説明

CATVシステム用電源装置

【課題】信頼性が高く、低コストで高効率なCATVシステム用電源装置を実現すること
【解決手段】CATVシステム用電源装置100は、負荷近傍の同軸ケーブルに挿入されていて、充電器10と、蓄電池11と、インバータ12と、スイッチ13とを有している。充電器10は、スイッチ13に接続されている。蓄電池11はインバータ12を介してスイッチ13に接続している。スイッチ13は、商用電源が供給され、同軸ケーブルに交流電力が供給されている場合には、同軸ケーブル側と充電器10とを接続し、商用電源が停電時には、同軸ケーブル側とインバータ12とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CATVシステムにおいて停電時に増幅器などの負荷に電力を供給するCATVシステム用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸ケーブルを伝送路として使用するCATVシステムでは、商用電源を60Vに降圧して同軸ケーブルを介して幹線増幅器などの負荷に電力が供給される。ここで、商用電源が停電した場合でも電力が供給できるように、UPS(無停電電源装置)が設けられている。従来のUPSの構成の一例を図5に示す。図5のように、従来のUPSは、AC100Vの商用電源に接続し、AC60Vに降圧して出力するトランス1と、同じく商用電源に接続された充電器2と、充電器2によって充電される蓄電池3と、蓄電池3からの直流電力をAC60Vの交流電力に変換して出力するインバータ4と、トランス1側からの電力を出力するかインバータ4側からの電力を出力するかを切り換えるスイッチ5と、によって構成されている。商用電源が供給されている場合には、AC100Vの交流電力がトランス1によってAC60Vに降圧されて出力され、同軸ケーブルに重畳されるとともに、AC100Vの交流電力の一部が充電器2に入力され、蓄電池3を充電する。一方、商用電源が停電した場合には、蓄電池3からの直流電力がインバータ4によってAC60Vの交流電力に変換されて同軸ケーブルに重畳される。
【0003】
他にも特許文献1、2のCATVシステム用UPSが知られている。特許文献1には、商用電源により充電するのではなく、太陽電池と電圧安定化装置を有し、太陽電池によって発電した電力を電圧安定化装置によって充電に適した電圧に変換し、その電圧安定化装置からの電力によって蓄電池を充電するCATVシステム用UPSが示されている。これにより、電力使用量が削減でき、発熱量が少ないので蓄電池の劣化を抑制することができると記載されている。
【0004】
特許文献2には、図5に示す従来のUPSに温度検知部と加熱部とをさらに設け、蓄電池の温度を制御することによって、蓄電池の容量の温度依存性を抑制したCATVシステム用UPSが示されている。これにより、蓄電池の定格動作が確保され、温度低下に備えて大型の蓄電池を使用する必要がないためUPSを小型化、低コスト化することができ、また効率的に蓄電池を加熱することができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開11−150889
【特許文献2】特開2002−345169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のUPSや特許文献1、2に記載のCATVシステム用UPSでは、1台で複数の負荷に電力を供給しており、この1台のUPSで200世帯ほどのエリアをカバーしている。その結果、UPSに不具合があり停電時に電力を供給できなくなってしまった場合、広いエリアで停波してCATVシステムによるサービスを利用できなくなってしまう。このように、従来のUPSや特許文献1、2のCATVシステム用UPSは故障によるリスクが非常に大きかった。
【0007】
また、複数の負荷に電力を供給する都合、UPSからある負荷までの伝送距離が長くなり、電気伝送路での損失により効率が悪化してしまう。
【0008】
また、複数の負荷に電力を供給するため蓄電池が大型であり、そのためUPSも大型となる。そのため、UPSを設置する場所が限られ、専用の設備を用いて設置する必要があり、コストがかかるという問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、信頼性が高く、低コストで高効率なCATVシステム用電源装置を実現すること、およびそのCATVシステム用電源装置を用いたCATVシステムを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、商用電力が降圧されて電気伝送路を介して負荷に供給されるCATVシステムに用いられ、商用電力の停電時に負荷に電力を供給するCATVシステム用電源装置において、電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合に、その商用電力の一部が入力される充電器と、充電器による制御によって蓄電され、直流電力を出力する蓄電池と、蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合には、電気伝送路と充電器の入力側とを接続し、商用電力が停電している場合には、電気伝送路とインバータの出力側とを接続するように切り換えるスイッチと、を有していることを特徴とするCATVシステム用電源装置である。
