Blakeslea属の生物の遺伝子改変方法、それに関連して生じる生物およびその使用
本発明は、遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を産生するための方法であって、以下の工程:(i)少なくとも1つの細胞を形質転換すること、(ii)場合によっては、工程(i)で得られた細胞をホモカリオン性にすることで、核が全て、少なくとも1つの遺伝的特徴において均一に改変されており、かつ上記遺伝子改変を発現に転換する細胞を生成すること、および(iii)遺伝子改変された細胞を選択および培養することを含む上記方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Blakeslea属の生物の遺伝子改変方法、それに関連して生じる生物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Blakeslea属の真菌は、生産生物として知られている。従って、例えばBlakeslea trisporaは、β−カロチン(Ciegler, 1965, Adv Appl Microbiol. 7:1)およびリコピン(EP 1201762, EP 1184464, WO 03/038064)についての生産生物として使用される。さらに、Blakesleaは、例えば、他のカロチノイドおよびそれらの前駆体、リン脂質、トリアシルグリセリド、ステロイド、ワックス、脂溶性ビタミン、プロビタミンならびにコファクターなどの他の親油性物質を産生するために好適であり、あるいは、例えば、タンパク質、アミノ酸、ヌクレオチド、および水溶性ビタミン、プロビタミンおよびコファクターなどの親水性物質を産生するために好適である。
【0003】
β−カロチンおよびリコピンの高生産性によって、Blakeslea(特に、Blakeslea trispora)は、カロチノイドおよびそれらの前駆体の経済的な発酵的生産にとって魅力的なものとなる。
【0004】
しかしながら、以前に天然に産生されたカロチンおよびそれらの前駆体のこの生産性をさらに増大させること、ならびに例えば、以前には、もしあったとしても、非常に低い程度までのみBlakesleaによって産生され、かつBlakesleaから単離されたキサントフィルなどのカロチノイドを産生することをさらに可能にすることもまた、関心対象のことである。
【0005】
カロチノイドは、飼料、食材、栄養補助食品、化粧品、および医薬品に添加される。カロチノイドは、とりわけ着色のための色素として使用される。このことを別として、カロチノイドの抗酸化作用およびこれらの物質の他の特性が利用される。カロチノイドは、純粋な炭化水素、カロチン、および酸素含有炭化水素、キサントフィルに分けられる。カンタキサンチンおよびアスタキサンチンなどのキサントフィルは、例えば、鶏卵および魚の着色において利用される(Brittonら、1998, Carotinoids, 第3巻, Biosynthesis and Metabolism)。カロチンであるβ−カロチンおよびリコピンはとりわけヒト栄養において利用される。例えば、β−カロチンは、飲料用の着色料として使用される。リコピンは疾患予防作用を有する(ArgwalおよびRao, 2000, CMAJ 163:739-744; RaoおよびArgwal 1999, Nutrition Research 19:305-323)。無色のカロチノイド前駆体フィトエンは、抗酸化剤としての適用のためにとりわけ適している。
【0006】
上述の適用における添加物として利用される、大部分のカロチノイドおよびそれらの前駆体は化学合成によって調製される。上記化学合成は、多段階であり、非常に複雑であり、高い製造コストを生じる。対照的に、発酵プロセスは比較的単純で、かつ高価でない開始材料に基づく。以前の発酵プロセスの生産性が増大し、または新規なカロチノイドが既知の生産生物に基づいて調製されることが可能であるならば、カロチノイドを産生するための発酵プロセスは、経済的に魅力的でありかつ化学合成と競合することが可能であり得る。
【0007】
特に、発明がキサントフィルを産生するためにBlakesleaを利用する場合には、これらの化合物はBlakesleaによって天然に合成されないので、Blakeslea trisporaの遺伝子改変方法が必要となる。
【0008】
Blakeslea trisporaの種々のDNA配列、特にゲラニルゲラニルピロリン酸からβ−カロチンへのカロチノイド生合成の遺伝子をコードするDNA配列がすでに公知である(WO 03/027293)。
【0009】
しかし、これまでに、Blakeslea、特にBlakeslea trisporaの遺伝子操作による改変のための方法は知られていない。
【0010】
いくつかの場合において首尾よく利用されてきた遺伝子改変された真菌の産生のための方法は、アグロバクテリウム媒介形質転換である。従って、例えば、以下の生物がアグロバクテリウムによって形質転換されてきた:Saccharomyces cerevisiae(Bundockら、1995, EMBO Journal, 14:3206-3214)、Aspergillus awamori、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Colletotrichum gloeosporioides、Fusarium solani pisi、Neurospora crassa、Trichoderma reesei、Pleurotus ostreatus、Fusarium graminearum(van der Toorrenら、1997, EP 870835)、Agraricus bisporus、Fusarium venenatum(de Grootら、1998, Nature Biotechnol. 16:839-842)、Mycosphaerella graminicola(Zwiersら 2001, Curr. Genet. 39:388-393)、Glarea lozoyensis(Zhangら, 2003, Mol. Gen. Genomics 268:645-655)、Mucor miehei(Monfortら、2003, FEMS Microbiology Lett. 244:101-106)。
【0011】
特に関心対象のものは相同組換えであり、これは、導入されるDNAと細胞DNAとの間に可能な限り多くの配列相同性を含み、その結果、レシピエント生物のゲノム中で部位特異的な遺伝情報を導入または除去することが可能である。さもなくば、ドナーDNAは、部位特異的でない非正統的組換えまたは非相同的組換えによってレシピエント生物のゲノムに組み込まれる。
【0012】
アグロバクテリウム媒介形質転換および引き続く導入DNAの相同組換えは、以下の生物について以前に検出されてきた:Aspergillus awamori(Goukaら、1999, Nature Biotech 17:598-601)、Glarea lozoyensis(Zhangら、2003, Mol. Gen. Genomics 268:645-655)、Mycosphaerella graminicola((Zwiersら、2001, Curr. Genet. 39:388-393)。
【0013】
真菌を形質転換するための別の公知の方法は、エレクトロポレーションである。Hill, Nucl. Acids. Res. 17:8011は、エレクトロポレーションによる酵母の組み込み形質転換を示した。糸状菌の形質転換はChakabortyおよびKapoor(1990, Nucl. Acids. Res. 18:6737)によって記載されている。
【0014】
「微粒子銃」法、すなわち、DNA負荷した粒子を用いる細胞の衝撃によるDNAの導入は、例えば、Trichoderma harzianumおよびGliocladium virens(Loritoら 1993, Curr. Genet. 24:349-356)において記載されている。
【0015】
しかし、Blakesleaおよび特にBlakeslea trisporaの特異的遺伝子改変のためにこれらの方法を首尾よく利用することは以前には可能ではなかった。
【0016】
特異的に遺伝子改変したBlakesleaおよびBlakeslea trisporaを産生する際の特定の困難さは、それらの細胞が、有性細胞および栄養細胞のサイクルのすべての段階において多核性であるという事実である。例えば、Blakeslea trispora株NRRL2456およびNRRL2457の胞子は、胞子あたり平均4.5核を有することが見い出された(MethaおよびCerda-Olmedo, 1995, Appl. Microbiol. Biotechnol. 42:836-838)。このことの結果として、遺伝子改変は、通常、1個またはいくつかの核のみにおいて存在し、すなわち、細胞はヘテロカリオン性である。
【0017】
遺伝子改変されたBlakeslea種、特にBlakeslea trisporaが製造のために使用されることが意図される場合、特に遺伝子欠失の場合に、安定かつ高度な合成性能を副生成物を伴わずに可能にするために、遺伝子改変が生産株のすべての核に存在することが重要である。この株は、上記遺伝子改変に関して、結果的にホモカリオン性でなくてはならない。
【0018】
ホモカリオン性細胞を生成する方法は、Phycomyces blakesleeanusについてのみ記載されてきた(Ronceroら、1984, Mutat. Res. 125:195)。そこに記載される方法に従って、1つの機能的な核のみを有する統計学的に確実な数の細胞を得るために、突然変異誘発物質MNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)を加えることによって、核が細胞中で除去される。次いで、細胞を、劣性の選択マーカーを有する単核細胞のみが菌糸体中で増殖する選択に供する。これらの選択細胞の子孫は多核性でありかつホモカリオン性である。Phycomyces blakesleanusについての劣性選択マーカーの一例はdarである、dar+株は、dar−株とは異なり毒性リボフラビンアナログ5−炭素−5−デアザリボフラビンを吸収する(Delbruckら、1979, Genetics 92:27)。劣性突然変異体は5−炭素−5−デアザリボフラビン(DARF)を加えることによって選択される。
【0019】
しかし、この方法は、Blakeslea、特にBlakeslea trisporaについては未知であり、そして特に、形質転換に関して記載されていない。
【発明の開示】
【0020】
本発明の目的は、Blakeslea株、特にBlakeslea trisporaを遺伝子改変することができる方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、遺伝子改変されたホモカリオン性株を産生することを可能にする方法を提供することである。従って、本発明の更なる目的は、遺伝子改変した細胞を提供することである。
【0021】
この目的は、Blakeslea属の遺伝子改変された生物を産生する方法によって達成され、この方法は以下の工程を含む:
(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、
(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、かつ上記遺伝子改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞の場合によるホモカリオン転換、
(iii)遺伝子改変された細胞の選択。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の方法は、均一の核を有する細胞の菌糸体をこのやり方で入手するために、Blakeslea菌の多核細胞が特異的かつ安定な様式で遺伝子改変されることを可能にする。この細胞は、好ましくはBlakeslea trispora種の真菌の細胞である。 形質転換は、生物、特に真菌中への遺伝子情報の導入を意味する。これは、上記情報、特にDNAを導入する、当業者に公知の任意の可能な方法、例えば、DNA負荷粒子を用いる衝撃、プロトプラストを使用する形質転換、DNAのマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、コンピテント細胞の接合または形質転換、化学物質またはアグロバクテリウムを媒介する形質転換を含むべきである。遺伝子情報は、遺伝子の部分、1つの遺伝子または複数の遺伝子を意味する。遺伝子情報は、例えば、ベクターの補助を伴って、または遊離の核酸(例えば、DNA、RNA)として、および他の任意の様式で細胞に導入され得、そして組換えによって宿主ゲノムに組み込まれるか、または細胞中で遊離の形態で存在するかのいずれかである。本発明において特に好ましいのは相同組換えである。
【0023】
好ましい形質転換方法は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって媒介される形質転換である。この目的のために、導入されるドナーDNAは、最初に、(i)導入されるDNAに隣接するT−DNA末端を有し、(ii)選択マーカーを含み、そして(iii)適切な場合、ドナーDNAの遺伝子発現のためのプロモーターおよびターミネーターを有する、ベクターに挿入される。上記ベクターは、vir遺伝子を含むTiプラスミドを有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス株に導入される。vir遺伝子は、BlakesleaにおけるDNA導入の原因である。この2ベクター系は、アグロバクテリウムからBlakesleaにDNAを導入するために使用される。この目的のために、アグロバクテリウムはアセトシリンゴンの存在下で最初にインキュベートされる。アセトシリンゴンはvir遺伝子を誘導する。次いで、Blakeslea trisporaの胞子が、アセトシリンゴン含有培地上でアグロバクテリウム・ツメファシエンスの誘導された細胞と一緒にインキュベートされ、その後、形質転換体、すなわち、遺伝子改変されたBlakeslea株の選択を可能にする培地に移される。
【0024】
ベクターという用語は、本願において、外来性DNAをそこに導入し、かつ、適切な場合、細胞中で上記外来性DNAを増殖させるために使用されるDNA分子をいうために使用される(Rompp Lexikon Chemie-CDROMバージョン2.0, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1999の「vector」もまた参照されたい)。本願において、「ベクター」という用語は、この目的に役立つプラスミド、コスミドなどを含むことを意図する。
【0025】
発現は、本願において、DNAまたはRNAから開始して遺伝子産物(本発明において好ましくは、カロチノイド)に至る、遺伝子情報の導入を意味し、そして過剰発現という用語を含むこともまた意図する。過剰発現という用語は、形質転換されない細胞(野生型)中ですでに産生されている産物が増加して産生されるような、または全体の細胞含量の大多数の部分を形成するような発現の増加を意味する。
【0026】
遺伝子改変は、レシピエント生物への遺伝子情報の導入であって、その結果、上記情報が安定な様式で発現され、かつ細胞分裂の間に伝播するものを意味する。次いで、適当な場合には、ホモカリオン転換(すなわち、均一の核のみを含む細胞の産生)が行われ、すなわち、核は同じ遺伝情報の内容を有する。
【0027】
このホモカリオン転換は、形質転換によって導入される遺伝子情報が劣性である場合、すなわち、それ自体を明示しない場合に、特に必要とされる。しかし、形質転換が優性の遺伝子情報の存在を生じる場合、すなわち、上記情報がそれ自体を明示する場合、ホモカリオン転換が絶対的に必要なわけではない。
【0028】
ホモカリオン転換は、好ましくは、単核胞子を選択する工程を含む。少ない割合のBlakeslea trispora胞子が本来単核であり、その結果、これらの胞子は、適切な場合、特異的標識後、例えば、細胞核の染色後に選別され得る。これは、好ましくは、単核細胞の低い蛍光に基づいて、FACS(蛍光活性化細胞分取(Fluorescence Activated Cell Sorting))を使用して実行される。
【0029】
代替的には、ホモカリオン転換は、最初に核の数を減少させることによって実行され得る。この目的のために、突然変異誘発物質、特にN−メチル−N’−ニトロニトロソグアニジン(MNNG)が利用され得る。UV照射またはX線などの高エネルギー照射もまた、核の数を減少させるために使用できる。引き続く選択が、FACS法または劣性選択マーカーを使用して実行され得る。
【0030】
選択は、その核が同じ遺伝子情報を含む細胞、すなわち、耐性または生成物の産生もしくは産生の増加などの同じ特性を有する細胞の選択を意味する。選択のために、FACS法の他に、5−炭素−5−デアザリボフラビン(darf)およびハイグロマイシン(hyg)または5’−フルオロロテート(5'-fluororotate)(FOA)およびウラシルを使用することが好ましい。
【0031】
形質転換(i)において利用されるベクターは上記ベクターに含まれる遺伝子情報が少なくとも1つの細胞のゲノムに組み込まれるように設計され得る。この点に関して、細胞中の遺伝子情報は、スイッチが切られ得る。
【0032】
しかしながら、形質転換(i)において利用されるベクターは、上記ベクター中に含まれる遺伝子情報が細胞中で発現されるような方法で設計されることもできる。すなわち、対応する野生型において存在しないか、あるいは上記形質転換によって増加または過剰発現される遺伝子情報が導入される。
【0033】
このベクターは、Blakeslea属の生物の遺伝子改変のためのいかなる遺伝子情報をも含み得る。
【0034】
「遺伝子情報」とは、好ましくは、Blakeslea属の生物へのその導入がBlakeslea属の生物における遺伝子改変を生じる、すなわち、例えば、開始生物との比較において、酵素活性の増加または減少を引き起こす核酸を意味する。
【0035】
このベクターは、例えば、カロチノイドおよびそれらの前駆体、リン脂質、トリアシルグリセリド、ステロイド、ワックス、脂溶性ビタミン、プロビタミンならびにコファクターなどの親油性物質を産生するための遺伝子情報、または例えば、タンパク質、アミノ酸、ヌクレオチド、および水溶性ビタミン、プロビタミン、およびコファクターなどの親水性物質を産生するための遺伝子情報を含み得る。
【0036】
利用されるベクターは、好ましくは、カロチノイドもしくはキサントフィルまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報を含む。
【0037】
このベクターは、好ましくは、カロチノイド生合成酵素が、カロチノイド生合成が起こる細胞内区画中に局在されることを引き起こす遺伝子情報を含む。
【0038】
アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノンおよび3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、ルテイン、β−カロチン、フィトエン、またはフィトフルエンを産生するための遺伝子情報が特に好ましい。フィトエン、ビキシン、リコピン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、およびアスタキサンチンを産生するための遺伝子情報が非常に特に好ましい。
【0039】
従って、本発明の好ましい変形は、カロチノイド生合成中間体の合成の速度の増加、およびカロチノイド生合成の最終生成物について結果的に増加した生産性を有する生物を産生および培養することを含む。カロチノイド生合成中間体の合成の速度は、特に、酵素:3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素、イソペンテニルピロホスフェートイソメラーゼ、およびゲラニルピロホスフェートシンターゼの活性を増加させることによって増加する。
【0040】
従って、本発明の特に好ましい変形は、野生型と比較して、HMG−CoA還元酵素活性の増加を有する生物を産生および培養することを含む。
【0041】
HMG−CoA還元酵素活性とは、HMG−CoA還元酵素(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素)の酵素活性を意味する。
【0042】
HMG−CoA還元酵素とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAをメバロン酸に転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0043】
従って、HMG−CoA還元酵素活性とは、特定の時間内にタンパク質HMG−CoA還元酵素によって、転換された3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAの量または産生されたメバロン酸の量を意味する。
【0044】
野生型と比較したHMG−CoA還元酵素活性の増加の場合には、このようにタンパク質HMG−CoA還元酵素は、野生型と比較して、特定の時間内に、転換された3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAの量または産生されたメバロン酸の量を増加する。
【0045】
HMG−CoA還元酵素活性のこの増加は、好ましくは、野生型のHMG−CoA還元酵素活性の、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、さらにより好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも600%である。
【0046】
好ましい実施形態において、HMG−CoA還元酵素活性は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸の遺伝子発現を増加させることによって、野生型と比較して増加される。
【0047】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸の遺伝子発現は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸を含む核酸構築物を生物に導入することによって増加され、上記生物中のその発現は、野生型と比較して、調節が減少されやすい。
【0048】
野生型と比較した調節の減少とは、上記に規定された野生型との比較において、発現レベルまたはタンパク質レベルで、調節が減少していること、好ましくは調節が存在しないことを意味する。
【0049】
また、調節の減少は、好ましくは、核酸構築物中のコード配列に機能的に連結され、かつ、野生型プロモーターと比較して、生物における調節の減少の影響を受けやすいプロモーターによって達成され得る。
【0050】
例えば、Blakeslea trisporaのptef1プロモーターおよびAspergillus nidulansのpgpdAプロモーターは、調節の減少のみの影響を受けやすく、それゆえに特に好ましいプロモーターである。
【0051】
これらのプロモーターは、Blakeslea trisporaにおいてほぼ構成的発現を示し、その結果、転写調節はもはやカロチノイド生合成の中間体を介しては起こらない。
【0052】
さらに好ましい実施形態において、上記調節の減少は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸を使用することによって達成され得、上記生物におけるその発現は、上記生物に固有のオーソロガス核酸と比較して、調節の減少を受けやすい。
【0053】
HMG−CoA還元酵素の触媒領域のみ(末端切断型(t−)HMG−CoA還元酵素)をコードする核酸を使用することは特に好ましい。調節の原因である膜ドメインは存在しない。従って、使用される核酸は調節の減少を受けやすく、従って、HMG−CoA還元酵素の遺伝子発現の増加を生じる。
【0054】
特に好ましい実施形態において、配列番号75の配列を含む核酸がBlakeslea trisporaに導入される。
【0055】
HMG−CoA還元酵素、および従ってまた、触媒領域またはコード遺伝子まで減少したt−HMG−CoA還元酵素のさらなる例は、例えば、そのゲノム配列が、配列番号75を用いたデータベースからの配列の相同性比較によって知られている種々の生物から、容易に見い出され得る。
【0056】
HMG−CoA還元酵素、および従ってまた、触媒領域またはコード遺伝子まで減少したt−HMG−CoA還元酵素のさらなる例は、それ自体公知の様式で、ハイブリダイゼーションおよびPCR技術によって、そのゲノム配列が知られていない種々の生物から、例えば配列番号75の配列から開始してさらに容易に見い出され得る。
【0057】
特に好ましい実施形態において、上記調節の減少は、上記生物におけるその発現が上記生物に固有であるオーソロガス核酸と比較して調節の減少を受けやすいHMG−CoA還元酵素をコードする核酸を使用すること、および野生型プロモーターと比較して、上記生物中で調節の減少を受けやすいプロモーターを使用することによって達成される。
【0058】
従って、本発明の好ましい変形は、フィトエンデサチュラーゼ遺伝子発現のスイッチを切る、従って、生物によって生成されるフィトエンが単離されることを可能にする形質転換を含む。それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、フィトエンデサチュラーゼ、特に、配列番号69を有するBlakeslea trispora carBの遺伝子のフラグメントをコードする配列を好ましくは含む。
【0059】
従って、本発明の好ましい変形は、形質転換によってスイッチが切られるリコピンシクラーゼ遺伝子発現を含み、従って、生物によって産生されるリコピンが単離されることを可能にする。それゆえに、上記形質転換において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、好ましくは、リコピンシクラーゼ遺伝子、特にBlakeslea trisporas carR(WO 03/027293)のフラグメントをコードする配列を含む。
【0060】
更に好ましい実施形態において、Blakeslea属の生物は、野生型との比較において遺伝子改変されたヒドロキシラーゼ活性および/またはケトラーゼ活性を有するBlakeslea属の生物によって、例えば、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンなどのキサントフィルを産生することが可能である。
【0061】
従って、本発明のさらに好ましい変形において、形質転換(i)において利用されるベクターは、発現後にケトラーゼ活性および/またはヒドロキシラーゼ活性を示し、その結果、生物がゼアキサンチンまたはアスタキサンチンを産生する遺伝子情報を含む。
【0062】
ケトラーゼ活性とは、ケトラーゼの酵素活性を意味する。
【0063】
ケトラーゼとは、カロチノイドの場合によって置換されたβ−イオノン環におけるケト基を導入する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0064】
ケトラーゼとは、特に、β−カロチンをカンタキサンチンに転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0065】
従って、ケトラーゼ活性とは、特定の時間内にタンパク質ケトラーゼによって転換されるβ−カロチンの量または産生されるカンタキサンチンの量を意味する。
【0066】
本発明に従って、「野生型」という用語は、Blakeslea属の対応する遺伝子改変されていない開始生物を意味する。
【0067】
「生物」という用語は、文脈に依存して、Blakeslea属の開始生物(野生型)、またはBlakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物、または両方を意味し得る。
【0068】
好ましくは、ケトラーゼ活性を引き起こす「野生型」およびヒドロキシラーゼ活性を引き起こす「野生型」は、各々の場合において参照生物を意味する。
【0069】
Blakeslea属のこの参照生物は、接合型に関してのみ異なるBlakeslea trispora ATCC 14271またはATCC 14272である。
【0070】
Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物、および野生型または参照生物におけるケトラーゼ活性は、好ましくは以下の条件下で決定される。
【0071】
Blakeslea属の生物におけるケトラーゼ活性は、Fraserら(J. Biol. Chem. 272(10): 6128-6135, 1997)の方法に従って決定される。抽出物中のケトラーゼ活性は、脂質(ダイズレシチン)および界面活性剤(コール酸ナトリウム)の存在下で基質β−カロチンおよびカンタキサンチンを使用して決定される。ケトラーゼアッセイの基質対生成物の比はHPLCによって決定される。
【0072】
この好ましい実施形態において、Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物は、遺伝子改変されていない野生型と比較して、ケトラーゼ活性を有し、従って、トランスジェニック的にケトラーゼを発現することが可能であることが好ましい。
【0073】
さらに好ましい実施形態において、Blakeslea属の生物におけるケトラーゼ活性は、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現によって引き起こされる。
【0074】
この好ましい実施形態において、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、ケトラーゼをコードする核酸をBlakeslea属の開始生物に導入することによって引き起こされることが好ましい。
【0075】
この目的のために、原理的に、任意のケトラーゼ遺伝子、すなわち、ケトラーゼをコードする任意の核酸を使用することが可能である。
【0076】
本明細書中で言及される任意の核酸とは、例えば、RNA、DNA、またはcDNAの配列であり得る。
【0077】
イントロンを含む、真核生物供給源からのゲノムケトラーゼ配列の場合において、Blakeslea属の宿主生物が対応するケトラーゼを発現できないか、または発現するように作製されることができない場合、対応するcDNAなどのすでにプロセシングされた核酸配列を使用することが好ましい。
【0078】
本発明の方法において使用できる、ケトラーゼをコードする核酸および対応するケトラーゼの例は、例えば、以下からの配列である:
Haematoccus pluvialis、特にHaematoccus pluvialis Flotow em. Wille由来(アクセッション番号:X86782;核酸:配列番号11、タンパク質:配列番号12)、
Haematoccus pluvialis、NIES-144(アクセッション番号:D45881;核酸:配列番号13、タンパク質:配列番号14)、
Agrobacterium aurantiacum(アクセッション番号:D58420;核酸:配列番号15、タンパク質:配列番号16)、
Alicaligenes種(アクセッション番号:D58422;核酸:配列番号17、タンパク質:配列番号18)、
Paracoccus marcusii(アクセッション番号:Y15112;核酸:配列番号19、タンパク質:配列番号20)、
Synechocystis種PC6803株(アクセッション番号:NP442491;核酸:配列番号21、タンパク質:配列番号22)、
Bradyrhizobium種(アクセッション番号:AF218415;核酸:配列番号23、タンパク質:配列番号24)、
Nostoc種PCC7120株(アクセッション番号:AP003592, BAB74888;核酸:配列番号25、タンパク質:配列番号26)、
Nostoc punctiforme ATTC 29133、核酸:アクセッション番号NZ_AABC01000195、塩基対55,604〜55,392(配列番号27);タンパク質;アクセッション番号ZP_00111258(配列番号28)(推定タンパク質と注記される)、または
Nostoc punctiforme ATTC 29133、核酸:アクセッション番号NZ_AABC01000196、塩基対140,571〜139,810(配列番号29)、タンパク質:(配列番号30)(注記なし)。
【0079】
本発明のプロセスにおいて使用できる、ケトラーゼおよびケトラーゼ遺伝子のさらなる天然の例は、例えば、そのゲノム配列が、以前に記載された配列の同一性を有し、ならびに特に配列番号12および/または26および/または30の配列の同一性を有する、データベースからのアミノ酸配列または対応する逆翻訳された核酸配列の同一性を比較することによって公知である種々の生物から容易に見い出され得る。
【0080】
ケトラーゼおよびケトラーゼ遺伝子のさらなる天然の例は、以前に記載された核酸配列、特に、配列番号12および/または26および/または30の配列から開始して、それ自体公知である様式でハイブリダイゼーション技術を使用して、そのゲノム配列が未知である種々の生物からさらに容易に見い出され得る。
【0081】
ハイブリダイゼーションは、穏やかな(低ストリンジェンシー)条件下で、または好ましくは、ストリンジェントな(高ストリンジェンシー)条件下で実行され得る。
