説明

CoMPセルのスケジューリング協調によるネットワークワイドなセル間干渉の最小化

ネットワークワイドなセル間干渉は、コントローラをそれぞれ有するCoMP(Coordinated MultiPoint)セルにセル(ここではサブセル)を統合することにより低減される。CoMPセルは、周波数再利用プランと同様のセット群に分けられる。CoMPセルの1つのセット内のUEとの間のスケジューリングされる送信に関するスケジューリング情報が、隣接するCoMPセルのセット内のコントローラへ、当該送信に先立って送信される。受信側のCoMPセルのセット内のコントローラは、他のCoMPセルからの干渉が存在しないという前提の下、サブセル間干渉及びスケジューリング情報を送信したCoMPセルのセットとの干渉の双方を最小化するように、送信をスケジューリングする。そして、CoMPセルの後続するセットへスケジューリング情報が送信される。CoMPセルのセットの間のスケジューリング情報の送信の順序は、公平性の観点でローテーションされてよい。スケジューリング情報は、少なくとも1つの送信を示す最小限の閾値データから、各UEの推定されるパス利得などの詳細情報まで、の間で可変であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、無線セルラ通信に関し、具体的には、CoMP(Coordinated MultiPoint)セルの間でのスケジューリング情報の事前の交換によって、セル間干渉を緩和するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線セルラ通信ネットワークは、ユビキタスに近く、数百万の加入者に移動体の音声及びデータ通信を提供する。セルラネットワークにおいて、固定された送受信機(基地局、ノードBなど)は、ある地理的エリアあるいはセルの範囲内で複数の加入者に2通りの無線通信を提供する(ここで使用されるところによれば、セクタとの用語はセルと同義である)。時間分割、周波数分割及び符号分割多重、並びにそれらの組合せのような、セル内の無線の干渉を抑圧するいくつかの方法が、当分野で知られている。加えて、周波数の再利用パターンなどのセル間干渉を抑圧する方法も知られている。現代の無線セルラ通信ネットワークにおいて、セル間干渉は、性能の障害の顕著な原因として残されており、データレート、システムキャパシティ及びデリバリされる通信サービスの品質を制限する。
【0003】
協調型マルチポイント(CoMP:Coordinated MultiPoint)は、セル間干渉を最小化するための技術である。地理的に隣接する複数のセル−サブセルという−をまとめて、CoMPセルが形成される。各CoMPセルは、当該CoMPセル内のセル間干渉(ここでは、サブセル間干渉という)を最小化するようにその構成要素であるサブセル内の送信を協調させる中央コントローラを有する。CoMPセルコントローラは、セル内のユーザ機器(UE)との間の送信のスケジューリングを協調的に行い、及び/又は信号処理技術を用いて干渉を積極的に抑圧することにより、サブセル間干渉を最小化する。
【0004】
CoMPシステムはサブセル間干渉の最小化において効果的であり得るものの、CoMPセル間干渉は、隣接するCoMPセルの間の結合的なエリアに沿って、アップリンク及びダウンリンクの双方において依然として存在する。図1は、3つの隣接するCoMPセルに分割されているネットワーク10を示しており、CoMPセルは、ここでは議論の目的のために、赤(Red)のCoMPセル12、黄色(Yellow)のCoMPセル14及び青(Blue)のCoMPセル16として識別されている。各CoMPセル12、14、16における境界のサブセルは、網掛け線として描かれている。これら境界のサブセルは、CoMPセル12、14、16の間で協調が行われないため、隣接するCoMPセルの境界のサブセルにおける送信から干渉を受ける可能性がある。実質的には、性能を制限する干渉は、CoMPセル12、14、16の境界に向けて単に押し出される。この問題への仮説としての1つの解決策は、全てのサブセルを単一の中央装置に接続し、ネットワーク10内の全てのセルにわたって同時に送信を協調させ及び/又は干渉を抑圧することであろう。しかしながら、これは、実際上、特に大規模なネットワークにとって実現性に乏しい。
