説明

CMUTアレイ

ウエハー接合型CMUTアレイは、基板に沿って配設される複数のCMUTエレメントを備えており、各エレメントは、基板に形成されるキャビティおよび信号電極と、キャビティを塞いで、接地電極を形成する導電性膜とを有しており、複数のCMUTエレメントのこれらの導電性膜が、CMUTアレイの表面全体にわたる連続した接地面を形成しており、また、信号電極への電気接続部が、信号電極から基板の裏面へ基板を貫通して延びる導電性ビアによって提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量性微細加工超音波トランスデユーサ(CMUT)アレイに関するものであり、とくに小型の画像システムにおいて用いるのに適したアレイに関するものである。さらに、本発明は、このようなアレイを製造するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波システムは圧電エレメントの使用に基づくものである。アレイ状に並べられたエレメントを提供するために、圧電材料は、プリント回路基板に接合され、その後、角切りにされて個別のエレメントを形成するようになしてあってもよい。集積回路への接続部は、扇状に広がる構造を通じて間接的に形成されるが、この扇状の構造は、信号の品質を劣化させるという欠点を有している。
【0003】
いうまでもなく、このような構造は縮小するのが困難である。たとえば、縮小は、エレメント間の距離を大幅に削減することが必要な高周波用途において必要とされる。CMUT技術は、小型のデバイスを用いて高周波で3D画像を形成するために用いることができる2D超音波アレイの有望な候補である。
【0004】
単一のCMUTトランスデューサエレメントは、第一の剛体(底部)電極と、レシーバとして用いられた場合に超音波からの圧力に応じて反れる膜から形成される第二の(頂部)電極とを有するコンデンサーの形態をとっている。したがって、CMUTは、基本的にはコンデンサーマイクロホンとして働く。典型的な構造では、CMUTコンデンサーの動作アコースティック部分および頂部電極は、金属が被膜された窒化ケイ素膜であり、それに対して、高濃度に不純物が添加されたシリコン基板は底部電極を構成している。使用時、DCバイアスが頂部電極と底部電極との間に印加され、このことにより、静電引力に起因して膜が基板に向けて引き寄せられる。バイアスを加えている膜に交流電圧が印加されると、調和膜振動が得られ、また、バイアスを加えているCMUT膜が衝突超音波圧力場に晒されると、膜振動により、AC検出電流が生じる。
【0005】
名称から分かるように、CMUTは微細機械加工技術を用いて製造される。これらの微細機械加工技術は、公知の技術であり、所望の機械的な構造を形成するため、シリコンおよびシリコン系ウエハー、たとえば、シリコン埋め込み酸化物(BOX)ウエハー、さまざまなコーティングが被膜されたシリコンウエハーなどのエッチングなどの如きプロセスを必要とする。ラダバウムら(Ladabaum et al)は初期の技術を下記の文献に記載している:「表面微細加工容量性超音波トランスデューサ」、超音波学、強誘電体および周波数制御、IEEトランザクション、Vol45、No.3,1998年5月。初期の技術では、CMUTは単一シリコンウエハーから形成されている。酸化物層がウエハー上に形成される。次いで、窒化物層が蒸着される。次いで、アパーチャがプラズマエッチングによって窒化物層に形成され、酸化物領域がアパーチャから注入されるフッ化水素酸を用いて除去され、トランスデューサのキャビティが形成される。次いで、アパーチャがさらなる窒化物層(「キャビティ詰込み」)を蒸着することにより密閉され、導電性金属層が窒化物上に形成され、接地平面膜が形成される。
【0006】
重要な進歩は、所望の構造を形成するために複数のシリコンウエハーを接合するウェハーボンディング(接合技術)の導入である(ホアンら(Huang et al)による、「ウェハーボンディング技術を用いた容量性微細機械加工超音波トランスデューサの製造」、JMEMS、12(2)128(2003年)を参照)。このことにより、微細機械加工される構造体についてさまざまな新しい構造が可能となった。この論文から、ウェハーボンディングにより機械的特性が向上し、ウェハーボンディングによって製造される高品質膜が、表面微細機械加工により得られる高品質膜よりも優れていることが分かった。たとえば、キャビティ形状が膜の形状に依存せず、キャビティのアスペクト比がエッチングプロセスによって制限されず、デバイス設計上の制限が少なく、膜が単結晶から作られていてもよいので内部欠陥が少なく、機械損が小さく、均一性、ストレス可制御性およびプロセス繰返精度の向上が可能である。
【0007】
適切なボンディング技術(溶融接合)が、ケー・ミドツボ(K Midtbo)、エー・ロネクレフ(Ronnekleiv)およびディー・ティー・ワング(D T Wang)による「ウェハーボンディングにより実現されるCMUTの組立ておよび特性」、IEE超音波学シンポジウム、2006年に記載されている。さらに、この文献は、積み重ね構造または積層構造を用いて形成するCMUT使用完全超音波トランスデユーサデバイスについて記載している。この積み重ね構造または積層構造では、頂部層がCMUTアレイ構造から形成され、この下に(CMUTを頂部とし、検出器表面を最上部とする)、増幅器、アナログ−ディジタル変換器および多重ステージが設けられている。最後に、このスタックの底部には、エポキシなどの材料からなるバッキング層を設けることにより、音響を減衰する機能を構造に付与している。このような層は、それがもしなければ、デバイスの内部で送信および反射される波が誤信号を発生させて、トランスデューサがこれらの誤信号を検出してしまうことにより、性能を著しく劣化させてしまうため、必要である。
【0008】
CMUT技術の目標は、画像化目的のために人体の中に挿入することができる画像化装置を作成することができる程度に超音波トランスデユーサを小型化することができるようにすることである。具体的にいえば、プラークが脆弱かまたは安定しているかを区別するために、カテーテルに基づいた静脈内超音波診断システムを動脈内のプラークの検査に用いられることが提案されている。(エル・アール・センカマディ(L R Cenkeramaddi)、ティー・シン(T・Shign)、およびワイ・イエルダル(T Ytterdal)による「治療用超音波イメージングのための90nmCMOS内の自己バイアス型チャージサンプリング増幅器」、GLSVLSI’07、2007年3月11−13日を参照)
有用な分解能を有する画像デバイスを提供し、必要な約90°の円錐角を画像化するためには、l立方mm程度のデバイス内に約1000個以上のトランスデューサエレメントが必要となる。上述のように、通常の構造は、複数のコンポーネントからなる積層体であり、CMUTアレイが頂部にあり、その下に処理電子機器が設けられている。所望の分解能を実現するためには、このデバイスは、20〜50MHzで動作可能であり、好ましくは最大約100MHzまでで動作可能である必要がある。これらの周波数から、CMUTアレイが約20μmの厚さでなければいけないことが分かる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
提起される具体的な問題は、アレイと、出力信号を処理しなければならないスタック(積層体)の下方に位置する関連電子機器を構成するトランスデューサエレメントと間を電気的に相互に接続する必要があるということである。この問題は、CMUTアレイの上面ではいかなる信号搬送導電体の露出であっても非常に望ましくないという事実によりさらに複雑なものとなる。この表面は、デバイスの外部を形成しており、使用時、身体組織および体液に接することになる。したがって、この全表面が、安全性の理由からおよび信号への干渉を防ぐために、接地電位であることが必要である。CMUT膜構造の上にさらなる絶縁層を設けて信号搬送導電体を隔離することは、そのことが製造を複雑にするとともに、性能を劣化させる可能性があるので不適当である。しかしながら、生物学的適合性を担保するための層を加えることが必要となる場合もある。
【0010】
US2008/0048211には微細機械加工およびウェハーボンディングを用いて形成されるCMUT構造が記載されている(従来技術の説明のところ)。この文献では、シリコン層がデバイスの基板を形成し、その上の酸化物層内にCMUTキャビティが形成されている。これらのキャビティは、酸化シリコンから形成される膜層によって閉じられるようになしてある。これらのキャビティの下の導電性バルクシリコン層は、裏電極を形成し、その中に、トレンチが形成され、エレメント間を電気的に隔離するようになしてある。これは、「トレンチアイソレーション」構造として知られている。しかしながら、これは電気的な観点から有効な技術であるものの、これらのトレンチは構造を脆弱なものにしてしまう。
【0011】
クフェン・ツアンら(Xuefeng Zhuang et al)による「支持フレームを用いて相互に接続される貫通ウエハー・トレンチ隔離を含むウエハー接合2−DCMUT(Wafer−Bonded 2−D CMUT Arrays Incorporating Through−Wafer Trench Interconnects with a Supporting Frame)」、超音波、強誘電体および周波数制御、IEEEトランザクション、Vol56、No.1,2009年1月1日には、トレンチアイソレーションに代えて貫通ビアを使用することが記載されている。ここでは、導電体材料として、通常不純物添加ポリシリコンが用いられ、エレメントの下の基板を貫通するビア(通路)を充填するようになしてある。このアプローチをウエハー接合型CMUTアレイ(wafer−bonded CMUT array)に対して適用するにはいくつかの具体的な問題がある。ビア形成ステップが次の接合ステップに関する問題を引き起こし、ウエハーにとって望ましくないストレスを引き起こす場合がある。この論文では、「現在にいたるまで、CMUTを作るウェハーボンディング技術に比肩するような貫通ビア形成技術の開発の実証に成功していない。」と、結論づけている。もっと正確にいえば、この論文では、トレンチアイソレーションに基づいた製造技術の向上が提案されている。
【0012】
また、US2008/0048211(すでに引用されている)には、ウエハー貫通ビアが表面微細機械加工(すなわち、ウエハー接合されていない)CMUT構造に限定されることが記載されている。この文献に記載の発明は、ビア(これらは電気的に隔離されなければならない)ではなく、トレンチにより隔離された構造を膜自体を貫通して形成することを再教示している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様によれば、本発明は、ウエハー接合型CMUTアレイであって、基板全体にわたって分配される複数のCMUTエレメントを備えており、各エレメントが基板に形成されているキャビティおよび信号電極と、キャビティを閉じ、接地電極を形成する導電性膜とを有しており、複数のエレメントのこれらの導電性膜がアレイの表面全体にわたって連続した接地平面を形成し、信号電極への電気接続部が、基板を通って、信号電極から基板の裏側まで延びる導電性ビアによって実現されている。
【0014】
したがって、本発明によって、トレンチアイソレーション構造の既知の欠点が克服されうる。具体的にいえば、トレンチアイソレーションの除去により、従来のウエハー接合の弱さの原因が取り除かれ、また、本発明にかかるアレイが非常にロバストなものとなりうる。さらに、本発明のアレイはウエハー接合構造の全ての利点を有している。
【0015】
本発明の説明では、コンポーネントの向きに関する慣習は、従来技術の説明の場合と同一のものが用いられている。したがって、膜は、超音波が放射されるおよび/または超音波が受信・検出される「上面」または「正面」を有している。デバイスの反対側の面は「底面」または「裏面」または「裏側面」である。したがって、導電性ビアは、信号(または「ホット」)電極から、制御電子機器および/または信号処理電子機器が設けられているデバイスの裏面まで下方に向けて延びている。用語「ウエハー接合」は、上述のように、当該技術分野においてその通常の意味を有している。したがって、CMUTアレイの構造は、相互に接合されている複数のウエハーから形成されている。
【0016】
したがって、本発明によれば、トレンチビアを有する必要がなく、かつ導電体搬送信号電圧のない正面を有することでアレイの正面自体を完全に接地電位に維持することができる。ウエハー接合(たとえば、溶融接合)CMUTアレイ構造体が提供されている。
【0017】
最もコンパクトな構造を提供するためには、各ビアが個々の信号電極から直接下方に向けて(すなわち、デバイスの接地平面とは反対側に向けて)延びていることが好ましい。しかしながら、効果的な単一のエレメントを形成するにあたっては、複数のトランスデューサを組み合わせて、たとえば、4つ(または、好ましくはそれよりも多い数)のトランスデューサからなるグループを形成することが好ましい。これらのトランスデューサの電極が、これらの電極と同一の平面に設けられるとともに電極と一体的に形成される導電体により結合されるようになしてあってもよい。したがって、複数の電極は、単一の導電性ビアへ接続されうる連続する導電性面を形成するようになしてあってもよい。
【0018】
