説明

AMPK活性に関連する疾患を処置するためのテトラヒドロトリアジン化合物

本発明は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性に関連する、生理的及び/又は病的状態の予防若しくは治療処置及び/又はモニターのための、式(I)[式中、ラジカル:R〜Rは、請求項1の意味を有する]の化合物、及び/又は生理学的に許容しうるその塩に関する。本発明の別の目的は、グルコース恒常性の強化、ポドサイト病の改善及び/又は活性酸素種(ROS)の産生の低下のための該化合物の使用に関する。本発明はまた、糖尿病性腎症のインビトロ診断方法及びポドサイト病を軽減する化合物のスクリーニング方法に関するものであり、各場合にバイオマーカーとしてシナプトポディンを適用することによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性に関連する、生理的及び/又は病的状態の予防若しくは治療処置及び/又はモニターのための、式(I):
【0002】
【化1】


[式中、ラジカル:R〜Rは、後述の意味を有する]で示される化合物、及び/又は生理学的に許容しうるその塩に関する。本発明の別の目的は、グルコース恒常性の強化、ポドサイト病(podocytopathy)の改善及び/又は活性酸素種(ROS)の産生の低下のための該化合物の使用に関する。本発明はまた、糖尿病性腎症のインビトロ診断方法及びポドサイト病を軽減する化合物のスクリーニング方法に関するものであり、いずれもバイオマーカーとしてシナプトポディン(synaptopodin)を適用することによるものである。
【0003】
AMPKは、細胞エネルギー恒常性のセンサー及びレギュレーターとして十分に確立されている(Hardie & Hawley, Bioassays 23, 1112 (2001); Kemp et al., Biochem. Soc. Transactions 31, 162 (2003))。AMPレベルの上昇によるこのキナーゼのアロステリック活性化は、細胞エネルギー枯渇の状態で起こる。標的酵素の結果として生じるセリン/トレオニンリン酸化は、細胞代謝を低エネルギー状態に適応させる。AMPK活性化が誘導する変化の正味の効果は、ATP消費プロセスの阻害及びATP生成経路の活性化であり、ひいてはATP貯蔵の再生である。AMPK基質の例は、アセチル−CoAカルボキシラーゼ(ACC)及びHMG−CoAレダクターゼを包含する(Carling et al., FEBS letters 223, 217 (1987))。ACCのリン酸化ひいては阻害は、脂肪酸合成(ATP消費)の低下及び同時に脂肪酸酸化(ATP生成)の上昇をもたらす。HMG−CoAレダクターゼのリン酸化とその結果の阻害は、コレステロール合成の低下をもたらす。AMPKの他の基質は、ホルモン感受性リパーゼ(Garton et al., Eur. J. Biochem. 179, 249 (1989))、グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(Muoio et al., Biochem. J. 338, 783 (1999))及びマロニル−CoAデカルボキシラーゼ(Sarah et al., JBC 275, 24279 (2000))を包含する。
【0004】
AMPKはまた、肝臓代謝の調節にも関係している。肝臓によって上昇したグルコース産生は、II型糖尿病(T2D)における空腹時高血糖の主な原因である(Saltiel et al., Cell 10, 517 (2001))。肝臓における糖新生は、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)及びグルコース−6−ホスファターゼ(G6Pase)のような複数の酵素により調節されている。AMPKの活性化は、肝癌細胞におけるこれらの遺伝子の転写を抑制する(Lochhead et al., Diabetes 49, 896 (2000))。
【0005】
AMPK活性化はまた、幾つかの他の遺伝子発現に作用する糖新生をダウンレギュレートする。これらの効果は、SREBP−1c(Zhou et al., J. Clin. Invest. 108, 1167 (2001))及びChREBP(Kawaguchi et al., JBC 277, 3829 (2002); Leclerc et al., Diabetes 50, 1515 (2001))のような、重要な転写因子をダウンレギュレートするその能力によるものか、又はp300(Yang et al., JBC. 276, 38341 (2001))及びTORC2のような、転写コアクチベーターの直接リン酸化によるものであろう。
【0006】
AMPKは、収縮誘導性骨格筋グルコース取り込みのための魅力的な候補と考えられるが、それは、AMPの上昇及びクレアチンリン酸エネルギー貯蔵の減少と並行して活性化されるためである(Hutber et al., Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 272, E262 (1997))。更には、AMPKのAICAR誘導性活性化は、細胞膜とのグルコーストランスポーター4(GLUT4)の融合(Kurth-Kraczek, Diabetes 48, 1667 (1999))と同時にグルコース取り込み(Merrill et al., Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 273, E1107 (1997))を増加させる。骨格筋におけるキナーゼ死サブユニットの過剰発現は、5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミド−1β−リボシド(AICAR)を消失させるが、部分的には収縮刺激性グルコース取り込みを弱める(Mu et al., Mol. Cell. 7, 1085 (2001))。これらの知見は、追加的経路が収縮誘導性グルコース取り込みに介在することを示唆するが、一方AMPKが、グルコース取り込みに及ぼすAICARの効果に介在することは明白である。
【0007】
AMPKを活性化する上流の刺激に関する広範な研究にもかかわらず、AMPK介在性グルコース取り込みの下流の基質に関する調査が欠けている。更に最近の報告は、160kDaのAkt基質(AS160)が、インスリン刺激性グルコース取り込みに関係するAktの下流の重要な基質であることを明らかにした。インスリンの他に、AICARによる収縮及びAMPKの活性化が、齧歯類骨格筋におけるAS160のリン酸化の上昇に関連している。AS160のリン酸化は、AMPK a2ノックアウト、g3ノックアウト、及びa2キナーゼ死マウス由来の骨格筋では、AICAR処置に反応して障害されているか又は消失している(Treeback et al., Diabetes 55, 2051 (2006))。このことは、これらのマウスの骨格筋におけるAICAR刺激性グルコース取り込みの障害の知見を裏付ける(Jorgensen et al., JBC 279, 1070 (2004))。したがって、AS160は、骨格筋におけるグルコース取り込みに介在する際のAMPKの下流の標的と考えられた。
【0008】
まとめると、これら全ての代謝効果は、AMPKが、脂質酸化の上昇を介して肝臓脂質沈着を低下させながら、肝臓の糖新生及び脂質産生を抑制することにより、T2Dにおけるグルコースと脂質のプロフィールを改善する証拠を与える。
【0009】
更に最近になって、細胞内だけでなく全身のエネルギー代謝の調節へのAMPKの関与が明らかになった。脂肪細胞由来ホルモンのレプチンがAMPKの刺激をもたらし、このため骨格筋における脂肪酸酸化が上昇することが証明された(Minokoshi et al., Nature 415, 339 (2002))。炭水化物及び脂質代謝の改善をもたらす別の脂肪細胞由来ホルモンであるアディポネクチンは、肝臓及び骨格筋においてAMPKを刺激することが証明されている(Yamanauchi et al., Nature Medicine 8, 1288 (2002); Tomas et al., PNAS 99, 16309 (2002))。これらの状況におけるAMPKの活性化は、細胞内AMPレベルの上昇とは独立で、むしろ1種以上の未だ同定されていない上流のキナーゼによるリン酸化に起因すると考えられる。
【0010】
AMPK活性化の上記結果の知識に基づいて、AMPKのインビボ活性化からは著しく有益な効果が期待されている。肝臓では、糖新生酵素の発現の低下により、肝臓グルコース産生量が減少し、全般的なグルコース恒常性が改善し、そして脂質代謝における重要な酵素の直接阻害及び/又は発現の減少の両方が、グルコース取り込み及び脂肪酸酸化を上昇させ、結果としてグルコース恒常性を改善し、更に筋細胞内トリグリセリド蓄積の減少に起因して、インスリン作用を改善するだろう。最終的に、エネルギー消費の上昇により、体重が減少するはずである。メタボリック症候群におけるこれらの効果の組合せは、心血管疾患に罹患するリスクを著しく低下させることが期待されている。
【0011】
齧歯類における幾つかの研究がこの仮説を支持する(Bergeron et al., Diabetes 50, 1076 (2001); Song et al., Diabetologia 45, 56 (2002); Halseth et al., Biochem. and Biophys. Res. Comm. 294, 798 (2002); Buhl et al., Diabetes 51, 2199 (2002))。最近まで大部分のインビボ研究は、ZMPの細胞透過性前駆体である、AMPKアクチベーターのAICARに依存していた。ZMPは、細胞内AMP模倣物質として作用し、そして充分な高レベルまで蓄積されると、AMPK活性を刺激することができる(Corton et al., Eur. J. Biochem. 229, 558 (1995))。しかし、ZMPはまた、他の酵素の調節におけるAMP模倣物質としても作用するため、特異的AMPKアクチベーターではない(Musi & Goodyear, Curr Drug Targets Immune Endocr Metabol Disord 2, 119 (2002))。幾つかのインビボ研究では、肥満及びT2Dの齧歯類モデルにおける急性及び慢性AICAR投与の両方で有益な効果を証明している(Bergeron et al., Diabetes 50, 1076 (2001); Song et al., Diabetologia 45, 56 (2002); Halseth et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 294, 798 (2002); Buhl et al., Diabetes 51, 2199 (2002))。例えば、肥満Zucker(fa/fa)ラットにおける7週間のAICAR投与は、血漿トリグリセリド及び遊離脂肪酸の減少、HDLコレステロールの上昇、並びに経口グルコース負荷試験により評価されるグルコース代謝の正常化をもたらす(Minokoshi et al., Nature 415, 339 (2002))。ob/ob及びdb/dbマウスの両方において、8日間のAICAR投与により、血中グルコースが35%減少する(Halseth et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 294, 798 (2002))。AICARの他に、糖尿病薬のメトホルミンは、高濃度でAMPKをインビボで活性化できることが見い出された(Zhou et al., J. Clin. Invest. 108, 1167 (2001); Musi et al., Diabetes 51, 2074 (2002))が、その抗糖尿病作用が、どの程度までこの活性化に依存しているか決定する必要がある。レプチンとアディポネクチンの場合のように、メトホルミンの刺激効果は、上流のキナーゼの活性化を介して間接的である(Zhou et al., J. Clin. Invest. 108, 1167 (2001))。
【0012】
更に最近、低分子AMPKアクチベーターが報告されている。チエノピリドン類の一員である、A-769662という名称のこの直接的AMPKアクチベーターは、血漿グルコース及びトリグリセリドの低下をインビボで誘導する(Cool et al., Cell Metab. 3, 403 (2006))。
【0013】
薬理学的介入の他に、ここ数年で幾つかのトランスジェニックマウスモデルが開発されており、初期の結果は利用可能になっている。トランスジェニックマウスの骨格筋におけるドミナントネガティブAMPKの発現は、グルコース輸送の刺激に及ぼすAICAR効果が、AMPK活性化に依存することを証明しており(Mu et al., Molecular Cell 7, 1085 (2001))、よって非特異的ZMP効果には起因しないらしい。他の組織における同様の研究は、AMPK活性化の帰結を更に規定するのに役立つだろう。AMPKの薬理学的活性化は、グルコース及び脂質代謝の改善並びに体重の減少によってメタボリック症候群に有益であろう。患者をメタボリック症候群であると見なすには、以下の5つの基準のうち3つを満たす必要がある:130/85mmHgを上回る高血圧、110mg/dlを上回る空腹時血糖値、40”(男性)又は35”(女性)の胴囲を上回る腹部肥満、及び150mg/dlを上回るトリグリセリドの上昇又は40mg/dl(男性)若しくは50mg/dl(女性)を下回るHDLコレステロールにより定義される血中脂質変化。したがって、メタボリック症候群と見なされた患者におけるAMPKの活性化により達成できる複合効果は、この目的の重要性を高めるだろう。
【0014】
AMPKの刺激は、骨格筋における脱共役タンパク質3(UCP3)の発現を刺激することが証明されており(Zhou et al., Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 279, E622 (2000))、よってこれは、活性酸素種からの損傷を予防する方法であるかもしれない。内皮NOシンターゼ(eNOS)は、AMPK介在性リン酸化により活性化されることが証明されており(Chen et al., FEBS Letters 443, 285 (1999))、よってAMPK活性化は、局所循環系を改善するために使用することができる。
【0015】
AMPKは、mTOR経路の調節に関与する。哺乳類のラパマイシン標的(mTOR)は、セリン/トレオニンキナーゼであり、かつタンパク質合成の重要なレギュレーターである。細胞増殖を阻害し、グルコース飢餓により誘導されるアポトーシスから細胞を保護するために、AMPKは、Thr−1227及びSer−1345でTSC2をリン酸化して、TSC1及びTSC−2複合体の活性を上昇させることにより、m−TORを阻害する。更に、AMPKは、Thr−2446のリン酸化によりmTOR作用を阻害する。即ち、AMPKは、mTORの活性を間接的及び直接的に阻害することにより、タンパク質合成を制限する。AMPKはまた、PI3K−Aktシグナル伝達経路の構成的活性化を有する多くの癌の治療標的になりうる。AICARによる種々の癌細胞株の処理は、インビトロ及びインビボ研究の両方で細胞増殖を弱めた(Rattan et al., JBC 280, 39582 (2005))。報告は、糖尿病患者におけるメトホルミンによる治療を癌の低いリスクと結びつける(Evans et al., BMJ 330, 1304 (2005))。AICARによるAMPKの活性化は、脂質合成酵素のFAS及びACCの発現を減少させることが証明されており、その結果、前立腺癌細胞における増殖の抑制が起こる。多くの癌細胞は、高レベルのFASと相関してデノボ脂肪酸合成の著しい速度上昇を示す。FASの阻害は、癌細胞増殖を抑制して、細胞死を誘導する。即ち、AMPK活性化及びFAS活性化の阻害は、癌の薬理学的治療の明確な目的である。
【0016】
AICARは、AMPKアクチベーターとして疾患において抗炎症性を発揮することが報告されている。AICARは、前炎症性サイトカイン及びメディエーターの産生を弱めることが観測されている(Giri et al., J. Neuroscience 24, 479 (2004))。ラットモデル及びインビトロでのAICARは、血液脳関門(BBB)を通る白血球の浸潤を制限することにより、EAEの進行を弱め(Nath et al., J. Immunology 175, 566 (2005); Prasad et al., J. Neurosci Res. 84, 614 (2006))、そして最近AMPK活性化剤が、抗炎症剤として作用し、クラッベ病/Twitcher病(遺伝性神経疾患)における治療可能性を保持しうることが示唆されている(Giri et al., J. Neurochem. 105, 1820 (2008))。
【0017】
また、先行技術では、AMPK活性化誘導AMPKアクチベーターが、腎皮質におけるAMPKリン酸化の上昇と関連して、インスリン欠乏性糖尿病の初期において見られるような腎臓肥大を予防できることが教示されている。作用の機序は、mTORに及ぼすAMPKのネガティブ制御により誘導され(Lee et al., Am J Renal Physiol 292, F617 (2007))、タンパク質合成の減少により腎臓肥大が低下するのであろう。
【0018】
したがって、本発明の基礎となる技術問題は、AMPK活性に関連する疾患の予防又は治療において有効に適用できる化合物、特に治療効果を改善し、かつ有害作用を最小限に抑えるこのような化合物を提供することである。
【0019】
本発明は、AMP活性化プロテインキナーゼの活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広められる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニターのための、式(I):
【0020】
【化2】


