説明

5−炭素還元糖からの耐久性熱硬化性バインダー組成物および木材バインダーとしての使用

【課題】熱硬化性水性バインダー組成物を提供する。
【解決手段】(i)1種以上のジ第1級ジアミン、例えば、リシン、またはポリ(第1級アミン)、例えば、ポリエチレンイミンおよびトリス(2−アミノエチル)アミン、並びに(ii)1種以上の5−炭素還元糖、例えば、キシロースを含む熱硬化性水性バインダー組成物を提供する。このバインダーは少なくとも実質的にホルムアルデヒドを含まず、そして木材もしくは木質材料含有物品、例えば、パーティクルボード、配向ストランドボード、竹の板または物品を提供することができるのに充分低い温度でかつ充分小さな膨潤で素早く硬化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1種以上の5−炭素還元糖を含む水性バインダー組成物、およびさまざまな微粉砕基材材料、特に木材およびリグノセルロース系材料のための硬化性バインダーとしてのその使用、並びにそれから形成される生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
その有利なコスト/性能のせいで、過去において一般的に好まれていた熱硬化性バインダー樹脂はフェノール/ホルムアルデヒド、または尿素/ホルムアルデヒド樹脂であった。ホルムアルデヒド樹脂の用途は広範囲であり、例えば、鉱物およびガラス繊維結合、並びに繊維板および集成材のような木材複合材料を製造するための加圧下での微粉砕木材材料の結合が挙げられる。既存の市販のホルムアルデヒドを含まないバインダーは、最も一般的には、熱硬化の際にエステル化して熱硬化物質を形成するポリカルボン酸ポリマーおよびポリオールを含む。しかし、これらのバインダーは主として石油供給原料由来であることが知られており、石油供給原料は減少していてかつ大きな価格変動を受け、さらに大気中の二酸化炭素に寄与する。さらに、ホルムアルデヒドは非常に毒性であると認識されており、かついくつかの健康官庁によってヒトに対する発がん性物質として分類されており、さらに保健安全(EHS)イニシアチブ並びに新たな規制は、全ての種類の建築材料、特に、ホルムアルデヒドガスを屋内に放出する可能性のある屋内使用が意図されるものにおける複合材料のためのホルムアルデヒドを含まないバインダーを要求している。
【0003】
微粉砕木材から複合材料を製造するのに有用な他の樹脂には、メチレンジイソシアナート(MDI)が挙げられる。この樹脂は素早く硬化するが、ホルムアルデヒド含有樹脂よりもかなり高価であり;さらに、それらは非常に粘着性であり、かつ使用の際にプレスまたはプラテンを汚染することにより処理を台無しにする場合がある。
【0004】
木材複合材料を製造するために、石油原料由来ではなく持続可能な材料から製造される最近のホルムアルデヒドを含まないバインダーが提案されてきた。ジャクソンらへの米国特許出願公開第2010/0087571A1号は、熱硬化性物質としてタンパク質もしくはアミノ酸と還元糖との縮合からのメラノイジンを形成するホルムアルデヒドを含まないバインダー組成物を開示する。http://en.wikipedia.org/wiki/Melanoidinも参照。しかし、これらの組成物は、バインダーとして使用される場合に、木材材料のバインダーとして使用するのに過酷すぎる条件でのみ硬化する。さらに、これらの組成物は不適切な結合強度および防水性を伴う硬化した生成物をもたらす
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0087571A1号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://en.wikipedia.org/wiki/Melanoidin
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、木材含有複合材料およびボード生成物、すなわち、木材もしくは木質材料含有物品を製造するのに充分低い温度で強度を発現する、より耐久性で防水性のホルムアルデヒドを含まないバインダーについての必要性を満たす再生可能な熱硬化性バインダーソースを提供する課題を解決するための、ホルムアルデヒドを含まないバインダーを提供することを求めてきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従うと、水性バインダー組成物は(i)1種以上のジ第1級ジアミン、例えば、リシン、ポリ(第1級アミン)、例えば、5,000以下、好ましくは3,800以下、またはより好ましくは2,500以下の重量平均分子量を有するポリアミン、例えば、ポリエチレンイミン、並びに(ii)5−炭素還元単糖および二糖、その天然もしくは合成の立体異性体もしくは光学異性体、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシもしくはカルボニル置換5−炭素還元単糖および二糖、並びに5−炭素還元単糖および二糖の無水形態から選択される1種以上の5−炭素還元糖を含む。好ましくは、水性バインダー組成物強酸を実質的に含まず、かつポリカルボン酸を実質的に含まない。
【0009】
好適なジ第1級ジアミンまたはポリ(第1級アミン)は400以下、好ましくは200以下のアミン当量を有する。
【0010】
本発明のさらに別の形態においては、ポリ(第1級アミン)は10重量%以上、または好ましくは20重量%以上の第1級アミン基、例えば、エチルアミンを有するポリマーを含む。
【0011】
一実施形態においては5−炭素還元糖は500以下の原子質量単位の式量を有する。好ましい5−炭素還元糖には、例えば、キシロース、アラビノースおよびリボースが挙げられる。他の5−炭素還元糖には、例えば、デオキシリボースが挙げられる。
【0012】
5−炭素還元糖はより大きな式量を有する多糖を含む混合物、例えば、5−炭素還元糖を含む植物供給原料または5−炭素糖を生じさせうる他のアラビノキシラン供給原料などの部分であることができる。これらには、例えば、醗酵ヘミセルロース、例えば、木材もしくは竹からの醗酵ヘミセルロース、酵素分解小麦ブラン、酵素分解トウモロコシ穂軸、酵素分解トウモロコシ繊維、およびこれら植物供給原料のいずれかの酸加水分解生成物が挙げられうる。
【0013】