好ましくは、これらの電極がキャビティ内に設けられている。このことは、電極の層がキャビティが形成される別個の構造の下に設けられる従来の技術とは対照的である。たとえば、従来の微細機械加工構造では、酸化物層が電極構造の上に形成される。表面が非常に粗いポリシリコンからこの電極構造が通常形成されているので、酸化物層も平らではないことになる。このことは表面微細機械加工デバイスでは許容されうるものの、ウェハーボンディングにはこのような平らでない表面は適さない。本発明者は、電極をキャビティ内に形成することにより、基板を形成するウエハー内にキャビティを形成して、成長した酸化物層ではなく、膜構造を基板ウエハーに接合するようにしうると考えた。これは、接合するのに本来的により適した表面である。というのは、化学的に磨いて非常に滑らかな表面を形成することができるからである。
【0019】
本発明の構造を微細機械加工する際に取りうるアプローチはさまざまあるものの、好ましいアプローチは、シリコンウエハーまたはシリコン系ウエハーから基板を形成することである。実施形態によっては、シリコンBOXウエハーが用いられる場合もある。というのは、シリコンBOXウエハーが製造プロセスにおいて役に立つ酸化物層を有しているからである。
【0020】
導電性ビアおよびキャビティ構造が単一のウエハー内に形成されてもよいし、または、導電性ビアが1つのウエハー内に形成され、キャビティ構造が他のウエハー内に形成されてもよい。後者の場合には、酸化物層が、これらの2つのウエハーの間で絶縁層を構成するようにしてもよい。
【0021】
ビアは、ウエハーの少なくともシリコンデバイス層に孔部をエッチングにより形成し、その中に導電性材料を注入することにより最も都合良く形成される。しかしながら、通常は、ビアを絶縁するために、まず酸化物層が孔部内に形成される。孔部は、止まり穴であってもよく、この場合、ウエハーにおける、孔部の端部よりも下の部分(これはハンドルとして用いられてもよい)が取り除かれた後、ビアは、基板の下側部分を通って信号電極までの電気的導通を提供することになる。
【0022】
各エレメント内では、個々のトランスデューサのキャビティは、不純物添加シリコンを前もって決められている深さまでエッチングにより取り除くことにより形成されることが好ましい。この深さ(たとえば、50〜70nm、好ましくは60nm)は、不純物添加シリコンの一部がキャビティの底部に残り、信号電極を形成しうるような深さである。したがって、アレイは、不純物添加シリコンにエッチングにより形成されるチャネルによって隔離される不純物添加シリコン領域を構成する複数の信号電極(または、このような電極の複数のグループ)を含みうる。
【0023】
それに代えて、より深いキャビティが形成されてもよいし、また、信号電極が、キャビティに蒸着されるポリシリコンから形成されてもよい。好ましくは、それには、リンが添加される。キャビティギャップは、キャビティの基部を形成するポリシリコンを先に指定された所望の高さまでエッチングすることにより調整(チューニング)されてもよい。
【0024】
構造体がウエハー接合されているので、膜は、さらなるウエハー、通常シリコン系ウエハーを用いて形成される。本明細書に記載の実施形態では、膜は、窒化ケイ素、および任意選択的に、キャビティ構造を形成するウエハーへ接合される酸化シリコンで被膜されるシリコンウエハーから形成される。次いで、この膜は、少なくともトランスデューサエレメントに重なる領域において、単一のシリコン窒化物層まで、および適切な場合、酸化シリコン層までエッチングにより取り除くことにより形成される。
【0025】
上述のように、これらのエレメントは、個々のエレメントの表面全体にわたって膜上に接地平面電極層を形成することにより完成される(このことは、単一の導電性の接地平面膜からなる表面を形成することと見なされうる)。ウエハーのうちの膜が形成される部分は、デバイスの外周のまわりに直立したものを形成するためにそのままにしておいてもよい。
【0026】
さらに好ましくは、接地電極は、膜自体にしっかりとした電気接続部を提供するために外周のまわりに設けられる。これらの電極が接地電位にあるので、露出された信号電極という上述のような問題は生じない。好ましくは、膜は、その上に金属層/金属フィルムを設けることにより導電性が付与される。これは、アルミニウム、チタンまたはタングステンを含み、たとえばスパッタリングプロセスによって形成される。
【0027】
所望ならば、CMUTに第三の電気接続部を提供するために上述の導電性ビアがさらに設けられてもよい。これは、RF電圧からDCバイアス電圧を分離するために用いられてもよい。
【0028】
CMUT共振周波数および結合係数(coupling factor)を電気的に調製するために、さらなる電極が用いられてもよい。CMUTアレイ内の個別の電極に蓄えられたエネルギーの放出は、送信パルスを生成し、ひいては受信信号から送信信号を分離するために用いることができる。
【0029】
また、本発明には、おおむね上述のタイプのトランスジューサアレイを製造する方法も含まれる。他の態様によれば、本発明は、基板全体にわたって分配されている複数のCMUTエレメントを有しているCMUTアレイを製造する方法であって、シリコン基板に、各エレメント用のキャビティおよび信号電極を形成し、これらの電極への電気的接続部を実現するとともに、複数のCMUTエレメントから延びるように構成されている導電性ビアを形成することと、各キャビティを閉じて接地電極を形成する導電性膜を提供することにより、CMUTアレイの表面全体にわたって連続した接地平面を形成することとを含み、導電性膜が、基板に接合されるシリコンウエハーから形成される。
【0030】
このようにして、貫通ビアを有しているウエハー接合型CMUTアレイが形成されうる。上述のように、膜は、エレメントの表面全体にわたって連続した接地平面を提供する(すなわち、使用時、膜は、接地電位に接続され、膜の表面はこの共通電位となる)。コンタクトを膜に設けることにより、好ましくはデバイスの外周で設けることにより、電気接続部を膜に設けるようになしてあってもよい。
【0031】
好ましくは、キャビティおよびビアが、単一の(第一の)シリコンウエハーを有する基板に形成され、上述のような方法で膜がさらなる(第二の)ウエハーに形成される。
【0032】
この方法では、ビアがキャビティよりも前に形成されるのが好ましい。したがって、第一のシリコンウエハーが設けられ、孔部が、そこに、エッチングにより形成され、完成した構造のビアが形成される。この後、キャビティが第一のウエハーに形成されてもよい。キャビティと孔部とは、それらの表面に酸化物層を成長させることにより絶縁されるようになしてあってもよい。孔部内に導電体を形成し、キャビティ内に電極を形成するために、ポリシリコンの如き導電性材料が用いられてもよい。このことは、連続する導電性部材(すなわち、ビアおよび接続された電極)の形成と同時に行われてもよい。
【0033】
上述のように、電極は、好ましくはキャビティ内に形成され、さらに好ましくはキャビティが形成される層の真下ではなく、キャビティの基部を形成するために延びている。したがって、好ましくは、かかる方法は、基板にキャビティを形成してから電極をキャビティ内に形成する(しかしこのように記載したものの、1つの実施形態では、キャビティがシリコンのところまでエッチングにより取り除くことにより形成され、その後、シリコンが電極を形成するために用いられるようにしてもよい)。
【0034】
好ましくは、基板の上面は、膜を形成するウエハーと接合する前に平坦に磨き上げられる。
【0035】
上述のように、導電性膜は、好ましくは窒化物が被膜されている別個のシリコンウエハーを含んでいてもよい。それは、電極が形成された後かつビアが完成する前に基板に接合されるのが好ましい。
【0036】
好ましくは、ビアを形成する孔部は、ウエハーを貫通するようにエッチングされない。したがって、この場合、ビアは、基板の裏面の一部を取り除いて孔部内の導電体を露出させることにより完成されることが好ましい。
【0037】
かかる方法の好ましい特徴によって、膜に対するストレスを回避するために、接合ステップができるだけ遅く行われる。最も好ましくは、接合ステップは、ビアが形成された後、かつ膜が接合される基板の表面が平坦に磨かれた後に行われる。次いで、膜が、公知の方法で膜の層を残すように材料をエッチングすることにより、第二のウエハーから形成されてもよい。次いで、必要な電気コンタクトとして、導電性接地平面が設けられてもよい。
【0038】
以下に、本発明の実施形態が説明される。好ましくは、かかる方法は適切な特徴をさらに有している。
【0039】
CMUTアレイのキャビティ内に電極を形成する技術思想も進歩性があると考えられている。したがって、さらなる態様によれば、CMUTアレイは、複数の電極を含んでいる複数のキャビティを有している基板と、複数のキャビティ上に配置され、当該複数のキャビティを閉じるように構成されている導電性膜とを備えている。好ましくは、これらの電極から基板を貫通して延びる信号接続部を提供するビアがさらに設けられている。膜は共通電極を形成している。好ましくは、アレイは、本発明の他の様相の好ましい特徴を有している。
【0040】
さらに他の態様によれば、本発明は、CMUTアレイを製造する方法であって、第一のシリコン系ウエハー内に、アレイ状に並べられる導電性ビアおよびアレイ状に並べられるキャビティ構造を形成することと、さらなるシリコンウエハーを提供することと、そこから導電性膜を形成することとを含んでおり、複数のウエハーが、それぞれ微細機械加工されて対応する構造を形成し、また、複数のウエハーが、互いに接合されて膜が複数のキャビティ全体にわたって延設されるようにアレイを形成し、信号電極が各キャビティ内に設けられ、各ビアが、キャビティ構造内に形成されている信号電極への電気接続部を構成している。
【0041】
他のアプローチでは、基板が複数のウエハーから形成されるようになしてあってもよい。1つのウエハーが複数のキャビティを形成するために用いられ、他のウエハーが複数のビアを形成するために用いられてもよい。これらは、膜ウエハーが接合される前に接合されるのが好ましい。したがって、他の態様によれば、CMUTアレイを製造する方法は、第一のシリコンウエハーを提供し、そこに、アレイ状に並べられる導電性ビアを形成することと、第二のシリコンウエハーを提供し、そこに、アレイ状に並べられるキャビティ構造を形成することと、第三のシリコンウエハーを提供し、それから、導電性膜を形成することとを含んでおり、複数のウエハーが、それぞれ微細機械加工されて対応する構造を形成し、また、複数のウエハーが、互いに接合されて膜が複数のキャビティ全体にわたって延設されるようにアレイを形成し、信号電極が各キャビティ内に設けられ、各ビアが、キャビティ構造内に形成されている信号電極への電気接続部を構成している。
【0042】
このアプローチでは、キャビティ構造、ウエハーおよびビアアレイウエハーは、シリコンウエハーから形成されるのが最も好ましく、膜は、窒化物被膜ウエハーから形成されるのが好ましい。
【0043】
通常、ビア構造は、ウエハーのデバイス層に複数の孔部をエッチングにより形成することによりまず形成される。次いで、キャビティ構造を形成する(第二の)ウエハーは、2つのウエハーのデバイス層が隣接するように「逆さま」にして、第一のウエハー上に配置することができる。しかしながら、このことが行われる前に、酸化物層が、第一のウエハーのデバイス層上設けられるのが好ましい。2つのウエハーが接合された後、第二のウエハーからシリコンからなる「ハンドル」層が取り除かれる。
【0044】
好ましくは、いったんこのことが行われると、第二のウエハーのシリコンデバイス層に不純物が添加され、それに、キャビティ構造がエッチングにより形成される。好ましくは、このことにより、多くの数の隔離されたランド(lands)が形成される。最も好ましくは、かかるプロセスは、信号電極を形成する不純物添加シリコン部分を下側に有するキャビティを提供するために、各隔離構造の一部をエッチングにより取り除くことをさらに含んでいる。通常、この深さのキャビティを提供するためには、約60nmの不純物添加シリコンがエッチングにより取り除かれる。
【0045】
好ましくは、次のステップは、上述のようにキャビティ上にシリコン窒化物層を設けるように、この構造上に第三の(膜形成)ウエハーを配置することを含んでいる。したがって、ウエハーからのシリコンをエッチングにより取り除いて膜の基礎を形成する窒化物層を残すことにより膜を形成することができる。アレイ状に並べられたトランスデューサの上のシリコンがエッチングにより取り除かれる必要があるものの、直立したものを提供するために、アレイの一部は、デバイスの外周のまわりの適所に残されてもよい。上述のようにして、膜が完成されるようになしてあってもよい。
【0046】
プロセスのある時点において、第一のウエハーのハンドルシリコン層が取り除かれる。このことは、第三の(膜)ウエハーが設けられた後に行われるのが好ましい。というのは、このことは、構造体に著しい機械的強度を与えるからである。次いで、ビアを形成するために、孔部の中に導電性材料を挿入することができる。
【0047】
したがって、当業者にとって明らかなように、非接地導電体が正面に無いCMUTアレイを形成するための非常に便利な方法が提供されている。
【0048】
本発明がウエハー接合構造体について説明されているが、本明細書に記載の技術思想を非ウエハー接合構造体に対して適用されてもよいと考えられている。したがって、さらなる態様によれば、本発明は、CMUTアレイであって、基板全体にわたって分配される複数のCMUTエレメントを備えており、各エレメントが、基板に形成されるキャビティおよび信号電極と、キャビティを閉じ、接地電極を形成する導電性膜とを有しており、複数のエレメントのこれらの導電性膜がアレイの表面全体にわたって連続した接地平面を形成し、複数の信号電極への電気接続部が、基板を通って、信号電極から基板の裏側まで延びている導電性ビアによって実現されている。上述のように、これらの電極は複数のキャビティ内に形成されることが最も好ましい。
