説明

ATMブラウザ画面切替時のダミー表示機能

【課題】ブラウザを用いた画面表示処理において、操作者の操作により画面表示を切り替える際、操作者に表示(描画)途中の画面が見えてしまい、これが視覚的な障害になることが考えられる。
【解決手段】ブラウザの処理フレームの入力により別の次画面を表示するまでの間、一時的にダミー画面を優先的に表示した状態でサーバ等と通信を行う。処理フレームが次画面の描画処理を実行し、描画が完了した時点で、ダミーフレームを閉じることにより、ブラウザ処理フレーム画面の表示を行う(画面切り替えの都度これを繰り返す)。これにより、操作者に表示(描画)途中のちらつき画面を見せないようにすることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラウザを用いた画面の表示制御方式に関する。特に、現金自動取引装置等
の顧客操作型装置等における画面表示制御方法および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Webブラウザとしては、Microsoft社のInternet ExplorerやMozilla Foundation社のMozilla Firefoxがよく知られている。Webブラウザ(以下ブラウザ)は、インターネットに代表されるクライアント・サーバシステムにおいて、ユーザ端末装置であるクライアント(クライアントコンピュータ)に搭載され、通信ネットワークを介しサーバ(サーバコンピュータ)と通信を行い情報の表示等を行う。サーバとクライアント(ブラウザ)間の通信はHTTP(HyperText Transfer Protocol)という通信規約に基づき行われ、ブラウザからサーバに要求メッセージ(HTTPリクエスト)を送信し、サーバがこれを受け取るとブラウザに対し応答メッセージ(HTTPレスポンス)とデータを送信する。このサーバから受け取る情報は、HTML(HyperText Markup Language)等のマークアップ言語で記述されたドキュメントである。ブラウザはこのドキュメントを受け取ると、受け取ったドキュメントを解析し画面に表示する。ブラウザの機能としては、単にサーバから受取った情報を表示するだけでなく、クライアントの情報をサーバに送信し、サーバ上で動作するアプリケーションで処理した結果を受け取ることも可能である。ブラウザ表示画面において、HTMLのみでは実現不可能な動的な表現(例えば、ボタン表示やカーソル付き入出力フィールド等)にはJava(登録商標)アプレットやJavaスクリプトおよびFlash(登録商標)等のプラグインが使用され、ブラウザ内部でこのJavaスクリプトやJavaアプレットおよびその他のプラグインなどのオブジェクトが互いに通信することも可能である。
【0003】
これらのブラウザ機能を利用した製品およびブラウザ表示方式が提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術では、遠隔から制御を行いたい家電機器にWebサーバ機能を盛り込み、ネットワークに接続し、Webブラウザを搭載したリモコンに相当するクライアントコンピュータにて遠隔操作を行うシステムが提案されているが、当該システムにおいて、画面の再描画の瞬間的な切り替わりに関して、視覚的に見にくいということを解決するために、ブラウザ画面に表示されるフレームを予め分類し、再描画画面が再描画する以前の画像と変わらない第1の分類と、前と異なる第2の分類とに分けておき、再描画時には第2の分類のみのフレームを再描画する(第1の分類のフレームは再描画しない)技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の技術では、ブラウザ画面にオブジェクトを有するレイアウトフレームと、オブジェクトは無くそしてブラウザ画面の極少領域に設定されたダミーフレームとで構成し、サーバからのレスポンス待ちをダミーフレームで行ってレイアウトフレームを更新し、ダミーフレームは画面変化のある部分のみを再描画するようにして、レスポンスによる画面のちらつき等の視覚障害を抑制する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−123488号公報
【特許文献2】特開2004−240724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1の技術では、第2の分類に属するフレーム領域が比較的少ない場合はその効果を発揮するが、金融機関に設置されている現金自動取引装置(以下ATM)等のように遷移する画面のほとんどの領域が前の画面と異なる第2の分類に属するような画面構成を採用する技術では、想定できる効果が発揮できない、との問題や、複数の画面全てについて、前に描画される画面との対応関係を調査し、前と同じ部分(第1分類)と、前と異なる部分(第2分類)とを予め設定しなくてはならないため、画面が多数ありその画面の遷移が複雑であればあるほど(例:ATM等では選択されたキーの種類や装置内部の状態等により遷移する画面が多岐にわたり、「前に戻る」キー押下等で前の画面に戻ることもある)、困難な問題が発生してしまう。
