説明

6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジンの被覆錠剤及びコーティングの効果を測定する方法

(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)の被覆錠剤を提供する。錠剤は薬剤の知覚される苦味を最小にする。コア材料のサブマイクログラム量の即時溶出を分析する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
《関連出願との相互参照》
本願は、いずれも2008年12月18日出願の、米国特許出願番号第12/338,899号、第12/338,903号及び第12/338,908号に関連し、その開示内容の全体は、参照することにより本明細書中に組み込まれる。本願は、2009年1月30日出願の米国仮特許出願番号第61/148,621号についての優先権を主張し、その開示内容の全体が、参照することにより本明細書中に組み込まれる。
【0002】
《発明の分野》
本発明は、被覆経口固形剤形及び前記固形剤形上のコーティングの効果を試験する方法に関する。
【0003】
《発明の背景》
(S)−ゾピクロン又は(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)としても知られるエスゾピクロンは遊離塩基として配合され、そしてLUNESTA(商標)として販売されている。それは、種々のタイプの睡眠障害、例えば、入眠困難、夜間の睡眠維持困難、及び過度に早朝の覚醒を治療するのに用いられる。不眠症に罹ったほとんどの人がこれらの問題の2種類以上を抱えている。例えば、国際公開第93/10787号;Brun, J. P., Pharm. Biochem. Behav. 29: 831 832 (1988)を参照されたい。化合物エスゾピクロン及び種々の治療方法は少なくとも以下の米国特許:第7,125,874号;第6,864,257号;第6,444,673号;第6,319,926号;及び第5,786,357号に開示されている。
【0004】
同様に遊離塩基として配合されるラセミ体ゾピクロンであるrac−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)が、種々のタイプの睡眠障害を治療するために長年にわたりヨーロッパで販売されてきた。
【0005】
活性成分エスゾピクロンはその遊離塩基形において極めて強い苦味を有する。極めて低濃度、例えば、0.01mg/mLの溶液でさえも、ヒトの舌によってその苦味を検出することができることがヒトの味覚試験により示された。従って、錠剤の表面上の痕跡量の活性成分、又は錠剤の表面上の活性成分の直接的な曝露に至るフィルムコーティングのあらゆる欠損、又はヒトの口腔内での錠剤の即時の溶出は、患者が水でLUNESTA(商標)錠剤を飲み下すときにその極めて強い苦味のために感知されるであろう。
【0006】
錠剤の表面上の活性成分を測定又は同定するための多くの型の分析方法及び装置が提案されてきた。例えば、ラマンマッピングスペクトルを用いて、6個のアルプラゾラム錠剤の平らな表面から活性成分であるアルプラゾラムを検出した(Sasic, Slobodan. Analytical R&D, Pfizer Global Research and Development, Sandwich, UK). Pharmaceutical Research (2007), 24(1), 58-65)。さらに、錠剤のフィルムコーティング特性を評価するための多くの分析法が提案されてきた。例えば、スペクトル対画像(spectra-to-image)のデータセットの主成分分析と組み合わせて新規のX線光電子分光法(XPS)技術を用いることにより、コーティング工程の間に用いた噴霧空気圧のフィルム−錠剤の界面厚さへの影響が研究された(Barbash, Dmytro; Fulghum, Julia E.; Yang, Jing; Felton, Linda. Physical Electronics USA, Inc., Chanhassen, MN, USA, Drug Development and Industrial Pharmacy (2009), 35(4), 480-486)。しかしながら、これらの技術はいずれも、極めて短時間内に極少量の材料を正確に測定することはできない。
【0007】
ヒト味覚パネル試験、例えば、「Lick and Roll」試験法(LUNESTA(商標)錠剤を服用する患者からのヒト唾液の直接的捕集を含む方法)は時間がかかるだけでなく、大きくかつ高価な臨床試験を必要とする。さらに、従来の溶出方法では、サンプリングが5分間又はそれより長い時間間隔を必要とするため、溶出の初期段階における錠剤の溶出プロファイルをとらえることはできない。一方で、従来のUV光ファイバー及び/又はLC−UV法のような方法は、迅速であるが、痕跡量の医薬品有効成分をng/mLレベルで正確に定量するには感度が充分でない。従って、当該技術分野における公知の方法又は技術の欠点を克服することができる新規の方法の開発が強く望まれている。
【0008】
《発明の概要》
一つの観点において、本発明は、水溶性の重合体コーティングで被覆された、治療的有効量の(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)若しくは(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩を含む固形剤形としての経口投与用の医薬組成物であって、前記重合体コーティングが組成物の約2重量%〜約10重量%を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
別の観点において、本発明は、(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)若しくは(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩の味覚をマスキングすることができる組成物を提供する。
【0010】
別の観点において、本発明は、錠剤の形態の(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)若しくは(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩0.5〜5mgを供給する工程と;セルロース誘導体を含む水性分散液で錠剤をスプレーコーティングして組成物の約2重量%〜約10重量%を含むコーティングを付与する工程と、を含む医薬組成物の製造方法を提供する。
【0011】
別の観点において、本発明は、コア及びコーティングを含む被覆固形経口剤形中の曝露されたコア材料の存在を測定する方法に関する。この方法は、以下の工程:(a)生体外で溶出媒体を供給する工程と;(b)前記被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させる工程と;及び(c)前記被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させて60秒間以内に溶出媒体に溶出したコア材料の濃度を、液体クロマトグラフィー及びタンデム質量分析法(LC−MS/MS)を用いて測定する工程と、を含む。この方法を用いて、被覆固形経口剤形の表面上のコア材料の痕跡量を測定し、フィルムコーティングの欠損を検出し、又はフィルム被覆錠剤の不快な味覚を予測することができる。
【0012】
本発明は、患者の睡眠障害の治療、予防、又は改善の方法であって、その必要がある患者に前記組成物を投与することを含む方法も対象にする。本発明はさらに、患者の不安の治療、予防、又は改善の方法であって、その必要がある患者に前記組成物を投与することを含む方法を含む。
【0013】
一つの観点により、本発明は、睡眠障害の治療、予防、又は改善のための薬剤の製造における前記組成物の使用を提供する。
別の観点において、本発明は、不安の治療、予防、又は改善のための薬剤の製造における前記組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】種々の溶出媒体中での3mgLunesta(商標)(エスゾピクロン遊離塩基)錠剤の従来の溶出プロファイルを示す。
【図2】種々の溶出媒体中での3mgエスゾピクロンマレイン酸塩錠剤の従来の溶出プロファイルを示す。
【図3】標準的コーティング(Opadry II、〜4.5重量%増)を有する3mg市販Lunesta(商標)錠剤の即時溶出プロファイルを示す。
【図4】Opadry TMコーティング(約3.3重量%増)を有する3mgエスゾピクロン錠剤の即時溶出プロファイルを示す。
【図5】Opadry TMコーティング(約8重量%増)を有する3mgエスゾピクロン錠剤の即時溶出プロファイルを示す。
【図6】標準的(Opadry II)コーティング及びOpadry TMコーティング(約3.3重量%、6重量%及び8重量%増)を有する3mgエスゾピクロン錠剤の即時溶出のプロファイルの、n=9〜10錠の平均結果を示す。
【0015】
《発明の詳細な説明》
一つの観点において、本発明は、水溶性の重合体コーティングで被覆された、治療的有効量の(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)若しくは(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩を含む固形剤形としての経口投与用の医薬組成物であって、前記重合体コーティングが組成物の約2重量%〜約10重量%を含む医薬組成物を提供する。或る態様において、前記コーティングは、組成物の約3重量%〜約8重量%の量、又は好ましくは組成物の約4重量%〜約7重量%の量、又はより好ましくは組成物の約4重量%〜約6重量%の量を含む。
【0016】
或る態様において、本発明は、コーティングがセルロース誘導体の少なくとも1種を含む前記の医薬組成物を提供する。セルロース誘導体は、セルロースエーテル及びセルロースエステルからなる群から選択することができる。或る態様において、コーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はそれらの混合物の少なくとも1種を含む。
【0017】
