説明

CD8+T細胞免疫応答を発生するワクチン接種のための方法

【課題】マラリア、HIV等に対して免疫原性が高く、副作用が少ない、遺伝子ワクチンを提供する。
【解決手段】少なくとも一つの標的抗原に対して保護的CD8+ T細胞免疫応答を発生するためのキットであり、下記i及びiiを含むキット:(i)標的抗原の一つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープ源、ならびに医薬品として受容可能な担体から成る初回刺激組成物;および(ii)初回刺激組成物のCD8+ T細胞エピトープと同一である少なくとも一つのCD8+ T細胞エピトープ源を含む標的抗原の一つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープ源、ここでCD8+ T細胞エピトープ源は非複製または複製欠陥組換えポックスウイルスベクターである、ならびに医薬品として受容可能な担体から成る追加刺激組成物;ただし、(i)のエピトープ源がウイルスベクターであるならば、(ii)のウイルスベクターは異なるウイルスから誘導される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
発明の詳細な説明
CD8 T細胞免疫応答を発生するワクチン接種のための方法および試薬
本発明はCD8+ T細胞エピトープ源として異なった初回刺激および追加刺激組成物を使用した標的抗原に対する保護的CD8+ T細胞免疫応答の発生に関している。
【0002】
背景技術
ワクチン学における一般的問題は、免疫化により高レベルのCD8 T細胞を発生できないことである。このことはマラリアを含むいくつかの疾患に対するワクチンの開発を妨げてきた。
【0003】
熱帯熱マラリア原虫マラリアは毎年数億のマラリア感染を起こし、毎年100−200万人の死者を出している。従って、マラリアに対する有効なワクチンの開発は世界の公衆衛生においてより重要な優先すべきものである。この20年間おける免疫学的研究のかなり多くは原虫からのワクチン抗原候補、および感染および疾患を保護しているらしい宿主免疫学的機構の両方の同定に至っている。しかしながらこの進歩にもかかわらず、現場での試みに有効であることが示されたマラリア感染に対するワクチン接種法は未だに存在しない。
【0004】
主要な問題は、感染および疾患を保護するために十分強力な免疫応答をワクチン接種した個体に誘導する手段が同定されないためである。このように、マラリアに対するワクチン接種に有用であろう多くのマラリア抗原が知られているが、免疫系の細胞により認識されるエピトープとして知られているそのような抗原またはそれらの断片を、特定の型の十分に強い免疫応答を誘導する様式でどうのように送達するのかが問題であった。
【0005】
大量の照射された、感染した蚊が刺すことにより与えられるマラリアスポロゾイトで個体を免疫することにより個体を保護することが可能であることは前から知られている。この方法は大量のワクチン接種には全く実際的ではないが、スポロゾイト感染に対する保護的免疫性を仲介するであろう免疫応答を分析するためのモデルを提供した(NardinおよびNussenzweig 1993)。
【0006】
この10年またはそれ以上にわたるかなりの量の研究は、熱帯熱マラリア原虫マラリアの初期前赤血球期に対する主な保護的免疫応答がCD8+ve型のTリンパ球(CD8+ T細胞)により仲介されることを示している。そのような細胞はマラリア感染のマウスモデルにおいて直接的に保護を仲介することが示されている(NardinおよびNussenzweig 1993)。そのようなT細胞はまた、自然にマラリアに感染した個体および照射されたスポロゾイトで免疫された志願者において同定されている(Hillら1991;Aidooら1995;Wizelら1995)。そのようなCD8+ T細胞はヒトにおけるマラリア感染および疾病に対して保護的であるという間接的な証拠が多く存在する(Lalvaniら1994)。
【0007】
CD8+ T細胞は一つ以上の様式で機能しているであろう。最もよく知られている機能は、MHCクラスI分子関連のペプチド抗原を持つ標的細胞を殺すまたは溶解させることである。従って、これらの細胞はしばしば細胞毒性Tリンパ球(CTL)と称される。しかしながら、多分マラリア感染においてより大きな保護的関連性を持つ別の機能はインターフェロンガンマ(IFN−γ)を分泌するCD8+ T細胞の能力である。従って、CD8+ T細胞免疫応答の測定において溶解活性およびIFN−γ放出アッセイの両方ともが価値がある。マラリアにおいてこれらのCD+8ve細胞は、疾患の徴候がでる前のマラリア感染の初期肝臓内期で原虫を殺すことにより保護することができる(Seguinら1994)。致死的ヒトマラリアの仲介者、熱帯熱マラリア原虫は限られた数の宿主種に感染する:ヒト、チンパンジーおよび新世界ザルのいくつかの種。マラリアの最良の非ヒトモデルはチンパンジーであり、その理由は、この種はヒトに密接に関連しており、およびサル宿主と異なって肝臓期感染が一致して観察されるためである(Thomasら1994)。チンパンジーは高価でありおよび利用できる数が限られているので、ほとんどの実験室での研究は齧歯動物マラリア種P.ベルゲイまたはP.ヨエリイを用いてマウスで実施される。これら後者の二つのモデルはよく研究されており、両方ともスポロゾイト感染に対する保護的免疫性においてCD8+veリンパ球が鍵となる働きを果たしていることが示されている。
【0008】
従来の研究はマラリアに対するCD8+ T細胞応答を含む種々の方法を評価している。これらのいくつかは齧歯動物モデルにおけるCD8+ T細胞応答のいくつかのレベルおよびマラリア感染に対する部分的保護を示している(例えば、Liら1993;Sedegahら1994;Lanarら1996)。しかしながら、マラリアスポロゾイト感染を有効に保護するための十分に高レベルのCD8+ Tリンパ球の導入によるサブユニットワクチン免疫化の有効な方法はこれまで示されていない。
【0009】
最近、抗原を運ぶために使用されるベクターを変えることにより改良された免疫応答を発生させる可能性のあるワクチンが考えられた。初回刺激および追加刺激として連続的に投与された二つの異なったベクターを使用することにより抗体応答が改良されたいくつかの例での証拠が存在する。初回刺激および追加刺激の種々の組み合わせが異なったワクチン投与法で試験された。
【0010】
Leongら(Vaccines 1995,327−331)は、最初にインフルエンザヘマグルチニン(HA)抗原を発現するDNAで、続いてHAを発現する組換え鶏痘ベクターによるマウスの免疫化を記載している。追加刺激後に促進された抗体応答が得られている。
【0011】
Richmondら(Virology 1997,230:265−274)はDNA初回刺激および組換えワクシニアウイルス追加刺激を用いてHIV−lenvに対する中和抗体を上昇させる試みを記載している。この初回刺激−追加刺激法では低レベルの抗体応答しか観察されず、結果は落胆するものであった。
【0012】
Fullerら(Vaccine 1997,15:924−926およびImmunol Cell Biol 1997,75:389−396)は複製する組換えワクシニアウイルスによる追加刺激免疫化を使用することによるマカクのDNA免疫化に対する抗体応答の促進を記載している。しかしながら、ウイルス負担の非常な減少としての促進された保護的効能には転化されず、DNA初回および追加刺激動物においてCD4T細胞損失の減弱がみられた。
【0013】
Hodgeら(Vaccine 1997,15:759−768)は組換え鶏痘ウイルス(ALVAC)で発現されたヒト胎児性癌抗原(CEA)を用いた癌のマウスモデルにおけるリンパ球増殖性T細胞応答の誘導を記載している。著者らはWyethまたはWR株のCEA−組換え複製適格性ワクシニアウイルスで免疫応答を初回刺激し、CEA−組換えALVACで応答を追加刺激した。これはT細胞増殖を増加させたが、3回の野生型組換え免疫化(100%保護)、3回の組換えALVAC−CEA免疫化(70%保護)またはWR初回刺激に続く2回のALVAC−CEA免疫化(63%保護)と比較した合台、保護的効能の促進は得られなかった。
【0014】
それ故、異種初回刺激−追加刺激の組み合わせのいくつかの研究では抗体およびリンパ球増殖性応答のいくらかの促進は観察されたが、動物モデルにおける保護的効能には有意な影響を与えなかった。これらの研究においてCD8 T細胞は測定されていない。抗体応答があまり促進されなかったのは多分、初回刺激免疫原に対する抗体はしばしば同一の免疫原による第二の免疫化の免疫原性を減少させるであろうが、異なった担体による追加刺激はこの問題を部分的に克服するであろうという事実を単に反映しているのであろう。この機構は免疫化の順序には有意に影響されないことが期待されるであろう。
【0015】
異種初回刺激−追加刺激免疫化法がCD8 T細胞応答に影響するという証拠がLiら(1993)により提出された。かれらは二つの生きているウイルスベクターの投与、即ち、組換えされた複製するインフルエンザウイルス続いてのマラリアエピトープをコードしている組換えされた複製するワクシニアウイルス、によりマラリアスポロゾイト感染に対してマウスで誘導された部分的な保護的効能を記載している。免疫化の順序を逆転させると保護的効能が失われ、著者らはワクシニアによる肝臓細胞の感染に関連し、マラリア原虫の肝臓期に対する保護のために肝臓中にCTLの局在化が生じることを示唆している。
【0016】
Rodriguesら(J.Immunol.1994,4636−4648)はマラリアスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の免疫優性B細胞エピトープを発現している組換えインフルエンザウイルスの反復投与、続いての組換えワクシニアウイルス追加刺激によるマウスの免疫化を記載している。追加刺激における野性型ワクシニア株および減弱されているが複製適格性であるワクシニア株の使用は非常に類似したレベルの部分的保護を与えた。しかしながら、減弱されているが複製適格性であるワクシニア株は野性型ワクシニア株よりもCD8 T細胞の初回刺激に対してはわずかに免疫原性が劣っていた。
【0017】
Murataら(Cell.Immunol.1996,173:96−107)は、複製する組換えインフルエンザウイルスによる初回刺激およびワクシニアウイルスの複製する株による追加刺激後の促進されたCD8 T細胞応答を報告しており、二つの従来の研究で観察された部分的保護はこの促進されたCD8T細胞誘導によるものであることを示唆している。
【0018】
それ故これら三つの研究を一緒にすると、複製する組換えワクシニアウイルスによる追加刺激免疫化は、複製する組換えインフルエンザウイルスによる初回刺激に続くCD8 T細胞誘導をある程度促進するという証拠を提供している。しかしながら、それらの潜在的有用性に関するこれらの発見には二つの制限が存在する。第一に、誘導された免疫原性マラリアに対して部分的保護を達成する程度でしか十分ではなく、これは非常に免疫原性である通常ではない複製する組換えインフルエンザウイルスによる初回刺激免疫化に依存していた。第二に、免疫原としてこれらの複製するウイルスを使用する潜在的および記載された副作用のため、これらの組換えベクターはワクチンとしてヒト一般への使用には適していない。
【0019】
修飾ワクシニアウイルス アンカラ(MVA)は、正常ヒト組織を含むほとんどの細胞型で複製しないワクシニアウイルスである。MVAはトルコのアンカラでウマの痘疹病変から誘導された材料をニワトリ胎児線維芽細胞(CEF)で>500回の連続継代培養により誘導された(Mayrら1975)。複製欠陥的であるが、それにもかかわらず獣医学的にポックスウイルス感染に対して保護的免疫性を誘導できることが示されている(Mayr 1976)。MVAは天然痘根絶キャンペーンの最終期においてヒトワクチンとして使用されており、南ドイツにおいて>120,000の被験者に皮内、皮下および筋肉内経路で投与されている。湿疹のような高リスク群へのワクチン接種の計画的標的化にもかかわらず、有意な副作用は記録されていない(Mayrら1978;Sticklら1974;Mahnelら1994)。MVAの安全性は照射マウスおよび続いての新生児マウスへの頭蓋内投与を含む動物モデルにおけるウイルスの無毒性を反映している。MVAが複製しないことはニワトリ漿尿膜上の増殖性白色プラークの産生、非鳥類細胞の不発感染および全部で約30kbの六つのゲノム欠損に相関していた(Meyerら1991)。MVAの無毒性は宿主域遺伝子K1LおよびC7Lに影響する欠損に部分的に帰するとされているが、ヒトTK−143細胞およびアフリカミドリザルCV−1細胞では制限されたウイルス複製が起こる(Altenburgerら1989)。K1L遺伝子の回復は、MVA宿主域をただ部分的に回復させる(Sutterら1994)。宿主域制限はウイルス粒子成熟の間に起こるようであり、電子顕微鏡法でヒトヒーラー細胞中に未成熟ビリオンのみが観察されている(Sutterら1992)。ウイルス複製における後期阻害はMVA中の組換え遺伝子の効率的発現を防止しない。インフルエンザ核タンパク質、インフルエンザヘマグルチニンおよびSIVタンパク質を発現している組換えMVAは免疫原性であることが証明されており、CD8+ Tリンパ球のみに帰せられるものではないが、動物モデルにおいていろいろな程度の保護を示している(Sutterら1994;Hirschら1995;Hirschら1996)。組換えMVAは、その安全性および免疫原性特性のためヒトワクチン候補として見込みがあると考えられる(Mossら1995)。異物抗原をコードしているDNAを含む組換えMVAは米国特許第5,185,146号(Altenburger)に記載されている。
