説明

CCR2BまたはCCR5とフロントタンパク質との相互作用の阻害剤

【課題】フロントタンパク質とCCR2BまたはCCR5との相互作用を阻害する物質を提供する。
【解決手段】下記の式I(式中、x1およびx2は、同一または互いに異なるハロゲンであり、Rは、低級アルキルである。)で表わされる化合物またはその塩を有効成分として含む、CCR2BまたはCCR5とフロントタンパクとの相互作用の阻害剤、および抗炎症剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCR2BまたはCCR5とフロントタンパク質との相互作用の阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン受容体CCR2およびCCR5は三量体Gタンパク質共役型7回膜貫通型受容体(G−protein Coupled Receptor:GPCR)であり、ケモカインが結合すると、受容体に共役している三量体Gタンパク質が活性化され、遊離したGサブユニットがホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3K)を活性化・先端部への局在化が誘導される。活性化されたPI3Kによって低分子量Gタンパク質Rac・Cdc42の活性型の先端部への局在化が誘導され、細胞の進行方向で葉状仮足、糸状仮足の形成、細胞の尾部では収縮という細胞の極性が生じ、細胞遊走を可能にする細胞骨格の再構成が行われる。
【0003】
フロントタンパク質は、CCR2のPro−12−C末側領域(細胞内C末側領域)に直接且つ特異的に会合する細胞質タンパク質であり、CCL2刺激後にCCR2とクラスターを形成する。
【0004】
20種類あるケモカイン受容体のアミノ酸配列の相同性による系統樹解析を行なうと、CCR2BとCCR5は非常に高い相同性を有し、細胞内C末端領域のアミノ酸配列で比較した場合にも、CCR2BとCCR5は最も近い位置に存在する受容体である。フロントタンパク質はこれらの相同性の高いCCR2BとCCR5の両者の細胞内C末端領域に結合する(特許文献1)。このことは、いわゆる酵母ツーハイブリッド法(以下、「Y2H」と記す。)により明らかになった。CCR2にはC末端領域の異なるCCR2AとCCR2Bという2つのアイソフォームが存在し、CCR2Bは細胞に広く発現する主要なCCR2のアイソフォームである。
【0005】
様々なCCR2部分欠損変異体発現ベクター20種類以上を網羅的に作製し、Y2Hを用いてフロントタンパク質との結合活性を解析した結果、ケモカイン受容体CCR2Bの細胞内C末端領域のうち16アミノ酸がフロントタンパク質結合領域であることが判明した(=CCR2 Pro−C)。この領域のペプチドを用いてin vitro無細胞系にてフロントタンパク質−CCR2の相互作用を再構築することができた。さらにCCR5のPro−C領域もフロントタンパク質との結合活性を示し、両受容体がPro−C領域を介してフロントタンパク質と結合することが示唆された。上記フロントタンパク質のアミノ酸配列については、後述の配列表の配列番号1および2に記載されている。
【0006】
CCR2BおよびCCR5は関節リウマチ、多発性硬化症などの炎症性疾患や、神経性疼痛との関連、癌などの病態形成への関与が示されている。CCR5は細胞遊走における役割のみならず、HIV−1ウイルスの宿主細胞への感染する際の補助受容体(コレセプター)としても機能する。R5ウイルスは感染の初期に優位を占めるウイルスであり、進行に伴ってX4ウイルスが出現する。したがって、R5ウイルスの感染を阻止することは感染の初期段階でHIV感染拡大を抑制するために重要である。これらの既知のCCR2B、CCR5関連疾患においてもフロントタンパク質が関与する可能性は十分考えられる。近年では、うっ血性心不全(非特許文献1)、前立腺転移癌(非特許文献2)、間葉系幹細胞ホーミング制御(非特許文献3)など様々な疾患および生体現象へのフロントタンパク質の関与も報告されている。
【0007】