本発明の或る態様において、コーティングはOpadry(商標)tm(Colorcon,West Point,Pa.)を含む。さらに他の態様において、本発明は、コーティングが味覚調整剤(taste modifying agent)の少なくとも1種を含むことを提供する。他の代表的なコーティングとして、Opadry(商標)Clear(Colorcon,West Point,Pa.)とともにOpadry(商標)IIを挙げることができる。
【0018】
好ましい態様において、固形剤形は錠剤である。
【0019】
或る態様において、本発明の組成物は、(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)若しくは(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩の味覚を、少なくとも約10秒間、又は好ましくは少なくとも20秒間、又はより好ましくは少なくとも約30秒間、マスキングすることができる。或る態様において、本発明は、エスゾピクロンの味覚を約20秒間、又は約30秒間、又は約45秒間、マスキングすることができる組成物を提供する。
【0020】
本発明の或る観点において、コーティングは、少なくともセルロースエーテル、乳化剤及び可塑剤を含む。可塑剤は、コーティング配合物に添加してその物理的特性を調整することができる。例えば、可塑剤を用いて重合体のガラス転移温度(Tg)を調整して重合体をより使いやすくすることができる。Tgは、非晶質重合体(又は部分的に結晶性の重合体の非晶質領域)が硬質で比較的脆性の状態から粘稠又はゴム状態に変化する温度である。可塑剤は、重合体のTgを低下させることによって、周囲条件下でフィルムがより軟らかく、より可撓に及びしばしばより強くなり、そしてこのようにして機械的応力に対しより良い抵抗性を得られるように機能する。可塑剤の限定的でない例として、分子量200〜8000を有するポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリントリアセテート、アセチル化モノグリセリド、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリチル、クエン酸アセチルトリブチル、フタル酸ジエチル、及び鉱油を挙げることができる。エマルシファイアー、すなわち、乳化剤を用いて被覆の製造の間に実際の乳化を促進することができ、そして製品の貯蔵寿命を通じて乳化安定性を確実にすることもできる。乳化剤として、例えば、天然に存在する材料及びその半合成の誘導体、例えば、多糖、並びにグリセロールエステル、セルロースエーテル、ソルビタンエステル及びポリソルベートを用いることができる。本発明に用いることができる乳化剤の限定的でない例として、ポリソルベート、ポリエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ツイーン80、及びラウリル硫酸ナトリウムを挙げることができる。1種又は2種以上の乳化剤は、被覆組成物の約2重量%までの量そして好ましくは被覆組成物の約0.1重量%〜約0.5重量%の量で存在することができる。錠剤等を被覆するためのコーティング分散液の製造に従来用いられるあらゆる顔料をコーティングに加えることができる。例として、FD&Cレーキ及びD&Cレーキ、二酸化チタン、炭酸マグネシウム、タルク、熱分解法シリカ(pyrogenic silica)、酸化鉄、チャンネルブラック、及び不溶性染料を挙げることができる。天然顔料、例えば、リボフラビン、カルミン40、クルクミン、及びアナトーも同様である。或る態様において、本発明は、コーティングが二酸化チタン約5〜25重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース約25〜70重量%、ポリエチレングリコール約0〜10重量%及びポリソルベート約0〜2重量%を含むことを提供する。他の態様において、本発明は、コーティングが二酸化チタン約10〜20重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース約50〜70重量%、ポリエチレングリコール約0〜5重量%及びポリソルベート約0〜1重量%を含むことを提供する。
【0021】
好ましい態様において、コーティングは即効型(immediate release)コーティングである。他の態様において、腸溶コーティング、及び放出の速度を調整するコーティングを用いることができる。例えば、このようなコーティングは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ゼラチン、薬剤学的グレーズ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸共重合体、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリ酢酸ビニルフタレート、セラック、ショ糖、二酸化チタン、ろう、又はゼインを含んでいることができる。コーティング材料はさらに、付着防止剤(anti-adhesive)、例えば、タルク;可塑剤(選択されたコーティング材料のタイプに応じて)、例えば、ポリエチレングリコール、ヒマシ油、ジアセチル化モノグリセリド、セバシン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、クエン酸トリエチル;不透明剤(opacifier)、例えば、二酸化チタン;及び/又は着色剤及び/又は顔料を含んでいることができる。
【0022】
コーティングは、放出の調節又は製剤の保護に適した材料を1種又は2種以上含んでいることができる。一つの態様において、例えば、胃腸液に曝露されたときに、pHに依存した又はpHに依存しない放出を可能にするコーティングを提供する。或る態様において、単一の単位剤形中に複数の活性剤を配合することができる。例えば、pH依存性のコーティングは、少なくとも約12時間そして好ましくは24時間まで患者に治療効果を与えることができる吸収プロファイルを提供するように、胃腸(GI)管、例えば、胃又は小腸の望ましい領域において第1の活性剤、第2の活性剤、又はその両方を放出するのに役立つ。pHに依存しないコーティングが望ましい場合には、周囲の体液中、例えば、GI管中のpH変化にかかわらず最適の放出を達成するようにコーティングを設計する。また、GI管の一つの所望の領域、例えば、胃において剤形の一部を放出し、そしてGI管の別の領域、例えば、小腸において剤形の残部を放出する組成物を配合することもできる。或る態様において、第1の治療薬をGI管の一つの領域において放出しそして第2の治療薬をGI管の第2の領域において放出する。或る態様において、GI管の同じ位置においてほぼ等しい量で第1及び第2の治療薬を放出する。
【0023】
前記成分の他に、コーティングは、適量の他の材料、例えば、薬剤学的分野において慣用である希釈剤、潤滑剤、結合剤、顆粒化助剤、着色剤、味覚調節剤及び滑剤を含んでいることができる。
【0024】
本発明の他の観点において、コーティングは「味覚調節剤」の少なくとも1種を含む。「味覚調節剤」という用語は、本明細書中で用いる場合、活性成分の味覚をマスキングし及び/又は変化させることができる剤をいうものとする。例えば、味覚調節剤は、甘味剤、香味剤及び/又は冷感剤の1種又は2種以上を含むことができる。甘味剤は砂糖であることができ又は砂糖代替物又はそれらの混合物であることができる。有用な甘味剤として限定的でなく、糖、例えば、ショ糖、グルコース(コーンシロップ)、デキストロース、転化糖、フルクトース、及びそれらの混合物;サッカリン及びその種々の塩、例えば、ナトリウム塩又はカルシウム塩;シクラミン酸及びその種々の塩、例えば、ナトリウム塩;ジペプチド甘味剤、例えば、アスパルテーム、アリテーム、ネオテーム;スクラロース、天然甘味剤、例えば、ジヒドロカルコン化合物;グリチルリチン;ステビア・レバウディアナ(ステビオシド);糖アルコール、例えば、ソルビトール、ソルビトールシロップ、マンニトール、キシリトール等、合成甘味剤、例えば、アセスルファムK及びそのナトリウム塩及びカルシウム塩等、水素化デンプン加水分解物(リカジン);タンパク質系甘味剤、例えば、タリン(タウマオッカス・ダニエリ(thaumaoccous danielli))及び/又はあらゆる他の薬理学的に許容することのできる最先端で公知の甘味剤、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0025】
使用することができる香味剤は、当業者に公知のもの、例えば、天然及び人工の香味剤を含んでいる。これらの香味剤は、合成のフレーバーオイル及びフレーバリングアロマティクス、及び/又はオイル、オレオオレジン及び植物、葉、花、果実等から得られるエキス、並びにそれらの組み合わせから選択することができる。代表的なフレーバーオイルとして、スペアミント油、桂皮油、ペパーミント油、ウィンターグリーン、ユーカリ丁子油(eucalyptus clove oil)、ベイ油、タイム油、ニオイヒバ油(cedar leaf oil)、ニクズク油、セージ油、及び苦扁桃油を挙げることができる。人工、天然又は合成のフレーバー、例えば、バニラ油、チョコレート油、コーヒー油、ココア油、及びレモン、オレンジ、グレープ、ライム及びグレープフルーツを含む柑橘油、及びリンゴ、セイヨウナシ、モモ、イチゴ、ラズベリー、チェリー、プラム、パイナップル、アプリコット等を含むフルーツエッセンス、香味剤、例えば、ユーカリプトール、チモール、カンファー、サリチル酸メチル、ベンズアルデヒド、ジンジャー等、酸味料、例えば、クエン酸、リンゴ酸等も有用である。香味剤、例えば、アルデヒド及びエステル、例えば、酢酸シンナミル、シンナムアルデヒド、シトラール、ジエチルアセタール、ジヒドロカルビルアセテート(dihydrocarvyl acetate)、オイゲニルホルメート、p−メチルアニソール等も用いることができる。熱感を与えることができる剤も用いることができる。それらの限定的でない例として、トウガラシ、カプサイシノイド、ピペリン(pipperine)、ジンゲロール、イソチオシアネート、及びチリペッパー、西洋ワサビ、ショウガ、黒コショウ等のような材料を挙げることができる。一般に、あらゆる香味剤又は食品添加物、例えば、Chemicals Used in Food Processing, publication 1274 by the National Academy of Sciences, pages 63-258に記載されているものを用いることができる。これらの香味剤は、個別に又は混合して用いることができる。
【0026】
