説明

CDMAフォワードリンク信号の最先到着を推定するためのシステムおよび方法

【課題】フォワードおよびリバースリンクCDMA信号の最先到着を正確に推定する。
【解決手段】無線通信システムにおいて最先信号到着を推定するためのシステムおよび方法がここに示されている。本発明の実施形態によると、システムは、複数のパイロット信号を送信する基地局と、送信されたパイロット信号のうちの1つに対応する複数の信号を受信するように構成された移動局とを含んでいる。移動局は、サーチャ相関メカニズムと少なくとも1つのフィンガ相関メカニズムとを含む受信機を含んでいる。移動局の受信機は、受信信号の到着時間とエネルギーレベルを検出し、受信信号に対応するサンプルの到着時間分布を表すサーチャヒストグラムとフィンガヒストグラムとを構築する。そして移動局は、推定初期信号到着の各々に対して遅延インデックスを生成し、遅延インデックスを基地局または位置決定エンティティに転送して、最先信号到着に対応する最小遅延インデックスを選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に無線通信システムに関し、具体的には、フォワードリンクおよびリバースリンクのいずれかにおいてCDMA無線信号の最先到着を正確に推定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の移動局(MS)の場所を配置する性能を付加することによって無線通信システムを拡大する試みが進行中である。連邦通信委員会(FCC)はこの性能に対する規定を普及させてきた(1999年9月15日に採用され、1999年10月6日に公表された、整理番号94−102、第三回報告および指令(report and order))。この規則は、2001年10月までに、緊急通話911を、通話の67%を50メートル以内(かつ通話の95%を150メートル内)とする移動局の位置を配置するための携帯位置配置ソリューションを採用する無線キャリアを必要としている。
【0003】
この要件を満たす際に、MSの位置を決定するための1つのアプローチは、符号分割多重アクセス(CDMA)スキーム下で動作する無線通信システムの基地局(BS)およびMSにおいて使用可能な情報を使用することである。CDMAは、1993年7月に公表され、かつ参照してここに組み込まれている、「デュアルモード広帯域スペクトル拡散セルラーシステムの移動局−基地局互換性基準(MOBILE STATION-BASE STATION COMPATIBILITY STANDARD FOR DUAL-MODE WIDEBAND SPREAD SPECTRUM CELLULAR SYSTEM)」と題された、米国電気通信工業会/米国電子工業界暫定標準95(TIA/EIA IS−95)において定義されているディジタル無線周波数(RF)チャネル化技術である。この技術を採用する無線通信システムは一意のコードを各異なる通信信号に割り当て、擬似雑音(PN)変調を適用してこれらの通信信号を共通の広帯域スペクトル拡散帯域幅に渡って拡散する。CDMAシステムにける受信装置が正しいコードを有している限り、その対象信号を、同一の帯域幅で同時に送信されている他の信号から検出および選択することができる。
【0004】
図1(従来技術)はCDMA無線通信システム100の簡略ブロック図を示している。システム100によって、一般的に移動端末機器(TE2デバイス102)と無線通信デバイス(MT2デバイス104)とを備えているMS110が相互作用機能(IWF)108と通信可能になる。IWF108は、無線ネットワークと、公衆交換電話網(PSTN)および、インターネットまたはイントラネットベースアクセスを提供する有線パケットデータネットワークなどの他のネットワーク間のゲートウェイとして作用する。MS110はBS106と通信し、これはリバースリンク送信パスの無線インタフェースUを介して地理上のセルまたはセクタと関連している。BS106は、MS110からの通信信号を処理するように構成されている。BS106はまた、位置処理性能(例えば、位置決定エンティティ(PDE)サーバメカニズム)を含んでいてもよく、またはこれと関連していてもよい。
【0005】