【0011】
第2の発明は、商用電力が降圧されて電気伝送路に伝送されるCATVシステムに用いられ、負荷に電力を供給するCATVシステム用電源装置において、電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合に、商用電力の一部を直流電力に変換する整流器と、電気電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合に、商用電力の一部が入力される充電器と、充電器による制御によって蓄電され、直流電力を出力する蓄電池と、電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合には、整流器の出力側と負荷とを接続して負荷に直流電力を供給し、商用電力が停電している場合には、蓄電池の出力側と負荷とを接続して負荷に直流電力を供給するように切り換えるスイッチと、を有していることを特徴とするCATVシステム用電源装置である。
【0012】
第3の発明は、商用電力が降圧されて電気伝送路を介して負荷に供給されるCATVシステムに用いられ、商用電力の停電時に負荷に電力を供給するCATVシステム用電源装置において、光によって発電し直流電力を出力する太陽電池と、太陽電池からの直流電力が入力される充電器と、充電器による制御によって蓄電され、直流電力を出力する蓄電池と、蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して電気伝送路に出力するインバータと、を有していることを特徴とするCATVシステム用電源装置である。
【0013】
第1〜3の発明において、負荷とは、たとえば双方向幹線増幅器、双方向幹線分岐増幅器、双方向幹線分配増幅器、双方向増幅器、双方向分岐増幅器や、HFC方式やFTTC方式のCATVシステムで用いる光ノードなどである。
【0014】
また、本発明のCATVシステムは、電気伝送路(同軸ケーブル)のみを伝送路として用いるもののみならず、光伝送路(光ファイバーケーブル)と電気伝送路とを用いるHFC方式やFTTC方式のCATVシステムにおいても適用することができる。
【0015】
また、通常は100Vの商用電力がトランスによって60Vに降圧されて伝送路に供給され伝送される。この伝送路による商用電力の供給範囲は5〜10台程度の負荷に対してである。
【0016】
また、第1〜3の発明のCATVシステム用電源装置は、必ずしも1台の負荷にのみ電力を供給するものである必要はなく、従来のUPSが供給する負荷の台数以下の複数の負荷に電力を供給してもよいが、装置が大型化、高コスト化するため、1台の負荷にのみ電力を供給するよう設置することが望ましい。
【0017】
また、第1〜3の発明のCATVシステム用電源装置は、従来のUPS(無停電電源装置)と併用してもよい。従来のUPSを設けることで設置コスト等が増大する反面、停電時の負荷の駆動時間を延ばすことができ、CATVシステムの信頼性をより高めることが可能である。
【0018】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明において、蓄電池は、リチウムイオン二次電池、またはニッケル水素電池であることを特徴とするCATVシステム用電源装置である。
【0019】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明のCATVシステム用電源装置が、1台の負荷ごとに設置されていることを特徴とするCATVシステムである。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によると、個々の負荷に隣接して設置することができるため、電気伝送路による伝送損失が少なく、停電時に効率的に負荷へ電力を供給することができる。また、従来の無停電電源装置では、複数の負荷へ電力を供給するため無停電電源装置が不具合等により給電できなくなった場合に広いエリアが停波してしまうが、第1の発明では個々の負荷に電力を供給することができるため、不具合等により給電できなくなったとしても停波するエリアは限定的であり、リスクを分散させることができる。また、第1の発明では個々の負荷に電力を供給することができるため、蓄電池の容量を従来よりも低減することができ、小型のものを使用することができる。そのため、装置の小型化を図ることができ、設置可能箇所の自由度が高くなり、設置コストの低減を図ることができる。
【0021】