【0020】
ポックスウイルスは、通常細胞性サイトカインレセプターの細胞外ドメインと類似の配列を持つ腫瘍壊死因子、IL−1β、インターフェロン(IFN)−α/βおよびIFN−γの可溶性レセプターとして機能する分泌タンパク質の産生を含む宿主免疫応答の回避のための戦略を発展させた(Symonsら1995;Alcamiら1995;Alcamiら1992)。この性質を持ち、最も最近に報告されたレセプターはケモカインレセプターである(Grahamら1997)。これらウイルスレセプターは一般に適切な宿主免疫応答を阻害するかまたは消失させ、それらの存在は増大した病原性に関連する。IL−1βレセプターは例外である:その存在は感染に直面して宿主発熱応答を弱め、および宿主生存を高める(Alcamiら1996)。我々はMVAにはインターフェロンγ、インターフェロンαβ、腫瘍壊死因子およびCCケモカインの機能性サイトカインレセプターが欠けているが、潜在的に有益なIL−1βレセプターを保持していることを発見した。MVAはこのサイトカインレセプタープロフィールを保持している唯一の既知ワクシニア株であり、理論的に他のポックスウイルスと比較するとより安全でおよびより免疫原性である。別の複製欠陥的および安全なワクシニア株はNYVACとして知られており、Tartagliaらにより完全に記載されている(Virology 1992,188:217−232)。
【0021】
生きているウイルスは組換えワクチンベクターとしていくつかの魅力的な特色を持っており、異物抗原に対する高い適応力および細胞免疫応答のためのかなり良好な免疫原性が含まれる(Ellis 1988ワクチン作成のための新技術”ワクチン”、編者:Plotkin SAおよびMortimer EA.WB Saunders,Philadelphia,568ページ;Woodrow GC 1977”新世代ワクチン第二版”編者:Levine MM,Woodrow GC,Kaper JB,Cobon G,33ページ)。このことにより、複製能力を減少させることを含む種々の方法でそのような生きているベクターの毒性を減弱させる試みが行われた(Tartagliaら1992 Virology 188:217−232)。しかしながら、そのような複製能力の減少はウイルスにより生み出される抗原の量を減少させ、それによりワクチン免疫原性を減少させることが予期されるであろう。実際、複製するワクシニア株の減弱は抗体応答のいくらかの実質的減少を導くことが以前に示されている(Lee MSら1992 J Viro1ogy 66:2617−2630)。同様に、狂犬病研究において非複製鶏痘ベクターは複製する野生型ワクシニア株よりも抗体産生のための免疫原性が弱く、より保護的でないことが観察されている(Taylor Jら1991 Vaccine 9:190−193)。
【0022】
ポックスウイルスの非複製および複製欠陥株が初回刺激CTL応答に対し特別に良好な追加刺激効果を与えるベクターを提供することがここに発見された。驚くべきことに、この効果は野生型ポックスウイルスによる追加刺激効果よりも著しく強かった。この効果はマラリアおよびウイルスおよび腫瘍抗原のような他の抗原で観察され、マウスおよび非ヒト霊長類感染実験で示されたように保護的である。スポロゾイトの攻撃誘発(challenge)からの部分的というよりも完全な保護が新規免疫化投与法で観察された。
【0023】
マラリアに対して免疫する有効な手段を同定するのもこの発明の目的である。CD8+ T細胞応答が保護的働きを果たしている手段を同定するのもこの発明のさらなる目的である。そのような疾患にはHIV、単純ヘルペス、帯状ヘルペス、C型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、エプスタイン−バール、麻疹、デング熱およびHTLV−1ウイルスにより;細菌結核菌およびリステリア種により;および原虫寄生体トキソプラズマおよびトリパノソーマにより;およびある形の癌(例えば、メラノーマ、乳癌および結腸癌)で起こされる感染および疾患が含まれるがそれらに制限されるわけではない。
【0024】
本明細書において非常に高レベルのCD8+ T細胞を発生したおよびP.ベルゲイスポロゾイト攻撃誘発に対して先例のない完全保護を誘導できることが観察された新規免疫化法が説明される。同一の方法がより高等な霊長類で試験され、この種においても高度に免疫原性であることが観察され、および熱帯熱マラリア原虫の攻撃誘発に対して部分的保護を誘導することが観察された。保護的免疫応答の誘導は二つの追加のウイルス感染および癌のマウスモデルにおいても示された。
【0025】
本明細書に記載されている新規免疫化法ではまたHIVエピトープに対する強力なCD8+ T細胞応答を発生するのに有効である新規免疫化法がさらに示される。かなりの証拠がそのようなCD8+ T細胞応答の発生はこのウイルス感染および疾患に対する予防的および治療的免疫化に有効であると期待できることを示している(Gallimoreら1995;Ada 1996)。強いCD8+ T細胞応答はHIVおよびマラリア両方からの配列を持つエピトープ列を用いてこれらの微生物からのエピトープに対して発生されるであろうことが示される。HIVおよびマラリアエピトープおよびインフルエンザおよび腫瘍エピトープ両方に対する促進された免疫原性の発生における成功は、この新規免疫化法は強力なCD8+ T細胞応答が有用であろう多くの感染性病原体および非感染性疾患に一般的に有効であろうことを示している。
【0026】
本発明の驚くべき特色とは初回刺激および特にCD8+ T細胞の追加刺激の両方における非複製作用物質の非常に高い効能の発見である。一般に、生きているウイルスベクターによるCD8+ T細胞誘導の免疫原性は非複製作用物質または複製欠陥ベクターよりも高いことはすでに見いだされている。このことは宿主中で複製できる作用物質により産生される抗原の量がより多いことから予期されるであろう。しかしながらここで我々は非複製ベクターを用いて最大の免疫原性および保護的効能が驚くべきことに観察されたことを見いだした。後者はヒトにおける使用のためには複製するベクターよりも一般的に安全であるということでワクチン接種における利点を追加する。
【0027】
本発明は一つの態様において、少なくとも一つの標的抗原に対して保護的CD8+ T細胞免疫応答を発生するためのキットを提供し、本キットは以下のものを含んでいる:
(i) 標的抗原の一つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープ源、ならびに医薬品として受容可能な担体から成る初回刺激組成物;および
(ii)初回刺激組成物のCD8+ T細胞エピトープと同一である少なくとも一つのCD8+ T細胞エピトープ源を含む標的抗原の一つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープ源、ここでCD8+ T細胞エピトープ源は非複製または複製欠陥組換えポックスウイルスベクターである、ならびに医薬品として受容可能な担体から成る追加刺激組成物;
ただし、(i)のエピトープ源がウイルスベクターであるならば、(ii)におけるウイルスベクターは異なったウイルスから誘導される。
【0028】
本発明の別の態様は少なくとも一つの標的抗原に対する保護的CD8+ T細胞免疫応答を発生させるための方法を提供し、本方法は本発明に従ったキットの組成物(i)の少なくとも一回量、続いて組成物(ii)の少なくとも一回量を投与することから成っている。
【0029】
好適には、本発明に従った方法における(i)のCD8+ T細胞エピトープ源は非ウイルスベクターまたは非複製または複製欠陥ウイルスベクターであるが、複製するウイルスベクターを使用してもよい。
【0030】
好適には、(i)のCD8+ T細胞エピトープ源は初回刺激および追加刺激間の交差反応が最小となるようにするためにポックスウイルスベクターではない。
本発明の一つの好適な態様において、初回刺激組成物中のCD8+ T細胞エピトープ源は核酸(DNAでもRNAでもよい)、特に組換えDNAプラスミドである。DNAまたはRNAは包まれていてもよいし(例えば、リソソーム中に)または遊離の形でもよい。
【0031】
本発明の別の好適な熊様において、初回刺激組成物中のCD8+ T細胞エピトープ源はCD8+ T細胞エピトープの組換え列中または標的抗原中に存在するペプチド、ポリペプチド、タンパク質、多タンパク質または二つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープを含む粒子である。多タンパク質は二つまたはそれ以上のタンパク質を含んでおり、それらは同じものでもよいが好適には異なっておりお互いに連結されている。この態様で特に好適であるのはTyウイルス様粒子(VLP)(BurnsらMolec.Biotechnol.1994,1:137−145)のような組換えタンパク質様粒子である。
【0032】
好適には、追加刺激組成物中のCD8+ T細胞エピトープ源はMVAまたはNYVACのようなワクシニアウイルスベクターである。最も好適であるのはワクシニア株修飾ウイルスアンカラ(MVA)またはそれらから誘導された株である。ワクシニアベクターの代替物としては鶏痘またはカナリア痘ベクターのようなアビポックスベクターが挙げられる。アビポックスベクターとして特に適しているのはALVACとして知られているカナリア痘の株(Kanapoxの名前で市販品として入手可能である)およびそれらから誘導された株である。
【0033】
ポックスウイルスゲノムは多量の異種遺伝子情報を運ぶことができる。ワクチンでの使用におけるウイルスベクターの他の必要条件は良好な免疫原性および安全性である。MVAは良好な安全性の記録を持つ複製欠陥ワクシニア株である。
【0034】
ほとんどの細胞型および正常ヒト組織において、MVAは複製を起こさない;MVAの制限された複製がBHK21細胞のような少数の形質転換された細胞型で観察される。本明細書に記載された結果から、組換えMVAおよび他の非複製または複製欠陥株は、DNAプラスミド、組換えTy−VLPまたは組換えアデノウイルスによる初回刺激に続いての追加刺激組成物として投与した場合、保護的CD8+ T細胞応答を発現させることにおいて通常の組換えワクシニアベクターよりも驚くほどおよび著しく良好であることがここに示されている。
【0035】
MVAから誘導されたワクシニアウイルス株、またはワクチンでの使用にMVAを特に適したものにするMVAの特色を持っている独立して開発された株は本発明での使用に適しているであろうことが明らかにされるであろう。
【0036】
エピトープの挿入列を含んでいるMVA(MVA−HM、実施例に説明されている)は1997年6月5日にEuropean Collection of Animal Cell Cultures,CAMR,Salisbury,Wiltshire SP40JG,UKにV97060511の受け入れ番号で寄託された。
【0037】
本明細書で使用される用語”非複製”または”複製欠陥”とは大多数の哺乳類細胞または正常ヒト細胞中で有意な程度では複製できないことを意味している。
非複製または複製欠陥であるウイルスは自然にそうなるかまたはインビトロでの繁殖によりまたは例えば、複製に決定的である遺伝子の欠損のような遺伝子操作により人工的に作製される。MVAに対するCEF細胞のように、ウイルスが増殖できる一つまたは少数の細胞型が一般的に存在するであろう。
【0038】
ウイルスの増殖は一般的に二つの方法で測定される:1)DNA合成および2)ウイルス力価。より正確には、用語”非複製または複製欠陥”が本明細書で使用される場合およびそれがポックスウイルスに適用される場合、以下の基準の片方または両方を満足するウイルスを意味している:
1)MRC−5細胞(ヒト細胞株)においてワクシニアウイルスのコペンハーゲン株と比較してDNA合成に1log(10倍)の減少を示す;
2)ヒーラー細胞(ヒト細胞株)においてワクシニアウイルスのコペンハーゲン株と比較してウイルス力価に2logの減少を示す。
【0039】
この定義に含まれるポックスウイルスの例はMVA、NYVACおよびアビポックスウイルスであり、定義に含まれないウイルスは減弱ワクシニア株M7である。
本発明に従った初回刺激に使用するための別の好適なウイルスベクターには、遺伝学上非複製または複製欠陥であるようになされた種々の異なったウイルスが含まれる。非複製または複製欠陥ベクターを産生するようなウイルスの遺伝子操作は文献に多く記載されている(例えば、McLeanら1994)。
【0040】
初回刺激に使用するための別の適したウイルスベクターは、ヘルペスウイルスおよびベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)(Daviesら1996)に基づいたベクターである。初回刺激に適した細菌ベクターには組換えBCGおよび組換えサルモネラおよびプラスミドDNAで形質転換したサルモネラ(Darjiら1997 Cell 91:765−775)が含まれる。
【0041】
初回刺激に使用するための別の適した非ウイルスベクターには、リポペプチドとして知られている脂質の尾をつけたペプチド、融合タンパク質としてまたは化学結合によりKLHのような担体タンパク質に融合されたペプチド、アジュバントを含む全抗原およびその他の類似の系が含まれる。QS21またはSBAS2(Stouteら1997 N Engl J Medicine 226:86−91)のようなアジュバントがT細胞応答の誘導を促進させるためにタンパク質、ペプチドまたは核酸とともに使用されるであろう。これらの系はしばしば”ベクター”というよりも”免疫原”と称されるが、それらは関連するCD8+ T細胞エピトープを運んでいるという意味で本明細書においてはベクターである。
【0042】
