説明

AMPA及びNMDA受容体モジュレーターとして使用するベンゾチアジアゼピン誘導体

本発明は、式(I)[式中、R及びRは、同じ又は異なっていて、各々、水素原子又はハロゲン原子、あるいはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換もしくは非置換アミノカルボニル基、アミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノアルキル基、N−ヒドロキシカルボキシミドアミド基、又はベンジルオキシ基を表わし;Rは、水素原子又はアルキル基、シクロアルキル基、又はシクロアルキルアルキル基を表わし;Rは、水素原子又は置換もしくは非置換アルキル基を表わす]で示される化合物に関し、本発明はまた、AMPA受容体の陽性アロステリックモジュレーター及びNMDA受容体のアンタゴニストとしてのそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なベンゾチアジアゼピン化合物、それらの製造方法、それらを含有する医薬組成物、ならびにまたAMPA受容体の陽性アロステリックモジュレーター及びNMDA受容体のアンタゴニストとしてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、興奮性アミノ酸、とりわけグルタメートは、神経可塑性の生理的過程において、ならびに学習及び記憶の基礎をなすメカニズムにおいて非常に重要な役割を果たしているということが認められている。病態生理学的研究は、グルタミン酸作動性神経伝達における欠陥がアルツハイマー病の発症に密接な関係があることを明確に示している(Neuroscience and Biobehavioral Reviews, 1992, 16, 13-24; Progress in Neurobiology, 1992, 39, 517-545)。
【0003】
更に、多くの研究によって、興奮性アミノ酸受容体のサブタイプの存在及びそれらの機能的相互作用が実証された(Molecular Neuropharmacology, 1992, 2, 15-31)。
【0004】
それらの受容体の中で、AMPA(α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾール−プロピオン酸)受容体は、グルタメートの受容体チャネルであり、これは、Na及びKに対して透過性があり、ならびにCa2+に対して低透過性である。AMPA受容体は、速い生理的興奮性シナプス伝達において、そして特に記銘過程において、最大限関与していると思われる。例えば、学習は、海馬(記憶及び認知の過程に不可欠な脳内領域の一つである)内のシナプス結合におけるAMPA受容体の数の増加に関連していることが示されている。同様に、アニラセタムのような向知性薬は、神経細胞のAMPA受容体を正に調節するということが記載されている(J. Neurochemistry, 1992, 58, 1199-1204)。
【0005】
2つ目の受容体である、NMDA(N−メチル−D−アスパラギン酸)受容体も、グルタメート受容体チャネルの三つのクラスのうちの一つに属する。グルタメートと、そのコアゴニストであるグリシンとの結合は、チャネルの開放をもたらし、そして細胞内へのCa2+の流入を可能にするために必要である(Progress in Neurobiology, 1998, 54, 581-618; Handb. Exp. Pharmacol., 2005, 169, 249-303)。NMDA受容体も同様に、学習及び記憶において重要な生理学的な役割を担う。それにもかかわらず、脳虚血及び無酸素脳症、癲癇発作、外傷又は神経変性疾患の間に起こり得るこれらの受容体の過剰な活性化は、細胞内へのCa2+の過剰流入をもたらし、それが興奮毒性の現象による細胞死を引き起こす可能性を有し得る(Progress in Neurobiology, 1998, 54, 369-415; J. Pharmacol. Exp. Ther., 2002, 300, 717-723)。実際、グルタメートに起因する神経毒性の特定の形は、細胞内のCa2+の蓄積に左右されることが示されており、その結果、ミトコンドリアの代謝ストレスを増加させ、フリーラジカルの生成の増加をもたらす。これらの理由により、メマンチンを含むNMDA受容体アンタゴニストは、それらの神経保護特性のために開発されており、この事は現在、アルツハイマー病の中等度から重症型の処置において示されている(Neuropharmacology, 1999, 38, 735-767; Dement. Geriatr. Cogn. Disord., 2005, 19, 229- 245)。
【0006】
文献においては、ベンゾチアジアジン構造を有する非常に数少ない化合物が、NMDA受容体アンタゴニスト活性も有する、AMPA受容体の陽性モジュレーターとして記載されている(Neuropharmacology, 2004, 46, 1105-1113)。特に、化合物IDRA−21は、記憶能力を向上させることができる。
【0007】
特許明細書WO 99/42456には、とりわけ、ベンゾチアジアジン及びベンゾチアジアゼピン化合物がAMPA受容体のモジュレーターとして記載されている。
【0008】
本発明に関するベンゾチアジアゼピン化合物は、新規であることに加えて、AMPA受容体及びNMDA受容体のいずれに対しても、先行技術に記載されている類似構造を有する化合物の活性よりも優れた薬理学的活性を示す。
【0009】
より詳細には、本発明は、式(I):
【化1】