【0049】
先に説明されているように、本発明のCMUTアレイは、CMUTアレイ層の下に配置されている信号処理層を有する集積型の超音波トランスデユーサパッケージの一部として用いることを意図したものである。このような構造では、好ましくは、各トランスデューサからの電気信号は、鉛直方向に、デバイスを相互に平行に通り、電気信号が当該電気信号が多重化されるプロセッサ信号ステージに少なくとも到達するまで、アナログ−ディジタル変換器、増幅器などの如きさまざまなステージを通る(そして、並列に処理される)。当該技術分野において周知になっているように、制振(damping)を提供するアコースティックバッキング層は、通常、デバイスの裏面に設けられるようになしてある。
【0050】
しかしながら、本発明者達は、CMUTアレイと処理構造体との間にさらなるアコースティック制振層を設けるとことによりデバイスの音響効果を改善することができることを発見した。とくに、この層をCMUTアレイに直接隣接した位置に設けることにより、電気接続部にこの遠い方のアコースティック層を貫通させて信号処理回路へ通じさせることが好ましい。
【0051】
この構成はそれ自体さらなる発明となると考えられる。さらなる態様によれば、本発明は、CMUTアレイ、信号処理回路および第一のアコースティック層を有している集積型CMUT構造であって、信号処理回路が、CMUT層と第一のアコースティック層との間に設けられ、さらなるアコースティック層がCMUTアレイと信号処理構造体との間に設けられている。上述のように、好ましくは、第二のアコースティック層は、CMUTアレイ層に直接隣接させて設けられている。本発明は、このようなアレイを製造する方法も含む。
【0052】
本明細書に記載の他の発明は、上述の発明の如きCMUTデバイス用のアコースティックバッキング層に関するものである。上述のように、アコースティックバッキング層はCMUTデバイス内に設けられる。このことにより、トランスデューサからバッキング層の中へ伝搬するいかなる音響信号であってもバッキング層の中へ吸収されるため、トランスデューサにより受信される(受信)またはトランスデューサから送信される(送信)信号にエコーを与えるようにはトランスデューサを励起しないことが担保される。音響信号が吸収されない場合、トランスデューサがその時点で受信するまたは送信するように構成されている信号を干渉しないように音響信号を変更することもできる。このことは、ほとんどの場合、波を伝搬方向に向けてシフトさせることを意味する。
【0053】
これらのデバイスを小さなパッケージで製造する必要性を考えると、ほとんどの場合、トランスデューサの下には利用可能なスペースがほとんどないため、信号が反射してトランスデューサに戻っていかないことを担保するための高伝搬損失を有する十分に厚い材料層を収容するのは困難なことである。
【0054】
この問題への従来のアプローチは、波を散乱させるために底面にでこぼこした構造を形成することであったが、でこぼこした構造もまたいくらかのスペースを占めるため、この問題への最適な解決策ではない。
【0055】
US7231181では、1〜4分の1波長深さを有している規則的に成形された複数の溝がバッキング層の基部(底面)または上面に形成されるバッキング層が提案されている。このことにより、実質的に回折格子が形成されることになる。バッキング層を下方に向けて通る波の半分がバッキング層の底面から反映され、また、半分が溝部から反射され、これらの波は相互に180度位相がズレ、相殺的な干渉を受けることになる。この原理については、図39を参照しながら下記でさらに詳細に説明する。
【0056】
このアプローチは有効ではあるものの、これは特定の波長に本来的にチューニングされる(合わせられる)ので、その有効性は多少制限されたものでる。
【0057】
本発明によれば、超音波トランスデューサに用いられるアコースティックバッキング層であって、アコースティックバッキング層が複数の異なる周波数の超音波を散乱させるように構成されており、アコースティックバッキング層が、与えられた周波数において鏡面波反射係数をヌルにするように、各々が相互に独立して働く複数の散乱構造を有している。
【0058】
本明細書において用いられる場合、用語「アコースティックバッキング層」は、超音波を抑制してたとえばバルク波の伝搬を防ぐまたは少なくともバルク波を減衰させるための層のことを意味する。
【0059】
したがって、本発明によって、サイズがコンパクトであり、超音波の範囲の周波数をさらに散乱させることができるバッキング層が提供される。
【0060】
通常、複数の散乱構造体は、用いられる他の伝播遅延に起因して追加されるいかなる可能なタイプの伝搬長の全領域のうちの半分の領域から反射される信号に対して2hiの伝搬長を加えるように構成されている。(バッキング層の基部内の深さhの凹部は、バッキング層の基部から反射した波の伝搬パスよりも2h短くかくなるので、hがある波長の4分の1である場合、短いパスを伝搬した波は、長いパスを伝搬した波と相殺的に干渉することになる。)好ましくは、この伝播遅延バランスは、構造体全体にわたって全体的におよび構造体全体の小領域で局所的に維持されるべきである。
【0061】
このことを実現することができる1つの構造はエッチングにより形成されたさまざまなサイズの正方形を備えている。この構造では、各サイズの正方形が、チェッカボード上のように編成されており、ブラックチェッカボードの正方形は、i番目のチェッカボードに対して下方に向けてある高さhi分だけエッチングにより取り除かれる(低くされる)。上述のようなバランスの取れた方法で3つの高さ収容するため、それらの間のサイズが少なくとも2のリニアファクタ(a linear factor of at leat two in size)(すなわち、2の整数累乗)になるように、チェッカボード内の正方形のサイズが縮小または拡大されるようになしてあてもよい。したがって、小さなパターンの4つの正方形を、次に大きな正方形のうちの1つの中に配置するようにしてもよい。好ましくは、大きな正方形は、高低差を選択することによって、低周波数での取り消し(cancellation)を与える必要がある。
【0062】
したがって、本発明は、裏面に波を散乱させ波の伝搬方向を著しく変更し、ほとんどの場合、トランスデューサまでの伝搬パスを長いものとする系統的な方法を提供している。したがって、これらの波がトランスデューサまで戻ったとしても、トランスデューサにより行われるイメージングに対してはほんの僅かしか影響を与えない。また、このことは、波をバッキング材料においてせん断波に変換しうる。通常、せん断波は、入射してくる縦波よりはるかにバッキング材料における伝搬損失が高いので、大きな強度を有した波動エネルギーがトランスデューサまで到達してしまう可能性を削減する。この構造はスペースをほとんどとらない。というのは、バッキング材料の底部における合計深さが1波長程度であるからである。
【0063】
チェッカボード構成は、本発明において用いられる散乱構造を形成するための複数の方法のうちの1つである。また、溝と溝との間の距離を溝幅と同一である平行な溝を用いることもできる。いくつかの溝造体は相互に重なり合うようになっていてもよく、その場合、これらがすべて同時に働き、上述のように、バランスが取られる。また、所望の周波数で働くよう設計するために異なる深さおよび異なる幅を備えた溝を異なる方向で用いることもできる。3つの構造の溝は、その間の角度が45度および90度だけ異なっている溝方向を有しうる。他のアプローチは、同一の方向の周期的な溝の複数のセットに異なる深さおよび幅を付与し、これらを相互に重ね合わせることである。これは、与えられた位置での合計深さが重ね合わされたすべての溝構造体の合計から導かれるものであるように行われうる。この場合、局所的なバランス原理を満足させるために、異なる溝構造体の一定間隔と一定間隔との間に整数関係が存在することが必要である。
【0064】
他の可能な構造は、組み合わせると正方形または長方形を形成する2つの三角形からなる基本パターンを有している。これと組み合わせてバランスの取れた深さパターンを形成する構造は、正方形または長方形が2つの可能な対角線のうちの他方によって三角形に分割される場合に得られる構造でありうる。より多くのパターンを含むために、同一の構造を四角形を用いて繰り返してもよく、平面寸法が2倍だけ縮小または拡大される。
【0065】
上述の説明では、表面構造のトポグラフィーのエッジが鋭い場合が考えられている。しかしながら、より緩やかなエッジを有している構造も同様にうまく働き、鋳造によって製造するのが容易でありうる。このアコースティック層は、たとえばエポキシ、モールド成型に適しているタングステンなどの如きいかなる適切な材料から形成されてもよい。
【0066】
本発明は主としてバッキング層に関するものであるが、本発明の他の態様では、記載のタイプの層が、超音波トランスデユーサ(とくに、CMUT)の構造内の他の場所に設けられてもよい。たとえば、バッキング層をCMUTアレイとそれに付随する信号処理および制御電子回路との間に設けることが必要または望ましいことである。本発明の構造は、これらのバッキング層のうちの一方または両方において用いられてもよい。確かに、CMUTアレイとそれに関連する信号処理および制御電子回路との間に第一の制振層を有している積層超音波トランスデユーサ装置を提供することは、本発明のさらなる態様となる。また、本発明の構造を、音波または超音波を吸収または減衰させる必要のある他の技術分野に適用してもよい。
【0067】
本発明は、アコースティックバッキング層を用いるいかなるタイプの超音波トランスデユーサに対しても有用であるが、本発明は、とくにCMUT構造に対して有用である。したがって、本発明の他の態様によれば、本発明は、上述のようなアコースティック層を備えているCMUTデバイスを提供する。
【0068】
また、本発明は、たとえばモールド成型、超微細機械加工(エッチング、フォトリソグラフィーを含む)などによってこのような構造をその上に形成するアコースティックバッキング層を製造する方法にも関するものであり、さらに、そのような層を備えているCMUTデバイスを製造する方法に関するものでもある。
【0069】
上述のように、アコースティック制振材料を含有するバッキング層を提供することはCMUTデバイスの技術分野において周知のことである。また、本発明者達は、さらなる制振層をCMUT層と信号処理構造体との間に設けると、とくにさらなる制振層をCMUT層に直接隣接させて設けると、音響効果を改善できることを発見している。
【0070】
しかしながら、記載されているタイプのアレイにおいてこのような制振層を用いる場合、電気接続部(当該技術分野において「ビア」として知られている)は、それを貫通して、上側のCMUT層から下側の信号処理構造体まで延びていなければならないことは当然である。これがさらなる発明の主題である。本発明者達は、このようなビアを形成するための公知になっている技術を用いると、制振層として最適に機能するには堅すぎる構造体となってしまうと認識している。たとえば、ビアは、半導体ウエハーをエッチングにより取り除いて、空隙により取り囲まれている1組の導電体(「ポール」)を形成し、その後、この空隙を制振材料で充填することにより形成されてもよい。しかしながら、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)の如き公知のエッチング技術では、100ミクロンの制振層の厚みに対してポールの直径の下限が10ミクロンに設定されてしまう。ポールがたとえば25ミクロンのピッチで横方向に沿って設けられる場合、これらのポールにより、鉛直方向の圧縮性の点におけるプレートの堅さが決まってしまうので、制振層の制振効果が著しく削減されることになる。
【0071】
本発明によれば、超音波トランスデユーサにおいて用いられるアコースティック制振構造体であって、上面および下面を有しているアコースティック制振材料層と、上面からアコースティック制振材料層を通って下面まで延びている複数の導電体とを備えており、複数の導電体の各々が、制振構造体の上面と接触する位置よりも横方向にズレた位置で下面と接触している。
【0072】
したがって、本発明では、これらの導電体(ビア)は、上面から下面まで直接鉛直方向のパス(たとえば、支柱)を形成しないので、構造体の鉛直方向の剛性を著しく小さなものとしている。
【0073】
本発明は、上面と下面とに対して角度をもった(すなわち、それに対して垂直ではない)実質的に真っ直ぐな導電体を用いて実現されてもよい。換言すれば、これらの導電体は対角線上に延びるようになしてあってもよい。しかしながら、このような構造、製造が簡単ではなく、最適な音響効果を提供しない。したがって、導電体が直線ではなく、湾曲したパスに沿って延びていることが好ましい。とくに好ましい構成は、導電体がジグザグに湾曲していることである。したがって、導電体は、上面からアコースティック制振層の中へ延びる第一の部分と、そこからズレて、下面からアコースティック制振層の中へ延びる第二の部分と、アコースティック制振層の内で第一の部分から第二の部分まで延びる第三の部分とを有している。
【0074】
他の形態をとることも可能ではあるが、制振層は、通常おおむね平坦な形態であり、上面と下面とが実質的に平行になっている。最も好ましくは、導電体の第一の部分および第二の部分が上面および下面に対してほぼ垂直となっている、すなわち上面および下面を水平とした場合に、導電体の第一の部分および第二の部分がほぼ鉛直となっている。これに加えて、第三の部分が上面および下面に対してほぼ平行(すなわち、水平)になっていることが好ましい。このことにより、制振構造の製造中に、第三の部分を水平層として蒸着することが可能となる。