[式中、
、Rは、それぞれ相互に独立に、H又はAを意味し、
、Rは、それぞれ相互に独立に、H、A、2〜6個のC原子を有するアルケニル、2〜6個のC原子を有するアルキニル、Ar又はHetを意味し、
及びRはまた、一緒になって2、3、4又は5個のC原子を有するアルキレンを意味し、
、Rは、それぞれ相互に独立に、H、A、(CHAr、(CHOAr、(CHOA又は(CHOHを意味し、
及びRはまた、一緒になって2、3、4又は5個のC原子を有するアルキレン(ここで、1個のCH基は、O、NH若しくはNAにより置き換えられていてもよいか、かつ/又は1個のH原子は、OHにより置き換えられていてもよい)を意味し、
Arは、フェニル、ナフチル又はビフェニル(ここで、これらそれぞれは、非置換であるか、あるいはHal、A、OA、OH、COOH、COOA、CN、NH、NHA、NA、SOA及び/又はCOAにより、単置換、二置換又は三置換されている)を意味し、
Hetは、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する、単環、二環又は三環式の飽和、不飽和又は芳香族複素環(非置換であるか、あるいはHal、A、OH、OA、NH、(CHAr、NHA、NA、COOH、COOA及び/又は=O(カルボニル酸素)により単置換、二置換又は三置換されていてもよい)を意味し、
Aは、1〜10個のC原子を有する非分岐若しくは分岐のアルキル(ここで、1〜7個のH原子は、Fにより置き換えられていてもよい)、又は3〜7個のC原子を有する環状アルキルを意味し、
Halは、F、Cl、Br又はIを意味し、
mは、1、2、3、4、5又は6を意味し、そして
nは、0、1又は2を意味する]で示される化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩を提供することにより、この問題を解決している。
【0021】
驚くべきことに、発明者らにより、式(I)のテトラヒドロトリアジン化合物及びその誘導体は、AMPK活性に起因する医学的適応、特に腎臓肥大及び糖尿病性腎症のような該活性の欠如、並びにこれらに関連する疾患に取り組むために、医薬に適用できることが証明されている。本出願の出願前には、式(I)の化合物は、WO 2001/55122の製造法により調製できることだけが知られていた。本化合物は、IR症候群に関連する疾患の処置において有用であるかもしれない。代表化合物は現在臨床評価中である。しかし今や、本発明の基礎になる該テトラヒドロトリアジン化合物は、グルコース恒常性全体を改善することが見い出された。本発明は、シナプトポディンの糸球体含量が回復し、そしてROS産生が低下している間の、強力なAMPK活性化を明らかにしている。これらの現象は、式(I)の化合物の効果により促進されるが、このことが、腎臓肥大及び糖尿病性腎症などのこのような特定の臨床像用の本発明の医薬品の基礎を形成している。
【0022】
本発明の化合物は、良好な忍容性と共に非常に有用な薬理学的特性を示す。主としてACE阻害剤(その処置の目的は、腎臓損傷の進行速度を落とすこと及び関連する合併症を制御することである)を含む標準治療法と比較して、本テトラヒドロトリアジン化合物は、AMPK介在性疾患の根本的原因に立ち向かう。結果として、上述の化合物は、AMPK介在性疾患の予防、処置及び/又はモニターによく適している新規な医薬を表す。更に詳細には、本発明の化合物は、広範な患者用の腎臓肥大及び糖尿病性腎症に対する強力な薬物を与える。
【0023】
本発明の化合物の該生物学的活性は、当業者には知られている手法により測定することができる。適切な実験動物は、例えば、マウス、ラット、モルモット、イヌ、ネコ、サル又はブタである。例えば、IRのインビボ評価の究極の判断基準は、正常血糖高インスリングルコースクランプ法である。他のツールは、インスリン抵抗性の恒常性モデル評価(HOMA−IR)試験法又は頻回採血経口グルコース負荷試験法(OGTT)である。インスリン感受性の変化を測定するのに適切な手法は、高感度、高再現性、単純操作及び比較的ハイスループットでなければならない。
【0024】
本発明の意味するところでは、式(I)の化合物は、その溶媒和物、プロドラッグ、互変異性体、エナンチオマー、ラセミ体及び立体異性体(全ての比のその混合物を包含する)を含む、薬学的に使用しうる誘導体を包含するように定義される。好ましいのは、溶媒和物及び/又は生理学的に許容しうる塩、更に好ましくは生理学的に許容しうる塩、最も好ましくは生理学的に許容しうる酸付加塩である。
【0025】
テトラヒドロトリアジン誘導体の「溶媒和物」という用語は、その相互の引力により形成される、化合物への不活性溶媒分子の付加物を意味すると解釈される。溶媒和物は、例えば、一水和物若しくは二水和物又はアルコキシドである。
【0026】
「プロドラッグ」という用語は、例えば、アルキル若しくはアシル基、糖類又はオリゴペプチドを用いて修飾されており、そして生体内で迅速に切断されて本発明の有効な化合物を形成する、本発明による化合物を意味すると解釈される。これらはまた、例えば、Int. J. Pharm. 115, 61 (1995)に記載されるような、本発明の化合物の生分解性ポリマー誘導体を包含する。本発明の化合物は、加溶媒分解、特に加水分解により、又は水素化分解により、その官能性誘導体からこれを遊離させることによって得ることができる。同様に本発明の化合物は、エステル、炭酸エステル、カルバミン酸エステル、尿素、アミド又はリン酸エステルのような、任意の所望のプロドラッグの形にすることができるが、このような場合に、実際の生物学的活性形は、代謝によってのみ放出される。インビボで変換されて生物活性剤(即ち、本発明の化合物)を与えることができる任意の化合物は、本発明の範囲及び本質に含まれるプロドラッグである。種々の形のプロドラッグが当該分野において周知であり、報告されている(例えば、Wermuth et al., The Practice of Medicinal Chemistry 31, 671, Academic Press (1985); Bundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier (1985); Bundgaard, A Textbook of Drug Design and Development 5, 131, Harwood Academic Publishers (1991))。更には化学物質は、必要に応じて同様に所望の生物学的効果を(ある状況では更に顕著な形で)引き起こしうる代謝物に体内で変換されることが知られている。本発明の化合物のいずれかから代謝によりインビボで変換された、任意の生物学的に活性な化合物は、本発明の範囲及び本質に含まれる代謝物である。
【0027】
本発明の化合物は、純粋なE若しくはZ異性体としてその二重結合異性体の形で、又はこれら二重結合異性体の混合物の形で存在することができる。可能であれば、本発明の化合物は、ケト−エノール互変異性体のような、互変異性体の形であってもよい。
【0028】
式(I)はまた、エナンチオマーのような光学活性形(立体異性体)を包含する。本発明の化合物の全ての立体異性体は、混合物であっても、又は純粋若しくは実質的に純粋な形のいずれであっても考慮される。本発明の化合物は、炭素原子のいずれかに不斉中心を有することができる。その結果として、これらは、そのラセミ体の形で、純粋なエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの形で、あるいはそのエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物の形で存在することができる。混合物は、立体異性体の任意の所望の混合比を有してよい。例えば、1個以上のキラリティーの中心を有しており、ラセミ体として又はジアステレオマー混合物として存在する本発明の化合物は、それ自体既知の方法により、その光学的に純粋な異性体、即ち、エナンチオマー又はジアステレオマーに分画することができる。本発明の化合物の分離は、キラル若しくは非キラル相でのカラム分離により、又は場合により光学活性な溶媒からの再結晶により、又は光学活性酸若しくは塩基を用いて、又は例えば、光学活性アルコールのような光学活性試薬での誘導体化とこれに続くラジカルの脱離により行うことができる。
【0029】
本発明はまた、本発明の化合物の混合物、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100又は1:1000の比の、例えば、2種のジアステレオマーの混合物の使用に関する。これらは、特に好ましくは立体異性体化合物の混合物である。医薬組成物はまた、それぞれ、化合物と少なくとも1種の誘導体との混合物、又は誘導体の混合物(例えば、溶媒及び/又は塩を含んでもよい)を含むことができる。
【0030】
化合物、特に本発明の化合物を定義するために本明細書において使用される命名法は、一般にIUPAC(化学化合物及び特に有機化合物のための組織)の規則に基づく。本発明の上記化合物の説明用に示される用語は、明細書又は請求の範囲に特に明示的に断りない限り、常に以下の意味を有する:
【0031】
上記及び下記で、ラジカル:R、R、R、R、R、Rは、特に明示的に断りない限り、式(I)について示される意味を有する。
【0032】
Aは、1〜7個のH原子が、Fにより置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐(直鎖)若しくは分岐のアルキル、又は3〜7個のC原子を有する環状アルキルを意味する。Aは、好ましくはメチルを、更にはエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル又はtert−ブチルを、更にはまたペンチル、1−、2−若しくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−若しくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−若しくは4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−若しくは3,3−ジメチルブチル、1−若しくは2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−若しくは1,2,2−トリメチルプロピルを、更に好ましくは、例えば、トリフルオロメチルを意味する。更に、Aは、好ましくは1、2、3、4、5又は6個のC原子を有するアルキルを、更に好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル又は1,1,1−トリフルオロエチルを意味する。非常に好ましくは、Aは、メチルを意味する。
【0033】
環状アルキル(シクロアルキル)は、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを意味する。
【0034】
アルケニルは、2、3、4、5又は6個のC原子を有しており、好ましくはビニル又はプロペニルを意味する。
【0035】
アルキニルは、2、3、4、5又は6個のC原子を有しており、好ましくはC≡CH又はC≡C−CHを意味する。
【0036】
Arは、例えば、o−、m−若しくはp−トリル、o−、m−若しくはp−エチルフェニル、o−、m−若しくはp−プロピルフェニル、o−、m−若しくはp−イソプロピルフェニル、o−、m−若しくはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−若しくはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−若しくはp−アミノフェニル、o−、m−若しくはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−若しくはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−若しくはp−メトキシフェニル、o−、m−若しくはp−エトキシフェニル、o−、m−若しくはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−若しくはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−若しくはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−若しくはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−若しくはp−フルオロフェニル、o−、m−若しくはp−ブロモフェニル、o−、m−若しくはp−クロロフェニル、o−、m−若しくはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−若しくはp−シアノフェニル、o−、m−若しくはp−カルボキシフェニル、o−、m−若しくはp−メトキシカルボニルフェニル、o−、m−若しくはp−アセチルフェニルを、更に好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−若しくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−若しくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−若しくは3,5−ジブロモフェニル、2,4−若しくは2,5−ジニトロフェニル、2,5−若しくは3,4−ジメトキシフェニル、3−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−3−クロロ−、2−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−5−クロロ−若しくは2−アミノ−6−クロロフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−若しくは3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル又は2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを意味する。Arは、特に好ましくはフェニル、ヒドロキシフェニル又はメトキシフェニルを意味する。
【0037】
更なる置換に関わりなく、Hetは、例えば、2−若しくは3−フリル、2−若しくは3−チエニル、1−、2−若しくは3−ピロリル、1−、2−、4−若しくは5−イミダゾリル、1−、3−、4−若しくは5−ピラゾリル、2−、4−若しくは5−オキサゾリル、3−、4−若しくは5−イソオキサゾリル、2−、4−若しくは5−チアゾリル、3−、4−若しくは5−イソチアゾリル、2−、3−若しくは4−ピリジル、2−、4−、5−若しくは6−ピリミジニルを、更に好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−若しくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−若しくは−5−イル、1−若しくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−若しくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−若しくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−若しくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−若しくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−若しくは−5−イル、3−若しくは4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−若しくは7−インドリル、4−若しくは5−イソインドリル、インダゾリル、1−、2−、4−若しくは5−ベンゾイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−若しくは7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−若しくは7−ベンゾオキサゾリル、3−、4−、5−、6−若しくは7−ベンゾイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−若しくは7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−若しくは7−ベンゾイソチアゾリル、4−、5−、6−若しくは7−ベンゾ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−若しくは8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−若しくは8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−若しくは8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−若しくは8−キナゾリニル、5−若しくは6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−若しくは8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニルを、更に好ましくは1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−若しくは−5−イル、2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−5−イル又はジベンゾフラニルを意味する。
【0038】
この複素環ラジカルはまた、部分的又は完全に水素化されていてもよい。よって更なる置換に関わりなく、Hetはまた、例えば、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−若しくは−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−若しくは−5−フリル、テトラヒドロ−2−若しくは−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−若しくは−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−若しくは−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−若しくは−5−ピロリル、1−、2−若しくは3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−若しくは−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−若しくは−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−若しくは−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−若しくは−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−若しくは−6−ピリジル、1−、2−、3−若しくは4−ピペリジニル、2−、3−若しくは4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−若しくは−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−若しくは−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−若しくは−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−若しくは−5−ピリミジニル、1−、2−若しくは3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−若しくは−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−若しくは−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−若しくは8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニルを、更に好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−若しくは−6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニルを、又は更に3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−若しくは−7−イルを、更に好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、2,3−ジヒドロベンゾオキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾオキサゾリル、2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリル、1,3−ジヒドロインドリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドリル又は2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリルを意味することができる。
【0039】
Hetは、好ましくはピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、モルホリニル、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、ベンゾ−1,3−ジオキソリル、インダゾリル又はベンゾ−2,1,3−チアジアゾリルを意味し、そしてこれらのそれぞれは、非置換であるか、あるいはA、COOA、Hal及び/又は=O(カルボニル酸素)により単置換、二置換又は三置換されている。
【0040】
及びRは、好ましくはAを意味する。R及びRは、好ましくはHを意味する。Rは、好ましくはHを意味する。Rは、好ましくはAを意味する。更に好ましくは、R及びRは、メチルを意味し、R及びRは、Hを意味し、Rは、Hを意味し、そしてRは、メチルを意味する。
【0041】
本発明の最も好ましい実施態様において、本化合物は、5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン及び/又はその塩酸塩を含む。この化合物は、実施例1で合成される化合物の互変異性体である(4−アミノ−3,6−ジヒドロ−2−ジメチルアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩)。本発明の非常に好ましい実施態様において、本化合物は、エナンチオマーの(+)5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン及び/又はその塩酸塩を含む。
【0042】
式(I)のトリアジン誘導体及びその調製のための出発物質は、それぞれ、文献(例えば、標準的研究ではHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなど)に記載されるようにそれ自体既知の方法により、即ち、該反応について既知で適切な反応条件下で、製造される。また、それ自体既知である変法を利用することもできるが、本明細書ではより詳細には言及しない。必要に応じて、出発物質はまた、これらを粗反応混合物中に単離していない状態にしておくことにより、その場で生成させることもできるが、これらは直ちに本発明の化合物に更に変換する。他方で、本反応は段階的に実施することができる。
【0043】
EP 1,250,328 B1(この開示は、その全体が引用例として本明細書に取り込まれる)により、式(I)の化合物は、式(II):
【0044】
【化3】