[式中、
及びRは、これらは同じでも又は異なっていてもよく、各々、水素原子;ハロゲン原子;又は直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか又は1個以上のハロゲン原子で置換されている);直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルコキシ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキルチオ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルコキシカルボニル基;カルボキシ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アシル基;ヒドロキシ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)ヒドロキシアルキル基;シアノ基;ニトロ基;アミノ基(これは、非置換であるか又は1個以上の直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基で置換されている);アミノ基(これは、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アシル基で置換されている);アミノカルボニル基(これは、非置換であるか又は1個以上の直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基で置換されている);アミノスルホニル基(これは、非置換であるか又は1個以上の直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基で置換されている);(C−C)アルキルスルホニルアミノ−(C−C)アルキル基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である);N−ヒドロキシカルボキシミドアミド基;又はベンジルオキシ基を表わし、
は、水素原子、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わし、
は、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)を表わす]で示される化合物、存在する場合にそれらの光学異性体及び位置異性体、ならびにまた薬学的に許容しうる酸又は塩基とのその付加塩に関する。
【0010】
薬学的に許容しうる酸のうち、いかなる限定も意味するものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びショウノウ酸が挙げられる。
【0011】
薬学的に許容しうる塩基のうち、いかなる限定も意味するものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン及びtert−ブチルアミンが挙げられる。
【0012】
基Rは、好ましくは、水素原子又はヒドロキシ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)ヒドロキシアルキル基、そしてより特別にはヒドロキシメチル基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルコキシカルボニル基、そして有利にはエトキシカルボニル基;アミノ基、又はアミノカルボニル基(直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基で置換されている)、そしてより特別にはN−メチル−アミノカルボニル基を表わす。メタ又はパラ配置にある基Rが、好ましい。Rは、特に有利には水素原子を表わす。
【0013】
基R及びRは、各々、好ましくは、水素原子である。
【0014】
は、好ましくは、水素原子又はメチル基を表わす。
【0015】
本発明の好ましい化合物は、下記:
8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド;
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−安息香酸エチル;
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−N−メチルベンズアミド;
{3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]フェニル}−メタノール;
4−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]フェノール;
4−[(5−メチル−1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]フェノール;
4−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]アニリンである。
【0016】
本発明の好ましい化合物の薬学的に許容しうる酸又は塩基との付加塩は、本発明の不可欠な部分を形成する。
【0017】
また本発明は、式(I)の化合物の製造方法であって、ここで、出発物質として、式(II):
【化2】


[式中、Rは、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルコキシ基を表わす]で示される化合物を使用し、これを、ジメチルホルムアミドの存在下で塩化チオニルと反応させて、式(III):
【化3】


[式中、Rは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、次いでこれを、塩基性溶媒中、2−クロロエチルアミンの作用に付して、式(IV):
【化4】


[式中、Rは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、次いでこれを、酸性溶媒中での脱保護の後、環化させて、式(V):
【化5】


[式中、Rは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、次いでこれを、三臭化ホウ素の作用に付して、式(VI):
【化6】


で示される化合物を得て、これを、式(VII):
【化7】


[式中、R及びRは、式(I)について定義されているとおりである]で示されるボロン酸化合物と反応させて、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/a):
【化8】


[式中、R及びRは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、
式(I/a)の化合物の製造における一つの変化形は − 式(VI)の化合物とのカップリングの工程がすでに実施されていれば − それに続くボロン酸化合物の置換基を修飾するために慣用の化学反応を用いることからなり、
次いで、式(I/a)の化合物を、必要であれば:
・ アルキル化剤R’−X(式中、R’は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で強塩基の作用による、2位及び5位の窒素原子上の二重アルキル化に付して、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/b):
【化9】


[式中、R、R及びR’は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
・ 又は、アルキル化剤R’−X(式中、R’は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか、又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で塩基の作用による、2位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/c):
【化10】


[式中、R、R及びR’は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
これを、場合により、アルキル化剤R’−X(式中、R’は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で塩基の作用による、5位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I/d):
【化11】


[式中、R、R、R’及びR’は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
・ 又は代替的に:
− [(1−エトキシシクロプロピル)オキシ]トリメチルシラン、又は
− 式(VIII):
【化12】


[式中、R”は、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わす]で示される化合物、
又は代替的に、
− 式(IX):
【化13】


[式中、0≦n≦4]で示される化合物のいずれかの存在下で、
トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を使用して還元的アミノ化反応の手段により、5位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/e):
【化14】


[式中、R’”は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わし、そしてR及びRは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
これを、場合により、アルキル化剤R”−X(式中、R”は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか、又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で塩基の作用による、2位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I/f):
【化15】