還元糖における第1級アミンの当量数:カルボニル(アルデヒドもしくはケトンとしての)基の当量数は0.2以上:1、および4以下:1、または2以下:1、または0.4以上:1、または0.6以下:1、または好ましくは0.8以上:1、またはより好ましくは1.6以下:1の範囲であり得る。還元糖における第1級アミン:カルボニルの当量比2:1は、1つのカルボニル基を有する還元糖、例えば、キシロース、1モルにつき等モルのジ第1級ジアミンと同等である。ある用途においては、第1級アミン基:カルボニル基の当量比は0.05:1の低さから〜0.2:1の範囲であり得る。
【0014】
水性バインダー組成物は1種以上のキャッピング剤、例えば、チタナート、ジルコナートまたはアルミナート、例えば、乳酸チタニウムをさらに含むことができる。このようなキャッピング剤は全バインダー固形分を基準にして0.5〜5重量%の量で使用されうる。
【0015】
水性バインダー組成物は硬化中の発熱を制限するために、例えば、(メタ)ビスルフィットもしくはビシニルジオール、例えば、グリセリン、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどの1種以上の還元剤をさらに含むことができる。
【0016】
水性バインダー組成物はさらに1種以上のエキステンダー、例えば、ダイズタンパク質もしくは脱脂ダイズ粉体などを含むことができる。
【0017】
水性バインダー組成物は共重合されたモノマーの全重量を基準にして10重量%以下の共重合されたカルボキシル基含有モノマーを有する分散ポリマーもしくはビニルエマルションをさらに含むことができる。このようなポリマーは共重合されたモノマーの全重量を基準にして30重量%を超える共重合された(メタ)アクリル酸C以上アルキルを含む(メタ)アクリラートコポリマー、または共重合されたモノマーの全重量を基準にして5重量%以下、もしくは好ましくは3重量%以下の共重合されたカルボキシル基含有モノマー、例えば、メタクリル酸を有する(メタ)アクリラートコポリマーであることができる。
【0018】
水性バインダー組成物は全バインダー固形分を基準にして0.2重量%以上、または好ましくは5重量%以下の有機シランをさらに含むことができる。
【0019】
水性バインダー組成物は、C〜C30アルキル(もしくはアルケニル)2−ヒドロキシエチルアルカミド(もしくはアルケナミド)、C〜C30アルキル(もしくはアルケニル)ビス(2−ヒドロキシエチル)アミド、C11〜C30アルキル(もしくはアルケニル)2−ヒドロキシエチルアルカミド(もしくはアルケナミド)、C11〜C30アルキル(もしくはアルケニル)ビス(2−ヒドロキシ−エチル)アミン、C11〜C30アルキル(もしくはアルケニル)トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、C〜C30アルキル(もしくはアルケニル)モノグリセリド、三価ポリオールのC〜C30アルキル(もしくはアルケニル)モノカルボキシラート、(ポリ)アルコキシ化アミド、並びに(ポリ)アルコキシ化アルキル(もしくはアルケニル)モノカルボキシラートから選択される1種以上の防水剤をさらに含むことができる。このような防水剤は、全バインダー固形分を基準にして10重量%以下の量で使用されうる。
【0020】
水性バインダー組成物はリン含有促進剤もしくはエステル化触媒、例えば、ジ亜リン酸アルカリ金属、およびホスホン酸水素アルカリ金属、ホスホン酸モノおよびジアルカリ金属、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸またはホスフィン酸(そのアルカリ金属塩も包含する)をさらに含むことができる。好適な触媒は全バインダー固形分を基準にして0.1重量%以上、または30重量%以下、好ましくは4.0重量%以上、または20重量%以下の量で使用されうる。
【0021】
さらに、本発明は、繊維および微粉砕材料のような基材を水性バインダー組成物で処理し、次いで乾燥させ、熱硬化させる方法を提供する。
【0022】
木材もしくは木質材料含有物品の製造においては、本発明は水性バインダー組成物を微粉砕木材もしくは木質材料と混合し、次いで加圧し、加熱して生成物を形成することを含む方法を提供する。この方法は、微粉砕木材もしくは木質材料を20〜185℃、好ましくは75〜125℃の温度で乾燥させ、その後それらを水性バインダー組成物と混合させることを含むことができる。合板は、水性バインダー組成物が木材層もしくはシートに適用され、そしてそれに木材層もしくはシートが適用され、次いで加圧し、加熱し、場合によっては所望の合板厚みを達成するように繰り返すという別の方法で製造されうる。
【0023】
さらに、本発明は、本発明の方法に従って製造された木材もしくは木質材料含有物品を提供する。このような物品には、例えば、チップボード、パーティクルボードもしくは繊維板、配向ストランドボード、合板、竹の合板および複合材料、および他の集成材、例えば、中密度繊維板(MDF)などが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書において使用される場合、語句「アルキル」とは、1以上の炭素原子を有するあらゆる脂肪族アルキル基を意味し、このアルキル基には、n−アルキル、s−アルキル、i−アルキル、t−アルキル基、または5、6もしくは7員環構造を1以上含有する環式脂肪族が挙げられる。
【0025】
本明細書において使用される場合、語句「水性」とは、水、並びに水と水混和性溶媒とから実質的に構成される混合物を含む。
【0026】
本明細書において使用される場合、語句「エマルションポリマー」とは、水もしくは水性溶媒と一緒にされたときに、水中でポリマーの分散相を形成するポリマーをいう。
【0027】