[式中、
、R、R、Rは、上記の意味を有する]で示される化合物を、式(III)、(IV)又は(V):
【0045】
【化4】


[式中、
、Rは、上記の意味を有し、そして
は、メチル又はエチル基である]で示される化合物と反応させる(ここで、本反応は、極性溶媒(例えば、エタノール又はジメチルホルムアミド)中で、かつ有機酸(例えば、カンファースルホン酸)又は無機酸(例えば、塩酸)の存在下で実行される)ことにより、調製することができる。
【0046】
しかし、式(I)の化合物は、式(II):
【0047】
【化5】


[式中、
、R、R、Rは、上記の意味を有する]で示される化合物と、式(VI):
【0048】
【化6】


[式中、
、Rは、上記の意味を有する]で示される化合物との反応を含む製造法によって調製されるのが好ましい。
【0049】
驚くべきことに、ジヒドロ−1,3,5−トリアジンアミン誘導体の合成の過程における調査によって、式(I)の化合物は、先行技術と比較して少なくとも同等以上の収率で入手できることが証明された。ここで言及できる決定的な利点は、相当に短い反応時間及び少ない廃棄物である。このことはまた、結果として相当に低いエネルギー消費を意味する。本発明の製造法では、生成する式(I)の化合物1分子当たり1分子の水が遊離する。先行技術の製造法では、生成する式(I)の化合物1分子当たり2分子のアルコールが遊離する。
【0050】
好ましい出発物質としてのメトホルミンは、下記構造を有する:
【0051】
【化7】