また、第2の発明では、第1の発明と同様の効果を得られるとともに、直流電力を直接負荷に伝送するため、停電時により効率的に負荷へ電力を供給することができる。また、負荷側に交流電力を直流電力に変換する電源装置を設けなくてもよいため、負荷の低コスト化を図ることができる。
【0022】
また、第3の発明では、第1の発明と同様の効果を得られるとともに、商用電力の一部を用いて蓄電池を充電するのではなく、太陽電池により蓄電池を充電するため、商用電力の消費量を削減することができる。
【0023】
また、第1〜3の発明のCATVシステム用電源装置は、トランスと切り離されているため、電気伝送路上の任意の位置に設置することができる。そのためCATVシステム用電源装置の設置コストを低減することができる。
【0024】
また、第4の発明のように、本発明のCATVシステム用電源装置では多数の負荷に電力を供給するものではないため、蓄電池の容量が比較的小さなものを用いることができ、従来のUPSに用いられてきた鉛蓄電池に替えてリチウムイオン二次電池またはニッケル水素電池を用いることができる。そのため、CATVシステム用電源装置の軽量化、小型化を図ることができ、CATVシステム用電源装置の設置箇所の自由度が高まり、設置コストの低減を図ることができる。
【0025】
また、第5の発明によれば、CATVシステムの信頼性をより高めることができ、より低コストに運用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1のCATVシステム用電源装置の構成を示した図。
【図2】実施例1のCATVシステム用電源装置を用いたCATVシステムの構成を示した図。
【図3】実施例2のCATVシステム用電源装置の構成を示した図。
【図4】実施例3のCATVシステム用電源装置の構成を示した図。
【図5】従来のUPSの構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の具体的な実施例について図を参照に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0028】
図1は、実施例1のCATVシステム用電源装置100である。実施例1のCATVシステム用電源装置100は、充電器10と、蓄電池11と、インバータ12と、スイッチ13と、同軸ケーブル端子14A、Bとを有している。
【0029】
同軸ケーブル端子14A、Bは、それぞれ同軸ケーブルに接続する。これにより、CATVシステム用電源装置100は、同軸ケーブルに挿入される形となる。同軸ケーブルには、商用電源からの100Vの商用電力をトランスによって60Vに降圧された交流電力が重畳されて伝送されている。また、同軸ケーブル端子14A、B間にはコンデンサ15が設けられ、同軸ケーブル端子14Aとコンデンサ15間の一点aと、同軸ケーブル端子14Bとコンデンサ15間の一点bとの間にインダクタ16、17が接続されている。また、インダクタ16とインダクタ17との間の一点cとスイッチ13とが接続されている。この構成により、同軸ケーブルからの電力の一部がスイッチ13へと伝送される。
【0030】
充電器10は、スイッチ13に接続されている。充電池10は、同軸ケーブルからの交流電力の一部を直流電力に変換し、その直流電力を蓄電池11に供給して充電するよう動作する。
【0031】
蓄電池11は、たとえば鉛蓄電池、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素電池などである。それらの中でも特に鉛蓄電池以外のものを用いるとよい。実施例1のCATVシステム用電源装置100は、個々の負荷ごとに設置されるため、大きな容量の蓄電池11を用いる必要はないからである。その結果、蓄電池20の小型化、軽量化を図ることができ、ひいてはCATVシステム用電源装置100自体の小型化、軽量化を図ることができる。また、鉛蓄電池を用いる場合でも、従来のUPSに用いていた鉛蓄電池の1/4程度の容量のものを用いることができる。これらの理由により、蓄電池20の小型化、軽量化を図ることができ、ひいてはCATVシステム用電源装置100自体の小型化、軽量化を図ることができる。その結果、CATVシステム用電源装置100の設置可能箇所の自由度が高くなり、設置コストを低減することができる。
【0032】
インバータ12は、蓄電池11に接続されている。インバータ12は、蓄電池11からの直流電力を交流電力に変換してスイッチ13へ出力する。
【0033】
スイッチ13は、インダクタ16とインダクタ17との間の一点cと充電器10との間の接続と、一点cとインバータ12との間の接続とを切り換えるものである。この切換の制御は、商用電源から商用電力が供給され、同軸ケーブルを交流電力が伝送している場合には、一点cと充電器10との間を接続し、商用電源が停電して同軸ケーブルを交流電力が伝送していない場合には、一点cとインバータ12との間を接続するように制御する。このような制御は、たとえば、同軸ケーブル端子14Aと同軸ケーブル端子14Bとの間の交流電力の伝送の有無によって可能である。すなわち、同軸ケーブル端子14Aと同軸ケーブル端子14Bとの間を交流電力が伝送している場合には、その情報をスイッチ13へとフィードバックして一点cと充電器10との間を接続するように制御し、同軸ケーブル端子14Aと同軸ケーブル端子14Bとの間を交流電力が伝送していない場合には、その情報をスイッチ13へとフィードバックして一点cとインバータ12との間を接続するように制御する。
