説明

5階調フォトマスクの製造方法及びパターン転写方法

【課題】エッチング回数を3回として5階調を得ることができる5階調フォトマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板上にエッチング選択性のある第1半透光膜と遮光膜とをこの順に有するフォトマスクブランクを準備する工程と、遮光膜上に第1レジストパターンを形成する工程と、第1レジストパターンをマスクとして遮光膜をエッチングして第1のパターニングを行う工程と、第1レジストパターンを除去し、第2レジストパターンを形成する工程と、第2レジストパターンをマスクとして第1半透光膜をエッチングして第2のパターニングを行う工程と、第2レジストパターンを除去し、基板全面に第1半透光膜とエッチング選択性のある第2半透光膜を形成する工程と、第2半透光膜上に第3レジストパターンを形成する工程と、第3レジストパターンをマスクとして第2半透光膜をエッチングして第3のパターニングを行う工程とを有することにより、エッチング回数を3回として5階調を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置(Liquid CrystalDisplay:以下、LCDと称する)製造等に好適に用いられる5階調フォトマスクの製造方法及び5階調フォトマスク、並びに当該フォトマスクを用いたパターン転写方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、LCDの分野において、薄膜トランジスタ液晶表示装置(Thin FilmTransistor Liquid Crystal Display:以下、TFT−LCDと呼ぶ)は、CRT(陰極線管)に比較して、薄型にしやすく消費電力が低いという利点から、現在商品化が急速に進んでいる。TFT−LCDは、マトリックス状に配列された各画素にTFTが配列された構造のTFT基板と、各画素に対応して、レッド、グリーン、及びブルーの画素パターンが配列されたカラーフィルターが液晶相の介在の下に重ね合わされた概略構造を有する。TFT−LCDでは、製造工程数が多く、TFT基板だけでも5〜6枚のフォトマスクを用いて製造されていた。このような状況の下、TFT基板の製造を4枚のフォトマスクを用いて行う方法が提案されている。
【0003】
この方法は、遮光部と透光部の他に半透光部(グレートーン部)を有するグレートーンマスクと称されるフォトマスクを用いることにより、使用するマスク枚数を低減するというものである。ここで、半透光部とは、マスクを使用してパターンを被転写体に転写する際、透過する露光光の透過量を所定量低減させ、被転写体上のフォトレジスト膜の現像後の残膜量を制御する部分をいう。
【0004】
ここで用いられるグレートーンマスクとしては、半透光部が、グレートーンマスクを使用するLCD用露光機の解像限界以下の微細パターンで形成されている構造のものが知られている。また、半透光部を半透過性の半透光膜とする構造のものも従来知られている。何れの構造のものであっても、この半透光部での露光量を所定量少なくして露光することが出来、被転写体上に、レジスト残膜値の異なる2つの転写パターンを転写することができることから、1枚のグレートーンマスクを用いて従来のフォトマスク2枚分の工程が実施されることにより、マスク枚数が削減される。
【0005】
上記グレートーンマスクは、遮光部と透光部と半透光部とを有し、露光光透過率を3段階に変化させる3階調のフォトマスクである。したがって、1枚のさらに多階調のフォトマスクを用いれば、さらにマスク枚数を削減することが可能になる。
【0006】
従来、レジストパターンの形成と金属化合物等の膜のエッチングとを所望回数繰り返すことにより得られる、光透過率が3段階以上の多段階に変化する多階調フォトマスクが下記特許文献1に開示されている。また、遮光部と透光部の他にそれぞれ異なる光透過率の第1半透光部と第2半透光部を有する4階調フォトマスクをリソグラフィ工程により少ない描画回数で製造できる4階調フォトマスクの製造方法が下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−146259号公報
【特許文献2】特開2007−249198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された多階調フォトマスクの製造方法の場合、金属化合物等の膜をエッチングする回数と、そのエッチングマスク用のレジストパターンを形成するための描画回数とが同一回数となるため、所望の多階調とするためには描画回数が増大してしまう。例えば、露光光透過率を5段階以上に変化させる多階調フォトマスクを製造するためには、少なくとも4回以上の描画を行わなければならず、描画回数が増えれば、その位置合わせを高精度に行うことが困難になり、形成されるマスクパターン精度に影響する。近年、TFT基板の製造等においても、より微細なパターンを形成することが要求されてきており、フォトマスク上のパターン精度は非常に重要である。フォトリソグラフィ工程の回数が増えることは、欠陥などの不都合が生じる確率が増大することでもあり、単純に階調を増加させることには懸念がある。
【0009】
また、上記特許文献2に開示された4階調フォトマスクの製造方法によれば、フォトリソグラフィ工程によって描画回数を2回に低減して、4階調のフォトマスクを製造することができるが、さらに多階調、例えば5階調のフォトマスクを製造する場合、上記の4階調フォトマスクに限定された製造方法をそのまま適用することは勿論できない。