【0082】
これらの型のハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 9.31-9.57頁またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0083】
例えば、洗浄工程の間の条件は、低ストリンジェンシー条件(50℃で2×SSCを用いる)および高ストリンジェンシー条件(50℃、好ましくは65℃で0.2×SSCを用いる)(20×SSC:0.3Mクエン酸ナトリウム、3M塩化ナトリウム、pH7.0)によって限定される条件範囲から選択され得る。
【0084】
さらなる可能性は、洗浄工程の間に、室温、22℃での穏やかな条件を、65℃でのストリンジェントな条件まで、温度を上昇させることである。
【0085】
塩濃度と温度の両方のパラメーターが同時変化され得、そして2つのパラメーターのうちの1つを一定に保ち、他の一方のみを変化させることもまた可能である。ハイブリダイゼーションの間に、例えばホルムアミドまたはSDSなどの変性剤を利用することもまた可能である。50%ホルムアミドの存在下でのハイブリダイゼーションは、42℃で好ましく実行される。
【0086】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程のための条件のいくつかの例が以下に示される:
(1)例えば、以下を用いるハイブリダイゼーション条件
(i)65℃で4×SSC、または
(ii)45℃で6×SSC、または
(iii)68℃で6×SSC、100mg/ml変性魚精子DNA、または
(iv)68℃で6×SSC、0.5%SDS、100mg/ml変性フラグメント化サケ精子DNA、または
(v)42℃で6×SSC、0.5%SDS、100mg/ml変性フラグメント化サケ精子DNA、50%ホルムアミド、または
(vi)42℃で50%ホルムアミド、4×SSC、または
(vii)42℃で50%(容量/容量)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルポリピロリドン、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5、750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム、または
(viii)50℃で2×または4×SSC(穏やかな条件)、または
(ix)42℃で30〜40%ホルムアミド、2×または4×SSC(穏やかな条件)。
【0087】
(2)例えば、各々以下を用いる10分間の洗浄工程:
(i)50℃で0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDS、または
(ii)65℃で0.1×SSC、または
(iii)68℃で0.1×SSC、0.5%SDS、または
(iv)42℃で0.1×SSC、0.5%SDS、50%ホルムアミド、または
(v)42℃で0.2×SSC、0.1%SDS、または
(vi)65℃で2×SSC(穏やかな条件)。
【0088】
Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物の好ましい実施形態において、配列番号12のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によりこの配列に由来し、かつ、配列番号12の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%の同一性、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸が導入される。
【0089】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号12の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0090】
さらに、本発明の方法の好ましい実施形態は、配列番号26のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に由来し、かつ、配列番号26の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%の同一性、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸を導入する工程を包含する。
【0091】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号26の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0092】
さらに、本発明の方法の好ましい実施形態は、配列番号30のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に由来し、かつ、配列番号30の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸を導入する工程を包含する。
【0093】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号30の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0094】
「置換」という用語は、本明細書中では、1つ以上のアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換を意味する。置き換えられたアミノ酸がもとのアミノ酸と同様の特性を有する「保存性置換」(例えば、AspによるGluの置換、AsnによるGlnの置換、IleによるValの置換、IleによるLeuの置換、ThrによるSerの置換)を実行することが好ましい。
【0095】
欠失は直接的結合によるアミノ酸の置き換えである。欠失のための好ましい位置は、ポリペプチドの末端および個々のタンパク質ドメイン間の結合部である。
【0096】
挿入は、1つ以上のアミノ酸による直接的結合の形式的な置き換えを伴う、ポリペプチド鎖へのアミノ酸の挿入である。
【0097】
2つのタンパク質間の同一性とは、各タンパク質の全体の長さにわたるアミノ酸の同一性を意味し、特に、以下のパラメーターを設定して、Clustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)を使用して、DNASTAR, inc. Madison, Wisconsin(USA)からのLasergeneソフトウエアを用いる比較によって計算される同一性を意味する:
複数アラインメントパラメーター:
ギャップペナルティー 10
ギャップ長ペナルティー 10
ペアワイズアラインメントパラメーター:
K−タプル 1
ギャップペナルティー 3
ウィンドウ 5
保存対角 5。
【0098】
従って、配列番号12または26または30の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性を有するタンパク質は、配列番号12または26または30の配列とのその配列の比較において、特に上記のパラメーターのセットを用いるプログラムのロガリズム(logarithm)を使用して、少なくとも20%の同一性、好ましくは80%、85%、特に90%の同一性、特に95%の同一性を有するタンパク質を意味する。
【0099】
適切な核酸配列は、例えば、遺伝コードに従ってポリペプチド配列を逆翻訳することによって得られうる。
【0100】
この目的のために好適に使用されるコドンは、Blakeslea特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に使用されるコドンである。コドン使用頻度は、Blakeslea属の生物の他の公知の遺伝子のコンピュータ分析によって容易に見い出され得る。
【0101】
特に好ましい実施形態において、配列番号11の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0102】
特に好ましい実施形態において、配列番号25の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0103】
特に好ましい実施形態において、配列番号29の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0104】
上述のすべてのケトラーゼ遺伝子は、それ自体公知の様式で、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成によって、例えば、二重ヘリックスの個々の重複する相補性核酸ビルディングブロックのフラグメント縮合によって、さらに調製され得る。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press NewYork, 896-897頁)によって公知の様式において可能である。合成オリゴヌクレオチドの付加ならびにDNAポリメラーゼのクレナウフラグメントおよびライゲーション反応の補助を伴ってギャップを埋めること、ならびに一般的なクローニング方法もまた、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0105】
それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、ケトラーゼ、特に配列番号72を有するNostoc punctiformeケトラーゼをコードする配列を好ましく含む。
【0106】
ヒドロキシラーゼ活性とは、ヒドロキシラーゼの酵素活性を意味する。
【0107】
ヒドロキシラーゼとは、場合によって置換された、カロチノイドのβ−イオノン環上のヒドロキシル基を導入する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0108】
特に、ヒドロキシラーゼとは、β−カロチンをゼアキサンチンにまたはカンタキサンチンをアスタキサンチンに転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0109】
従って、ヒドロキシラーゼ活性は、特定の時間内にヒドロキシラーゼタンパク質によって、転換されるβ−カロチンまたはカンタキサンチンの量、または産生されるゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの量を意味する。
【0110】
従って、ヒドロキシラーゼ活性が野生型と比較して増加される場合、特定の時間内にヒドロキシラーゼタンパク質によって転換されるβ−カロチンまたはカンタキサンチンの量、または産生されるゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの量は、野生型と比較して増加される。
【0111】
ヒドロキシラーゼ活性のこの増加は、好ましくは、野生型のヒドロキシラーゼ活性の少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、なおより好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも600%である。
【0112】
本発明の遺伝子改変した生物ならびに野生型および参照生物におけるヒドロキシラーゼ活性は、以下の条件下で好ましく決定される。
【0113】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvierら(Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328)の方法によってインビトロで決定される。フェレドキシン、フェレドキシン−NADPオキシドレダクターゼ、ケタラーゼ、NADPHおよびβ−カロチンが、モノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリドとともに、所定の量の生物抽出物に加えられる。
【0114】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvier, Keller, d'HarlingueおよびCamara(Xanthophyll biosynthesis: molecular and functional characterization of carotenoid hydroxylases from pepper fruits (Capsicum annuum L.; Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328)の以下の条件下で特に好ましく決定される。
【0115】
インビトロアッセイは、0.250mlの容量で実行される。混合物は以下を含む:50mMリン酸カリウム(pH7.6)、0.025mgのホウレンソウフェレドキシン、0.5単位のホウレンソウフェレドキシン−NADP+オキシドレダクターゼ、0.25mM NADPH、0.010mgのβ−カロチン(0.1mgのTween80中で乳化)、0.05mMのモノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリドの混合物(1:1)、1単位の触媒、200のモノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリド(1:1)、0.2mgのウシ血清アルブミンおよび種々の量の生物抽出物。反応混合物は30℃で2時間インキュベートする。反応生成物は、THF、アセトンまたはクロロホルム/メタノール(2:1)などの有機溶媒で抽出し、HPLCによって測定する。
【0116】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvier, d'HarlingueおよびCamara(Molecular Analysis of carotenoid cyclae inhibition; Arch. Biochem. Biophys. 346(1) (1997) 53-64)の以下の条件下で特に好ましく決定される。
【0117】
インビトロアッセイは、250μlの容量で実行される。混合物は以下を含む:50mMリン酸カリウム(pH7.6)、種々の量の生物抽出物、20nMリコピン、250μgのパプリカ有色体ストロマタンパク質、0.2mM NADP+、0.2mM NADPHおよび1mM ATP。NADP/NADPHおよびATPはインキュベーション媒体への添加の直前に1mgのTween80とともに10mlのエタノール中に溶解する。60分、30℃での反応時間後、反応はクロロホルム/メタノール(2:1)の添加により停止される。クロロホルム中に抽出された反応生成物は、HPLCによって分析される。
【0118】
放射活性基質を用いる代替的なアッセイは、FraserおよびSandmann(Biochem. Biophys. Res. Comm. 185(1) (1992) 9-15)において記載されている。
【0119】
ヒドロキシラーゼ活性は種々の方法において、例えば、発現およびタンパク質レベルにおける阻害性調節メカニズムのスイッチを切ること、または野生型と比較して、ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を増加させることによって、増加され得る。
【0120】
ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、種々の方法において、例えば、アクチベーターによってヒドロキシラーゼ遺伝子を誘導すること、または1つ以上のヒドロキシラーゼ遺伝子コピーを導入することによって、すなわち、Blakeslea属の生物にヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの核酸を導入することによって、野生型と比較して、同様に増加され得る。
【0121】
好ましい実施形態において、ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、Blakeslea属の生物にヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの核酸を導入することによって増加される。
【0122】
この目的のために、原理的には任意のヒドロキシラーゼ遺伝子、すなわち、ヒドロキシラーゼをコードする任意の核酸を使用することが可能である。
【0123】
イントロンを含む真核生物供給源からのゲノムヒドロキシラーゼ配列の場合、宿主生物が対応するヒドロキシラーゼを発現できないか、または発現するように作製されることができないならば、対応するcDNAなどのすでにプロセシングされた核酸配列を使用することが好ましい。
【0124】
ヒドロキシラーゼ遺伝子の1つの例は、アクセッション番号AX038729を有するHaematococcus pluvialisヒドロキシラーゼをコードする核酸(WO 0061764;核酸:配列番号31、タンパク質:配列番号32)、Erwinia uredovora 20D3ヒドロキシラーゼ(ATCC 19321、アクセッション番号D90087;核酸:配列番号33、タンパク質:配列番号34)または配列番号76の配列によってコードされるThermus thermophilusヒドロキシラーゼ(DE 102 34 126.5)由来である。
【0125】
更なるヒドロキシラーゼは、以下のアクセッション番号を有する核酸によってコードされる:
|emb|CAB55626.1、CAA70427.1、CAA70888.1、CAB55625.1、AF499108_1、AF315289_1、AF296158_1、AAC49443.1、NP_194300.1、NP_200070.1、AAG10430.1、CAC06712.1、AAM88619.1、CAC95130.1、AAL80006.1、AF162276_1、AAO53295.1、AAN85601.1、CRTZ_ERWHE、CRTZ_PANAN、BAB79605.1、CRTZ_ALCSP、CRTZ_AGRAU、CAB56060.1、ZP_00094836.1、AAC44852.1、BAC77670.1、NP_745389.1、NP_344225.1、NP_849490.1、ZP_00087019.1、NP_503072.1、NP_852012.1、NP_115929.1、ZP_00013255.1。
【0126】
従って、この好ましい実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシラーゼ遺伝子が、野生型と比較して、Blakeslea属の本発明に従う好ましいトランスジェニック生物中に存在する。
【0127】
この好ましい実施形態において、遺伝子改変された生物は、例えば、ヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸を有する。
【0128】
上記の好ましい実施形態において、ヒドロキシラーゼ遺伝子として、配列番号32、24のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸、もしくは配列番号76の配列によってコードされるタンパク質をコードする核酸、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に派生し、かつ配列番号32、34の配列、もしくは配列番号76を有する配列によってコードされる配列に対して、アミノ酸レベルで、少なくとも30%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性、より好ましくは少なくとも70%の同一性、なおより好ましくは少なくとも80%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%の同一性、特に、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつヒドロキシラーゼの酵素的特性を有する配列を使用することが好ましい。
【0129】
ヒドロキシラーゼおよびヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例は、例えば、上記のように、そのゲノム配列が知られている種々の生物から、配列番号31、33、または76との、データベースからのアミノ酸配列または対応する逆翻訳された核酸配列の相同性比較によって、容易に見い出され得る。
【0130】
ヒドロキシラーゼおよびヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例は、それ自体公知の様式で、例えば、ハイブリダイゼーションおよびPCR技術によって、上記のように、そのゲノム配列が知られていない種々の生物から、配列番号31、33、または76の配列から開始してさらに容易に見い出され得る。
【0131】
さらに特に好ましい実施形態において、配列番号32、34の配列のヒドロキシラーゼのアミノ酸配列、または配列番号76の配列によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸は、ヒドロキシラーゼ活性を増加するために生物に導入される。
【0132】
適切な核酸配列は、例えば、遺伝コードに従ってポリペプチド配列の逆翻訳によって得られうる。
【0133】
この目的のために、生物特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に使用されるコドンを使用することが好ましい。この使用頻度は、問題の生物の他の公知の遺伝子のコンピュータ分析に基づいて容易に決定されうる。
【0134】
特に好ましい実施形態において、配列番号31、33、または76の配列を含む核酸が生物に導入される。
【0135】
上述のすべてのヒドロキシラーゼ遺伝子は、それ自体公知の様式で、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成によって、例えば、二重ヘリックスの個々の重複する相補性核酸ビルディングブロックのフラグメント縮合によって、さらに調製され得る。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet, 第2版, Wiley Press NewYork, 896-897頁)によって公知の様式において可能である。合成オリゴヌクレオチドの付加ならびにDNAポリメラーゼのクレナウフラグメントおよびライゲーション反応の補助を伴ってギャップを埋めること、ならびに一般的なクローニング方法もまた、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される。
【0136】
それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の更なる実施形態において、ヒドロキシラーゼ、特に配列番号70を有するHaematococcus pluvialisヒドロキシラーゼをコードする配列、または配列番号71を有するErwinia uredovaヒドロキシラーゼ、または配列番号76の配列によってコードされるThermus thermophilusヒドロキシラーゼをコードする配列を好ましく含む。
【0137】
形質転換(i)において利用されるベクターは、好ましくはまた、発現を制御および支持する領域、特にプロモーターおよびターミネーターを含む。
【0138】
形質転換(i)において利用されるベクターは、好ましくはgpdプロモーターおよび/またはptef1プロモーターおよび/またはtrpCターミネーターを含み、これらのすべてがBlakesleaの形質転換において特に、成功することが判明した。発現および転写を制御するための当業者によく知られている「逆方向反復」(IR, Rompp Lexikon der Biotechnologie 1992, Thieme Verlag Stuttgart, 407頁「Inverse repetitive sequences」)の使用もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0139】
ベクター中で利用されるgpdプロモーターは、有利には、配列番号1の配列を有する。ベクター中で利用されるtrpCターミネーターは、有利には、配列番号2の配列を有する。ベクター中で利用されるptef1プロモーターは、有利には、配列番号35の配列を有する。
【0140】
本発明において、特にAspergillus nidulans由来のgpdプロモーターおよびtrpCターミネーターおよびBlakeslea trispora由来のptef1プロモーターを使用することが好ましい。
【0141】
形質転換(i)において利用されるベクターは、特に耐性遺伝子を含む。後者は、好ましくはハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、特に大腸菌由来のものである。この耐性遺伝子は、形質転換の検出および細胞の選択に特に適切であることが判明している。
【0142】
このようなhphのために利用される好ましいプロモーターはp−gpdAであり、これはAspergillus nidulansのグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのコード領域のプロモーターである。hphのために好ましく利用されるターミネーターはt−trpCであり、これは、Aspergillus nidulansアントラニル酸シンターゼ成分をコードするtrpC遺伝子のターミネーターである。
【0143】
pBinAHygベクターの誘導体は、特に適切なベクターであることが判明した。従って、形質転換のために利用されるこのベクターは、好ましくは配列番号3を含む。所望されるカロチノイドまたはその前駆体に依存して、上記のように、ヒドロキシラーゼ、ケトラーゼ、フィトエンデサチュラーゼなどをコードする配列がこのベクターに加えられるだろう。従って、本発明の1つの実施形態において、このベクターは、上記フィトエンデサチュラーゼをコードする配列番号69の配列を含む。本発明のさらなる実施形態において、このベクターはまた、ケトラーゼをコードする配列番号72の配列を含む。本発明のさらなる実施形態において、このベクターはさらに、ヒドロキシラーゼをコードする配列番号70または71または76の配列を含む。上述の配列の対応する組み合わせもまた、本発明の範囲内にある。従って、1つの実施形態において、このベクターは、ケトラーゼをコードする配列番号72の配列と、ヒドロキシラーゼをコードする配列番号70または71または76の配列の両方を含み、従って、アスタキサンチンが産生されることを可能にする。
【0144】
特に、本発明の範囲内で、配列番号37〜51および62からなる群から選択されるベクターを使用することが可能である。
【0145】
本発明の方法によれば、遺伝子改変されたBlakeslea生物、特に遺伝子改変されたBlakeslea trispora種またはそれらによって形成される菌糸体を得ることができる。
【0146】
遺伝子改変された生物は、カロチノイド、キサントフィル、またはそれらの前駆体、特にフィトエン、ビキシン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、およびカンタキサンチンを産生するために使用できる。適当な遺伝子情報を導入することにより、野生型中には天然には存在しない新規なカロチノイドが、特異的に遺伝子改変された細胞によって、またはそれらによって形成した菌糸体によって生成され、引き続いて単離されることもまた可能である。
【0147】
特異的に遺伝子改変された細胞またはそれによって形成した菌糸体を使用して、カロチノイドまたはそれらの前駆体を入手することが好ましい。
【0148】
遺伝子改変が、見い出された接合型(Blakeslea trisporaについては、(+)または(−))の一方の細胞においてのみ実行される場合、対応する他方、改変されていない接合型が培養に加えられる。なぜなら、この方法において、第2の、改変されていない接合型によって放出される物質(例えば、トリスポリック酸)のおかげで、カロチノイドまたはそれらの前駆体の良好な産生を達成することが可能であるからである。しかし、有利には、遺伝子改変は、両方の接合型の細胞において実行され、次いでこれらは一緒に培養され、それによって特に良好な増殖およびカロチノイドまたはそれらの前駆体の最適な産生を達成する。トリスポリック酸の(人工的な)添加は可能でありかつ有用である。
【0149】
トリスポリック酸は、BlakesleaなどのMucorales真菌中の性ホルモンであり、これは接合胞子の形成およびβ−カロチンの産生を刺激する(van den Ende 1968, J. Bacteriol. 96:1298-1303, Austinら、1969, Nature 223:1178-1179, Reschke Tetrahedron Lett. 29:3435-3439, van den Ende 1970, J. Bacteriol. 101:423-428)。
【実施例】
【0150】
材料および方法
分子遺伝学研究を、他に記載しない限り、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al., 1999, John Wiley & Sons)における方法によって実行した。
【0151】
株および増殖条件
Blakeslea trispora株ATCC 14271(接合型(+))およびATCC 14272(接合型(−))をアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手した。B. trisporaをMEP培地(麦芽エキス−ペプトン培地:30g/l 麦芽抽出物(Difco)、3g/lペプトン(Soytone,Difco)、20g/l寒天、pH5.5に設定、H2Oで1000mlに調整(28℃))中で増殖させた。
【0152】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス LBA4404をHoekemaら(1983, Nature 303:179-180)に従って、28℃で24時間、アグロバクテリア最少培地(AMM):10mM K2HPO4、10mM KH2PO4、10mM グルコース、MM塩(2.5mM NaCl、2mM MgSO4、700μM CaCl2、9μM FeSO4、4mM (NH4)2SO4)中で増殖させた。
【0153】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスの形質転換
プラスミドpBinAHygをアグロバクテリア株LBA 4404にエレクトロポレーションした(Hoekemaら, 1983, Nature 303:179-180)(MozoおよびHooykaas, 1991, Plant Mol. Biol. 16:917-918)。以下の抗生物質を、アグロバクテリア増殖の間に選択のために使用した:リファンピシン50mg/l(A.ツメファシエンス染色体についての選択)、ストレプトマイシン30mg/l(ヘルパープラスミドについての選択)、およびカナマイシン100mg/l(バイナリーベクターについての選択)。
【0154】
Blakeslea trisporaの形質転換
AMMにおける増殖の24時間後、アグロバクテリアを、誘導培地(IM:MM塩、40mM MES(pH 5.6)、5mM グルコース、2mM ホスフェート、0.5% グリセロール、200μMアセトシリンゴン)中で0.15のOD600まで形質転換のために希釈して、再度約0.6のOD600まで、IMで一晩増殖させた。
【0155】
Blakeslea ATCC 14271またはATCC14272およびアグロバクテリウムの同時インキュベーションのために、100μlのアグロバクテリア懸濁物を、100μlのBlakeslea胞子懸濁物(107胞子/ml、0.9%NaCl中)と混合し、滅菌様式でIM−アガロースプレート(IM+18g/l寒天)上のナイロンメンブレン(Hybond N,Amersham)上に分注した。26℃で3日間のインキュベーション後、メンブレンをMEP−寒天プレート(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)に移した。形質転換したBlakeslea細胞を選択するために、培地は100mg/lの濃度でハイグロマイシンを含み、そしてアグロバクテリアに対して選択するために、100mg/lセフォタキシムを含んだ。インキュベーションを26℃で約7日間実行した。これに続いて、菌糸体を新鮮な選択プレートに移すことを行った。得られた胞子を0.9%NaClですすぎ、そしてCM17−1寒天(3g/l グルコース、200mg/l L−アスパラギン、50mg/l MgSO4x7H2O、150mg/l KH2PO4、25μg/l チアミン−HCl、100mg/l 酵母抽出物、100mg/l デオキシコール酸ナトリウム、100mg/L ハイグロマイシン、100mg/L セフォタキシム、pH 5.5、18g/l寒天)上にプレーティングした。個々の遺伝子改変された胞子を、それらを選択培地上に個々に配置することによって、BectonDickinson製のFACS装置(モデルVantage+Divaオプション)を使用して単離した。
【0156】
アグロバクテリウム媒介形質転換による遺伝子改変されたBlakeslea trisporaの調製
組換えプラスミドpBinAHygの調製