【発明の概要】
【0005】
ここで説明され請求される1つ以上の実施形態によれば、CoMPセルの1つのセット内のUEとの間のスケジューリングされるダウンリンク及びアップリンク送信に関するスケジューリング情報が、当該送信に先立って、隣接するCoMPセルの1つ以上のセット内のコントローラへ送信される。同じセット内のCoMPセルは、それらが地理的に隔離されており互いに干渉を生じないため、独立してUEをスケジューリングすることができる。CoMPセルの第1のセットは、隣接するCoMPセルからのCoMPセル間干渉が存在しないという前提の下で、CoMPセル内干渉を最小化するように、送信をスケジューリングし、隣接するCoMPセルのセットへスケジューリング情報を送信する。そして、当該スケジューリング情報を受信する第2のCoMPセルのセットは、CoMPセルの後続のセットからのCoMPセル間干渉が存在しないという前提の下で、内部のCoMPセル内干渉及びCoMPセルの第1のセットとのCoMPセル間干渉とを最小化するように、送信をスケジューリングする。CoMPセルの第2のセットは、CoMPセルの第3のセットなどへスケジューリング情報を送信する。スケジューリング情報は、スケジューリングされた送信に関する様々な情報を含んでよい。
【0006】
1つの実施形態は、無線通信ネットワーク内の干渉を低減する方法に関する。当該無線通信ネットワークは複数のサブセルを含み、サブセルは2つ以上のCoMPセルへグループ化される。各CoMPセルは、CoMPセル内干渉を最小化するように、CoMPセルを含むサブセル内の送信を管理するよう動作可能なコントローラを含む。第1のCoMPセル内のUEとの間の送信は、第1のCoMPセルコントローラによりスケジューリングされる。第1のCoMPセルの境界におけるサブセル内のUEとの間のスケジューリングされた送信に関するスケジューリング情報は、第1のCoMPセルコントローラから隣接する第2のCoMPセルの第2のコントローラへ、当該送信に先立って送信される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】各々の境界サブセルにおける干渉を示す、3つのCoMPセルの機能図である。
【図2A】隣接する青(B)及び黄色(Y)のCoMPセルへ情報を送信する赤(R)のCoMPセルを示している。
【図2B】隣接する黄色(Y)のCoMPセルへ情報を送信する青(B)のCoMPセルを示している。
【図3】ローテーションされる順序での各送信期間の開始時のCoMPセル間通信を伴う、スケジューリングされる送信の所定の連続的な期間の論理図である。
【図4】赤のCoMPセルの境界セルにおけるスケジューリングされた送信アクティビティを表現する、単一ビットのスケジューリング情報を示している。
【図5】CoMPセルによりグループ化される、パス利得の代表的な行列である。
【図6】CoMPセル間干渉の低減方法のフロー図である。
【図7】シミュレーション結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図2は、ネットワーク10のより大きい外観を示している。ネットワーク10は、複数のサブセル(図示せず)を各々含む複数のCoMPセルに分割される。CoMPセルは、赤(R)、青(B)及び黄色(Y)という色のCoMPセル群により示される複数のセットにグループ化される。CoMPセルのセットのグループ化は、従来のセルラネットワークの周波数再利用パターンと同様、各セットの全てのCoMPセルが地理的に隔離されるように、地理的に散在するように行われる。この隔離によって、CoMPセルの各セットあるいは各色内のUEへの送信は、互いに干渉を生じさせないことから、独立してスケジューリングされ得る。
【0009】
CoMPセルの1つのセット、例えば図2における赤のセル、から話を始めると、赤のCoMPセル内のUEへの送信は、隣接する青及び黄色のCoMPセル内の境界サブセルが干渉を生じさせないという前提の下で、サブセル間干渉を最小化するようにスケジューリングされる。そして、赤のCoMPセルコントローラは、図1において外へ向かう矢印により示されているように、隣接する青及び黄色のCoMPセル内のコントローラへ、スケジューリング情報を送信する。ここでより充実して説明される当該スケジューリング情報は、受信側のCoMPセル(例えば、青及び黄色)がそれらのサブセル内のUEへの送信を所望の干渉レベルを超過することなくスケジューリングすることを支援する。