冷感剤として公知の剤として、限定的でなく、メントール、置換p−メンタン、例えば、ヒドロキシメチル及びヒドロキシエチル誘導体、コハク酸メンチル(PHYSCOOL)、乳酸メンチル(例えば、FRESCOLAT)、N,N−ジメチルメンチルスクシンアミド;置換p−メンタン−3−カルボキサミド、例えば、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキシイミド(WS−3)、N,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタミド(WS−23);非環式カルボキサミド、置換シクロヘキサンアミド、置換シクロヘキサンカルボキサミド、置換尿素及びスルホンアミド、及び置換メンタノール;3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、メントキシプロパンジオール、メントングリセロールケタール、p−メンタン−3,8−ジオール、2−メルカプト−シクロ−デカノン、2−イソプロパニル−5−メチルシクロヘキサノール(ISOPREGOL);イソプレゴール、クベボール、インシリン(incilin)、キシリトール及びその冷感効果について公知の他の化合物、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0027】
ゾピクロン、6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン及び[8−(5−クロロピリジン−2−イル)−7−オキソ−2,5,8−トリアザビシクロ[4.3.0]ノナ−1,3,5−トリエン−9−イル]4−メチルピペラジン−1−カルボキシレートという用語は、本明細書中で用いる場合、下記構造:
【化1】

によって表される化合物を表し;
エスゾピクロン、LUNESTA(商標)、(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)及び [(9S)−8−(5−クロロピリジン−2−イル)−7−オキソ−2,5,8−トリアザビシクロ [4.3.0]ノナ−1,3,5−トリエン−9−イル]4−メチルピペラジン−1−カルボキシレートという用語は、下記構造:
【化2】

によって表される前記化合物の個々のエナンチオマーをいう。
【0028】
本発明の医薬組成物は、ラセミ混合物(ゾピクロンとしても知られる)の両方を意図しており、そして或る態様において、単一のエナンチオマー、例えば、S−エナンチオマー(エスゾピクロン)を意図する。「ゾピクロン」という用語は、他に変更又は限定しない限り、立体異性体混合物だけでなく、他の立体異性体を実質的に含まない個々それぞれの立体異性体も含む。例えば、ゾピクロンは同じ化合物の立体異性体の非ラセミ混合物(例えば、一つのエナンチオマー約90重量%、80重量%、70重量%、又は60重量%及び反対のエナンチオマー約10重量%、20重量%、30重量%、又は40重量%);及び異なるラセミ体又は立体異性的に(stereomerically)純粋な化合物の混合物(例えば、一つの化合物約90重量%、80重量%、70重量%、又は60重量%及び別の化合物約10重量%、20重量%、30重量%、又は40重量%)を包含することができる。エスゾピクロンは、米国特許第6,319,926号及び第6,444,673号に、及びGoa and Heel (Drugs, 32:48-65 (1986))に、及び米国特許第3,862,149号及び第4,220,646号に記載された、化合物ゾピクロンのS−(+)−光学異性体である。USAN承認の一般名エスゾピクロンと以下に称するこの異性体は、光学的に純粋な及び実質的に光学的に純粋な(例えば、光学純度90%、95%又は99%)S−(+)−ゾピクロン異性体を含む。
【0029】
本発明の組成物は当該技術分野における公知の技術によって製造することができる。このことに関して、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing, Easton Pa. (1995), Chapters 92 and 93を参照され、その開示内容は、参照することにより、本明細書中に組み込まれる。
【0030】
本発明の化合物の合成に用いられる出発材料及び一定の中間体は商業的供給源から入手することができ、又は、本明細書中に記載のそれらの合成スキームを含め、当該技術分野において公知の試薬及び技術を用いてそれら自体を合成することができる。ラセミ体ゾピクロンは商業的に入手することができ、そして種々の方法、例えば、米国特許第3,862,149号及び第4,220,646号に記載の方法を用いて製造することができる。エスゾピクロンは、米国特許第6,319,926号に記載のように製造することができる。
【0031】
本明細書に記載の分析方法は、被覆固形経口剤形における曝露したコア材料の存在を測定するために用いることができる。前記剤形は少なくともコア及びコーティングを含み、そして追加の成分を含んでいることができる。分析すべきコア材料は活性成分又は対象となることがあるコアの任意の他の成分であることができる。通常、最も注目すべき成分は活性成分であるが、本発明の方法は他の成分、例えば、結合剤、潤滑剤、崩壊剤等に適用することができる。多くの態様において、コアは圧縮によって得られる錠剤コアである。コーティングは通常、フィルムの形態であり、当該技術分野において周知の方法、例えば、スプレーコーティングにより付与することができる。前記の技術は、標準テキスト、例えば、参照することにより、本明細書中に組み込まれるRemington: The Science and Practice of Pharmacy 19th Ed. (1995) volume II, page 1615-1659に記載されている。前記コーティングは、コーティングの機能及び性質に応じて、通常、20ミクロン〜200ミクロン厚さであり、そして被覆剤形の全重量の1〜10重量%を含む。厚さは錠剤上で変化する(とりわけ、エンボス加工される場合)ので、コーティングは通常、厚さによってではなく重量増加によって測定される。フィルムコーティングの時(例えば、ダスト付着により)又はコーティング後(例えば、フィルム欠損により)のいずれかにおいて、被覆された錠剤の表面上にコア材料が現れることがある。剤形が投与されそして設計に従って又はフィルムの破損によってフィルムが破られた場合にも、コア材料はフィルムコーティングから漏出することがある。これらの場合のいずれにおいても、「即時の」溶出による微量(すなわち、溶液<999nM又は<99nM)のコア材料の存在をモニターすることが望ましいであろう。即時とは本明細書中で用いる場合、被覆剤形の溶出媒体への曝露後60秒未満の時間をいう。
【0032】
本発明の或る態様において、本発明の方法は、以下の工程を含む:(a)生体外で溶出媒体を供給する工程;(b)被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させる工程;及び(c)被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させて60秒間以内に溶出媒体中に溶出したコア材料の濃度を測定する工程。工程(a)〜(c)は繰り返すことができ、そのことによって時間に対する濃度のプロットが得られる。60秒間の枠内にコア材料の濃度の測定を複数回行なうことができるように前記工程を繰り返すことができる。60秒間以内に濃度の測定値1個又は2個以上を得ることができるが、時間に対する濃度のプロットを60秒間の時間枠を超えて延ばすように、前記工程を繰り返すこともできる。時間とコア材料の濃度との関係は、(a)単一の被覆固形経口剤形を単一の容器内の溶出媒体と規定間隔で繰返し接触させる工程;(b)単一の被覆固形経口剤形を一連の容器内の溶出媒体と規定間隔で繰返し接触させる工程;又は(c)一連の被覆固形経口剤形を一連の容器内の溶出媒体と規定間隔で接触させる工程によって測定することができる。これらのアプローチは以下でさらに詳細に記載する。
【0033】
或る態様において、溶出媒体は、哺乳動物の唾液又はアミラーゼを含有する化学的に同等の溶液である。唾液はヒトの唾液であることができる。唾液は約3v/v%〜10v/v%の濃度で存在することができ、そして溶出媒体の残部は水又は水溶液であることができる。或る態様において、唾液又は溶液は濃度約5%で存在する。
【0034】
或る観点において、本発明は前記組成物を用いて種々の疾患を治療、予防又は改善する方法を提供する。一つの態様において、本発明は睡眠障害を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0035】
不眠症は、睡眠困難又は睡眠障害パターンによって特徴付けられる。不眠症は、直接的な身体的又は精神的事象との明確な関連性がほとんどないという基本的な特徴、又は一定の受けた痛み、不安又はうつに続発するという基本的な特徴を有していることができる。
【0036】
一つの観点において、本発明は、原発性不眠症及び睡眠覚醒リズム障害(例えば、ワークシフト症候群、タイムゾーン症候群(時差ぼけ))を含む患者の睡眠障害を治療又は予防する方法であって、その治療又は予防が必要な患者に前記組成物を、該組成物の投与が睡眠障害を治療するように、投与することを含む方法を提供する。
【0037】
別の観点において、本発明は、患者の不安を治療又は予防する方法であって、不安の治療又は予防が必要な患者に前記組成物を、該組成物の投与が不安を治療するように、投与することを含む方法を提供する。
【0038】
「不安」という用語は本明細書中で用いる場合、不安障害をいう。本明細書に開示の組成物及び方法によって治療することのできる不安障害の例として、限定的でなく、次のものを挙げることができる:パニック発作、広場恐怖症、急性ストレス障害、単一恐怖症(specific phobia)、パニック障害、精神活性物質不安障害、器質性不安障害、強迫性不安障害、心的外傷後ストレス障害及び全般性不安障害。本明細書中でいう不安は、状況不安(例えば、行為の前に行為者によって経験されたような)も含む。
【0039】
或る観点において、ラセミ体ゾピクロンは、S異性体エスゾピクロンについて記載したと同様に本発明において用いることができる。しかしながら、エスゾピクロンの使用はラセミ体ゾピクロンの使用を上回る有利さを提供することができ、そしてその後はエスゾピクロンの使用が多くの用途で好ましい。
【0040】
「治療すること(treating)」又は「治療される(treated)」という用語は、疾病、疾病の症状、又は疾病に対する素因を治し(cure)、癒し(heal)、軽減し、緩和し、変更し、救済し(remedy)、改善し、好転させ、又は影響を与える目的で患者に本明細書に記載の化合物を投与することをいう。