【0075】
好ましくは、導電体の鉛直部分は、上述のように、半導体(たとえば、シリコン)ウエハーをエッチングにより取り除いてポールを残すことにより形成される。最も好ましくは、制振層は、複数の層から、最も単純には最終厚さの半分の二つの層から形成される。このことは、ポールの直径を半分の厚み、たとえば上述の例における10ミクロンから5ミクロンに減らすことができるという利点がある。
【0076】
次いで、これら二つの層が、各部分のポールの位置を相互にズラすように接続されてもよい。たとえば、ポールが第一の層の格子の角を形成する場合、第二の層のポールは、第二の層内の同一の格子の中心に位置する。上述の例では、25ミクロンの格子間隔が適切である。この構成はさらなる発明概念であると考えており、さらなる態様によれば、超音波トランスデユーサにおいて用いられるアコースティック制振構造であって、各々が貫通する導電体を有している少なくとも2つの隣接する制振層部分を備えており、一方の制振層部分の導電体の各々が、2つの隣接する制振層部分の間の境界に配置される横方向導電体により、他方の制振層部分の導電体に接続されている。
【0077】
これらの二つの層は、異方導電性接着剤の(好ましくは薄い)層を用いて接続することができる。このような接着剤は、接着プロセスで二つの表面が両側から押されるにつれて2つの導電面の間に導電性を付与するが接着剤の層で横方向には導電性を付与しない比較的低密度の導電性球体を含有している。
【0078】
いうまでもなく、さらなる層が必要に応じて用いられてもよい。したがって、3つの層と、二つの組の水平方向導電部とが用いられてもよい。それらを超える数の層の場合も同様である。このような構成でも、隣接する層の部分のポールが相互にズレている必要がある。確かに、本発明は、超音波トランスデユーサに用いられるアコースティック制振構造であって、ビアが制振層に形成され、このビアが、屈曲部を有するパスをたどるようになっており、好ましくはこのビアのその他の部分の方向に対して直角になっている部分を有している。
【0079】
各層を製造する便利な法は、シリコンBOX(埋められた酸化物層)ウエハーを使用し、ポールがデバイス層に形成され、好ましくは表面からBOXまで延設される方法である。そして、ウエハーの裏部は処理中にハンドルとして利用される。
【0080】
次いで、これらのポールはタングステン粒子を含んでいるエポキシの如きアコースティック制振材料に取り囲まれるようになしてあってもよい。次いで、2つのウエハーが相互に接合される前に、これらの二つのウエハーのうちの一方のエポキシ面に水平方向導電部を形成することにより、これらの水平方向導電部が2つの組のズラされたポール間に電気接続部を形成するようになしてあってもよい。
【0081】
次いで、ハンドル層のうちの一方は、超音波トランスデユーサ構造体内の他のコンポーネント(たとえば、CMUTアレイ)との接続を可能とするために取り除かれてもよい。いったん一方のハンドル層が取り除かれたならば、他方のハンドル層を取り除き、他方の組のポールを露出させ、たとえば信号処理層と接続させることにより、超音波トランスデユーサ構造を形成することが可能となる。したがって、本発明のアコースティック制振層は、CMUTアレイ層の下に配置される信号処理層を備えた集積型超音波トランスデユーサパッケージの一部として使用することを意図したものである。このような構造では、好ましくは各トランスデューサからの電気信号は、鉛直方向に、デバイスを相互に平行に通り、当該電気信号が多重化されるプロセッサ信号ステージに少なくとも到達するまで、アナログ−ディジタル変換器、増幅器などの如きさまざまなステージを通る(そして、並列に処理される)。当該技術分野において周知になっているように、通常は、制振(damping)を提供するアコースティックバッキング層はデバイスの裏面に設けられている。また、この層は、そこに電気的ビアが必要とされる場合、本発明に従って形成されてもよい。
【0082】
本発明は、CMUTデバイスに関して説明されているが、他の超音波トランスデユーサに適用されてもよい。確かに、本発明は、同様のアコースティック制振構造が必要となる他の分野で用いられてもよい。
【0083】
本発明は、アコースティック制振層を製造する方法にまで展開可能である。本発明のさらなる態様によれば、本発明は、超音波トランスデユーサにおいて用いられるアコースティック制振構造を製造する方法であって、第一のウエハーおよび第二のウエハーにある空隙に取り囲まれる複数の導電性ポールを形成することと、これらの複数の導電性ポールをアコースティック制振材料で取り囲むことと、第一のウエハーおよび第二のウエハーのうちの一方のウエハーの表面に複数の導電性ポールと導通している導電性パスを設けることと、一方のウエハーの複数のポールが他方のウエハーの複数のポールから横方向に沿ってズレているように、かつ、第一のウエハーの各ポールが第二のウエハーのポールに導電性パスのうちの1つを介して接続されるように、第一のウエハーおよび第二のウエハーを接合することとを含む。
【0084】
また、本発明は、先に記載されたようなアコースティック制振層を組み込んだトランスデューサを備えている(好ましくは、侵襲的な)超音波イメージングシステム、および本発明にかかるトランスデューサを用いたイメージング方法にまで展開されるものである。実用的なシステムでは、好ましくは、多重化されたトランスデューサからの信号が、処理システムへの信号リード線を通って、イメージ表示デバイスへ送信される。超音波の分野において一般的に知られているように、ビームを制御するために制御回路が設けられてもよい。
【0085】
本発明にかかるCMUTアレイは、「ロボットピル」の形態で、すなわち患者により呑込み可能な内蔵型の形態で製造されてもよい。したがって、さらなる態様によれば、本発明は、本発明のその他の態様にかかるCMUTアレイを備えている呑込み可能超音波トランスデユーサを提供している。ロボットピルは、動力源を備えていることが好ましく、また、体液(胃酸など)からアレイを保護するために密封されたエンクロージャを備えていることが好ましい。それは、プロセッサおよびメモリーユニットの如きデータ記録システムを備えていることが好ましいが、とくに好ましい形態では、外部レシーバにイメージを送信するためのトランスミッタ(たとえば、無線送信機)を備えている。
【0086】
また、上述の発明の各々も、先に記載されたようなトランスデューサを備えている(好ましくは、侵襲的な)超音波イメージングシステム、および本発明にかかるトランスデューサを用いたイメージング方法にまで展開されるものである。実用的なシステムでは、好ましくは、多重化されたトランスデューサからの信号が、処理システムへの信号リード線を通って、イメージ表示デバイスへ送信される。超音波の分野において一般的に知られているように、ビームを制御するために制御回路が設けられてもよい。
【0087】
ここでは、例示のみを意図し、本発明にかかる実施形態を添付の図面を参照して記載する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態であるCMUTアレイを有する超音波トランスデユーサ組立体を示す概略図である。
【図2】CMUTアレイの製造に用いられる3つのシリコンウエハーの断面を示す概略図である。
【図3】孔の形成を示した、3つのシリコンシリコンウエハーのうちの1番目のウエハー示す概略断面図である。
【図4】さらなる処理ステップの結果を示した、図3に対応する図である。
【図5】3つのシリコンウエハーのうちの2番目のウエハーを図4の構造に追加したものを示した、図4に対応する概略断面図である。
【図6】さらに連続して実行される処理ステップの結果を示した、図5に対応する概略断面図である。
【図7】さらに連続して実行される処理ステップの結果を示した、図5に対応する概略断面図である。
【図8】3つのシリコンウエハーのうちの3番目のウエハーを図7の構造に追加したものを示した、図7に対応する概略断面図である。
【図9】さらなる処理ステップの結果を示した、図8に対応する概略断面図である。
【図10】さらなる処理ステップの結果を示した、図8に対応する概略断面図である。
【図11】完成したCMUTを示す断面図である。
【図12A】複数のCMUTのアレイ配置を部分的に示す断面図である。
【図12B】使用した切断線を示した、図12Aに対応する部分平面図である。
【図13A】異なる断面線を使用した、図12Aに対応する図である。
【図13B】異なる断面線を使用した、図12Bに対応する図である。
【図14】本発明の他の実施形態にかかるCMUTアレイを示す断面図である。
【図15】図17に使用される切断線を示す図12Bに対応する図14のCMUTアレイを示す図である。
【図16】図18に使用される切断線を示す図13Bに対応する図14のCMUTアレイを示す図である。
【図17】図15の切断線A−Aに沿った図15のCMUTアレイを示す断面図である。
【図18】図16の切断線B−Bに沿った図15のCMUTアレイを示す断面図である。
【図19】わずかに単純化された構造を示した、図15に対応する図である。
【図20】わずかに単純化された構造を示した、図16に対応する図である。
【図21】図14の実施形態の製造に使用されるシリコンウエハーを示す概略断面図である。
【図22(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図22(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図23(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図23(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図24(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図24(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図25(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図25(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図26(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図26(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図27(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図27(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図28(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図28(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図29(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図29(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図30(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図30(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図31(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図31(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図32(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図32(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図33(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図33(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図34(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図34(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図35(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図35(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図36】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための最終ステージを示した、図14に対応する概要図である。
【図37(a)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図19の切断線A−Aに沿った断面図である。
【図37(b)】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための連続するステップを示した、図20の切断線B−Bに沿った断面図である。