【0010】
そして、例えば、赤のCoMPセルコントローラから当該スケジューリング情報を受信すると、一例として青のCoMPセルコントローラは、サブセル間干渉を最小化し、加えて、黄色のCoMPセル内のUEは干渉を生じさせないという前提の下、隣接する赤のCoMPセルの境界サブセル内でスケジューリングされたUEへの干渉を回避するように、当該スケジューリング情報を用いて、自身のサブセル内のUEへの送信をスケジューリングする。そして、青のCoMPセルコントローラは、図2Bに示されているように、隣接する黄色のCoMPセルへスケジューリング情報を送信する。
【0011】
青のCoMPセルコントローラからスケジューリング情報を受信すると、赤のCoMPセルコントローラからスケジューリング情報を既に受信している黄色のCoMPセルコントローラは、サブセル間干渉を最小化し、加えて、隣接する赤及び青のCoMPセルの境界サブセル内で送信信号を受信するようにスケジューリングされたUEへの干渉を回避するように、スケジューリング情報のセットの双方を用いて、自身のサブセル内のUEへの送信をスケジューリングする。
【0012】
ここでは(赤12、黄色14及び青16により示される)CoMPセルの3つのセットのみを用いて本発明の実施形態を説明しているが、当業者であれば、いかなる数のセットも定義され得ることを容易に理解するであろう。3つよりも多くのケースでは、処理は継続し、即ち、上述した例において、赤及び青のCoMPセル内のUEへの干渉を回避するように自身のUEをスケジューリングした後、黄色のCoMPセルコントローラは、次のセット、例えば緑のCoMPセルコントローラへ、スケジューリング情報を送信するであろう。そして、緑のCoMPセルコントローラは、赤、青及び黄色のセルへの干渉を回避するように自身のサブセル内のUEをスケジューリングなどするであろう。
【0013】
全てのスケジューリングは、サブセル内のUEへの無線送信に先立って完了されなければならない。それに応じて、スケジューリング情報の全ての送信は、全てのダウンストリームのスケジューリング(適用可能であるならば、後に続くスケジューリング情報の送信及びスケジューリング)を可能とし、また無線送信の前に完了するように、無線送信に十分に先立って完了されなければならない。多くの無線セルラ通信システムのプロトコルは、周期的な送信期間を定義しており、それはフレーム若しくはサブフレーム、タイムスロット又は送信時間間隔(TTI)などとして知られ得る。そうしたシステムにおいて、全てのスケジューリング情報の送信は、最後のCoMPセルのセット(例えば、上述した例における黄色)がそのスケジューリングを完了できるように、送信期間に十分に先立って完了されるべきである。
【0014】
公平性のために、スケジューリング情報の送信の順序は、所定の方式に従ってCoMPセルのセットの間でローテーションされてよい。図3は、赤、黄色及び青のCoMPセルの間のスケジューリング情報の送信の優先度の、ラウンドロビン型のローテーションを示している。本発明の範囲内の他のローテーション方式は、その時点の(current)又は直近の(recent)過去のスケジューリングアクティビティに基づくローテーションを含む(即ち、高いトラフィック負荷を有するCoMPセルのセットが第1のスケジューリング優先度を有する)。さらに、優先度ベースのローテーション方式は、いくつかの無線ネットワークプロトコルの高速パケットダウンリンクチャネルにおいて利用されている比例公平(proportional fairness)方式におけるものなどの公平性コンポーネントと組合されてもよい。一般化すると、本発明の範囲内で、複数のCoMPセルのセットの間のスケジューリング情報の送信の優先度は、所望のネットワーク性能の目標を達成するいかなるスケジューリングプロトコルに従って決定されてもよい。当然ながら、そうしたプロトコルは、3つのCoMPセルのセットのみでの動作に限定されない。
【0015】
CoMPセルの異なるセットの間で受け渡されるスケジューリング情報は、受信側のCoMPセルがそれらのサブセル内のUEとの間の送信を所望の干渉レベルを超過することなくスケジューリングすることを支援するであろう。
