説明

Cu−Ag合金線

【課題】同軸ケーブルのシールド導体に適した極細のCu-Ag合金線及びその製造方法、並びに同軸ケーブルを提供する。
【解決手段】同軸ケーブルのシールド導体に用いられるCu-Ag合金線であり、Agを1質量%〜20質量%含有し、残部がCu及び不純物から構成され、導電率が82%IACS以上、引張強さが800MPa以上、線径が0.05mm以下である。このCu-Ag合金線をシールド導体に用いることで、シールド特性に優れる同軸ケーブルが得られる。Cu-Ag合金線の製造にあたり、伸線加工の途中段階にある伸線材に加熱温度:350℃〜550℃の中間熱処理を施す。中間熱処理は、この熱処理を施す伸線材の線径と、この熱処理を施した熱処理材に伸線加工を施して得られた最終線材の導電率及び引張強さとの関係を予め求め、最終線径のCu-Ag合金線の導電率が82%IACS以上、引張強さが800MPa以上となるように上記関係に基づいて、最終線径から遡って設定した所定の線径のときに行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極細のCu-Ag合金線、この極細線からなるシールド導体を具える同軸ケーブル、及び上記Cu-Ag合金線の製造方法に関するものである。特に、同軸ケーブルのシールド導体に適した極細のCu-Ag合金線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器や医療機器などの各種の機器に利用される電線として、中心導体(内部導体)の外周に絶縁層を介して設けられたシールド導体(外部導体)を具える同軸ケーブルがある。上記シールド導体は、例えば、上記絶縁層の外周に複数の素線を巻回することにより構成される。上記素線には、従来、銅線が利用されている。
【0003】
近年、上記機器の小型化、軽量化の要望に伴い、上記同軸ケーブルにも更なる細経化が望まれている。しかし、銅線は、強度が低く、0.1mm以下といった極細線とすると、繰り返しの屈曲や捻回による応力が加えられた場合に断線し易い。特に、上述のように絶縁層の外周に素線を巻回してシールド導体を形成する場合、使用時の屈曲だけでなく、シールド導体の形成時にも捻回(例えば、螺旋状に横巻きすることによる捻りなど)や屈曲による応力が上記素線に加えられるため、シールド導体に利用される素線には、破断強度や疲労強度が高いことが望まれる。そこで、特許文献1では、銅線よりも高強度であるCu-Ag合金線をシールド導体に利用することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-132745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、0.05mm以下といった極細の線材であって、同軸ケーブルのシールド導体に適した特性を有する線材について十分に検討されていない。上述のようにシールド導体には、破断強度や疲労特性(耐屈曲性・耐捻回性)に優れることが望まれる。
【0006】
更に、同軸ケーブルのシールド導体には、外部からのノイズの影響を受け難いように、シールド特性に優れることが望まれる。シールド特性は導電率に影響を受け、導電率が低下すると、シールド特性の低下を招く。そのため、シールド導体は、導電率が高いことが望まれる。しかし、上述のような極細の線材であって、高強度と高導電率とを兼備するシールド導体用線材は得られていない。
【0007】
ここで、従来、同軸ケーブルの特性を改善する場合、主として中心導体が検討されており、シールド導体については十分に検討されていなかった。一般に、同軸ケーブルの中心導体に求められる導電率は、65%IACS以上、概ね70%IACS〜80%IACS程度で十分であり、このような素線をシールド導体にも利用していた。しかし、シールド導体の導電率を更に高めることで、シールド特性に優れた同軸ケーブルとすることができる。
【0008】
一方、特許文献1には、耐屈曲性に優れるCu-Ag合金線が開示されている。一般に、銅合金は、添加元素の増加により強度を高められる反面、導電率が低下する。従って、特許文献1に記載されるCu-Ag合金線では、導電率の更なる向上が難しいと考えられる。
【0009】
そこで、本発明の目的の一つは、導電率及び強度の双方に優れ、シールド導体に適した極細のCu-Ag合金線を提供することにある。また、本発明の他の目的は、導電率及び強度の双方が高く、極細のCu-Ag合金線を製造することができるCu-Ag合金線の製造方法を提供することにある。更に、本発明の他の目的は、上記Cu-Ag合金線により構成されたシールド導体を具える同軸ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(Cu-Ag合金線)
[全体構成]
