説明

CO2を捕捉するためのシングル吸収容器

CO2を含有する煙道ガスストリームからCO2を除去するための方法及びシステムを提供するものであり、方法は、a)NH3を含んでなる第1のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第1の部分を除去する工程、b)工程a)からの使用済みイオン性溶液を第1液だめ容器において集める工程、c)イオン性溶液を第1液だめ容器から工程a)に再循環する工程、d)NH3を含んでなる第2のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第2の部分を除去する工程、e)工程d)からの使用済みイオン性溶液を第2液だめ容器において集める工程、及びf)イオン性溶液を第2液だめ容器から工程d)に再循環する工程を含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチステージ吸収容器を使用してプロセスガスから二酸化炭素を除去する方法及びシステムに係る。
【背景技術】
【0002】
発電設備のような燃焼プラントにおける石炭、石油及び天然ガスのような燃料の燃焼では、汚染物の中でも二酸化炭素を含有する熱いプロセスガス(しばしば、煙道ガスと称される)が発生する。大気中への二酸化炭素の放出の環境への悪影響が広く認識されており、このため、上記燃料の燃焼において発生される熱いプロセスガスから二酸化炭素を除去するために採用されるシステム及び方法の開発されている。
【0003】
既に開示されている1つのシステム及び方法は、燃焼後の煙道ガスストリームから二酸化炭素(CO2)を除去するためのシングルステージのチルドアンモニア系システム及び方法である。このようなシステム及び方法は、米国特許出願公開第2008/0072762号(発明の名称:CO2の除去を含む燃焼ガスの超浄化)において提案され、教示されている。
【0004】
CO2除去のためのチルドアンモニア系システム/方法では、イオン性溶液と、CO2を含有する煙道ガスストリームとが向流接触する吸収容器が提供される。イオン性溶液は、例えば、水及びアンモニウムイオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、及び/又はカルバミン酸イオンを含んでなるものである。
【0005】
吸収容器は、例えば、化石燃料燃焼ボイラーの燃焼室から発生する煙道ガスストリーム(FG)を受け取るように設定されている。また、再生システムからのCO2希薄(リーン)イオン性溶液の供給を受け取るようにも設定されている。リーンイオン性溶液は、液体分配システムを介して容器に導入され、一方、煙道ガスストリーム(FG)は煙道ガス入口を介して吸収容器によって受け取られる。
【0006】
吸収容器内に配置された物質移動のために使用されるガス−液体接触装置(以下、物質移動装置(MTD))を介して、ガスが吸収容器の底部の入口を介する導入から吸収容器の頂部における排出まで移動する経路内において、イオン性溶液は煙道ガスと接触する。MTDは、例えば、一般的に知られた1以上の構造化又はランダム充填物又はその組合せを含んでなる。
【0007】
イオン性溶液はMTDの頂部で導入され、MTDを通って落下し、下方からMTDを通って上昇する(イオン性溶液の方向に対向する)煙道ガスストリームFGと接触する。
【0008】
煙道ガスストリームと接触すると、イオン性溶液は煙道ガスからCO2を吸収するように作用し、このようにして、イオン性溶液はCO2を富有するようになる(リッチイオン性溶液)。リッチイオン性溶液は物質移動装置を通って下方へ流動し続け、吸収器の底部において集められる。ついで、リッチイオン性溶液を、再生器システムを介して再生して、イオン性溶液によって吸収されたCO2を煙道ガスストリームから放出させる。イオン性溶液から放出されたCO2を、ついで、保存又は他の所定の用途/目的のために排出する。CO2がイオン性溶液から放出されると、イオン性溶液は「リーン」であると言われる。ついで、リーンイオン性溶液は、再度、煙道ガスストリームのCO2を吸収できるようになり、液体分配システムに戻され、これによって、吸収容器に再導入される。
【0009】
米国特許出願公開第2009/0101012号には、異なった温度及びイオン性溶液における異なったNH3:CO2比で作動する異なった吸収ステージにおいて、アンモニア溶液のようなイオン性溶液での吸収によってCO2を煙道ガスから除去する吸収器を含んでなるマルチステージCO2除去システムが開示されている。マルチステージ吸収容器は、CO2リッチイオン性溶液が再生器への移動のために集められるシングル液だめを含んでなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術のNH3系吸収システム及び方法に伴う潜在的な欠点は、炭酸アンモニウム及び/又は炭酸水素アンモニウムのような固体が吸収塔の閉塞を生じ、その結果、システムの全体としてのパフォーマンスが悪くなることである。
【0011】
本発明の1具体例は、プロセスガスから二酸化炭素(CO2)を捕捉するシステム及び方法を提供する。
【0012】
本発明の具体例の目的は、イオン性溶液の再循環を容易なものとするマルチステージ吸収容器を提供することである。
【0013】
本発明の具体例の他の目的は、閉塞及び吸収容器内で形成される固体の析出に関連する問題を低減するマルチステージ吸収容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様では、他の目的と共に、上記目的(本明細書における開示が提示される場合、当業者には明白になるであろう)は、煙道ガスストリームから二酸化炭素を除去するためのシステム(ここでは、「CO2捕捉システム」と称する)であって、当該システムは、煙道ガスストリームを受け取るように設定された吸収容器を含んでなり、前記吸収容器は、煙道ガスストリームを受け取り、この煙道ガスストリームを第1のイオン性溶液と接触させるように設定された第1吸収ステージ、前記第1吸収ステージを通過した煙道ガスストリームを受け取り、この煙道ガスストリームを第2のイオン性溶液と接触させるように設定された第2吸収ステージ、第1液だめ容器、及び第2液だめ容器を含んでなるものであり、前記第1吸収ステージは、第1吸収ステージからのイオン性溶液を集め、この溶液を第1液だめ容器に送達するように配置された液体収集受器を含んでなり、前記第2吸収ステージは、第2吸収ステージからのイオン性溶液を集め、この溶液を第2液だめ容器に送達するように設置された液体収集受器を含んでなるシステムによって達成される。
【0015】
マルチステージ吸収容器(多数の異なった吸収ステージが異なった条件下で作動する)は、しばしば、直列に配置された複数個のシングルステージ吸収容器の優れた代用を構成することができる。マルチステージ吸収容器の利点としては、例えば、容器、充填物質及び基礎のための設備コストが低いことが含まれる。
【0016】