【0016】
1つの実施形態において、スケジューリング情報は、あるフレームなどの予め定義された期間について、境界サブセル内で何らかの送信がスケジューリングされているかの標識(indicator)を簡易に含む。図4は、赤のCoMPセル12のコントローラにより隣接する黄色及び青のCoMPセル14、16内のコントローラへ送信されるスケジューリング情報を示している。当該標識は、例えば、ゼロが送信無しを識別し、1が関連するサブセル内で1つ以上の送信がスケジューリングされていることを識別する、単一の2値のビットのように単純なものであってよい。これらアクティブ/非アクティブ標識によって、黄色及び青のCoMPセル14、16は、赤のCoMPセル12内のUEへの干渉を発生させることを回避するように、それらのUEへの送信をスケジューリングすることができる。
【0017】
1つの実施形態において、内側のサブセル(即ち、非境界サブセル)に関するスケジューリング情報は、それらが黄色及び青のCoMPセル14、16内の送信にあまり干渉を生じさせないため、通信されなくてよい。他の実施形態において、例えば、境界サブセルが小さい場合、又はその他の理由で黄色又は青のCoMPセル14、16内のUEへの送信が赤のCoMPセル12の非境界サブセル内のUEへの送信から干渉を受ける可能性がある場合には、赤のCoMPセル12のコントローラは、他のCoMPセル14、16へ転送されるスケジューリング情報の中に内側のサブセルを含めてもよい。
【0018】
図4の実施形態では、スケジューリング情報として転送されるべきデータ量は最小化されるが、受信側のCoMPセル14、16は、ブロードキャスト側のCoMPセル12内の送信について閾値的な知識しか有しない。
【0019】
他の実施形態において、例えば赤のCoMPセル12の境界サブセル内のUEへの送信に関するより高コストな情報が黄色及び青のCoMPセル14、16へ送信され、それにより、受信側のCoMPセル14、16がより高度なUE送信についての決定を行いつつ、やはりCoMPセル間干渉を緩和することが可能となる。1つの実施形態では、当該スケジューリング情報は、1つ以上のUE送信に関連付けられるパス利得を含む。CoMPセルの境界サブセルの全てにおける送信についてのパス利得の利得行列は、次の通りである:
【0020】
【数1】

【0021】
ここで、gmnはm番目のUEとn番目のサブセルとの間のパス利得である。当然ながら、適切な環境内では、行列Gは、CoMPセルの非境界サブセル内の送信に関連付けられる利得成分を含むように拡張されてもよい。
【0022】
図5は、CoMPセルによりグループ化される利得行列の代表的な例を示している。ダウンリンクについては、UEが経験する干渉は、その行の中のアクティブな成分の合計からそのサービングサブセルに対応する要素を差し引いたものとなる。一方、アップリンクについては、干渉は列のインデックスに沿って合計される。円で囲まれた成分は、スケジューリングされたUEとそのサービングサブセルとの間の対応を示している。優勢な(dominant)パス利得は大文字のGで表されており、小文字のgは非常に小さい利得を示す。サブセルは連続的に付番されている(即ち、サブセルは各CoMPセル内で付番し直されない)。
【0023】
赤のCoMPセル12がダウンリンク上でそのUEをスケジューリングし、隣接する青のCoMPセル16へスケジューリング情報を受け渡さなければならないケースを検討されたい。赤のCoMPセル12は、サブセル1内のUE及びサブセル2内のUEへの送信をスケジューリングしたものとする。赤のCoMPセル12は、青のCoMPセル16がこれら2つのUEへの干渉を生じさせることを回避できるように、そのスケジューリング情報内に利得成分{g21,g22,g41,g42}を含める必要がある。g22及びg41がそれぞれg21及びg42よりも相当に小さければ、それらは省略されてもよい。
【0024】
加えて、赤のCoMPセル12は、そのスケジューリング情報内に利得成分{g61,g71,g81,g91}及び{g62,g72,g82,g92}も含める必要がある。これらは、赤のCoMPセルのサブセル1及び2内のUEへの送信によりそれぞれ引き起こされる青のCoMPセルのUEへの推定されるパス利得である。この情報は、それによって青のCoMPセル16が自身のサブセル内の送信をスケジューリングすることを可能にする。当然ながら、含められなければならないのは優勢な成分{g61,g72}のみである。