[式中、R、R、R’”及びR”は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
次いで、式(I)の化合物の全体を構成する、式(I/a)〜(I/f)で示される化合物を、慣用の分離手法に従って精製してもよく、所望であれば、これらを薬学的に許容しうる酸又は塩基とのそれらの付加塩に変換し、そして適切な場合、慣用の分離手法に従って、存在する場合それらの光学異性体及び位置異性体に分離することを特徴とする、製造方法に関する。
【0018】
式(II)及び(VII)の化合物は、商業的に入手可能であるか、又は慣用の化学反応もしくは文献中に記載された化学的反応を用いて当業者には容易に入手可能である。
【0019】
式(VI)の化合物は、新規であり、そして式(I)の化合物の合成における中間体としても、本発明の一部を形成する。
【0020】
本発明の式(I)の化合物は、AMPA受容体活性化特性及びNMDA受容体アンタゴニスト特性を有し、それにより該化合物が、進行性神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、ハンチントン舞踏病、コルサコフ(Korsakoff)病、統合失調症、急性神経変性疾患、前頭葉及び皮質下性認知症、血管性認知症、癲癇、脳血管損傷ならびにまた抑鬱及び不安状態の治療又は予防において有用となる。
【0021】
本発明はまた、活性成分として、式(I)の少なくとも1つの化合物を、1つ以上の適切な不活性かつ非毒性の賦形剤と一緒に含む、医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物のうちでも、より特別には、経口(oral)、非経口(静脈内又は皮下)、鼻腔内、経皮的(percutaneous)、経皮的(transcutaneous)、直腸内、経口(perlingual)、眼内及び呼吸投与に適したもの、ならびに特に錠剤又は糖衣錠、舌下錠、サッシェ、パケット、カプセル剤、トローチ剤、グロセット(glossette)、坐剤、クリーム剤、軟膏、真皮ゲル剤、注射用製剤及び飲用懸濁液に適したものを列挙し得る。
【0022】
有効な用量は、障害の性質及び重症度、投与経路、ならびにまた患者の年齢及び体重に従って変動することができ、投与量は、1回以上の投与で1日あたり0.01mg〜1gの範囲内である。
【0023】
下記の実施例は本発明を説明するが、本発明をいかようにも制限するものではない。
【0024】
用いる出発材料は、公知であるか又は公知の操作手順により製造される製品である。
【0025】
実施例に記載されている化合物の構造は、慣用の分光光度法(赤外、NMR、質量分析)により決定した。
【0026】
実施例1
8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
工程A
N−[[[2−(クロロスルホニル)−4−メトキシフェニル]アミノ]メチレン]−N−メチル−メタンアミニウムクロリド
ジメチルホルムアミド(0.152mol)を、塩化チオニル(0.763mol)中の2−アミノ−5−メトキシベンゼンスルホン酸(0.152mol)の懸濁液に滴下した。反応混合物を70℃に非常にゆっくりと加熱し、その温度で1.5時間保持した。冷ました後、撹拌した反応溶液をトルエン20mlの添加により処理した。沈殿物が形成され、これを迅速に濾別し、トルエンですすぎ、次にKOHペレットの存在下、減圧下で40℃にて乾燥させて、標記生成物を得た。
【0027】
工程B
N−(2−クロロエチル)−2−{[(1E)−(ジメチルアミノ)メチレン]アミノ}−5−メトキシベンゼンスルホンアミド
トリエチルアミン(0.517mol)を、ジクロロメタン470ml中の上記工程の生成物(0.152mol)と2−クロロエチルアミン塩酸塩(0.182mol)の混合物の懸濁液に、反応混合物の温度を30℃未満に保持しながら滴下した。2時間撹拌した後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、有機相を水で2回、次に飽和NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、減圧下で蒸発させた。残留物をエチルエーテル中でより固体にし、濾過の後、標記生成物を得た。
融点: 89℃
元素微量分析
C H N S Cl
理論値% 45.07 5.67 13.14 10.03 11.09
実測値% 44.93 5.63 13.07 10.19 11.82
【0028】
工程C
2−アミノ−N−(2−クロロエチル)−5−メトキシベンゼンスルホンアミド
上記工程からの生成物の全てを、ジオキサン130mlと5M HCl 110mlの混合物に懸濁した。反応混合物を110℃で16時間撹拌した。ジオキサンを蒸発させた後、反応混合物を水で希釈し、次にそれを10%NaHCO溶液の添加により中和した。中性pHで、水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を回収し、飽和NaCl溶液で洗浄し、次にMgSOで乾燥させて、減圧下での蒸発の後、標記生成物を油状物の形態で得た。
【0029】
工程D
8−メトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
ガラス製エンベロープ付きの1−リットル容量のPAARオートクレーブ反応器中、上記工程からの生成物の全てをエタノール300mlに懸濁した。反応混合物を150℃で8時間加熱した。冷却が完了した後、固体を濾別して標記生成物を得た。
融点: 126℃
【0030】
工程E
2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−オール 1,1−ジオキシド
ジクロロメタン30ml中の上記工程からの生成物(12.3mmol)の懸濁液に、ジクロロメタン(37ml)中の三臭化ホウ素の1M 溶液を、反応混合物の温度を30℃未満に保持しながら、滴下した。不均一な混合物を周囲温度で20時間撹拌し、氷約100gに注いだ。次に溶液を10% NaCO溶液の添加により中和した。水相を蒸発乾固した後、残留物をアセトン中でトリチュレートした。塩を数回濾過し、様々な濾液(目的の生成物及び出発物質も含有している)を回収した。これらをシリカに吸収させて、ジクロロメタン/アセトンの96/4〜90/10の勾配で溶離するクロマトグラフィーに付し、そしてエチルエーテル中でより固体にした後で、標記生成物を白色の粉末の形態で得た。
融点: 183〜188℃
【0031】
工程F
8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
ジクロロメタン200ml中のフェニルボロン酸(8.36mmol)、上記工程からの生成物、(5.60mmol)、Cu(OAc)(8.42mmol)、ピリジン(16.8mmol)及びモレキュラーシーブ12gの懸濁液を、空気中、周囲温度で一晩撹拌した。次にアセトンを加え、次に反応混合物を、フリットを通して濾過した。濾液を蒸発させ、ジクロロメタンに取り、ジクロロメタン/アセトン 96/4の混合物で溶離するシリカカラムクロマトグラフィーに付して、エチルエーテル中でより固体にした後で、標記生成を白色の粉末の形態で得た。
融点: 146〜149℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 57.92 4.56 9.65 11.04
実測値% 57.90 5.00 9.78 11.08
【0032】
