説明

CCRL2の活性を調節する薬剤及びそれを使用する方法

CCRL2の活性を調節する薬剤を検出する方法であって、該方法は、
(a)試験薬剤の非存在下でマクロファージ炎症性蛋白質−4(MIP−4)ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件下で、候補薬剤の存在下で該CCRL2ポリペプチドをMIP−4ポリペプチドに接触させる工程、及び
(b)該候補薬剤が前記CCRL2ポリペプチドと前記MIP−4ポリペプチドとの間の相互作用を調節し得るか否かを判断する工程、
を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーファンG蛋白質共役型受容体に対する内因性リガンド並びに関連する方法、使用、薬剤、組成物、及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
同族の受容体を介して働くケモカインは、エフェクター免疫細胞を炎症組織へ動員するのに重要であり、それがゆえに炎症性疾患を治療するための有望な標的として多大な関心が寄せられている。CCRL2(HCR、CRAM−A、及びCRAM−Bとしても知られる)はオーファンケモカイン受容体様蛋白質をコードし、7回膜貫通型蛋白質であると予測されている。G蛋白質共役型受容体(GPCR)は、種々の生物学的介在物質の細胞内シグナルを伝達する7回膜貫通構造を有する約500からなる蛋白質ファミリーである。GPCRとそのリガンドとの相互作用により該蛋白質の構造変化がおこり、低分子量会合ヘテロ三量体G蛋白質が細胞内受容体ドメインに結合するのを促進する。これにより、シグナル伝達カスケードが開始される。GPCRは細胞表面受容体であり、それ故に薬理学的介入の魅力的な標的となっている。CCRL2は初期の好中球及び初期の単球に高いレベルで発現しており、さらに好中球活性化及び単球がマクロファージに分化した場合に上方調節される。しかしながら、ヒト炎症性疾患におけるCCRL2の重要性は未だ解明されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
(発明の要旨)
本発明者らは、マクロファージ炎症性蛋白質−4(MIP−4;DC−CKI、CCL18、及びPARCとしても知られる)がCCRL2の内因性リガンドであることを特定した。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明はCCRL2の活性を調節する薬剤を検出するための方法を提供する。該方法は、
(a)試験薬剤の非存在下でマクロファージ炎症性蛋白質−4(MIP−4)ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件下で、候補薬剤の存在下で該CCRL2ポリペプチドをMIP−4ポリペプチドに接触させる工程、及び
(b)該候補薬剤が前記CCRL2ポリペプチドと前記MIP−4ポリペプチドとの間の相互作用を調節し得るか否かを決定する工程、
を含む、方法である。
【0005】
本発明はさらに、
−本発明の方法により検出された薬剤。
−MIP−4に特異的な抗体であって、MIP−4のCCRL2への結合を阻害し得る抗体。
−CCRL2に特異的な抗体であって、CCRL2のMIP−4への結合を阻害し得る抗体。
−細胞中のCCRL2ポリペプチドの活性を調節する方法であって、本発明による薬剤を細胞に送達する工程を含む方法。
−本発明による薬剤及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
−個体における炎症性疾患又は障害を治療する方法であって、治療上有効な量の本発明による薬剤又は本発明による医薬組成物を、個体に投与する工程を含む方法。
−個体におけるマクロファージ活性亢進関連疾患又は障害を治療する方法であって、治療上有効な量の本発明による薬剤又は本発明による医薬組成物を、個体に投与する工程を含む方法。
−ヒト又は動物の身体を治療する方法、すなわち療法において使用するための、本発明による薬剤又は本発明による医薬組成物。
−炎症性疾患又は障害を治療するための医薬の製造における、本発明による薬剤の使用。
−マクロファージ活性亢進関連疾患又は障害を治療するための医薬の製造における、本発明による薬剤の使用。
−細胞内のCCRL2シグナル伝達経路を活性化させる方法であって、該方法は、
(a)配列番号6に示されるMIP−4配列、又は
(b)配列番号6と少なくとも50%同一であり、かつ、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列、又は
CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列番号6の断片、
を含むポリペプチドを、細胞に送達する工程を含む、方法。
−(a)配列番号6に示されるMIP−4配列、又は
(b)配列番号6と少なくとも50%同一であり、かつ、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列、又は
(c)CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列番号6の断片、
を含むポリペプチド、
前記ポリペプチド又は前記断片のいずれかをコードするポリヌクレオチド、あるいは
前記ポリペプチド又は前記断片のいずれかに特異的な抗体の、
CCRL2関連疾患又は障害を治療するための医薬の製造のための、使用。
−(a)配列番号2又は4に示されるCCRL2配列、又は
(b)配列番号2又は4と全長にわたって少なくとも80%同一な配列であり、かつ、CCRL2と機能的に同等な配列、又は
(c)CCRL2と機能的に同等である配列番号2又は4の断片、
を含むポリペプチド、
前記ポリペプチドのいずれかをコードするポリヌクレオチド、あるいは
前記ポリペプチドのいずれかに結合する抗体の、
MIP−4関連疾患又は障害を治療するための医薬の製造のための、使用。
−個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の診断方法であって、該方法は、
(a)MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的なプライマーを用いて、該個体から単離された検体に対して増幅反応を行う工程、及び
(b)該検体中におけるMIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を判断し、それにより該個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の存在を判断する工程、
を含む、方法。
−個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の診断方法であって、該方法は、
(a)該個体から単離した核酸を用いて、MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを増幅する工程、及び
(b)該ポリヌクレオチドがCCRL2関連疾患又は障害に関連する多型を含むか否かを判断する工程、及び
(c)前記比較に基づき、該ポリヌクレオチドがCCRL2関連疾患又は障害に関連する多型を含むか否かを判断する工程、
を含む、方法。
−個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の診断方法であって、該方法は、
(a)MIP−4ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件下で、該個体から単離されたCCRL2ポリペプチドを含む検体をMIP−4ポリペプチドに接触させる工程、
(b)CCRL2ポリペプチドの活性を測定する工程、及び
(a)CCRL2ポリペプチドの活性を標準と比較する工程を含む方法であって、標準と比較した活性の差異が該個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の存在を示す、方法。
−CCRL2の活性を調節する薬剤を検出するためのキットであって、該キットは、(i)CCRL2ポリペプチド又はCCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、キット。
【0006】
(本明細書中で言及される配列の説明)
配列番号1はlong型ヒトCCRL2(CRAM−A)をコードするポリヌクレオチドを表す。
配列番号2はlong型ヒトCCRL2(CRAM−A)のアミノ酸配列を表す。
配列番号3はshort型ヒトCCRL2(CRAM−B)をコードするポリヌクレオチドを表す。
配列番号4はshort型ヒトCCRL2(CRAM−B)のアミノ酸配列を表す。
配列番号5はヒトMIP−4をコードするポリヌクレオチドを表す。
配列番号6はヒトMIP−4のアミノ酸配列を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
開示された方法の異なる応用法は、当該技術における個別の必要性に応じさせ得ると理解すべきである。本明細書で使用した術語は本発明の特定の実施形態を記述する目的のためだけのものであり、制限する意図はないことも、また、理解すべきである。
【0008】
加えて、本明細書及び添付した特許請求の範囲において用いる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明確に他のものを指示しない限り、複数形の指示対象を含むものとする。したがって、例えば「a polypeptide」と言及した場合は2以上の当該ポリペプチドの混合物を含み、「a cell」と言及した場合は2以上の当該細胞を含む、こと等があげられる。
【0009】
本明細書で引用した全ての出版物、特許、及び特許出願は、前掲しようと後掲しようと、参照することによりその全体が本明細書中に含まれるものとする。
【0010】
CCRL2の活性を調節する薬剤のスクリーニング
【0011】
本発明はCCRL2の活性を調節する候補薬剤を検出する方法を提供する。「調節」という用語は、本発明の薬剤がCCRL2を調節し得る、本明細書で述べるいかなる様式をも含むものとする。これはCCRL2の発現を上方制御又は下方制御すること、CCRL2の分解を上方制御又は下方制御すること、CCRL2受容体活性を刺激又は阻害することを含み、MIP−4ポリペプチドに応答したCCRL2活性の増強作用を含む。候補薬剤がCCRL2の活性又は発現を調節する能力は、候補薬剤の非存在下でCCRL2の活性又は発現を許容する条件(例えばMIP−4ポリペプチドの存在下)のもと、CCRL2ポリペプチドと該薬剤を接触させ、該候補薬剤の存在下及び非存在下におけるCCRL2活性を比較することで判断することができる。好ましくは、調節とはCCRL2の活性又は発現の異常を是正することをいう。CCRL2活性とは、主に、G蛋白質介在性シグナル伝達経路の活性化をいう。該G蛋白質はCCRL2ポリペプチドに結合するいかなるG蛋白質であってもよい。好ましくは、該G蛋白質はGi3である。
【0012】
CCRL2ポリペプチドの活性を調節する薬剤の検出方法はin vitro(細胞内もしくは細胞外)又はin vivoで実施することができる。ある実施形態において、本方法はCCRL2ポリペプチドを含むか又はCCRL2ポリヌクレオチドを発現している細胞、細胞培養液もしくは細胞抽出物の中又は表面で実施される。そのような細胞は、CCLR2ポリペプチドを自然に発現している細胞、例えば、内皮細胞であってもよい。あるいは、該細胞はCCRL2ポリヌクレオチドにより形質転換され、CCRL2ポリペプチドを発現する細胞であってもよい。適当な細胞としては、一過性の、又は好ましくは安定な高等真核細胞株(例えば哺乳動物細胞又は昆虫細胞)、下等真核細胞(例えば酵母)、又は原核細胞(例えば細菌細胞)があげられる。細胞株の特定の例として、哺乳動物のHEK293T細胞、CHO細胞、HeLa細胞、及びCOS細胞があげられる。選択される細胞株は、好ましくは、安定なだけでなく、ポリペプチドの成熟した糖修飾をも可能とする細胞株である。CCRL2ポリペプチドの発現は形質転換卵母細胞においても達成することができる。
【0013】
他の実施形態において、本方法はCCRL2ポリペプチドを含むリポソームの中又は表面で実施される。リポソームの調製法は当該分野では周知である(Woodle and Papahadjopoulos, Methods Enzymol., 1989; 171: 193-217)。
【0014】
さらなる実施形態において、本方法はCCRL2ポリペプチドを含むウイルス誘導性出芽膜の中又は表面で実施される。ウイルス誘導性出芽膜の調製法は当該分野では周知である(例えば、Luan et al., Biochemistry, 1995; 34(31): 9874-9883)。CCRL2ポリペプチドを自然に発現している細胞又はCCRL2ポリヌクレオチドにより形質転換(トランスフェクト)された細胞において出芽を誘導するために、ウイルスを用いることができる。
【0015】
さらなる実施形態において、本方法は人工脂質二重層の中又は表面で実施される。人工脂質二重層の調製法は当該分野では周知である(Sackmann and Tanaka, Trends Biotechnol., 2000; 18: 58-64 及びKarlsson and Lofas, Anal. Biochem., 2002; 300: 132-138)。CCRL2ポリペプチドは、膜を作製する際に人工膜に組み込むことができる。
【0016】
またさらなる実施形態において、本方法はCCRL2ポリペプチドを含む膜画分の中又は表面で実施される。膜画分とは、膜に結合していない成分を一部除去した(例えば少なくとも5%又は10%)、細胞脂質膜の調製物である。膜結合成分とは脂質膜に組み込まれた細胞構成成分又は脂質膜に組み込まれた成分に物理的に結合した細胞構成成分をいう。細胞膜画分の調製法は当該分野では周知である(例えば、Hubbard and Cohn, 1975, J. Cell. Biol., 64; 461-479)。CCRL2ポリペプチドを含む膜画分は、自然にCCRL2ポリペプチドを発現している細胞又はCCRL2ポリヌクレオチドにより形質転換(トランスフェクト)された細胞から調製することができる。あるいは、CCRL2ポリペプチドの界面活性剤溶液を希釈することによって、CCRL2ポリペプチドを膜調製物に組み込むことができる(例えば、Salamon et al., 1996, Biophys.J., 71: 283-294)。
【0017】
CCRL2ポリペプチドの活性を調節する薬剤を特定する方法は、候補薬剤を用いて実施される。本方法は通常1つ以上の(例えば1、2、3、4、5、10、15、20、もしくは30、又はそれ以上の)候補薬剤を用いることを含む。候補薬剤とは、本発明の方法によりCCRL2の活性を調節する能力について評価される候補化合物である。候補薬剤は自然に存在する又は合成された化合物であり得、例えば、動物、植物、細菌もしくは真菌細胞の抽出物及びこのような細胞からの馴化培地に含有される低分子、化合物があげられる。上記スクリーニング方法において評価し得る適当な候補薬剤として、抗体薬剤(例えば、モノクローナル及びポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、並びにCDR移植抗体)又はアプタマー薬剤があげられる。該抗体薬剤はCCRL2受容体又はMIP−4ポリペプチドへの結合親和性を有していてもよい。さらに、コンビナトリアルライブラリ、明確な化学的実体、ペプチド及びペプチド類似物、オリゴヌクレオチド、並びにディスプレイライブラリ(例えば、ファージディスプレイライブラリ)等の自然の薬剤のライブラリもまた評価し得る。アプタマーライブラリ等のオリゴヌクレオチドライブラリも評価し得る。
【0018】
候補薬剤は、一般にMIP−4ポリペプチドのいずれかの特性を有し得る低分子の周辺を合成することにより得られる化合物であってもよい。
【0019】
