説明

ALC自立塀

【課題】意匠性に優れ、容易に施工することができ、十分な曲げ強度や圧縮強度を有するALC自立塀を提供すること。
【解決手段】間隔を置いて立設された複数の支柱3の間に軽量発泡コンクリートパネル(以下、ALCパネル2という)を固定してなるALC自立塀1である。支柱3は、互いに略直角をなす4枚の側片31を備えた十字型の断面形状を有する。ALCパネル2は、その両側端面である小口面21に内方に凹んだスリット22を有し、スリット22にそれぞれ支柱3の側片31を差し込むことにより固定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽量発泡コンクリートを用いた塀の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
塀などに軽量発泡コンクリートパネル(以下、ALCパネル)を利用する場合には、曲げ強度や圧縮強度が不十分であることから、自立塀として用いられることはほとんどなかった。しかし、加工性に優れ、乾式施工が可能な自立塀としてALCを利用することは有用な手段である。
【0003】
そこで、コンクリートパネルやALCパネルを塀にする方法として、H型鋼を支柱とし、その間にパネルを差し込んで組み立てる構造が良く知られている。この構造によれば、特にパネル自体を加工することもなく、H型鋼により十分な強度が確保できるため、経済的であり施工も容易である。しかしながら、この場合には、支柱であるH鋼材が意匠面に現れ、現場で塗装吹付けや塗りを行う場合、異種素材となり、統一感がなく好ましくない。さらに、意匠面における下地が鋼とALCになることから熱膨張係数などの特性が異なるため、仕上げ状態の経年劣化の差異が著しい。
【0004】
また、従来のコンクリート塀に比べて作業性や省スペースの点で優れたALCパネルを用いた自立塀構造(特許文献1)が報告されている。この技術では、施工時にパネルに串刺しボルトを挿入する必要があるが、平らでなく凹凸の多い現場においては、穴にボルトを通すことも容易ではない。また、上記特許文献1の構造では、長辺方向に長ボルト用の貫通穴を加工する必要があり、加工手間が大きく施工性に劣るという問題がある。
【0005】
また、枠状の金属フレームにALCを目隠しとして留めつける方法として、軽量気泡コンクリートパネル製フェンス(特許文献2)が報告されている。この技術は、塀自体の意匠として外枠フレームが全面に出てしまい、ALCが持つ意匠に統一することができない。また、ALCが有するデザイン性を演出することができない。例えば、規定以外のデザインに対応するためには、金属自体を加工する必要があるため、対応しがたい。
【0006】
また、H型フレームにコンクリートパネルを差し込むコンクリート製パネル及びコンクリート製パネル構造体(特許文献3)が報告されている。この技術は、上述したH型鋼を用いた従来例の一種であるが、H型鋼自体が見える比率が高く、意匠性に乏しい。また、直線部は良いが、コーナー部では柱が2本必要になるため、意匠性だけでなく、施工効率も悪くなる。
【0007】
【特許文献1】特開平10−317734号公報
【特許文献2】特開平11−22254号公報
【特許文献3】特開2002−317427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、意匠性に優れ、容易に施工することができ、十分な曲げ強度や圧縮強度を有するALC自立塀を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、間隔を置いて立設された複数の支柱の間にALCパネルを固定してなるALC自立塀であって、
上記支柱は、互いに略直角をなす4枚の側片を備えた十字型の断面形状を有し、
上記ALCパネルは、その両側端面である小口面に内方に凹んだスリットを有し、該スリットにそれぞれ上記支柱の上記側片を差し込むことにより固定してあることを特徴とするALC自立塀にある(請求項1)。
【0010】
本発明のALC自立塀は、上述したごとく、上記ALCパネルのスリットにそれぞれ上記支柱の上記側片を差し込むことにより固定してある。これにより、意匠性に優れ、容易に施工することができ、十分な曲げ強度や圧縮強度を有することができる。
すなわち、上記構成の十字型の支柱と上記スリットを備えたALCパネルとを組み合わせることにより、支柱の露出を極力抑えることができ、塗り仕上げへの影響が小さくなると共に、内側と外側の両面に優れた意匠性を有することができる。
【0011】
また、ALCパネル自体を容易に加工することができるため、ユーザーニーズに対応した意匠を表現することができる。例えば、住宅用の門袖塀となる場合には、住宅外壁の割り肌調の意匠に合うように、表面に加工を施して質感を合わせることができる。また、適度な視認性を確保するための開口部を設けることも容易であり、意匠性に優れている。
