説明

CO2回収用発電設備

CO2は、主要な温室効果ガスとして看做されているので、その回収と貯蔵が、地球の温暖化を制御するために重要である。CO2を回収して、圧縮するように設計された発電設備、発電設備に後で取り付けてCO2回収式設備とする有効な手法を有する後で取り付ける準備を整えた発電設備の競争力を向上することによって、CO2回収システム(12)の早期の活用が可能となる。本発明の課題は、CO2回収システム(12)の動作用の蒸気を抽出している時も、CO2回収システム(12)が動作しておらず、蒸気を抽出していない時でも、高い効率の動作を可能とする、動作上の柔軟性を向上させた化石燃料燃焼式発電設備(1,2)を提示することである。更に、そのような形式の設備(1,2)の動作方法も本発明の課題である。別の課題は、将来の時点にCO2回収システム(12)を後で取り付ける準備を整えた、蒸気を抽出する、或いは抽出しない形での高い効率の動作を可能とする蒸気サイクルを既に配備した発電設備(1,2)を提示することである。本発明の一つの主要な特徴は、一方がCO2回収動作と独立して連続動作し、他方がCO2回収動作の間少なくとも部分的に停止できる二つの蒸気タービン機器(14,15)による水蒸気サイクルを配備することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CO2回収部を統合した発電設備及びCO2回収部用の準備を整えた発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの発生が地球の温暖化を引き起して、温室効果ガスの発生量が更に増加すると地球の温暖化を加速させることが明らかになった。CO2(二酸化炭素)は、主要な温室効果ガスとして看做されているので、CCS(炭素の回収と貯蔵)が、温室効果ガスの大気中への放出を削減して、地球の温暖化を制御できる重要な手段の一つとして考えられている。そのような意味において、CCSは、CO2の回収、圧縮、輸送、貯蔵を行うプロセスとして定義される。回収は、炭素をベースとする燃料の燃焼後の排ガスからCO2を除去するか、或いは燃焼前に炭素を除去して、処理するプロセスとして定義される。排ガス又は燃料ガスの流れからCO2を除去するための吸収剤、吸着剤又はその他の手段の再生は、回収プロセスの一部と考えられる。
【0003】
現在大規模な産業用途に最も近いと考えられているCO2回収技術は、燃焼後の回収である。燃焼後の回収では、CO2は、排ガスから除去される。残りの排ガスは、大気中に放出され、CO2は、輸送と貯蔵のために圧縮される。吸収、吸着、膜分離、深冷分離などの排ガスからCO2を除去するための幾つかの技術が周知である。
【0004】
CO2の回収及び圧縮のための全ての周知の技術は、比較的大きな量のエネルギーを必要とする。様々なプロセスとそれらのプロセスの発電設備への統合による発電量の低下及び効率の悪化の最適化に関する多くの文献が有る。
【0005】
特許文献1は、燃焼後の回収の例とCO2吸収又は吸収液の再生による出力電力損失を低減する方法を記載している。そこでは、発電設備の蒸気タービンの異なる段階から吸収剤を再生するための蒸気を抽出して、タービン出力の低下を最小化することが提案されている。
【0006】
同じ観点で、特許文献2は、吸収剤を再生するために、CO2の流れを圧縮することから得られる圧縮熱を使用することを提案している。
【0007】
これらの方法は、特定のCO2回収機器の所要電力を低減することを目的としているが、設備の動作上の柔軟性を低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許公開第1688173号明細書
【特許文献2】国際特許公開第2007/073201号明細書
【特許文献3】米国特許公開第5577378号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主要な課題は、CO2回収システム用の蒸気の抽出が動作している場合でも、CO2回収システムが動作しておらず、蒸気が抽出されていない場合でも、高い効率の動作を可能とする、動作上の柔軟性を向上させた、CO2回収システムを備えた化石燃料燃焼式発電設備を提示することである。更に、そのような形式の設備の動作方法も本発明の課題である。別の課題は、将来の時点にCO2回収システムを後で取り付ける準備を整えた、蒸気を抽出する、或いは抽出しない形での高い効率の動作が可能な蒸気サイクルを既に配備した発電設備を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの主要な特徴は、二つの蒸気タービン機器による水蒸気サイクルを配備することである。一方の蒸気タービン機器は、CO2回収動作と独立して動作し、他方の蒸気タービン機器は、CO2回収動作の間少なくとも部分的に停止することができる。