【0025】
パス利得は、ゆっくりと変化する傾向があり、よって予め定義される送信期間(例えばフレーム)に先立って送信されるスケジューリング情報には必ずしも含められなくてよい。一方、図4の実施形態の観点で説明したような送信のスケジューリングは、フレームごとに変化する。送信のスケジューリングは、CoMPセル12、14、16の間で送信されるスケジューリング情報に常に含められるべきである。
【0026】
図6は、CoMPセルコントローラにより実行される、無線通信ネットワーク10内の干渉を低減する方法100を示している。ある所定の送信期間(例えばフレーム)について、CoMPセルコントローラがスケジューリング情報の転送における第1の優先度を有しなければ、方法100は、UEとの間のいずれの送信にも先立って、ブロック102において開始し、CoMPセルコントローラは、1つ以上の隣接するCoMPセルからスケジューリング情報を受信する。そして、ブロック104において−あるいは、CoMPセルコントローラがこの送信期間についてスケジューリング情報の転送における第1の優先度を有する場合には最初にブロック104において−、CoMPセルコントローラは、サブセル間干渉を回避し又は最小化するように、自身のCoMPセル内のUEとの間の送信をスケジューリングする。少なくとも1つの隣接するCoMPセルからスケジューリング情報が受信された(ブロック102)場合には、コントローラは、スケジューリング情報の受信元のCoMPセルとのCoMPセル間干渉をも回避し又は最小化するように、送信をスケジューリングする。いずれのケースでも、CoMPセルコントローラは、スケジューリング情報を受信していない隣接するCoMPセルからの干渉はないであろうということを前提とする。
【0027】
この送信期間について、CoMPセルコントローラは、スケジューリング情報を最後に受信するのでなければ、ブロック106において、UEとの間のいかなる送信にも先立って、ダウンストリームの隣接するCoMPセルへ自身のスケジューリング情報を送信する。そして、サブセル送受信機は、スケジューリングされた通りに、それらのUEと通信する。予め定義される次の送信機会において(ブロック108)、各CoMPセルは、ブロック104(ブロック110)において実行されたスケジューリングに従って、そのUEとの間で信号の送信を行う。そして、CoMPセルのセットの間の優先度は変更されてよく(ブロック112)、本方法は繰り返される。新たな送信期間について、CoMPセルコントローラがスケジューリング情報の送信において最初の又は最後の優先度を有するようになった場合、それぞれブロック102又は106が省略されてよい。
【0028】
1つのCoMPセルから他へスケジューリング情報を逐次的に送信することにより、受信側のCoMPセルが当該スケジューリング情報を用いて自身のUEへの送信をスケジューリングすることで、CoMPセル間干渉は大幅に低減され得る。干渉の低減は、理論的には、中央ネットワークコントローラもネットワーク内の各CoMPセルとのリアルタイムの通信も要することなく、ネットワークワイドな送信の協調によってほぼ達成され得る。CoMPセルの間で交換されるスケジューリング情報は限られており、いくつかの実施形態では最小化されている。
【0029】
図7は、図2に示されているようにモデル化されるネットワーク10のシステムシミュレーションの結果をグラフ化している。各CoMPセルは、図1に示されているように、21個のサブセルを含む。3つのCoMPセル12、14、16の全体として、無限でありボーダレスなネットワーク10がエミュレートされている。平均で、各サブセルにはバッファをデータで満たされた10個のUEが存在する。図6は、5パーセンタイル(5th percentile)のユーザのデータレートを、CoMPセルごとの平均スループットに対してプロットする形でグラフ化している。
【0030】