【0052】
一般式(II)を有する化合物は、ビグアニド類であるが、その合成法は、当該分野の平均的な技能者ならば習得している。このような化合物の合成法が記載されている幾つかの刊行物を一例として引用する(FR 1 537 604; FR 2 132 396; Slotta & Tschesche, Ber. 62b, 1398 (1929); Shapiro et al., J. Org. Chem. 81, 3725, 3728, 4636 (1959))。
【0053】
式(II)及び(VI)の化合物の反応は、好ましくは適切な極性溶媒、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール若しくはtert−ブタノールのようなアルコール類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)若しくはジオキサンのようなエーテル類;エチレングリコールモノメチル若しくはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)のようなグリコールエーテル類;アセトン若しくはブタノンのようなケトン類;アセトアミド、ジメチルアセトアミド若しくはジメチルホルムアミド(DMF)のようなアミド類;アセトニトリルのようなニトリル類;ジメチルスルホキシド(DMSO)のようなスルホキシド類;酢酸エチルのようなエステル類、又は該溶媒の混合物中で進行する。特に好ましいのは、イソブタノール、更にはエタノール及びイソプロパノールである。
【0054】
使用される条件に応じて、反応時間は、数分〜14日間の間、特に好ましくは3〜12時間の間である。反応温度は、約50℃〜150℃の間、通常は90℃〜120℃の間である。
【0055】
本発明の該化合物は、その最終的な非塩の形で使用することができる。他方では、本発明はまた、その薬学的に許容しうる塩の形でのこれらの化合物の使用を包含し、そしてこの塩は、種々の有機及び無機酸及び塩基から当該分野において知られている手順により誘導することができる。本発明の化合物の薬学的に許容しうる塩の形は、大部分従来法により調製される。
【0056】
本反応は、好ましくは有機又は無機酸の存在下で実施される。即ち、無機酸、例えば、硫酸、硝酸、ハロゲン化水素酸(塩酸又は臭化水素酸など)、リン酸(オルトリン酸など)、スルファミン酸、更には有機酸、特に脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatic)、芳香族又は複素環式の一塩基性又は多塩基性カルボン酸、スルホン酸又は硫酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、コハク酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−又はエタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノ−及び−ジスルホン酸、ラウリル硫酸を使用することができる。また本発明の意味において適切で好ましいものは、市販されているDowex(登録商標)又はAmberlyst(登録商標)樹脂のような、酸性カチオン性イオン交換樹脂である。更に好ましいのは、p−トルエンスルホン酸、更には塩酸、メタンスルホン酸、硫酸又はカンファースルホン酸、あるいは酸性カチオン性イオン交換樹脂、例えば、Dowex(登録商標)50、Amberlyst(登録商標)15又はDowex(登録商標)DR-2030である。最も好ましくは、本反応は、p−トルエンスルホン酸又は酸性カチオン性イオン交換樹脂の存在下で実施される。
【0057】
式(I)の塩基はまた、酸を用いて、例えば、等量の塩基及び酸の不活性溶媒(エタノールなど)中での反応と、続く溶媒の留去により、対応する酸付加塩に変換することができる。この反応に特に適切な酸は、生理学的に許容しうる塩を与えるものである。即ち、無機酸、例えば、上記の酸を使用することができる。生理学的に許容しえない酸との塩、例えば、ピクリン酸塩は、式(I)の化合物の単離及び/又は精製に使用することができる。
【0058】
上記に関しては、本明細書で互換的に使用される、目下の関係における「薬学的に許容しうる塩」及び「生理学的に許容しうる塩」という表現は、その塩の1つの形で本発明の化合物を含む活性成分(特にこの塩が、活性成分の遊離形又は以前使用された活性成分の任意の他の塩の形と比較して、活性成分に薬物動態特性の改善を与えるならば)を意味すると解釈されることが分かる。活性成分の薬学的に許容しうる塩の形はまた、以前には持たなかった所望の薬物動態特性を初めてこの活性成分に提供することができ、そしてその体内での治療効果に関してこの活性成分の薬理学に好ましい影響さえ与えうる。
【0059】
本発明の非常に好ましい態様において、本化合物は、5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩を含む。本発明の別の大いに好ましい実施態様において、本化合物は、エナンチオマー塩の(+)5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩を含む。
【0060】
上記のように、本発明は、AMPK活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広まる疾患の予防、治療及び/又はモニター用の、少なくとも1種の本発明のテトラヒドロトリアジン化合物及び/又はその誘導体、並びに場合により賦形剤及び/又は補助剤を含む医薬に関する。本発明の意味するところでは、「補助剤」は、同時に、同時期に又は逐次投与されると、本発明の活性成分に対する特定の応答を可能にするか、強化するか又は調節するあらゆる物質を意味する。注射液用の既知の補助剤は、例えば、アルミニウム組成物(水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウムなど)、サポニン類(QS21など)、ムラミルジペプチド若しくはムラミルトリペプチド、タンパク質(γ−インターフェロン又はTNFなど)、M59、スクアレン又はポリオール類である。本発明の意味するところでは、「補助剤」という用語はまた、「賦形剤」及び「薬学的に許容しうるビヒクル」という表現を包含し、そしてこれらは、ヒトや動物において副作用、例えば、アレルギー反応を引き起こさない、任意の溶媒、分散媒、吸収遅延剤などを意味する。結果として、本発明はまた、AMP活性化プロテインキナーゼの活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広まる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニター用の、活性成分として有効量の少なくとも1種の本明細書の過程で定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩を、薬学的に忍容性の補助剤と共に含む医薬組成物に関する。
【0061】
本発明は更に、AMP活性化プロテインキナーゼの活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広まる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニター用の、活性成分として有効量の少なくとも1種の式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩を、1種以上の薬学的に許容しうる補助剤と共に含む医薬組成物に関する。
【0062】
本発明の意味するところでは、「医薬」、「医薬組成物」又は「製剤処方」は、1種以上の本発明のテトラヒドロトリアジン化合物又はその製剤を含み、そしてAMPK活性に関連する疾患に罹患している患者の予防、治療、経過観察又はアフターケアにおいて、彼らの全身症状又は生体の特定領域の症状の病態修飾が少なくとも一時的にはっきりするやり方で使用することができる、医学分野の任意の物質である。
【0063】
更には、本活性成分は、単独で、又は更に他の処置法と組合せて投与することができる。医薬組成物中に2種以上の化合物を用いることにより相乗作用が達成できる(即ち、式(I)の化合物を、式(I)の別の化合物であるか又は異なる構造骨格の化合物のいずれかである、活性成分としての少なくとももう1種の物質と組合せる)。本発明の好ましい実施態様において、式(I)の活性成分は、少なくとももう1種の活性成分、更に好ましくはACE阻害薬、AT1アンタゴニスト、利尿薬、特にループ利尿薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬及び/又はサリチル酸薬と、最も好ましくはループ利尿薬、及び/又はスタチン及び/又はアスピリンと組合せたACE阻害薬又はAT1アンタゴニストと組合せる。
【0064】
本発明の別の態様では、活性成分は、同時に又は逐次のいずれかで、好ましくは別々の医薬組成物の形(一方は式(I)の化合物を薬学的に許容しうるビヒクル中に含み、もう一方は、式(I)の別の化合物又は異なる構造骨格の別の化合物を薬学的に許容しうるビヒクル中に含む)で投与される。しかし、全ての活性成分を同じ医薬組成物中に合わせて、投与できることも除外してはならない(特に活性成分が式(I)の化合物であるならば)。本発明に照らして、「医薬の組合せ(pharmaceutical combination)」及び「併用投与(combined administration)」という用語は、これらの態様のいずれかのことをいう。
【0065】
更に詳細には、「併用投与」は、本発明の目的には、一定の、及び特に自由な組合せを意味する(即ち、式(I)の化合物及び別の活性成分が一緒に1つの投与単位中に存在するか、又は別々の投与単位中に存在する該化合物及び該成分が、直に連続して、若しくは比較的大きな時間間隔で投与されるかのいずれかである;比較的大きな時間間隔とは、最大24時間までの期間を意味する)。「投与単位」は、特に、できるだけ問題なく活性成分の放出が達成される、医薬品の投与剤形を意味する。これは、特に、錠剤、コーティング錠又はペレット、カプセル中のマイクロタブレット及び液剤を包含し、そしてこの投与剤形は有利には、最適な活性成分プロフィール、ひいては作用プロフィールが達成されるように、2つの活性成分が放出されるか、又は身体に有効に利用させるように設計されている。
【0066】
一定の組成物(即ち、両方の成分を持つ単一製剤処方である)としての同時投与には、例えば、これは、アンプルに充填されている注射液若しくは輸液、又はその凍結乾燥形として調製される。凍結乾燥形の一定の組成物は、簡単かつ確実な取り扱いを保証する。これは、普通の医薬品の注射剤を加えることによりアンプル中で溶解して、静脈内投与する。再構成溶液は、組合せパッケージの一部であってもよい。別々の投与単位としての使用には、これらは好ましくは1つのパックに一緒に使用できるようにして、投与前に混合するか、又は逐次投与するかのいずれかである。例えば、2つの投与単位は、2つの投与単位の配置の相互の関係について、それ自体既知の方法による文字及び/又は着色によって、2つの投与単位の個々の成分を服用する時間(用法用量)が患者にはっきりと分かるように、設計されたブリスターパックに一緒に包装される。この自由な組合せは、患者に有効量の活性成分を個々に与えられるので有効である。別の可能性は、該化合物及び該別の活性成分の単一製剤(即ち、独立した医薬である)の供給である。これらの単一製剤は、本発明の組合せに必要な量の成分を含有するように変換される。それぞれの医薬の併用投与に関する対応する使用説明は、添付文書で与えられる。
【0067】
製剤処方は、任意の所望の適切な方法を介しての投与、例えば、経口(バッカル又は舌下を包含する)、直腸内、鼻内、局所(バッカル、舌下又は経皮を包含する)、膣内又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内又は皮内を包含する)方法による投与に適合させることができる。このような製剤は、例えば、活性成分を賦形剤又は補助剤と合わせることによる、製剤分野において知られている全ての製造法を用いて調製することができる。本発明の医薬組成物は、単一経路を介して(例えば、注射による)、又は様々な経路を介して(例えば、式(I)の化合物を経口で、そして別の活性成分を注射により)患者に投与されるように処方することができる。
【0068】
本発明の医薬組成物は、普通の固体又は液体担体、希釈剤及び/又は添加剤、並びに製剤工学に通常の補助剤を用いて、そして適切な用量で既知のやり方で製造される。単回投与剤形を製造するために活性成分と合わせる賦形剤の量は、処置される患者及び特定の投与様式に応じて変化する。適切な賦形剤は、経腸(例えば、経口)、非経口又は局所適用のような、様々な投与経路に適しており、かつ本発明のテトラヒドロトリアジン化合物又はその塩と反応しない、有機又は無機物質を包含する。適切な賦形剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン三酢酸エステル、ゼラチン、炭水化物(乳糖又はデンプンなど)、ステアリン酸マグネシウム、タルク、及びワセリンである。
【0069】
経口投与に適合させた製剤処方は、例えば、カプセル剤若しくは錠剤;粉剤若しくは顆粒剤;水性若しくは非水性液体中の液剤若しくは懸濁剤;可食性発泡体若しくは泡状食品;又は水中油型乳濁液又は油中水型乳濁液のような、分離した単位として投与することができる。即ち、例えば、錠剤又はカプセル剤の形の経口投与の場合には、活性成分は、例えば、エタノール、グリセロール、水などのような、経口用、非毒性かつ薬学的に許容しうる不活性賦形剤と合わせることができる。粉剤は、式(I)の化合物を適切な微粉サイズまで粉砕して、これを同様のやり方で粉砕した、例えば、デンプン又はマンニトールのような、例えば、可食性炭水化物などの製剤用賦形剤と混合することにより調製する。着香剤、保存料、分散剤及び色素が同様に存在してもよい。カプセル剤は、上記のような粉末混合物を調製して、これを成形したゼラチンシェルに充填することにより製造する。流動促進剤及び滑沢剤、例えば、高分散性ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又は固体ポリエチレングリコールを充填操作の前に粉末混合物に添加することができる。寒天、炭酸カルシウム又は炭酸ナトリウムのような、崩壊剤又は可溶化剤は、カプセル剤服用後の医薬品の生物学的利用能を改善するために、同様に添加することができる。
【0070】
更に、必要に応じて又は必要ならば、適切な結合剤、滑沢剤及び崩壊剤並びに色素を、同様に該混合物に組み込むことができる。適切な結合剤は、デンプン、ゼラチン、天然糖類(例えば、ブドウ糖又はβ−乳糖など)、トウモロコシから作られた甘味料、天然及び合成ゴム(例えば、アラビアゴム、トラガントゴムなど)又はアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ロウなどを包含する。これらの投与剤形に使用される滑沢剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを包含する。崩壊剤は、特に限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを包含する。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、この混合物を造粒するか、又は乾式成形し、滑沢剤及び崩壊剤を添加して、混合物全体を圧縮することにより製剤化して錠剤を得る。粉末混合物は、活性成分、特に適切なやり方で粉砕した化合物を、上述のような希釈剤又は基剤と、及び場合により結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン又はポリビニルピロリドンなど)、溶解遅延剤(例えば、パラフィンなど)、吸収促進剤(例えば、第4級塩など)、及び/又は吸収剤(ベントナイト、カオリン又はリン酸二カルシウムなど)と混合することにより調製する。この粉末混合物は、結合剤(例えば、シロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液又はセルロース若しくはポリマー材料の溶液など)で湿潤させ、そしてこれを篩を通して圧縮することにより造粒できる。造粒の代替法としては、この粉末混合物を、打錠機にかけることにより均一でない形状の塊を得て、これを破砕することにより顆粒を形成してもよい。この顆粒は、錠剤鋳型に張りつくのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルク又は鉱油の添加により滑らかにすることができる。次にこの滑らかな混合物を圧縮して錠剤を得る。本発明の活性成分はまた、フリーフロー性不活性賦形剤と合わせて、次に直接圧縮することにより、造粒又は乾式圧縮工程を実施することなく錠剤を得ることもできる。シェラック密封層、糖又はポリマー材料の層及びロウの光沢層よりなる透明又は不透明保護層が存在してもよい。様々な投与単位を識別することができるように、これらのコーティングに色素を加えることができる。
【0071】
例えば、液剤、シロップ剤及びエリキシル剤のような経口液剤は、所定量が前もって特定された量の活性成分を含むように、投与単位の形に調製することができる。シロップ剤は、適切な着香剤と共に活性成分を水性溶液に溶解することにより調製することができるが、一方エリキシル剤は、非毒性アルコール性ビヒクルを用いて調製する。懸濁剤は、活性成分、特に化合物の、非毒性ビヒクルへの分散により処方することができる。可溶化剤及び乳化剤(例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール類及びポリオキシエチレンソルビトールエーテル類など)、保存料、香味添加剤(例えば、ペパーミント油など)又は天然甘味料若しくはサッカリン、又は他の人工甘味料などは同様に添加することができる。
【0072】
経口投与用の投与単位製剤は、必要に応じて、マイクロカプセルに封入することができる。この製剤はまた、例えば、ポリマー、ロウなどへの微粒子物質のコーティング又は埋め込みなどにより、その放出が延長又は遅延されるように調製することができる。
【0073】
本発明の化合物、並びにその塩、溶媒和物及び生理学的に機能性の誘導体は、スモール・ユニラメラ・ベシクル、ラージ・ユニラメラ・ベシクル及びマルチラメラ・ベシクルのような、リポソーム送達システムの形で投与することができる。リポソームは、種々のリン脂質(コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリンなど)から形成することができる。
【0074】
本発明の化合物はまた、標的を指向した輸送、標的細胞内の取り込み及び/又は分布を促進する、別の分子と縮合又は複合体形成させることができる。本発明の化合物並びにその塩、溶媒和物及び生理学的に機能性の誘導体はまた、化合物分子を結合させる個々の担体としてモノクローナル抗体を用いて送達することができる。本化合物はまた、標的化医薬担体である可溶性ポリマーに結合させることができる。このようなポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノール又はパルミトイルラジカルにより置換されているポリエチレンオキシドポリリシンを包含してもよい。本化合物は、更に医薬の制御放出を達成するのに適切な、ある種の生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル類、ポリアセタール類、ポリジヒドロキシピラン類、ポリシアノアクリレート類及びヒドロゲルの架橋又は両親媒性ブロックコポリマーに結合させてもよい。
【0075】
経皮投与に適合させた製剤処方は、レシピエントの表皮と広範に密着させるための独立したプラスター剤として投与することができる。即ち、例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research 3, 318 (1986)の一般用語に記載されるように、イオントフォレーシスによりプラスター剤から送達することができる。
【0076】
局所投与に適合させた医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、粉剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾール剤又は油剤として処方することができる。眼又は他の外部組織、例えば、口及び皮膚の処置には、本製剤は、好ましくは局所用軟膏剤又はクリーム剤として適用される。軟膏剤を得るための処方の場合には、活性成分は、パラフィン性又は水混和性クリーム基剤のいずれかと共に利用することができる。あるいは、活性成分は、水中油型クリーム基剤又は油中水型基剤のクリーム剤が得られるように処方することができる。眼への局所適用に適合させた製剤処方は、活性成分が適切な担体、特に水性溶媒に溶解又は懸濁されている点眼剤を包含する。口内の局所適用に適合させた製剤処方は、トローチ剤、香錠及び洗口液を包含する。
【0077】
直腸内投与に適合させた製剤処方は、坐剤又は浣腸剤の形で投与することができる。坐剤の調製には、活性成分を、それ自体既知のやり方で適切な基剤成分(ポリエチレングリコール又は半合成グリセリドなど)と混合する。
【0078】
担体物質が固体である、鼻内投与に適合させた製剤処方は、例えば、20〜500ミクロンの範囲の粒度を有する粗粉末を含み、そしてこれは、鼻から吸い込むやり方で、即ち、鼻に近づけた粉末を含有する容器から鼻腔を介して急速吸入により投与される。液体を担体とした鼻用スプレー剤又は点鼻剤としての投与に適切な製剤は、水又は油中の活性成分溶液を包含する。吸入による投与に適合させた製剤処方は、種々のタイプのエアゾールでの加圧ディスペンサー、ネブライザー又は吹送器により生成させることができる、微粒状のダスト又はミストを包含する。式(I)の化合物は、吸入により投与してもよい。例えば、Inhale Therapeutic Systems, CAにより開発され、かつUS 5,997,848に記載される、エアゾール及び吸入方法は、送達される用量の吸収及び再現性を最適化することができる。
【0079】
膣内投与に適合させた製剤処方は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤として投与することができる。
【0080】
非経口投与に適合させた製剤処方は、酸化防止剤、緩衝剤、制菌剤及び溶質を含み、このため製剤が処置すべきレシピエントの血液と等張性になっている水性及び非水性無菌注射液;並びに水性及び非水性無菌懸濁液(懸濁媒体及び増粘剤を含むことができる)を包含する。本製剤は、単回投与又は頻回投与用容器、例えば、密封アンプル及びバイアルに入れて投与することができ、そして使用の直前に無菌担体液体、例えば、注射用水の添加だけを必要とするように、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。この処方により調製される注射用液剤及び懸濁剤は、無菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0081】
言うまでもないが、上記の特に言及された構成成分に加えて、本製剤はまた、特定のタイプの製剤に関して当該分野において通常の他の物質を含むことができる;即ち、例えば、経口投与に適した製剤は、香味料を含んでいてもよい。
【0082】