【0011】
そのために、二つの蒸気タービン機器による水蒸気サイクルを備えた発電設備を提案する。第一の蒸気タービン機器は、少なくとも二つの圧力レベルを有する蒸気タービンを有し、第二の蒸気タービン機器は、蒸気を膨張させて、CO2回収システム用の供給圧力として適した背圧とするように設計された少なくとも一つの背圧タービン、或いは蒸気を膨張させて、CO2回収システム用の供給圧力として適した圧力とするように設計された中間圧タービンを有する。
【0012】
そのような蒸気サイクルを最適化するためには、異なる圧力レベルでボイラー内の熱を抽出するのが有利である。そのため、本発明の一つの実施形態では、第二のタービン機器の背圧蒸気タービンの入口圧力は、第一のタービン機器の中間圧蒸気タービンの入口圧力よりも高いか、或いは低い。例えば、第二のタービン機器の背圧蒸気タービンの入口圧力は、第一のタービン機器の中間圧蒸気タービンの入口圧力よりも高い。その結果、水蒸気サイクル全体は、設備の性能と採算性を最大化するために、第二の蒸気タービンに対して専用の追加圧力レベルを有する。
【0013】
第二のタービン機器の背圧蒸気タービンの出口蒸気を常時効率的に使用するために、背圧タービンの出口圧力と出力マスフローのために設計された低圧蒸気タービンは、第二のタービン機器の一部とする。それは、蒸気がCO2回収システムに送り出されない場合に、背圧タービンの出口蒸気フローを機械的なエネルギーに変換する。
【0014】
更に、第二の蒸気タービン機器の設計時のマスフローは、典型的には、第一の蒸気タービン機器よりも小さい。その結果、第二の蒸気タービン機器又は第二の蒸気タービン機器の背圧タービンは、第一の蒸気タービン機器よりも高い周波数で動作するのが有利な場合が有る。それは、配電網に電力を供給するために、変速機を介して配電網の周波数で動作する発電機と接続されるか、或いは上昇した周波数で動作する発電機を駆動する。後者の場合、第二の発電機は、周波数変換器、例えば、マトリックスコンバータを用いて、配電網と接続される。
【0015】
別の実施形態では、本発電設備は、排ガスからCO2を除去するCO2回収システムを備えた、或いはCO2回収システムを後で取り付ける準備を整えた複合サイクル式発電設備である。それは、排ガス用ダクトと煙突、並びに二つの蒸気タービン機器を備えている。第一の蒸気タービン機器は、蒸気を膨張させて、設置済み、或いは計画中のCO2回収システム用の供給圧力として適した背圧とするように設計された少なくとも一つの背圧タービンを有する。第二の蒸気タービン機器は、その入口圧力が背圧タービンの出口圧力と一致するとともに、CO2回収システムの蒸気マスフローに関して、CO2回収システムが動作していない時に背圧蒸気タービンの出口蒸気の熱エネルギーを機械的なエネルギーに変換するように設計された低圧タービンを有する。
【0016】
このような形式の蒸気タービン機器は、例えば、アンミンに基づくCO2回収システムに適している。それらは、典型的には、低圧レベルの比較的大量の蒸気を必要とする。それらのために、背圧蒸気タービンが低い背圧に膨張させる。低品質の蒸気は、比較的低い比エンタルピーを有し、そのため、背圧蒸気タービンのマスフロー全体がCO2回収のために必要となる。それによって、低圧蒸気タービンを省略することができる。この構成は、排ガスマスフローに対する蒸気マスフローの比率が小さい複合サイクル式発電設備に特に適している。低圧タービンを省略することができる別の実施形態は、吸収剤としてのアンモニアに基づくCO2回収システムである。その場合、典型的には、追加のプロセス蒸気を抽出に使用することが可能である。
【0017】
別の実施形態では、本発電設備は、排ガス再循環式ガスタービンを備えた複合サイクル式発電設備である。排ガスの一部は、その有効な熱を熱回収蒸気発生器で抽出された後、吸気又はガスタービンに再循環される。それは、排ガス中のCO2濃度を増大させて、排ガスからのCO2回収を容易にする。
【0018】
別の実施形態では、第二の蒸気タービン機器の低圧タービンは、オーバーランニングクラッチを介して、第二のタービン機器のシャフトと係合可能である。蒸気が低圧タービンに供給されて、低圧タービンが動作すると、オーバーランニングクラッチが係合されて、低圧タービンが、第二の発電機を駆動する。CO2回収動作中、蒸気が供給されない場合、ギヤの係合が解かれて、蒸気タービンが停止状態に留まることができる。
【0019】
一つの実施形態では、第一と第二の蒸気タービン機器は、これら二つの蒸気タービン機器の間のただ一つの発電機に対する一つの共通のシャフト上に一列に配置される。
【0020】