【0034】
また、上記スイッチ13のスイッチング制御において、CATVシステム用電源装置100からの電力で他のCATVシステム用電源装置100を充電してしまわないようなスイッチング制御の工夫が必要となる。つまり、上記構成では、CATVシステム用電源装置100が直列に複数繋がれている場合に、下流側のCATVシステム用電源装置100は、電力が商用電源から供給されているのか、上流側のCATVシステム用電源装置100から供給されているかの区別をしてスイッチング制御する必要がある。このような区別をしないと、上流側のCATVシステム用電源装置100の電力で他のCATVシステム用電源装置100を充電するというような無駄な状態が生じ、CATVシステム用電源装置100が正常に動作しないことになる。
【0035】
そのスイッチング制御の方法の1つとして、インバータ12において商用電源の周波数と異なる周波数(たとえば55Hz)に変えるという方法がある。この方法によれば、50Hzまたは60Hzである商用電源からの電力と、55HzであるCATVシステム用電源装置100からの電力との区別をつけることができる。周波数の測定は、たとえば周波数カウンタ、FFTアナライザ、周波数ブリッジ、などによって行うことができ、その測定値を元にしてスイッチ13のスイッチング制御を行えばよい。
【0036】
周波数カウンタは、交流電力を矩形波やパルス波に波形整形し、単位時間あたりの波数をカウントすることで周波数を測定するものである。他に、矩形波あるいはパルス波の立ち上がりまたは立ち下がりの周期を測定し、その周期から周波数を求めるものであってもよい。FFTアナライザは、所定のサンプリング周波数で電圧値をサンプリングし、フーリエ変換して周波数スペクトルを求め、そのスペクトルを解析することにより周波数を求める方法である。所定のサンプリング周波数で電圧値をサンプリングし、そのサンプリング値から電圧の時間波形を推定し、電圧の時間波形を解析することで周波数を求める方法でもよい。周波数ブリッジは、ウィーンブリッジなどのブリッジ回路の平衡条件から周波数を求める方法である。周波数ブリッジの場合、たとえば、平衡条件を満たす周波数を55Hzとし、平衡条件からずれた時の電圧差を増幅器により増幅して検出できるようにすることで、インバータ12からの出力である55Hzの電力と、商用電源の出力である50Hzないし60Hzの電力とを識別することができ、これによりスイッチ13の制御が可能である。これらの周波数測定方法のうち、測定時間、測定の容易さ、測定精度から、周波数カウンタを用いることが望ましい。
【0037】
具体的には、CATVシステム用電源装置100に供給されている電力の周波数を測定し、50Hzないし60Hzの交流電力が供給されている場合には、一点cと充電器10との間を接続するように制御し、55Hzの交流電力が供給されている場合もしくは電力が供給されていない場合には、一点cとインバータ12との間を接続するように制御すればよい。このようにスイッチ13を制御すれば、上流側のCATVシステム用電源装置100の電力で他のCATVシステム用電源装置100を充電するということはなくなり、正常にCATVシステム用電源装置100の動作をさせることができる。
【0038】
上記のように周波数を変えて商用電源からの電力とCATVシステム用電源装置100からの電力を区別する方法以外にも、電圧値を変える、波形を変える、位相を変える、などの方法によって区別をしてスイッチ13のスイッチング制御を行ってもよい。もちろん、周波数、電圧、波形、位相の少なくとも2つ以上を変化させることで、商用電源からの電力とCATVシステム用電源装置100からの電力を区別するようにしてもよい。
【0039】
図2は、実施例1のCATVシステム用電源装置100を組み込んだCATVシステムの例を示した図である。CATVシステムは、センター装置101を有し、同軸ケーブル102を介してセンター装置101と加入者宅110との間で放送サービス、インターネット接続サービス、電話サービスなどを運用するシステムである。センター装置101に接続する同軸ケーブル102は、双方向幹線分岐増幅器103によって分岐されている。分岐された同軸ケーブル102は、分岐器104によってさらに分岐され、加入者宅110と接続している。また、双方向幹線分岐増幅器103によって分岐された同軸ケーブル102の所々に双方向増幅器105が挿入されている。また、同軸ケーブル102にはパワーインサータ107が挿入されていて、商用電源からの100Vの交流電力がトランス106によって60Vに降圧されて同軸ケーブル102に重畳されて伝送されている。そして、その同軸ケーブル102に重畳された交流電力は、双方向幹線分岐増幅器103、双方向増幅器105に供給されている。また、双方向幹線分岐増幅器103、双方向増幅器105の近傍の同軸ケーブル102には、それぞれCATVシステム用電源装置100が挿入されている。
