CDMA受信機および受信電界検出方法
【課題】IFアンプが飽和するような高電界時においても正確な受信電界検出を可能とする。
【解決手段】制御部12は、IFディジタル信号S7が一定値となるようAGCアンプ8に出力するVAGC電圧信号S5を制御する。制御部12は、IFアンプ7を構成するシリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧Vbeの値をVbe電圧検出信号S8により測定し、測定されたVbe電圧が基準電圧よりも大きい場合、AGCアンプ8の利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定するが、測定されたVbe電圧が基準値より小さい場合には高電界状態であると判定して、予め準備された変換テーブルを用いてVbe電圧から受信電界レベルを推定する。
【解決手段】制御部12は、IFディジタル信号S7が一定値となるようAGCアンプ8に出力するVAGC電圧信号S5を制御する。制御部12は、IFアンプ7を構成するシリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧Vbeの値をVbe電圧検出信号S8により測定し、測定されたVbe電圧が基準電圧よりも大きい場合、AGCアンプ8の利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定するが、測定されたVbe電圧が基準値より小さい場合には高電界状態であると判定して、予め準備された変換テーブルを用いてVbe電圧から受信電界レベルを推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDMA(符号分割多元接続:Code Division Multiple Access)方式の無線信号を受信するためのCDMA受信機に関し、特に受信した無線信号の受信電界の受信電界レベルを検出するための受信電界検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信システムに用いられる通信方式として、干渉や妨害に強いCDMA通信方式が注目されている。このCDMA通信方式の1つにW−CDMA(Wideband CDMA:広帯域CDMA)通信方式がある。このW−CDMA方式の移動通信システムでは、移動局の送信電力を制御するために移動局から無線基地局装置に対する無線信号の受信電界レベルを検出するための機能が必要となる。そのため、W−CDMA方式の無線基地局装置には、W−CDMA方式の無線信号を受信して、その受信電界レベルを検出するための機能が設けられている。
【0003】
このような受信機において、受信した無線信号の受信電界を検出するための受信電界検出方法としては様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。特に、上記の特許文献2には、AGC(Automatic Gain Control)制御を行うためのVAGC電圧のレベルに基づいて受信電界レベルを検出する方法が開示されている。
【0004】
このような受信電界検出方法を行う従来の受信機の構成を図6に示す。この従来の受信機は、図6に示されるように、受信信号S1を受信するアンテナ1と、この受信信号S1を処理するRFアンプ2及びRFフィルタ3と、RFフィルタ3通過後の受信信号を第1中間周波数信号S2に周波数変換する第1ミキサ4と、第1中間周波数信号S2を処理するIFアンプ5とIFフィルタ6と、シリコントランジスタで構成されるIFアンプ7と、AGC制御を行うために利得を制御可能なAGCアンプ8と、AGCアンプ8により増幅された後の信号を第2中間周波数信号S3に周波数変換する第2ミキサ9と、A/Dコンバータ10と、ベースバンド(BB)部11と、制御部92とを備えている。ベースバンド部11は、A/Dコンバータ10から出力されたIFディジタル信号S4を復調する回路を備えている。AGCアンプ8は、制御部92から入力されるVAGC電圧信号S5により利得が制御される。
【0005】
また、図6中の制御部92の構成を図7に示す。制御部92は、図7に示されるように、演算を行うマイクロプロセッサ(以下CPUとする)95と、読み出し専用メモリ(以下ROMとする。)96と、D/Aコンバータ17とから構成されている。
【0006】
ROM96には、図8に示されるように、IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22と、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26という2つのテーブルが格納されている。
【0007】
IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22は、A/Dコンバータ10からのIFディジタル信号S7と、基準値との差であるIFレベル差をAGC制御量に変換するテーブルである。
【0008】
VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26は、VAGC可変量に対する受信電界を算出するためのテーブルである。
【0009】
D/Aコンバータ17は、AGCアンプ8の利得制御を行うためのアナログ量のVAGC電圧信号S5を生成する。
【0010】
次に、上述した従来のW−CDMA方式の受信機の動作を図面を参照して説明する。
【0011】
アンテナ1にて受信された希望波である受信信号S1は、RFアンプ2により増幅されRFフィルタ3を通過した後に、第1ミキサ4により第1中間周波数信号S2に変換される。そして、この第1中間周波数信号S2は、IFアンプ5により増幅されIFフィルタ6を通過した後に再度IFアンプ7により増幅される。そして、IFアンプ7の出力信号は、AGCアンプ8により一定のレベルの信号に増幅された後に第2ミキサ9により周波数変換され第2中間周波数信号S3に変換されてA/Dコンバータ10に入力される。
【0012】
A/Dコンバータ10では、アナログ量である第2中間周波数信号S3を、ディジタル量であるIFディジタル信号S4、S7に変換し、ベースバンド部11及び制御部92へ出力する。
【0013】
携帯電話システム等の移動通信システムでは、移動局の移動に伴い無線基地局における受信電界レベルは刻々と変化する。しかし、この受信電界レベルの変化に伴って、ベースバンド部11により復調されるIFディジタル信号S4のレベルが変動したのでは正常な復調処理ができなくなってしまう。そのため、A/Dコンバータ10に入力される第2中間周波数信号S3のレベルを一定にする必要がある。
【0014】
このような目的のため、制御部92では、A/Dコンバータ10の出力であるIFデジタル信号S7のIFレベルを監視して、このIFレベルが一定となるように、AGCアンプ8に入力されるVAGC電圧信号S5の制御を行っている。
【0015】
この制御部92において行われるAGC制御を図9のブロック図を参照して説明する。
【0016】
まず、制御部92内のCPU95では、IF基準レベル20を設定し、IFディジタル信号S7の値であるIFレベル19が、IF基準レベル20より高い場合はAGCアンプ8の利得を下げ、またIF基準レベル20より低い場合はAGCアンプ8の利得を上げ、IFレベル19とIF基準レベル20との差が0となるよう制御する。そのため制御部92では、CPU95がIFディジタル信号S7の値であるIFレベル19と、予め設定されているIF基準レベル20とのレベル差であるIFレベル差21を以下の式で算出する。
IFレベル差[dB]=10log(IF基準レベル)−10log(IFレベル)
IFレベル差21を対数を用いて算出する理由は、A/Dコンバータ10が出力するIFディジタル信号S7の値はリニア値であるため、[dB]に変換したほうがレベルの計算がしやすいからである。
【0017】