本発明のCu-Ag合金線は、Agを1質量%以上20質量%以下含有し、残部がCu及び不純物から構成されている。このCu-Ag合金線は、導電率が82%IACS以上であり、引張強さが800MPa以上であり、線径が0.05mm以下(但し、0mmを除く)である。そして、このCu-Ag合金線は、同軸ケーブルのシールド導体に用いられる。
【0011】
本発明Cu-Ag合金線は、Agを特定の範囲で含有することで、線径が0.05mm以下といった極細であっても、強度が高く、破断強度や疲労特性に優れる。かつ、本発明Cu-Ag合金線は、導電率が高い。このような本発明Cu-Ag合金線を同軸ケーブルのシールド導体の構成素線に利用する場合、(1)シールド導体の形成にあたり絶縁層の外周に巻回した際などで断線し難い、(2)同軸ケーブルの使用時に繰り返し曲げや捻りが加わっても断線し難い、(3)優れたシールド特性を有することができる、という効果を奏し得る。
【0012】
[組成]
本発明Cu-Ag合金線を構成するCu-Ag合金は、Agの含有量が1質量%〜20質量%の二元合金である。Agの含有量が1質量%未満の場合、Agが固溶することによる強度の向上効果が得られ難く、後述する中間熱処理の条件や伸線加工時の加工度(減面率)などの製造条件を調整しても、引張強さが800MPa以上を満たすことが難しい。20質量%超の場合、Agが過剰に固溶することで導電率が低下し、導電率が82%IACS以上を満たすことが難しい。Agの含有量が1質量%以上15質量%以下であると、高強度と高導電率とをバランスよく具えることができてより好ましい。所定の組成となるように、原料を用意する。
【0013】
[形状及び大きさ]
本発明Cu-Ag合金線は、代表的には断面円形状の丸線が挙げられ、線径が0.05mm(50μm)以下である。伸線加工時の加工度を適宜変更することで、線径が0.01mm(10μm)〜0.03mm(30μm)のCu-Ag合金線とすることもできる。
【0014】
[引張強さ]
本発明Cu-Ag合金線は、強度が高く、引張強さが800MPa以上を満たす。引張強さは、組成(Agの含有量)や伸線加工時の加工度、後述する中間熱処理条件などを適宜変更することで、更に大きくすることができる。特に、引張強さは、800MPa以上1600MPa以下が好ましい。引張強さが上記範囲を満たすことで、例えば、本発明Cu-Ag合金線を巻回してシールド導体を形成したり、このシールド導体を具える同軸ケーブルを繰り返し曲げたり捻ったりなどしても本発明Cu-Ag合金線は破断し難い。
【0015】
[導電率]
本発明Cu-Ag合金線は、導電率が高く、82%IACS以上を満たす。製造条件や組成にもよるが、導電率が85%IACS以上を満たすCu-Ag合金線とすることができる。導電率が高いほどシールド特性に優れるシールド導体が得られるため、導電率の上限は特に設けない。
【0016】
[メッキ層]
本発明Cu-Ag合金線は、その表面にメッキ層を具えた形態とすることが好ましい。ここで、同軸ケーブルの端部にコネクタや端子を取り付ける際、ハンダを用いる。Cu-Ag合金は、ハンダとの濡れ性がよくない。これに対し、メッキ層を具える本発明Cu-Ag合金線を同軸ケーブルのシールド導体に利用する場合、上記ハンダとの濡れ性を高めることができる。また、上記コネクタなどの取り付けにあたり、同軸ケーブルの中心導体の端部を露出させるために、レーザーによりシールド導体を除去することがある。中心導体を構成する素線とシールド導体を構成する素線とが同様の組成である場合、レーザーによってシールド導体だけでなく、中心導体をも切断する恐れがある。これに対して、シールド導体を構成する素線がメッキ層を具えることで、中心導体のレーザーの吸収特性と、シールド導体のレーザーの吸収特性とを異ならせて、中心導体を適切に露出させることができる。また、メッキ層を有することで、Cu-Ag合金線の耐食性を向上できる。
【0017】
上記メッキ層は、Ag,Ag合金,Sn及びSn合金から選択される1種以上からなるものが挙げられる。上記メッキ層は、単層でも複数層でもよい。メッキ層の厚さは適宜選択することができ、0.1μm〜0.4μm程度とすると、ハンダ付け性に優れて好ましい。
【0018】
[用途(同軸ケーブル)]
本発明Cu-Ag合金線は、同軸ケーブルのシールド導体の構成素線に利用する。そこで、本発明同軸ケーブルとして、中心から順に、中心導体と、絶縁層と、シールド導体とを具え、上記シールド導体が上記絶縁層の外周に複数の極細線を巻回することで構成されており、上記極細線が上記本発明Cu-Ag合金線により構成されているものを提案する。本発明Cu-Ag合金線は、上述のように導電率が高い。従って、本発明同軸ケーブルは、本発明Cu-Ag合金線から構成されるシールド導体を具えることで、優れたシールド特性を有することができる。また、本発明Cu-Ag合金線は、上述のように高強度であることで、耐屈曲性や耐捻回性にも優れる。従って、上記絶縁層の外周に本発明Cu-Ag合金線を巻回してシールド導体を形成する場合に曲げや捻れなどの応力が加わっても断線し難く、シールド導体を生産性よく形成することができる上に、同軸ケーブルの使用時に曲げや捻れに伴う応力が加わっても、断線し難い。従って、本発明同軸ケーブルは、長期に亘り使用することができると期待される。