本明細書において使用される場合、語句「ホルムアルデヒドを実質的に含まない」とは、組成物が添加されたホルムアルデヒドを含まず、かつ組成物が乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアルデヒドを発生させないことをいう。好ましくは、このようなバインダーもしくはこのバインダーを組み込む材料は、このバインダーを乾燥および/または硬化させる結果として、100ppm未満のホルムアルデヒドしか、より好ましくは25未満の、最も好ましくは5ppm未満のホルムアルデヒドしか遊離させない。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「ポリ(第1級アミン)」とは、トリス(2−アミノエチル)アミン、およびポリエチレンイミンのような3つ以上の第1級アミン基を有するあらゆる化合物を意味する。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「ポリマー」は用語「コポリマー」を含み、他に示されない限りは、用語「コポリマー」とは、2種以上の異なるモノマーから製造されるポリマーをいい、例えば、ターポリマー、ペンタポリマー、生成物コポリマー中に2種以上の異なる官能基が存在するように重合後に官能化されたホモポリマー、ブロックコポリマー、セグメント化コポリマー、グラフトコポリマー、およびこれらの混合物または組み合わせ物が挙げられる。(コ)ポリマーとはホモポリマーもしくはコポリマーを意味する。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「強酸を実質的に含まない」とは、組成物が全バインダー固形分を基準にして0.1重量%未満しか鉱酸を含まないことを意味する。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「ポリカルボン酸を実質的に含まない」とは、組成物が、全バインダー固形分を基準にして1.0重量%未満しか、ポリプロトン性ポリカルボン酸をはじめとするポリカルボン酸、例えば、クエン酸、およびポリマー系ポリカルボン酸、例えば、10重量%を超える共重合されたカルボキシル基含有モノマーを有するアクリル系もしくはビニル溶液ポリマーを含まないことを意味する。本明細書において使用される場合、用語「ポリカルボン酸」は、10重量%以下の共重合されたカルボキシル基含有モノマーを有するエマルションポリマーを除外する。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「木材もしくは木質材料」は、あらゆる木材供給材料、木材のあらゆる部分およびあらゆる木質植物材料、例えば、針葉樹、広葉樹、パルプ、樹皮、竹、種子殻、ナッツの殻および他の硬質植物、またはリグノセルロース系材料からの、細断された材料、おがくず、チップ、かんなくず、フレークもしくは砕かれた材料をはじめとするあらゆる形態の微粉砕材料を含む。
【0033】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「重量平均分子量」とはサイズ排除ゲルクロマトグラフィー(SEC)によって決定される物質の分子量をいう。
【0034】
本明細書において使用される場合、「重量%」もしくは「wt.パーセント」とは、固形分を基準にした重量パーセントを意味する。
【0035】
本明細書において使用される場合、語句「全バインダー固形分を基準にして」とは、バインダー中の全ての不揮発性成分(例えば、糖類、第1級アミン、キャッピング剤、シラン、エマルションコポリマー、反応性防水剤など)の全重量と比較した任意の所定の成分の重量をいう。
【0036】
他に示されない限りは、本明細書において使用される科学技術用語は当業者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0037】
他に示されない限りは、丸括弧書きを含む用語は、その丸括弧が存在しないとした全体の用語、およびその丸括弧内に含まれる事項がない用語、およびそれぞれの選択肢の組み合わせを選択的に意味する。よって、用語「(メタ)アクリラート」とは、選択的に、メタクリラート、またはアクリラート、またはこれらの混合物を包含する。
【0038】
同じ成分もしくは特性に関する全ての範囲の端点はその端点を含み、独立して組み合わせ可能である。よって、例えば、0.2以上:1、および4以下:1、好ましくは0.6以上:1、または好ましくは1.0以上:1、または2.0以下:1の開示された比率の範囲は、0.2:1〜1.0:1、0.2:1〜2.0:1、0.2:1〜0.6:1、0.2:1〜4:1、0.6:1〜2.0:1、0.6:1〜1.0:1、0.6:1〜4:1、1.0:1〜2.0:1、および2.0:1〜4:1のいずれかおよび全てを意味する。
【0039】
本明細書に記載される各水性バインダー組成物について、水性組成物がバインダー組成物であり、硬化した組成物が材料もしくは生成物中で微粉砕材料と共に存在する付随の実施形態が存在する。本明細書において定義されるように、用語「微粉砕材料」とは、繊維、薄片、チップ、粒子およびこれらの組み合わせから選択される材料をいう。
【0040】
他に示されない限りは、温度および圧力の条件は室温および標準圧力であり、「周囲条件」とも称される。水性バインダー組成物は周囲条件以外の条件下で乾燥させられうる。
【0041】
本発明の水性バインダー組成物は木材もしくは木質材料として、小麦ブランおよびトウモロコシ繊維並びにヘミセルロースストリームのような天然ソースからの主として再生可能な材料を含む。高温湿潤引張強さひいてはバインダーで処理された生成物の耐久性は本発明の水性バインダー組成物の使用を通じて向上される。さらに、硬化中の物理的特性の素早い発現によって示されるように、この水性バインダー組成物はトウモロコシシロップのような他の天然のもしくは再生可能な供給原料からのデキストロースバインダーと比べて、より低い硬化エネルギーを示す。
【0042】
5−炭素糖および第1級ジアミンもしくは第1級ポリアミンは、フルフラール含有バインダーのような毒性組成物と置き換わる非毒性水性バインダー組成物を提供する。
【0043】
本発明は、水性バインダーの全重量を基準にして、5〜100重量%、または95重量%以下、または好ましくは40重量%以上、または好ましくは50重量%以上、またはより好ましくは70重量%以下の全固形分を含む水性バインダー組成物を提供する。この水性バインダーは、この水性バインダー溶液のいずれかの乾燥により得られうる粉体化されたバインダーも包含する。
【0044】
本発明の水性バインダー組成物は少なくとも1種の5−炭素還元糖を含み、この5−炭素還元糖は単糖もしくは二糖である。本明細書において、還元糖はその開放鎖形態でアルデヒドもしくはケトンを有するあらゆる糖である。これはその糖が還元剤として機能するのを可能にする。糖は、そのアノマー炭素(2つの酸素原子に結合した炭素)がフリーの形態である場合には還元糖であり得る。糖は鎖構造および環構造で存在することができ、そしてこれら2つの形態の間の平衡を有することが可能である。さらに、ある種のケト糖は還元糖である、というのはそれらはカルボニルを鎖の末端に移動させる一連の互変位性変位を介してアルデヒドに変換されることができるからである。この径路は熱硬化プロセス中にアクセス可能になることができた。還元糖には全ての単糖が挙げられる。よって、5−炭素還元糖はそのアルドースもしくはケトース形態の単糖であることができる。ほとんどの二糖も還元糖であり、例えば、5−炭素単糖のダイマーが挙げられうる。