本発明は、吸収容器の液だめを2つ以上の別個のセクション(ここでは、液だめ容器と称する)に分割することによって、マルチステージ吸収容器の効率及び多様性が顕著に改善されるとの洞察に基づくものである。各液だめ容器を、使用済みのイオン性溶液を1以上の所定の吸収ステージから受け取るように設置する。複数個の液だめ容器の使用により、同様の組成及び特性を有する1以上の吸収ステージからのイオン性溶液を第1液だめ容器で集めることができると共に、同様ではあるが、第1液だめ容器において集められるイオン性溶液の組成及び特性とは異なる組成及び特性を有する1以上の他の吸収ステージからのイオン性溶液を第2液だめ容器において集めることができるため、吸収容器内での使用済みイオン性溶液の循環が容易なものとなる。第1及び第2液だめ容器において集めたイオン性溶液を、可及的に各イオン性溶液の組成及び特性を所望の吸収ステージに適合するように調整した後、再循環できる。このように、複数個の液だめ容器を使用することによって、例えば、各吸収ステージの温度、イオン性溶液組成及び流量のような操作条件を広い範囲内で変動させることができる。例えば、1以上の吸収ステージを、固体の沈殿を生ずる条件下で作動し、同時に、1以上の吸収ステージを固体の沈殿を生じない条件下で作動することができる。
【0017】
吸収容器は、イオン性溶液によるCO2の吸収を可能にする条件下において、煙道ガスストリームをイオン性溶液と接触させることによって、煙道ガスストリームからCO2を吸収するように設定された少なくとも第1及び第2吸収ステージを含んでなる。各吸収ステージは、少なくとも1のガス−液接触物質移動装置(ここでは、「物質移動装置」又は「MTD」とも称する)を含んでなる。
【0018】
第1及び第2吸収ステージの各々は、さらに、各吸収ステージにおいて使用されたイオン性溶液を集めるための液体収集受器を含んでなる。第1吸収ステージは、第1吸収ステージからのイオン性溶液を集め、これを第1液だめ容器に送達するために配置された液体収集受器を含んでなり、第2吸収ステージは、第2吸収ステージからのイオン性溶液を集め、これを第2液だめ容器に送達するために配置された液体収集受器を含んでなる。第1及び第2吸収ステージの各々の液体収集受器は、各吸収ステージからの使用済みイオン性溶液の全部又は一部を集めるように設定される。液体収集受器は、例えば、傾斜した収集トレイ又はバブルキャップトレイを含んでなることができる。
【0019】
第1吸収ステージは、好ましくは、液体分配装置及びイオン性溶液を第1液だめ容器から液体分配装置に送達するためのイオン性溶液送達路を含んでなる。
【0020】
第2吸収ステージは、好ましくは、液体分配装置及びイオン性溶液を第2液だめ容器から液体分配装置に送達するためのイオン性溶液送達路を含んでなる。
【0021】
液だめ容器は、吸収容器とは分離された別個の容器の形、又は吸収容器内において一体化された容器の形、又はその組み合わせの形で提供される。各液だめ容器は吸収容器の吸収ステージの1以上と液体連絡しており、従って、使用済みイオン性溶液を各吸収ステージから集め、液だめ容器に導くことができ、また、液だめ容器からイオン性溶液を吸収ステージの1以上に再循環できる。液だめ容器の1以上は、好ましくは、吸収容器の底部セクションによって形成される。1具体例では、吸収容器は、第1及び第2液だめ容器が底部セクションの2つのセクションによって形成されている底部セクションを含んでなる。
【0022】
煙道ガスストリームからのCO2の除去におけるCO2捕捉システムの有効性は、1)吸収容器に噴霧されるイオン性溶液の温度(T)、及び2)イオン性溶液中に含有されるアンモニア:イオン性溶液中に含有されるCO2のモル比(R)にかかっている。
【0023】
一般に、温度が低ければ低いほど、R値が低ければ低いほど、アンモニア系CO2捕捉システムの煙道ガスストリームからCO2を回収する効率は低い。イオン性溶液の温度は、加熱及び/又は冷凍システムを介して制御される。R値は、例えば、イオン性溶液中のアンモニアの量を制御することによって制御される。
【0024】
好ましくは、CO2捕捉システムの吸収ステージの少なくとも1つを、固状の炭酸水素アンモニウムが形成されるような条件下で作動するように設定することができる。イオン性溶液中での固状の炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムの形成は、イオン性溶液のCO2担持容量を増大させるため有利であろう。1具体例では、第1吸収ステージを、固状の炭酸水素アンモニウムが形成されるような条件下で作動するように設定できる。固状の炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムの形成を促進するに好適な条件の例としては、例えば1.2〜2.0の範囲(例えば1.4〜1.6の範囲)のような2.0未満のR値のようなイオン性溶液の低NH3:CO2モル比(R)が含まれる。
【0025】
このように、1具体例では、システムは、さらに、第1液だめ容器におけるイオン性溶液のNH3:CO2モル比(R)を1.2〜2.0の範囲に維持するように設定された制御システムを含んでなる。
【0026】
煙道ガスストリームからCO2を除去して低残留濃度(例えば、元の濃度の10%未満又は5%未満)とするために、少なくとも1の吸収ステージを、高CO2吸収効率を提供する条件下で作動するように設定することができる。高CO2吸収効率を促進する好適な条件の例としては、2.0〜4.0の範囲(例えば2.0〜2.5の範囲)のような1.8より大、好ましくは2.0より大のようなイオン溶液の高NH3:CO2モル比(R)が含まれる。
【0027】
1具体例では、システムは、さらに、第2液だめ容器におけるイオン性溶液のNH3:CO2モル比(R)を2.0〜4.0の範囲、例えば2.0〜2.5の範囲内に維持するように設定された制御システムを含んでなる。
【0028】
1具定例では、制御システムは、NH3又は液だめ容器内のイオン性溶液のNH3:CO2モル比(R)よりも高いRを有する媒体をイオン性溶液に導入するように設定された装置を含んでなる。1例として、R値2.5又はそれ以上を有する媒体を導入することによってR値を2.0に調整できる。高R値媒体は、例えば、イオン性溶液再生器から提供される。このような装置は、例えば、NH3又は高R値イオン性溶液用の供給タンク、制御弁及びポンプへの流体接続を含むことができる。
【0029】
温度は、捕捉システムにおけるCO2吸収に対する重要な変数である。各吸収ステージにおけるイオン性溶液の温度は、例えば、所望のCO2除去効力の程度、及び固状炭酸水素アンモニウムの形成が望まれるかどうかに応じて選択される。温度は、また、アンモニアスリップ、すなわち、蒸発され、煙道ガスストリームに併合されるアンモニアの量を許容レベルに維持するように選択される。吸収容器の吸収ステージに導入される際のイオン性溶液の温度は、一般に0−25℃の範囲内であるが、いくつかのケースでは、これ以上又はこれ以下であってもよい。1例として、5−20℃の範囲の温度では、許容できるアンモニアの蒸発で高CO2捕捉効力を達成できる。
【0030】