【0010】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、5階調のフォトマスクを少ない半透光膜の膜数と少ない描画回数で製造できる5階調フォトマスクの製造方法を提供することを第1の目的とする。また、本発明は、微細パターンが高精度に形成された5階調フォトマスクを提供することを第2の目的とする。さらに、上記5階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を提供することを第3の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)透明基板上に、遮光部、透光部、及びそれぞれ露光光透過率の異なる第1半透光部と第2半透光部と第3半透光部からなるマスクパターンを有する5階調フォトマスクの製造方法であって、透明基板上に、エッチャントに対するエッチング選択性のある第1半透光膜と遮光膜とをこの順に有するフォトマスクブランクを準備する工程と、前記フォトマスクブランクの前記遮光膜上に形成したレジスト膜を描画、現像して第1レジストパターンを形成する工程と、前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングして第1のパターニングを行う工程と、前記第1レジストパターンを除去した後、パターニングされた前記遮光膜を含む面上に形成したレジスト膜を描画、現像して第2レジストパターンを形成する工程と、前記第2レジストパターンをマスクとして前記第1半透光膜をエッチングして第2のパターニングを行う工程と、前記第2レジストパターンを除去した後、パターニングされた前記遮光膜及び前記第1半透光膜を含む基板全面に、前記第1半透光膜とのエッチャントに対するエッチング選択性のある第2半透光膜を形成する工程と、前記第2半透光膜上に形成したレジスト膜を描画、現像して第3レジストパターンを形成する工程と、前記第3レジストパターンをマスクとして前記第2半透光膜をエッチングして第3のパターニングを行う工程とを有することを特徴とする5階調フォトマスクの製造方法。
【0012】
(構成2)透明基板上に、遮光部、透光部、及びそれぞれ露光光透過率の異なる第1半透光部と第2半透光部と第3半透光部からなるマスクパターンを有する5階調フォトマスクの製造方法であって、透明基板上に遮光膜を有するフォトマスクブランクを準備する工程と、前記フォトマスクブランクの前記遮光膜上に形成したレジスト膜を描画、現像して第1レジストパターンを形成する工程と、前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をエッチングして第1のパターニングを行う工程と、前記第1レジストパターンを除去した後、パターニングされた前記遮光膜を含む基板全面に第1半透光膜を形成する工程と、前記第1半透光膜上に形成したレジスト膜を描画、現像して第2レジストパターンを形成する工程と、前記第2レジストパターンをマスクとして前記第1半透光膜をエッチングして第2のパターニングを行う工程と、前記第2レジストパターンを除去した後、パターニングされた前記遮光膜及び前記第1半透光膜を含む基板全面に、前記第1半透光膜とのエッチャントに対するエッチング選択性のある第2半透光膜を形成する工程と、前記第2半透光膜上に形成したレジスト膜を描画、現像して第3レジストパターンを形成する工程と、前記第3レジストパターンをマスクとして前記第2半透光膜をエッチングして第3のパターニングを行う工程とを有することを特徴とする5階調フォトマスクの製造方法。
【0013】
(構成3)前記第1半透光部、前記第2半透光部、及び前記第3半透光部は、前記第1半透光膜、前記第2半透光膜、前記第1半透光膜と前記第2半透光膜の積層膜のそれぞれいずれかにより形成されていることを特徴とする構成1又は2に記載の5階調フォトマスクの製造方法。
(構成4)前記遮光膜及び前記第2半透光膜はいずれもクロムを主成分とした材料からなり、前記第1半透光膜はモリブデンシリサイドを主成分とした材料からなることを特徴とする構成1乃至3のいずれか一に記載の5階調フォトマスクの製造方法。
【0014】
(構成5)透明基板上に、遮光部、透光部、及びそれぞれ露光光透過率の異なる第1半透光部と第2半透光部と第3半透光部からなるマスクパターンを有し、前記遮光部は、少なくとも前記透明基板上に形成された遮光膜により形成され、前記透光部は、露出した前記透明基板により形成され、前記第1半透光部、前記第2半透光部、及び前記第3半透光部は、前記透明基板上に形成された、露光光透過率の異なる第1半透光膜と第2半透光膜、前記第1半透光膜と前記第2半透光膜の積層膜のうちのそれぞれいずれかにより形成されていることにより、露光光透過率を5段階に変化させることを特徴とする5階調フォトマスク。
(構成6)前記遮光膜及び前記第2半透光膜はいずれもクロムを主成分とした材料からなり、前記第1半透光膜はモリブデンシリサイドを主成分とした材料からなることを特徴とする構成5に記載の5階調フォトマスク。
【0015】
(構成7)構成1乃至4のいずれかに記載の製造方法によるフォトマスク、あるいは、構成5又は6に記載のフォトマスクを用いて、被転写体に露光光を照射する露光工程を有し、被転写体上に5階調の転写パターンを形成することを特徴とするパターン転写方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の5階調フォトマスクの製造方法によれば、遮光膜の他に、互いに露光光透過率の異なる第1半透光膜と第2半透光膜との組み合わせを用い、フォトリソグラフィ法によって描画回数を3回に低減して、露光光透過率が5段階に異なる5階調のフォトマスクを製造することができる。