【0045】
好適な5−炭素糖はCn(H2O)nの式[式中、nは5である]を有するアルドースおよび異性化可能なケトース、並びにこれら5炭素糖を含む混合物である。このような5−炭素還元糖の他の天然もしくは合成の立体異性体もしくは光学異性体も水性バインダー組成物の還元糖として有用であることができ;例えば、キシロースの天然に存在する光学異性体であるD−キシロース。5−炭素還元糖は場合によっては、例えば、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシもしくは他の置換基で置換されることができる。さらに、還元糖はキシロースの脱水で生じるフルフラール中間体のような還元単糖もしくは二糖の無水形態を含むことができる。
【0046】
好適な5−炭素還元糖の例には、アルドペントース糖、例えば、リボース、アラビノース、キシロースおよびリキソース;並びに、ケトペントース糖、例えば、リブロース、アラブロース、キシルロースおよびリキスロースが挙げられる。これらのいずれかを含む植物材料は本発明における使用に好適であり、例えば、酸加水分解もしくは酵素処理されたヘミセルロース、例えば、キシロースを含む組成物を生じさせるためにβ−1,4−エンドキシラナーゼおよびβ−キシロシダーゼで分解された小麦ブランが挙げられる。トウモロコシ(穂軸および/または皮)および小麦ブランのような植物材料を分解するのに使用するための1つの好適な酵素は、ジェネンコル(Genencor;ダニスコ(Danisco)A/S、コペンハーゲン、デンマーク)から入手可能なAccelerase商標酵素である。
【0047】
水性バインダー組成物は、例えば、トリオース、テトロース、ヘキソースもしくはヘプトースをはじめとする1種以上の他の還元糖をさらに含むことができる。還元糖には、グルコース、フルクトース、グリセルアルデヒド、ラクトースおよびマルトースが挙げられる。グリセルアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンはそれぞれアルドースおよびケトース糖であるとみなされる。アルドテトロース糖の例には、エリスロースおよびスレオース;並びに、ケトテトロース糖にはエリスルロースが挙げられる。アルドヘキソース糖の例には、グルコール(例えば、デキストロース)、マンノース、ガラクトース、アロース、アルトロース、タロース、グロースおよびイドースが挙げられ;ケトヘキソース糖には、フルクトース、プシコース、ソルボースおよびタガトースが挙げられる。ケトヘプトース糖にはセドヘプツロースが挙げられる。
【0048】
1種以上の6−炭素還元糖は還元糖の全重量を基準にして、75重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下の量で水性バインダー組成物中に存在することができる。
【0049】
好適な第1級ジアミンおよびポリ第1級ポリアミンには、例えば、アルキルジ第1級もしくはより高次の第1級ジアミン、例えば、脂肪族第1級ジアミン、例えば、アミノグアニジンおよびその塩、例えば、塩酸アミノグアニジン、プトレシン、n−アルキレンジアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、および他のアルキレンジアミン;環式脂肪族第1級ジアミン、例えば、ジ−アミノエチルピペラジン;第1級アミン官能性アミノ酸、例えば、リシンおよびアミノグリシン;並びに芳香族ジ第1級アミン、例えば、ビス−(アミノメチル)シクロヘキサン(bisAMC)、ジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミン、例えば、m−キシレンジアミン(MXD);ジアミンオリゴマー、例えば、ジエチレントリアミン;トリアミン、例えば、トリス(2−アミノエチル)アミン(TRIS)、植物および天然由来のタンパク質含有第1級アミン官能性ポリペプチド、例えば、バイオマスゼラチン、並びに第1級アミン基を有するペプチド残基、例えばリシンを3重量%以上有する植物および動物ベースのタンパク質、例えば、ノルランドプロダクツインコーポレーティド(Norland Products Inc.;クランベリー、NJ)によって販売されている魚ゼラチン、およびアルブミン;並びに、所望の分子量のポリアミンポリマー、例えば、ポリエチレンイミン、第1級アミン基を10重量%以上有するポリエチレンイミン含有コポリマーおよびブロックコポリマー、(メタ)アクリル酸n−アミノアルキル、例えば、メタクリル酸アミノエチルの(コ)ポリマー、ポリグアニジン、並びに少なくとも10重量%、好ましくは20重量%の第1級アミン基を有する他の(コ)ポリマーが挙げられうる。このようなポリアミンには、例えば、10重量%のエチレンジアミン基を有する分岐ポリエチレンイミンが存在しうる。1つの好適な環式脂肪族第1級ジアミンは、以前はロームアンドハースカンパニーであったダウアドバンストマテリアルズ(フィラデルフィア、PA)からのPRIMENE商標MDである。
【0050】
一般に、還元糖における第1級アミンの当量数:カルボニル(アルデヒドもしくはケトンとして)基の当量数は、0.2以上:1かつ4以下:1の比率の範囲であるべきである。ある場合のジアミンにおいては、この比率は好ましくは0.8〜1.6:1である。ポリエチレンイミンもしくはトリス(2−アミノエチルアミン)のような3つ以上の第1級アミン基を有するポリ第1級アミンの場合には、第1級アミン:カルボニル当量の好ましい比率はより低く、例えば、0.2:1〜0.6:1である。
【0051】
ゼラチン、アルブミンおよびダイズタンパク質のような天然ソースに由来するポリアミンの場合には、第1級アミン基:カルボニル基の当量数の好ましい比率は、例えば、0.05:1〜0.15:1のように低くてもよい。
【0052】