フォワードリンク送信パス上で、BS106は無線インタフェースUを介してMS110と通信する。フォワードリンク送信中、各BS106は、パイロット信号などのコントロール信号ならびに情報所持信号を送信可能である。パイロット信号は複数の用途を有しており、このうちの1つは、リバーリンク送信に適応するのに最適なBS106を識別することである。従って、パイロット信号は、MS110が通話の異なるセルまたはセクタを移動する際に途切れなく通信を維持するためにリバースリンク通信を「ハンドオフ」するBS106を決定する際に有益である。パイロット信号はまた時間およびコヒーレント位相基準を提供して、MS110が初期システム同期を得て、フォワードリンクでのコヒーレント変調を容易にすることを可能にする。全パイロット信号は同一のPN拡散コードを受けるが、異なるコード位相オフセットによってMS110が、異なるセクタまたは基地局から到着する異なるパイロット信号を区別できるようにする。各BS106は6個の異なるPNオフセットによって最高6個の異なるパイロット信号を送信することができる。同一のパイロット信号コードの使用によって、MS110は、同一コードの全パイロット信号コード位相の検索を実行することによってシステムタイミング同期を見つけることができる。
【0006】
既知であるように、エアインタフェースUを移動する信号送信はマルチパス伝搬されてもよい。従って、MS110はまず、BS106によって送信されたフォワードリンク信号に対応する直接(すなわち見通し線(LOS))信号を受信し、次いで、マルチパスによって同一信号のバージョンを時間遅延および減衰されてもよい。最初のLOS信号が受信されず、マルチパス成分のみが存在する状況もありうる。MS110は全受信パイロット信号の到着時間(TOA)およびエネルギーを決定して、最先の使用可能な受信パイロット信号を識別する。
【0007】
受信パイロット信号のTOAを決定するために、MS110は、信号が受信されている間基準が消滅するPNコードシーケンス(すなわちPNチップ)のチップ(すなわちその端数)数をカウントおよび記憶してもよい。そしてMS110は、最小数の消滅PNチップ後にいずれのパイロット信号が受信されたかを検出することによって最先受信パイロット信号を識別することができる。基準(すなわちゼロ到着時間)は一般的に任意のマークであり、これによって、分離TOA測定値は位置決定アルゴリズムにおいて直接使用されない。この任意のエラーを回復するために、異なる地理上のポイントから到着するパイロットに対応する少なくとも2つのTOA測定値が必要である。例えば、前記2つの測定値を減算することによって、2つの発信地に対する移動局の半径距離間の差に比例する測定値を得、ゼロタイミングにおける曖昧さに起因する共通のエラーはこの減算をもたらす。
【0008】
マルチパス伝搬の効果を補償するために、システム100などのCDMAシステムはレーキ受信機を用い、これはフォワードリンクパイロット信号の直接およびマルチパスバージョンを処理および結合して、より良好な受信信号を生成する。図2(従来技術)は、MS110によって受信されたフォワードリンク信号をコヒーレントに復調するレーキ受信復調器225を含むMS110の受信機200のハイレベルな機能ブロック図を示している。図2に示されているように、無線周波数/ディジタルコンバータモジュロ205は、アンテナ/生成ディジタルサンプルからの受信信号をダウンコンバートおよびディジタル化する。ディジタルサンプルは、サーチャ215を含むレーキ受信復調器225に供給される。
【0009】
サーチャ215は、1またはハーフPMチップ増分のステップにおいてマルチパス信号ピークを含みやすいサンプルを通過することによって信号を検索するように構成されている。そしてサーチャ215はフィンガ相関器210A〜Cをより強いマルチパス信号に割り当てる。各フィンガ相関器210A〜Cはその割り当てられたマルチパス信号を連続追跡し、信号をコヒーレントに復調して、信号がフェードアウトするか、フィンガ相関器210A〜Cがサーチャ215によって再割り当てされるまで、信号の追跡を継続する。そしてフィンガ相関器210A〜Cの復調出力は結合器220によって結合されて、より強い受信信号を形成する。
【0010】
フォワードリンク信号のTOAを検出する性能を考えると、CDMAシステムは、少なくとも理論的には、MS110の配置情報を抽出するこれらの性能を利用してもよい。上記の通り、MS110は、受信マルチパス成分のTOAを決定可能である。
【0011】
上記の通り、公表されたFCC規定は、MSの配置を通話の67%が50メートル内となるようにすることを要している。現在のCDMAシステムの制約は、配置要件に準拠する必要な解像度によってTOAを推定できないことである。例えば、最先受信パイロット信号を決定するためにPNチップの許容範囲内に消滅PNシーケンスをカウントすることは、最も近いBSとの通信リンクを確率する際の結果ではない。しかしながら、PNチップが約800nsに対応し、これは240メートルの半径距離である、という事実によると、このような許容範囲は明らかに配置要件に準拠していない。
【0012】
さらに、LOS信号は受信機に到着する最強信号でなくてもよく、最初の到着信号を分離することは単純なタスクではない。情報検索のためにマルチパス遅延信号を使用することは、余分な遅延に起因する固有エラーを有することに注目すべきである。