gpdA−hph−trpC−カセットを、プラスミドpANsCos1(図1、Osiewacz, 1994, Curr. Genet. 26:87-90, 配列番号4)からのBglII/HindIIIフラグメントとして単離し、そしてBamHI/HindIIIで切断したバイナリープラスミドpBin19(Bevan, 1984, Nucleic Acids Res. 12:8711-8721)にライゲーションした。この方法で得られたベクターはpBinAHygと呼ばれ(図2、配列番号3)、gpdプロモーター(配列番号1)の制御下に大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、ならびにAspergillus nidulans由来のtrpCターミネーター(配列番号2)およびアグロバクテリウムDNA導入のために必要である対応するボーダー配列を含んだ。本明細書中以下に記載される例示的な実施形態において言及されるベクターは、pBinAHyg誘導体である。
【0157】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスへのpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入
pBinAHygプラスミドのアグロバクテリアへの導入は以下の実施例によって記載されている。この誘導体は類似の様式で導入された。
【0158】
プラスミドpBinAHygを、アグロバクテリア株LBA 4404にエレクトロポレーションした(Hoekemaら、1983, Nature 303:179-180)(MozoおよびHooykaas, 1991, Plant Mol. Biol. 16:917-918)。以下の抗生物質を、アグロバクテリア増殖の間に選択のために使用した:リファンピシン50mg/l(A.ツメファシエンス染色体についての選択)、ストレプトマイシン30mg/l(ヘルパープラスミドについての選択)、およびカナマイシン100mg/l(バイナリーベクターについての選択)。
【0159】
Blakeslea trisporaへのpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入
AMMにおける増殖の24時間後、アグロバクテリアを、誘導培地(IM:MM塩、40mM MES(pH 5.6)、5mM グルコース、2mM ホスフェート、0.5% グリセロール、200μMアセトシリンゴン)中で0.15のOD660まで形質転換のために希釈し、再度約0.6のOD660まで、IMで一晩増殖させた。
【0160】
Blakeslea trispora(B.t.)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.t.)の同時インキュベーションのために、100μlのアグロバクテリア懸濁物を、100μlのBlakeslea胞子懸濁物(107胞子/ml、0.9%NaCl中)と混合し、滅菌様式でIM−アガロースプレート(IM+18g/l寒天)上のナイロンメンブレン(Hybond N,Amersham)上に分注した。26℃で3日間のインキュベーション後、メンブレンをMEP−寒天プレート(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)に移した。
【0161】
形質転換したBlakeslea細胞を選択するために、培地は100mg/lの濃度でハイグロマイシンを含み、そしてアグロバクテリアに対して選択するために、100mg/lセフォタキシムを含んだ。インキュベーションを26℃で約7日間実行した。これに続いて、菌糸体を新鮮な選択プレートに移すことを行った。得られた胞子を0.9%NaClですすぎ、そしてCM17−1寒天(3g/l グルコース、200mg/l L−アスパラギン、50mg/l MgSO4x7H2O、150mg/l KH2PO4、25μg/l チアミン−HCl、100mg/l 酵母抽出物、100mg/l デオキシコール酸ナトリウム、pH 5.5、100mg/l セフォタキシム、100mg/l ハイグロマイシン、18g/l寒天)上にプレーティングした。新鮮な選択プレートへの胞子の移動を3回反復した。このようにして、形質転換体Blakeslea trispora GMO 3005を単離した。代替的には、胞子を個々に100mg/L セフォタキシム、100mg/l ハイグロマイシンを含むCM−17寒天に適用することによって、BectonDickinson FacsVantage+Diva Optionによって、GMO(遺伝子改変生物)を選択した。この場合において、真菌の菌糸体は、胞子が遺伝子改変された場合のみに形成した。
【0162】
Blakeslea trisporaにおけるpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入に起因する遺伝子改変の検出
導入の検出が、Blakeslea trisporaにおけるpBinAHygについて、以下の実施例によって記載されている。
【0163】
誘導体の導入の検出は、同様の様式で実行された。
【0164】
200mlのMEP培地(30g/l 麦芽抽出物、3g/l ペプトン、pH 5.5)に、105〜107個の胞子のBlakeslea trispora GMO 3005形質転換体を接種し、ロータリーシェーカー上で200rpmおよび26℃で、7日間インキュベートした。成功した形質転換を検出するために、DNAを菌糸体から単離し(Peqlab Fungal DNA Miniキット)、PCR(プログラム:94℃で1分間、次いで、1分間94℃、1分間58℃、1分間72℃の30サイクル)において使用した。
【0165】
プライマーhph−フォワード(5’−CGATGTAGGAGGGCGTGGATA、配列番号5)およびプライマーhph−リバース(5’−GCTTCTGCGGGCGATTTGTGT、配列番号6)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)を検出するために使用した。予測されるhphフラグメントは800bp長であった。
【0166】
プライマーnptIII−フォワード(5’−TGAGAATATCACCGGAATTG、配列番号7)およびプライマーnptIII−リバース(5’−AGCTCGACATACTGTTCTTCC、配列番号8)を、カナマイシン耐性遺伝子nptIIIの増幅のために、従ってアグロバクテリアについてのコントロールとして使用した。予測されるnptIIIフラグメントは700bp長であった。
【0167】
プライマーMAT292(5’−GTGAATGGAAATCCCATCGCTGTC、配列番号9)およびプライマーMAT293(5’−AGTGGGTACTCTAAAGGCCATACC、配列番号10)を、グリセリンアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子gpd1のフラグメントの増殖のため、従って、Blakeslea trisporaについてのコントロールとして使用した。予測されるgpdlフラグメントは500bp長であった。
【0168】
図3は、標準ゲルに基づくBlakeslea trisporaDNAのPCRの結果を示す。ゲルのレーンには以下のようにロードした:
1)100bpサイズマーカー(100bp〜1kb)
2)B.t.GMO 3005 プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
3)B.t.GMO 3005 プライマーhph−フォワード/hph−リバース
4)B.t.GMO 3005 プライマーMAT292/MAT293(gpd)
5)pBinAHygプラスミドを有するA.t. プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
6)pBinAHygプラスミドを有するA.t. プライマー hph−フォワード/hph−リバース
7)B.t.14272WT プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
8)B.t.14272WT プライマーhph−フォワード/hph−リバース
9)B.t.14272WT プライマーMAT292/MAT293(gpd)。
【0169】
ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)および、陽性対照として、グリセリンアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gpd1)がBlakeslea trispora DNAにおいて検出された。対照的に、nptIIIは検出されなかった。
【0170】
従って、アグロバクテリウム媒介形質転換によるBlakeslea trisporaの遺伝子改変が検出された。
【0171】
ホモカリオン性Blakeslea trisporaGMOの単離:
pBinAHygベクターおよびpBinAHyg誘導体のBlakeslea trisporaへの首尾よい導入は、Blakeslea trisporaの遺伝子改変された生物(GMO)を産生する。しかし、Blakesleaは栄養細胞および生殖細胞のサイクルのすべての段階において多核細胞を有する。それゆえに、外来性DNAは、通常1つの核においてのみ挿入される。外来性DNAがすべての核に挿入されるBlakeslea株を得ることが目的であり、すなわち、その目的は同核組換え真菌菌糸体である。
【0172】
1)FACS(蛍光活性化細胞分取)の手段による同核組換え株の調製
Blakeslea trisporaの胞子または遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の少ない割合が本来単核である。pBinAHygまたはpBinAHyg誘導体の外来DNAを含む同核組換え株を産生するために、単核胞子をFACSを用いて分取し、100mg/lセフォタキシムおよび100mg/lハイグロマイシンを含むMEP(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)上にプレーティングした。ここで産生された菌糸体は同核であった。FACS分取のために、3日目の古いスメアの胞子を、寒天プレートあたり、10mlのTris−HCl 50mM+0.1% Span20で洗浄した。胞子濃度は0.5〜0.8×107胞子/mlであった。1mlのDMSOおよび10μlのSyto 11(DMSO中の色素ストック溶液、Molecular Probes No.S−7573)を9mlの胞子懸濁物に加えた。これに続いて、30℃で2時間の染色を行った。選択および適用を、Becton Dickinson FacsVantage+Diva Option型装置を用いて実行した。最初に、個々の胞子を凝集物および夾雑物から分離するために、サイズ選択を実行した。次いで、これらの胞子を、それらの蛍光に従って(励起=488nm;発光=530nm)、適用し分取した。蛍光頻度の分布のガウス曲線の左の肩は、単核胞子を含んだ。
【0173】
2)核の数を減少させることおよびFACSを用いる選択による同核株の調製
胞子あたりの核の数を減少させるために、選択の前に、胞子懸濁物をMNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)で処理し、従って、化学的突然変異誘発によって核の数の減少を達成した。
【0174】
このために、最初に、Tris−HCl緩衝液、pH 7.0中に1×107胞子/mlを含む胞子懸濁物を調製した。この胞子懸濁物を、100μg/mlの最終濃度のMNNGと混合した。MNNG中のインキュベーションの時間は、胞子の生存率が約5%であるような方法で選択した。MNNGとのインキュベーション後、胞子を、50mMリン酸緩衝液pH7.0中の1g/l Span20で3回洗浄し、分取し、そして1)に記載される方法によって選択した。
【0175】
代替として、Cerda-OlmedoおよびPatricia Reau in Mutation Res., 9(1970)369-384によって記載されるようなX線およびUV光線を使用することによって胞子中の核の数を減少させることもまた可能であった。
【0176】
3)劣性選択マーカーのための選択による同核株の調製
同核菌糸体の選択のための適切な劣性選択マーカーは、例えば、劣性選択マーカーpyrGである。Blakeslea trisporaの野生型株はpyrG+である。これらの株は、ピリミジンアナログ5−フルオロロテート(FOA)の存在下で増殖することができない。なぜなら、これらは、オロチジン5’−一リン酸デカルボキシラーゼを介してFOAを致死的な代謝産物に転換するからである。遺伝子改変されたpyrG−−同核Blakesleaは、オロチジン5’−一リン酸デカルボキシラーゼの酵素活性を欠く。結果として、これらのpyrG−株は、5−フルオロオロテートを利用することができない。それゆえに、これらの株は、FOAおよびウラシルの存在下で増殖する。pyrG−突然変異および外来DNAインサートが単核胞子の核と合わさった場合、この胞子は同核組換え真菌菌糸体を形成しうる。
【0177】
最初に、プラスミドpBinAHygBTpyrG−SCO(配列番号36、図4)を、Blakeslea trisporaからのpyrGのフラグメント(配列番号65)をpBinAHygに挿入することによって生成した。上記プラスミドは、Blakeslea trisporaに形質転換され、そして相同組換えに起因して、そこでpyrG破壊を引き起こした。
【0178】
pyrG−表現型を有する同核Blakeslea trispora GMOを以下のように選択した。pBinAHygBTpyrG−SCOのアグロバクテリウム媒介形質転換のために、100mg/L セフォタキシムおよび100mg/l ハイグロマイシンを含むMEP(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)上でのプレーティングを上記のように実行した。形質転換体の胞子を、寒天プレートあたり、10mlのTris−HCl 50mM+0.1% Span20で洗浄した。胞子濃度は0.5〜0.8×107胞子/mlであった。次いで、胞子を、100mg/l セフォタキシムおよび100mg/l ハイグロマイシンを含むFOA培地上にプレーティングした。FOA培地は、1リットルあたり、20gのグルコース、1gのFOA、50mgのウラシル、200mlのクエン酸緩衝液(0.5M、pH 4.5)およびSutter, 1975, PNAS, 72:127に従う40mlの痕跡塩(trace salt)溶液を含んでいた。同核pyrG−突然変異体は、ウラシル含有FOA培地上での増殖を示したが、ウラシルを含まないFOA培地上にプレーティングされた場合、増殖を示さなかった。同様にして、同核GMOを、以下にキサントフィルの産生について記載されるBlakeslea trispora GMOから調製した。
【0179】
代替的には、5−炭素−5−デアザリボフラビンおよびさらにハイグロマイシンを含む培地上に、Ronceroらによるプロトコールに従って、胞子をプレーティングすることが可能である(Ronceroら、1984, Mutation Research, 125: 195-204)。これは、遺伝子型hygRおよびdar−のホモカリオン細胞が選択されることを可能にする。
【0180】
この原理に従って、表現型hygRおよびdar−を有するホモカリオン性Blakeslea trispora株が生成される。
【0181】
カロチノイドおよびカロチノイド前駆体を産生するためのBlakeslea trisporaの遺伝子改変生物を調製するための例示的な実施形態
以下に言及するプラスミドを、「重複伸長PCR」法、および引き続くpBinAHygプラスミドへの増幅産物の挿入によって生成した。重複伸長PCR法は、Innisら(編)PCR protocols: a guide to methods and applications, Academic Press, San Diegoにおいて記載されるように実行した。pBinAHyg誘導体の形質転換および同核遺伝子改変Blakeslea trispora株の調製を、上記のように実行した。
【0182】
ゼアキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、ゼアキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、従って、とりわけ、ヒドロキシラーゼ(crtZ)をコードする。
【0183】
− ptef1−HPcrtZ、Blakeslea trispora ptef1プロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144(アクセッション番号AF162276)からのHPcrtZヒドロキシラーゼ(配列番号70)の遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpTEF1−HPcrtZ、配列番号37、図5)。
【0184】
− p−carRA−HPcrtZ、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ、配列番号38、図6)。
【0185】
− p−carB−HPcrtZ、Blakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarB−HPcrtZ、配列番号39、図7)。
【0186】
− p−carRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IR、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む。逆方向反復構造がヒドロキシラーゼ遺伝子の下流に位置しており、この構造は、carAの3’末端およびcarAの下流の領域に由来する(IR、配列番号74、「逆方向反復1」carAの約350bp、次いで約200bp「ループ」そして次いで約350bp「逆方向反復2」)(Seq.pBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IR、配列番号40、図8)。
【0187】
− p−carRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IR、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む。ヒドロキシラーゼ遺伝子は、carAの3’末端およびcarAの下流の領域に由来する逆方向反復構造に融合されている(IR、配列番号74、「逆方向反復1」carAの約350bp、次いで約200bp「ループ」そして次いで約350bp「逆方向反復2」)。結果として、誘導された融合タンパク質は、Haematococcus pluvialisヒドロキシラーゼおよびBlakeslea trispora CarAのカルボキシ末端からなる(Seq.pBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IR、配列番号41、図9)。
【0188】
− p−tef1−EUcrtZ、ptef1プロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3(アクセッション番号D90087)からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子(配列番号71)を含む(Seq.pBinAHygBTpTEF1−EUcrtZ、配列番号42、図10)。
【0189】
− p−carRA−EUcrtZ、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ、配列番号43、図11)。
【0190】
− p−carB−EUcrtZ、Blakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarB−EUcrtZ、配列番号44、図12)。
【0191】
− p−gpdA−HPcrtZ−t−crtZ、gpdAプロモーターの制御下にHaematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子およびt−crtZターミネーター(すなわち、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのcrtZの下流の配列部分(配列番号73))を含む(Seq.pBinAHyg−gpdA−HPcrtZ−tcrtZ、配列番号43、図13)。
【0192】
− p−gpdA−BTcarR−HPcrtZ−BTcarA、Blakeslea trisporaからのリコピンシクラーゼcarRの遺伝子、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHpcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子、およびBlakeslea trisporaからのフィトエンシンターゼcarAの遺伝子の遺伝子融合を含み、かつAspergillus nidulans gpdAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHyg−carR_crtZ_carA、配列番号46、図14)。
【0193】
カンタキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、カンタキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、従って、とりわけ、ケトラーゼ(crtW)をコードする。
【0194】
− p−tef1−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102(ORF148、アクセッション番号NZ_AABC01000196)からのNPcrtWケトラーゼ(配列番号72)の遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora ptef1プロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpTEF1−NpucrtW、配列番号47、図15)。
【0195】
− p−carRA−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−NpucrtW、配列番号48、図16)。
【0196】
− p−carB−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarB−NpucrtW、配列番号49、図17)。
【0197】
アスタキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、アスタキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、すなわち、とりわけ、ヒドロキシラーゼ(crtZ)およびケトラーゼ(crtW)をコードする。
【0198】
− p−carRA−HPcrtZ−pcarRA−NPcrtW、Haematococcus pluvialis Flotow NIES−144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子およびNostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子(ORF148、アクセッション番号NZ_AABC01000196)を含み、両方とも各々の場合においてBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ−BTpcarRA−NpucrtW、配列番号50、図18)。
【0199】
− p−carRA−EUcrtZ−pcarRA−NPcrtW、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子(アクセッション番号D90087)、およびNostoc punctiforme PCC73102からのNPcrTWケトラーゼの遺伝子を含み、両方とも各々の場合においてBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ−BTpcarRA−NpucrtW、配列番号51、図19)。
【0200】
Blakeslea trisporaの遺伝子改変の例として利用され得る遺伝子およびプロモーターのクローニングおよび配列分析
種々のBlakeslea trisporaの遺伝子およびプロモーターのクローニングおよび配列決定が以下に例として記載される。
【0201】
ptef1のクローニングおよび配列決定分析
Blakeslea trispora p−tefを、Genbankにおいて以前に公開された、Blakeslea trispora翻訳伸長因子1−αの構造遺伝子(AF157235)の配列に基づいてクローニングした。その配列から開始して、エントリーAF157235プライマーを、上記構造遺伝子の上流のプロモーター領域を増幅および配列決定するために、逆方向PCRのために選択した。
【0202】
Blakeslea trispora ATCC14272のXho1切断されかつ環状化された200ngのゲノムDNAの逆方向ネスト化PCRにおいて、3000bpフラグメントを、以下の反応混合物中に得た:テンプレートDNA(Blakeslea trispora ATCC14272の1μgのゲノムDNA)、プライマーMAT344 5’−GGCGTACTTGAAGGAACCCTTACCG−3’(配列番号63)およびプライマーMAT 345 5’−ATTGATGCTCCCGGTCACCGTGATT−3’(配列番号64)、各0.25μM、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2Oで100μlにする。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、60秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。3000bpフラグメント中のtef1遺伝子の推定の開始コドンの上流の配列部分は、ptef1プロモーターと見なされた。
【0203】
Blakeslea trispora由来のHMG−CoA還元酵素の遺伝子のクローニング、配列決定分析
最初に、Blakeslea trispora ATCC 14272、接合型(−)の遺伝子ライブラリーを調製するために、コスミドベクターpANsCos1を使用した。ベクターをXbaIを用いる切断によって線状化し、次いで脱リン酸化した。BamHIを用いるさらなる切断は挿入部位を生成し、そこにBlakeslea trisporaゲノムDNA(部分的にSau3AIで切断され、脱リン酸化されている)がライゲーションされた。続いて、この方法で生成されたコスミドはインビトロでパッケージングされ、大腸菌に移された。
【0204】
HMG−CoA還元酵素をコードするBlakeslea trispora遺伝子のフラグメントの既知の配列に基づいて(Eur. J. Biochem 220, 403-408 (1994))、315bp DNAプローブを以下のPCRによって調製した。反応混合物:1μgのBlakeslea trispora ATCC 14272ゲノムDNA、プライマーMAT314 5’−CCGATGGCGACGACGGAAGGTTGTT−3’(配列番号79)およびプライマーMAT315 5’−CATGTTCATGCCCATTGCATCACCT−3’(配列番号80)、各0.25μM、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2Oで100μlにする。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);58℃、30秒間、72℃、30秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0205】
このDNAプローブは、コスミド遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために使用した。そのコスミドが上記DNAプローブとハイブリダイズするクローンを同定した。このコスミドのインサートを配列決定した。DNA配列は、MHG-CoA還元酵素の遺伝子に割り当てられた部分を含んだ(配列番号75)。
【0206】
carBのクローニングおよび配列決定分析
(carB=Blakeslea trisporaフィトエンデサチュラーゼ遺伝子)
縮重プライマーMAT182 5’−GCNGARGGNATHTGGTA−3’(配列番号52)およびMAT192 5’−TCNGCNAGRAADATRTTRTG−3’(配列番号53)を、フィトエンデサチュラーゼのペプチド配列の比較、およびPhycomyces blakesleeanus、Cercospora nicotianae、Phaffia rhodozymaおよびNeurospora crassaの対応するDNA配列の比較から導いた。PCRを100μl反応混合物中で実行した。これらは、Blakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、1μM MAT182、1μM MAT192、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液 10×、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で加える)、H2O(100μlに調整)を含んだ。
【0207】
PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);40℃、30秒間、72℃、30秒間、95℃、30秒間(35サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0208】
これは、358bpフラグメントを生じ、この導き出されたペプチド配列はフィトエンデサチュラーゼ配列と類似している。逆方向PCR(Innisら、PCR protocols: a guide to methods and applications. 1990.219〜227頁)の方法を、染色体ウォーキングの原理に従って、以下のように350bpフラグメントの上流および下流の遺伝子領域を増幅、クローニング、および配列決定のために使用した。
【0209】
(i)1.1kbpフラグメント、プライマーMAT219 5’−AAGTGACACCGGTTACACGCTTGTCTT−3’(配列番号54)およびMAT 220 5’−GCTTATCACCATCTGTTACCTCCTTGC−3’(配列番号55)を用いるPCRによって、EcoRI切断されかつ環状化されたBlakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、0.25μM MAT219、0.25μM MAT220、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2O(100μlに調整)から得られた。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、60秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0210】
(ii)2.9kbpフラグメント、プライマーMAT219およびMAT220を用いるPCRによって、XbaI切断されかつ環状化されたBlakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、0.25μM MAT219、0.25μM MAT220、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2O(100μlに調整)から得られた。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、3分間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0211】
図20(配列番号77)は、クローニングされた配列部分を図解的に示す。配列決定を、クローニングされたフラグメントおよびPCR産物を使用して順方向および逆方向で実行した。図21(配列番号78)は、クローニングされた配列部分の配列を示す。
【0212】
配列比較
carBのヌクレオチド配列および誘導タンパク質CarBのペプチド配列を、関連するタンパク質の既知の配列と比較した。配列を、GAPプログラムおよびBESTFITプログラムを使用して比較した。
【0213】
CarB−GAPに従う同一のアミノアシル残基
プログラム設定:
ギャップ重み: 8
長さ重み: 2
平均マッチ: 2.912
平均ミスマッチ: −2.003
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致するアミノ酸の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 72.491
Phaffia rhodozyma: 50.460
Neurospora crassa: 47.943
Cercospora nicotianae: 47.740
【0214】
CarB−BESTFITに従う同一のアミノアシル残基
プログラム設定:
ギャップ重み: 8
長さ重み: 2
平均マッチ: 2.912
平均ミスマッチ: −2.003