候補薬剤は、環境検体、動物、昆虫、海洋生物、植物、酵母もしくは細菌の細胞又は組織の自然抽出物、臨床検体、合成検体、又は組換え細胞もしくは発酵過程の馴化培地から抽出されるか又はこれらに含まれ得る。候補薬剤は、個体の体液及び/又は細胞を含む組織検体からも抽出されるか又はこれらに含まれ得、例えば、口腔スワブ等のスワブを用いて得ることもできる。候補薬剤は血液、尿、唾液、皮膚、頬細胞、もしくは毛根検体から抽出されるか又はこれらに含まれ得る
【0020】
候補薬剤のバッチを、例えば、一反応につき10の候補薬剤といったように、最初のスクリーニングに用いることができ、次いで、調節を示すバッチの候補薬剤を個別に評価する。薬剤のバッチがCCLR2調節活性を示す場合、調節活性を有する薬剤を特定するために試験薬剤をより小さなバッチに分けて又は個別に評価し得る。
【0021】
候補薬剤は、好ましくは、ポリペプチド、抗体もしくはその抗原結合断片、脂質、炭水化物、核酸、及び化合物である。
【0022】
本発明の方法は、リガンド結合、シグナル伝達活性、又は走化性活性等のCCRL2ポリペプチドの活性に対する候補薬剤の効果を判断又は分析することにより、CCRL2ポリペプチドの活性を調節する薬剤を検出する。本発明の方法は、候補薬剤の非存在下で、MIP−4ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件のもとで行われる。これらの条件とは、MIP−4ポリペプチドがCCRL2ポリペプチドに結合できるような、例えば、温度、塩濃度、pH、及び蛋白質濃度をいう。正確な結合条件は分析の性質(例えば、該分析に生存細胞を用いるか細胞の膜画分のみを用いるか)に依存して変化するであろう。しかしながら、CCRL2は細胞表面受容体であり、MIP−4ポリペプチドはCCRL2の細胞外ドメインと相互作用する分泌性ポリペプチドであるので、好ましい条件として、一般に、生理的塩濃度(約90mM)及びpH(約7.0〜8.0)があげられる。結合温度は4℃〜37℃で変化し得るが、好ましくは4℃である。結合分析における反応物の濃度も変化し得るが、好ましくは約0.1pMから約10μMである。
【0023】
本発明の実施形態の一つにおいて、試験検体がCCRL2ポリペプチドのMIP−4ポリペプチドへの結合に及ぼす効果をモニタリングする。適当な結合分析フォーマットであればいずれも結合をモニタリングするのに用いられ、任意の効果を検出することができる。該効果は、MIP−4ポリペプチドとCCRL2ポリペプチドとの間の結合の減少として測定され得る。あらゆる所与の解析法によって測定されたMIP−4ポリペプチドとCCRL2ポリペプチドとの間の結合の、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%の減少は、候補薬剤がCCRL2の活性を調節することを示す。
【0024】
任意の候補薬剤によって誘導されるMIP−4ポリペプチドとCCRL2ポリペプチドとの間の結合における変化をモニタリングする評価法として、好ましくは、ラベル置換法、表面プラズモン共鳴法、蛍光共鳴エネルギー転移、蛍光消失法、蛍光偏光法、及び放射性リガンド結合法があげられる。
【0025】
ラベル置換法とは、漸増濃度の候補薬剤の存在下又は非存在下で、CCRL2ポリペプチドと検出可能なように標識したMIP−4ポリペプチドとを接触させることをいう。解析を補正するため、漸増濃度の非標識MIP−4ポリペプチドを使用することにより、対照となる競合反応を行ってもよい。接触させた後、結合した標識MIP−4ポリペプチドは所定の標識に適した方法(例えば、シンチレーション計数、酵素分析、又は蛍光)を用いて測定される。標識として、好ましくは、トリチウムもしくはヨウ素等の放射性同位元素、又はその他の任意の適当な放射性ヌクレオチドがあげられる。候補薬剤が10μM以下の濃度で標識MIP−4ポリペプチドの50%を置換するとき、候補薬剤はCCRL2ポリペプチドに特異的に結合するとみなされる(EC50は10μM以下)。
【0026】
表面プラズモン共鳴法とは、センサー上の膜に固定化されたCCRL2ポリペプチドへのMIP−4ポリペプチドの結合又は結合の喪失により生じる固定化センサー付近の質量変化によって、2つの分子間の結合を測定する方法である。質量変化は、リガンドもしくは候補薬剤の注入又は除去後の時間に対する共鳴単位として測定され、Biacore Biosensor(Biacore AB)を使用して測定する。Salamon et al., 1996, Biophys J. 71: 283-294に記載の方法に従って、CCRL2ポリペプチドを薄層脂質膜のセンサーチップ上に固定化することができる。一般に、固定化されたCCRL2ポリペプチドにあらかじめ結合させたMIP−4ポリペプチドに対して候補薬剤を投与し、次いでリガンドの置換が測定される。あるいは、固定化されたCCRL2ポリペプチドにあらかじめ結合させた候補薬剤に対してMIP−4ポリペプチドを投与することができる。
【0027】
蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)とは、蛍光ドナー(D)の発光スペクトルと蛍光アクセプター(A)の励起スペクトルが重なる条件において、互いに至近距離に接近したDとAとの間で起こる量子力学的現象である。一般に、MIP−4ポリペプチド及びCCRL2ポリペプチドは、ドナー及びアクセプターフルオロフォアの相補的対を用いて標識される。ドナーフルオロフォアの励起により発光した蛍光は、MIP−4ポリペプチドとCCRL2ポリペプチドとが結合した場合には、それらが結合していない場合とは異なる波長を有するであろう。結合ポリペプチド 対 未結合ポリペプチドの定量はそれぞれの波長での発光強度を測定することにより行うことができる。ポリペプチドを標識するフルオロフォアのドナー:アクセプター対は当該分野では周知である。フルオロフォア対として好ましくはシアン蛍光蛋白質(CFP、ドナー)及び黄色蛍光蛋白質(YFP、アクセプター)である。
【0028】
蛍光消失法とは、対となって結合する分子(MIP−4ポリペプチド及びCCRL2ポリペプチド)の一方をフルオロフォアで標識し、他方を該対が結合した場合にフルオロフォアの蛍光を消失させる分子で標識することを含む。励起の際の蛍光の変化をMIP−4ポリペプチドとCCRL2との間の結合の変化を測定するのに用いることができる。蛍光が増加した場合、MIP−4ポリペプチドとCCRL2ポリペプチドとの間の結合が減少したことを示す。
【0029】
蛍光偏光法は蛍光標識されたMIP−4ポリペプチドの偏光を測定する。蛍光標識MIP−4ポリペプチドの蛍光偏光値は、リガンドがCCRL2ポリペプチドに結合した場合に変化し、一般に増加する。偏光値の減少は、一般的に、MIP−4ポリペプチドとCCRL2ポリペプチドとの間の結合が減少したことを示す。蛍光偏光法は候補薬剤が低分子の場合に好適である。
【0030】
低分子量候補薬剤又はこのような薬剤ライブラリの大規模なハイスループットスクリーニングはバイオセンサーアッセイを用いてスクリーニングすることができる。ICSバイオセンサーは、AMBRI(Australian Membrane Biotechnology Research Institute; http//www.ambri.com.au/)によって記載されている。CCRL2に対するリガンドのCCRL2への結合は、バイオセンサーの膜二重層に存在するグラマシジン(gramacidin)促進イオンチャンネルの閉口と共役している。その結果、バイオセンサーはMIP−4ポリペプチドとCCRL2ポリペプチドとの間の結合を測定することができ、ひいては候補薬剤導入の際のあらゆる結合の変化を測定することができる。
【0031】
MIP−4ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を妨害する又は置換する薬剤は、CCRL2活性の作動薬、部分的作動薬、拮抗薬、又は逆作動薬であり得る。本発明により特定された薬剤が作動薬、部分的作動薬、拮抗薬、又は逆作動薬であるかを判断するために機能的解析を行うことができる。作動薬をスクリーニングするには、CCRL2ポリペプチドを薬剤と接触させ、後述のように、CCRL2のシグナル伝達活性を測定する。作動薬又は部分的作動薬は、MIP−4ポリペプチドの最大活性の少なくとも10%に相当する最大活性を有し得る。該作動薬又は部分的作動薬は、好ましくは、MIP−4ポリペプチドの50%、70%、100%の活性を有し、あるいは、MIP−4ポリペプチドと比較して2倍、5倍、10倍、又はそれ以上の活性を有する。拮抗薬又は逆作動薬をスクリーニングするには、MIP−4ポリペプチド存在のもと、候補化合物の存在下又は非存在下で、CCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性を分析する。拮抗薬又は逆作動薬は、当該拮抗薬又は逆作動薬を欠く状態での反応と比較して、リガンドにより刺激される受容体活性のレベルを少なくとも10%減少させる。逆作動薬をスクリーニングするには、候補化合物の存在下及び非存在下で構成的なCCRL2活性を解析する。逆作動薬とは、構成的な受容体活性を少なくとも10%減少させる化合物である。CCRL2ポリペプチドの構成的な活性は、配置、例えば、CMV初期プロモーター等の強力な構成的プロモーターの制御下にCCRL2を配置して過剰発現させることで得られる。あるいは、構成的な活性は、保存されたG蛋白質共役型受容体のアミノ酸又はアミノ酸ドメインの特定の変異によっても得ることができる(例えば、Kjelsberg et al., 1992, J. Biol. Chem. 267: 1430-1430、Ren et al., 1993, J. Biol. Chem. 268: 16483-16487、及びSamama et al., 1993, J. Biol. Chem. 268: 4625-4636)。
【0032】
本発明の他の実施形態において、試験検体がCCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性に及ぼす効果をモニタリングする。CCRL2のシグナル伝達活性はMIP−4ポリペプチドにより誘導される。任意の適当なシグナル伝達分析フォーマットを用いてシグナル伝達活性をモニタリングし、任意の効果を検出できる。該効果は、MIP−4ポリペプチドにより誘導されるCCRL2のシグナル伝達活性の変化として測定することができる。変化とは、シグナル伝達活性の増加又は減少をいう。あらゆる所定の分析法によって測定されたCCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性が、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%変化することは、その候補薬剤がCCRL2活性を調節することを示す。
【0033】
CCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性は、CCLR2ポリペプチドによるG蛋白質の活性化レベルを測定することでモニタリングできる。CCRL2によるG蛋白質の活性化レベルは、グアノシン誘導体の代謝回転、グアノシントリホスファターゼ(GTPase)活性、又は下流のセカンドメッセンジャー分子のレベルを測定することでモニタリングできる。グアノシン誘導体は、G蛋白質の活性化及び不活性化からなる循環反応に関与し、グアノシン二リン酸(GDP)及びグアノシン三リン酸(GTP)があげられる。セカンドメッセンジャー分子はG蛋白質の活性化により生成し、又は濃度変化が起こる。例として、サイクリックアデニン一リン酸(cAMP)、サイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)、ジアシルグリセロール(DAG)、イノシトール三リン酸(IP)、及び細胞内カルシウムがあげられるが、これに限られるものではない。
【0034】
シグナル伝達活性をモニタリングする方法として、好ましくは、グアノシンヌクレオチド結合、GTPase活性、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP、プロテインキナーゼC活性、ホスファチジルイノシトールの分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、MAPキナーゼ活性、及びレポーター遺伝子の発現を測定することがあげられる。全ての解析系において、候補薬剤の潜在的な非特異的効果は、CCRL2ポリペプチドを含有しない細胞又は膜を用いて対照実験を行うことで排除することができる。
【0035】
CCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性は、好ましくは、Gi3活性を測定することによりモニタリングされる。
【0036】
CCRL2ポリペプチド等の受容体による活性化に際し、GTPは膜結合型G蛋白質と結合する。したがって、CCRL2のシグナル伝達活性は、受容体を含有する細胞膜へのGTPの結合を測定することにより解析することができる(Traynor and Nahorski, 1995, Mol. Pharmacol. 47: 848-854)。一般に、GTPは適当な検出可能な部分により標識され、適切な検出系により測定される。
【0037】
G蛋白質は、GTPを加水分解してGDPを形成し、G蛋白質を不活性化するGTPaseを含有する。したがって、GTPase活性はG蛋白質、ひいてはCCRL2活性の尺度となる。GTPase活性は当該技術で一般的な方法により測定することができる。一般に、この方法は、CCRL2ポリペプチドを含有する膜をγP-GTPとともにインキュベートすることを含む。活性化GTPaseは、無機リン酸として標識を放出し、これはシンチレーション計数によって検出できる。
【0038】
シグナル伝達活性をモニタリングする他の方法として、好ましくは、アデニル酸シクラーゼ活性を測定する方法である(Solomon et al., 1974, Anal. Biochem. 58: 541-548及びKenimer & Nirenberg, 1981, Mol. Pharmacol. 20: 585-591)。解析方法として、CCRL2ポリペプチドを含有する細胞又は膜に由来する蛋白質ホモジネート中のアデニル酸シクラーゼ酵素活性を評価するための、標識cAMPの使用があげられる。
【0039】
シグナル伝達活性をモニタリングする方法として、さらに好ましくは、細胞内cAMPを測定することである。該方法は、cAMPラジオイムノアッセイ(RIA)又は当該分野で公知の方法によるcAMP結合蛋白質を用いて行うことができる(Horton & Baxendale, 1995, Methods Mol. Biol. 41: 91-105)。細胞内cAMPは多数の市販キットを用いて測定でき、そのようなキットとして高効率蛍光偏光法に基づくホモジニアスアッセイがあげられる(LJL Biosystems及びNEN Life Science Products)。
【0040】
シグナル伝達活性をモニタリングする方法として、さらに好ましくは、セカンドメッセンジャーであるDAG及び/又はIPを生成するレセプター誘導性リン脂質(特にホスファチジルイノシトール)分解を測定することである。それぞれを測定する方法は当該分野では周知である(例えば、Phospholipid Signaling Protocols, edited by Ian M. Bird. Totowa, N.J., Humana Press, 1998及びRudolph et al., 1999, J. Biol. Chem. 274: 11824-11831)。
【0041】