【0019】
(製造方法)
上記本発明Cu-Ag合金線は、例えば、以下の本発明Cu-Ag合金線の製造方法により製造することができる。本発明のCu-Ag合金線の製造方法は、同軸ケーブルのシールド導体に利用されるCu-Ag合金線を製造する方法に係るものであり、以下の鋳造工程、伸線工程、及び熱処理工程を具える。
鋳造工程:原料のAg及びCuを溶解した混合溶湯を用いて、鋳造材を作製する工程。
伸線工程:上記鋳造材に伸線加工を施して、Agを1質量%以上20質量%以下含有し、残部がCu及び不純物からなり、最終線径が0.05mm以下であるCu-Ag合金線を作製する工程。
熱処理工程:上記最終線径のCu-Ag合金線が得られるまでの途中段階にある伸線材に中間熱処理を施す工程。
特に、上記中間熱処理は、加熱温度を350℃以上550℃以下とする。また、上記中間熱処理を施す伸線材の線径と、上記中間熱処理を施した熱処理材に上記最終線径までの伸線加工を施して得られた最終線材の導電率及び引張強さとの関係を予め求めておき、上記最終線径のCu-Ag合金線の導電率が82%IACS以上、引張強さが800MPa以上となるように、上記関係に基づいて、上記最終線径から遡って設定した所定の線径のときに上記中間熱処理を行う。
【0020】
本発明者らは、上述した高導電率及び高強度なCu-Ag合金線を製造するにあたり、伸線加工と中間熱処理との関係を検討した。ここで、最終線径が0.05mm以下といった極細の線材を製造する場合、通常、多段階(多パス)に亘る伸線加工を行う。また、伸線加工途中(パス間)に、伸線加工により線材に導入された歪みを除去して伸線性を高める目的で中間熱処理を施すことがある。そして、この中間熱処理は、従来、任意の段階で行っていた。しかし、任意の段階ではなく、特定の線径となったときに中間熱処理を施すと共に、中間熱処理の条件を上記特定の条件とすることで、導電率が高く、かつ高強度な極細のCu-Ag合金線が得られる、との知見を得た。このような高導電率、高強度なCu-Ag合金線が得られた理由は、以下のように考えられる。
【0021】
Cu-Ag合金に熱処理を施し、母相のCuからAgを析出させると、導電率を向上することができる。しかし、Agの析出量が多過ぎると、Agの固溶による強度の向上効果が低減する。かつ、上記析出したAgを伸線加工により引き延ばして繊維状とすることで、強度を向上することができる。しかし、Agが十分に引き延ばされた状態(長繊維)とならないと、即ち、上記熱処理後の伸線加工が不十分であると、析出したAgが後段の伸線加工時の破断の起点となる恐れがある。従って、Agを適切な量だけ析出させるように、最終線径までの伸線加工前、つまり、伸線前や伸線加工途中に熱処理を施すと共に、析出させたAgを適切な状態(繊維状)となるように伸線加工を行う。このように、適切な熱処理及び伸線加工を行うと、高導電率及び高強度なCu-Ag合金線が得られる。
【0022】
一方、伸線加工を指標とした場合、導電率と引張強さとはトレードオフの関係にある。即ち、伸線加工を多く施す(加工度を高める)と、引張強さが高くなる反面、加工に伴う歪みが伸線材に蓄積されて、伸線材の導電率が低下する傾向にある。一方、伸線加工が少なければ(加工度が小さければ)、加工に伴う歪みが伸線材にあまり導入されないことから、伸線材の導電率は高い状態を維持することができるものの、加工硬化などによる強度の向上が得られ難く、引張強さが低くなる。
【0023】
他方、伸線加工後に伸線材に熱処理を施すと、上述のように歪みの除去により、導電率を向上することができる。そのため、同じ加工度の伸線加工を行った場合であっても、熱処理を行った場合は、熱処理を行わなかった場合と比較して、導電率が高い線材が得られる。また、中間熱処理の回数を多くするほど、歪みの蓄積量が低減されるため、同じ加工度の伸線加工を行った場合であっても、熱処理を複数回行った場合は、熱処理を1回行った場合と比較して、導電率が更に高い線材が得られる傾向にある。そして、中間熱処理の回数が一定の場合、最終線径に近い大きさにまで伸線加工を施して線径が小さい線材(以下、細径処理材と呼ぶ)に中間熱処理を施した場合と、伸線加工をあまり施しておらず線径が太い線材(以下、太径処理材と呼ぶ)に中間熱処理を施した場合とを比較すると、上記細径処理材に中間熱処理を施した方が導電率が高い傾向にある。なお、上述のように導電率と引張強さとはトレードオフの関係であるため、上記太径処理材の方が引張強さが高くなる傾向にある。これらのことから、導電率の向上には、伸線加工途中の適切な時期に熱処理を施すことが好ましいと言える。
