCoAの添加によって反応を開始した。ブラッドフォード法またはシグマ(Sigma)からのビシンコニン酸キット(カタログ番号BCA−1)のどちらかによってタンパク質濃度を測定した。どちらの場合にもカリフォルニア州ハーキュリーズのバイオラッド(Bio−Rad(Hercules,CA))からのウシ血清アルブミンを標準として使用した。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のThlAタンパク質の比活性は、非誘導培養物の0.27μmol mg−1−1と比べて、16.0μmol mg−1−1と判定された。
【0133】
実施例2
アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼのクローニングおよび発現
本実施例の目的は、ここでアセトアセチル−CoAチオラーゼ酵素とも称されるアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼを大腸菌(E.coli)中で発現することであった。アセトアセチル−CoAチオラーゼ遺伝子thlBをC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)からクローニングし、大腸菌(E.coli)中で発現した。PCRを使用して、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからthlB遺伝子を増幅した。
【0134】
実施例1で述べられるthlA遺伝子と同一様式で、thlB遺伝子をクローニングして発現した。それぞれ配列番号27および28で示されるプライマーN15およびN16を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAを増幅して1.2kbpの生成物を作成した。順方向プライマーには翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CCAC)が組み込まれて、インビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPOthlBを発生させた。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマーでクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認し、配列を確認した。PCR生成物を完全に配列決定するために、それぞれ配列番号49および50で示される追加的配列決定プライマーN15SeqF1およびN16SeqR1(表5参照)が必要であった。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号3および配列番号4で示される。
【0135】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってthlB遺伝子をインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14thlBを発生させた。pDEST14thlBベクターをBL21−AI細胞に形質転換し、アラビノースの添加によってT7プロモーターからの発現を誘導した。核酸配列から推定されたような約42kDaの予想された分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在したが、非誘導対照中には存在しなかった。実施例1で述べられるようにして酵素アッセイを実施した。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のThlBタンパク質の比活性は、非誘導培養物の0.28μmol mg−1−1と比べて、14.9μmol mg−1−1と判定された。
【0136】
実施例3
3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼのクローニングおよび発現
本実施例の目的は、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)からのhbd遺伝子をクローンして、大腸菌(E.coli)中で発現することであった。PCRを使用して、hbd遺伝子をC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAから増幅した。
【0137】
実施例1で述べられる方法を使用して、hbd遺伝子をクローニングして発現した。それぞれ配列番号19および20で示されるプライマーN5およびN6(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからhbd遺伝子を増幅して881bpの生成物を生成した。順方向プライマーには翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CACC)が組み込まれて、インビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPOhbdを発生させた。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマーでクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認し、配列を確認した。PCR生成物を完全に配列決定するために、それぞれ配列番号51および52で示される追加的配列決定プライマーN5SeqF2およびN6SeqR2(表5参照)が必要であった。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号5および配列番号6で示される。
【0138】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってhbd遺伝子をインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14hbdを発生させた。pDEST14hbdベクターをBL21−AI細胞に形質転換し、実施例1で述べられるようにしてアラビノースの添加によってT7プロモーターからの発現を誘導した。核酸配列から推定されたような約31kDaの予想された分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在したが、非誘導対照中には存在しなかった。
【0139】
340nmにおける吸光度の減少により測定されるNADHの酸化速度を測定して、ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ活性を判定した。標準アッセイ混合物は、50mM MOPS、pH7.0、1mM DTT、および0.2mM NADHを含有した。カクテルを37℃で5分間平衡化し、次に無細胞抽出物を添加した。基質である0.1mMアセトアセチル−CoAの添加により反応を開始した。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のBHBDタンパク質の比活性は、非誘導培養物の0.885μmol mg−1−1と比べて、57.4μmol mg−1−1と判定された。
【0140】
実施例4
クロトナーゼのクローニングおよび発現
本実施例の目的は、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)からのcrt遺伝子をクローニングし、大腸菌(E.coli)中で発現するすることであった。PCRを使用して、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからcrt遺伝子を増幅した。
【0141】
実施例1で述べられる方法を使用して、crt遺伝子をクローニングして発現した。それぞれ配列番号17および18で示されるプライマーN3およびN4(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからcrt遺伝子を増幅して794bpの生成物を生成した。順方向プライマーには翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CACC)が組み込まれて、インビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPOcrtを発生させた。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマーでクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認し、配列を確認した。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号7および配列番号8で示される。
【0142】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってcrt遺伝子をインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14crtを発生させた。pDEST14crtベクターをBL21−AI細胞に形質転換し、実施例1で述べられるようにしてアラビノースの添加によってT7プロモーターからの発現を誘導した。核酸配列から推定されたような約28kDaの予想された分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在し、その量は非誘導対照よりもはるかに多かった。
【0143】
スターン(Stern)、Methods Enzymol.1、559〜566頁、1954年、で述べられるようにして、クロトナーゼ活性をアッセイした。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のクロトナーゼタンパク質の比活性は、非誘導培養物中の47μmol mg−1−1と比べて444μmol mg−1−1と判定された。
【0144】
実施例5
ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼのクローニングおよび発現
本実施例の目的は、ここでトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼとも称される酵素ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼを大腸菌(E.coli)中で発現することであった。推定上のトランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ相同体であるCAC0462遺伝子をC.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)からクローニングし、大腸菌(E.coli)中で発現した。PCRを使用して、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからCAC0462遺伝子を増幅した。
【0145】
実施例1で述べられる方法を使用して、CAC0462遺伝子をクローニングして発現した。それぞれ配列番号29および30で示されるプライマーN17およびN21(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからCAC0462遺伝子を増幅して1.3kbpの生成物を生成した。順方向プライマーには翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CACC)が組み込まれ、インビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPOCAC0462を発生させた。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマーでクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認し、配列を確認した。PCR生成物を完全に配列決定するために、追加的配列決定プライマーN22SeqF1(配列番号53)、N22SeqF2(配列番号54)、N22SeqF3(配列番号55)、N23SeqR1(配列番号56)、N23SeqR2(配列番号57)、およびN23SeqR3(配列番号58)(表5参照)が必要であった。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号9および配列番号10で示される。
【0146】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってCAC0462遺伝子をインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14CAC0462を発生させた。pDEST14CA0462ベクターをBL21−AI細胞に形質転換し、実施例1で述べられるようにしてアラビノースの添加によってT7プロモーターからの発現を誘導した。SDS−PAGEによる分析は、負の対照または誘導培養物中に予想された分子量の過剰発現されたタンパク質を示さなかった。C.アセトブチリカム(acetobutylicum)CAC0462遺伝子は、多くの稀な大腸菌(E.coli)コドンを使用した。コドン使用頻度の問題を回避するために、pDEST14CAC0462ベクターを保有するBL21−AI細胞に、ノバジェン(Novagen)からのpRAREプラスミドを形質転換した。pRAREベクターを保有する培養物でアラビノース誘導による発現研究を繰り返した。予想された約46kDaの分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在したが、非誘導対照中には存在しなかった。
【0147】
ホフマイスター(Hoffmeister)ら、J.Biol.Chem.280、4329〜4338頁、2005年、で述べられるようにして、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ活性をアッセイした。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のTER CAC0462タンパク質の比活性は、非誘導培養物の0.0128μmol mg−1−1と比べて0.694μmol mg−1−1と判定された。
【0148】
実施例6
ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(アセチル化)のクローニングおよび発現
本実施例の目的は、C.ベイジリンキ(beijerinckii)(ATCC 35702)からのald遺伝子をクローニングし、大腸菌(E.coli)中で発現することであった。PCRを使用して、ald遺伝子をC.ベイジリンキ(beijerinckii)(ATCC 35702)ゲノムDNAから増幅した。
【0149】
実施例1で述べられる方法を使用して、ald遺伝子をクローニングして発現した。それぞれ配列番号31および32で示されるプライマーN27 F1およびN28 R1(表4参照)を使用したPCRによって、C.ベイジリンキ(beijerinckii)(ATCC 35702)ゲノムDNA(実施例1で述べられるように嫌気的に生育させた培養物から調製される)からald遺伝子を増幅して1.6kbpの生成物を生成した。順方向プライマーには翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CACC)が組み込まれ、インビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPOaldを発生させた。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマーでクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認し、配列を確認した。PCR生成物を完全に配列決定するために、追加的配列決定プライマーN31SeqF2(配列番号59)、N31SeqF3(配列番号60)、N31SeqF4(配列番号61)、N32SeqR1(配列番号72)、N31SeqR2(配列番号62)、N31SeqR3(配列番号63)、N31SeqR4(配列番号64)、およびN31SeqR5(配列番号65)(表5参照)が必要であった。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号11および配列番号12で示される。
【0150】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってald遺伝子をインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14aldを発生させた。pDEST14aldベクターをBL21−AI細胞に形質転換し、実施例1で述べられるようにしてアラビノースの添加によって、T7プロモーターからの発現を誘導した。核酸配列から推定されたような約51kDaの予想された分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在したが、非誘導対照中には存在しなかった。
【0151】
フーゼマン(Husemann)ら、Appl.Microbiol.Biotechnol.31:435〜444頁、1989年、で述べられるように、340nmにおける吸光度の増大によって測定されるNADHの形成をモニタリングして、アシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を判定した。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のAldタンパク質の比活性は、非誘導培養物中の0.01μmol mg−1−1と比べて、0.106μmol mg−1−1と判定された。
【0152】
実施例7
ブタノールデヒドロゲナーゼのクローニングおよび発現
本実施例の目的は、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)からのbdhB遺伝子をクローニングして、大腸菌(E.coli)中で発現することであった。PCRを使用して、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからbdhB遺伝子を増幅した。
【0153】
実施例1で述べられる方法を使用して、bdhB遺伝子をクローニングして発現した。それぞれ配列番号25および26で示されるプライマーN11およびN12(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからbdhB遺伝子を増幅して1.2kbpの生成物を生成した。順方向プライマーには、翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CACC)が組み込まれ、インビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPObdhBを発生させた。翻訳開始コドンもまた、プライマー配列によって「GTG」から「ATG」に変更された。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマーでクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認し、配列を確認した。PCR生成物を完全に配列決定するために、追加的配列決定プライマーN11SeqF1(配列番号66)、N11SeqF2(配列番号67)、N12SeqR1(配列番号68)、およびN12SeqR2(配列番号69)(表5参照)が必要であった。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号13および配列番号14で示される。