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致するアミノ酸の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 73.380
Phaffia rhodozyma: 53.175
Neurospora crassa: 51.896
Cercospora nicotianae: 50.791
【0215】
carB−GAPに従う同一の塩基
プログラム設定:
ギャップ重み: 50
長さ重み: 3
平均マッチ: 10.000
平均ミスマッチ: 0.000
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致する塩基の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 64.853
Cercospora nicotianae: 50.143
Phaffia rhodozyma: 43.179
Neurospora crassa: 42.130
【0216】
carB−BESTFITに従う同一の塩基
プログラム設定:
ギャップ重み: 50
長さ重み: 3
平均マッチ: 10.000
平均ミスマッチ: −9.000
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致する塩基の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 68.926
Phaffia rhodozyma: 62.403
Neurospora crassa: 60.230
Cercospora nicotianae: 56.884
【0217】
carB発現のためのクローニング
Blakeslea trispora carBをクローニングおよび発現するために、可能なタンパク質配列が、上記のBlakeslea trisporaからクローニングされた配列部分から6つのリーディングフレームにおいて導き出された。これらのタンパク質配列は、Phycomyces blakesleeanus、Phaffia rhodozyma、Neurospora crassa、Cercospora nicotianaeからのフィトエンデサチュラーゼの配列と比較された。配列比較に基づいて、3つのエキソンが、Blakeslea trisporaゲノムDNAのクローニングされた配列部分において同定され、これは、まとめると、その由来する遺伝子産物が、その全体の長さにわたって、Phycomyces blakesleeanusのCarBフィトエンデサチュラーゼと72.7%同一であるアミノアシル残基を有するコード領域を生じる。3つの可能性のあるエキソンおよび2つの可能性のあるイントロンを含むこの配列部分は、それゆえに、遺伝子carBと呼ばれた。予測される遺伝子構造を確認するために、Blakeslea trispora carBのコード配列は、Blakeslea trispora cDNAをテンプレートとして、ならびにプライマーBol1425 5’−AGAGAGGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGC−3’(配列番号56)およびBol1426 5’−AGAGAGGGATCCATGTCTGATCAAAAGAAGCA−3’(配列番号57)を使用して、PCRによって生成された。得られたDNAフラグメントを配列決定した。エキソンおよびイントロンの位置は、ゲノムcarB DNAとcDNAを比較することによって確認された。図21は、carBのコード配列を図解的に示す。大腸菌中でのcarBの発現のために、最初に、carBにおけるNdeI切断部位を重複伸長PCR法によって除去し、NdeI切断部位を遺伝子の5’末端に導入し、BamHI切断部位を3’末端に導入した。得られたDNAフラグメントをベクターpJOE2702とライゲーションした。得られたプラスミドをpBT4と呼び、大腸菌XL1−BlueにpCAR−AEとともにクローニングした。発現を、ラムノースを用いて誘導した。酵素活性を、HPL
Cを通してリコピン合成を検出することによって検出した。クローニング工程を以下に記載する。
【0218】
PCR1.1:
約0.5μgのBlakeslea trispora cDNA、0.25μM MAT350 5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’(配列番号58)、0.25 μM MAT244 5’−GTTCCAATTGGCCACATGAAGAGTAAGACAGGAAACAG−3’(配列番号59)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLに調整)。
【0219】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.40℃ 30秒間、4.72℃ 1分30秒間、5.95℃ 30秒間、6.50℃ 30秒間、7.72℃ 1分30秒間、8.95℃ 30秒間、9.72℃ 10分間。
【0220】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)5回、(6〜8.)25回、(9.)1回。
【0221】
PCR1.2:
約0.5μgのBlakeslea trispora cDNA、0.25 μM MAT243 5’−CCTGTCTTACTCTTCATGTGGCCAATTGGAACCAACAC−3’(配列番号60)、0.25 μM MAT353 5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’(配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLに調整)。
【0222】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.40℃ 30秒間、4.72℃ 1分30秒間、5.95℃ 30秒間、6.50℃ 30秒間、7.72℃ 1分30秒間、8.95℃ 30秒間、9.72℃ 10分間。
【0223】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)5回、(6〜8.)25回、(9.)1回。
【0224】
PCR1.1、1.2からのPCRフラグメントの精製
この目的のために、pJOE2702にクローニングするためのBlakeslea trispora carBのコード配列を調製するためにPCR2を実行した。
【0225】
約50ngのPCR1.1産物および約50ngのPCR1.2産物、ならびに、0.25μM MAT350(5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’配列番号58)、0.25 μM MAT353(5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLに調整)。
【0226】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.59℃ 30秒間、4.72℃ 2分間、5.95℃ 30秒間、6.72℃ 10分間。
【0227】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)22回、(6.)1回。
【0228】
続いて、得られたフラグメント(約1.7kbp)を精製し、次にベクターpPCR−Script−Ampへのライゲーション、大腸菌XL1−Blueへのクローニング、インサートの配列決定、NdeIおよびBamHIを用いる切断、ならびにpJOE2702へのライゲーションを行った。得られたプラスミドはpBT4と呼ばれた。
【0229】
CarB(フィトエンデサチュラーゼ)の酵素活性の特徴付けおよび検出
carBから導かれた遺伝子産物をCarBと呼ぶ。CarBはペプチド配列分析に基づき、以下の特性を有する:
長さ:582アミノアシル残基
分子量:66470
等電点:6.7
触媒活性:フィトエンデサチュラーゼ
反応物:フィトエン
生成物:リコピン
EC番号:EC 1.14.99−
【0230】
酵素活性をインビボで検出した。大腸菌XL1−Blueへのプラスミド(pCAR−AE)の導入は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)株を生じる。この株はフィトエンを合成する。大腸菌XL1−BlueへのpBT4プラスミドのさらなる導入は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)(pBT4)株を生じる。酵素的に活性なフィトエンデサチュラーゼが、carBから開始して形成されるので、この株はリコピンを産生する。
【0231】
それゆえに、プラスミドpCAR−AEおよびpBT4は大腸菌に導入された。カロチノイドが、液体培地中で増殖した細胞から抽出され、特徴付けされた(上記を参照されたい)。
【0232】
HPLC分析は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)株がフィトエンを産生し、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)(pBT4)株がリコピンを産生することを明らかにした。結果として、CarBはフィトエンデサチュラーゼの酵素活性を有する。
【0233】
フィトエンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
フィトエンを産生するための遺伝子改変された生物の調製は、以下に例示として記載される。
【0234】
Blakeslea trisporaのcarB−突然変異体を生成するためのベクターpBinAHygΔcarB
ベクターpBinAHygΔcarB(配列番号62、図22)を、Blakeslea trisporaにおいてcarBを欠失させるために構築した。pBinAHygΔcarBの前駆体はpBinAHyg(配列番号3、図2)であり、これは以下のように構築された。
【0235】
gpdA−hphカセットを、プラスミドpANsCos1(配列番号4、図1、Osiewacz, 1994, Curr. Genet. 26:87-90)からのBglII/HindIIIフラグメントとして単離し、そしてBamHI/HindIIIで切断したバイナリープラスミドpBin19(Bevan, 1984, Nucleic Acids Res. 12:8711-8721)にライゲーションした。この方法で得られたベクターはpBinAHygと呼ばれ、gpdプロモーターの制御下に大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)ならびにAspergillus nidulans由来のtrpCターミネーターおよびアグロバクテリウムDNA導入のために必要である適切なボーダー配列を含む。
【0236】
carBコード配列は、プライマーMAT350およびMAT353、ならびに以下のパラメーターを使用するPCRによって増幅された:
50ngのpBT4ならびに0.25μM MAT350(5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’;配列番号58)、0.25 μM MAT353(5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’;配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLまで)。
【0237】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 30秒間、4.72℃ 2分間、5.95℃ 30秒間、6.72℃ 10分間。
【0238】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0239】
得られるフラグメント(約1.7kbp)を引き続いて精製し、次にHindIIIで切断を行い、364bpHindIIIフラグメントcarBの精製をさらに行い、次にHindIIIでpBinAHygの切断を行い、364bpHindIIIフラグメントcarBの、pBinAHygへのライゲーションを行い、このベクターの大腸菌への形質転換および構築物の単離を行い、上記のように、このベクターをpBinAHygΔcarBと呼んだ。代替的には、HindIIIを用いる部分切断を実行し、より大きなcarBHindIIIフラグメントをpBinAHygにクローニングして、pBinAHygΔcarBを産生した。
【0240】
Blakeslea trisporaのcarB−突然変異体の生成
最初に、pBinAHygΔcarBプラスミドを、例えば、エレクトロポレーションによってアグロバクテリウム株LBA 4404に導入した(上記を参照されたい)。次に、プラスミドを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス LBA 4404から、Blakeslea trispora ATCC 14272およびBlakeslea trispora ATCC 14271に移した(上記を参照されたい)。Blakeslea trisporaへの首尾よい遺伝子導入の検出は、以下のプロトコールに従うポリメラーゼ連鎖反応を通して実行された:
Blakeslea trispora ATCC 14272 carB−またはATCC 14271 carB−からの約0.5μgのDNAを0.25μMプライマーhphフォワード(5’−CGATGTAGGAGGGCGTGGATA−3’;配列番号5)、0.25μMプライマーhphリバース(5’−GCTTCTGCGGGCGATTTGTGT−3’;配列番号6)、100μM dNTP、10μLのHerculaseポリメラーゼ緩衝液、2.5UのHerculase DNAポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLまで)と反応させた。
【0241】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 1分間、4.72℃ 1分間、5.94℃ 1分間、6.72℃ 10分間。
【0242】
サイクル:(1.〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0243】
陰性対照として、アグロバクテリウムカナマイシン耐性遺伝子を増幅することが試みられた。この目的のために、以下のPCR条件が使用された:
Blakeslea trispora ATCC 14272 carB−およびATCC 14271 carB−からの約0.5μgのDNAを0.25μMプライマーnptIIIフォワード(5’−TGAGAATATCACCGGAATTG−3’;配列番号7)、0.25μMプライマーnptIIIリバース(5’−AGCTCGACATACTGTTCTTCC−3’;配列番号8)、100μM dNTP、10μLのHerculaseポリメラーゼ緩衝液、2.5UのHerculase DNAポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μlまで)と反応させた。
【0244】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 1分間、4.72℃ 1分間、5.94℃ 1分間、6.72℃ 10分間。
【0245】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0246】
Blakeslea trisporaによるカロチノイドおよびカロチノイド前駆体の産生
カロチノイドゼアキサンチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、およびフィトエンは、対応する遺伝子改変されたBlakeslea trispora(+)株および(−)株を発酵させ、産生したカロチノイドをHPLC分析によって検出し、およびそれを単離することによって産生された。
【0247】
カロチノイドを産生するための液体培地は、1リットルあたり:19gのトウモロコシ粉、44gのダイズ粉、0.55gのKH2PO4、0.002gのチアミン塩酸塩、10%のヒマワリ油を含んだ。pHはKOHで7.5に調整した。
【0248】
カロチノイドを産生するために、シェーカーフラスコに、Blakeslea trispora GMOの(+)株および(−)株の胞子懸濁物を接種した。シェーカーフラスコを26℃で250rpmで7日間インキュベートした。代替的には、トリスポリック酸を4日後に株の混合物に添加し、続いてさらに3日間インキュベートした。トリスポリック酸の最終濃度は300〜400μg/mlであった。
【0249】
抽出および分析
抽出:
1.10mlの培養懸濁物の取り出し
2.遠心分離、10分間、5000×g
3.上清の廃棄
4.1mlのテトラヒドロフラン(THF)中でボルテックスによってペレットを再懸濁
5.遠心分離、5分間、5000×g
6.THF相の取り出し
7.工程4.から6.の反復(2回)
8.THF相のプール
9.残渣の水相を除去するための、プールしたTHF相の遠心分離、20 000×g、5分間。
【0250】
分析
HPLCによるフィトエン測定
カラム:ZORBAX Eclipse XDB−C8、5μm、150*4.6mm
温度:40℃
流速:0.5ml/分
注入量:10μl
検出:UV 220nm
停止時間:12分
ポストラン時間:0分
最高圧力:350bar
溶離液A:50mM NaH2PO4、pH 2.5、過クロム酸を含む
溶離液B:アセトニトリル
グラジエント: 時間(分) A(%) B(%) 供給(ml/分)
0 50 50 0.5
12 50 50 0.5
【0251】
発酵ブロスの抽出物はマトリックスとして使用された。HPLCの前に、各サンプルは0.22μmフィルターを通して濾過された。サンプルは、冷所に保たれ、光から保護された。各々の場合、較正のために50〜1000mg/lがTHF中で秤量および溶解された。使用された標準はフィトエンであり、所定の条件下で7.7分の保持時間を有する。
【0252】
HPLCによるリコピン、β−カロチン、エキネノン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、およびアスタキサンチンの測定
カラム:Nucleosil 100−7 C18、250*4.0mm(Macherey & Nagel)
温度:25℃
流速:1.3ml/分
注入量:10μl
検出:450nm
停止時間:15分
ポストラン時間:2分
最高圧力:250bar
溶離液A:10%アセトン、90%H2O
溶離液B:アセトン
グラジエント: 時間(分) A(%) B(%) 供給(ml/分)
0 30 70 1.3
10 5 95 1.3
12 5 95 1.3
13 30 70 1.3
【0253】
発酵ブロスの抽出物はマトリックスとして使用された。HPLCの前に、各サンプルは0.22μmフィルターを通して濾過された。サンプルは、冷所に保たれ、光から保護された。各々の場合、較正のために10mgが100mlのTHF中で秤量および溶解された。以下の保持時間を有する以下のカロチノイドが標準として使用された:β−カロチン(12.5分)、リコピン(11.7分)、エキネノン(10.9分)、クリプトキサンチン(10.5分)、カンタキサンチン(8.7分)、ゼアキサンチン(7.6分)、およびアスタキサンチン(6.4分)(図23を参照されたい)。
【0254】
遺伝子改変されたBlakeslea trispora株によるゼアキサンチンの産生
Blakeslea trisporaの遺伝子改変された生物(GMO)によるゼアキサンチンの産生が以下に例として記載される。
【0255】
ベクターpBinAHygBTpTEF1−HPcrtZが、アグロバクテリウム媒介形質転換(上記を参照されたい)によってBlakeslea trisporaに導入された。ハイグロマイシン耐性クローンを単離し、ポテト−グルコース寒天プレート(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)に移した。
【0256】
このプレートから開始して、胞子懸濁物を、26℃での3日間のインキュベーション後に調製した。バッフルを備えず、そして50mlの増殖培地(47g/lトウモロコシ粉、23g/lのダイズ粉、0.5g/lのKH2PO4、2.0mg/lのチアミン塩酸塩、滅菌前にNaOHでpHを6.2〜6.7に調整)を含む250mlエーレンマイヤーフラスコに、1×105個の胞子を接種した。この前培養を、26℃、250rpmで48時間インキュベートした。主培養のために、バッフルを備えず、40mlの製造培地を含む250mlエーレンマイヤーフラスコに、4mlの前培養物を接種し、26℃にて、150rpm、8日間インキュベートした。製造培地は、50g/lグルコース、2g/lカゼイン酸加水分解物、1g/l酵母抽出物、2g/l L−アスパラギン、1.5g/l KH2PO4、0.5g/l MgSO4×7H2O、5mg/l チアミン−HCl、10g/l Span20、1g/l Tween 80、20g/l リノール酸、80g/l コーンスチープリカーを含んだ。72時間後、ケロシンを最終濃度40g/lで加えた。培養物を収集後、残渣の培養容量約35mlを水で40mlに増加した。続いて、高圧ホモジナイザー(type Micron Lab 40、APV Gaulin)中で、3回、1500バールで細胞を破壊した。
【0257】
破壊された細胞を含む懸濁物を、35mlのTHFと混合し、250rpmで振盪しながら室温で、暗所で60分間インキュベートした。次いで、2gのNaClを加え、混合物をさらに1回振盪しながらインキュベートした。次いで、抽出混合物を5000×gで10分間遠心分離した。着色したTHF相を取り出すと、細胞塊は完全に無色であった。
【0258】
THF相を、ロータリーエバポレーター中で30ミリバール、30℃で1mlまで濃縮し、次いで再度1mlのTHFに溶解した。20000×gで5分間の遠心分離後、上相のアリコートを取り出し、HPLCによって分析した(図24、図23)。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】図1は、ベクターpANsCos1を示す。
【図2】図2は、ベクターpBinAHygを示す。
【図3】図3は、標準ゲルに基づくBlakeslea trisporaDNAのPCRの結果を示す。
【図4】図4は、プラスミドpBinAHygBTpyrG−SCOを示す。
【図5】図5は、プラスミドpBinAHygBTpTEF1−HPcrtZを示す。
【図6】図6は、プラスミドpBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ を示す。
【図7】図7は、プラスミドpBinAHygBTpcarB−HPcrtZを示す。
【図8】図8は、プラスミドp−carRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IRを示す。
【図9】図9は、プラスミドp−carRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IRを示す。
【図10】図10は、プラスミドpBinAHygBTpTEF1−EUcrtZを示す。
【図11】図11は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−EUcrtZを示す。
【図12】図12は、プラスミドpBinAHygBTpcarB−EUcrtZを示す。
【図13】図13は、プラスミドp−BinAHyg−gpdA−HPcrtZを示す。
【図14】図14は、プラスミドpBinAHyg−carRcrtZcarAを示す。
【図15】図15は、プラスミドpBinAHyg−BTpTEF1−NpcrtWを示す。
【図16】図16は、プラスミドpBinAHyg_BTpcarRA_NPcrtWを示す。
【図17】図17は、プラスミドpBinAHyg−BTpcarB−NPcrtWを示す。
【図18】図18は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ−BTpcarRA−NpucrtWを示す。
【図19】図19は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ−BTpcarRA−NpucrtWを示す。
【図20】図20は、carBに関してクローニングされた配列部分を図解的に示す。
【図21】図21は、carBのコード配列を図解的に示す。
【図22】図22は、ベクターpBinAHygΔcarBを示す。
【図23】図23は、HPLCによるリコピン、β−カロチン、エキネノン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、およびアスタキサンチンの測定結果を示す。
【図24】図24は、HPLCによる分析結果を示す。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Blakeslea属の生物の遺伝子改変方法、それに関連して生じる生物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
Blakeslea属の真菌は、生産生物として知られている。従って、例えばBlakeslea trisporaは、β−カロチン(Ciegler, 1965, Adv Appl Microbiol. 7:1)およびリコピン(EP 1201762, EP 1184464, WO 03/038064)についての生産生物として使用される。さらに、Blakesleaは、例えば、他のカロチノイドおよびそれらの前駆体、リン脂質、トリアシルグリセリド、ステロイド、ワックス、脂溶性ビタミン、プロビタミンならびにコファクターなどの他の親油性物質を産生するために好適であり、あるいは、例えば、タンパク質、アミノ酸、ヌクレオチド、および水溶性ビタミン、プロビタミンおよびコファクターなどの親水性物質を産生するために好適である。
【0003】
β−カロチンおよびリコピンの高生産性によって、Blakeslea(特に、Blakeslea trispora)は、カロチノイドおよびそれらの前駆体の経済的な発酵的生産にとって魅力的なものとなる。
【0004】
しかしながら、以前に天然に産生されたカロチンおよびそれらの前駆体のこの生産性をさらに増大させること、ならびに例えば、以前には、もしあったとしても、非常に低い程度までのみBlakesleaによって産生され、かつBlakesleaから単離されたキサントフィルなどのカロチノイドを産生することをさらに可能にすることもまた、関心対象のことである。
【0005】
カロチノイドは、飼料、食材、栄養補助食品、化粧品、および医薬品に添加される。カロチノイドは、とりわけ着色のための色素として使用される。このことを別として、カロチノイドの抗酸化作用およびこれらの物質の他の特性が利用される。カロチノイドは、純粋な炭化水素、カロチン、および酸素含有炭化水素、キサントフィルに分けられる。カンタキサンチンおよびアスタキサンチンなどのキサントフィルは、例えば、鶏卵および魚の着色において利用される(Brittonら、1998, Carotinoids, 第3巻, Biosynthesis and Metabolism)。カロチンであるβ−カロチンおよびリコピンはとりわけヒト栄養において利用される。例えば、β−カロチンは、飲料用の着色料として使用される。リコピンは疾患予防作用を有する(ArgwalおよびRao, 2000, CMAJ 163:739-744; RaoおよびArgwal 1999, Nutrition Research 19:305-323)。無色のカロチノイド前駆体フィトエンは、抗酸化剤としての適用のためにとりわけ適している。
【0006】
上述の適用における添加物として利用される、大部分のカロチノイドおよびそれらの前駆体は化学合成によって調製される。上記化学合成は、多段階であり、非常に複雑であり、高い製造コストを生じる。対照的に、発酵プロセスは比較的単純で、かつ高価でない開始材料に基づく。以前の発酵プロセスの生産性が増大し、または新規なカロチノイドが既知の生産生物に基づいて調製されることが可能であるならば、カロチノイドを産生するための発酵プロセスは、経済的に魅力的でありかつ化学合成と競合することが可能であり得る。
【0007】
特に、発明がキサントフィルを産生するためにBlakesleaを利用する場合には、これらの化合物はBlakesleaによって天然に合成されないので、Blakeslea trisporaの遺伝子改変方法が必要となる。
【0008】
Blakeslea trisporaの種々のDNA配列、特にゲラニルゲラニルピロリン酸からβ−カロチンへのカロチノイド生合成の遺伝子をコードするDNA配列がすでに公知である(WO 03/027293)。
【0009】
しかし、これまでに、Blakeslea、特にBlakeslea trisporaの遺伝子操作による改変のための方法は知られていない。
【0010】
いくつかの場合において首尾よく利用されてきた遺伝子改変された真菌の産生のための方法は、アグロバクテリウム媒介形質転換である。従って、例えば、以下の生物がアグロバクテリウムによって形質転換されてきた:Saccharomyces cerevisiae(Bundockら、1995, EMBO Journal, 14:3206-3214)、Aspergillus awamori、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Colletotrichum gloeosporioides、Fusarium solani pisi、Neurospora crassa、Trichoderma reesei、Pleurotus ostreatus、Fusarium graminearum(van der Toorrenら、1997, EP 870835)、Agraricus bisporus、Fusarium venenatum(de Grootら、1998, Nature Biotechnol. 16:839-842)、Mycosphaerella graminicola(Zwiersら 2001, Curr. Genet. 39:388-393)、Glarea lozoyensis(Zhangら, 2003, Mol. Gen. Genomics 268:645-655)、Mucor miehei(Monfortら、2003, FEMS Microbiology Lett. 244:101-106)。
【0011】
特に関心対象のものは相同組換えであり、これは、導入されるDNAと細胞DNAとの間に可能な限り多くの配列相同性を含み、その結果、レシピエント生物のゲノム中で部位特異的な遺伝情報を導入または除去することが可能である。さもなくば、ドナーDNAは、部位特異的でない非正統的組換えまたは非相同的組換えによってレシピエント生物のゲノムに組み込まれる。
【0012】
アグロバクテリウム媒介形質転換および引き続く導入DNAの相同組換えは、以下の生物について以前に検出されてきた:Aspergillus awamori(Goukaら、1999, Nature Biotech 17:598-601)、Glarea lozoyensis(Zhangら、2003, Mol. Gen. Genomics 268:645-655)、Mycosphaerella graminicola((Zwiersら、2001, Curr. Genet. 39:388-393)。
【0013】
真菌を形質転換するための別の公知の方法は、エレクトロポレーションである。Hill, Nucl. Acids. Res. 17:8011は、エレクトロポレーションによる酵母の組み込み形質転換を示した。糸状菌の形質転換はChakabortyおよびKapoor(1990, Nucl. Acids. Res. 18:6737)によって記載されている。
【0014】
「微粒子銃」法、すなわち、DNA負荷した粒子を用いる細胞の衝撃によるDNAの導入は、例えば、Trichoderma harzianumおよびGliocladium virens(Loritoら 1993, Curr. Genet. 24:349-356)において記載されている。
【0015】
しかし、Blakesleaおよび特にBlakeslea trisporaの特異的遺伝子改変のためにこれらの方法を首尾よく利用することは以前には可能ではなかった。
【0016】
特異的に遺伝子改変したBlakesleaおよびBlakeslea trisporaを産生する際の特定の困難さは、それらの細胞が、有性細胞および栄養細胞のサイクルのすべての段階において多核性であるという事実である。例えば、Blakeslea trispora株NRRL2456およびNRRL2457の胞子は、胞子あたり平均4.5核を有することが見い出された(MethaおよびCerda-Olmedo, 1995, Appl. Microbiol. Biotechnol. 42:836-838)。このことの結果として、遺伝子改変は、通常、1個またはいくつかの核のみにおいて存在し、すなわち、細胞はヘテロカリオン性である。
【0017】
遺伝子改変されたBlakeslea種、特にBlakeslea trisporaが製造のために使用されることが意図される場合、特に遺伝子欠失の場合に、安定かつ高度な合成性能を副生成物を伴わずに可能にするために、遺伝子改変が生産株のすべての核に存在することが重要である。この株は、上記遺伝子改変に関して、結果的にホモカリオン性でなくてはならない。