本発明の好ましい実施態様において、医薬組成物は、経口又は非経口投与され、更に好ましくは経口投与されるか、又は非経口投与には注射液として投与され、最も好ましくは経口投与される。特に、活性成分は、薬学的に許容しうる塩(酸及び塩基付加塩の両方を包含するものである)のような、水溶性の形で提供される。更には、本発明の活性成分及びその塩は、凍結乾燥してもよく、生じる凍結乾燥物は、例えば、注射用調剤を製造するために使用してもよい。示された調剤は、滅菌してもよいか、かつ/又は担体タンパク質(例えば、血清アルブミン)、滑沢剤、保存料、安定化剤、増量剤、キレート剤、酸化防止剤、溶媒、結合剤、懸濁剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を及ぼすため)、緩衝物質、着色料、香味料及び1種以上の更に別の活性物質、例えば、1種以上のビタミン類のような、助剤を含んでいてもよい。添加剤は、当該分野において周知であり、これらは、種々の製剤に使用される。
【0083】
本発明の医薬組成物を投与するためのそれぞれの用量又は用量範囲は、後述のAMPK活性に関連した疾患の症状を軽減する所望の予防又は治療効果を達成するために充分な高用量である。当然のことながら、任意の特定のヒトに対する具体的な用量レベル、投与の頻度及び期間は、利用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般健康状態、性別、食生活、投与の時間及び経路、排出の速度、薬物併用並びに具体的な治療が適用される特定の疾患の重篤度を包含する、種々の要因に依存するだろう。周知の手段及び方法を用いて、正確な用量は、日常の実験として当業者には決定することができる。
【0084】
「有効量」又は「有効用量」若しくは「用量」という用語は、本明細書において互換的に使用され、そして疾患又は病態に及ぼす予防的又は治療的に適切な効果を有する医薬化合物の量を意味する(即ち、この量は、組織、系、動物又はヒトに、例えば、研究者又は医師が求めるか又は望む、生物学的又は医学的応答を引き起こす)。「予防的効果」は、疾患の発症する尤度を低下させるか、又はそれどころか疾患の発病を防ぐ。「治療的に適切な効果」は、疾患の1つ以上の症状をある程度緩和するか、又は疾患若しくは病態に関連するか、若しくは原因となる1種以上の生理学的若しくは生化学的パラメーターを部分的若しくは完全に正常に戻す。更に、「治療有効量」という表現は、この量を投与していない対応する対象と比較して、以下の結果を有する量を意味する:治療の改善、治癒、疾患、症候群、症状、病状、障害又は副作用の予防又は排除、あるいはまた疾患、病状又は障害の進行の軽減。「治療有効量」という表現はまた、正常な生理機能を増進させるのに有効な量を包含する。
【0085】
製剤処方は、投与単位当たり既定量の活性成分を含む、投与単位の形で投与することができる。製剤中の予防的又は治療的活性成分の濃度は、約0.1〜100重量%で変化してよい。好ましくは、式(I)の化合物又は薬学的に許容しうるその塩は、約0.02〜1000mg、更に好ましくは0.5〜700mgの間の用量で投与される。更に最も好ましくは、式(I)の化合物の単位用量は、1〜200mgの該化合物を含む。
【0086】
治療有効量の本発明の化合物は、担当医又は獣医が多数の要因(例えば、その動物の年齢及び体重、処置を要する正確な症状、症状の重篤度、製剤の性質及び投与の方法)を考慮して最終的に決定すべきであるが、AMPK介在性疾患、特に腎臓肥大及び/又は糖尿病性腎症の処置のための本発明の化合物の有効量は、一般に1日当たり0.02〜200mg/kgレシピエント(哺乳動物)の体重の範囲、そして特に典型的には1日当たり12.5〜150mg/kg体重の範囲、更に好ましくは1日当たり25〜100mg/kg、最も好ましくは1日当たり40〜60mg/kg、非常に好ましくは1日当たり50mg/kgである。即ち、体重70kgの成体哺乳動物の1日当たりの実際の量は、通常1.4〜14,000mgの間であり、そしてこの量は、1日1回用量として、又は通常は、1日の総用量が同一になるように1日当たり一連の部分用量(例えば、2、3、4、5又は6分割など)にして投与することができる。塩若しくは溶媒和物又はその生理学的に機能性の誘導体の有効量は、本発明の化合物それ自体の有効量の割合で決定することができる。同様の用量は、本明細書に言及される他の症状の処置にも適していると考えられる。
【0087】
したがって、本発明の処置方法は、ヒトの医学及び獣医学において利用することができる。本発明により、式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩は、AMPK活性に関連する疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニターに適している。ここで、本化合物は、疾患の発病前又は後に1回又は数回の治療行為で投与することができる。前述の本発明の使用の医薬品は、特に治療処置のために使用される。モニターは、本化合物が、例えば、AMPK関連疾患の応答を強化し、かつAMPK関連疾患の病因及び/又は症状を完全に絶やすために、好ましくは特定の間隔で投与される、ある種の処置と考えられる。同一の組成物又は異なる組成物のいずれかを適用することができる。この医薬はまた、疾患の発症する尤度を低下させるか、又はそれどころかAMPK活性に関連する疾患の開始を前もって防ぐか、又は発生及び継続する症状を処置するためにも使用することができる。本発明の意味するところでは、予防的処置は、対象が前述の生理的又は病的状態の任意の前提条件(家系による傾向、遺伝的欠陥、又は既往症など)を持つならば望ましい。
【0088】
式(I)の化合物の適用が関係する疾患は、糖尿病、前糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、肥満症、腎臓肥大、腎不全、糖尿病性腎症、神経障害、糖尿病性網膜症、癌、炎症、心血管疾患及びアルツハイマー病の群から選択される。本発明のテトラヒドロトリアジン化合物はまた、加齢の生理的及び/又は病的状態の予防若しくは治療処置及び/又はモニターにも有用である。しかし、本発明のある実施態様において、以下の糖尿病、前糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、肥満症、神経障害、糖尿病性網膜症及び/又はアルツハイマー病の疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニターは、AMPK活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広められる疾患という表現により保護を得ようとする事項からは除外されよう。具体的には、請求項1に定義される一般式(I)の化合物全体が処置に適用されるならば、ディスクレーマーが正当になるが、一方で特定の化合物、好ましくは5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン又はその誘導体についてはディスクレーマーは無効である。結果として、疾患が、メタボリック症候群、腎臓肥大、腎不全、糖尿病性腎症、癌、炎症、心血管疾患及び加齢の群から選択されることが、本発明の好ましい実施態様であり、そして疾患が、腎臓肥大及び糖尿病性腎症の群から選択されることが、非常に好ましい実施態様である。
【0089】
インスリン抵抗性は、保健制度にとって莫大な影響を持つ、一般市民において非常に行き渡った症状となっている。これは、インスリンの正常な作用への低下した不適正な身体反応と定義される。インスリン抵抗性は、心血管疾患及びII型糖尿病(T2DM)の発症に対する重要なリスク因子である。糖尿病は、多数の病的兆候を持つ慢性疾患である。糖尿病には、脂質及び糖代謝の障害並びに循環系障害が併発する。更に、インスリン抵抗性には、まとめて示されると、メタボリック症候群又はシンドロームXと呼ばれる、種々の心血管リスク因子(例えば、肥満症、脂質異常症、高血圧及び血液凝固障害)が合併する。よって、インスリン抵抗性症候群(シンドロームX)は、特にインスリンの作用の低下を特徴とし(Presse Medicale 26, 671 (1997))、上述の多くの病状、特に糖尿病、更に特定してインスリン非依存性糖尿病に関与しているが、更にある種の大血管合併症又は細小血管合併症にも関与している。今や、インスリン抵抗性は、メタボリック症候群の根底にある統一的病因であろうという無視できない証拠が存在している(Turner & Hellerstein, Curr Opin Drug Discovery & Develop 8, 115 (2005))。
【0090】
本発明の更に好ましい実施態様において、疾患は、腎臓肥大及び/又は糖尿病性腎症である。「肥大」という医学的適応は、臓器のサイズの増大又は組織の選択領域の増大である。細胞数を増加させる細胞分裂により発生するが、そのサイズは同じままである、過形成とは区別すべきであり、肥大の方は、数が同じままであるのに細胞のサイズの増大により発生する。本発明において、腎臓肥大は、特に糖尿病と併せて考えられる、即ち、インスリン欠乏性糖尿病、例えば、インスリン依存性糖尿病(IDDM)の初期のような糖尿病により誘導されるものである。
【0091】
本発明の最も好ましい実施態様において、疾患は、糖尿病性腎症である。該医学的適応は、主として非炎症性に引き起こされる腎臓及び腎機能の疾患に関連する。本発明の範囲における難しいサブタイプは、糖尿病性腎症(nephropatia diabetica)に反映されるが、この疾患はまた、Kimmelstiel-Wilson症候群及び毛細血管間糸球体腎炎(intercapillary glomerulonephritis)としても知られている。糖尿病性腎症は、最も多く見られる腎臓疾患末期の原因である。これは、腎臓糸球体中の毛細管の血管症により引き起こされ、そしてネフローゼ症候群及び結節性糸球体硬化症を特徴とする進行性の腎臓疾患である。これは、長年にわたる糖尿病に起因し、そして多くの西洋諸国における透析の主因である。更に詳細には、ポドサイトの消失が糸球体病変の開始をもたらす初期の現象である。ポドサイトのアポトーシスの増加に先立ち、タンパク尿、平均糸球体面積及びメサンギウム面積の増加、更には糸球体密度及びシナプトポディン含量の降下が起こる。高血糖症により誘導されるROS産生もまた、ポドサイトのアポトーシス及び枯渇への関与が考えられる。
【0092】
本発明はまた、AMPK活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広まる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニターのための、少なくとも1種の本発明に定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩の使用に関する。更には、本発明は、AMPK活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広まる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニター用の医薬の製造のための、少なくとも1種の本発明に定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩の使用に関する。この医薬は、前もってAMPK活性に関連する疾患の開始を防ぐため、又は発生及び継続する症状を処置するために使用することができる。本発明が関係している疾患は、好ましくは腎臓肥大及び/又は糖尿病性腎症である。更に、目的関連化合物に関する本明細書の先の教示は、該疾患の予防及び治療用の医薬の製造のための、本化合物及びその塩の使用に制限されることなく、正当かつ適用可能である。
【0093】
本発明の目的はまた、AMPKを活性化するための、少なくとも1種の本発明に定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩の使用である。本発明の意味するところでは、「活性」は、生物学的状況において、即ち、細胞内でAMPKにより遂行される機能又は一連の機能である。「活性化」とは、関与する生命体の測定方法及び現実により引き起こされる、正常統計範囲内で初期の測定値を超えるパラメーター値のことをいう。活性の増大は、AMPK合成のアップレギュレーション、存在するAMPKの修飾又は両方の機序の組合せに基づきうる。AMPK収量は、転写及び/又は翻訳のレベルで合成を促進することにより、特に増大させることができる。更には、AMPK遺伝子又はその遺伝子産物は、AMPK発現の調節成分及び/又はAMPK発現に関係するシグナル伝達経路を操作することによりアップレギュレートすることができる。しかし、存在するAMPKタンパク質を修飾すること、特にAMPKリン酸化を増大させることが好ましい。
【0094】
AMPK活性は、好ましくは少なくとも30%、更に好ましくは少なくとも2倍、最も好ましくは少なくとも3倍、そして非常に好ましくは少なくとも4倍増強される。このような増大は、好ましくは、式(I)の化合物が5〜500mgの用量範囲で、更に好ましくは15〜200mg/kgの用量範囲での投与に提供される場合に得られる。使用は、インビトロ又はインビボのモデルのいずれかで遂行することができる。インビトロの使用は、好ましくは腎臓肥大及び/又は糖尿病性腎症、更に好ましくは糖尿病性腎症に罹患したヒトの試料に適用される。例えば、幾つかの式(I)の化合物を試験すると、哺乳動物対象の処置に最も適しているこの化合物を選択することができる。選択されたテトラヒドロトリアジン化合物のインビボの投与速度は、有利にはそれぞれインビトロのデータに関する特定の細胞の糖尿病性腎症の重篤度に対して前もって調整する。したがって、治療効果は、著しく増強される。更に、本発明の目的関連化合物に関する本明細書の先の教示は、都合が良ければAMPKの活性化のための本化合物の使用に制限されることなく、有効かつ適用可能であると考えられる。
【0095】
本発明の別の目的は、グルコース恒常性を強化するために本明細書に定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩を使用することである。上述のように、糖新生酵素の発現低下は、肝臓のグルコース産生を減少させ、グルコース恒常性全体を改善し、そして脂質代謝における重要な酵素の直接阻害及び/又は発現低下が、グルコース取り込み及び脂肪酸酸化を増加させ、この結果、グルコース恒常性の改善と、筋細胞内トリグリセリド蓄積の減少に起因してインスリン作用の改善とをもたらす。
【0096】
本発明の更に別の目的は、ポドサイト病の軽減のために本明細書に定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩を使用することである。ポドサイトは、腎臓の内臓上皮の細胞であり、これは糸球体濾過障壁の決定的に重要な成分を形成する。これらの寄与は、サイズ選択性であり、そしてこれらは、巨大な濾過表面を維持する。「ポドサイト病」という用語は、該ポドサイトの機能障害のことをいい、これは、タンパク尿、ROS産生の増加及び/又はシナプトポディン含量の減少と言い換えられ、そして糸球体細胞(ポドサイト)のアポトーシスに終わる。式(I)の化合物は、特に単一細胞、培養細胞、組織、臓器又は哺乳動物の細胞系(それぞれ糖尿病を持つ)において、アポトーシス速度が遅延、減少又は停止するか、あるいは更に増殖が誘導されるほどに、ポドサイト病の挙動を改善することが明らかになった。シナプトポディン及び/又はラミニンの糸球体発現は、ポドサイト病を評価するのに好ましいパラメーターを表しており、そして単一又は両方のパラメーターの変化は、シナプトポディンの糸球体発現は増加し、かつ/又はラミニンの糸球体発現は低下するというように、ポドサイト病の軽減を示す。特に、シナプトポディン発現は、好ましくは少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも20%、そして最も好ましくは少なくとも30%増加する。本発明の非常に好ましい態様において、シナプトポディンの糸球体発現は、回復する、即ち、健常な細胞系と同じレベルにある。本発明の目的関連化合物及びAMPKを活性化するためのその使用に関する、本明細書の先の教示は、シナプトポディン発現の増加と同調したポドサイト病の軽減のための本化合物の使用に制限されることなく、目的に合えば、有効かつ適用可能であると考えられる。
【0097】
本発明の更に別の目的は、活性酸素種(ROS)の産生を低下させるための、本明細書に定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩の使用である。本発明の好ましい実施態様において、ROS産生は、少なくとも10%、更に好ましくは少なくとも20%、最も好ましくは少なくとも30%、そして非常に好ましくは少なくとも40%低下する。本発明の目的関連化合物及びその使用に関する本明細書の先の教示は、ROS産生を低下させるための本化合物の使用に制限されることなく、目的に合えば、有効かつ適用可能であると考えられる。
【0098】
更に、本発明は、AMPK活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広められる疾患を処置する方法として実施することができるが、ここで有効量の少なくとも1種の本発明に定義される式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩が、このような処置を必要としている哺乳動物に投与される。処置される哺乳動物は、特にヒトである。好ましい処置は、経口又は非経口投与である。式(I)のテトラヒドロトリアジン化合物を用いる、腎臓肥大及び/又は糖尿病性腎症、好ましくは糖尿病性腎症に罹患している患者、又はAMPKの阻害に基づくこのような疾患を発症するリスクを持つヒトの処置が、腎臓損傷の進行を遅延させ、これらの個体における関連する合併症を制御する。このような改善は、好ましくは式(I)の化合物が、体重1kg当たり25〜100mgの用量範囲、更に好ましくは体重1kg当たり50mgで投与される場合に得られる。別の好ましい態様では、トリアジン化合物5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン、更に好ましくは5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩が様々な用量で使用される。本発明の先の教示及びその実施態様は、目的に合えば処置の方法に制限されることなく、有効かつ適用可能である。
【0099】
本発明の更に別の目的は、ポドサイト病のバイオマーカーとしてのシナプトポディンの使用である。
【0100】
本発明はまた、ポドサイト病を軽減する化合物のスクリーニング方法であって、
− そのポドサイトがシナプトポディンを発現できる、細胞系又はその試料を準備する工程(ここで、この系は、単一細胞、培養細胞、組織、臓器及び哺乳動物の群から選択される)、
− 少なくとも系の一部をスクリーニングすべき化合物と共にインキュベートする工程、
− シグナル又はシグナルの変化の量を系中のシナプトポディン濃度と相互に関連付ける工程、
− シナプトポディン濃度を、非アポトーシス及び/又はアポトーシスのポドサイトの対照細胞系の別のシナプトポディン濃度と比較することにより、ポドサイト病のレベルを検出する工程、並びに場合により
− ポドサイト病を軽減する化合物の、ampk遺伝子若しくはそのレギュレーター遺伝子との、又は該遺伝子のいずれかの産物との、又は該遺伝子若しくはその遺伝子産物のいずれかを含むシグナル伝達経路の成分との特異的相互作用を検出する工程
を含む方法を教示している。
【0101】
第1段階で、細胞系を準備する。この細胞系は、この対象が細胞を含むという条件で任意の対象であると定義される。したがって、この細胞系は、単一細胞、培養細胞、組織、臓器及び哺乳動物の群から選択することができる。細胞系の範囲はまた、このような生物学的存在、即ち、組織、臓器及び哺乳動物の試料の一部を含む。当然のことながら、上述の序列の各細胞系は、それぞれ以下の系の試料を表す。特に、細胞試料は、試験すべき哺乳動物からインビボ又はインサイチューで採取される。細胞試料の回収は、適正な医療行為に従う。生物学的試料は、任意の種類の生物学的種から採取できるが、試料は、特に実験動物又はヒト、更に好ましくはラット、マウス又はヒト、最も好ましくはヒトから採取される。本発明において、細胞系はまた、生物学的流体を含み、そしてここで、体液の試料は、好ましくは血液、血清、血漿、唾液又は尿よりなる。また、バイオプシーにより、特に病気の位置の近くで採取される組織試料を獲得することも好ましい。生物学的試料は、任意の組織(子宮、下垂体、肝臓、脳、結腸、胸部、脂肪組織など)に由来してもよい。試料は、精製することにより妨害物質(水素結合の形成のインヒビターなど)を除去することができる。
【0102】
細胞試料とは、シナプトポディンを発現できるという条件で、培養下の単離状態で又は細胞株としてのいずれかの、任意のタイプの初代ポドサイト又は遺伝子操作ポドサイトのことをいう。シナプトポディンは、ポドサイト及び終脳シナプス後肥厚部最初のサブセットに局在している新しい分類のアクチン結合タンパク質を表す。本発明の別の態様は、ポドサイト病のバイオマーカーとしてシナプトポディンを使用することである。シナプトポディンの低下は、ポドサイト機能の消失を明白に示している。このような知見は、本発明のスクリーニング法の基礎を形成する。
【0103】
当業者には明らかであるように、本発明は、完全長タンパク質のシナプトポディンに限定されると解釈すべきでない。シナプトポディンの生理学的又は人為的断片、シナプトポディンの二次修飾物、シナプトポディンの種依存的変性物、更には対立遺伝子多型もまた、本発明に包含される。これに関連して「対立遺伝子多型」は、単一遺伝子座に存在しうる、2種以上の異なる形の遺伝子又はDNA配列の一方の遺伝子産物を表すものと理解される。人為的断片は、好ましくは、合成により、又は組換え手法により産生されるペプチドを包含する。このような断片は、有利には免疫アッセイにおける標準物質として使用してよい。好ましくは、完全長シナプトポディン又はこのマーカーの生理学的変種は、本発明の方法で検出される。また結果として、当然のことながら、同じ機能を有するシナプトポディンの変種、変異体、部分又は相同タンパク質配列は、定義並びに保護の範囲に包含される。元の配列とその誘導体の間の変性の程度は、基質認識及びメチオニン切断の要求により不可避的に限定される。好ましくは、相同性は、少なくとも85%、更に好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%に達する。可能性ある変性は、少なくとも1個のアミノ酸の欠失、挿入、置換、修飾及び付加、又は別のタンパク酸との融合を含む。遺伝子操作細胞は、対応する遺伝子又はその一部を内部に持つ適切なベクターでのトランスフェクションにより、シナプトポディンタンパク質を発現することができる。好ましくは、この組換え細胞は、真核生物由来である。
【0104】
細胞試料は、凍結するなどのように貯蔵するか、一定期間培養するか、又は直ちに第2段階に付す。スクリーニングすべき化合物と共にインキュベートする前に、細胞試料は、多数の部分に分割する。少なくとも2つの部を準備する;一方はスクリーニングに使用し、もう一方は対照とする。好ましくは、スクリーニング用の部の数は、対照の部の数を超える。通常、多数の部は、ハイスループット・スクリーニングに付す。
【0105】