【0154】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってbdhB遺伝子をインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14bdhBを発生させた。pDEST14bdhBベクターをBL21−AI細胞に形質転換し、実施例1で述べられるようにしてアラビノースの添加によってT7プロモーターからの発現を誘導した。核酸配列から推定されたような約43kDaの予想された分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在したが、非誘導対照中には存在しなかった。
【0155】
フーゼマン(Husemann)およびパポウトサキス(Papoutsakis)(前出)で述べられるように、340nmにおける吸光度の減少によって測定されるNADHの酸化速度から、ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を判定した。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のBdhBタンパク質の比活性は、非誘導培養物中の0.022μmol mg−1−1と比べて、0.169μmol mg−1−1と判定された。
【0156】
実施例8
ブタノールデヒドロゲナーゼのクローニングおよび発現
本実施例の目的は、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)824からのbdhA遺伝子をクローニングして大腸菌(E.coli)中で発現することであった。PCRを使用して、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)824ゲノムDNAからbdhA遺伝子を増幅した。
【0157】
実施例1で述べられる方法を使用して、bdhA遺伝子をクローニングして発現した。それぞれ配列番号23および24で示されるプライマーN9およびN10(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)824ゲノムDNAからbdhA遺伝子を増幅して1.2kbpの生成物を生成した。順方向プライマーには、翻訳開始コドンに隣接する4つの塩基(CACC)が組み込まれ、インビトロジェン(Invitrogen)からのpENTR/SD/D−TOPO中への定方向性クローニングを可能にし、プラスミドpENTRSDD−TOPObdhAを発生させた。それぞれ配列番号45および46で示されるM13フォワードおよびリバースプライマーでクローンを配列決定し、遺伝子が正しい方向に挿入されたことを確認し、配列を確認した。PCR生成物を完全に配列決定するために、追加的配列決定プライマーN9SeqF1(配列番号70)およびN10SeqR1(配列番号71)(表5参照)が必要であった。この遺伝子の読み取り枠(ORF)のヌクレオチド配列および酵素の予測されたアミノ酸配列は、それぞれ配列番号15および配列番号16で示される。
【0158】
発現クローンを作り出すために、遺伝子組み換えによってbdhA遺伝子をインビトロジェン(Invitrogen)からのpDEST14ベクター中に転移して、pDEST14bdhAを発生させた。pDEST14bdhAベクターをBL21−AI細胞に形質転換し、実施例1で述べられるようにしてアラビノースの添加によってT7プロモーターからの発現を誘導した。核酸配列から推定されたような約43kDaの予想された分子量のタンパク質が誘導培養物中に存在したが、非誘導対照中には存在しなかった。
【0159】
フーゼマン(Husemann)およびパポウトサキス(Papoutsakis)(前出)で述べられるように、340nmにおける吸光度の減少によって測定されるNADHの酸化速度から、ブタノールデヒドロゲナーゼ活性を判定した。典型的な一アッセイでは、誘導培養物中のBdhAタンパク質の比活性は、非誘導培養物中の0.028μmol mg−1−1と比べて、0.102μmol mg−1−1と判定された。
【0160】
実施例9
1−ブタノール生合成経路(下流経路)中の遺伝子のための形質転換ベクターの構築
1−ブタノール生合成経路中の6ステップをコードする遺伝子を含んでなる形質転換ベクターを構築するために、経路中の6ステップをコードする遺伝子を2つのオペロンに分割した。上流経路は、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、クロトナーゼ、およびブチリル−CoAデヒドロゲナーゼによって触媒される最初の4ステップを含んでなる。下流経路は、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびブタノールデヒドロゲナーゼによって触媒される最後の2ステップを含んでなる。
【0161】
本実施例の目的は、下流経路オペロンを構築することであった。上流経路オペロンの構築については実施例10で述べる。
【0162】
後のクローニングのための制限部位を組み込んだプライマー、および最適化された大腸菌(E.coli)リボソーム結合部位(AAAGGAGG)を含有する順方向プライマーを用いたPCRによって、個々の遺伝子を増幅した。PCR産物をpCR 4Blunt−TOPOベクター中にTOPOクローニングして、インビトロジェン(Invitrogen)からの大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換した。TOPOクローンからプラスミドDNAを調製して、遺伝子配列を確認した。マサチューセッツ州ベヴァリーのニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs(Beverly,MA))の制限酵素およびT4DNAリガーゼを製造業者の推奨に従って使用した。クローニング実験のために、キアゲン(Qiagen)からのキアクイック(QIAquick)ゲル抽出キットを使用したゲル電気泳動法によって、制限酵素断片を精製した。
【0163】
配列確認後、クローニングプラットフォームとして改変pUC19ベクター中に、遺伝子をサブクローニングした。pUC19ベクターをHindIII/SapI消化によって改変し、pUC19dHSを作り出した。消化によってMCS(複数クローニング部位)に隣接するlacプロモーターが除去され、ベクター中へのオペロンの転写が防止された。
【0164】
それぞれ配列番号41および42で示されるプライマーN58およびN59(表4参照)を使用したPCRによって、C.ベイジリンキ(beijerinckii)ATCC 35702ゲノムDNAからald遺伝子を増幅し、1.5kbpの生成物を作り出した。順方向プライマーには制限部位AvaIおよびBstEIIおよびRBS(リボソーム結合部位)が組み込まれた。逆方向プライマーにはHpaI制限部位が組み込まれた。PCR産物をpCRBlunt II−TOPOにクローニングし、pCRBluntII−aldを作り出した。TOPOクローンからプラスミドDNAを調製し、プライマーM13フォワード(配列番号45)、M13リバース(配列番号46)、N31SeqF2(配列番号59)、N31SeqF3(配列番号60)、N31SeqF4(配列番号61)、N32SeqR1(配列番号72)、N31SeqR2(配列番号62)、N31SeqR3(配列番号63)、N31SeqR4(配列番号64)、およびN31SeqR5(配列番号65)(表5参照)で遺伝子配列を確認した。
【0165】
それぞれ配列番号43および44で示されるプライマーN64およびN65(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからbdhB遺伝子を増幅し、1.2kbpの生成物を作り出した。順方向プライマーにはHpaI制限部位およびRBSが組み込まれた。逆方向プライマーにはPmeIおよびSphI制限部位が組み込まれた。PCR産物をpCRBluntII−TOPOにクローニングして、pCRBluntII−bdhBを作り出した。TOPOクローンからプラスミドDNAを調製し、プライマーM13フォワード(配列番号45)、M13リバース(配列番号46)、N11SeqF1(配列番号66)、N11SeqF2(配列番号67)、N12SeqR1(配列番号68)、およびN12SeqR2(配列番号69)(表5参照)で遺伝子配列を確認した。
【0166】
下流経路オペロンを構築するために、pCRBluntII−bdhBからの1.2kbpのSphIおよびHpaI断片、pCRBluntII−aldからの1.4kbpのHpaIおよびSphI断片、およびAvaIおよびSphI消化されたpUC19dHSからの大型断片を共にライゲートした。三元ライゲーションによって、pUC19dHS−ald−bdhBが作り出された。
【0167】
pUC19dHS−ald−bdhBベクターをBstEIIおよびPmeIで消化して2.6kbpの断片を放出し、それを大腸菌(E.coli)−枯草菌(Bacillus subtilis)シャトルベクターであるpBenBP中にクローニングした。pBE93ベクターの改変によって、ナガラージャン(Nagarajan)の国際公開第93/24631号パンフレット(実施例4)で述べられるプラスミドpBenBPを作り出した。NcoI/HindIII消化によって、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)中性プロテアーゼプロモーター(NPR)、シグナル配列、およびphoA遺伝子をpBE93から除去した。それぞれ配列番号73および75で示されるプライマーBenFおよびBenBPRによって、pBE93からNPRプロモーターをPCR増幅した。プライマーBenBPRには、プロモーター下流のBstEII、PmeI、およびHindIII部位が組み込まれた。PCR産物をNcoIおよびHindIIIで消化し、断片をベクターpBE93の対応する部位にクローニングしてpBenBPを作り出した。下流オペロン断片をpBenBP中のBstEIIおよびPmeI部位にサブクローニングして、pBen−ald−bdhBを作り出した。
【0168】
上述の方法を使用して、粗製抽出物について、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼおよびブタノールデヒドロゲナーゼ活性のためのアッセイを行った。空のベクターを含有する対照株を超えるレベルで、双方の酵素活性が実証された。
【0169】
実施例10(予測的)
1−ブタノール生合成経路(上流経路)中の遺伝子のための形質転換ベクターの構築
この予測的実施例の目的は、どのように上流経路オペロンをアセンブルするかを述べることである。一般アプローチは実施例9で述べられるのと同じである。
【0170】
それぞれ配列番号33および34で示されるプライマー対N44およびN45(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからthlA遺伝子を増幅して、1.2kbpの生成物を作り出す。順方向プライマーにはSphI制限部位およびリボソーム結合部位(RBS)が組み込まれる。逆方向プライマーにはAscIおよびPstI制限部位が組み込まれる。PCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングして、pCR4Blunt−TOPO−thlAを作り出す。プラスミドDNAをTOPOクローンから調製して、遺伝配列子をプライマーM13フォワード(配列番号45)、M13リバース(配列番号46)、N7SeqF1(配列番号47)、およびN7SeqR1(配列番号48)(表5参照)で確認する。
【0171】
それぞれ配列番号35および36で示されるプライマー対N42およびN43(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからhbd遺伝子を増幅し、0.9kbpの生成物を作り出す。順方向プライマーにはSalI制限部位およびRBSが組み込まれる。逆方向プライマーにはSphI制限部位が組み込まれる。PCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングして、pCR4Blunt−TOPO−hbdを作り出す。TOPOクローンからプラスミドDNAを調製し、遺伝子配列をプライマーM13フォワード(配列番号45)、M13リバース(配列番号46)、N5SeqF2(配列番号51)、およびN6SeqR2(配列番号52)(表5参照)で確認する。
【0172】
一次宿主として大腸菌(E.coli)、二次宿主として枯草菌(B.subtilis)中での発現のために、CAC0462遺伝子をコドン最適化する。配列番号76で示される新しい遺伝子はCaTERと称され、ニュージャージー州ピスカタウェイのジェンスクリプト・コーポレーション(Genscript Corp.(Piscataway,NJ))によって合成される。遺伝子CaTERは、BamHI−SalI断片としてpUC57ベクター中でクローニングされ、RBSを含み、プラスミドpUC57−CaTERを生成する。
【0173】
それぞれ配列番号39および40で示されるプライマー対N38およびN39(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからcrt遺伝子を増幅し、834bp生成物を作り出す。順方向プライマーにはEcoRIおよびMluI制限部位およびRBSが組み込まれる。逆方向プライマーにはBamHI制限部位が組み込まれる。PCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングして、pCR4Blunt−TOPO−crtを作り出す。TOPOクローンからプラスミドDNAを調製し、遺伝子配列をプライマーM13フォワード(配列番号45)およびM13リバース(配列番号46)(表5参照)で確認する。
【0174】
配列確認後、クローニングプラットフォームとして改変pUC19ベクター中に遺伝子をサブクローニングする。SphI/SapI消化によってpUC19ベクターを改変し、pUC19dSSを作り出す。消化によって、MCSに隣接するlacプロモーターを除去し、ベクター中へのオペロン転写を防止する。
【0175】
上流経路オペロンを構築するために、pCR4Blunt−TOPO−crtをEcoRIおよびBamHIで消化して、0.8kbpのcrt断片を放出する。pUC19dSSベクターもまたEcoRIおよびBamHIで消化して、2.0kbpベクター断片を放出する。ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)からのT4DNAリガーゼを使用して、crt断片およびベクター断片を共にライゲートしてpUC19dSS−crtを形成する。pUC57−CaTERをBamHIおよびSalIで消化して、1.2kbpのCaTER断片を放出し、CaTER遺伝子をpCU19dSS−crt中に挿入する。pUC19dSS−crtをBamHIおよびSalIで消化し、大型ベクター断片をCaTER断片とライゲートしてpUC19dSS−crt−CaTERを作り出す。オペロンを完成させるために、pCR4Blunt−TOPO−hbdからの884bpのSalIおよびSphI断片、pCR4Blunt−TOPO−thlAからの1.2kbのSphIおよびPstIthlA断片、およびpUC19dSS−crt−CaTERのSalIおよびPstI消化からの大型断片をライゲートする。三元ライゲーションの生成物は、pUC19dSS−crt−CaTER−hbd−thlAである。
【0176】
pUC19dSS−crt−CaTER−hbd−thlAベクターをMluIおよびAscIで消化して4.1kbpの断片を放出し、それをpBenMAと称される大腸菌(E.coli)−枯草菌(B.subtilis)シャトルベクターであるpBE93の誘導体中にクローニングする(カイミ(Caimi)の国際公開第2004/018645号パンフレット、39〜40頁)。pBE93ベクターの改変によって、プラスミドpBenMAを作り出した。NcoI/HindIII消化によって、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)中性プロテアーゼプロモーター(NPR)、シグナル配列およびphoA遺伝子をpBE93から除去する。それぞれ配列番号73および74で示されるプライマーBenFおよびBenMARによって、pBE93からNPRプロモーターをPCR増幅する。プライマーBenMARには、プロモーター下流のMluI、AscI、およびHindIII部位が組み込まれる。PCR産物をNcoIおよびHindIIIで消化し、断片をベクターpBE93中の対応する部位にクローニングしてpBenMAを作り出す。上流オペロン断片をpBenMA中のMluIおよびAscI部位にサブクローニングして、pBen−crt−hbd−CaTER−thlAを作り出す。
【0177】
実施例11(予測的)
大腸菌(E.coli)中での1−ブタノール生合成経路の発現
この予測的実施例の目的は、大腸菌(E.coli)中でどのように1−ブタノール生合成経路を発現するかについて述べることである。
【0178】
それぞれ実施例10および9で述べられるようにして構築されるプラスミドpBen−crt−hbd−CaTER−thlAおよびpBen−ald−bdhBを大腸菌(E.coli)NM522(ATCC 47000)に形質転換して、SDS−PAGE分析、酵素アッセイおよびウェスタン分析によって各オペロン中の遺伝子発現をモニターする。ウェスタン法では、テキサス州ザ・ウッドランズのシグマジェノシス(Sigma−Genosys(The Woodlands,TX))からの合成ペプチドに対する抗体を生じさせる。全遺伝子の発現確認後、pBen−ald−bdhBをEcoRIおよびPmeIで消化して、NPRプロモーター−ald−bdhB断片を放出させる。断片のEcoRI消化物は、ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)からのDNAポリメラーゼ(カタログ番号M0210S)のクレノウ(Klenow)断片を使用して平滑末端化する。プラスミドpBen−crt−hbd−CaTER−thlAをPvuIIで消化して、直線化された平滑末端化ベクター断片を作り出す。ベクターおよびNPR−ald−bdhB断片をライゲートして、向きが反対であるNPRプロモーター−ald−bdhB断片と共に、完全な1−ブタノール生合成経路を含有するp1B1 O.1およびp1B1 O.2を作り出す。プラスミドp1B1 O.1およびp1B1 O.2を大腸菌(E.coli)NM522に形質転換し、前述のようにして遺伝子発現をモニターする。
【0179】