三角によりマーク付けされた曲線は、各CoMPセル12、14、16が自身のUEを独立してスケジューリングするという、ベースラインの解決策に対応しており、CoMPセル間干渉を引き起こしている。円によりマーク付けされた曲線は、単一の意思決定用の中央コントローラがネットワーク10内の全てのサブセルの間で送信を協調させるという、理論的に最適な(しかし非現実的な)解決策である。スケジューリング情報が優勢なパス利得を含むという本発明の第2の実施形態についての結果を示す曲線は、四角によりマーク付けされている。この曲線は、最適な解決策と比較して小さな劣化しか示していない。
【0031】
ここで使用される“スケジューリング情報”という用語は、1つ以上のネットワーク送受信機及び1つ以上のUEの間でスケジューリングされる無線通信の送信に関するいかなる情報をも指している。スケジューリング情報は、そうした送信のタイミングに関連し、及び/又は、1つ以上のそうした送信に関連付けられるパス利得などの他の情報を含んでもよい。スケジューリング情報の粒度は、UEごとからサブセルごとまでの間で可変であってよく、CoMPセルごと又は本発明の実施形態に従った干渉の緩和のために有益な他のいかなるグループごとであってもよい。
【0032】
本発明は、当然ながら、本発明の本質的特徴から離れることなく、ここで具体的に説明したものとは異なる形で実行されてもよい。提示された実施形態は、全ての観点で例示的であって、限定的なものであると見なされるべきではなく、添付の特許請求の範囲の意義及び均等の範囲内の全ての変更は、ここに包含されるものと意図される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上のCoMP(Coordinated MultiPoint)セルにグループ化される複数のサブセルを含む無線通信ネットワークにおける干渉を低減する方法であって、
各CoMPセルは、複数の隣接するサブセルと、当該CoMPセルのサブセル内の送信を管理してCoMPセル内干渉を最小化するように動作可能なコントローラと、を備え、
前記方法は、
第1のCoMPセル内のユーザ機器(UE)との間の送信を、第1のCoMPセルコントローラによりスケジューリングするステップと、
前記第1のCoMPセルコントローラから隣接する第2のCoMPセルの第2のコントローラへ、前記第1CoMPセルの境界におけるサブセル内のUEとの間のスケジューリングされた送信に関するスケジューリング情報を、当該送信に先立って送信するステップと、
前記第1のCoMPセルコントローラにより送信された前記スケジューリング情報を利用して、前記第1及び前記第2のCoMPセルの間のCoMPセル間干渉を最小化するように、前記第2のCoMPセル内のUEとの間の送信を前記第2のCoMPセルコントローラによりスケジューリングするステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記スケジューリング情報は、各境界サブセルにおいていずれかのUEとの間で何らかの送信がスケジューリングされているかの標識を含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記第1のCoMPセルは、非隣接CoMPセルの第1のセットに属し、前記第2のCoMPセルは、非隣接CoMPセルの第2のセットに属し、特定のセット内のいずれかのCoMPセルからの送信が当該セット内の他のいずれかのCoMPセルに干渉を与えることのないように、各セットの前記CoMPセルは前記ネットワークを通じて散在する、請求項1の方法。
【請求項4】
前記標識は、境界サブセルごとに単一のビットを含む、請求項2の方法。
【請求項5】
前記スケジューリング情報は、UEへのパス利得であって、当該UEへの又は当該UEからのスケジューリングされた送信の当該パス利得の推定値を含む、請求項1の方法。
【請求項6】
前記スケジューリング情報は、UEへのパス利得であって、異なるUEへの又は異なるUEからのスケジューリングされた送信のパス利得の推定値をさらに含む、請求項5の方法。
【請求項7】
前記スケジューリング情報は、所定の閾値を上回るパス利得の推定値を含む、請求項6の方法。
【請求項8】
前記パス利得の推定値は、m×n行列の形式であり、mはUEを識別するインデックス、nはサブセルを識別するインデックスである、請求項6の方法。
【請求項9】
前記スケジューリング情報は、予め定義された将来の送信期間の間に生じるようにスケジューリングされた送信に関する情報である、請求項1の方法。
【請求項10】