1具体例では、第2吸収ステージのイオン性溶液送達路は、第2吸収ステージの液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を制御するための熱交換器を含んでなる。液体分配装置へ送達されるイオン性溶液の温度は、好ましくは、5−20℃の範囲内に制御される。
【0031】
より低い温度、例えば0−20℃、及び低R値、例えば1.2−2.0では、煙道ガスストリームと接触した後、イオン性溶液から固状の炭酸水素アンモニウム粒子が沈殿する。これらの固体は、接触するイオン性溶液によって煙道ガスストリームから除去されたCO2の非常に高い濃度(約55質量%)を含有する。このように、固体の沈殿は、CO2の高濃度を含有し、イオン性溶液から容易に分離、除去されるため望ましいものである。
【0032】
1具体例では、第1吸収ステージは、固体粒子を含有するイオン性溶液を使用して作動するように設定されている。
【0033】
煙道ガスストリームと接触する際に、イオン性溶液は煙道ガスストリーム中に含有されるCO2と反応する。この反応は発熱性であり、そのままでは、吸収容器において熱の発生を生ずる。この熱は、イオン性溶液中に含有されるアンモニアのいくらかをガスに変化せせる原因となる。ついで、ガス状のアンモニアは、液体のイオン性溶液と一緒に下方に移動する代わりに、煙道ガスと一緒に及び一部として上方に吸収容器を通って移動して、最終的には、吸収容器の出口を介して散逸する。システムからのこのアンモニアの損失(アンモニアスリップ)は、イオン性溶液におけるアンモニアのモル濃度を低下させる。アンモニアのモル濃度が低下するため、R値(NH3:CO2のモル比の値)も低下する。R値の低下は、煙道ガスストリームからのCO2の捕捉におけるイオン性溶液の効力の低下に相当する。
【0034】
アンモニアスリップの量を最少にするため、CO2捕捉システムの最終吸収工程を、好ましくは、低温(T)、例えば、0−10℃の温度で作動するように設定できる。これは、例えば、吸収容器に導入されるイオン性溶液の温度を制御することによって達成される。最終の吸収ステージを、好ましくは、低いアンモニア:CO2モル比(R)、例えば1.2−2.0を有する第1液だめ容器からのイオン性溶液にて作動するように設定することもできる。任意に、いくつかの具体例では、最終の吸収ステージを、液体から固体を分離するための装置、例えば、ハイドロサイクロンから送達される低Rイオン性溶液にて作動するように設定することができる。このような配置は、液体から固体を分離するための装置から送達される低R値イオン性溶液中の固体の量が低減されており、最終の吸収ステージにおける閉塞及び固体の析出がさらに低減されるため有利であろう。
【0035】
このように、1具体例では、吸収容器は、さらに、第1及び第2吸収ステージを通過し、イオン性溶液と接触する煙道ガスストリームを受け取るように設定された第3吸収ステージを含んでなる。
【0036】
第3吸収ステージは、さらに、液体分配装置及びイオン性溶液を第1液だめ容器から液体分配装置に送達するように設定されたイオン性溶液送達路を含むことができる。いくつかの具体例では、イオン性溶液を第1液だめ容器から液体分配装置に送達するように設定されたイオン性溶液送達路は、さらに、イオン性溶液中の固体の量を低減するように設定された装置を含んでなることができる。
【0037】
1具体例では、第3吸収ステージのイオン性溶液送達路は、第3吸収ステージの液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を制御する熱交換装置を含んでなる。液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度は、好ましくは10℃以下の範囲、例えば約5℃に制御される。
【0038】
アンモニアスリップを最少にするに好適な条件、すなわち、低温及び低R値は、吸収ステージにおける固状の炭酸水素アンモニウムの沈殿を生じさせる。このように、1具体例では、第3吸収ステージは、固体沈殿物を含有するイオン溶液にて作動されるように設定される。
【0039】
本発明の他の態様では、CO2を含有する煙道ガスストリームからCO2を除去する方法(ここでは、「CO2捕捉法」とも称する)であって、
a)NH3を含んでなる第1のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第1の部分を除去する工程、
b)工程a)からの使用済みイオン性溶液を第1液だめ容器において集める工程、
c)イオン性溶液を第1液だめ容器から工程a)に再循環する工程、
d)NH3を含んでなる第2のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第2の部分を除去する工程、
e)工程d)からの使用済みイオン性溶液を第2液だめ容器において集める工程、
f)イオン性溶液を第2液だめ容器から工程d)に再循環する工程
を含んでなるCO2の除去法が提供される。
【0040】
第2の態様の方法は、本発明の第1の態様について上述したCO2捕捉システムにおいて有利に実施される。
【0041】
開示するCO2捕捉法は、各吸収ステージの作動条件が広い範囲内で変動できるようにするものである。例えば、1以上の吸収ステージを、固体の形成を生ずる条件下で作動し、一方、1以上の吸収ステージを、固体の形成を生じない条件下作動することができる。本発明の方法は、同様の組成及び特性を有する1以上の吸収ステージからのイオン性溶液を第1液だめ容器において集め、同時に、同様ではあるが、第1液だめ容器において集められたイオン性溶液の組成及び特性とは異なる組成及び特性を有する1以上の他の吸収ステージからのイオン性溶液を第2液だめ容器において集めることができるため、吸収容器内での使用済みイオン性溶液の再循環を容易なものとするものである。例えば、イオン性溶液中で固状の炭酸アンモニウム及び/又は炭酸水素アンモニウムの形成を生ずる吸収ステージからのイオン性溶液を第1液だめ容器において集め、一方、イオン性溶液中で固状の炭酸アンモニウム及び/又は炭酸水素アンモニウムの形成を生じない吸収ステージからのイオン性溶液を第2液だめ容器において集めることができる。
【0042】
低温、例えば0−20℃及び低R値、例えば1.2−2.0では、固状の炭酸水素アンモニウム粒は、イオン性溶液が煙道ガスストリームと接触した後、イオン性溶液から沈殿する。これらの固体は、接触状態に置かれたイオン性溶液によって煙道ガスストリームから除去されたCO2の非常に高い濃度(約55質量%)を含有する。このように、固体の沈殿は、固体が高濃度のCO2を含有しており、イオン性溶液から容易に分離、除去されるため望ましい。
【0043】
このように、1具体例では、方法の工程a)は、固状の炭酸水素アンモニウムが形成される条件下で行われる。
【0044】
1具体例では、第1のイオン性溶液は、1.2−2.0の範囲のNH3:CO2のモル比(R)の値を有する。
【0045】