【0018】
ホモカリオン性細胞を生成する方法は、Phycomyces blakesleeanusについてのみ記載されてきた(Ronceroら、1984, Mutat. Res. 125:195)。そこに記載される方法に従って、1つの機能的な核のみを有する統計学的に確実な数の細胞を得るために、突然変異誘発物質MNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)を加えることによって、核が細胞中で除去される。次いで、細胞を、劣性の選択マーカーを有する単核細胞のみが菌糸体中で増殖する選択に供する。これらの選択細胞の子孫は多核性でありかつホモカリオン性である。Phycomyces blakesleanusについての劣性選択マーカーの一例はdarである、dar+株は、dar−株とは異なり毒性リボフラビンアナログ5−炭素−5−デアザリボフラビンを吸収する(Delbruckら、1979, Genetics 92:27)。劣性突然変異体は5−炭素−5−デアザリボフラビン(DARF)を加えることによって選択される。
【0019】
しかし、この方法は、Blakeslea、特にBlakeslea trisporaについては未知であり、そして特に、形質転換に関して記載されていない。
【発明の開示】
【0020】
本発明の目的は、Blakeslea株、特にBlakeslea trisporaを遺伝子改変することができる方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、遺伝子改変されたホモカリオン性株を産生することを可能にする方法を提供することである。従って、本発明の更なる目的は、遺伝子改変した細胞を提供することである。
【0021】
この目的は、Blakeslea属の遺伝子改変された生物を産生する方法によって達成され、この方法は以下の工程を含む:
(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、
(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、かつ上記遺伝子改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞の場合によるホモカリオン転換、
(iii)遺伝子改変された細胞の選択。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の方法は、均一の核を有する細胞の菌糸体をこのやり方で入手するために、Blakeslea菌の多核細胞が特異的かつ安定な様式で遺伝子改変されることを可能にする。この細胞は、好ましくはBlakeslea trispora種の真菌の細胞である。 形質転換は、生物、特に真菌中への遺伝子情報の導入を意味する。これは、上記情報、特にDNAを導入する、当業者に公知の任意の可能な方法、例えば、DNA負荷粒子を用いる衝撃、プロトプラストを使用する形質転換、DNAのマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、コンピテント細胞の接合または形質転換、化学物質またはアグロバクテリウムを媒介する形質転換を含むべきである。遺伝子情報は、遺伝子の部分、1つの遺伝子または複数の遺伝子を意味する。遺伝子情報は、例えば、ベクターの補助を伴って、または遊離の核酸(例えば、DNA、RNA)として、および他の任意の様式で細胞に導入され得、そして組換えによって宿主ゲノムに組み込まれるか、または細胞中で遊離の形態で存在するかのいずれかである。本発明において特に好ましいのは相同組換えである。
【0023】
好ましい形質転換方法は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)によって媒介される形質転換である。この目的のために、導入されるドナーDNAは、最初に、(i)導入されるDNAに隣接するT−DNA末端を有し、(ii)選択マーカーを含み、そして(iii)適切な場合、ドナーDNAの遺伝子発現のためのプロモーターおよびターミネーターを有する、ベクターに挿入される。上記ベクターは、vir遺伝子を含むTiプラスミドを有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス株に導入される。vir遺伝子は、BlakesleaにおけるDNA導入の原因である。この2ベクター系は、アグロバクテリウムからBlakesleaにDNAを導入するために使用される。この目的のために、アグロバクテリウムはアセトシリンゴンの存在下で最初にインキュベートされる。アセトシリンゴンはvir遺伝子を誘導する。次いで、Blakeslea trisporaの胞子が、アセトシリンゴン含有培地上でアグロバクテリウム・ツメファシエンスの誘導された細胞と一緒にインキュベートされ、その後、形質転換体、すなわち、遺伝子改変されたBlakeslea株の選択を可能にする培地に移される。
【0024】
ベクターという用語は、本願において、外来性DNAをそこに導入し、かつ、適切な場合、細胞中で上記外来性DNAを増殖させるために使用されるDNA分子をいうために使用される(Rompp Lexikon Chemie-CDROMバージョン2.0, Stuttgart/New York: Georg Thieme Verlag 1999の「vector」もまた参照されたい)。本願において、「ベクター」という用語は、この目的に役立つプラスミド、コスミドなどを含むことを意図する。
【0025】
発現は、本願において、DNAまたはRNAから開始して遺伝子産物(本発明において好ましくは、カロチノイド)に至る、遺伝子情報の導入を意味し、そして過剰発現という用語を含むこともまた意図する。過剰発現という用語は、形質転換されない細胞(野生型)中ですでに産生されている産物が増加して産生されるような、または全体の細胞含量の大多数の部分を形成するような発現の増加を意味する。
【0026】
遺伝子改変は、レシピエント生物への遺伝子情報の導入であって、その結果、上記情報が安定な様式で発現され、かつ細胞分裂の間に伝播するものを意味する。次いで、適当な場合には、ホモカリオン転換(すなわち、均一の核のみを含む細胞の産生)が行われ、すなわち、核は同じ遺伝情報の内容を有する。
【0027】
このホモカリオン転換は、形質転換によって導入される遺伝子情報が劣性である場合、すなわち、それ自体を明示しない場合に、特に必要とされる。しかし、形質転換が優性の遺伝子情報の存在を生じる場合、すなわち、上記情報がそれ自体を明示する場合、ホモカリオン転換が絶対的に必要なわけではない。
【0028】
ホモカリオン転換は、好ましくは、単核胞子を選択する工程を含む。少ない割合のBlakeslea trispora胞子が本来単核であり、その結果、これらの胞子は、適切な場合、特異的標識後、例えば、細胞核の染色後に選別され得る。これは、好ましくは、単核細胞の低い蛍光に基づいて、FACS(蛍光活性化細胞分取(Fluorescence Activated Cell Sorting))を使用して実行される。
【0029】
代替的には、ホモカリオン転換は、最初に核の数を減少させることによって実行され得る。この目的のために、突然変異誘発物質、特にN−メチル−N’−ニトロニトロソグアニジン(MNNG)が利用され得る。UV照射またはX線などの高エネルギー照射もまた、核の数を減少させるために使用できる。引き続く選択が、FACS法または劣性選択マーカーを使用して実行され得る。
【0030】
選択は、その核が同じ遺伝子情報を含む細胞、すなわち、耐性または生成物の産生もしくは産生の増加などの同じ特性を有する細胞の選択を意味する。選択のために、FACS法の他に、5−炭素−5−デアザリボフラビン(darf)およびハイグロマイシン(hyg)または5’−フルオロロテート(5'-fluororotate)(FOA)およびウラシルを使用することが好ましい。
【0031】
形質転換(i)において利用されるベクターは上記ベクターに含まれる遺伝子情報が少なくとも1つの細胞のゲノムに組み込まれるように設計され得る。この点に関して、細胞中の遺伝子情報は、スイッチが切られ得る。
【0032】
しかしながら、形質転換(i)において利用されるベクターは、上記ベクター中に含まれる遺伝子情報が細胞中で発現されるような方法で設計されることもできる。すなわち、対応する野生型において存在しないか、あるいは上記形質転換によって増加または過剰発現される遺伝子情報が導入される。
【0033】
このベクターは、Blakeslea属の生物の遺伝子改変のためのいかなる遺伝子情報をも含み得る。
【0034】
「遺伝子情報」とは、好ましくは、Blakeslea属の生物へのその導入がBlakeslea属の生物における遺伝子改変を生じる、すなわち、例えば、開始生物との比較において、酵素活性の増加または減少を引き起こす核酸を意味する。
【0035】
このベクターは、例えば、カロチノイドおよびそれらの前駆体、リン脂質、トリアシルグリセリド、ステロイド、ワックス、脂溶性ビタミン、プロビタミンならびにコファクターなどの親油性物質を産生するための遺伝子情報、または例えば、タンパク質、アミノ酸、ヌクレオチド、および水溶性ビタミン、プロビタミン、およびコファクターなどの親水性物質を産生するための遺伝子情報を含み得る。
【0036】
利用されるベクターは、好ましくは、カロチノイドもしくはキサントフィルまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報を含む。
【0037】
このベクターは、好ましくは、カロチノイド生合成酵素が、カロチノイド生合成が起こる細胞内区画中に局在されることを引き起こす遺伝子情報を含む。
【0038】
アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノンおよび3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、ルテイン、β−カロチン、フィトエン、またはフィトフルエンを産生するための遺伝子情報が特に好ましい。フィトエン、ビキシン、リコピン、ゼアキサンチン、カンタキサンチン、およびアスタキサンチンを産生するための遺伝子情報が非常に特に好ましい。
【0039】
従って、本発明の好ましい変形は、カロチノイド生合成中間体の合成の速度の増加、およびカロチノイド生合成の最終生成物について結果的に増加した生産性を有する生物を産生および培養することを含む。カロチノイド生合成中間体の合成の速度は、特に、酵素:3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素、イソペンテニルピロホスフェートイソメラーゼ、およびゲラニルピロホスフェートシンターゼの活性を増加させることによって増加する。
【0040】
従って、本発明の特に好ましい変形は、野生型と比較して、HMG−CoA還元酵素活性の増加を有する生物を産生および培養することを含む。
【0041】
HMG−CoA還元酵素活性とは、HMG−CoA還元酵素(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムA還元酵素)の酵素活性を意味する。
【0042】
HMG−CoA還元酵素とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAをメバロン酸に転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0043】
従って、HMG−CoA還元酵素活性とは、特定の時間内にタンパク質HMG−CoA還元酵素によって、転換された3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAの量または産生されたメバロン酸の量を意味する。
【0044】
野生型と比較したHMG−CoA還元酵素活性の増加の場合には、このようにタンパク質HMG−CoA還元酵素は、野生型と比較して、特定の時間内に、転換された3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルコエンザイムAの量または産生されたメバロン酸の量を増加する。
【0045】
HMG−CoA還元酵素活性のこの増加は、好ましくは、野生型のHMG−CoA還元酵素活性の、少なくとも5%、より好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、さらにより好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも600%である。
【0046】
好ましい実施形態において、HMG−CoA還元酵素活性は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸の遺伝子発現を増加させることによって、野生型と比較して増加される。
【0047】
本発明の方法の特に好ましい実施形態において、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸の遺伝子発現は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸を含む核酸構築物を生物に導入することによって増加され、上記生物中のその発現は、野生型と比較して、調節が減少されやすい。
【0048】
野生型と比較した調節の減少とは、上記に規定された野生型との比較において、発現レベルまたはタンパク質レベルで、調節が減少していること、好ましくは調節が存在しないことを意味する。
【0049】
また、調節の減少は、好ましくは、核酸構築物中のコード配列に機能的に連結され、かつ、野生型プロモーターと比較して、生物における調節の減少の影響を受けやすいプロモーターによって達成され得る。
【0050】
例えば、Blakeslea trisporaのptef1プロモーターおよびAspergillus nidulansのpgpdAプロモーターは、調節の減少のみの影響を受けやすく、それゆえに特に好ましいプロモーターである。
【0051】
これらのプロモーターは、Blakeslea trisporaにおいてほぼ構成的発現を示し、その結果、転写調節はもはやカロチノイド生合成の中間体を介しては起こらない。
【0052】
さらに好ましい実施形態において、上記調節の減少は、HMG−CoA還元酵素をコードする核酸を使用することによって達成され得、上記生物におけるその発現は、上記生物に固有のオーソロガス核酸と比較して、調節の減少を受けやすい。
【0053】
HMG−CoA還元酵素の触媒領域のみ(末端切断型(t−)HMG−CoA還元酵素)をコードする核酸を使用することは特に好ましい。調節の原因である膜ドメインは存在しない。従って、使用される核酸は調節の減少を受けやすく、従って、HMG−CoA還元酵素の遺伝子発現の増加を生じる。
【0054】
特に好ましい実施形態において、配列番号75の配列を含む核酸がBlakeslea trisporaに導入される。
【0055】
HMG−CoA還元酵素、および従ってまた、触媒領域またはコード遺伝子まで減少したt−HMG−CoA還元酵素のさらなる例は、例えば、そのゲノム配列が、配列番号75を用いたデータベースからの配列の相同性比較によって知られている種々の生物から、容易に見い出され得る。
【0056】
HMG−CoA還元酵素、および従ってまた、触媒領域またはコード遺伝子まで減少したt−HMG−CoA還元酵素のさらなる例は、それ自体公知の様式で、ハイブリダイゼーションおよびPCR技術によって、そのゲノム配列が知られていない種々の生物から、例えば配列番号75の配列から開始してさらに容易に見い出され得る。
【0057】
特に好ましい実施形態において、上記調節の減少は、上記生物におけるその発現が上記生物に固有であるオーソロガス核酸と比較して調節の減少を受けやすいHMG−CoA還元酵素をコードする核酸を使用すること、および野生型プロモーターと比較して、上記生物中で調節の減少を受けやすいプロモーターを使用することによって達成される。
【0058】
従って、本発明の好ましい変形は、フィトエンデサチュラーゼ遺伝子発現のスイッチを切る、従って、生物によって生成されるフィトエンが単離されることを可能にする形質転換を含む。それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、フィトエンデサチュラーゼ、特に、配列番号69を有するBlakeslea trispora carBの遺伝子のフラグメントをコードする配列を好ましくは含む。
【0059】
従って、本発明の好ましい変形は、形質転換によってスイッチが切られるリコピンシクラーゼ遺伝子発現を含み、従って、生物によって産生されるリコピンが単離されることを可能にする。それゆえに、上記形質転換において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、好ましくは、リコピンシクラーゼ遺伝子、特にBlakeslea trisporas carR(WO 03/027293)のフラグメントをコードする配列を含む。
【0060】
更に好ましい実施形態において、Blakeslea属の生物は、野生型との比較において遺伝子改変されたヒドロキシラーゼ活性および/またはケトラーゼ活性を有するBlakeslea属の生物によって、例えば、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンなどのキサントフィルを産生することが可能である。
【0061】
従って、本発明のさらに好ましい変形において、形質転換(i)において利用されるベクターは、発現後にケトラーゼ活性および/またはヒドロキシラーゼ活性を示し、その結果、生物がゼアキサンチンまたはアスタキサンチンを産生する遺伝子情報を含む。
【0062】
ケトラーゼ活性とは、ケトラーゼの酵素活性を意味する。
【0063】
ケトラーゼとは、カロチノイドの場合によって置換されたβ−イオノン環におけるケト基を導入する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0064】
ケトラーゼとは、特に、β−カロチンをカンタキサンチンに転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0065】
従って、ケトラーゼ活性とは、特定の時間内にタンパク質ケトラーゼによって転換されるβ−カロチンの量または産生されるカンタキサンチンの量を意味する。
【0066】
本発明に従って、「野生型」という用語は、Blakeslea属の対応する遺伝子改変されていない開始生物を意味する。
【0067】
「生物」という用語は、文脈に依存して、Blakeslea属の開始生物(野生型)、またはBlakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物、または両方を意味し得る。
【0068】
好ましくは、ケトラーゼ活性を引き起こす「野生型」およびヒドロキシラーゼ活性を引き起こす「野生型」は、各々の場合において参照生物を意味する。
【0069】
Blakeslea属のこの参照生物は、接合型に関してのみ異なるBlakeslea trispora ATCC 14271またはATCC 14272である。
【0070】
Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物、および野生型または参照生物におけるケトラーゼ活性は、好ましくは以下の条件下で決定される。
【0071】
Blakeslea属の生物におけるケトラーゼ活性は、Fraserら(J. Biol. Chem. 272(10): 6128-6135, 1997)の方法に従って決定される。抽出物中のケトラーゼ活性は、脂質(ダイズレシチン)および界面活性剤(コール酸ナトリウム)の存在下で基質β−カロチンおよびカンタキサンチンを使用して決定される。ケトラーゼアッセイの基質対生成物の比はHPLCによって決定される。
【0072】
この好ましい実施形態において、Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物は、遺伝子改変されていない野生型と比較して、ケトラーゼ活性を有し、従って、トランスジェニック的にケトラーゼを発現することが可能であることが好ましい。
【0073】
さらに好ましい実施形態において、Blakeslea属の生物におけるケトラーゼ活性は、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現によって引き起こされる。
【0074】
この好ましい実施形態において、ケトラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、ケトラーゼをコードする核酸をBlakeslea属の開始生物に導入することによって引き起こされることが好ましい。
【0075】
この目的のために、原理的に、任意のケトラーゼ遺伝子、すなわち、ケトラーゼをコードする任意の核酸を使用することが可能である。
【0076】
本明細書中で言及される任意の核酸とは、例えば、RNA、DNA、またはcDNAの配列であり得る。
【0077】
イントロンを含む、真核生物供給源からのゲノムケトラーゼ配列の場合において、Blakeslea属の宿主生物が対応するケトラーゼを発現できないか、または発現するように作製されることができない場合、対応するcDNAなどのすでにプロセシングされた核酸配列を使用することが好ましい。
【0078】
本発明の方法において使用できる、ケトラーゼをコードする核酸および対応するケトラーゼの例は、例えば、以下からの配列である:
Haematoccus pluvialis、特にHaematoccus pluvialis Flotow em. Wille由来(アクセッション番号:X86782;核酸:配列番号11、タンパク質:配列番号12)、
Haematoccus pluvialis、NIES-144(アクセッション番号:D45881;核酸:配列番号13、タンパク質:配列番号14)、
Agrobacterium aurantiacum(アクセッション番号:D58420;核酸:配列番号15、タンパク質:配列番号16)、
Alicaligenes種(アクセッション番号:D58422;核酸:配列番号17、タンパク質:配列番号18)、
Paracoccus marcusii(アクセッション番号:Y15112;核酸:配列番号19、タンパク質:配列番号20)、
Synechocystis種PC6803株(アクセッション番号:NP442491;核酸:配列番号21、タンパク質:配列番号22)、
Bradyrhizobium種(アクセッション番号:AF218415;核酸:配列番号23、タンパク質:配列番号24)、
Nostoc種PCC7120株(アクセッション番号:AP003592, BAB74888;核酸:配列番号25、タンパク質:配列番号26)、
Nostoc punctiforme ATTC 29133、核酸:アクセッション番号NZ_AABC01000195、塩基対55,604〜55,392(配列番号27);タンパク質;アクセッション番号ZP_00111258(配列番号28)(推定タンパク質と注記される)、または
Nostoc punctiforme ATTC 29133、核酸:アクセッション番号NZ_AABC01000196、塩基対140,571〜139,810(配列番号29)、タンパク質:(配列番号30)(注記なし)。
【0079】
本発明のプロセスにおいて使用できる、ケトラーゼおよびケトラーゼ遺伝子のさらなる天然の例は、例えば、そのゲノム配列が、以前に記載された配列の同一性を有し、ならびに特に配列番号12および/または26および/または30の配列の同一性を有する、データベースからのアミノ酸配列または対応する逆翻訳された核酸配列の同一性を比較することによって公知である種々の生物から容易に見い出され得る。
【0080】
ケトラーゼおよびケトラーゼ遺伝子のさらなる天然の例は、以前に記載された核酸配列、特に、配列番号12および/または26および/または30の配列から開始して、それ自体公知である様式でハイブリダイゼーション技術を使用して、そのゲノム配列が未知である種々の生物からさらに容易に見い出され得る。
【0081】
ハイブリダイゼーションは、穏やかな(低ストリンジェンシー)条件下で、または好ましくは、ストリンジェントな(高ストリンジェンシー)条件下で実行され得る。
【0082】
これらの型のハイブリダイゼーション条件は、例えば、Sambrook, J., Fritsch, E.F., Maniatis, T., Molecular Cloning (A Laboratory Manual), 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989, 9.31-9.57頁またはCurrent Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6に記載されている。
【0083】
例えば、洗浄工程の間の条件は、低ストリンジェンシー条件(50℃で2×SSCを用いる)および高ストリンジェンシー条件(50℃、好ましくは65℃で0.2×SSCを用いる)(20×SSC:0.3Mクエン酸ナトリウム、3M塩化ナトリウム、pH7.0)によって限定される条件範囲から選択され得る。
【0084】
さらなる可能性は、洗浄工程の間に、室温、22℃での穏やかな条件を、65℃でのストリンジェントな条件まで、温度を上昇させることである。
【0085】
塩濃度と温度の両方のパラメーターが同時変化され得、そして2つのパラメーターのうちの1つを一定に保ち、他の一方のみを変化させることもまた可能である。ハイブリダイゼーションの間に、例えばホルムアミドまたはSDSなどの変性剤を利用することもまた可能である。50%ホルムアミドの存在下でのハイブリダイゼーションは、42℃で好ましく実行される。
【0086】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄工程のための条件のいくつかの例が以下に示される:
(1)例えば、以下を用いるハイブリダイゼーション条件
(i)65℃で4×SSC、または
(ii)45℃で6×SSC、または
(iii)68℃で6×SSC、100mg/ml変性魚精子DNA、または
(iv)68℃で6×SSC、0.5%SDS、100mg/ml変性フラグメント化サケ精子DNA、または
(v)42℃で6×SSC、0.5%SDS、100mg/ml変性フラグメント化サケ精子DNA、50%ホルムアミド、または
(vi)42℃で50%ホルムアミド、4×SSC、または
(vii)42℃で50%(容量/容量)ホルムアミド、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルポリピロリドン、50mMリン酸ナトリウム緩衝液pH6.5、750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム、または
(viii)50℃で2×または4×SSC(穏やかな条件)、または
(ix)42℃で30〜40%ホルムアミド、2×または4×SSC(穏やかな条件)。
【0087】
(2)例えば、各々以下を用いる10分間の洗浄工程:
(i)50℃で0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDS、または
(ii)65℃で0.1×SSC、または
(iii)68℃で0.1×SSC、0.5%SDS、または
(iv)42℃で0.1×SSC、0.5%SDS、50%ホルムアミド、または
(v)42℃で0.2×SSC、0.1%SDS、または
(vi)65℃で2×SSC(穏やかな条件)。
【0088】
Blakeslea属の本発明に従う遺伝子改変された生物の好ましい実施形態において、配列番号12のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によりこの配列に由来し、かつ、配列番号12の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%の同一性、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸が導入される。
【0089】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号12の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0090】
さらに、本発明の方法の好ましい実施形態は、配列番号26のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に由来し、かつ、配列番号26の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%の同一性、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸を導入する工程を包含する。
【0091】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号26の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0092】
さらに、本発明の方法の好ましい実施形態は、配列番号30のアミノ酸配列、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に由来し、かつ、配列番号30の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性、優先的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%の同一性、より好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の同一性、特に91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつケトラーゼの酵素特性を有する配列を含むタンパク質をコードする核酸を導入する工程を包含する。
【0093】
このことに関連して、ケトラーゼ配列が、他の生物からの配列の同一性比較によって上記に記載されるように見い出され得る天然のものであること、またはケトラーゼ配列が、人工的な変異、例えば、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって配列番号30の配列から開始して改変された人工的なものであることが可能である。
【0094】
「置換」という用語は、本明細書中では、1つ以上のアミノ酸による1つ以上のアミノ酸の置換を意味する。置き換えられたアミノ酸がもとのアミノ酸と同様の特性を有する「保存性置換」(例えば、AspによるGluの置換、AsnによるGlnの置換、IleによるValの置換、IleによるLeuの置換、ThrによるSerの置換)を実行することが好ましい。
【0095】
欠失は直接的結合によるアミノ酸の置き換えである。欠失のための好ましい位置は、ポリペプチドの末端および個々のタンパク質ドメイン間の結合部である。
【0096】
挿入は、1つ以上のアミノ酸による直接的結合の形式的な置き換えを伴う、ポリペプチド鎖へのアミノ酸の挿入である。
【0097】
2つのタンパク質間の同一性とは、各タンパク質の全体の長さにわたるアミノ酸の同一性を意味し、特に、以下のパラメーターを設定して、Clustal法(Higgins DG, Sharp PM. Fast and sensitive multiple sequence alignments on a microcomputer. Comput Appl. Biosci. 1989 Apr;5(2):151-1)を使用して、DNASTAR, inc. Madison, Wisconsin(USA)からのLasergeneソフトウエアを用いる比較によって計算される同一性を意味する:
複数アラインメントパラメーター:
ギャップペナルティー 10
ギャップ長ペナルティー 10
ペアワイズアラインメントパラメーター:
K−タプル 1
ギャップペナルティー 3
ウィンドウ 5
保存対角 5。
【0098】
従って、配列番号12または26または30の配列とアミノ酸レベルで少なくとも20%の同一性を有するタンパク質は、配列番号12または26または30の配列とのその配列の比較において、特に上記のパラメーターのセットを用いるプログラムのロガリズム(logarithm)を使用して、少なくとも20%の同一性、好ましくは80%、85%、特に90%の同一性、特に95%の同一性を有するタンパク質を意味する。
【0099】
適切な核酸配列は、例えば、遺伝コードに従ってポリペプチド配列を逆翻訳することによって得られうる。
【0100】
この目的のために好適に使用されるコドンは、Blakeslea特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に使用されるコドンである。コドン使用頻度は、Blakeslea属の生物の他の公知の遺伝子のコンピュータ分析によって容易に見い出され得る。
【0101】
特に好ましい実施形態において、配列番号11の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0102】
特に好ましい実施形態において、配列番号25の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0103】
特に好ましい実施形態において、配列番号29の配列を含む核酸が上記属の生物に導入される。
【0104】