本発明において有用なキャッピング剤は、例えば、チタナート、ジルコナート、アルミナート、ジンカート、有機スズ塩、アルミニウムのモノおよびジカルボン酸塩、マグネシウムのモノおよびジカルボン酸塩、並びに式MX[式中、Mは金属であり、Xは有機酸、還元糖もしくはアルコキシ(アルキル)基であり、nは1〜5の整数である]を有するキャッピング剤から選択されうる。好適なチタナートおよびジルコナートには、例えば、デュポンによってTyzorの商品名で、例えば、Tyzor商標LA、Tyzor商標131、Tyzor商標TEA、Tyzor商標TE、Tyzor商標217、およびTyzor商標218などの水溶性Tyzorで販売されている有機チタナートおよびジルコナート;ジブチルスズジラウラート、他の有機スズ塩、例えば、スズ(IV)アルコキシラート;アルミニウムもしくはマグネシウムのモノおよびジカルボン酸塩、並びに式MX[式中、Mは金属であり、Xは有機酸、ケト酸、例えば、グルコン酸、還元糖もしくはアルコキシ(アルキル)基であり、nは1〜5の整数である]、例えば、鉄(II)(グルコナート)を有するキャッピング剤が挙げられうる。キャッピング剤は、例えば、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、マグネシウム、スズ、チタンおよびホウ素のクエン酸塩、乳酸塩およびグルコン酸塩;並びにその混合金属塩;有機スズ化合物もしくは塩;並びにアルコールもしくはカルボン酸のチタナートもしくはジルコナートから選択されうる。キャッピング剤の組み合わせも使用されうる。好ましくは、キャッピング剤は水溶性であり、このことは、キャッピング剤が水中で1リットルあたり1グラムを超える溶解度を有することを意味する。
【0053】
水性バインダーのpHが中性〜アルカリ性、例えば、7.0以上、または7.4以上であるように、水性バインダー組成物は追加のアルカリを有しなくてもよい。このような組成物は強酸(3.0以下のpKa)、もしくはポリカルボン酸、またはそのアミンもしくはアンモニア塩を実質的に含まなくてもよい。
【0054】
適応性のバインダーについておよびより適応性の木材含有製品の製造については、水性バインダー組成物はさらにエマルションポリマーを含むことができる。好適なエマルションポリマーは重合単位として、共重合されたモノマーの全重量を基準にして10重量%以下、好ましくは3重量%以下の重合された酸コモノマーを有するアクリル系エマルション、エマルションポリマー固形分の重量を基準にして30重量%を超える、C以上のアルキル基を含むエチレン性不飽和アクリル系モノマーを含む疎水性エマルションポリマー、およびアクリル系もしくはスチレンアクリル系エマルションポリマーを含むことができる。
【0055】
エマルションポリマーを製造するのに使用される好適な酸コモノマーには、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−メチルイタコン酸、a,b−メチレングルタル酸、マレイン酸モノアルキルおよびフマル酸モノアルキル;エチレン性不飽和酸無水物、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アクリル酸、および無水メタクリル酸など;並びに、これらの塩が挙げられうる。(メタ)アクリル酸は好ましいカルボン酸コモノマーである。
【0056】
エマルションポリマーは全バインダー固形分を基準にして1重量%以上、または5重量%以上、または50重量%以下、または30重量%以下の量で組成物中に存在することができる。
【0057】
水性バインダー組成物は有利に、反応性防水剤をさらに含むことができる。アルコキシ化形態の反応性防水剤には、例えば、(ポリ)アルコキシ化三価ポリオールのC〜C30アルキル(もしくはアルケニル)モノカルボキシラート、C〜C30アルキルアミン(もしくはアルケニルアミン)(ポリ)アルコキシラート、C〜C30アルキル(もしくはアルケニル)ジアミン(ポリ)アルコキシラート、アルキル(もしくはアルケニル)アミン基にエーテルもしくはチオエーテル基を含むC〜C30アルキル(もしくはアルケニル)アミン(ポリ)アルコキシラート、並びにこれらの混合物が挙げられうる。反応性防水剤は、全バインダー固形分を基準にして10重量%以下の量で使用されうる。
【0058】
水性バインダー組成物はリグニンおよびリグノスルホナート、殺生物剤;難燃剤、腐蝕抑制剤、例えば、トリアゾールおよびホスファート化合物など、スズオキサラート、チオ尿素、オキサラートおよびクロマート、制塵剤、例えば鉱油など、消泡剤、例えばジメチコンおよびポリ(ジメチコン)、ケイ素ポリマー(ポリシロキサン)油、並びにエトキシ化非イオン性物質のような添加剤をさらに含むことができる。ある実施形態においては、殺生物剤は、バインダー用途の部分としての使用において水性バインダー組成物と共に、別の溶液として適用されることができる。バインダーへの殺生物剤の適用と選択的にもしくはこれと共に、殺生物剤は生成物部位における「白水」に適用されうる。この水は製造された生成物を処理するのに、もしくは適用されたバインダー溶液を製造するのに使用されうる。
【0059】
水性バインダー組成物において使用するのに好適なリグニンおよびリグノスルホナートはその組成物中に存在する有機酸および/またはフェノール系官能基を2重量%を超えて有する水溶性のもしくは水に分散可能なリグニンもしくはリグノスルホナートである。
【0060】
本発明の別の形態においては、水性バインダー組成物は、ダイズ粉体、脱脂ダイズ粉体、ダイズタンパク質単離物およびこれらの変性形態のようなエキステンダーをさらに含むことができる。変性は処理を向上させ、アルカリ(性)亜硫酸水素塩、脱泡剤もしくはこれら双方を含むことによって増大されうる。
【0061】
本発明のさらに別の形態においては、水性バインダー組成物はカップリング剤、例えば、シラン、特にシルクェスト(Silquest商標)A−187(GEシリコーンズ−OSiスペシャリティーズ、ウイルトン、コネティカット州により製造);他のアミノシラン、例えば、3−アミノプロピルジアルコキシシラン、および3−(2−アミノエチル)アミノプロピルシラン;エポキシシラン、例えば、グリシドキシプロピルシラン、ビニルシランおよび疎水性シラン、例えば、加水分解性基(すなわち、アルコキシもしくはエポキシ)含有オクチルシランをさらに含むことができる。
【0062】
水性組成物のホルムアルデヒド含量を最小限にするために、ポリマー含有でホルムアルデヒド非含有の硬化性組成物を製造する際に、重合添加剤、例えば、開始剤、還元剤、連鎖移動剤、硬化剤、殺生物剤、界面活性剤、乳化剤、カップリング剤、消泡剤、制塵剤、フィラーなどを使用するのが好ましく、この重合添加剤はそれ自体がホルムアルデヒドを含まず、またはバインダー形成、適用または硬化中にホルムアルデヒドを含まずもしくは発生させない。
