説明

ASK変調器

【課題】消費電流が多い。
【解決手段】本発明は、送信すべきデータに応じたデジタルデータ信号を制御端子に入力する第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタにより駆動され、入力したキャリア信号を増幅する増幅部と、前記増幅部から出力されるキャリア信号の増幅度を制御する可変抵抗部と、を有するASK変調器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ASK変調器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のASK変調器として特許文献1の技術がある。図10に特許文献1のASK変調器1の回路構成を示す。図10に示すように、ASK変調器1は、抵抗R1〜R3と、インダクタL1と、コンデンサC1、C2と、端子T1〜T3とを有する。端子T1には、可変抵抗R11を介してデータ信号が入力される。端子T2には、キャリア信号が入力される。このため、FETQ1のゲート端子には、データ信号にキャリア信号が重畳されたものが入力される。
【0003】
データ信号がハイレベルのときは、FETQ1のゲート−ソース間電圧がピンチオフ電圧より高くなり、FETQ1が増幅動作を行う。このため、端子T3から増幅されたキャリア信号が出力される。逆に、データ信号がロウレベルのときは、FETQ1のゲート−ソース間電圧がピンチオフ電圧より低くなり、FETQ1が増幅動作を行なわない。このため、端子T3から何も出力されない。この結果、端子T3からデータ信号に応じてASK変調されたキャリア信号(ASK変調波信号)が出力される。また、可変抵抗R11を調整することで、データ信号の振幅を制御できる。このため、端子T3に出力されるASK変調波信号の振幅を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−341347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ASK変調器1では、抵抗R1、R2からなる電流経路と、インダクタL1、FETQ1、抵抗R3からなる電流経路の2つが存在する。ASK変調器1の消費電流として、これら2つの電流経路それぞれに、電流I1、I2が流れる。このため、消費電流が多い問題点が指摘される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、送信すべきデータに応じたデジタルデータ信号を制御端子に入力する第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタにより駆動され、入力したキャリア信号を増幅する増幅部と、前記増幅部から出力されるキャリア信号の増幅度を制御する可変抵抗部と、を有するASK変調器である。
【0007】
本発明にかかるASK変調器は、第1のトランジスタと、増幅部からなる電流経路しか有さない。このため、当該ASK変調器の消費電流は、この電流経路に流れる電流だけとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるASK変調器は、消費電力の低減化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1にかかる送信システムのブロック構成である。
【図2】実施の形態1にかかるASK変調器の構成である。
【図3】実施の形態1にかかる可変抵抗部の構成である。
【図4】実施の形態1にかかる可変抵抗部の構成である。
【図5】実施の形態1にかかるASK変調器の動作タイミングチャートである。
【図6】実施の形態2にかかるASK変調器の構成である。
【図7】その他の実施の形態にかかるASK変調器の構成である。
【図8】その他の実施の形態にかかるASK変調器の構成である。
【図9】その他の実施の形態にかかるASK変調器の構成である。
【図10】従来のASK変調器の構成である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の実施の形態1
【0011】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、図1に本実施の形態1にかかるASK変調器100を含んだ、送信システム10のブロック図の一例を示す。送信システム10は、送信回路11と、パワーアンプ12と、アンテナ13とを有する。送信回路11は、ASK変調された送信信号をパワーアンプ12に出力する。また、送信回路11は、IC化されており、パワーアンプ12と端子T14とで接続されている。パワーアンプ12は、送信回路11から送られてきたASK変調波信号を増幅してアンテナ13に出力する。アンテナ13は、パワーアンプ12からのASK変調波信号を送信する。
【0012】
送信回路11は、ASK変調器100と、デジタル信号処理部110と、内部発振器120とを有する。なお、送信回路11は、ICでワンチップ化されているものとする。デジタル信号処理部110は、符号化部111を有する。符号化部111は、送信すべき送信データを符号化し、ベースバンド信号としてASK変調器100に出力する。符号化部111が行う符号化方式として、マンチェスター符号方式、NRZ(Non Return to Zero)方式等がある。
【0013】
内部発振器120は、PLL(Phase Locked Loop)121と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)122とを有する。内部発振器120は、所定の周波数の搬送波(キャリア)信号を生成し、ASK変調器100に出力する。
【0014】