シグナル伝達活性をモニタリングする方法として、さらに好ましくは、受容体誘導性プロテインキナーゼC(PKC)活性を測定することである。DAGはPKCを活性化し、PKCは多くの標的蛋白質をリン酸化し、最終的には、c-fos、c-myc、及びc-junといった癌原遺伝子転写因子をコードする遺伝子アレイ、プロテアーゼ、I型コラゲナーゼもしくはプラスミノーゲン活性化因子阻害因子といったプロテアーゼ阻害因子、並びに細胞内接着因子I(ICAMI)といった接着分子の転写をもたらす。PKC活性は、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質蛋白質(MARCKS)から得られる基質ペプチドであるAc-FKKSFKL-NH2のリン酸化を測定することにより、直接測定することができる(Kikkawa et al., 1982, J. Biol. Chem. 257: 13341-13348)。PKCにより誘導される遺伝子産物の増加を検出するよう設計された解析を使用することによって、PKC活性化、ひいては受容体活性をモニタリングすることができる。さらに、PKCを活性化する受容体の活性は、PKCの活性化により活性化される遺伝子の制御配列によって駆動されるレポーター遺伝子構築物を用いることでモニタリングできる(下記参照)。
【0042】
シグナル伝達活性をモニタリングする他の方法として、好ましくは、MAPキナーゼ活性を測定することである。いくつかのキットが市販されており、p38 MAP Kinase assay kit (New England Biolabs (Cat #9820))及びFlashPlate(商標) MAP Kinase assay (Perkin-Elmer Life Sciences)があげられる。
【0043】
シグナル伝達活性をモニタリングする他の方法として、好ましくは、細胞内カルシウムを測定することである。細胞内カルシウムを測定する種々の方法が当該分野では周知である(Demaurex et al., Meth. Cell. Biol., 2002; 70: 453-474)。細胞内カルシウムを測定するいくつかのキットは市販されており、FLIPR assay kits(Biocompare, Inc.)があげられる。細胞内カルシウムを測定する方法の一例として、好ましくは、エクオリンアッセイがあげられる。ミトコンドリアアポエクオリンは、CCRL2等のGPCRの活性化によって起こる細胞内カルシウムイオンの放出に応答する生体発光蛋白質である(Stables et al., 1997, Anal. Biochem. 252: 115-126及びDetheux et al., 2000, J. Exp. Med., 192 1501-1508)。一般に、CCRL2ポリペプチドを発現している細胞は、ミトコンドリアアポエクオリン及びGα16を共発現するようにトランスフェクトされる。MIP−4ポリペプチド等のCCRL2ポリペプチドを活性化するいかなる化合物でも細胞内カルシウムの放出を引き起こし、その結果、測定可能な光を放射する。細胞内カルシウムを測定するもう一つの方法として、好ましくは、Fura-2 assay(Molecular Probes, Eugene, OR USA)である。
【0044】
他のシグナル伝達活性をモニタリングする方法として、好ましくは、1つ以上の遺伝子の転写又は翻訳における変化を測定することである。一般に、プロモーター及び転写因子結合部位等の、受容体の活性化に応答する制御配列によって駆動されるレポーター遺伝子の発現を測定することで、解析を行う。CCRL2ポリペプチドを含有する細胞は、適切な制御配列を含むレポーター遺伝子構築物によって安定にトランスフェクトされ得る。解析は、受容体の活性化により即座に、場合によっては数分以内に誘導され得る「前初期」遺伝子の応答の測定を伴う傾向がある。適当なレポーター遺伝子として、ルシフェラーゼ、CAT、GFP、β−ラクタマーゼ、又はβ−ガラクトシダーゼがあげられるが、これらに限られるものではない。レポーター遺伝子アッセイに用いることのできる制御配列の一例として、c-fos遺伝子の制御配列があげられる。受容体の活性化によるc-fos発現の誘導は非常に早く、しばしば数分以内に起こる。c-fos調節エレメントは当該分野では周知である(Verma et al., 1987, Cell 51: 513-514)。レポーター遺伝子アッセイに用いることのできる制御配列のさらなる例としてCREB(cyclic AMP responsive element binding protein)により認識される制御配列があげられる。レポーター遺伝子アッセイに用いられ得る制御配列のその他の例として、血管作用性小腸ペプチド(VIP)遺伝子のプロモーター(Fink et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 6662-6666)、ソマトスタチン遺伝子のプロモーター(Montminy et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. 83: 6682-6686)、プロエンケファリンプロモーター(Comb et al., 1986, Nature 323: 353-356)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子のプロモーター(Short et al., 1986, J. Biol. Chem. 261: 9721-9726)、及びAP−1転写因子(Lee et al., 1987, Nature 325: 368-372及びLee et al., 1987, Cell 49: 741-752)又はNF−κB活性(Hiscott et.al., 1993, Mol.Cell.Biol.13: 6231-6240)に応答する転写制御エレメントがあげられるが、これらに限られるものではない。しかしながら、他のシグナル伝達活性アッセイにおいては、候補薬剤の存在下での少なくとも10%の変化によって、この候補物質がCCRL2を調節することが示されるが、転写レポーターアッセイにおいて陽性薬剤であることを示すには、シグナルが少なくとも2倍増加する必要がある。レポーター遺伝子発現アッセイにおいて、陰性薬剤であることは、他のアッセイと同様に、シグナルが10%減少することにより示される。
【0045】
本発明の方法により特定された候補薬剤がCCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性を調節する能力について、さらなる確認又は解析を行ってもよい。このような機能解析については詳細に既述している。このような分析は、一般に、CCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性に対する候補薬剤単独の効果をモニタリングし、CCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性に対するMIP−4ポリペプチドの効果と比較することを伴う。任意の適当なシグナル伝達アッセイフォーマットを用いて、シグナル伝達活性を判断し、効果を検出することができる。該効果はCCRL2のシグナル伝達活性の変化として測定することができる。該薬剤はCCRL2活性の作動薬、部分的作動薬、拮抗薬、又は逆作動薬である可能性がある。
【0046】
そのEC50でMIP−4ポリペプチドとの比較がなされる。EC50とは、シグナル伝達活性が同じ解析法を用いて測定可能な受容体活性の最大値の50%であるリガンド濃度を示す。換言すれば、EC50とは、100%の活性をさらにリガンドを加えても増加しない活性量と定めた場合の50%の活性を与えるリガンド濃度である。リガンドのEC50は該リガンドの性質によって変化する点に注意すべきである。例えば、配列番号6の変異体(すなわち、挿入、欠失、置換を含むもの)のEC50値は親分子より高いかもしれないし、低いかもしれないし、同じであるかもしれない。配列が親配列と異なる場合、当業者であれば従来法に従ってその変異体のEC50を決定することができる。与えられたリガンドのEC50は、少なくともCCRL2応答が飽和又は最大になるまで増加する用量のリガンドの存在下で、固定量のCCRL2ポリペプチドの活性を解析し、次いでリガンド濃度に対して測定されたCCRL2活性をプロットすることで測定される。
【0047】
そのEC50で、MIP−4ポリペプチドにより誘導されるシグナル伝達活性の少なくとも50%を誘導する場合には、候補薬剤はCCRL2活性を調節する薬剤であるとみなされる。
【0048】
本発明の他の実施形態において、候補薬剤又は検体のCCRL2ポリペプチドの走化性活性に対する効果がモニタリングされる。CCRL2の走化性活性はMIP−4ポリペプチドによって誘導される。任意の適当な走化性解析フォーマットを用いて走化性活性をモニタリングし、任意の効果を検出し得る。走化性解析とは、刺激に対する細胞遊走を測定することである。該効果は、MIP−4ポリペプチド誘導性CCRL2走化性活性における変化として測定され得る。変化とは、シグナル伝達活性の増加又は減少をいう。いずれかの所定の解析で測定されたCCRL2ポリペプチドの走化性活性における、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%の変化は、該候補薬剤がCCRL2活性を調節することを示す。
【0049】
走化性解析に用いる細胞は、CCRL2を発現している適当な細胞であればいずれでもよい。該細胞は、CCRL2ポリペプチドを発現するように、CCRL2ポリヌクレオチドにより形質転換されていてもよい。好ましくは、該細胞は内皮細胞等のCCRL2ポリペプチドを発現する初代細胞である。適当な宿主細胞としては、一過性の、好ましくは安定な哺乳動物細胞もしくは昆虫細胞等の高等真核細胞株、酵母等の下等真核細胞、又は細菌細胞等の原核細胞があげられる。細胞株の特定の例として、哺乳動物HEK293T細胞、CHO細胞、HeLa細胞、及びCOS細胞があげられる。選択される細胞株として好ましくは、安定であるだけでなく、ポリペプチドの成熟した糖修飾も可能なものである。CCRL2ポリペプチドの走化活性は、形質転換卵母細胞においても測定することができる。
【0050】
走化性活性をモニタリングする方法は当該分野において詳述されており、キットが入手できる。好適なキットとしてChemoTxプレートを用いるキット(Neuroprobe Inc.)やBD Falcon HTS FluoroBlok 96-Multiwell Insert System(BD Biosciences Discovery Labware)があげられる。走化性解析の例は文献に記載されている(例えば、Biber et al., Journal of Leukocyte Biology 2003. 74: 243-251及びZuurman et al.; BCN annual report 1999-2001)。MIP−4ポリペプチド作用のCCRL2ポリペプチドへの効果は、文献記載のように細胞の形態変化によっても検出することができる(例えば、Heineman et al., The Journal of Immunology 2003; 170: 4752-4758及びStubbs et al., Journal of Biological Chemistry 2002; 277: 26012-26020)。
【0051】
本発明はさらに、上述したいずれかの方法により検出される薬剤、及び療法によりヒト又は動物の身体を治療する方法におけるこのような薬剤の使用を提供する。該薬剤はCCRL2活性の作動薬、部分的作動薬、拮抗薬、又は逆作動薬である可能性がある。本発明はさらに、本発明のいずれかの方法により検出された薬剤の炎症性疾患もしくは障害の治療、マクロファージ活性亢進関連疾患もしくは障害の治療、又は感染症の治療に用いられる医薬の製造における使用を提供する。本発明の薬剤及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含有する医薬組成物をも提供する。
【0052】
本発明は、細胞中のCCRL2ポリペプチド活性を調節する方法を提供する。該方法は本発明により検出された薬剤を、CCRL2活性が調節されるように細胞に送達することを含む。細胞はin vivoであってもin vitroであってもよい。該薬剤の送達については、以下にさらに詳細に説明する。
【0053】
炎症性疾患又は障害の治療方法、マクロファージ活性亢進関連疾患又は障害の治療方法、及び感染症の治療方法もまた本発明により提供され、該方法は、治療上有効な量の本発明による薬剤を、治療を必要とする個体に投与することを含む。
【0054】
本発明の炎症性疾患又は障害の治療方法は一般的に、
(i)本発明による方法によって、炎症性疾患もしくは障害を予防又は治療するための薬剤を特定すること、及び
(ii)炎症性疾患もしくは障害を有する個体に、治療上有効な量の(i)で検出された薬剤を投与すること、
を含む。
【0055】
炎症性疾患又は障害を有する被検体においてCCRL2の活性又は発現が低下している場合、炎症性疾患又は障害の治療に用いられる薬剤として、好ましくは、CCRL2活性の作動薬又は増強剤、あるいは、CCRL2の発現を上昇させる薬剤である。炎症性疾患又は障害を有する被検体においてCCRL2の活性又は発現が上昇している場合、治療剤は一般にCCRL2活性の拮抗薬あるいは発現阻害薬である。該薬剤はCCRL2ポリペプチドと相互作用するMIP−4ポリペプチドに結合して受容体活性化を抑制してもよく、例えば、該薬剤はMIP−4ポリペプチドに対する抗体であってもよい。
【0056】
MIP−4の活性又は発現が低下している炎症性疾患又は障害を有する被検体においては、炎症性疾患又は障害の治療に用いられる薬剤として、好ましくは、MIP−4活性の作動薬又は増強剤、あるいは、MIP−4の発現を上昇させる薬剤である。MIP−4の活性又は発現が上昇している炎症性疾患又は障害を有する被検体においては、治療薬は一般にMIP−4活性の拮抗薬あるいは発現阻害薬である。該薬剤はMIP−4と相互作用するCCRL2ポリペプチドに結合して受容体活性を抑制してもよく、例えば該薬剤はCCRL2ポリペプチドに対する抗体であってもよい。
【0057】
上記すべての実施形態において、炎症性疾患又は障害は、好ましくは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、肺気腫、炎症性骨障害、乾癬、炎症性腸疾患、炎症性脳障害、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、自己免疫不全症候群(AIDS)、紅斑性狼瘡、同種移植拒絶反応、関節リウマチ、又はアレルギー性炎症である。炎症性脳障害は多発性硬化症、又は脳卒中もしくは出血であってもよい。炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病であってもよい。炎症性骨障害はリウマチ性、自己免疫性、及び感染性関節炎を含む関節炎であってもよい。アレルギー性炎症は、例えば、喘息又は接触性皮膚炎であってもよい。炎症性疾患又は障害は、CCRL−2関連又はMIP−4関連疾患もしくは障害であってもよい。炎症性疾患又は障害は、治療される個体において、存在していてもよく、又は存在が疑われるものであってもよい。該個体については以下に詳述する。
【0058】
マクロファージ活性亢進関連疾患又は障害の治療方法は一般に、
(i)本発明による方法によって、CCRL2活性を調節する薬剤を特定すること、及び
(ii)疾患又は障害を有する個体に、治療上有効な量の(i)で特定された薬剤を投与すること、
を含む。
【0059】
MIP−4の発現レベルが増加すれば、CCRL2発現マクロファージの動員の増加につながる。CCRL2は活性化マクロファージにおいても上方調節される。マクロファージ活性亢進関連疾患又は障害の治療に用いられる薬剤として、好ましくは、MIP−4/CCRL2活性の拮抗薬又はMIP−4もしくはCCRL2の発現を抑制する薬剤である。該薬剤は、MIP−4と相互作用するCCRL2ポリペプチドに結合し、受容体活性化を抑制してもよく、例えば、該薬剤はCCRL2ポリペプチドに対する抗体であってもよい。該薬剤は、CCRL2受容体と相互作用するMIP−4ポリペプチドに結合し、受容体活性化を抑制してもよく、例えば、該薬剤はMIP−4ポリペプチドに対する抗体であってもよい。
【0060】
マクロファージ活性亢進関連疾患又は障害は、MIP−4の発現レベルの上昇が罹患組織において観察され、該組織への不適切なマクロファージの動員が起こるものであってもよい。そのような疾患又は障害として、自己免疫疾患及びアレルギー性皮膚炎等の接触過敏症があげられる。