さらにCPU95は、上述のIFレベル差21を、ROM96に記憶されたIFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22を参照し、IFレベル差21に対応するVAGC可変量23を導き出す。
【0018】
算出したVAGC可変量23はディジタル信号S6としてD/Aコンバータ17でVAGC電圧信号S5へ変換され、AGCアンプ8の利得を制御する。
【0019】
なお、このIFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22は、図8に示されるように、上述したIFレベル差21とVAGC可変量23が1対1で対応しており、この時のVAGC可変量23によって可変されるAGCアンプ8の利得[dB]は、IFレベル差21の絶対量[dB]と以下の関係がある。
AGCアンプ8の利得[dB]=−IFレベル差[dB]
次にCPU95では、VAGC制御値の更新が行われる。VAGC可変量23が加算される前の、現在のAGC制御値をVAGC制御値(old)24とし、VAGC可変量23が加算された後の新しいAGC制御値をVAGC制御値(new)25とすると、以下の関係式が成り立つ。
VAGC制御値(new)25=VAGC制御値(old)24+VAGC可変量
そして、CPU95は、このようにして更新されたVAGC制御値(new)25に基づいてAGCアンプ8の利得の制御を行う。
【0020】
例として受信電界レベルが−93dBmから−90dBmに増加した時の−90dBmの電界検出について説明する。
【0021】
この場合には、受信電界レベルは3dBアップすることになる。ここでIF基準レベル20は「80」に設定されていたものとする。この場合に上述した受信電界レベルの増加が起こると、基準レベル「80」に収束していたA/Dコンバータ10の入力レベルであるIFレベル19は「80」から「160」となる。上述の式によりIFレベル差21を算出すると、
IFレベル差[dB]=10log(80)−10log(160)=−3dB
となり、IFレベル差21は3dBである。この値を、図8に示したIFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22で、VAGC可変量23に変換すると「40」であることがわかる。現在のVAGC制御値であるVAGC制御値(old)24は「900」となっているため、
VAGC制御値(new)=VAGC制御値(old)+VAGC可変量
=900+(−40)=860
よって新しいVAGC制御値(new)25は860となる。この値をD/Aコンバータ17にてVAGC電圧信号S5に変換すると
VAGC電圧信号S5=3×860/210=2.52[V]
となる。VAGC制御値24が900時の値の時に、VAGC電圧信号S5にてAGCアンプ8を制御する電圧2.64[V]と比較し0.12[V]低い電圧でAGCアンプ8を制御することで3dBゲインを低下させる。その結果、A/Dコンバータ10から出力されるIFディジタル信号S4、S7のIFレベルは「80」となる。そして、CPU95は、VAGC制御値が「900」から「860」になったことにより、図8に示されたVAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26を参照して受信電界レベルが−93dBmから−90dBmになったことを検出することができる。
【0022】
このようなAGC制御が行われることにより、受信電界レベルに影響を受けることなく、A/Dコンバータ10の入力レベルおよび出力レベルは一定となるように制御される。そして、このAGC制御を行うためのVAGC制御値を、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26と比較することによりCPU95では現在の受信電界レベルを検出することが可能となる。
【0023】
このようにVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを検出する従来の受信電界検出方法によれば、受信電界レベル自体がそれほど大きくない場合には受信電界レベルの検出をかなりの精度で検出することが可能である。しかし、受信電界レベルが高い高電界時には受信電界レベルを正確に検出することができなくなるという問題点を有している。この理由を下記に述べる。
【0024】
W−CDMA受信機では初段のRFアンプ2の耐入力は高いが、IFアンプ7には利得が高く、耐入力の低い比較的安価なシリコントランジスタのデバイスを用いて構成している。その際、図10に示すように通常受信の低入力時は受信信号レベルが低く問題ないが、高電界受信時にはAGCアンプ8が飽和していないのに耐入力の低いIFアンプ7は出力が飽和してしまう。つまりIFアンプ7は動作点が動き、Vbe(ベース−エミッタ間電圧)が低下し、図11のように0.7Vから0.5Vへ、そしてB級増幅動作、C級増幅動作となり、さらに高電界が入力されると入力信号がVeboに近づいていく。この状態は図12に示すような、出力が飽和する飽和領域に差し掛かっているため、入力に対しリニアな出力が得られなくなる。
【0025】
従来のW−CDMA受信機は、AGCアンプ8までのトータルゲインが一定である事を前提としていた。つまり、従来のW−CDMA受信機では、正確な受信電界検出を行うためには、各デバイスがリニアリティを持つ領域で使用しなくてはならず、上述のようにデバイスが飽和領域に差し掛かると、正確な受信電界報告ができなかった。なぜなら、図12のような入力レベルに対してIFアンプ7の出力が一定となる飽和領域に差し掛かると、受信電界レベルが増減してもA/Dコンバータ10及び、AGCアンプ8の入力電界が一定となっていき、受信電界レベルが変化していないように検出され、正確な受信電界報告は望めなくなるからである。さらに高電界時では、図13に示されるように、受信電界レベルが増加してもIFアンプ7にて出力レベルが下がるため、逆に受信電界が下がったかのような検出をする恐れもあった。
【0026】
IFアンプ7に高ゲイン、高IPの高価なデバイスを使用すれば、上述の問題を解決することは可能である。しかし、高IP、高電流のデバイスを使用すると、コストアップとともに消費電力が増大するという問題が発生するため現実的ではなく、シリコントランジスタのデバイスにより構成されたIFアンプ7を用いた上で、高電界時でも受信電界レベルを正確に検出することができる受信電界検出方法が要求されている。
【特許文献1】特開2000−261339号公報
【特許文献2】特開2002−335139号公報
【特許文献3】特開2003−348025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述した従来のCDMA受信機では、受信電界レベルが高くなり、IFアンプの出力が一定となる飽和領域に達すると、受信電界レベルの正確な検出を行うことができないという問題点があった。
【0028】
本発明の目的は、高電界時においても正確な受信電界検出が可能なCDMA受信機および受信電界検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の受信電界検出方法は、シリコントランジスタにより構成されたIFアンプと、AGC制御を行うためのAGCアンプとを備えた受信機において、受信した無線信号の受信電界レベルを検出するための受信電界検出方法であって、
前記シリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧を測定するステップと、
測定された前記ベース−エミッタ間電圧が予め設定された基準電圧よりも大きい場合には、前記AGCアンプの利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定し、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が、予め設定された基準電圧以下の場合には前記ベース−エミッタ間電圧に基づいて受信電界レベルを推定するステップとを備えている。