前記第1のCoMPセルコントローラにおいて、前記第2のCoMPセルコントローラから、前記第2のCoMPセルのサブセル内のUEとの間のスケジューリングされた送信に関するスケジューリング情報を、当該送信に先立って受信すること、
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項11】
前記スケジューリング情報は、前記第1のCoMPセルの境界におけるサブセル内のUEとの間のスケジューリングされた送信に関するスケジューリング情報を前記第1のCoMPセルコントローラが送信した期間とは別の、予め定義された将来の期間の間に生じるようにスケジューリングされた送信に関する情報を含む、請求項10の方法。
【請求項12】
前記第2のCoMPセルについての受信された前記情報に関連する前記予め定義された期間の間の前記第2のCoMPセル内のUEへの干渉を最小化するように、前記第1のCoMPセルコントローラにより、受信された前記スケジューリング情報を考慮して、前記第1のCoMPセル内のUEとの間の送信をスケジューリングすること、
をさらに含む、請求項11の方法。
【請求項13】
CoMP(Coordinated MultiPoint)セルのサブセル内のユーザ機器(UE)への無線通信を各々提供する複数のネットワーク送受信機に通信可能に接続されるCoMPセルコントローラであって、
前記CoMPセル内のサブセル間干渉を最小化するように、前記CoMPセルのサブセル内のユーザ機器(UE)との間の送信をスケジューリングするためのスケジューラと、
前記スケジューラは、スケジューリング情報を生成することと、
前記CoMPセルの境界におけるサブセル内のUEとの間のスケジューリングされた送信に関する前記スケジューラにより生成されるスケジューリング情報を、隣接するCoMPセルの1つ以上のコントローラへ、当該送信に先立って送信するための通信インタフェースと、
を備えるCoMPセルコントローラ。
【請求項14】
前記コントローラは、1つ以上の隣接するCoMPセルの境界におけるサブセル内のUEとの間のスケジューリングされた送信に関するスケジューリング情報を、当該送信に先立って前記通信インタフェース上で受信するための手段、を含み、
前記スケジューラは、受信された前記スケジューリング情報を利用して、前記1つ以上の隣接するCoMPセル内のUEとの干渉を最小化するように、前記CoMPセルのサブセル内のUEとの送信をスケジューリングする、
請求項13のCoMPセルコントローラ。
【請求項15】
前記コントローラがスケジューリング情報を送信し又は受信する相対的な順序は、所定のプロトコルに従って、予め定義された送信期間ごとに変化する、請求項14のCoMPセルコントローラ。
【請求項16】
前記スケジューリング情報は、各境界サブセルにおいていずれかのUEとの間で何らかの送信がスケジューリングされているかの標識を含む、請求項13のCoMPセルコントローラ。
【請求項17】
前記標識は、境界サブセルごとに単一のビットを含む、請求項16のCoMPセルコントローラ。
【請求項18】
前記スケジューリング情報は、UEへのパス利得であって、当該UEへの又は当該UEからのスケジューリングされた送信の当該パス利得の推定値を含む、請求項13のCoMPセルコントローラ。
【請求項19】
前記スケジューリング情報は、UEへのパス利得であって、異なるUEへの又は異なるUEからのスケジューリングされた送信のパス利得の推定値をさらに含む、請求項18のCoMPセルコントローラ。
【請求項20】
前記スケジューリング情報は、所定の閾値を上回るパス利得の推定値を含む、請求項18のCoMPセルコントローラ。
【請求項21】
前記パス利得の推定値は、m×n行列の形式であり、mはUEを識別するインデックス、nはサブセルを識別するインデックスである、請求項19のCoMPセルコントローラ。
【請求項22】
ユーザ機器(UE)との間で無線通信が行われる複数のサブセルを各々含む複数のCoMPセルを有するCoMP(Coordinated MultiPoint)セルラネットワークアーキテクチャ内でセル間干渉を低減する方法であって、
前記複数のCoMPセルを、相互排他的な複数のサブセットへグループ化するステップと、
各サブセット内の前記CoMPセルは、いずれの所与のサブセット内のCoMPセルの間にもCoMPセル間干渉が生じないように、地理的に互いに十分に隔離されることと、