50mLの培地を含有する250mL振盪フラスコに、大腸菌(E.coli)NM522/p1B1 O.1またはNM522/p1B1 O.1株を接種し、250rpmおよび35℃で振盪する。培地は、5g/Lのデキストロース、0.05MのMOPS、0.01Mの硫酸アンモニウム、0.005Mのリン酸二水素カリウム、1%(v/v)のS10金属ミックス、0.1%(w/v)の酵母抽出物、0.1%(w/v)のカザミノ酸、0.1mg/Lのチアミン、0.05mg/Lのプロリン、および0.002mg/Lのビオチンから構成され、KOHでpH7.0に滴定する。S10金属ミックスは200mMのMgCl、70mMのCaCl、5mMのMnCl、0.1mMのFeCl、0.1mMのZnCl、0.2mMの塩酸チアミン、172μMのCuSO、253μMのCoCl、および242μMのNaMoOを含有する。18〜24時間後に一般法セクションで述べるようにして、HPLCまたはGC分析によって1−ブタノールを検出する。
【0180】
実施例12(予測的)
枯草菌(Bacillus subtilis)中での1−ブタノール生合成経路の発現
この予測的実施例の目的は、枯草菌(Bacillus subtilis)中でどのように1−ブタノール生合成経路を発現するかについて述べることである。実施例11で述べられるのと同一アプローチを使用する。
【0181】
それぞれ実施例10および9で述べられるようにして構築される上流および下流オペロンを使用する。プラスミドp1B1 O.1およびp1B1 O.2を枯草菌(Bacillus subtilis)BE1010(J.Bacteriol.173:2278−2282(1991))に形質転換し、各オペロンの遺伝子発現を実施例11で述べるようにモニターする。
【0182】
50mLの培地を含有する250mL振盪フラスコに、枯草菌(B.subtilis)BE1010/p1B1 O.1またはBE1010/p1B1 O.2株を接種し、250rpmおよび35℃で18時間振盪する。培地は、5g/Lのデキストロース、0.05MのMOPS、0.02Mのグルタミン酸、0.01Mの硫酸アンモニウム、0.005Mのリン酸二水素カリウム緩衝液、1%(v/v)のS10金属ミックス(実施例11で述べられる)、0.1%(w/v)の酵母抽出物、0.1%(w/v)のカザミノ酸、50mg/Lのトリプトファン、50mg/Lのメチオニン、および50mg/Lのリジンから構成され、KOHでpH7.0に滴定する。18〜24時間後に一般法セクションで述べるようにして、HPLCまたはGC分析によって1−ブタノールを検出する。
【0183】
実施例13
組み換え大腸菌(E.coli)を使用したグルコースからの1−ブタノール生成
この実施例は、大腸菌(E.coli)中での1−ブタノール生成について述べる。1−ブタノール生合成経路の6つのステップをコードする遺伝子の発現を3つのオペロンに分割した。上流経路は、1つのオペロン中のthlA、hbd、crt、およびEgTERによってコードされる最初の4つのステップを含んでなった。aldによってコードされる次のステップは、第2のオペロンにより提供された。yqhDによってコードされる経路の最後のステップは、第3のオペロン中で提供された。3つのオペロンを含んでなる大腸菌(E.coli)株中で、1−ブタノール生成を実証した。
【0184】
テキスト中特に断りのない限り、本実施例で述べられるクローニングプライマーは、表4中のそれらの配列番号によって参照され、配列決定およびPCRスクリーニングプライマーは、表5中のそれらの配列番号によって参照される。
【0185】
アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ
それぞれ配列番号33および34で示されるプライマー対N44およびN45(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからthlA遺伝子を増幅し、1.2kbpの生成物を作り出す。順方向プライマーにはSphI制限部位およびリボソーム結合部位(RBS)が組み込まれた。逆方向プライマーにはAscIおよびPstI制限部位が組み込まれた。PCR産物をカリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン・コーポレーション(Invitrogen Corp.(Carlsbad,CA))からのpCR4Blunt−TOPO中にクローニングして、pCR4Blunt−TOPO−thlAを作り出す。プラスミドDNAをTOPOクローンから調製し、遺伝子配列をプライマーM13フォワード(配列番号45)、M13リバース(配列番号46)、N7SeqF1(配列番号47)、およびN7SeqR1(配列番号48)(表5参照)で確認した。
【0186】
3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ
それぞれ配列番号35および36で示されるプライマー対N42およびN43(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからhbd遺伝子を増幅し、0.9kbp生成物を作り出した。順方向プライマーにはSalI制限部位およびRBSが組み込まれた。逆方向プライマーにはSphI制限部位が組み込まれた。PCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングして、pCR4Blunt−TOPO−hbdを作り出した。TOPOクローンからプラスミドDNAを調製し、遺伝子配列をプライマーM13フォワード(配列番号45)、M13リバース(配列番号46)、N5SeqF2(配列番号51)、およびN6SeqR2(配列番号52)(表5参照)で確認した。
【0187】
クロトナーゼ
それぞれ配列番号39および40で示されるプライマー対N38およびN39(表4参照)を使用したPCRによって、C.アセトブチリカム(acetobutylicum)(ATCC 824)ゲノムDNAからcrt遺伝子を増幅し、834bp生成物を作り出す。順方向プライマーにはEcoRIおよびMluI制限部位およびRBSが組み込まれた。逆方向プライマーにはBamHI制限部位が組み込まれた。PCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングし、pCR4Blunt−TOPO−crtを作り出した。TOPOクローンからプラスミドDNAを調製し、遺伝子配列をプライマーM13フォワード(配列番号45)およびM13リバース(配列番号46)(表5参照)で確認した。
【0188】
ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ)
一次宿主として、大腸菌(E.coli)、および二次宿主として枯草菌(B.subtilis)中でのコドン使用頻度向上のためにCAC0462遺伝子を合成した。新しい遺伝子(CaTER、配列番号76)は、ニュージャージー州ピスカタウェイのジェンスクリプト・コーポレーション(Genscript Corporation(Piscataway,NJ))によって、pUC57ベクター中でBamHI−SalI断片として合成され、クローニングされてRBSを含む。
【0189】
大腸菌(E.coli)および枯草菌(Bacillus subtilis)中でのコドン使用頻度向上のために、ミドリムシ(Euglena gracilis)(TER、ジェンバンク番号Q5EU90)からのブチリル−CoAデヒドロゲナーゼのための代案の遺伝子を合成した。遺伝子は、ジェンスクリプト・コーポレーション(Genscript Corporation)によって合成され、pUC57中にクローニングされてpUC57::EgTERが作り出された。プライマーN85およびN86(それぞれ配列番号80および81)は、テンプレートDNAとしてpUC57::EgTERと共に、pUC57::EgTER DNAからの1224bpを含んでなるPCR断片を提供した。1224bpの配列は配列番号77で示され、そこでbp1〜1218はEgTER(opt)のコード配列(cds)である。EgTER(opt)はコドン最適化TER遺伝子であり、大腸菌(E.coli)中で機能できるように正常なミトコンドリアプレ配列を欠いている(ホフマイスター(Hoffmeister)ら、J.Biol.Chem.280、4329頁、2005年)。
【0190】
EgTER(opt)をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングし、その配列をプライマーM13フォワード(配列番号45)およびM13リバース(配列番号46)で確認した。PCR産物を完全に配列決定するために、追加的配列決定プライマーN62SeqF2(配列番号114)、N62SeqF3(配列番号115)、N62SeqF4(配列番号116)、N63SeqR1(配列番号117)、N63SeqR2(配列番号118)、N63SeqR3(配列番号119)およびN63SeqR4(配列番号120)が必要であった。次に1.2kbpのEgTER(opt)配列をHincIIおよびPmeIで切除して、HincIIで直線化したノバジェン(Novagen)からのpET23+中にクローニングした。プライマーT7プライマーおよびN63SeqR2(それぞれ配列番号82および118)でのコロニーPCRスクリーニングによって、プロモーターに対するEgTER(opt)遺伝子の配向性を確認した。得られたプラスミドpET23+::EgTER(opt)を発現研究のためにノバジェン(Novagen)からのBL21(DE3)に形質転換した。
【0191】
ホフマイスター(Hoffmeister)ら、J.Biol.Chem.280、4329頁、2005年、で述べられるようにして、トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ活性をアッセイした。典型的な一アッセイでは、誘導BL21(DE3)/pET23+::EgTER(opt)培養物中のEgTER(opt)タンパク質の比活性は、非誘導培養物中の0.547μmol mg−1−1と比べて、1.9μmol mg−1−1と判定された。
【0192】
次にtrcプロモーターの制御下にあるpTrc99aベクター中に、EgTER(opt)遺伝子をクローニングした。pET23+::EgTER(opt)からの1287bpのBamHI/SalI断片として、EgTER(opt)遺伝子を単離した。4.2kbpベクターpTrc99aをBamHI/SalIで直線化した。ベクターおよび断片をライゲートして、5.4kbpのpTrc99a−EgTER(opt)を作り出した。0.5kb生成物を生成するプライマーTrc99aFおよびN63SeqR3(それぞれ配列番号83および119)でのコロニーPCRによって、陽性のクローンを確認した。
【0193】
アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(thlA)、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(hbd)、クロトナーゼ(crt)、およびブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(トランス−2−エノイル−CoAレダクターゼ、EgTER(opt))をコードする遺伝子を含んでなるプラスミドpTrc99a−E−C−H−Tの構築
上流経路(EgTER(opt)、crt、hbd、およびthlA)を含んでなる4つの遺伝子オペロンの構築を開始するために、pCR4Blunt−TOPO−crtをEcoRIおよびBamHIで消化して、0.8kbpのcrt断片を放出した。pUC19dSSベクター(実施例10で述べられる)もまた、EcoRIおよびBamHIで消化して、2.0kbpベクター断片を放出した。ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)からのT4DNAリガーゼを使用して、crt断片およびベクター断片を共にライゲートして、pUC19dSS−crtを形成した。pUC57−CaTERをBamHIおよびSalIで消化して1.2kbpのCaTER断片を放出し、CaTER遺伝子をpUC19dSS−crt中に挿入した。pUC19dSS−crtをBamHIおよびSalIで消化し、大型ベクター断片をCaTER断片とライゲートして、pUC19dSS−crt−CaTERを作り出した。オペロンを完成するために、pCR4Blunt−TOPO−hbdからの884bpのSalIおよびSphI断片、pCR4Blunt−TOPO−thlAからの1.2kbSphIおよびPstIthlA断片、およびpUC19dSS−crt−CaTERのSalIおよびPstI消化からの大型断片をライゲートした。三元ライゲーションの生成物をpUC19dSS−crt−CaTER−hbd−thlAまたはpUC19dss::Operon1と命名した。
【0194】
より高いブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ活性は、CaTERコンストラクトよりもpTrc99a−EgTER(opt)から得られたので、pTrc99a−EgTER(opt)に由来するオペロンを構築した。BamHI/SalIで消化し、5327bpベクター断片をゲル精製して、pUC19dss::Operon1からCaTER遺伝子を除去した。ベクターをクレノウ(Klenow)で処理し、再度ライゲートしてpUC19dss::Operon1ΔCaTerを作り出した。次にpUC19dss:オペロン1ΔCaTerからのEcoRI/PstI断片として、2934bpのcrt−hbd−thlA(C−H−T)断片を単離した。C−H−T断片をクレノウ(Klenow)で処理して、平滑末端化した。ベクターpTrc99a−EgTER(opt)をSalIで消化し、末端をクレノウ(Klenow)で処理した。平滑末端化されたベクターおよび平滑末端化されたC−H−T断片をライゲートして、pTrc99a−E−C−H−Tを作り出した。プライマーN62SeqF4およびN5SeqF4(それぞれ配列番号116および84)でコロニーPCR反応を実施して挿入断片の向きを確認した。
【0195】
ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ(aldおよびald(opt))をコードする遺伝子を含んでなるプラスミドpBHR T7−aldおよびpBHR−Ptrc−ald(opt)の構築
pDEST14−ald(実施例6)からのPT7−aldオペロンをドイツ国ゲッティンゲンのモビテック(MoBitec(Goettingen,Germany))からの広宿主域プラスミドpBHR 1中にサブクローニングして、pBHR 1PT7−aldを作り出した。pBHR 1プラスミドはpUC19またはpBR322プラスミドと適合性であるため、pBHR 1PT7−aldは、大腸菌(E.coli)中での1−ブタノール生成のための上流経路オペロンを保有するpUC19またはpBR322誘導体と組み合わせて使用できる。pDEST14−aldプラスミドをBglIIで消化し、DNAポリメラーゼのクレノウ(Klenow)断片で処理して平滑末端を作った。次にプラスミドをEcoRIで消化し、2,245bpのPT7−ald断片をゲル精製した。プラスミドpBHR 1をScaIおよびEcoRIで消化し、4,883bpの断片をゲル精製した。PT7−ald断片をpBHR 1ベクターとライゲートしてpBHR T7−aldを作り出した。プライマーT−ald(BamHI)およびB−ald(EgTER)(それぞれ配列番号85および86)での形質転換体のコロニーPCR増幅によって、予想された1.4kbのPCR産物を確認した。EcoRIおよびDrdIでのpBHR T7−aldクローンの制限酵素マッピングにより、予想された4,757および2,405bpの断片を確認した。
【0196】
ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ活性アッセイのために、プラスミドpBHR T7−aldをインビトロジェン(Invitrogen)からのBL21Star(商標)(DE3)細胞に形質転換し、実施例1で述べられるように、L−アラビノースの添加によってT7プロモーターからの発現を誘導した。実施例6で述べられるようにして、340nmでの吸光度増大によって測定されるNADH形成をモニタリングして、アシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を判定した。
【0197】
ニュージャージー州ピスカタウェイのジェンスクリプト・コーポレーション(Genscript Corporationscataway,NJ))によって、クロストリジウム・バイジェリンキー(Clostridium beijerinckii)ATCC 35702からのald遺伝子のための代案のDNA配列が合成され(大腸菌(E.coli)および枯草菌(Bacillus subtilis)中でのコドン使用頻度に最適化された)、pUC57中にクローニングされて、プラスミドpUC57−ald(opt)が作られた。pUC57−ald(opt)をSacIおよびSalIで消化して、コドン最適化された遺伝子ald(opt)および大腸菌(E.coli)のためのRBSを含んでなる1498bpの断片を放出した。1498bpの断片の配列は、配列番号78で示される。
【0198】
pTrc99aをSacIおよびSalIで消化して4153bpベクター断片を得て、それを1498bpald(opt)断片とライゲートしてpTrc−ald(opt)を作り出した。合成遺伝子、ald(opt)の発現は、IPTG−誘導性Ptrcプロモーターの制御下にある。
【0199】
上述の上流経路プラスミドと適合性であるために、Ptrc−ald(opt)オペロンをモビテック(MoBitec)からの広宿主域プラスミドpBHR1中にサブクローニングした。対応するプライマー内にBspEIおよびScaI制限部位を組み込む、T−Ptrc(BspEI)およびB−aldopt(ScaI)(それぞれ配列番号87および88)で、Ptrc−ald(opt)断片をpTrc99A::ald(opt)からPCR増幅した。PCR産物をBspEIおよびScaIで消化した。プラスミドpBHR1をScaIおよびBspEIで消化して、4,883bpの断片をゲル精製した。Ptrc−ald(opt)断片をpBHR1ベクターとライゲートして、pBHR−PcatPtrc−ald(opt)を作り出した。ScaIおよびBspEIでのpBHR−PcatPtrc−ald(opt)クローンの制限酵素マッピングによって、予想された4,883および1,704bpの断片を確認した。プラスミド由来のcatプロモーター(Pcat)領域を除去するために、プラスミドpBHR−PcatPtrc−ald(opt)をBspEIおよびAatIIで消化して、6,172bpの断片をゲル精製した。50mMのNaCl、10mMトリス−HCl、および10mMのMgCl2(pH7.9)を含有する溶液中に、T−BspEIAatIIおよびB−BspEIAatII(それぞれ配列番号89および90)を最終濃度100μMに混合し、75℃で5分間インキュベートして室温に緩慢に冷却してハイブリダイズした。ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを6,172bpの断片とライゲートして、pBHR−Ptrc−ald(opt)を作り出した。