CCR2BおよびCCR5に限らず、ケモカイン受容体を標的とした抗炎症薬で上市されたものはいまだないのが現状である。抗体や低分子アンタゴニストによって細胞外でケモカイン・ケモカイン受容体の機能・相互作用を阻害するというアプローチがとられている。CCR2BおよびCCR5は動脈硬化症や多発性硬化症への関与が示され、低分子アンタゴニストや中和抗体の臨床試験が進められている。CCR5は関節リウマチの滑液においては,ほぼ全てのT細胞がCCR5を発現しており、抗HIV薬として上市されたマラビロックについては関節リウマチを対象とした臨床試験も行われている。CCR2B又はCCR5の細胞内情報伝達機構を阻害することは、CCR2B又はCCR5特異的に細胞内でシグナルを制御する分子はこれまで見つかっていなかったため行われていなかったが、フロントタンパク質がCCR2BまたはCCR5と相互作用し、細胞遊走シグナルを促進するという本発明者らの知見によって初めてそのようなアプローチが可能となったと考えられる。
【0008】
siRNAによる阻害実験については、非特許文献4においてマウスプレB細胞株にフロントタンパクに対するsiRNAを導入し、CCR5に対する細胞遊走が低下することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第WO2003/070946号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】J Card Fail. 13(2):114−119, 2007
【非特許文献2】J Cell Biochem. 104:1587−1597, 2008
【非特許文献3】Cell Stem Cell. 5:2(6):566−575, 2008
【非特許文献4】Journal of Immunology 183:6387−6394, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
フロントタンパク質とCCR2B又はCCR5との相互作用を阻害する物質は、これまで知られていなかった。そこで、本発明は、このような阻害作用を有する新しい概念の抗炎症剤を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
フロントタンパク質とCCR2B又はCCR5との相互作用を阻害する物質を見出すために、既知の多数の化合物群を試験し、それらの化合物群の中から、有効な阻害作用をもつ化合物を見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、第1の態様において、下記の式I(式中、x1およびx2は、同一または互いに異なるハロゲンであり、Rは、低級アルキルである。)で表わされる化合物またはその塩を有効成分として含む、CCR2BまたはCCR5とフロントタンパク質との相互作用の阻害剤を提供する。
【0014】
【化1】

【0015】
その実施形態において、上記式I中のRは、メチルまたはエチルである。
別の実施形態において、上記式I中のx1およびx2はともに、塩素または臭素である。
【0016】
さらに別の実施形態において、上記化合物が、下記の式IIの化合物である。
【化2】

【0017】
本発明はまた、第2の態様において、上記式Iで表わされる化合物を有効成分として含む抗炎症剤を提供する。
その実施形態において、上記化合物が、上で定義された式IIの化合物である。
【0018】
別の実施形態において、本発明の抗炎症剤は、フロントタンパク質、CCR2BまたはCCR5が関連する炎症性疾患の治療用である。
【発明の効果】
【0019】
細胞内の特定のフロントタンパク質と特定のケモカイン受容体CCR2BまたはCCR5との相互作用を阻害することによって、該ケモカイン受容体が惹起する種々のシグナル経路のうち、限定された経路を阻害することが可能になる。これにより細胞外でケモカイン結合による受容体活性化そのものをブロックするよりも副作用の低減が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この図は、式IIで表わされる化合物によるフロントタンパク質とCCR2間の相互作用阻害活性を示す図である。
【図2】この図は、TAXIScan法の概念図である。
【図3】この図は、遊走活性阻害試験の結果を示す図である。
【図4】この図は、遅延性過敏症モデルマウスにおける足裏の肥厚度を示す図である。式IIの後の括弧内の数字は投与した式IIの化合物の濃度(mg/L)を示す。
【図5】この図は、毒性評価試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<有効成分>