全ての実施形態は、排ガスからCO2を除去するCO2回収システム、CO2回収システムとの排ガス用ダクト及びCO2回収システムの下流の煙突を備えているか、或いはそのような回収システムを後で取り付けるために必要なスペースを有する。CO2回収システムは、CO2処理部、圧縮機器などの付加装置を備えることができる。本設備がCO2回収システムを別途後で取り付けられるように設計されている場合、本設備と予約スペースは、CO2回収システムを後で接続できるように構成されていなければならない。更に、CO2回収前の排ガス冷却及び工事のためのスペースも、必要な場合に別途後で取り付けるために予約しておくものとする。
【0021】
将来の時点に後で取り付ける設備の一つの実施形態では、将来のCO2回収システムを考慮して、煙突は最後の位置に配置される。排ガス用ダクトは、後での取り付け前に連続動作するように設計されており、CO2回収システムが後で取り付けられると、バイパスダクトとして使用できる。CO2回収システムを後で取り付ける影響を最小限にするために、排ガス用ダクトは、CO2回収システムを後で取り付けた場合に排ガスをCO2回収システムに送るフラップ、ダンパー又はダイバータを事前に構成されているものとする。更に、それは、将来のCO2回収システムからのCO2を除去された排ガスを排ガス用ダクトに戻すための分岐接続部を備えているものとする。CO2回収システムがフル稼働した場合、ダンパー又はダイバータの下流に有る、発電設備の本来の排ガス用ダクトの一部は、バイパスダクトとなる。
【0022】
CO2回収システムの追加圧力損失を考慮すると、排ガス用送風機のためのスペースは、実現可能な場合に設けられているものとする。それによって、排ガスを煙突に直接誘導するダクトの初期の背圧に関して、発電設備を最適化することが可能となる。一つの実施形態では、排ガス用送風機は、ダイバータ又はダンパーの下流に設置されるとともに、CO2回収動作のためだけに必要である。
【0023】
排ガス用ダクトの機械的なインタフェースの外に、復水用戻り配管、発電設備とCO2回収システム間の制御インタフェースを含む、CO2回収システムへの低圧蒸気用パイプ装置が必要である。
【0024】
ここで提案している設備構成の一つの主要な利点は、既存の発電設備を大幅に改修すること無く、CO2回収部を備えていない既存の従来の発電設備に後で取り付けて、CO2回収部を備えた発電設備に改造できることである。
【0025】
本発明の一つの構成要素は、CO2回収部を備えていない既存の従来の発電設備に後で取り付けて、CO2回収部を備えた発電設備とする方法である。本方法では、CO2回収システムは、既存の発電設備に隣接して配備される。
【0026】
本方法の一つの実施形態では、CO2回収システム、追加の排ガス用ダクト、並びに必要な蒸気、電力及び制御接続部は、従来の発電設備が通常通り動作している間に配備される。既存の従来の発電設備の動作は、既存の従来の発電設備をCO2回収システムと接続するためだけに中断される。そのために、追加の、或いは変更された排ガス用ダクトだけが接続される。更に、低圧蒸気、復水、電力供給部及び制御部がCO2回収システムと接続される。更に、その後の再稼働を実施しなければならない。ここで提案している蒸気サイクルは、CO2回収システムを後で取り付けるものと規定しているので、本来の発電設備自体の主要な構成部分、例えば、蒸気又はガスタービン、或いはボイラーの改修又は後での取り付けは、実施する必要がないか、或いは非常に限定的にのみ実施される。
【0027】
CO2回収システムは、既存の発電設備の動作と独立してコールド形態で稼働させることができる。従来の発電設備からCO2回収方式に切り換えるためには、フラップ、ダンパー又はダイバータが排ガスを送り出す方向を単純に変更すればよい。その構成に応じて、CO2回収システムからの戻り分岐部を既存の煙突に接続すればよい。
【0028】
従って、既存の発電設備の商用動作の中断を最小限にできる。排ガス用ダクトの再接続又は変更に必要な時間は、既存の発電設備の通常の保守のための計画停電に必要な時間以下に低減できる。
【0029】
本発明の別の主題は、前述した通りのCO2回収システムを備えた、炭素をベースとする燃料を燃焼させる発電設備の動作方法である。その動作方法では、第一の蒸気タービン機器は、蒸気サイクルの定常状態の動作の間に電力を作り出すように動作する。第二の蒸気タービン機器は、CO2回収システム12が動作している期間の間、CO2回収システム用の蒸気を供給するために、少なくとも部分的に迂回されるか、或いは電力を作り出して、低圧蒸気をCO2回収システム12に送り出すように動作する。CO2回収システムが動作していない時には、両方の蒸気タービン機器は、定常状態の動作の間、全ての使用可能な蒸気を用いて電力を作り出すように動作する。全ての使用可能な蒸気とは、発電設備自体の動作、例えば、燃料の予熱に必要な蒸気フローの分だけ低減された、或いは例えば、コージェネレーションでのプロセス蒸気として転換された蒸気の分だけ低減された、ボイラー又はHRSGが発生する蒸気である。
