説明

ACFとの接着力信頼性の高いフレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム積層体

【課題】異方導電性フィルムとの接着力信頼性の高いフレキシブルプリント配線板を提供する。
【解決手段】フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルムと異方導電性フィルムの積層体であって、異方導電性フィルムの接した部分の該フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルムのポリイミド面露出割合が30〜80%となるようにパターニングした際、初期の接着力が0.8kN/m以上であり、85℃85RH%250時間処理後に該フレキシブル基板と該異方導電性フィルムとの密着力が0.6kN/m以上である、積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム(以下ACF)と優れた接着性を示すポリイミドフィルムと薄膜金属シートを熱圧着した耐熱性フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化とともに、小型化、高機能化などの技術進歩を求められている。また、それらを構成する電子部品にも電気特性、機械特性、耐熱性なども、より高性能なものを求められる。さらに、限られた容積内に半導体チップなどを搭載するために、電子回路用基板としてとして、銅箔をはじめとした金属層とポリイミドフィルムを積層したフレキシブルブリント基板が使用されている。
フレキシブルプリント基板を加工して作製されたフレキシブルプリント配線板(以下FPC)は、携帯電話、ハードディスク、液晶ディスプレイ、ノードパソコン、デジタルカメラなどの電子回路として使用されており、FPC同士、またはFPCと半導体チップなどの電子部品とを接続する材料の1つとしてACFが使用されている。
従って、ACFとFPC間には長期間に亘って高い接着力信頼性が求められており、特許文献1では、ACFとFPC間の接着力について議論されており、さらに両者間の接着力信頼性が維持されたFPCが求められている。
【特許文献1】特開2002−363284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ACFとFPC間の高い接着力を有し、接着力の保持率が高いポリイミドフィルムを有する金属箔積層ポリイミドフィルム積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明をなすに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)と、異方導電性フィルム(b)の積層体であって、フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)が、異方導電性フィルム(b)と接する部分におけるポリイミド面露出割合が30〜80%となるようにパターニングされ、該フレキシブル基板と該異方導電性フィルムの接着力が0.8kN/m以上であり、かつ85℃85RH%250時間処理後に該フレキシブル基板と該異方導電性フィルムとの密着力が0.6kN/m以上である、積層体。
フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)と、異方導電性フィルム(b)の積層体であって、該フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)が熱圧着性ポリイミド樹脂層を有し、該熱圧着性ポリイミド樹脂層が脂環式酸二無水物および/または脂環式ジアミンを有することを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0005】
本発明のフレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(以下フレキシブル基板)は、異方導電性フィルムとの接着面を、ポリイミド面露出割合が30〜80%となるようにパターニングした際、85℃85RH%250時間処理後に該フレキシブル基板と該異方導電性フィルムとの密着力が0.6N/m以上である、積層体である。また、該フレキシブル基板には、熱圧着性ポリイミド樹脂が使用されており、該熱圧着性ポリイミド樹脂層に脂環式酸二無水物および/または脂環式ジアミンを有することで、長期に亘ってフレキシブル基板と異方導電性フィルムの接着力信頼性の高いフレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルムを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、フレキシブル基板と異方導電性フィルムとの接着部分のポリイミド面露出割合が30〜80%になるようにパターニングしたとき、フレキシブルプリント基板と異方導電フィルム間の接着力が0.8kN/m以上であり、85℃85RH%250時間処理後にフレキシブルプリント基板と異方導電フィルムとの密着力が0.6N/m以上であることを特徴とした、耐熱性フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム構造体である。
また、フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)と、異方導電性フィルム(b)の積層体であって、該フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)が熱圧着性ポリイミド樹脂層を有し、該熱圧着性ポリイミド樹脂層が脂環式酸二無水物および/または脂環式ジアミンを有することを特徴とする積層体である。
【0007】
本発明において、ポリイミドフィルムは、非熱可塑性ポリイミドフィルムの片面又は両面に熱圧着性ポリイミド樹脂層を積層した耐熱性ポリイミドフィルムであることが望ましい。