【0040】
次に、CATVシステム用電源装置100の動作について説明する。
【0041】
AC100Vの商用電源が供給されている場合、同軸ケーブル102にはトランス106によって降圧されたAC60Vの交流電力が重畳され、双方向幹線分岐増幅器103や双方向増幅器105にAC60Vの交流電力が供給される。これより、双方向幹線分岐増幅器103や双方向増幅器105は駆動される。このとき、双方向幹線分岐増幅器103、双方向増幅器105の近傍に設置されたCATVシステム用電源装置100では、CATVシステム用電源装置100のスイッチ13が同軸ケーブル側と充電器10側とを接続し、同軸ケーブル102に重畳された交流電力の一部がスイッチ13を介して充電器10に入力される。充電器10はその交流電力を直流電力に変換して蓄電池11を充電するよう制御する。
【0042】
商用電源が停電し、同軸ケーブル102に交流電力が伝送されなくなると、CATVシステム用電源装置100のスイッチ13は、同軸ケーブル側とインバータ32の出力側とを接続するよう切り換えられる。そして、蓄電池11から出力される直流電力がインバータ32によってAC60Vの交流電力に変換されて同軸ケーブル102に重畳される。その交流電力は、各CATVシステム用電源装置100の近傍に設置された、それぞれ双方向幹線分岐増幅器103や双方向増幅器105に供給される。ここで、双方向幹線分岐増幅器103や双方向増幅器105は、CATVシステム用電源装置100の近傍に設置されているため、伝送ロスが少なく、効率的に電力を供給することができる。そのため、商用電源が停電している場合でも、双方向幹線分岐増幅器103や双方向増幅器105は駆動され、CATVシステムによるサービスは維持される。
【0043】
また、商用電源が停電から復帰し、再び同軸ケーブル102に交流電力が重畳されて伝送されるようになると、CATVシステム用電源装置100のスイッチ13は同軸ケーブル側と充電器10とを接続するよう切り換えられて、再び充電器10によって蓄電池11が充電されるよう動作する。
【0044】
以上のように、実施例1のCATVシステム用電源装置100は、個々の双方向幹線分岐増幅器103や双方向増幅器105に隣接して設置しているため、同軸ケーブル102による伝送損失が少なく、停電時に効率的に双方向幹線分岐増幅器103や双方向増幅器105に電力を供給することができる。また、CATVシステム用電源装置100が万が一不具合等により給電できなくなったとしても、この影響により駆動が停止するのは1台の双方向幹線分岐増幅器103あるいは双方向増幅器105であり、CATVシステムのサービスが停止してしまうエリアを最小限に抑えることができ、リスクを分散させることができる。また、実施例1のCATVシステム用電源装置100は、1台の双方向幹線分岐増幅器103あるいは双方向増幅器105に電力を供給するものであるから蓄電池11の容量が少なくて済み、小型のものを使用することができるため、CATVシステム用電源装置100自体も小型化することができる。また、CATVシステム用電源装置100は、トランス106から切り離されていて、トランス106とは分離して設置することができる。そのため、CATVシステム用電源装置100の設置可能箇所の自由度が高くなり、設置コストを低減することができる。また、CATVシステムに実施例1のCATVシステム用電源装置100を用いる結果として、信頼性が高く、低コストで運用可能なCATVシステムを構築することができる。
【0045】
なお、上記CATVシステムにおいて、トランス106を従来のUPS(たとえば図5に示したもの)に置き換えてもよい。従来のUPSは大型であるため設置コストが高いが、停電時に従来のUPSと実施例1のCATVシステム用電源装置100とによる電力供給により長時間電力を供給することができるというメリットがある。
【実施例2】
【0046】
図3は、実施例2のCATVシステム用電源装置200である。実施例2のCATVシステム用電源装置200は、実施例1のCATVシステム用電源装置100において、一点cに接続する部分の構成が以下のように異なっている。その部分は、充電器20と、蓄電池21と、スイッチ23と、整流器28と、を有している。充電器20と蓄電池21については実施例1のCATVシステム用電源装置100に示したものと同様のものを用いることができる。
【0047】
一点cには、整流器28と、充電器20が接続されていて、充電器20は、同軸ケーブルからの交流電力の一部を直流電力に変換し、その直流電力を蓄電池21に供給して充電するよう動作する。
【0048】
整流器28は、単相半波整流回路、単相ブリッジ整流回路などであり、同軸ケーブルからの交流電力の一部を直流電力に変換して出力する。