【0030】
別の実施形態では、電力需要が大きい期間の間、或いはCO2回収が不要又は動作不可能な間、ピーク電力を作り出すために、CO2回収ユニットを停止して、第二の蒸気タービン機器の低圧タービンを動作させる。
【0031】
電力需要が大きい期間の間に追加電力が必要な場合、第二の蒸気タービン機器の低圧タービンの速い始動及び/又は負荷動作を可能とするために、第二の蒸気タービン機器の低圧タービンに最小限の蒸気フローを加えて、それを温められた状態に保持する。
【0032】
そのような水蒸気サイクルの二つの部分への分割によって、CO2回収システムのために蒸気を使用する場合でも、CO2回収システムのために蒸気を使用しない場合でも、高い効率の動作が可能となる。それによって、CO2回収と最適化の目標に応じた様々な動作方法による柔軟な動作が可能となる。考えられる最適化の目標は、例えば、最大電力、最大効率、最大CO2回収率である。
【0033】
ここで述べた蒸気発電設備は、典型的には、石炭燃焼式蒸気発電設備である。しかし、本発明は、石油又はガス燃焼式蒸気発電設備などのそれ以外の形式の化石燃料燃焼式蒸気発電設備にも適用可能である。
【0034】
以下において、添付図面を用いて、本発明の特徴と利点を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】CO2回収システムと二つの蒸気タービン機器による水蒸気サイクルを備えた化石燃料燃焼式蒸気発電設備の模式図
【図2】CO2回収システムと四つの圧力レベルを使用する二つの蒸気タービン機器による水蒸気サイクルを備えた化石燃料燃焼式蒸気発電設備の模式図
【図3】排ガス再循環部、CO2回収システム及び二つの蒸気タービン機器による水蒸気サイクルを備えた複合サイクル式設備の模式図
【図4】排ガス再循環部、CO2回収システム及び一つのシャフトに沿って一列に配置された、オーバーランニングクラッチを介して係合可能な二つの蒸気タービン機器による水蒸気サイクルを備えた複合サイクル式設備の模式図
【図5】排ガス再循環部、CO2回収システム及び一つのシャフトに沿って一列に配置され、第二の蒸気タービン機器がオーバーランニングクラッチを介して係合可能な二つの低圧タービンを有する二つの蒸気タービン機器による水蒸気サイクルを備えた複合サイクル式設備の模式図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明によるCO2回収部を備えた発電設備の主要な構成部分は、第一の蒸気タービン機器14、第二の蒸気タービン機器15及びCO2回収システム12を備えた発電設備1,2である。
【0037】
本発明の一つの実施形態による設備構成の第一の例が、図1に図示されている。この例では、発電設備1は、蒸気発電設備1である。それは、化石燃料8と空気7を供給されるボイラー3、第一の蒸気タービン機器14、第二の蒸気タービン機器15及びCO2回収システム12を備えている。燃料7と空気8は、ボイラー3内で燃焼されて、生蒸気9,10,37と排ガス4が発生する。
【0038】
第一の蒸気タービン機器14は、HPT(高圧蒸気タービン)24、IPT(中間圧蒸気タービン)25及びLPT(低圧蒸気タービン)26を有する。HPT24とIPT25は、ボイラー3からの高圧の生蒸気9と中間圧の生蒸気10によって駆動される。LPT26は、IPT25から得られる低圧の蒸気11a及び/又はボイラー3からの低圧の生蒸気37によって駆動される。この構成は、更に、電力を作り出す発電機5と、ボイラー3に給水19を戻す復水器18とを有する。この蒸気サイクルは、簡略化されており、給水ポンプ、ボイラーの細部などは本発明の対象ではないので、それらが無い形で模式的に図示されている。
【0039】
第二の蒸気タービン機器15は、背圧蒸気タービン27と第二のLPT(低圧蒸気タービン)28を有する。背圧蒸気タービン27は、ボイラー3からの中間圧の生蒸気10によって駆動される。それに代わって、背圧蒸気タービン27は、第一のIPT25から抽出された中間圧の蒸気10’によって駆動することもできる。そのような蒸気の抽出は、蒸気抽出弁29によって制御できる。中間圧の蒸気10は、蒸気制御弁38によって制御できる。第二のLPT28は、CO2回収システムが動作していない場合に背圧蒸気タービン27の排気蒸気から得られる低圧の蒸気11bによって駆動される。第二のLPT28への蒸気フローは、第二のLP制御弁41によって制御される。この構成は、更に、電力を作り出す発電機45と、ボイラー3に給水19を戻す復水器18とを有する。この蒸気サイクルは、簡略化されており、給水ポンプ、ボイラーの細部などは本発明の対象ではないので、それらが無い形で模式的に図示されている。
