説明

CD5+B細胞リンパ腫の治療方法

本発明は、細胞を免疫応答変更因子と接触させることにより、CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面分子の発現を増加する方法を提供する。本発明はまた、免疫応答変更因子化合物を、このような治療を必要としている対象に投与することにより、慢性リンパ球性白血病および小リンパ球性リンパ腫を含む、CD5+B細胞リンパ腫の治療方法も提供する。適当な免疫応答変更因子化合物は、TLR7および/またはTLR8の作用物質を包含する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
末梢B細胞新生物慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫は、最も一般的なリンパ性白血病の代表である。名前が示すように、提示は、白血病またはリンパ腫のいずれもあり得る。しかし、この新生物の2つの提示である、慢性リンパ球性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)は、形態学的に、表現型的に、また遺伝子型的に区別がつかず、末梢血リンパ球増加症の程度が異なるに過ぎない。
【0002】
CLLは、西洋世界における成人の最も一般的な白血病である。CLLの場合、末梢血は、細胞質の乏しい、小さい円形のリンパ球を含む。CLLの全例およびSLLのほとんどの症例で、骨髄の関与が認められ、間質性浸潤または小リンパ球凝集の形をとる。CLLおよびSLLにおける腫瘍細胞は、pan B細胞マーカーCD29およびCD20を発現する。加えて、CD5(正常なB細胞の小さいサブセット上のみに発現されるT細胞マーカー)は、腫瘍細胞上に存在する。CLL細胞の免疫表現型は独特である。CLL細胞は、Bリンパ球系マーカーCD19およびTリンパ球マーカーCD5を共発現する。CLL細胞はまた、特徴的なレベルの免疫グロブリン受容体発現も示す。腫瘍細胞は一般的に、κ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかが付いた、Ig重鎖の低レベルの表面発現も有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
CLLは、Bリンパ球のクローン性悪性病変である。該疾患は、通常は無痛性であり、免疫不全で抗原刺激に十分に反応しない長寿小リンパ球の緩徐進行性蓄積を伴う。CLLは、従来の細胞障害性化学療法では治癒しない(チェソン(Cheson)ら、Blood 1996年;87:4990〜4997;およびキーティング(Keating)ら、Blood 1993年;81:2878〜2884)。CLLの特徴は、孤立性リンパ球増加症である。白血球数は、通常は20,000/μLより多く、数十万まで著しく上昇していることもある。CLLの診断要件は、4000/mm3より多い絶対リンパ球数である。CLLは、免疫抑制、骨髄不全、およびリンパ球の器官浸潤を臨床的に呈する。免疫不全は、異常B細胞による抗体産生不足にも関連がある。進行疾患を有する場合、CLLは、直接組織浸潤による損傷を引き起こす可能性がある。
【0004】
場合により、患者は、皮膚リンパ腫沈着(皮膚上の紅斑性病変)を示すことがある。該病変は、小さい、円形B細胞の、非定型リンパ性皮膚浸潤を含むことがある。
【0005】
ある種の小分子免疫応答変更因子(IRM)は、CD5+B細胞リンパ腫細胞の表面上の分子の発現を増加するのに有用なこともあることが分かっている。したがって、ある種のIRMを使用して、CD5+B細胞リンパ腫、たとえば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫、または絨毛リンパ球を伴う脾リンパ腫等を治療することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、CD5+B細胞リンパ腫を治療する方法を提供する。概して、本方法は、CD5+B細胞リンパ腫の少なくとも1つの症状または臨床徴候を寛解させるのに有効な量でIRM化合物を対象に投与することを含む。幾つかの実施形態において、該IRM化合物を投与することにより、末梢血リンパ球、リンパ節腫脹、または脾腫を少なくとも2ヶ月間、少なくとも50%減少させることが可能である。他の実施形態では、IRM化合物を投与することにより、進行性疾患の発生を阻害するかまたは防止することさえでき、ここで進行性疾患は、循環リンパ球の少なくとも50%の増加、またはより活動的な組織像への進行である。さらに他の実施形態では、IRM化合物を投与することにより、CD5+B細胞リンパ腫に随伴する結節性の、紅斑性病変を消散することができる。
【0007】
別の態様において、本発明は、CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加する方法を提供する。概して、本方法は、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、該CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加するのに有効な少なくとも1つのIRMと接触させることを含む。幾つかの実施形態では、該細胞表面分子は、共刺激分子であってもよい。
【0008】
別の態様において、本発明はまた、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、IRMに接触させていないCD5+B細胞リンパ腫細胞により産生されるレベルより高いサイトカインの産生を誘導するのに有効なIRMと接触させることによってサイトカインを産生するために、CD5+B細胞リンパ腫細胞を刺激する方法も提供する。幾つかの実施形態では、該サイトカインは、IL−1β、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、TNF−α、GM−CSF、またはそれらの組合せであってもよい。
【0009】
別の態様において、本発明は、CD5+B細胞リンパ腫特異的細胞障害性T細胞の増殖を増進する方法を提供する。概して、本方法は、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、CD5+B細胞リンパ腫細胞の表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMと接触させ、次いでCD8+T細胞を該CD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させ、それによってCD8+T細胞を活性化することを含み;ここで、該活性化されるT細胞は、CD5+B細胞リンパ腫特異的細胞障害性T細胞であり、また、IRMに接触させていなかったCD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させたT細胞と比較して高い増殖を示す。
【0010】
幾つかの実施形態では、該CD8+T細胞は、CD5+B細胞リンパ腫細胞特異的である。他の実施形態では、該CD8+T細胞は、未処理である。
【0011】
幾つかの実施形態では、該活性化CD5+B細胞リンパ腫特異的細胞障害性T細胞が、自己CD5+B細胞リンパ腫特異的細胞障害性T細胞であるように、該IRM化合物を、CD5+B細胞リンパ腫であると診断された対象に投与することも可能である。
【0012】
幾つかの実施形態では、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を、1つ以上のさらなる免疫調節剤、たとえば、IL−2および/またはプロテインキナーゼC作用物質等と、さらに接触させてもよい。
【0013】
別の態様において、本発明はまた、細胞障害性T細胞によるCD5+B細胞リンパ腫細胞の死滅を増進する方法も提供する。概して、本方法は、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、CD5+リンパ腫細胞の細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMと接触させ、次いでCD8+T細胞を該CD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させ、それによって該CD8+T細胞を活性化することを含み;ここで、該活性化されるCD8+T細胞は、CD5+B細胞リンパ腫特異的細胞障害性T細胞であり、またIRMと接触させていないCD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させたT細胞と比較して、CD5+B細胞リンパ腫細胞の高い死滅を示す。
【0014】
幾つかの実施形態では、該CD8+T細胞は、CD5+B細胞リンパ腫細胞特異的である。他の実施形態では、該CD8+T細胞は未処理である。
【0015】
幾つかの実施形態では、該活性化CD5+B細胞リンパ腫特異的細胞障害性T細胞が、自己CD5+B細胞リンパ腫特異的細胞障害性T細胞であるように、該IRM化合物を、CD5+B細胞リンパ腫であると診断された対象に投与することも可能である。
【0016】
幾つかの実施形態では、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を、1つ以上のさらなる免疫調節剤、たとえば、IL−2および/またはプロテインキナーゼC作用物質等と、さらに接触させてもよい。
【0017】
別の態様において、本発明はまた、CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加するのに有効なIRMを対象に投与することを含む、CD5+B細胞リンパ腫に罹患している対象を治療する方法も提供する。
【0018】
別の態様において、本発明はまた、単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞またはその免疫学的に活性な部分を含むワクチンも提供し、該単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞は、CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加するのに有効なIRMに接触されている。ある実施形態では、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を、1つ以上のさらなる免疫調節剤、たとえば、IL−2および/またはプロテインキナーゼC作用物質等と、さらに接触させてもよい。
【0019】