【0200】
ブタノールデヒドロゲナーゼ(yqhD)を発現する大腸菌(E.coli)株の構築
大腸菌(E.coli)は、1,3−プロパンジオールデヒドロゲナーゼ(米国特許第6,514,733号明細書)として同定された天然遺伝子(yqhD)を含有する。yqhD遺伝子は、有望なNADH−依存ブタノールデヒドロゲナーゼであるクロストリジウム(Clostridium)中の遺伝子adhBと40%同一性を有する。λレッド技術(ダツセンコ(Datsenko)およびワーナー(Wanner)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:6640頁、2000年)を使用して、yqhD遺伝子を大腸菌(E.coli)MG1655 1.6yqhD::Cm株(国際公開第2004/033646号パンフレット)中のグルコースイソメラーゼプロモーター1.6GI(配列番号91)変異型の構成的発現下に置いた。同様に天然プロモーターを1.5GIプロモーター(国際公開第2003/089621号パンフレット)(配列番号92)によって置換してMG1655 1.5GI−yqhD::Cm株を作り出し、したがってMG1655 1.6yqhD::Cmの1.6GIプロモーターを1.5GIプロモーターで置換する。
【0201】
MG1655 1.5GI yqhD::CmからP1溶解産物を調製し、大腸菌(E.coli)MG1655株およびインビトロジェン(Invitrogen)からのλDE3溶原化キットから調製される発現株MG1655 (DE3)にカセットを移動させ、インビトロジェン(Invitrogen)からのBL21(DE3)は、それぞれMG1655 (DE3)1.5GI−yqhD::CmおよびBL21(DE3)1.5GI−yqhD::Cmを作り出す。
【0202】
組み換え大腸菌(E.coli)からの1−ブタノール生成の実証
大腸菌(E.coli)MG1655(DE3)1.5GI−yqhD::Cm株をプラスミドpTrc99a−E−C−H−TおよびpBHR T7−aldで形質転換し、MG1655 (DE3)1.5GI−yqhD::Cm/pTrc99a−E−C−H−T/pBHR T7−ald株を生成した。最初に50μg/mLのカナマイシンおよび100μg/mLのカルベニシリンを含有するLB培地中で、2つの独立した単離物を生育させた。細胞を使用して、それぞれ高、中、および低酸素条件に相当する、15、50、および150mLのTM3a/グルコース培地を含有する(適切な抗生物質を添加した)振盪フラスコ(総容積およそ175mL)に接種した。TM3a/グルコース培地は1Lあたり、10gのグルコース、13.6gのKHPO、2.0gのクエン酸一水和物、3.0gの(NHSO、2.0gのMgSO・7HO、0.2gのCaCl・2HO、0.33gのクエン酸第二鉄アンモニウム、1.0mgのチアミン・HCl、0.50gの酵母抽出物、および10mLの微量元素溶液を含有し、NHOHでpH6.8に調節した。微量元素溶液はクエン酸・HO(4.0g/L)、MnSO・HO(3.0g/L)、NaCl(1.0g/L)、FeSO・7HO(0.10g/L)、CoCl・6HO(0.10g/L)、ZnSO4・7HO(0.10g/L)、CuSO・5HO(0.010g/L)、HBO(0.010g/L)、およびNaMoO・2HO(0.010g/L)を含有した。≦0.01単位の開始OD600でフラスコを接種し、300rpmで振盪しながら34℃でインキュベートした。15および50mLの培地を含有するフラスコは通気式キャップでキャッピングし、150mLを含有するフラスコは非通気式キャップでキャッピングして、空気交換を最小化した。IPTGを0.04mMの最終濃度に添加した。添加時のフラスコのOD600は≧0.4単位であった。
【0203】
誘導のおよそ15時間後に一般法セクションで述べられるようにして、1−ブタノール含量について、屈折率(RI)検出付きHPLC(ショウデックス・シュガー(Shodex Sugar)SH1011カラム)、および炎光イオン化検出(FID)付きGC(バリアン(Varian)CP−WAX58(FFAP)CBカラム、内径25m×0.25mm×フィルム厚0.2μm)によって、ブロスのアリコートを分析した。1−ブタノールの判定結果を表6に示す。
【0204】
【表19】

【0205】
培地が5g/L酵母抽出物を含有したこと以外は同一の様式で、MG1655 (DE3)1.5GI−yqhD::Cm/pTrc99a−E−C−H−T/pBHR T7−aldの2つの独立した単離物を1−ブタノール生成について試験した。結果を表7に示す。
【0206】
【表20】

【0207】
大腸菌(E.coli)BL21(DE3)1.5GI−yqhD::Cm株をプラスミドpTrc99a−E−C−H−TおよびpBHR T7−aldで形質転換し、BL21(DE3)1.5GI−yqhD::Cm/pTrc99a−E−C−H−T/pBHR T7−ald株を生成した。上述したのと全く同じようにして、2つの独立した単離物を1−ブタノール生成について試験した。結果を表8および9に示す。
【0208】
【表21】

【0209】
【表22】

【0210】
大腸菌(E.coli)MG1655 1.5GI−yqhD::Cm株をプラスミドpTrc99a−E−C−H−TおよびpBHR−Ptrc−ald(opt)で形質転換して、MG1655 1.5GI−yqhD::Cm/pTrc99a−E−C−H−T/pBHR−Ptrc−ald(opt)株を生成した。50μg/mLカナマイシンおよび100μg/mLカルベニシリンを含有するLB培地中で、2つの単離物を最初に生育させた。細胞を使用して、50および150mLのTM3a/グルコース培地(適切な抗生物質を添加した)を含有する振盪フラスコ(総容積およそ175mL)に接種した。フラスコを≦0.04単位の開始OD550で接種し、誘導ありまたはなしで上述のようにインキュベートした。IPTGを0.4mMの最終濃度に添加した。添加時のフラスコのOD550は、0.6〜1.2単位の間であった。この場合、IPTG誘導性プロモーターの漏出および1.5GIプロモーターの構成的性質のため、1−ブタノール経路遺伝子発現のために誘導は必要でなかった。しかし誘導はより幅広い発現を提供した。
【0211】
誘導のおよそ15時間後、上述のように1−ブタノール含量について、炎光イオン化検出付きGCによってブロスのアリコートを分析した。結果を表10に示す。組み換え大腸菌(E.coli)株では、全例で1−ブタノールが生成された。別の実験では、野性型大腸菌(E.coli)株は、検出可能な1−ブタノールを生成しないことが示された(データ示さず)。
【0212】
【表23】

【0213】
実施例14
組み換え枯草菌(B.subtilis)を使用したグルコースからの1−ブタノール生成
本実施例は、枯草菌(Bacillus subtilis)中での1−ブタノール生成について述べる。6つの酵素活性をコードする1−生合成経路の6つの遺伝子を発現のための2つのオペロンに分割し、経路の最初の3つの遺伝子(thl、hbd、およびcrt)を枯草菌(Bacillus subtilis)BE1010染色体中に組み込んだ(ペイン(Payne)およびジャクソン(Jackson)、J.Bacteriol.173:2278〜2282頁、1991年)。最後の3つの遺伝子(EgTER、ald、およびbdhB)を発現プラスミド中にクローニングして、組み込まれた1−ブタノール遺伝子を保有するバチルス(Bacillus)株に形質転換した。
【0214】
テキスト中特に断りのない限り、本実施例で述べられるクローニングプライマーは、表4中のそれらの配列番号によって参照され、配列決定およびPCRスクリーニングプライマーは、表5中のそれらの配列番号によって参照される。
【0215】
組み込みプラスミド
プラスミドpFP988は、pBR322からの大腸菌(E.coli)レプリコンと、大腸菌(E.coli)中での選択のためのアンピシリン抗生物質マーカーと、相同的組換えによってベクターおよび介在配列の組み込みを指示するバチルス(Bacillus)染色体中のsacB遺伝子に対する相同性がある2つのセクションとを含有するバチルス(Bacillus)組み込みベクターである。sacB相同性領域の間に、クローニングされた遺伝子の合成および分泌を指示できるPamyプロモーターおよびシグナル配列、His−Tag、バチルス(Bacillus)の選択可能なマーカーとしてのエリスロマイシンがある。Pamyプロモーターおよびシグナル配列は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)αアミラーゼに由来する。プロモーター領域はまた、lacIリプレッサータンパク質による発現調節のためのlacO配列を含有する。pFP988(6509bp)の配列は配列番号79で示される。
【0216】
1−ブタノール経路遺伝子は細胞質中で発現させる予定であったため、アミラーゼシグナル配列を消去した。プラスミドpFP988をプライマーPamy/lacO FおよびPamy/lacO Rで増幅して、Pamy/lacO プロモーターを含有する317bp(0.3kbp)生成物を作り出した。Pamy/lacO Fの5’末端にはBsrGI制限部位が組み込まれ、EcoRI部位がそれに続いた。Pamy/lacO Rプライマーの5’末端にはBsrGI制限部位が組み込まれ、PmeI制限部位がそれに続いた。PCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にTOPOクローニングして、pCR4Blunt−TOPO−Pamy/lacOを作り出した。一晩培養物からプラスミドDNAを調製して、M13フォワードおよびM13リバースプライマー(それぞれ配列番号45および配列番号46)で配列決定して、突然変異がプロモーター中に導入されなかったことを確実にした。pCR4Blunt−TOPO−Pamy/lacOのクローンをBsrGIで消化して、0.3kbpの断片をゲル精製した。ベクターpFP988をBsrGIで消化して、5’sacB相同性領域からの11bpの欠失、およびPamy/lacOプロモーターおよびシグナル配列およびHis−tagの除去をもたらした。6kbpのBsrGI消化ベクターをゲル精製して、Pamy/lacO BsrGI挿入断片とライゲートした。得られたプラスミドをプライマーPamy SeqF2およびPamy SeqRでスクリーンし、プロモーターの方向を判定した。正しいクローンは、Pamy/lacO プロモーターをその元の方向に復元し、pFP988Dssと命名された。
【0217】
SOE(オーバーラップ伸長によるスプライシング)によって、遺伝子thl−crtのカセットを構築した。テンプレートとしてpUC19dss::Operon1を使用して、遺伝子を増幅した。thlプライマーは、0.9kbp生成物を増幅するトップTFおよびBot TRであった。crtプライマーは、1.3kbp生成物を増幅するトップCFおよびBot CRであった。プライマートップTFおよびBot CRを使用したPCR増幅でSOEによって2つの遺伝子を結合し、2.1kbp生成物を発生させ、それをpCR4Blunt−TOPO中にTOPOクローニングしてpCR4Blunt−TOPO−T−Cを作り出した。クローンを配列決定して配列確認した。プラスミドpCR4Blunt−TOPO−T−CをBstEIIおよびPmeIで消化して、2.1kbpの断片を放出し、それをゲル精製した。挿入断片をクレノウ(Klenow)ポリメラーゼで処理して、BstEII部位を平滑化した。ベクターpFP988DssをPmeIで消化し、ニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs)からの仔ウシ腸管アルカリホスファターゼで処理して自己ライゲーションを防止した。2.1kbpthl−crt断片と消化されたpFP988Dssとをライゲートして、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換した。Pamy SeqF2およびN7SeqR2でのPCR増幅によって、0.7kbp生成物について形質転換体をスクリーンし、正しい生成物をpFP988Dss−T−Cと称した。
【0218】
thl−crtカセットの構築は、2つの遺伝子間に固有のSalIおよびSpeI部位を作り出した。hbd遺伝子をカセットに付加するために、hbd遺伝子をpCR4Blunt−TOPO−hbdから0.9kbpSalI/SpeI断片としてサブクローニングした。ベクターpFP988Dss−T−CをSalIおよびSpeIで消化し、8kbpベクター断片をゲル精製した。ベクターとhbd挿入断片とをライゲートして、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換した。プライマーPamy SeqFおよびN3SeqF3でのPCR増幅によって形質転換体を3.0kbpの断片についてスクリーンした。得られたプラスミドをpFP988Dss−T−H−Cと命名した。
【0219】
続いてPamyプロモーターをプラスミドpMUTIN4からのPspacプロモーターで置換した(ヴァグネル(Vagner)ら、Microbiol.144:3097〜3104頁、1998年)。プライマーSpacFおよびSpacRでPspacプロモーターをpMUTIN4から0.4kbp生成物として増幅し、pCR4Blunt−TOPO中にTOPOクローニングした。M13フォワードおよびM13リバースプライマーでのPCR増幅によって、形質転換体を0.5kbp挿入断片の存在についてスクリーンした。同一プライマーで陽性クローンを配列決定した。プラスミドpCR4Blunt−TOPO−PspacをSmaIおよびXhoIで消化し、0.3kbpの断片をゲル精製した。ベクターpFP988Dss−T−H−CをSmaIおよびXhoIで消化し、9kbpベクターをゲル精製によって単離した。消化されたベクターとPspac挿入断片とをライゲートして、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換した。プライマーSpacF SeqおよびN7SeqR2でのPCR増幅によって形質転換体をスクリーンした。陽性クローンは0.7kbpの生成物を与えた。陽性クローンからプラスミドDNAを調製し、プライマーSpacF SeqおよびN3SeqF2でのPCR増幅によってさらにスクリーンした。陽性クローンは3kbpPCR産物を与えて、pFP988DssPspac−T−H−Cと命名された。
【0220】
外来性thl、hbd、およびcrt遺伝子を含んでなる枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28を形成するための枯草菌(B.subtilis)BE1010中への組み込み
Doyleら、J.Bacteriol.144:957〜966頁、1980年、で述べられるようにして、枯草菌(B.subtilis)BE1010のコンピテント細胞を調製した。コンピテント細胞を遠心分離によって収集し、細胞ペレットを少容量の細胞上清に再懸濁した。1容積のコンピテント細胞に対して、2容積のSPII−EGTA培地(P.Gerhardtら編「一般および分子細菌学方法(Methods for General and Molecular Bacteriology)」米国微生物学会、Washington,DC、1994年)を添加した。細胞の0.3mLのアリコートを試験管内に分配して、プラスミドpFP988DssPspac−T−H−Cを試験管に添加した。細胞を振盪しながら37℃で30分間インキュベートし、その後0.1mLの10%酵母抽出物を各試験管に添加して、細胞をさらに60分間インキュベートした。二重寒天オーバーレイ法を使用して、形質転換体を選択のためにLBエリスロマイシンプレート上に播種した(「一般および分子細菌学方法(Methods for General and Molecular Bacteriology)」、前出)。プライマーPamy SeqFおよびN5SeqF3でのPCR増幅によって、形質転換体を最初にスクリーンした。予想された2kbpPCR産物を増幅した陽性クローンをPCR増幅によってさらにスクリーンした。ダブルクロスオーバー事象を通じて、染色体中へのカセットの挿入が起きた場合、プライマーセットsacBUpおよびN7SeqR2、およびプライマーセットsacBDnおよびN4SeqR3は、それぞれ1.7kbpおよび2.7kbp生成物を増幅する。陽性クローンを同定して、枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28と命名した。
【0221】
EgTER、ald、およびbdhB遺伝子のプラスミド発現
残る3つの1−ブタノール遺伝子をモビテック(MoBitec)からのプラスミドpHT01から発現した。プラスミドpHT01は、シータ機序を通じて複製するバチルス(Bacillus)−大腸菌(E.coli)シャトルベクターである。クローニングされたタンパク質は、lacO配列に縮合したGroELプロモーターから発現される。lacOの下流はgsiB遺伝子からの効率的なRBSであり、MCSがそれに続く。テンプレートとしてpUC19dHS−ald−bdhB(実施例9で述べられる)を使用し、プライマーAFBamHIおよびARAat2でのPCRによってald遺伝子を増幅して、1.4kbp生成物を作り出した。生成物をpCR4−TOPO中にTOPOクローニングして、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換した。形質転換体をM13フォワードおよびM13リバースプライマーでスクリーンした。陽性クローンは、1.6kbp生成物を増幅した。クローンをプライマーM13フォワードおよびM13リバース、N31SeqF2、N31SeqF3、N32SeqR2、N32SeqR3、およびN32SeqR4で配列決定した。プラスミドをpCR4TOPO−B/A−aldと命名した。
【0222】
ベクターpHT01およびプラスミドpCR4TOPO−B/A−aldをどちらもBamHIおよびAatIIで消化した。7.9kbpベクター断片と1.4kbpald断片とを共にライゲートして、pHT01−aldを作り出した。ライゲーションを大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換し、プライマーN31SeqF1およびHT RでのPCR増幅によって、形質転換体を1.3kbp生成物についてスクリーンした。
【0223】
pHT01ベクターへの経路の最後の2ステップに付け加えるために、2つのクローニングスキームをデザインした。どちらのスキームでも、SOEによってEgTERおよびbdhBが共に増幅された。続いて、EgTER−bdh断片をpHT01−ald中にクローニングしてpHT01−ald−EBを作り出し、あるいはpCR4−TOPO−B/A−ald中にクローニングしてpCR4−TOPO−ald−EBを作り出した。次にTOPOベクターからのald−EgTer−bdhB断片をpHT01中にクローニングして、pHT01−AEBを作り出した。
【0224】