【0063】
本発明は、バインダーを基材に適用し、乾燥させおよび/または硬化させることを含むバインダーを使用する方法を提供する。乾燥(水性形態で適用される場合)および硬化においては、硬化性組成物、加熱の期間および温度は乾燥の速度、処理もしくは取り扱いの容易さ、並びに処理された基材の特性発現に影響を及ぼすであろう。好適な熱処理温度は100℃以上かつ400℃以下の範囲であることができる。好ましい処理は基材依存性である。セルロース繊維のような感熱性基材は100〜175℃の基材温度で処理されうるが、熱に対して感受性が低い複合材料は1540〜200℃の基材温度で処理されることができ、鉱物繊維のような耐熱性基材は硬化をもたらすのに必要な所望の時間、200〜300℃の基材温度で処理されうる。好ましくは、木材および木質基材については、熱処理温度(プラテン温度)は150℃以上の範囲であり、このような好ましい熱処理温度は200℃以下、もしくは175℃以下の範囲であり得る。ある使用方法においては、組成物成分は、バインダーを基材に適用する前に全てあらかじめ混合される必要はない。例えば、1以上の成分は不織基材に適用されることができ、次いで、本発明の他のバインダー成分が水性形態もしくは乾燥形態で適用されうる。適用後、バインダーがその基材上で硬化するのに充分な温度までコーティングされた不織物を加熱することにより、バインダーが硬化されうる。
【0064】
バインダーは、好適な手段、例えば、エアスプレイ、エアレススプレイ、パディング、飽和、ロールコーティング、カーテンコーティング、ビーター堆積、凝集、またはディップおよびスクイーズ適用などによって、例えば、繊維のウェブなどの基材に適用されることができ、支持ワイヤまたはスクリーン上にある得られた飽和湿潤ウェブは1以上の真空ボックス上を通されて、生成物もしくは処理された基材において望まれるバインダー含量を達成するのに充分なバインダーを除去する。
【0065】
乾燥および硬化は所望の場合には2以上の別個の工程で行われることができる。例えば、硬化性組成物は最初に、組成物を少なくとも部分的に乾燥させるのに充分であるが、完全に硬化させない時間および温度で加熱されることができ、次いで、硬化をもたらすために、第2の時間で、より高い温度で、および/またはより長い時間で加熱することができる。「B−ステージング」と称されるこのような手順は、バインダー処理された不織物を提供するために、例えば、ロール形態で、後に硬化されることができ、この硬化プロセスと同時に具体的な形状への形成もしくは成形を伴うかまたは伴わずに使用されうる。
【0066】
バインダー適用に好適な基材には、例えば、織物、例えば、綿、リネン、羊毛およびポリエステル、レーヨンもしくはナイロンからの合成織物、並びに超吸収繊維;植物もしくはセルロース系繊維、例えば、ジュート、サイザル、亜麻、綿および動物繊維;並びに、耐熱性基材、例えば、金属;プラスチック;合成繊維、例えば、ポリエステル、レーヨン、ポリ(アクリロニトリル)(PAN)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリオレフィン、2種以上の繊維形成性ポリマー、例えば、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタラートなどを含む2成分繊維;鉱物繊維、例えば、ガラスおよび鉱物繊維、スラグもしくはストーンウール、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、並びにそれらから製造された織物および不織布;並びに、感熱基材、例えば、木材、例えば、固体木材、木材粒子、繊維、チップ、粉体、パルプおよびフレーク;紙およびボール紙が挙げられうる。
【0067】
本発明のバインダーは好ましくは不織ウェブを処理するために使用されうる。「不織ウェブ」とは、天然および/または合成繊維から、その繊維がランダムまたは半ランダムな状態で(すなわち、意図的に秩序づけられずに)配列されるように、例えば、ニードルパンチング、スパンボンディング、スパンレースウェブ、メルボブローウェブ、エアレイド(ドライレイド)プロセスにより、およびウェットレイドプロセスによるような機械的手段によって;および/もしくは、例えば、ポリマーバインダーでの処理のような化学的手段により、またはこれらの組み合わせによって製造されたあらゆる物品もしくはシート状形態をいう。鉱物繊維はウェブの形態で、すなわち、形成チャンバーに吹き込まれ、バインダーを噴霧し、コンベア上にウェブとして堆積されうる。ウェブ形成プロセス中に(主として機械方向の)繊維の幾分かの秩序化が起こる。本発明での使用に好適な不織ウェブの定義に含まれるのは、化学処理もしくは機械処理の作用によって製造される多孔膜(例えば、開口膜)である。
【0068】
基材への湿潤もしくは未硬化のバインダー添加量は、仕上がった基材の2重量%以上、または6重量%以上、または40重量%以下、好ましくは硬化前の処理された乾燥基材の全重量を基準にして10重量%以上、または最も好ましくは4〜25重量%の範囲であることができる。粉体バインダーは、硬化前の処理された乾燥基材の全重量を基準にして2〜15重量%の量で使用されることができた。
【0069】
本発明は、100:1〜1:1,好ましくは25以下:1、または好ましくは3以上:1の重量比の微粉砕木材もしくは木質材料と本発明の水性バインダー組成物との混合物から形成される木材もしくは木質材料含有物品をさらに提供する。
【0070】
本発明に従った木材、木質またはリグノセルロース系材料含有物品を形成するための方法は、水性バインダー組成物と微粉砕木材、木質もしくはリグノセルロース系材料とを混合し、次いで高温で加圧することを含む。パーティクルボード、チップボードおよび繊維板生成物については、加圧(プラテン)温度は20〜250℃、最も好ましくは70〜200℃の範囲であることができる。積層床材もしくはベニヤ床材生成物のような積層生成物については、好ましい加圧(プラテン)温度は70℃〜約175℃の範囲であることができる。
【0071】
加圧時間および加圧温度は、より低い加圧温度が概してより長い加圧時間を必要とするように関連している。生産される木材ベースの生成物も好適な加圧温度および加圧時間を決定する。好適な加圧時間は10秒〜60分、または好ましくは30秒以上、または30分以下、または最も好ましくは1分以上、または5分以下の範囲であることができる。
【0072】