1具体例では、方法は、さらに、第1液だめ容器内のイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)の値を1.2−2.0の範囲内に調整する工程を含んでなる。
【0046】
1具体例では、NH3:CO2のモル比(R)の調整を、NH3又は液だめ容器内のイオン性溶液のRよりも高いNH3:CO2のモル比(R)を有する媒体をイオン性溶液に導入することによって達成される。1具体例では、前記媒体は第2液だめ容器からのイオン性溶液である。
【0047】
1具体例では、方法の工程d)は、本質的に固状の炭酸水素アンモニウムが形成されない条件下で行われる。
【0048】
煙道ガスから低残留濃度、例えば、元の濃度の10%未満又は5%未満までCO2を除去するために、少なくとも1の吸収ステージを、高いCO2吸収効率を提供する条件下で作動するように設定できる。高いCO2吸収効率を提供する好適な条件の例としては、イオン性溶液の高いNH3:CO2モル比(R)、例えば1.8より大、好ましくは2.0−4.0の範囲(例えば2.0−2.5の範囲)のような2.0より大のR値が含まれる。
【0049】
このように、1具体例では、第2のイオン性溶液は、2.0−4.0の範囲のNH3:CO2モル比(R)の値を有する。
【0050】
1具体例では、方法は、さらに、第2液だめ容器内のイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)の値を2.0−4.0の範囲内に調整する工程を含んでなる。
【0051】
1具体例では、NH3:CO2のモル比(R)の調整を、NH3又は液だめ容器内のイオン性溶液のRよりも高いNH3:CO2のモル比(R)を有する媒体をイオン性溶液に導入することによって達成される。
【0052】
1具体例では、工程a)における第1のイオン性溶液の温度を5−20℃の範囲内に制御する。
【0053】
1具体例では、工程d)における第2のイオン性溶液の温度を5−20℃の範囲内に制御する。
【0054】
アンモニアスリップの量を最少にするため、CO2捕捉システムの最終吸収ステージを、好ましくは、低温、例えば、0−10℃の温度において作動するように設定できる。また、最終吸収ステージを、好ましくは低いNH3:CO2モル比(R)、例えば1.2−2.0を有する第1液だめ容器からのイオン性溶液にて作動するように設定できる。
【0055】
1具体例では、方法は、さらに、NH3を含んでなりかつ1.2−2.0の範囲のNH3:CO2モル比(R)を有する第3のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第3の部分を除去する工程を含んでなる。第3のイオン性溶液の温度は、好ましくは、10℃以下の範囲内に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】2つの液だめ容器を持つマルチステージ吸収装置を含むCO2捕捉システムの1具体例を一般的に示すダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の1具体例を図1に示す。この具体例では、3つの吸収ステージを含むCO2捕捉システムが提供される。しかし、本発明の範囲又は精神を逸脱することなく、捕捉システムにおいて、より多い又は少ない吸収ステージを含むことができる。
【0058】
図1を参照すると、シングル吸収容器形の吸収容器101が提供される。吸収容器101は、容器101の底部近くに配置された入口102を介して煙道ガスストリームFGを受け取り、煙道ガスストリームFGが上方に流動して、吸収容器101を通過し、容器101の頂部近くに配置された出口103を介して排出できるように設定されている。
【0059】
吸収容器101に導入される煙道ガスストリームFGは、代表的には、1%未満の水分及び低濃度のSO2、SO3、HCl及び粒子状物質(一般に、CO2捕捉システムの上流にある空気汚染制御システム(図示していない)を介して除去される)を含有する。例えば、煙道ガスストリームは、代表的には、SO250ppmv未満、SO35ppmv未満、HCl1ppmv未満及び/又はPM 100 mg/nm3未満を含有する。
【0060】
吸収容器101は、煙道ガスストリーム中に含有されるCO2を、イオン性溶液を使用して吸収するように設定されている。好適な1具体例では、イオン性溶液は、例えば、水及びアンモニウムイオン、炭酸水素イオン、炭酸イオン、及び/又はカルバミン酸イオンを含んでなる。
【0061】
CO2捕捉システムは3つの吸収ステージ104、105及び106を含んでなり、以下に詳述する様式で、第1吸収ステージ(104)及び第3吸収ステージ(106)が第1液だめ容器107に接続され、第2吸収ステージ(105)が第2液だめ容器108に接続されている。
【0062】
CO2捕捉システムは2個の別個のイオン溶液液だめ容器107及び108を含んでなる(ここでは、第1液だめ容器(107)及び第2液だめ容器(108)とする)。用語「別個の」は、一般に、第1液だめ容器内のイオン性溶液が第2液だめ容器内のイオン性溶液と連続液体接触の関係ないことを意味している。第1及び第2液だめ容器は連続液体接触の関係にはないが、システムは、さらに、イオン性溶液を第2液だめ容器108から第1液だめ容器107に移動させるための導管109を含んでなる。
【0063】
第1液だめ容器107は、液体収集受器110を介して第1吸収ステージ104から及び液体収集受器112を介して第3吸収ステージ106から使用済みイオン性溶液を受け取るように配置されている。第2液だめ容器108は、液体収集受器111を介して第2吸収ステージ105から使用済みイオン性溶液を受け取るように配置されている。第1液だめ容器は、溶液送達路113及び液分配装置114を介して第1吸収ステージに、及び溶液送達路117及び液分配装置118を介して第3吸収ステージにイオン性溶液を供給するように配置されている。第2液だめ容器は、溶液送達路115及び液分配装置116を介して第2吸収ステージにイオン性溶液を供給するように配置されている。第1及び/又は第2液だめ容器は、さらに、再生器(図示していない)からのCO2リーンイオン性溶液及び/又は補給NH3を受け取るように設定されている。
【0064】
図1に示す具体例では、第1(107)及び第2(108)液だめ容器は、第1吸収ステージの下方の吸収容器の底部119の2つのセクションによって形成されている。
【0065】