【0013】
現在のCDMAシステムの別の制約は、レーキ受信機のフィンガ相関器での時間オフセットジッタの効果である。上記の通り、MSレーキ受信機におけるサーチャは最強のフォワードリンク受信信号を検出し、フィンガ相関器を割り当て、検出信号のうちの1つを追跡、およびコヒーレントに復調する。しかしながら、ハードウェアでの解像度によって、フィンガ相関器は、それらの割当信号を追跡しようとするとジッタを経験する可能性がある。フィンガ相関器の解像度は一般的にPNチップの1/8であり、これは、ほぼ24メートルのジッタジャンプとなる。累積的に、これらの効果は検索情報の正確さを妥協するであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、CDMAのフォワードおよびリバースリンク信号の最先到着を正確に推定できるシステムおよび方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、フォワードおよびリバースリンクCDMA信号の最先到着を正確に推定することができる新規のシステムおよび方法を提供することによって、上記の識別された必要性に対処する。
【0016】
説明は、受信機が移動局で送信機が基地局であるフォワードリンクの場合についてなされるが、本発明の方法および装置はこの説明を、基地局が受信機として作用し、かつ移動局が送信機であるリバースリンクの場合にも適用する。
【0017】
実現され、かつここに大まかに説明されている本発明の原理に従ったシステムおよび方法は、複数のパイロット信号を送信する基地局または基地局群と、送信されたパイロット信号のうちの1つに対応する複数の信号を受信するように構成されている移動局とを含んでいる。移動局は、サーチャ相関メカニズムと少なくとも1つのフィンガ相関メカニズムとを含む受信機を含んでいる。異なるパイロット信号ごとに、移動局の受信機は、前記パイロットに対応するマルチパス信号の到着時間とエネルギーレベルを検出し、サンプルの到着時間分布を表すサーチャヒストグラムとフィンガヒストグラムとを構築する。移動局の受信機は、サーチャヒストグラムとフィンガヒストグラム内に含まれているサンプルを処理して、各パイロットの最初の受信マルチパス成分に対するTOAの推定を生成する。この時点で、移動局は全結果(パイロットあたり1つ)を別のエンティティ(基地局、PDE、・・・)に報告することを選択することができ、あるいはいずれのPNパイロットシーケンスがいずれの基地局から送信されるかについての情報を有していれば、その基地局に属するパイロットの最小TOAに対応する測定値(基地局につき1つの測定値のみを報告する)をさらに処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下の詳細な説明は、本発明の実施形態を示している添付の図面を参照する。他の実施形も可能であり、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、実施形態に対する変更がなされてもよい。従って、以下の詳細な説明は本発明を制限する意図はない。むしろ本発明の範囲は添付のクレームによって定義される。
【0019】
一般の当業者にとって、以下に説明される実施形態が、図面に示されているエンティティにおけるソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアの多数の異なる実施形態において実現されてもよいことは明らかである。本発明を実現するために使用されている実際のソフトウェアコードや特殊なコントロールハードウェアは本発明の制約ではない。従って、実施形態の作用および動作は、実際のソフトウェアコードや特殊なハードウェアコンポーネントを特に参照せずに説明される。一般の当業者が、ここでの説明に基づいて本発明の実施形態を実現するためにソフトウェアおよびコントロールハードウェアを設計できることは明らかに理解されるために、このような特定の参照はなくてもよい。
【0020】
さらに、示されている実施形態に関連するプロセスは、例えば不揮発性メモリ、光学ディスク、磁気テープ、または磁気ディスクなどの任意の記憶装置に記憶されてもよい。さらに、プロセスは、システムが作製されるとき、または後日コンピュータ読み取り可能な媒体を介してプログラミングされてもよい。このような媒体は、記憶装置に関して上に挙げられている形態のいずれかを含んでいてもよく、またさらに、例えばコンピュータによって読み取り、復調/復号化、および実行される命令を伝達するために変調、または他の方法で操作されるキャリア波を含んでいてもよい。
【0021】
