説明

D1378CA光ファイバのための放射線硬化性一次被覆

光ファイバのための一次被覆として使用するための放射線硬化性被覆、前記被覆を用いて被覆された光ファイバ、ならびに被覆された光ファイバを調製するための方法である。放射線硬化性一次被覆組成物は、オリゴマー;希釈剤モノマー;光重合開始剤;抗酸化剤;および接着促進剤を含むが、ここで、前記オリゴマーが、ヒドロキシエチルアクリレート;芳香族イソシアネート;脂肪族イソシアネート;ポリオール;触媒;および重合防止剤の反応生成物であり、前記触媒がオルガノビスマス触媒であり;ここで、前記オリゴマーが、少なくとも約4000g/molから約15,000g/mol以下までの数平均分子量を有し、そして前記放射線硬化性被覆組成物の硬化膜が、約−25℃〜約−45℃のピークtanデルタTgと、約0.50MPa〜約1.2MPaの弾性率とを有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本特許出願は、以下の出願に対する優先権を主張するものである:同時係属中の米国仮特許出願第60/874,721号明細書、「CA ラディエーション・キュラブル・プライマリー・コーティング・フォア・オプティカル・ファイバ(CA Radiation Curable Primary Coating for Optical Fiber)」(出願日2006年12月14日)(この特許を参照により本明細書に援用する)。
【0002】
[技術分野]
本発明は、光ファイバのための一次被覆として使用するための放射線硬化性被覆、前記被覆を用いて被覆された光ファイバ、ならびに被覆された光ファイバを調製するための方法に関する。
【0003】
[背景技術]
光ファイバは、典型的には、2層以上の放射線硬化性被覆を用いて被覆される。それらの被覆は、典型的には、光ファイバに対して液状の形態で適用され、次いで放射線に暴露させて硬化させる。被覆を硬化させるために使用可能な放射線のタイプは、そのような被覆の1種または複数の放射線硬化性成分の重合を開始させることが可能なものとするべきである。そのような被覆を硬化させるのに好適な放射線は周知であって、紫外光線(以後「「UV」)および電子ビーム(「EB」)が含まれる。被覆された光ファイバを調製するのに使用される被覆を硬化させるための好ましい放射線のタイプはUVである。
【0004】
光ファイバに直接接触する被覆は一次被覆と呼ばれ、その一次被覆を覆う被覆は二次被覆と呼ばれる。光ファイバを、放射線硬化性被覆をする当業者には、一次被覆が、二次被覆よりも軟らかであるのが有利であることは公知である。この配列をとることにより有利となるのは、マイクロベンドに対する抵抗性が向上することである。
【0005】
上述した光ファイバのための一次被覆に使用するのに好適な放射線硬化性被覆には以下のものが含まれる。
【0006】
中国特許出願公開第CN16515331号明細書の「ラディエーション・ソリディフィケーション・ペイント・アンド・イッツ・アプリケーション(Radiation Solidification Paint and Its Application)」(出願人:Shanghai Feikai Photoelectric)、発明者:Jibing LinおよびJinshan Zhang)には、オリゴマー、活性希釈剤、光重合開始剤、熱安定剤、選択的接着促進剤を含む放射線硬化性についての記述と特許請求があるが、ここで、そのオリゴマーの含量が20%〜70%の間(重量基準、以下同様)、その他の成分の含量が30%〜80%の間であり、そのオリゴマーが、(メタ)アクリレート化ポリウレタンオリゴマー、または(メタ)アクリレート化ポリウレタンオリゴマーと(メタ)アクリレート化エポキシオリゴマーとの混合物であり;
ここで前記(メタ)アクリレート化ポリウレタンオリゴマーは、少なくとも以下の物質を使用して調製される:
(1)ポリウレタンポリオール、ポリアミドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、炭化水素ポリオール、ポリシロキサンポリオール、同種または異種の2種以上のポリオールの混合物から選択される1種のポリオール;
(2)ジイソシアネートまたはポリイソシアネートの2種以上の混合物;
(3)イソシアネートと反応することが可能な1個のヒドロキシルを含む(メタ)アクリレート化化合物。
【0007】
中国特許出願公開第CN16515331号明細書の実施例3は、この公開特許出願の中で、放射線硬化性一次被覆として使用するのに適した放射線硬化性被覆の合成が記載されている唯一の実施例である。実施例3で合成された被覆は、1.6MPaの弾性率を有している。
【0008】