配列番号208で示されるテンプレートDNAを使用して、プライマーフォワード 1(E)およびリバース 2(B)を使用して、EgTER−bdhB断片をPCR増幅した。得られた2.5kbpのPCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にTOPOクローニングして、pCR4Blunt−TOPO−E−Bを作り出した。TOPO反応物を大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換した。M13フォワードおよびM13リバースプライマーでのPCR増幅によって、コロニーをスクリーンした。陽性クローンは2.6kbp生成物を発生させた。プライマーM13フォワードおよびリバース、N62SeqF2、N62SeqF3、N62SeqF4、N63SeqR1、N63SeqR2、N63SeqR3、N11SeqF1およびN11SeqF2、N12SeqR1およびN12SeqR2で、pCR4Blunt−TOPO−E−Bのクローンを配列決定した。
【0225】
プラスミドpCR4Blunt−TOPO−E−BをHpaIおよびAatIIで消化して、2.4kbpの断片を放出した。E−B断片をクレノウ(Klenow)ポリメラーゼで処理して平滑末端化し、次にゲル精製した。プラスミドpHT01−aldをAatIIで消化し、クレノウ(Klenow)ポリメラーゼで処理して平滑末端化した。次にベクターを仔ウシ腸管アルカリホスファターゼで処理してゲル精製した。E−B断片を直線化ベクターpHT01−aldにライゲートして、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換し、100μg/mLアンピシリン含有LBプレート上で選択した。プライマーN3SeqF1およびN63SeqR1でのPCR増幅によって形質転換体をスクリーンし、2.4kbp生成物を得た。得られたプラスミドpHT01−ald−EBをrecA大腸菌(E.coli)株であるJM103細胞に形質転換した。recA株から調製されたプラスミドは、recA株よりも多くの多量体を形成する。枯草菌(Bacillus subtilis)は、プラスミド単量体よりもむしろ多量体でより効率的に形質転換する(「一般および分子細菌学方法(Methods for General and Molecular Bacteriology)」、前出)。プラスミドDNAをJM103から調製してコンピテント枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28に形質転換し、枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28/pHT01−ald−EB株を形成した。前述のようにして、コンピテント細胞を調製し形質転換した。形質転換体を5μg/mLクロラムフェニコール含有LBプレート上で選択し、プライマーN31SeqF1およびN63SeqR4でコロニーPCRによって、1.3kbp生成物についてスクリーンした。
【0226】
代案のクローニング手法では、pCR4Blunt−TOPO−E−BをHpaIおよびAatIIで消化して2.4kbpの断片を放出し、それをゲル精製した。プラスミドpCR4−TOPO−B/A−aldをHpaIおよびAatIIで消化し、5.4kbpベクター断片をゲル精製した。pCR4−TOPO−B/A−aldからのベクター断片とHpaI−AatIIE−B断片とをライゲートして、pCR4−TOPO−ald−EBを作り出した。ライゲーションを大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換し、プライマーN11SeqF2およびN63SeqR4でのPCR増幅によって得られた形質転換体を2.1kbp生成物についてスクリーンした。プラスミドpCR4−TOPO−ald−EBをBamHIおよびAatIIおよびSphIで消化した。BamHI/AatII消化によって3.9kbpald−EB断片を放出し、それをゲル精製した。SphI消化の目的は、残るベクターがald−EB挿入断片と共にゲル上で共遊走しないように、それをより小さな断片に切断することであった。ベクターpHT01をBamHIおよびAatIIで消化し、7.9kbpベクター断片をゲル精製した。ベクターとald−EB挿入断片とをライゲートしてプラスミドpHT01−AEBを形成し、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換した。プライマーN62SeqF4およびHT RでのPCR増幅によって、コロニーを1.5kbp生成物についてスクリーンした。プラスミドを調製してJM103に形質転換した。プラスミドDNAをJM103から調製し、コンピテント枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28に形質転換して、枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28/pHT01−AEB株を形成した。コンピテントBE1010細胞を調製し、前述のようにして形質転換した。プライマーN31SeqF1およびN63SeqR4でのPCR増幅によって、バチルス(Bacillus)形質転換体を1.3kbp生成物についてスクリーンした。
【0227】
組み換え枯草菌(B.subtilis)からの1−ブタノール生成の実証
枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28/pHT01−ald−EBおよび枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28/pHT01−AEBの各株の3つの独立した単離物を15mLの培地を含有する振盪フラスコ(総容積およそ175mL)に接種した。外来性の1−ブタノールの6つの遺伝子経路を欠く枯草菌(B.subtilis)BE1010株もまた、負の対照として含めた。培地は(1Lあたり)10mLの1M(NHSO、5mLの1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)、100mLの1M MOPS/KOH緩衝液(pH7.0)、20mLの1M L−グルタミン酸カリウム塩、10gのグルコース、各10mLの5g/LのL−メチオニンとL−トリプトファンとL−リジン、各0.1gの酵母抽出物とカザミノ酸、20mLの金属ミックス、および適切な抗生物質(組み換え株のための5mgのクロラムフェニコールおよびエリスロマイシン)を含有した。金属ミックスは、200mMのMgCl、70mMのCaCl、5mMのMnCl、0.1mMのFeCl、0.1mMのZnCl、0.2mMの塩酸チアミン、172μMのCuSO、253μMのCoCl、および242μMのNaMoOを含有した。≦0.1単位の開始OD600でフラスコに接種して、非通気式キャップで密封し、およそ200rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした。
【0228】
接種のおよそ24時間後に、一般法セクションで述べられるようにして、屈折率(RI)検出付きHPLC(ショ−デックス・シュガー(Shodex Sugar)SH1011カラム)、および炎光イオン化検出(FID)付きGC(バリアン(Varian)CP−WAX 58(FFAP)CBカラム、0.25mm×0.2μm×25m)で、ブロスのアリコートを1−ブタノール含量について分析した。1−ブタノールの判定結果を表11に示す。
【0229】
【表24】

【0230】
実施例15
組み換え大腸菌(E.coli)によるグルコースまたはスクロースからの1−ブタノール生成
1−ブタノール生成のために炭素およびエネルギー源としてスクロースを使用する能力を大腸菌(E.coli)MG1655に与えるために、プラスミドpScrIからのスクロース使用遺伝子クラスター(cscBKA)(下述)をこの生物中のpBHR−Ptrc−ald(opt)(実施例13で述べられる)中にサブクローニングした。スクロース使用遺伝子(cscA、cscK、およびcscB)は、配列番号157で示されるスクロースヒドロラーゼ(CscA)、配列番号158で示されるD−フルクトキナーゼ(CscK)、および配列番号159で示されるスクロースパーミアーゼ(CscB)をコードする。それらの天然プロモーターからの3つの遺伝子の構成的発現を可能にするために、遺伝子クラスターを調節するスクロース特定リプレッサー遺伝子cscRはコンストラクト中に存在しない。
【0231】
プラスミドpBHR−Ptrc−ald(opt)中でのスクロース使用遺伝子クラスターcscBKAのクローニングおよび発現
大腸菌(E.coli)ATCC 13281株に由来するスクロース−利用大腸菌(E.coli)株のゲノムDNAから、配列番号156で示されるスクロース使用遺伝子クラスターcscBKAを単離した。ゲノムDNAをBamHIおよびEcoRIで完全に消化した。アガロースゲルから約4kbpの平均サイズを有する断片を単離して、マサチューセッツ州ベヴァリーのニュー・イングランド・バイオラブズ(New England Biolabs(Beverly,MA))からのプラスミドpLitmus28にライゲートして、次にそれをBamHIおよびEcoRIで消化した。得られたDNAをカリフォルニア州カールスバッドのインビトロジェン(Invitrogen(Carlsbad,CA))からのウルトラコンピテント大腸菌(E.coli)TOP10F’に形質転換した。1%スクロースおよび100μg/mLアンピシリン含有マッコンキー寒天プレート上に形質転換体を播種して、紫色のコロニーについてスクリーンした。紫色の形質転換体からプラスミドDNAを単離し、プライマーM13フォワード(配列番号45)、M13リバース(配列番号46)、scr1(配列番号160)、scr2(配列番号161)、scr3(配列番号162)、およびscr4(配列番号163)を使用して配列決定した。cscB、cscK、およびcscA(cscBKA)遺伝子を含有するプラスミドをpScr1と称した。
【0232】
プラスミドpScrIをXhoIで消化し、DNAポリメラーゼのクレノウ(Klenow)断片で処理して平滑末端を作った。次にプラスミドをAgeIで消化し、4,179bpのcscBKA遺伝子クラスター断片をゲル精製した。実施例13で述べられるようにしてプラスミドpBHR−Ptrc−ald(opt)を調製し、AgeIおよびNaeIで消化した。得られた6,003bpのpBHR−Ptrc−ald(opt)断片をゲル精製した。cscBKA断片をpBHR−Ptrc−ald(opt)とライゲートして、pBHR−Ptrc−ald(opt)−cscAKBを生じさせた。プラスミドpBHR−Ptrc−ald(opt)−cscAKBをウィスコンシン州マディソンのノバジェン(Novagen(Madison,WI))からの大腸菌(E.coli)NovaXGエレクトロコンピテント細胞に形質転換し、形質転換体を2%スクロースおよび25μg/mLカナマイシン含有マッコンキー寒天プレートに播種して、スクロース使用を確認した。pBHR−Ptrc−ald(opt)−cscAKBコンストラクトでは、スクロース使用遺伝子をcscA、cscK、およびcscBの順に別個の断片として、Ptrc−ald(opt)下流でクローニングした。
【0233】
あるいは、スクロース使用遺伝子をpBHR−Ptrc−ald(opt)中で反対方向にクローニングした。プラスミドpBHR−Ptrc−ald(opt)をScaIおよびAgeIで消化し、5,971bppBHR−Ptrc−ald(opt)断片をゲル精製した。上述のように調製された4,179bpのcscBKA断片とpBHR−Ptrc−ald(opt)断片とをライゲートして、pBHR−Ptrc−ald(opt)−cscBKAを生じさせた。プラスミドpBHR−Ptrc−ald(opt)−cscBKAをウィスコンシン州マディソンのノバジェン(Novagen (Madison,WI))からの大腸菌(E.coli)NovaXGエレクトロコンピテント細胞に形質転換し、2%スクロースおよび25μg/mLカナマイシン含有マッコンキー寒天プレートに形質転換体を播種して、スクロース使用を確認した。pBHR−Ptrc−ald(opt)−cscBKAコンストラクトでは、スクロース使用遺伝子をcscB、cscK、およびcscAの順で別個の断片として、Ptrc−ald(opt)下流でクローニングした。
【0234】
組み換え大腸菌(E.coli)を使用したグルコースまたはスクロースからの1−ブタノール生成の実証
大腸菌(E.coli)MG1655 1.5GI−yqhD::Cm株(実施例13で述べられる)をプラスミドspTrc99a−E−C−H−T(実施例13で述べられるようにして調製される)およびpBHR−Ptrc−ald(opt)−cscAKBまたはpBHR−Ptrc−ald(opt)−cscBKAで形質転換して、2つの株MG1655 1.5GI−yqhD::Cm/pTrc99a−E−C−H−T/pBHR−Ptrc−ald(opt)−cscAKB#9、およびMG1655 1.5GI−yqhD::Cm/pTrc99a−E−C−H−T/pBHR−Ptrc−ald(opt)−cscBKA#1を生成した。25μg/mLカナマイシンおよび100μg/mLカルベニシリン含有LB培地中で細胞を生育させて、2つの株のスタータカルチャを調製した。次にこれらの細胞を使用して、実施例13で述べられるように、それぞれ高、中および低酸素条件に相当する50、70、および150mLのTM3a/グルコース培地(適切な抗生物質を添加した)を含有する振盪フラスコ(総容積およそ175mL)に接種した。100μg/mLカルベニシリン含有TM3a/グルコース培地内で生育させた、第3の株である大腸菌(E.coli)MG1655/pScr1を負の対照として使用した。各株について、同一のフラスコセットをTM3a/スクロース培地(適切な抗生物質を添加した)で調製した。TM3a/スクロース培地は、スクロース(10g/L)でグルコースを置換したこと以外は、TM3a/グルコース培地と同じである。実施例13で述べるようにして、≦0.03単位の開始OD550でフラスコを接種しインキュベートした。ただし負の対照フラスコでは、培養物が0.2〜1.8単位の間のOD550に達したら、フラスコにIPTGを添加した(最終濃度0.04mM)。培養物のOD550が少なくとも3倍に増大したら、細胞を収集した。
【0235】
接種のおよそ24時間後、一般法セクションで述べられるようにして、ブロスのアリコートを屈折率(RI)検出付きHPLC(ショ−デックス・シュガー(Shodex Sugar)SH1011カラム)、および炎光イオン化検出(FID)付きGC(HP−イノワックス(INNOWax)カラム、内径30m×0.53mm、フィルム厚1μm)で1−ブタノール含量について分析した。
【0236】
グルコースおよびスクロース含有培地中での生育に続く培養物中の1−ブタノール濃度をそれぞれ表12および表13に示す。どちらの組み換え大腸菌(E.coli)株も1−ブタノール生合成経路を含有し、全ての酸素条件下でグルコースおよびスクロースから1−ブタノールを生成するのに対し、負の対照株は検出可能な1−ブタノールを生成しなかった。
【0237】
【表25】

【0238】
【表26】

【0239】
実施例16
組み換え枯草菌(B.subtilis)を使用したスクロースからの1−ブタノール生成
本実施例は、組み換え枯草菌(Bacillus subtilis)を使用したスクロースからの1−ブタノール生成について述べる。本質的に実施例14で述べるようにして、枯草菌(B.subtilis)ΔsacB::T−H−C::erm#28/pHT01−ald−EB株(実施例14)の2つの独立した単離物を1−ブタノール生成について調べた。20mLまたは100mLの培地のどちらかを含有する振盪フラスコ(総容積およそ175mL)内に株を接種して、それぞれ高および低酸素条件をシミュレートした。培地Aは、グルコースが5g/Lスクロースで置換されたこと以外は、実施例14で述べられるのと全く同じであった。培地Bは、グルコースが10g/Lスクロースで置換され、培地が(1Lあたり)各10mLの5g/LのL−メチオニン、L−トリプトファン、およびL−リジン溶液で栄養強化されたこと以外は、実施例13で述べられるTM3a/グルコース培地と同一であった。≦0.1単位の開始OD550でフラスコを接種し、通気式キャップでキャッピングして300rpmで振盪しながら34℃でインキュベートした。
【0240】
接種のおよそ24時間後、一般法セクションで述べられるようにして、ブロスのアリコートをFID検出付きGC(HP−イノワックス(INNOWax)カラム、内径30m×0.53mm、フィルム厚1.0μm)で、1−ブタノール含量について分析した。1−ブタノールの判定結果を表14に示す。1−ブタノール生合成経路を含有する組み換えバチルス(Bacillus)株は、どちらの培地中でも高および低酸素条件下で検出可能なレベルの1−ブタノールを生成した。
【0241】
【表27】

【0242】
実施例17
組み換えサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)を使用したグルコースおよびスクロースからの1−ブタノール生成
本実施例は、酵母サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)中での1−ブタノール生成について述べる。1−ブタノール生合成経路のステップを触媒する酵素をコードする6つの遺伝子の内、5つを3つの適合性酵母2ミクロン(2μ)プラスミド中にクローニングして、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)中で同時発現した。「上流経路」は、アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(thlA,チオラーゼ)、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ(hbd)、およびクロトナーゼ(crt)によって触媒される最初の3つの酵素的ステップと定義した。下流経路は、経路の第4(ブチル−CoAデヒドロゲナーゼ、ter)および第5(ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、ald)の酵素的ステップと定義した。1−ブタノール経路の最後の酵素的ステップはアルコールデヒドロゲナーゼによって触媒され、それは例えばadhIおよびadhIIなどの内在性酵母遺伝子によってコードされてもよい。
【0243】
酵母中での遺伝子発現は典型的にプロモーターを必要とし、対象とする遺伝子および転写ターミネーターがそれに続く。1−ブタノール生合成経路をコードする遺伝子発現カセットを構築する上で、FBA、GPD、およびGPMプロモーターをはじめとする、いくつかの構成的酵母プロモーターを使用した。例えばGAL1、GAL10、CUP1などのいくつかの誘導性プロモーターもまた中間体プラスミド構築で使用したが、最終実証株では使用しなかった。FBAt、GPDt、GPMt、ERG10t、およびGAL1tをはじめとするいくつかの転写ターミネーターも使用した。最初にプロモーターおよびターミネーターが側面にある酵母プラスミド中に、1−ブタノール生合成経路をコードする遺伝子をサブクローニングして、各遺伝子の発現カセットを生成した。発現カセットは下で述べられるように、場合によりギャップ修復クローニングによって単一ベクター中で組み合わせた。例えば上流経路をコードする3つの遺伝子カセットを酵母2μプラスミド中にサブクローニングした。terおよびald遺伝子は、2μプラスミド中でそれぞれ個々に発現された。単一酵母株中での3つの全プラスミドの同時形質転換は、機能性1−ブタノール生合成経路をもたらした。あるいはギャップ修復クローニングによって、プロモーター、遺伝子、およびターミネーターをコードするいくつかのDNA断片を単一ベクター中で直接組み合わせた。