【0007】
また、上記特許文献2の技術においても、ダミーフレームについては上述したの特許文献1の問題点と同様に、画面全体の領域を更新するためには想定できる効果が発揮できない、設定が煩雑になるという問題がある。
【0008】
さらに、ブラウザでは受信したHTMLドキュメントを解析処理した順に表示していく性質上、Java(登録商標)アプレットやFlash(登録商標)等のプラグインを使用したオブジェクトの表示処理や、データ量の大きな画像データ等の表示には時間を要すことがあるため、レイアウトフレームの更新がスタートし、その更新が終了するまでの間に表示途中の状態(例えば、画像データ表示処理中であることを示す×マーク等)が見えてしまうという視覚的な問題が発生する。このため、ATM等の顧客操作型装置等にブラウザを搭載した場合、利用者にとってはこの視覚的障害がストレスとなることが考えられる。
【0009】
そこで本発明は、上述した問題を解消するため、ブラウザに対しサーバ等から返送されるレスポンスの内容や、ブラウザを搭載したクライアントコンピュータの性能(CPU性能等)に関係なくブラウザ画面表示の視覚的障害を抑止する方式および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明では、処理フレームが次画面に切り替わる際、セパレートのダミーフレームを表示する構造とし、処理フレームがサーバコンピュータと通信を行う間、優先的にダミーフレームを表示(画面切り替えの都度これを繰り返す)し、裏で描画処理を実行完了した時点でダミーフレームを閉じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、次に表示すべき画面の描画が完了するまでダミーフレームを表示するため、画面切り替え時に表示途中が見えたり、画面がちらついたりといった比較的に視覚的障害の無い画面制御方法およびこの技術を搭載した装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自動取引システムのブロック図。
【図2】自動取引装置の構成図。
【図3】取引画面の遷移図。
【図4】ブラウザ画面構成図。
【図5】画面表示切り替え処理の流れ図。
【図6】画面表示完了検知処理の流れ図。
【図7】初期化完了リストの構造図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施の形態では、ブラウザ機能を搭載したクライアントである自動取引装置と、自動取引装置を制御するアプリケーションを搭載したWebアプリケーションサーバと、ホストコンピュータとを通信ネットワークを介して接続したシステムを一実施例として示す。
【0014】
図1は、一実施例のシステム構成図である。自動取引装置103は、金融機関等に設置され、顧客の操作によって現金の入金や出金等の取引を行う装置である。ブラウザ107は顧客操作画面108を表示し、顧客操作に応じてWebアプリケーションサーバ102に対してリクエストを上げ、レスポンスに応じた次画面を表示する事が出来る。通信制御部110は業務アプリケーション106と通信する役割を果たし、デバイス制御部109に処理の要求を行う。デバイス制御部109は各種デバイスに対して処理要求を行う。Webアプリケーションサーバ102はブラウザ107からのリクエストに応じて画面を生成し、レスポンスすることでブラウザ107に顧客操作画面108を表示することができる。業務アプリケーション106は取引を実現するためのプログラムであり、取引の種類に応じてシーケンシャルな処理を行い、その過程で自動取引装置103のデバイスを処理する必要が生じた場合は、通信制御部110に対して処理要求を行うことができる。顧客操作画面生成部105は業務アプリケーション106の実行結果データを元に、画面コンテンツ104内の画像ファイル等を利用し、顧客操作画面107に表示する画面データを生成する。以上の構成であるWebアプリケーションサーバ102がホストコンピュータ101と交信することで、取引を実行することが出来るシステム構成である。
【0015】