本実施の形態1の特徴部分であるASK変調器100は、上述したキャリア信号をベースバンド信号でASK変調する。そして、そのASK変調波信号を端子T14からパワーアンプ12へ出力する。ASK変調器100の構成を図2に示す。図2に示すように、ASK変調器100は、PMOSトランジスタQP101と、可変抵抗部R101と、NMOSトランジスタQN101とを有する。
【0015】
PMOSトランジスタQP101は、ソースが電源電圧端子VDD、ドレインがノードAに接続されている。また、ゲートには、上述したベースバンド信号が入力される。NMOSトランジスタQN101は、ドレインが端子T14、ソースが接地電圧端子GNDに接続される。なお、便宜上、符号「VDD」、「GND」は、それぞれ電源電圧端子名、接地電圧端子名を示すと同時に、電源電圧、接地電圧を示すものとする。可変抵抗部R101は、ノードAと端子T14との間に接続される。
【0016】
図2の構成からもわかるように、PMOSトランジスタQP101は、オン状態のとき、NMOSトランジスタQN101に駆動電流を供給する機能を有する。また、NMOSトランジスタQN101は、駆動電流が供給されている場合、キャリア信号を増幅する機能を有する。このため、このNMOSトランジスタQN101は、キャリア信号を増幅する増幅部150とみなすこともできる。但し、その増幅度は、可変抵抗部R101の抵抗値に応じて変化する。
【0017】
可変抵抗部R101は、制御回路振幅制御信号に応じて、抵抗値を変更することができる。図3、図4に可変抵抗部R101の構成の一例を示す。まず、図3に示すように、可変抵抗部R101は、NMOSトランジスタQN111〜QP11nと、抵抗R111〜11n(n:2以上の整数)を有する。NMOSトランジスタQN111〜QP11nは、対応する抵抗R111〜11nに直列接続されている。更に、NMOSトランジスタQN111〜QP11nと、それに対応する抵抗R111〜11nからなる直列回路が、並列接続されている。
【0018】
NMOSトランジスタQN111〜QP11nは、スイッチとして動作し、振幅制御信号であるCNTL111〜CNTL11nの信号レベルに応じてオン、オフが制御される。例えば、振幅制御信号CNTL111によりNMOSトランジスタQN111のみがオンする場合、抵抗R111の抵抗値が、可変抵抗部R101の抵抗値となる。また、振幅制御信号CNTL111、CNTL112によりNMOSトランジスタQN111、QN112がオンする場合、並列接続された抵抗R111、R112の合成抵抗値が、可変抵抗部R101の抵抗値となる。
【0019】
また、図4に示すように、可変抵抗部R101は、NMOSトランジスタQN120を有していてもよい。このNMOSトランジスタQN120は、振幅制御信号であるCNTL120の電圧レベルに応じて、オン抵抗が調整される。よって、NMOSトランジスタQN120のオン抵抗の抵抗値が、可変抵抗部R101の抵抗値となる。
【0020】
以上のようなASK変調器100の動作について図5を用いて説明する。図5(a)は、デジタル信号処理部110から、PMOSトランジスタQP101のゲートに入力されるベースバンド信号を示す。図5(b)は、内部発振器120から、NMOSトランジスタQN101のゲートに入力されるベースバンド信号を示す。図5(c)は、ASK変調器100が端子T14に出力するASK変調波信号を示す。
【0021】
まず、キャリア信号をゲートに入力するNMOSトランジスタQN101は、キャリア信号を増幅する。しかし、NMOSトランジスタQN101と電源電圧端子VDD間には、PMOSトランジスタQP101が接続されている。NMOSトランジスタQN101の駆動電流は、PMOSトランジスタQP101がオン状態のときだけ供給される。よって、ベースバンド信号がロウレベルの期間T1、T2、T3のみ、PMOSトランジスタQP101が、NMOSトランジスタQN101の駆動電流を供給する。
【0022】
このため、ASK変調器100は、ベースバンド信号がロウレベルの期間T1、T2、T3のみ、増幅されたキャリア信号を端子T14に出力する。逆に、ベースバンド信号がハイレベルの期間、つまり期間T1、T2、T3以外の期間は、PMOSトランジスタQP101が、オフとなりNMOSトランジスタQN101の駆動電流を供給しない。よって、この期間T1、T2、T3以外の期間は、ASK変調器100は、何も端子T14に出力しない。
【0023】
この結果、端子T14からは、ベースバンド信号のレベルに応じて、増幅されたキャリア信号が出力されることになる。この端子T14から出力される出力信号が、キャリア信号をベースバンド信号でASK変調したASK変調波信号となる。更に、このASK変調波信号の振幅レベル(図5(c)の符号W)の大きさ、つまり、増幅部150であるNMOSトランジスタQN101の増幅度は、可変抵抗部R101の抵抗値により決定される。この抵抗値は、上述したように、振幅制御信号により調節可能となっている。
【0024】
ここで、従来のASK変調器1も、出力信号であるASK変調波信号の振幅レベルを可変とすることが可能であった。しかし、ASK変調器1は、2つの電流経路を有しており、消費電流が多くなるという問題点があった。
【0025】
本実施の形態1のASK変調器100は、消費電流にかかる電流経路がPMOSトランジスタQP101、可変抵抗部R101、NMOSトランジスタQN101からなる1つの電流経路しか有さない。このため、ベースバンド信号に応じてPMOSトランジスタQP101がオンとなる期間以外は、電流が流れないため、従来のASK変調器1に比べ消費電流を削減することができる。
【0026】
発明の実施の形態2
【0027】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態2のASK変調器200は、図1の送信システム10においてASK変調器100と置き換えることが可能である。図6に本実施の形態2にかかるASK変調器200の構成を示す。図6に示すように、ASK変調器200は、PMOSトランジスタQP101、QP201と、NMOSトランジスタQN201と、可変抵抗部R101とを有する。なお、図6に示された符号のうち、図2と同じ符号を付した構成は、図2と同じか又は類似の構成を示している。