論文の「UV−キュアド・ポリウレタン−アクリリック・コンポジションズ・アズ・ハード・エクスターナル・レイヤーズ・オブ・トゥー−レイヤー・プロテクティブ・コーティングズ・フォア・オプティカル・ファイバズ(UV−CURED POLYURETHANE−ACRYLIC COMPOSITIONS AS HARD EXTERNAL LAYERS OF TWO−LAYER PROTECTIVE COATINGS FOR OPTICAL FIBRES)(著者:W.Podkoscielny)およびB.Tarasiuk)、Polim.Tworz.Wielk、第41巻、第7/8号、p.448〜55、1996(NDN−131−0123−9398−2)にはUV硬化されたウレタン−アクリルオリゴマーの合成の最適化ならびにそれらの光ファイバのためのハード保護被覆としての使用に関する検討が記載されている。ポーランド製のオリゴエーテロール、ジエチレングリコール、トルエンジイソシアネート(アイゾシン(Izocyn)T−80)およびイソホロンジイソシアネートに加えて、ヒドロキシエチルおよびヒドロキシプロピルメタクリレートを使用して合成が行われた。活性希釈剤(ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよび1,4−ブタンジオールアクリレート、またはそれらの混合物)および光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを、重合活性二重結合を有するこれらのウレタン−アクリルオリゴマーに添加した。その組成物に、酸素が存在しない雰囲気下でUV照射した。それらの組成物のIRスペクトルを記録し、いくつかの物理的および化学的および機械的性質(密度、分子量、温度の関数としての粘度、屈折率、ゲル含量、ガラス転移温度、ショアー硬度、ヤング率、引張強さ、破断時伸び、耐熱性、および水蒸気拡散係数)を、硬化前後に求めた。
【0009】
論文の「プロパティーズ・オブ・ウルトラバイオレット・キュラブル・ポリウレタン−アクリレーツ(PROPERTIES OF ULTRAVIOLET CURABLE POLYURETHANE−ACRYLATES)」(著者:M.コシバ(M.Koshiba)、K.K.S.ホワン(K.K.S.Hwang)、S.K.フォリー(S.K.Foley)、D.J.ヤルッソ(D.J.Yarusso)、およびS.L.クーパー(S.L.Cooper)、ジャーナル・オブ・マテリアル・サイエンス(J.Mat.Sci.)、17、No.5、1982年5月、p.1447〜58(NDN−131−0063−1179−2)には、イソホロンジイソシアネートおよびTDIをベースとするUV硬化されたポリウレタン−アクリレートの化学構造と物理的性質の間の関係についてなされた研究が記載されている。ソフトセグメント分子量と架橋剤を変化させて、その2種の系を調製した。動的機械試験結果から、ソフトセグメント分子量に依存して、1相または2相物質が得られるであろうことが判明した。後者が増える程、そのポリオールのTgは低温側にシフトした。N−ビニルピロリドン(NVP)またはポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)のいずれかの使用量を増やすと、ヤング率および極限引張強さが増大した。NVP架橋によって2相物質の中の靱性が向上し、高温Tgピークをより高い温度へとシフトさせたが、PEGDAではそれらの効果は認められなかった。その二つの系の引張物性は、一般的には、同等であった。
【0010】
典型的には、光ファイバ上で使用するための放射線硬化性被覆の製造においては、イソシアネートを使用してウレタンオリゴマーを製造する。多くの文献、たとえば米国特許第7,135,229号明細書「ラディエーション−キュラブル・コーティング・コンポジション(RADIATION−CURABLE COATING COMPOSITION)」(発行:2006年11月14日、出願人DSM・IP・アセッツ・B.V.(DSM IP Assets B.V.))の、第7カラム、第10〜32行には、当業者にウレタンオリゴマーの合成法を示す、以下のような教示がある:その発明の組成物の製造において使用するのに好適なポリイソシアネートは、脂肪族、脂環族または芳香族のいずれであってもよく、たとえば以下のものが挙げられる:ジイソシアネートたとえば、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシル)イソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネート−エチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および2,5(または6)−ビス(イソシアナトメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン。これらのジイソシアネートの中では、2,4−トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、およびメチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が特に好ましい。これらのジイソシアネート化合物は、個別に使用することも、2種以上の組合せで使用することもできる。
【0011】