【0041】
「有効量」とは、治療すべき患者に治療効果を与える、化合物の量をいう。治療効果は他覚的(すなわち、一定の試験又はマーカーによって測定することができる)又は自覚的(すなわち、患者が効果を表明し又は効果を感じる)であることができる。有効量は投与経路に応じても変化する。
【0042】
「予防する」、「予防すること」、「予防」及び「予防の」という用語は、本明細書中で用いる場合に、そして他に断らない限りは、本明細書に開示した疾病の発症、再発又は増大の防止をいう。「予防する」、「予防すること」、「予防」及び「予防の」という用語は、本明細書に開示した疾病の症状の発生を改善及び/又は低減することを含む。「予防すること」という用語を本明細書中で用いる場合は、発病を予防又は軽減するために予め薬剤を投与することをいう。医療技術分野(本発明の方法クレームが指向される分野)における当業者は、「予防する」という用語が絶対的な用語でないことを認識している。医療技術分野において、「予防する」とは病気(condition)の可能性又は重症度を実質的に軽減する薬剤の予防的な投与をいうと理解されており、そしてこれは本願の特許請求の範囲において意図された意味である。「予防する」という用語が数百回も現れる、当該技術分野における標準テキストであるthe Physician’s Desk Referenceに注意を向けられたい。医療技術分野の当業者でこの用語を絶対的な意味に解釈する者はいない。
【0043】
前記の被覆組成物は、以下の実施例に示すように、被覆されていない化合物と比べて改善された味覚特性を示した。
【0044】
本明細書に記載の医薬組成物及び剤形は活性成分の1種又は2種以上を含む。医薬組成物及び剤形は、一般に、薬学的に許容することのできる賦形剤又は希釈剤の1種又は2種以上も含む。
【0045】
「薬学的に許容することのできる」という用語は本明細書中で用いる場合、論理的な医療的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずにヒト及び他の哺乳動物の組織と接触して使用するのに適当であり、合理的なベネフィット・リスク比と同一基準である成分をいう。「薬学的に許容することのできる塩」とは、レシピエントへの投与後、直接又は間接に、本発明の化合物又は化合物のプロドラッグを与えることができるあらゆる非毒性の塩を意味する。好ましい薬学的に許容することのできる塩として、マレイン酸塩、ベシル酸塩、L−リンゴ酸塩、メシル酸塩、(R)−マンデル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、D−リンゴ酸塩、D−酒石酸塩、硫酸塩、L−酒石酸塩及びサッカリン塩を挙げることができる。
【0046】
本発明は、有効量のゾピクロン、エスゾピクロン又はそれらの塩及び許容することのできる担体を含む組成物も提供する。担体(1種又は複数種)は、配合物の他の成分と適合性であるという意味において「許容することができ」なければならず、そして薬学的に許容することのできる担体の場合には、薬剤において一般に用いられる量でそのレシピエントに有害とならないものでなければならない。
【0047】
本発明の医薬組成物に用いることができる薬学的に許容することのできる担体、補助剤及び賦形剤として、限定的でなく、次のものを挙げることができる:イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレンポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコール及び羊毛脂。
【0048】
調製方法は、補助成分(accessory ingredient)の1種又は2種以上を構成する担体のような成分を、投与すべき分子と会合させる工程を含む。一般的に、組成物は、液体担体、リポソーム又は微細固形担体又はその両方と活性成分を均一及び均質に会合させることによって、そして必要な場合には製品を形成することによって調製する。
【0049】
単一の単位剤形は、患者への経口投与に適している。剤形の例として、限定的でなく、錠剤、カプレット、カプセル剤、例えば、軟質弾性ゼラチンカプセル剤及びカシェ剤を挙げることができる。
【0050】
剤形の組成物、形状、及びタイプは一般にその用途に応じて変化する。本発明により包含される特定の剤形が相互に異なる点は、当業者に容易に明白であろう。例えば、前掲のRemington's Pharmaceutical Sciencesを参照されたい。
【0051】
典型的な医薬組成物及び剤形は賦形剤の1種又は2種以上を含む。適当な賦形剤は製剤学の分野の当業者に周知であり、そして適当な賦形剤の限定的でない例を本明細書中に記載する。特定の賦形剤の適合性は剤形中の特定の活性成分に依ることもある。例えば、或る活性成分の分解を、或る賦形剤、例えば、ラクトースによって、又は水に曝露されたときに、促進させることができる。本発明は、ラクトースをほとんど含まず、たとえ含むとしてもラクトース以外の単糖又は二糖である医薬組成物及び剤形を包含する。「ラクトース不含」という用語は、本明細書中で用いる場合、たとえ存在するラクトース量があるとしても、その量では活性成分の分解速度を実質的に増加させるには不十分であることを意味する。
【0052】
ゾピクロンのラクトース不含組成物は当該技術分野で周知である賦形剤を含んでいることができる。一般に、ラクトース不含組成物は、薬学的に適合性でありかつ薬学的に許容することのできる量で活性成分、結合剤/充填剤、及び潤滑剤を含む。好ましいラクトース不含剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、α化デンプン、及びステアリン酸マグネシウムを含む。
【0053】
水は一部の化合物の分解を促進することがあるので、本発明はさらに、活性成分を含む無水の医薬組成物及び剤形を包含する。例えば、長期間の貯蔵をシミュレートして特性、例えば、貯蔵寿命又は製剤の経時的な安定性を測定する手段として、薬剤学的分野において水の添加(例えば、5%)が広く認められている。例えば、Jens T. Carstensen, Drug Stability: Principles & Practice, 2d. Ed., Marcel Dekker, NY, N.Y., 1995, pp. 379 80を参照されたい。事実上、水及び熱は一部の化合物の分解を促進する。このように、製剤の製造、取扱い、包装、貯蔵、輸送、及び使用の間には通常、水分及び/又は湿気に遭遇するので、製剤への水の影響はとても重要となることがある。
【0054】
無水の医薬組成物及び剤形は、無水の又は低水分含有の成分及び低水分又は低湿度の条件を用いて製造することができる。第一アミン又は第二アミンを含む活性成分の少なくとも1種及びラクトースを含む医薬組成物及び剤形は、製造、包装、及び/又は貯蔵の間に水分及び/又は湿気と実質的に接触することが予想される場合に、好ましくは無水である。
【0055】
無水の医薬組成物は、その無水の性質が維持されるように製造され、そして貯蔵されるべきである。従って、無水の組成物は、好ましくは、適当な定式のキット中に封入することができるように、水への曝露を防ぐことが知られている材料を用いて包装される。適当な包装の例として、限定的でなく、密閉されたホイル、プラスチック、単位投与容器(例えば、バイアル)、ブリスター包装、及びストリップ包装を挙げることができる。
【0056】
本発明はさらに、活性成分が分解する速度を低下させる化合物の1種又は2種以上を含む医薬組成物及び剤形を包含する。本明細書中で「安定剤」と称する前記化合物として、限定的でなく、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、pH緩衝剤、又は塩緩衝剤(salt buffer)を挙げることができる。
【0057】
経口投与に適した医薬組成物は、個別的な剤形、例えば、限定的な例ではないが、錠剤(例えば、咀嚼錠)、カプレット及びカプセル剤として提供することができる。前記剤形は予定された量の活性成分を含み、そして当業者に周知の薬剤学の方法によって製造することができる。一般的には、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing, Easton Pa. (1995)を参照されたい。
【0058】
経口剤形は、従来の薬剤学的配合技術に従って賦形剤の少なくとも1種との均質混合により活性成分を混合することによって製造することができる。賦形剤は、投与に望ましい製品の形態に応じて多種多様な形態を取ることができる。固形経口剤形(例えば、散剤、錠剤、カプセル剤、及びカプレット)に用いるのに適した賦形剤の例として、限定的でなく、デンプン、糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、及び崩壊剤を挙げることができる。
【0059】
例えば、錠剤は圧縮又は成形によって調製することができる。圧縮錠剤は、適当な機械を用いて易流動性の形態の、例えば、粉末又は顆粒の活性成分を、場合により賦形剤と混合して圧縮することにより製造することができる。成形錠剤は、不活性な液体希釈剤により湿潤化された粉末化合物の混合物を適当な機械で成形することによって製造することができる。
【0060】
経口剤形に用いることができる賦形剤の例として、限定的でなく、結合剤、充填剤、崩壊剤、及び潤滑剤を挙げることができる。医薬組成物及び剤形に用いるのに適した結合剤として、限定的でなく、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、又は他のデンプン、ゼラチン、天然及び合成ゴム、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロース及びその誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、α化デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、(例えば、Nos.2208、2906、2910)、微結晶性セルロース、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0061】