水性バインダー組成物との混合の前の微粉砕木材もしくは木質材料の乾燥においては、好適な材料の水分含量は、木材もしくは木質材料の全重量を基準にして0〜20重量%、好ましくは10重量%以下、またはより好ましくは1〜8重量%の範囲であることができる。
【0073】
本発明のバインダーについてのいくつかの好適な用途には、例えば、室内家具、トリムおよび成形品のための非構造化複合材料、板および積層物、例えば、床用材料、ベニヤ家具材料、ベニヤ床材、積層床材、壁パネル、または複合材料生成物、例えば、パーティクルボード、繊維板、チップボードもしくは配向ストランドボードが挙げられる。
【0074】
水性バインダー組成物のための他の好適な用途および基材には、例えば、フィルター媒体のような紙、板紙、ボール紙のウェットエンド形成、およびドライエンド処理もしくはコーティング;並びに織布および不織布の製造および処理、例えば、ガラス繊維およびストーンウール断熱バット、ポリエステルおよびスパンボンド屋根用シングル材、下張りおよびスクリム、および石膏板フェーシング、並びにろ過媒体、例えばエアフィルターおよびオイルフィルターが挙げられうる。
【実施例】
【0075】
以下の実施例は本発明をより良好に示すために提供され、本発明は実施例によって限定されることを意図していない。
【0076】
例1〜12:水性バインダー組成物における5−炭素糖の硬化速度
硬化速度を測定するために動的機械的分析(DMA)が使用された。小さな角度の振動性歪みが反応サンプルに適用され、生じた応力が「インフェース(in phase)」(G’固体状応答)および「アウトオブフェース(out of phase)」成分(G’’液体状応答)に分解された。応力応答が歪みより遅れることによる相角度はデルタdとして知られており、tan(d)はG’’:G’の比率である。小さな適用歪みについては、このシステムは液体−固体遷移を通じて連続的に測定されうる。使用される装置は、TAユニバーサルアナリシス2000ソフトウェアを使用して行われる数学的解析を伴う、デュアルカンチレバークランプを備えたTAインスツルメンツDMA Q800、モデル♯2980(TAインスツルメンツインコーポレーティド、ニューカッスル、DE)であった。試験においては、以下のパラメーターが使用された。
温度勾配:4℃/分、30℃〜250℃。
基材:12.7mm×34.0mmワットマン(Whatman登録商標)GF/B濾紙(サンドウィッチとしての2つのストリップ)。
サンプル添加:30重量%溶液を0.500g(試薬混合物の30重量%水溶液を約4滴/ストリップ)。
【0077】
TAユニバーサルアナリシス2000における以下の方法によって、特有の硬化温度が分析された。温度に対する貯蔵弾性率(G’)プロットにおいて、硬化開始領域および最終硬化領域におけるG’の「シグナル最大値」に対応する点が示された。次いで、シグナル最大点に対してタンジェントのラインと「ガラス/ステップ遷移」を使用する変曲点に対するタンジェントのラインとの切片として硬化開始温度Tonsetが決定された。ピーク弾性率(G’)での点に対してタンジェントの水平ラインと変曲点に対してタンジェントのラインとの切片として最終硬化温度Tfinalが決定された。硬化時間は4℃/分の加熱速度での硬化の開始から終わりまでの時間であった。
【0078】
【表1】

試薬:99%D−(+)−キシロース(アクロス(ACROS)、ニュージャージー州、米国);97%L−リシン(SACFサプライ、セントルイス、ミズーリ州);99%D−(+)−デキストロース無水物(アクロス、ニュージャージー州、米国);98重量%1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン=bis−(amcycl)(アクロス、ニュージャージー州、米国);ポリエチレンイミン、低Mw(2000)50%水中=PEI(シグマアルドリッチ、ミルウォーキー、ワイオミング州);TRIS=トリス(2−アミノエチル)−アミン、96%(シグマアルドリッチ)。
【0079】
上記表1に示されるように、5−炭素糖であるキシロースを含む実施例1、3、5、および7におけるバインダーは、6−炭素糖であるデキストロースを含む例2、4、6、および8におけるバインダーよりもかなり早く硬化し;本発明の実施例1、3、5、および7の全ては、比較例よりも実質的に低い温度特にTfinalにおいて硬化した。使用されたアミンにかかわらず、同じ比較の結果が得られた。
【0080】
例9〜12:水性バインダー組成物における他の5−炭素糖
50重量%の水性試薬混合物が使用されたことを除いて、上記例1〜8におけるようにDMA分析が繰り返された。他に示された点を除いて、全ての試薬は例1〜6において同じであった。
【0081】
【表2】

試薬:99%D−リボース、アクロス;99%D−アラビノース、フィッシャーバイオリージェンツ(フェアローン、ニュージャージー州)。
【0082】
上記表2に示されるように、実施例10、11および12において、それぞれ、5−炭素糖であるキシロース、アラビノースおよびリボースを含むバインダーは全て、例9における6−炭素糖であるデキストロースを含むバインダーよりもかなり早く硬化した。全ての5−炭素バインダーは実質的により低い温度、特にTfinalで硬化した。
【0083】
例13〜15:パーティクルボード膨潤
木材に適用するためのバインダーの製造:
【0084】
例13:デキストロース/bis−(amcycl)
50%デキストロース水溶液140グラムが1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの50%水溶液60グラムと混合された。次いで、この樹脂混合物132グラムが14グラムの脱イオン水に添加された。得られた溶液は、次いで、「エクストラリーチ」拡張を伴うワグナーコントロールスプレー(Wagner Control Spray商標)HVLPパワー噴霧器(ワグナースプレーテック、ミネアポリス、ミネソタ州)を用いてタンブリング小型セメントミキサー内に噴霧され、このミキサーはオーブン乾燥された微粒子サイズの木材(105℃で約2時間乾燥し、約1〜2%の水分含量すなわち98〜99%の木材固形分)835グラムを収容していた。
【0085】
実施例14:(1/2キシロース / 1/2デキストロース)とbis−(amcycl)