【図38】図14の実施形態にかかるCMUTアレイを製造するための最終ステージを示した、図14に対応する概要図である。
【図39】従来技術にかかるバッキング層を示す概略図である。
【図40】本発明の実施形態にかかるバッキング層の基部を示す輪郭プロット(平面図)である。
【図41】図40のバッキング層からの反射損を周波数の関数として示すグラフである。
【図42】導電性ポールを残すためにシリコンがエッチングにより除去されている、さらなる実施形態にかかる制振層の製造に使用されるBOXウエハーを示す概略断面図である。
【図43】制振材料の層が加えられてポールのまわりが囲い込まれた状態になっている、図42のBOXウエハーを示す図である。
【図44】図43のウエハーの上表に形成されている導電性トラックを示す概略平面図である。
【図45】完成された実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1を参照して、超音波トランスデユーサ組立体が説明されている。超音波トランスデユーサ組立体は、侵略的な超音波手法に用いるのに適しており、すなわち超音波トランスデユーサ組立体は、血管などの中に挿入するカテーテルまたはニードルに搭載することができる超音波「カメラ」に用いられてもよい。このようなデバイスは、アレイの中にアレイ状に並べられたエレメントを提供しなければならないので、広い視野を走査することができる必要がある。この実施形態は、90度の角度を備えたコーンをイメージするために用いられので、約1000のエレメントがlmmのパッケージ内に設けられている。
【0090】
超音波トランスデユーサ組立体1は、スタックを形成する複数の別個に形成された層から形成されている。(図示されている)頂部には、アレイ状に配置されているトランスデューサエレメント3を備えたCMUT層2が設けられている。これらのエレメントの各々は、実際には、下記に記載されているように、4つの別個のトランスデューサ3a−3dを含んでいる。(他の実施形態では、この数が異なっていてもよく、ほとんどの場合、高い数字である。)必要な分解能を実現するため、この実施形態は20〜50MHzの超音波周波数で動作する。層は20ミクロンの厚みの微細機械加工されたシリコン製の構造体である。その構造は下記に詳細に記載されている。
【0091】
その他の層は、CMUT層2の下に配置されている。一般的にいえば、これらの層は、CMUTエレメントに対応する複数のエレメントを有しているので、各CMUTへのまたはそこからの信号パスが構造体を並列にかつ鉛直方向に沿って通っている。
【0092】
CMUT層2の下には、デバイスのその他の部分からのトランスデューサを遮音する役目をするアコースティック層4が設けられている。デバイスの頂部層がほとんど純粋なシリコンであるので、この層は表面波の伝搬を防ぐために設けられている。表面波とは、トランスデューサの表面を横切って伝搬する波のことである。表面波の伝搬が可能ならば、これらの表面波は、少なくともある範囲の角度内においてデバイスの動作を妨げる。(従来のデバイスでは、波の伝搬を減らすためにアイソレーショントレンチが設けられているが、これらのアイソレーショントレンチは本実施形態では採用されていない。)アコースティック層2は、エポキシとタングステン製のビードから形成され、100ミクロンの厚みを有している。
【0093】
次の層は高電圧伝達層5である。この層は、各トランスデューサに超音波を発射させるために、各トランスデューサに必要な駆動電圧を供給する。この層は、+/−10〜15ボルトの範囲の駆動電圧を提供する(これらの電圧は本背景技術においては「高電圧」である)。また、この層は、送信パルスを所望の方向に向けることを、超音波トランスデユーサの技術分野で一般的に公知となっているように、前もって決められているシーケンスで異なるエレメントの各々を励起させていくことによって可能としている。また、この層は、送信の際にアレイ配置の一部しか用いられないように制御されるようになしてあってもよい。
【0094】
記載の実施形態では、同一のエレメントが送信および受信に用いられるようになっているが、他の実施形態(例示せず)では、送信エレメントと受信エレメントとが別々に提供されるようになしてあってもよい。
【0095】
受信層6は、トランスデューサからの信号を受信し、これらの信号を信号処理および通信層7へ送信する前に前処理するようになしてある。具体的にいえば、層6は、各トランスデューサからの出力をディジタル形式に変換するように構成されているアナログからディジタルへ変換するトランスデューサを含んでいる。次いで、層7は、ディジタル信号を表示装置まで少ない数の導電体を経由させて送信することができるように当該ディジタル信号を処理し、多重化する。したがって、層7は、各CMUTエレメントに対応する入力を有しているものの、デバイスからのイメージ信号を提供するための出力の数はその数よりも非常に少ない。
【0096】
したがって、この実施形態では、CMUTエレメントが受信モードと送信モードで用いられることに加えて、受信用電子機器と送信用電子機器とが単一構造内に設けられている。しかしながら、より単純な実施形態(例示せず)では、トランスミッタはレシーバとは別々のチップに設けられ、必ずしも前のレシーバおよびビームスタックと整列して並んでいる必要はない。
【0097】
最終層8はバルク波の伝搬を防ぐさらなるアコースティック制振層である。圧電材料に基づく従来のトランスデューサにおいて、これらの層は従来技術に属するものである。しかしながら、2つのアコースティック層(4および8)の使用は本設計がオリジナルである。従来の圧電型超音波デバイスでは、トランスデューサ部分がはるかに厚くなっており、また、シリコンが2つの制振層の間に挟まれていないので、構造体の基端部に単一の制振層(すなわち、層8)があれば表面波を減衰させるのに十分であった。しかしながら、記載の実施形態のように、制振層とトンスデューサとの間にシリコン層がある場合、このことに効果がないことが分かった。
【0098】
本デバイスの重要な特徴は、本デバイスへ通ずる電気接続部または本デバイスの正面(図では、頂面)を通る電気接続部が接地されていなければならないということである。下記に、より詳細に記載されるように、ライブ接続は、CMUTエレメントの裏面(図では、底面)によってのみ提供される。このことは、本デバイスの正面を接地することを可能とするので、「ライブ」信号搬送導電体が本デバイスの外部に晒されることはない。これは、高駆動電圧が必要されるという安全に関する検討事項を呈し、信号搬送導電体を電気的に絶縁するという問題を課している。
【0099】
その他の図面を参照しながら、デバイスのCMUT層2を製造するためのプロセスを説明する。特筆すべきことは、図12には、アレイ状に並べられるCMUTトランスデューサエレメントが形成されるシリコンウエハーが示されており、図12A〜図13Bには、完全なアレイ(の一部)が示されているが、分かり易いように、図2〜図11には、4個のトランスデューサ3a〜3dからなる単一のCMUTエレメントのみの形成が示されているという点である。これらの図は、概略図であって、原寸に比例したものではない。加えて、図3〜図11は、詳細がはっきりと分かるように、図2および図12A〜13Bと比較して水平方向に沿って多少縮小されている。
【0100】
図2に示されているように、CMUT層2は、3つの別個のシリコンウエハー9、10および11から形成される。第一のウエハー9は、酸化物(SiO2)層12で被膜されているシリコンウエハーであり、酸化物層には、100nmの窒化物(Si3N4)層13が設けられている。これは、CMUT膜の成形に使用される。第二の層10および第三の層11は、通常のSi BOXウエハーであり、各層がその間に酸化物の層14または15を有している。(通常、酸化物層は集積回路の表面上の近隣の回路間の容量を削減するために用いられている。)ウエハー10は、8ミクロンのデバイス層21と、0.3ミクロンのBOX層14とを有している。ウエハー11の場合、これらの厚みは、それぞれ10ミクロンおよび2ミクロンである。ハンドル層23および17(および、ハンドルであるウエハー11のハンドル層22)は、著しく厚くなっている。ただし、この寸法は重要ではない。記載されているように、これらのウエハーの各々の殆どは、微細機械加工プロセス中にエッチングにより除去される。
【0101】
完成したCMUTアレイでは、底側ウエハー11は、トランスデューサエレメントが坦持され、電気接続部を形成するビアが形成される主要シリコン構造を形成している。中間層10がCMUTキャビティ構造を形成し、頂部層9が膜を形成するために用いられている。これらのウエハーは、電子回路が形成されるウエハー10および11のデバイス層が最上側に位置する「正常」配置で示されている。次のプロセスでは、中間ウエハー10は逆さまになっていることに留意されたい。
【0102】
図3には、第一の微細機械加工ステージが示されている。この図は、ウエハー11が酸化プロセスを経てそのまわりに酸化物層15’を形成していることを示している。次いで、頂部シリコン層16および酸化物層15を貫通する、直径が4ミクロンの孔部18がエッチングにより形成される。この孔部は、最終的には導電用のビアを形成するために用いられる。新しく形成された酸化物層15’およびシリコン層16のエッチングは、反応性イオンエッチング(RIE)(酸化物層15’)および深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)(シリコン層16)によって行われ、酸化物層15のエッチングは、HFエッチを用いて行われる。このプロセスでは、頂部酸化物層15’がDRIEプロセスのマスキングの一部として働くものの、フォトレジスト材19が上側表面に塗布されてマスクを形成するようになしてある。底部シリコン層17ついては、後で削除されるため、底部シリコン層17がエッチングされてしまうか否かは重要なことではない。それに加えて、位置合わせ用のマークRlおよびR2が、酸化物層15’に形成され、後の接合プロセスにおいて、その他のウエハーの対応するマークに対して当該ウエハーの位置合わせをするようになしてある。下記の説明には記載されていないが、これらのマークは、接合プロセスにおけるウエハーの位置合わせを容易にするための第一の処理ステップの一部としてエッチングされる。良好な接合を得るためには、これらのウエハーの結晶方位が一致していることが重要である。次に、エッチングする場所を調製したフォトレジストが取り除かれ、また、1ミクロンの酸化物層20が孔部18の内部に形成される。図4を参照されたい。このことにより、ビアに絶縁層が形成される。
【0103】
次のステージでは、中間ウエハー10が投入される。図5から理解することができるように、中間ウエハー10は、(図2と比較して)逆さまにされ、底部ウエハー11の頂部上に配置される。しっかりとした接合を形成するために、これらのウエハーの表面は、従来の方法で、洗浄され、親水性を付与され、合わせられ、次いで加熱される。
【0104】
次のステップ(図6を参照)は、構造体の「ハンドル」の役割をしていた頂部層23(現時点では、図示されている)をウエハー10からエッチングにより取り除くことである。(頂部層の唯一の機能は、非常に薄いその他の酸化物層およびSi層に対する支えを提供することである。)
このことがなされると、酸化物層は取り除かれ、また、シリコン層21にPOClが添加されてその表面のけい光体の濃度が高くされる。このことは、けい光ガラスと呼ばれる残留物をシリコン層の表面に残すので、このけい光ガラスを取り除くために、次のステップが実行される:けい光ガラスをエッチングにより取り除くステップと、薄い酸化物層を成長させるステップと、ウエハーを高温で長時間処理し、けい光体をデバイス層の中に拡散させ、けい光体濃度を1016/cm〜1019/cm程度とするステップと、酸化物をエッチングにより取り除くステップと、500nmの厚みの新しい酸化物を成長させるステップ。
【0105】
次に、フォトレジスト25からなるマスクが酸化物層14に形成され、また、チャネル26が、酸化物層14および不純物添加シリコン層21の中へ反応性イオンエッチング(RIE)および深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を用いて形成される。これらのチャネルは、個々のトランスデューサエレメント3a〜3dの輪郭を形成する。
【0106】
次に(図7を参照)、フォトレジスト25が酸化物層22に沿って取り除かれる。次いで、フォトレジストの新しい層が、(エッチングの次の領域を定義するために)塗布され、構造体の上部の中央部分27(図6および図7を参照)が、60nmだけ下方に向けてエッチングにより取り除かれ、CMUTキャビティの内部が形成される。非常に正確にこの部分をエッチングすることが必要である。このことは、シリコンが酸化物の厚さに応じて異なる速度で酸化すること、酸化物を形成するために必要とされるシリコンが、酸化された表面から取られることを知ることにより達成される。したがって、そのプロセスは以下のとおりのものである:全表面を均一(500nm)に酸化させることと、 フォトレジストに耐える表面を保護することと、凹部となる領域内の酸化物をエッチングにより取り除くことと、フォトレジストを取り除くことと、適切な時間、再び酸化することと、すべての酸化物を取り除くこと。このようにすることにより、図7に示されている構造が形成される。
【0107】
ここで図8を参照すると、最後に、第三のウエハー9を洗浄し親水性を付与した後、第三のウエハー9が構造体上に配置され、次いで、これらのウエハーが、位置合わせ用のマークRl、R2などを用いて位置合わせされ、接合される。このウエハーの窒化物層26の下側部分が、CMUTキャビティを閉じる膜の一部分を形成する。