上述のすべてのケトラーゼ遺伝子は、それ自体公知の様式で、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成によって、例えば、二重ヘリックスの個々の重複する相補性核酸ビルディングブロックのフラグメント縮合によって、さらに調製され得る。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet, Voet, 第2版, Wiley Press NewYork, 896-897頁)によって公知の様式において可能である。合成オリゴヌクレオチドの付加ならびにDNAポリメラーゼのクレナウフラグメントおよびライゲーション反応の補助を伴ってギャップを埋めること、ならびに一般的なクローニング方法もまた、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。
【0105】
それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の1つの実施形態において、ケトラーゼ、特に配列番号72を有するNostoc punctiformeケトラーゼをコードする配列を好ましく含む。
【0106】
ヒドロキシラーゼ活性とは、ヒドロキシラーゼの酵素活性を意味する。
【0107】
ヒドロキシラーゼとは、場合によって置換された、カロチノイドのβ−イオノン環上のヒドロキシル基を導入する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0108】
特に、ヒドロキシラーゼとは、β−カロチンをゼアキサンチンにまたはカンタキサンチンをアスタキサンチンに転換する酵素活性を有するタンパク質を意味する。
【0109】
従って、ヒドロキシラーゼ活性は、特定の時間内にヒドロキシラーゼタンパク質によって、転換されるβ−カロチンまたはカンタキサンチンの量、または産生されるゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの量を意味する。
【0110】
従って、ヒドロキシラーゼ活性が野生型と比較して増加される場合、特定の時間内にヒドロキシラーゼタンパク質によって転換されるβ−カロチンまたはカンタキサンチンの量、または産生されるゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの量は、野生型と比較して増加される。
【0111】
ヒドロキシラーゼ活性のこの増加は、好ましくは、野生型のヒドロキシラーゼ活性の少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも20%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらに好ましくは少なくとも100%、より好ましくは少なくとも300%、なおより好ましくは少なくとも500%、特に少なくとも600%である。
【0112】
本発明の遺伝子改変した生物ならびに野生型および参照生物におけるヒドロキシラーゼ活性は、以下の条件下で好ましく決定される。
【0113】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvierら(Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328)の方法によってインビトロで決定される。フェレドキシン、フェレドキシン−NADPオキシドレダクターゼ、ケタラーゼ、NADPHおよびβ−カロチンが、モノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリドとともに、所定の量の生物抽出物に加えられる。
【0114】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvier, Keller, d'HarlingueおよびCamara(Xanthophyll biosynthesis: molecular and functional characterization of carotenoid hydroxylases from pepper fruits (Capsicum annuum L.; Biochim. Biophys. Acta 1391 (1998), 320-328)の以下の条件下で特に好ましく決定される。
【0115】
インビトロアッセイは、0.250mlの容量で実行される。混合物は以下を含む:50mMリン酸カリウム(pH7.6)、0.025mgのホウレンソウフェレドキシン、0.5単位のホウレンソウフェレドキシン−NADP+オキシドレダクターゼ、0.25mM NADPH、0.010mgのβ−カロチン(0.1mgのTween80中で乳化)、0.05mMのモノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリドの混合物(1:1)、1単位の触媒、200のモノガラクトシルグリセリドおよびジガラクトシルグリセリド(1:1)、0.2mgのウシ血清アルブミンおよび種々の量の生物抽出物。反応混合物は30℃で2時間インキュベートする。反応生成物は、THF、アセトンまたはクロロホルム/メタノール(2:1)などの有機溶媒で抽出し、HPLCによって測定する。
【0116】
ヒドロキシラーゼ活性は、Bouvier, d'HarlingueおよびCamara(Molecular Analysis of carotenoid cyclae inhibition; Arch. Biochem. Biophys. 346(1) (1997) 53-64)の以下の条件下で特に好ましく決定される。
【0117】
インビトロアッセイは、250μlの容量で実行される。混合物は以下を含む:50mMリン酸カリウム(pH7.6)、種々の量の生物抽出物、20nMリコピン、250μgのパプリカ有色体ストロマタンパク質、0.2mM NADP+、0.2mM NADPHおよび1mM ATP。NADP/NADPHおよびATPはインキュベーション媒体への添加の直前に1mgのTween80とともに10mlのエタノール中に溶解する。60分、30℃での反応時間後、反応はクロロホルム/メタノール(2:1)の添加により停止される。クロロホルム中に抽出された反応生成物は、HPLCによって分析される。
【0118】
放射活性基質を用いる代替的なアッセイは、FraserおよびSandmann(Biochem. Biophys. Res. Comm. 185(1) (1992) 9-15)において記載されている。
【0119】
ヒドロキシラーゼ活性は種々の方法において、例えば、発現およびタンパク質レベルにおける阻害性調節メカニズムのスイッチを切ること、または野生型と比較して、ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現を増加させることによって、増加され得る。
【0120】
ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、種々の方法において、例えば、アクチベーターによってヒドロキシラーゼ遺伝子を誘導すること、または1つ以上のヒドロキシラーゼ遺伝子コピーを導入することによって、すなわち、Blakeslea属の生物にヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの核酸を導入することによって、野生型と比較して、同様に増加され得る。
【0121】
好ましい実施形態において、ヒドロキシラーゼをコードする核酸の遺伝子発現は、Blakeslea属の生物にヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの核酸を導入することによって増加される。
【0122】
この目的のために、原理的には任意のヒドロキシラーゼ遺伝子、すなわち、ヒドロキシラーゼをコードする任意の核酸を使用することが可能である。
【0123】
イントロンを含む真核生物供給源からのゲノムヒドロキシラーゼ配列の場合、宿主生物が対応するヒドロキシラーゼを発現できないか、または発現するように作製されることができないならば、対応するcDNAなどのすでにプロセシングされた核酸配列を使用することが好ましい。
【0124】
ヒドロキシラーゼ遺伝子の1つの例は、アクセッション番号AX038729を有するHaematococcus pluvialisヒドロキシラーゼをコードする核酸(WO 0061764;核酸:配列番号31、タンパク質:配列番号32)、Erwinia uredovora 20D3ヒドロキシラーゼ(ATCC 19321、アクセッション番号D90087;核酸:配列番号33、タンパク質:配列番号34)または配列番号76の配列によってコードされるThermus thermophilusヒドロキシラーゼ(DE 102 34 126.5)由来である。
【0125】
更なるヒドロキシラーゼは、以下のアクセッション番号を有する核酸によってコードされる:
|emb|CAB55626.1、CAA70427.1、CAA70888.1、CAB55625.1、AF499108_1、AF315289_1、AF296158_1、AAC49443.1、NP_194300.1、NP_200070.1、AAG10430.1、CAC06712.1、AAM88619.1、CAC95130.1、AAL80006.1、AF162276_1、AAO53295.1、AAN85601.1、CRTZ_ERWHE、CRTZ_PANAN、BAB79605.1、CRTZ_ALCSP、CRTZ_AGRAU、CAB56060.1、ZP_00094836.1、AAC44852.1、BAC77670.1、NP_745389.1、NP_344225.1、NP_849490.1、ZP_00087019.1、NP_503072.1、NP_852012.1、NP_115929.1、ZP_00013255.1。
【0126】
従って、この好ましい実施形態において、少なくとも1つのヒドロキシラーゼ遺伝子が、野生型と比較して、Blakeslea属の本発明に従う好ましいトランスジェニック生物中に存在する。
【0127】
この好ましい実施形態において、遺伝子改変された生物は、例えば、ヒドロキシラーゼをコードする少なくとも1つの外因性核酸を有する。
【0128】
上記の好ましい実施形態において、ヒドロキシラーゼ遺伝子として、配列番号32、24のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸、もしくは配列番号76の配列によってコードされるタンパク質をコードする核酸、またはアミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失によってこの配列に派生し、かつ配列番号32、34の配列、もしくは配列番号76を有する配列によってコードされる配列に対して、アミノ酸レベルで、少なくとも30%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性、より好ましくは少なくとも70%の同一性、なおより好ましくは少なくとも80%の同一性、最も好ましくは少なくとも90%の同一性、特に、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有し、かつヒドロキシラーゼの酵素的特性を有する配列を使用することが好ましい。
【0129】
ヒドロキシラーゼおよびヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例は、例えば、上記のように、そのゲノム配列が知られている種々の生物から、配列番号31、33、または76との、データベースからのアミノ酸配列または対応する逆翻訳された核酸配列の相同性比較によって、容易に見い出され得る。
【0130】
ヒドロキシラーゼおよびヒドロキシラーゼ遺伝子のさらなる例は、それ自体公知の様式で、例えば、ハイブリダイゼーションおよびPCR技術によって、上記のように、そのゲノム配列が知られていない種々の生物から、配列番号31、33、または76の配列から開始してさらに容易に見い出され得る。
【0131】
さらに特に好ましい実施形態において、配列番号32、34の配列のヒドロキシラーゼのアミノ酸配列、または配列番号76の配列によってコードされるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする核酸は、ヒドロキシラーゼ活性を増加するために生物に導入される。
【0132】
適切な核酸配列は、例えば、遺伝コードに従ってポリペプチド配列の逆翻訳によって得られうる。
【0133】
この目的のために、生物特異的なコドン使用頻度に従って頻繁に使用されるコドンを使用することが好ましい。この使用頻度は、問題の生物の他の公知の遺伝子のコンピュータ分析に基づいて容易に決定されうる。
【0134】
特に好ましい実施形態において、配列番号31、33、または76の配列を含む核酸が生物に導入される。
【0135】
上述のすべてのヒドロキシラーゼ遺伝子は、それ自体公知の様式で、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成によって、例えば、二重ヘリックスの個々の重複する相補性核酸ビルディングブロックのフラグメント縮合によって、さらに調製され得る。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えば、ホスホアミダイト法(Voet, 第2版, Wiley Press NewYork, 896-897頁)によって公知の様式において可能である。合成オリゴヌクレオチドの付加ならびにDNAポリメラーゼのクレナウフラグメントおよびライゲーション反応の補助を伴ってギャップを埋めること、ならびに一般的なクローニング方法もまた、Sambrookら(1989), Molecular cloning: A laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載される。
【0136】
それゆえに、形質転換(i)において利用されるベクターは、本発明の更なる実施形態において、ヒドロキシラーゼ、特に配列番号70を有するHaematococcus pluvialisヒドロキシラーゼをコードする配列、または配列番号71を有するErwinia uredovaヒドロキシラーゼ、または配列番号76の配列によってコードされるThermus thermophilusヒドロキシラーゼをコードする配列を好ましく含む。
【0137】
形質転換(i)において利用されるベクターは、好ましくはまた、発現を制御および支持する領域、特にプロモーターおよびターミネーターを含む。
【0138】
形質転換(i)において利用されるベクターは、好ましくはgpdプロモーターおよび/またはptef1プロモーターおよび/またはtrpCターミネーターを含み、これらのすべてがBlakesleaの形質転換において特に、成功することが判明した。発現および転写を制御するための当業者によく知られている「逆方向反復」(IR, Rompp Lexikon der Biotechnologie 1992, Thieme Verlag Stuttgart, 407頁「Inverse repetitive sequences」)の使用もまた、本発明の範囲に含まれる。
【0139】
ベクター中で利用されるgpdプロモーターは、有利には、配列番号1の配列を有する。ベクター中で利用されるtrpCターミネーターは、有利には、配列番号2の配列を有する。ベクター中で利用されるptef1プロモーターは、有利には、配列番号35の配列を有する。
【0140】
本発明において、特にAspergillus nidulans由来のgpdプロモーターおよびtrpCターミネーターおよびBlakeslea trispora由来のptef1プロモーターを使用することが好ましい。
【0141】
形質転換(i)において利用されるベクターは、特に耐性遺伝子を含む。後者は、好ましくはハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、特に大腸菌由来のものである。この耐性遺伝子は、形質転換の検出および細胞の選択に特に適切であることが判明している。
【0142】
このようなhphのために利用される好ましいプロモーターはp−gpdAであり、これはAspergillus nidulansのグリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼのコード領域のプロモーターである。hphのために好ましく利用されるターミネーターはt−trpCであり、これは、Aspergillus nidulansアントラニル酸シンターゼ成分をコードするtrpC遺伝子のターミネーターである。
【0143】
pBinAHygベクターの誘導体は、特に適切なベクターであることが判明した。従って、形質転換のために利用されるこのベクターは、好ましくは配列番号3を含む。所望されるカロチノイドまたはその前駆体に依存して、上記のように、ヒドロキシラーゼ、ケトラーゼ、フィトエンデサチュラーゼなどをコードする配列がこのベクターに加えられるだろう。従って、本発明の1つの実施形態において、このベクターは、上記フィトエンデサチュラーゼをコードする配列番号69の配列を含む。本発明のさらなる実施形態において、このベクターはまた、ケトラーゼをコードする配列番号72の配列を含む。本発明のさらなる実施形態において、このベクターはさらに、ヒドロキシラーゼをコードする配列番号70または71または76の配列を含む。上述の配列の対応する組み合わせもまた、本発明の範囲内にある。従って、1つの実施形態において、このベクターは、ケトラーゼをコードする配列番号72の配列と、ヒドロキシラーゼをコードする配列番号70または71または76の配列の両方を含み、従って、アスタキサンチンが産生されることを可能にする。
【0144】
特に、本発明の範囲内で、配列番号37〜51および62からなる群から選択されるベクターを使用することが可能である。
【0145】
本発明の方法によれば、遺伝子改変されたBlakeslea生物、特に遺伝子改変されたBlakeslea trispora種またはそれらによって形成される菌糸体を得ることができる。
【0146】
遺伝子改変された生物は、カロチノイド、キサントフィル、またはそれらの前駆体、特にフィトエン、ビキシン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、およびカンタキサンチンを産生するために使用できる。適当な遺伝子情報を導入することにより、野生型中には天然には存在しない新規なカロチノイドが、特異的に遺伝子改変された細胞によって、またはそれらによって形成した菌糸体によって生成され、引き続いて単離されることもまた可能である。
【0147】
特異的に遺伝子改変された細胞またはそれによって形成した菌糸体を使用して、カロチノイドまたはそれらの前駆体を入手することが好ましい。
【0148】
遺伝子改変が、見い出された接合型(Blakeslea trisporaについては、(+)または(−))の一方の細胞においてのみ実行される場合、対応する他方、改変されていない接合型が培養に加えられる。なぜなら、この方法において、第2の、改変されていない接合型によって放出される物質(例えば、トリスポリック酸)のおかげで、カロチノイドまたはそれらの前駆体の良好な産生を達成することが可能であるからである。しかし、有利には、遺伝子改変は、両方の接合型の細胞において実行され、次いでこれらは一緒に培養され、それによって特に良好な増殖およびカロチノイドまたはそれらの前駆体の最適な産生を達成する。トリスポリック酸の(人工的な)添加は可能でありかつ有用である。
【0149】
トリスポリック酸は、BlakesleaなどのMucorales真菌中の性ホルモンであり、これは接合胞子の形成およびβ−カロチンの産生を刺激する(van den Ende 1968, J. Bacteriol. 96:1298-1303, Austinら、1969, Nature 223:1178-1179, Reschke Tetrahedron Lett. 29:3435-3439, van den Ende 1970, J. Bacteriol. 101:423-428)。
【実施例】
【0150】
材料および方法
分子遺伝学研究を、他に記載しない限り、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al., 1999, John Wiley & Sons)における方法によって実行した。
【0151】
株および増殖条件
Blakeslea trispora株ATCC 14271(接合型(+))およびATCC 14272(接合型(−))をアメリカンタイプカルチャーコレクションから入手した。B. trisporaをMEP培地(麦芽エキス−ペプトン培地:30g/l 麦芽抽出物(Difco)、3g/lペプトン(Soytone,Difco)、20g/l寒天、pH5.5に設定、H2Oで1000mlに調整(28℃))中で増殖させた。
【0152】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス LBA4404をHoekemaら(1983, Nature 303:179-180)に従って、28℃で24時間、アグロバクテリア最少培地(AMM):10mM K2HPO4、10mM KH2PO4、10mM グルコース、MM塩(2.5mM NaCl、2mM MgSO4、700μM CaCl2、9μM FeSO4、4mM (NH4)2SO4)中で増殖させた。
【0153】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスの形質転換
プラスミドpBinAHygをアグロバクテリア株LBA 4404にエレクトロポレーションした(Hoekemaら, 1983, Nature 303:179-180)(MozoおよびHooykaas, 1991, Plant Mol. Biol. 16:917-918)。以下の抗生物質を、アグロバクテリア増殖の間に選択のために使用した:リファンピシン50mg/l(A.ツメファシエンス染色体についての選択)、ストレプトマイシン30mg/l(ヘルパープラスミドについての選択)、およびカナマイシン100mg/l(バイナリーベクターについての選択)。
【0154】
Blakeslea trisporaの形質転換
AMMにおける増殖の24時間後、アグロバクテリアを、誘導培地(IM:MM塩、40mM MES(pH 5.6)、5mM グルコース、2mM ホスフェート、0.5% グリセロール、200μMアセトシリンゴン)中で0.15のOD600まで形質転換のために希釈して、再度約0.6のOD600まで、IMで一晩増殖させた。
【0155】
Blakeslea ATCC 14271またはATCC14272およびアグロバクテリウムの同時インキュベーションのために、100μlのアグロバクテリア懸濁物を、100μlのBlakeslea胞子懸濁物(107胞子/ml、0.9%NaCl中)と混合し、滅菌様式でIM−アガロースプレート(IM+18g/l寒天)上のナイロンメンブレン(Hybond N,Amersham)上に分注した。26℃で3日間のインキュベーション後、メンブレンをMEP−寒天プレート(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)に移した。形質転換したBlakeslea細胞を選択するために、培地は100mg/lの濃度でハイグロマイシンを含み、そしてアグロバクテリアに対して選択するために、100mg/lセフォタキシムを含んだ。インキュベーションを26℃で約7日間実行した。これに続いて、菌糸体を新鮮な選択プレートに移すことを行った。得られた胞子を0.9%NaClですすぎ、そしてCM17−1寒天(3g/l グルコース、200mg/l L−アスパラギン、50mg/l MgSO4x7H2O、150mg/l KH2PO4、25μg/l チアミン−HCl、100mg/l 酵母抽出物、100mg/l デオキシコール酸ナトリウム、100mg/L ハイグロマイシン、100mg/L セフォタキシム、pH 5.5、18g/l寒天)上にプレーティングした。個々の遺伝子改変された胞子を、それらを選択培地上に個々に配置することによって、BectonDickinson製のFACS装置(モデルVantage+Divaオプション)を使用して単離した。
【0156】
アグロバクテリウム媒介形質転換による遺伝子改変されたBlakeslea trisporaの調製
組換えプラスミドpBinAHygの調製
gpdA−hph−trpC−カセットを、プラスミドpANsCos1(図1、Osiewacz, 1994, Curr. Genet. 26:87-90, 配列番号4)からのBglII/HindIIIフラグメントとして単離し、そしてBamHI/HindIIIで切断したバイナリープラスミドpBin19(Bevan, 1984, Nucleic Acids Res. 12:8711-8721)にライゲーションした。この方法で得られたベクターはpBinAHygと呼ばれ(図2、配列番号3)、gpdプロモーター(配列番号1)の制御下に大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、ならびにAspergillus nidulans由来のtrpCターミネーター(配列番号2)およびアグロバクテリウムDNA導入のために必要である対応するボーダー配列を含んだ。本明細書中以下に記載される例示的な実施形態において言及されるベクターは、pBinAHyg誘導体である。
【0157】
アグロバクテリウム・ツメファシエンスへのpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入
pBinAHygプラスミドのアグロバクテリアへの導入は以下の実施例によって記載されている。この誘導体は類似の様式で導入された。
【0158】
プラスミドpBinAHygを、アグロバクテリア株LBA 4404にエレクトロポレーションした(Hoekemaら、1983, Nature 303:179-180)(MozoおよびHooykaas, 1991, Plant Mol. Biol. 16:917-918)。以下の抗生物質を、アグロバクテリア増殖の間に選択のために使用した:リファンピシン50mg/l(A.ツメファシエンス染色体についての選択)、ストレプトマイシン30mg/l(ヘルパープラスミドについての選択)、およびカナマイシン100mg/l(バイナリーベクターについての選択)。
【0159】
Blakeslea trisporaへのpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入
AMMにおける増殖の24時間後、アグロバクテリアを、誘導培地(IM:MM塩、40mM MES(pH 5.6)、5mM グルコース、2mM ホスフェート、0.5% グリセロール、200μMアセトシリンゴン)中で0.15のOD660まで形質転換のために希釈し、再度約0.6のOD660まで、IMで一晩増殖させた。
【0160】
Blakeslea trispora(B.t.)およびアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.t.)の同時インキュベーションのために、100μlのアグロバクテリア懸濁物を、100μlのBlakeslea胞子懸濁物(107胞子/ml、0.9%NaCl中)と混合し、滅菌様式でIM−アガロースプレート(IM+18g/l寒天)上のナイロンメンブレン(Hybond N,Amersham)上に分注した。26℃で3日間のインキュベーション後、メンブレンをMEP−寒天プレート(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)に移した。
【0161】
形質転換したBlakeslea細胞を選択するために、培地は100mg/lの濃度でハイグロマイシンを含み、そしてアグロバクテリアに対して選択するために、100mg/lセフォタキシムを含んだ。インキュベーションを26℃で約7日間実行した。これに続いて、菌糸体を新鮮な選択プレートに移すことを行った。得られた胞子を0.9%NaClですすぎ、そしてCM17−1寒天(3g/l グルコース、200mg/l L−アスパラギン、50mg/l MgSO4x7H2O、150mg/l KH2PO4、25μg/l チアミン−HCl、100mg/l 酵母抽出物、100mg/l デオキシコール酸ナトリウム、pH 5.5、100mg/l セフォタキシム、100mg/l ハイグロマイシン、18g/l寒天)上にプレーティングした。新鮮な選択プレートへの胞子の移動を3回反復した。このようにして、形質転換体Blakeslea trispora GMO 3005を単離した。代替的には、胞子を個々に100mg/L セフォタキシム、100mg/l ハイグロマイシンを含むCM−17寒天に適用することによって、BectonDickinson FacsVantage+Diva Optionによって、GMO(遺伝子改変生物)を選択した。この場合において、真菌の菌糸体は、胞子が遺伝子改変された場合のみに形成した。
【0162】
Blakeslea trisporaにおけるpBinAHygおよびpBinAHyg誘導体の導入に起因する遺伝子改変の検出
導入の検出が、Blakeslea trisporaにおけるpBinAHygについて、以下の実施例によって記載されている。
【0163】
誘導体の導入の検出は、同様の様式で実行された。
【0164】
200mlのMEP培地(30g/l 麦芽抽出物、3g/l ペプトン、pH 5.5)に、105〜107個の胞子のBlakeslea trispora GMO 3005形質転換体を接種し、ロータリーシェーカー上で200rpmおよび26℃で、7日間インキュベートした。成功した形質転換を検出するために、DNAを菌糸体から単離し(Peqlab Fungal DNA Miniキット)、PCR(プログラム:94℃で1分間、次いで、1分間94℃、1分間58℃、1分間72℃の30サイクル)において使用した。
【0165】
プライマーhph−フォワード(5’−CGATGTAGGAGGGCGTGGATA、配列番号5)およびプライマーhph−リバース(5’−GCTTCTGCGGGCGATTTGTGT、配列番号6)を、ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)を検出するために使用した。予測されるhphフラグメントは800bp長であった。
【0166】
プライマーnptIII−フォワード(5’−TGAGAATATCACCGGAATTG、配列番号7)およびプライマーnptIII−リバース(5’−AGCTCGACATACTGTTCTTCC、配列番号8)を、カナマイシン耐性遺伝子nptIIIの増幅のために、従ってアグロバクテリアについてのコントロールとして使用した。予測されるnptIIIフラグメントは700bp長であった。
【0167】
プライマーMAT292(5’−GTGAATGGAAATCCCATCGCTGTC、配列番号9)およびプライマーMAT293(5’−AGTGGGTACTCTAAAGGCCATACC、配列番号10)を、グリセリンアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子gpd1のフラグメントの増殖のため、従って、Blakeslea trisporaについてのコントロールとして使用した。予測されるgpdlフラグメントは500bp長であった。
【0168】
図3は、標準ゲルに基づくBlakeslea trisporaDNAのPCRの結果を示す。ゲルのレーンには以下のようにロードした:
1)100bpサイズマーカー(100bp〜1kb)
2)B.t.GMO 3005 プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
3)B.t.GMO 3005 プライマーhph−フォワード/hph−リバース
4)B.t.GMO 3005 プライマーMAT292/MAT293(gpd)
5)pBinAHygプラスミドを有するA.t. プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
6)pBinAHygプラスミドを有するA.t. プライマー hph−フォワード/hph−リバース
7)B.t.14272WT プライマーnptIII−フォワード/nptIII−リバース
8)B.t.14272WT プライマーhph−フォワード/hph−リバース
9)B.t.14272WT プライマーMAT292/MAT293(gpd)。
【0169】
ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)および、陽性対照として、グリセリンアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(gpd1)がBlakeslea trispora DNAにおいて検出された。対照的に、nptIIIは検出されなかった。
【0170】
従って、アグロバクテリウム媒介形質転換によるBlakeslea trisporaの遺伝子改変が検出された。
【0171】
ホモカリオン性Blakeslea trisporaGMOの単離:
pBinAHygベクターおよびpBinAHyg誘導体のBlakeslea trisporaへの首尾よい導入は、Blakeslea trisporaの遺伝子改変された生物(GMO)を産生する。しかし、Blakesleaは栄養細胞および生殖細胞のサイクルのすべての段階において多核細胞を有する。それゆえに、外来性DNAは、通常1つの核においてのみ挿入される。外来性DNAがすべての核に挿入されるBlakeslea株を得ることが目的であり、すなわち、その目的は同核組換え真菌菌糸体である。