第1のサブセット内の前記CoMPセル内の前記サブセルの間のCoMPセル内干渉を最小化するように、前記第1のサブセット内の前記CoMPセルの前記サブセル内のUEとの間の送信をスケジューリングするステップと、
前記第1のサブセット内の前記CoMPセルの各々から、他の全てのサブセット内の隣接するCoMPセルへ、スケジューリング情報を受け渡すステップと、
第2のサブセット内の前記CoMPセルの前記サブセル内のUEとの間の送信をスケジューリングするステップと、
前記第2のサブセット内の送信は、前記第2のサブセット内の前記CoMPセル内の前記サブセルの間のCoMPセル内干渉を最小化するようにスケジューリングされることと、
前記第2のサブセット内の送信は、前記第1のサブセットから受信される前記スケジューリング情報を利用して、前記第1のサブセット内のCoMPセルとのCoMPセル間干渉をも最小化するようにスケジューリングされることと、
を含む方法。
【請求項23】
前記第2のサブセット内の前記CoMPセルの各々から、他の全てのサブセットであって前記第1のサブセットを除くサブセット内の隣接するCoMPセルへ、スケジューリング情報を受け渡すステップと、
第3のサブセット内の前記CoMPセルの前記サブセル内のUEとの間の送信をスケジューリングするステップと、
前記第3のサブセット内の送信は、前記第3のサブセット内の前記CoMPセル内の前記サブセルの間のCoMPセル内干渉を最小化するようにスケジューリングされることと、
前記第3のサブセット内の送信は、前記第1及び前記第2のサブセットから受信される前記スケジューリング情報を利用して、前記第1及び前記第2のサブセット内のCoMPセルとのCoMPセル間干渉をも最小化するようにスケジューリングされることと、

をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
CoMP(Coordinated MultiPoint)セルの間のセル間干渉を最小化するためのセルラ通信ネットワークにおけるシステムであって、
前記CoMPセルのサブセル内のユーザ機器(UE)への無線通信を各々提供する第1の複数のネットワーク送受信機に通信可能に接続される第1のCoMPセルコントローラと、
前記第1の複数のネットワーク送受信機に隣接する第2の複数のネットワーク送受信機に通信可能に接続される第2のCoMPセルコントローラと、
を含み、
前記第1及び前記第2のCoMPセルコントローラは、
第1及び第2のCoMPセル内のサブセル間干渉をそれぞれ最小化するように、前記第1及び前記第2のCoMPセルのサブセル内のUEとの送信をスケジューリングし、スケジューリング情報を生成するためのスケジューラと、
前記第1のCoMPセルの境界におけるサブセル内のUEとの間のスケジューリングされた送信に関する、前記第1のCoMPセルコントローラの前記スケジューラにより生成されるスケジューリング情報を、前記第1のCoMPセルコントローラから前記第2のCoMPセルコントローラへ、当該送信に先立って送信するための通信インタフェースと、
を備え、
前記第2のCoMPセルコントローラの前記スケジューラは、前記第1のCoMPセルコントローラにより送信される前記スケジューリング情報を利用して、前記第1のCoMPセル及び前記第2のCoMPセルの間のCoMPセル間干渉を最小化するように、前記第2のCoMPセルの境界におけるサブセル内のUEとの間の送信をスケジューリングするための手段を含む、
システム。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−531078(P2012−531078A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515619(P2012−515619)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052743
【国際公開番号】WO2010/146559
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(598036300)テレフオンアクチーボラゲット エル エム エリクソン(パブル) (2,266)
【Fターム(参考)】