図2は、自動取引装置103の概略構成の一例を示す説明図である。図示するように本体の自動取引装置103には次のユニットが備えられている。顧客が取引を行う際に取引選択や取引内容の確認を行うために用いる、LCD画面、タッチパネル等からなる顧客操作部208。カードの吸入、排出およびカード磁気ストライプ情報のリード/ライトを行うカード処理機構211。通帳の吸入、排出、通帳磁気ストライプ情報のリード/ライトおよび通帳明細の印字等を行う通帳処理機構210。紙幣の入出金を行う紙幣入出金機構209。硬貨の入出金を行う硬貨入出金機構213。利用明細票の印字/排出を行う明細票処理機構212。
【0016】
上記自動取引装置103の各ユニットを制御ユニット214が制御することで各ユニット間の情報の受け渡し等が可能となる。自動取引装置103はWebアプリケーションサーバ102に通信ネットワークを介して接続されている。制御ユニット214はWebアプリケーションサーバ102と通信を行いながら取引を実現する。図中の制御ユニット214はソフトウェア的に各機能ブロックから構成され、主制御部201によって制御される。カード制御部205はカード処理機構211を制御する。通帳制御部206は通帳処理機構210を制御する。指示入出力部202は顧客操作部208を制御する。現金制御部203は紙幣入出金機構208および硬貨入出金機構213を制御する。明細票制御部204は明細票処理機構212を制御する。通信制御部207はWebアプリケーションサーバ102との通信を制御する。
【0017】
図3は、図2における顧客操作部208に表示される画面とその遷移の一例である。
【0018】
メニュー画面301で、取引メニューから残高照会取引キー305が押下されると、カード挿入画面302に遷移する。カード挿入画面302にはカード挿入を誘導するための動画コンテンツ表示エリア304を有する。カード挿入画面302にてカードが挿入されると暗証番号入力画面303に遷移する。暗証番号入力画面303には、カーソル付きの入力表示フィールド306やテンキー307を有する。暗証番号入力画面303にて暗証番号が入力されると、以降操作手順に従い表示画面が遷移し、自動取引装置での取引が実行される。
【0019】
図4は、本発明におけるブラウザ画面の構造を示した図である。処理フレーム402とダミーフレーム401およびこれらのフレームを制御する不可視の制御フレーム403を有するフレーム構造とする。各フレームはJavaスクリプト等のスクリプト言語で記述されたプログラムによりフレーム間で通信を行うことが可能である。図3に示した各画面(301〜303)はこのブラウザ構造を使用して表示される。
【実施例1】
【0020】
上述した実施形態をもとに実施される、本発明の実施例を以下に詳述する。なお、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内での変形、改良等は当然可能である。
【0021】
図5は、本実施形態に係わるシステム構成における自動取引装置103とWebアプリケーションサーバ102間で行われるブラウザ画面表示制御の流れを示したものである。
【0022】
ブラウザ107上に表示されている処理フレーム402での顧客操作が完了(例えば、図3で示したメニュー画面301での残高照会取引キー305押下)すると、処理フレーム402は、制御フレーム403に通知する。処理フレーム402はWebアプリケーションサーバ102に対してHTTPリクエストとともにフォームデータを送信する(S504)。Webアプリケーションサーバ102は、受信したフォームデータ等を元に該当する場面処理を実行し、次に表示すべき画面(カード挿入画面302等)の情報を収集してHTMLファイルを作成(S505)し、処理フレーム402宛にHTTPレスポンスを発行する(S506)。処理フレーム402は受取ったHTTPレスポンスにより、次に表示すべき画面(カード挿入画面302等)の描画処理を行う(S507)。処理フレーム402は描画が完了した時点で制御フレーム403へ描画完了を報告する(S508)。ここで、S501〜S508までの間は、ブラウザ107画面上には、ダミーフレーム401が表示されており、利用者にはダミーフレーム401の画面が見えている。制御フレーム403は処理フレーム402からの描画完了報告を契機に、ダミーフレーム401を閉じる。
【0023】
ここで、S508における、処理フレーム402の描画処理完了の検知方法およびフレーム切り替え契機について以下に説明する。
【0024】