また、上述のように描画回数を3回に低減して製造できることにより、微細パターンが高精度に形成された5階調のフォトマスクが得られる。
また、本発明に係る5階調フォトマスクを用いたパターン転写方法によれば、精度の高い多階調のパターン転写を実施することができ、またその結果、例えばTFT基板の製造等においてマスク枚数の大幅な削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る5階調フォトマスクの第1の実施の形態と、当該5階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を説明するための断面図である。
【図2】上記第1の実施の形態に係る5階調フォトマスクの製造工程を工程順に示す断面図である。
【図3】本発明に係る5階調フォトマスクの第2の実施の形態と、当該5階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を説明するための断面図である。
【図4】上記第2の実施の形態に係る5階調フォトマスクの製造工程を工程順に示す断面図である。
【図5】遮光部Aに挟まれた半透光部Bのパターン(同図(1))と、該半透光部Bの透過光の光強度分布(同図(2))を示し、同図(a)は半透光領域の幅が4μm、同図(b)は2μmの場合を示す。
【図6】チャネル幅と該チャネル幅に対応した幅の半透光部における露光光の透過率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づき説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本発明に係る5階調フォトマスクの第1の実施の形態と、当該5階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を説明するための断面図である。
図1に示す5階調フォトマスク10は、例えば液晶表示装置(LCD)の薄膜トランジスタ(TFT)やカラーフィルタ、またはプラズマディスプレイパネル(PDP)などを製造するための多階調グレートーンマスクとして用いられるものであり、図1に示す被転写体20上に、膜厚が段階的または連続的に異なるレジストパターン23を形成するものである。なお、図1中において符号22A、22B、22C、22Dは、被転写体20において基板21上に積層された膜を示す。
【0019】
上記本実施の形態のフォトマスク10は、具体的には、当該フォトマスク10の使用時に露光光を遮光(透過率が略0%)させる遮光部11と、ガラス基板等の透明基板14の表面が露出して露光光を透過させる透光部12と、透光部12の露光光透過率を100%としたとき透過率を10〜80%程度、好ましくは、20〜70%程度の範囲内に低減させ、この範囲内において露光光透過率が3段階に異なる第1半透光部13Aと第2半透光部13Bと第3半透光部13Cとを有して構成されている。上記半透光部は、透明基板14上に光半透過性の半透光膜が形成されて構成され、本実施の形態では、そのうちの第1半透光部13Aは、露光光波長に対する透過率のそれぞれ異なる第1半透光膜16と第2半透光膜17の積層膜により形成され、第2半透光部13Bは上記第1半透光膜16により形成され、また第3半透光部13Cは上記第2半透光膜17により形成されている。また、上記遮光部11は、透明基板14上に、上記第1半透光膜16、遮光層15a及び反射防止層15bの積層からなる遮光膜15、及び上記第2半透光膜17が順に設けられて形成されている。したがって、上記フォトマスク10は、露光光透過率が5段階に異なる5階調のフォトマスクとなっている。なお、図1に示す遮光部11、透光部12、及び半透光部13A〜13Cのパターン形状はあくまでも一例である。
【0020】
上述のような5階調フォトマスク10を使用して、被転写体20へのパターン転写を行ったときに、遮光部11では露光光が実質的に透過せず、透光部12では露光光が透過し、第1〜第3半透光部13A〜13Cでは各々の光透過率に応じて露光光が低減される。そのため、被転写体20上に塗布したレジスト膜(ここではポジ型フォトレジスト膜)は、パターン転写後、現像を経たとき、上記遮光部11に対応する部分で膜厚が最も厚くなる。また、上記第1〜第3半透光部13A〜13Cに対応する部分ではいずれも遮光部11に対応する部分の膜厚よりも薄くなるが、例えば上記第1半透光膜16の露光光透過率が上記第2半透光膜17の露光光透過率よりも低く設定されている場合は、上記半透光部に対応する部分において段階的に膜厚が薄くなる。また、透光部12に対応する部分では膜がない。その結果、膜厚が5段階に異なる(そのうちの1段階は膜がない)レジストパターン23を形成する。例えば、第1〜第3半透光部の透過率は、透光部を100%としたとき、それぞれ、20%、40%、60%程度とすることができる。なお、ネガ型フォトレジストを用いた場合には、レジスト膜厚が上記と逆転することを考慮した設計を行う必要がある。
【0021】