CO2捕捉システムは、さらに、第1及び第2液だめ容器におけるNH3:CO2のモル比(R)を所望の範囲内に制御するための制御システムを含むことができる。制御システムは、例えば、pH値、アンモニア濃度及び/又はCO2濃度のような適宜のパラメーターを自動的に又は手動で測定するためのセンサー、及び例えば、補給NH3及び/又はCO2の除去によって前記パラメーターを調節するように設定された液体継手、弁及びポンプのような装置を含んでなることができる。好ましくは、システムは自動コントローラー134を含むことができ、自動コントローラーによって、第1及び第2液だめ容器において、NH3:CO2のモル比を所望の値に維持する。例えば、自動コントローラー134は、第1及び第2液だめ容器107、108におけるセンサー135、136からのRを示すインプット信号を受け取る汎用コンピューター、用途特化コンピューティング装置又は他のプログラム化コントローラーである。自動コントローラー134は、ポンプ137、制御弁、又は他の流体流量調節装置に制御信号を提供して、第1液だめ容器107内のRを所望の範囲内に維持することができ、補給NH3供給及び/又は再生器からのリーン溶液供給に制御信号を提供して、第2液だめ容器108においてRを所望の範囲内に維持することができる。1具体例では、第1液だめ容器におけるRを、固状の炭酸水素アンモニウムを含有するイオン性溶液の一部を、導管109を介して第2液だめ容器からの高いRをもつイオン性溶液で置き換えることによって、1.2−2.0の範囲に維持し、第2液だめ容器におけるRを、第1液だめ容器に送るイオン性溶液の一部を、再生器からのCO2リーンイオン性溶液及び/又は補給NH3で置き換えることによって、2.0−4.0の範囲に維持する。
【0066】
各吸収ステージ(104, 105, 106)は、それぞれ、1個以上の好適なガス−液体物質移動装置(MTB)(120, 121, 122)、液分配装置(114, 116, 118)、及び溶液送達路(SDP)(113, 115, 117)を含むように設定されている。
【0067】
各物質移動装置120、121及び122は、煙道ガスが、吸収容器101を通って上方に、例えば、アンモニウムイオン、炭酸イオン、炭酸水素アンモニウム及び/又はカルバミン酸イオンの溶解及び/又は懸濁ミックスを含有するイオン性溶液(CO2が吸収される)と向流方向で流動するため、イオン性溶液を煙道ガスストリームFGと接触させるように設定されている。物質移動装置(MTD)120、121及び122は、例えば、構造化された又はランダムな充填物質である。
【0068】
液体分配装置114、116及び118は、イオン性溶液を吸収容器101に導入するように設定されている。各液体分配装置は、例えば、1以上のスプレーヘッドノズル及び/又は穿孔、穴及び/又はスロットをもつ導管又はその組合せとして設定されている。
【0069】
各SDP(113, 115, 117)は、それぞれ、液体分配装置(114, 116, 118)を介して、各吸収ステージにイオン性溶液の流れ(イオン性溶液流)を送達するように設定されている。各SDPは、好ましくは、SDPを通ってポンプによって送られるイオン性溶液を冷却するために、例えば熱交換装置のような1以上の冷却システムを含む。イオン性溶液の流れを制御し、イオン性溶液の温度を所定のレベル又は所定の温度範囲内に維持するための制御システムを設置することもできる。制御システムは、例えば、汎用コンピューター、用途特化コンピューティング装置又は他のプログラム化コントローラーを含むことができ、1個以上の温度センサーからのインプット信号を受け取り、イオン性溶液の冷却又は加熱を行うように熱交換装置に制御信号を提供する。制御システムは、好ましくは、イオン性溶液のR値を制御するための上述の制御システムと一体化され、コントローラー、例えばコンピューティング装置は好ましくは同一である。図1を参照すると、第1吸収ステージ104は、ポンプ123及び熱交換器124を介して、第1液だめ容器107を液体分配装置114と接続する導管及び/又はパイプを含んでなるSDP 113を含む。第2吸収ステージ105は、ポンプ125及び熱交換器126を介して、第2液だめ容器108を液体分配装置116と接続する導管及び/又はパイプを含んでなるSDP 115を含む。第3吸収ステージ106は、ポンプ123、熱交換器124及び熱交換器127を介して、第1液だめ容器107を液体分配装置118と接続する導管及び/又はパイプを含んでなるSDP 117を含む。
【0070】
各吸収ステージ(104, 105, 106)は、各MTD(120, 121, 122)を通過したイオン性溶液を集めるための装置を含むことができる。各液体収集受器110、111及び112は、各MTDを通過した液体の全部又は一部を集めるように設定されている。各液体収集受器は、例えば、各MTDを通過したイオン性溶液の実質的に全部、すなわち、約95%以上、例えば98%以上を集めるように設定される。或いは、各MTDを通過したイオン性溶液の大部分、例えばイオン性溶液の50%以上(例えば70%以上、又は90%以上)を集める。液体収集受器は、好ましくは、吸収装置101を通って上昇する煙道ガスが液体収集受器を通過する又は平行して通るように配置又は設定される。液体収集受器は、例えば、傾斜した収集トレイ又はバブルキャップトレイを含んでなることができる。液体収集受器は、さらに、液体収集受器によって集められた液体を除去するように設定された1個以上の液体出口を含んでなることができる。第1吸収ステージの液体収集受器110は、液体収集受器110によって集められた使用済みイオン性溶液を、再循環のために、第1液だめ容器に導くことができる導管129を介して、第1液だめ容器107に接続されている。第2吸収ステージの液体収集受器111は、液体収集受器によって集められた使用済みイオン性溶液を、再循環のために、第2液だめ容器に導くことができる導管130を介して、第2液だめ容器108に接続されている。第3吸収ステージの液体収集受器112は、液体収集受器によって集められた使用済みイオン性溶液を、再循環のために、第1液だめ容器に導くことができる導管131を介して、第1液だめ容器107に接続されている。
【0071】
液体収集受器は、さらに、固体の蓄積及び堆積の形成を防止するためのフラッシュシステム(図示していない)を含むことができる。いくつかの具体例では、第1吸収ステージのMDTを通過した液体を吸収容器の底部において直接集めることができる。このような具体例では、第1吸収ステージのための液体収集受器は不要である。
【0072】
第1吸収ステージ104は、SDP 113を介して第1液だめ容器107から受け取った低いRのイオン性溶液を煙道ガスストリームと接触させるように設定されている。このイオン性溶液は、ポンプ123を介して、第1液だめ容器107から液体分配装置114に送られ、液体分配装置は、イオン性溶液を下方に物質移動装置120の上に噴霧する。このようにして、煙道ガスストリームは、液体分配装置114から噴霧されたイオン性溶液と接触する。吸収ステージ104におけるイオン性溶液の温度を、好ましくは、5−20℃の範囲又はそれ以上にあるように制御する。吸収ステージ104でFGから捕捉されたCO2は、炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムの沈殿を含むイオン性溶液を形成する。イオン性溶液は煙道ガスストリームFGと接触した後、CO2を富有するようになる(リッチ溶液)。このCO2リッチ溶液を、導管129を介して、吸収ステージ104から第1液だめ容器107に排出する。第1液だめ容器107において集められた固体は、分離され、固体収集タンク132に移される。イオン性溶液の一部を、再生器システム(図示していない)にポンプによって送って、液のアンモニア:CO2のモル比(R)を増大させることができる。