さらに、該耐熱性ポリイミドフィルムは耐熱性ポリイミドベースフィルムの片面又は両面に耐熱性ポリイミド接着剤層を積層した構造体であり、該耐熱性ポリイミドに脂環式酸二無水物および/または脂環式ジアミンを有することが望ましい。
本発明における耐熱性ポリイミドフィルムは、非熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムの片面または両面に、熱圧着性ポリイミド溶液を塗布し、加熱による溶媒乾燥を行うことによって製造することができる。
【0008】
非熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムの製造法は、特に限定されるものではないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物または、その誘導体と芳香族ジアミンを用いて、公知の有機極性溶媒中で重合し、ステンレスベルトへ流延塗布し、高温乾燥による脱溶媒、イミド化をすることにより得られる。そのような酸二無水物と芳香族ジアミンの例としては、特に制限されるものではないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4, 4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物またはピロメリット酸二無水物、芳香族ジアミンとしてp−フェニレンジアミンおよび/ またはジアミノジフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0009】
有機極性溶媒としては、N, N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスホルアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン、ジグライム、トリグライムなどを挙げることができる。これらの有機極性溶媒は、トルエン、ベンゾニトリル、キシレンなどの他の有機溶媒と混合して使用することもできる。
非熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムの厚さは5〜125μmであるものが好ましい。また上記非熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムは、後工程で積層される熱圧着性ポリイミド層との接着力を向上させるために表面処理が施される場合があるが、特に制限されるものではない。表面処理の例としては、プラズマ処理やコロナ処理、シランカップリング剤類での処理、バフ研磨、サンドブラスト、ウェットブラスト、UVオゾン処理などが挙げられる。
【0010】
また、非熱可塑性ポリイミドフィルムは、市販のポリイミドフィルムも使用できる。例えば、ユーピレックス(登録商標)S、ユーピレックス(登録商標)SGA、ユーピレックス(登録商標)SN(宇部興産株式会社製、商品名);カプトン(登録商標)H、カプトン(登録商標)V、カプトン(登録商標)EN(東レ・デュポン株式会社製、商品名);アピカル(登録商標)AH、アピカル(登録商標)NPI、アピカル(登録商標)NPP、アピカル(登録商標)HP(株式会社カネカ製、商品名)、アピカル(登録商標)FP(株式会社カネカ製、商品名)等が挙げられる。
この非熱可塑性芳香族ポリイミドフィルムの片面、もしくは両面に積層される熱圧着性ポリイミドの積層方法として、公知の塗布方法が使用できる。すなわち、ブレードコーター、ナイフコーター、コンマコーター、含浸コーター、グラビヤコーター、リバースロールコーターなどを使用して行うことができるが、特にこれらに制限されるものではない。
【0011】
熱圧着性ポリイミドは、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン成分とを反応させて得られるポリアミド酸をイミド化して得られるものであるが、分子中に脂環式酸二無水物または脂環式ジアミンを有することでACFと熱と圧力による反応の際、ACF中の熱反応性の成分と高い接着力が得られる。脂環式酸二無水物の例としては、例えば、ビシクロ(2,2,2)オクタ−7−エン−1−メチル−2,3, 5, 6テトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロー3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2酸二無水物、1,5−シクロオクタンジエン−1,2,5,6テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ(2,22)オクタ−7−エン−2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。これらの中で、特に好ましくはビシクロ(2,2,2)オクタ−7−エン− 2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物である。
【0012】
上記のような脂環式酸二無水物以外に、諸特性調整の目的で他の公知のテトラカルボン酸二無水物を併用しても良い。例えば、ピロメリット酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジヒドロ−1,3−ジオキソ−5−イソベンゾフランカルボン酸−1,4−フェニレンエステル二無水物等を併用しても良い。
【0013】
これらの中で、耐熱性の観点からピロメリット酸二無水物、3,4,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物が好ましい。