図3Aは、本発明の実施形態に従って構築されかつ動作するプロセス300を示しているハイレベルなフロー図である。ブロックB360に示されているように、プロセス300はまず、MSレーキ受信機200のサーチャ215において、処理されるパイロット信号の最小エネルギー(Emin)と、(以下に説明される)サーチャヒストグラムの任意のビンに対して生じる最小サンプル数(Tmin)に対する閾値レベルを確立する。閾値レベルEminおよびTminを使用して、パイロット信号、反射マルチパス信号、雑音などを区別し、従って、有効パイロット信号の処理を保証する方法で選択される。
【0022】
ブロックB362において、MS受信機200は、(BSと表示される)特定のBSについて、MSレーキ受信機200のサーチャ215によって受信される信号Pごとの相対TOAとエネルギーレベルEとを検出する。上記の通り、各BSは最高6個の異なるパイロット信号を送信してもよく、また特定のパイロット信号に対応する所与のPNオフセットについて、サーチャ215は、信号ピークを検出するために受信信号に対応するサンプルを検索する。所与のPNオフセットについて、サーチャ215は、対応するLOSパイロット信号、パイロット信号の反射バージョン、および雑音を備えている信号ピークを検出する。信号ピークを検出すると、サーチャ215はピークを測定し、2つの値を生成し、その1つは信号到着時間(TOA)を示しており、もう1つはその信号のエネルギー(E)を示している。上記の通り、TOAの算出は、各信号が受信される間に消失するPNチップ数をカウントおよび記憶することによって実行されてもよい。
【0023】
ブロックB364において、MS受信機200は更なる処理から、閾値レベルEmin未満のエネルギーレベルEを含んでいる任意の信号を廃棄する。Emin未満のエネルギーレベルEを有する信号を廃棄することによって、プロセス300は、TOA推定が有効パイロット信号からのものであることを保証する。
【0024】
PNオフセットごとに、ブロックB366において、MS受信機200は、未廃棄の信号P〜Pに対するサーチャヒストグラム390Aを、それぞれの対応するTOA〜TOAに基づいて構築する。既知であるように、ヒストグラムは、所定の間隔での値の集合の分布を示している。この場合、サーチャヒストグラム390Aは、特定のPNオフセットに対応する検索期間で閾値レベルEminよりも大きい信号強度を有する信号のサンプルを収集することによって構築される。3個のパイロット信号を送信するBSについて、MS受信機200は3個の別個のサーチャヒストグラム390A〜390Cを構築してもよい。
【0025】
特定のPNオフセットに対する例示的サーチャヒストグラム390Aが図3Bに示されている。横軸は(最先−38から最後15.7の)ビンで測定されている未廃棄の信号Pの相対TOAを表しており、縦軸は相対TOAで生じるサンプル数を示している。一般的に、信号が強いほど、ビン内での発生回数は多くなり、弱い信号はEmin閾値によってより頻繁に廃棄される。各ビンは、ハードウェアの解像度に依拠しているPNチップの端数を表すように構成されている。例示的実現において、ビンはPNチップの1/8に同等である。図3Bに示されているように、サーチャヒストグラム390Aは、−28、−16、および−4という相対TOSでの最大発生回数を有する3個のビンによって証明されるように、3個の信号ピークA、B、Cを含んでいる。
【0026】
上記の通り、PNオフセットごとに、サーチャ215はフィンガ相関器210Aを信号に割り当て、信号を復調するために対応するサンプルを追跡および処理する。フィンガ相関器210A〜210Cがサーチャ215によって最強の信号ピーク(例えばピークA、B、C)に割り当てられた後、MS受信機200は、ブロックB368において、全割り当て信号P〜Pに対するフィンガヒストグラム395Aを構築する。3個のパイロット信号を送信するBSに対するサーチャヒストグラム390と非常に類似して、プロセス300は3個の別個のフィンガヒストグラム395A〜395Cを構築することができる。
【0027】
例示的フィンガヒストグラム395Aが図3Cに示されている。フィンガヒストグラム395Aはサーチャヒストグラム390Aと同様に構築されているが、フィンガヒストグラム395Aは、サーチャヒストグラム390Aよりも高い解像度を有する割当信号P〜Pの分布を示していることに注目すべきである。従って、フィンガヒストグラム395はサーチャヒストグラム390Aよりも正確であり、フィンガ相関器210A〜210Cがパイロット信号P〜Pを追跡する際に信号ピークのグループを示してもよい。これらのグループの信号ピークは上記のジッタ効果の兆候である。図3Cに示されているように、フィンガヒストグラム395Aは、相対TOA−28に隣接して配置されている第1の有意グループのピークA’と、相対TOA−17.5に隣接して配置されている第2の有意グループのピークB’と、相対TOA−2.9に隣接して配置されている第3の有意グループのピークC’とを含んでいる。