別の態様において、本発明はまた、単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞を、CD5+B細胞リンパ腫細胞の表面上の少なくとも1つの分子の発現を増加するのに有効なIRMと接触させることを含む、ワクチンを調製する方法も提供する。一部の実施形態では、単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞を、1つ以上のさらなる免疫調節剤、たとえば、IL−2またはプロテインキナーゼC作用物質等と接触させることをさらに含んでもよい。他の実施形態では、該単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞は、CLLまたはSLLであると診断された対象に由来してもよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、該CD5+B細胞リンパ腫細胞は、慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞、小リンパ球性リンパ腫細胞(SLL)、マントル細胞リンパ腫細胞、絨毛リンパ球を伴う脾リンパ腫、またはそれらの組合せであってもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、該IRMは、TLR7作用物質である。幾つかの実施形態では、該IRMは、TLR8作用物質である。さらに他の実施形態では、該IRM化合物は、TLR7およびTLR8の両作用物質である。
【0022】
幾つかの実施形態では、該IRMは、イミダゾキノリンアミン、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、イミダゾピリジンアミン、1,2架橋イミダゾキノリンアミン、6,7縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン、イミダゾナフチリジンアミン、テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン、オキサゾロキノリンアミン、チアゾロキノリンアミン、オキサゾロピリジンアミン、チアゾロピリジンアミン、オキサゾロナフチリジンアミン、またはチアゾロナフチリジンアミンであってもよい。ある特定の実施形態では、該IRMは、イミダゾキノリンアミン、たとえば、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン等である。代替実施形態では、該IRMは、テトラヒドロイミダゾキノリンアミン、たとえば、4−アミノ−2−(エトキシメチル)−α,α−ジメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール水和物等である。さらに他の実施形態では、該IRMは、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン、たとえば、N−[4−(4−アミノ−2−エチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミド等である。
【0023】
幾つかの実施形態では、発現が増加している少なくとも1つの細胞表面分子は、CD20、CD22、またはCD23であってもよく、また本方法は、高い発現を示す細胞表面分子を、標的として、有する治療薬を、対象に投与することをさらに含む。幾つかの実施形態では、2つ以上の細胞表面分子の発現が増加していてもよい。
【0024】
幾つかの実施形態では、発現が増加している少なくとも1つの共刺激分子は、CD40、CD54、CD80、CD83、CD86、CD25、またはCD38であってもよい。幾つかの実施形態では、2つ以上の共刺激分子の発現が増加していてもよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、in vitroで、該CD5+B細胞リンパ腫細胞をIRMと接触させてもよい。他の実施形態では、in vivoで、たとえば、対象の器官内、組織内、または血中等で、該CD5+B細胞リンパ腫細胞をIRMと接触させてもよい。
【0026】
本発明の様々な他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、実施例、特許請求の範囲および添付図面を参照して、容易に明白になるはずである。明細書を通して方々に、例のリストを介して指針が提供されている。いずれの場合にも、列挙されているリストは、代表グループの役割を果たすに過ぎず、排他的リストと解釈すべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、CD5+B細胞リンパ腫、たとえば、慢性リンパ球性白血病(CLL)等を治療する方法を提供する。多数の臨床観察から、CD5+B細胞リンパ腫細胞は、T細胞介在性免疫認識の対象である可能性があることが示唆される(たとえば、リベラ(Ribera)ら、Blood Cells 1987年;12:471〜483;ジーグラー(Ziegler)−ハイトブロック(Heitbrock)ら、Blood 1989年;73:1426〜1430;ウィールダ(Wierda)ら、Blood 2000年;96:2917〜2924;ジテルソン(Gitelson)ら、Clin Cancer Res.2003年;99:1656〜1665;およびパブレティック(Pavletic)ら、Bone Marrow Transplant 2000年;25:717〜722参照)が、CD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫原性は弱いため、免疫学に基づいた治療方法の開発が制限され、したがって、疾患の進行の一因となる。
【0028】
本発明は、CD5+B細胞リンパ腫細胞を免疫応答変更因子(IRM)化合物と接触させることが、CD5+B細胞リンパ腫の治療に有用な可能性があることを、初めて実証する。IRM化合物は、トール様受容体(TLR)として知られる基本的免疫系機構を介して、ある種のサイトカイン類、ケモカイン類および共刺激分子の選択された生合成を誘導するように作用するようである。したがって、ある種のIRM化合物は、該免疫系のある特定の態様を選択的に誘導することができ、かつ/または該免疫系の他の態様を阻害することができる。特に、IRM化合物は、CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面分子の発現を増加し、CD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫原性を高め、またCD5+B細胞リンパ腫を治療するための新たな免疫療法的手法を提供することが可能である。場合により、発現が増加している細胞表面分子は、共刺激分子であってもよい。共刺激分子の細胞表面発現の増加により、CD5+B細胞リンパ腫細胞は、腫瘍反応性T細胞活性を開始および/または維持することができるコンピテントな抗原提示細胞(APC)になることが可能になる。
【0029】
本書で使用されるとき、以下の用語は以下の意味を有するものとする:
【0030】
「寛解させる」は、ある特定の病気に特有の症状または臨床徴候の、程度、重症度、頻度、および/または可能性のいずれかの低減を指す。
【0031】
「CD5+B細胞リンパ腫細胞」は、CD19およびCD5の共発現を含む独特の免疫表現型を有する新生物細胞を指す。Bリンパ球系マーカーCD19を発現する他にも、CD5+B細胞リンパ腫細胞はまた、一般的に正常B細胞の小さいサブセットのみに発現されるTリンパ球マーカーCD5も発現する。CD5+B細胞リンパ腫細胞は、たとえば、慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞、小リンパ球性リンパ腫(SLL)細胞、マントル細胞リンパ腫細胞、および絨毛リンパ球を伴う脾リンパ腫を包含する。幾つかの実施形態では、該CD5+B細胞リンパ腫細胞は、CLL細胞またはSLL細胞である。ある具体的な実施形態において、該CD5+B細胞リンパ腫細胞は、CLL細胞である。
【0032】
「細胞表面分子」は、細胞の表面上に発現される分子を指し、また細胞系譜を決定するために使用したり、あるいは、ある細胞または細胞型を他の細胞または細胞型と区別するために使用したりすることが可能である。
【0033】
「患者」または「対象」は、たとえば,ヒト、非ヒト霊長類、齧歯類、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、またはウシ等の動物を含むが、その限りではない。
【0034】
「徴候」または「臨床徴候」は、患者以外の者により確認されることができる、ある特定の状態に関する客観的身体所見を指す。
【0035】
「症状」は、疾患または患者の状態の主観的証拠を指す。
【0036】
特に明記されていない限り、不定冠詞(「a」、「an」)、定冠詞(「the」)、および「少なくとも1つ」は、互換的に使用され、1つまたは2つ以上を意味する。
【0037】
ある種のIRM化合物、たとえば、TLR7および/またはTLR8の作動物質等は、CD5+B細胞リンパ腫細胞の多数の細胞表面分子(たとえば、共刺激分子を含む)の発現を増加することができ、その結果、CD5+B細胞リンパ腫細胞に対する、より強力な免疫応答を招く。したがって、CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面分子の発現を増加することを利用して、該疾患の進行を遅くしたり止めたりすることができる治療法を提供できる可能性がある。ある実施形態において、該治療方法は、場合によっては、該疾患を完全に回復、すなわち治癒するところまで、該疾患の経過を逆進させることが可能である。
【0038】
治療的有用性に加えて、1つ以上の共刺激分子および/または他の細胞表面分子の発現が増加したCD5+B細胞リンパ腫細胞は、診断的または精査的有用性も有する。
【0039】
未処理T細胞における細胞増殖およびサイトカイン産生の誘導には、2つのシグナルが必要である。第1のシグナルは外来抗原であり、これは抗原提示細胞(APC)の表面上の自己主要組織適合複合体(MHC)により提供される。該抗原性ペプチド−MHC複合体は、未処理T細胞表面上のT細胞受容体(TCR)と相互に作用し、それによって免疫応答に抗原特異性を与える。第2のシグナルは、「共刺激」シグナルである。共刺激シグナルは、抗原非依存的であり、たとえば、T細胞生存、クローン増殖、サイトカイン分泌、およびエフェクター機能を促進する特異的受容体−リガンド相互作用を介して、APCにより未処理T細胞に提供される。
【0040】
両シグナルの存在下で、増殖性適応免疫応答が生じる可能性がある。しかし、該共刺激シグナルが存在しなければ、リンパ球は、抗原刺激に効果的に応答できない。適応免疫系のこのような不反応性は、免疫寛容を招く結果となる。
【0041】
したがって、本書で使用されるとき、「共刺激分子」は、増殖性免疫応答を引き起こすために、MHC I分子の提示に加えて、発現を必要とするが、その発現は単独では増殖性免疫応答を引き起こすのに十分ではない、細胞表面分子のサブセットのメンバーを指す。共刺激分子の例は、B7ファミリーのメンバー(たとえば、B7−1(CD80)、B7−2(CD86)、ICOS−L(B7RP1)、およびPDL−1を含む)、Igスーパーファミリーの他の分子(たとえば、CD2およびOX2を含む)、デスドメインを欠くTNF:TNFRサブファミリーの分子(たとえば、CD40、OX40、CD27、4−1BB、およびCD30)、および幾つかのインテグリン類(たとえば、VLA−4、ICAM−1、およびICAM−3を含む)を含むが、その限りではない。
【0042】
1つ以上の細胞表面分子の発現増加は、本書に記載の方法のいずれかを含む、多くの既知の方法を使用して決定することができる。たとえば、このような方法は、フローサイトメトリー、免疫組織化学、定量的RT−PCR、およびノーザンブロット分析を含む逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含むが、その限りではない.