初回刺激および追加刺激組成物は両方とも前記(i)で定義されたようなCD8+ T細胞エピトープの初回刺激源および前記(ii)で定義されたようなCD8+ T細胞エピトープの追加刺激源を含んでいるのでそれらの組成物は同一でなければならないという理由はない。初回刺激としておよび追加刺激として使用できる単一処方が単に投与されるであろう。重要なことは、初回刺激物は少なくとも前記(i)で定義されたようなエピトープの初回刺激源を含んでおり、および追加刺激物は少なくとも前記(ii)で定義されたようなエピトープの追加刺激源を含んでいることである。
【0043】
初回刺激および追加刺激組成物中に存在するまたはそれらによりコードされているCD8+ T細胞エピトープは、一つまたは二つまたはそれ以上のエピトープの組換え列のような種々の異なった形で、または天然の標的抗原の環境で、またはこれら両方の組み合わせで提供される。CD8+ T細胞エピトープは多くの異なった疾患に対して同定されており文献に見ることができる。そのようなエピトープを含む任意の抗原に対してCD8+ T細胞応答を発生させるようにエピトープ列を設計することが可能である。都合よくは、不必要な核酸および/またはアミノ酸材料が回避されるように、配列が間に入ることなく多エピトープ列中のエピトープが連結される。CD8+ T細胞エピトープに加え、エピトープ列により発生される免疫応答を増大させるため、Tヘルパー細胞により認識される一つまたはそれ以上のエピトープを含んでいることが好適であろう。特に適したTヘルパー細胞エピトープは異なったHLA型の個体で活性化されるものである、例えば、破傷風からのTヘルパーエピトープ(それに対しほとんどの個体はすでに初回刺激されているであろう)。三つのヘルパーエピトープの有用な組み合わせが本明細書に記載された実施例で用いられている。B細胞応答および抗体産生を促進するためのB細胞エピトープを含ませるのも有用であろう。
【0044】
記載されている初回刺激および追加刺激組成物は都合よくはアジュバントを含んでいる。特に、DNAプラスミドを含んでいる初回刺激組成物はさらにアジュバントとして作用するための顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)またはそれをコードしているプラスミドも含んでいる;ポリペプチド形のGM−CSFを使用すると有益な効果が観察された。
【0045】
本明細書に記載された組成物は治療的または予防的ワクチンとして用いられる。予防的または治療的免疫化のどちらがより適切であるかは通常疾患の特性に依存するであろう。例えば、癌ではそれが診断される前というよりはむしろ治療的に免疫化されるであろうし、一方、抗マラリアワクチンは必ずというわけではないが、好適には予防的に使用されるであろう。
【0046】
本発明の組成物は種々の異なった経路で投与される。より効果的な応答の発生が得られるように、または副作用を引き起こすことがより少なくなるように、または投与がより簡単であるように、ある種の組成物に対してはある種の経路が好都合である。本発明は、金ビーズ上かまたは粉末としての遺伝子銃送達で有効であることが示されている。
【0047】
さらなる態様において、本発明は以下のものを提供する: 病原体または腫瘍に対する保護的CD8+ T細胞免疫応答を発生させるための方法であって、但し本方法は少なくとも一つのCD8+ T細胞エピトープまたは病原体または癌の抗原をコードしている組換えDNAプラスミドの少なくとも一回量、続いて同一のエピトープまたは抗原をコードしている非複製または複製欠陥組換えポックスウイルスの少なくとも一回量を投与することから成る;
病原体または腫瘍に対する保護的CD8+ T細胞免疫応答を発生させるための方法であって、但し本方法は少なくとも一つの病原体または癌のエピトープまたは抗原を含む組換えタンパク質または粒子の少なくとも一回量、続いて同一のエピトープまたは抗原をコードしている組換えMVAベクターの少なくとも一回量を投与することから成る;
CD8+ T細胞免疫応答を追加刺激するための医薬品の製造における組換え非複製または複製欠陥ポックスウイルスベクターの使用;
CD8+ T細胞免疫応答を追加刺激するための医薬品の製造におけるMVAベクターの使用;
標的抗原の一つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープ源を含む、少なくとも一つの標的抗原またはエピトープに対する初回刺激CD8+ T細胞応答を追加刺激するための医薬品ならびに医薬として受容可能な担体、ここでCD8+ T細胞エピトープ源は非複製または複製欠陥組換えポックスウイルスベクターである;および 遺伝子銃による送達に適した特別な形の本明細書に記載されている初回刺激および/または追加刺激組成物;および遺伝子銃法による組成物の送達から成る免疫化法。
【0048】
以下のものも本発明により提供される:表1および表2に掲けられたアミノ酸配列から成るエピトープ列を含む本明細書に記載されたエピトープ列;エピトープ列をコードしている組換えDNAプラスミド;エピトープ列を含む組換えTy−VLP;熱帯熱マラリア原虫抗原TRAPをコードしている組換えDNAプラスミドまたは非複製または複製欠陥組換えポックスウイルスベクター;および全または実質的に全部のTRAPのようなタンパク質抗原、およびマラリアからのCTLエピトープのような配列中の二つまたはそれ以上のエピトープの列から成る組換えポリペプチド。
【0049】
実施例処方および免疫化プロトコール
処方1
初回刺激組成物: DNAプラスミド1mg/mlPBS溶液
追加刺激組成物: 組換えMVA、108ffu PBS溶液
プロトコール:初回刺激組成物の1mgをi.m.で0および3週に2回、続いて追加刺激物を6および9週に皮内に投与する。
処方2
初回刺激組成物: Ty−VLP PBS溶液
追加刺激組成物: MVA、108ffu PBS溶液
プロトコール:初回刺激組成物をi.m.で0および3週に2回、続いて追加刺激物を6および9週に投与する。腫瘍処置のためには、MVAは最も有効な経路としてi.v.で投与される。
処方3
初回刺激組成物: タンパク質500μg+アジュバント(QS−21)
追加刺激組成物: 組換えMVA、108ffu PBS溶液
プロトコール:初回刺激組成物を0および3週に2回、続いて追加刺激物を6および9週にi.d.で投与する。
処方4
初回刺激組成物: アデノウイルスベクター、109pfu PBS溶液
追加刺激組成物: 組換えMVA、108ffu PBS溶液
プロトコール:初回刺激組成物を皮内に0および3週に2回、続いて追加刺激物を6および9週にi.d.で投与する。
【0050】
上記の投与量およびプロトコールは保護を最大にするために変更されることもある。例えば、2週離すというよりも1から8週離して投与されてもよい。
本発明は以下の実施例でさらに説明されるであろう。
【0051】
実施例
実施例1
材料および方法
エピトープ列の発生
マラリアエピトープ列は各々が表1に示されたような三つのエピトープをコードしている一連のカセットから作製された(カセットは各々の末端に制限酵素部位を含んでいる)。各々のカセットは四つの合成オリゴヌクレオチドから構築され、それらはお互いにアニールされ、クローニングベクター内へ結合され、続いてエラーが導入されていないことを検査するために配列決定された。個々のカセットは次に必要に応じてお互いに連結された。カセットCの3’末端のBamHI部位はカセットAの5’末端のBglII部位と融合され、両方の制限酵素部位を破壊して二つのカセット間に二つのアミノ酸スペーサー(GS)がコードされる。カセットB,DおよびHは次に同一の方法で一列に連結された。CABDHFEを含むより長い列も同じ方法で構築された。
【0052】
【表1】

【0053】
表1 マラリアエピトープ列に含まれている配列。各々のカセットは上に示されたエピトープから成っており(示された順序で)、カセット内のエピトープ間には追加の配列は存在しない。エピトープ列中のカセット間にBamHI/BblII連結がGSをコードするようにBglII部位が5’末端におよびBamHI部位が3’末端に加えられた。pb9(P.ベルゲイ)、BCG(結核菌)およびTT(破傷風菌)を除いてすべてのエピトープは熱帯熱マラリア原虫抗原からのものである。表に示されたアミノ酸およびDNA配列はそれらが出てくる順序に配列ID番号:1から40を持っている。
【0054】
図1はマラリアエピトープカセットCABDHFEを持つTy−VLPを発現するために使用された構築物を示している。CTLエピトープは熱帯熱マラリア原虫抗原STARP(スポロゾイト スレオニンおよびアスパラギンに富むタンパク質)(st)、LSA−1(肝臓期抗原1)(1s)、CSP(スポロゾイト周囲タンパク質(cp)、TRAP(トロンボスポンジン関連付着タンパク質)(tr)、LSA−3(肝臓期抗原3)(la)およびExp−1(エキスポートされたタンパク質1)(ex)からのものである。ヘルパーエピトープは熱帯熱マラリア原虫CSタンパク質、結核菌38Kd抗原および破傷風毒素からのものである。NANPはCSからの抗体エピトープであり、AMは熱帯熱マラリア原虫TRAPからの付着モチーフである(Mullerら1993)。完全列の長さは表1の注に示されているように229アミノ酸であり、以下のアミノ酸配列である:MINAYLDKLISKYEDEISYIPSAEKIGSKPNDKSLYKPKDELDYKPIVQYDNFGSASKNKEKALIIGIAGGLALLMNPNDPNRNVGSHLGNVKYLVKSLYDEHILLMDCSGSIGSDPNANPNVDPNANPNVQVHFQPLPPAVVKLQFIKANSKFIGITEGSYLNKIQNSLMEKLKELEKATSVLAGLGSNANPNANPNANPNANPDEWSPCSVTCGKGTRSRKREGSGK[配列ID番号:41]。
【0055】
HIVエピトープ列もまたオリゴヌクレオチドをアニールすることで合成された。最後にHIVおよびマラリアエピトープはHIVエピトープ3’末端のBamHI部位をカセットCAB5’末端のBglII部位へ結合させてHM列を形成させることにより融合された(表2)。
【0056】
【表2】

【0057】
表2 HIVまたはSIVからのエピトープの配列はHエピトープ列に含まれており図2に示されたように組み立てられた。表中のアミノ酸はそれらが出てくる順序に配列ID番号:42から64を持っている。
【0058】
図2はH、MおよびHMタンパク質の図的概要を示している。ポリエピトープタンパク質の図的表現でのバーパターンは配列の起点を示している(表1および2参照)。個々のエピトープおよびそれらのMHC制限はタンパク質の上および下に示されている。pbはP.ベルゲイタンパク質から誘導されたただ一つのエピトープである。Mタンパク質中のすべての他のエピトープは熱帯熱マラリア原虫のタンパク質に起源するものである:cs−スポロゾイト周囲タンパク質、st−STARP、ls−LSA−1およびtr−TRAP。結核菌のBCG−38kDaタンパク質;TT−破傷風毒素。
【0059】
抗腫瘍ワクチンのため、マラリアおよびHIVエピトープ列に類似した、CTLエピトープを含んでいるエピトープ列を発生させた。この腫瘍エピトープ列においては報告されたマウスCTLエピトープがお互いに融合され:MLPYLGWLVF−AQHPNAELL−KHYLFRNL−SPSYVYHQF−IPNPLLGLD[配列ID番号:65]のアミノ酸配列を持つ腫瘍エピトープ列が作製された。ここに示されたCTLエピトープはお互いに融合された。翻訳を開始させるために最初のアミノ酸メチオニンが導入された。
【0060】
Tyウイルス様粒子(VLP)
カセットCABDHを含んでいるエピトープ列はC末端をTyAタンパク質読み枠内融合するように酵母発現ベクター内へ導入された。TyAまたはTyA融合タンパク質が酵母内でこのベクターから発現された場合、タンパク質は自発的にウイルス様粒子を形成し、それはショ糖濃度勾配遠心分離により酵母の細胞質から分離できる。組換えTy−VLPはこの方法で調製され、注射前にショ糖を除去するためにPBSに対して透析された(Laytonら1996参照)。
【0061】
アデノウイルス
E1遺伝子の欠損した複製欠陥組換えアデノウイルスが本研究で使用された(McGroryら1988)。アデノウイルスはCMV IEプロモーター調節下で大膳菌β−ガラクトシダーゼを発現した。免疫化のためには、107pfuのウイルスが耳垂内に皮内で投与された。
【0062】
ペプチド
ペブチドはResearch Genetics(USA)から購入され、10mg/mlでDMSO(Sigma)に溶解され、さらにPBSで1mg/mlに希釈された。実験に使用されたCTLエピトープを含んでいるペプチドは表3に記載されている。
【0063】
【表3】

【0064】
表3中のアミノ酸はそれらが出てくる順序に配列ID番号:66から73を持っている。
【0065】
プラスミドDNA構築物
多数の異なったベクターがDNAワクチンを構築するために使用された。プラスミドpTHは抗原コード配列およびウシ成長ホルモン転写終止配列の導入を可能にするため、ポリリンカーが続いたイントロンAを持つCMV IEプロモーターを含んでいる。本プラスミドはアンピシリン耐性遺伝子を運んでおり、大腸菌内では複製できるが哺乳動物細胞では複製できない。これは以下の抗原の各々を発現するDNAワクチンを製作するために使用された:P.ブルゲイTRAP、P.ブルゲイCS、熱帯熱マラリア原虫TRAP、熱帯熱マラリア原虫LSA−1(C末端の278アミノ酸のみ)、カセットCABDHを含んでいるエピトープ列、およびHMエピトープ列(HIVエピトープにカセットCABが続いたもの)。プラスミドpSG2は抗生物質耐性遺伝子を除いてpTHと同じである。
【0066】