【0028】
ブロックB370において、MS受信機200は第1のビンを、Tmin以上の発生回数を有するサーチャヒストグラム390A〜390Cの各々に配置する。かなりの多数のサンプルを有する第1のビンを配置することによって、プロセス300は、PNオフセットごとに最先到着パイロット信号Pを識別する可能性を最大化する。
【0029】
ブロックB372において、MS受信機200は、サーチャヒストグラム390A〜390Cの第1のビンに対応するフィンガヒストグラム395A〜395Cの各々におけるサンプルの周辺に狭ウィンドウを構築するだけでなく、サーチャヒストグラム390A〜390Cの各々における第1のビンの周辺に狭ウィンドウを構築する。サーチャヒストグラム390A〜390Cおよびフィンガヒストグラム395A〜395Cのウィンドウは、サーチャ215とフィンガ相関器210A〜210C間の解像度の差を補償し、これは信号のタイミングのずれを招く可能性がある。このようなずれは図3Bおよび3Cに示されており、ここで、フィンガヒストグラム395Aが、それぞれのTOA−28、−17.5、および−2.9に集中している信号グループピークA’、B’、C’を復調する間、サーチャヒストグラム390AはそれぞれのTOA−28、−16、および−4における信号ピークA、B、Cを復調する。
【0030】
図3Bおよび3Cはまた、単一のサーチャヒストグラム390Aとフィンガヒストグラム395Aのセットに対して構築されたウィンドウを示している。ウィンドウは特定のビンに集中してもよく、また±PNチップの端数(例えば、±1/2PNチップ)に同等なビンオフセットを有していてもよい。例えば、サーチャヒストグラム390A〜390Cおよびフィンガヒストグラム395A〜395CのビンがPNチップの1/8を示している場合、ウィンドウは、±1/2PNチップのウィンドウ解像度に対するそれぞれのビンの片側において4個のビンを補ってもよい。
【0031】
ブロックB374において、MS受信機200は、サーチャヒストグラム390A〜390Cおよびフィンガヒストグラム395A〜395Cのウィンドウの各セット内に含まれているサンプル情報を処理して、最先到着パイロット信号Pの各々に対するタイミング推定を提供する。とりわけ、サーチャヒストグラム390A〜390Cおよびフィンガヒストグラム395A〜395Cのウィンドウの各セットについて、プロセス300はそれぞれのウィンドウ内に含まれている全サンプルを結合および平均化し、最先パイロット信号Pの各々に対する平均TOA値(TOA_mean)を得る。フィンガヒストグラム395A〜395Cが、サーチャヒストグラム390A〜390Cの第1のビンに対応するサンプルを含んでいない場合、MS受信機200は、サーチャヒストグラム390A〜390Cのウィンドウ内に含まれているサンプルを単に結合および平均化して、TOA_meanを生成する。
【0032】
ブロックB376において、MS受信機200は、BSによって送信された推定最先到着パイロット信号Pの各々に対して遅延インデックスDを生成する。最先到着パイロット信号Pの各々について、遅延インデックスDは、各信号によって生じた遅延を正確に量子化する測定基準を提供する。遅延インデックスDは、対応する比例標準偏差量を、ブロックB374において計算されたTOA_meanの各々から減算することによって生成される。既知であるように、標準偏差は、サンプルの集合の分布(すなわち、拡散)を測定する量である。標準偏差をTOA_meanから減算することは、反射、雑音、または干渉から生じるエラーを最小化し、それによって最先到着パイロット信号Pの各々に対してタイミングのより正確な推定を提供することができる。そしてMS受信機200は、遅延インデックスD情報をBSに転送し、全最先到着パイロット信号Pから最初のパイロット信号(P)を決定する。先行の説明は、移動局はいずれのパイロットがいずれの基地局から到着するかを知っていることを想定している点に注目すべきである。つまり移動局がこのような情報を有していない場合、移動局は全D値を報告し、さらなる処理を別のエンティティに施す。
【0033】
ブロックB378において、プロセス300は、最先到着パイロット信号Pの各々について生成されたフォワード遅延インデックスD(Dk,min)の最小値を選択することによってPを決定する。明らかに、Dk,minは、所与の基地局BSに対応する最先到着パイロット信号Pのいずれかによって生じた最小遅延に対応している。従って、Dk,minを選択することによって、プロセス300は、全最先到着パイロット信号Pから最初のパイロット信号Pを識別する。