【0073】
第1吸収ステージのMTD 120は、好ましくは、固状粒子による閉塞に対してあまり敏感でないものとなるように設定される。例えば、MTD 120の充填物質のタイプ及びサイズを、固状粒子の閉塞及び堆積に対する感度を低減するように選択することができる。当業者であれば、既知のサイズ、形状及び量の粒子を含んでなる液体にて操作することについて好適な充填物質を容易に選択できるであろう。
【0074】
第2吸収ステージ105は高いレベルのCO2捕捉効率で作動するように設定されている。1具体例では、吸収ステージ105は、例えば、煙道ガスストリームFG中に含有されるCO2の50−90%を捕捉するように設定される。ここで、第2液だめ容器108からの高いRのCO2リーンイオン性溶液を、噴霧システム116を介して、MTD 121の上に噴霧する。噴霧装置116を介して噴霧された高いRのCO2リーン溶液は、第1吸収ステージ104から上方に流動して、第2吸収ステージのMTD 121を通過する煙道ガスストリームFGと接触する。
【0075】
第2吸収ステージのMTD 121は、好ましくは、CO2捕捉効力を提供するように設定される。第2吸収ステージのMTD 121の充填物質のタイプ及びサイズは、煙道ガスストリームFGとイオン性溶液との間の高い接触表面積を提供するように選択される。第2吸収ステージのMTDにおける使用に好適な充填物質は、当業者によって容易に選択されるであろう。
【0076】
吸収容器101は、任意に、煙道ガスからさらにCO2を除去するため及び先の吸収ステージからのアンモニアスリップを減少させるために第3吸収ステージ106を含んでなることができる。
【0077】
第2吸収ステージ105から吸収容器101内を上方に上昇する煙道ガスストリームは、低濃度のCO2(FG入口における濃度の約10%以下)及び比較的高濃度のNH3(例えば、5000−30000 ppm)を含有する。第2吸収ステージ105からの煙道ガスにおける高濃度のアンモニア(アンモニアスリップ)は、第2吸収ステージ105におけるイオン性溶液の高いRの結果である。第2吸収ステージ105において蒸発したアンモニアの大部分は、第3吸収ステージ106(好ましくは、より低いR値及びより低い温度で作動される)を介してイオン性溶液に再捕捉される。
【0078】
第3吸収ステージ106では、低いR値(例えば1.2−2.0の範囲のような2.0以下)及び低い温度(例えば10℃未満、好ましくは約5℃)を有する比較的少量のイオン性溶液を、液体分配装置118を介して、MTD 122の上に噴霧し、ここで、イオン性溶液は、MTD 122を通って上方に流動する煙道ガスストリームと接触する。好ましくは、第3吸収ステージ106から排出されたイオン性溶液を、導管131を介して、第1液だめ容器107において集めることができる。
【0079】
第3吸収ステージのMTD 122は、好ましくは、固状粒子による閉塞に対してあまり敏感でないものとなるように設定される。例えば、MTD 122の充填物質のタイプ及びサイズを、固状粒子の閉塞及び堆積に対する感度を低減するように選択することができる。当業者であれば、既知のサイズ、形状及び量の粒子を含んでなる液体にて操作することについて好適な充填物質を容易に選択できるであろう。
【0080】
吸収容器101は、第1液だめ容器107の底部において集めたイオン性溶液を、任意にハイドロサイクロン133を介して固体収集タンク132への循環をするように設定される。ハイドロサイクロンは、固体収集タンク132に送られる前に、イオン性溶液の固体含量を増大させるために使用される。固体含量が低減されたハイドロサイクロンからのオーバーフローを第3吸収ステージに送ることができる。
【0081】
吸収ステージ104、105及び106の各々は、CO2吸収プロセスの特別なフェーズを行うように設定されている。例えば、ステージ104は、プロセスのフェーズ1を行い、これによって、煙道ガス中に含有されるCO2の一部を捕捉するように設定されている。ステージ105は、プロセスのフェーズ2を行い、これによって、煙道ガス中に含有されるCO2の更なる部分を捕捉するように設定されている。ステージ106は、プロセスのフェーズ3を行うように設定されている。フェーズ3では、煙道ガス中に含有されるCO2の更なる部分が捕捉される。
【0082】
好適な1具体例では、フェーズ1−3に供された後、出口103から排出される前に、煙道ガスストリームFGが入口102を入る際に含有していたCO2の40−90%が煙道ガスストリームから除去されるであろう。各フェーズは、所定の順序で行われるか、又は行われなくてもよい。
【0083】
CO2吸収プロセスのフェーズ1では、煙道ガスストリーム中に含有されるCO2の一部が、第1液だめ容器からのイオン溶液と煙道ガスストリームとの接触を介して除去される。フェーズ1におけるイオン溶液の温度を、CO2吸収プロセスのフェーズ2又はフェーズ3におけるイオン性溶液の温度よりも高いものとなるように制御する。例えば、フェーズ1では、イオン性溶液の温度を5−20℃の範囲内に制御する。フェーズ1におけるイオン性溶液のR値は低く、例えば1.2−2.0である。
【0084】
フェーズ1の間に、CO2を高濃度で含有する炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムの固体がイオン性溶液から沈殿される。
【0085】
可及的に炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムの固体を含んでなるCO2リッチイオン性溶液を、液体収集受器を介して集め、第1液だめ容器107に移す。
【0086】
続いて、例えば、ハイドロサイクロンを介して、固体をイオン性溶液から集め、除去することができる。イオン性溶液から固体が除去されると、イオン性溶液はCO2が希薄となり(すなわち、含有するCO2が少ない)、煙道ガスストリームからさらにCO2を捕捉するために使用される。
【0087】
第1液だめ容器におけるイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)を、補給NH3(例えば、純粋なNH3又は再生器からのCO2リーンイオン性溶液のようなNH3の溶液の形で供給される)を添加することによって、1.2−2.0の範囲内となるように制御する。1具体例では、補給NH3を、第1のイオン性溶液よりも高いR値を有する第2のイオン性溶液の形で供給できる。第1液だめ容器内のイオン性溶液のNH3:CO2のモル比は、さらに、容器において蓄積された固状の炭酸アンモニウム及び炭酸水素アンモニウムの除去によっても制御される。固状の炭酸水素アンモニウムはCO2濃度が高く、その除去によって、第1のイオン性溶液のR値が増大する。
【0088】