【0040】
CO2回収システム12は、排ガス4からCO2を除去する箱として模式的に図示されている。CO2を除去された排ガス16は、CO2回収ユニット12から煙突16に放出される。CO2回収ユニット12が動作していない場合、排ガス用バイパス40を介して、それを迂回することができる。そのようなバイパスフローを制御するために、排ガス用ダクトにバイパス用フラップ21が配備されている。
【0041】
CO2回収システム12は、例えば、吸収剤によって排ガス4からCO2を除去するCO2吸収ユニットと、吸収剤からCO2を放出させる再生ユニットとを有する。排ガスの温度とCO2吸収ユニットの動作温度範囲に応じて、排ガス用冷却機6も必要な場合が有る。回収されたCO2は、圧縮と貯蔵17のために送り出される。典型的には、CO2回収システムは、その再生ユニットのために大量の熱エネルギーを必要とする。それは、背圧蒸気タービン27からの低圧蒸気11cとしてCO2回収システムに供給される。CO2回収システム12への低圧蒸気11cの流れは、回収システム用制御弁42によって制御される。復水又は低品質の蒸気は、CO2回収システム12から水蒸気サイクルの復水リターン13に戻される。
【0042】
図2は、CO2回収システム12と四つの圧力レベルを使用する二つの蒸気タービン機器14,15による水蒸気サイクルを備えた化石燃料燃焼式蒸気発電設備1を模式的に図示している。第一の蒸気タービン機器14とCO2回収システム12は、図1に図示されたものと同様である。
【0043】
この例では、背圧蒸気タービン27は、第一の蒸気タービン機器14のIPT25と同じ圧力レベルの中間圧の蒸気10ではなく、第一の蒸気タービン機器14の中間圧と比べて増大された圧力レベルの中間圧を増大された蒸気20を供給される。背圧蒸気タービン27への中間圧を増大された蒸気43の流れは、蒸気制御弁38によって制御できる。中間圧蒸気タービンのために二つの異なる圧力レベルを使用することによって、水蒸気サイクルは効果的に4圧力レベルのサイクルとなる。それによって、より良好に抽出された熱を活用できるとともに、全体的な効率を向上させることが可能となる。
【0044】
図3は、排ガス再循環部35を備えたガスタービン30、CO2回収システム12及び二つの蒸気タービン機器14,15による水蒸気サイクルを有する複合サイクル式設備2を模式的に図示している。第一と第二の蒸気タービン機器14,15は、図1に図示されたものと同様である。
【0045】
ガスタービン30は、吸気7を圧縮する圧縮機31、燃焼器32及びタービン33を有し、発電機5を駆動する。圧縮されたガスは、燃焼器32内で燃料8を燃焼させるために使用されて、加圧された熱いガスがタービン33内で膨張する。その主な出力は、発電機5からの電力と熱い排ガス34である。熱い排ガス34は、生蒸気9,10,37を発生する熱回収蒸気発生器(HRSG)39を通過する。排ガスは、低い温度レベルでHRSG39から出て行き、CO2回収システム12に送り出される。
【0046】
この例では、ガスタービンは、排ガス再循環部を備えたガスタービンとして図示されている。排ガスの制御可能な部分は、(図示されていない)ダンパー、或いは制御フラップ及び/又は送風機によって、排ガス再循環部22の方に方向転換されて、排ガス再循環ライン35を介して吸気7に再循環される。この再循環された排ガスは、ガスタービンの圧縮機31の入口温度を制限又は制御するために、排ガス用冷却機36で冷却される。排ガス用冷却機36は、典型的には、冷却された排ガスから復水を除去する(図示されていない)復水分離器を備えている。
【0047】
更に、複合サイクル式発電設備2は、図1に図示されたものと同様の第一と第二の蒸気タービン機器14,15を備えている。しかし、蒸気は、ボイラー3からではなく、HRSG39から供給される。
【0048】
図4は、排ガス再循環部35とCO2回収システム12を備えた複合サイクル式設備2の別の例を模式的に図示している。この例では、水蒸気サイクルの二つの蒸気タービン機器14,15は、一つのシャフトに沿って一列に配置されている。第一のタービン機器14は、簡略化されており、HPT24と、CO2回収システム12が必要とする特性で排気蒸気を提供する背圧タービンとして設計されたIPT25とだけから構成される。IPT25の排気蒸気は、低圧の蒸気であり、CO2回収システム12が動作していない時に第二の蒸気タービン機器を駆動するために使用されるか、或いはCO2回収システム12のために使用される。
【0049】