【0034】
MS110は、いずれのSBがいずれのPNオフセットを送信しているかについての事前情報を処理しなくてもよいため、Dk,minの選択は、BS、またはこの情報を有している(上記の)関連PDEサーバによって実行されてもよい。
【0035】
最後に、ブロックB380において、プロセス300はカウンタをインクリメントし、ブロックB362に戻り、そこから発信する最先到着パイロット信号を決定するために新たなBSj+1を示す。移動局が、いずれのパイロット信号がいずれの基地局に対応しているかについての情報を有していない場合、B362で開始するプロセスは(全基地局ではなく)全パイロット信号をループし、最終ステップB378は他に実行される必要がある。
【0036】
好ましい実施形態についての上記の説明がなされることによって、当業者は本発明をなし、または使用することが可能になる。これらの実施形態に対する種々の変更が可能であり、ここに示されている一般原理は他の実施形態にも適用可能である。例えば、本発明は、配線論理回路として、特定用途向け集積回路に組み込まれている回路構成として、あるいは不揮発性記憶装置にロードされているファームウェアプログラムまたは機械読み取り可能なコードとしてデータ記憶装置に対してロードされているソフトウェアプログラムとして(これらのコードは、マイクロプロセッサまたは他のディジタル信号プロセッサなどの論理要素のアレイによって実行可能な命令である)、全部または一部として実現されてもよい。
【0037】
従って、本発明は、上記の実施形態に制限されることを意図しておらず、むしろここに示されているように、開示されている原理および新規の特徴に矛盾しない最大範囲を許容するものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1(従来技術)は、従来のCDMA無線通信システムを示しているブロック図である。
【図2】図2(従来技術)は、従来のCDMAレーキ受信復調器を示しているブロック図である。
【図3A】図3Aは、本発明の実施形態に従って構築されかつ動作する、CDMA信号の最先到着を推定するためのプロセスを示しているフローチャートである。
【図3B】図3Bは、本発明の実施形態によって生成されるヒストグラム(その1)を示している。
【図3C】図3Cは、本発明の実施形態によって生成されるヒストグラム(その2)を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局と移動局とを備える無線通信システムにおいて最先信号到着を推定するための方法であって、前記移動局はサーチャ相関メカニズムと少なくとも1つのフィンガ相関メカニズムとを含む受信機を含んでおり、
前記移動局の受信機において、前記移動局によって受信された複数の信号の到着時間とエネルギーレベルを検出することであって、前記複数の受信信号は、前記基地局によって送信された複数のパイロット信号のうちの1つに対応していることと、
前記パイロット信号の各々に関連しているサーチャヒストグラムとフィンガヒストグラムとを、所定のエネルギー閾値レベルを満たす前記受信信号に対応するサンプルに基づいて構築することであって、前記サーチャヒストグラムとフィンガヒストグラムの各々は前記信号の到着時間分布を表していることと、
前記サーチャヒストグラムと前記フィンガヒストグラムの各々内に含まれているサンプルを処理して、複数の推定初期信号到着を生成することであって、前記推定初期信号到着の各々は前記パイロット信号のうちの1つに対応していることと、
前記推定初期信号到着のうちの最先のものに基づいて、基地局ごとに最先信号到着を決定することと、を備えている方法。
【請求項2】
さらに、所定の閾値より大きい多数のサンプルを含む前記サーチャヒストグラムの各々において第1のビンを識別することを含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
前記サーチャヒストグラムの第1のビンの各々内の前記サンプル周辺にサーチャウィンドウを構築することと、
前記サーチャヒストグラムの第1のビン内に含まれる前記サンプルに対応する前記フィンガヒストグラムの各々のサンプル周辺にフィンガウィンドウを構築することと、を含んでいる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記サーチャウィンドウと前記フィンガヒストグラムウィンドウは、±PNチップの端数のオフセットを有するビンに集中する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルを処理することは、前記サーチャウィンドウと前記フィンガウィンドウの各々内に含まれる前記サンプルを結合することを含んでいる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルを処理することがさらに、前記パイロット信号のうちの1つに対応する推定初期信号到着を生成するために、前記結合サンプルを平均化することを含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