pSG2においてはpTHのアンピシリン耐性電子はカナマイシン耐性遺伝子に置き換えられている。pSG2は以下の抗原を発現するDNAワクチンを製作するために使用された:P.ブルゲイPbCSP、マウス腫瘍エピトープ列、カセットCABDHおよびHMエピトープ列を含んでいるエピトープ列。プラスミドVIJ−NPはCMV IEプロモーター制御下でインフルエンザ核タンパク質を発現する。プラスミドCMV−TRAPおよびCMV−LSA−1はpTH.TRAPおよびpTH.LSA−1に似ているが、CMVプロモーターのイントロンAを含んでいない。プラスミドRSV.TRAPおよびRSV.LSA−1はRSVプロモーター、SV40転写終止配列を含んでおり、テトラサイクリン耐性である。β−ガラクトシダーゼ特異的CTL導入のため、プラスミドpcDNA3/His/LacZ(Invitrogen)が使用された。すべてのDNAワクチンはQiagenプラスミド精製カラムを用いて大腸菌株DH5αから製造された。
【0067】
組換えワクシニアウイルスの発生
組換えMVAは最初に抗原配列をプラスミドpSC11のようなウイルスプロモーターを持つシャトルベクター内へクローニングすることにより作製された(Chakrabartiら1985;Morrisonら1989)。P.ベルゲイCSおよび熱帯熱マラリア原虫TRAP、インフルエンザ核タンパク質およびHMおよびマウス腫瘍エピトープポリエピトープ列はP7.5プロモーター(Mackettら1984)を用いて発現され、およびP.ベルゲイTRAPは強力合成プロモーター(SSP;Carrollら1995)を用いて発現された。次に、プロモーター、抗原コード配列およびマーカー遺伝子に隣接するウイルス配列をMVAと組換えして組換え体が生成するように、シャトルベクターpSC11またはpMCO3が野生型MVAで感染させた細胞の形質転換に使用された。組換えウイルスはマーカー遺伝子(βグルクロニダーゼまたはβガラクトシダーゼ)を発現するので組換えウイルスを含んでいるプラークの同定が可能である。組換え体は免疫化に使用する前に繰り返してプラーク精製された。組換えNYVAC−PbCSPワクシニアは以前に報告されている(Lanarら1996)。PbCSPをコードしている組換えワクシニアの野生型またはウェスタンリザーブ(WR)株は以前に報告されている(Satchidanandamら1991)。
【0068】
細胞および培養培地
マウス細胞およびエプスタイン−ーバールウイルス形質転換チンパンジーおよびマカクB細胞(BCL)は10%熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)を補給したRPMIで培養した。脾細胞は10%FCS、2mMグルタミン、50U/mlペニシリン、50μM 2−メルカプトエタノールおよび10mMヘペスpH7.2(Gibco,UK)を加えたMEM培地中、示されたペプチド(最終濃度1μg/ml)で再刺激された。
【0069】
動物
示された系統のマウス、6−8週齢はHarlan Olac(Shaws Farm,Blackthorn,UK)から購入された。チンパンジーH1およびH2はBiomedical Primate Research Centre,Rijswick,The Netherlandsで研究された。マカクはUniversity of Oxfordで研究された。
【0070】
免疫化
マウスのプラスミドDNA免疫化は麻酔下、頸骨筋内へのDNAの筋肉内免疫化により実施された。マウス筋肉は時によりDavisら(1993)により記載されているように免疫化の5−9日前に50μlの1mMカルジオトキシン(Latoxan,France)で前処理されたが、そのような前処置は免疫原性または保護効能には何の有意な影響も与えなかったことが観察された。マウスのMVA免疫化は筋肉内(i.m.)、静脈内(外側尾静脈内)(i.v.)、皮内(i.d.)腹腔内(i.p.)または皮下(s.c.)免疫化により実施された。チンパンジーH1およびH2のプラスミドDNAおよびMVA免疫化は麻酔下で脚筋肉の筋肉内免疫化により実施された。これらのチンパンジー免疫化には、アジュバントとして15マイクログラムのヒトGM−CSFがプラスミドDNAと同時に投与された。チンパンジーへの組換えMVA投与は獣医監督下での筋肉内免疫化によるものであった。組換えヒトGM−CSFはSandoz(Camberley,UK)から購入された。遺伝子銃を用いるプラスミドDNA免疫化のため、DNAは金粒子上に沈殿させた。皮内送達のためには、二つの異なった型の遺伝子銃が使用された、AcellおよびOxford Bioscience装置(PowderJect Pharmaceuticals,Oxford,UK)。
【0071】
ELISPOTアッセイ
CD8+ T細胞は示されたペプチドエピトープおよびMiyaharaら(1993)により記載されているようなELISPOTアッセイを用いてインビトロ再刺激なしで免疫化マウスの脾臓で定量された。簡単に説明すると、96−ウェルニトロセルロースプレート(Miliscreen MAHA,Millipore,Bedford UK)を15μg/mlの抗マウスインターフェロン−γモノクローナル抗体R4(EACC)のリン酸緩衝化塩溶液(PBS)50μlで被覆した。4℃で一夜インキュベーションした後、ウェルを一度PBSで洗い、10%FCSを含む100μlのRPMIを用いて室温で1時間ブロックした。免疫化したマウスからの脾細胞は1x107細胞/mlで再懸濁し、二重に抗体被覆ウェルへ加え、連続的に希釈した。ペプチドは1μg/mlの最終濃度で各々のウェルへ加えられた。ペプチドを加えない追加のウェルはインターフェロン−γ分泌のペプチド依存性のための対照として使用された。5%CO2中、37℃で12−18時間インキュベートした後、プレートをPBSおよび水で6回洗浄した。ウェルは次に1μg/mlのビオチニル化抗マウスインターフェロン−γモノクローナル抗体XMG1.2(Pharmingen,CA,USA)PBS溶液と、室温で3時間インキュベートした。PBSで洗浄後、1μg/mlのストレプトアビジン−アルカリ性ホスファターゼポリマー(Sigma)溶液50μlを室温で2時間加えた。50μlのアルカリ性ホスファターゼ結合体基質溶液(Biorad,Hercules,CA,USA)を加えることによりスポットが現れた。スポット出現後、水で洗うことにより反応を停止させた。スポットの数が立体顕微鏡の助けを借りて決定された。
【0072】
チンパンジー末梢血リンパ球のELISPOTアッセイはヒトCD8 T細胞を検出するために開発されたアッセイおよび試薬(Mabtech,Stockholm)を用いる非常に類似した方法を使用して実施された。
【0073】
CTLアッセイ
CTLアッセイはAllsoppら(1996)により記載されているように、クロム標識標的細胞およびエフェクター細胞として培養マウス脾臓細胞を使用して実施された。チンパンジーまたはマカク細胞を用いるCTLアッセイは、標的細胞としてEBV−形質転換自己由来チンパンジーまたはマカクB細胞株を使用し、Hillら(1992)によりヒトCTLの検出で記載されているように実施された。
【0074】
P.ベルゲイ攻撃誘発
マウスは記載されているように(Lanarら1996)200μlのRPMIに含まれる2000(BALB/c)または200(C57BL/6)のP.ベルゲイANKA株スポロゾイトの静脈内接種により攻撃誘発させた。これらのスポロゾイトは感染マウスへ給餌後、20−25日間18℃に維持されたアノフェレス ステフェンシ蚊の唾液腺から切開された。血液期マラリア感染(免疫化の失敗を示している)は、攻撃誘発の5−12日後に採られたギームザ染色血液塗抹標本中のP.ベルゲイの環形出現を観察することにより検出された。
【0075】
熱帯熱マラリア原虫攻撃誘発
チンパンジーは20,000のアノフェレス ガンビエ蚊の唾液腺から切開されたNF54株熱帯熱マラリア原虫スポロゾイトの麻酔下での静脈内接種により攻撃誘発させた。これらのチンパンジーからの血液試料は、末梢血中の低レベルの熱帯熱マラリア原虫寄生虫の出現を検出するために攻撃誘発の5日後から毎日、顕微鏡および寄生虫培養により試験された。
【0076】
P815腫瘍攻撃誘発
マウスは200μlのPBSに含まれる1x105P815細胞の静脈内接種により攻撃誘発させた。動物は生存率がモニターされた。
【0077】
インフルエンザウイルス攻撃誘発
マウスはインフルエンザウイルスA/PR/8/34の100ヘマグルチニン化単位(HA)の静脈内接種により攻撃誘発させた。攻撃誘発後、動物は毎日秤量され、生存率がモニターされた。
【0078】
四量体を用いたペプチド特異性CTLの決定
Mamu−A*01−重鎖およびβ2−ミクログロブリンから成る四量体複合体はOggら(1998)により記載されているように作製された。リーダーを持たないMamu−A*01 MHCクラスI重鎖の細胞外部分は5’プライマーMamuNdel:5’−CCT GAC TCA GAC CAT ATG GGC TCT CAC TCC ATG[配列ID番号:74]および3’プライマー:5’−GTG ATA AGC TTA ACG ATG ATT CCA CAC CAT TTT CTG TGC ATC CAG AAT ATG ATG CAG GGA TCC CTC CCA TCT CAG GGT GAG GGG C[配列ID番号:75]を用いてcDNAからPCR−増幅された。前者のプライマーはNdeI制限部位を含み、後者はHindIII部位を含んでおり、ビオチニル化酵素BirA基質ペプチドをコードしている。PCR生成物はNdeIおよびHindIIIで切断され細菌発現ベクターpGMT7ポリリンカーの同じ部位へ結合された。リーダーを持たないβ2−ミクログロブリンをコードしているアカゲザル遺伝子はプライマーB2MBACK:5’−TCA GAC CAT ATG TCT CGC TCC GTG GCC [配列ID番号:76]およびB2MFOR:5’−TCA GAC AAG CTT TTA CAT GTC TCG ATC CCA C[配列ID番号:77]を用いてcDNAからPCR−増幅され、同様pGMT7のNdeIおよびHindIII部位にクローン化された。両方の鎖とも大月易菌株BL−21で発現され、封入体から精製され、ペプチドCTPYDINQM[配列ID番号:54]の存在下で再び折り畳まれ、BirA酵素(Avidity)を用いてビオチニル化され、およびFPLCおよびmonoQイオン交換カラムで精製された。ビオチニル化され、再び折り畳まれたMHC−ペプチド複合体の量は、単量体複合体がコンホメーション感受性モノクローナル抗体W6/32により最初に捕捉され、アルカリ性ホスファターゼ(AP)−結合ストレプトアビジン(Sigma)、続いてのAPの比色基質により検出されるELISAアッセイにより見積もられた。四量体複合体の形成はフィコエリスリン(PE)−結合ストレプトアビジン(ExtrAvidin;Sigma)を再折り畳まれ、ビオチニル化された単量体へ4:1のMHC−ペプチド:PE−ストレプトアビジンモル比で加えることにより誘導された。複合体は暗所で4℃にて保存された。これらの四量体は免疫したマカクの末梢血リンパ球(PBL)中のMamu−A*01/gag特異的CD8+ T細胞の頻度を分析するために使用された。
【0079】
実施例2
マウスにおける免疫原性研究
プラスモジウム ベルゲイおよびプラスモジウム ヨエリイのスポロゾイト周囲(CS)タンパク質中のエピトープに対するCTL誘導の以前の研究は異なった送達系による種々のレベルのCTL誘導を示している。プラスミドDNA(Sedegahら1994)、複製するワクシニアウイルスで追加刺激されたインフルエンザウイルス(Liら1991)、アデノウイルス(Rodriguesら1997)および粒子送達系(Schodelら1994)で部分保護が報告されている。50マイクログラムのCSタンパク質をコードしているプラスミドによる筋肉内でのマウス免疫化は、1回注射後にこれらのマウスの脾臓中に中程度のCD8+細胞およびCTL活性を生み出した(図3、4)。
【0080】
比較のため、BALB/cマウスの群(n=5)に、異なった株(WR、NYVACおよびMVA、すべてP.ベルゲイCSPを発現する)の組換えワクシニアウイルスが106ffu/pfuで静脈内に注射された。ペプチド特異的CD8+ T細胞の頻度が10日後にELISPOTアッセイにより測定された。MVA.PbCSPは百万脾臓細胞当たり181+/−48、NYVAC221+/−27およびWR94+/−19(平均+/−標準偏差)のペプチド特異的CD8+ T細胞を誘導した。これらの結果は驚くべきことに複製欠陥ワクシニアウイルスはCD8+ T細胞応答の初回刺激において複製する株より優れていることを示している。次に、初回刺激で誘導されたこれら中程度のCD8+ T細胞応答の追加刺激が同種のまたは異種のベクターを用いてプラスミドDNAまたはMVAで試みられた。低レベルのCD8+ T細胞が、CS組換えDNAワクチン単独、組換えMVAワクチン単独または組換えMVA続いての組換えDNAによる2回の免疫化で観察された(図3)。非常に高レベルのCD8+ T細胞が、DNA初回刺激免疫応答を組換えMVAで追加刺激することにより観察された。群当たり10匹のマウスを使用した第二に実験においてDNA/MVA連鎖における促進された免疫原性が確認された:DNA/MVA 856+/−201;MVA/DNA 168+/−72;MVA/MVA 345+/−90;DNA/DNA 92+/−46。それ故、CSタンパク質をコードしている組換えプラスミドによる第一の免疫化および組換えMVAウイルスによる第二の免疫化の連鎖により、免疫化後に最も高いレベルのCD8+ Tリンパ球応答が得られた。
【0081】