【0012】
また、上記ALCパネルのスリットに上記支柱の上記側片を差し込むだけで固定できるため、容易に施工することができる。また、上記ALCパネルは、両端を固定してあり、上記小口面全面で荷重を受けるため、ALC自立塀は曲げ強度や圧縮強度を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、上記支柱は、鋼などの金属材料を用いることが好ましい。また、上記支柱の高さは、上記ALCパネルの全体の高さに合致していることが最も好ましい。なお、多少ALCパネルよりも低くしてもよい。
また、意匠性の観点から、上記支柱が表面に露出しないように、上記支柱の側片をALCパネルの厚みよりも短くしてもよい。
【0014】
上記ALCパネルは、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記ALCパネルのスリットを上記支柱間に差し込む際に、上記小ブロック単位で上部より容易に落とし込むことができるため、施工性を向上することができる。
【0015】
また、上記スリットに挿入されていない上記側片と、該側片に対面する上記小口面との間隙は弾性接着部材により埋めて固定してあることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記弾性接着部材が、ALCパネルが受ける荷重を吸収するため、上記ALC自立塀は、地震等の振動衝撃を吸収できる弾性構造を有することができる。
上記弾性接着部材としては、シリコンシーラント、市販の発泡系目地材等を利用することが好ましい。
【0016】
また、上記ALCパネルは、複数の貫通穴を設ける加工を施してなり、かつ、表面を防水処理を施した後、親水性の塗料あるいは緑化被膜を施してなることが好ましい(請求項4)。
上記貫通穴を設けることによって適度な視認性を確保できると共に、上記貫通穴が通風口となるため、通風や、採光が良好になる。
また、ALCパネルが吸水し凍結融解を繰り返すことにより破壊するおそれがあるため、防水処理を施すことで破壊を防ぐことができる。
【0017】
そして、親水性の塗料を塗布する場合には、上記ALC自立塀が冷却壁の役割を果たし、また、上記緑化被膜を施す場合には、上記ALC自立塀が緑化壁の役割を果たす。
近年においては、都市部の狭小住宅においては、樹木による庭造りが困難になっている。そのため、上記冷却壁、上記緑化壁は冷却機能を有し、樹木が創り出す温熱環境を補完する役割を果たすことができる。
【0018】
上記親水性の塗料としては、例えば、TiO2等の光触媒系の親水性塗料等が挙げられる。
上記緑化被膜としては、例えば、地被植物の植栽が挙げられる。地被植物としては、日射が当たる環境下でも生育が可能なスナゴケやセダム類等が対象となる。また、植栽用の土壌としては、法面用人工土壌等がある。
【0019】
また、上記ALCパネルの表面には、傾斜面を段差を介して並べてなるルーバー形状を設けるためのルーバー加工を施すことが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記緑化被膜を施す際に、緑化被膜を容易に定着させることができる。
【0020】
また、上記ALCパネルの上方には、該ALCパネルに水を供給するための給水ホースを設けてあることが好ましい(請求項6)。
この場合には、ALC自立塀に冷却塀としての機能を持たせることができる。また、緑化被膜を施している場合には、植栽へ給水することができる。
水の供給方法としては、雨水を地中にて貯蓄し、上記ALC自立塀の上部にポンプアップで引き込んだ後、透水性のパイプにて適時潅水するシステムを構築することが好ましい。また、ポンプアップの動力源としては、省電力化のために、小型の太陽光発電パネルを利用することが好ましい。
【0021】
また、上記ALC自立塀は、上記支柱における直線関係にある2枚の上記側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで2枚の上記ALCパネルをつないだ直線つなぎ部を少なくとも一箇所に有することが好ましい(請求項7)。
この場合には、直線状に複数枚のALCパネルをつないだ幅広のALC自立塀を容易に立設することがでる。また、支柱の露出を上記ALCパネル間の側片の厚みのみに抑えることができるという効果を得ることができる。
【0022】
また、上記ALC自立塀は、上記支柱における直角関係にある2枚の上記側片を上記スリットにそれぞれ差し込んで2枚の上記ALCパネルをつないだ直角つなぎ部を少なくとも一箇所に有することが好ましい(請求項8)。