ブラウザにおけるHTMLドキュメントの表示完了は、一般的にHTMLファイル内に記述された<body>タグの属性”onLoad”に設定したイベントハンドラがブラウザから呼び出されることによって検知することが可能であるが、Java(登録商標)アプレット、Flash(登録商標)等のようにオブジェクト内部でレンダリング等の描画処理を行っているものについては、ブラウザが描画処理完了を検知できないため、オブジェクトのダウンロード完了時点で”onLoad”が呼ばれてしまい、この時点ではまだ描画あるいは内部的な初期化が完了していないケースがある。これを解決するには、内部的に初期化処理を持つオブジェクトについては、自身の初期化完了時に完了通知を発行する方法などが一例として考えられる。
【0025】
具体的な手順を次に説明する。図6は上記処理手順の一例の流れを示した図であり、n個のJava(登録商標)アプレット601とm個のFlash(登録商標)602をオブジェクトとして持つHTMLドキュメントを処理フレーム401で描画処理する場合の例である。図3で例示した画面の残高照会取引キー305、カーソル付きの入力表示フィールド306およびテンキー307等がこのJava(登録商標)アプレット601やFlash(登録商標)602等のオブジェクトで作成される。ブラウザ107はHTMLドキュメントの解析処理中にJava(登録商標)アプレット601およびFlash(登録商標)602のオブジェクトを検知すると、これらを処理するための実行エンジン603(Java(登録商標)アプレットの場合はJava(登録商標)仮想マシン、Flash(登録商標)の場合はFlash(登録商標)Player等)を起動する(S601)。起動された実行エンジン603は、各オブジェクトの初期化関数(“init()”,“on(load)”等)を呼び出す(S602)。各オブジェクトはこれを契機に描画処理および内部データの初期化等の初期化処理を行い、HTMLドキュメント内に記述されたJava(登録商標)スクリプトに初期化完了を通知(初期化完了通知処理関数604を呼び出し)する(S603)。この通知の際には、各オブジェクトに割り振られた一意なIDを付加するものとする。初期化完了通知処理関数604では、図7に示すような初期化完了リストを保持して、初期化完了通知で通知されたIDにより各オブジェクトが初期化済みであるか未済みであるかを管理し(S604)、当該HTMLドキュメント内に貼り付けられている全オブジェクトから初期化完了通知を受け取ったかどうかの確認を行う(S605)。全オブジェクトから初期化完了通知を受け取ったことを確認した時点で、制御フレーム403に表示完了通知を発行する(S606)。この表示完了通知により制御フレーム403は処理フレーム401の描画が完了したことを認識することができる。
【符号の説明】
【0026】
101…ホストコンピュータ、102…Webアプリケーションサーバ、103…自動取引装置、104…画面コンテンツ、105…顧客操作画面生成部、106…業務アプリケーション、107…顧客操作画面、108…ブラウザ、109…デバイス制御部、110…通信制御部、201…主制御部、202…指示入出力部、203…現金制御部、204…明細票制御部、24…カード制御部、206…通帳制御部、207…通信制御部、208…顧客操作部、209…紙幣入出金機構、210…通帳処理機構、211…カード処理機構、212…明細票処理機構、213…硬貨入出金機構、214…制御ユニット、301…メニュー画面、302…カード挿入画面、303…暗証番号入力画面、304…動画コンテンツ表示エリア、305…残高照会取引キー、306…入力表示フィールド、307…テンキー、401…ダミーフレーム、402…処理フレーム、403…制御フレーム、601…Java(登録商標)アプレット、602…Flash(登録商標)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ネットワークを介してサーバコンピュータからマークアップ言語で記述された情報を受信、もしくは、クライアントコンピュータ内に格納されたマークアップ言語で記述された情報を読み込み、前記情報からダイナミックなドキュメントを生成するブラウザを搭載したクライアントコンピュータによる方法であって、画面フレーム(以下メイン処理のフレームを処理フレームと定義する)が次画面フレームに切り替わる際、セパレート用のダミーフレームを表示する構造とする。処理フレームがサーバコンピュータと通信を行う間、優先的にダミーフレームを表示し、裏で描画処理を実行完了した時点でダミーフレームを閉じる表示方式。
【請求項2】
請求項1の表示方式を採用した装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−8897(P2012−8897A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145783(P2010−145783)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】