【0043】
幾つかの実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞を刺激して、CD20、CD22、CD23、CD25、CD38、CD40、CD54、CD80、CD83、またはCD86の1つ以上の発現を増加することが可能である。
【0044】
ある実施形態では、たとえば、該細胞表面分子に特異的に結合するモノクローナル抗体等の、治療薬の標的である細胞表面分子の発現を増加するために、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を刺激することが可能である。このような方法で、細胞表面分子発現の増加を、細胞表面分子を標的とする治療で利用することが可能である。たとえば、リツキシマブは、CD20を標的とし、また非ホジキンリンパ腫の効果的な治療法であることが示されている、モノクローナル抗体である。リツキシマブは、CD20を発現するB細胞に結合し、その結果、リツキシマブ標識細胞は、免疫系による除去に関する指標となる。このように、たとえば、(a)CD5+B細胞リンパ腫細胞上のCD20の発現を増加し、次いで(b)リツキシマブの投与を含む治療方法により、リツキシマブがCD5+B細胞リンパ腫細胞に結合することを可能にし、その結果、CD5+B細胞リンパ腫細胞は、免疫系による除去に関する指標となり、その結果、リツキシマブを、CD5+B細胞リンパ腫のための効果的な治療方法にする。CD5+B細胞リンパ腫細胞で、発現を増加させることが可能であり、また治療薬の標的の役割を果たすことが可能な、さらなる細胞表面分子としては、たとえば、CD22およびCD23などが挙げられる。
【0045】
幾つかの実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、サイトカインを産生するために有効なIRMと接触させることにより、IRMに接触されていないCD5+B細胞リンパ腫細胞により産生されるより多い量でサイトカインを産生するために、CD5+B細胞リンパ腫細胞を刺激することが可能である。幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、1つ以上のTLRの作用物質、たとえば、TLR7作用物質、TLR8作用物質であってもよく、またはTLR7およびTLR8の両者の作用物質であってもよい。産生されるサイトカインは、IL−1β、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、TNF−α、GM−CSF、およびそれらの組合せを包含することができるが、その限りではない。
【0046】
幾つかの実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、in vitroで、たとえば、細胞培養中で、IRM化合物と接触させてもよい。代替実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、in vivoでIRM化合物と接触させてもよい、すなわち、該CD5+B細胞リンパ腫細胞とIRM化合物は、器官内、組織内、または血中で、接触させてもよい。このような場合、たとえば、IRM化合物を、CD5+B細胞リンパ腫であると診断された対象に投与することにより、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を、対象内でIRM化合物と接触させることが可能である。該IRMを該対象に直接投与することにより、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、IRMと接触させた後、自己T細胞−すなわち、該対象自身のT細胞−を活性化させ、その結果、CD5+B細胞リンパ腫細胞に対してT細胞依存性免疫応答を引き起こすことを可能にする。該対象自身のT細胞集団を利用してCD5+B細胞リンパ腫細胞に対する免疫応答を引き起こすことにより、異種生体材料を投与することを含む治療法に随伴するある種の危険性(たとえば、炎症、拒絶、等々)を低減する、または排除することさえできる可能性がある。
【0047】
該IRM化合物は、たとえば、非経口的、経皮的、鼻腔内、および経口的を含む、適当な方法で投与することが可能である。IRM化合物の送達に適当な製剤は、詳細に後述する。
【0048】
幾つかの実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMを、CD5+B細胞リンパ腫に罹患している対象に、臨床的に有効な量で投与することができる。本書で使用されるとき「臨床的に有効な量」は、臨床改善の1つ以上の徴候を示すのに有効な量である。臨床改善のこのような徴候は、医療行為または研究所での研究に適用される測定値を含むことができる。たとえば、チェソン(Cheson)ら、国立癌研究所(National Cancer Institute)−慢性リンパ球性白血病のためのスポンサー付作業部会ガイドライン(sponsored Working Group guidelines for chronic lymphocytic leukemia):診断および治療のための改訂ガイドライン(revised guidelines for diagnosis and treatment)。Blood.1996年;87:4990〜4997を参照されたい。たとえば、臨床的に有効な量は、部分寛解(PR)を得るのに有効な量であってもよい。本書で使用されるとき、「部分寛解」は、少なくとも2ヶ月間、末梢血リンパ球、リンパ節腫脹、および/または脾腫の少なくとも約50%減少である。臨床的に有効な量は、完全寛解(CR)を得るのに有効な量であってもよい。本書で使用されるとき、「完全寛解」は、検出可能な白血病またはリンパ腫細胞の欠如である。臨床的に有効な量は、進行性疾患(PD)を防止するのに有効な量であってもよい。本書で使用されるとき、「進行性疾患」は、既知の病理学的基準で測定されるとき、循環リンパ球の少なくとも約50%増加、またはより高悪性度の組織像への進行である。臨床的に有効な量は、長期生存の可能性または程度を増大するのに有効な量であってもよい。あるいは、臨床的に有効な量は、CD5+B細胞リンパ腫に随伴する少なくとも1つの症状または臨床徴候を低減または寛解させる量であってもよい。たとえば、臨床的に有効な量は、皮膚リンパ腫沈着の重症度、程度、または数を低減するために十分な量であってもよい。
【0049】
幾つかの実施形態では、1つ以上のIRMを、CD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させる効果は、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を、1つ以上のさらなる免疫調節剤とさらに接触させることによって高めることが可能である。このような実施形態では、該IRMおよび1つ以上のさらなる免疫調節剤をたとえば、治療組合せ等の、組合せと考えることが可能である。ある成分を、CD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させる生物学的効果を、少なくとも、別の成分を該CD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させるまで持続させることができる方法で該成分が提供されるのであれば、このような組合せの成分は、互いに「組み合せて」送達されると言うことができる。したがって、成分は、別々の製剤で提供されても、異なる投与経路で送達されても、かつ/または異なる時に投与されても、互いに組み合わせて送達することが可能である。
【0050】
適当な免疫調節剤は、たとえば、インターロイキン−2(「IL−2」)を含んでもよい。IL−2は、抗原刺激性Tリンパ球の増殖因子であり、抗原認識後のT細胞クローン増殖に関与する。IL−2は、多くの周知のソースのいずれからも得ることができる。たとえば、臨床品質のIL−2は、たとえば、カリフォルニア州サンフランシスコのカイロン・コーポレーション(Chiron Corporation,San Francisco,CA.)から商業的に購入することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を、in vitroで、たとえば、細胞培養内で、IL−2と接触させることが可能である。代替実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、in vivoでIL−2と接触させることが可能である−すなわち、該CD5+B細胞リンパ腫細胞とIL−2を、器官内、組織内、または血中で接触させることが可能である。このような場合、たとえば、CD5+B細胞リンパ腫に罹患している対象にIL−2を投与することにより、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を対象内でIL−2と接触させることが可能である。該IL−2は、たとえば、非経口的、経皮的、鼻腔内、および経口的を含む、任意の適当な方法で投与することが可能である。IL−2の送達に適当な製剤は、後述する。
【0052】
いずれか1つの実施形態で使用されるIL−2の正確な量は、IL−2の物理的性質および化学的性質、該IL−2と組み合せて提供されるIRMまたはIRM類の物理的性質および化学的性質、所期の投与計画、対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、IL−2の投与方法、該IL−2と組み合せて、さらなる免疫調節剤が投与されるかどうか、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で既知の因子によって変化するであろう。したがって、可能性のある全ての適用に有効なIL−2の量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。たとえば、IL−2は、黒色腫および腎細胞癌の治療のためのIL−2投与について、ローゼンバーグ(Rosenberg)らにより略述されているものと類似した手順に従って、対象に投与することが可能である。ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、JAMA,1994年;271:907〜913。
【0053】
もう1つの適当な免疫調節剤は、たとえば、プロテインキナーゼC(PKC)作用物質を包含することが可能である。PKC作用物質の例は、ホルボールエステル類(トターマン(Totterman)ら、Nature,1980年;288:176〜178)およびブリオスタチン−1(ドレクスラー(Drexler)ら、Blood,1989年;74:1747〜1757)を包含することが可能であるが、その限りではない。リンパ腫細胞表面上の分子の生理学的リガンドはまた、該細胞表面分子を介してシグナル形質導入を誘導することによってPKC作用物質の役割を果たし、PKCファミリーのメンバーのタンパク質の活性化をもたらすこともできる。たとえば、リンパ腫細胞表面上のある種の分子に対する抗体はまた、PKC作用物質の役割を果たすこともできる。このような抗体は、たとえば、MHCクラスI分子に対する抗体および表面Igに対する抗体を含む。
【0054】
幾つかの実施形態では、該CD5+B細胞リンパ腫細胞を、in vitroで、たとえば、細胞培養内で、PKC作用物質と接触させることが可能である。代替実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞を、in vivoでPKC作用物質と接触させることが可能である−すなわち、該CD5+B細胞リンパ腫細胞とPKC作用物質を、器官内、組織内、または血中で、接触させることが可能である。このような場合、たとえば、CD5+B細胞リンパ腫に罹患している対象にPKC作用物質を投与することにより、対象内で、該CD5+B細胞リンパ腫細胞をPKC作用物質と接触させることが可能である。該PKC作用物質は、たとえば、非経口的、経皮的、鼻腔内、および経口的を含む、任意の適当な方法で投与することが可能である。PKC作用物質の送達に適当な製剤は、後述する。
【0055】
いずれか1つの実施形態で使用されるPKC作用物質の正確な量は、PKC作用物質の物理的性質および化学的性質、該PKC作用物質と組み合せて提供されるIRMまたはIRM類の物理的性質および化学的性質、所期の投与計画、対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、PKC作用物質の投与方法、該PKC作用物質と組み合せて、さらなる免疫調節剤が投与されるかどうか、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で既知の因子によって変化するであろう。したがって、可能性のある全ての適用に有効なPKC作用物質の量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0056】