【0172】
1)FACS(蛍光活性化細胞分取)の手段による同核組換え株の調製
Blakeslea trisporaの胞子または遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の少ない割合が本来単核である。pBinAHygまたはpBinAHyg誘導体の外来DNAを含む同核組換え株を産生するために、単核胞子をFACSを用いて分取し、100mg/lセフォタキシムおよび100mg/lハイグロマイシンを含むMEP(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)上にプレーティングした。ここで産生された菌糸体は同核であった。FACS分取のために、3日目の古いスメアの胞子を、寒天プレートあたり、10mlのTris−HCl 50mM+0.1% Span20で洗浄した。胞子濃度は0.5〜0.8×107胞子/mlであった。1mlのDMSOおよび10μlのSyto 11(DMSO中の色素ストック溶液、Molecular Probes No.S−7573)を9mlの胞子懸濁物に加えた。これに続いて、30℃で2時間の染色を行った。選択および適用を、Becton Dickinson FacsVantage+Diva Option型装置を用いて実行した。最初に、個々の胞子を凝集物および夾雑物から分離するために、サイズ選択を実行した。次いで、これらの胞子を、それらの蛍光に従って(励起=488nm;発光=530nm)、適用し分取した。蛍光頻度の分布のガウス曲線の左の肩は、単核胞子を含んだ。
【0173】
2)核の数を減少させることおよびFACSを用いる選択による同核株の調製
胞子あたりの核の数を減少させるために、選択の前に、胞子懸濁物をMNNG(N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン)で処理し、従って、化学的突然変異誘発によって核の数の減少を達成した。
【0174】
このために、最初に、Tris−HCl緩衝液、pH 7.0中に1×107胞子/mlを含む胞子懸濁物を調製した。この胞子懸濁物を、100μg/mlの最終濃度のMNNGと混合した。MNNG中のインキュベーションの時間は、胞子の生存率が約5%であるような方法で選択した。MNNGとのインキュベーション後、胞子を、50mMリン酸緩衝液pH7.0中の1g/l Span20で3回洗浄し、分取し、そして1)に記載される方法によって選択した。
【0175】
代替として、Cerda-OlmedoおよびPatricia Reau in Mutation Res., 9(1970)369-384によって記載されるようなX線およびUV光線を使用することによって胞子中の核の数を減少させることもまた可能であった。
【0176】
3)劣性選択マーカーのための選択による同核株の調製
同核菌糸体の選択のための適切な劣性選択マーカーは、例えば、劣性選択マーカーpyrGである。Blakeslea trisporaの野生型株はpyrG+である。これらの株は、ピリミジンアナログ5−フルオロロテート(FOA)の存在下で増殖することができない。なぜなら、これらは、オロチジン5’−一リン酸デカルボキシラーゼを介してFOAを致死的な代謝産物に転換するからである。遺伝子改変されたpyrG−−同核Blakesleaは、オロチジン5’−一リン酸デカルボキシラーゼの酵素活性を欠く。結果として、これらのpyrG−株は、5−フルオロオロテートを利用することができない。それゆえに、これらの株は、FOAおよびウラシルの存在下で増殖する。pyrG−突然変異および外来DNAインサートが単核胞子の核と合わさった場合、この胞子は同核組換え真菌菌糸体を形成しうる。
【0177】
最初に、プラスミドpBinAHygBTpyrG−SCO(配列番号36、図4)を、Blakeslea trisporaからのpyrGのフラグメント(配列番号65)をpBinAHygに挿入することによって生成した。上記プラスミドは、Blakeslea trisporaに形質転換され、そして相同組換えに起因して、そこでpyrG破壊を引き起こした。
【0178】
pyrG−表現型を有する同核Blakeslea trispora GMOを以下のように選択した。pBinAHygBTpyrG−SCOのアグロバクテリウム媒介形質転換のために、100mg/L セフォタキシムおよび100mg/l ハイグロマイシンを含むMEP(30g/l麦芽抽出物、3g/lペプトン、pH 5.5、18g/l寒天)上でのプレーティングを上記のように実行した。形質転換体の胞子を、寒天プレートあたり、10mlのTris−HCl 50mM+0.1% Span20で洗浄した。胞子濃度は0.5〜0.8×107胞子/mlであった。次いで、胞子を、100mg/l セフォタキシムおよび100mg/l ハイグロマイシンを含むFOA培地上にプレーティングした。FOA培地は、1リットルあたり、20gのグルコース、1gのFOA、50mgのウラシル、200mlのクエン酸緩衝液(0.5M、pH 4.5)およびSutter, 1975, PNAS, 72:127に従う40mlの痕跡塩(trace salt)溶液を含んでいた。同核pyrG−突然変異体は、ウラシル含有FOA培地上での増殖を示したが、ウラシルを含まないFOA培地上にプレーティングされた場合、増殖を示さなかった。同様にして、同核GMOを、以下にキサントフィルの産生について記載されるBlakeslea trispora GMOから調製した。
【0179】
代替的には、5−炭素−5−デアザリボフラビンおよびさらにハイグロマイシンを含む培地上に、Ronceroらによるプロトコールに従って、胞子をプレーティングすることが可能である(Ronceroら、1984, Mutation Research, 125: 195-204)。これは、遺伝子型hygRおよびdar−のホモカリオン細胞が選択されることを可能にする。
【0180】
この原理に従って、表現型hygRおよびdar−を有するホモカリオン性Blakeslea trispora株が生成される。
【0181】
カロチノイドおよびカロチノイド前駆体を産生するためのBlakeslea trisporaの遺伝子改変生物を調製するための例示的な実施形態
以下に言及するプラスミドを、「重複伸長PCR」法、および引き続くpBinAHygプラスミドへの増幅産物の挿入によって生成した。重複伸長PCR法は、Innisら(編)PCR protocols: a guide to methods and applications, Academic Press, San Diegoにおいて記載されるように実行した。pBinAHyg誘導体の形質転換および同核遺伝子改変Blakeslea trispora株の調製を、上記のように実行した。
【0182】
ゼアキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、ゼアキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、従って、とりわけ、ヒドロキシラーゼ(crtZ)をコードする。
【0183】
− ptef1−HPcrtZ、Blakeslea trispora ptef1プロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144(アクセッション番号AF162276)からのHPcrtZヒドロキシラーゼ(配列番号70)の遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpTEF1−HPcrtZ、配列番号37、図5)。
【0184】
− p−carRA−HPcrtZ、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ、配列番号38、図6)。
【0185】
− p−carB−HPcrtZ、Blakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarB−HPcrtZ、配列番号39、図7)。
【0186】
− p−carRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IR、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む。逆方向反復構造がヒドロキシラーゼ遺伝子の下流に位置しており、この構造は、carAの3’末端およびcarAの下流の領域に由来する(IR、配列番号74、「逆方向反復1」carAの約350bp、次いで約200bp「ループ」そして次いで約350bp「逆方向反復2」)(Seq.pBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IR、配列番号40、図8)。
【0187】
− p−carRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IR、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む。ヒドロキシラーゼ遺伝子は、carAの3’末端およびcarAの下流の領域に由来する逆方向反復構造に融合されている(IR、配列番号74、「逆方向反復1」carAの約350bp、次いで約200bp「ループ」そして次いで約350bp「逆方向反復2」)。結果として、誘導された融合タンパク質は、Haematococcus pluvialisヒドロキシラーゼおよびBlakeslea trispora CarAのカルボキシ末端からなる(Seq.pBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IR、配列番号41、図9)。
【0188】
− p−tef1−EUcrtZ、ptef1プロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3(アクセッション番号D90087)からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子(配列番号71)を含む(Seq.pBinAHygBTpTEF1−EUcrtZ、配列番号42、図10)。
【0189】
− p−carRA−EUcrtZ、Blakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ、配列番号43、図11)。
【0190】
− p−carB−EUcrtZ、Blakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下に、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子を含む(Seq.pBinAHygBTpcarB−EUcrtZ、配列番号44、図12)。
【0191】
− p−gpdA−HPcrtZ−t−crtZ、gpdAプロモーターの制御下にHaematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子およびt−crtZターミネーター(すなわち、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのcrtZの下流の配列部分(配列番号73))を含む(Seq.pBinAHyg−gpdA−HPcrtZ−tcrtZ、配列番号43、図13)。
【0192】
− p−gpdA−BTcarR−HPcrtZ−BTcarA、Blakeslea trisporaからのリコピンシクラーゼcarRの遺伝子、Haematococcus pluvialis Flotow NIES-144からのHpcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子、およびBlakeslea trisporaからのフィトエンシンターゼcarAの遺伝子の遺伝子融合を含み、かつAspergillus nidulans gpdAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHyg−carR_crtZ_carA、配列番号46、図14)。
【0193】
カンタキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、カンタキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、従って、とりわけ、ケトラーゼ(crtW)をコードする。
【0194】
− p−tef1−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102(ORF148、アクセッション番号NZ_AABC01000196)からのNPcrtWケトラーゼ(配列番号72)の遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora ptef1プロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpTEF1−NpucrtW、配列番号47、図15)。
【0195】
− p−carRA−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−NpucrtW、配列番号48、図16)。
【0196】
− p−carB−NPcrtW、Nostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子を含み、かつBlakeslea trispora pcarBプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarB−NpucrtW、配列番号49、図17)。
【0197】
アスタキサンチンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
以下のプラスミド(pBinAHyg誘導体)は、アスタキサンチンの産生のためにBlakeslea trisporaの遺伝子改変のために使用され、すなわち、とりわけ、ヒドロキシラーゼ(crtZ)およびケトラーゼ(crtW)をコードする。
【0198】
− p−carRA−HPcrtZ−pcarRA−NPcrtW、Haematococcus pluvialis Flotow NIES−144からのHPcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子およびNostoc punctiforme PCC73102からのNPcrtWケトラーゼの遺伝子(ORF148、アクセッション番号NZ_AABC01000196)を含み、両方とも各々の場合においてBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ−BTpcarRA−NpucrtW、配列番号50、図18)。
【0199】
− p−carRA−EUcrtZ−pcarRA−NPcrtW、Erwinia uredova 20D3からのEUcrtZヒドロキシラーゼの遺伝子(アクセッション番号D90087)、およびNostoc punctiforme PCC73102からのNPcrTWケトラーゼの遺伝子を含み、両方とも各々の場合においてBlakeslea trispora pcarRAプロモーターの制御下にある(Seq.pBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ−BTpcarRA−NpucrtW、配列番号51、図19)。
【0200】
Blakeslea trisporaの遺伝子改変の例として利用され得る遺伝子およびプロモーターのクローニングおよび配列分析
種々のBlakeslea trisporaの遺伝子およびプロモーターのクローニングおよび配列決定が以下に例として記載される。
【0201】
ptef1のクローニングおよび配列決定分析
Blakeslea trispora p−tefを、Genbankにおいて以前に公開された、Blakeslea trispora翻訳伸長因子1−αの構造遺伝子(AF157235)の配列に基づいてクローニングした。その配列から開始して、エントリーAF157235プライマーを、上記構造遺伝子の上流のプロモーター領域を増幅および配列決定するために、逆方向PCRのために選択した。
【0202】
Blakeslea trispora ATCC14272のXho1切断されかつ環状化された200ngのゲノムDNAの逆方向ネスト化PCRにおいて、3000bpフラグメントを、以下の反応混合物中に得た:テンプレートDNA(Blakeslea trispora ATCC14272の1μgのゲノムDNA)、プライマーMAT344 5’−GGCGTACTTGAAGGAACCCTTACCG−3’(配列番号63)およびプライマーMAT 345 5’−ATTGATGCTCCCGGTCACCGTGATT−3’(配列番号64)、各0.25μM、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2Oで100μlにする。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、60秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。3000bpフラグメント中のtef1遺伝子の推定の開始コドンの上流の配列部分は、ptef1プロモーターと見なされた。
【0203】
Blakeslea trispora由来のHMG−CoA還元酵素の遺伝子のクローニング、配列決定分析
最初に、Blakeslea trispora ATCC 14272、接合型(−)の遺伝子ライブラリーを調製するために、コスミドベクターpANsCos1を使用した。ベクターをXbaIを用いる切断によって線状化し、次いで脱リン酸化した。BamHIを用いるさらなる切断は挿入部位を生成し、そこにBlakeslea trisporaゲノムDNA(部分的にSau3AIで切断され、脱リン酸化されている)がライゲーションされた。続いて、この方法で生成されたコスミドはインビトロでパッケージングされ、大腸菌に移された。
【0204】
HMG−CoA還元酵素をコードするBlakeslea trispora遺伝子のフラグメントの既知の配列に基づいて(Eur. J. Biochem 220, 403-408 (1994))、315bp DNAプローブを以下のPCRによって調製した。反応混合物:1μgのBlakeslea trispora ATCC 14272ゲノムDNA、プライマーMAT314 5’−CCGATGGCGACGACGGAAGGTTGTT−3’(配列番号79)およびプライマーMAT315 5’−CATGTTCATGCCCATTGCATCACCT−3’(配列番号80)、各0.25μM、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2Oで100μlにする。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);58℃、30秒間、72℃、30秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0205】
このDNAプローブは、コスミド遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために使用した。そのコスミドが上記DNAプローブとハイブリダイズするクローンを同定した。このコスミドのインサートを配列決定した。DNA配列は、MHG-CoA還元酵素の遺伝子に割り当てられた部分を含んだ(配列番号75)。
【0206】
carBのクローニングおよび配列決定分析
(carB=Blakeslea trisporaフィトエンデサチュラーゼ遺伝子)
縮重プライマーMAT182 5’−GCNGARGGNATHTGGTA−3’(配列番号52)およびMAT192 5’−TCNGCNAGRAADATRTTRTG−3’(配列番号53)を、フィトエンデサチュラーゼのペプチド配列の比較、およびPhycomyces blakesleeanus、Cercospora nicotianae、Phaffia rhodozymaおよびNeurospora crassaの対応するDNA配列の比較から導いた。PCRを100μl反応混合物中で実行した。これらは、Blakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、1μM MAT182、1μM MAT192、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液 10×、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で加える)、H2O(100μlに調整)を含んだ。
【0207】
PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);40℃、30秒間、72℃、30秒間、95℃、30秒間(35サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0208】
これは、358bpフラグメントを生じ、この導き出されたペプチド配列はフィトエンデサチュラーゼ配列と類似している。逆方向PCR(Innisら、PCR protocols: a guide to methods and applications. 1990.219〜227頁)の方法を、染色体ウォーキングの原理に従って、以下のように350bpフラグメントの上流および下流の遺伝子領域を増幅、クローニング、および配列決定のために使用した。
【0209】
(i)1.1kbpフラグメント、プライマーMAT219 5’−AAGTGACACCGGTTACACGCTTGTCTT−3’(配列番号54)およびMAT 220 5’−GCTTATCACCATCTGTTACCTCCTTGC−3’(配列番号55)を用いるPCRによって、EcoRI切断されかつ環状化されたBlakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、0.25μM MAT219、0.25μM MAT220、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2O(100μlに調整)から得られた。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、60秒間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0210】
(ii)2.9kbpフラグメント、プライマーMAT219およびMAT220を用いるPCRによって、XbaI切断されかつ環状化されたBlakeslea trispora ATCC 14272の200ngのゲノムDNA、0.25μM MAT219、0.25μM MAT220、100μM dNTP、10μlのHerculaseポリメラーゼ緩衝液 10×、5UのHerculase(85℃で加える)、H2O(100μlに調整)から得られた。PCRプロフィールは以下の通りであった:95℃、10分間(1サイクル);85℃、5分間(1サイクル);60℃、30秒間、72℃、3分間、95℃、30秒間(30サイクル);72℃、10分間(1サイクル)。
【0211】
図20(配列番号77)は、クローニングされた配列部分を図解的に示す。配列決定を、クローニングされたフラグメントおよびPCR産物を使用して順方向および逆方向で実行した。図21(配列番号78)は、クローニングされた配列部分の配列を示す。
【0212】
配列比較
carBのヌクレオチド配列および誘導タンパク質CarBのペプチド配列を、関連するタンパク質の既知の配列と比較した。配列を、GAPプログラムおよびBESTFITプログラムを使用して比較した。
【0213】
CarB−GAPに従う同一のアミノアシル残基
プログラム設定:
ギャップ重み: 8
長さ重み: 2
平均マッチ: 2.912
平均ミスマッチ: −2.003
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致するアミノ酸の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 72.491
Phaffia rhodozyma: 50.460
Neurospora crassa: 47.943
Cercospora nicotianae: 47.740
【0214】
CarB−BESTFITに従う同一のアミノアシル残基
プログラム設定:
ギャップ重み: 8
長さ重み: 2
平均マッチ: 2.912
平均ミスマッチ: −2.003
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致するアミノ酸の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 73.380
Phaffia rhodozyma: 53.175
Neurospora crassa: 51.896
Cercospora nicotianae: 50.791
【0215】
carB−GAPに従う同一の塩基
プログラム設定:
ギャップ重み: 50
長さ重み: 3
平均マッチ: 10.000
平均ミスマッチ: 0.000
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致する塩基の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 64.853
Cercospora nicotianae: 50.143
Phaffia rhodozyma: 43.179
Neurospora crassa: 42.130
【0216】
carB−BESTFITに従う同一の塩基
プログラム設定:
ギャップ重み: 50
長さ重み: 3
平均マッチ: 10.000
平均ミスマッチ: −9.000
Blakeslea trispora ATCC14272のCarBに一致する塩基の%で示される以下の値が見い出された:
Phycomyces blakesleeanus: 68.926
Phaffia rhodozyma: 62.403
Neurospora crassa: 60.230
Cercospora nicotianae: 56.884
【0217】
carB発現のためのクローニング
Blakeslea trispora carBをクローニングおよび発現するために、可能なタンパク質配列が、上記のBlakeslea trisporaからクローニングされた配列部分から6つのリーディングフレームにおいて導き出された。これらのタンパク質配列は、Phycomyces blakesleeanus、Phaffia rhodozyma、Neurospora crassa、Cercospora nicotianaeからのフィトエンデサチュラーゼの配列と比較された。配列比較に基づいて、3つのエキソンが、Blakeslea trisporaゲノムDNAのクローニングされた配列部分において同定され、これは、まとめると、その由来する遺伝子産物が、その全体の長さにわたって、Phycomyces blakesleeanusのCarBフィトエンデサチュラーゼと72.7%同一であるアミノアシル残基を有するコード領域を生じる。3つの可能性のあるエキソンおよび2つの可能性のあるイントロンを含むこの配列部分は、それゆえに、遺伝子carBと呼ばれた。予測される遺伝子構造を確認するために、Blakeslea trispora carBのコード配列は、Blakeslea trispora cDNAをテンプレートとして、ならびにプライマーBol1425 5’−AGAGAGGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGC−3’(配列番号56)およびBol1426 5’−AGAGAGGGATCCATGTCTGATCAAAAGAAGCA−3’(配列番号57)を使用して、PCRによって生成された。得られたDNAフラグメントを配列決定した。エキソンおよびイントロンの位置は、ゲノムcarB DNAとcDNAを比較することによって確認された。図21は、carBのコード配列を図解的に示す。大腸菌中でのcarBの発現のために、最初に、carBにおけるNdeI切断部位を重複伸長PCR法によって除去し、NdeI切断部位を遺伝子の5’末端に導入し、BamHI切断部位を3’末端に導入した。得られたDNAフラグメントをベクターpJOE2702とライゲーションした。得られたプラスミドをpBT4と呼び、大腸菌XL1−BlueにpCAR−AEとともにクローニングした。発現を、ラムノースを用いて誘導した。酵素活性を、HPL
Cを通してリコピン合成を検出することによって検出した。クローニング工程を以下に記載する。
【0218】
PCR1.1:
約0.5μgのBlakeslea trispora cDNA、0.25μM MAT350 5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’(配列番号58)、0.25 μM MAT244 5’−GTTCCAATTGGCCACATGAAGAGTAAGACAGGAAACAG−3’(配列番号59)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLに調整)。
【0219】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.40℃ 30秒間、4.72℃ 1分30秒間、5.95℃ 30秒間、6.50℃ 30秒間、7.72℃ 1分30秒間、8.95℃ 30秒間、9.72℃ 10分間。
【0220】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)5回、(6〜8.)25回、(9.)1回。
【0221】
PCR1.2:
約0.5μgのBlakeslea trispora cDNA、0.25 μM MAT243 5’−CCTGTCTTACTCTTCATGTGGCCAATTGGAACCAACAC−3’(配列番号60)、0.25 μM MAT353 5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’(配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLに調整)。
【0222】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.40℃ 30秒間、4.72℃ 1分30秒間、5.95℃ 30秒間、6.50℃ 30秒間、7.72℃ 1分30秒間、8.95℃ 30秒間、9.72℃ 10分間。
【0223】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)5回、(6〜8.)25回、(9.)1回。
【0224】
PCR1.1、1.2からのPCRフラグメントの精製
この目的のために、pJOE2702にクローニングするためのBlakeslea trispora carBのコード配列を調製するためにPCR2を実行した。
【0225】
約50ngのPCR1.1産物および約50ngのPCR1.2産物、ならびに、0.25μM MAT350(5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’配列番号58)、0.25 μM MAT353(5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液(10×)、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLに調整)。
【0226】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.59℃ 30秒間、4.72℃ 2分間、5.95℃ 30秒間、6.72℃ 10分間。
【0227】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)22回、(6.)1回。
【0228】
続いて、得られたフラグメント(約1.7kbp)を精製し、次にベクターpPCR−Script−Ampへのライゲーション、大腸菌XL1−Blueへのクローニング、インサートの配列決定、NdeIおよびBamHIを用いる切断、ならびにpJOE2702へのライゲーションを行った。得られたプラスミドはpBT4と呼ばれた。
【0229】
CarB(フィトエンデサチュラーゼ)の酵素活性の特徴付けおよび検出
carBから導かれた遺伝子産物をCarBと呼ぶ。CarBはペプチド配列分析に基づき、以下の特性を有する:
長さ:582アミノアシル残基
分子量:66470
等電点:6.7
触媒活性:フィトエンデサチュラーゼ
反応物:フィトエン
生成物:リコピン
EC番号:EC 1.14.99−
【0230】
酵素活性をインビボで検出した。大腸菌XL1−Blueへのプラスミド(pCAR−AE)の導入は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)株を生じる。この株はフィトエンを合成する。大腸菌XL1−BlueへのpBT4プラスミドのさらなる導入は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)(pBT4)株を生じる。酵素的に活性なフィトエンデサチュラーゼが、carBから開始して形成されるので、この株はリコピンを産生する。