そして、図1に示すレジストパターン23の膜のない部分(上記透光部12に対応する部分)で、被転写体20における例えば膜22A〜22Dに第1エッチングを実施する。続いて、レジストパターン23の膜のうち膜厚が最も薄い部分(上記第3半透光部13Cに対応する部分)をアッシング等によって除去しこの部分で、被転写体20における例えば膜22B〜22Dに第2エッチングを実施する。続いて、レジストパターン23のうち次に膜厚が薄い部分(上記第2半透光部13Bに対応する部分)をアッシング等によって除去しこの部分で、被転写体20における例えば膜22C及び22Dに第3エッチングを実施する。続いて更に、レジストパターン23のうち次に膜厚が薄い部分(上記第1半透光部13Aに対応する部分)をアッシング等によって除去しこの部分で、被転写体20における例えば膜22Dに第4エッチングを実施する。このようにして、1枚の5階調フォトマスク10を用いて、例えばTFT基板の製造における従来のフォトマスク4枚分の工程が実施されることになり、従来よりもマスク枚数を大幅に削減することが可能になる。
【0022】
次に、上記5階調フォトマスクの製造方法について説明する。図2は、上記第1の実施の形態の5階調フォトマスク10の製造工程を工程順に示す断面図である。
使用するフォトマスクブランクは、図2(a)に示すように、ガラス基板等の透明基板14上に、第1半透光膜16と、遮光層15a及び反射防止層15bの積層からなる遮光膜15が順に形成されている。ただし、上記第1半透光膜16と上記遮光膜15は、エッチング工程に用いるエッチャントに対するエッチング選択性のある材質の組み合わせが選択される。したがって、上記遮光層15aとしては、例えばクロム又はその化合物(例えばCrN,CrO,CrC等)が好ましく挙げられ、上記反射防止層15bとしては、クロム系化合物(例えばCrN,CrO,CrC等)などが挙げられ、さらに上記第1半透光膜16としては、例えば金属シリサイド、特にモリブデンシリサイド化合物(MoSixのほか、MoSiの窒化物、酸化物、酸化窒化物、炭化物など)等が好ましく挙げられる。上記第1半透光膜16は、透明基板14(透光部)の露光光の透過量に対し10〜80%程度、好ましくは20〜70%程度の透過量を有するものが好ましい。
【0023】
なお、上記第1半透光膜16と後述の第2半透光膜17とは露光光透過率が異なるようにするため、第1半透光膜16の膜材質と膜厚は、後述の第2半透光膜17の膜材質と膜厚との兼ね合いも考慮して設定される。
【0024】
まず、上記フォトマスクブランク上にレジストを塗布してレジスト膜を形成し、1度目の描画を行う。本実施の形態では例えばレーザー光を用いる。また、上記レジストとしてはポジ型フォトレジストを使用する。そして、レジスト膜に対し、所定のデバイスパターンを描画し、描画後に現像を行うことにより、例えば製造されるフォトマスクの遮光部11に対応する領域に第1レジストパターン30を形成する(図2(b)参照)。
【0025】
次に、上記第1レジストパターン30をエッチングマスクとして遮光層15a及び反射防止層15bの積層からなる遮光膜15をエッチングして遮光膜パターンを形成する(図2(c)参照)。クロムを主成分とする遮光膜15を用いた場合、エッチング手段としては、ドライエッチングもしくはウェットエッチングのどちらでも可能であるが、たとえば大型液晶表示パネル製造に使用する大型サイズのフォトマスクでは、ウェットエッチングが好適である。ウェットエッチングでは、エッチング液として例えば硝酸セリウム第二アンモニウムを用いる。なお、上記遮光膜15とその下の第1半透光膜16は、エッチャントに対するエッチング選択性を有する材質で形成されているため、上記遮光膜15のエッチング時には第1半透光膜16はエッチングされにくい。
【0026】
残存する第1レジストパターン30を除去した後(図2(d)参照)、再び全面に上記と同じレジスト膜を形成し、2度目の描画を行う。すなわち、このレジスト膜に対し、所定のパターンを描画し、描画後に現像を行うことにより、例えば製造されるフォトマスクの遮光部11と第1半透光部13A及び第2半透光部13Bに対応する領域に第2レジストパターン31を形成する(図2(e)参照)。
【0027】
次に、上記第2レジストパターン31をエッチングマスクとして、露出した第3半透光部13C及び透光部12領域上の第1半透光膜16をエッチングする(図2(f)参照)。Mo化合物を主成分とする第1半透光膜16を用いた場合、エッチング手段としては、ドライエッチングもしくはウェットエッチングのどちらでも可能であるが、ウェットエッチングではエッチング液として例えばフッ化水素アンモニウムを主成分とするものを用いる。
【0028】
残存する第2レジストパターン31を除去した後(図2(g)参照)、パターニングされた遮光膜15及び第1半透光膜16を含む基板全面に、第2半透光膜17を成膜する(図2(h)参照)。ただし、第2半透光膜17は、前記第1半透光膜16とのエッチャントに対するエッチング選択性のある材質が選択される。従って、第1半透光膜16に例えば前述のMo化合物を用いる場合、上記第2半透光膜17としては、例えばクロム化合物などが好ましく挙げられる。クロム化合物には、酸化クロム(CrOx)、窒化クロム(CrNx)、炭化クロム(CrCx)、酸窒化クロム(CrOxN)、フッ化クロム(CrFx)や、これらに炭素や水素を含むものがある。また、上記第2半透光膜17についても、透明基板24(透光部)の露光光の透過量に対し10〜80%程度、好ましくは20〜70%程度の透過量を有することが望ましいが、同時に第1半透光膜16とは露光光透過率が異なるように、第2半透光膜17の膜材質と膜厚の選定によって設定される。
【0029】
次に、上記第1半透光膜17上の全面に再度前記と同じレジスト膜を形成し、3度目の描画を行う。すなわち、このレジスト膜に対し、所定のパターンを描画し、描画後、現像を行うことにより、例えば製造されるフォトマスクの遮光部11と第1半透光部13A及び第3半透光部13Cに対応する領域に第3レジストパターン32を形成する(図2(i)参照)。
【0030】