【0049】
スイッチ23は、整流器28と端子29との接続と、蓄電池21と端子29との接続とを切り換えるものである。この切り換えの制御は、商用電源から商用電力が供給され、同軸ケーブルを交流電力が伝送している場合には、整流器28と端子29との間を接続し、商用電源が停電して同軸ケーブルを交流電力が伝送していない場合には、蓄電池21と端子29との間を接続するように制御する。このような制御は、たとえば、実施例1のCATVシステム用電源装置100のスイッチ13と同様に、同軸ケーブル端子14Aと同軸ケーブル端子14Bとの間を交流電力が伝送しているか否かによって可能である。
【0050】
端子29は、双方向幹線分岐増幅器や幹線分岐増幅器などの負荷に接続されている。それらの負荷には、端子29から直流電力が供給されるため、負荷に交流電力を直流電力に変換する電源装置のないものを使用する。負荷に電源装置が必要ないため負荷のコストを低減することができる。
【0051】
次に、CATVシステム用電源装置200の動作について説明する。
【0052】
AC100Vの商用電源が供給されている場合、同軸ケーブル102からCATVシステム用電源装置200に交流電力が供給され、整流器28に入力される。そして、整流器28によって直流電力に変換されて出力される。スイッチ23は整流器28と端子29間とを節しており、整流器28からの直流電力は端子29から直流伝送されて負荷に供給される。このように、商用電源が供給されている場合でも、負荷にはCATVシステム用電源装置200を介して直流電力が供給され、駆動される。また、同軸ケーブル102からの交流電力は充電器20にも入力され、充電器20は、蓄電池21を充電するよう制御する。
【0053】
商用電源が停電し、同軸ケーブル102に交流電力が伝送されなくなると、CATVシステム用電源装置100のスイッチ13は、蓄電池21と端子29とを接続するよう切り換えられる。そして、蓄電池21からの直流電力が端子29から直流伝送されて負荷に供給され、駆動される。これにより、商用電源が停電している場合であっても、CATVシステムによるサービスは維持される。
【0054】
以上のように、実施例2のCATVシステム用電源装置200によると、実施例1のCATVシステム用電源装置100と同様の利点があるのに加えて、負荷へ直流電力を直接伝送するため、効率的に負荷へ電力を供給することができる。また、負荷に交流電力を直流電力に変換する電源装置を設けなくてもよいため、負荷の低コスト化を図ることができ、ひいてはCATVシステムの構築にかかるコストを低減することができる。
【実施例3】
【0055】
図4は、実施例3のCATVシステム用電源装置300である。実施例3のCATVシステム用電源装置300は、実施例1のCATVシステム用電源装置100の同軸ケーブル端子14A、Bとコンデンサ15の部分については同様である。他の部分に太陽電池33、充電器30、蓄電池31、インバータ32、インダクタ36を有している。蓄電池31、インバータ32については、実施例1のCATVシステム用電源装置100に示したものと同様のものを用いることができる。
【0056】
太陽電池33は、太陽光などの光を直流電力に変換して出力する。充電器30は太陽電池に接続されていて、太陽電池33からの直流電力を蓄電池31に供給して充電するよう動作する。インバータ32は蓄電池31に接続し、その出力側はインダクタ36を介してコンデンサ15と同軸ケーブル端子14Bとの間の一点dに接続している。インバータ32は、蓄電池31からの直流電力を交流電力に変換して同軸ケーブルへ出力する。
【0057】
次に、CATVシステム用電源装置300の動作について説明する。
【0058】
AC100Vの商用電源が供給されている場合、太陽電池33による発電によって直流電力が出力され、充電器30に出力される。そして、充電器30は、蓄電池31を充電するよう制御する。一方、負荷には、同軸ケーブルに重畳されて伝送された交流電力が供給され、負荷が駆動される。
【0059】
商用電源が停電し、同軸ケーブル102に交流電力が伝送されなくなると、蓄電池11から出力される直流電力がインバータ32によってAC60Vの交流電力に変換されて同軸ケーブルに重畳される。その交流電力は、各CATVシステム用電源装置300の近傍に設置された負荷に供給され、駆動される。これにより、商用電源が停電している場合であっても、CATVシステムによるサービスは維持される。
【0060】
以上のように、実施例3のCATVシステム用電源装置300によると、実施例1のCATVシステム用電源装置100と同様の利点があるのに加えて、太陽電池により蓄電池を充電するため、商用電力の消費量を削減することができる。
【0061】
なお、実施例では本発明のCATVシステム用電源装置を同軸ケーブルのみを用いて構成されたCATVシステムに適用した例を示したが、本発明のCATVシステム用電源装置は、光ファイバーケーブルと同軸ケーブルの両方を用いるHFC方式やFTTC方式にも適用することができる。