脂環式のジアミンの例としては、イソホロンジアミン、2,5−ジアミノメチル−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノメチル−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノメチル−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−オキシビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−チオビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−7−イミノビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノ−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノ−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノ−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7,7,8,8−テトラフルオロビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノ−7,7−ビス(ヘキサフルオロメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−オキシビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−チオビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−7−イミノビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,3−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、1,4−ジ(2−アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタンビスメチルアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,8−ジアミノ−p−メンタン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、などが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0014】
この中で、イソホロンジアミン、2,5−ジアミノメチル−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノメチル−7,7−ジフルオロビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノメチル−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノメチル−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−チアビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−オキソビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ジアミノ−7−アザビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ジアミノ−ビシクロ[2,2,2]オクタン、2,6−ジアミノ−7,7−ジメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサンが好ましい。
【0015】
上記のような脂環式ジアミン以外に、諸特性調整の目的で他の公知の芳香族ジアミンを併用しても良い。それらジアミンとしては、例えば、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、1,4−ビス(3−アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2−アミノエチル)エーテル、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、ビス(2−アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(2−アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2−(3−アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2−ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、1,2−ビス[2−(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2−ビス[2−(2−アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、イソホロンジアミンなどが挙げられる。
【0016】
好ましくは、耐熱性の観点から3,5−ジアミノ安息香酸、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス(アミノメチル)エーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンが好ましい。
脂環式酸二無水物および/または脂環式ジアミンはACFとの接着力維持するために構造中に10モル%以上有していることが好ましく、耐熱性を維持するために60モル%以下であることが好ましい。さらに好ましくは、10〜40モル%の範囲である。
また、この熱圧着性ポリイミド樹脂の末端はカルボン酸またはジアミンであることが望ましい。これにより、ACFの熱反応性成分との反応が促進され、接着力が向上するとともに、フィルムが吸湿した際に、接着力の低下が抑制される。
【0017】