次いで、上記第3レジストパターン32をエッチングマスクとして、露出した第2半透光部13B及び透光部12領域上の第2半透光膜17を同時にエッチングする(図2(j)参照)。クロム化合物を主成分とする第2半透光膜17を用いた場合、エッチング手段としては、ドライエッチングもしくはウェットエッチングのどちらでも可能であるが、ウェットエッチングではエッチング液として例えば硝酸セリウム第二アンモニウムを用いる。なお、第2半透光膜17と第1半透光膜16は、エッチャントに対するエッチング選択性を有する材質で形成されているため、例えば上記第2半透光部13B領域上では、上記第2半透光膜17のエッチング時にはその下の第1半透光膜16はエッチングされにくい。エッチング選択性が十分でない場合には、エッチングストッパ膜を介在させることも可能であるが、フォトリソグラフィ工程をより効率化し、欠陥発生の確率を減少させるために、上記の手法はより有利である。
【0031】
そして、残存する第3レジストパターン32を除去する。こうして、透明基板14上に、第1半透光膜16と、遮光層15a及び反射防止層15bからなる遮光膜15と、第2半透光膜17との積層によりなる遮光部11、透明基板14が露出する透光部12、及び、第1半透光膜16と第2半透光膜17の積層によりなる第1半透光部13Aと、第1半透光膜16によりなる第2半透光部13Bと、第2半透光膜17によりなる第3半透光部13Cを有するマスクパターンが形成された、露光光透過率が5段階に異なる5階調のフォトマスク10が出来上がる(図2(k)参照)。
【0032】
以上のように本実施の形態によれば、遮光膜の他に、互いに露光光透過率の異なる第1半透光膜と第2半透光膜との組み合わせを用い、フォトリソグラフィ法によって描画回数を3回に低減して、少ない膜数と少ない描画回数で、露光光透過率が5段階に異なる5階調のフォトマスクを製造することができる。
また、上述のように描画回数を3回に低減して製造できることにより、微細パターンが高精度に形成された5階調のフォトマスクが得られる。
【0033】
また、前述の図1に示すような本発明に係る5階調フォトマスクを用いたパターン転写を実施すると、被転写体には精度の高い多階調の転写パターンを形成することができる。またその結果、例えばTFT基板の製造等においてマスク枚数の大幅な削減が可能になる。
【0034】
[第2の実施の形態]
次に、図3及び図4に従って本発明の第2の実施の形態を説明する。図3は、本発明に係る5階調フォトマスクの第2の実施の形態と、当該5階調フォトマスクを用いたパターン転写方法を説明するための断面図であり、図4は、上記第2の実施の形態の5階調フォトマスク10の製造工程を工程順に示す断面図である。なお、前述の第1の実施の形態を示す図1及び図2と同等の箇所には同一の符号を付している。
【0035】
図3に示す本実施の形態のフォトマスク10は、前述の第1の実施の形態と同様、具体的には、当該フォトマスク10の使用時に露光光を遮光(透過率が略0%)させる遮光部11と、ガラス基板等の透明基板14の表面が露出して露光光を透過させる透光部12と、透光部12の露光光透過率を100%としたとき透過率を10〜80%程度、好ましくは、20〜70%程度の範囲内に低減させ、この範囲内において露光光透過率が3段階に異なる第1半透光部13Aと第2半透光部13Bと第3半透光部13Cとを有して構成されている。そして、上記第1半透光部13Aは、露光光波長に対する透過率のそれぞれ異なる第1半透光膜16と第2半透光膜17の積層膜により形成され、第2半透光部13Bは上記第1半透光膜16により形成され、また第3半透光部13Cは上記第2半透光膜17により形成されている。また、本実施の形態では、上記遮光部11は、透明基板14上に、遮光層15a及び反射防止層15bの積層からなる遮光膜15、上記第1半透光膜16、及び上記第2半透光膜17が順に設けられて形成されている点が、第1の実施の形態とは異なっている。したがって、上記フォトマスク10は、露光光透過率が5段階に異なる5階調のフォトマスクとなっている。
【0036】
本実施の形態に係る5階調フォトマスク10を使用して、被転写体20へのパターン転写を行ったときに、遮光部11では露光光が実質的に透過せず、透光部12では露光光が透過し、第1〜第3半透光部13A〜13Cでは各々の光透過率に応じて露光光が低減される。そのため、被転写体20上に塗布したレジスト膜(ここではポジ型フォトレジスト膜)は、パターン転写後、現像を経たとき、上記遮光部11に対応する部分で膜厚が最も厚くなり、また上記第1〜第3半透光部13A〜13Cに対応する部分ではいずれも遮光部11に対応する部分の膜厚よりも薄くなるが、例えば上記第1半透光膜16の露光光透過率が上記第2半透光膜17の露光光透過率よりも低く設定されている場合は、上記半透光部に対応する部分において段階的に膜厚が薄くなり、また透光部12に対応する部分では膜のない、膜厚が5段階に異なる(そのうちの1段階は膜がない)レジストパターン23を形成する。
【0037】
そして、前述したように、図3に示す膜厚が5段階に異なるレジストパターン23を用いて、被転写体20における例えば膜22A〜22Dのエッチングを実施することにより、例えばTFT基板の製造における従来のフォトマスク4枚分の工程が実施されることになり、従来よりもマスク枚数を大幅に削減することが可能になる。
【0038】
次に、図4を用いて、上記本実施の形態に係る5階調フォトマスクの製造方法を説明する。