【0061】
マクロファージ活性亢進疾患又は障害は、異常なマクロファージ活性が疾患又は障害に寄与するか、あるいは疾患又は障害に関連した症状や合併症を引き起こすものであってもよい。活性化マクロファージにおいてはCCRL2が上方調節されており、従ってMIP4によるCCRL2活性化を阻害することは疾患もしくは障害の症状を予防又は改善し得る。例えば、脂肪中のマクロファージは、慢性炎症を通じて肥満及び肥満関連性インスリン抵抗性に大きく寄与している。したがって、このような疾患の2つの例として、肥満及び肥満関連性インスリン抵抗性があげられる。
【0062】
MIP−4レベルの上昇は胃癌、小児急性リンパ芽球性白血病、及び卵巣癌と関連があり、すべての場合においてマクロファージ様細胞の蓄積が付随している。特定のケモカインの組織特異的な発現も癌の増殖及び転移に影響する。したがって、MIP−4とCCRL2との間の相互作用を阻害することにより、マクロファージ様細胞のさらなる浸潤を抑制し、腫瘍拡張を減少させ得る。このように、癌はマクロファージ活性亢進関連疾患であると考えることができる。MIP−4とCCRL2との間の相互作用を阻害する本発明の薬剤、又はCCRL2の拮抗薬として作用する本発明の薬剤は、癌、特に胃癌、小児急性リンパ芽性白血病、及び卵巣癌の治療に有益である。
【0063】
関節リウマチ(RA)滑液は上昇したレベルの多くのサイトカインを含有する。本発明者は、RA滑液中のMIP−4レベルが単球の走化性に大きく影響していることを初めて示す。本発明者は、MIP−4によって誘導された走化性及びRA滑液によって誘導された走化性のいずれもがCCRL2抗体によって阻害され得ること、及びRA滑液からMIP−4を除去することで単球の走化性が減少することを示す。従って、MIP−4によるCCRL2活性化の阻害剤は関節リウマチの治療方法に用いることができる。適当な阻害剤として、抗MIP−4抗体及び抗CCRL2抗体と同様に、CCRL2の拮抗薬及び部分的作動薬があげられる。
【0064】
マクロファージ活性亢進性疾患又は障害を有する個体については、より詳細に後述する。
【0065】
感染症の治療方法は一般に、
(i)本発明による方法によって、CCRL2活性を調節する薬剤を特定すること、及び
(ii)感染症を有する個体に、治療上有効な量の(i)で特定された薬剤を投与すること、
を含む。
【0066】
(i)において特定された薬剤は一般に、CCRL2活性を刺激し、その結果マクロファージを感染部位に動員させる薬剤である。すなわち、該薬剤は好ましくはCCRL2活性の作動薬又は増強剤である。該薬剤は好ましくは感染部位に投与される。該薬剤は、マクロファージ活性をより全体的に刺激するために、全身投与される。
【0067】
該感染症はウイルス、真菌、又は細菌等のいずれの病原生物によって引き起こされる感染症であってもよい。該感染症は、好ましくは、細菌感染症である。感染症を有する個体については、より詳細に後述する。
【0068】
本発明において有用なポリペプチド及びポリヌクレオチド
【0069】
本発明において有用なCCRL2ポリペプチドはlong型(CRAM−A)及びshort型(CRAM−B)受容体の両方を含む。したがって、本発明において有用なCCRL2ポリペプチドとして、配列番号2又は4の配列を有するものがあげられる。本発明において有用なCCRL2ポリペプチドには、配列番号2又は4と全長にわたって少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有する、CCRL2と機能的に同等な変異ポリペプチドも含まれる。変異ポリペプチドとして、好ましくは、サル、イヌ、マウス、ラット、モルモット、又はゼブラフィッシュ等の他種由来のCCRL2ホモログがあげられる。CCRL2と機能的に同等な配列番号2又は4の断片も用いることができる。該断片の長さは250から355アミノ酸であってもよく、好ましくは、少なくとも275、300、310、320、330、又は340アミノ酸長である。機能的に同等とは、CCRL2ポリペプチドがMIP−4ポリペプチドに結合すること、及び、CCRL2関連シグナル伝達経路を活性化させる能力を有することをいう。一般に、MIP−4がCCRL2ポリペプチドに結合するとCCRL2関連シグナル伝達経路を刺激する。主に、CCRL2関連シグナル伝達経路としてGi3の活性化があげられる。主に、CCRL2ポリペプチドはMIP−4ポリペプチドに「特異的に結合する」。CCRL2ポリペプチドが他のポリペプチドに比べて優先的親和性をもってMIP−4ポリペプチドに結合する場合に、CCRL2ポリペプチドはMIP−4ポリペプチドに「特異的に結合する」。競合的結合の種々のプロトコルは当該分野において公知である(さらに後述する)。
【0070】
本発明において有用なCCRL2ポリヌクレオチドとして、CCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドがあげられる。本発明において有用なCCRL2ポリペプチドは、long型(CRAM−A)及びshort型(CRAM−B)受容体の両方をコードするポリヌクレオチドを含む。該ポリヌクレオチドは、配列番号1もしくは3の配列又は配列番号1もしくは3と少なくとも90%又は95%が全長にわたって同一である配列を含み得る。
【0071】
本発明において有用なMIP−4ポリペプチドとして、配列番号6の配列を有するポリペプチドがあげられる。本発明において有用なMIP−4ポリペプチドとして、配列番号6と全長にわたって少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は95%同一であり、CCRL2ポリペプチドと結合して、そのシグナル伝達活性を活性化させる配列も含まれる。MIP−4ポリペプチドには、上述したいずれかのMIP−4ポリペプチドの断片であって、CCRL2ポリペプチドと結合して、そのシグナル伝達活性を活性化させるものも含まれる。断片は、配列番号8の結合活性及びシグナル伝達活性化レベルの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を保持することが好ましい。MIP−4ポリペプチドは、結果として生じたポリペプチドが特異的にCCRL2ポリペプチドと結合して、そのシグナル伝達活性を活性化させる限り、配列番号6に付加、挿入、欠失、又は置換を含んでいてもよく、配列番号6の結合活性及びシグナル伝達活性化レベルの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%を保持することが好ましい。
【0072】
主に、MIP−4ポリペプチドはCCRL2ポリペプチドに「特異的に結合する」。MIP−4ポリペプチドが他の受容体ポリペプチドに比べて優先的親和性をもってCCRL2ポリペプチドに結合する場合に、MIP−4ポリペプチドはCCRL2ポリペプチドに「特異的に結合する」。競合的結合の種々のプロトコルは当該分野において公知である。
【0073】
MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも本発明において有用である。本発明において有用なポリヌクレオチドとして、MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが含まれる。該ポリヌクレオチドは配列番号5の配列を包含する、又は配列番号5と少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、又は95%が全長にわたって同一である配列を含み得る。
【0074】
上記同一性はヌクレオチド又はアミノ酸の同一性を基に計算され得る(「ハードホモロジー」と称することがある)。
【0075】
例えば、UWGCGパッケージはホモロジーを計算するのに用いられ得るBESTFITプログラムを提供する(例えば、初期設定で使用される)(Devereux et al. (1984) Nucleic Acids Reseach 12, p387-395)。PILEUP及びBLASTアルゴリズムは、ホモロジー計算又は配列を並べる(同等の又は対応する配列の特定等(一般に初期設定で使用される))ために用いることができ、例えばAltschul S. F. (1993) J Mol Evol 36: 290-300; Altschul S. F. et al.(1990) J Mol Biol 215: 403-10に記載されている。
【0076】
BLAST解析は、好ましくは、同一性を計算するのに用いられる。BLAST解析を実行するソフトウェアは米国国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手できる。本アルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントさせた場合に、ある正の値の閾値スコアTに一致又は満足する問合せ配列中の長さWの短いワードを特定することにより、ハイスコアシークエンスペア(HSP)を特定することを含む。Tを隣接ワードスコア閾値という(Altschul et al., 上記参照)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含むHSPを見つけるための検索を開始する種として働く。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増加し得る限り、それぞれの配列に沿って両方向に延長される。累積アラインメントスコアがその最大到達値から量Xだけ減少した場合、一つ以上の負のスコアを持つ塩基アラインメントが蓄積することにより累積スコアがゼロ以下になった場合、又はどちらかの配列の末端に達した場合、各方向へのワードヒットの延長は停止される。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、T、及びXはアラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTプログラムは、ワード長(W)が11、BLOSUM62スコアリングマトリクス(Henikoff and Henikoff (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919参照)アラインメント(B)が50、期待値(E)が10、M=5、N=4、及び両方の鎖の比較を初期値として用いる。
【0077】
BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性について統計的解析を行う(例えば、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787等を参照)。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の一つの尺度として、最小合計確率(P(N))があげられ、これは2つのポリヌクレオチド又はアミノ酸配列が偶然に一致する確率の目安を提供する。例えば、1つ目の配列と2つ目の配列とを比較した際の最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、ある配列が他の配列と類似するとみなされる。
【0078】
相同的な配列は、一般に少なくとも1、2、5、10、20、又はそれ以上の変異(ヌクレオチド又はアミノ酸の置換、欠失、又は挿入であってもよい)で異なる。これらの変異は同一性の計算に関連して上記の全ての領域にわたって測定され得る。蛋白質の場合、置換においては保存的置換が好ましい。これらは下記の表により規定される。第二列の同じ区画に属するアミノ酸、好ましくは第三列の同じ行に属するアミノ酸が互いに置換され得る。
【0079】
【表1】

【0080】
本発明において有用なポリペプチドはいずれも二量体の形態であってもよい。本発明において有用なポリペプチドはいずれも、さらに化学的修飾を受けて誘導体を形成することができる。誘導体として脂質伸長を有するポリペプチド又は糖修飾されたポリペプチドがあげられる。誘導体として、検出可能なように標識されたポリペプチドもあげられる。検出可能なように標識されたポリペプチドは、容易に検出できる標識部分によって標識されている。標識部分としては、例えば、放射性同位体もしくは放射性ヌクレオチド、緑色蛍光蛋白質(GFP)等のフルオロフォア、高電子密度試薬、蛍光消光剤、酵素、アフィニティ−タグ、及びエピトープタグがあげられるが、これらに限られるものではない。放射性同位体としてはトリチウム及びヨウ素が好ましい。アフィニティ−タグとは該標識分子に対して試薬を特異的に結合させる能力を付与する標識をいう。例えば、ビオチン、ヒスチジンタグ、及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)があげられるが、これらに限られるものではない。標識は、例えば、当該分野で公知の、分光学的方法、光化学的方法、放射化学的方法、生化学的方法、免疫化学的方法、又は化学的方法により検出することができる。
【0081】
本発明において有用なポリペプチドは、また、いずれも付加的アミノ酸又はポリペプチド配列を含むことができる。本発明において有用なポリペプチドとして、好ましくは、付加的メチオニン残基がアミノ末端(Met−MIP−4)又はカルボキシ末端に付加されたMIP−4ポリペプチドである。本発明において有用なポリペプチドはいずれも、融合蛋白質を形成する等の付加的ポリペプチド配列を含むことができる。付加的ポリペプチド配列は、MIP−4のアミノ末端、カルボキシ末端、又はアミノ末端とカルボキシ末端の両方に融合させることができる。融合パートナーとしては、例えば、GST、マルトース結合蛋白質、アルカリホスファターゼ、チオレキシジン、GFP、ヒスチジンタグ、及びエピトープタグ(例えば、Myc又はFLAG)があげられるが、これらに限られるものではない。CCRL2ポリペプチドはGTP結合蛋白質(G蛋白質)に融合させることができる。
【0082】
本発明において有用な抗体
【0083】
本発明は、また、CCRL2関連疾患又は障害を治療するための、MIP−4ポリペプチドに特異的な抗体の使用を提供する。本発明は、また、MIP−4関連疾患又は障害を治療するための、CCRL2ポリペプチドに特異的な抗体の使用を提供する。
【0084】
抗体は、MIP−4ポリペプチド又はCCRL2ポリペプチドに結合するように産生されてもよい。抗体は、MIP−4ポリペプチド及びCCRL2ポリペプチドの両方に結合するように産生されてもよい。抗体はMet−MIP−4等のMIP−4融合蛋白質に対して産生されてもよい。該抗体は、一般に、MIP−4ポリペプチド又はCCRL2ポリペプチドに「特異的に結合する」又は「特異的である」。該抗体はCCRL2の糖修飾部位に結合してもよい。抗体又は他の化合物が、ケモカイン又はG蛋白質受容体等の他のポリペプチドに比べて優先的親和性をもって蛋白質に結合する場合に、抗体又は他の化合物はポリペプチドに「特異的に結合する」又はポリペプチドに「特異的である」。抗体の特異的結合活性を測定する競合的結合又は免疫放射定量測定法に関する種々のプロトコルは当該分野では周知である(例えば、Maddox et al., J. Exp.Med. 158, 1211-1226, 1993を参照)。当該免疫測定法は、一般に、特定の蛋白質とその抗体との間の複合体の形成及び複合体形成の測定を伴う。
【0085】
本発明の目的のために、「抗体」という用語は、逆に特定されない限り、ポリペプチドに結合する断片を含むものとする。該断片として、単鎖抗体と同様に、Fv、F(ab')、及びF(ab')2断片があげられる。さらに、該抗体もしくはその断片は、キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体であってもよい。
【0086】