フェーズ2におけるイオン性溶液の温度は、好ましくは5−20℃の範囲内に制御され、イオン性溶液のR値は、フェーズ1におけるよりも高く、例えば2.0−4.0の範囲内、好ましくは2.0−2.5の範囲内である。フェーズ2におけるイオン性溶液は、好ましくは第2液だめ容器から提供される。フェーズ2におけるイオン性溶液は高度に反応性であり、煙道ガスのCO2含量の有意の部分を捕捉できる。しかし、フェーズ2における反応性のイオン性溶液は比較的高いアンモニアの蒸気圧を有し、このため、フェーズ2から出て、CO2吸収プロセスの第3ステージ106(フェーズ3)に流動する煙道ガス中のアンモニア濃度が比較的高くなる。
【0089】
フェーズ2からのCO2リッチの第2のイオン性溶液を、第2吸収ステージの液体収集受器を介して収集し、第2液だめ容器108に移す。
【0090】
第2液だめ容器におけるイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)を、補給NH3(例えば、純粋なNH3又は再生器からのCO2リーンイオン性溶液のようなNH3の溶液の形で供給される)を添加することによって、2.0−4.0の範囲内となるように制御する。
【0091】
フェーズ3の間に、イオン性溶液の温度及びR値を制御して、イオン性溶液からのアンモニアの蒸気圧を低下させ、このようにして、フェーズ3のガス相におけるアンモニア濃度を低減することによって、ガス状アンモニアの損失を最少にする。アンモニアの蒸気圧を低減し、アンモニアのほとんどを液体イオン性溶液の一部として維持することによって、システムからのアンモニアの損失が最少となる。アンモニアスリップにおけるこの低減は、NH3:CO2のモル比(R)をより高いレベル、例えば1.2−2.0に維持することを促進する。その結果、煙道ガスからのCO2の除去についてのシステムの有効性が維持され、或いは悪化されることはない。フェーズ3におけるイオン性溶液の温度を、例えば0−10℃の範囲内となるように制御する。
【0092】
第1及び第2液だめ容器におけるNH3:CO2のモル比(R)を所望の範囲内に制御することは、例えば、pH値、アンモニア濃度及び/又はCO2濃度のような適宜のパラメーターの自動式又は手動式の測定及び補給NH3及び/又はCO2の除去による前記パラメーターの調節によって達成できる。好ましくは、システムは自動コントローラー134を含むことができ、自動コントローラーによって、第1及び第2液だめ容器において、NH3:CO2のモル比を所望の値に維持する。1具体例では、第2液だめ容器におけるRを、固状の炭酸水素アンモニウムを含有するイオン性溶液の一部を、第2液だめ容器からの高いRをもつイオン性溶液で置き換えることによって、1.2−2.0の範囲に維持し、第2液だめ容器におけるRを、第1液だめ容器に送るイオン性溶液の一部を、再生器からのCO2リーンイオン性溶液及び/又は補給NH3で置き換えることによって、2.0−4.0の範囲に維持する。例えば、自動コントローラー134は、第1及び第2液だめ容器107、108におけるセンサー135、136からのRを示すインプット信号を受け取る汎用コンピューター、用途特化コンピューティング装置又は他のプログラム化コントローラーである。自動コントローラー134は、ポンプ137、制御弁、又は他の流体流量調節装置に制御信号を提供して、第1液だめ容器107内のRを所望の範囲内に維持することができ、補給NH3供給及び/又は再生器からのリーン溶液供給に制御信号を提供して、第2液だめ容器108においてRを所望の範囲内に維持することができる。
【0093】
第2吸収ステージ105と共に、第1吸収ステージ104から比較的高い温度(5−20℃)で熱が生ずる。この冷却は、環境条件が許す場合には、海水又は冷却塔用水にて達成され、従って、溶液を冷却するための全体的要求を顕著に低減できる。チルドウォーターを使用する場合には、より高温のイオン使用液を冷却するための電力消費量が、より低温のイオン性溶液を冷却するために要求される電力よりもかなり低い。
【0094】
本発明の上述の具体例、特に好適な具体例は、単に本発明の原理が明確に理解されるように例示した単に実施可能な例であることが強調されなければならない。本発明の精神及び原理を逸脱することなく、上述の本発明の具体例に、幾多の変化及び変更をなすことができる。このような全ての変更及び変形は、本明細書及び本発明の範囲内に含まれるものであり、特許請求の範囲によって保護される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙道ガスストリームから二酸化炭素を除去するためのシステムであって、当該システムは、煙道ガスストリームを受け取るように設定された吸収容器を含んでなり、前記吸収容器は、煙道ガスストリームを受け取り、この煙道ガスストリームを第1のイオン性溶液と接触させるように設定された第1吸収ステージ、前記第1吸収ステージを通過した煙道ガスを受け取り、この煙道ガスストリームを第2のイオン性溶液と接触させるように設定された第2吸収ステージ、第1液だめ容器、及び第2液だめ容器を含んでなるものであり、前記第1吸収ステージは、第1吸収ステージからのイオン性溶液を集め、この溶液を第1液だめ容器に送達するように配置された液体収集受器を含んでなり、前記第2吸収ステージは、第2吸収ステージからのイオン性溶液を集め、この溶液を第2液だめ容器に送達するように設置された液体収集受器を含んでなる、二酸化炭素除去システム。
【請求項2】
吸収容器が底部セクションを含んでなり、底部セクション内において、第1及び第2液だめ容器が、前記底部セクションの2つのサブセクションによって形成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
さらに、第1液だめ容器におけるイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)の値を1.2−2.0に維持するように設定された制御システムを含んでなる、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
さらに、第2液だめ容器におけるイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)の値を2.0−4.0に維持するように設定された制御システムを含んでなる、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
制御システムが、NH3又は液だめ容器におけるイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)よりも高いRを有する媒体をイオン性溶液に導入するように設定された装置を含んでなる、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
第1吸収ステージが、さらに、液体分配装置及びイオン性溶液を第1液だめ容器から前記液体分配装置に送達するように設定されたイオン性溶液送達路を含んでなる、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