第二の蒸気タービン機器15も、簡略化されており、LPT28だけから構成される。それは、第一の蒸気タービン機器14と同じシャフトに沿って配置されている。LPT28が動作している場合、それは、オーバーランニングクラッチ23を介して、第一の蒸気タービン機器14の発電機5と係合される。低圧蒸気11cがCO2回収システム12の動作のために使用される場合、第二の蒸気タービン機器15は、オフラインとなり、オーバーランニングクラッチ23の係合は解かれる。
【0050】
第二のLPT28への低圧蒸気11bの流れは、第二のLP制御弁41によって制御される。CO2回収システム12への低圧蒸気11cの流れは、回収システム用制御弁42によって制御される。
【0051】
本発明の別の実施形態が図5に図示されている。それは、排ガス再循環部、CO2回収システム12及び二つの蒸気タービン機器14,15を一つのシャフトに沿って一列に配置した水蒸気サイクルを備えた複合サイクル式設備2を模式的に図示している。それは、図4に示された例と同様であるが、第二の蒸気タービン機器15が、オーバーランニングクラッチ23を介して係合可能な二つの低圧タービン28,44を有する。CO2回収システム12の蒸気の要件に応じて、CO2回収システム12は、IPT25の全ての排気蒸気を必要としない。余分の低圧蒸気11aを活用するために、第二の低圧蒸気タービン44が第二の蒸気タービン機器15に追加されている。第一の蒸気タービン機器のHPT24とIPT25は、発電機の一方の側で発電機5と連結されている。追加のLPT44は、他方の側で発電機5と連結されている。更に、第二の蒸気タービン機器のLPT28は、オーバーランニングクラッチ23を介して、追加のLPT44と係合可能である。第二のLPT28への低圧蒸気11bの流れは、第二のLP制御弁41によって制御される。追加の低圧蒸気タービン44への低圧蒸気の流れは、LP制御弁43によって制御される。LPT28の設計時のマスフローは、設計条件でのCO2回収システム12の蒸気の要件と等しい。追加のLPT44の設計時のマスフローは、設計条件での使用可能な低圧蒸気と設計条件でのCO2回収システム12の蒸気の要件の間の差に一致する。ここで、設計条件とは、設備設計のためのベース負荷と環境条件で設備を動作させる場合の条件、例えば、ISOによる条件(ISO2314、周囲温度15°C、周囲圧力1013mbar、相対湿度60%)である。
【0052】
前記の図面に図示した実施例は、当業者に対して、それらの実施例と異なるが、本発明の範囲内に含まれる実施形態を提示している。
【0053】
例えば、全ての図面は、CO2回収システムを備えた発電設備1,2を図示している。本発明による回収の準備を整えた発電設備1,2を提示するために、同じ構成と二つの蒸気タービン機器14,15を使用することができる。排ガス用冷却機6を含むCO2回収システム12は、単純に省略されるか、或いは将来の時点に後で取り付けるためのスペースで置き換えられる。CO2回収システムとCO2回収システム12に低圧蒸気11cを供給する蒸気ラインを接続するのに必要な排ガス用ダクトは、省略するか、或いは後での接続のためにブラインドフランジを配備することができる。
【0054】
前述した例では、単一燃焼式ガスタービンが記載されている。例えば、特許文献3に記載されている、再熱燃焼器を備えたガスタービンとも呼ばれる逐次燃焼式ガスタービンを同様に使用できるものと理解すべきである。逐次燃焼式ガスタービンと単一燃焼式ガスタービンの組み合わせに基づく発電設備も使用できる。逐次燃焼式ガスタービンの使用は、典型的には、排ガス中のCO2濃度が単一燃焼式ガスタービンよりも高くなるので、その方が有利である場合が有る。
【0055】
これらの例では、複合サイクル式発電設備に対して、単一シャフト式パワートレインが図示されていない。しかし、オーバーランニングクラッチ23を介して第一の蒸気タービン機器14及び/又は第二の蒸気タービン機器15をガスタービンの発電機5と連結した単一シャフト式パワートレインによる構成も同様に考えられる。
【0056】
更に、ボイラーとの用語は、限定された意味で使用すべきではない。例えば、超臨界蒸気発電機も、本発明の意味におけるボイラーと考えられる。
【符号の説明】
【0057】
1 CO2回収部を備えた蒸気発電設備
2 CO2回収部を備えた複合サイクル式発電設備
3 ボイラー
4 排ガス
5 発電機
6 排ガス用冷却機
7 空気
8 燃料
9 高圧生蒸気
10,10’ 中間圧蒸気
11a,11b,11c 低圧蒸気
12 CO2回収システム
13 復水リターン
14 第一の蒸気タービン機器
15 第二の蒸気タービン機器
16 CO2を除去された排ガス
17 圧縮及び貯蔵用CO2
18 復水器
19 給水
20 中間圧を増大された生蒸気
21 CO2回収システム用バイパスフラップ
22 排ガス再循環用制御フラップ
23 オーバーランニングクラッチ
24 HPT(高圧蒸気タービン)
25 第一のIPT(中間圧蒸気タービン)
26 第一のLPT(低圧蒸気タービン)