本発明で用いられる薄膜金属シートとしては、公知の金属箔、合金箔などが考えられる。具体的には、銅箔、ステンレス箔、アルミ箔などが考えられるが、入手性の観点から銅箔であることが望ましい。銅箔の種類は特に限定されるものではなく、公知の電解銅箔、圧延銅箔、キャリア付銅箔のいずれを使用したとしても構わない。
サブトラクティブ法などによる銅箔のパターン作製を考慮し、銅箔粗化面の十点平均荒さは0.5〜2.0μmが望ましく、厚みは、3〜20μmが望ましい。
上記薄膜金属層を耐熱性ポリイミドフィルム上に形成して本願積層体を得る方法としては、該耐熱性ポリイミドフィルム上にそれら金属シートを重ね、真空プレスや、ロールラミネーターやダブルベルトプレスなどの連続ラミネータ−など、両者の接着に必要な温度と圧力と時間を加えることができる公知慣用の装置を用いることができる。
【0018】
本発明において、ACFと接着する面におけるポリイミド面露出割合は、ポリイミド面露出割合が多いほど接着強度が強くなることが期待される。電子部品全体の高密度化による高機能化の観点から、30〜80%がよく、好ましくは50〜80%であり、より好ましくは50〜65%である。
金属配線のパターニングはサブトラクティブ法などの公知の方法が使用されるが、これらに限定されるものではない。金属配線幅は電子部品の高密度化の観点から、好ましくは10μm以上150μm以下であり、より好ましくは10μm以上50μm以下である。
本発明で使用されるACFとは、接着フィルム中にエポキシ樹脂やアクリル樹脂などを主成分とする樹脂中に、導電性粒子を分散させたものである。この樹脂を接続する回路間で、あらかじめ決められた温度、圧力、時間において熱圧着させて使用される。このことにより、導電粒子を介して回路間の導通を取ることが出来、横方向の配線同士は絶縁性が保たれるものである。
【0019】
ACFの主成分としては、公知のエポキシ系樹脂またはアクリル系樹脂を使用するのが望ましいがこれらに限定されるものではない。エポキシ系樹脂の例として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF 型エポキシ樹脂、エポキシノボラック樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂などが好ましいが、これらに限るものではない。
ACF中に分散される導電粒子種としては、金、銀、銅、ニッケル、はんだやこれらの合金からなる金属粒子、あるいは前記の金属粒子およびプラスチックに導電層を被覆した粒子が好ましい。また、導電性粒子径は、3〜5μmが望ましい。粒子径が小さすぎると、配線の表面粗さのバラツキに影響されて接着力信頼性が低くなる可能性がある。逆に粒子径が大きすぎると、配線の短絡が起きる可能性が大きくなるので推奨されない。さらに、ACF中に、シリコン系などの絶縁体粒子を分散させても構わない。
【実施例】
【0020】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
ステンレススチール製の碇型撹拌器を取り付けた容量2Lのガラス製のセパラブル3つ口フラスコに、窒素ガス導入管及びストップコックのついたトラップの上に玉付き冷却管をつけた還流冷却器を取り付け、窒素ガス気流中で反応させた。3,5−ジアミノ安息香酸15.22g(100ミリモル)、ビシクロ(2,2,2)オクタ−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物44.9g(200ミリモル)、ガンマ−バレロラクトン3.0g(30ミリモル)、ピリジン3.6g(40ミリモル 、N−メチル−2−ピロリドン300gとトルエン60g を加えた。これに窒素ガスを通じながら180 ℃(浴温)で1時間反応した。トルエンと水の共沸物を除いた。この反応液中に、3,4,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物29.4g(100ミリモル)、1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ) ベンゼン58.46g(200ミリモル)、N−メチルピロリドン268gとトルエン40gを加え、窒素ガスを通じながら室温で1時間反応した。次いで180℃(浴温)で3時間、水とトルエンの共沸物を除きながら反応した。以上の反応で熱による反応性の基を分子中にもつ熱圧着性ポリイミドワニスAを得た。
【0021】
ワニスAを80℃に保温された東レ・デュポン株式会社製ポリイミドフィルム(カプトン80EN 20μm)上に塗布して10分間放置後、空気循環式の乾燥炉で最高温度120℃10分間乾燥し、さらに窒素循環式の乾燥炉で150℃10分、180℃10分、260℃30分乾燥させ、熱圧着性耐熱性ポリイミドフィルムBを得た。
上記の熱圧着性耐熱性ポリイミドフィルムBのワニスA塗布面に、日本電解株式会社製銅箔(USLP−SE、12μm)の粗化面を重ね合わせ、連続ラミネーターを用いて、温度380℃で加熱圧着させ、銅箔積層ポリイミドフィルムCを得た。
上記の銅箔積層ポリイミドフィルムCをサブトラクティブ法により銅箔をラインアンドスペース50μm/50μmにパターニング加工した。その上に、打ち抜き法により銅箔方向と垂直に30mm×平行に10mmの穴を開孔した信越化学製カバーレイ(CN261)を真空プレスを用いて160℃4.9MPaの条件で30分間圧着し、続いて150℃4時間キュアを行うことでカバーレイ層を形成した。次に、カバーレイが積層されていないラインアンドスペース50μm/50μm(ポリイミド面露出割合50%)に加工された銅配線露出部分に電解Niめっきを2μm、電解Auめっきを0.05μm行い、銅配線のめっき処理を行った。これによりめっき加工を施した部分を含んで30mm角の金型で打ち抜き、フレキシブルプリント配線板Dを得た。
【0022】