第2吸収ステージが、さらに、液体分配装置及びイオン性溶液を第2液だめ容器から前記液体分配装置に送達するように設定されたイオン性溶液送達路を含んでなる、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
第1吸収ステージのイオン性溶液送達路が、第1吸収ステージの液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を制御するための熱交換装置を含んでなる、請求項6記載のシステム。
【請求項9】
液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を5−20℃の範囲内に制御する、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
第2吸収ステージのイオン性溶液送達路が、第2吸収ステージの液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を制御するための熱交換装置を含んでなる、請求項7記載のシステム。
【請求項11】
液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を5−20℃の範囲内に制御する、請求項10記載のシステム。
【請求項12】
第1吸収ステージが固体粒子を含有するイオン性溶液にて作動するように設定されている、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
吸収容器が、さらに、第1及び第2吸収ステージを通過した煙道ガスを受け取り、この煙道ガスをイオン性溶液と接触させるように設定された第3吸収ステージを含んでなる、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
第3吸収ステージが、第3吸収ステージからのイオン性溶液を集め、この溶液を第1液だめ容器に送達するように設置された液体収集受器を含んでなる、請求項13記載のシステム。
【請求項15】
第3吸収ステージが、液体分配装置及びイオン性溶液を第1液だめ容器から前記液体分配装置に送達するように設定されたイオン性溶液送達路を含んでなる、請求項13記載のシステム。
【請求項16】
第3吸収ステージのイオン性溶液送達路が、第3吸収ステージの液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を制御するための熱交換装置を含んでなる、請求項15記載のシステム。
【請求項17】
液体分配装置に送達されるイオン性溶液の温度を10℃以下の範囲内に制御する、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
第3吸収ステージが固体粒子を含有するイオン性溶液にて作動するように設定されている、請求項13記載のシステム。
【請求項19】
CO2を含有する煙道ガスストリームからCO2を除去する方法であって、
a)NH3を含んでなる第1のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第1の部分を除去する工程、
b)工程a)からの使用済みイオン性溶液を第1液だめ容器において集める工程、
c)イオン性溶液を第1液だめ容器から工程a)に再循環する工程、
d)NH3を含んでなる第2のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第2の部分を除去する工程、
e)工程d)からの使用済みイオン性溶液を第2液だめ容器において集める工程、及び
f)イオン性溶液を第2液だめ容器から工程d)に再循環する工程
を含んでなるCO2の除去法。
【請求項20】
工程a)を固状の炭酸水素アンモニウムが形成される条件下で行う、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第1のイオン性溶液が1.2−2.0の範囲のNH3:CO2のモル比(R)を有する、請求項19記載の方法。
【請求項22】
さらに、第1液だめ容器内のイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)の値を1.2−2.0の範囲に調整する工程を含んでなる、請求項19記載の方法。
【請求項23】
NH3:CO2のモル比(R)の調整を、NH3及び/又は第1液だめ容器内のイオン性溶液のRよりも高いNH3:CO2のモル比(R)を有する媒体を第2液だめ容器に導入することによって達成する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
媒体が第2液だめ容器からのイオン性溶液である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
工程d)を本質的に固状の炭酸水素アンモニウムが形成されない条件下で行う、請求項19記載の方法。
【請求項26】
第2のイオン性溶液が2.0−4.0の範囲のNH3:CO2のモル比(R)を有する、請求項19記載の方法。
【請求項27】
さらに、第2液だめ容器内のイオン性溶液のNH3:CO2のモル比(R)の値を2.0−4.0の範囲に調整する工程を含んでなる、請求項19記載の方法。
【請求項28】
NH3:CO2のモル比(R)の調整を、NH3及び/又は第2液だめ容器内のイオン性溶液のRよりも高いNH3:CO2のモル比(R)を有する媒体を第2液だめ容器に導入することによって達成する、請求項27記載の方法。
【請求項29】
工程a)における第1のイオン性溶液の温度を5−20℃の範囲内に制御する、請求項19記載の方法。
【請求項30】
工程d)における第2のイオン性溶液の温度を5−20℃の範囲内に制御する、請求項19記載の方法。
【請求項31】
さらに、NH3を含んでなりかつ1.2−2.0の範囲のNH3:CO2モル比(R)を有する第3のイオン性溶液流を煙道ガスストリームと接触させて、煙道ガスストリームからCO2の第3の部分を除去する工程を含んでなる、請求項19記載の方法。
【請求項32】
第3のイオン性溶液流を第1液だめ容器から送達する、請求項31記載の方法。
【請求項33】
第3のイオン性溶液流を、イオン性溶液中の固体の量を低減するように設定された装置を介して送達する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
第3のイオン性溶液の温度を10℃以下の範囲に制御する、請求項31記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−504422(P2013−504422A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529787(P2012−529787)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/047421
【国際公開番号】WO2011/034724
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】