抗体はいずれかの適当な方法によって産生することができる。抗体を作製又は特徴づける手段は当該分野では周知である。例えば、Harlow and Lane(1988)''Antibodies: A Laboratory Manual'', Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照。例えば、抗体は、ポリペプチド全体又はその断片、例えばその抗原性エピトープ(以下「免疫原」と称する)に対する抗体を宿主動物で産生することにより作製することができる。該断片は本明細書中に記載された断片(一般に、少なくとも10又は少なくとも15アミノ酸長)のいずれでもよく、多型(本明細書中に記載されたいずれかの多型等)を含む。
【0087】
ポリクローナル抗体を産生する方法は、適当な宿主動物、例えば、実験動物を免疫原で免疫し、該動物の血清から免疫グロブリンを単離することを含む。したがって、該動物に免疫原を接種し、続いて該動物から血液を取り出し、IgG画分を精製することができる。
【0088】
モノクローナル抗体を産生する方法は、所望の抗体を産生する細胞を不死化させることを含む。ハイブリドーマ細胞は、接種された実験動物由来の脾臓細胞と腫瘍細胞とを融合させることにより作製することができる(Kohler and Milstein(1975) Nature 256, 495-497)。
【0089】
所望の抗体を産生する不死化細胞は従来法によって選択することができる。該ハイブリドーマは培養液中で増殖させてもよく、又は、腹水液を形成させるために腹腔内投与しても、同種異系の宿主もしくは免疫不全の宿主の血流に投与してもよい。ヒト抗体はヒトリンパ球にin vitroで免疫した後、エプスタイン・バーウイルスを用いて該リンパ球を形質転換することで作製し得る。
【0090】
モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体の両方を作製するにあたり、該実験動物としてはヤギ、ウサギ、ラット、マウス、モルモット、ニワトリ、ヒツジ、又はウマが好ましい。必要に応じて、該免疫原は適当な担体と、例えばあるアミノ酸残基の側鎖を通じて、連結したコンジュゲートとして投与されてもよい。該担体分子は一般に生理学的に許容される担体である。得られた抗体は単離され、必要に応じて精製してもよい。
【0091】
MIP−4に結合する抗体は当該分野では公知であり、市販されている(例えば、Novus Biologicals(登録商標)及びR&D Systemsから)。
【0092】
MIP−4ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び抗体の使用
【0093】
本発明は細胞内のCCRL2シグナル伝達経路を活性化する方法を提供する。該方法はMIP−4ポリペプチドを細胞内に導入することを含む。細胞はin vivoであってもin vitroであってもよい。薬剤の送達については、より詳細に後述する。
【0094】
本発明はさらに、
(i)MIP−4ポリペプチド、
(ii)MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は
(iii)MIP−4ポリペプチドに特異的な抗体の、
CCRL2関連疾患又は障害を治療するための医薬の製造における使用を提供する。該CCRL2関連疾患又は障害とは、好ましくは、炎症性腸疾患、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、又は炎症性脳障害等のCCRL2介在性炎症性疾患である。炎症性脳障害は多発性硬化、又は脳卒中もしくは出血であってもよい。炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病であってもよい。CCRL2関連疾患又は障害は、治療される個体において、存在していてもよく、又は存在が疑われるものであってもよい。該個体はCCRL2関連疾患又は障害について多型等の遺伝的素因を有していてもよい。
【0095】
個体については、より詳細に後述する。
【0096】
CCRL2ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及び抗体の使用
【0097】
本発明は、
(i)CCRL2ポリペプチド、
(ii)CCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、又は
(iii)CCRL2ポリペプチドに特異的な抗体の、
MIP−4関連疾患又は障害を治療するための医薬の製造における使用を提供する。MIP−4関連疾患又は障害とは、好ましくは、喘息又は接触性皮膚炎等のアレルギー性炎症である。MIP−4レベルの上昇は胃癌、小児急性リンパ芽性白血病、及び卵巣癌と関連していることから、該MIP−4関連疾患は癌であってもよい。
【0098】
MIP−4関連疾患又は障害は、治療される個体において、存在していてもよく、又は存在が疑われるものであってもよい。該個体はMIP−4関連疾患又は障害について多型等の遺伝的素因を有していてもよい。個体については、より詳細に後述する。
【0099】
診断方法
【0100】
本発明は、さらに、個体におけるCCRL2関連疾患もしくは障害又はMIP−4関連疾患もしくは障害の診断方法を提供する。CCRL2関連疾患又は障害とは、一般に、CCRL2遺伝子に関連する疾患又は障害をいう。例えば、CCRL2遺伝子領域における多型がこの疾患又は障害に関連している可能性がある。MIP−4関連疾患又は障害とは、MIP−4遺伝子に関連する疾患又は障害をいう。例えば、MIP−4遺伝子領域における多型がこの疾患又は障害に関連している可能性がある。
【0101】
CCRL2関連疾患又は障害とは、好ましくは、炎症性腸疾患、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、又は炎症性脳障害等のCCRL2介在性炎症性疾患である。炎症性脳障害は多発性硬化、又は脳卒中もしくは出血であってもよい。炎症性腸疾患は潰瘍性大腸炎又はクローン病であってもよい。CCRL2関連疾患又は障害は、診断がなされる個体において、存在していてもよく、又は存在が疑われるものであってもよい。MIP−4関連疾患又は障害とは、好ましくは、喘息又は接触性皮膚炎等のアレルギー性炎症である。MIP−4関連疾患又は障害は、治療される個体において、存在していてもよく、又は存在が疑われるものであってもよい。個体については、より詳細に後述する。
【0102】
本発明の第一の診断の実施形態において、該診断方法は個体から単離された検体に対してMIP−4に特異的なプライマーを用いて増幅反応を行うことを含む。次に、該検体中にMIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが存在するか否かを決定する。MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが存在しないことは、CCRL2関連疾患又は障害が存在することを示す。該ポリヌクレオチドが存在する場合、ポリヌクレオチドの増幅量を標準と比較し、標準と比較した量の差異がCCRL2関連疾患又は障害が個体に存在することを示す。標準とは、CCRL2関連疾患又は障害に罹患していない個体に相当する測定量をいう。
【0103】
第一の診断実施形態の方法は、また、個体から単離された検体に対してCCRL2に特異的なプライマーを用いて増幅反応を行うことを含む。次に、該検体中にCCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが存在するか否かを決定する。CCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが存在しないことは、MIP−4関連疾患又は障害が存在することを示す。該ポリヌクレオチドが存在する場合、ポリヌクレオチドの増幅量を標準と比較し、標準と比較した量の差異がMIP−4関連疾患又は障害が個体に存在することを示す。標準とは、MIP−4関連疾患又は障害に罹患していない個体に相当する測定量をいう。
【0104】
ポリヌクレオチドの量は、定量的又は半定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等の任意の適当な方法によって測定することができる。これらの方法においては、量の決定に先立って検体中のポリヌクレオチドの一部がコピー(すなわち、増幅)される。「定量的」増幅の方法は当該分野では周知である(PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Innis et al., Academic Press, Inc. N.Y., (1990))。
【0105】
第二の診断実施形態において、診断方法は個体から単離された検体からMIP−4をコードするポリヌクレオチドを増幅することを含む。次いで、CCRL2関連疾患又は障害に関連する変異又は多型の存在を決定する。一つの実施形態において、増幅されたヌクレオチドの配列が、CCRL2関連疾患又は障害に関する配列についての配列情報と比較される(図4)。このような情報は、一般に、上記疾患又は障害に関連する配列多型を示している。
【0106】
第二の診断の実施形態の方法もまた、個体から単離された検体からCCRL2をコードするポリヌクレオチドを増幅することを含む。次いで、MIP−4関連疾患又は障害に関連する変異又は多型の存在を決定する。一つの実施形態において、増幅されたヌクレオチドの配列が、MIP−4関連疾患又は障害に関する配列についての配列情報と比較される(図5)。このような情報は、一般に、上記疾患又は障害に関連する配列多型を示している。
【0107】
該変異又は多型は、一般に、個体のポリヌクレオチド中の変異又は多型配列の存在を直接決定することで検出される。当該ポリヌクレオチドは、一般に、ゲノムDNA、mRNA、又はcDNAである。該多型は後述するような任意の適当な方法によって検出することができる。
【0108】
該診断法は、変異又は多型の存否を特異的結合剤を用いて検出することを含んでもよい。特異的結合剤とは、多型を有する蛋白質もしくはポリヌクレオチドに優先的又は高親和性をもって結合するが、他のポリペプチドもしくは蛋白質(変異もしくは多型を含まないMIP−4ポリヌクレオチド又はCCRL2ポリヌクレオチド等)には結合しない、あるいは低親和性のみをもって結合する薬剤をいう。
【0109】
該特異的結合剤はプローブ又はプライマーであってもよい。該プローブは蛋白質(抗体等)又はオリゴヌクレオチドであってもよい。該プローブもしくはプライマーは、一般に、多型の片方又は両方の側の隣接するヌクレオチド及びアミノ酸、例えば、全体で又はそれぞれの側の少なくとも2、5、10、15、又は15を超える隣接するヌクレオチドもしくはアミノ酸とも結合する。このように、プローブ又はプライマーは、変異又は多型の隣接する5’及び/又は3’配列の全体もしくは一部と完全に又は部分的に相補的であってもよい。該プローブは標識されてもよく、又は間接的に標識され得る。ポリヌクレオチド又は蛋白質へのプローブの結合は、プローブ又はポリヌクレオチドもしくは蛋白質を固定化するのに用いられてもよい。
【0110】
一般に、薬剤が個体のポリヌクレオチドと特異的に結合することを判断することにより、該薬剤が変異又は多型に特異的に結合することを判断し得る。しかしながら、例えば、変異又は多型の位置に隣接するヌクレオチドと結合することによって、該薬剤は対応する野生型配列にも結合し得る。かかる場合において、野生型配列との結合様式は、多型を有するポリヌクレオチド又は蛋白質との結合とは検出可能な程度に異なるであろう。
【0111】
オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイは2つのオリゴヌクレオチドプローブの使用を必要とする。これらのプローブは変異又は多型を有するポリヌクレオチドの隣接した領域に結合し、(結合後に)該2つのプローブは適切なリガーゼ酵素によって共にライゲーションされる。しかしながら、一方のプローブ中にミスマッチが一つでも存在すれば、結合及びライゲーションに支障をきたし得る。このように、プローブのライゲーションは変異又は多型を有するポリヌクレオチドでしか起こらないので、ライゲーション産物を検出することにより、変異又は多型の存在を判断することができる。
【0112】
プローブはヘテロ二本鎖解析に基づく系においても用いることができる。かかる系において、プローブが変異又は多型を有するポリヌクレオチド配列に結合する場合、多型が生じている部位(すなわち、二本鎖構造を形成していない)でプローブがヘテロ二本鎖を形成する。このようなヘテロ二本鎖構造は、一本鎖又は二本鎖に特異的な酵素を用いることにより検出できる。一般に、プローブはRNAプローブであり、ヘテロ二本鎖領域はRNAaseHを用いて切断され、切断産物を検出することにより多型が検出される。
【0113】
変異又は多型は、例えば、PCR Methods and Applications 3, 268-71 (1994) 及びProc. Natl. Acad. Sci. 85, 4397-4401 (1998) に記載の蛍光化学切断ミスマッチ解析を用いても検出できる。
【0114】
あるいは、PCRプライマーが変異又は多型を有するポリヌクレオチドに結合する場合に限り、PCRプライマーがPCR反応の開始に用いられ(すなわち、配列又はアレル特異的PCRシステム)、変異又は多型の存在はPCR産物を検出することにより判断できる。変異又は多型に相補的なプライマー領域は、プライマーの3’末端あるいはその付近であることが好ましい。多型の存在はTaqman PCR detection system 等の蛍光色素及び消光剤に基づくPCR解析を用いて判断され得る。
【0115】
特異的結合剤は、変異又は多型を有する配列によりコードされるアミノ酸配列に特異的に結合し得る。例えば、該結合剤は抗体又は抗体断片であってもよい。検出方法はELISA系に基づいていてもよい。
【0116】
該方法はRFLPに基づく系であってもよい。本方法は、ポリヌクレオチドに多型が存在することによって制限酵素に認識される制限部位が生じるか又は破壊される場合に用いることができる。
【0117】
変異又は多型の存在は、ゲル電気泳動中のポリヌクレオチドの移動度に変異又は多型の存在が及ぼす変化に基づいて判断することができる。ポリヌクレオチドの場合には、一本鎖高次構造多型(SSCP)又は変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DDGE)解析を用いることができる。
【0118】
変異又は多型を検出する他の方法において、多型の存在を判断するために、多型領域を含有するポリヌクレオチドについて、多型を有する領域にわたって配列解析を行う。第2の診断実施形態の方法は、DNAチップ等のアレイを用いて行うことができる。例えば、プローブをDNAチップ上に固定してもよい。
【0119】
本発明の第3の診断実施形態において、該診断方法は、MIP−4ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件下で、CCRL2ペプチドを含有する個体から単離された検体をMIP−4ポリペプチドと接触させることを含む。次いで、CCRL2ポリペプチドの活性が測定される。次に、該CCRL2ポリペプチド活性を標準と比較し、標準と比較した活性の差異がCCRL2関連疾患又は障害が個体に存在することを示す。標準とは、CCRL2関連疾患又は障害に罹患していない個体に相当する測定量をいう。
【0120】
第3の診断実施形態の診断方法は、MIP−4ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件下で、MIP−4ポリペプチドを含有する個体から単離された検体をCCRL2ポリペプチドと接触させることをも含む。次いで、CCRL2ポリペプチドの活性が測定される。次に、該CCRL2ポリペプチド活性を標準と比較し、標準と比較した活性の差異がMIP−4関連疾患又は障害が個体に存在することを示す。標準とは、MIP−4関連疾患又は障害に罹患していない個体に相当する測定量をいう。
【0121】