【0108】
機械的強度を提供する構造体の頂部上に強いウエハー9が設けられたので、最初に酸化物を取り除くためにRIEを用いてシリコンからなる底部「ハンドル」層17を取り除くことが可能となる。次いで、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドTMAHにより、層15が、エッチングにより取り除かれる。それに加えて、孔部18の基部に形成された酸化物の一部がRIEによるエッチングにより取り除かれ、孔部18の底部が開放された状態にある図9に示されている構造を形成する。
【0109】
次のステージは、孔部18の中に導電材料を注入することによりビアを形成することである。図10に示されているように、最初に、ポリシリコン(非結晶質多結晶シリコン)30の層が孔部を充填するために投入されている。次いで、これは、高濃度に添加された後、さらなるポリシリコン31を用いて孔部18が充填される。構造体の底部に残っている過剰なポリシリコンが取り除かれ、アルミニウム製のコンタクト32がスパッタリングにより形成される。さらなるアルミニウム製のコンタクト33が、(エッチング成形された孔部の中に)形成され、シリコンのバルク部への接続部が実現されている。
【0110】
図11を参照すると、次のステップはTMAHを用いたエッチングにより、CMUTエレメント上のシリコン層22(および、シリコン層22を覆う層)を窒化物層28まで取り除くことである。試験の際の取扱いが容易であるように、構造体の上部の外周に直立部分を形成するように構成されていることに留意されたい。上記の記載が単一のエレメントを示しているが、後の図に示されているように、完成したデバイスの外周に沿って直立部分を残した状態で、アレイ状に並べられているCMUT全体の上にあるシリコン層22をエッチングにより取り除くようにしてもよい。本発明の他の実施形態では、底部制振層8は、アレイの構造体のための取扱い強度を提供しているので、直立部分は必要ではない。
【0111】
次に、プラズマ強化蒸着を用いて、100nmの導電フィルム、たとえばアルミニウム、チタン、タングステン、またはそれらを組み合わせたものからなるフィルム39が蒸着され、またその上に、150nmのシリコン窒化物層34が形成される。このことにより、CMUT膜が形成される。この窒化物層は、膜に強度を付与するとともに、導電フィルムを保護し、そして、この導電フィルムが電導性の「コンデンサプレート」を提供する。最後に、孔部がデバイスの外周面にエッチングにより形成され、また、金製のコンタクト35が挿入されて接地用の接続部が形成される。アルミニウムフィルムが共通の接地面を形成するので、アレイ全体の外周面に必要となるのは、これらの電極のうちのほんの少数だけである。
【0112】
したがって、完成されたCMUTでは、アルミニウムを含んでいる膜(39など)は、コンデンサエレメントの1つの(接地)プレートを形成し、不純物添加シリコン層21の一部36は、ライブ/信号プレートを形成する。これらの2枚のプレートは、互いに平行となっており、キャビティ38によって分離されている。接地用の膜への電気的接続は、コンタクト35を経由して、また、ライブプレート36への接続は、ライブプレート36の真下にあるシリコン層を通って下方に向けて延びているビア32を経由してなされる。
【0113】
上述のように、完成された実施形態は1000のエレメントを有しており、各エレメントは、図12A〜図13Bに示されているような4つトランスデューサ3a〜3dを備えている。図12Bおよび図13Bは、各々が4つの個別のトランスデューサ3a〜3dを含んでいるエレメント3のレイアウトを最も分かりやすく示している。図12Aおよび図13Aは、隣接するエレメントおよびそれらに対応するビア31が相互にどのように配置されているかを示している。いうまでもなく、4つのトランスデューサを有する各エレメントが1つだけのビアを有しており、4つの個別のトランスデューサの各々信号電極が相互に接続されている。このことは、図12Bおよび図13Bにおいて最も分かり易く示されている。先に記載されているように、各トランスデューサの中央部は、CMUT内の底部キャビティを形成することに加えて、これらの円を接続する外側の0.85マイクロメータの狭さを有する「ライン」を形成するように、エッチングにより60nmだけ下方に向けて取り除かれる。図12Aおよび図13Aから視認することができるその他の空隙40は位置合わせ用のマークである。
【0114】
図14〜図38を参照して、本発明のさらなる実施形態がその生産方法とともに説明される。この実施形態は、その全面的な構造が上述のものと類似しているが、キャビティがビアと同一のシリコンウエハーに形成されている。
【0115】
図14は、この実施形態の断面を示す図であり、均一な接地頂部電極106と、電気コンタクト108が設けられている裏面に接続されている電気ビア接続部111(「ビア」)と共に、アレイ状に並べられかつ真空密封されているCMUTキャビティまたはセル102を示している。バルクシリコン基板は別個の電気コンタクト109を有している。CMUTセル上の膜スタックは、LPCVD窒化ケイ素(103)と、酸化シリコン104と、金属層105と、PECVD(プラズマ強化化学蒸着)シリコン窒化物層106とからなる。金製のコンタクト110は、頂部電極を構成する膜スタック金属物質層105への電気的接続を実現するために蒸着されている。
【0116】
図14に一部分が示されているCMUTアレイは、各エレメントが4つの円形状のCMUTセル102からなる何千ものエレメントからなっている。図15および図16は、膜スタックを融解結合する前の2つのCMUTエレメントを示す平面図である。下記の記載においてさらに十分に説明されているように、バルクシリコンウエハー201の表面は、窒化ケイ素103をシリコン201へ融解結合させるための領域を構成している。図15および図16の各エレメント内のセルのうちの1つの小円211は、図1からの電気ビア接続部111がどこに設けられているかを示している。不純物添加ポリシリコン213は、底部電極と、CMUTセル間を相互に接続するラインとを形成する。これらの相互接続ラインは、4つのCMUTセルを電気的に接続して1つのエレメントを形成するようになしてある。ポリシリコン面213は、キャビティの底部を形成している。酸化シリコン212からなるトレンチは、エレメント間の絶縁を提供し、底部電極領域および円形状の膜の直径を規定している。
【0117】
図15および図16には、後の2つの図面で用いられている断面図を画定する斜線が付与されている。図15には、図17に示されている1つのエレメントを通るA−A’線に沿った断面図が示されている。同様に、図16には、図18に表されている1つのエレメントの対角線を通るB−B’線に沿った断面図が示されている。
【0118】
図17および図18から分かるように、その頂部に酸化シリコン304を有しているLPCVD(低圧化学蒸着)窒化ケイ素303は、バルクシリコン表面301と溶融接合されている。真空密封されているCMUTセル302上に保持されている膜スタックは、薄い金属物質層305とPECVDシリコン窒化物層306により完全なものとなる。不純物添加ポリシリコン313は、底部電極と、コンポーネントの裏面への電気ビア接続部とを構成している。酸化シリコン312は、電気ビア接続部間を隔離するとともに、底部電極領域および円形状の膜の直径を規定している。
【0119】
図19〜図38を参照して、この実施形態にかかる製造プロセスを段階的に説明する。図19および図20は図15および図16にそれぞれ対応しており、明瞭さのため、各エレメント401を構成する複数のセル400間の単純化された(単一パスの)相互連結が示されている。後の図は、この構成に対応しており、これらの図によって定義されているA−A線(左側〜右側)およびB−B線(対角線)に沿った断面図を示している。
【0120】
先の場合と同様に、各エレメント内の複数のセルのうちの1つのセル内の小円402が、電気ビア接続部の頂部を示している。灰色点線領域403は、CMUTセル間を相互に接続するラインを備えた、不純物添加ポリシリコン製の底部電極であり、これらの相互接続ラインは、4つのCMUTセルを電気的に接続して1つのエレメントを形成するようになしてある。ポリシリコン面は、キャビティの底部を形成している。周辺領域405は酸化シリコン製のトレンチを示している。これらのトレンチは、エレメント間の隔離を提供し、底部電極領域および円形状の膜の直径を規定している。外側領域406は、むき出しになったシリコンウエハーを示している。これは、膜を形成するウエハーへの融解接合のための接合表面である。
【0121】
図21には、プロセスに用いられるウエハーが示されている。左側には、CMUTエレメントおよび電気ビア接続部が形成される標準シリコンウエハー407が示されている。右側には、標準シリコンウエハー408と、それを取り囲む薄い酸化シリコン層409とが示されている。低圧化学蒸着される(LPCVD)窒化ケイ素410が酸化シリコン層409を取り囲むように蒸着され、最外層を形成している。このウエハーはむき出しになったシリコンウエハーに溶融接合される。
【0122】
以下の複数の図では、左側「(a)」部分が図15のA−A線に沿った断面図を示し、右側「(b)」部分が図16のB−B線に沿った断面図を示している。複数の対になった図が、図番のみを用いて説明される。したがって、例えば「図22」とは、図22(a)および図22(b)の両方を指していることになる。
【0123】
このプロセスの順序は標準シリコンウエハーから始まる。図22には、あるパターンを有したフォトレジスト層412を形成する前に、ウエハー407を湿式酸化して酸化シリコン層411を形成することが示されている。あるパターンのフォトレジストを形成した後、酸化シリコン411は、シリコンの上面の部分413が露出されている図23に示されている結果となるように、反応性イオンエッチング(RIE)によって取り除かれる。残りの酸化物層は、後でエレメント領域を規定するための酸化膜マスクとして用いられる。図26を参照されたい。図24には、電気ビア接続部の位置415を規定するための第二のレジストマスク414が示されている。
【0124】
次いで、図25に示されているように、20μmの深さの孔部416が深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)によってウエハーの部位415にエッチングにより形成される。このビアの直径は約4μmである。
【0125】
次のステージは、フォトレジスト414が取り除かれ、エレメント417用の領域がRIEによって形成される。図26を参照されたい。
【0126】
ウエハーは肉厚の酸化シリコン418だけ湿式酸化される。図27を参照されたい。これにより、ビアを相互に隔離する役目をする絶縁層が形成される。それに加えて、この酸化シリコンは、エレメント間の絶縁トレンチを構成し、底部電極と膜の直径を規定する(下記の図31を参照)。
【0127】
これらのビアは、燐を添加されたポリシリコン419(図28)によって充填される。このことにより、エレメント信号電極を形成する材料と接触する、ビアを通る導電体420が形成される。図29に示されているように、次のステップは、ウエハーの上側部分を化学機械研磨(CMP)によって取り除いて磨くことであり、このことにより、電極421が形成される。
【0128】
あるパターンのフォトレジスト422がウエハーに形成され、キャビティギャップ423が、RIEによってポリシリコンを約60nmだけエッチングすることにより調整される(図30)。次いで、アイソレーショントレンチ424が、BuHFを用いて200〜300nmだけ酸化シリコンをエッチングにより取り除くことにより形成される(図31)。このことにより、セルの下側部分の形成が完成する。したがって、図21の右側部分に示されているウエハーが、図32に示されているように、上側部分と溶融接合され、セルが閉じられる。
【0129】
そのことが行われると、底部ウエハーの裏面(図では、下側部分)が、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)およびRIEを用いて薄くさせ、ビア420の底部426を露出させる(図33)。熱酸化物層が、底部シリコン表面(図34)の絶縁のために酸化により形成され、そして、ビアへのコンタクトを形成するためおよびシリコンウエハーへの別個のコンタクトを形成するために、開口部が熱酸化物層に形成される。次いで、アルミニウムが、スパッタリングされ、パターンニングされ、焼結されて、ポリシリコン製のビア420および底部電極への裏側コンタクト428、429が形成される(図35)。
【0130】
ここで図36を参照すると、頂部シリコンウエハーの頂部表面の窒化ケイ素層410および酸化シリコン層409がパターンニングされ、RIEによってエッチングされることが分かる。アレイ領域上の頂部シリコンウエハー408自体、酸化シリコンのところでエッチストップされるまで、TMAHを用いたエッチングにより取り除かれる。したがって、頂部ウエハーの下面の酸化シリコンおよび窒化ケイ素は、膜スタックを構成し、最終的に露出される。図37に示されているように、薄い均一な金属層430が酸化シリコン409上にスパッタリングにより形成されており、これが、頂部シリコンのTMAHによるエッチング中にエッチストップとして働く。この膜スタックの金属層は、アルミニウム、チタンもしくはタングステンからなる単一の層または2つ以上の単一の金属層を組み合わせたものから通常なりうる。この膜スタックは、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)により通常金属層430上に形成される窒化ケイ素であるパシベーション層431からなる隔離用の均一な層により完成される。