【0030】
本発明によれば、IFアンプのVbe電圧が予め設定された比較基準電圧よりも小さい場合には、高電界時であると判断して、VAGC制御値ではなくVbe検出値に基づいて受信電界レベルの検出を行うようにしているので、受信電界レベルが高電界時においても正確な受信電界検出が可能になる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、IFアンプのVbe電圧が予め設定された比較基準電圧よりも小さい場合には、VAGC制御値ではなくVbe検出値に基づいて受信電界レベルの検出を行うようにしているので、受信電界レベルが高電界時においても正確な受信電界検出が可能になるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態の受信機の構成を示すブロック図である。図1において、図6中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0034】
本実施形態の受信機は、図1に示されるように、アンテナ1と、RFアンプ2と、RFフィルタ3と、第1ミキサ4と、IFアンプ5と、IFフィルタ6と、IFアンプ7と、AGCアンプ8と、第2ミキサ9と、A/Dコンバータ10と、ベースバンド(BB)部11と、制御部12とから構成されている。
【0035】
本実施形態の受信機は、図6に示した従来の受信機に対して、制御部92が制御部12に置き換えられ、IFアンプ7を構成するシリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧(以下、Vbe電圧とする)を検出したVbe電圧検出信号S8が制御部12に入力されている点が異なっている。
【0036】
次に、図1中の制御部12の構成を図2に示す。本実施形態における制御部12は、図2に示されるように、CPU15と、記録部であるROM16と、D/Aコンバータ17と、A/Dコンバータ18とから構成されている。
【0037】
本実施形態における制御部12は、図7に示した従来の受信機における制御部92に対して、CPU95、ROM96を、それぞれCPU15、ROM16に置き換えA/Dコンバータ18を追加した構成になっている。A/Dコンバータ18は、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8をディジタル信号S9にA/D変換する。
【0038】
ROM16は、図3に示されるように、IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22と、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26に加えて、Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27が新たに加えられた構成となっている。
【0039】
Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27は、IFアンプ7のVbe電圧から受信電界を推定するためのテーブルであり、Vbe検出値と受信電界報告値が1対1で対応している。
【0040】
制御部12は、A/Dコンバータ10への入力レベルを検出する機能と、A/Dコンバータ10の入力レベルが所定のレベルとなるために必要なAGCアンプ制御値を算出し、AGCアンプ8の利得を制御する機能と、IFアンプ7のVbe電圧を検出する機能を備えている。
【0041】
本実施形態の受信電界検出方法では、高電界時の受信電界検出を正確に検出するために、従来の受信電界検出方法に加えて、新しくIFアンプ7のVbe電圧を用いた点が異なっている。
【0042】
次に、本実施形態の受信機における受信電界検出方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
本実施形態の受信電界検出方法を図4のフローチャートに示す。先ず、本実施形態の受信機では、受信電界レベルの検出を行おうとする際に、制御部12内のCPU15は、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8の電圧を、予め設定されたVbe基準値と比較する(ステップ401)。
【0044】
そして、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8の電圧が、予め設定されたVbe基準電圧より高いと判断された時は、IFアンプ7が飽和せず高電界が入力されていないと判断し、CPU15は、ROM16に記憶されているVAGC制御値と受信電界検出値の関係を表すテーブルであるVAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26を参照する事で、上述のVAGC制御値(new)24から受信電界報告値を得る(ステップ402)。このVAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26は、VAGC制御値と受信電界報告値が1対1で対応している。これによりVAGC制御値から希望波の受信電界報告値を検出する事が可能となる。ここまでの動作は従来のCDMA受信機における受信電界検出方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
そして、ステップ401において、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8の電圧が、予め設定されたVbe基準電圧以下であると判断された場合、CPU15は、IFアンプ7が飽和したものと判定してVAGC制御値に基づいて受信電界検出を行うのではなく、Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27を用いてVbe検出値を受信電界報告値に変換する(ステップ403)。
【0046】
次に、本実施形態の受信電界検出方法の具体的な例について説明する。ここでは、Vbe基準電圧として、Vbe電圧が下がり始め、IFアンプ7が飽和領域に差し掛かるあたりの0.6Vに設定されているものとする。(図12を参照)
例えば、通常の電界時において、CPU15が受信電界検出をスタートし、IFアンプ7のVbe電圧をVbe電圧検出信号S8にて検出した結果0.7Vであったとする。すると、CPU15は、Vbe電圧がVbe基準電圧の0.6Vより大きいため、高電界時ではないと判断して(図4のステップ401のY)、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26にてVAGC制御値24の値「860」を受信電界報告値「−90dBm」に変換すること受信電界を検出する(ステップ402)。
【0047】
次に、高電界時の具体的な例として受信電界レベルが−45dBmから−35dBmにアップした時の−35dBmの電界検出について説明する。
【0048】
図10に示したレベルダイヤグラムを参照すると、受信電界レベルが−35dBmの高電界時は、IFアンプ7の入力レベルは−15dBmとなるため、IFアンプ7の飽和領域に入る。よってIFアンプ7のVbe電圧検出信号S8のディジタル量を表す、ディジタル信号S9の値は、Vbe基準電圧の「205」(D/A変換後の0.6V)を下回り、「119」(D/A変換後の0.35V)となるため(図4のステップのN)、CPU15は、Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27により、前述の「119」に対応する受信電界報告値が−35dBmであるという結果が得られる。これにより高電界時における受信電界を正確に検出することが可能となる。