本明細書において使用されるとき、「ポドサイト病を軽減する化合物」は、少なくともポドサイトのアポトーシスを遮断する物質であって、由来が内因性であろうと外因性であろうと任意の因子、物質、化合物のことをいい、AMPKと結合及び相互作用し、それによってAMPKのある種の生物学的作用を阻止することができる。本化合物は、標的分子と相互作用できる、生物学的及び/又は化学的構造よりなる。ここで、AMPKシグナル伝達の任意の成分を「標的分子」と考えるべきであり、これは、AMPKタンパク質標的に限定されず、そのコード遺伝子若しくは任意の遺伝子産物、レギュレータータンパク質、又は該遺伝子若しくは遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の成分も含んでよい。結果として、化合物の特異的相互作用は、単なるターゲッティング又は細胞機能の変性の誘導のいずれかを伴うことができるか、あるいは両方の効果を同時に包含することさえある。
【0106】
本発明の方法でスクリーニングすべき化合物は、何ら制限を受けない。特に、本化合物は、核酸、ペプチド、炭水化物、ポリマー、50〜1000Daの間の分子量を有する低分子、及びタンパク質の群から選択される。これらの化合物は、しばしばライブラリーで利用可能である。単一化合物を細胞試料の特異的な部分内でインキュベートするのが好ましい。しかしまた、少なくとも2種の化合物を1つの部分内でインキュベートすることにより、化合物の共同的効果を調査することも可能である。更に細胞の別の部分は、化合物の非存在下で同時にインキュベートする。「インキュベーション」という用語は、化合物及び/又は標的の種類に依存する特異的な期間、化合物を細胞と接触させることを意味する。インキュベーション過程はまた、種々の他のパラメーター、例えば、細胞型及び検出の感度にも依存し、この最適化は、当業者には知られている日常的手順に従う。インキュベーション手順は、化学変換なしに実現できるか、又は生化学反応を伴うかもしれない。化学溶液の添加及び/又は物理的手段(例えば、熱の影響)の適用により、試料中の標的構造の接近性を改善することができる。特異的なインキュベーション生成物が、インキュベーションの結果として形成される。
【0107】
次の段階では、本発明の意味するところの有効化合物の同定は、シナプトポディンの存在を測定することにより、間接的に実行する。この測定は、特定の時点で実行して、実験開始時のシグナル強度及び陽性/陰性対照と関連付ける。対照系は化合物と共にインキュベートしない(陰性対照)か、又は対照系はAMPK活性化作用を持たない標準化合物(陰性対照)若しくはAMPK活性化作用を有する標準化合物(陽性対照)と共にインキュベートするかのいずれかである。この活性は、タンパク質濃度の変化により明らかになる。それぞれの処理の間で対比較を行う。対比較は、既定の処理条件下の既定バイオマーカーのシナプトポディンのタンパク質濃度データを、第2の処理条件下のこのタンパク質のタンパク質濃度データと比較したものである。比較は、既知で市販のプログラムを活用して適切な統計手法を用いて実行する。
【0108】
検出は、無傷の細胞を最適な検出方法に適用することにより実行できる。しかし、細胞抽出液を最初に準備するのが好ましい。細胞溶解は、浸透圧ショックを引き起こして細胞膜に穿孔しうる、適切な周知の溶解緩衝液中で実行することができる。細胞構造の安定性はまた、ボールミル、フレンチプレス(加圧型)、超音波などのような機械力により、それぞれ細胞壁及び細胞膜の酵素的分解により、及び/又はテンサイド(tensides)の作用により破壊することができる。このバイオマーカーは、更に精製して妨害物質を除去できるか、又はバイオマーカーのシナプトポディンは試料中で濃縮することができる。下流の処理及び/又は濃縮は、好ましくは沈殿、透析、ゲル濾過、ゲル溶出、又はクロマトグラフィー(HPLC又はイオン交換クロマトグラフィーなど)の方法により実行する。より充分な収量を得るために幾つかの方法を組合せることが推奨される。
【0109】
シナプトポディン阻害を検出するために適切な試験法は、当業者には知られているか、又はありふれた方法として容易に設計することができる。多くの異なるタイプのアッセイ法が知られており、その例は後述される。本発明のアッセイ法は、遺伝子発現を検出及び/又は定量するのに適した任意のアッセイ法であってよいが、シナプトポディンは、好ましくはシナプトポディンと特異的に相互作用する物質を用いて測定する。「特異的物質」という用語は本明細書において使用されるとき、信頼性のある結合を確保するためにシナプトポディンに対して高い親和性を持つ分子を含む。この物質は、好ましくはこのタンパク質の部分に対して特異的である。このような部分は、特定の機能の発現にとって充分なこれらの範囲の条件、即ち、認識のための構造決定基の供与を表す。全ての短縮体は、独特の認識を保存する要求により不可避的に限定される。しかし、この遺伝子産物の部分は、非常に小さいものでよい。好ましくは、この物質は、選択された単一標的と排他的かつ方向性を持つ相互作用を保証するために単一特異性である。
【0110】
本発明のタンパク質又はそのN末端部分の認識は、アミノ酸配列の一次、二次及び/又は三次構造レベルでの物質との特異的相互作用により実現することができる。本発明に照らして、「認識」という用語は、特に限定されないが、特異的物質と標的との間の任意のタイプの相互作用、特に共有若しくは非共有の結合若しくは会合(共有結合など)、疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン対、水素結合、リガンド−受容体相互作用、エピトープと抗体結合部位の間の相互作用、ヌクレオチド塩基対形成などに関する。このような会合はまた、ペプチド、タンパク質又は他のヌクレオチド配列のような他の分子の存在を包含する。
【0111】
特異的物質は、認識、結合及び相互作用が可能になるように、標的分子と相互作用できる生物学的及び/又は化学的構造よりなる。特に、この物質は、核酸、ペプチド、炭水化物、ポリマー、50〜1,000Daの間の分子量を有する低分子及びタンパク質、好ましくは核酸及びタンパク質の群から選択される。タンパク質又はペプチドは、更に好ましくは、抗体、サイトカイン、リポカリン、受容体、レクチン、アビジン、リポタンパク質、糖タンパク質、オリゴペプチド、ペプチドリガンド及びペプチドホルモンよりなる群から選択される。最も好ましくは、特異的物質として抗体が使用される。非常に好ましくは、抗体クローンG1D4が、分化したポドサイト(糸球体臓側上皮細胞)を認識する。核酸は、更に好ましくは1本鎖若しくは2本鎖のDNA若しくはRNA、プライマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、DNA酵素、アプタマー及び/又はsiRNA、あるいはこれらの一部である。核酸は、場合によりホスホロチオエートDNA、ロックト核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)又はSpiegelmer(商標)として修飾されていてもよい。この特異的物質は、信頼性のある検出を確保するために、充分な感度及び特異性を示す。ある特異的物質は、その対応する標的分子に対して少なくとも10−7Mの親和性を有する。この特異的物質は、好ましくはその標的分子に対して10−8Mか、更に好ましくは10−9Mの親和性を有する。当業者であれば理解しているとおり、特異的という用語は、試料中に存在する他の生体分子が、シナプトポディンに対して特異的な物質に有意に結合しないことを示すために使用される。好ましくは、標的分子以外の生体分子への結合のレベルは、標的分子の親和性のわずか10%、更に好ましくはわずか5%以下の結合親和性という結果になる。最も好ましい特異的物質は、親和性と更には特異性に関する上記の最小基準の両方を満たすであろう。
【0112】
特異的物質は、標識することができるが、その際、標識付けは、それらの固有の特色及び適用される検出方法、即ち、要求感度、結合の容易さ、安定性の要求、並びに利用可能な器具及び処分設備に依存する。標識方法は、標識が容易に検出される限り、特に限定されない。「標識された特異的物質」は、リンカー若しくは化学結合を通して共有的に、又はイオン、ファンデルワールス、静電、疎水性相互作用若しくは水素結合を通して非共有的にのいずれかで標識に結合しているため、シナプトポディンの存在が、バイオマーカーに結合した標識の存在を検出することにより検出できる。適用される方法は、当業者には周知のものである。本発明の適切な検出方法の好ましい例は、ルミネセンス、特に蛍光、更にはVIS発色及び/又は放射活性放出である。
【0113】
本発明の細胞系が、種々の濃度の有望なAMPKアクチベーターと共にインキュベートされるならば、アクチベーターの存在下で観測される放出されるシグナル又はシグナルの変化の量は、化合物により受ける活性の変化を示している。シグナルの変化は、シグナル強度及び/又はシグナル寿命の変化である。シグナルの変化がシグナルの低下又は上昇に至るかどうかは問題でない。いずれかのシグナルの消失さえシグナルの変化と見なされる。シグナルの量又は変化のそれぞれは、次に試料中のアクチベーターの濃度に関連付けることができる(即ち、較正曲線により一致濃度の計測ができる)。好ましくは、較正曲線は、UV/VIS発色又はルミネセンスを用いるならば、Lambert-Beer方程式に基づく。続いて、(存在するならば)生成物複合体中のシナプトポディンのモル比を考慮することにより、バイオマーカーの濃度を算出する。好ましくは、特異的物質及びシナプトポディンのモル比は、1:1である(これは、例えば、抗体/シナプトポディン複合体に存在する)ため、インキュベーション生成物のモル濃度は、シナプトポディンのモル濃度に対応する。
【0114】
化合物の効力は、試料中のシナプトポディンの濃度を、非アポトーシス細胞及び/又はアポトーシス細胞のいずれかの既知のシナプトポディン濃度レベルと比較することにより診断する。当然のことながら、既知の濃度は、統計的に立証されているため、それぞれあるレベル又は範囲を表す。任意の測定濃度は、非アポトーシス細胞のシナプトポディン濃度レベルとは異なるか、かつ/又はアポトーシス細胞のシナプトポディン濃度レベルに等しく、これは、試験細胞試料の異常を示す。ポドサイト病の阻害を検出するためには、アポトーシス細胞の遺伝子産物濃度レベルより高い濃度を測定することが望ましい。この方法を用いて、本発明者らは、マイクロモル以下あるいはナノモル濃度に対する感度を証明した。較正プロットにより、本方法は、数桁にわたるダイナミックレンジに適用できることが明らかになった。
【0115】
ポドサイト病を軽減することが明らかになったこれらの化合物の中で、それぞれ又は幾つかの代表は、更なる分析のために選択される。本発明の好ましい実施態様において、スクリーニング方法は、別の工程を伴うが、この工程は、化合物とampk遺伝子若しくはその遺伝子産物との、又は該ampk遺伝子を調節するための関連レギュレーター遺伝子若しくはその遺伝子産物との、特にレギュレータータンパク質、又は該遺伝子若しくはその遺伝子産物のいずれかを含むシグナル伝達経路の成分との特異的相互作用の検出を含む(ただし、上記相互作用が、アポトーシスの低下あるいは消失にさえつながるならば)。AMPKタンパク質標的への化合物の特異的結合を検出するのが好ましい。好ましくは、対照に対して最も大きな不一致を示す化合物が選択される。これらは、別のシグナル伝達(本発明のAMPKタンパク質標的又はその関連分子への結合によって開始しない)を排除するために特異性に関して分析し、そして更に有害反応又は連鎖経路による他の影響(更に別の標的構造への同時ドッキングが生じるならば)を防止するために、このような交差反応性に関して試験する。特異的及び/又は単一特異的結合を検出するための幾つかの方法は、当該分野において知られている(ゲルシフト実験、Biacore測定法、X線構造解析、競合結合試験など)。スクリーニング方法の好ましい実施態様において、本発明の標的構造に対する物質の単一特異的結合が検出される。
【0116】
本発明はまた、糖尿病性腎症のインビトロ診断方法であって、
− 哺乳動物から採取したポドサイトの試料をシナプトポディンに特異的な物質と共にインキュベートする工程、
− 特異的インキュベーション生成物を測定する工程、
− シグナル又はシグナルの変化の量を試料中のシナプトポディン濃度と相互に関連付ける工程、並びに
− シナプトポディン濃度を、非アポトーシス及び/又はアポトーシスのポドサイトの試料中の別のシナプトポディン濃度と比較することにより、糖尿病性腎症を検出する工程(ここで、糖尿病性腎症の病期とシナプトポディン濃度とは反比例する)
を含む方法に関する。
【0117】
現在、診断は、糖尿病のヒトの日常的尿検査で過剰な尿中タンパク質が示されるとき疑われる。微量アルブミン尿の最初期の兆候は、従来の尿検査ストリップでは検出できないが、これには24時間の骨の折れる尿収集とこれに続くアルブミン測定が必要である。本発明の方法を用いることにより、消失するポドサイトの誘因を糖尿病性腎症の開始と相互に関連付けられ、これによって初期診断が可能になる。反比例は、線形又は非線形関数のいずれかにしたがってもよい。更には、化合物のスクリーニング方法に関する先の教示は、インビトロの糖尿病性腎症の診断方法に制限されることなく、目的に合えば、有効かつ適用可能である。
【0118】
本発明の範囲において、式(I)のテトラヒドロトリアジン化合物を含む有望な薬物は、AMP活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広められる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニターのために初めて提供される。本発明は、一般的テトラヒドロトリアジン化合物及び特に5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンの、糖尿病により誘導される本疾患に及ぼす、更には高血糖症により誘導される機能に及ぼすインビボの効果の成功評価に取り組む。更に詳細には、この疾患は、糖尿病の初期における腎臓肥大及び/又は長年にわたる糖尿病に起因する糖尿病性腎症であり、後者は、それによる腎臓疾患の末期を表している。本発明の化合物の投与の結果として、AMPKは、著しく活性化する。式(I)のテトラヒドロトリアジン化合物は、AMPKの間接的アクチベーターである。1型(STZラット)及び2型(db/dbマウス)の糖尿病モデルにおけるmTOR活性化は、腎臓肥大を誘導するが、一方AMPK活性化は、mTOR活性化を反転させそして腎臓肥大を阻害する。よって、この効果は、患者の糖尿病により誘導される腎臓肥大の処置に使用することができる。更には、糸球体細胞のアポトーシス(例えば、STZラットで証明される)に先立ち、タンパク尿の増加及びシナプトポディン含量の減少(言い換えるとポドサイトの機能障害)が起こる。シナプトポディンの低下は、糸球体病変を引き起こすポドサイト機能の消失を示すことが明らかになっているため、該バイオマーカーは、微量アルブミン尿検査及び糖尿病性腎症のインビトロの初期診断のための従来法よりも優れている。シナプトポディンの糸球体含量は、糖尿病ZDFラットにおいて典型的に示されるように、本発明のテトラヒドロトリアジン誘導体の影響により少なくとも部分的に又は更には完全に回復し、そしてポドサイト病は改善する。よって、式(I)の該化合物は、有利には両方のタイプの糖尿病患者の糖尿病性腎症の処置に使用することができる。このようなテトラヒドロトリアジン誘導体での処置は、ROS産生の低下には特に有益である。本化合物の使用は、症状の直接かつ即時の軽減をもたらす、広範囲の治療のための見込みある新規なアプローチである。その効果は、AMPK活性から生じる病気と効率的に闘うために特に有益である。本化合物及びその誘導体は、高い特異性及び安定性;低い製造コスト並びに便利な取り扱いを特徴とする。これらの特色は、再現性ある作用(ここでは、交差反応性の欠如及び有害作用が包含される)、及びその対応する標的構造との信頼性のある安全な相互作用の基礎を形成する。
【0119】
本明細書に引用される全ての参考文献は、引用例として本発明の開示に取り込まれる。
【0120】
当然のことながら、本発明は、本明細書に記載される特定の方法、特異的物質、使用及びキットに限定されない(このような事柄は当然変化しうるため)。また当然のことながら、本明細書に使用される用語は、特定の実施態様を記述することだけを目的としているのであって、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、添付の請求の範囲によってのみ定義される。添付の請求の範囲を含め、本明細書において使用されるとき、「a」、「an」及び「the」のような単語の単数形は、文脈に別段の明示がない限り、その対応する複数対象を包含する。即ち、例えば、「a salt」への言及は、単一又は幾つかの異なる塩を包含し、逆の場合もまた同じであり、そして「a method」への言及は、当業者には知られている均等な工程及び方法などへの言及を包含する。別段の定義がない限り、本明細書に使用される全ての技術及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者が共通に理解しているのと同じ意味を有する。
【0121】
本発明を実施又は試験する際に、本明細書に記載されるのと類似又は均等な方法及び材料を使用することができるが、適切な実施例は後述される。以下の実施例は、説明の目的で提供されるものであって、限定の目的ではない。実施例では、(常に、実質上)汚染活性のない標準的試薬及び緩衝液が使用される。実施例は、詳しくは明確に立証された特徴の組合せに限定されないと解釈すべきであるが、例示された特徴は、発明の技術的問題が解決されれば、再び無制限に組合せることができる。
【0122】
以下の図面及び表において、化合物5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンは、EMD008と略記される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、様々な用量のメトホルミン及び5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンでそれぞれ肝細胞を処理後の定性的AMPK活性化を示す。肝細胞におけるAMPK活性化は、ゲル電気泳動像で与えられる。補足図は、肝細胞におけるAMPK活性化の程度を定量的に視覚化している。
【図2】図2は、様々な用量の5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンで筋細胞を処理後の定量的AMPK活性化を示す。
【図3】図3は、それぞれ5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン及びプラセボで処理後のZDF肥満ラットの糸球体におけるシナプトポディン標識を示す。
【図4】図4は、5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンの経口投与後のラット肝臓におけるROS産生を示す。
【0124】
実施例1:4−アミノ−3,6−ジヒドロ−2−ジメチルアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩の調製
上記及び下記において、全ての温度は℃で与えられる。以下の実施例において、「従来の処理」は、必要ならば水を加え、必要ならば最終生成物の構成に応じてpHを2〜10の間の値に調整し、混合物を酢酸エチル又はジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥して溶媒を留去し、そして生成物をシリカゲルのクロマトグラフィーにより、及び/又は結晶化により精製することを意味する。
【0125】
A) 比較実験: イソブタノール500ml中のメトホルミン塩酸塩250.2g、アセトアルデヒドジエチルアセタール213.6g及びトルエン−4−スルホン酸一水和物12.5gの混合物を40時間加熱還流した。ある程度の溶媒を蒸留により除去した。この混合物を10℃に冷却して、白色の沈殿物を分離することにより、4−アミノ−3,6−ジヒドロ−2−ジメチルアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩224.7g(77.4%)を得た。
【0126】
B) 本発明の合成: イソブタノール2405.9g中のメトホルミン塩酸塩1002.6g、パラアルデヒド359.1g及びトルエン−4−スルホン酸一水和物51.6gの混合物を6時間加熱還流した。ある程度の溶媒を蒸留により除去した。この混合物を12℃に冷却して、白色の沈殿物を分離することにより、4−アミノ−3,6−ジヒドロ−2−ジメチルアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩953.8g(81.4%)を得た。
【0127】
C) 本発明の合成: イソブタノール237.8ml中のメトホルミン塩酸塩100.1g、パラアルデヒド36.5g及びDowex(商標)DR-2030 4gの混合物を6時間加熱還流した。次に触媒を濾別して、ある程度の溶媒を蒸留により除去した。溶液の残りを10〜15℃に冷却して、白色の沈殿物を分離することにより、4−アミノ−3,6−ジヒドロ−2−ジメチルアミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン塩酸塩93.5g(80.7%)を得た。
【0128】
実施例2:AMPK活性化
5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンは、AMPKの有意な活性化を示した。この活性化は、肝細胞(図1)及び筋細胞において観測した。メトホルミン及び5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンは、肝細胞ではAMPKの類似のAMPK活性化を示した。筋細胞では、5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンはAMPK活性を有意に上昇させた(図2)。この作用はまた用量依存的であり、メトホルミンの作用よりも更に強かった。
【0129】
実施例3:シナプトポディン発現含量
シナプトポディン(G1D4)は、モノクローナルマウスIgG抗体(#61094、Progen(商標))で検出した。各ラットについて、2つの連続した切片から40個の糸球体を無作為に選択した。メサンギウム細胞内のシナプトポディン(G1D4)陽性面積は、×20(x/yスケール:1ピクセル=0.36×0.36μm)で切片を走査し、そして糸球体の中心部に2400μmの円形測定野をセットする、Ariol SL-50自動顕微鏡(Applied Imaging Int. Ltd.)で測定した。シナプトポディン(G1D4)の陽性標識面積は、測定野中の組織面積の百分率として算出した。各動物について、40個の糸球体からの平均値を算出した。対応のないMann-Whitney検定により統計的な比較を実施した。データは、平均値±SEMである。
【0130】
抗体クローンG1D4は、分化したポドサイト(糸球体臓側上皮細胞)を認識した。この抗体は、良好なコントラストでラット糸球体内のシナプトポディンを標識した(図3)。19週齢のZDF肥満ラットでは、シナプトポディンの糸球体比は、ZDF痩せラットと比較して低下した(表1)。メトホルミンでの処理は、シナプトポディンの糸球体比に影響しなかった。5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンで処理後、シナプトポディンの糸球体比は、やや上昇した。
【0131】
【表1】