ある実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞、(a)少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効な1つ以上のIRM、(b)IL−2、および(c)PKC作用物質と接触させることが可能である。CD5+B細胞リンパ腫細胞を、このようなIRM、IL−2、およびPKC作用物質の組合せと接触させるとき、該組合せの各成分は、該成分の全てを含む1つの製剤で提供することが可能である。あるいは、該組合せは、それぞれが、該組合せの成分を単独で、または他成分の一方または両方と一緒に、含んでもよい2つ以上の製剤で提供することも可能である。該組合せが複数の製剤で提供される場合、該様々な製剤は、類似した組成であっても異なる組成であってもよい。さらに、各製剤は、類似した剤形であっても異なる剤形であってもよく(たとえば、エアロゾル剤、ゲル剤、クリーム剤、液剤、等々)、また類似した送達経路で投与することも異なる送達経路で投与することも可能である(たとえば、注射、経皮的、静脈内、等々)。また、該組み合わせの該成分が、複数の製剤で提供されるのであれば、様々な成分を、任意の順序で、CD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させてもよい。
【0057】
幾つかの実施形態では、CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加した結果は、CD5+B細胞リンパ腫細胞特異的(以下、「リンパ腫細胞特異的」)細胞障害性T細胞(「CTL」)の増殖(proliferation−すなわち、expansion)の増進を含む可能性がある。リンパ腫細胞特異的CTLの増殖は、リンパ腫細胞特異的CD8+T細胞を、共刺激分子の表面発現が増加したCD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させたことに起因する可能性がある。CD5+B細胞リンパ腫細胞の表面上の共刺激分子の発現は、たとえば、上述の方法の1つ以上を含む、適当な方法で増加することが可能である。
【0058】
幾つかの実施形態では、該CD8+T細胞は、CD5+B細胞リンパ腫細胞特異的である−すなわち、CD5+B細胞リンパ腫細胞特異的抗原が予め提示されている−CD8+T細胞またはCD8+T細胞の子孫である。他の実施形態では、該CD8+T細胞は未処理である−すなわち、抗原(CD5+B細胞リンパ腫特異的またはそうでないもの)が予め提示されなかった−CD8+T細胞、またはCD8+T細胞の子孫である。
【0059】
少なくとも1つの共刺激分子の発現が増加したCD5+B細胞リンパ腫細胞との接触によって活性化されたリンパ腫細胞特異的CTLは、たとえば、1つ以上の共刺激分子の発現増加を示さないCD5+B細胞リンパ腫細胞との接触によって活性化されたリンパ腫細胞特異的CTLによって示されるものより高い増殖を示す可能性がある。
【0060】
他の態様において、本発明はまた、ワクチン、ワクチンを製造する方法、およびワクチンを投与することにより対象を治療する方法も提供する。このようなワクチンは、単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞、またはその免疫学的に活性な部分を含み、該単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞は、該細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMに接触されている。また単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞を、IL−2、PKC作用物質、またはIL−2およびPKC作用物質の両者の組合せと接触させることも可能である。CD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫学的に活性な部分は、単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞に由来する細胞膜調製物および/またはタンパク質調製物を包含することができるが、その限りではない。したがって、たとえば、膜調製物は、CD5+B細胞リンパ腫細胞由来の細胞膜の一部、および、たとえば、その中に埋め込まれたタンパク質を含んでもよい。ワクチンは、細胞に基づく予防注射を調製するための様々な手順のいずれかに従って製造することができる。たとえば、黒色腫(たとえば、ウー(Wu)ら、J Interferon Cytokine Res.2001年12月;21(12):1117〜27参照)、腎臓癌細胞(たとえば、フィーベグ(Vieweg)ら、Urol.Clin.North Am.2003年8月;30(3):633〜43参照)または脳腫瘍(たとえば、フェチ(Fecci)ら、J.Neurooncol.2003年8月〜9月;64(1−2):161〜76参照)に対する細胞性ワクチンの調製に使用されるものと類似した方法を使用することが可能である。
【0061】
IRMは、抗ウイルス活性および抗腫瘍活性を含むがその限りではない、強力な免疫調節活性を有する化合物を含む。あるIRMは、サイトカイン類の産生および分泌を調節する。たとえば、あるIRM化合物は、たとえば、I型インターフェロン、TNF−α、IL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、MIP−1、および/またはMCP−1等のサイトカイン類の産生および分泌を誘導する。別の例として、あるIRM化合物は、ある種のTH2サイトカイン類、たとえばIL−4およびIL−5の、産生および分泌を阻害することができる。さらに、幾つかのIRM化合物は、IL−1およびTNFを抑制すると言われる(米国特許第6,518,265号明細書)。
【0062】
あるIRMは、たとえば、米国特許第4,689,338号明細書;米国特許第4,929,624号明細書;米国特許第4,988,815号明細書;米国特許第5,037,986号明細書;米国特許第5,175,296号明細書;米国特許第5,238,944号明細書;米国特許第5,266,575号明細書;米国特許第5,268,376号明細書;米国特許第5,346,905号明細書;米国特許第5,352,784号明細書;米国特許第5,367,076号明細書;米国特許第5,389,640号明細書;米国特許第5,395,937号明細書;米国特許第5,446,153号明細書;米国特許第5,482,936号明細書;米国特許第5,693,811号明細書;米国特許第5,741,908号明細書;米国特許第5,756,747号明細書;米国特許第5,939,090号明細書;米国特許第6,039,969号明細書;米国特許第6,083,505号明細書;米国特許第6,110,929号明細書;米国特許第6,194,425号明細書;米国特許第6,245,776号明細書;米国特許第6,331,539号明細書;米国特許第6,376,669号明細書;米国特許第6,451,810号明細書;米国特許第6,525,064号明細書;米国特許第6,541,485号明細書;米国特許第6,545,016号明細書;米国特許第6,545,017号明細書;米国特許第6,558,951号明細書;米国特許第6,573,273号明細書;米国特許第6,656,938号明細書;米国特許第6,660,735号明細書;米国特許第6,660,747号明細書;米国特許第6,664,260号明細書;米国特許第6,664,264号明細書;米国特許第6,664,265号明細書;米国特許第6,667,312号明細書;米国特許第6,670,372号明細書;米国特許第6,677,347号明細書;米国特許第6,677,348号明細書;米国特許第6,677,349号明細書;米国特許第6,683,088号明細書;米国特許第6,756,382号明細書;欧州特許0 394 026;米国特許出願公開第2002/0016332号明細書;米国特許出願公開第2002/0055517号明細書;米国特許出願公開第2002/0110840号明細書;米国特許出願公開第2003/0133913号明細書;米国特許出願公開第2003/0199538号明細書;および米国特許出願公開第2004/0014779号明細書;ならびに国際公開第WO 01/74343号パンフレット;国際公開第WO 02/46749号パンフレット/国際公開第WO 02/102377号パンフレット;国際公開第WO 03/020889号パンフレット;国際公開第WO 03/043572号パンフレット;国際公開第WO 03/045391号パンフレット;国際公開第WO 03/103584号パンフレット;および国際公開第WO 04/058759号パンフレットに開示されているもの等の、小さい有機分子(タンパク質、ペプチド、等々の大きい生体分子とは対照的に、たとえば、約1000ダルトン未満、好ましくは約500ダルトン未満の分子量)である。
【0063】
小分子IRMのさらなる例は、ある種のプリン誘導体(米国特許第6,376,501号明細書、および米国特許第6,028,076号明細書に記載のもの等)、ある種のイミダゾキノリンアミド誘導体(米国特許第6,069,149号明細書に記載のもの等)、ある種のイミダゾピリジン誘導体(米国特許第6,518,265号明細書に記載のもの等)、ある種のベンズイミダゾール誘導体(米国特許第6,387,938号明細書に記載のもの等)、窒素含有複素5員環に縮合した4−アミノピリミジンのある誘導体(米国特許第6,376,501号明細書;米国特許第6,028,076号明細書およ米国特許第6,329,381号明細書;ならびに国際公開第WO 02/08905号パンフレットに記載のアデニン誘導体等)、およびある種の3−β−D−リボフラノシルチアゾロ[4,5−d]ピリミジン誘導体(米国特許出願公開第2003/0199461号明細書に記載のもの等)を包含する。
【0064】
他のIRMは、オリゴヌクレオチド配列等の大きい生体分子を含む。幾つかのIRMオリゴヌクレオチド配列は、シトシン−グアニンジヌクレオチド(CpG)を含み、たとえば、米国特許第6,194,388号明細書;米国特許第6,207,646号明細書;米国特許第6,239,116号明細書;米国特許第6,339,068号明細書;および米国特許第6,406,705号に記載されている。一部のCpG含有オリゴヌクレオチドは、たとえば、米国特許第6,426,334号明細書および米国特許第6,476,000号明細書に記載のもの等の、合成の免疫調節性構造モチーフを含むことができる。他のIRMヌクレオチド配列は、CpG配列を欠き、たとえば、国際公開第WO 00/75304号パンフレットに記載されている。
【0065】
他のIRMは、リン酸アミノアルキルグルコサミニド(AGP)等の生体分子を含み、また、たとえば、米国特許第6,113,918号明細書;米国特許第6,303,347号明細書;米国特許第6,525,028号明細書;および米国特許第6,649,172号明細書に記載されている。
【0066】
本発明を実行するために、いずれの適当なIRM化合物を使用してもよい。特に指示がない限り、化合物への言及は、異性体(たとえば、ジアステレオマーまたは鏡像異性体)、塩、溶媒和物、多形体等々を含む、あらゆる薬学的に許容し得る形態の化合物を包含することができる。特に、化合物が光学活性である場合、該化合物への言及は、該化合物の鏡像異性体のそれぞれならびに該鏡像異性体のラセミ混合物を包含することができる。
【0067】