本発明の阻害剤および抗炎症剤の有効成分は、上記の式Iで表される化合物またはその塩である。この化合物またはその塩は、フロントタンパク質とCCR2Bとの相互作用を強く阻害する特性を有する。
【0022】
式Iの化合物において、x1およびx2は同一または互いに異なるハロゲンであり、Rは、低級アルキルである。
【0023】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のいずれかであり、好ましいハロゲンは、塩素または臭素である。
【0024】
また、x1およびx2のハロゲンは、同一のハロゲンであてもよいし、または互いに異なるハロゲンであってもよいが、同一のハロゲンが好ましい。
【0025】
低級アルキルは、炭素数1〜6の飽和または不飽和の直鎖または分枝アルキルであり、例えばメチル、エチル、エテニル、プロピル、プロペニル、ブチル、ブテニル、ペンチル、へキシルなどを含む。好ましい低級アルキルは、炭素数1〜4の飽和の直鎖アルキルであり、より好ましい低級アルキルは、メチルまたはエチルである。
【0026】
式Iの化合物の具体例は、上記の式IIの化合物である。この化合物は、式Iにおいて、x1およびx2が塩素であり、Rがメチルである化合物である。
【0027】
式IIの化合物は、Enamin(エナミン)社(ウクライナ)から市販されている物質であり、商品番号(EnamineID)はT5223244である。
【0028】
さらにまた、式Iおよび式IIの化合物の塩は、式Iまたは式IIの化合物と任意の酸または塩基との塩であり、酸または塩基は製薬上許容可能なものであればいずれのものでもよい。酸は、無機酸または有機酸であり、無機酸には、非限定的に、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの酸が含まれ、また、有機酸には、非限定的に、例えば酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸などの酸が含まれる。一方、塩基には、非限定的に、例えばナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属を含む塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが含まれる。塩の形成は、式Iまたは式IIの化合物のフェノール性水酸基もしくは環状アミノ基と当量の酸もしくは塩基とを適当な溶媒中で接触させることによって行うことができる。
【0029】
式Iまたは式IIの化合物の製造については、例えば、一方の塩化ベンゾイル誘導体と他方の複素環化合物とのFriedel−Crafts反応によってケトン化合物を誘導することができる。
【0030】
<組成物>
上述したように、CCR2BとCCR5は非常に高い相同性を有し、細胞内C末端領域のアミノ酸配列で比較した場合にも、CCR2BとCCR5は高い相同性を有する受容体である。フロントタンパク質はこれらの相同性の高いCCR2BとCCR5の両者の細胞内C末端領域に結合する(国際公開第WO2003/070946号)。また、CCR2BおよびCCR5は、(慢性)関節リウマチ、多発性硬化症などの炎症性疾患や、神経性疼痛との関連、癌などの病態形成への関与が示されている。一方、フロントタンパク質もまた、うっ血性心不全、前立腺転移癌、間葉系幹細胞ホーミング制御などの様々な疾患に関係することも知られている。
【0031】
また、炎症疾患は、マクロファージや単球などのエフェクター細胞が炎症局所に過度に集積し、活性化することで組織破壊が進むと考えられている。これらのエフェクター細胞の走化性を特異的に活性化する細胞内タンパク質がフロントタンパク質であり、その機能を阻害することによって、細胞が炎症局所へ移動することが抑制されるため、CCR2BやCCR5が関連する疾患の炎症を抑制することが可能になる。
【0032】
本発明の式Iまたは式IIの化合物は、酵母ツーハイブリッド(Y2H)スクリーニング法で得られた、CCR2BもしくはCCR5−フロントタンパク質間の相互作用阻害物質であり、細胞遊走を阻害する能力を有している(後述の実施例1及び2)。細胞レベルでの実験では、細胞毒性による機能低下も遊走阻害の原因として考えられるため、この可能性を排除するために細胞毒性の評価も行い、細胞遊走阻害能を確認している(後述の実施例3)。すなわち、式Iまたは式IIで表わされる化合物は、上記相互作用を強力に阻害し、かつ細胞毒性試験も通過しており、式Iまたは式IIで表わされる化合物による遊走阻害は上記相互作用の阻害によるものであることが証明されている。