本明細書に開示の医薬組成物及び剤形に用いるのに適した充填剤の例として、限定的でなく、タルク、炭酸カルシウム(例えば、顆粒又は粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、α化デンプン、及びそれらの混合物を挙げることができる。本発明の医薬組成物中の結合剤又は充填剤は、一般に、医薬組成物又は剤形の約50重量%〜約99重量%で存在する。
【0062】
崩壊剤を用いて、水性環境に曝露された際に崩壊する錠剤を提供することができる。過度に多量の崩壊剤を含む錠剤は貯蔵中に崩壊することがあり、一方、過度に少量の崩壊剤を含む錠剤は望ましい速度で又は望ましい条件下で崩壊しないことがある。従って、活性成分の放出を不利に変更する過度に多量又は少量ではない十分量の崩壊剤を用いて本発明の固形経口剤形を形成しなければならない。用いられる崩壊剤の量は、製剤のタイプに応じて変化し、そして当業者に容易に認識される。典型的な医薬組成物は、崩壊剤約0.5重量%〜約15重量%を、好ましくは、崩壊剤約1重量%〜約5重量%を含む。本発明の医薬組成物及び剤形に用いることができる崩壊剤として、限定的でなく、寒天、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム(polacrilin potassium)、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、他のデンプン、α化デンプン、他のデンプン、粘土、他のアルギン、他のセルロース、ガム、及びそれらの混合物を挙げることができる。
【0063】
本発明の医薬組成物及び剤形に用いることができる潤滑剤として、限定的でなく、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素化植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天、及びそれらの混合物を挙げることができる。さらなる潤滑剤として、例えば、シロイド(syloid)シリカゲル(AEROSIL 200、製造元W.R.Grace社(Baltimore,Md.))、合成シリカの凝固エアロゾル(販売元Degussa社(Plano,Tex.))、CAB−O−SIL(焼成(pyrogenic)二酸化ケイ素、販売元Cabot社(Boston,Mass.))、及びそれらの混合物を挙げることができる。潤滑剤を用いる場合には、一般には、潤滑剤が加えられる医薬組成物又は剤形の約1重量%未満の量で潤滑剤を用いる。
【0064】
エスゾピクロン、ゾピクロン、及びそれらのマレイン酸塩、ベシル酸塩、L−リンゴ酸塩、メシル酸塩、(R)−マンデル酸塩、コハク酸、クエン酸、フマル酸、D−リンゴ酸塩、D−酒石酸塩、硫酸塩又はL−酒石酸塩は、例えば、約0.001〜約0.2mg/kg体重、あるいは0.1mg〜15mg/投与の範囲の用量で、又は特定の治療の必要量に従って投与することができる。本明細書に記載の方法は、望ましい又は所定の効果を達成するのに有効な量の化合物又は化合物組成物の投与を意図する。一般に、本発明の医薬組成物は、約1〜約6回/日又はその代わりに持続注入として投与される。前記投与は、長期治療又は急性治療として用いることができる。担体材料と組み合わせて単一剤形を製造することができる活性成分の量は、治療されるホスト及び特定の投与方法に応じて変化する。或る態様において、前記製剤は活性化合物を約20%〜約80%(w/w)含む。或る態様において、前記製剤は活性化合物を約0.5%〜約20%(w/w)含む。典型的な製剤は、活性化合物を約0.5%〜約5%(w/w)含む。
【0065】
前記の用量より少ない又は多い用量を必要とすることがある。任意の特定の患者の特定の用量及び治療レジメンは、用いられる特定の化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、食事、投与の時間、排泄の割合、薬剤の組み合わせ、疾患の重症度及び経過、状態又は症状、疾患に対する患者の素因、状態又は症状、及び治療に当たる医師の判断、を含む種々の要因に依存する。
【0066】
賦形剤の量及びタイプと同様に、剤形中の活性成分の量及び特定のタイプは、限定されないが、例えば、患者に投与する予定の経路のような要因に応じて異なることがある。ヒトの治療において、用量は、求められる効果及び治療期間に依存し;経口投与の場合、用量は一般に成人で0.5〜15mg/日である。多くの適用に対して、エスゾピクロン又はその塩を0.5mg、1mg、2mg又は3mg含む単位用量が適当であろう。或る態様において、エスゾピクロン塩の単位用量は、エスゾピクロン遊離塩基を0.5mg、1mg、2mg又は3mgのモル等量含むように調整することができる。
【0067】
別の観点において、本発明は、錠剤表面上の活性成分の測定及びフィルムコーティングの効果の評価の両者を行なうための、正確で、再現性がありそして実用的である新規の即時溶出法に関する。この方法は、水性のヒト唾液溶液を含む初期溶出溶液を用いることによって痕跡量レベルで存在する、活性成分又は被覆経口剤形のコアの他の成分の濃度を迅速かつ正確に測定することを意図する。さらに、即時溶出法から得られた結果はヒト味覚パネル試験の結果とよく相関しているので、これらの試験結果を予測するのに有効である。
【0068】
被覆錠剤の即時溶出溶液の典型的な調製手順を以下に記載する:コア及びフィルムコーティングを含む錠剤−この場合には被覆エスゾピクロン錠剤−を無作為に選択し、そして次に長いハンドル(ステンレス鋼の管材料製)を備えたバスケットシンカー(basket sinker)(例えば、Hanson Research Part # ENMISC,BSK008−JP 8メッシュ、長さ0.76インチ×幅0.41インチ)内にその錠剤を置く。次いで、同じ錠剤を用いて、バスケットをバイアル1中の溶出希釈液(例えば、5%のヒト唾液溶液)中に2〜5秒間浸漬し、次にバイアル2に移して2〜5秒間ディップしそして以降同様にする。溶出希釈液(例えば、水中5%ヒト唾液溶液)は、適当な容器中で正常ヒト唾液約50mLと水約950mLとを充分に混合することによって調製することができる。次いで、いくつかのシンチレーションバイアル(約20mL容積)中に5%ヒト唾液溶液約5mLをピペットで移す。約2〜4重量%のコーティングを有する錠剤について、この手順を用いた。
【0069】
これとは別に、バイアル1中の溶出希釈液(例えば、水中約5%ヒト唾液溶液)中にバスケット内の錠剤を浸漬し、2秒間ごとに約1回のディップの速度で約2〜5秒間バスケットを上下に動かし;希釈液からバスケットを取り出し;希釈液の試料を取り;同じバイアル中にその錠剤を再び浸漬することによって、前記ディップ試験を実施することができる。錠剤が崩壊するか、又は予め選択した時間が経過するか、いずれか早い方まで、同様にして試験を継続して試料を捕集する。この態様において、各バイアルに新しい錠剤を用いる。さらに9個又は10個の錠剤(合計で10錠)について前記のように試験を繰り返す。次いで、LC/MS/MS(ESIモード、ポジティブMRMスキャンタイプ)を用いて試料溶液中の活性成分、例えば、エスゾピクロンの濃度を測定する。時間(秒)に対してエスゾピクロンの対数濃度をプロットすることによって錠剤の即時溶出プロファイルを作成する。
【0070】
被覆錠剤の即時溶出溶液を調製する別の典型的な手順を記載すると以下の通りである:コア及びフィルムコーティングを含むいくつかの錠剤−この場合には被覆エスゾピクロン錠剤−をバスケットシンカー内にそして溶出希釈液を含む一連のバイアル中に移す。次いで、一連の錠剤を用いて、バイアル中の溶出希釈液(例えば、水中5%ヒト唾液溶液)にバスケットを浸漬し、バイアル1に5秒間、バイアル2に10秒間、バイアル3に15秒間ディップする。適当な容器中で正常ヒト唾液50mL及び水950mLを充分に混合することによって溶出希釈液(例えば、水中5%ヒト唾液溶液)を調製することができる。次いで、いくつかのシンチレーションバイアル(約20mL容積)中に5%ヒト唾液溶液約5mLをピペットで移す。3〜8重量%コーティングで被覆された錠剤についてこの手順を用いた。
【0071】
前記各シナリオにおいて、LC/MS/MS(ESIモード、ポジティブMRMスキャンタイプ)を用いて、試料溶液中のコア材料、例えば、エスゾピクロンである活性成分の濃度を測定する。時間(秒)に対してエスゾピクロンの対数濃度をプロットすることによって錠剤の即時溶出プロファイルを作成する。
【0072】
適当な溶出希釈液として、水、水溶液、水と有機溶媒との共溶媒溶液、ヒト唾液溶液、ヒト唾液を模倣する溶液(とりわけ、アミラーゼを有する生理食塩水(aqueous saline))、緩衝液、0.01〜0.1N HCl溶液及び即時溶出系において活性成分を溶出し、そして錠剤を崩壊することができるあらゆる他の溶液を挙げることができる。
【0073】
本明細書に、LC/MS/MS技術を用いて即時溶出溶液中の活性成分の濃度を測定する工程を含む即時溶出法を記載する。具体的には、LC/MS/MS手順は、前記即時溶出溶液からの試料を6000×gで5分間(試料が濁っているように見える場合に)遠心分離して透明な溶液を得る工程;上澄液又は透明溶液を取り出してHPLCオートサンプラーにロードする工程を含む。活性成分の濃度が上方の検量範囲(100ng/mL)を超える場合には、例えば、遠心分離した試料溶液100μLを試料希釈液4.9mL中にピペットで移すことによって、試料溶液をさらに希釈する。希釈試料がそれでもなお検量範囲を超えている場合には、内部標準を含む希釈溶液により連続的に希釈を行なうことができる。最終的な希釈試料濃度が検量範囲内となるようにしなければならない。
【0074】
適当なLC技術はHPLC及びUPLCを含む。HPLC/MS/MSは2つの部分を含み:一つの部分は試料母体から活性成分を分離するためのHPLCであり;第2の部分は活性成分を検出するための質量分析(MS)又はタンデム質量分析(MS/MS)である。典型的なHPLCクロマトグラフィー条件を以下に記載する:
ガードカラム:ACEガードカラムカートリッジ、内径2.1mm、C8(ACE−122−0102GD)
分析カラム:ACE C8、5μm、5cm×2.1mm(MAC−MOD ACE−122−0502)
移動相:A:水/0.05%ギ酸;B:アセトニトリル
オートサンプラー温度:5℃
カラム温度:25℃
流速:0.45mL/分間
注入量:30μL
ニードル洗浄:ACN:H2O=50:50(v/v)
最小実行時間:6.5分間
グラジエントプログラム: 時間(分間) %A %B
0.0 90 10
2.0 5 95
3.1 5 95
3.2 90 10
6.5 90 10
カラムスイッチ 最初の2.5分間は100%カラム通流して廃棄