実施例1の工程Fの手順に従い、中間体2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−オール 1,1−ジオキシド(実施例1の工程E)及び記述されている適切なボロン酸から出発して、以下の実施例2〜9の生成物を得た。
【0033】
実施例2
N−{4−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)−オキシ]ベンジル}メタンスルホンアミド
(4−{[(メチルスルホニル)アミノ]メチル}フェニル)ボロン酸との反応。
融点: 115〜117℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 48.35 4.82 10.57 16.13
実測値% 48.60 4.93 10.50 16.20
【0034】
実施例3
8−(4−フルオロ−フェノキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
(4−フルオロフェニル)ボロン酸との反応。
融点: 153〜156℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 54.54 4.25 9.09 10.40
実測値% 54.14 4.41 9.04 10.08
【0035】
実施例4
8−(3−フルオロフェノキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
(3−フルオロフェニル)ボロン酸との反応。
融点: 128℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 54.54 4.25 9.09 10.40
実測値% 54.39 4.17 8.99 9.98
【0036】
実施例5
8−(3,5−ジフルオロフェノキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン酸との反応
融点: 90〜95℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 51.53 3.71 8.58 9.83
実測値% 51.44 3.86 8.50 9.65
【0037】
実施例6
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−ベンゾニトリル
(3−シアノフェニル)ボロン酸との反応。
融点: 172〜174℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 57.13 4.15 13.33 10.17
実測値% 56.41 4.12 13.15 10.61
【0038】
実施例7
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]安息香酸エチル
[3−(エトキシカルボニル)フェニル]ボロン酸との反応。
融点: 110℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 56.34 5.01 7.73 8.85
実測値% 55.70 4.95 7.76 9.03
【0039】
実施例8
8−[4−(ベンジルオキシ)フェノキシ]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
[4−(ベンジルオキシ)フェニル]ボロン酸との反応。
融点: 134℃
【0040】
実施例9
8−(4−ニトロフェノキシ)−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
(4−ニトロフェニル)ボロン酸との反応。
融点: 162℃
【0041】
実施例10
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−N’−ヒドロキシベンゼンカルボキシミドアミド
DMSO 750μLに、ヒドロキシルアミン塩酸塩(1.90mmol)を、次にトリエチルアミン(1.90mmol)を加えた。大量の白色の沈殿物が形成され、これを、THF 3mlを加えることにより希釈し、撹拌を周囲温度で25分間実施した。THFを減圧下で蒸発させ、懸濁液を濾過した。実施例6の生成物(0.317mmol)を濾液に加え、溶液を周囲温度で一晩撹拌した。水を反応混合物に加えた後、ガム状物が形成され、これを、ジクロロメタン及びエチルエーテルを加えることにより固体にした。固体を濾別し、水及びエチルエーテルですすいで、標記生成物を得た。
融点: 197℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 51.71 4.63 16.08 9.20
実測値% 51.38 4.58 15.61 8.84
【0042】
実施例11
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]安息香酸
1N 水酸化ナトリウム溶液5ml中の実施例7のエステル(0.55mmol)の懸濁液を、80℃で30分間撹拌した。次に反応混合物を、1N HCl溶液を使用して中和し、酢酸エチルで抽出し、洗浄(飽和NaCl溶液)し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、次に減圧下で蒸発させて、残留物をエチルエーテル中でトリチュレートし、そして濾過した後で、標記生成物を得た。
融点: 212〜217℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 53.89 4.22 8.38 9.59
実測値% 53.41 4.23 8.35 9.82
【0043】
実施例12
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−N−メチルベンズアミド
実施例11の酸(0.66mmol)を、2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート(0.80mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.80mmol)及びTHF中の2M メチルアミン溶液(1.32mmol)の存在下、ジクロロメタン50ml中、周囲温度で一晩撹拌した。次に反応混合物を1N HCl溶液で中和し、酢酸エチルで抽出し、洗浄(飽和NaCl溶液)し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、次に減圧下で蒸発させて、残留物をジクロロメタン/メタノールの混合物中でトリチュレートし、そして濾過した後で、標記生成物を得た。
融点: 205℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 55.32 4.93 12.10 9.23
実測値% 54.79 4.88 11.88 9.20
【0044】
実施例13
{3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)−オキシ]フェニル}メタノール
実施例7のエステル(0.805mmol)を、THF 10mlに溶解し、LiAlH(2.43mmol)を少しずつ加えた。30分間撹拌した後、イソプロパノール1ml及びブライン1mlを反応混合物に連続して加えた。懸濁液を濾過し、濾液を、減圧下で蒸発させた後で、シリカカラム(98/2 ジクロロメタン/メタノール)のクロマトグラフィーに付して、標記生成物を得た。