【0132】
実施例4:活性酸素種(ROS)の産生
5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンの効果は、絶食Wistarラットの飲料水に一旦投与(50mg/kg/日)すると少なくとも10日間試験した。このアプローチは、高用量の皮下注射よりも生理的である。5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンは、複合体Iを通る逆電子束に結び付いたROS産生を時間依存的に阻害した(即ち、コハク酸単独又はグルタミン酸/リンゴ酸との組合せの存在下)。この作用は、ラット肝臓(図4)及びヒト微小血管内皮細胞(HMEC;表2)の両方において観測された。
【0133】
【表2】

【0134】
実施例5:医薬製剤
A) 注射バイアル: 再蒸留水3l中の本発明の活性成分100g及びリン酸水素二ナトリウム5gの溶液を2N塩酸を用いてpH6.5に調整し、無菌濾過し、注射バイアルに移し、無菌条件下で凍結乾燥して、無菌条件下で密封した。各注射バイアルは活性成分5mgを含有する。
【0135】
B) 坐剤: 本発明の活性成分20gの混合物をダイズレシチン100g及びカカオ脂1400gと共に融解し、鋳型に注ぎ入れて、冷却させた。各坐剤は活性成分20mgを含有する。
【0136】
C) 液剤: 再蒸留水940ml中の本発明の活性成分1g、NaHPO・2HO 9.38g、NaHPO・12HO 28.48g及び塩化ベンザルコニウム0.1gから液剤を調製した。pHを6.8に調整して、この液剤を1lにして照射により滅菌した。この液剤は、点眼剤の形で使用することができる。
【0137】
D) 軟膏剤: 本発明の活性成分500mgを無菌条件下でワセリン99.5gと混合した。
【0138】
E) 錠剤: 本発明の活性成分1kg、乳糖4kg、バレイショデンプン1.2kg、タルク0.2kg及びステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を、各錠剤が活性成分10mgを含むように、従来法で圧縮して錠剤を得た。活性成分5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジンを含む他の錠剤を表3〜8により調製した。
【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
【表6】