メークアップ溶液 ACN:H2O=50:50(v/v)
MS内へのメークアップフロー 0.45mL/分間
典型的な質量分析計パラメータ及び条件を以下に記載
スキャンタイプ:ポジティブMRM
イオン化モデル:ESI
ガス1:8
ガス2:8
カーテンガス:10
衝突ガス(Collision Gas):8psi
イオンスプレー電圧:5500ボルト
温度:450℃
化合物名 Q1 Q3 ドゥエル時間 DP EP CE CXP
(v)(v)(v) (v)
エスゾピクロン 389.1 245.1 200 ms 30 6 26 17
(RS)−ゾピクロン−d8 397.1 245.1 200 ms 30 6 26 17
【0075】
HPLC及びMSパラメータはいずれも最適の分離及び感度に調節することができる。
【0076】
典型的なHPLC−MS/MS分析:システム適合性の注入(system suitability injections)の完了後、各試料溶液について単一の注入を行なう。内部標準(例えば、(RS)−ゾピクロン−d8)に対する活性成分、例えば、エスゾピクロンのピーク面積比を記録する。Analyst 1.4.1ソフトウェア又は以降のバージョンを用いてx軸上の計算濃度比に対して検量線から試料/内部標準ピーク面積比(y)を外挿することによって、試料中の活性成分、例えば、エスゾピクロンの濃度を計算する。図3、図4又は図5に示すように、個々の錠剤について、時間(秒)の関数としての濃度ng/mLとして、各時点に対する個々の計算濃度値及び平均濃度値を記録しプロットする。図6に示すように、全ての錠剤について時間(秒)の関数としての平均濃度ng/mLをプロットすることもできる。
【0077】
HPLC−MS/MS法の検証結果の概要は以下の表に見出すことができる。

【0078】
本明細書に記載の方法との比較のために、Hanson Research SR8-Plus Dissolution Apparatus及びC−Technologies Fiber Optic UV Probesを305nmで用いて(410nmで賦形剤を減じて)、種々のpH値の溶出媒体中で、生理的温度(37℃)における3mgエスゾピクロン遊離塩基錠剤又は3mgエスゾピクロンマレイン酸塩の従来の溶出を試験することができる。典型的な溶出媒体は、0.1N HCl、pH4.5酢酸緩衝液、pH5.5リン酸緩衝液、pH6.8リン酸緩衝液を含む。標準的な溶出プロトコルを用いた。100mL容積測定用のフラスコ中にエスゾピクロン遊離塩基の既知量(〜20mg)を秤量することにより、参照標準溶液(エスゾピクロン遊離塩基0.006mg/mL)を調製する。このフラスコ中にアセトニトリル10mLを加えそして固形物が完全に溶解するまで超音波処理する。溶液を室温まで冷却しそして溶出媒体を用いて100mLマークまでメークアップし、そして充分に混合する。このストック溶液から、溶出媒体を用いて3mLを100mLまで希釈する。容積500mLの溶出媒体を溶出装置の6つの容器のそれぞれに移しそして温度37℃まで加温する。光ファイバー(Fiber Optic)プローブをそれぞれの溶出容器中に浸漬しそして溶出媒体中の全てのプローブについてブランクの読み取りを行なう。個別の容器それぞれについて標準品の読み取り値を記録する。次いで、プローブを媒体で洗浄した後、それらのそれぞれの容器に挿入して戻す。各容器内に錠剤1個を移す。直ちに溶出プログラムを開始し、そして305nmで60分間読み取りを行なう(20分間については1分間ごとそしてその後は10分間ごと)。エスゾピクロン遊離塩基錠剤及びエスゾピクロンマレイン酸塩錠剤の従来のプロファイルをそれぞれ図1及び図2に示す。
【0079】
図1及び図2は、従来の溶出法が検出限界μg/mL〜mg/mLのレベルで45〜60分間にわたる錠剤の溶出プロファイルを測定するのに有用であることを示している。
【0080】
図3〜図6から明白なように、本明細書に開示の即時溶出法は、検出限界999ng/mL未満で2〜30秒間、2〜60秒間、又は2〜120秒間にわたるフィルム被覆錠剤の溶出プロファイルを測定することができる。
【0081】
前記分析方法による試験に適した活性成分は、錠剤に配合することができるあらゆる薬剤学的化合物を含む。示した例において、薬剤学的化合物は不快な味覚を有している。これらは、エスゾピクロン遊離塩基、エスゾピクロンL−リンゴ酸塩、エスゾピクロンマレイン酸塩又は他の酸付加塩を含み;或る場合に、活性成分はエスゾピクロン遊離塩基である。
【0082】
さらなる観点において、本発明は、即時溶出法を用いて臨床的ヒト味覚試験の結果を予測し又は臨床的ヒト味覚試験からのデータを相関させることに関する。臨床的なヒトの味覚試験は「Lick and Roll」試験とも呼ばれる。「Lick and Roll」試験の典型的な手順は、訓練を受けた官能パネリストである健常被験者による2つの部分の試験を含む。試験は非盲検であるが6個の錠剤コーティングの選択は盲検でありそれにより試験が行なわれるので、パネリストは全ての錠剤が作用し得る(active)ことを知っている。味覚パネリストは、記述的な官能分析のフレーバープロファイル法(Keane, 1992)の強度スケールを用いて錠剤変量のうち苦味の始まりを測定する。0が全く無しで3が強い強度である0〜3のカテゴリーの間に7つの点を用いる。第1部において、パネリストは、表面形状(surface geometry)、バンド(band)及び2つのフェース(face)の決まった順序に従って、錠剤表面を舐めることによって錠剤を評価し(「Lick Test」)、各形状で6回反復評価する。パネリストは、いずれの評価においても中程度の強度2の苦味に達するのに要した舐め回数を記録する。第2部において、パネリストは、口腔内で錠剤をゆっくりと転がすことによって錠剤を評価し(「Roll Test」)、3回反復評価する。パネリストは、いずれの評価においても中程度の強度2の苦味に達するのに要した秒数を記録する。結果の詳細は、本明細書の実施例5に記載する。
【0083】
要約すれば、錠剤コーティング配合物及びコーティング重量の差異が、訓練を受けた味覚パネルを用いて測定された苦味の漏出(breakthrough)に有意な差を生じさせた。苦味漏出の始まりは、コーティング重量を増加させ、透明な保護膜又は調整コーティング配合物、例えば、Opadry(商標)を付与することによって遅延させることができる。「Licks and Roll」法からのデータは、即時溶出法からのデータとよく相関していた。従って、即時溶出法を用いてヒト臨床的味覚試験結果を予測することができる。
【0084】
《コーティングの一般的手順》
コーティング懸濁液の調製:室温(20℃〜25℃)においてボルテックスにより精製水を水溶性重合体コーティングと混合する。コーティング懸濁液中の水に対する固形物の割合(固形分)は約2%〜約20%(wt/wt)、好ましくは約3%〜約15%(wt/wt)、そしてより好ましくは約7%〜約13%(wt/wt)である。ボルテックス速度500〜1000rpmで20〜60分間の範囲の時間混合を行なう。コーティング懸濁液の試料を取り出しそして粘度測定を行なう。次いで、ボルテックスによって低速で少なくとも60分間混合することにより混合物を脱気する。
コーティング手順:コア固形投与単位(例えば、錠剤)を適当なコーティング装置内に充填する。適当な範囲のコーティング条件は選択されるコーティング装置に基づいて変化することができ;前記差異は、とりわけ、コーティング懸濁液調製物中の水に対する固形物の割合、ターゲット入口温度、噴霧速度、ノズル圧力、パン速度及び気流に見出すことができる。本発明に用いる種々の条件の範囲のセットはバッチの大きさ及び装置に依存する。
【0085】
以下の限定的ではない例は本発明を説明する。
【0086】
《実施例1−エスゾピクロン3.0mg被覆錠剤(Opadry(商標)tm Coat)》
エスゾピクロンのコア(1錠当たり3.0mg)18kgをOpadryコーティング分散液を用いて被覆した。本例のOpadry分散液は、精製水14.58kgをOpadry tm(07F99077、ブルー)と、24℃においてボルテックスにより750rpmで45分間混合して10%固形分を生じさせることにより調製した。コーティング懸濁液100gを取り出しそしてそれが粘度336.5cP(25℃)を有することを見出した。次いで、低速で約1時間混合することによって混合物を脱気した。
【0087】
4つの混合バッフル、ぜん動ポンプ、96440−25 Masterflexチューブ、2つのSpraying Systemsガン(SUV113A)、VF−3578−SS又はVF−3578−316SSノズル及びVA113293−60−316SS又はCO−VF−3578−SSエアキャップを備えた、コーティング用の24インチのO‘Hara Labcoat Model IIXパン内にコア錠剤(エスゾピクロン3.0mg、単一の脱塵した(dedusted)コア)18kgを充填した。2つのスプレーガンを35g/分間(総噴霧速度70g/分間)に設定した。100分後に、所望の4.5%の被覆重量増加を達成した。噴霧条件は以下の通りであった。

【0088】
100錠の試料の重量を記録し、乳鉢と乳棒で100個の錠剤を磨砕し、そしてMettler Moisture Balanceを用いて試料を乾燥させた(試料サイズ5g、105℃、50秒間フリースイッチオフモード以内5mg)直後に減少分を測定することによって、最終的な被覆錠剤を評価した。Laser Induced Breakdown Spectroscopyを用いて被覆錠剤のコーティングの均一性を評価した。
《実施例2》
固形分範囲の試験を1kgスケールで実施した。7%及び10%の固形分の試料は同等の外観を有していたが、13%固形分の表面はより粗かった。以下の表に粘度結果及び4%コーティング重量増加を達成するのに要したランタイムを示す。

【0089】
《実施例3−味覚評価》
エスゾピクロン錠剤の味覚プロファイルの非盲検の複数回投与(multiple-dose)試験を用いて味覚評価を実施した。前記組成物を試験するために、においと味覚に対する通常の能力を有する4人からなるフレーバープロファイルパネルを、基本的官能原理及びフレーバープロファイル技術のあらゆる観点において訓練してきており、彼らはパネル構成員としてかなりの経験を積んでいる。プロファイルを作成すべき試料は均一であり代表的なものであった。試料調製及び提示を標準化しそして制御した。
【0090】