【0231】
それゆえに、プラスミドpCAR−AEおよびpBT4は大腸菌に導入された。カロチノイドが、液体培地中で増殖した細胞から抽出され、特徴付けされた(上記を参照されたい)。
【0232】
HPLC分析は、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)株がフィトエンを産生し、大腸菌XL1−Blue(pCAR−AE)(pBT4)株がリコピンを産生することを明らかにした。結果として、CarBはフィトエンデサチュラーゼの酵素活性を有する。
【0233】
フィトエンを産生するための遺伝子改変されたBlakeslea trispora株の調製
フィトエンを産生するための遺伝子改変された生物の調製は、以下に例示として記載される。
【0234】
Blakeslea trisporaのcarB−突然変異体を生成するためのベクターpBinAHygΔcarB
ベクターpBinAHygΔcarB(配列番号62、図22)を、Blakeslea trisporaにおいてcarBを欠失させるために構築した。pBinAHygΔcarBの前駆体はpBinAHyg(配列番号3、図2)であり、これは以下のように構築された。
【0235】
gpdA−hphカセットを、プラスミドpANsCos1(配列番号4、図1、Osiewacz, 1994, Curr. Genet. 26:87-90)からのBglII/HindIIIフラグメントとして単離し、そしてBamHI/HindIIIで切断したバイナリープラスミドpBin19(Bevan, 1984, Nucleic Acids Res. 12:8711-8721)にライゲーションした。この方法で得られたベクターはpBinAHygと呼ばれ、gpdプロモーターの制御下に大腸菌ハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)ならびにAspergillus nidulans由来のtrpCターミネーターおよびアグロバクテリウムDNA導入のために必要である適切なボーダー配列を含む。
【0236】
carBコード配列は、プライマーMAT350およびMAT353、ならびに以下のパラメーターを使用するPCRによって増幅された:
50ngのpBT4ならびに0.25μM MAT350(5’−ACTTTATTGGATCCTTAAATGCGAATATCGTTGCTGC−3’;配列番号58)、0.25 μM MAT353(5’−CTATTTTAATCATATGTCTGATCAAAAGAAGCATATTG−3’;配列番号61)、100μM dNTP、10μlのPfuポリメラーゼ緩衝液、2.5UのPfuポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLまで)。
【0237】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 30秒間、4.72℃ 2分間、5.95℃ 30秒間、6.72℃ 10分間。
【0238】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0239】
得られるフラグメント(約1.7kbp)を引き続いて精製し、次にHindIIIで切断を行い、364bpHindIIIフラグメントcarBの精製をさらに行い、次にHindIIIでpBinAHygの切断を行い、364bpHindIIIフラグメントcarBの、pBinAHygへのライゲーションを行い、このベクターの大腸菌への形質転換および構築物の単離を行い、上記のように、このベクターをpBinAHygΔcarBと呼んだ。代替的には、HindIIIを用いる部分切断を実行し、より大きなcarBHindIIIフラグメントをpBinAHygにクローニングして、pBinAHygΔcarBを産生した。
【0240】
Blakeslea trisporaのcarB−突然変異体の生成
最初に、pBinAHygΔcarBプラスミドを、例えば、エレクトロポレーションによってアグロバクテリウム株LBA 4404に導入した(上記を参照されたい)。次に、プラスミドを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス LBA 4404から、Blakeslea trispora ATCC 14272およびBlakeslea trispora ATCC 14271に移した(上記を参照されたい)。Blakeslea trisporaへの首尾よい遺伝子導入の検出は、以下のプロトコールに従うポリメラーゼ連鎖反応を通して実行された:
Blakeslea trispora ATCC 14272 carB−またはATCC 14271 carB−からの約0.5μgのDNAを0.25μMプライマーhphフォワード(5’−CGATGTAGGAGGGCGTGGATA−3’;配列番号5)、0.25μMプライマーhphリバース(5’−GCTTCTGCGGGCGATTTGTGT−3’;配列番号6)、100μM dNTP、10μLのHerculaseポリメラーゼ緩衝液、2.5UのHerculase DNAポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μLまで)と反応させた。
【0241】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 1分間、4.72℃ 1分間、5.94℃ 1分間、6.72℃ 10分間。
【0242】
サイクル:(1.〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0243】
陰性対照として、アグロバクテリウムカナマイシン耐性遺伝子を増幅することが試みられた。この目的のために、以下のPCR条件が使用された:
Blakeslea trispora ATCC 14272 carB−およびATCC 14271 carB−からの約0.5μgのDNAを0.25μMプライマーnptIIIフォワード(5’−TGAGAATATCACCGGAATTG−3’;配列番号7)、0.25μMプライマーnptIIIリバース(5’−AGCTCGACATACTGTTCTTCC−3’;配列番号8)、100μM dNTP、10μLのHerculaseポリメラーゼ緩衝液、2.5UのHerculase DNAポリメラーゼ(85℃で添加、「ホットスタート」)、およびH2O(100μlまで)と反応させた。
【0244】
温度プロフィール:
1.95℃ 10分間、2.85℃ 5分間、3.58℃ 1分間、4.72℃ 1分間、5.94℃ 1分間、6.72℃ 10分間。
【0245】
サイクル:(1〜2.)1回、(3〜5.)30回、(6.)1回。
【0246】
Blakeslea trisporaによるカロチノイドおよびカロチノイド前駆体の産生
カロチノイドゼアキサンチン、カンタキサンチン、アスタキサンチン、およびフィトエンは、対応する遺伝子改変されたBlakeslea trispora(+)株および(−)株を発酵させ、産生したカロチノイドをHPLC分析によって検出し、およびそれを単離することによって産生された。
【0247】
カロチノイドを産生するための液体培地は、1リットルあたり:19gのトウモロコシ粉、44gのダイズ粉、0.55gのKH2PO4、0.002gのチアミン塩酸塩、10%のヒマワリ油を含んだ。pHはKOHで7.5に調整した。
【0248】
カロチノイドを産生するために、シェーカーフラスコに、Blakeslea trispora GMOの(+)株および(−)株の胞子懸濁物を接種した。シェーカーフラスコを26℃で250rpmで7日間インキュベートした。代替的には、トリスポリック酸を4日後に株の混合物に添加し、続いてさらに3日間インキュベートした。トリスポリック酸の最終濃度は300〜400μg/mlであった。
【0249】
抽出および分析
抽出:
1.10mlの培養懸濁物の取り出し
2.遠心分離、10分間、5000×g
3.上清の廃棄
4.1mlのテトラヒドロフラン(THF)中でボルテックスによってペレットを再懸濁
5.遠心分離、5分間、5000×g
6.THF相の取り出し
7.工程4.から6.の反復(2回)
8.THF相のプール
9.残渣の水相を除去するための、プールしたTHF相の遠心分離、20 000×g、5分間。
【0250】
分析
HPLCによるフィトエン測定
カラム:ZORBAX Eclipse XDB−C8、5μm、150*4.6mm
温度:40℃
流速:0.5ml/分
注入量:10μl
検出:UV 220nm
停止時間:12分
ポストラン時間:0分
最高圧力:350bar
溶離液A:50mM NaH2PO4、pH 2.5、過クロム酸を含む
溶離液B:アセトニトリル
グラジエント: 時間(分) A(%) B(%) 供給(ml/分)
0 50 50 0.5
12 50 50 0.5
【0251】
発酵ブロスの抽出物はマトリックスとして使用された。HPLCの前に、各サンプルは0.22μmフィルターを通して濾過された。サンプルは、冷所に保たれ、光から保護された。各々の場合、較正のために50〜1000mg/lがTHF中で秤量および溶解された。使用された標準はフィトエンであり、所定の条件下で7.7分の保持時間を有する。
【0252】
HPLCによるリコピン、β−カロチン、エキネノン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、およびアスタキサンチンの測定
カラム:Nucleosil 100−7 C18、250*4.0mm(Macherey & Nagel)
温度:25℃
流速:1.3ml/分
注入量:10μl
検出:450nm
停止時間:15分
ポストラン時間:2分
最高圧力:250bar
溶離液A:10%アセトン、90%H2O
溶離液B:アセトン
グラジエント: 時間(分) A(%) B(%) 供給(ml/分)
0 30 70 1.3
10 5 95 1.3
12 5 95 1.3
13 30 70 1.3
【0253】
発酵ブロスの抽出物はマトリックスとして使用された。HPLCの前に、各サンプルは0.22μmフィルターを通して濾過された。サンプルは、冷所に保たれ、光から保護された。各々の場合、較正のために10mgが100mlのTHF中で秤量および溶解された。以下の保持時間を有する以下のカロチノイドが標準として使用された:β−カロチン(12.5分)、リコピン(11.7分)、エキネノン(10.9分)、クリプトキサンチン(10.5分)、カンタキサンチン(8.7分)、ゼアキサンチン(7.6分)、およびアスタキサンチン(6.4分)(図23を参照されたい)。
【0254】
遺伝子改変されたBlakeslea trispora株によるゼアキサンチンの産生
Blakeslea trisporaの遺伝子改変された生物(GMO)によるゼアキサンチンの産生が以下に例として記載される。
【0255】
ベクターpBinAHygBTpTEF1−HPcrtZが、アグロバクテリウム媒介形質転換(上記を参照されたい)によってBlakeslea trisporaに導入された。ハイグロマイシン耐性クローンを単離し、ポテト−グルコース寒天プレート(Merck KGaA, Darmstadt, Germany)に移した。
【0256】
このプレートから開始して、胞子懸濁物を、26℃での3日間のインキュベーション後に調製した。バッフルを備えず、そして50mlの増殖培地(47g/lトウモロコシ粉、23g/lのダイズ粉、0.5g/lのKH2PO4、2.0mg/lのチアミン塩酸塩、滅菌前にNaOHでpHを6.2〜6.7に調整)を含む250mlエーレンマイヤーフラスコに、1×105個の胞子を接種した。この前培養を、26℃、250rpmで48時間インキュベートした。主培養のために、バッフルを備えず、40mlの製造培地を含む250mlエーレンマイヤーフラスコに、4mlの前培養物を接種し、26℃にて、150rpm、8日間インキュベートした。製造培地は、50g/lグルコース、2g/lカゼイン酸加水分解物、1g/l酵母抽出物、2g/l L−アスパラギン、1.5g/l KH2PO4、0.5g/l MgSO4×7H2O、5mg/l チアミン−HCl、10g/l Span20、1g/l Tween 80、20g/l リノール酸、80g/l コーンスチープリカーを含んだ。72時間後、ケロシンを最終濃度40g/lで加えた。培養物を収集後、残渣の培養容量約35mlを水で40mlに増加した。続いて、高圧ホモジナイザー(type Micron Lab 40、APV Gaulin)中で、3回、1500バールで細胞を破壊した。
【0257】
破壊された細胞を含む懸濁物を、35mlのTHFと混合し、250rpmで振盪しながら室温で、暗所で60分間インキュベートした。次いで、2gのNaClを加え、混合物をさらに1回振盪しながらインキュベートした。次いで、抽出混合物を5000×gで10分間遠心分離した。着色したTHF相を取り出すと、細胞塊は完全に無色であった。
【0258】
THF相を、ロータリーエバポレーター中で30ミリバール、30℃で1mlまで濃縮し、次いで再度1mlのTHFに溶解した。20000×gで5分間の遠心分離後、上相のアリコートを取り出し、HPLCによって分析した(図24、図23)。
【図面の簡単な説明】
【0259】
【図1】図1は、ベクターpANsCos1を示す。
【図2】図2は、ベクターpBinAHygを示す。
【図3】図3は、標準ゲルに基づくBlakeslea trisporaDNAのPCRの結果を示す。
【図4】図4は、プラスミドpBinAHygBTpyrG−SCOを示す。
【図5】図5は、プラスミドpBinAHygBTpTEF1−HPcrtZを示す。
【図6】図6は、プラスミドpBinAHyg−BTpcarRA−HPcrtZ を示す。
【図7】図7は、プラスミドpBinAHygBTpcarB−HPcrtZを示す。
【図8】図8は、プラスミドp−carRA−HPcrtZ−TAG−3’carA−IRを示す。
【図9】図9は、プラスミドp−carRA−HPcrtZ−GCG−3’carA−IRを示す。
【図10】図10は、プラスミドpBinAHygBTpTEF1−EUcrtZを示す。
【図11】図11は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−EUcrtZを示す。
【図12】図12は、プラスミドpBinAHygBTpcarB−EUcrtZを示す。
【図13】図13は、プラスミドp−BinAHyg−gpdA−HPcrtZを示す。
【図14】図14は、プラスミドpBinAHyg−carRcrtZcarAを示す。
【図15】図15は、プラスミドpBinAHyg−BTpTEF1−NpcrtWを示す。
【図16】図16は、プラスミドpBinAHyg_BTpcarRA_NPcrtWを示す。
【図17】図17は、プラスミドpBinAHyg−BTpcarB−NPcrtWを示す。
【図18】図18は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−HPcrtZ−BTpcarRA−NpucrtWを示す。
【図19】図19は、プラスミドpBinAHygBTpcarRA−EUcrtZ−BTpcarRA−NpucrtWを示す。
【図20】図20は、carBに関してクローニングされた配列部分を図解的に示す。
【図21】図21は、carBのコード配列を図解的に示す。
【図22】図22は、ベクターpBinAHygΔcarBを示す。
【図23】図23は、HPLCによるリコピン、β−カロチン、エキネノン、カンタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、およびアスタキサンチンの測定結果を示す。
【図24】図24は、HPLCによる分析結果を示す。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を産生するための方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、
(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、かつ前記遺伝子改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞の場合によるホモカリオン転換、および
(iii)遺伝子改変された細胞の選択および培養、
を包含する方法。
【請求項2】
細胞がBlakeslea trispora種の真菌由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベクターまたは遊離の核酸が形質転換(i)において使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
形質転換(i)において利用されるベクターが少なくとも1つの細胞のゲノムに組み込まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
形質転換(i)において利用されるベクターがプロモーターおよび/またはターミネーターを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
gpdプロモーター、pcarBプロモーター、pcarRAプロモーター、および/もしくはptef1プロモーター、ならびに/またはtrpCターミネーターを含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
耐性遺伝子を含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
形質転換(i)において利用されるベクターがハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、特に大腸菌由来のものを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
gpdプロモーターが配列番号1の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
trpCターミネーターが配列番号2の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
tef1プロモーターが配列番号35の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
gpdプロモーターおよびtrpCターミネーターがAspergillus nidulans由来である、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ベクターが配列番号3を含む、請求項3〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
形質転換(i)が、アグロバクテリア、接合、化学物質、エレクトロポレーション、DNA負荷粒子を用いる衝撃、プロトプラスト、またはマイクロインジェクションを使用して実行される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
突然変異誘発物質がホモカリオン転換(ii)において利用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
利用される突然変異誘発物質がN−メチル−N’−ニトロニトロソグアニジン(MNNG)、UV照射、またはX線である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
選択が単核細胞の標識化および/または選択によって実行される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
5−炭素−5−デアザリボフラビン(darf)およびハイグロマイシン(hyg)または5−フルオロロテート(FOA)およびウラシルおよびハイグロマイシンが選択において利用される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチノイドまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチンまたはキサントフィルを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
形質転換(i)において利用されるベクターが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、ビキシン、フィトフルエンまたはフィトエンを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
形質転換(i)において利用されるベクターが、その中に含まれる遺伝子情報をBlakeslea trisporaゲノムに導入するように設計される、請求項3〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
形質転換(i)において利用されるベクターが発現後にケトラーゼ活性および/またはヒドロキシラーゼ活性を示す遺伝子情報を含む、請求項3〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号70もしくは71もしくは76および/または配列番号72を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号37〜51からなる群からの配列を有する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
形質転換(i)において利用されるベクターが、その中に含まれる遺伝子情報が細胞においてスイッチが切られるように設計される、請求項3〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
フィトエンデサチュラーゼ遺伝子が、形質転換(i)に起因してスイッチが切られる、請求項3〜21および25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号69を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号62の配列を有する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
リコピンシクラーゼ遺伝子が、形質転換に起因してスイッチが切られる、請求項3〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な、Blakeslea属の真菌、特にBlakeslea trisporaの遺伝子改変された多核細胞。
【請求項32】
カロチノイドまたはそれらの前駆体を生産するための、請求項30に記載の細胞またはそこから形成される菌糸体の使用。
【請求項33】
カロチンまたはキサントフィルを生産するための、請求項30または31に記載の使用。
【請求項34】
アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、ビキシン、フィトフルエンまたはフィトエンを生産するための、請求項30〜32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための配列番号1または35の配列を有するプロモーター。
【請求項36】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための配列番号2の配列を有するターミネーター。
【請求項37】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための配列番号3を含むベクター。
【請求項38】
配列番号69および/または配列番号70もしくは71および/または配列番号72もしくは76を含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための請求項36に記載のベクター。
【請求項1】
遺伝子改変されたBlakeslea属の生物を産生するための方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つの細胞の形質転換、
(ii)核の1つ以上の遺伝的特徴がすべて同一の様式で改変されており、かつ前記遺伝子改変が細胞中でそれ自体を明示する細胞を産生するための工程(i)で得られた細胞の場合によるホモカリオン転換、および
(iii)遺伝子改変された細胞の選択および培養、
を包含する方法。
【請求項2】
細胞がBlakeslea trispora種の真菌由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ベクターまたは遊離の核酸が形質転換(i)において使用される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
形質転換(i)において利用されるベクターが少なくとも1つの細胞のゲノムに組み込まれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
形質転換(i)において利用されるベクターがプロモーターおよび/またはターミネーターを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
gpdプロモーター、pcarBプロモーター、pcarRAプロモーター、および/もしくはptef1プロモーター、ならびに/またはtrpCターミネーターを含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
耐性遺伝子を含むベクターが形質転換(i)において利用される、請求項3〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
形質転換(i)において利用されるベクターがハイグロマイシン耐性遺伝子(hph)、特に大腸菌由来のものを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
gpdプロモーターが配列番号1の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
trpCターミネーターが配列番号2の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
tef1プロモーターが配列番号35の配列を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
gpdプロモーターおよびtrpCターミネーターがAspergillus nidulans由来である、請求項6〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ベクターが配列番号3を含む、請求項3〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
形質転換(i)が、アグロバクテリア、接合、化学物質、エレクトロポレーション、DNA負荷粒子を用いる衝撃、プロトプラスト、またはマイクロインジェクションを使用して実行される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
突然変異誘発物質がホモカリオン転換(ii)において利用される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
利用される突然変異誘発物質がN−メチル−N’−ニトロニトロソグアニジン(MNNG)、UV照射、またはX線である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
選択が単核細胞の標識化および/または選択によって実行される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
5−炭素−5−デアザリボフラビン(darf)およびハイグロマイシン(hyg)または5−フルオロロテート(FOA)およびウラシルおよびハイグロマイシンが選択において利用される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチノイドまたはそれらの前駆体を産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
形質転換(i)において利用されるベクターが、カロチンまたはキサントフィルを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
形質転換(i)において利用されるベクターが、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、ビキシン、フィトフルエンまたはフィトエンを産生するための遺伝子情報を含む、請求項3〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
形質転換(i)において利用されるベクターが、その中に含まれる遺伝子情報をBlakeslea trisporaゲノムに導入するように設計される、請求項3〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
形質転換(i)において利用されるベクターが発現後にケトラーゼ活性および/またはヒドロキシラーゼ活性を示す遺伝子情報を含む、請求項3〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号70もしくは71もしくは76および/または配列番号72を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号37〜51からなる群からの配列を有する、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
形質転換(i)において利用されるベクターが、その中に含まれる遺伝子情報が細胞においてスイッチが切られるように設計される、請求項3〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
フィトエンデサチュラーゼ遺伝子が、形質転換(i)に起因してスイッチが切られる、請求項3〜21および25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号69を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
形質転換(i)において利用されるベクターが配列番号62の配列を有する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
リコピンシクラーゼ遺伝子が、形質転換に起因してスイッチが切られる、請求項3〜21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法によって取得可能な、Blakeslea属の真菌、特にBlakeslea trisporaの遺伝子改変された多核細胞。
【請求項32】
カロチノイドまたはそれらの前駆体を生産するための、請求項30に記載の細胞またはそこから形成される菌糸体の使用。
【請求項33】
カロチンまたはキサントフィルを生産するための、請求項30または31に記載の使用。
【請求項34】
アスタキサンチン、ゼアキサンチン、エキネノン、β−クリプトキサンチン、アンドニキサンチン、アドニルビン、カンタキサンチン、3−ヒドロキシエキネノン、3’−ヒドロキシエキネノン、リコピン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、ビキシン、フィトフルエンまたはフィトエンを生産するための、請求項30〜32のいずれか1項に記載の使用。
【請求項35】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための配列番号1または35の配列を有するプロモーター。
【請求項36】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための配列番号2の配列を有するターミネーター。
【請求項37】
請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための配列番号3を含むベクター。
【請求項38】
配列番号69および/または配列番号70もしくは71および/または配列番号72もしくは76を含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法において使用するための請求項36に記載のベクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2006−513729(P2006−513729A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518517(P2005−518517)
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000100
【国際公開番号】WO2004/063358
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月9日(2004.1.9)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000100
【国際公開番号】WO2004/063358
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】
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