図3は異なった免疫化法後のマラリアCD8 T細胞ELISPOTデータを示している。結果は百万脾臓細胞当たりのペプチド特異的T細胞の数として示されている。マウスは2週間隔で、X軸に示されているようなPbCSP−MVAウイルスかまたはPbCSP−MVAウイルスまたはこれらの二つの組み合わせで免疫され、最後の免疫化2週間後にpb9マラリアエピトープに特異的な脾臓細胞の数がアッセイされた。各々の点は個々のマウスで測定されたスポット形成細胞(SFC)の数を示している。最も高いCD8+ T細胞レベルはプラスミドDNAで初回刺激し、組換えMVAウイルスで追加刺激することにより誘導された。これは逆の順序での免疫化(MVA/DNA)、2回のDNA免疫化(DNA/DNA)または2回のMVA免疫化(MVA/MVA)よりも免疫原性であった。それはまたDNAおよびMVA免疫化が同時に行われたよりも(DNA+MVA 2w)、1回のDNA免疫化(DNA 4w)またはより早いまたはより遅い時間点での1回のMVA免疫化(MVA 2wおよびMVA 4w)よりも免疫原性であった。
【0082】
図4は同じ抗原をコードしているプラスミドDNAによる初回刺激に続いての組換えMVA免疫化により、マラリアCD8 T細胞ELISPOTおよびCTLレベルが大いに追加刺激されることを示している。AおよびC。P.ベルゲイCSPからのKd制限ペプチドSYIPSAEKI[配列ID番号:67]および大腸菌β−ガラクトシダーゼからのLd制限ペプチドTPHPARIGL[配列ID番号:69]と18時間インキュベートした新しい脾臓細胞でのγ−インターフェロンELISPOTアッセイを使用してBALB/cマウスでCD8+ T細胞応答が測定された。ELISPOT計測数は対数スケールで表されていることに注意されたい。BおよびD。同じマウスからの脾臓細胞が、同じペプチド(1μg/ml)でのインビトロ再刺激6日後に、100:1のエフェクター:標的比で通常の51Cr−放出アッセイによってもアッセイされた。
【0083】
マウスはP.ベルゲイCSPおよびTRAP、PbCSP単独、P.ベルゲイCTLエピトープを含んでいるマラリアエピトープカセット(pTH.Hで標識されている)、またはβ−ガラクトシダーゼを発現しているプラスミドDNAで免疫された。1回のDNA免疫化23日後のマウスで測定されたELISPOTおよびCTLレベルが各々AおよびBに示されている。同じアッセイが初回刺激2週間後に同じ抗原を発現する1x107ffuの組換えMVAをさらに受けた動物で実施された。これらの動物におけるELISPOTおよびCTLレベルは各々CおよびDに示されている。各々の棒は個々の動物からのデータを示している。
【0084】
HIVおよびマラリアエピトープの両方を縦列に含むエピトープ列HMの免疫原性の研究もまた着手された。このエピトープ列を用いてもまた再び、DNAワクチンによる免疫化に続いての組換えMVAワクチンでの免疫化の場合に最も高いCD8+ T細胞およびCTLレベルが脾臓で発生した(表4、図5)。
【0085】
【表4】

【0086】
表4は示されたようなプラスミドDNAおよびMVAの異なった免疫化法後のHIVおよびマラリアエピトープに特異的なCD8+ T細胞のレベルを測定するために実施されたELISPOTアッセイの結果を示している。数字は百万脾臓細胞当たりのスポット形成細胞である。HMエピトープ列は図2に示されている。すべての場合にBALB/cマウスが使用された。マラリアエピトープは図2および3のようなpb9であった。HIVエピトープはRGPGRAFVTI[配列ID番号:51]であった。免疫化用量は50μgのプラスミドDNAまたは107フォーカス形成単位の組換えMVAであった。すべての免疫化は筋肉内であった。免疫化1および2の間隔はすべての場合、14−21日であった。
【0087】
図5はプラスミドDNAおよび組換えMVAを用いる種々の免疫化法により、マラリアおよびHIVエピトープに対してBALB/cマウスで誘導されたCTL応答を示している。マウスは表3の注および方法で説明されているように筋肉内で免疫された。高レベルのCTL(25:1のエフェクター/標的比で>30%の特異的溶解)がプラスミドDNAで初回刺激しおよび組換えMVAで追加刺激した後にのみマラリアおよびHIVエピトープに対して観察された。この実験に使用された抗原はHIV−マラリアエピトープ列である。組換えMVAはMVA.HAと表示されており、このエピトープ列を発現するプラスミドDNAはpTH.HMと表示されている。種々のエフェクター−標的比での特異的溶解レベルが示されている。これらは二つのペプチドpb9およびRGPGRAFVTI[配列ID番号:51]による脾臓細胞のインビトロ再刺激5日後に決定された。
【0088】
CTLを誘導する多数の送達系の比較がAllsoppら(1996)により報告されている。組換えTy−ウイルス様粒子(Ty−VLP)および脂質の尾を付けたマラリアペプチドの両方が良好なCTL誘導を示したが、Ty−VLPは良好なCTL誘導のために1回の免疫化しか必要としないことでより優れていた。しかしながら、本明細書に示されているようにTy粒子の2回投与さえもスポロゾイト攻撃誘発に対して有意な保護を誘導しなかった(表7、ライン1)。
【0089】
P.ベルゲイのスポロゾイト周囲タンパク質をコードしている組換え修飾ワクシニアアンカラウイルスによる免疫化も良好なCTLレベルを発生した。しかしながら、Ty−VLPによる第一の免疫化続いてのMVA CSワクチンによる第二の免疫化によりより高いレベルのCD8+ T細胞応答が達成された(表5)。
【0090】
【表5】

【0091】
表5 示されたようなTy−VLPおよび組換えMVAウイルスの異なった免疫化法後の、マラリアエピトープpb9に特異的なCD8+ T細胞レベルを測定するために実施されたELISPOTおよびCTLアッセイの結果。CTLおよびELISPOTのデータは異なった実験からのものである。ELISPOTレベル(百万脾臓細胞当たりのスポット)は再刺激されない細胞で測定され、CTL活性はインビトロでpb9ペプチドにより再刺激された細胞における40:1のエフェクター:標的比での特異的溶解として示されている。両方とも3匹のマウスでの平均レベルとして表されている。BALB/cマウスがすべての場合に使用された。免疫化量は50μgのTy−VLPまたは107ffu(フォーカス形成単位)の組換えMVAであった。すべての免疫化は筋肉内で行われた。免疫化1および2の間隔は14−21日であった。MVA.HMはカセットCABを含んでいる。
【0092】
遺伝子銃によるDNA送達を用いる免疫応答の初回刺激および組換えMVAを用いる追加刺激
免疫原性および攻撃誘発
組換えMVAで追加刺激できる、皮内にプラスミドをDNA送達するための遺伝子銃の使用およびそれによる免疫応答の初回刺激が研究された。BALB/cマウスは以下の投与法で免疫された:
I)2週間隔での3回のpTH.PbCSP(免疫化当たり4mg)による遺伝子銃免疫化
II)2回の遺伝子銃免疫化に続く2週間後のMVAi.v.
III)1回の筋肉内DNA免疫化に続く2週間後のMVAi.v.
三つの免疫化法の免疫原性はELISPOTアッセイを使用して分析された。
特異的T細胞の最も高い頻度は2回の遺伝子銃免疫化に続くMVAi.v.追加刺激および1回の筋肉内DNA免疫化に続くMVAi.v.追加刺激で観察された(図6)。
【0093】
図6は異なった免疫化法後のマラリアエピトープpb9に対する特異的CD8+ T細胞レベルを測定するために実施されたELISPOTアッセイの結果を示している。BALB/cマウスの群(n=3)は示されているように免疫された(g.g=遺伝子銃)。すべての免疫化の時間間隔は14日であった。ELISPOTアッセイは最後の免疫化の2週間後に行われた。
【0094】
異なったマウス系統における同一抗原に対するCTL誘導
二つのCTLエピトープ(P.ベルゲイから誘導されたSYIPSAEKI[配列ID番号:67]およびHIVから誘導されたRGPGRAFVTI[配列ID番号:68])によるBALB/cマウスでの前記の追加刺激効果が普遍的な現象であるかどうかを追求するため、2組の実験が実施された。インフルエンザ核タンパク質に対するCTL応答は5つの近交マウス系で研究された。最初の実験において、インフルエンザ核タンパク質から誘導された公表されているマウスCTLエピトープで研究された(表3参照)。三つの異なったH−2ハプロタイプ、BALB/cおよびDBA/2(H−2d)、C57BL/6および129(H−2d);CBA/J(H−2d)のマウスが使用された。動物の一つの組はインフルエンザ核タンパク質をコードしているプラスミドV1J−NPを用いて2週間隔で2回免疫された。同一動物の別の組はV1J−NPで初回刺激され、2週間後にインフルエンザウイルスNPを発現している106ffuのMVA.NPを用いて静脈内で追加刺激された。個々のマウスのCTLレベルはペプチド再刺激された脾臓細胞の51Cr放出アッセイで決定された。図7に示されているように、DNA初回刺激/MVA追加刺激免疫化法が分析されたすべてのマウス系においてより高いレベルの溶解を誘導し、2回のDNA注入よりも優れている。
【0095】
図7は異なったマウス系統におけるインフルエンザNPに対するCTL応答を示している。異なった系統のマウスは2週離して2回インフルエンザ核タンパク質をコードしているDNAワクチンV1J−NPで免疫されるか(白丸)、または同じDNAワクチンで初回刺激され、インフルエンザウイルス核タンパク質を発現している組換えMVAで追加刺激された(黒丸)。最後の免疫化から2週間後、各々のペプチドを用いてインビトロで脾臓細胞が再刺激された(表3)。CTL活性はMHCクラスI−致標的細胞を用いる標準51Cr−放出アッセイで決定された。
【0096】
異なったマウス系統における異なった抗原に対するCTL誘導
プラスミドDNA初回刺激免疫応答に対するMVA追加刺激効果はさらに異なった抗原および異なった近交マウス系を用いて研究された。異なった系統のマウスは2回のDNA免疫化を用いる異なった抗原で免疫され、DNA/MVA免疫化と比較された。使用された抗原は大腸菌β−ガラクトシダーゼ、マラリア/HIVエピトープ列、マウス腫瘍エピトープ列および熱帯熱マラリア原虫TRAPであった。二つのDNA免疫化を比較すると、DNA初回刺激/MVA追加刺激法がすべての異なったマウス系および試験された抗原の組み合わせでより高いレベルのCTLを誘導した(図8)。
【0097】
図8は異なった近交マウス系で誘導された異なった抗原に対するCTL応答を示している。マウスは2週間離して2回DNAワクチン免疫化で免疫されるか(白丸)、またはDNAワクチンで初回刺激され、2週間後に同一の抗原を発現している組換えMVAで追加刺激された(黒丸)。系統および抗原は以下の通りである:AではC57BL/6;熱帯熱マラリア原虫TRAP。BではDBA/2;大腸菌β−ガラクトシダーゼ。CではBALB/c;マラリアペプチド(pb9)に対するHMエピトープ列CTL活性。DではDBA/2;pb9に対するHMエピトープ列CTL活性。EではBALB/c;HIVペプチドに対するHMエピトープ列CTL活性。FではDBA/2;HIVペプチドに対するHMエピトープ列CTL活性。GではBALB/c;PIA由来ペプチドに対する腫瘍エピトープ列CTL活性。HではDBA/2;PIA由来ペプチドに対する腫瘍エピトープ列CTL活性。ペプチドエピトープの配列は表3に示されている。各々の曲線は個々のマウスからのデータを示している。
【0098】
スポロゾイトは効果的に免疫応答を初回刺激でき、それはMVAにより追加刺激可能である
マラリアが風土病である地域に住んでいるヒトは連続的にスポロゾイト接種に曝されている。マラリア特異的CTLはこれらの自然に曝されている個体においては低レベルであることが観察されている。低レベルのスポロゾイト誘導CTL応答がMVAにより追加刺激できるかどうかという問題を扱うため、BALB/cマウスを照射した(マラリア感染を防ぐため)P.ベルゲイスポロゾイトで免疫し、MVAで追加刺激した。最後の免疫化から2週間後、脾臓細胞を再刺激して溶解活性を試験した。50または300+500スポロゾイトによる2回の注射では非常に低レベルまたは検出できないレベルの溶解しか誘導されなかった。
【0099】
MVAによる追加刺激は高レベルのペプチド特異的CTLを誘導した。MVA単独では中程度の溶解レベルのみを誘導した(図9)。
図9はスポロゾイト初回刺激CTL応答がMVAにより有意に追加刺激されることを示している。マウスはAにおいては照射されたスポロゾイトの2回の低用量(50+50)で、Bにおいてはスポロゾイトの2回の高用量(300+500)で免疫された;マウスはDでは低用量のスポロゾイト初回刺激、Eでは高用量のスポロゾイト初回刺激に続いてMVA.PbCSPで追加刺激された。MVA.PbCSPでの免疫化後のCTL応答はCに示されている。
【0100】
初回刺激薬物としての組換えアデノウイルス
初回刺激−追加刺激免疫化法が初回刺激薬物としてプラスミドDNAおよび組換えTy−VLPを使用して例示されてきた。ここでは初回刺激薬物として非複製アデノウイルスを用いる例が提供される。大腸菌β−ガラクトシダーゼを発現する複製欠陥組換えアデノウイルス(Adeno−GAL)が使用された。BALB/cマウス群はプラスミドDNAに続いてMVAでまたはアデノウイルスに続いてMVAで免疫された。使用されたすべての抗原送達系は大腸菌β−ガラクトシダーゼをコードしていた。プラスミドDNAまたはアデノウイルスによるCTL応答の初回刺激およびMVAによる追加刺激は類似のレベルのCTLを誘導した(図10)。
【0101】
図10はプラスミドDNAまたはアデノウイルスによる初回刺激およびMVAによる追加刺激によるCTL応答を示している。BALB/cマウス群(n=3)はプラスミドDNA(A)またはβ−ガラクトシダーゼを発現する組換えアデノウイルス(B)で初回刺激された。プラスミドDNAは筋肉内に、MVAは静脈内におよびアデノウイルスは皮内に投与された。脾臓細胞は最後の免疫化から2週間後にペプチドTPHPARIGL[配列ID番号:69]で再刺激された。CTL活性はペプチドでパルス刺激したP815細胞で試験された。