【0033】
したがって、本発明は、式Iもしくは式IIの化合物またはその塩を有効成分として含む、CCR2BまたはCCR5とフロントタンパクとの相互作用の阻害剤を提供する。
【0034】
本発明はさらに、式Iもしくは式IIの化合物またはその塩を有効成分として含む抗炎症剤を提供する。
【0035】
好ましい式Iの化合物は、式Iにおいて、Rがメチルまたはエチルであり、x1およびx2はともに塩素または臭素である化合物である。より好ましい式Iの化合物は、式IIで表される化合物である。
【0036】
本発明の式Iまたは式IIの化合物は、CCR2BまたはCCR5とフロントタンパクとの相互作用を阻害するために、あるいはそのような阻害を通してフロントタンパク質、CCR2BまたはCCR5が関連する炎症性疾患、その他の疾患を治療するために使用することができる。
【0037】
そのような炎症性疾患およびその他の疾患には、以下のものに限定されないが、動脈硬化、慢性関節リウマチ、多発性硬化症などの難治性炎症疾患、うっ血性心不全、転移癌、神経性疼痛などの、CCR2BまたはCCR5が関連する疾患やフロントタンパク質が関連する疾患などが含まれる。
【0038】
本発明の阻害剤は、医薬として使用されてもよいし、あるいは研究用の試薬としてCCR2BまたはCCR5とフロントタンパクとの相互作用を阻害するために使用しうる。
【0039】
本発明の式Iまたは式IIの化合物を、医薬としての上記阻害剤または抗炎症剤として使用する場合、それらは経口投与または非経口投与のいずれの投与経路で投与されてもよい。非経口投与には、例えば静脈内投与、経皮投与、経粘膜投与、腹腔内投与、直腸内投与などが含まれる。
【0040】
そのための製剤は、特に制限されないものとし、例えば固体製剤、顆粒製剤、粉末製剤、溶液製剤、懸濁液製剤、乳濁液製剤、注射用製剤、遅延放出製剤、持続放出製剤、カプセル製剤、サシェ製剤などの種々の剤型を含む。
【0041】
このような製剤には、上記の有効成分のほかに、種々の添加剤、例えば賦形剤、担体、希釈剤、崩壊剤、懸濁剤、乳化剤、遅延放出用ポリマーおよびコーティング剤、着色剤、香味剤などを含むことができる。このような添加剤としては、製薬上公知のあらゆる剤を使用できるものとする。
【0042】
有効成分の用量は、患者の年齢、性別、状態(重篤度)、体重などに応じて変化させうるし、そのような用量は、担当医師が決めるべきことである。しかし、上記の効能を発揮する限り、および毒性を有しない限り、いかなる用量であってもよい。そのような用量は、製剤の種類によっても異なるが、例えば1投与単位あたり約0.01mg〜約10mgの用量である。
【実施例】
【0043】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、本発明の範囲は、実施例によって制限されないものとする。
[実施例1]
フロントタンパク質−CCR2相互作用の阻害活性
フロントタンパク質のC末側配列を含む転写因子の結合ドメイン融合タンパク発現ベクターであるGAL4 BDおよびCCR2のC末側配列を含む活性化ドメイン融合タンパク発現ベクターであるGAL4 ADを、リチウム酢酸/ポリエチレングリコール形質転換プロトコル(Ito et al、J.Bacteriol.153:163−168(1983)を参照)によって、酵母株Y190に形質転換した。このY190/FNT−CCR2酵母株を対数増殖期まで培養した後に、0.5%Westase処理を10分間行ない、酵母を一過性にプロトプラスト化した。ヒスチジン欠損培地に酵母を懸濁し、3−アミノトリアゾール(Sigma Chemical Co.)を終濃度5mMとなるように加え、これを96well plateへアプライした。その後、式IIで表わされる化合物を50μMとなるように添加し、24時間培養を行って、吸光度(800nm)を測定し、相互作用阻害活性をY2Hで検証した。DMSOを加えたコントロールに対して式IIで表わされる化合物の添加により50%程度の相互作用抑制が認められた(図1)。
【0044】
[実施例2]
細胞遊走能の抑制
TAXIScan法(Nitta, et al., Journal of Immunological method;320,155−163(2007))を用いて、式IIで表わされる化合物による細胞遊走能の抑制活性を評価した。