幾つかの実施形態では、適当なIRM化合物は、たとえば、上述のものの1つ等の小分子IRM化合物であってもよい。適当な小分子IRM化合物は、窒素含有複素5員環に縮合した2−アミノピリジンを有するもの、たとえば、アミド置換イミダゾキノリンアミン類、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミン類、尿素置換イミダゾキノリンアミン類、アリールエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、複素環式エーテル置換イミダゾキノリンアミン類、アミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、スルホンアミドエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、尿素置換イミダゾキノリンエーテル類、チオエーテル置換イミダゾキノリンアミン類、および6−、7−、8−、または9−アリールまたはヘテロアリール置換イミダゾキノリンアミン類を含むがその限りではないイミダゾキノリンアミン類;アミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、スルホンアミド置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、アリールエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、複素環式エーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、アミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、スルホンアミドエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミン類、尿素置換テトラヒドロイミダゾキノリンエーテル類、およびチオエーテル置換テトラヒドロイミダゾキノリンアミンを含むがその限りではないテトラヒドロイミダゾキノリンアミン類;アミド置換イミダゾピリジンアミン類、スルホンアミド置換イミダゾピリジンアミン類、尿素置換イミダゾピリジンアミン類、アリールエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、複素環式エーテル置換イミダゾピリジンアミン類、アミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、スルホンアミドエーテル置換イミダゾピリジンアミン類、尿素置換イミダゾピリジンエーテル類、およびチオエーテル置換イミダゾピリジンアミン類を含むがその限りではないイミダゾピリジンアミン類;1,2架橋イミダゾキノリンアミン類;6,7縮合シクロアルキルイミダゾピリジンアミン類;イミダゾナフチリジンアミン類;テトラヒドロイミダゾナフチリジンアミン類;オキサゾロキノリンアミン類;チアゾロキノリンアミン類;オキサゾロピリジンアミン類;チアゾロピリジンアミン類;オキサゾロナフチリジンアミン類;チアゾロナフチリジンアミン類;およびピリジンアミン類、キノリンアミン類、テトラヒドロキノリンアミン類、ナフチリジンアミン類、またはテトラヒドロナフチリジンアミン類に縮合した1H−イミダゾダイマー等を包含する。
【0068】
ある実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、4−アミノ−2−(エトキシメチル)−α,α−ジメチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−エタノール等の、テトラヒドロイミダゾキノリンアミンであってもよい。代替実施形態では、該IRM化合物は、イミダゾキノリンアミンであってもよい。ある具体的な実施形態では、該IRMは、1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミンであってもよい。他の実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、N−[4−(4−アミノ−2−エチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル)ブチル]メタンスルホンアミド等の、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミンであってもよい。必要に応じて、IRMの様々な組合せを使用することができる。
【0069】
該IRM化合物−または、たとえば、IRMおよびIL−2および/またはPKC作用物質等の組合せの各成分−は、対象への投与に適当な任意の製剤で提供することが可能である。製剤の適当なタイプは、たとえば、米国特許第5,736,553号明細書;米国特許第5,238,944号明細書;米国特許第5,939,090号明細書;米国特許第6,365,166号明細書;米国特許第6,245,776号明細書;米国特許第6,486,186号明細書;欧州特許EP 0 394 026;および米国特許出願公開第2003/0199538号に記載されている。該化合物は−IRM化合物、IL−2、またはPKC作用物質にかかわらず−溶液、懸濁液、エマルジョン、または任意の形態の混合物を含むがその限りではない、適当な形態で提供することができる。該化合物は、任意の薬学的に許容し得る賦形剤、担体、または媒体を含む製剤で送達することが可能である。たとえば、該化合物は、局所投与に適当な製剤で提供することが可能である。たとえば、ある種のIRM化合物の、局所送達に適当なタイプの製剤は、たとえば、国際公開第WO 03/045391号パンフレットに記載されている。該製剤は、クリーム剤、軟膏剤、エアロゾル製剤、非エアロゾルスプレー剤、ゲル剤、ローション剤、錠剤、トローチ剤、エリキシル剤等々を含むがその限りではない任意の従来の剤形で送達することが可能である。該製剤は、アジュバント、皮膚浸透促進剤、着色料、香料、湿潤剤、増粘剤等々を含むがその限りではない、1つ以上の添加物をさらに含んでもよい。
【0070】
本発明を実行するのに適当な製剤の組成は、IRM化合物の物理的性質および化学的性質、担体の性質、所期の投与計画、対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、該IRM化合物の投与方法、該IRMは1つ以上のさらなる薬剤と組み合せて投与されるかどうか、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で既知の因子によって変化するであろう。したがって、可能性のある全ての適用および本発明の可能性のある全ての実施形態に有効な製剤の組成を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な製剤を容易に決定することができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、たとえば、約0.0001〜約10%(特に指示がない限り、本書に提供される全てのパーセンテージは、製剤総量を基準にして、重量/重量である)の製剤で、IRMを対象に投与することを含むが、幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、この範囲外の濃度でIRM化合物を提供する製剤を使用して投与されることもある。ある実施形態では、本方法は、約0.01〜約5%のIRM化合物を含む製剤、たとえば、約5%のIRM化合物を含む製剤を対象に投与することを含む。
【0072】
本発明を実行するのに有効なIRM化合物の量は、IRM化合物の物理的性質および化学的性質、担体の性質、所期の投与計画、対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、該IRM化合物の投与方法、該IRMは1つ以上のさらなる薬剤と組み合せて投与されるかどうか、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で既知の因子によって変化するであろう。したがって、可能性のある全ての適用および本発明の可能性のある全ての実施形態に有効なIRM化合物の量となる量を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して適切な量を容易に決定することができる。
【0073】
幾つかの実施形態では、本発明の方法は、約100ng/kg〜約50mg/kgの用量を提供するのに十分なIRM化合物を、該対象に投与することを含むが、幾つかの実施形態では、本方法は、この範囲外の用量でIRM化合物を投与することにより実施することが可能である。これらの実施形態の幾つかでは、本方法は、約10μg/kg〜約5mg/kgの用量、たとえば、100μg/kg〜約1mg/kgの用量を、提供するのに十分なIRM化合物を該対象に投与することを含む。
【0074】
投与計画は、該IRM化合物の物理的性質および化学的性質、担体の性質、投与されるIRMの量、対象の免疫系の状態(たとえば、抑制されている、低下している、刺激されている)、IRM化合物の投与方法、該IRMは1つ以上のさらなる薬剤と組み合せて投与されるかどうか、および該製剤が投与される種を含むがその限りではない、当該技術分野で既知の多くの因子に少なくともある程度左右される可能性がある。したがって、可能性のある全ての適用および本発明の可能性のある全ての実施形態に有効な投与計画を全般的に述べることは実用的ではない。しかし、当業者は、このような因子を十分に考慮して、適切な投与計画を容易に決定することができる。
【0075】
本発明の幾つかの実施形態では、該IRM化合物は、たとえば、1日に1回投与ないし多回投与で投与することが可能である。ある実施形態では、該IRM化合物は、1週間に約3回ないし1日に約1回、投与することが可能である。ある特定の実施形態では、該IRM化合物は1日1回投与される。
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本発明の特徴、利点、および他の詳細をさらに説明するために選択されたに過ぎない。しかし、実施例はこの目的に役立つが、使用される個々の材料および量ならびに他の条件および詳細は、本発明の範囲を不当に限定するような状況で解釈すべきでないことは、明確に理解されよう。
【0077】
実施例で使用した化合物を、表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
材料および方法
血液サンプル:ヘパリン処理血液(30〜40mL)を、同意するCLL患者(CD19+CD5+IgMloリンパ球の持続的上昇により診断された(ローズマン(Rozman)およびモントセラト(Montserrat)、New Engl.J.Med.1995年;333:1052〜1057))から採取した。全ての患者は、分析時に未処置であった。プロトコールは、適切な施設内審査委員会(Institutional Review Board)により承認された。
【0080】
【表2】

【0081】
抗体:フィコエリトリン標識またはFITC標識したCD80(B7−1)、CD86(B7−2)、CD54(ICAM−1)、CD83、4−1BBリガンド(4−1BBL)、CD5、およびCD19抗体は、BDファーミンゲン(BD Pharmingen)(カリフォルニア州サンフランシスコ(San Francisco,CA))から購入した。フィコエリトリン標識したICOS−LおよびPDL−1(B7−H1)抗体は、eバイオサイエンス(eBioscience)(カリフォルニア州サンディエゴ(San Diego,CA))から入手した。
【0082】
材料準備および方法:PDBの原液(5mg/mL)は、DMSOで作った。選択的ストレス活性化タンパク質キナーゼ(SAPK)のインヒビター(p38)(リー(Lee)ら、Pharmacol Ther.1999年;82:389〜397)である、SB203580の原液(25mg/mL)は、DMSOで作った。IRM1および陰性コントロール(Neg.)化合物は、3M Pharmaceuticals(ミネソタ州セントポール(St.Paul,MN))により提供された。化合物は、AIM−V媒体(ニューヨーク州グランドアイランドのギブコBRL(GibcoBRL,Grand Isaland,NY))(33%DMSOを含む)に1.3mg/mLで溶解し、4℃で暗所に保存した。アルダラ(ALDARA)として販売されている、IRM2の5%クリームもまた、スリーエム・ファーマシューティカルズ(3M Pharmaceuticals)により提供された。
【0083】
細胞精製:CLL細胞およびT細胞は、ジテルソン(Gitelson)らによる記述(ジテルソン(Gitelson)ら、Clin.Cancer Res.2003年;99:1656〜1665)通りに、ネガティブ選択(ブリティッシュコロンビア州バンクーバーにあるステムセル・テクノロジーズのロゼットセップ(RosetteSep,StemCell Technologies,Vancouver,BC))により鮮血から単離した。
【0084】
CLL細胞の活性化:精製CLL細胞(1.5×106細胞/mL)は、6ウェルプレートまたは24ウェルプレート(ニュージャージー州フランクリン・レイクにあるベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton−Dickinson Labware,Franklin Lake,NJ))内の無血清AIM−V媒体に2−メルカプトエタノール(2−ME、5×10-5M)(シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Co.))を加えた中で、5%CO237℃で3〜4日間、培養した。CLL細胞は、必要に応じて、陰性コントロール化合物(1μg/mL)、IRM1(1μg/mL)、IL−2(5000U/mL)、PDB(100ng/mL)、またはブリオスタチン(20nmol)を加えることにより活性化させた。該陰性コントロール化合物は、CLL細胞に対して測定可能な影響を示さず、結果的に、AIM−V媒体のみを実験の大半のコントロールとして使用した。
【0085】