MIP−4ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件とは、例えば、MIP−4ポリペプチドがCCRL2ポリペプチドに結合するような温度、塩濃度、pH、及び蛋白質濃度である。正確な結合条件は、例えば、解析が生細胞又は細胞の膜画分のみを用いる場合のように、解析の性質によって変化する。しかしながら、CCRL2は細胞表面受容体でありMIP−4ポリペプチドはCCRL2の細胞外ドメインと相互作用する分泌型ポリペプチドであるので、好適な条件は、一般に、生理的塩濃度(約90mM)pH(約7.0〜8.0)である。結合温度は4℃から37℃まで変化し得るが、好ましくは4℃である。MIP−4ポリペプチドの濃度も変化し得るが、好ましくは約0.1pMから約10μMである。
【0122】
全ての診断実施形態の方法は、個体由来の検体に対してin vitroで行う。該検体は、一般に、個体の体液及び/又は細胞を含有し、例えば、針及びシリンジを用いて、又は口腔スワブ等のスワブを用いて得ることができる。該検体は血液、尿、唾液、皮膚、頬細胞、又は毛根検体であってもよい。該検体は、好ましくは、単球を含有する血液検体である。該検体は、一般に、本方法を実施する前に処理される。例えば、DNAの抽出を行ってもよく、細胞を培養してもよく、あるいは細胞から膜画分を調製してもよい。該検体中のポリヌクレオチド又は蛋白質は物理的にあるいは化学的に(例えば、適当な酵素を用いて)切断され得る。ある実施形態においては、変異又は多型の存在を判断する前に、例えば、クローニング又はPCRに基づく方法を使用することにより、検体中のポリヌクレオチドの一部が複製(すなわち、増幅)される。
【0123】
バイオインフォマティクス
【0124】
本発明は、CCRL2関連疾患もしくは障害に関連するMIP−4の変異又は多型の存在を検出する方法、あるいは、MIP−4関連疾患もしくは障害に関連するCCRL2の変異又は多型の存在を検出する方法を提供する。CCRL2関連疾患もしくは障害に関連するMIP−4ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列は、電子的フォーマット(例えばコンピュータデータベース)に保存することができる。MIP−4関連疾患又は障害に関連するCCRL2ポリヌクレオチド又はポリペプチドの配列は、電子的フォーマット(例えばコンピュータデータベース)に保存することができる。該データベースはポリヌクレオチド又はポリペプチドに関するさらなる情報を含むことができる。例えば、該データベースは、次のような種類の情報の態様を一つ以上提供し得る:ポリヌクレオチド又はポリペプチドが疾患又は障害に関連するレベル、障害に罹患した患者におけるポリヌクレオチド又はポリペプチドの頻度、該ポリヌクレオチド又はポリペプチドを有する患者が疾患又は障害を発症する可能性、ポリヌクレオチド又はポリペプチドと治療剤との相互作用。
【0125】
本発明の診断方法は、電子的手段、例えば、コンピュータシステムを用いて実施することができる。したがって、本発明は、CCRL2関連疾患もしくは障害の診断方法又はCCRL2関連疾患もしくは障害に対する個体の感受性を判断する方法を提供する。該方法は、
(i)個体から得た検体からMIP−4配列データを任意選択で得ること、
(ii)該個体からのMIP−4配列データをコンピュータに入力すること、
(iii)該データとコンピュータデータベースに保存されたMIP−4配列データを比較すること(該データベースは、CCRL2関連疾患又は障害に対してMIP−4配列データを関連づける情報を含む)、及び
(iv)上記比較に基づき、該個体におけるCCRL2関連疾患もしくは障害の有無を判断すること、又は、該個体がCCRL2関連疾患もしくは障害に対して感受性を持つか否かを判断すること、
により、該個体が、CCRL2関連疾患又は障害に関連する変異を含むMIP−4ポリヌクレオチド又はポリペプチドを有するか否かを判断することを含む。
【0126】
したがって、本発明は、MIP−4関連疾患もしくは障害の診断方法又はMIP−4関連疾患もしくは障害に対する個体の感受性を判断する方法をも提供する。該方法は、
(i)個体から得た検体からCCRL2配列データを任意選択で得ること、
(ii)該個体からのCCRL2配列データをコンピュータに入力すること、
(iii)該データとコンピュータデータベースに保存されたCCRL2配列データを比較すること(該データベースは、MIP−4関連疾患又は障害に対してCCRL2配列データを関連づける情報を含む)、及び
(iv)上記比較に基づき、該個体におけるMIP−4関連疾患もしくは障害の有無を判断すること、又は、該個体がMIP−4関連疾患もしくは障害に対して感受性を持つか否かを判断すること、
により、該個体が、MIP−4関連疾患又は障害に関連する変異を含むポリヌクレオチド又はポリペプチドを有するか否かを判断することを含む。
【0127】
MIP−4又はCCRL2の配列データは、本明細書で述べるいずれかの適当な手段により上記検体から得ることができる。MIP−4又はCCRL2遺伝子の全部又は一部の配列を得ることができる。当該分野で公知の標準的な配列決定プロトコルを、配列データを得るために用いることができる。
【0128】
MIP−4及び/又はCCRL2遺伝子の多型並びにMIP−4又はCCRL2遺伝子以外の遺伝子の変異又は多型を包含し、CCRL2関連疾患もしくは障害又はMIP−4関連疾患もしくは障害に関連する2以上の変異又は多型に関するデータを含むデータベースに、MIP−4の配列データ又はCCRL2の配列データを保存することができる。
【0129】
本発明は、個体のMIP−4遺伝子及び/又はCCRL2遺伝子中に存在する変異又は多型の存在を基に、CCRL2関連疾患もしくは障害、又はMIP−4関連疾患もしくは障害に対する該個体の感受性を判断する手段を含む装置をも提供する。
【0130】
本発明はさらに、コンピュータシステム上で実行された際に、本発明の診断方法を実行するよう該コンピュータシステムに指示するプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを提供する。コンピュータプログラムが記録されたコンピュータで読み取りが可能な保存媒体、又はコンピュータシステム上で実行された際に本発明の診断方法を実行するよう該コンピュータシステムに指示する搬送波上のプログラムコード手段を含むコンピュータプログラム製品をも提供する。
【0131】
個体
【0132】
上述した全ての治療及び診断の実施形態において、個体とは一般に哺乳動物の個体、例えばペットとして飼育される哺乳動物又は農耕用もしくはスポーツに用いられる哺乳動物である。ある実施形態において、該哺乳動物は、CCRL2関連疾患又は障害を(ヒトが介入せずに)自然に発症している哺乳動物である。該哺乳動物は、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類(マウス、ラット、又はハムスター等)、又は霊長類の動物であってもよい。好ましい実施形態において、該個体はヒト個体である。
【0133】
キット
【0134】
本発明は、CCRL2活性を調節する薬剤を検出するための種々のキットを提供する。これらのキットは、
−(i)MIP−4ポリペプチド及び(ii)CCRL2ポリペプチド又はCCRLポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド
−MIP−4ポリペプチド、及びCCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞、又は
−MIP−4ポリペプチド、及びCCRL2ポリペプチドを含有する細胞膜画分
を含む。
【0135】
該キットはさらに、上記方法のいずれの実施形態をも実行可能にするような一つ以上の他の試薬又は機器を含んでいてもよい。そのような試薬又は機器は、薬剤のCCRL2ポリペプチドへの結合を検出する手段、検出可能な標識(蛍光標識等)、ポリヌクレオチドに作用可能な酵素(一般に、ポリメラーゼ、制限酵素、リガーゼ、RNAseH、又は標識をポリヌクレオチドに結合させることができる酵素)、酵素試薬のための適当な緩衝液(水溶液)、PCRプライマー、陽性及び/又は陰性対照、ゲル電気泳動装置、検体からDNAを単離する手段、個体から検体を得る手段(針を備える装置等)、又は検出反応を行い得るウェルを備える支持体、のうち一つ以上を含む。
【0136】
酵母細胞
【0137】
本発明はさらに、CCRL2ポリヌクレオチドによって形質転換(又はトランスフェクト)された酵母細胞の、本発明の方法における使用を提供する。酵母細胞を形質転換(又はトランスフェクト)する方法は当該分野では周知である(Davey et al., Pheromone Procedures in Fission yeast, 1995, In: Microbial Gene Techniques: Methods in Molecular Genetics 6B. Adloph, K.W. San Diego: Academic Press: 247-263 及び Ladds et al., Molecular Microbiology, 2003; 47(3), 781-792)。
【0138】
該CCRL2ポリヌクレオチドは、配列番号1又は3の配列、あるいは、配列番号1又は3と全長にわたって少なくとも90%もしくは95%同一な配列を含むことが好ましい。CCRL2ポリペプチドは、酢酸リチウム、電気穿孔法、又はスフェロプラスト形質転換により細胞に導入することができる(Davey et al., Pheromone procedures in Fission yeast, 1995, In: Microbial Gene Techniques: Methods in Molecular Genetics 6B. Adloph, K.W. San Diego: Academic Press: 247-263 及び Ladds et al., Molecular Microbiology, 2003; 47(3), 781-792)。CCRL2ポリヌクレオチドは組換えベクターに組み込むこともできる。ベクター中のCCRL2ポリヌクレオチドを、宿主酵母細胞によるコード配列の発現を可能とする制御配列と作動可能に連結させることが好ましい。すなわち、該ベクターは発現ベクターである。当該発現ベクターはCCRL2ポリペプチド発現させるために用いることができる。
【0139】
「作動可能に連結させる」とは、上記構成要素のそれぞれが意図する様式で機能するような関連性をもって並置されることをいう。コード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、該コード配列の発現が該制御配列に適合した条件下で達成されるようにライゲーションされる。同一の又は異なったCCRL2ポリヌクレオチドの複数のコピーを該ベクター中に導入することができる。
【0140】
当該ベクターは、CCRL2ポリペプチドを発現させるために適当な宿主酵母細胞に形質転換される。このように、ポリペプチドを発現させる条件下で上記発現ベクターを用いて形質転換又はトランスフェクトした宿主酵母細胞を培養した後、発現したポリペプチドを回収することにより、CCRL2ポリペプチドを得ることができる。より好ましくは、当該宿主細胞は本発明のスクリーニング方法に用いることができる。
【0141】
酵母細胞にCCRL2ポリペプチドを発現させるのに、任意の適当なベクターを用いることができる。該ベクターは、例えば、複製起点、必要に応じて該ポリヌクレオチドを発現させるためのプロモーター、及び必要に応じて該プロモーターの制御因子を有するプラスミドベクターであってもよい。該ベクターは一つ以上の選択マーカー遺伝子、例えば、URA3、HIS3、LEU2、TRP1、LYS2、又はテトラサイクリン耐性遺伝子を含んでいてもよい。プロモーター及び他の発現調節シグナルは、発現ベクターが設計される宿主細胞に適合するように選択することができる。単一の発現ベクター中に同一の又は異なる複数コピーのCCRL2ポリヌクレオチド、あるいは、同一の又は異なっていてもよいCCRL2ポリヌクレオチドをそれぞれ有する1を超える発現ベクターによって、宿主細胞を形質転換することができる。
【0142】
該プロモーター配列は酵母細胞由来のプロモーター配列が好ましく、特にサッカロミセス・セレビシエ又はシゾサッカロミセス・ポンベがあげられる。酵母細胞でCCRL2ポリヌクレオチドを発現させるのに適当なプロモーターとして、GAL、GAL10、PHO5、ADH1、PGK、及びGPDI(Schneider and Guarente, Methods Enzymol., 1991; 194: 373-388)、並びにチアミン抑制性nmt-1プロモーター(Ladds et al., Molecular Microbiology, 2003; 47(3), 781-792)があげられる。酵母細胞でCCRL2ポリヌクレオチドを発現させるのに適当な発現ベクターとして、pBM150、pYEp51、pLGSD5、YEp51、pAM82、pYE4、pAAh5、pMA56、pAH9/10/21、pMA230、pMA91、及びpG-1/2があげられる(Schneider and Guarente, Methods Enzymol., 1991; 194: 373-388)。該プロモーター又はベクターは、形質転換される宿主酵母細胞に適合するよう選択する。
【0143】
好ましくは、該酵母はサッカロミセス・セレビシエ又はシゾサッカロミセス・ポンベである。
【0144】
一つの実施形態において、該酵母細胞は、酵母Gαサブユニットの少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、又は少なくとも20のカルボキシ末端アミノ酸が酵母以外(好ましくは、ヒトである)のG蛋白質由来の対応する残基で置換されているG蛋白質移植株であってもよい。C末端の5アミノ酸を、ヒトG蛋白質の対応する残基で置換するのが好ましい。該ヒトG蛋白質は、酵母細胞でCCRL2ポリペプチドを発現させると、移植されたG蛋白質と機能的に会合できるように、CCRL2ポリペプチドが自然に相互作用するG蛋白質に対応するのが好ましい。機能的な会合によって、CCRL2ポリペプチドが酵母細胞のシグナル伝達機構を活性化することができる。酵母細胞の機構により活性化されるプロモーターの支配下にあるレポーター遺伝子を酵母細胞に導入してもよい。次いで、レポーター遺伝子の発現をCCRL2活性のモニタリングに用いることができる。適当なレポーター遺伝子として、LacZ及びGFPがあげられる。該レポーター遺伝子は酵母細胞の染色体に組み込まれていてもよい。該酵母細胞はsxa2>lacZレポーター株から得ることができる(Didmon et al., Curr. Genet., 2002; 41: 241-253及びLadds et al., Molecular Microbiology, 2003; 47(3), 781-792)。
【0145】
本発明のG蛋白質移植酵母細胞は本発明のスクリーニング方法に用いることができる。適当な非酵母G蛋白質として、Gpa1、Gs、Gi、Go、Gq、Gz、G12、G13、G14、及びG16があげられる。該G蛋白質として好ましくはGiであり、より好ましくはGi3である。
【0146】
該G蛋白質移植細胞はLadds et al., Molecular Microbiology, 2003; 47(3), 781-792 に記載の通りに作製することができる。
【0147】
したがって、本発明により提供される酵母細胞は、CCRL2ポリペプチド、Gi3蛋白質、及び必要に応じてレポーター構築物を有することが好ましい。該CCRL2ポリペプチドは配列番号2又は4に示される配列を有することが好ましい。該Gi3蛋白質は、ヒトGi3由来のカルボキシ末端の5残基を、対応するカルボキシ末端の5残基を欠失させた酵母G蛋白質に融合させたものが好ましい。
【0148】
投与又は送達
【0149】