この場合には、L字形状のALC自立塀を容易に立設することができ、施工性に優れている。
また、上記直角つなぎ部において、スリットに挿入されていない2枚の側片の上記小口面と対面しない側には、別部材を接着剤等を用いて接着することが好ましい。これにより、さらに意匠性を向上させることができる。
【0023】
また、上記ALC自立塀は、上記支柱における3枚の側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで3枚の上記ALCパネルをつないだ三方つなぎ部を少なくとも一箇所有することも好ましい(請求項9)。
この場合には、一本の支柱から3方向にALCパネルをつないだ特殊な構造のALC自立塀を容易に立設することができるため、施工性に優れている。また、この場合には、三方つなぎ部において、上記支柱が露出することがないため、意匠性にも優れている。
【0024】
また、上記ALC自立塀は、上記支柱における全ての側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで4枚の上記ALCパネルをつないだ四方つなぎ部を少なくとも一箇所に有することが好ましい(請求項10)。
この場合には、一本の支柱から4方向にALCパネルをつないだ特殊な構造のALC自立塀を容易に立設することができるため、施工性に優れている。また、この場合には、上記四方つなぎ部において上記支柱が露出することがないため、意匠性にも優れている。
【0025】
また、直角に配された2枚の上記ALCパネルの上記小口面には、互いに対面する傾斜面を設けてあることが好ましい(請求項11)。
この場合には、直角に配された2枚の上記ALCパネルの当接部の剛性を高めることができ、また、優れた意匠性を有することができる。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
本発明のALC自立塀にかかる実施例について、図1〜図3を用いて説明する。
本例のALC自立塀1は、間隔を置いて立設された4本の支柱3の間にALCパネル2を固定してなるALC自立塀1である。
上記支柱3は、互いに略直角をなす4枚の側片31を備えた十字型の断面形状を有しており、上記ALCパネル2は、その両側端面である小口面21に内方に凹んだスリット22を有し、該スリット22にそれぞれ上記支柱3の上記側片31を差し込むことにより固定してある。
以下、これを詳説する。
【0027】
図1及び図2に示すごとく、本例のALC自立塀1はL字形状であり、2枚のALCパネルを直線つなぎ部42において直線状につなぎ、その一方のALCパネル2と他のALCパネル2を直角つなぎ部43において直角につないである。3本の支柱3a〜cを直線状に等間隔に並べ、1本の支柱3dは、支柱3cを中心にして他の支柱3a、3bと直角の関係となる位置に配置した。
【0028】
支柱3としては、側片31となる鋼プレートを溶接にて加工した後、亜鉛メッキをドブ漬けにて塗装処理したものを用いた。また、図3に示すごとく、各側片31のサイズは、厚みDは4.5mm、幅Wは60mmであり、支柱高さHは後述するごとく位置によって変化させ、1500mm、1350mmの2種類とした。
支柱3の下端には、ベースプレート33を溶接により接合し、このベースプレート33によって、後述するごとく基礎と固定する。
【0029】
また、上記ALCパネル2としては、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されているブロック26を用いた。各ブロック26は、図1及び図2に示すごとく、およそ厚みdは100mm、幅wは880mm、高さhは300mmであり、小口面21に設けたスリット22の幅aは12mm、深さbは80mmとした。また、直角に配された2枚の上記ALCパネルの上記小口面21には、互いに対面する傾斜面23を設けてある。
【0030】
また、ALC自立塀1がウェーブ形状40を有するように、両端のALCパネル2の上端の各ブロック26には、所定位置に加工を施した。そして、その形状に合わせて、各支柱3の高さを変化させてある。また、ALC自立塀が開口部41を有するように、該当するブロック26の所定位置に加工を施した。また、各ALCパネル2は、割り肌調の質感を有するように表面に加工を施した。
【0031】
次に、施工について説明する。
まず、図3に示すごとく、コンクリート8にて基礎打ちを行った後、市販のレベラーを用いてレベル出しを行った。レベラーを十分に養生後、支柱3のベースプレート33を所定の位置に合わせてアンカーボルト34に固定した。支柱3の固定にあたっては、支柱3間を枠状にするため、桟(図示略)を用いて仮止めした後、支柱3に大きな倒れがないことを確認した。