融点: 146℃
【0045】
実施例14
4−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−フェノール
実施例8の生成物(0.76mmol)を、10%パラジウム担持炭素30mg及びジオキサン中の4N HCl溶液2滴の存在下、エタノール60ml中、大気圧で1時間水素化した。触媒を濾過により除去し、濾液を蒸発乾固した。残留物を熱い状態で酢酸エチルに取った。有機相を1%NaHCO溶液で、次に飽和NaCl溶液で洗浄し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、蒸発させた。残留物を、酢酸エチル/エチルエーテルの混合物中でトリチュレートし、濾過の後で、標記生成物を得た。
融点: 175℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 54.89 4.61 9.14 10.47
実測値% 54.96 4.74 8.89 10.39
【0046】
実施例15
8−[4−(ベンジルオキシ)フェノキシ]−5−メチル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
37%ホルムアルデヒド(12.6mmol)水溶液を、アセトニトリル10ml中の実施例8の生成物(2.52mmol)の懸濁液に加えた。懸濁液を周囲温度で1時間撹拌した。スパチュラ先端量のブロモクレゾールグリーン及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(7.56mmol)を連続して加えた。ジオキサン中の4N HCl溶液を加えることにより、反応混合物を酸性pHにした。反応混合物を周囲温度で一晩撹拌し、次に10%NaHCO溶液の添加により中和した。反応混合物を水で希釈した後、沈殿物が形成され、これを濾別した。標記生成物の精製を、ジクロロメタン/酢酸エチル 96/4の混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーにより実施した。
融点: 168〜172℃
【0047】
実施例16
4−[(5−メチル−1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]フェノール
実施例14の手順に従って、実施例15の生成物の接触水素化により、化合物を得た。精製を、ジクロロメタン/アセトン 95/5の混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーにより実施した。
融点: 128〜130℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 56.24 5.03 8.74 10.01
実測値% 56.30 5.03 8.67 10.24
【0048】
実施例17
4−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−アニリン二塩酸塩
実施例9の生成物(0.51mmol)を、10%パラジウム担持炭素20mgの存在下、メタノール30ml中、大気圧で2時間水素化した。触媒を濾過により除去し、濾液を蒸発乾固した。残留物を熱い状態でメタノールに取り、混合物をジオキサン中の4 N HCl溶液で酸性化した。蒸発乾固した後、残留物をアセトニトリル中でトリチュレートして、濾過の後で、標記生成物を得た。
融点: 128〜134℃
【0049】
以下の実施例18〜21の生成物を、実施例1の化合物の還元アルキル化により得た。
【0050】
実施例18
5−(シクロプロピルメチル)−8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド塩酸塩
CHCl 50ml中の実施例1の生成物(1.38mmol)の溶液に、シクロプロパンカルバルデヒド(4.17mmol)、酢酸(4.17mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリム(4.17mmol)を加えた。反応混合物を周囲温度で一晩撹拌し、次に10%NaHCO溶液の添加により中和した。ジクロロメタンでの抽出の後、有機相を回収し、洗浄(飽和NaCl溶液)し、乾燥(MgSO)させ、次に蒸発させた。粗生成物を、シリカクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール 98/2)により精製し、生成物を、ジオキサン中の4N HCl溶液の添加により、エタノール中、塩に変換して、標記生成物を得た。
融点: 62℃(メレンゲ状)
【0051】
実施例19
5−シクロブチル−8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
手順は実施例18の手順と同じであるが、しかしシクロプロパンカルバルデヒドの代わりにシクロブタノンを使用して、反応混合物をジクロロエタン中70℃で撹拌した。粗生成物を、酢酸エチル/シクロヘキサン 2/8の混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製して、蒸発の後で、標記生成物を得た。
融点: 55℃(メレンゲ状)
元素微量分析
C H N S
理論値% 62.77 5.85 8.13 9.31
実測値% 62.81 5.90 7.98 9.34
【0052】
実施例20
5−メチル−8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
手順は実施例18の手順と同じで、シクロプロパンカルバルデヒドの代わりに37%ホルムアルデヒド水溶液を使用した。粗生成物を、ジクロロメタン/メタノール 98/2の混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製して、標記生成物を得た。
融点: 128〜131℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 59.19 5.30 9.20 10.54
実測値% 59.35 5.30 9.07 10.52
【0053】
実施例21
5−エチル−8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
手順は実施例18の手順と同じで、シクロプロパンカルバルデヒドの代わりにアセトアルデヒドを使用した。粗生成物を、ジクロロメタン/メタノール 98/2の混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製して、標記生成物を得た。
融点: 138℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 60.36 5.70 8.80 10.07
実測値% 60.25 5.65 8.70 10.18
【0054】
実施例22
5−シクロプロピル−8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
手順は実施例18の手順と同じであったが、しかしシクロプロパンカルバルデヒドの代わりに[(1−エトキシシクロプロピル)オキシ]トリメチルシランを使用し、反応混合物をジクロロエタン中、70℃で撹拌した。粗生成物を、シクロヘキサン/酢酸エチル 70/30の混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーにより精製して、標記生成物を得た。