【0024】
以上から、例えば、中間熱処理を1回行う場合、線径が細いときに中間熱処理を行うと、導電率が高い線材が得られ、熱処理を複数回行う場合、導電率を更に向上することができ、線径が太いときに中間熱処理を行うことで、引張強さが高い線材が得られる。このように中間熱処理を施す段階及び回数を、中間熱処理を施す伸線材の線径に応じて設計することで、導電率が82%IACS以上、引張強さが800MPa以上を満たすCu-Ag合金線が得られる。そこで、本発明製造方法では、伸線加工途中に施す中間熱処理を任意の段階で行うのではなく、上述のように中間熱処理を施す伸線材の線径と、最終線材の導電率と引張強さとの関係を求めておき、この関係に基づいて、中間熱処理を施すタイミング(線径)を設定することを規定する。
【0025】
上記中間熱処理は、1回でも複数回でもよい。複数回とする場合は、各回の中間熱処理を施す伸線材の線径と、当該中間熱処理を施した熱処理材に次の伸線加工を施して得られた線材の導電率及び引張強さの関係を予め求めておき、最終的に、最終線径のCu-Ag合金線の導電率が82%IACS以上、引張強さが800MPa以上となるように、各回の関係に基づいて、各回の伸線加工後の線径から遡って設定した所定の線径のときに中間熱処理を行うとよい。
【0026】
なお、伸線前の素材に対して、伸線前の加工(圧延など)により導入された歪みを除去する目的で別途熱処理を施してもよい。
【0027】
或いは、本発明Cu-Ag合金線は、以下の製造方法によっても製造することができる。この製造方法は、Agを1質量%以上20質量%以下含有する素材に伸線加工を施して、最終線径が0.05mm以下の極細線を製造する方法であり、以下の表面層除去工程を具える。
表面層除去工程:最終線径に至るまでの伸線の途中段階にある線材の表面層を除去する。この表面層除去工程は、特に、線径が1.0mm以下の細い線材の表面層を除去する細線加工工程を具える。
上記細線加工工程において表面層の除去は、表面層の除去前の線材の線径の1/2をrとするとき、除去する表面層の厚さtがt/r≧0.02を満たすように行う。上記表面層の厚さtとは、線材の表面から、線材の径方向に沿った距離とする。また、線材の断面形状は、代表的には、円形状である。
【0028】
上記製造方法では、伸線前の素材や最終線径の直前ではなく、伸線加工途中にある特定の大きさ、具体的には1.0mm以下といった細径の線材に対して特定量の表面層を除去することで、伸線時の断線を効果的に低減することができる。そのため、上記製造方法では、0.05mm以下といった極細のCu-Ag合金線を連続して製造することができ、長尺なCu-Ag合金線が得られる。かつ、上記製造方法によっても、導電率が高く、かつ高強度な本発明Cu-Ag合金線が得られる。
【0029】
上記製造方法は、断線が少ないことで、極細のCu-Ag合金線の生産性に優れる。特に、同軸ケーブルにおいてシールド導体の構成素線は、中心導体の外側に配置される。そのため、シールド導体の形成にあたり、中心導体の構成素線よりも多くの素線を利用したり、中心導体の構成素線よりも長い素線を利用する必要がある。従って、シールド導体の構成素線は、断線することなく連続して長尺な線材を製造可能な方法を利用することが望まれる。上記製造方法は、この要求に十分に応えることができる。また、上述した伸線加工途中の特定の時期に中間熱処理を行う本発明製造方法に、上記表面層除去工程を具えることで、高導電率で高強度な極細のCu-Ag合金線を生産性よく製造することができる。
【0030】
上記表面層除去工程を複数回具えて、各工程におけるt/rの合計が0.08以上、特に0.12以上となるように表面層の除去を行うと、表面層の除去量が多くなることで、疵や異物を十分に除去することができ、断線の発生を低減することができる。そのため、この形態では、極細のCu-Ag合金線の生産性に更に優れる。
【0031】
更に、上述した二つの製造方法において、以下のようにして製造した鋳造材を利用することが好ましい。用意した原料Cu及び原料Agを高純度のカーボンからなる坩堝で溶解し、この混合溶湯をCuとAgとの混合物の液相点温度以上に30分以上保持して、混合溶湯の表面に不純物を分離させる。この後、高純度のカーボンからなる鋳型を用いて、上記不純物を分離した混合溶湯から鋳造材を作製する。この鋳造材は、断線に関与し得る異物が少ない。このような鋳造材を伸線に供する素材とすることで、伸線時の断線を更に効果的に低減することができ、極細のCu-Ag合金線の生産性に更に優れる。
【0032】
本発明Cu-Ag合金線の製造にあたり、伸線に供する素材には、例えば、鋳造材に冷間圧延を施したものが利用できる。この素材に含有される異物を低減するために、原料Cuや原料Agは純度の高いもの、例えば、フォーナインクラス(純度99.99%)以上のものを利用することが好ましい。