治療のために投与が行われる場合、投与は予防又は治療目的であり得る。予防的に提供される場合、薬剤又はポリペプチド、ポリヌクレオチド又は抗体は、あらゆる症状に先立って提供される。個体は、炎症性疾患又は障害の遺伝的素因を有すると特定されていてもよい。例えば、該炎症性疾患もしくは障害が、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、又は炎症性脳障害等のCCRL2関連疾患又は障害である場合、該個体はCCRL2遺伝子中に該疾患又は障害に関連する多型を有する可能性がある。薬剤又はポリペプチド、ポリヌクレオチド又は抗体の予防的な投与は、あらゆるその後の症状を予防もしくは軽減するのに役立つ。治療的に提供される場合、薬剤又はポリペプチド、ポリヌクレオチド又は抗体は、症状の発症時もしくは発症後に提供され、好ましくは発症してすぐ後に提供される。薬剤又はポリペプチド、ポリヌクレオチド又は抗体の治療的な投与は、あらゆる実際の症状を軽減するのに役立つ。投与ひいては本発明の方法はin vivo又はin vitroで行うことができる。
【0150】
ポリペプチド、ポリヌクレオチド及び抗体を含む、ここで述べられた全ての治療薬剤の製剤は、該薬剤及び治療すべき状態の性質等の要素に依存するであろう。すべての当該薬剤は多様な剤形で投与又は送達することができる。該薬剤は、経口(例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁剤、分散性散剤、又は顆粒剤として)、非経口
、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、経皮的、又は輸液もしくは吸入技術により、投与もしくは送達することができる。該薬剤は、坐剤として投与又は送達することもできる。医師は各々の特定の患者に応じて必要な投与経路又は送達経路を決定することができる。
【0151】
一般に、該薬剤は薬学的に許容される担体又は希釈剤とともに、使用のため製剤化される。該薬理的に許容される担体又は希釈剤は、例えば、等張液である。例えば、活性化合物とともに、固形状経口製剤は、希釈剤(例;ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチ、又はポテトスターチ)、潤滑剤(例;シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムもしくはステアリン酸カルシウム、及び/又はポリエチレングリコール)、結合剤(例;デンプン、アラビアゴム、ゲラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルピロリドン)、脱凝集剤(例;デンプン、アルギン酸、アルギン酸塩、又はデンプングリコール酸ナトリウム)、発泡性混合物、染料、甘味料、湿潤剤(レシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩等)、及び一般に医薬製剤に用いられる非毒性かつ薬理的に不活性な物質を含むことができる。そのような医薬製剤は、例えば、混合、造粒、打錠、糖衣コーティング、又はフィルムコーティング法といった、公知の方法により作製することができる。
【0152】
経口投与用液状分散剤は、シロップ、エマルジョン、及びサスペンジョンであってもよい。該シロップは担体として、例えば、サッカロース、あるいはサッカロースとグリセリン及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールを含んでいてもよい。
【0153】
サスペンジョン及びエマルションは担体として、例えば、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、又はポリビニルアルコールを含んでいてもよい。筋肉内注射用のサスペンジョン又は溶液は、活性化合物とともに、薬学的に許容される担体(例;滅菌水、オリーブオイル、オレイン酸エチル、グリコール(例えば、プロピレングリコール))、及び必要であれば適当量のリドカイン塩酸塩を含むことができる。
【0154】
静脈内投与用又は輸液用の溶液は担体として、例えば、滅菌水を含んでいてもよく、滅菌された水性等張生理食塩水溶液の形態にすることが好ましい。
【0155】
治療上有効な量の薬剤が投与される。治療上有効な量の薬剤とは、症状を軽減する量、あるいは炎症性疾患もしくは障害の症状発症を予防又は遅延させる量をいう。
【0156】
投与量は種々の要因、特に使用される物質、治療を受ける患者の年齢、体重及び状態、投与経路、並びに要求された処方に従って決定することができる。この場合においても、医師は各々の特定の患者に応じて必要な投与経路又は投与量を決定することができる。一般的な一日の投与量は、特異的阻害剤の活性、治療を受ける被検体の年齢、体重及び状態、疾患の種類及び重度、並びに投与の頻度及び経路に応じて、約0.1から50mg/kgであり、好ましくは体重に対して約0.1mg/kgから10mg/kgである。一日の投与量のレベルとして、好ましくは、5mgから2gである。
【0157】
本発明は以下の非限定的な実施例を参照して説明される。
【実施例1】
【0158】
CCRL2シグナル伝達解析
【0159】
酵母菌株
【0160】
酵母菌株はLadds et al., Molecular Microbiology, 2003; 47(3), 781-792の記載に従って作製した。
【0161】
酵母解析
【0162】
全ての解析は、Septegenの標準プロトコル(Ladds et al., Molecular Microbiology, 2003; 47(3), 781-792)に従って行った。LacZ活性を解析する前に、酵母菌株をリガンドと共に16時間インキュベートした。
【0163】
MIP−4存在下におけるCCRL2活性
【0164】
MIP−4はR&D Systemsより入手し、使用するまで‐20℃で保存した。MIP−4を0.1%BSAを含む増殖培地に溶解し、11.1μMのストック溶液(最終容量577μl中、ケモカイン50μg)を準備した。G蛋白質移植株の最初のスクリーニングのため、11.1μMストックのうち210μlを最終容量2.1mlになるよう希釈し、作業濃度である1.11μMとした。
【0165】
それぞれのG移植株に対して、1.11μM溶液のうち180μlを20μlの細胞に加えた。最終解析容量は200μlであり、MIP−4の最終濃度は1μMであった。Gi3移植株において、MIP-4はshort型のCCRL2(CRAM-B)を活性化した(図1)。
【0166】
全てのG移植株に対する最初のスクリーニングを基にして、MIP−4を種々の濃度で用いて、Gi3移植株に対して解析を行った。11.1μMストック(30μlに270μlを加えた)から10倍希釈系列を作製した。それぞれの検体について、180μlの適切に希釈されたストックを20μlの細胞に加えた(最終濃度、10μM、1μM等)。Gi3移植細胞の応答は、MIP−4濃度の増加に伴って指数関数的に増加した(図2)。
【0167】
対照実験
【0168】
種々のケモカインについて報告されている応答がCCRL2受容体に依存することを確認するため、全ての3種のケモカインについて、コルチコトロピン放出因子受容体(CRFR)を発現している適当な酵母菌株に対して解析を行った。この菌株は、ペプチド作動薬を有しており、Gq、Gi2、及びGi3移植株と相互作用し、該相互作用はリガンドの性質によることから、対照菌株として選択した。MIP−4はGi3移植株においてshort型CCRL2(CRAM−B)に対して活性を有していた(10−6Mで約6.5 LacZユニット)(図3)。単球走化性蛋白質−1(MCP−1)はGq移植株においてshort型CCRL2(CRAM-B)に対して活性を有していた(10−6Mで約5.7 LacZユニット)(図3)。単球走化性蛋白質−3(MCP−3)はGi2移植株においてshort型CCRL2(CRAM-B)に対して活性を有していた(10−6Mで約2.2 LacZユニット)(図3)。
【0169】
コルチコトロピン放出因子(CRF)はCRF-R1に対して活性を有しており、Gi2移植株では10−6Mで約6.4 LacZユニット、Gi3移植株においては10−6Mで約17.2 LacZユニットであった(図3)。ウロコルチンはGq移植株においてCRF-R1に対して活性を有していた(10−6Mで約6.9 LacZユニット)。
【実施例2】
【0170】
CCRL2走化性解析
【0171】
走化性解析
【0172】
8μm孔径の96ウェル ChemoTx plate(Neuroprobe)を10μg/mlのフィブロネクチンで前もってコーティングした。トランスフェクトした細胞を5μg/mlのカルセイン(Molecular Probes)を用いて30分間、37℃で蛍光標識した。3×106cells/ml密度の25μl細胞溶液をChemoTx plateの上方チャンバーに、適当な培地に調製した試験検体(29μl)を下方チャンバーに加えた。37℃で5時間培養した後、フィルターの上面に残存している細胞は全てEDTA処理により除去し、フィルターの下面及びウェル中に移動した細胞を蛍光プレートリーダー(Perkin Elmer)により定量した。結果を図6に示す。
【0173】
MIP−4は、short型のCCRL2(CRAM−B)をトランスフェクトした細胞の走化性を刺激した。MIP−4は、short型のCCRL2(CRAM−B)をトランスフェクトしていない細胞には何ら影響を及ぼさなかった。
【0174】
酵母解析においてshort型のCCRL2を活性化したMCP−1及びMCP−3は、走化性解析においても活性を示した。酵母解析においてCCRL2の活性化を示さなかった対照ケモカインRANTESは、CCRL2がトランスフェクトされた細胞の走化性を誘導しなかった。10nMのMIP−4及びMCP−3の双方ともに、未処理細胞よりも約35%多い細胞が膜を通過し、同様の走化性活性を誘導した。該細胞は10nMのMCP−1の存在下では弱い走化性応答しか示さなかった。
【実施例3】
【0175】
抗CCRL2抗体によるMIP−4誘導性単球走化性の阻害
【0176】
単球の単離及び培養
【0177】
ヒト単球は間接標識法(Monocyte Isolation kitII, Miltenyi Biotech)を用いて軟膜から精製し(>85%)、10%FCSを加えたRPMI1640で5日間培養した。
【0178】
走化性解析
【0179】
96-well chemotaxis chambers(HTS Fluroblok(商標), BD Falcon)を用いて、培養した単球の走化性能力について検証した。培養した単球を5ng/mlのカルセインAM(Molecular Probes)を用いて37℃で30分間、前もって標識し、PBSで洗浄した後、3×104個の細胞(6×105 cells/ml)を上方チャンバーに加えた。10nMの試験ケモカイン(R&D Systems)を下方チャンバーに加え、走化性プレートを室温で10分間培養した後、Victor2 fluorometer(Perkin Elmer)を用いてデータを収集した。全ての検体について3回行った。
【0180】
抗CCRL2抗体を用いての走化性阻害
【0181】
抗CCRL2抗体はR&D Systemsから得た。抗体による阻害実験を行うために、カルセインAMで標識された単球を、種々の濃度の抗CCRL2抗体とともに室温で30分間前もって培養した。走化性プレートに加える前に、未結合の抗体はPBSで洗浄することにより除去した。走化性は上述のように行った。結果を図7に示す。
【0182】
抗CCRL2抗体により培養単球を前処理した効果によって、これらの処理を受けた細胞のMIP−4誘導性走化性は約75%減少することが示される。対照として、MIP−4を通じてシグナル伝達を行わないケモカイン受容体に対する抗体を用いて細胞を前処理したところ、走化性に対して何の効果も示さなかった(図示なし)。
【0183】
本データにより、抗CCRL2抗体には培養単球に対するMIP−4の走化性効果を減少させる能力があることがわかる。これにより、MIP−4が初代ヒト免疫細胞においてCCRL2のリガンドであることが裏付けられる。
【実施例4】
【0184】
抗CCRL2抗体による滑液誘導性単球走化性の阻害
【0185】
単球を上述したように培養及び単離した。また同様に上述したように、抗CCRL2抗体により処理された単球又は未処理の単球を用いて走化性プレートを準備した。滑液を関節吸引によって抽出し、細胞及び残骸を除去するために遠心した後、等分し、必要となるまで冷凍した。滑液の希釈液をプレートの下方チャンバーに加え、上述のように解析した。
【0186】
その結果(図8に示す)、抗CCRL2抗体を用いて培養単球を前処理することにより、希釈した(1/100)関節リウマチ(RA)滑液により誘導される走化性を阻害できることが示される。試験した中で最も高い濃度の抗体(250μg/ml)は単球の走化性を約50%減少させた。これにより、CCRL2の拮抗薬は関節リウマチ及び他の炎症性障害等の炎症部位への免疫細胞の走化性を減少させられることが示される。
【実施例5】
【0187】
抗MIP−4抗体によるRA滑液誘導性単球走化性の阻害
【0188】
RA滑液(RASF)からMIP−4を、抗MIP−4でコーティングしたプレート全体に希釈したRASF(SF3 1:100)をパニングする方法により、枯渇させた。プレートに結合させた抗MIP−4抗体はR&D Systems(Cat No. MAB394)から購入した。そして、これらの枯渇させた検体を、この枯渇が培養単球のRASF誘導性走化性に及ぼす影響を検証するために使用した。
【0189】
単球の培養、単離及び走化性は上述の通りに行った。
【0190】
MIP−4を除去する本処理はMIP−4を完全に枯渇させなかった。しかしながら、MIP−4レベルの減少に伴って走化性は減少した(枯渇SF3 1:100)。希釈RASF中のMIP−4レベルを97%減少させることで(5ng/mlから170pg/mlまで低下)、単球の走化性が約30%減少した。これは以下の図9に示されている。
【0191】
枯渇させた後のRASF中に残存したMIP−4レベル(170pg/ml)は依然として走化性応答を惹起した。これは図9に示され、PBS中の250pg/mlのrMIP−4が依然として単球の走化性を0.5倍上昇させることを示す。
【0192】
本データにより、MIP−4がRA滑液中で見出される単球走化性を誘導する主要な介在物質であることが示される。したがって、MIP−4に特異的な抗体は、(RAの場合は単球/マクロファージ及び好中球の双方ともに)浸潤免疫細胞の数を減少させることにより、関節リウマチ及び他の炎症性障害において有用であり、疾患の症状を軽減させる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】図1は、MIP−4存在下及び非存在下におけるG蛋白質移植酵母細胞のLacZ活性を示す。LacZ活性は細胞数106個あたりの値で表される。
【図2】図2は、種々の濃度のMIP−4におけるGi3移植酵母細胞のLacZ活性を示す。LacZ活性は細胞数106個あたりの値で表される。
【図3】図3は、コルチコトロピン放出因子受容体(CRFR)を発現したG蛋白質移植酵母細胞のLacZ活性を示す。LacZ活性は細胞数106個あたりの値で表される。
【図4】図4は、コンピュータにより実行される、個体のCCRL2関連疾患又は障害の診断方法の工程を説明した流れ図を示す。
【図5】図5は、コンピュータにより実行される、個体のMIP−4関連疾患又は障害の診断方法の工程を説明した流れ図を示す。
【図6】図6は、種々のケモカインの存在下、CCRL2をトランスフェクトしたCHO細胞の走化性を示した棒グラフである。
【図7】図7は、MIP−4により誘導された走化性に対する、100μg/mlおよび500μg/mlの抗CCRL2抗体による阻害効果を示した棒グラフである。
【図8】図8は、RA滑液により誘導された走化性に対する、抗CCRL2抗体による阻害効果を示した棒グラフである。
【図9】図9は、250μg/ml MIP−4、RA滑液(SF3 1:100)、及びMIP−4を枯渇させたRA滑液(枯渇SF3 1:100)に応答して観察された走化性の上昇を、対照との比較において示した棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CCRL2の活性を調節する薬剤を検出する方法であって、該方法は、