混合リンパ球応答(MLR):T細胞は、CLL患者から単離し、AIM−V媒体で5×105細胞/mLに調整した。活性化CLL細胞は、残存免疫調節剤を除去するために少なくとも4回洗浄し、放射線照射し(2500cGy)、5×105細胞/mL(または、より低濃度)でAIM−V中に懸濁した。次いで、レスポンダーと刺激物質を1:1(容量:容量)比で混合し、サイトカイン類または血清を追加せずに、96ウェル丸底プレート(ニュージャージー州フランクリン・レイクにあるベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton−Dickinson Labware,Franklin Lake,NJ))内で培養した。増殖は、4〜6日後に比色分析法を使用して測定した(ジテルソン(Gitelson)ら、Clin Cancer Res.2003年;99:1656〜1665;およびアーメド(Ahmed)ら、J.Immunol.Methods.1994年;170:211〜224)。
【0086】
フローサイトメトリー:細胞染色は、ジテルソン(Gitelson)らによる記述通りに実施した(ジテルソン(Gitelson)ら、Clin.Cancer Res.2003年;99:1656〜1665)。
【0087】
サイトカイン測定:培養上清(48時間後の活性化CLL細胞に由来)中のサイトカインレベルは、ルミネックス100システム(LUMINEX−100 SYTEM)という商品名で、テキサス州オースチンにあるルミネックス社(Luminex Corp.,Austin,TX)から入手できる多重分析蛍光ビーズ分析システムで測定した。製造会社(ミネソタ州ミネアポリスにあるR&Dシステムズ(R&D Systems,Minneapolis,MN))の説明書に従って、5部分からなる、IFN−γ、IL−2、IL−4、IL−10およびTNF−α測定用ヒト・サイトカインキットを使用した。個々のサイトカイン濃度は、バイオ・プレックス(BIO−PLEX)2.0という商品名で、オンタリオ州ミシソーガにあるバイオラド(BioRad,Mississauga,Ontario)から入手可能なソフトウェアを使用して、標準曲線から決定した。該アッセイは、各サイトカインについて、30pg/mLから1000pg/mLまでの間で直線状であった。
【0088】
統計解析:スチューデントt解析(Student t−test)を使用して、サンプル平均値間の差に関するp値を決定した。最良適合線は、最小二乗回帰で決定した。
【0089】
実施例1:CLL細胞による共刺激分子発現に対するIRM1の作用
表示された数の患者由来のCLL細胞を、IRM1(1μg/mL)中で3〜4日間、培養し、次いで、図1Aのx−軸上に表示されている(蛍光対数値の最初の10より大きい強度の)共刺激分子の発現を分析した。各共刺激分子を発現した細胞のパーセンテージ、および発現の平均蛍光強度(MFI)を、フローサイトメトリーで測定した。次いで、これらの測定値と、活性化剤なしで培養したコントロール細胞のパーセンテージおよびMFIとの比率から、「増加倍数」を算出した。これらの、共刺激分子発現の相対的増加の平均誤差および標準誤差を、図1Aに示す。
【0090】
IRM1は、CD80、CD86、およびCD54発現に対して殊に強い作用を示し、IRM1は、試験した全ての患者(n=31)に由来するCLL細胞上のCD54、CD80、およびCD86の発現を増加した。CD80に対する作用は、CD86に対するよりも大きかった(図1、2を比較)。IRM1はまた、CD83、4−1BBL、およびPDL−1の発現も増加したが、ICOS−L発現に対する作用は少なかった(図1A)。
【0091】
表示された数の患者由来のCLL細胞を、IRM1、LPS(100μg/mL)、ポリ(I:C)(100μg/mL)およびIFN−γ 2B(500U/mL)中で、48時間培養した。図1Aに関する記述の通りにCD80およびCD86の発現の相対的増加を算出し、図1Bに示す。
【0092】
CLL細胞は、同じ方法で、他のTLR作用物質による影響を受けなかった。TLR2およびTLR4は、細菌のLPSにより活性化されるが、TLR3は、ウイルスの二本鎖RNAおよびpoly(I:C)により活性化される(ゴードン(Gordon)、Cell.2002;111:927−930)。しかし、LPSまたはpoly(I:C)は、CLL細胞による共刺激分子発現にほとんど影響を及ぼさなかった(図1B)。IRM1は、DCまたは単球からのIFN−α放出を刺激することが分かっているIRM群の1つである(ギブソン(Gibson)ら、Cell Immunol.2002年;218:74〜86)が、CLL細胞による共刺激分子発現は、IFN−γ 2Bで直接刺激した後、有意に変化しなかったため、IRM1の作用は、このサイトカインに直接媒介される可能性は低かった(図1B)。
【0093】
実施例2:CLL細胞による共刺激分子発現に対するIL−2およびIRM1の作用
CLL細胞を単離し、単独で、またはIL−2(5000U/mL)、IRM1(1μg/mL)、またはIL−2およびIRM1の両者と一緒に、3〜4日間培養した。次いで、CD80、CD86、CD54、およびCD83の発現をフローサイトメトリーで測定した。図2Aは、典型的な例を示す。上列および下列のドットプロット内の数値は、それぞれ、CD80+CLL細胞およびCD86+CLL細胞のパーセンテージである。図2Bは、グラフ凡例に表示されている患者数に由来する、異なる共刺激分子を発現するCLL細胞のパーセンテージ(蛍光対数値の最初の10より高い染色強度を有する細胞のパーセンテージで決定)のグラフ表示である。これらの各測定値の平均誤差および標準誤差をグラフに示す。ダブルヘッドの矢印の上方の数値は、サンプル平均値間の差のp値を表す。図2Cはグラフ凡例に表示されている患者数に由来する、CLL細胞について決定された異なる共刺激分子発現の平均蛍光指数のグラフ表示である。これらの各測定値の平均誤差および標準誤差をグラフに示す。(10で割った)CD54発現のMFIのみを示すが、本質的に全てのCLL細胞がこの分子を発現するためである。ダブルヘッドの矢印の上方の数値は、サンプル平均値間の差に関するp値を表す。
【0094】
IL−2およびIRM1は共に、CD80およびCD86を発現したCLL細胞のパーセンテージ、ならびにこれらの分子の発現の平均蛍光強度(MFI)を上昇させた(図2)。単剤として、IRM1は、この点に関してIL−2より強力であると思われた。共刺激分子発現に対するIL−2およびIRM1の作用は、相加的であり(図2A、右のドットプロットおよび図2B、C)、両者には、異なる機構が介在することが示唆される。図2Cに示す共刺激分子CD80、CD86、CD54、およびCD83のMFIから、IRM1は、CLL細胞上の、これらの4つの共刺激分子全ての発現を増加したことが分かる。CD80発現の強さは、IL−2と組み合せたIRM1により殊に上昇した。
【0095】
4−1BBLおよびPDL−1の発現は、IL−2およびIRM1により幾らか増加したが、CD80、CD86、およびCD54ほど多くはなかった(図1A)。ICOS−Lは、多くのCLL細胞上で見られたが、その発現は、IL−2およびIRM1介在性シグナルとは比較的無関係のようであった。
【0096】
実施例3:共刺激表現型およびT細胞刺激能に対する、共刺激表現型ならびにT細胞IL−2活性化CLL細胞およびIRM1活性化CLL細胞のPKC活性化の作用
CLL細胞は、個々の患者から精製し、単独で、あるいはIL−2と、IRM1と、IL−2およびIRM1と、PDB、PDBおよびIL−2と、PDBおよびIRM1と、またはPDB、IL−2およびIRM1と一緒に、培養した。3〜4日後、これらの細胞を収穫し、徹底的に洗浄し、放射線照射して(2500cGy)、5〜6日間培養した後、CLL患者由来の同種T細胞または自己T細胞(CLL細胞と同時に得て、混合リンパ球応答(Mixed Lymphocytic Response)(MLR)アッセイ)に加えるまで培養中で休止させた)を刺激するために使用し、アラマーブルーを加えて、光学密度比色用マイクロプレート読取機で、540(還元状態)および595(酸化状態)の波長で増殖を測定した。これらの測定値間の差を、培養中の生存細胞数の測定値として使用した。結果を図3Aに示す。各個の実験で最大の刺激を示したT細胞源の結果(非活性化CLL細胞刺激因子により誘導された増殖の減算後)を使用して、x−軸上に表示されている患者数から平均増殖および標準誤差を生成した。
【0097】
図3Bは、CD83発現とT細胞刺激能力との相関関係のグラフ表示である。CLL細胞は、IL−2およびIRM1で4〜5日間処理した。次いで、CD83を発現する細胞のパーセンテージ、およびCD83発現のMFIをフローサイトメトリーで決定した。次いで活性化CLL細胞を放射線照射し、MLRで自己T細胞または同種T細胞を刺激するために使用した。次いで、異なる患者19例由来の、CD83+CLL細胞の初期パーセンテージ(左パネル)およびCD83発現のMFI(右パネル)を、MLRで測定された増殖と関連させた。最良直線は、切片10.692および勾配0.0598を有し;付随するP値は0.0153である。
【0098】
図4Aは、単独で(左パネル)、またはIRM1、IL−2、およびPDBと一緒に(右パネル)、3日間培養した代表的な患者由来のCLL細胞を表す。次いで、CD80、CD83、CD54、およびCD86発現をフローサイトメトリーで決定した。ドットプロット内のパーセンテージは、CD80(右上および左上の合計)(上段パネル)およびCD86(右上および左上の合計)(下段パネル)に関する。図4Bは、単独で、あるいは表の凡例に表示された患者数に由来する、PDBと、PDBおよびIL−2と、PDBおよびIRM1と、またはPDB、IL−2およびIRM1と一緒に、培養した後、CD80、CD83、CD54、およびCD86を発現するCLL細胞のパーセンテージ(および発現のMFI)の、フローサイトメトリー評価の結果の要約である。平均誤差および標準誤差を示す。本質的に全てのCLL細胞がこの分子を示すため、CD54発現のMFIのみを示す。図4Cは、ICOS−L、4−1BBL、およびPDL−1発現の、同様のフローサイトメトリー評価の要約である。ダブルヘッドの矢印の上方の数値は、サンプル平均値間の差に関するp値である。
【0099】
ホルボールジブチレート(PDB)治療は、単独で、CLL細胞の約90%にCD83を発現させた(図4B、透明の棒)。PDBはまた、CD80+CLL細胞およびCD86+CLL細胞の数(後者は前者よりも多く)、ならびに、4−1BBLおよびPDL−1の発現(図4C、透明の棒)も増加した。CD54発現およびICOS−L発現は、PDBにより大きく影響を受けなかった(図4Bおよび図4C)。
【0100】
PDBでCLL細胞を活性化している間にIL−2を加えることにより、CD80+細胞数およびCD80発現およびCD54発現のMFIが主に増加した(図4B;水平線の棒)。CLL細胞をPDBおよびIRM1の両者で活性化したとき、僅かに高いパーセンテージのCD80+細胞が得られた(図4B;垂直線の棒)。IL−2をIRM1およびPDBに加えることにより、CD80の発現(殊にCD86と比較して(図4B))、ならびにCD54の発現が強く増加し、本質的に全てのCLL細胞に、CD83hiCD80hiCD86hiCD54hi細胞表面表現型を獲得させた(図4Aおよび図4B;斜線の棒)。
【0101】
図4に示す結果から、PDBおよびIRM1の組合せは、CLL細胞のほぼ100%にCD80、CD86、およびCD83発現を獲得させることが分かった。IL−2を加えることにより、主としてCD80発現およびCD54発現の大きさに影響を及ぼした。IL−2の有無にかかわらず、PDB、および/またはIRM1は、4−1BBLおよびPDL−1の発現を増加したが、CD80、CD86、CD54、およびCD83と同程度までではなかった。
【0102】
PDB、IL−2、およびIRM1で活性化されたCLL細胞による、この、共刺激分子の強い発現は、これらの細胞の、T細胞増殖を刺激する能力に反映された(図3A)。PDB(IL−2なし)で刺激されたCLL細胞は、T細胞増殖の弱い刺激因子であった(図3A)。
【0103】
実施例4:IRM1の存在下における、自己T細胞によるCLL細胞の除去
CLL細胞およびT細胞は、CLL患者から単離し、106細胞/mLの濃度で懸濁し、1:1の比率で混合した。該細胞混合物を、単独で、あるいはIL−2、IL−2およびIRM1、ブリオスタチン、ブリオスタチンおよびIL−2、ブリオスタチンおよびIRM1、またはブリオスタチン、IL−2、およびIRM1の存在下で、培養した。図5Aでは、5日後に、CD5+CD19+腫瘍細胞(ドットプロットの右上方の数値で表示)およびCD5+CD19-T細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーで決定した。図5Bでは、これらのパーセンテージおよび生存細胞総数(血球計算器で、手動計算により決定した)を使用して、培養中に残存するCLL細胞の絶対数を算出した。