使用するフォトマスクブランクは、図4(a)に示すように、ガラス基板等の透明基板14上に、遮光層15a及び反射防止層15bの積層からなる遮光膜15が形成されている。上記遮光層15aとしては、例えばクロム又はその化合物(例えばCrN,CrO,CrC等)が好ましく挙げられ、上記反射防止層15bとしては、クロム系化合物(例えばCrN,CrO,CrC等)などが挙げられる。
なお、製造されるフォトマスクにおける遮光部11の透過率は、主に上記遮光層15aと上記反射防止層15bの膜材質と膜厚との選定によって設定される。
【0039】
まず、上記フォトマスクブランク上にレジストを塗布してレジスト膜を形成し、1度目の描画を行う。描画には、本実施の形態では例えばレーザー光を用いる。上記レジストとしてはポジ型フォトレジストを使用する。そして、レジスト膜に対し、所定のデバイスパターンを描画し、描画後に現像を行うことにより、例えば製造されるフォトマスクの遮光部11に対応する領域に第1レジストパターン30を形成する(図4(b)参照)。
【0040】
次に、上記第1レジストパターン30をエッチングマスクとして遮光層15a及び反射防止層15bの積層からなる遮光膜15をエッチングして遮光膜パターンを形成する(図4(c)参照)。クロムを主成分とする遮光膜15を用いた場合、エッチング手段としては、ドライエッチングもしくはウェットエッチングのどちらでも可能であるが、たとえば大型サイズのフォトマスク製造に好適なウェットエッチングでは、エッチング液として例えば硝酸セリウム第二アンモニウムを用いる。
【0041】
残存する第1レジストパターン30を除去した後、パターニングされた遮光膜15を含む基板全面に、第1半透光膜16を成膜する(図4(d)参照)。
上記第1半透光膜16としては、例えばMo化合物(MoSixのほか、MoSiの窒化物、酸化物、酸化窒化物、炭化物など)が好ましく挙げられる。また、本実施の形態では、第1半透光膜16は、遮光膜15とのエッチング選択性はとくに要求されないため、例えば遮光膜と同様、クロム又はクロム系化合物を用いることもできる。クロム系化合物には、酸化クロム(CrOx)、窒化クロム(CrNx)、炭化クロム(CrCx)、酸窒化クロム(CrOxN)、フッ化クロム(CrFx)や、これらに炭素や水素を含むものがある。上記第1半透光膜16は、透明基板14(透光部)の露光光の透過量に対し10〜80%程度、好ましくは20〜70%程度の透過量を有するものが好ましい。
【0042】
また、上記第1半透光膜16は、後述の第2半透光膜17との関係では、エッチング選択性が要求されると同時に、両者の露光光透過率が異なるようにするため、第1半透光膜16の膜材質と膜厚は、後述の第2半透光膜17の膜材質と膜厚との兼ね合いも考慮して設定される。
【0043】
次に、再び全面に上記と同じレジスト膜を形成し、2度目の描画を行う。すなわち、このレジスト膜に対し、所定のパターンを描画し、描画後に現像を行うことにより、例えば製造されるフォトマスクの遮光部11と第1半透光部13A及び第2半透光部13Bに対応する領域に第2レジストパターン31を形成する(図4(e)参照)。
【0044】
次に、上記第2レジストパターン31をエッチングマスクとして、露出した第3半透光部13C及び透光部12領域上の第1半透光膜16をエッチングする(図4(f)参照)。Mo化合物を主成分とする第1半透光膜16を用いた場合、エッチング手段としては、ドライエッチングもしくはウェットエッチングのどちらでも可能であるが、ウェットエッチングではエッチング液として例えばフッ化水素アンモニウムを主成分とするものを用いる。また、クロム系化合物を主成分とする第1半透光膜16を用いた場合、ドライエッチングもしくはウェットエッチングのどちらでも可能であるが、ウェットエッチングでは、エッチング液として例えば硝酸セリウム第二アンモニウムを用いる。
【0045】
残存する第2レジストパターン31を除去した後(図4(g)参照)、パターニングされた遮光膜15及び第1半透光膜16を含む基板全面に、第2半透光膜17を成膜する(図4(h)参照)。ただし、第2半透光膜17は、前記第1半透光膜16とのエッチャントに対するエッチング選択性のある材質が選択される。従って、第1半透光膜16に例えば前述のMo化合物を用いる場合、上記第2半透光膜17としては、例えばクロム系化合物などが好ましく挙げられる。また反対に、第1半透光膜16に例えばクロム系化合物を用いる場合、上記第2半透光膜17としては、例えばMo化合物などが好ましく挙げられる。また、上記第2半透光膜17についても、透明基板24(透光部)の露光光の透過量に対し10〜80%程度、好ましくは20〜70%程度の透過量を有することが望ましいが、同時に第1半透光膜16とは露光光透過率が異なるように、第2半透光膜17の膜材質と膜厚の選定によって設定される。
【0046】
次に、上記第1半透光膜17上の全面に再度前記と同じレジスト膜を形成し、3度目の描画を行う。すなわち、このレジスト膜に対し、所定のパターンを描画し、描画後、現像を行うことにより、例えば製造されるフォトマスクの遮光部11と第1半透光部13A及び第3半透光部13Cに対応する領域に第3レジストパターン32を形成する(図4(i)参照)。
【0047】
次いで、上記第3レジストパターン32をエッチングマスクとして、露出した第2半透光部13B及び透光部12領域上の第2半透光膜17をエッチングする(図4(j)参照)。第2半透光膜17のエッチング手段としては、ドライエッチングもしくはウェットエッチングのどちらでも可能である。なお、第2半透光膜17と第1半透光膜16は、エッチャントに対するエッチング選択性を有する材質で形成されているため、例えば上記第2半透光部13B領域上では、上記第2半透光膜17のエッチング時にはその下の第1半透光膜16はエッチングされにくい。
【0048】