【0033】
上記伸線加工(代表的には冷間)は、最終線径となるまで複数パスに亘って行う。各パスの加工度は、組成(Agの含有量)、最終線径、引張強さ、導電率などを考慮して適宜調整するとよい。特に、最初に行う冷間伸線加工は、加工度が70%以上であると、以降の伸線加工を所定の加工度で行い易く好ましい。
【0034】
本発明製造方法では、伸線加工途中、特に上述した関係に基づいて設定された所定の線径のときに、少なくとも1回の中間熱処理を行う。この中間熱処理により、当該中間熱処理前に素材に導入された加工歪みを除去して、導電率を向上すると共に、以降の伸線加工を行い易くする。また、中間熱処理によりAgを析出させて、以降の伸線加工によりAg析出物を繊維状とすることで、極細線の強度を向上する。中間熱処理の条件は、加熱温度:350℃〜550℃とする。350℃未満では、Agを十分に析出できない上に、歪みを十分に除去できず、導電率の向上が難しく、550℃超では、Agが過剰に析出することで、固溶強化による強度の向上効果が得られ難くなる。特に、加熱温度は400℃〜450℃が好ましい。保持時間は、0.5時間〜10時間が好ましい。
【0035】
伸線加工途中に、上述した表面層の除去を行う場合、除去には、化学処理や電気化学処理を利用することが好ましい。表面層の除去を行う対象が線径:1.0mm以下の細い線材であるため、通常の皮剥ぎに利用される皮剥ぎダイスにより表面層の除去を行おうとすると、ダイス孔の中心に線材の中心を合わせることが難しく、生産性の低下を招く。一方、化学処理や電気化学処理は、任意の線径の線材に対して簡単に施せる上に、処理後の表面が非常に平滑で断線の原因となる疵などが存在し難い。従って、処理後の線材に更に伸線加工を施す際、断線し難く、伸線性に優れる。代表的な処理として、化学研磨や電解研磨などが挙げられる。公知の処理を利用してもよい。表面層の除去を行う線材は、製造コストの低減の観点から、線径が0.2mm以上であることが好ましい。また、上述した表面層の除去を行う形態においても、最終線径前までの任意の段階で、少なくとも1回の中間熱処理を施す。即ち、伸線前でも伸線途中でもよい。中間熱処理条件は、上述した本発明製造方法における条件と同様とすることが好ましい。
【0036】
メッキ層を有するCu-Ag合金線を製造する場合、メッキ層の形成は、伸線加工途中に行ってもよいし、最終の伸線後に行ってもよい。伸線加工途中に上述した表面層の除去を行う場合、表面層の除去を行った後の任意の時期にメッキ層を形成することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明Cu-Ag合金線は、高導電率かつ高強度である。本発明同軸ケーブルは、シールド特性に優れる上に、破断強度や疲労強度にも優れる。本発明Cu-Ag合金線の製造方法によれば、線径0.05mm以下の極細なCu-Ag合金線であって、高導電率かつ高強度なCu-Ag合金線を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1(I)は、中間熱処理を施した線径と、最終的に得られたCu-Ag合金線の導電率との関係を示すグラフ、図1(II)は、中間熱処理を施した線径と、最終的に得られたCu-Ag合金線の引張強さとの関係を示すグラフである。
【図2】図2は、屈曲試験の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(試験例1)
Cu-Ag合金からなる複数の極細線を製造し、引張強さ及び導電率を調べた。その結果を図1に示す。
【0040】
極細線は、以下のように作製した。原料Cuとして、純度99.99%以上の電気銅、原料Agとして純度99.99%以上の銀粒(Ag)を用意し、高純度カーボン製坩堝に投入して連続鋳造装置内で真空溶解させ、Cu及びAgが溶解した混合溶湯を作製した。なお、銀粒の添加量は、混合溶湯に対するAg含有量が2質量%となるように調整した。
【0041】
得られた混合溶湯を用いて、高純度カーボン製鋳型により、線径φ22.0mmの丸線の鋳造材を製造し、この鋳造材に複数パスの冷間伸線加工を施し、最終線径φ0.025mm(25μm)のCu-Ag合金線を得た。特に、上記伸線加工途中の伸線材に中間熱処理を施した。ここでは、中間熱処理を1回施した試料、中間熱処理を2回施した試料、3回施した試料を作製した。中間熱処理を1回施した試料(図1に▲で示す)は、線径φが0.9mmのとき、0.32mmのときのいずれかに、中間熱処理:450℃×3時間を1回施して作製したCu-Ag合金線である。中間熱処理を2回施した試料(図1に□で示す)は、線径φが8mmのときに、中間熱処理:450℃×3時間を1回施し、その後、線径φが0.9mmのとき、0.32mmのとき、0.12mmのときのいずれかに、2回目の中間熱処理:450℃×3時間を施して作製したCu-Ag合金線である。中間熱処理を3回施した試料(図1に◆で示す)は、線径φが8mm及び2.6mmのときにそれぞれ、中間熱処理:450℃×3時間を1回施し、更にその後、線径φが0.9mmのとき、0.32mmのときのいずれかに3回目の中間熱処理:450℃×3時間を施して作製したCu-Ag合金線である。