さらに、前記推定初期信号到着の各々について遅延インデックスを生成することを含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遅延インデックスの各々は、対応する比例標準偏差量を前記推定初期信号到着の各々から減算することによって生成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最先信号到着を基地局ごとに決定することは、最先信号到着に対応する前記遅延インデックスの最小値を決定することを含んでいる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記移動局は前記遅延インデックスを、前記基地局のうちの少なくとも1つと位置決定エンティティとに転送して、最先信号到着に対応する前記最小遅延インデックスを選択する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
無線通信システムにおいて最先信号到着を推定するためのシステムであって、
複数のパイロット信号を送信する基地局と、
前記パイロット信号のうちの1つに対応する複数の信号を受信するように構成された移動局であって、サーチャ相関メカニズムと少なくとも1つのフィンガ相関メカニズムとを含む受信機を含んでいる移動局と、を備えており、
前記移動局の受信機は前記受信信号の到着時間とエネルギーレベルを検出し、所定のエネルギー閾値レベルを満たす前記受信信号に対応するサンプルの到着時間分布を表すサーチャヒストグラムとフィンガヒストグラムとを構築し、前記サーチャヒストグラムと前記フィンガヒストグラムの各々内に含まれる前記サンプルを処理して、複数の推定初期信号到着を生成し、
最先信号到着は、前記推定初期信号到着の最先のものに基づいて決定されるシステム。
【請求項12】
前記移動局の受信機は、所定の閾値より大きい多数のサンプルを含む前記サーチャヒストグラムの各々における第1のビンを識別する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記移動局の受信機は、前記サーチャヒストグラムの第1のビンの各々内の前記サンプル周辺にサーチャウィンドウを構築し、前記サーチャヒストグラムの第1のビン内に含まれる前記サンプルに対応する前記フィンガヒストグラムの各々のサンプル周辺にフィンガウィンドウを構築する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記サーチャウィンドウと前記フィンガヒストグラムウィンドウは、PNチップの±端数のオフセットを有するビンに集中する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記移動局の受信機は、前記サーチャウィンドウと前記フィンガウィンドウの各々内に含まれる前記サンプルを結合することによって、前記サンプルを処理する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記基地局の受信機は、前記結合サンプルを平均化することによって前記サンプルをさらに処理して、前記パイロット信号のうちの1つに対応する推定初期信号到着を生成する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記移動局の受信機は、前記推定初期信号到着の各々に対して遅延インデックスを生成する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記遅延インデックスの各々は、対応する比例標準偏差量を前記推定初期信号到着の各々から減算することによって生成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記最先信号到着を決定することは、最先信号到着に対応する前記遅延インデックスの最小値を決定することを含んでいる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記移動局は前記遅延インデックスを、前記基地局のうちの少なくとも1つと位置決定エンティティとに転送して、最先信号到着に対応する前記最小遅延インデックスを選択する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