27 第二のIPT(中間圧蒸気タービン)
28 第二のLPT(低圧蒸気タービン)
29 蒸気抽出弁
30 ガスタービン
31 圧縮機
32 燃焼器
33 タービン
34 ガスタービンの排ガス
35 排ガス再循環ライン
36 排ガス用冷却機
37 低圧生蒸気
38 IP制御弁(中間圧蒸気制御弁)
39 HRSG(熱回収蒸気発生器)
40 排ガス用バイパス
41 LP制御弁(低圧蒸気制御弁)
42 CO2回収システム用制御弁
43 LP制御弁
44 LP蒸気タービン
45 発電機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気発電設備(1)と複合サイクル式発電設備(2)の一方又は両方から成る発電設備であって、
発電設備(1,2)の水蒸気サイクルが、二つの蒸気タービン機器(14,15)から構成され、第一の蒸気タービン機器(14)が、少なくとも二つの圧力レベルを有する蒸気タービンを備えており、第二の蒸気タービン機器(15)が、蒸気を膨張させてCO2回収システム(12)の供給圧力とするように設計された少なくとも一つの背圧タービン(27)を備えている発電設備。
【請求項2】
請求項1に記載の発電設備(1,2)において、
第二の蒸気タービン機器(15)の少なくとも一つの背圧蒸気タービン(27)は、その入口圧力が第一の蒸気タービン機器(14)の高圧蒸気タービン(24)の入口圧力を下回るとともに、第一の蒸気タービン機器(14)の高圧蒸気タービン(24)の出口圧力と異なるように設計されていることを特徴とする発電設備。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発電設備(1,2)において、
第二の蒸気タービン機器(15)が、低圧蒸気タービン(28)を更に有し、その低圧蒸気タービンは、その供給圧力が背圧タービン(27)の出口圧力と一致するように設計されていることと、
背圧蒸気タービン(27)と低圧蒸気タービン(28)の両方が、CO2回収システム(12)の蒸気マスフローに関して、CO2回収システム(12)が動作していない時に背圧蒸気タービン(27)の出口蒸気の熱エネルギーを機械的なエネルギーに変換するように設計されていることと、
を特徴とする発電設備。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の発電設備(1,2)において、
第二の蒸気タービン機器(15)が、二つの低圧蒸気タービン(28,44)を有し、一方の低圧蒸気タービンの設計時のマスフローが、設計条件でのCO2回収システム(12)の蒸気要件と等しく、他方の低圧蒸気タービンの設計時のマスフローが、設計条件での使用可能な低圧蒸気と設計条件でのCO2回収システム(12)の蒸気要件の間の差に一致することを特徴とする発電設備。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一つに記載の発電設備(1,2)において、
第二の蒸気タービン機器(15)の設計時のマスフローが、第一の蒸気タービン機器(14)よりも小さいことと、
第二の蒸気タービン機器(15)は、その動作周波数が第一の蒸気タービン機器(14)よりも高くなるように設計されていることと、
を特徴とする発電設備。
【請求項6】
排ガス用ダクトと煙突(16)を備えた複合サイクル式発電設備(2)であって、
複合サイクル式発電設備(2)の水蒸気サイクルが、二つの蒸気タービン機器(14,15)から構成され、第一の蒸気タービン機器(14)が、蒸気を膨張させてCO2回収システム(12)用の供給圧力として適した背圧とするように設計された少なくとも一つの中間圧タービン(25)を備えており、第二の蒸気タービン機器(15)が、低圧タービン(28)を備えており、その低圧タービンは、中間圧タービン(25)の出口圧力と一致する入口圧力を有するとともに、CO2回収システム(12)の蒸気マスフローに関して、CO2回収システム(12)が動作していない時に中間圧蒸気タービン(25)の出口蒸気の熱エネルギーを機械的なエネルギーに変換するように設計されている発電設備。
【請求項7】
請求項6に記載の発電設備(2)において、
複合サイクル式発電設備の少なくとも一つのガスタービン(30)は、排ガスが再循環するように設計されていることと、
熱回収蒸気発生器(39)から出て来る排ガスの一部が、そのガスタービン(30)の吸気に再循環されることと、
を特徴とする発電設備。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一つに記載の発電設備(1,2)において、
第二の蒸気タービン機器(15)の低圧タービン(28)が、オーバーランニングクラッチ(23)を介して、発電機(45,5)と接続可能であることを特徴とする発電設備。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一つに記載の発電設備(1,2)において、