【0244】
酵母サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae中)でプラスミドおよび株を構築する方法
形質転換、細胞生育、遺伝子発現、ギャップ修復遺伝子組み換えなどをはじめとする基本的酵母分子生物学プロトコルについては、クリスティン・ガスリー(Christine Guthrie)およびジェラルドR.フィンク(Gerald R.Fink)編、「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」、第194巻、「酵母の遺伝学と分子および細胞生物学ガイド(Guide to Yeast Genetics and Molecular および Cell Biology)」(パートA)、Elsevier Academic Press、San Diego,CA)2004年、で述べられる。
【0245】
本実施例で使用されるプラスミドは、メリーランド州ロックビルの米国微生物系統保存機関(American Type Culture Collection(Rockville、MD)からの大腸菌(E.coli)−S.セレヴィシエ(cerevisiae)シャトルベクター、pRS423、pRS424、pRS425、およびpRS426であり、それは大腸菌(E.coli)複製基点(例えばpMB1)、酵母2μ複製起点、および栄養的選択のためのマーカーを含む。これらの4つのベクターの選択マーカーは、His3(ベクターpRS423)、Trp1(ベクターpRS424)、Leu2(ベクターpRS425)、およびUra3(ベクターpRS426)である。これらのベクターは、大腸菌(E.coli)および酵母株の双方の中での株増殖を可能にする。アラバマ州ハンツビルのリサーチ・ジェネティックス(Research Genetics(Huntsville,AL))からの酵母半数体株BY4741(MATa his3Δ1 leu2Δ0 met15Δ0 ura3Δ0)(ATCC 201388からもまた入手できる)、およびアラバマ州ハンツビルのリサーチ・ジェネティックス(Research Genetics(Huntsville,AL))からの二倍体株BY4743(MATa/alpha his3Δ1/his3Δ1 leu2Δ0/leu2Δ0 lys2Δ0/LYS2 MET15/met15Δ0 ura3Δ0/ura3Δ0)(ATCC 201390からもまた入手できる)を遺伝子クローニングおよび発現のための宿主として使用した。大腸菌(E.coli)中での標準分子クローニング技術、または酵母中でのギャップ修復遺伝子組み換え法のどちらかによって、1−ブタノール生合成経路酵素をコードする遺伝子のための発現ベクターの構築を実施した。
【0246】
ギャップ修復クローニングアプローチは、酵母中での高度に効率的な相同的組換えを活用する。典型的に酵母ベクターDNAは消化されて(例えばその複数クローニング部位内に)、その配列中に「ギャップ」を作り出す。5’および3’末端の双方に≧21bp配列を含有する、対象とするいくつかの挿入DNAが生じ、それは連続的に互いに重なり、ベクターDNAの5’および3’末端と重なる。例えば「Gene X」の酵母発現ベクターを構築するために、酵母プロモーターおよび酵母ターミネーターを発現カセットのために選択する。プロモーターおよびターミネーターを酵母ゲノムDNAから増幅し、Gene Xをその生物源からPCR増幅し、あるいはGene X配列を含んでなるクローニングベクターから得る。直線化ベクター5’末端とプロモーター配列の間、プロモーターとGene Xの間、Gene Xとターミネーター配列の間、およびターミネーターと直線化ベクター3’末端の間には、少なくとも21bpの重複配列がある。次に「ギャップド」ベクターおよび挿入DNAを酵母株に同時形質転換し、SD最小ドロップアウト培地上に播種して、コロニーを培養生育について選択し、プラスミドDNAのミニプレップを行う。正しい挿入断片組み合わせの存在は、PCRマッピングによって確認できる。次に酵母(通常低濃度)から単離されたプラスミドDNAを例えばTOP10などの大腸菌(E.coli)株に形質転換し、ミニプレップおよび制限酵素マッピングがそれに続いて、プラスミドコンストラクトをさらに確認する。最後に配列分析によってコンストラクトを確認できる。対象とする遺伝子によって発現される酵素活性を特性決定する酵素アッセイを実施するために、陽性プラスミドの酵母形質転換体をSD培地中で生育させる。
【0247】
酵母培養物は、グルコース(SD培地)とプラスミド上の栄養選択マーカーの補完を可能にする適切な化合物混合物を含有する、YPD天然培地または合成最小ドロップアウト培地中で生育させた(「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」、第194巻、「酵母の遺伝学と分子および細胞生物学ガイド(Guide to Yeast Genetics and Molecular および Cell Biology)」(パートA)、Elsevier Academic Press、San Diego,CA)2004年)。SDドロップアウト培地中の糖構成成分は、2%グルコースであった。1−ブタノール生成のために、酵母培養物を2%スクロース添加合成最小ドロップアウト培地(SS培地)中でも生育させた。
【0248】
酵素活性分析のために、各株の単一コロニーをSD最小ドロップアウト培地を含有する新鮮なプレートに画線培養し、30℃で2日間インキュベートした。このプレート上の細胞を使用して、20mLのSDドロップアウト培地に接種し、125mL振盪フラスコ内で、250rpmで振盪しながら30℃で一晩生育させた。一晩培養物の光学濃度(OD600)を測定し、1.0L振盪フラスコ内の250mLの同一培地で培養物をOD600=0.1に希釈して、250rpmで振盪しながら30℃で、0.8〜1.0の間のOD600に生育させた。次に2000×gで10分間の遠心分離によって細胞を収集し、20mLの50mMトリス−HCl緩衝液(pH8.5)に再懸濁した。酵素アッセイを上述のように実施した。
【0249】
thlAおよびhbdの同時発現のためのプラスミドpNY102の構築
thlAおよびhbd遺伝子の同時発現のために、いくつかの二重発現ベクターを構築した。サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)ERG10遺伝子は、thlA遺伝子の機能性オルソログである。最初に酵母GAL1−GAL10分岐二重プロモーターである、GAL1ターミネーター(GAL1t)およびERG10ターミネーター(ERG10t)を使用して、ERG10およびhbdの二重ベクターを構築した。プライマーOT731(配列番号164)およびOT732(配列番号165)を使用して、サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)BY4743株のゲノムDNAから、ERG10遺伝子−ERG10t DNA断片をPCR増幅した。酵母GAL1−GAL10分岐プロモーターはまた、プライマーOT733(配列番号166)およびOT734(配列番号167)を使用して、PCRによってBY4743ゲノムDNAから増幅した。PCRプライマーOT735(配列番号168)およびOT736(配列番号169)を使用して、hbd遺伝子を大腸菌(E.coli)プラスミドpTrc99a−E−C−H−T(実施例13で述べられる)から増幅した。プライマーOT737(配列番号170)およびOT738(配列番号171)を使用して、GAL1tをBY4743ゲノムDNAから増幅した。このようにして各隣接するPCR断片間におよそ25bpの重複配列がある4つのPCR断片、erg10−ERG10t、GAL1−GAL10プロモーター、hbd、およびGAL1tが得られた。GAL1tおよびERG10−ERG10t断片は、それぞれ酵母ベクターpRS425とおよそ25bpの重複配列を含有する。これらの配列をギャップ修復遺伝子組み換えによってアセンブルするために、BamHIおよびHindIII酵素で消化したベクターpRS425と共に、DNA断片を酵母BY4741株に同時形質転換した。SD−Leu最小プレートからコロニーを選択し、挿入断片があるクローンをPCR増幅によって同定した。新しいプラスミドをpNY6(pRS425.ERG10t−erg10−GAL10−GAL1−hbd−GAL1t)と命名した。制限酵素マッピングによって、さらなる確認を実施した。
【0250】
プラスミドpNY6をS.セレヴィシエ(cerevisiae)BY4741に形質転換して調製された酵母BY4741(pNY6)株は、良好なHbd活性を示したが、チオラーゼ活性は示さなかった。チオラーゼ活性の欠損のために、ギャップ修復遺伝子組み換えによって、ERG10遺伝子をthlA遺伝子で置換した。SphI制限部位を付加するプライマーOT797(配列番号172)、およびAscI制限部位を付加するOT798(配列番号173)を使用したPCRによって、thlA遺伝子を大腸菌(E.coli)ベクターpTrc99a−E−C−H−Tから増幅した。プラスミドpNY6をSphIおよびPstI制限酵素で消化し、ゲル精製して、thlAのPCR産物と共に酵母BY4741に同時形質転換した。thlAのPCR産物と消化されたpNY6間の30bpの重複配列のために、GAL10プロモーターとERG10tターミネーターの間で、pNY6にthlA遺伝子を遺伝子組み換えした。これによってプラスミドpNY7(pRS425.ERG10t−thlA−GAL10−GAL1−hbd−GAL1t)が生じ、これはPCRおよび制限酵素マッピングによって確認された。
【0251】
引き続くギャップ修復遺伝子組み換えに基づくクローニングステップでは、pNY7中のGAL10プロモーターをCUP1プロモーターで置換し、GAL1プロモーターを強力なGPDプロモーターで置換した。このプラスミドpNY10(pRS425.ERG10t−thlA−CUP1−GPD−hbd−GAL1t)は、銅誘導性プロモーターであるCUP1下でのthlA遺伝子の発現、およびGPDプロモーター下でのhbd遺伝子の発現を可能にする。プライマーOT806(配列番号174)、およびOT807(配列番号175)を使用して、酵母BY4743ゲノムDNAからCUP1プロモーター配列をPCR増幅した。プライマーOT808(配列番号176)およびOT809(配列番号177)を使用して、GPDプロモーターをBY4743ゲノムDNAから増幅した。CUP1およびGPDプロモーターのPCR産物をNcoIおよびSphI制限酵素で消化したpNY7プラスミドと組み合わせた。このギャップ修復クローニングステップから、プラスミドpNY10を構築し、それをPCRおよび制限酵素マッピングによって確認した。pNY10を含有する酵母BY4741株は、Hbd活性を有したがThlA活性は有さなかった。GPDプロモーター下のHbd活性は、GAL1プロモーター制御Hbd活性と比べて顕著に改善された(1.8U/mg対0.40U/mg)。配列決定分析からは、pNY10中のthlA遺伝子が3’末端近くで1塩基の欠失を有し、それが短縮タンパク質をもたらすことが明らかになった。これが株中のチオラーゼ活性欠損を説明する。
【0252】
プラスミドpNY12を正しいthlA遺伝子配列で構築した。SphIおよびAscIでの消化によってベクターpTrc99a−E−C−H−TからthlA遺伝子を切断した。プライマーOT799(配列番号178)およびOT761(配列番号179)を使用してFBA1プロモーターをBY4743ゲノムDNAからPCR増幅し、SalIおよびSphI制限酵素で消化した。thlA遺伝子断片およびFBA1プロモーター断片をAscIおよびSalI部位でプラスミドpNY10中にライゲートしてプラスミドpNY12(pRS425.ERG10t−thlA−FBA1)を発生させ、それを制限酵素マッピングによって確認した。pNY12を酵母BY4741株に形質転換し、得られた形質転換体は1.66U/mgのThlA活性を示した。
【0253】
pNY12からのFBA1プロモーター−thlA遺伝子断片をpNY10中に再度サブクローニングした。pNY10ベクターをAscI制限酵素で切断し、プラスミドpNY12から単離されたAscI消化されたFBA1プロモーター−thlA遺伝子断片とライゲートした。これによって2つの可能な挿入断片方向がある新しいプラスミドを作り出した。互いに反対方向で隣接して位置するFBA1およびGPDプロモーターによるクローンを選択し、このプラスミドをpNY102と命名した。pNY102(pRS425.ERG10t−thlA−FBA1−GPD−hbd−GAL1t)を制限酵素マッピングによって確認した。pNY102を酵母BY4741株に形質転換してDPD5206株を作った。DPD5206のThlA活性は1.24U/mgであり、Hbd活性は0.76U/mgであった。
【0254】
crt発現のためのプラスミドpNY11の構築
酵母におけるギャップ修復遺伝子組み換えを使用して、ベクターpRS426中でGPM1プロモーター、crt遺伝子、およびGPM1tターミネーターを組み合わせて、crt遺伝子発現カセットを構築した。プライマーOT803(配列番号180)およびOT804(配列番号181)を使用して、酵母BY4743ゲノムDNAからGPM1プロモーターをPCR増幅した。大腸菌(E.coli)プラスミドpTrc99a−E−C−H−TからのPCRプライマーOT785(配列番号182)およびOT786(配列番号183)を使用して、crt遺伝子を増幅した。OT787(配列番号184)およびOT805(配列番号185)を使用して、酵母BY4743ゲノムDNAからGPM1tターミネーターをPCR増幅した。酵母ベクターpRS426をBamHIおよびHindIIIで消化してゲル精製した。GPM1プロモーターPCR産物、crt遺伝子、およびGPM1ターミネーターで、このDNAを酵母BY4741コンピテント細胞に同時形質転換した。正しい挿入断片を有するクローンをPCRおよび制限酵素マッピングによって確認し、得られた酵母BY4741(pNY11:pRS426−GPM1−crt−GPM1t)株は85U/mgのCrt活性を有した。
【0255】
thlA、hbd、およびcrtの同時発現のためのプラスミドpNY103の構築
上流1−ブタノール経路酵素の同時発現のために、pNY11からのcrt遺伝子カセットをプラスミドpNY102中にサブクローニングして、hbd、thlA、およびcrt発現ベクターを作り出した。GPM1プロモーター、crt遺伝子、およびGPM1ターミネーターを含有する2,347bpのDNA断片をSacIおよびNotI制限酵素でプラスミドpNY11から切断し、ベクターpNY102中にクローニングして、それをNotIで消化し、部分的にSacIで消化し、発現ベクターpNY103(pRS425.ERG10t−thlA−FBA1−GPD−hbd−GAL1t−GPM1t−crt−GPM1)を生成した。HindIIIでの消化によるpNY103中の全3つのカセット存在の確認に続き、プラスミドを酵母BY4743細胞に形質転換し、DPD5200と命名された酵母株に形質転換した。標準条件下で生育させた場合、DPD5200は、それぞれ0.49U/mg、0.21U/mg、および23.0U/mgのThlA、Hbd、およびCrt酵素活性を示した。
【0256】
ald発現のためのプラスミドpNY8の構築
サッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)の好ましいコドンを使用して、Terタンパク質(配列番号187)をコードするteryと命名されたコドン最適化遺伝子(配列番号186)、およびAldタンパク質(配列番号189)をコードするaldy(配列番号188)と命名されたコドン最適化遺伝子を合成した。カリフォルニア州パロアルトのDNA2.0(Palo Alto,CA)により、コドン最適化ter遺伝子を含有するプラスミドpTERyとコドン最適化ald遺伝子を含有するpALDyが作られた。
【0257】
pNY8(pRS426.GPD−ald−GPDt)をアセンブルするために、ギャップ修復遺伝子組み換えクローニングを通じて、GPDプロモーターのPCR産物(プライマーOT800(配列番号190)およびOT758(配列番号191)、およびBY4743ゲノムDNAから合成される)、NcoIおよびSfiIでの消化によってpALDyから切除されたaldy遺伝子断片(配列番号188)、およびGPDターミネーターのPCR産物(プライマーOT754(配列番号192)およびOT755(配列番号193)、およびBY4743ゲノムDNAから合成される)を含む3つの挿入断片をBamHIとHindIIIで消化されたpRS426ベクターと遺伝子組み換えした。酵母BY4741形質転換クローンをPCRマッピングによって分析した。このようにして構築された新しいプラスミドpNY8を制限酵素マッピングによってさらに確認した。pNY8を含有する酵母BY4741形質転換体をAld活性について分析し、ブチリル−CoAに対する比活性はおよそ0.07U/mgであった。
【0258】
ter発現のためのプラスミドpNY9およびpNY13の構築
ギャップ修復クローニングによって、FBA1プロモーターの制御下で、コドン最適化tery遺伝子をベクターpRS426中にクローニングした。プライマーOT760(配列番号194)およびOT792(配列番号195)を使用して、酵母BY4743ゲノムDNAからFBA1プロモーターをPCR増幅した。SphIおよびNotI制限酵素によるプラスミドpTERyの消化によってtery遺伝子を得て、配列番号186で示される断片をもたらした。プライマーOT791(配列番号196)およびOT765(配列番号197)を使用したPCRによって、酵母BY4743ゲノムDNAからFBA1ターミネーターのPCR断片が発生した。FBA1プロモーター、ter遺伝子、およびFBA1ターミネーターの3つのDNA断片と、BamHIおよびHindIIIで消化されたpRS426ベクターとを組み合わせ、ギャップ修復遺伝子組み換えによって酵母BY4741に形質転換した。得られたプラスミドpNY9(pRS426−FBA1−tery−FBA1t)をPCRマッピングならびに制限酵素消化によって確認した。pNY9の酵母BY4741形質転換体からは、0.26U/mgのTer活性が生じた。
【0259】
最終1−ブタノール生合成経路株を作るために、それぞれが固有の栄養選択マーカーを有する、いくつかのプラスミドを含有する酵母発現株を構築することが必要であった。親ベクターpRS426はUra選択マーカーを含有したので、His3マーカーを含有するベクターpRS423中に、ter発現カセットをサブクローニングした。FBA1−tery−FBA1tカセットを含有する3.2kb断片をSacIおよびXhoI制限酵素での消化によってプラスミドpNY9から単離し、ベクターpRS423中にライゲートして、それを同じ2つの酵素で切断した。新しいプラスミドpNY13(pRS423−FBA1−tery−FBA1t)を制限酵素消化によってマッピングした。pNY13をBY4741株に形質転換し、形質転換体をSD−His培地中で培養して、0.19U/mgのTer活性がある株を生じさせた。