そして、残存する第3レジストパターン32を除去する。こうして、透明基板14上に、遮光層15a及び反射防止層15bからなる遮光膜15と、第1半透光膜16と第2半透光膜17との積層によりなる遮光部11、透明基板14が露出する透光部12、及び、第1半透光膜16と第2半透光膜17の積層によりなる第1半透光部13Aと、第1半透光膜16によりなる第2半透光部13Bと、第2半透光膜17によりなる第3半透光部13Cを有するマスクパターンが形成された、露光光透過率が5段階に異なる5階調のフォトマスク10が出来上がる(図4(k)参照)。
【0049】
以上説明した本実施の形態においても、遮光膜の他に、互いに露光光透過率の異なる第1半透光膜と第2半透光膜との組み合わせを用い、フォトリソグラフィ法によって描画回数を3回に低減して、少ない膜数と少ない描画回数で、露光光透過率が5段階に異なる5階調のフォトマスクを製造することができる。
また、上述のように描画回数を3回に低減して製造できることにより、微細パターンが高精度に形成された5階調のフォトマスクが得られる。
【0050】
また、前述の図3に示すような本実施の形態に係る5階調フォトマスクを用いたパターン転写を実施すると、被転写体には精度の高い多階調の転写パターンを形成することができる。またその結果、例えばTFT基板の製造等においてマスク枚数の大幅な削減が可能になる。
【0051】
なお、本発明による5階調のフォトマスクには、上記のほか以下に述べる利点がある。
一般に、本発明の属する多階調フォトマスク(遮光部、透光部のほかに半透光部を有する3階調以上のフォトマスク)においては、被転写体上に所望の残膜値をもつレジストパターンを得るために、半透光部の露光光透過率を選択し、決定する。この透過率としては、透光部(すなわち透明基板が露出している部分)の透過率を100%としたときの、半透過膜の透過率を用いて規定する。これは、一定以上の広い領域のパターンについて、その透過率を特定する場合には問題がないが、ある程度以下の寸法のパターンに対しては、厳密にいうと、実際のパターン転写に寄与する露光光量を正確に反映していないこととなる。これは露光光の回折が原因であるため、この傾向は微小なパターンになるほど、露光光波長が長いほど顕著になる。しかし、パターンの寸法や、分光特性の異なる光源に対する透過率の変化については正確に考慮されていないのが現状である。
【0052】
具体的には、半透光部に、非常に狭い幅を含むパターン形状と、相対的に広い領域のパターン形状とが存在すると、半透光部には、被転写体上のレジスト膜に、常に一定の残膜値を与えるものであるべきところ、パターン形状に起因して異なる残膜値のレジストパターンが形成されてしまい、所望の許容範囲を越えた残膜値のばらつきを生じると、電子デバイス製造上の不安定要素となるという問題がある。
【0053】
例えば、薄膜トランジスタ用の多階調フォトマスクとしては、チャネル部に相当する領域を半透光部とし、これを挟む形で隣接するソース及びドレインに相当する領域を遮光部で構成したものが多用される。このフォトマスクは、通常i線〜g線の波長帯の露光光を用いて露光されるが、チャネル部の寸法(幅)が小さくなるにしたがい、隣接する遮光部との境界が、実際の露光条件下においてぼかされ、チャネル部の露光光透過率は半透過膜の透過率よりも低くなる。図5は、遮光部Aに挟まれた半透光部Bのパターン(同図(1))と、該半透光部Bの透過光の光強度分布(同図(2))を示したもので、同図(a)は一例として半透光領域の幅が4μm、同図(b)は2μmの場合をそれぞれ示している。すなわち、図5(a),(b)に示すように、遮光部Aに挟まれた半透光部Bの透過光の光強度分布は、その半透光部Bの線幅が小さくなると、全体に下がり、ピークが低くなる。つまり、幅が狭い領域を有するパターンについては、実際に露光に寄与する透過率が相対的に低い一方、相対的に線幅が広い領域を有するパターンについては、実際の露光に寄与する透過率が相対的に高い。例えば、図6に示すように、チャネル幅が5μm以下では、該チャネル幅に対応した幅の半透光部における、実際の露光に寄与する光の透過率が顕著に低下する。
【0054】
そこで、一定の寸法をもつ半透光部の透過率を、その膜固有の透過率と区別し、実際の露光光の透過量を、透光部の透過量との比において、実効透過率として把握する必要が生じる。
一方で、膜固有の透過率とは、透明基板上の該膜を形成した、十分に広い領域において、該膜の組成や膜厚によって決定されるものである。十分に広い領域とは、該領域の広さの変化によって、実効透過率が実質的に変化しないような領域をいう。なお、図6においては、半透光部Bの透過光の光強度分布のピーク値によって、該領域の透過率を代表させている。この部分の透過率は、この多階調マスクを使用して露光したときの、被転写体上のレジスト残膜値と相関をもつ。
【0055】
そこで、半透光部のパターン形状に応じて、その部分の膜透過膜を変えることにより、パターン形状に拘わらず、半透光部のレジスト膜の残膜値をほぼ同一にできることとなる。
例えば、本発明の方法によれば、5つの階調を有する多階調フォトマスクを得ることができる。すなわち、透光部、遮光部のほかに、3つの異なる膜透過率を有する半透光部を得ることができるのである。この3種類の半透光部によって、被転写体上に、それぞれ異なるレジスト残膜値をもつレジストパターンを形成してもよい。しかしながら、他方、この3種類の半透光部によって、被転写体上に、パターンの寸法が異なる(従って、同一の膜透過率を有する半透光部を使用すると、形成されるレジスト残膜値が異なってしまう)にもかかわらず、一定のレジスト残膜値を有するレジストパターンを形成してもよい。換言すれば、膜構成として3種類の膜透過率を有し、ほぼ同一の実効透過率を有する半透光部を形成しても良い。この場合、本発明のフォトマスクを3階調フォトマスクとして用いることになる。