【0131】
最終ステージ(図38)は、PECVDパシベーション層をチップの端部に位置する膜スタックの金属に向けて開けることである。膜スタックの金属との電気的な接触のために、金432が蒸着される。図38を参照されたい。ここで、バッキング層8について説明する(図1を参照)。実施形態が20〜50MHzの超音波周波数で動作する場合、必要な分解能を実現するためには、層2は20ミクロンの厚みを有する微細機械加工されたシリコン構造体である。
【0132】
上述のように、CMUT層2の下には、トランスデューサを本デバイスのその他の部分から遮音するように働くアコースティック層4が設けられている。本デバイスの最上層がほとんど純粋なシリコンであるので、この層は表面波の伝搬を防ぐために設けられている。表面波とは、トランスデューサの表面を横切って伝搬する波のことである。表面波が伝搬可能である場合、当該表面波は、ある角度の範囲内で、デバイスの動作を駄目にしてしまう。(従来のデバイスでは、波の伝搬を減らすためにアイソレーショントレンチが設けられているが、これらのアイソレーショントレンチは本実施形態では採用されていない。)アコースティック層4は、エポキシから形成され、100ミクロンの厚みを有している。
【0133】
これから詳細に説明する最終層は、バルク波の伝搬を防ぐさらなるアコースティック制振層8である。これらの層は、圧電材料に基づく従来のトランスデューサにおいて従来技術に属するものである。しかしながら、2つのアコースティック層(4および8)の使用は、本設計がオリジナルである。従来の圧電型超音波デバイスでは、トランスデューサ部分がはるかに厚くなっており、また、シリコンが2つの制振層の間に挟まれていないので、構造体の基端部に単一の制振層(すなわち、層8)があれば表面波およびバルク波を減衰させるのに十分であった。しかしながら、記載の実施形態のように、制振層とトンスデューサとの間にシリコン層がある場合、このことが、とくに表面波に対して効果がないことが分かった。
【0134】
図39の従来のバッキング層が図1の層8に対応している。この自由底面には、深さが(特定の)波長の4分の1である正四角形の溝を有する「波状の」面が設けられている。
【0135】
面内縦波(plane longitudinal wave)が波状の面(corrugated surface)に向けて伝搬することが示されている。溝は同一の幅を有し、溝と溝との間の距離はdであり、溝の高さはhである。第一の近似として、点線のところでは、溝の底部の真上に、点線に沿って均一の振幅を有しているとともに溝のある領域と溝のない領域との間の位相差が2h2π/λである反射波が存在している。ここで、λは波の波長である。4h=λである周波数では、位相差がπであり、鏡面反射(specular reflection)波、すなわち平面状の底面からのものであるように反射された波の振幅はゼロである。もっと正確にいえば、波は、+/−2π(2d)の倍数の横方向の波数ベクトル(k−vectors)を備えた縦波とせん断波とに変換される。
【0136】
しかしながら、この変換は、周波数の比較的狭い帯域でしか効果がない。ここで記載される本発明の実施形態では、より広い帯域をカバーすることができ、また、さまざまな実効高hを用いていくつかのこのような散乱周期性に有効に加える構造体が用いられている。
【0137】
各散乱構造体が設計周波数で鏡面波反射係数をヌル(null)になるように、いくつかのこのような散乱構造体を独立して働かせるためには、他の伝播遅延に起因して追加されるいかなる可能なタイプの伝搬長の全領域のうちの半分の領域から反射される信号に対して2hiの伝搬長を加えるように、散乱構造体を構成することが必要である。好ましくは、この伝播遅延バランスは、構造体全体にわたって全体的におよび構造体全体の小領域で局所的に維持されるべきである。
【0138】
図40に示されている実施形態は、これを行うことができるそのような構造体の一例である。この構造体は、エッチングにより形成されたさまざまなサイズの正方形を備えており、これらの各サイズの正方形は、チェッカボード上のように編成されている。この図は、織り交ぜられたチェッカボードパターンの一部の高さを示す輪郭プロット(contour plot)である。軸に沿った目盛りは、1〜1.5mmの範囲であり、高さはミクロン単位である。
【0139】
一般的な場合を考えると(図40実施形態に限定せず)、「ブラック」チェッカボード正方形は、i番目のチェッカボードに対して下方に向けてある高さhi分だけエッチングにより取り除かれると仮定する。上述のバランスの取れた方法で3つの高さ収容するには、それらの間のサイズが少なくとも2のリニアファクタ(2の整数累乗)になるように、チェッカボード内の正方形のサイズを縮小または拡大しなければならない。たとえば、小さなパターンの4つの正方形が、大きな正方形のうちの1の中に配置される必要がある。大きな正方形は、高低差を選択することにより低周波数での取り消しを行う必要がある。
【0140】
図示されている実施形態では、3つのチェッカボードが織り交ぜられているそのような構造体が用いられている。図40では、4×4の大きな正方形(2×2の最大間隔)を僅かに超えるものが示されている。
【0141】
図41には、この実施形態について得られた鏡面反射係数対周波数のプロットが示されている。15.2MHz、24.7MHzおよび36.1MHzにおける反射が取り消されるように高さが選択されている。約46MHzでの取り消しは、15.2MHz構造体の1.5λの遅延差に起因するものである。したがって、この周波数における局所的(ローカル)バランスは、本来達成しうるバランスよりもよくない。
【0142】
他の実施形態では、この構造体内のチェッカボードパターンのうちの1つが、上述の2のリニアファクタルールを破るような寸法に縮小または拡大されている。この場合、巨視的な規模で要求されるバランスが依然として維持されるので、図41の結果にはほとんど変化がない。しかし、小領域からの反射になにが起きたかを注意深く調べると、効率が落ちたことが分かる。
【0143】
他の実施形態(図示せず)では、溝造体がすべて同時に働き、かつ、上述のように、バランスが取られるように、いくつかの溝造体が相互に重なり合っている。所望の周波数で働くよう設計するために、異なる深さおよび異なる幅を備えた溝が異なる方向で用いられる。たとえば、3つの構造の溝は、それらの間の角度が45度および90度だけ異なる溝方向を有しうる。
【0144】
他の実施形態(図示せず)は、組み合わせると正方形または長方形を形成する2つの三角形からなる基本パターンを有している。これと組み合わせてバランスの取れた深さパターンを形成する構造は、正方形または長方形が2つの可能な対角線のうちの他方によって三角形に分割される場合に得られる構造でありうる。
【0145】
より多くのパターンを含むためには、四角形に対して、同一の構造の平面寸法を2倍だけ縮小または拡大することを繰り返してもよい。上述のように、CMUT層2(図1を参照)の下には、デバイスのその他の部分からのトランスデューサを遮音する役目をするアコースティック層4が設けられている。その他の図面を参照しながら、制振層4を製造するためのプロセスをさらに詳細に説明する。
【0146】
まず図42を参照すると、プロセスは、55ミクロンのデバイス層511の厚みと、100nmの酸化物層512の厚みを備えた2つの類似したボックス(box)ウエハー509、510で始まる。これらのウエハー上では、裏面514(デバイス層のない面)に位置合わせマーク513が形成される。次いで、両方のウエハーの正面上のデバイス層511は、あるパターンのフォトレジストが塗布され、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を用いてエッチングされ、このことにより、四角形状のパターンを有し、両方向のピッチが25ミクロンであり、各々の直径が5ミクロンである複数のシリコンポール515が形成される。図から分かるように、エッチングは、デバイス層11全体に及び、酸化物層512で止まっている。
【0147】
次のステージは、ウエハー509および510に不純物を添加し、加熱することにより、ポール材に高電導度を付与することである。
【0148】
図43から分かるように、次のステージは、流動性のあるエポキシとタングステン粉末516との混合物を注意深くウエハー頂部上(ポールを備えた側面が上を向いている)に広げてポール515がこの材料に取り囲まれるようにすることである。真空の下で、ウエハー509および510を適切に熱処理することにより、エポキシが流動しやすくなり、ガス抜が可能となる。さらに、このことにより、タングステン粉末がエポキシ層の底部まで沈下し、シリコン表面に接近し、そして固まることが可能となる。エポキシが固まった後、ウエハー509、510のエポキシの面が、ポール515の頂面が露出するまで、研磨され、注意深く滑らかにされる。次いで、図44の平面図から分かるように、ウエハーのうちの一方に、導電性金属ライン17が、金属蒸着(ダンピングまたはスパッタリング)、フォトレジストパタニングおよびエッチングを用いて形成される。
【0149】
2つのウエハー9、10のエポキシ層が、ウエハーの裏面上の位置合わせマーク13を用いて位置合わせされるので、二つのウエハーのうちの一方のウエハーのポールが他方のウエハーの4つのポールの真中に位置決めされる。いったん二つのウエハーが適切に位置合わせされると、これらのウエハーは、異方導電性の接着剤を用いて接着される。図45に示されているように、二つのウエハーのうちの一方のウエハー上の金属ライン517が、2つのウエハーの導電性ポール15を電気的に接触させる。(この図がバッキング層514などが取り除かれた後の完成した制振層4を示していることに留意されたい。下記参照。)
【0150】
次いで、次のステップは、適切なエッチングを用いて、2つのバッキング層514(これらはハンドルの役割をしていた)のうちの一方をエッチングにより酸化物層512まで取り除くことである。その時、酸化物が薄い(100nm)ので、ポールが位置している領域は酸化物512を通して視認される。次いで、酸化物は、フォトレジストを用いてパターニングされ、少なくともポール上、または任意選択的に表面全体にわたってエッチングにより取り除かれる。次いで、金属フィルム(図示さず)が、上記の表面上に形成され、エッチングおよびフォトレジストを用いてパターニングされ、CMUTウエハー2の底面への接続に適切なコンタクトが形成される。(それに代えて、CMUTウエハーに既に接続されている1つ以上の電子ウエハーの底面であってもよい)。制振層4をCMUT層2に接続するために、異方導電性の接着剤がもう一度用いられる。
【0151】
このことが終了すると、結合された構造体が、CMUT層2の反対側にあるハンドル層(図示さず)によって坦持されるようになしてあってもよい。このことにより、第二のウエハー510の残っているハンドル層514をエッチングにより取り除くことを可能とし、また、上述のように、他の電子ウエハー(とくに、層5)へ異方導電性の接着剤を用いて接続される表面を形成することを可能とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハー接合型CMUTアレイであって、
基板全体にわたって分配される複数のCMUTエレメントを備えており、
各エレメントが、前記基板に形成されるキャビティおよび信号電極と、前記キャビティを閉じ、接地電極を形成する導電性膜とを有しており、
前記複数のエレメントの導電性膜が前記アレイの表面全体にわたって連続した接地平面を形成しており、
前記信号電極への電気接続部が、前記基板を通って、前記信号電極から前記基板の裏側まで延びている導電性ビアによって実現されてなる、CMUTアレイ。
【請求項2】
前記CMUTアレイが導電体伝達信号電圧のかかっていない正面を有していることにより、前記CMUTアレイの前記正面自体を全体的に接地電位に維持することができる、請求項1に記載のCMUTアレイ。
【請求項3】
前記基板が、1若しくは複数のシリコンまたはシリコン系のウエハーから形成されてなる、請求項1または2に記載のCMUTアレイ。
【請求項4】
前記ウエハーがシリコンBOXウエハーである、請求項3に記載のCMUTアレイ。
【請求項5】
前記導電性ビアおよび前記キャビティの構造が単一のウエハー内に形成されてなる、請求項3または4に記載のCMUTアレイ。
【請求項6】
前記導電性ビアが、第一のウエハー内に形成され、前記キャビティの構造および前記信号電極が第二のウエハー内に形成されてなる、請求項3または4に記載のCMUTアレイ。
【請求項7】
前記導電性ビアが、ウエハーの少なくともシリコンデバイス層を貫通するエッチングにより形成される孔部を含み、その中に、絶縁酸化物層および導電性材料を有してなる、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項8】
前記信号電極が不純物添加シリコンを有してなる、請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項9】
前記信号電極がそれぞれ対応するキャビティ内に形成されてなる、請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項10】
前記信号電極がポリシリコンを有してなる、請求項1乃至7のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項11】