【0032】
全ての支柱3を固定した後、仮固定した桟をはずし、支柱3の側片31にシリコンシーラントを塗布した。その後、図3に示すように、小ブロック形状のALCパネル2を上部より差し込むように順次積み上げていった。上記シリコンシーラントは、ALCパネル2と支柱3を確実につなぐよう十分量を塗布した。
【0033】
また、ALC自立塀1において、端の支柱3には、一端にスリットを有するALCからなる別部材44をシリコンシーラントを用いて接着した。また、直角つなぎ部43において、スリット22に挿入されていない2枚の側片31の上記小口面21と対面しない側には、ALCからなる別部材45をシリコンシーラントを用いて接着した。
【0034】
また、ALCパネル2同士のツナギにもシリコンシーラントを使用し、ALCパネル2の一体化を図った。さらに、支柱3とALCパネル2との板間の隙間にはコーキング処理を施した。十分に養生した後、ALCを下地として樹脂系塗り材によるクシメ調の塗り仕上げを行った。
【0035】
次に、作用効果ついて説明する。
本例のALC自立塀1は、上記のごとく、十字型の支柱3と、スリット22を備えたALCパネル2とを組み合わせた構造を有している。そのため、支柱3の露出を極力抑えることができ、塗り仕上げへの影響が小さくなると共に、内側と外側の両面に優れた意匠性を有することができる。
【0036】
また、上記ALCパネル2のスリット22に上記支柱3の上記側片31を差し込むだけで固定できるため、容易に施工することができる。特に、本例のALCパネル2は、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されている。そのため、上記ALCパネル2のスリット22を上記支柱3間に差し込む際に、上記小ブロック26単位で上部より容易に落とし込むことができるため、施工性が向上した。
また、ALCパネル2は両端を支柱3で固定してあり、その支柱3の高さはALCパネル2の全体の高さにほぼ合致しているため、上記小口面21全面で荷重を受けることになり、ALC自立塀1は曲げ強度や圧縮強度を有することができる。
【0037】
また、ALCパネル2は、上記ウェーブ形状40や、上記開口部41を有しているため、適度な視認性を確保することができる。また、表面は、住宅外壁と質感を合わせて割り肌調に加工してあるため、意匠性に優れている。
【0038】
また、上記スリット22に挿入されていない上記側片31と、側片31に対面する上記小口面21との間隙は弾性接着部材としてシリコンシーラントを埋めて固定してある。弾性接着部材がALCパネル2が受ける荷重を吸収するため、上記ALC自立塀1は、弾性構造を有し、地震等の振動衝撃を吸収することができる。
【0039】
また、上記ALC自立塀1は、直線つなぎ部42と直角つなぎ部43の両方を有している。いずれのつなぎ部も上記十字型の支柱3によって容易に構成することができ、L字形状のALC自立塀1を容易に立設することができた。
【0040】
(実施例2)
本例のALC自立塀102は、図4に示すごとく、親水塗膜を施した例である。
同図に示すように、まず、直線つなぎ部42のみを有するALC自立塀を実施例1と同様の施工方法で施工した。
次に、ALCパネル2の表面に複数の貫通穴25を設ける加工を施した。その後、表面に防水処理を施し、さらにTiO2を含む光触媒系親水塗料による塗装を施した。
【0041】
給水するために、地中に設けた貯水タンク51に貯蓄した雨水を、小型の太陽光発電パネルを動力源とするポンプ52を用いて、ポンプアップでALC自立塀102の上部に塩化ビニルパイプ525を介して引き込んだ後、透水性の給水ホース53にて適時潅水するシステムを構築した。
給水ホース53としては、全面より水が沁み出し、全長(ALC自立塀102の全幅分)に亘って給水が可能なポーラスパイプ(カクダイ製)を用いた。
【0042】
本例のALC自立塀102は、上述したように、複数の貫通穴25を有しているため、適度な視認性を確保でき採光が良好になると共に、貫通穴25が通風口となり、通風も良好になる。
また、表面に上記防水処理を施した後、親水被膜を施したため、ALC自立塀102が冷却機能を有する。
また、ALC自立塀102は、給水ホース53を有しているため、冷却塀としての機能を有する。
【0043】
(実施例3)
本例のALC自立塀103は、図5及び図6に示すごとく、緑化対応の構造とした例である。
同図に示すように、まず、直線つなぎ部42のみを有するALC自立塀を実施例1と同様の施工方法で施工した。