【0028】
PMOSトランジスタQP101は、ソースが電源電圧端子VDD、ドレインがノードAに接続される。また、ゲートには、デジタル信号処理部110からのベースバンド信号が入力される。PMOSトランジスタQP201は、ソースがノードA、ドレインがノードBに接続される。NMOSトランジスタQN201は、ドレインがノードB、ソースが接地電圧端子GNDに接続される。PMOSトランジスタQP201及びNMOSトランジスタQN201のゲートには、内部発振器120からのキャリア信号が入力される。PMOSトランジスタQP201とNMOSトランジスタQN201とは、増幅部250を構成する。可変抵抗部R101は、ノードBと端子T14との間に接続される。なお、可変抵抗部R101の構成は、実施の形態1と同様である。
【0029】
図6の構成からもわかるように、実施の形態1と同様、PMOSトランジスタQP101はオン状態のとき、増幅部250に駆動電流を供給する機能を有する。増幅部250は、PMOSトランジスタQP201とNMOSトランジスタQN201により、インバータバッファを構成しており、駆動電流が供給されている場合、入力したキャリア信号を増幅する機能を有する。但し、その増幅度は、実施の形態1と同様、可変抵抗部R101の抵抗値に応じて変化する。
【0030】
ASK変調器200の動作タイミングチャートは、図5と基本的に同様であり本実施の形態2では、説明は省略する。
【0031】
本実施の形態2のASK変調器200は、実施の形態1のASK変調器100と異なり、消費電流が流れる電流経路に可変抵抗部R101が接続されていない。このため、ASK変調器100よりも低電圧化が可能となる。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものでなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、ASK変調器100、200のMOSトランジスタの導電型を逆にした、図7、図8に示すASK変調器300、400のような構成としてもよい。
【0033】
図7のASK変調器300では、電源電圧端子VDDと端子T14との間に接続されるPMOSトランジスタQP301のゲートにキャリア信号が入力される。また、ノードAと接地電圧端子GNDとの間に接続されるNMOSトランジスタQN301のゲートにベースバンド信号が入力される。可変抵抗部R101は、PMOSトランジスタQP301とNMOSトランジスタQN301との間に接続される。
【0034】
図8のASK変調器400では、PMOSトランジスタQP401及びNMOSトランジスタQN401からなる増幅部450と、PMOSトランジスタQP301が直列接続されている。PMOSトランジスタQP401及びNMOSトランジスタQN401のゲートには、キャリア信号が入力される。また、PMOSトランジスタQP401及びNMOSトランジスタQN401の共通ノード(ノードB)と端子T14との間に、可変抵抗部R101が接続される。
【0035】
また、実施の形態1のASK変調器100では、PMOSトランジスタQP101と、NMOSトランジスタQN101との間に可変抵抗部R101が接続されていたが、図9のASK変調器500のようにPMOSトランジスタQP101、NMOSトランジスタQN101の中間ノード(ノードC)と端子T14との間に可変抵抗部R101を接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
100 ASK変調器
110 デジタル信号処理部
120 内部発振器
QP101、QP201 PMOSトランジスタ
QN101、QN201 NMOSトランジスタ
R101 可変抵抗部
140 制御回路
150 増幅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信すべきデータに応じたデジタルデータ信号を制御端子に入力する第1のトランジスタと、
前記第1のトランジスタにより駆動され、入力したキャリア信号を増幅する増幅部と、
前記増幅部から出力されるキャリア信号の増幅度を制御する可変抵抗部と、を有する
ASK変調器。
【請求項2】
前記増幅部は、第2のトランジスタを有し、
前記第2のトランジスタは、前記第1のトランジスタと直列接続され、制御端子に前記キャリア信号を入力する
請求項1に記載のASK変調器。
【請求項3】
前記第1のトランジスタと可変抵抗部とが直列接続され、
前記可変抵抗部は、前記第1のトランジスタと前記第2のトランジスタとの間に接続される
請求項1に記載のASK変調器。
【請求項4】
前記増幅部は、互いが直列接続された相補性導電型の第3、第4のトランジスタを有し、
前記第3、第4のトランジスタは、前記第1のトランジスタと直列接続され、それぞれの制御端子に前記キャリア信号を入力し、共通ノードから増幅したキャリア信号を出力する
請求項1に記載のASK変調器。
【請求項5】
前記可変抵抗部は、前記共通ノードに接続される
請求項4に記載のASK変調器。
【請求項6】
前記可変抵抗部は、抵抗値が制御信号に応じて制御される
請求項1〜請求項5に記載のASK変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−193087(P2010−193087A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34285(P2009−34285)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】