【0102】
DNA初回刺激、ワクシニア追加刺激法の免疫原性は使用されたワクシニアウイルス株の複製適性に依存している
複製適性が違う異なった株はDNA初回刺激CTL応答を追加刺激する能力が異なっているかどうかを決定するために、組換えワクシニアウイルスの異なった株を使用して初回刺激−追加刺激法が試験された。MVAおよびNYVACのような複製欠陥組換えワクシニアウイルスによる追加刺激は、同量の複製適性WRワクシニアウイルスによる追加刺激後のCTL応答と比較してより強いCTL応答の誘導を起こした(図11)。
【0103】
図11はプラスミドDNAによる初回刺激、続いての異なった組換えワクシニアウイルスによる追加刺激によるBALB/cマウスのCTL応答を示している。動物はpTH.PbCSP(50μg/マウス、i.m.)で初回刺激され、2週間後、PbCSPを発現する異なった株のワクシニアウイルス(マウス当たり106pfu、i.v.)で追加刺激された。異なった組換えワクシニアウイルス株は、AではMVA、BではNYVACおよびCではWRであった。複製株に対する複製欠陥ワクシニア株の優越性はさらなる実験でも観察された。BALB/cマウス群(n=6)は50μg/動物のpSG2.PbCSP(i.m.)で初回刺激され、10日後にPbCSPを発現する106ffu/pfuの組換えMVA、NYVACおよびWRによりi.v.で追加刺激された。ペプチド特異的CD8+ T細胞の頻度はELISPOTアッセイを使用して決定された。頻度は:MVA 1103+/−438、NYVAC 826+/−249およびWR 468+/−135であった。従って、CD8 T細胞免疫原性の尺度としてCTLアッセイおよびELISPOTアッセイを用いると、複製適性株と比較して複製欠陥ワクシニア株では驚くほど大きな免疫原性が観察された。
【0104】
CD8+ T細胞応答を追加刺激するための組換えカナリアまたはニワトリポックスウイルスの使用
組換えカナリアポックスウイルス(rCPV)またはニワトリポックスウイルス(rFPV)は以前に記載されているシャトルベクターを使用して作製された(TaylorらVirology 1992,187:321−328およびTay1orらVaccine 1988,6:504−508)。これらのシャトルベクターのための戦略は、CPVまたはFPVゲノムから誘導された配列から成る二つの隣接領域間のワクシニア特異的プロモーターの後ろに問題とするタンパク質をコードしている遺伝子を挿入することである。これらの隣接領域は必須ウイルス遺伝子内への挿入を避けるように選択される。組換えCPVまたはFPVは許容トリ細胞株(即ち、初代ニワトリ胎児線維芽細胞)でのインビボ組換えにより発生させた。任意の抗原またはエピトープ列のタンパク質配列がニワトリポックスまたはカナリアポックスウイルスを用いて発現できる。組換えCPVまたはFPVは抗原特異的抗体を用いて、または組換え遺伝子内へ抗体エピトープを含ませ、問題とするタンパク質の発現で特徴付けられる。組換えウイルスは初代CEFで増殖させる。免疫応答は、材料および方法で説明したようなプラスミドDNAを用いて初回刺激される。このプラスミドDNA初回刺激免疫応答は、静脈内に、皮内に、または筋肉内に接種された107ffu/pfuのrCPVまたはrFPVにより追加刺激される。CD8+ T細胞応答がモニターされ、攻撃誘発は前記のように実施された。
【0105】
実施例3
マウスにおけるマラリア攻撃誘発の研究
CD8+ T細胞応答の誘導レベルの保護的効能を評価するため、免疫化BALB/cまたはC57BL/6マウスを2000または200のP.ベルゲイスポロゾイトの静脈注射により攻撃誘発した。このことはスポロゾイトによる肝臓細胞の感染を導く。しかしながら、肝臓内寄生虫に対する十分に強いTリンパ球応答の存在下では生きている寄生虫は肝臓を離れないであろうので、血液期寄生虫は観察されないであろう。攻撃誘発の5−12日後、攻撃誘発したマウスからの血液薄層は顕微鏡により寄生虫が評価された。
【0106】
P.ベルゲイのCSタンパク質およびTRAP抗原をコードしている二つのプラスミドDNAの混合物で2回免疫されたBALB/cマウスは、スポロゾイト攻撃誘発に対して保護されなかった。同じ二つの抗原をコードしている組換えMVAウイルスの混合物で2回免疫されたマウスはスポロゾイト攻撃誘発に対して保護されなかった。最初に二つの組換えMVAでおよび次に二つの組換えプラスミドで免疫されたマウスもスポロゾイト攻撃誘発に対して保護されなかった。しかしながら、最初に二つのプラスミドDNAで、次に二つの組換えMVAウイルスで免疫化された15匹のマウスすべてがスポロゾイト攻撃誘発に対して完全に耐性であった(表6AおよびB)。
【0107】
観察された保護がCS抗原またはTRAPまたはその両方に対する免疫応答によるものであるかどうかを評価するため、マウスの群が各々の抗原で別々に免疫された(表6B)。最初にCSプラスミドDNAで、続いてCS MVAウイルスで免疫された10匹のマウスすべてがスポロゾイト攻撃誘発に対して完全に保護された。従って、前記の免疫化法が用いられる場合CS抗原単独で完全に保護的であり、TRAP抗原は同じ方法で実質上保護的である。
【0108】
CD8+ T細胞リンパ球応答誘導レベルと保護の程度の間の良好な相関は、CD8+応答が観察された保護に関係していることを強く示唆している。以前に採用された送達実験において、P.ベルゲイCSタンパク質中の主CD8+ T細胞エピトープに対するCD8+ Tリンパ球クローンは、スポロゾイト攻撃誘発を保護できることが示されている。誘導された保護が、このエピトープに対するCD8+ T細胞により本当に仲介されるのかどうかを決定するために、エピトープ列の一部としてP.ベルゲイからのこの9個のアミノ酸配列のみをコードしているプラスミドDNAおよび組換えMVAが用いられた(表6B)。(すべての他のエピトープはP.ベルゲイ以外の微生物からのものである。)最初にそのようなエピトープ列、続いて同様にP.ベルゲイCTLエピトープを持つエピトープ列をコードしている組換えMVAで10匹のマウスを免疫化すると、スポロゾイト攻撃誘発から完全に保護された(表6B)。それ故、誘導された保護免疫応答は、このナノマーペプチド配列を標的とするCTL応答に違いないであろう。
【0109】
【表6】

【0110】
表6 示されたようなプラスミドDNAおよびMVAの異なった免疫化法を用いた二つの攻撃誘発実験(AおよびB)の結果。すべての場合にBALB/cマウスが使用された。免疫化用量は50μgのプラスミドDNAまたは106ffuの組換えMVAであった。免疫化1および2の間隔はすべての場合14−21日であった。攻撃誘発は最後の免疫化から18−29日後に2000のP.ベルゲイスポロゾイトを用いるi.v.注射により実施され、血液薄膜は攻撃誘発後5、8および10日目に評価された。CSPおよびTRAPは全P.ベルゲイ抗原を示しており、”エピトープ”とは単一のP.ベルゲイKd制限ナノマーCTLエピトープのみを含んでいる表1に示されたエピトープのカセットを示している。実験Bにおいてエピトープ列のみでの免疫化で100%保護が得られたことに注目されたい。
【0111】
pb9をコードしている組換えTy−VLPで2回免疫されたマウスは感染に対して完全に感受性であった。同様に、完全CSタンパク質をコードしている組換えMVAで2回免疫されたマウスは感染に対して完全に感受性であった。しかしながら、一度Ty−VLPで、続いて組換えMVAで一度免疫されたマウスは、完全長CSタンパク質を発現するMVAで追加刺激された場合は85%の、pb9を含むHMエピトープ列を発現するMVAが追加刺激に使用された場合は95%のマラリア発病率の減少を示した。
【0112】
【表7】

【0113】
表7 示されたようなTy−VLPおよびMVAの異なった免疫化法を用いた攻撃誘発実験の結果。すべての場合にBALB/cマウスが使用された。免疫化では50μgのプラスミドDNAまたは106ffuの組換えMVAが静脈内に投与された。免疫化1および2の間隔はすべての場合14−21日であった。攻撃誘発は最後の免疫化から18−29日後に2000のP.ベルゲイスポロゾイトによるi.v.注射により実施され、血液薄膜は攻撃誘発後5、8および10日目に評価された。CSPは全P.ベルゲイ抗原を示している。Ty−VLPは表1に示したようなエピトープカセットCABDHまたはCABDHFEを運んでいる。MVA.HMはカセットCABを含んでいる。
【0114】
組換えMVAで追加刺激されることにより観察された促進された免疫原性および保護効能がこの特定のワクシニアウイルス株に独特のものかまたは他の組換えワクシニアと共有されているのかどうかを決定するため、以下の実験が実施された。マウスはP.ベルゲイCSタンパク質をコードしているDNAワクチンで免疫され、(i)この抗原をコードしている組換えMVA;(ii)同一の抗原をコードしている組換え野生型ワクシニアウイルス(ウェスタン リザーブ株)(Satchidanandamら1991)、または(iii)同一のマラリア抗原をコードしている組換えNYVAC(COPAK)ウイルス(Lanarら1996)で追加刺激された。最も高程度の保護はMVA組換え体による追加刺激で観察された、80%(表8)。非常に低レベルの保護(10%)が野生型組換えワクシニアウイルスで、有意なレベルの保護(60%)がNYVAC組換え体による追加刺激で観察された。それ故、記載した初回刺激−追加刺激法は任意の非複製ワクシニアウイルス株で保護的効能を誘導する。MVA組換え体およびNYVACの両方がWR株組換え体よりも有意に(各々P<0.05)良好であった。
【0115】
【表8】

【0116】
表8 示されたようなプラスミドDNAおよび種々のワクシニアの組み合わせの異なった免疫化法を用いた攻撃誘発実験の結果。すべての場合にBALB/cマウスが使用された。免疫化用量は50μgのプラスミドDNAまたは106ffu/pfuの組換えMVAまたは104ffu/pfuの組換え野生型(WR)ヮクシニアまたは106ffu/pfuの組換えNYVACであった。WR株は宿主中で複製するであろうが他の株は複製しないであろうので、この実験においてはより低用量のWRが使用された。免疫化1および2の間隔は23日であった。攻撃誘発は最後の免疫化から28日後に2000のP.ベルゲイスポロゾイトを用いるi.v.注射により実施され、血液薄膜は攻撃誘発後7、9および11日目に評価された。pbCSPは全P.ベルゲイ抗原を、およびNPはインフルエンザウイルスの核タンパク質抗原(対照抗原として使用された)を示している。グループAの最初の免疫化は、非マラリア抗原であるベータガラクトシダーゼを発現するプラスミドDNAベクターであった。
【0117】
表8に示されたさらなる実験において、マウスはP.ベルゲイCSタンパク質をコードしているDNAワクチンで免疫され、(i)この抗原をコードしている組換えMVA;(ii)同一の抗原をコードしている組換えWRワクシニアウイルス、または(iii)同一のマラリア抗原をコードしている組換えNYVAC(COPAK)ウイルスで追加刺激された(すべて106ffu/pfu)。高いおよび満足すべき程度の保護が組換えNYVAC(80%)または組換えMVA(66%)による追加刺激で観察された。低いおよび満足できないレベルの保護(26%)がWR組換えワクシニアウイルスによる追加刺激で観察された(表9)。MVAおよびNYVAC追加刺激は各々WR追加刺激より有意に高い保護を与えた(各々P=0.03およびP=0.01)。これらのデータは非複製ポックスウイルス株は高レベルの保護を誘導するためのより良好な追加刺激剤であることを再び強調している。
【0118】
【表9】

【0119】
表9 プラスミドDNAおよび追加刺激免疫剤としての複製欠陥ワクシニア組換え体の異なった免疫化法を使用する攻撃誘発実験の結果。すべての場合にBALB/cマウスが使用された。免疫化用量は50μgのプラスミドDNAまたは106ffu/pfuの組換えMVAまたは組換え野生型(WR)ワクシニアまたは組換えNYVACであった。免疫化1および2の間隔は23日であった。攻撃誘発は最後の免疫化から28日後に2000のP.ベルゲイスポロゾイトを用いるi.v.注射により実施され、血液薄膜は攻撃誘発後7、9および11日目に評価された。pbCSPは全P.ベルゲイ抗原を、およびNPはインフルエンザウイルスの核タンパク質抗原(対照抗原として使用された)を示している。対照免疫化はβ−ガラクトシダーゼを発現するプラスミドDNAベクター、続いてMVA.NPによるものであった。
【0120】
組換えMVAによる免疫応答追加刺激のための別の経路
組換えMVAの静脈内注射はヒト免疫化には好適な経路ではなく、大量免疫化には実現不可能である。それ故、MVA追加刺激の異なった経路での免疫原性および保護効能が試験された。マウスはプラスミドDNAによりi.m.で初回刺激された。2週間後、それらは以下の経路で投与されたMVAで追加刺激された:静脈内(i.v.)、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)および皮内(i.d.)。この追加刺激2週間後、ペプチド特異的CD8+ T細胞はELISPOTアッセイにより決定された。最も高いレベルを誘導した最も有効な経路はMVAのi.v.およびi.d.接種であった。他の経路は中程度から弱い応答しか与えなかった(図12)。
【0121】
図12は異なった経路でMVAを追加刺激した後のペプチド特異的CD8+ T細胞の頻度を示している。結果は百万脾臓細胞当たりのスポット形成細胞(SFC)の数として示されている。マウスはプラスミドDNAで初回刺激され、2週間後にMVAを用いて示された経路で追加刺激された。SYIPSAEKI[配列ID番号:67]ペプチドに特異的な脾臓細胞の数が最後に免疫して2週間後にINF−γELISPOTアッセイにより決定された。各々の棒は個々にアッセイされた3匹のマウスからのSFCの平均の数を表している。