次に、ALC自立塀103が、開口部41及び複数の貫通穴25を有するように加工を施し、ALCパネル2の表面が傾斜面29を段差を介して並べてなるルーバー形状を有するようルーバー加工を施した。その後、表面に防水処理を施し、さらに緑化被膜として植栽を行った。
【0044】
植栽にはスナゴケを用いた。図6に示すごとく、ALCパネル2のルーバー形状に合わせて、その傾斜面29に2mmの網目のネット55をエポキシ弾性接着剤を用いて接着固定した後、植栽用土壌として、法面用人工土壌を1mm程度塗布し、定着させた後に上記スナゴケのコケシートを付着させた。
植栽へ給水するために、地中に設けた貯水タンク51に貯蓄した雨水を、小型の太陽光発電パネルを動力源とするポンプ52を用いて、ポンプアップでALC自立塀102の上部に塩化ビニルパイプ525を介して引き込んだ後、透水性の給水ホース53にて適時潅水するシステムを構築した。給水ホース53は実施例2と同様のものを用いた。
【0045】
本例のALC自立塀103は、上述したように、開口部41及び複数の貫通穴25を有しているため、適度な視認性を確保でき採光が良好になると共に、通風口となり、通風も良好になる。
また、表面に上記防水処理を施した後、緑化被膜を施したため、ALC自立塀102が緑化壁としての冷却機能を有し、樹木が創り出す温熱環境を補完する役割を果たすことができる。
また、ALC自立塀102は、給水ホース53を有しているため、冷却塀としての機能を持たせることができ、また、上述した緑化被膜へ給水することができる。
【0046】
(実施例4)
本例のALC自立塀は、図7に示すごとく、実施例2のALC自立塀102に笠木64を設けた構造とした例である。
まず、ALC自立塀においてALCパネル2の上端に、アルミLアングル61を、接着剤を用いて固定し、その上に、笠木受けホルダー62をねじ63を用いて配設した。最後に、給水ホース53を笠木受けホルダー62と笠木64との間隙に納めるようにアルミ製の平型の笠木64を設置した。給水ホース53は前述したごとく、ポーラスパイプを用いているので、全長(ALC自立塀の全幅分)に亘って給水が可能である。
なお、笠木64の末端には、エンドキャップ(図示略)を配設した。
【0047】
本例のALC自立塀は、笠木64を取り付けることにより、ALCパネル2と笠木64の間の空間を利用して給水ホース53を組み入れることができ、ALC自立塀の意匠性が向上した。
【0048】
(実施例5)
本例のALC自立塀104は、図8及び図9に示すごとく、実施例1のALC自立塀1の直角つなぎ部43を、三方つなぎ部6に変えた構造とした例である。その他の構造は実施例1と同様である。
図9に示すように、上記三方つなぎ部6において、直角に配された2枚の上記ALCパネル2の上記小口面21には、互いに対面する傾斜面23を設けてある。
【0049】
本例のALC自立塀104の場合には、三方つなぎ部6を有しているため、一本の支柱3から3方向にALCパネル2をつないだ特殊な構造のALC自立塀104を容易に立設することができた。また、この場合には、三方つなぎ部6において、上記支柱3が露出することがないため、意匠性にも優れている。
【0050】
また、三方つなぎ部6において、直角に配された2枚の上記ALCパネル2の上記小口面21には、互いに対面する傾斜面23を設けてあるため、三方つなぎ部6におけるALCパネル2の当接部の剛性が高く、優れた意匠性を有する。その他は、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(実施例6)
本例のALC自立塀105は、図10及び図11に示すごとく、実施例1のALC自立塀の直角つなぎ部43を、四方つなぎ部7に変えた構造とした例である。その他の構造は実施例1と同様である。
図11に示すように、上記四方つなぎ部7において、直角に配された2枚の上記ALCパネル2の上記小口面21には、互いに対面する傾斜面23を設けてある。
【0052】
本例のALC自立塀105の場合には、四方つなぎ部7を有しているため、一本の支柱3から4方向にALCパネル2をつないだ特殊な構造のALC自立塀105を容易に立設することができ、施工性に優れている。また、上記四方つなぎ部7において上記支柱3が露出しておらず、意匠性にも優れている。
【0053】
また、四方つなぎ部7において、直角に配された2枚の上記ALCパネル2の上記小口面21には、互いに対面する傾斜面23を設けてあるため、ALCパネル2の当接部の剛性が高く、優れた意匠性を有する。その他は、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1における、ALC自立塀を示す説明図。
【図2】実施例1における、ALC自立塀を示す平面図。
【図3】実施例1における、ALC自立塀の施工方法を示す説明図。
【図4】実施例2における、ALC自立塀を示す説明図。