各トランスデューサのキャビティが、不純物添加シリコンにおいて前もって決められている深さまでエッチングにより取り除くことにより形成されてなる、請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項12】
不純物添加シリコン層に切削により形成されたチャネルにより、1つのエレメントの信号電極が他のエレメントの信号電極から隔離されるように構成されてなる、請求項3〜8のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項13】
さらなるシリコン系のウエハーを用いて、膜が前記基板とは別に形成されてなる、請求項1乃至12のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項14】
前記膜が、シリコン窒化物層を有してなる、請求項1乃至13のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項15】
前記膜が、金属フィルム層をさらに有してなる、請求項14に記載のCMUTアレイ。
【請求項16】
前記CMUTエレメントが、ビアへの共通の接続部を共有する関連エレメントの複数のグループとして提供されてなる、請求項1乃至15のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ。
【請求項17】
基板全体にわたって分配される複数のCMUTエレメントを有しているCMUTアレイを製造する方法であって、
シリコン製の前記基板に、各エレメント用のキャビティおよび信号電極を形成し、これらの電極への電気的接続部を提供する導電性ビアを形成することと、
各キャビティを閉じ、接地電極を形成する導電性膜を提供することにより、前記CMUTアレイの表面全体にわたる連続した接地平面を形成することと
を含んでおり、
前記導電性膜が、前記基板に接合されるシリコンウエハーから形成される、方法。
【請求項18】
前記キャビティおよび前記導電性ビアが第一のシリコン系ウエハー内に形成され、前記導電性膜が、第二のシリコン系ウエハーから形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電極が前記キャビティ内に形成される、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
前記電極が、前記キャビティ内にポリシリコンを蒸着することにより形成されてなる、請求項17乃至19のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリシリコンをエッチングして前記キャビティを調製することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第一のウエハーが前記第二のウエハーに直接接合される、請求項18乃至21のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ビアが、前記基板内に形成される孔部にポリシリコンを蒸着することにより形成される、請求項17乃至22のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記導電性膜が、前記複数のCMUTエレメントの表面全体にわたる連続した接地平面を提供するように形成される、請求項17乃至23のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記信号電極の前記接続部が、前記デバイスの前記基板を完全に貫通して形成される、請求項17乃至24のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第一のウエハーの前記デバイス層を貫通する複数の孔部をエッチングにより形成するステップを有している、請求項17乃至25のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
シリコン窒化物層が前記キャビティ上に位置するように、前記基板上に膜形成ウエハーを配置することを含む、請求項17乃至26のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ウエハーからシリコンをエッチングにより取り除いて前記窒化物層を残すことをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記窒化物層上に金属コーティングを被覆して前記接地電極を形成することをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
CMUTアレイと、
信号処理回路と、
第一のアコースティック層とを備えており、
前記信号処理回路が、CMUT層と前記第一のアコースティック層との間に設けられ、
前記CMUTアレイと前記信号処理構造との間に第二のアコースティック層が設けられてなる、集積型CMUT構造。
【請求項31】
前記第二のアコースティック層がCMUTアレイ層に直接隣接して設けられてなる、請求項30に記載の集積型CMUT構造。
【請求項32】
超音波トランスデユーサに用いられるアコースティックバッキング層であって、
前記アコースティックバッキング層が複数の異なる周波数の超音波を散乱させるように構成されており、
前記アコースティックバッキング層が複数の散乱構造を有し、該複数の散乱構造の各々が、与えられた周波数における鏡面波反射係数をヌルとするように相互に独立して働くように構成されてなる、アコースティックバッキング層。
【請求項33】
前記複数の散乱構造が、他の伝播遅延に起因して追加されるいかなる可能なタイプの伝搬長の全領域のうちの半分の領域から反射される信号に対して2hiの伝搬長を加えるように構成されてなる、請求項32に記載のアコースティックバッキング層。
【請求項34】
前記複数の散乱構造体が、エッチングにより形成されるさまざまなサイズの正方形を含んでなる、請求項32または33に記載のアコースティック層。
【請求項35】
各サイズの正方形がチェッカボードパターンを形成するように編成されており、チェッカボードの1つの色に対応する正方形がi番目のチェッカボードに対してある高さhiだけエッチングにより取り除かれてなる、請求項34に記載のアコースティック層。
【請求項36】
これらのチェッカボード内の正方形のサイズは、それらの間のサイズが少なくとも2のリニアファクタとなるように収縮または拡大されうる、請求項35に記載のアコースティック層。
【請求項37】
前記複数の散乱構造が、互いに重ねられる平行な溝を有してなる、請求項32または33に記載のアコースティックバッキング層。
【請求項38】
前記複数の散乱構造の各々の溝が、45度および/または90度だけ異なる溝方向を有してなる、請求項37に記載のアコースティックバッキング層。
【請求項39】
前記複数の散乱構造が、異なる深さおよび幅を有している複数の組の同一方向に一定間隔で並べられている溝を有しており、該複数の組の同一方向に一定間隔で並べられている溝が、与えられた点における総深さが重なり合わさられたすべての溝構造の合計であるように、重なり合わさられてなる、請求項32または33に記載のアコースティックバッキング層。
【請求項40】
異なる前記溝構造の一定間隔と一定間隔との間には整数関係がある、請求項39に記載のアコースティックバッキング層。
【請求項41】
前記複数の散乱構造が、合わせると正方形または長方形を形成するあるパターンの2つの三角形を有してなる、請求項32または33に記載のアコースティックバッキング層。
【請求項42】
エポキシおよびタングステンから形成されてなる、請求項1乃至41うちのいずれか一項に記載のアコースティック層。
【請求項43】
前記複数の散乱構造が、該複数の散乱構造により減衰される波の波長の4分の1の波長と深さが同一である凹部を表面に有してなる、請求項32乃至42のうちのいずれか一項に記載のアコースティック層。
【請求項44】
請求項32乃至43のうちのいずれか一項に記載のCMUTアレイ、複数の信号処理層およびバッキング層を備えてなる、超音波トランスデユーサ。
【請求項45】
前記CMUTアレイと前記複数の信号処理層との間にアコースティック層をさらに備えてなる、請求項44に記載の超音波トランスデユーサ。
【請求項46】
超音波トランスデユーサにおいて用いられるアコースティック制振構造であって、
上面および下面を有しているアコースティック制振材料層と、
前記上面から前記アコースティック制振材料層を通って前記下面まで延びている複数の導電体とを備えており、
前記複数の導電体の各々が、前記制振構造の前記上面と接触する位置よりも横方向にズレた位置で前記下面に接触してなる、アコースティック制振構造。
【請求項47】
前記複数の導電体が、屈曲部を有するパスをたどるように構成されてなる、請求項46に記載のアコースティック制振構造。
【請求項48】
前記複数の導電体がジグザグに湾曲されてなる、請求項46または47に記載のアコースティック制振構造。
【請求項49】
前記複数の導電体が、前記上面から前記アコースティック制振層の中へ延びる第一の部分と、そこからズレて、前記下面から前記アコースティック制振層の中へ延びる第二の部分と、前記アコースティック制振層の内で前記第一の部分から前記第二の部分まで延びる第三の部分とを有してなる、請求項46乃至48のうちのいずれか一項に記載のアコースティック制振構造。
【請求項50】
前記アコースティック制振層が、少なくとも二つの層部分を有しており、前記導電体の第三の部分が、前記二つの層部分の間の境界に配置されてなる、請求項49に記載のアコースティック制振構造。
【請求項51】
超音波トランスデユーサにおいて用いられるアコースティック制振構造であって、
前記制振構造が少なくとも2つの隣接する制振層部分を備えており、各制振層部分がそこを貫通する導電体を有しており、
一方の制振層部分の導電体が、前記2つの隣接する制振層部分の間の境界に配置される横方向導電体により、他方の制振層部分の導電体に接続されてなる、アコースティック制振構造。
【請求項52】
前記2つの隣接する制振層部分が、異方導電性の接着剤を用いて接続されてなる、請求項50または51に記載のアコースティック制振構造。
【請求項53】
前記制振層が、エポキシ粒子および/またはタングステン粒子を含んでなる、請求項46乃至52のうちのいずれか一項に記載のアコースティック制振構造。
【請求項54】
超音波トランスデユーサにおいて用いられるアコースティック制振構造を製造する方法であって、
第一のウエハーおよび第二のウエハーにある空隙に取り囲まれる複数の導電性ポールを形成することと、
前記複数の導電性ポールをアコースティック制振材料で取り囲むことと、
前記第一のウエハーおよび第二のウエハーのうちの一方のウエハーの表面に前記複数の導電性ポールと導通する複数の導電性パスを設けることと、
一方のウエハーの前記複数の導電性ポールが他方のウエハーの前記複数の導電性ポールから横方向に沿ってズレるように、および前記第一のウエハーの各ポールが前記第二のウエハーのポールに前記複数の導電性パスのうちの1つを介して接続されるように、前記第一のウエハーおよび第二のウエハーを接合することと
を含む、方法。
【請求項55】
前記ウエハーがシリコンウエハーである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記ウエハーがシリコンBOXウエハーである、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
請求項46乃至53のうちのいずれかにかかるアコースティック制振構造、または請求項54乃至56のいずれかの方法に従って構築されるアコースティック制振構造を備えてなるCMUTデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B】
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【図28A】
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【図28B】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34A】
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【図34B】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36】
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【図37A】
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【図37B】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公表番号】特表2012−521704(P2012−521704A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501381(P2012−501381)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000583
【国際公開番号】WO2010/109205
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(512101187)ノルウェージャン ユニバーシティ オブ サイエンス アンド テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】