【0042】
得られた各Cu-Ag合金線について、導電率及び引張強さを測定した。引張強さは、JIS Z 2241(1998)の規定に準じて測定した(標点距離GL:10mm)。導電率は、ブリッジ法により測定した。
【0043】
図1に示すように、同じ組成のCu-Ag合金(ここでは、Ag:2質量%含有)の素材を用いても、伸線加工途中の中間熱処理を施す線径が異なることで、導電率及び引張強さが異なることが分かる。具体的には、線径が小さくなったときに中間熱処理を施す方が、導電率が高いCu-Ag合金線が得られ、線径が大きいときに中間熱処理を施す方が、引張強さが高いCu-Ag合金線が得られる傾向にあることが分かる。また、中間熱処理の回数を増やすことで、導電率を高め易い傾向にあることが分かる。
【0044】
上記試験結果から、中間熱処理を施す伸線材の線径と、当該中間熱処理を施した熱処理材に最終線径までの伸線加工を施して得られた最終線材の導電率及び引張強さとの関係を予め求めておき、この関係に基づいて、中間熱処理を施す時期を決定し、決定した所定の線径のときに中間熱処理を施すことで、導電率が82%IACS以上、引張強さが800MPa以上の極細のCu-Ag合金線が得られることが分かる。
【0045】
(試験例2)
Cu-Ag合金からなる複数の極細線を製造し、機械的特性、導電率、及び伸線性を調べた。
【0046】
<試料No.2-0>
原料Cuとして、純度99.99%以上の電気銅、原料Agとして純度99.99%以上の銀粒(Ag)を用意した。用意した上記電気銅を酸洗し、電気銅の表面に付着した異物を除去した後、酸洗した電気銅と上記銀粒を高純度カーボン製坩堝に投入して、連続鋳造装置内で真空溶解させ、Cu及びAgが溶解した混合溶湯を作製した。なお、銀粒の添加量は、混合溶湯に対するAg含有量が2質量%となるように調整した。
【0047】
上記混合溶湯は、銀粒を添加した後、CuとAgとの混合物の液相点温度以上に30分保持して、上記坩堝内の混合溶湯の表面に異物を含む不純物を分離させた。
【0048】
不純物を分離させた後、高純度カーボン製鋳型を用いて線径φ8.0mmの丸線(鋳造材)を製造した。得られた鋳造材中のAl量及びSi量を測定した。ここでは、鋳造材を200g取り分けて、6.4mol以上の硝酸を含む水溶液に溶解し、この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して、残渣物をフィルターで回収した。回収した残渣物を白金製坩堝内で乾燥し、フィルターを灰化した後、融剤を加えて溶融し、ガラス状物質とした。得られたガラス状物質を、塩酸を含む水溶液に溶解した。鋳造材の溶解からガラス状物質の溶解までの作業は、クリーンブース内で実施した。そして、ガラス状物質が溶解した溶液を誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により、Si量及びAl量を定量した。その結果、Si量:0.1質量ppm、Al:0.3質量ppmであり、いずれも1質量ppm以下であった。なお、Si量及びAl量の測定に利用する鋳造材の量は、100g〜200g程度で十分である。
【0049】
得られた鋳造材(線径φ8mm)に複数パスの冷間伸線加工を施し、線径φが2.6mmの線材を得た。この中間線材に400℃×8時間の中間熱処理を施した後、化学研磨を施し、表面層を除去した。化学研磨は、研磨液に硫酸水素水溶液を用い、浸漬時間:150min、温度:30℃として行った。除去した表面層の厚さt1は、t1=0.15mmとした。線径φ1の1/2をr1とすると、r1=1.30、t1/r1≒0.115である。更に、この試料No.2-0は、伸線の途中段階である、線径φ2が0.9mm(≦1.0mm)となったとき、上記と同様の化学研磨を線材に施し、表面層を除去した。除去した表面層の厚さt2は、浸漬時間を異ならせることで変化させ、t2=0.01mmとした。線径φ2の1/2をr2とすると、r2=0.45、t2/r2≒0.022(≧0.02)である。2回の表面層の除去におけるr1/t1及びt2/r2の合計は、0.115+0.022=0.137(≧0.08)である。
【0050】