【0049】
次に、高電界受信時に従来の受信電界検出方法により受信電界検出を行った場合について説明する。
【0050】
IFアンプ7が飽和領域に差し掛かかっているため、図12に示したように、−15dBmの入力レベルに対し、出力レベルは飽和している。図1に示したブロック図でIFアンプ7の出力が飽和すると言うことは、それ以降のA/Dコンバータ10の入力レベルが変化しないため、AGCアンプ8のVAGC電圧CPUS5は一定となる。それにより受信電界報告値も図13に示すように、本来−35dBmと報告すべきであるのに対し、−33dBmと報告してしまい、不正確な報告値を出力してしまう。これに対して、本実施形態の受信電界検出方法によれば、上述したように、−35dBmという正確な結果を得ることができる。
【0051】
このように本実施形態の受信機によれば、IFアンプ7の出力が飽和する領域にてIFアンプ7を構成するシリコントランジスタのVbeを検出する事で、高電界でも正確な受信電界検出が可能となり、受信電界検出のダイナミックレンジを広げることができる。その結果、従来のW−CDMA受信機ではIFアンプ7が、飽和領域で出力が下がる領域に差し掛かっていた場合に、受信電界が増加していても減少したかのように誤って検出していた現象を防ぐことができる。
【0052】
つまり、本実施形態によれば、受信電界レベルによりVAGC制御値とVbe電圧による2種類の受信電界検出方法を切り替える事で、受信電界検出のダイナミックレンジを広げることが可能になる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態のCDMA受信機について説明する。
【0054】
本発明の第2の実施形態のCDMA受信機を図5に示す。上記で説明した図1の第1の実施形態のCDMA受信機では、IFフィルタ6を通過した後の中間周波数信号を増幅するためのIFアンプ7がシリコントランジスタにより構成されているものとして説明していたが、本実施形態ではIFフィルタ6に入力される前の中間周波数信号を増幅するためのIFアンプ5もシリコントランジスタにより構成されている場合に本発明を適用したものである。図5において、図1中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0055】
本実施形態の受信機は、図5に示されるように、図1に示した第1の実施形態の受信機に対して、制御部12が制御部52に置き換えられ、IFアンプ7を構成するシリコントランジスタのVbe電圧検出信号S8だけでなく、IFアンプ5を構成するシリコントランジスタのVbe電圧検出信号S9が制御部52に入力される構成となっている点が異なる。
【0056】
本実施形態における受信電界検出方法では、IFアンプ7だけでなくIFアンプ5のVbe電圧をも監視して受信電界検出を行うことにより、高電界時の受信電界をさらに正確に検出することが可能となる。例えば、高電界時にIFアンプ7の次にIFアンプ5が飽和し始めるデバイスであるとすると、IFアンプ7のVbeと共にIFアンプ5のVbeを検出する事で、IFアンプ7単体のVbeを検出した場合と比較し、さらなる高電界時の受信電界の検出が可能となる。
【0057】
上記第1および第2の実施形態では、CDMA受信機における受信電界検出方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の通信方式を使用した受信機において受信電界を検出する場合でも同様に本発明を適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態のW−CDMA方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の制御部12の構成を示すブロック図である。
【図3】図2中のROM16内のテーブルを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のW−CDMA受信機における受信電界検出方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態のW−CDMA方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【図6】従来のW−CDMA方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【図7】図6中の制御部92の構成を示すブロック図である。
【図8】図7中のROM96内のテーブルを示す図である。
【図9】W−CDMA方式の受信機におけるAGC制御を説明するためのブロック図である。
【図10】高入力時と低入力時のレベルダイヤグラムの例を示す図である。
【図11】シリコントランジスタIFアンプ7の入力電界レベルとVbe(ベースエミッタ間電圧)の関係を示す図である。
【図12】シリコントランジスタIFアンプ7の入力レベルに対する出力レベルとVbeの関係を示す図である。
【図13】入力電界に対する受信電界報告値を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 アンテナ
2 RFアンプ
3 RFフィルタ
4 第1ミキサ
5 IFアンプ
6 IFフィルタ
7 IFアンプ
8 AGCアンプ
9 第2ミキサ
10 A/Dコンバータ
11 ベースバンド(BB)部
12 制御部
15 マイクロプロセッサ(CPU)
16 読み出し専用メモリ(ROM)
17 D/Aコンバータ
19 IFレベル
20 IF基準レベル
21 IFレベル差
22 IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル
23 VAGC可変量
24 VAGC制御値(old)
25 VAGC制御値(new)
26 VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル
27 Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル
52 制御部
92 制御部
95 マイクロプロセッサ(CPU)
96 読み出し専用メモリ(ROM)
401〜403 ステップ
S1 受信信号
S2 第1中間周波数信号
S3 第2中間周波数信号
S4 IFディジタル信号
S5 VAGC電圧信号
S6 ディジタル信号
S7 IFディジタル信号
S8、S9 Vbe電圧検出信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDMA(符号分割多元接続:Code Division Multiple Access)方式の無線信号を受信するためのCDMA受信機に関し、特に受信した無線信号の受信電界の受信電界レベルを検出するための受信電界検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信システムに用いられる通信方式として、干渉や妨害に強いCDMA通信方式が注目されている。このCDMA通信方式の1つにW−CDMA(Wideband CDMA:広帯域CDMA)通信方式がある。このW−CDMA方式の移動通信システムでは、移動局の送信電力を制御するために移動局から無線基地局装置に対する無線信号の受信電界レベルを検出するための機能が必要となる。そのため、W−CDMA方式の無線基地局装置には、W−CDMA方式の無線信号を受信して、その受信電界レベルを検出するための機能が設けられている。
【0003】
このような受信機において、受信した無線信号の受信電界を検出するための受信電界検出方法としては様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。特に、上記の特許文献2には、AGC(Automatic Gain Control)制御を行うためのVAGC電圧のレベルに基づいて受信電界レベルを検出する方法が開示されている。