フレーバープロファイルは、製品及び成分中の属性のタイプ及び強度を測定するのに用いられる当該技術分野で認められている記述的官能分析法である[Keane, P. The Flavor Profile Method. In C. Hootman (Ed.), Manual on Descriptive Analysis Testing for Sensory Evaluation ASTM Manual Series: MNL 13. Baltimore, MD.(1992)参照]。この方法は、フレーバーが、確認可能な味覚、におい(アロマ)、及び化学的感覚属性と、それに加えて分離して確認することができない潜在的な属性の複合体とからなるという概念に基づいている。この方法は、再現性のある方法により製品のフレーバーを記述及び評価する正式な手順からなる。
【0091】
各官能パネリストにより、表面ごとに6回、各錠剤のバンド及びフェースの両方について錠剤コーティングを測定した。パネリストは、舐めた後は毎回、数秒間待ってから苦味を知覚するようにした。フレーバープロファイル強度スケール(以下に示す)を用いることによって苦味強度結果を得、そして中程度(2)の苦味強度に至るまでの舐めた回数を記録した。

【0092】
コーティングのタイプ、厚さ及び脱塵の量において異なる6つの別個のエスゾピクロンの錠剤タイプを試験した。

【0093】
反復測定分散分析(ANOVA)を用いてデータセットを分析し、そしてバンド及びフェースのデータを別々に分析した。ボンフェローニ対比較試験法(Bonferroni pairwise comparison test)を用いて試料のタイプ間の有意な差異を測定した。フェースとバンドのデータは高い相関性を示し(r=0.94、データは示さず)、そして苦味が漏出するのに錠剤のフェースはバンドより時間がかかった。
【0094】
図1に示すように、コーティングのタイプは苦味が漏出するまでの平均的な舐め回数(mean licks)に有意な差を与えることが見出された。この図において、同じ縦軸を共有するコーティング試料は統計的に異ならない。
【0095】
コーティングのタイプは3つの別個のグループに入る。
グループIII:Opadry tm(4.5%コーティング、TM)、Opadry II(7.5%コーティング、OC)及びOpadry IIに加えてOpadry Clear(それぞれ4.5%コーティング及び1〜2%コーティング;CC)は、他のグループより苦味漏出まで多くの舐め回数を要した。
グループII:Opadry II脱塵2倍(4.5%コーティング、DD)及びOpadry II脱塵せず(4.5%コーティング、ND)。脱塵は苦味の漏出の低減に何ら効果を示さなかった。
グループI:Opadry II(2.5%コーティング、UC)は最も速い苦味漏出を生じさせた。
【0096】
薬学的に許容することのできる担体に対する活性成分の割合、圧縮重量を変更することによって、又は異なるパンチを用いることによって、他の強度の錠剤を調製することができる。
【0097】
《実施例4−3mg市販ルネスタ(Lunesta)錠剤の従来の溶出》
Hanson Research SR8−Plus Dissolution Apparatus及びC−Technologies Fiber Optic UV Probesを305nmで用いて(410nmで賦形剤を減じて)、種々のpH値の溶出媒体中で、生理的温度(37℃)における3mgエスゾピクロン遊離塩基錠剤の従来の溶出を試験した。用いた溶出媒体は、(a)水6L中に濃塩酸50mLを混合することにより調製したpH1の0.1N HCl;(b)水6L中に酢酸ナトリウム三水和物5.88gを溶解しそして酢酸でpHを4.5に調整することにより調製したpH4.5の酢酸緩衝液(20mM);(c)水6L中にリン酸二水素カリウム16.3gを溶解し、そしてNaOHでpHを5.5に調整することにより調製したpH5.5のリン酸緩衝液(20mM);(d)水6L中にリン酸二水素カリウム16.3gを溶解しそしてNaOHでpHを6.8に調整することにより調製したpH6.8のリン酸緩衝液(20mM)であった。標準的な溶出プロトコルを用いた。100mL容積測定用のフラスコ中にエスゾピクロン遊離塩基の既知量(〜20mg)を秤量することにより、標準溶液(エスゾピクロン遊離塩基0.006mg/mL)を調製した。このフラスコ中にアセトニトリル10mLを加えそして固形物が完全に溶解するまで超音波処理した。溶液を室温まで冷却し、そして溶出媒体を用いて100mLマークまで容積をメークアップし、そして充分に混合した。このストック溶液から、媒体を用いて3mLを100mLに希釈した。容積500mLの溶出媒体を溶出装置の6つの容器内のそれぞれに移し、そして温度37℃に加温する。光ファイバープローブをそれぞれの溶出容器中に浸漬し、そして溶出媒体中の全てのプローブについてブランクの読み取りを行なう。個別の容器それぞれについて標準品の読み取り値を記録する。次いで、プローブを媒体で洗浄した後、それらのそれぞれの容器中に挿入して戻す。各容器内に1個の錠剤を移した。直ちに溶出プログラムを開始しそして305nmで60分間読み取りを行なった(20分間については1分間ごとそしてその後は10分間ごと)。種々の媒体中の3mg市販ルネスタ錠剤の溶出プロファイルを図1に示す。
【0098】
《実施例5−3mgエスゾピクロンマレイン酸塩錠剤の従来の溶出》
Hanson Research SR8−Plus Dissolution Apparatus及びC−Technologies Fiber Optic UV Probesを305nmで用いて(410nmで賦形剤を減じて)、種々のpH値の溶出媒体中で、生理的温度(37℃)における3mgエスゾピクロンマレイン酸塩錠剤の経時的溶出を試験した。用いた溶出媒体は、(a)水6L中に濃塩酸50mLを混合することにより調製したpH1の0.1N HCl;(b)水6L中に酢酸ナトリウム三水和物5.88gを溶解しそして酢酸でpHを4.5に調整することにより調製したpH4.5の酢酸緩衝液(20mM);(c)水6L中にリン酸二水素カリウム16.3gを溶解しそしてNaOHでpHを5.5に調整することにより調製したpH5.5のリン酸緩衝液(20mM);(d)水6L中にリン酸二水素カリウム16.3gを溶解しそしてNaOHでpHを6.8に調整することにより調製したpH6.8のリン酸緩衝液(20mM)であった。標準的な溶出プロトコルを用いた。100mL容積測定用のフラスコ中にエスゾピクロン遊離塩基の既知量(〜20mg)を秤量することにより、標準溶液(エスゾピクロン遊離塩基0.006mg/mL)を調製した。このフラスコ中にアセトニトリル10mLを加えそして固形物が完全に溶解するまで超音波処理した。溶液を室温まで冷却しそして媒体を用いて100mLマークまでメークアップし、そして充分に混合した。このストック溶液から、媒体を用いて3mLを100mLに希釈した。容積500mLの溶出媒体を溶出装置の6つの容器内のそれぞれに移しそして温度37℃に加温する。光ファイバープローブをそれぞれの溶出容器中に浸漬しそして溶出媒体中の全てのプローブについてブランクの読み取りを行なう。個別の容器それぞれについて標準品の読み取り値を記録する。次いで、プローブを媒体で洗浄した後、それらのそれぞれの容器中に挿入して戻す。各容器内に1個の錠剤を移した。直ちに溶出プログラムを開始しそして305nmで60分間読み取りを行なった(20分間については1分間ごとそしてその後は10分間ごと)。3mgエスゾピクロンマレイン酸塩錠剤の溶出プロファイルを図2に示す。
【0099】
《実施例6−標準的コーティング(2〜4.5%重量増加)を有する3mgエスゾピクロン錠剤の即時溶出》
この手順は、より少量の重量増加(2〜4.5%の標準的コーティング重量増加)を伴って被覆されたエスゾピクロン錠剤又はあらゆる錠剤の即時溶出溶液を調製するのに適用することができる。HPLC/MS/MS法を用いて水中5%ヒト唾液溶液中でのエスゾピクロン錠剤の即時溶出プロファイルを得た。水中5%ヒト唾液溶液は、正常ヒト唾液(プールされ、Biochemedにより特別なスクリーニング)50mL及び水(ミリQ水)950mLを適当な容器中で充分に混合することによって調製した。即時溶出試料溶液を調製するため、5%ヒト唾液溶液5mL(5mLエッペンドルフピペットを使用)をいくつかのシンチレーションバイアル(約20mL容積)中にピペットで移した。長いハンドル(ステンレス鋼管を用いて製造)を備えたバスケットシンカー(Hanson Research Part # ENMISC,BSK008−JP 8メッシュ、長さ0.76インチ×幅0.41インチ)内にLunesta(商標)錠剤を置いた。次いで、バスケットをバイアル1中に2秒間浸漬し、次いでバイアル2に移して2秒間ディップしそして以降同様にした。錠剤が崩壊し始めたときに試験を中止した。さらに9個の錠剤(全部で10個の錠剤)について、前記のように試験を繰り返した。LC/MS/MS(ESIモード、ポジティブMRMスキャンタイプ)を用いて試料中のエスゾピクロンの濃度を測定した。図3又は図4に示すように、時間(秒)に対してエスゾピクロンの対数濃度をプロットすることによって、Lunesta(商標)錠剤の溶出プロファイルを得た。
【0100】
《実施例7−TMコーティング(3〜8%重量増加)を有する3mgエスゾピクロン錠剤の即時溶出》
この手順は、より多量の重量増加(3〜8%のTMコーティング重量増加)を伴って被覆されたLunesta錠剤又はあらゆる錠剤の即時溶出溶液を調製するのに適用することができる。HPLC/MS/MS法を用いて、水中5%ヒト唾液溶液中のLunesta(商標)(エスゾピクロン)錠剤の即時溶出プロファイルを得た。水中5%ヒト唾液溶液は、正常ヒト唾液(プールされ、Biochemedにより特別なスクリーニング)50mL及び水(ミリQ水)950mLを適当な容器中で充分に混合することによって調製した。即時溶出試料溶液を調製するため、5%ヒト唾液溶液5mL(5mLエッペンドルフピペットを使用)をいくつかのシンチレーションバイアル(約20mL容積)中にピペットで移した。長いハンドル(ステンレス鋼管を用いて製造)を備えたバスケットシンカー(Hanson Research Part # ENMISC,BSK008−JP 8メッシュ、長さ0.76インチ×幅0.41インチ)内にLunesta(商標)錠剤を置いた。常時液体の表面より下に錠剤を維持し、そして2秒間ごとに約1回のディップの速度で10秒間バスケットを上下に動かした。別個の錠剤及びバイアルを用いてこの手順を5〜10回繰り返した。それに応じて(すなわち、10−1、10−2その後同様に10−6まで)を用いてシンチレーションバイアルにラベルを付した。同様にして溶出希釈液(例えば、5%ヒト唾液溶液)を含む個々のバイアル中で、新たなバイアル内で錠剤が崩壊するまで、又は溶出希釈液(例えば、5%ヒト唾液溶液)を含む個々のバイアル中で錠剤が崩壊するまでのいずれが早い方まで、試験を継続した。次いで、LC/MS/MS(ESIモード、ポジティブMRMスキャンタイプ)を用いて試料中の活性成分、例えば、エスゾピクロンの濃度を測定した。図5及び図6に示すように、時間(秒)に対してエスゾピクロンの対数濃度をプロットすることによってLunesta(商標)錠剤の即時溶出プロファイルを作成した。