【0122】
攻撃誘発実験においてi.v.経路の追加刺激がi.d.およびi.m.経路と比較された。i.d.経路が高レベルの保護(80%保護)を与えた。i.m.経路で追加刺激された動物の群では、50%の動物が保護された。完全な保護はi.v.で投与されたMVA追加刺激で達成された(表10)。
【0123】
【表10】

【0124】
表10 異なった経路のMVA追加刺激免疫化を用いた攻撃誘発実験の結果。
動物は筋肉内プラスミドDNA注射により初回刺激され、2週間後、示された組換えMVA(106ffu/マウス)が示された経路により投与された。マウスは最後の免疫化から16日後に2000のP.ベルゲイスポロゾイトで攻撃誘発し、攻撃誘発の8および10日後に血液期寄生虫血症がスクリーニングされた。エピトープはポリペプチド列HMを示している。
【0125】
DNA初回刺激の別経路:ペプチド特異的CD8+ T細胞を初回刺激するための遺伝子銃の使用
遺伝子銃送達は例えばEisenbraunら DNA Cell Biol.1993,12:791−797およびDeganoら Vaccine 1998,16:394−398に詳細に記載されている。
【0126】
免疫応答を初回刺激するためにプラスミドDNAを使用するこれまで説明されてきたマウスマラリア攻撃誘発実験はプラスミドDNAの筋肉内注射を使用した。バイオリスティック装置を使用するプラスミドDNAの皮内送達は、特異的CTL応答を初回刺激する別の経路である。プラスミドDNAで金粒子を被覆し、遺伝子銃により皮内に送達された。マウス群(n=10)は2週間間隔で3回、遺伝子銃のみで免疫化するか(4μg/免疫化)、遺伝子銃で2回、続いて静脈内MVA.PbCSP追加刺激により免疫するか、または50μgのpTH.PbCSPを用いて筋肉内で免疫されて2週間後にMVA.PbCSPが静脈内で追加刺激された。最後に免疫化して2週間後に、動物を2000のスポロゾイトで攻撃誘発し、各々の免疫化法の保護効能を評価した。2回の遺伝子銃免疫化に続いて静脈内MVA追加刺激を受けた群において、10匹の動物のうち1匹が血液期寄生虫血症を発症した(90%保護)。筋肉内DNA追加刺激に続くMVAi.v.追加刺激により完全な保護が観察された。遺伝子銃により3回免疫された10匹の動物のうち3匹が感染された(30%保護)(表11)。
【0127】
【表11】

【0128】
表11 DNA初回刺激の異なった経路(遺伝子銃による皮内と筋肉内針注射)を比較している攻撃誘発実験の結果。BALB/cマウス群(n=10)は示されたように免疫された。各々の遺伝子銃免疫化は4μgのプラスミドDNAを表皮内へ送達した。i.m.免疫化では50μgのプラスミドDNAが注射された。最後の免疫化から20日後、マウスを前記のように攻撃誘発した。
【0129】
高感受性C57BL/6マウスは保護される
C57BL/6マウスはP.ベルゲイスポロゾイト攻撃誘発に対して非常に感受性である。C57BL/6マウスは前赤血球抗原PbCSPおよびPbTRAPの両方によるDNA−MVA初回刺激−追加刺激法を用いて免疫化され、マウス当たり200または1000の感染性スポロゾイトで攻撃誘発した(200はこの系統での感染を誘導するために必要とされる量の2倍以上に相当する)。200のスポロゾイトで攻撃誘発された10匹のマウスすべてが滅菌免疫性を示した。1000のスポロゾイトで攻撃誘発された群でさえも、60%のマウスが保護された(表12)。天然のままのC57BL/6マウスはすべてスポロゾイト攻撃誘発で感染された。
【0130】
【表12】

【0131】
表12 C57BL/6マウスを使用した攻撃誘発実験の結果。動物はDNAに続いたMVA初回刺激−追加刺激法を用いてPbCSPおよびPbTRAPで免疫化された。14日後、マウスを示されているようにP.ベルゲイスポロゾイトで攻撃誘発した。
【0132】
実施例4
マウスのさらに二つの疾患モデルにおけるDNA−初回刺激/MVA−追加刺激法の保護効能
免疫原性研究に続いて、DNA−初回刺激/MVA−追加刺激法の保護効能が二つの追加のマウス攻撃誘発モデルで試験された。二つの攻撃誘発モデルはP815腫瘍モデルおよびインフルエンザAウイルス攻撃誘発モデルであった。両方のモデル系においてCTLが保護を仲介していることが示された。
【0133】
P815腫瘍攻撃
DBA/2マウス群(n=10)はDNA、続いてHMエピトープ列の腫瘍エピトープ列を発現するMVAの組み合わせで免疫された。最後の免疫化から2週間後、マウスは105のP815細胞の静脈内投与で攻撃された。この攻撃後、マウスは定期的に腫瘍関連徴候および生存率でモニターされた。
【0134】
図13は二群のマウスの生存率を示している。攻撃60日後、腫瘍エピトープ列で免疫された群では10匹のマウスの内8匹が生き残っていた。HMエピトープ列で免疫された群では2匹のみしか生き残っていなかった。この結果は統計的に有意である:2/10対8/10カイ2乗=7.2。P=0.007。腫瘍エピトープ列で免疫された動物群における死の始まりはHMエピトープ列で免疫された群と比較すると遅くなっている。
【0135】
インフルエンザウイルス攻撃誘発
BALB/cマウス群はプラスミドDNAによる3回の遺伝子銃免疫化、2回の筋肉内プラスミドDNA注射、1回のi.m.DNA注射に続く1回のMVA.NP追加刺激i.v.または2回の遺伝子銃免疫化に続く1回のMVA.NP追加刺激i.v.で免疫された。プラスミドDNAおよび組換えMVAはインフルエンザウイルス核タンパク質を発現した。最後の免疫化から2週間後、マウスに鼻腔内で100HAのインフルエンザA/PR/8/34ウイルスを攻撃誘発した。動物は攻撃誘発後毎日生存でモニターした。
【0136】
完全保護が以下の動物群で観察された:
2回のDNA遺伝子銃免疫化に続く1回のMVA.NP追加刺激i.v.
1回のi.m.DNA注射に続く1回のMVA.NP追加刺激i.v.
2回のi.m.DNA注射。
【0137】
遺伝子銃で3回免疫した動物群では71%の動物が生き残り(5/7)、対照とのこの差は統計的に有意ではなかった(P>0.05)。天然のままの群では25%の動物が生き残り(図14)、この群は二つの完全保護群と有意に異なっていた(P<0.05)。
【0138】
図14はインフルエンザウイルス攻撃誘発実験の結果を示している。BALB/cマウスは示されているように免疫された。GG=遺伝子銃免疫化、im=筋肉内注射、iv=静脈内注射。動物の生存を攻撃誘発後毎日モニターした。
【0139】
第二の実験において、10匹のBALB/cマウスはMVA.NPi.v.のみ、3回の遺伝子銃、2回の遺伝子銃に続く1回のMVA.NP追加刺激i.v.および2回のVIJ−NPi.m.注射に続く1回のMVA.NP追加刺激で免疫された。最後の免疫化から2週間後、マウスに100HAのインフルエンザA/PR/8/34ウイルスを攻撃誘発した。
【0140】
完全および統計的に有意な保護が以下の動物群で観察された: 2回の遺伝子銃免疫化に続く1回のMVA.NP追加刺激 2回のVIJ−NPi.m.注射に続く1回のMVA.NP追加刺激。
【0141】
1回のMVA.NPi.v.を受けた群は30%(10匹の内の3匹)の動物が生き残った。3回の遺伝子銃によるDNAワクチン送達により免疫された群は70%の動物が保護されたが天然のままの対照とは有意に異なっていなかった。この攻撃誘発実験において、40%(10匹の内の4匹)の天然のままの動物が攻撃誘発から生き残った。
【0142】
実施例5
非ヒト霊長類での免疫原性研究非ヒト霊長類での初回刺激追加刺激法の免疫原性および保護効能
マウスで観察されたDNA初回刺激/MVA追加刺激法の強力な免疫原性が、霊長類でも強力な免疫原性を誘導することを示すために、本方法がマカクにおいて試験された。ワクチンはHIVおよびSIV配列から誘導されたCTLエピトープの列から成っており、プラスミドDNAまたはMVAにおいては各々DNA.HおよびMVA.Hと表示されている。ポリエピトープ列中での定義されたCTLエピトープの使用はマカクにおけるSIV特異的CTLを試験することを可能にする。抗原性ペプチドのMHCクラスI制限のため、マカクはそのMHCクラスIハロタイプでスクリーニングされ、Mamu−A*A01陽性動物が記載された実験に選択された。
三匹の動物(CYD,DIおよびDORIS)が下記の本免疫化法で免疫された
0週 DNA(8μg、i.d.、遺伝子銃)
8週 DNA(8μg,i.d.、遺伝子銃)
17週 MVA(5x108pfu、i.d.)
22週 MVA(5x108pfu、i.d.)。
【0143】
各々の動物からの血液が実験の0、2、5、8、10、11、17、18、19、21、22、23、24および25週に採取された。動物は二つの異なった方法を使用してCTLの誘導がモニターされた。各々の採血で単離されたPBMCはエピトープ列中にコードされているペプチドを用いてインビトロで再刺激され、クロム放出細胞毒性アッセイにより自己由来ペプチドを持つ標的細胞を認識する能力が試験された。さらに、新しく単離されたPBMCは四量体を用いて抗原特異性CD8+ T細胞が染色された。
【0144】
2回の遺伝子銃免疫化後、四量体染色を使用して非常に低レベルのCTLが検出された(図15)。第一のMVA追加刺激2週間後、三匹すべての動物が四量体染色を使用して検出されるようなペプチド特異的CTLを発現した(図15)。これはインビトロ再刺激に続く中程度のCTL応答の検出で反映された(図16、9週)。第二のMVA.Aによる追加刺激は非常に高レベルのCD8+抗原特異的T細胞(図15)およびまた非常に高レベルのエピトープ特異的細胞毒性T細胞(図16、23週)を誘導した。
【0145】
図15は四量体を用いるSIV特異的MHCクラスI制限CD8+ T細胞の検出を示している。三匹のMamu−A*A01陽性マカクは、示されたようなプラスミドDNA(遺伝子銃)続いてのMVA追加刺激により免疫された。Mamu−A*A01/CD8二重陽性T細胞はFACS分析後に同定された。各々の棒は示された時間でのMamu−A*01/gagエピトープに特異的なCD8+ T細胞のパーセントを示している。1パーセントのCD8 T細胞は約5000/106末梢血リンパ球に相当する。従ってこれらのマカクの末梢血中のエピトープ特異性CD8 T細胞レベルは、マラリア研究で免疫化されおよび保護されたマウスの脾臓で観察されたレベルと少なくとも同じ程度には高い。
【0146】
図16はDNA/MVA免疫化後のマカクにおけるCTL誘導を示している。
3匹の異なったマカク(CYD、DIおよびDORIS)からのPBMCは18、19および23週に単離され、インビトロでペプチドCTPYDINQM[配列ID番号:54]で再刺激された。ペプチドCTPYDINQM[配列ID番号:54]による2回の再刺激後、培養物はペプチド−パルス自己由来標的細胞に対するそれらの溶解活性が試験された。強いCTL活性が観察された。
【0147】
実施例6
チンパンジーでの免疫原性および攻撃誘発の研究
プラスミドDNAによる最初の免疫化および続いての組換えMVAによる免疫化の同様な方法が、より高等な霊長類において熱帯熱マラリア原虫マラリアに対して有効であることを示すため、2匹のチンパンジーで免疫化および攻撃誘発の研究が実施された。チンパンジーH1はイントロンAなしでCMVプロモーターから熱帯熱マラリア原虫TRAPを発現するプラスミド(CMV−TRAP)の500μgによる最初の免疫化を受けた。チンパンジーH2は、熱帯熱マラリア原虫LSA−1遺伝子のC末端部分を発現するCMV−LSA−1を同量受けた。両方のチンパンジーは続いての2ヶ月かけてさらに3回の免疫化を受けたが、その各々の免疫化は三つのプラスミドで行われた。H1は前記のCMV−TRAPに、イントロンAを持つCMVプロモーターを使用してTRAPを発現するpHT−TRAPが加えられ、より高い発現レベルが導かれた。H1はまたRSVプロモーターからLSA−1のC末端部分を発現するRSV−LSA−1も受けた。H2は第二、第三および第四の免疫化時にCMV−LSA−1、pTH−LSA−1およびRSV−TRAPを受けた。用量はいつも各々のプラスミド500μgであった。
【0148】
RSVプラスミドはそれらに含まれている抗原を発現しなかったことが後で発見され、従って、H1のみがTRAPを発現するプラスミドで、H2はLSA−1を発現するプラスミドで免疫された。
【0149】
これらのDNA免疫化の間および後のいくつかの時間点で細胞免疫応答のアッセイが実施され、最後のアッセイは4回目のDNA免疫化の3ヶ月後に実施されたが、ELISPOTアッセイまたはCD8+ T細胞のCTLアッセイのどちらもマラリア特異的T細胞は検出できなかった。
【0150】
両方の動物は次に6週間の期間に渡って熱帯熱マラリア原虫TRAP抗原をコードしている組換えMVAウイルスを108ffuの用量で3回免疫した。3回目の組換えMVA免疫化の直前および後にTRAP抗原へのT細胞応答が、ラテックスビーズへ結合された全TRAPタンパク質に対するELISPOTアッセイを使用して両方のチンパンジーで検出された。このアッセイはCD4+およびCD8+ T細胞応答の両方を検出する。特異的CD8+ T応答が両方の免疫化チンパンジーにおいて一連の短い8−11アミノ酸ペプチドで探された。CD8+ T細胞応答のためのそのような分析は、チンパンジーH1でのみCD8+ T細胞が検出可能であったことを示した。これらのCD8+ Tリンパ球の標的エピトープは配列KTASCGVWDEW[配列ID番号:78]のTRAPからの11アミノ酸ペプチド(tr57)であった。H1からのこれらのCD8+ T細胞はtr57ペプチドでパルス刺激した自己由来標的細胞に対しておよび組換えPfTRAP−MVAウイルスが感染した自己由来標的細胞に対して溶解活性を持っていた。500リンパ球当たり約1のこれらの特異的CD8+ T細胞の高い前駆体頻度が、最後のMVA免疫化から2ケ月後にELISPOTアッセイを用いてチンパンジーH1の末梢血中に検出された。TRAPを発現するプラスミドDNAで初回刺激されなかったチンパンジーH2では特異的CD8+ T細胞応答は明らかに検出されなかった。