【0004】
このような受信電界検出方法を行う従来の受信機の構成を図6に示す。この従来の受信機は、図6に示されるように、受信信号S1を受信するアンテナ1と、この受信信号S1を処理するRFアンプ2及びRFフィルタ3と、RFフィルタ3通過後の受信信号を第1中間周波数信号S2に周波数変換する第1ミキサ4と、第1中間周波数信号S2を処理するIFアンプ5とIFフィルタ6と、シリコントランジスタで構成されるIFアンプ7と、AGC制御を行うために利得を制御可能なAGCアンプ8と、AGCアンプ8により増幅された後の信号を第2中間周波数信号S3に周波数変換する第2ミキサ9と、A/Dコンバータ10と、ベースバンド(BB)部11と、制御部92とを備えている。ベースバンド部11は、A/Dコンバータ10から出力されたIFディジタル信号S4を復調する回路を備えている。AGCアンプ8は、制御部92から入力されるVAGC電圧信号S5により利得が制御される。
【0005】
また、図6中の制御部92の構成を図7に示す。制御部92は、図7に示されるように、演算を行うマイクロプロセッサ(以下CPUとする)95と、読み出し専用メモリ(以下ROMとする。)96と、D/Aコンバータ17とから構成されている。
【0006】
ROM96には、図8に示されるように、IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22と、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26という2つのテーブルが格納されている。
【0007】
IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22は、A/Dコンバータ10からのIFディジタル信号S7と、基準値との差であるIFレベル差をAGC制御量に変換するテーブルである。
【0008】
VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26は、VAGC可変量に対する受信電界を算出するためのテーブルである。
【0009】
D/Aコンバータ17は、AGCアンプ8の利得制御を行うためのアナログ量のVAGC電圧信号S5を生成する。
【0010】
次に、上述した従来のW−CDMA方式の受信機の動作を図面を参照して説明する。
【0011】
アンテナ1にて受信された希望波である受信信号S1は、RFアンプ2により増幅されRFフィルタ3を通過した後に、第1ミキサ4により第1中間周波数信号S2に変換される。そして、この第1中間周波数信号S2は、IFアンプ5により増幅されIFフィルタ6を通過した後に再度IFアンプ7により増幅される。そして、IFアンプ7の出力信号は、AGCアンプ8により一定のレベルの信号に増幅された後に第2ミキサ9により周波数変換され第2中間周波数信号S3に変換されてA/Dコンバータ10に入力される。
【0012】
A/Dコンバータ10では、アナログ量である第2中間周波数信号S3を、ディジタル量であるIFディジタル信号S4、S7に変換し、ベースバンド部11及び制御部92へ出力する。
【0013】
携帯電話システム等の移動通信システムでは、移動局の移動に伴い無線基地局における受信電界レベルは刻々と変化する。しかし、この受信電界レベルの変化に伴って、ベースバンド部11により復調されるIFディジタル信号S4のレベルが変動したのでは正常な復調処理ができなくなってしまう。そのため、A/Dコンバータ10に入力される第2中間周波数信号S3のレベルを一定にする必要がある。
【0014】
このような目的のため、制御部92では、A/Dコンバータ10の出力であるIFデジタル信号S7のIFレベルを監視して、このIFレベルが一定となるように、AGCアンプ8に入力されるVAGC電圧信号S5の制御を行っている。
【0015】
この制御部92において行われるAGC制御を図9のブロック図を参照して説明する。
【0016】
まず、制御部92内のCPU95では、IF基準レベル20を設定し、IFディジタル信号S7の値であるIFレベル19が、IF基準レベル20より高い場合はAGCアンプ8の利得を下げ、またIF基準レベル20より低い場合はAGCアンプ8の利得を上げ、IFレベル19とIF基準レベル20との差が0となるよう制御する。そのため制御部92では、CPU95がIFディジタル信号S7の値であるIFレベル19と、予め設定されているIF基準レベル20とのレベル差であるIFレベル差21を以下の式で算出する。
IFレベル差[dB]=10log(IF基準レベル)−10log(IFレベル)
IFレベル差21を対数を用いて算出する理由は、A/Dコンバータ10が出力するIFディジタル信号S7の値はリニア値であるため、[dB]に変換したほうがレベルの計算がしやすいからである。
【0017】
さらにCPU95は、上述のIFレベル差21を、ROM96に記憶されたIFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22を参照し、IFレベル差21に対応するVAGC可変量23を導き出す。
【0018】
算出したVAGC可変量23はディジタル信号S6としてD/Aコンバータ17でVAGC電圧信号S5へ変換され、AGCアンプ8の利得を制御する。
【0019】
なお、このIFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22は、図8に示されるように、上述したIFレベル差21とVAGC可変量23が1対1で対応しており、この時のVAGC可変量23によって可変されるAGCアンプ8の利得[dB]は、IFレベル差21の絶対量[dB]と以下の関係がある。
AGCアンプ8の利得[dB]=−IFレベル差[dB]
次にCPU95では、VAGC制御値の更新が行われる。VAGC可変量23が加算される前の、現在のAGC制御値をVAGC制御値(old)24とし、VAGC可変量23が加算された後の新しいAGC制御値をVAGC制御値(new)25とすると、以下の関係式が成り立つ。
VAGC制御値(new)25=VAGC制御値(old)24+VAGC可変量
そして、CPU95は、このようにして更新されたVAGC制御値(new)25に基づいてAGCアンプ8の利得の制御を行う。
【0020】
例として受信電界レベルが−93dBmから−90dBmに増加した時の−90dBmの電界検出について説明する。
【0021】
この場合には、受信電界レベルは3dBアップすることになる。ここでIF基準レベル20は「80」に設定されていたものとする。この場合に上述した受信電界レベルの増加が起こると、基準レベル「80」に収束していたA/Dコンバータ10の入力レベルであるIFレベル19は「80」から「160」となる。上述の式によりIFレベル差21を算出すると、
IFレベル差[dB]=10log(80)−10log(160)=−3dB
となり、IFレベル差21は3dBである。この値を、図8に示したIFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22で、VAGC可変量23に変換すると「40」であることがわかる。現在のVAGC制御値であるVAGC制御値(old)24は「900」となっているため、
VAGC制御値(new)=VAGC制御値(old)+VAGC可変量
=900+(−40)=860
よって新しいVAGC制御値(new)25は860となる。この値をD/Aコンバータ17にてVAGC電圧信号S5に変換すると
VAGC電圧信号S5=3×860/210=2.52[V]