【0101】
即時のプロファイルの前記例は活性成分の存在の測定に関するが、この方法は他のコア材料の濃度の測定にも同様に適用することができることは当業者に明白であろう。例えば、錠剤コアが活性成分のほかに不快な味覚の賦形剤を含んでいた場合に、同じ方法を用いて賦形剤の漏出を測定することができるであろう。
【0102】
《実施例8−TMコーティングを有する3mgエスゾピクロン錠剤についてのヒト臨床的味覚「Lick and Roll」試験》
方法:この試験は、訓練を受けた官能パネリストである健常被験者による2つの部分の試験であった。試験は非盲検であるが6個の錠剤コーティングの選択は盲検でありそれによって試験が行なわれたので、パネリストは全ての錠剤が作用し得ることを知っていた。味覚パネリストは、記述的な官能分析のフレーバープロファイル法(Keane, 1992)の強度スケールを用いて錠剤変量のうち苦味の始まりを測定した。0が全く無しで3が強い強度である0〜3のカテゴリーの間に7つの点を用いた。第1部において、パネリストは、表面形状、バンド及び2つのフェースの決まった順序に従って、錠剤表面を舐めることによって錠剤を評価し(「Lick Test」)、各形状で6回反復評価した。パネリストは、いずれの評価においても中程度の強度2の苦味に達するのに要した舐め回数を記録した。第2部において、パネリストは、口腔内で錠剤をゆっくりと転がすことによって錠剤を評価し(「Roll Test」)、3回反復評価した。パネリストは、いずれの評価においても中程度の強度2の苦味に達するのに要した秒数を記録した。
【0103】
結果及び考察:錠剤バンドの平均舐め(リック)回数は、95%信頼区間1.63リックで、製剤UCの2.92リックから製剤OCの8.38リックまで変化した。フェースの平均リック値は一つを置き換えればバンドと同様であった。すなわち、より小さい95%信頼区間0.56リックで、製剤TMが苦味漏出まで最も多くのリックを要した。平均転がし(ロール)値は12.4〜23.2秒間であり、製剤UCが最も少ない時間を要しそして製剤OC錠剤がもっとも多い時間を要した。ロール試験データはリック試験データと高い相関性を有する。
【0104】
当業者であれば、ルーチンの実験を用いるだけで、本明細書に記載した本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、又は確認することができるであろう。前記等価物は特許請求の範囲に包含されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の重合体コーティングで被覆された、治療的有効量の(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)若しくは(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩を含む固形剤形としての経口投与用の医薬組成物であって、前記重合体コーティングが前記組成物の約2重量%〜約10重量%に相当する前記医薬組成物。
【請求項2】
前記コーティングがセルロース誘導体の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記セルロース誘導体がセルロースエーテル及びセルロースエステルからなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コーティングがヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース又はそれらの混合物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記コーティングがヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記コーティングがさらに味覚調整剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記固形剤形が錠剤である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又は(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩の味覚を約20秒間マスキングすることができる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又は(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩の味覚を約30秒間マスキングすることができる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記コーティングが組成物の約3重量%〜約8重量%の量を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記コーティングが組成物の約4重量%〜約7重量%の量を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記コーティングが組成物の約4重量%〜約6重量%の量を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記コーティングが少なくともセルロースエーテル、乳化剤及び可塑剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記コーティングが二酸化チタン約5〜25重量%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース約25〜70重量%、及びポリエチレングリコール約0〜10重量%を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
患者の睡眠障害を治療する方法であって、睡眠障害の治療が必要な患者に請求項1に記載の組成物を、前記組成物の投与が睡眠障害を治療するように投与することを含む、前記睡眠障害の治療方法。
【請求項16】
患者の不安を治療する方法であって、不安の治療が必要な患者に請求項1に記載の組成物を、前記組成物の投与が不安を治療するように投与することを含む、前記不安の治療方法。
【請求項17】
睡眠障害の治療、予防又は改善のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項18】
不安の治療、予防又は改善のための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
睡眠障害の治療、予防又は改善のための薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
不安の治療、予防又は改善のための薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項21】
請求項1に記載の医薬組成物の製造方法であって、
(a)錠剤の形態の(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)若しくは(S)−(6−(5−クロロ−2−ピリジル)−5−[(4−メチル−1−ピペラジニル)カルボニルオキシ]−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−ピロロ[3,4−b]ピラジン)又はその塩0.5〜5mgを供給する工程と;
(b)セルロース誘導体を含む水性分散液を用いて錠剤をスプレーコーティングして前記組成物の約2重量%〜約10重量%を含むコーティングを付与する工程と
を含む、前記製造方法。
【請求項22】
コア及びコーティングを含む被覆固形経口剤形中の曝露されたコア材料の存在を測定する方法であって、
(a)生体外で溶出媒体を供給する工程と;(b)前記被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させる工程と;及び(c)前記被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させて5分間以内に溶出媒体中に溶出したコア材料の濃度を測定する工程と
を含む、前記測定方法。
【請求項23】
コア及びコーティングを含む被覆固形経口剤形中の曝露されたコア材料の存在を測定する方法であって、
(a)生体外で溶出媒体を供給する工程と;(b)前記被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させる工程と;及び(c)前記被覆固形経口剤形を溶出媒体と接触させて60秒間以内に溶出媒体中に溶出したコア材料の濃度を測定する工程と
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
被覆錠剤を容器中の溶出媒体と接触させ及び活性成分の濃度をLC−MS/MSによって測定する、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
工程(a)〜(c)を少なくとも1回繰返し、そのことによって時間とコア材料の濃度との関係を得ることをさらに含む、請求項22又は23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−516348(P2012−516348A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548294(P2011−548294)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/022402
【国際公開番号】WO2010/088385
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(500114922)サノビオン ファーマシューティカルズ インク (14)
【氏名又は名称原語表記】Sunovion Pharmaceuticals Inc.
【Fターム(参考)】