【0260】
1−ブタノール生成を実証するための1−ブタノール生合成経路遺伝子を含有する酵母株の構築
上述のように、プラスミドpNY103をS.セレヴィシエ(cerevisiae)BY4743株に形質転換して、thlA、hbd、およびcrt遺伝子の同時発現を可能にする酵母DPD5200株を構築した。上述のようにDPD5200の酵母コンピテント細胞を調製し、プラスミドpNY8およびpNY13をDPD5200に同時形質転換して、DPD5213株を生じさせた。DPD5213は、1−ブタノール生合成経路中の5つの遺伝子であるthlA、hbd、crt、terおよびaldの同時構成的発現を可能にする。DPD5212株(空のプラスミドpRS425およびpRS426で形質転換されたS.セレヴィシエ(cerevisiae)BY4743株)を負の対照として使用した。2%グルコースまたは2%スクロースどちらかの存在下、SD−Ura、−Leu、−Hisドロップアウト最少培地上でDPD5213株の4つの独立した単離物を生育させて、全3つのプラスミドの生育補完を可能にした。DPD5212に単一単離物も同様に適切な培地中で生育させた。
【0261】
好気性培養物による1−ブタノール生成を実証するために、SD最小ドロップアウト増殖培地(含有する2%グルコース)またはSS最小ドロップアウト増殖培地(含有する2%スクロース)を含有する新鮮な寒天プレート上に各株の単一コロニーを画線培養し、30℃で2日間インキュベートした。これらのプレートからの細胞を使用して、125mLプラスチック振盪フラスコ内の20mLの最小ドロップアウト培地(SDまたはSSのどちらか)に接種し、250rpmで振盪しながら30℃で一晩生育させた。一晩培養物の光学濃度(OD600)を測定し、125mL振盪フラスコ内の25mLの同一培地で培養物を0.1のOD600に希釈して、250rpmで振盪しながら30℃で生育させた。
【0262】
一般法セクションで述べられるようにして、FID検出による1−ブタノール生成のGC分析(HP−イノワックス(INNOWax)カラム、内径30m×0.53mm、フィルム厚1μm)のために、培養物のアリコートを24時間および48時間除去した。GC分析の結果を表15に示す。
【0263】
【表28】

【0264】
実施例18(予測的)
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)中での1−ブタノール生合成経路の発現
この予測的実施例の目的は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)中でどのように1−ブタノール生合成経路を発現するかについて述べることである。6つの酵素活性をコードする1−ブタノール経路の6つの遺伝子を発現のために2つのオペロンに分割する。ホルス(Hols)ら、Appl.Environ.Microbiol.60:1401〜1413頁、1994年、で述べられる方法を使用した相同的組換えによって、経路の最初の3つの遺伝子(それぞれ酵素アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ、3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、およびクロトナーゼをコードするthl、hbd、およびcrt)をラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)染色体中に組み込む。最後の3つの遺伝子(それぞれ酵素ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼ、ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼ、およびブタノールデヒドロゲナーゼをコードするEgTER、ald、およびbdhB)を発現プラスミド中にクローニングして、組み込まれた上流経路1−ブタノール遺伝子を保有する乳酸桿菌(Lactobacillus)株に形質転換する。ミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(Difco Laboratories(Detroit,MI))からのMRS培地中で、乳酸桿菌(Lactobacillus)を37℃で生育させる。モレイラ(Moreira)ら、BMC Microbiol.5:15頁、2005年、で述べられるようにして、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)から染色体DNAを単離する。
【0265】
組み込み
相同的組換えによって、合成P11プロモーターの制御下にあるthl−hbd−crtカセット((Rud)ら、Microbiology 152:1011〜1019頁、2006年)をラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)ATCC BAA−793(NCIMB8826)の染色体中にldhL1遺伝子座で組み込む。ldhL組み込み標的ベクターを構築するために、ldhLと相同性があるラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)(ジェンバンクNC_004567)からのDNA断片をプライマーLDHEcoRVF(配列番号198)およびLDHAatIIR(配列番号199)でPCR増幅する。1986bpのPCR断片をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングして、配列決定する。pCR4Blunt−TOPO−ldhL1クローンをEcoRVおよびAatIIで消化して1982bpのldhL1断片を放出し、それをゲル精製する。実施例14で述べられる組み込みベクターpFP988をHindIIIで消化し、クレノウ(Klenow)DNAポリメラーゼで処理して末端を平滑化する。次に直線化プラスミドをAatIIで消化し、2931bpベクター断片をゲル精製する。EcoRV/AatIIldhL1断片とpFP988ベクター断片とをライゲートして、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換する。アンピシリン(100μg/mL)含有LB寒天プレート上で形質転換体を選択し、コロニーPCRによってスクリーンして、pFP988−ldhLの構築を確認する。
【0266】
一体化DNAに選択可能なマーカーを付加するために、Cm遺伝子をそのプロモーターと共にpC194(ジェンバンクNC_002013)から、プライマーCmF(配列番号200)およびCmR(配列番号201)でPCR増幅して、836bpのPCR産物を増幅する。単位複製配列をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングし、大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換して、pCR4Blunt−TOPO−Cmを作り出す。配列決定してPCRによるエラーが導入されなかったことを確認した後、CmカセットをpCR4Blunt−TOPO−Cmから828bpのMluI/SwaI断片として消化し、ゲル精製する。ldhL−相同性含有組み込みベクターpFP988−ldhLをMluIおよびSwaIで消化し、4740bpベクター断片をゲル精製する。Cmカセット断片とpFP988−ldhLベクターとをライゲートして、pFP988−DldhL::Cmを作り出す。
【0267】
最後に実施例14で述べられるpFP988Dss−T−H−Cからのthl−hbd−crtカセットを改変して、アミラーゼプロモーターを合成P11プロモーターで置換する。次にオペロン全体をpFP988−DldhL::Cm中に移動させる。プライマーP11F(配列番号202)およびP11R(配列番号203)とのオリゴヌクレオチドアニーリングによって、P11プロモーターを構築する。アニールされたオリゴヌクレオチドをカリフォルニア州サンディエゴのエンビ・テック(Embi Tec(San Diego,CA))からの6%ウルトラPAGEゲル上でゲル精製する。プラスミドpFP988Dss−T−H−CをXhoIおよびSmaIで消化し、9kbpベクター断片をゲル精製する。単離されたP11断片と、消化されたpFP988Dss−T−H−Cとをライゲートして、pFP988−P11−T−H−Cを作り出す。プラスミドpFP988−P11−T−H−CをXhoIおよびBamHIで消化し、3034bpP11−T−H−C断片をゲル精製する。pFP988−DldhL::CmをXhoIおよびBamHIで消化し、5558bpベクター断片を単離する。上流経路オペロンと組み込みベクターとをライゲートして、pFP988−DldhL−P11−THC::Cmを作り出す。
【0268】
外来性thl、hbd、およびcrt遺伝子を含んでなるL.プランタルム(plantarum)ΔldhL1::T−H−C::Cmを形成するためのL.プランタルム(plantarum)BAA−793中へのpFP988−DldhL−P11−THC::Cmの組み込み
ニコロフ(Nickoloff),J.A.編、「分子生物学における方法(Methods in Molecular Biology)」より、第47巻、アウクルスト(Aukrust),T.W.ら、「微生物のための電気穿孔プロトコル(Electroporation Protocols for Microorganisms)」、Humana Press,Inc.,Totowa,NJ、201〜208頁、1995年、で述べられるようにして、L.プランタルム(plantarum)のエレクトロコンピテント細胞を調製する。電気穿孔後、アウクルスト(Aukrust)ら(前出)によって述べられるようにして、細胞をMRSSM培地(0.5Mスクロースおよび0.1MMgClで栄養強化されたMRS培地)中で撹拌せずに37℃で2時間増殖させる。電気穿孔された細胞を選択のためにクロラムフェニコール(10μg/mL)含有MRSプレート上に播種して、37℃でインキュベートする。形質転換体を最初にコロニーPCR増幅によってスクリーンして組み込みを確認し、次に最初の陽性クローンを一群のプライマーでのPCR増幅によってより厳密にスクリーンする。
【0269】
EgTER、ald、およびbdhB遺伝子のプラスミド発現
L.プランタルム(plantarum)ldhLプロモーター(フェライン(Ferain)ら、J.Bacteriol.176:596〜601頁、1994年)の制御下にあるプラスミドpTRKH3(オサリバン(O’Sullivan)DJおよびクラエンハマー(Klaenhammer)TR,Gene 137:227〜231頁、1993年)から、残る3つの1−ブタノール遺伝子を発現する。L.プランタルム(plantarum)ATCC BAA−793のゲノムから、ldhLプロモーターをプライマーPldhLF(配列番号204)およびPldhLR(配列番号205)でPCR増幅する。369bpのPCR産物をpCR4Blunt−TOPO中にクローニングして配列決定する。得られたプラスミドpCR4Blunt−TOPO−PldhLをSacIおよびBamHIで消化し、359bpのPldhL断片を放出する。
【0270】
実施例14で述べられるpHT01−ald−EBをSacIおよびBamHIで消化し、10503bpベクター断片をゲル精製によって回収する。PldhL断片とベクターとをライゲートして、pHT01−Pldhl−ald−EBを作り出す。
【0271】
ldhLプロモーター−ald−EgTER−bdhカセットをサブクローンするために、pHT01−Pldhl−ald−EBをMluIで消化し、末端をクレノウ(Klenow)DNAポリメラーゼで処理する。直線化ベクターをSalIで消化し、PldhL−AEB断片を含有する4270bpの断片をゲル精製する。プラスミドpTRKH3をSalIおよびEcoRVで消化し、ゲル精製されたベクター断片とPldhL−AEB断片とをライゲートする。ライゲーション混合物を大腸菌(E.coli)トップ10細胞に形質転換し、形質転換体をエリスロマイシン(150mg/L)を含有するミシガン州デトロイトのディフコ・ラボラトリーズ(Difco Laboratories、(Detroit,MI))からの脳心臓浸出物(BHI)プレート上に播種する。形質転換体をPCRによってスクリーンし、pTRKH3−ald−E−Bの構築を確認する。上述のように電気穿孔によって、発現プラスミドpTRKH3−ald−E−BをL.プランタルム(plantarum)ΔldhL1::T−H−C::Cmに形質転換する。
【0272】
エリスロマイシン(10μg/mL)を添加した50mLのMRS培地を含有する250mL振盪フラスコに、pTRKH3−ald−E−Bを含有するL.プランタルム(plantarum)ΔldhL1::T−H−C::Cmを接種して、37℃で振盪せずに18〜24時間生育させる。18〜24時間後、一般法セクションで述べられるようにしてHPLCまたはGC分析により、1−ブタノールを検出する。
【0273】
実施例19(予測的)
エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)中での1−ブタノール生合成経路の発現
この予測的実施例の目的は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)中でどのように1−ブタノール生合成経路を発現するかについて述べることである。本実施例において1−ブタノール生合成経路の発現のための宿主株として使用されるエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)V583株の完全なゲノム配列は公開されている(ポールセン(Paulsen)ら、Science 299:2071〜2074頁、2003年)。大腸菌(E.coli)/グラム陽性シャトルベクターであるプラスミドpTRKH3(オサリバン(O’Sullivan)DJおよびクラエンハマー(Klaenhammer)TR,Gene 137:227〜231頁、1993年)を、1オペロン中の1−ブタノール経路の6つの遺伝子(thlA、hbd、crt、EgTER、ald、bdhB)の発現のために使用する。pTRKH3は、大腸菌(E.coli)プラスミドp15A複製基点およびpAMβ1レプリコン、および2つの抗生物質抵抗性選択マーカーであるテトラサイクリン抵抗性およびエリスロマイシン抵抗性を含有する。テトラサイクリン抵抗性は大腸菌(E.coli)中でのみ発現し、エリスロマイシン抵抗性は大腸菌(E.coli)およびグラム陽性細菌の双方で発現する。プラスミドpAMβ1誘導体はE.フェカーリス(faecalis)中で複製できる(ポイヤー(Poyart)ら、FEMS Microbiol.Lett.156:193〜198頁、1997年)。エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)をはじめとする多様なグラム陽性細菌中でのナイシンによる遺伝子発現の効率的な制御のために使用される、誘導性nisAプロモーター(PnisA)(アイヘンバウム(Eichenbaum)ら、Appl.Environ.Microbiol.64:2763〜2769頁、1998年)を使用して、1−ブタノール生合成経路の酵素をコードする6つの所望の遺伝子の発現を制御する。
【0274】
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)ゲノムDNAから、nisAプロモーターを含有する線状DNA断片(215bp)(チャンドラパティ(Chandrapati)ら、Mol.Microbiol.46(2):467〜477頁、2002年)をプライマーF−PnisA(EcoRV)(配列番号206)およびR−PnisA(PmeIBamHI)(配列番号207)でPCR−増幅する。215bpのPCR断片をEcoRVおよびBamHIで消化し、得られたPnisA断片をゲル精製する。プラスミドpTRKH3をEcoRVおよびBamHIで消化し、ベクター断片をゲル精製する。直線化pTRKH3とPnisA断片とをライゲートする。電気穿孔によってライゲーション混合物を大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換し、エリスロマイシン(25μg/mL)含有LB寒天プレート上での37℃での一晩の生育に続いて、形質転換体を選択する。次に形質転換体をプライマーF−PnisA(EcoRV)およびR−PnisA(BamHI)でコロニーPCRによってスクリーンし、pTRKH3−PnisAの正しいクローンを確認する。
【0275】
プラスミドpTRKH3−PnisAをPmeIおよびBamHIで消化し、ベクターをゲル精製する。実施例14で述べられるようにしてプラスミドpHTO1−ald−EgTER−bdhBを構築し、SmaIおよびBamHIで消化し、2,973bpのald−EgTER−bdhB断片をゲル精製する。2,973bpのald−EgTER−bdhB断片をpTRKH3−PnisAベクター中にPmeIおよびBamHI部位でライゲートする。電気穿孔によってライゲーション混合物を大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換し、エリスロマイシン(25μg/mL)含有LB寒天プレート上で37℃で一晩のインキュベーションに続いて、形質転換体を選択する。次に形質転換体をプライマーald フォワードプライマーN27F1(配列番号31)およびbdhB リバースプライマーN65(配列番号44)でコロニーPCRによってスクリーンする。得られたプラスミドをpTRKH3−PnisA−ald−EgTER−bdhB(=pTRKH3−A−E−B)と命名する。
【0276】
形質転換体からプラスミドpTRKH3−A−E−Bを精製し、bdhB遺伝子下流に位置するBamHI部位中への残る遺伝子(thlA、hbd、crt)のさらなるクローニングのために使用する。プラスミドpTRKH3−A−E−BをBamHIで消化し、DNAポリメラーゼのクレノウ(Klenow)断片で処理して平滑末端を作る。実施例14で述べられるようにしてプラスミドpFP988Dss−thlA−hbd−crt(=pFP988Dss−T−H−C)を構築し、SmaIおよびBamHで消化する。得られた2,973bpのthlA−hbd−crt断片をDNAポリメラーゼのクレノウ(Klenow)断片で処理して平滑末端を作り、ゲル精製する。2,973bpのthlA−hbd−crt断片と直線化pTRKH3−A−E−Bとをライゲートする。電気穿孔によってライゲーション混合物を大腸菌(E.coli)Top10細胞に形質転換し、エリスロマイシン(25μg/mL)含有LB寒天プレート上での37℃での一晩生育に続いて、形質転換体を選択する。次に形質転換体をプライマーthlA フォワードプライマーN7(配列番号21)およびcrt リバースプライマーN4(配列番号18)でのコロニーPCRによってスクリーンする。得られたプラスミドをpTRKH3−PnisA−ald−EgTER−bdhB−thlA−hbd−crt(=pTRKH3−A−E−B−T−H−C)と命名する。プラスミドpTRKH3−A−E−B−T−H−Cを大腸菌(E.coli)形質転換体から調製し、当該技術分野で既知の方法(ニコロフ(Nickoloff),J.A.編、「分子生物学における方法(Methods in Molecular Biology)」より、第47巻、アウクルスト(Aukrust),T.W.ら、「微生物のための電気穿孔プロトコル(Electroporation Protocols for Microorganisms)」、Humana Press,Inc.,Totowa,NJ、217〜226頁、1995年)を使用して、電気穿孔によりエレクトロコンピテントE.フェカーリス(faecalis)V583細胞に形質転換し、E.フェカーリス(faecalis)V583/pTRKH3−A−E−B−T−H−Cを得る。