となる。VAGC制御値24が900時の値の時に、VAGC電圧信号S5にてAGCアンプ8を制御する電圧2.64[V]と比較し0.12[V]低い電圧でAGCアンプ8を制御することで3dBゲインを低下させる。その結果、A/Dコンバータ10から出力されるIFディジタル信号S4、S7のIFレベルは「80」となる。そして、CPU95は、VAGC制御値が「900」から「860」になったことにより、図8に示されたVAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26を参照して受信電界レベルが−93dBmから−90dBmになったことを検出することができる。
【0022】
このようなAGC制御が行われることにより、受信電界レベルに影響を受けることなく、A/Dコンバータ10の入力レベルおよび出力レベルは一定となるように制御される。そして、このAGC制御を行うためのVAGC制御値を、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26と比較することによりCPU95では現在の受信電界レベルを検出することが可能となる。
【0023】
このようにVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを検出する従来の受信電界検出方法によれば、受信電界レベル自体がそれほど大きくない場合には受信電界レベルの検出をかなりの精度で検出することが可能である。しかし、受信電界レベルが高い高電界時には受信電界レベルを正確に検出することができなくなるという問題点を有している。この理由を下記に述べる。
【0024】
W−CDMA受信機では初段のRFアンプ2の耐入力は高いが、IFアンプ7には利得が高く、耐入力の低い比較的安価なシリコントランジスタのデバイスを用いて構成している。その際、図10に示すように通常受信の低入力時は受信信号レベルが低く問題ないが、高電界受信時にはAGCアンプ8が飽和していないのに耐入力の低いIFアンプ7は出力が飽和してしまう。つまりIFアンプ7は動作点が動き、Vbe(ベース−エミッタ間電圧)が低下し、図11のように0.7Vから0.5Vへ、そしてB級増幅動作、C級増幅動作となり、さらに高電界が入力されると入力信号がVeboに近づいていく。この状態は図12に示すような、出力が飽和する飽和領域に差し掛かっているため、入力に対しリニアな出力が得られなくなる。
【0025】
従来のW−CDMA受信機は、AGCアンプ8までのトータルゲインが一定である事を前提としていた。つまり、従来のW−CDMA受信機では、正確な受信電界検出を行うためには、各デバイスがリニアリティを持つ領域で使用しなくてはならず、上述のようにデバイスが飽和領域に差し掛かると、正確な受信電界報告ができなかった。なぜなら、図12のような入力レベルに対してIFアンプ7の出力が一定となる飽和領域に差し掛かると、受信電界レベルが増減してもA/Dコンバータ10及び、AGCアンプ8の入力電界が一定となっていき、受信電界レベルが変化していないように検出され、正確な受信電界報告は望めなくなるからである。さらに高電界時では、図13に示されるように、受信電界レベルが増加してもIFアンプ7にて出力レベルが下がるため、逆に受信電界が下がったかのような検出をする恐れもあった。
【0026】
IFアンプ7に高ゲイン、高IPの高価なデバイスを使用すれば、上述の問題を解決することは可能である。しかし、高IP、高電流のデバイスを使用すると、コストアップとともに消費電力が増大するという問題が発生するため現実的ではなく、シリコントランジスタのデバイスにより構成されたIFアンプ7を用いた上で、高電界時でも受信電界レベルを正確に検出することができる受信電界検出方法が要求されている。
【特許文献1】特開2000−261339号公報
【特許文献2】特開2002−335139号公報
【特許文献3】特開2003−348025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述した従来のCDMA受信機では、受信電界レベルが高くなり、IFアンプの出力が一定となる飽和領域に達すると、受信電界レベルの正確な検出を行うことができないという問題点があった。
【0028】
本発明の目的は、高電界時においても正確な受信電界検出が可能なCDMA受信機および受信電界検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の受信電界検出方法は、シリコントランジスタにより構成されたIFアンプと、AGC制御を行うためのAGCアンプとを備えた受信機において、受信した無線信号の受信電界レベルを検出するための受信電界検出方法であって、
前記シリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧を測定するステップと、
測定された前記ベース−エミッタ間電圧が予め設定された基準電圧よりも大きい場合には、前記AGCアンプの利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定し、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が、予め設定された基準電圧以下の場合には前記ベース−エミッタ間電圧に基づいて受信電界レベルを推定するステップとを備えている。
【0030】
本発明によれば、IFアンプのVbe電圧が予め設定された比較基準電圧よりも小さい場合には、高電界時であると判断して、VAGC制御値ではなくVbe検出値に基づいて受信電界レベルの検出を行うようにしているので、受信電界レベルが高電界時においても正確な受信電界検出が可能になる。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、IFアンプのVbe電圧が予め設定された比較基準電圧よりも小さい場合には、VAGC制御値ではなくVbe検出値に基づいて受信電界レベルの検出を行うようにしているので、受信電界レベルが高電界時においても正確な受信電界検出が可能になるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態の受信機の構成を示すブロック図である。図1において、図6中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0034】
本実施形態の受信機は、図1に示されるように、アンテナ1と、RFアンプ2と、RFフィルタ3と、第1ミキサ4と、IFアンプ5と、IFフィルタ6と、IFアンプ7と、AGCアンプ8と、第2ミキサ9と、A/Dコンバータ10と、ベースバンド(BB)部11と、制御部12とから構成されている。
【0035】
本実施形態の受信機は、図6に示した従来の受信機に対して、制御部92が制御部12に置き換えられ、IFアンプ7を構成するシリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧(以下、Vbe電圧とする)を検出したVbe電圧検出信号S8が制御部12に入力されている点が異なっている。
【0036】
次に、図1中の制御部12の構成を図2に示す。本実施形態における制御部12は、図2に示されるように、CPU15と、記録部であるROM16と、D/Aコンバータ17と、A/Dコンバータ18とから構成されている。
【0037】
本実施形態における制御部12は、図7に示した従来の受信機における制御部92に対して、CPU95、ROM96を、それぞれCPU15、ROM16に置き換えA/Dコンバータ18を追加した構成になっている。A/Dコンバータ18は、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8をディジタル信号S9にA/D変換する。
【0038】
ROM16は、図3に示されるように、IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル22と、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26に加えて、Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27が新たに加えられた構成となっている。