現在、多くの一次被覆が入手可能ではあるが、既存の被覆に関して、改良された製造および/または性能を与える新規な一次被覆が得られれば望ましい。
【0012】
[発明の概要]
一つの態様において、本発明は、以下のものを含む放射線硬化性一次被覆組成物を提供するが:
A)オリゴマー;
B)希釈剤モノマー;
C)光重合開始剤;
D)抗酸化剤;および
E)接着促進剤;
ここで、前記オリゴマーが:
i)ヒドロキシエチルアクリレート;
ii)芳香族イソシアネート;
iii)脂肪族イソシアネート;
iv)ポリオール;
v)触媒;および
vi)重合防止剤;
の反応生成物であり、
ここで、前記触媒がオルガノビスマス触媒であり;
ここで、前記オリゴマーが、少なくとも約4000g/molから約15,000g/mol以下までの数平均分子量を有し、そして
ここで、前記放射線硬化性被覆組成物の硬化膜が、約−25℃〜約−45℃のピークtanデルタTgと、約0.50MPa〜約1.2MPaの弾性率とを有する。
【0013】
本発明のまた別な態様は、光ファイバを被覆するための方法を提供するが、その方法は:
a)ガラス線引タワーを運転してガラス光ファイバを製造する工程と;
b)前述の放射線硬化性一次被覆組成物を用いて前記ガラス光ファイバを被覆する工程と
を含み、
ここで、前記放射線硬化性一次被覆組成物には、特許請求の範囲に記載の本発明の第一の態様の、放射線硬化性一次被覆組成物が含まれる。
【0014】
本発明のさらにまた別な態様は、光ファイバを被覆するための方法であるが、その方法は:
a)ガラス線引タワーを、約750メートル/分〜約2100メートル/分の間の線速度で運転して、ガラス光ファイバを製造する工程と;
b)前述の放射線硬化性一次被覆組成物を用いて前記ガラス光ファイバを被覆する工程と
を含む。
【0015】
本発明のさらなる態様では、第一および第二の層を用いて被覆された線材が提供されるが、
ここで、その第一の層が、光ファイバの外側表面と接触状態にある、特許請求の範囲に記載の本発明の、硬化された放射線硬化性一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
その線材の上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.150MPa〜約0.600MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃
を有し、
ここで、その硬化可能な一次被覆が前述の放射線硬化性一次被覆組成物である。
【0016】
本発明のさらなる態様では、第一および第二の層を用いて被覆された光ファイバが提供されるが、
ここで、その第一の層が、光ファイバの外側表面と接触状態にある、特許請求の範囲に記載の本発明の、硬化された放射線硬化性一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
その光ファイバの上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.150MPa〜約0.600MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃
を有する。
【0017】
特許請求の範囲に記載の本発明のまた別な態様は、以下のものを含む放射線硬化性一次被覆組成物であって:
オリゴマー;
希釈剤モノマー;
光重合開始剤;
抗酸化剤;および
接着促進剤;
ここで、前記オリゴマーが、i)ヒドロキシエチルアクリレート;ii)芳香族イソシアネート;iii)脂肪族イソシアネート;iv)ポリオール;v)触媒;およびvi)重合防止剤の反応生成物であり、
ここで、前記オリゴマーが、少なくとも約4000g/molから約15,000g/mol以下までの数平均分子量を有し、
ここで、前記放射線硬化性一次被覆組成物の硬化膜が、約−25℃〜約−45℃のピークtanデルタTgと、約0.50MPa〜約1.2MPaの弾性率とを有し、
ここで、前記触媒が、スルホン酸、非限定的に挙げれば、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸、CAS27176−87−0;およびメタンスルホン酸、CAS75−75−2;アミノまたは有機塩基触媒、非限定的に挙げれば、たとえば、1,2−ジメチルイミダゾール、CAS1739−84−0;およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、CAS280−57−9(強塩基);およびトリフェニルホスフィン;ジルコニウムおよびチタンのアルコキシド、非限定的に挙げれば、たとえばジルコニウムブトキシド,(テトラブチルジルコネート)CAS1071−76−7;およびチタンブトキシド(テトラブチルチタネート)CAS5593−70−4;ならびにイオン性液状ホスホニウム、イミダゾリウム、およびピリジニウム塩、非限定的に挙げれば、たとえば、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、CAS No.374683−44−0;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、CAS No.284049−75−8;およびN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、CAS No.125652−55−3;およびテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムからなる群から選択される。