(a)試験薬剤の非存在下でマクロファージ炎症性蛋白質−4(MIP−4)ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件下で、候補薬剤の存在下で該CCRL2ポリペプチドをMIP−4ポリペプチドに接触させる工程、及び
(b)該候補薬剤が前記CCRL2ポリペプチドと前記MIP−4ポリペプチドとの間の相互作用を調節し得るか否かを判断する工程、
を含む、方法。
【請求項2】
MIP−4ポリペプチドが、
(a)配列番号6に示される配列、又は
(b)配列番号6と少なくとも50%同一であり、かつ、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列、
又は、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列番号6の断片、
を含むポリペプチドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
CCRL2ポリペプチドが、
(a)配列番号2又は4に示される配列、
(b)配列番号2又は4と全長にわたって少なくとも80%同一な配列であり、かつ、CCRL2と機能的に同等な配列、
(c)CCRL2と機能的に同等である配列番号2又は4の断片、
を含むポリペプチドである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
候補薬剤が、ポリペプチド、抗体もしくはその抗原結合断片、脂質、炭水化物、核酸、又は化合物である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(b)が、CCRL2ペプチドのMIP−4ポリペプチドへの結合をモニタリングすることを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
CCRL2ポリペプチドのMIP−4ポリペプチドへの結合を、ラベル置換法、表面プラズモン共鳴法、蛍光共鳴エネルギー転移、蛍光消失法、又は蛍光偏光法を使用してモニタリングする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
MIP−4ポリペプチドが検出可能なように標識されている、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
放射性同位体、フルオロフォア、蛍光消光剤、酵素、アフィニティータグ、又はエピトープタグである部分を用いて、MIP−4ポリペプチドが検出可能なように標識されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)が、CCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性をモニタリングすることを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
グアノシンヌクレオチド結合、GTPase活性、アデニル酸シクラーゼ活性、サイクリックアデノシン一リン酸(cAMP)、プロテインキナーゼC活性、ホスファチジルイノシトール分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、MAPキナーゼ活性、又はレポーター遺伝子の発現を測定することでシグナル活性がモニタリングされる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Gi3活性を測定することでシグナル伝達活性がモニタリングされる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(b)が、CCRL2ポリペプチドの走化性活性をモニタリングすることを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
CCRL2ポリペプチドが細胞上に発現される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
細胞が酵母細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酵母細胞が、酵母Gサブユニットの少なくとも5つのカルボキシ末端アミノ酸が非酵母G蛋白質由来の対応する残基により置換されたG蛋白質を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
非酵母G蛋白質がGi3である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
CCRL2ポリペプチドが、
(a)合成リポソームの中もしくは表面、
(b)ウイルス誘導性出芽膜の中もしくは表面、
(c)人工脂質二重層の中もしくは表面、又は
(c)CCRL2ポリペプチドを発現する細胞由来の膜画分中、
に存在する、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載の方法により検出される薬剤。
【請求項19】
MIP−4に特異的な抗体であって、MIP−4のCCRL2への結合を阻害し得る抗体。
【請求項20】
CCRL2に特異的な抗体であって、CCRL2のMIP−4への結合を阻害し得る抗体。
【請求項21】
細胞中のCCRL2ポリペプチドの活性を調節する方法であって、CCRL2の活性が調節されるように、請求項18に記載の薬剤又は請求項19もしくは20に記載の抗体を細胞に送達する工程を含む方法。
【請求項22】
細胞がin vitroである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項18に記載の薬剤又は請求項19もしくは20に記載の抗体及び薬学的に許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項24】
炎症性疾患もしくは障害、マクロファージ活性亢進関連疾患もしくは障害、又は感染症を治療する方法であって、治療上有効な量の請求項18に記載の薬剤、請求項19もしくは20に記載の抗体、又は請求項23に記載の医薬組成物を、治療を必要とする個体に投与する工程を含む方法。
【請求項25】
炎症性疾患もしくは障害が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、肺気腫、炎症性骨障害、乾癬、炎症性腸疾患、炎症性脳障害、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、自己免疫不全症候群(AIDS)、紅斑性狼瘡、同種移植拒絶反応、関節リウマチ、もしくはアレルギー性炎症であるか、又はマクロファージ活性亢進関連疾患もしくは障害が、肥満、肥満関連性インスリン抵抗性、自己免疫疾患、接触過敏症、もしくは癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
療法によりヒト又は動物の身体を治療する方法において使用するための、請求項18に記載の薬剤、請求項19もしくは20に記載の抗体、又は請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項27】
炎症性疾患もしくは障害、マクロファージ活性亢進関連疾患もしくは障害、又は感染症を治療するための医薬の製造における、請求項18に記載の薬剤又は請求項19もしくは20に記載の抗体の使用。
【請求項28】
炎症性疾患もしくは障害が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、肺気腫、炎症性骨障害、乾癬、炎症性腸疾患、炎症性脳障害、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、自己免疫不全症候群(AIDS)、紅斑性狼瘡、同種移植拒絶反応、関節リウマチ、もしくはアレルギー性炎症であり、マクロファージ活性亢進関連疾患もしくは障害が、肥満、肥満関連性インスリン抵抗性、自己免疫疾患、接触過敏症、もしくは癌である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
細胞内のCCRL2シグナル伝達経路を活性化させる方法であって、該方法は、
(a)配列番号6に示されるMIP−4配列、又は
(b)配列番号6と少なくとも50%同一であり、かつ、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列、又は
(c)CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列番号6の断片、
を含むポリペプチドを、細胞に送達することを含む、方法。
【請求項30】
細胞がin vitroである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
(a)配列番号6に示されるMIP−4配列、又は
(b)配列番号6と少なくとも50%同一であり、かつ、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列、又は
(c)CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列番号6の断片、
を含むポリペプチド、
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいは
前記ポリペプチドに結合する抗体の、
CCRL2関連疾患又は障害を治療するための医薬の製造のための、使用。
【請求項32】
CCRL2関連疾患又は障害が、炎症性腸疾患、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、又は炎症性脳障害である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
(a)配列番号2又は4に示されるCCRL2配列、
(b)配列番号2又は4と全長にわたって少なくとも80%同一な配列であり、かつ、CCRL2と機能的に同等な配列、又は
(c)CCRL2と機能的に同等である配列番号2又は4の断片、
を含むポリペプチド、
前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、あるいは
前記ポリペプチドに結合する抗体の、
MIP−4関連疾患又は障害を治療するための医薬の製造のための、使用。
【請求項34】
MIP−4関連疾患又は障害が、アレルギー性炎症、又は癌である、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の診断方法であって、該方法は、
(a)MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的なプライマーを用いて、該個体から単離された検体に対して増幅反応を行う工程、及び
(b)該検体中におけるMIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの有無を判断し、それにより該個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の存在を判断する工程、
を含む、方法。
【請求項36】
工程(a)において産生されたMIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの増幅量を標準と比較する工程をさらに含む請求項35に記載の方法であって、標準と比較した量の差異が該個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の存在を示す方法。
【請求項37】
個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の診断方法であって、該方法は、
(a)該個体から単離した核酸を鋳型として用いて、MIP−4ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを増幅する工程、及び
(b)該ポリヌクレオチドがCCRL2関連疾患又は障害に関連する多型を含むか否かを判断する工程、
を含む、方法。
【請求項38】
工程(b)が、
(a)該個体由来のMIP−4配列データをコンピュータシステムに入力する工程、
(b)前記配列データを、MIP−4配列データとCCRL2関連疾患又は障害とを関連づける情報を含むコンピュータデータベースと比較する工程、及び
(c)前記比較に基づき、該MIP−4ポリヌクレオチドがCCRL2関連疾患又は障害に関連する多型を含むか否かを判断する工程、
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の診断方法であって、該方法は、
(a)MIP−4ポリペプチドのCCRL2ポリペプチドへの結合を許容する条件下で、該個体から単離されたCCRL2ポリペプチドを含む検体をMIP−4ポリペプチドに接触させる工程、
(b)CCRL2ポリペプチドの活性を測定する工程、及び
(c)CCRL2ポリペプチドの活性を標準と比較する工程を含む方法であって、標準と比較した活性の差異が該個体におけるCCRL2関連疾患又は障害の存在を示す、方法。
【請求項40】
工程(b)が、
(i)CCRL2ポリペプチドのシグナル伝達活性、又は
(ii)CCRL2ポリペプチドの走化性活性、
をモニタリングすることを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
MIP−4ポリペプチドが、
(a)配列番号6に示される配列、又は
(b)配列番号6と少なくとも50%同一であり、かつ、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列、又は
(c)CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列番号6の断片、
を含むポリペプチドである、請求項35〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
CCRL2関連疾患又は障害が、炎症性腸疾患、子宮内膜症、アテローム性動脈硬化症、又は炎症性脳障害である、請求項35〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
CCRL2の活性を調節する薬剤を検出するためのキットであって、該キットは、(i)MIP−4ポリペプチド、及び(ii)CCRL2ポリペプチド又はCCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、キット。
【請求項44】
CCRL2ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにより形質転換された細胞を含む、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
CCRL2ポリペプチドが、細胞膜画分、合成リポソーム、又はウイルス誘導性出芽膜
の中に存在する、請求項43に記載のキット。
【請求項46】
MIP−4ポリペプチドが、
(a)配列番号6に示される配列、又は
(b)配列番号6と少なくとも50%同一であり、かつ、CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列、又は
(c)CCRL2に結合してCCRL2のシグナル伝達活性を活性化させる配列番号6の断片、
を含むポリペプチドである、請求項43〜45のいずれかに記載のキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2007−520210(P2007−520210A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542005(P2006−542005)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005057
【国際公開番号】WO2005/057220
【国際公開日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(506186514)
【Fターム(参考)】