【0062】
また、実施例ではCATVシステムにおける負荷として双方向幹線分岐増幅器103および双方向増幅器105を例として示したが、負荷にはそれら以外にも、双方向幹線分配増幅器、双方向分配増幅器、などを挙げることができる。HFC方式やFTTC方式においては、光ノードも本発明の負荷に含まれる。
【0063】
また、実施例のCATVシステム用電源装置は1台の負荷に電力を供給するものとしたが、必ずしも1台である必要はなく、従来のUPSよりも供給台数が少なければよい。具体的には1〜3台の負荷であり、最も望ましいのは1台の負荷に電力を供給することである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のCATVシステム用電源装置はCATVシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10、20、30:充電器
11、21、31:蓄電池
12、32:インバータ
13、23:スイッチ
14A、B:同軸ケーブル端子
15:コンデンサ
16、17、36:インダクタ
28:整流器
33:太陽電池
100:CATVシステム用電源装置
101:センター装置
102:同軸ケーブル
103:双方向幹線分岐増幅器
104:分岐器
105:双方向増幅器
106:トランス
107:パワーインサータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力が降圧されて電気伝送路を介して負荷に供給されるCATVシステムに用いられ、商用電力の停電時に前記負荷に電力を供給するCATVシステム用電源装置において、
前記電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合に、その商用電力の一部が入力される充電器と、
前記充電器による制御によって蓄電され、直流電力を出力する蓄電池と、
前記蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して出力するインバータと、
前記電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合には、前記電気伝送路と前記充電器の入力側とを接続し、商用電力が停電している場合には、前記電気伝送路と前記インバータの出力側とを接続するように切り換えるスイッチと、
を有していることを特徴とするCATVシステム用電源装置。
【請求項2】
商用電力が降圧されて電気伝送路に伝送されるCATVシステムに用いられ、負荷に電力を供給するCATVシステム用電源装置において、
前記電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合に、商用電力の一部を直流電力に変換する整流器と、
前記電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合に、商用電力の一部が入力される充電器と、
前記充電器による制御によって蓄電され、直流電力を出力する蓄電池と、
前記電気伝送路を介して商用電力が供給されている場合には、前記整流器の出力側と前記負荷とを接続して前記負荷に直流電力を供給し、商用電力が停電している場合には、前記蓄電池の出力側と前記負荷とを接続して前記負荷に直流電力を供給するように切り換えるスイッチと、
を有していることを特徴とするCATVシステム用電源装置。
【請求項3】
商用電力が降圧されて電気伝送路を介して負荷に供給されるCATVシステムに用いられ、商用電力の停電時に前記負荷に電力を供給するCATVシステム用電源装置において、
光によって発電し直流電力を出力する太陽電池と、
前記太陽電池からの直流電力が入力される充電器と、
前記充電器による制御によって蓄電され、直流電力を出力する蓄電池と、
前記蓄電池からの直流電力を交流電力に変換して前記電気伝送路に出力するインバータと、
を有していることを特徴とするCATVシステム用電源装置。
【請求項4】
前記蓄電池は、リチウムイオン二次電池、またはニッケル水素電池であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のCATVシステム用電源装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のCATVシステム用電源装置が、1台の前記負荷ごとに設置されていることを特徴とするCATVシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−85329(P2013−85329A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221901(P2011−221901)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000116677)シンクレイヤ株式会社 (38)
【Fターム(参考)】