上記2回目の表面層の除去後、更に冷間伸線加工を施し、最終線径φが0.021mm(21μm),0.04mmの線材を得た。最終線径φが0.021mmの線材にSnメッキを施し(メッキ厚さ:0.1μm)、メッキ付きCu-Ag合金線を得た。このメッキ付きCu-Ag合金線、及び最終線径φ0.04mmのCu-Ag合金線を試料No.2-0とする。なお、この試験において伸線加工には、いずれの試料も、American Wire Gage規格(AWG規格)のダイスを使用した。
【0051】
<試料No.2-1〜2-6,100>
原料Cuとして試験例1と同様の電気銅、原料Agとして試験例1と同様の銀粒(Ag)を用意した。用意した電気銅を連続鋳造装置内で真空溶解させた。電気銅が完全に溶解した後、連続鋳造装置のチャンバー内をアルゴンガスに置換して、用意した上記銀粒を坩堝に投入して溶解し、Cu及びAgが溶解した混合溶湯を鋳造して鋳造材(線径φ22mm又は線径φ16mmの丸線)を作製した。なお、銀粒の添加量は、混合溶湯に対するAg含有量が表1に示す量となるように調整した。
【0052】
得られた鋳造材に複数パスの冷間伸線加工を施し、試料ごとに、最終線径φが0.021mm(21μm),0.04mm(40μm)のCu-Ag合金線を得た。特に、上記伸線加工途中の伸線材において、表2において○印が付された線径のときに中間熱処理:450℃×3時間を施した。また、試料No.2-1,2-3〜2-6については、線径φ0.9mmのときに、試料No.2-0と同様の化学研磨を線材に施して、表面層を除去した(t/r≒0.022)。
【0053】
比較として、Agの含有量が多いCu-Ag合金線(最終線径φ0.021mm(21μm),0.04mm(40μm)、試料No.100)、及び伸線加工途中に中間熱処理を施していないCu-Ag合金線(最終線径φ0.021mm(21μm),0.04mm(40μm)、試料No.110)を用意した。試料No.100は、表1に示す組成のCu-Ag合金からなる線径φ22mmの鋳造材を上述した試料No.2-1〜2-6と同様にして作製し、表2において丸印が付された線径のときに中間熱処理:450℃×3時間を施した。試料No.110は、表1に示す組成のCu-Ag合金からなる線径φ22mmの鋳造材を上述した試料No.2-1〜2-6と同様にして作製し、この鋳造材に中間熱処理を施さずに伸線加工を施して作製した。
【0054】
<Cu-Ag合金線の特性>
得られた各試料No.2-0〜2-6,100,110について、引張強さ(MPa)、導電率(%IACS)、屈曲回数、捻回回数、横巻性、伸線性を調べた。その結果を表1に示す。
【0055】
[引張強さ、導電率]
各試料において引張強さ、及び導電率は、最終線径φが0.021mmの線材について測定した。引張強さは、JIS Z 2241の規定に準じて測定した(標点距離GL:10mm)。導電率は、ブリッジ法により測定した。
【0056】
[屈曲回数]
各試料において屈曲回数は、最終線径φ0.04mmの線材について測定した。屈曲回数は、JIS G 3522の曲げ試験の規定に準じて測定した。ここでは、図2に示すように対向配置させた一対のマンドレルm間に試料Sを配置し、試料Sの一端に錘w(負荷加重:12.5g)を取り付け、他端を試験機のレバーlで把持してマンドレルmの外周に沿って試料Sに曲げ半径R(=2mm)の曲げを加え、反復方向に屈曲させて、サンプルが破断するまでの回数を求める。反復を1回として数える。この回数を屈曲回数とする。屈曲速度は、30回/minとする。
【0057】
[捻回回数]
各試料において捻回回数は、最終線径φ0.04mmの線材について測定した。捻回回数は、サンプルの一端側を荷重:25gを加えて固定し、他端側を把持して一方向に捻回した後、他方向に捻回して、即ち、反復方向に捻回して、サンプルが破断するまでの捻り回数を求める。反復を1回と数える。この試験では、標点距離GL=10mmとした。
【0058】
[横巻性]
試料No.2-0,2-1,2-2,110に対して、横巻性を調べた。横巻性は、各試料において最終線径φ0.021mmの線材を20kg用意し、20kg全量を所定のピッチで螺旋状に横巻きし終わるまでの間に発生した断線回数を測定し、20kgをその断線回数で割った値(kg/回)により評価した。
【0059】
[伸線性の評価]
試料No.2-0,2-1,2-2,110に対して、線径φ22mmの素材を最終線径φ0.021mmまで伸線したときの伸線性を調べた。伸線性は、上記各素材を20kgずつ用意し、20kg全量が伸線し終わるまでの間に発生した断線回数を測定し、20kgをその断線回数で割った値(kg/回)により評価した。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