第一と第二の蒸気タービン機器(14,15)が、一つの共通のシャフト上に一列に配置されて、一つの発電機(5)を駆動することを特徴とする発電設備。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一つに記載の発電設備(1,2)において、
第一の蒸気タービン機器(14)が、発電機(5,45)の第一の側と連結された一つの中間圧タービン(27)のためのシャフトを有することと、
第二の蒸気タービン機器(15)が、発電機(5,45)の第二の側と連結された追加の低圧蒸気タービン(44)と、オーバーランニングクラッチ(23)を介して、この追加の低圧蒸気タービン(44)と接続可能な第二の低圧タービン(28)とを有することと、
を特徴とする発電設備。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一つに記載の発電設備(1,2)において、
この発電設備が、排ガス(4)からCO2を除去するCO2回収システム(12)と、CO2回収システム(12)との排ガス用ダクトと、CO2回収システム(12)の下流の煙突(16)とを有することを特徴とする発電設備。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか一つに記載の発電設備(1,2)において、
この発電設備が、発電設備の排ガス(4)からCO2を除去可能なCO2回収システム(12)のために必要なスペースを有することと、
この発電設備が、排ガス(4)からCO2を除去するCO2回収システム(12)を後で取り付けることができるように構成されているか、この発電設備が、CO2回収システム(12)を後で取り付けるために準備された排ガス用ダクトと煙突(16)を有するか、或いはその両方であることと、
を特徴とする発電設備。
【請求項13】
請求項11に記載の発電設備(1,2)の動作方法において、
第一の蒸気タービン機器(14)が、蒸気サイクルの定常状態の全ての動作点の間に電力を作り出すように動作することと、
CO2回収システム(12)が動作している期間の間、第二の蒸気タービン機器(15)の少なくとも一部の蒸気が、CO2回収システム(12)に迂回されるか、電力を作り出すとともに、低圧蒸気をCO2回収システム(12)に送り出すか、或いはその両方を行うように動作することと、
CO2回収システム(12)が動作していない時に、両方の蒸気タービン機器(14,15)が、全ての使用可能な蒸気を用いて、電力を作り出すように動作することと、
を特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
電力需要が大きな期間の間又はCO2の回収が不要又は動作不可能な間に、CO2回収システム(12)が切り換えられて、第二の蒸気タービン機器(15)の第二の低圧タービン(28)がピーク電力を作り出すように動作することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法において、
CO2回収システム(12)が動作していない時に、第二の蒸気タービン機器の第二の低圧タービン(28)に最小限の蒸気フローを加えて、速い始動又は負荷動作のために第二の蒸気タービン(28)を温められた状態に維持することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項12に記載の発電設備(1,2)を後で取り付ける方法において、
CO2回収システム(12)は、CO2回収システム(12)のために設けられたスペースに配備されることと、
CO2回収システム(12)は、発電設備(1,2)が動作している間に配備されることと、
発電設備(1,2)の動作は、CO2回収システム(12)の接続とその後の再稼働のためだけに中断され、CO2回収システム(12)の接続とは、低圧蒸気(11c)、復水(13)、電力供給及び制御の接続、並びに排ガス用ダクトの接続と排ガス用ダクトの改修の一方又は両方であることと、
を特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−506091(P2013−506091A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531411(P2012−531411)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064469
【国際公開番号】WO2011/039263
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】