【図5】実施例3における、ALC自立塀を示す説明図。
【図6】実施例3における、ALC自立塀の緑化過程を示す拡大図。
【図7】実施例4における、ALC自立塀の笠木の取り付け方法を示す説明図。
【図8】実施例5における、ALC自立塀を示す説明図。
【図9】実施例5における、ALC自立塀の三方つなぎ部を示す平面図。
【図10】実施例6における、ALC自立塀を示す説明図。
【図11】実施例6における、ALC自立塀の四方つなぎ部を示す平面図。
【符号の説明】
【0055】
1 ALC自立塀
2 ALCパネル
21 小口面
22 スリット
3 支柱
31 側片
41 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を置いて立設された複数の支柱の間に軽量発泡コンクリートパネル(以下、ALCパネルという)を固定してなるALC自立塀であって、
上記支柱は、互いに略直角をなす4枚の側片を備えた十字型の断面形状を有し、
上記ALCパネルは、その両側端面である小口面に内方に凹んだスリットを有し、該スリットにそれぞれ上記支柱の上記側片を差し込むことにより固定してあることを特徴とするALC自立塀。
【請求項2】
請求項1において、上記ALCパネルは、高さ方向において複数に分割された小ブロック形状に加工されていることを特徴とするALC自立塀。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記スリットに挿入されていない上記側片と、該側片に対面する上記小口面との間隙は弾性接着部材により埋めて固定してあることを特徴とするALC自立塀。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記ALCパネルは、複数の貫通穴を設ける加工を施してなり、かつ、表面に防水処理を施した後、親水性の塗料あるいは緑化被膜を施してなることを特徴とするALC自立塀。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記ALCパネルの表面には、傾斜面を段差を介して並べてなるルーバー形状を設けるためのルーバー加工を施すことを特徴とするALC自立塀。
【請求項6】
請求項4又は5において、上記ALCパネルの上方には、該ALCパネルに水を供給するための給水ホースを設けてあることを特徴とするALC自立塀。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記ALC自立塀は、上記支柱における直線関係にある2枚の上記側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで2枚の上記ALCパネルをつないだ直線つなぎ部を少なくとも一箇所に有することを特徴とするALC自立塀。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記ALC自立塀は、上記支柱における直角関係にある2枚の上記側片を上記スリットにそれぞれ差し込んで2枚の上記ALCパネルをつないだ直角つなぎ部を少なくとも一箇所に有することを特徴とするALC自立塀。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記ALC自立塀は、上記支柱における3枚の側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで3枚の上記ALCパネルをつないだ三方つなぎ部を少なくとも一箇所有することを特徴とするALC自立塀。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記ALC自立塀は、上記支柱における全ての側片をそれぞれ上記スリットに差し込んで4枚の上記ALCパネルをつないだ四方つなぎ部を少なくとも一箇所に有することを特徴とするALC自立塀。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一項において、直角に配された2枚の上記ALCパネルの上記小口面には、互いに対面する傾斜面を設けてあることを特徴とするALC自立塀。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−297878(P2007−297878A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128624(P2006−128624)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(591196751)旭中部資材株式会社 (13)
【Fターム(参考)】