【0018】
[発明の詳細な説明]
本特許出願の全体を通して、以下の略称は、次に示される意味を有する。
【0019】
【表1】

【0020】
本発明の一つの態様は、光ファイバの上の一次被覆として使用するための放射線硬化性一次被覆組成物であって、その放射線硬化性被覆は、
A)オリゴマー;
B)希釈剤モノマー;
C)光重合開始剤;
D)抗酸化剤;および
E)接着促進剤;
を含むが、
ここで、前記オリゴマーが:
i)ヒドロキシエチルアクリレート;
ii)芳香族イソシアネート;
iii)脂肪族イソシアネート;
iv)ポリオール;
v)触媒;および
vi)重合防止剤
の反応生成物であり、
ここで、前記オリゴマーが、少なくとも約4000g/molから約15,000g/mol以下までの数平均分子量を有し、
ここで、前記触媒がオルガノビスマス触媒であり;そして
ここで、前記放射線硬化性一次被覆組成物の硬化膜が、約−25℃〜約−45℃のピークtanデルタTgと、約0.50MPa〜約1.2MPaの弾性率とを有する。
【0021】
本発明のオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレーオリゴマーであって、それには(メタ)アクリレート基、ウレタン基および主鎖を含むが、その「(メタ)アクリレート」という用語には、アクリレートおよびメタクリレート官能基が含まれる。主鎖は、ポリオールを使用することから導入され、ポリオールをジイソシアネート、ならびにヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシエチルアクリレートと反応させる。
【0022】
そのオリゴマーは、アクリレート(たとえば、HEA)を、芳香族イソシアネート(たとえば、TDI);脂肪族イソシアネート(たとえば、IPDI);ポリオール(たとえば、P2010);オルガノビスマス触媒(たとえば、コスキャット83);および重合防止剤(たとえば、BHT)と共に反応させることによって調製するのが望ましい。
【0023】
芳香族および脂肪族イソシアネートは周知であって、市販されている。好適な芳香族イソシアネートは、80%の2,4−トルエンジイソシアネートと20%の2,6−トルエンジイソシアネート、TDIの混合物であり、それに対して好適な脂肪族イソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、IPDIである。
【0024】
そのオリゴマーを調製する場合には、そのイソシアネート成分は、すべてオリゴマー混合物の重量パーセントを基準にして、約1〜約15重量%、望ましくは約1.5〜約20重量%、好ましくは約2〜約15重量%の範囲の量で、オリゴマー反応混合物に添加してもよい。
【0025】
望ましくは、そのイソシアネートが、脂肪族イソシアネートを芳香族イソシアネートよりも多く含んでいるようにするべきである。より望ましくは、脂肪族イソシアネート対芳香族イソシアネートの比率が、約2〜7:1から、好ましくは約3〜6:1から、最も好ましくは約3〜5:1からである。
【0026】
オリゴマーの調製においては、各種のポリオールを使用することができる。好適なポリオールの例は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオールなどである。それらのポリオールは、別々に使用しても、あるいは2種以上の組合せで使用してもよい。それらのポリオールの構造単位を重合させる方法には何も特別な制限はなく、ランダム重合、ブロック重合、またはグラフト重合のいずれを用いてもよい。P2010(BASF)を使用するのが好ましい。
【0027】
そのオリゴマーを調製する場合には、ポリオール成分をオリゴマー反応混合物に対して、各種好適な量、すべてオリゴマー混合物の重量パーセントを基準にして、望ましくは約20〜99重量%、より望ましくは約40〜97重量%、好ましくは約60〜約95重量%の範囲の量で添加してもよい。
【0028】
オリゴマーを調製する際に使用するのに適したポリオールの数平均分子量は、約500〜約8000、望ましくは約750〜約6000、好ましくは約1000〜約4000の範囲としてもよい。
【0029】
そのオリゴマーを調製する際に有用なアクリレート成分は各種好適なタイプのものであってよいが、望ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシエチルアクリレート(HEA)である。そのオリゴマーを調製する場合には、アクリレート成分をオリゴマー反応混合物に対して、各種適切な量、すべて、オリゴマー反応剤混合物の重量を基準にして、望ましくは約1〜20重量%、より望ましくは約1.5〜10重量%、好ましくは約2〜約4重量%の量で添加してもよい。