基地局と移動局とを備える無線通信システムにおいて最先信号到着を推定するための、複数のプロセッサによって実行可能な命令シーケンスによって符号化される機械読み取り可能な媒体であって、前記移動局はサーチャ相関メカニズムと少なくとも1つのフィンガ相関メカニズムとを含む受信機を含んでおり、前記命令シーケンスは、
前記移動局によって受信された複数の信号の到着時間とエネルギーレベルを検出することであって、前記複数の受信信号は前記基地局によって送信された複数のパイロット信号のうちの1つに対応していることと、
所定のエネルギー閾値レベルを満たす前記受信信号に対応するサンプルに基づいて、前記パイロット信号の各々と関連しているサーチャヒストグラムとフィンガヒストグラムとを構築することであって、前記サーチャヒストグラムと前記フィンガヒストグラムの各々は前記サンプルの到着時間分布を表すことと、
複数の推定初期信号到着を生成するために、前記サーチャヒストグラムと前記フィンガヒストグラムの各々内に含まれるサンプルを処理することであって、前記推定初期信号到着の各々は前記パイロット信号のうちの1つに対応することと、
最先信号到着を、前記推定初期信号到着の最先のものに基づいて決定することと、を備えている機械読み取り可能な媒体。
【請求項22】
所定の閾値よりも大きい多数のサンプルを含む前記サーチャヒストグラムの各々における第1のビンを識別することをさらに含んでいる、請求項21に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項23】
前記サーチャヒストグラムの第1のビンの各々内の前記サンプル周辺にサーチャウィンドウを構築することと、
前記サーチャヒストグラムの第1のビン内に含まれる前記サンプルに対応する前記フィンガヒストグラムの各々のサンプル周辺にフィンガウィンドウを構築することと、をさらに含んでいる、請求項22に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項24】
前記サーチャウィンドウと前記フィンガヒストグラムウィンドウは、±PNチップの端数のオフセットを有するビンに集中する、請求項23に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項25】
前記サンプルを処理することは、
前記サーチャウィンドウと前記フィンガウィンドウの各々内に含まれる前記サンプルを結合することを含んでいる、請求項24に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項26】
前記サンプルを処理することはさらに、
前記パイロット信号のうちの1つに対応する推定初期信号到着を生成するために、前記結合サンプルを平均化することを含んでいる、請求項25に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項27】
前記推定初期信号到着の各々に対して遅延インデックスを生成することをさらに含んでいる、請求項26に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項28】
前記遅延インデックスの各々は、対応する比例標準偏差量を前記推定初期信号到着の各々から減算することによって生成される、請求項27に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項29】
前記最先信号到着を決定することは、最先信号到着に対応する前記遅延インデックスの最小値を決定することを含んでいる、請求項28に記載の機械読み取り可能な媒体。
【請求項30】
前記移動局は、前記遅延インデックスを、前記基地局のうちの少なくとも1つと位置決定エンティティとに転送して、最先信号到着に対応する前記最小遅延インデックスを選択する、請求項29に記載の機械読み取り可能な媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公開番号】特開2008−86044(P2008−86044A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−303557(P2007−303557)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【分割の表示】特願2003−518218(P2003−518218)の分割
【原出願日】平成14年7月25日(2002.7.25)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】