【0045】
ここで、TAXIScan法とは、ECI社が独自に開発した細胞遊走能解析(TAXIScan)システムである。TAXIScanシステムとは、最新の微細加工技術を駆使して作成したシリコンウエハーチップを用いて、一定の走化性因子の濃度勾配を形成させ、その勾配依存的な細胞の水平方向への遊走活性測定が可能なシステムである(図2)。このシステムを用いて得られた画像を解析し、方向性(遊走細胞が遊走因子高濃度側に対してどれだけ方向的に進んだか)を定量化した結果、式IIで表わされる化合物による処理によって濃度依存的に方向性が抑制された(図3)。なお、図3における相対値は、式IIで表わされる化合物の濃度が0%のときの直線的な細胞の進行具合を100としたときの進みにくさを示したものである。なお、ボイデンチャンバー法では、式IIで表わされる化合物のIC50は、15μMであった。
【0046】
[実施例3]
動物での有効性評価試験
ヒツジ赤血球1×10個をマウスに腹腔内投与することにより免疫を行い、足蹠(足裏)の皮下にヒツジ赤血球2×10個を再投与した際の足蹠の肥厚を測定することにより、誘導される細胞性免疫応答の強度を測定した。式IIで表される化合物をDMSOに溶解し、生理食塩水で10倍希釈した溶液500μlを足蹠への再投与の30分前に腹腔内投与し(20、10または5mg/kg)、足蹠の厚みをノギスで測定した。
【0047】
ヒツジ赤血球を再投与していない側の足蹠の厚みに対する肥厚の程度をDMSO投与群と比較したところ、用量依存的に肥厚が減弱し、抗炎症効果が認められた(図4)。
【0048】
[実施例4]
毒性評価試験
Jurkat細胞にベクターpcMGS−NEOを用いてCCR2を導入して得られたJurkat/CCR2細胞に、式IIで表される化合物(100、10、1または0.1μM)を添加し、48時間培養後、WST−1法にて細胞生存率を測定することにより、毒性評価試験を行った。
【0049】
その結果、方向性の完全な低下が見られた10μMにおいても細胞毒性は認められなかった(図5)。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明における式IIで表される化合物は、副作用が少なく、また、マウスとヒトで種差が小さいため、実験動物であるマウスの試験結果がヒトにおいてもそのまま適用することができる。このため、従来の抗炎症剤とは異なる新しい概念の抗炎症剤としての応用と利用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式I(式中、x1およびx2は、同一または互いに異なるハロゲンであり、Rは、低級アルキルである。)で表わされる化合物またはその塩を有効成分として含む、CCR2BまたはCCR5とフロントタンパクとの相互作用の阻害剤。
【化1】

【請求項2】
前記式Iにおいて、Rがメチルまたはエチルである、請求項1に記載の阻害剤。
【請求項3】
前記式Iにおいて、x1およびx2はともに塩素または臭素である、請求項1または2に記載の阻害剤。
【請求項4】
前記化合物が、下記の式IIの化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の阻害剤。
【化2】

【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に定義される式Iの化合物またはその塩を有効成分として含む抗炎症剤。
【請求項6】
前記化合物が、請求項4に定義された式IIの化合物である、請求項5に記載の抗炎症剤。
【請求項7】
フロントタンパク質、CCR2BまたはCCR5が関連する炎症性疾患の治療用である、請求項5または6に記載の抗炎症剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−213655(P2011−213655A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83359(P2010−83359)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、独立行政法人科学技術振興機構、委託開発事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(500201406)株式会社ECI (12)
【Fターム(参考)】