【0143】
【表7】

【0144】
【表8】

【0145】
F) コーティング錠: 前パラグラフE)と同様に打錠して、次にショ糖、バレイショデンプン、タルク、トラガントゴム及び色素の塗液で従来法でコーティングした。
【0146】
G) カプセル剤: 本発明の活性成分2kgを、各カプセルが活性成分20mgを含むように、従来法で硬ゼラチンカプセルに導入した。
【0147】
H) アンプル剤: 再蒸留水60l中の本発明の活性成分1kgの溶液を無菌濾過し、アンプルに移して、無菌条件下で凍結乾燥して、無菌条件下で密封した。各アンプルは活性成分10mgを含有する。
【0148】
I) 吸入スプレー剤: 本発明の活性成分14gを等張性NaCl溶液10lに溶解して、この溶液を市販のポンプ機構付きのスプレー容器に移した。この溶液は、口内又は鼻内にスプレーすることができる。1回のスプレー(約0.1ml)は、約0.14mgの用量に対応する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AMP活性化プロテインキナーゼの活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広められる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニターのための、式(I):
【化8】


[式中、
、Rは、それぞれ相互に独立に、H又はAを意味し、
、Rは、それぞれ相互に独立に、H、A、2〜6個のC原子を有するアルケニル、2〜6個のC原子を有するアルキニル、Ar又はHetを意味し、
及びRはまた、一緒になって2、3、4又は5個のC原子を有するアルキレンを意味し、
、Rは、それぞれ相互に独立に、H、A、(CHAr、(CHOAr、(CHOA又は(CHOHを意味し、
及びRはまた、一緒になって2、3、4又は5個のC原子を有するアルキレン(ここで、1個のCH基は、O、NH若しくはNAにより置き換えられていてもよいか、かつ/又は1個のH原子は、OHにより置き換えられていてもよい)を意味し、
Arは、フェニル、ナフチル又はビフェニル(ここで、これらそれぞれは、非置換であるか、あるいはHal、A、OA、OH、COOH、COOA、CN、NH、NHA、NA、SOA及び/又はCOAにより、単置換、二置換又は三置換されている)を意味し、
Hetは、1〜4個のN、O及び/又はS原子を有する、単環、二環又は三環式の飽和、不飽和又は芳香族複素環(非置換であるか、あるいはHal、A、OH、OA、NH、(CHAr、NHA、NA、COOH、COOA及び/又は=O(カルボニル酸素)により単置換、二置換又は三置換されていてもよい)を意味し、
Aは、1〜10個のC原子を有する非分岐若しくは分岐のアルキル(ここで、1〜7個のH原子は、Fにより置き換えられていてもよい)、又は3〜7個のC原子を有する環状アルキルを意味し、
Halは、F、Cl、Br又はIを意味し、
mは、1、2、3、4、5又は6を意味し、そして
nは、0、1又は2を意味する]で示される化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩。
【請求項2】
式(I)の化合物が、5,6−ジヒドロ−4−ジメチルアミノ−2−イミノ−6−メチル−1,3,5−トリアジン及び/又は生理学的に許容しうるその塩酸塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
疾患が、糖尿病、前糖尿病、高血糖症、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、肥満症、腎臓肥大、腎不全、糖尿病性腎症、神経障害、糖尿病性網膜症、癌、炎症、心血管疾患、アルツハイマー病及び加齢の群から選択され、好ましくは腎臓肥大及び糖尿病性腎症である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
AMP活性化プロテインキナーゼの活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広まる疾患の予防若しくは治療処置及び/又はモニター用の、活性成分として有効量の少なくとも1種の請求項1に記載の式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩を、1種以上の薬学的に許容しうる補助剤と共に含む医薬組成物。
【請求項5】
活性成分が、少なくとももう1種の活性成分、好ましくはACE阻害薬、AT1アンタゴニスト、利尿薬、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬及び/又はサリチル酸薬と組合せられる、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
AMP活性化プロテインキナーゼを活性化するための、少なくとも1種の請求項1に記載の式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩の使用。
【請求項7】
AMP活性化プロテインキナーゼの活性が、少なくとも30%、好ましくは少なくとも2倍増強される、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
グルコース恒常性を強化するための、請求項6に記載の使用。
【請求項9】
ポドサイト病を軽減するための、請求項6に記載の使用。
【請求項10】
シナプトポディンの糸球体発現が、増加、好ましくは回復し、かつ/又はラミニンの糸球体発現が、低下する、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
活性酸素種の産生を低下させるための、請求項6に記載の使用。
【請求項12】
AMP活性化プロテインキナーゼの活性に起因するか、これが介在するか、かつ/又はこれにより広められる疾患を処置する方法であって、有効量の少なくとも1種の請求項1に記載の式(I)の化合物及び/又は生理学的に許容しうるその塩が、このような処置を必要としている哺乳動物に投与される方法。
【請求項13】
糖尿病性腎症のインビトロ診断方法であって、
− 哺乳動物から採取したポドサイトの試料をシナプトポディンに特異的な物質と共にインキュベートする工程、
− 特異的インキュベーション生成物を測定する工程、
− シグナル又はシグナルの変化の量を試料中のシナプトポディン濃度と相互に関連付ける工程、並びに
− シナプトポディン濃度を、非アポトーシス及び/又はアポトーシスのポドサイトの試料中の別のシナプトポディン濃度と比較することにより、糖尿病性腎症を検出する工程(ここで、糖尿病性腎症の病期とシナプトポディン濃度とは反比例する)
を含む方法。
【請求項14】
ポドサイト病のバイオマーカーとしてのシナプトポディンの使用。
【請求項15】
ポドサイト病を軽減する化合物のスクリーニング方法であって、
− そのポドサイトがシナプトポディンを発現できる、細胞系又はその試料を準備する工程(ここで、この系は、単一細胞、培養細胞、組織、臓器及び哺乳動物の群から選択される)、
− 少なくとも系の一部をスクリーニングすべき化合物と共にインキュベートする工程、
− シグナル又はシグナルの変化の量を系中のシナプトポディン濃度と相互に関連付ける工程、
− シナプトポディン濃度を、非アポトーシス及び/又はアポトーシスのポドサイトの対照細胞系の別のシナプトポディン濃度と比較することにより、ポドサイト病のレベルを検出する工程、並びに場合により
− ポドサイト病を軽減する化合物の、AMP活性化プロテインキナーゼ遺伝子若しくはそのレギュレーター遺伝子との、又は該遺伝子のいずれかの産物との、又は該遺伝子若しくはその遺伝子産物のいずれかを含むシグナル伝達経路の成分との特異的相互作用を検出する工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−511549(P2012−511549A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540126(P2011−540126)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066999
【国際公開番号】WO2010/066901
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(510210335)
【氏名又は名称原語表記】POXEL SAS
【Fターム(参考)】