表1,2に示すように、伸線加工途中において特定の線径のときに中間熱処理を施すことで、導電率が高く、かつ高強度で、耐屈曲性や耐捻回性に優れる極細なCu-Ag合金線が得られることが分かる。特に、同じ組成のCu-Ag合金であっても、伸線加工途中に中間熱処理を施す線径を小さくしたり、複数回の中間熱処理を施したりすることで、導電率が更に高い線材が得られることが分かる。このように特定の線径のときに中間熱処理を行うことで、高導電率と高強度とをバランスよく具えるCu-Ag合金線が得られることが分かる。また、伸線加工途中に更に表面層の除去を行うことで、伸線性を高められることが分かる。そのため、このような表面層の除去を行うことで上述のような高強度、高導電率の極細のCu-Ag合金線を生産性よく製造することができると言える。
【0063】
更に、得られた試料No.2-0〜2-6はいずれも、捻回回数が高く、横巻性に優れることで、同軸ケーブルのシールド導体に利用する場合、絶縁層の外周に巻回する際に断線などが少ないと期待される。加えて、得られた試料No.2-0〜2-6はいずれも、導電率が高い上に、屈曲回数や捻回回数が多いことから、試料No.2-0〜2-6のCu-Ag合金線から構成されるシールド導体を具える同軸ケーブルは、シールド特性に優れる上に、使用時に加えられる捻れや曲げなどに対する耐性にも優れると期待される。
【0064】
なお、試料No.2-1〜2-6においても、試料No.2-0と同様に、上記伸線加工途中や伸線加工後の適宜な時期にメッキ層を形成する工程を加えることで、メッキ層を有するCu-Ag合金線が得られる。表面層の除去を行う場合、表面層の除去後の適宜な時期に、中間熱処理を行う場合、中間熱処理後の適宜な時期にメッキ層の形成を行うとよい。
【0065】
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、Agの含有量、導電率、引張強さ、最終線径、中間熱処理を施す線径などを適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明同軸ケーブルは、携帯電話といった携帯用電子機器、自動車などに載置される電子部品、医療機器、産業用ロボットなどの各種の機器の電線として好適に利用することができる。本発明Cu-Ag合金線は、上記本発明同軸ケーブルのシールド導体に好適に利用することができる。本発明Cu-Ag合金線の製造方法は、導電率が高く、高強度であって極細なCu-Ag合金線の製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
l レバー S 試料 w 錘 m マンドレル R 曲げ半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸ケーブルのシールド導体に用いられるCu-Ag合金線であって、
Agを1質量%以上20質量%以下含有し、残部がCu及び不純物からなり、
導電率が82%IACS以上であり、
引張強さが800MPa以上であり、
線径が0.05mm以下であることを特徴とするCu-Ag合金線。
【請求項2】
前記Cu-Ag合金線の表面にメッキ層を具えており、
前記メッキ層は、Ag,Ag合金,Sn及びSn合金から選択される1種以上からなることを特徴とする請求項1に記載のCu-Ag合金線。
【請求項3】
中心から順に、中心導体と、絶縁層と、シールド導体とを具える同軸ケーブルであって、
前記シールド導体は、前記絶縁層の外周に、複数の極細線を巻回することで構成されており、
前記極細線は、請求項1又は2に記載のCu-Ag合金線であることを特徴とする同軸ケーブル。
【請求項4】
同軸ケーブルのシールド導体に利用されるCu-Ag合金線の製造方法であって、
原料のAg及びCuを溶解した混合溶湯を用いて、鋳造材を作製する鋳造工程と、
前記鋳造材に伸線加工を施して、Agを1質量%以上20質量%以下含有し、残部がCu及び不純物からなり、最終線径が0.05mm以下であるCu-Ag合金線を作製する伸線工程と、
前記最終線径のCu-Ag合金線が得られるまでの途中段階にある伸線材に中間熱処理を施す熱処理工程とを具え、
前記中間熱処理は、
加熱温度を350℃以上550℃以下とし、
前記中間熱処理を施す伸線材の線径と、前記中間熱処理を施した熱処理材に前記最終線径までの伸線加工を施して得られた最終線材の導電率及び引張強さとの関係を予め求めておき、前記最終線径のCu-Ag合金線の導電率が82%IACS以上、引張強さが800MPa以上となるように、前記関係に基づいて、前記最終線径から遡って設定した所定の線径のときに行うことを特徴とするCu-Ag合金線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−146352(P2011−146352A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8459(P2010−8459)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】