【0039】
Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27は、IFアンプ7のVbe電圧から受信電界を推定するためのテーブルであり、Vbe検出値と受信電界報告値が1対1で対応している。
【0040】
制御部12は、A/Dコンバータ10への入力レベルを検出する機能と、A/Dコンバータ10の入力レベルが所定のレベルとなるために必要なAGCアンプ制御値を算出し、AGCアンプ8の利得を制御する機能と、IFアンプ7のVbe電圧を検出する機能を備えている。
【0041】
本実施形態の受信電界検出方法では、高電界時の受信電界検出を正確に検出するために、従来の受信電界検出方法に加えて、新しくIFアンプ7のVbe電圧を用いた点が異なっている。
【0042】
次に、本実施形態の受信機における受信電界検出方法について図面を参照して詳細に説明する。
【0043】
本実施形態の受信電界検出方法を図4のフローチャートに示す。先ず、本実施形態の受信機では、受信電界レベルの検出を行おうとする際に、制御部12内のCPU15は、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8の電圧を、予め設定されたVbe基準値と比較する(ステップ401)。
【0044】
そして、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8の電圧が、予め設定されたVbe基準電圧より高いと判断された時は、IFアンプ7が飽和せず高電界が入力されていないと判断し、CPU15は、ROM16に記憶されているVAGC制御値と受信電界検出値の関係を表すテーブルであるVAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26を参照する事で、上述のVAGC制御値(new)24から受信電界報告値を得る(ステップ402)。このVAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26は、VAGC制御値と受信電界報告値が1対1で対応している。これによりVAGC制御値から希望波の受信電界報告値を検出する事が可能となる。ここまでの動作は従来のCDMA受信機における受信電界検出方法と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
そして、ステップ401において、IFアンプ7のVbe電圧検出信号S8の電圧が、予め設定されたVbe基準電圧以下であると判断された場合、CPU15は、IFアンプ7が飽和したものと判定してVAGC制御値に基づいて受信電界検出を行うのではなく、Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27を用いてVbe検出値を受信電界報告値に変換する(ステップ403)。
【0046】
次に、本実施形態の受信電界検出方法の具体的な例について説明する。ここでは、Vbe基準電圧として、Vbe電圧が下がり始め、IFアンプ7が飽和領域に差し掛かるあたりの0.6Vに設定されているものとする。(図12を参照)
例えば、通常の電界時において、CPU15が受信電界検出をスタートし、IFアンプ7のVbe電圧をVbe電圧検出信号S8にて検出した結果0.7Vであったとする。すると、CPU15は、Vbe電圧がVbe基準電圧の0.6Vより大きいため、高電界時ではないと判断して(図4のステップ401のY)、VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル26にてVAGC制御値24の値「860」を受信電界報告値「−90dBm」に変換すること受信電界を検出する(ステップ402)。
【0047】
次に、高電界時の具体的な例として受信電界レベルが−45dBmから−35dBmにアップした時の−35dBmの電界検出について説明する。
【0048】
図10に示したレベルダイヤグラムを参照すると、受信電界レベルが−35dBmの高電界時は、IFアンプ7の入力レベルは−15dBmとなるため、IFアンプ7の飽和領域に入る。よってIFアンプ7のVbe電圧検出信号S8のディジタル量を表す、ディジタル信号S9の値は、Vbe基準電圧の「205」(D/A変換後の0.6V)を下回り、「119」(D/A変換後の0.35V)となるため(図4のステップのN)、CPU15は、Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル27により、前述の「119」に対応する受信電界報告値が−35dBmであるという結果が得られる。これにより高電界時における受信電界を正確に検出することが可能となる。
【0049】
次に、高電界受信時に従来の受信電界検出方法により受信電界検出を行った場合について説明する。
【0050】
IFアンプ7が飽和領域に差し掛かかっているため、図12に示したように、−15dBmの入力レベルに対し、出力レベルは飽和している。図1に示したブロック図でIFアンプ7の出力が飽和すると言うことは、それ以降のA/Dコンバータ10の入力レベルが変化しないため、AGCアンプ8のVAGC電圧CPUS5は一定となる。それにより受信電界報告値も図13に示すように、本来−35dBmと報告すべきであるのに対し、−33dBmと報告してしまい、不正確な報告値を出力してしまう。これに対して、本実施形態の受信電界検出方法によれば、上述したように、−35dBmという正確な結果を得ることができる。
【0051】
このように本実施形態の受信機によれば、IFアンプ7の出力が飽和する領域にてIFアンプ7を構成するシリコントランジスタのVbeを検出する事で、高電界でも正確な受信電界検出が可能となり、受信電界検出のダイナミックレンジを広げることができる。その結果、従来のW−CDMA受信機ではIFアンプ7が、飽和領域で出力が下がる領域に差し掛かっていた場合に、受信電界が増加していても減少したかのように誤って検出していた現象を防ぐことができる。
【0052】
つまり、本実施形態によれば、受信電界レベルによりVAGC制御値とVbe電圧による2種類の受信電界検出方法を切り替える事で、受信電界検出のダイナミックレンジを広げることが可能になる。
【0053】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態のCDMA受信機について説明する。
【0054】
本発明の第2の実施形態のCDMA受信機を図5に示す。上記で説明した図1の第1の実施形態のCDMA受信機では、IFフィルタ6を通過した後の中間周波数信号を増幅するためのIFアンプ7がシリコントランジスタにより構成されているものとして説明していたが、本実施形態ではIFフィルタ6に入力される前の中間周波数信号を増幅するためのIFアンプ5もシリコントランジスタにより構成されている場合に本発明を適用したものである。図5において、図1中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0055】
本実施形態の受信機は、図5に示されるように、図1に示した第1の実施形態の受信機に対して、制御部12が制御部52に置き換えられ、IFアンプ7を構成するシリコントランジスタのVbe電圧検出信号S8だけでなく、IFアンプ5を構成するシリコントランジスタのVbe電圧検出信号S9が制御部52に入力される構成となっている点が異なる。
【0056】
本実施形態における受信電界検出方法では、IFアンプ7だけでなくIFアンプ5のVbe電圧をも監視して受信電界検出を行うことにより、高電界時の受信電界をさらに正確に検出することが可能となる。例えば、高電界時にIFアンプ7の次にIFアンプ5が飽和し始めるデバイスであるとすると、IFアンプ7のVbeと共にIFアンプ5のVbeを検出する事で、IFアンプ7単体のVbeを検出した場合と比較し、さらなる高電界時の受信電界の検出が可能となる。