融点: 119℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 61.80 5.49 8.48 9.71
実測値% 61.15 5.53 8.25 9.60
【0055】
実施例23
2,5−ジメチル−8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
鉱油中60%水素化ナトリウム(3.05mmol)を、ジメチルホルムアミド3ml中の実施例1の生成物(1.016mmol)の懸濁液に加えた。10分間撹拌した後、メチルtert−ブチルエーテル中のヨウ化メチルの2M 溶液(3.05mmol)を滴下した。反応混合物を周囲温度で一晩撹拌し、次に水で希釈し、酢酸エチルで抽出し、洗浄(飽和NaCl溶液)し、乾燥(MgSO)させ、濾過し、次に蒸発乾固した。残留物を、ジクロロメタン/アセトンの混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーに付して、標記生成物を得た。
融点: 130〜131℃
元素微量分析
C H N S
理論値% 60.36 5.70 8.80 10.07
実測値% 60.58 5.75 8.64 10.31
【0056】
実施例24
2−(2−フルオロエチル)−8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド
アセトニトリル100ml中の実施例1の生成物(2.06mmol)の懸濁液を、炭酸セシウム(4.12mmol)及び1−ブロモ−2−フルオロエタン(4.12mmol)の存在下、24時間撹拌した。次に反応混合物を濾過し、濾液を蒸発乾固した。粗生成物を、ジクロロメタン/メタノール 98/2の混合物で溶離するシリカクロマトグラフィーに付した。生成物を、ジオキサン中の4N HCl溶液を加えることにより、エタノール中、塩に変換して、標記生成物を塩酸塩の形態で得た。
融点: 95〜98℃
【0057】
薬理学的研究
実施例A
ラット神経細胞の初代培養におけるAMPAにより引き起こされる膜の脱分極に対する化合物の効果の研究
本試験は、AMPAの単独作用と比較して、AMPAと試験化合物の結合作用によって培養ラット胚の神経細胞に引き起こされる膜の脱分極の、蛍光によるインビトロ測定を含む。脳細胞を培養液に入れ、細胞培養インキュベーター中に18日間保持する。インキュベーションの後、培地を取り除き、膜電位の測定用の蛍光プローブが入っている培地(20μL;Molecular Devices製の膜電位キット)と取り替え、周囲温度で1時間静置する。ウェルのベース蛍光を読み取り(Hamamatsu製のFDSS装置)、次に細胞にAMPA(20μL; 濃度範囲:3〜100μM)を注入し、AMPAの作用を動力学的に測定する。次に試験化合物(20μL; AMPAの濃度と混ぜ合わせた濃度範囲で)をウェルに導入し、そして本化合物の作用を動力学的に測定する。2回の動力学的測定の各々の終わりに、各ウェルの結果を、測定時間の最後の15秒間に亘り平均読み取る。曲線は、化合物の様々な濃度におけるAMPAの効果をプロットしている。化合物の各濃度に関して、結果は、その濃度におけるAMPA曲線下面積であり、EC2×(AMPAにより引き起こされる膜の脱分極を2倍にする化合物の濃度)を計算する。
【0058】
本発明の化合物は、AMPAの興奮効果を非常に増強する。例として、実施例1の化合物は、25μMのEC2×を有する
【0059】
実施例B
CD1マウスにおける物体認識
物体認識試験(Behav. Brain Res., 1988, 31, 47-59)は、動物の自発探索活動に基づき、ヒトにおいてエピソード記憶の特徴を有する。この記憶試験は、加齢(Eur. J. Pharmacol., 1997, 325, 173-180)及びコリン作動性機能障害(Pharm. Biochem. Behav., 1996, 53(2), 277-283)に対して感受性であり、かなり類似している形状の2つの物体(一つは見慣れたもので、他方は新しいもの)の探索における差異に基づいている。CD1マウスに用いられてきた試験手順は、同じ試験用ケージ中で行われる3段階を含む。40分間持続する第一段階の間、マウスを環境に慣らす。次の日に行われる第2段階の間、物体がケージの中に置かれ、マウスはそれを自由に探索する。探索持続時間が20秒になるとすぐに、マウスをケージから取り出す。24時間の後、第3段階(5分間)の途中で、同じ物体が提示され(「見慣れた」物体の状況を習得する)、同様に新しい物体も提示される。秒単位で表示される探索持続時間を、2つの物体の各々に対して時間を計る。対照動物は、3段階の各々の60分前に経口投与で担体を事前に与えられており、「見慣れた」物体と「新しい」物体を等しい時間の間探索するが、このことは事前に提示された物体を忘れてしまっていることを示す。記憶認知を促進する化合物を投与された動物は、新しい物体を優先的に探索し、このことは事前に提示された物体の記憶を既に取得していることを示す。
【0060】
実施例Bのプロトコルに従って試験する場合、本発明による式(I)の化合物は、記銘力向上におけるそれらの有効性を示している。例えば、本発明の実施例1の化合物で得られる結果は、見慣れた物体と比較して、1mg/kg及び3mg/kg POの用量で、新しい物体に対して有意により優れた探索を示す。
【0061】
実施例C
ラット皮質からのポリ(A)mRNAを注入されたアフリカツメガエル(Xenopus laevis)の卵母細胞においてNMDAにより誘発される電流に対する化合物の効果
電気生理学的記録を、マグネシウム非含有(これによりNMDA受容体チャネルの開口を遮断する)OR2溶液で連続的に灌流されるプレキシガラス記録チャンバー中、ラット皮質からのポリ(A)mRNAを注入され、とりわけ、ラット皮質からのNMDA型グルタミン酸作動性受容体を発現している、アフリカツメガエル卵母細胞で、周囲温度にて実施する。NMDAの適用により誘発される内向き電流は、標準2電極電位固定技法を用いて、−60mVの静止電位で記録される。NMDA(3×10−4M)を、3×10−5M グリシンの存在下、3ml/分の一定の灌流速度で、5分おきに30秒間、灌流溶液と共に適用した。NMDAにより誘発された電流の振幅を、電流のピークで測定する。試験化合物を、3×10−5M グリシンの存在下、5分間おきに、3×10−4M NMDA適用の45秒前、適用の間30秒間、適用後30秒間、灌流溶液中、漸増用量で同じ卵母細胞に適用する。化合物の存在下でNMDAにより誘導された電流の振幅を、正規化し、生成物の非存在下(これが100%応答に相当する)、同じ卵母細胞中で誘導された電流のパーセンテージとして表わす。IC50(NMDAにより誘導される電流を50%阻害する生成物の濃度に相当する)を、可変勾配S字形濃度反応モデルを使用して非線形回帰により決定する。
【0062】
本発明の化合物は、NMDAの効力を大きく阻害する。例として、実施例1の化合物は、9μMのIC50を有する。
【0063】
実施例D: 医薬組成物
各々が10mg用量を含有する錠剤1000錠を製造するための処方
8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼ ピン 1,1−ジオキシド(実施例1) 10g
ヒドロキシプロピルセルロース 2g
コムギデンプン 10g
乳糖 100g
ステアリン酸マグネシウム 3g
タルク 3g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化16】