【0056】
もちろん、3種類の半透光部のうち、2種類を、同一の実効透過率を有する異なる形状のパターンに用い、残りの1種類を、異なる実効透過率を有するパターンに供しても良い。この場合、本発明のフォトマスクを4階調のフォトマスクとして用いることになる。
本発明は、このような優れた効果をもたらす多階調フォトマスクを、効率的で、かつ欠陥発生の確率の低い工程によって、作製することができる点で、量産上のメリットが大きい。
【0057】
なお、上述の第1の実施の形態及び第2の実施の形態においては、いずれも上記第1半透光膜16の露光光透過率が上記第2半透光膜17の露光光透過率よりも低く設定されている場合を説明したが、両者の露光光透過率が異なればよいので、これとは逆に、例えば上記第1半透光膜16の露光光透過率が上記第2半透光膜17の露光光透過率よりも高く設定されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10 5階調フォトマスク
11 遮光部
12 透光部
13A 第1半透光部
13B 第2半透光部
13C 第3半透光部
14 透明基板
15 遮光膜
16 第1半透光膜
17 第2半透光膜
30〜32 第1〜第3レジストパターン
20 被転写体
23 レジストパターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、遮光部、前記透明基板が露出した透光部、及びそれぞれ露光光透過率の異なる第1半透光部と第2半透光部と第3半透光部からなるマスクパターンを有する5階調フォトマスクの製造方法であって、
透明基板上に、エッチャントに対するエッチング選択性のある第1半透光膜と遮光膜とをこの順に有するフォトマスクブランクを準備する工程と、
前記フォトマスクブランクの前記遮光膜上に形成したレジスト膜を描画、現像して、前記遮光部に対応する領域に第1レジストパターンを形成する工程と、
前記第1レジストパターンをマスクとして前記遮光膜をウェットエッチングして第1のパターニングを行う工程と、
前記第1レジストパターンを除去した後、パターニングされた前記遮光膜を含む面上に形成したレジスト膜を描画、現像して、前記遮光部、前記第1半透光部及び前記第2半透光部に対応する領域に第2レジストパターンを形成する工程と、
前記第2レジストパターンをマスクとして前記第1半透光膜をウェットエッチングして第2のパターニングを行う工程と、
前記第2レジストパターンを除去した後、パターニングされた前記遮光膜及び前記第1半透光膜を含む基板全面に、前記第1半透光膜とのエッチャントに対するエッチング選択性のある第2半透光膜を形成する工程と、
前記第2半透光膜上に形成したレジスト膜を描画、現像して、前記遮光部、前記第1半透光部及び前記第3半透光部に対応する領域に第3レジストパターンを形成する工程と、
前記第3レジストパターンをマスクとして前記第2半透光膜をウェットエッチングして第3のパターニングを行う工程と、
を有することにより、エッチング回数を3回として5階調を得ることを特徴とする5階調フォトマスクの製造方法。
【請求項2】
成膜工程としては、前記遮光膜、前記第1半透光膜及び前記第2半透光膜の成膜からなる3回の成膜工程のみを有することを特徴とする請求項1に記載の5階調フォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記遮光膜は、遮光層と反射防止層の積層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の5階調フォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記第1半透光部、前記第2半透光部、及び前記第3半透光部は、前記第1半透光膜、前記第2半透光膜、前記第1半透光膜と前記第2半透光膜の積層膜のそれぞれいずれかにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の5階調フォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記遮光膜及び前記第2半透光膜はいずれもクロムを主成分とした材料からなり、前記第1半透光膜はモリブデンシリサイドを主成分とした材料からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の5階調フォトマスクの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の製造方法によるフォトマスクを用いて、被転写体に露光光を照射する露光工程を有し、被転写体上に5階調の転写パターンを形成することを特徴とするパターン転写方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−209759(P2011−209759A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161223(P2011−161223)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【分割の表示】特願2010−290123(P2010−290123)の分割
【原出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】