【0057】
上記第1および第2の実施形態では、CDMA受信機における受信電界検出方法について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の通信方式を使用した受信機において受信電界を検出する場合でも同様に本発明を適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態のW−CDMA方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の制御部12の構成を示すブロック図である。
【図3】図2中のROM16内のテーブルを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態のW−CDMA受信機における受信電界検出方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態のW−CDMA方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【図6】従来のW−CDMA方式の受信機の構成を示すブロック図である。
【図7】図6中の制御部92の構成を示すブロック図である。
【図8】図7中のROM96内のテーブルを示す図である。
【図9】W−CDMA方式の受信機におけるAGC制御を説明するためのブロック図である。
【図10】高入力時と低入力時のレベルダイヤグラムの例を示す図である。
【図11】シリコントランジスタIFアンプ7の入力電界レベルとVbe(ベースエミッタ間電圧)の関係を示す図である。
【図12】シリコントランジスタIFアンプ7の入力レベルに対する出力レベルとVbeの関係を示す図である。
【図13】入力電界に対する受信電界報告値を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 アンテナ
2 RFアンプ
3 RFフィルタ
4 第1ミキサ
5 IFアンプ
6 IFフィルタ
7 IFアンプ
8 AGCアンプ
9 第2ミキサ
10 A/Dコンバータ
11 ベースバンド(BB)部
12 制御部
15 マイクロプロセッサ(CPU)
16 読み出し専用メモリ(ROM)
17 D/Aコンバータ
19 IFレベル
20 IF基準レベル
21 IFレベル差
22 IFレベル差−VAGC可変量変換テーブル
23 VAGC可変量
24 VAGC制御値(old)
25 VAGC制御値(new)
26 VAGC制御値−受信電界報告値変換テーブル
27 Vbe検出値−受信電界報告値変換テーブル
52 制御部
92 制御部
95 マイクロプロセッサ(CPU)
96 読み出し専用メモリ(ROM)
401〜403 ステップ
S1 受信信号
S2 第1中間周波数信号
S3 第2中間周波数信号
S4 IFディジタル信号
S5 VAGC電圧信号
S6 ディジタル信号
S7 IFディジタル信号
S8、S9 Vbe電圧検出信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコントランジスタにより構成されたIFアンプと、AGC制御を行うためのAGCアンプとを備えた受信機において、受信した無線信号の受信電界レベルを検出するための受信電界検出方法であって、
前記シリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧を測定するステップと、
測定された前記ベース−エミッタ間電圧が予め設定された基準電圧よりも大きい場合には、前記AGCアンプの利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定し、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が、予め設定された基準電圧以下の場合には前記ベース−エミッタ間電圧に基づいて受信電界レベルを推定するステップと、を備えた受信電界検出方法。
【請求項2】
シリコントランジスタにより構成されたIFアンプと、AGC制御を行うためのAGCアンプを備えたCDMA受信機において、
前記IFアンプを構成するシリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧値をディジタル信号に変換するA/Dコンバータと、ディジタル信号に変換されたベース−エミッタ間電圧値から受信電界レベルを算出するための変換テーブルを格納する記憶部とを備え、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が予め設定された基準電圧よりも大きい場合には、前記AGCアンプの利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定し、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が、予め設定された基準電圧以下の場合には前記変換テーブルを用いて前記ベース−エミッタ間電圧から受信電界レベルを推定する制御部を有することを特徴とするCDMA受信機。
【請求項3】
前記IFアンプが、IFフィルタに入力される前の中間周波数信号を増幅するための第1のIFアンプと、該IFフィルタを通過した後の中間周波数信号を増幅するための第2のIFアンプとから構成される請求項2記載のCDMA受信機。
【請求項1】
シリコントランジスタにより構成されたIFアンプと、AGC制御を行うためのAGCアンプとを備えた受信機において、受信した無線信号の受信電界レベルを検出するための受信電界検出方法であって、
前記シリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧を測定するステップと、
測定された前記ベース−エミッタ間電圧が予め設定された基準電圧よりも大きい場合には、前記AGCアンプの利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定し、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が、予め設定された基準電圧以下の場合には前記ベース−エミッタ間電圧に基づいて受信電界レベルを推定するステップと、を備えた受信電界検出方法。
【請求項2】
シリコントランジスタにより構成されたIFアンプと、AGC制御を行うためのAGCアンプを備えたCDMA受信機において、
前記IFアンプを構成するシリコントランジスタのベース−エミッタ間電圧値をディジタル信号に変換するA/Dコンバータと、ディジタル信号に変換されたベース−エミッタ間電圧値から受信電界レベルを算出するための変換テーブルを格納する記憶部とを備え、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が予め設定された基準電圧よりも大きい場合には、前記AGCアンプの利得を制御するためのVAGC制御値に基づいて受信電界レベルを推定し、測定された前記ベース−エミッタ間電圧が、予め設定された基準電圧以下の場合には前記変換テーブルを用いて前記ベース−エミッタ間電圧から受信電界レベルを推定する制御部を有することを特徴とするCDMA受信機。
【請求項3】
前記IFアンプが、IFフィルタに入力される前の中間周波数信号を増幅するための第1のIFアンプと、該IFフィルタを通過した後の中間周波数信号を増幅するための第2のIFアンプとから構成される請求項2記載のCDMA受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−40740(P2007−40740A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222812(P2005−222812)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]