[式中、
及びRは、これらは同じでも又は異なっていてもよく、各々、水素原子;ハロゲン原子;又は直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか又は1個以上のハロゲン原子で置換されている);直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルコキシ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキルチオ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルコキシカルボニル基;カルボキシ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アシル基;ヒドロキシ基;直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)ヒドロキシアルキル基;シアノ基;ニトロ基;アミノ基(これは、非置換であるか又は1個以上の直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基で置換されている);アミノ基(これは、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アシル基で置換されている);アミノカルボニル基(これは、非置換であるか又は1個以上の直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基で置換されている);アミノスルホニル基(これは、非置換であるか又は1個以上の直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基で置換されている);(C−C)アルキルスルホニルアミノ−(C−C)アルキル基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である);N−ヒドロキシカルボキシミドアミド基;又はベンジルオキシ基を表わし、
は、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わし、
は、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)を表わす]で示される化合物、それらの光学異性体及び位置異性体、ならびにまた薬学的に許容しうる酸又は塩基とのその付加塩。
【請求項2】
基Rが、水素原子又はヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基,エトキシカルボニル基、アミノ基又はN−メチルアミノカルボニル基を表わすことを特徴とする、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
基Rが、メタ又はパラ配置にあることを特徴とする、請求項1又は請求項2のいずれか記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
基R及び基Rが、水素原子を表わすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
基Rが、水素原子又はメチル基を表わすことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
化合物が:
8−フェノキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン 1,1−ジオキシド;
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−安息香酸エチル;
3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−N−メチル−ベンズアミド;
{3−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]フェニル}−メタノール;
4−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]フェノール;
4−[(5−メチル−1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]−フェノール;
4−[(1,1−ジオキシド−2,3,4,5−テトラヒドロ−1,2,5−ベンゾチアジアゼピン−8−イル)オキシ]アニリン、
及びまた薬学的に許容しうる酸又は塩基とのその付加塩である、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
請求項1記載の式(I)の化合物の製造方法であって、ここで、出発物質として、式(II):
【化17】