【0104】
IRM1は、単独であれIL−2および/またはブリオスタチンとの組合せであれ、in vitroで、自己T細胞にCLL細胞を死滅させる。IRM1、IL−2、およびブリオスタチンの組合せは、自己T細胞が5日でCLL細胞の100%クリアランスを達成することを可能にした。
【0105】
実施例5:IRM化合物を慢性リンパ性白血病に随伴するリンパ腫様皮膚沈着に投与することの臨床効果
71才の男性コーカサス人は、フローサイトメトリーで決定された循環モノクローナルCD19+CD5+IgMloリンパ球数の持続的増加に基づいて、ライ病期分類ステージ0(Rai Stage 0)CLLであると診断された。CD38は、循環CLL細胞の45%により発現された。IRM2治療の開始時および終了時における白血球数は、それぞれ、36×106細胞/mLおよび45×106細胞/mLであった。その他の全身性化学療法、ステロイド類、または放射線は、それまでに投与されていなかった。
【0106】
さらに、該患者は、手および腕に再発性の結節性紅斑性病変がおよそ8年間あると報告した。該病変は通常、液体窒素治療で除去される。彼がCLLであると診断された時、このような病変が数個、彼の上背部(図8A)および両腕にあった。一病変を生検して、表皮向性のない、多くの小さい円形リンパ球からなる、び慢性非定型リンパ性皮膚浸潤物を含むことが判明した。パラフィン免疫ペルオキシダーゼ染色で、リンパ様濾液は、優性CD20+表現型を有していた。パラフィン包埋組織の分子分析は、B細胞リンパ腫と一致する、モノクローナルB細胞群を示した。
【0107】
IRM2の5%クリームを、1週間に3回、患部に塗布した。8週後、治療した病変のサイズは著明に変化していなかったが、退行性黒色腫沈着の周りに、暈状母斑を連想させる色素脱失領域が形成されていた。
【0108】
5%IRM2クリームの投与を1日1回に増やした。6週間の治療後に該病変は消失し(図6B)、治療停止後3ヶ月までに再発していなかった。未処置のリンパ腫様病変も循環白血球数も、治療の間に著明に変化しなかった。
【0109】
CLL細胞は、ジテルソン(Gitelson)ら、Clin.Can.Res.9:1656−1665(2003年)に記載されている通りに、ネガティブ選択(ブリティッシュコロンビア州バンクーバーにあるステムセル・テクノロジーズ社のロゼットセップ(RosetteSep,StemCell Technologies,Inc.,Vancouver,BC))により鮮血から単離した。精製CLL細胞(1.5×106細胞/mL)は、無血清AIM−V媒体(ギブコBRL(GibcoBRL))中で3日間、培養した。IRM1および陰性コントロール化合物は、1μg/mLの最終濃度で使用した。
【0110】
細胞を、予め最適化した体積の、CD80−PEおよびCD83−FITC抗体かまたはCD54−PEおよびCD86−FITC抗体と共に20分間インキュベートし、洗浄し、次いでフローサイトメトリー分析に付した。陰性コントロールは、アイソタイプ適合イレレバント抗体(irrelevant antibody)であった。有核細胞の染色は、前方散乱特性および側方散乱特性に関するゲーティングによって決定した。ファクスキャン(FACScan)フローサイトメーターでセルクエスト(CELLQUEST)ソフトウェア(カリフォルニア州サンノゼにあるBDイムノサイトメトリー・システムズ(BD Immunocytometry Systems,San Jose,CA))を使用して、1万個の生存細胞を分析した。該フローサイトメーターは、スフェロパーティクルズ(SpheroParticles)(イリノイ州シカゴにあるスフェロテック社(Spherotech,Inc.,Chicago,IL))を用いて標準化した。CD80+、CD86+、およびCD83+細胞のパーセンテージは、アイソタイプコントロール標識細胞との比較によって算出した。結果を図7に示す。
【0111】
実施例6:CLL細胞による共刺激マーカー発現に対する、IRM3作用の用量応答
異なる患者8例に由来するCLL細胞は、精製して、0.001μg/mL、0.01μg/mL、0.1μg/mL、または1.0μg/mLのいずれかのIRM3と一緒に3日間、培養した。CD80発現およびCD83発現は、上述の通り、フローサイトメトリーで決定した。CD80発現およびCD83発現の増加は、IRM3を加えなかったコントロールCLL培養から、それぞれ、CD80発現およびCD83発現を減算することによって計算した。結果を図8に示す。
【0112】
実施例7:CLL細胞表面分子のIRM3介在性変化
CLL細胞は、患者から採取し、IRM3(1μg/mL)と一緒に、およびIRM3なしで(コントロール)、2〜3日間培養した。CD80、CD83、CD86、およびCD38を発現した細胞のパーセンテージは、フローサイトメトリーで決定した。CD54発現およびCD25発現のMFIは、実質的に全てのCLL細胞がこれらの分子を発現するため、決定した。発現のMFIの変化、または特定の細胞表面分子を発現する細胞のパーセンテージは、コントロール培養から得られた値を、IRM3と一緒に培養した細胞から得られた値から減算することによって決定した。結果を、図9に示す。
【0113】
実施例8:CLL細胞によるCD20発現のIRM3介在性増加
CLL細胞を精製して、IRM3なし(コントロール)か、またはIRM3(1μg/mL)およびIL−2(5000U/mL)と一緒のいずれかで、培養した。48時間後、CD20発現のMFIをフローサイトメトリーで決定した。結果を図10に示す。
【0114】
本書に引用した、特許の全開示内容、特許書類および出版物は、それぞれが個々に組み込まれたかのように、その全体を参照により本書に援用する。闘争の場合には、定義を含む本明細書が、調整するであろう。本発明に対する様々な修飾および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明白になるであろう。説明に役立つ実施形態および実施例は、例として提供されているに過ぎず、本発明の限定を意図するものではない。本発明の範囲は、以下の通りに記載されている特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1A】IRM化合物による、CLL細胞上の共刺激分子発現の増強。
【図1B】IRM化合物による、CLL細胞上の共刺激分子発現の増強。
【図2A】CLL細胞による共刺激分子発現に対する、IRM化合物(IL−2を含む、または含まない)の作用。
【図2B】CLL細胞による共刺激分子発現に対する、IRM化合物(IL−2を含む、または含まない)の作用。
【図2C】CLL細胞による共刺激分子発現に対する、IRM化合物(IL−2を含む、または含まない)の作用。
【図3A】CLL細胞が細胞障害性T細胞増殖を刺激する能力に対する、IRM化合物の作用。
【図3B】CLL細胞が細胞障害性T細胞増殖を刺激する能力に対する、IRM化合物の作用。
【図4A】CLL細胞による共刺激分子発現に対する、IRM化合物、IL−2、およびPKC作用物質の作用。
【図4B】CLL細胞による共刺激分子発現に対する、IRM化合物、IL−2、およびPKC作用物質の作用。
【図4C】CLL細胞による共刺激分子発現に対する、IRM化合物、IL−2、およびPKC作用物質の作用。
【図5A】PKC作用物質、IL−2、およびIRMによる、自己CLL細胞に対するT細胞細胞障害性の誘導。
【図5B】PKC作用物質、IL−2、およびIRMによる、自己CLL細胞に対するT細胞細胞障害性の誘導。
【図6A】IRMによる治療前(図6a)の、リンパ腫様皮膚沈着の写真。
【図6B】IRMによる治療後(図6b)の、リンパ腫様皮膚沈着の写真。
【図7】CLL細胞による共刺激分子発現に対する、IRM1の作用。
【図8A】CLL細胞によるCD80およびCD83の発現に対する、IRM3の作用。
【図8B】CLL細胞によるCD80およびCD83の発現に対する、IRM3の作用。
【図9】CLL細胞における、細胞表面分子発現のIRM3介在性変化。
【図10】IRM3+IL−2は、CLL細胞上のCD20発現を増加する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加する方法であって、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加するのに有効な少なくとも1つのIRM化合物と接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞が、慢性リンパ球性白血病(CLL)細胞、小リンパ球性リンパ腫細胞(SLL)、マントル細胞リンパ腫細胞、絨毛リンパ球を伴う脾リンパ腫、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記IRMが、TLR7作用物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記IRMが、TLR8作用物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記IRMが、テトラヒドロイミダゾキノリンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記IRMが、スルホンアミド置換イミダゾキノリンアミンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞表面分子が、共刺激分子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの共刺激分子が、CD25、CD38、CD40、CD54、CD80、CD83、またはCD86である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞表面分子が、CD20、CD22、またはCD23である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞をIRMと接触させることが、in vitroで起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞をIRMと接触させることが、器官内、組織内、または血中で起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を、IRMと接触させることが、対象内でin vivoで起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
CD5+B細胞リンパ腫細胞を刺激してサイトカインを産生する方法であって、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を、そのIRMに接触させていない前記CD5+B細胞リンパ腫細胞により産生されるレベルより高く、少なくとも1つのサイトカインを産生するのに有効な上記IRMと接触させることを含み、前記少なくとも1つのサイトカインが、IL−1β、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12、TNF−α、GM−CSF、またはそれらの組合せである、前記方法。
【請求項14】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を接触させることが、in vitroで起こる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を接触させることが、器官内、組織内、または血中で起こる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を接触させることが、対象内でin vivoで起こる、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
T細胞増殖を増進する方法であって、以下のステップ:
CD5+B細胞リンパ腫細胞を、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMと接触させること;および、
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞をT細胞と接触させ、それによって前記T細胞を活性化すること;
を含み、ここで、前記活性化されたT細胞は、IRMと接触させていないCD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させたT細胞と比較して増殖増進を示す、前記方法。