【0277】
nisA調節遺伝子であるnisRとnisK、add9スペクチノマイシン抵抗性遺伝子、およびpSH71複製起点を含有する第2のプラスミドを、電気穿孔によってE.フェカーリス(faecalis)V583/pTRKH3−A−E−B−T−H−Cに形質転換する。pSH71複製起点含を有するプラスミドは、E.フェカーリス(faecalis)中のpAMβ1誘導体と適合性である(アイヘンバウム(Eichenbaum)ら、前出)。エリスロマイシン(25μg/mL)およびスペクチノマイシン(100μg/mL)含有LB寒天プレート上で二重薬剤抵抗性形質転換体を選択する。
【0278】
酵母抽出物(0.2%)(フィシェッティ(Fischetti)ら、J.Exp.Med.161:1384〜1401頁、1985年)、ナイシン(20μg/mL)(アイヘンバウム(Eichenbaum)ら、前出)、エリスロマイシン(25μg/mL)、およびスペクチノマイシン(100μg/mL)で栄養強化された50mLのトッド−ヒューウィット・ブロスを含有する250mL振盪フラスコに、2つのプラスミド、すなわち発現プラスミド(pTRKH3−A−E−B−T−H−C)および調節プラスミド(pSH71−nisRK)を保有する得られたE.フェカーリス(faecalis)V583B株を接種する。フラスコを振盪せずに37℃で18〜24時間インキュベートした後、一般法セクションで述べられるようにしてHPLCまたはGC分析により1−ブタノール生成を測定する。
【図面の簡単な説明】
【0279】
【図1】1−ブタノール生合成経路を示す。「a」、「b」、「c」、「d」、「e」、および「f」と標識されたステップは、下で述べられる基質から産物への変換に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)アセチル−CoAからアセトアセチル−CoAへ、
b)アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへ、
c)3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAへ、
d)クロトニル−CoAからブチリル−CoAへ、
e)ブチリル−CoAからブチルアルデヒドへ、および
f)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへ、よりなる群から選択される、基質から産物への変換を触媒するポリペプチドをコードする少なくとも1つのDNA分子を含んでなる組み換え微生物宿主細胞であって、
少なくとも1つのDNA分子が前記微生物宿主細胞に対して異種であり、前記微生物宿主細胞が1−ブタノールを生成する、上記組み換え微生物宿主細胞。
【請求項2】
アセチル−CoAからアセトアセチル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼである請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項3】
アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドが3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼである請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項4】
3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがクロトナーゼである請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項5】
クロトニル−CoAからブチリル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがブチリル−CoAデヒドロゲナーゼである請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項6】
ブチリル−CoAからブチルアルデヒドへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼである請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項7】
ブチルアルデヒドから1−ブタノールへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがブタノールデヒドロゲナーゼである請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項8】
細胞が、細菌、ラン藻、糸状菌、および酵母よりなる群から選択される請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項9】
細胞が、クロストリジウム(Clostridium)、ザイモモナス(Zymomonas)、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、腸球菌(Enterococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ(Klebsiella)、パエニバチルス(Paenibacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ピヒア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、およびサッカロミセス(Saccharomyces)よりなる群から選択される属のメンバーである請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項10】
細胞が大腸菌(Escherichia coli)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項11】
細胞がアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項12】
細胞がバチルス・リチェニホルミス(Bacillus licheniformis)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項13】
細胞がパエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項14】
細胞がロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項15】
細胞がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項16】
細胞が枯草菌(Bacillus subtilis)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項17】
細胞がラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項18】
細胞が、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)、およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)よりなる群から選択される請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項19】
細胞がサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)である請求項9に記載の宿主細胞。
【請求項20】
アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼが、配列番号2、配列番号4、配列番号129、配列番号131、および配列番号133よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項3に記載の宿主細胞。
【請求項21】
3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼが、配列番号6、配列番号135、配列番号137、および配列番号139よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項4に記載の宿主細胞。
【請求項22】
クロトナーゼが、配列番号8、配列番号141、配列番号143、および配列番号145よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項5に記載の宿主細胞。
【請求項23】
ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼが、配列番号10、配列番号147、配列番号149、配列番号151、および配列番号187よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項24】
ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼが、配列番号12、配列番号153、および配列番号189よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項25】
ブタノールデヒドロゲナーゼが、配列番号14、配列番号16、配列番号153、配列番号155、および配列番号157よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項8に記載の宿主細胞。
【請求項26】
宿主細胞が通性嫌気性菌である請求項1に記載の宿主細胞。
【請求項27】
i)a)アセチル−CoAからアセトアセチル−CoAへ、
b)アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへ、
c)3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAへ、
d)クロトニル−CoAからブチリル−CoAへ、
e)ブチリル−CoAからブチルアルデヒドへ、および
f)ブチルアルデヒドから1−ブタノールへ
よりなる群から選択される、基質から産物への変換を触媒するポリペプチドをコードして、微生物宿主細胞に対して異種である、少なくとも1つのDNA分子を含んでなる組み換え微生物宿主細胞を提供し、そして
ii)1−ブタノールが生成される条件下で、(i)の宿主細胞と発酵性炭素基質とを接触させる
ことを含んでなる1−ブタノールの生成方法。
【請求項28】
発酵性炭素基質が、単糖類、オリゴ糖類、および多糖類よりなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
炭素基質が、グルコース、スクロース、およびフルクトースよりなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項30】
1−ブタノールが生成される条件が嫌気性条件である請求項27に記載の方法。
【請求項31】
1−ブタノールが生成される条件が微好気的条件である請求項27に記載の方法。
【請求項32】
宿主細胞が最少培地中で炭素基質と接触する請求項27に記載の方法。
【請求項33】
アセチル−CoAからアセトアセチル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼである請求項27に記載の方法。
【請求項34】
アセトアセチル−CoAから3−ヒドロキシブチリル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドが3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼである請求項27に記載の方法。
【請求項35】
3−ヒドロキシブチリル−CoAからクロトニル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがクロトナーゼである請求項27に記載の方法。
【請求項36】
クロトニル−CoAからブチリル−CoAへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがブチリル−CoAデヒドロゲナーゼである請求項27に記載の方法。
【請求項37】
ブチリル−CoAからブチルアルデヒドへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼである請求項27に記載の方法。
【請求項38】
ブチルアルデヒドから1−ブタノールへの基質から産物への変換を触媒するポリペプチドがブタノールデヒドロゲナーゼである請求項27に記載の方法。
【請求項39】
宿主細胞が、細菌、ラン藻、糸状菌、および酵母よりなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項40】
宿主細胞が、クロストリジウム(Clostridium)、ザイモモナス(Zymomonas)、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、腸球菌(Enterococcus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、クレブシエラ(Klebsiella)、パエニバチルス(Paenibacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、ピヒア(Pichia)、カンジダ(Candida)、ハンゼヌラ(Hansenula)、およびサッカロミセス(Saccharomyces)よりなる群から選択される属のメンバーである請求項39に記載の方法。
【請求項41】
宿主細胞が大腸菌(Escherichia coli)である請求項40に記載の方法。
【請求項42】
宿主細胞がアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)である請求項40に記載の方法。
【請求項43】
宿主細胞がバチルス・リチェニホルミス(Bacillus licheniformis)である請求項40に記載の方法。
【請求項44】
宿主細胞がパエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)である請求項40に記載の方法。
【請求項45】
宿主細胞がロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)である請求項40に記載の方法。
【請求項46】
宿主細胞がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)である請求項40に記載の方法。
【請求項47】
宿主細胞が枯草菌(Bacillus subtilis)である請求項40に記載の方法。
【請求項48】
細胞がラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)である請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項49】
細胞が、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、エンテロコッカス・ガリナラム(Enterococcus gallinarum)、およびエンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)よりなる群から選択される請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項50】
細胞がサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)である請求項40に記載の宿主細胞。
【請求項51】
アセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼが、配列番号2、配列番号4、配列番号129、配列番号131、および配列番号133よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項33に記載の方法。
【請求項52】
3−ヒドロキシブチリル−CoAデヒドロゲナーゼが、配列番号6、配列番号135、配列番号137、および配列番号139よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項34に記載の方法。
【請求項53】
クロトナーゼが、配列番号8、配列番号141、配列番号143、および配列番号145よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項35に記載の方法。
【請求項54】
ブチリル−CoAデヒドロゲナーゼが、配列番号10、配列番号147、配列番号149、配列番号151、および配列番号187よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項36に記載の方法。
【請求項55】
ブチルアルデヒドデヒドロゲナーゼが、配列番号12、配列番号153、および配列番号189よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項37に記載の方法。
【請求項56】
ブタノールデヒドロゲナーゼが、配列番号14、配列番号16、配列番号153、配列番号155、および配列番号157よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有する請求項38に記載の方法。
【請求項57】
宿主細胞が通性嫌気性菌である請求項27に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−509541(P2009−509541A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533648(P2008−533648)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/038007
【国際公開番号】WO2007/041269
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】