【0151】
3回目のPfTRAP−MVA免疫化から2ヶ月後、攻撃誘発7日後にチンパンジーに確かに検出可能な血液期感染を起こすことが以前に観察されている数である2000のスポロゾイトによりH1およびH2の攻撃誘発が実施された(Thomasら1994、未発表データ)。攻撃誘発は熱帯熱マラリア原虫のNF54株で実施された。このことは重要で、なぜならプラスミドDNAおよび組換えMVA中のTRAP配列は、NF54 TRAP対立遺伝子とは多数のアミノ酸相違を持つ熱帯熱マラリア原虫のT9/96株からのものであるためである(Robsonら1990)。それ故、このスポロゾイト攻撃誘発は異種というよりも同種の寄生虫株で実施される。チンパンジーH2において、インビトロ寄生虫培養検出の使用によりスポロゾイト攻撃誘発7日後に予測されるように寄生虫が末梢血で検出可能であった。しかしながら、H1においては、培養での血液期寄生虫の出現は7日目から3日遅れた血液試料からであり、肝臓期感染に対するいくらかの保護効果と一致している。以前の候補マラリアワクチンの研究で、ヒトにおける末梢血中の寄生虫出現の遅れは肝臓の寄生虫密度の実質的減少に関係していると推定されている(Davisら1989)。従って、最初に熱帯熱マラリア原虫TRAPプラスミドDNA、続いて組換えウイルスにより発現された同一の抗原により免疫されたチンパンジーH1は、強いCD8+ Tリンパ球応答および異種スポロゾイト攻撃誘発からのいくらかの保護の証拠を示した。
【0152】
考察
これらの実施例はヒトマラリア感染の齧歯動物モデルにおける高レベルの保護的CD8+ T細胞を誘導する、マラリアに対する免疫化のための新しい方法を示している。また、サブユニットワクチンを使用するスポロゾイト攻撃誘発に対する先例のない完全保護も示されている(CSエピトープ含有ワクチンによるDNA初回刺激およびMVA追加刺激を用いて表6では36匹のマウスの内36匹が保護された)。DNA初回刺激/MVA追加刺激法を用いた保護的免疫応答の誘導がウイルス感染インフルエンザAモデルおよび癌(P816腫瘍モデル)の二つの追加のマウスモデルで示された。ヒトでの使用のためのワクチンにより重要であるのは、この免疫化法はまた霊長類のCD8+ T細胞に対して高度に免疫原性であることである。強いSIV−gag特異的CTLが、エピトープ列を発現するプラスミドDNAおよびMVAにより3匹のマカクの内の3匹で誘導された。誘導されたレベルはSIV感染動物で観察されたレベルに匹敵する。チンパンジー研究からのデータは、同じ免疫化法がより高等な霊長類で熱帯熱マラリア原虫に対する強いCD8+ Tリンパ球応答を誘導でき、熱帯熱マラリア原虫スポロゾイト攻撃誘発に対する保護のいくつかの証拠があることを示している。
【0153】
Ty−VLPはP.ベルゲイ齧歯動物マラリアに対して良好なレベルのCD8+ T細胞応答を誘導すると以前に報告されているが(Allsoppら1995)、この構築物単独では保護的ではない。ここで組換えMVA追加刺激による続いての免疫化はCD8+ T細胞応答を非常に大きくし、高レベルの保護を発生させることが発見された(表7)。
【0154】
従来、組換えMVAウイルスはマラリアワクチンとしての効能は評価されていない。組換えMVA単独では有意に保護的ではなく、また組換えMVAによる初回刺激に続いての組換えプラスミドDNAによる第二の免疫化も保護的でない。
【0155】
しかしながら、Ty−VLPまたはプラスミドDNAによる最初の免疫化後の組換えMVAによる第二の免疫化では印象的なレベルの保護が得られた。非組換えMVAウイルスは天然痘に対する数千のヒトのワクチン接種に安全に使用されており、優れた安全性プロフィールを持っているようである。ワクシニアウイルスのこの株の増大した安全性および免疫原性の分子的基礎は分子研究により詳細に解明されている(Meyerら1991;Sutterら1994)。
【0156】
プラスミドDNAはP.ヨエリイ齧歯動物マラリアのためのマラリアワクチンとして以前に試験されている。高レベル(しかし完全ではない)の保護がいくつかの系統で見られているが、他の系統のマウスでは多数回の免疫化後でさえもわずかな保護かまたは保護しないことが観察されている(Doolanら1996)。プラスミドDNAは熱帯熱マラリア原虫に対する免疫化法として提案されているが、これまで成功は達成されていない。本明細書に提供された証拠は、ヒトマラリア寄生虫熱帯熱マラリア原虫に対する保護的免疫性を誘導するための免疫化法にプラスミドDNAが使用されるであろうことを示した最初の証拠である。
【0157】
本明細書に示された方法と類似の免疫化法は、ヒトにおける熱帯熱マラリア原虫に対する有用な保護的免疫性を誘導するために期待できる。齧歯動物またはチンパンジーで保護的免疫性を誘導するためにこれらの研究で用いられたワクチン構築物の五つは熱帯熱マラリア原虫配列を含んでおり、それ故熱帯熱マラリア原虫に対するヒト免疫化に使用できるであろうことに注意しなければならない。これらは1.熱帯熱マラリア原虫TRAPプラスミドDNAワクチン、2.熱帯熱マラリア原虫TRAP組換えMVAウイルス、3.多数の熱帯熱マラリア原虫エピトープのエピトープ列、ならびに単一のP.ベルゲイCTLエピトープをコードしているTy−VLP、4.3と同一のエピトープ列をコードしているプラスミドDNA、5.3および4の多くのマラリアエピトープを含むより長いHMエピトープ列をコードしている組換えMVAである。同様に、ヒトクラスI分子のHIVエピトープをコードしているプラスミドDNAおよびMVAは、HIV感染に対する予防的または治療的免疫化に使用できる。
【0158】
これらの研究は、追加刺激として非複製または複製欠陥ポックスウイルスを用いる新規連続的免疫化法はマラリア寄生虫に対する強い保護的CD8+ T細胞応答を誘導することができるという明瞭な証拠を提供した。実施例はポックスウイルスの複製株と比較されたCD8+ T細胞応答および保護の驚くほどのおよび本質的な促進を明瞭に示している。マラリア寄生虫からのCD8+ T細胞エピトープの免疫原性は他の抗原中のCD8+ T細胞エピトープとは本質的に異なるべきと信じる理由はないので、本明細書に記載された免疫化法は他の疾患に対して価値のあるCD8+ T細胞応答を発生させるのに有効であると証明されることが期待される。本免疫化法の決定的工程は前に存在しているCTL応答を追加刺激するための非複製または複製欠陥組換えポックスウイルスの使用である。CTL応答は、DNAワクチンi.d.およびi.m.、組換えTy−VLP、組換えアデノウイルスおよび照射スポロゾイトのような異なった抗原送達系を使用して初回刺激できることが示されている。このことはHIV、インフルエンザウイルスおよび腫瘍に対するCD8+ T細胞応答の発生で示されたデータにより支持される。他の疾患のいくつかの既知の例の中でCD8+ T細胞免疫応答が重要であるのは以下のものである:HIV、単純ヘルペス、帯状ヘルペス、C型肝炎、B型肝炎、インフルエンザ、エプスタイン−バール、麻疹、デング熱およびHTLV−1ウイルスにより;細菌結核菌およびリステリア種により;および原虫寄生体トキソプラズマおよびトリパノソーマにより起こされる感染および疾患。インフルエンザAウイルスに対する保護的CTL応答の誘導は図14に示されている。さらに、本明細書で記載された免疫化法は、CD8+ T細胞応答が保護的役割を果たしている癌の形に対する免疫化で価値があると期待される。
【0159】
腫瘍に対してDNA初回刺激MVA追加刺激法を使用した保護的CTL応答の誘導は図13に示されている。ヒトにおける特別の例にはメラノーマ、乳癌および結腸癌が含まれる。
【0160】
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【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1はマラリアエピトープカセットCABDHFEを持つTy−VLPを発現するために使用された構築物を示している。
【図2】図2はH、MおよびHMタンパク質の図的概要を示している。
【図3】図3は異なった免疫化法後のマラリアCD8 T細胞ELISPOTデータを示している。
【図4】図4は同じ抗原をコードしているプラスミドDNAによる初回刺激に続いての組換えMVA免疫化により、マラリアCD8 T細胞ELISPOTおよびCTLレベルが大いに追加刺激されることを示している。AおよびC。P.ベルゲイCSPからのKd制限ペプチドSYIPSAEKI[配列ID番号:67]および大腸菌β−ガラクトシダーゼからのLd制限ペプチドTPHPARIGL[配列ID番号:69]と18時間インキュベートした新しい脾臓細胞でのγ−インターフェロンELISPOTアッセイを使用してBALB/cマウスでCD8+ T細胞応答が測定された。ELISPOT計測数は対数スケールで表されていることに注意されたい。BおよびD。
【図5】図5はプラスミドDNAおよび組換えMVAを用いる種々の免疫化法により、マラリアおよびHIVエピトープに対してBALB/cマウスで誘導されたCTL応答を示している。
【図6】図6は異なった免疫化法後のマラリアエピトープpb9に対する特異的CD8+ T細胞レベルを測定するために実施されたELISPOTアッセイの結果を示している。
【図7】図7は異なったマウス系統におけるインフルエンザNPに対するCTL応答を示している。異なった系統のマウスは2週離して2回インフルエンザ核タンパク質をコードしているDNAワクチンV1J−NPで免疫されるか(白丸)、または同じDNAワクチンで初回刺激され、インフルエンザウイルス核タンパク質を発現している組換えMVAで追加刺激された(黒丸)。
【図8】図8は異なった近交マウス系で誘導された異なった抗原に対するCTL応答を示している。マウスは2週間離して2回DNAワクチン免疫化で免疫されるか(白丸)、またはDNAワクチンで初回刺激され、2週間後に同一の抗原を発現している組換えMVAで追加刺激された(黒丸)。
【図9】図9はスポロゾイト初回刺激CTL応答がMVAにより有意に追加刺激されることを示している。マウスはAにおいては照射されたスポロゾイトの2回の低用量(50+50)で、Bにおいてはスポロゾイトの2回の高用量(300+500)で免疫された;マウスはDでは低用量のスポロゾイト初回刺激、Eでは高用量のスポロゾイト初回刺激に続いてMVA.PbCSPで追加刺激された。MVA.PbCSPでの免疫化後のCTL応答はCに示されている。
【図10】図10はプラスミドDNAまたはアデノウイルスによる初回刺激およびMVAによる追加刺激によるCTL応答を示している。BALB/cマウス群(n=3)はプラスミドDNA(A)またはβ−ガラクトシダーゼを発現する組換えアデノウイルス(B)で初回刺激された。プラスミドDNAは筋肉内に、MVAは静脈内におよびアデノウイルスは皮内に投与された。脾臓細胞は最後の免疫化から2週間後にペプチドTPHPARIGL[配列ID番号:69]で再刺激された。CTL活性はペプチドでパルス刺激したP815細胞で試験された。
【図11】図11はプラスミドDNAによる初回刺激、続いての異なった組換えワクシニアウイルスによる追加刺激によるBALB/cマウスのCTL応答を示している。
【図12】図12は異なった経路でMVAを追加刺激した後のペプチド特異的CD8+ T細胞の頻度を示している。
【図13】図13は二群のマウスの生存率を示している。攻撃60日後、腫瘍エピトープ列で免疫された群では10匹のマウスの内8匹が生き残っていた。
【図14】図14はインフルエンザウイルス攻撃誘発実験の結果を示している。BALB/cマウスは示されているように免疫された。GG=遺伝子銃免疫化、im=筋肉内注射、iv=静脈内注射。動物の生存を攻撃誘発後毎日モニターした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの標的抗原に対する保護的CD8+ T細胞免疫応答を発生するためのキットであって、以下:
(i) 標的抗原の一つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープ源、ならびに医薬品として受容可能な担体から成る初回刺激組成物;および
(ii)初回刺激組成物のCD8+ T細胞エピトープと同一である少なくとも一つのCD8+ T細胞エピトープを含む標的抗原の一つまたはそれ以上のCD8+ T細胞エピトープ源、ここでCD8+ T細胞エピトープ源は非複製または複製欠陥組換えポックスウイルスベクターである、ならびに医薬品として受容可能な担体から成る追加刺激組成物;
からなり、ただし、(i)のエピトープ源がウイルスベクターであるならば、(ii)におけるウイルスベクターは異なったウイルスから誘導される、キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−23044(P2007−23044A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221144(P2006−221144)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【分割の表示】特願平11−501890の分割
【原出願日】平成10年6月9日(1998.6.9)
【出願人】(506277339)オクソン・セラピューティックス・リミテッド (1)
【Fターム(参考)】