このフレキシブルプリント配線板Dの金属配線部分とITO(インジウム―すず酸化物)を蒸着したガラスを、1.5mm幅に切り取った日立化成株式会社製のACF(AC-4251FY-16)を介して日化設備エンジニアリング株式会社製(AC-SC120)を用いて実温80℃、3秒、1.0MPaにより仮圧着した。さらに日化設備エンジニアリング株式会社製(AC-S100FM-U)を用いて実温180℃、15秒、3.0MPaで本圧着を行い、フレキシブルプリント配線板DとACFの圧着を行い、積層体Eを得た。
積層体Eの圧着した30mm幅のうち、中心部分を10mm幅にカットし、ITOを蒸着したガラスを基材として、90°方向に剥離強度試験を行ったところ、0.95kN/mであった。剥離界面はフレキシブルプリント配線板とACF間であった。また、積層体Eを85℃85RH%250時間高温高湿下にさらした後、同様に90°方向に剥離試験を行ったところ0.75kN/mであった。この積層体Eは高温高湿の環境下に長期にさらされても高い接着力を維持しており、接着力信頼性が高いことが解る。
【0023】
[実施例2]
実施例1においてプリント配線板DをACFに熱圧着する際、ACFの種類をソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製のACF(CP9731SB2.0mm幅)を用いて同様の圧着機で仮圧着条件80℃、2秒、1.0MPa、さらに本圧着条件180℃、15秒、3.0MPaで本圧着し、積層体Fを得た。
積層体Eと同様に積層体Fの90°方向の剥離強度試験を行ったところ、0.81kN/mであった。剥離界面はフレキシブルプリント配線板とACF間であった。また、積層体Eを85℃85RH%250時間高温高湿下にさらした後、同様に90°方向の剥離試験を行ったところ0.63kN/mであった。この積層体Fは高温高湿の環境下に長期にさらされても高い接着力を維持しており、接着力信頼性が高いことが解る。
【0024】
[比較例1]
ステンレススチール製の碇型撹拌器を取り付けた容量300mlのガラス製のセパラブル3つ口フラスコに、水分吸収用シリカゲル乾燥管を取り付けた。このフラスコに和光純薬工業株式会社製N−メチル−2−ピロリドン(脱水)208.8g、和歌山精化工業株式会社製1,3−ビス−(3−アミノフェノキシ)ベンゼン24.0g を室温にて加え、撹拌・溶解した後に和光純薬工業株式会社製無水マレイン酸0.2g を加え、5分間撹拌後に三菱化学株式会社製3,4,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物24.1g をフラスコに除々に加え、室温で8時間撹拌した。
その後、さらに、ガンマーバレロラクトン3.0g(30ミリモル)、ピリジン3.6g(40ミリモル)、トルエン60g、次いで180℃(浴温)で3時間、トルエンと水の共沸物を除きながら反応し、ワニスGを得た。
このワニスGを用いる以外は、実施例1と同様にして積層体Hを得た。この積層体Hを実施例1と同様の方法で日立化成株式会社製ACF(AC-4251FY-16)との90°方向剥離強度を測定したところ、0.85kN/mであった。剥離界面はフレキシブルプリント配線板とACF間であった。また、積層体Hを85℃85RH%250時間高温高湿下にさらした後、先述と同様に90°方向剥離試験を行ったところ0.51kN/mであった。
この積層体Hは長期調湿後の接着力保持率が低く、接着力信頼性が劣る。
【0025】
[比較例2]
比較例1の積層板Hを圧着する際、ACFの種類をソニーケミカル・インフォメーションデバイス株式会社製のACF(CP9731SB2.0mm幅)を用いたこと以外は実施例2と同様の方法で圧着を行い、積層体Iを得た。
上記例と同様に積層体Iの90°方向の剥離強度試験を行ったところ、0.53kN/mであった。剥離界面はフレキシブルプリント配線板とACF間であった。また、積層体Iを85℃85RH%250時間高温高湿下にさらした後、先述と同様に90°方向剥離試験を行ったところ0.26kN/mであった。
この積層体Iは初期の接着力、長期調湿後の接着力保持率ともに低く、接着力信頼性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のフレキシブルプリント配線板は異方導電性フィルムとの接着力信頼性が高い積層体である。このため、COF用やCOG用フレキシブル基板用途などに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)と、異方導電性フィルム(b)の積層体であって、該フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)が、異方導電性フィルム(b)と接する部分におけるポリイミド面露出割合が30〜80%となるようにパターニングされ、該フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)と該異方導電性フィルム(b)の接着力が0.8kN/m以上であり、かつ85℃85RH%250時間処理後に該フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)と該異方導電性フィルム(b)との密着力が0.6kN/m以上である、積層体。
【請求項2】
フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)と、異方導電性フィルム(b)の積層体であって、該フレキシブル金属箔積層ポリイミドフィルム(a)が熱圧着性ポリイミド樹脂層を有し、該熱圧着性ポリイミド樹脂層が脂環式酸二無水物および/または脂環式ジアミンを有することを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2008−296405(P2008−296405A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142374(P2007−142374)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】