【0030】
そのオリゴマーを得る反応においては、ウレタン化触媒を使用してもよい。好適な触媒は、当業者には周知である。特許請求の範囲に記載の本発明の一つの態様においては、その触媒がオルガノビスマス触媒である。
【0031】
特許請求の範囲に記載の本発明のまた別な態様においては、その触媒が、スルホン酸、非限定的に挙げれば、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸、CAS27176−87−0;およびメタンスルホン酸、CAS75−75−2;アミノまたは有機塩基触媒、非限定的に挙げれば、たとえば、1,2−ジメチルイミダゾール、CAS1739−84−0;およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、CAS280−57−9(強塩基);およびトリフェニルホスフィン;ジルコニウムおよびチタンのアルコキシド、非限定的に挙げれば、たとえばジルコニウムブトキシド,(テトラブチルジルコネート)CAS1071−76−7;およびチタンブトキシド(テトラブチルチタネート)CAS5593−70−4;ならびにイオン性液状ホスホニウム、イミダゾリウム、およびピリジニウム塩、非限定的に挙げれば、たとえば、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、CAS No.374683−44−0;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、CAS No.284049−75−8;およびN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、CAS No.125652−55−3;およびテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムからなる群から選択される。
【0032】
触媒は遊離状態、可溶性状態および均質状態のいずれでも使用してよいし、あるいはそれらを不活性薬剤たとえばシリカゲルもしくはジビニル架橋強度架橋樹脂につなぎとめて、不均質な状態で使用し、オリゴマー合成が完了したところで濾過してもよい。
【0033】
そのオリゴマーを調製する場合には、触媒成分を、オリゴマー反応混合物に各種適切な量、望ましくは約0.01〜約3.0重量%、より望ましくは約0.01〜0.5重量%、好ましくは約0.01〜約0.05重量%の量で添加してもよい。
【0034】
オリゴマーを調製する際に、重合防止剤を使用してもよい。この成分は、オリゴマーの合成および貯蔵の間にアクリレートが重合するのを防止するのに役立つ。当業者には各種の重合防止剤が公知であって、オリゴマーの調製の際に使用することができる。重合防止剤がBHTであれば好ましい。
【0035】
オリゴマーを調製する場合には、重合防止剤成分をオリゴマー反応混合物に、各種適切な量、望ましくは約0.01〜2.0重量%、より望ましくは約0.01〜1.0重量%、好ましくは約0.05〜約0.50重量%の量で添加してもよい。
【0036】
オリゴマーの調製は、各種適切なプロセスによって行わせてよいが、好ましくは、イソシアネート、ポリオールおよび重合防止剤成分を混合してから、それに触媒を添加することによって進行させる。次いでその混合物を加熱し、反応を完了させるのがよい。次いで、アクリレート(たとえば、HEA)を添加してよく、その混合物を反応が完了するまで加熱する。一般的には、オリゴマーの反応は、約10℃〜約90℃、好ましくは約30℃〜約85℃の温度で実施する。
【0037】
本明細書において特許請求される発明の一つの実施態様では、少なくとも約4000g/molの数平均分子量を有するオリゴマーが含まれる。本明細書において特許請求される発明の一つの実施態様では、少なくとも約5000g/molの数平均分子量を有するオリゴマーが含まれる。本明細書において特許請求される発明の一つの実施態様では、少なくとも約6000g/molの数平均分子量を有するオリゴマーが含まれる。
【0038】
本明細書において特許請求される発明の実施態様では、約15,000g/mol以下の数平均分子量を有するオリゴマーが含まれる。本明細書において特許請求される発明の実施態様では、約10000g/mol以下の数平均分子量を有するオリゴマーが含まれる。本明細書において特許請求される発明の実施態様では、約9000g/mol以下の数平均分子量を有するオリゴマーが含まれる。
【0039】
オリゴマーが調製されたら、放射線硬化性組成物を調製することができる。硬化可能な組成物中でのオリゴマーの量は、目的とする性質に応じて変化させてよいが、放射線硬化性組成物の重量パーセントを基準にして望ましくは約20〜80重量%、より望ましくは約30〜70重量%、好ましくは約40〜60重量%とする。
【0040】