50%キシロース水溶液70グラムおよび50%デキストロース水溶液70グラムが1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの50%水溶液60グラムと混合された。次いで、この樹脂混合物132グラムが14グラムの脱イオン水に添加された。得られた溶液は、次いで、「エクストラリーチ」拡張を伴うワグナーコントロールスプレーHVLPパワー噴霧器を用いてタンブリング小型セメントミキサー内に噴霧され、このミキサーはオーブン乾燥された微粒子サイズの木材(105℃で約2時間乾燥し、約1〜2%の水分含量すなわち98〜99%の木材固形分)835グラムを収容していた。
【0086】
実施例15:キシロース/bis−(amcycl)
50%キシロース水溶液140グラムが1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの50%水溶液60グラムと混合された。次いで、この樹脂混合物132グラムが14グラムの脱イオン水に添加された。得られた溶液は、次いで、「エクストラリーチ」拡張を伴うワグナーコントロールスプレーHVLPパワー噴霧器を用いてタンブリング小型セメントミキサー内に噴霧され、このミキサーはオーブン乾燥された微粒子サイズの木材(105℃で約2時間乾燥し、約1〜2%の水分含量すなわち98〜99%の木材固形分)835グラムを収容していた。
【0087】
パーティクルボード形成:
2つの面上に12.7mmのストップを含むアルミニウムシート上に配置された279.4mm×279.4mm×76.2mmの深型枠箱を用いて3層の予備加圧パーティクルボードサンプルが形成され、薄いマイラープラスチックシートで覆われた。
【0088】
例13A:デキストロース/bis−(amcycl)
上記例からの木材約817グラムが箱の中で均一に広げられた。この「予備板」は、次いで、平坦なプランジャーで圧縮され、型枠箱が除かれた。追加のマイラープラスチックシートおよびアルミニウムシートがその板の上面に配置された。次いで、この板はカーバー(Carver;モデル4533、381mm×381mmプラテン、ワバッシュ、インディアナ州)ホットプレスに入れられ、300秒間、165℃で50,000ポンドの圧力で加圧された。この板は、次いで、プレスから取り出され室温まで冷却された。次いで、この板は帯のこを用いて50.8mm×50.8mmの16片に切り出され、一定の温度(77°F、25℃)および湿度(50%)の部屋で一晩貯蔵された。
【0089】
実施例14A:1/2キシロース / 1/2デキストロースとbis−(amcycl)
上記実施例14からのデキストロース/キシロースバインダーの50/50ブレンドを用いて、上記例13Aにおけるパーティクルボード形成が繰り返された。
【0090】
実施例15A:キシロース/bis−(amcycl)
上記実施例15からのキシロースバインダーを用いて、上記例13Aにおけるパーティクルボード形成が繰り返された。
【0091】
膨潤測定は、一晩コンディショニングされたサンプルについて、ASTM D1037−06aセクション23(2006)で行われた。各板(板の様々な領域から採取された)からの8つの試験片が試験され、8つの試験片からの平均値および標準偏差が報告された。結果は膨潤厚さ(最終厚さ−当初厚さ)を当初厚さで割ったパーセントで報告される。
【0092】
【表3】

【0093】
上記表3に示されるように、実施例14および15における、5−炭素還元糖バインダー、5−炭素および6−炭素糖のブレンドを用いてそれぞれ製造された板におけるパーティクルボード膨潤は、例13において6−炭素糖であるデキストロースを用いて製造された板における膨潤よりも実質的に小さかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)1種以上のジ第1級ジアミンまたはポリ(第1級アミン)、並びに
(ii)還元単糖、還元二糖、その立体異性体、その光学異性体、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシもしくはカルボニル置換還元単糖、ヒドロキシ、ハロ、アルキル、アルコキシもしくはカルボニル置換還元二糖、無水還元単糖および無水還元二糖から選択される1種以上の5−炭素還元糖:
を含み、
(i)がポリ(第1級アミン)である場合には、それは5,000以下の重量平均分子量、およびポリアミンの全重量を基準にして10重量%以上の第1級アミン基を有するポリアミンである、
水性バインダー組成物。
【請求項2】
(i)ジ第1級ジアミンまたはポリ(第1級アミン)が400以下のアミン当量を有する、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項3】
5−炭素還元糖における第1級アミンの当量数:カルボニル基の当量数が0.2以上:1の範囲である、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項4】
5−炭素還元糖以外の還元糖を1種以上さらに含む、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項5】
還元剤またはビシニルジオールをさらに含む、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項6】
リグニンまたはリグノスルホナートをさらに含む、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項7】
エキステンダーをさらに含む、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項8】
リン含有促進剤またはエステル化触媒をさらに含む、請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の水性バインダー組成物を微粉砕木材もしくは木質材料と混合し、このようにして形成された混合物を加圧および加熱して生成物を形成することを含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法に従って製造された、木材もしくは木質材料含有物品。

【公開番号】特開2012−36369(P2012−36369A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−84141(P2011−84141)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】