[式中、Rは、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルコキシ基を表わす]で示される化合物を使用し、これを、ジメチルホルムアミドの存在下で塩化チオニルと反応させて、式(III):
【化18】


[式中、Rは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、次いでこれを、塩基性溶媒中、2−クロロエチルアミンの作用に付して、式(IV):
【化19】


[式中、Rは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、次いでこれを、酸性溶媒中での脱保護の後、環化させて、式(V):
【化20】


[式中、Rは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、次いでこれを、三臭化ホウ素の作用に付して、式(VI):
【化21】


で示される化合物を得て、これを、式(VII):
【化22】


[式中、R及びRは、式(I)について定義されているとおりである]で示されるボロン酸化合物と反応させて、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/a):
【化23】


[式中、R及びRは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得て、
式(I/a)の化合物の製造における一つの変化形は − 式(VI)の化合物とのカップリングの工程がすでに実施されていれば − それに続くボロン酸化合物の置換基を修飾するために慣用の化学反応を用いることからなり、
次いで、式(I/a)の化合物を、必要であれば:
・ アルキル化剤R’−X(式中、R’は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で強塩基の作用による、2位及び5位の窒素原子上の二重アルキル化に付して、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/b):
【化24】


[式中、R、R及びR’は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
・ 又は、アルキル化剤R’−X(式中、R’は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか、又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で塩基の作用による、2位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/c):
【化25】


[式中、R、R及びR’は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
これを、場合により、アルキル化剤R’−X(式中、R’は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)アルキル基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で塩基の作用による、5位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I/d):
【化26】


[式中、R、R、R’及びR’は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
・ 又は代替的に:
− [(1−エトキシシクロプロピル)オキシ]トリメチルシラン、又は
− 式(VIII):
【化27】


[式中、R”は、水素原子、又は直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わす]で示される化合物、
又は代替的に、
− 式(IX):
【化28】


[式中、0≦n≦4]で示される化合物のいずれかの存在下で、
トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤を使用して還元的アミノ化反応の手段により、5位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I)の化合物の特定の場合である、式(I/e):
【化29】


[式中、R’”は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基、(C−C)シクロアルキル基、又は(C−C)シクロアルキル−(C−C)基(ここで、該アルキル部分は、直鎖状もしくは分岐鎖状である)を表わし、そしてR及びRは、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
これを、場合により、アルキル化剤R”−X(式中、R”は、直鎖状もしくは分岐鎖状(C−C)アルキル基(これは、非置換であるか、又は1個以上のハロゲン原子で置換されている)を表わし、そしてXは、ハロゲン原子を表わす)の存在下で塩基の作用による、2位の窒素原子上のアルキル化に付して、
式(I/f):
【化30】


[式中、R、R、R’”及びR”は、本明細書で先に定義されたとおりである]で示される化合物を得てもよく、
次いで、式(I)の化合物の全体を構成する、式(I/a)〜(I/f)で示される化合物を、慣用の分離手法に従って精製してもよく、所望であれば、薬学的に許容しうる酸又は塩基とのそれらの付加塩に変換し、そして適切な場合、慣用の分離手法に従って、存在する場合それらの光学異性体及び位置異性体に分離することを特徴とする、製造方法。
【請求項8】
式(I)の化合物の合成において中間体としての使用のためであることを特徴とする、請求項7記載の式(VI):
【化31】


で示される化合物。
【請求項9】
活性成分として、請求項1〜6のいずれか一項の化合物を、1つ以上の薬学的に許容しうる非毒性で、不活性な担体と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項10】
AMPA受容体のモジュレーター及びNMDA受容体のアンタゴニストとしての使用のための医薬の製造における使用のための、請求項9記載の医薬組成物。
【請求項11】
進行性神経変性疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、ピック病、ハンチントン舞踏病、コルサコフ病、統合失調症、急性神経変性疾患、前頭葉及び皮質下性認知症、血管性認知症、癲癇、脳血管損傷ならびにまた抑鬱及び不安状態の治療又は予防における使用のための医薬の製造における使用のための、請求項9記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2012−520858(P2012−520858A)
【公表日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−500288(P2012−500288)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000227
【国際公開番号】WO2010/106249
【国際公開日】平成22年9月23日(2010.9.23)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【Fターム(参考)】