【請求項18】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を、少なくとも1つのさらなる免疫調節剤と接触させることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記さらなる免疫調節剤が、IL−2を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記さらなる免疫調節剤が、プロテインキナーゼC作用物質を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記T細胞および前記CD5+B細胞リンパ腫細胞が、in vivoで接触させられる、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
CD5+B細胞リンパ腫細胞特異的細胞障害性T細胞によりCD5+B細胞リンパ腫細胞の死滅を増進する方法であって、以下のステップ:
CD5+B細胞リンパ腫細胞を、前記CD5+リンパ腫細胞の表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMと接触させること;および、
前記CD5+リンパ腫細胞を、CD8+T細胞と接触させ、それによって前記CD8+T細胞を活性化させること;
を含み、ここで、
前記活性化されたCD8+T細胞が、IRMと接触させていないCD5+B細胞リンパ腫細胞と接触させたCD8+T細胞と比較して、CD5+B細胞リンパ腫細胞の死滅増進を示すCD5+B細胞リンパ腫細胞特異的細胞障害性T細胞である、前記方法。
【請求項23】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞を、少なくとも1つのさらなる免疫調節剤と接触させることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記さらなる免疫調節剤が、IL−2を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記さらなる免疫調節剤が、プロテインキナーゼC作用物質を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記CD5+B細胞リンパ腫細胞が、IRMとin vivoで接触させられる、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
CD5+B細胞リンパ腫に罹患している対象において、自己T細胞によるCD5+B細胞リンパ腫細胞の死滅を増進させる方法であって、前記対象に、TLR7作用物質および/またはTLR8作用物質であるIRMを投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
IL−2を投与することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
プロテインキナーゼC作用物質を投与することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
IL−2およびプロテインキナーゼC作用物質を投与することをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
CD5+B細胞リンパ腫に罹患している対象を治療する方法であって、前記対象に、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加するのに有効なIRMを、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の少なくとも1つの細胞表面分子の発現を増加するのに有効な量で投与することを含む、前記方法。
【請求項32】
前記IRMが、TLR7作用物質および/またはTLR8作用物質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
IL−2を投与することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
プロテインキナーゼC作用物質を投与することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
IL−2およびプロテインキナーゼC作用物質を投与することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
発現が増加している少なくとも1つの細胞表面分子が、治療薬の標的であって、前記対象に、前記治療薬の有効量を投与することをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記細胞表面分子が、CD20、CD22、またはCD23である、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞表面分子が、共刺激分子である、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
CD5+B細胞リンパ腫を治療する方法であって、前記CD5+B細胞リンパ腫に特有の少なくとも1つの症状または臨床徴候を寛解させるのに有効なIRMを、このような治療を必要としている対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
前記IRMが、末梢血リンパ球、リンパ節腫脹、または脾腫の少なくとも50%減少を、少なくとも2ヶ月間示すのに有効な量で投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記IRMが、進行性疾患の発生を防止するのに有効な量で投与され、前記進行性疾患は、循環リンパ球の少なくとも50%増加またはより高悪性度の組織像への進行である、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記IRMが、紅斑性病変を寛解させるのに有効な量で投与される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞またはその免疫学的に活性な部分を含み、前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMに接触させられている、ワクチン。
【請求項44】
前記IRMが、TLR7作用物質および/またはTLR8作用物質である、請求項43に記載のワクチン。
【請求項45】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、IL−2にさらに接触させられている、請求項43に記載のワクチン。
【請求項46】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、プロテインキナーゼC作用物質にさらに接触させられている、請求項43に記載のワクチン。
【請求項47】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、IL−2およびプロテインキナーゼC作用物質にさらに接触させられている、請求項43に記載のワクチン。
【請求項48】
単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞を、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の表面上の少なくとも1つの分子の発現を増加するのに有効なIRMと接触させることを含む、ワクチンを調製する方法。
【請求項49】
前記単離された細胞を、IL−2と接触させることを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記単離された細胞を、プロテインキナーゼC作用物質と接触させることをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記単離された細胞を、IL−2およびプロテインキナーゼC作用物質と接触させることをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
CD5+リンパ腫に罹患している対象を治療する方法であって、前記対象に、単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫学的に活性な部分を投与することを含み、前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞は、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMに接触させられている、前記方法。
【請求項53】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、IL−2にも接触させられている、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、プロテインキナーゼC作用物質にも接触させられている、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、IL−2およびプロテインキナーゼC作用物質にも接触させられている、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、CD5+B細胞リンパ腫に罹患している対象に由来する、請求項52に記載の方法。
【請求項57】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫学的に活性な部分が、細胞全体を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項58】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫学的に活性な部分が、前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞からの細胞膜調製物またはタンパク質調製物を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項59】
発現が増加している少なくとも1つの細胞表面分子が、治療薬の標的であって、前記対象に前記治療薬の有効量を投与することをさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項60】
CD5+B細胞リンパ腫であると診断された対象において、CD5+B細胞リンパ腫反応性T細胞応答を開始する方法であって、前記対象に、前記CD5+B細胞リンパ腫細胞の前記細胞表面上の少なくとも1つの共刺激分子の発現を増加するのに有効なIRMに接触させられている単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫学的に活性な部分を含む組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項61】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、IL−2にも接触させられている、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、プロテインキナーゼC作用物質にも接触させられている、請求項60に記載の方法。
【請求項63】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、IL−2およびプロテインキナーゼC作用物質にも接触させられている、請求項60に記載の方法。
【請求項64】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、前記CD5+リンパ腫に罹患している対象に由来する、請求項60に記載の方法。
【請求項65】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞が、CLLまたはSLLに罹患している対象に由来する、請求項60に記載の方法。
【請求項66】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫学的に活性な部分が、細胞全体を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項67】
前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞の免疫学的に活性な部分が、前記単離されたCD5+B細胞リンパ腫細胞からの細胞膜調製物またはタンパク質調製物を含む、請求項60に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−504269(P2007−504269A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526186(P2006−526186)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/028688
【国際公開番号】WO2005/023190
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】