その硬化可能な組成物に、1種または複数の反応性モノマー希釈剤を添加してもよいが、そのような希釈剤は、当業者には周知である。各種の希釈剤が当業者には公知であり、オリゴマーの調製において使用できるが、そのようなものとしては以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):アルコキシル化アルキル置換されたフェノールアクリレート、たとえばエトキシル化ノニルフェノールアクリレート(ENPA)、プロポキシル化ノニルフェノールアクリレート(PNPA)、ビニルモノマーたとえば、ビニルカプロラクタム(nVC)、イソデシルアクリレート(IDA)、(2−)エチル−ヘキシルアクリレート(EHA)、ジ−エチレングリコール−エチル−ヘキシルアクリレート(DEGEHA)、イソ−ボルニルアクリレート(IBOA)、トリ−プロピレングリコール−ジアクリレート(TPGDA)、ヘキサン−ジオール−ジアクリレート(HDDA)、トリメチロールプロパン−トリアクリレート(TMPTA)、アルコキシル化トリメチロールプロパン−トリアクリレート、およびアルコキシル化ビスフェノールAジアクリレートたとえば、エトキシル化ビスフェノールAジアクリレート(EO−BPADA)。希釈剤としては、フォトマー4066を使用するのが好ましい。
【0041】
硬化可能な組成物中での希釈剤の全量は、目的とする性質に応じて変化させてよいが、放射線硬化性組成物の重量パーセントを基準にして望ましくは約20〜80重量%、より望ましくは約30〜70重量%、好ましくは約40〜約60重量%とする。
【0042】
硬化可能な組成物には、望ましくは、1種または複数の光重合開始剤を含んでいてもよい。そのような成分は当業者には周知である。存在させるならば、その光重合開始剤は、硬化可能な組成物の約0.5重量%〜約3重量%、好ましくは約1重量%〜約2重量%の範囲の量で含まれるようにするべきである。好適な光重合開始剤は、チバキュアTPOである。
【0043】
硬化可能な組成物において使用可能なさらなる成分は、抗酸化剤である。そのような成分もまた当業者には周知である。存在させるならば、抗酸化剤成分は、硬化可能な組成物の約0.2〜約1重量%の範囲の量で含まれるようにしてもよい。抗酸化剤がイルガノックス1035であるのが好ましい。
【0044】
硬化可能な組成物において使用可能なさらなる成分は、抗酸化剤である。そのような成分もまた当業者には周知である。存在させるならば、抗酸化剤成分は、硬化可能な組成物の約0.2〜約1重量%の範囲の量で含まれるようにしてもよい。抗酸化剤がイルガノックス1035であるのが好ましい。
【0045】
硬化可能な組成物中に含まれているのが望ましいまた別な成分は接着促進剤であるが、これはその名が示す通り、硬化された被覆の光ファイバへの接着性を向上させる。そのような成分は当業者には周知である。存在させるならば、その接着促進剤は、硬化可能な組成物の約0.5重量%〜約2重量%の範囲の量で加えるのがよい。硬化可能な組成物中に含まれているのが望ましいまた別な成分は接着促進剤であるが、これはその名が示す通り、硬化された被覆の光ファイバへの接着性を向上させる。そのような成分は当業者には周知である。存在させるならば、その接着促進剤は、硬化可能な組成物の約0.2重量%〜約2重量%、望ましくは約0.8〜約1.0重量%の範囲の量で存在させるのがよい。接着促進剤がA−189であれば好ましい。
【0046】
前述の成分を相互に混合して、放射線硬化性被覆を得ることができる。オリゴマー、希釈剤モノマー、光重合開始剤、および抗酸化剤を混合し、70℃で約1時間加熱して粉体状の原料を溶解させるのが望ましい。次いで、温度を下げて55℃を超えないようにして、接着促進剤を添加し、それらの成分を約30分間混合する。
【0047】
本発明の一つの好ましい態様においては、オリゴマーを以下の成分から調製することができる(オリゴマーを調製する際に使用される成分の重量%を基準とする):
アクリレート(たとえば、HEA):約1〜約3重量%
芳香族イソシアネート(たとえば、TDI):約1〜約2重量%
脂肪族イソシアネート(たとえば、IPDI):約4〜約6重量%
ポリオール(たとえば、P2010):約40〜約60重量%
触媒(たとえば、コスキャット83):約0.01〜約0.05重量%
重合防止剤(たとえば、BHT):約0.05〜約0.10重量%。
【0048】
本発明の一つの好ましい態様においては、約40〜約60重量%のオリゴマーに加えて、硬化可能な組成物の成分には以下のものが含まれていてよい(硬化可能な組成物の重量パーセントを基準とする):
希釈剤モノマー(たとえば、フォトマー4066):約35〜約45重量%;
光重合開始剤(たとえば、チバキュアTPO):約1.00〜約2.00重量%;
抗酸化剤(たとえば、イルガノックス1035):約0.25〜約0.75重量%;
接着促進剤(たとえば、A−139):約0.8〜約1.0重量%(合計が100重量%になるように調節してもよい)。
【0049】
本発明のより好ましい実施態様は、次式のようにして得ることができる。
【0050】
【表2】

【0051】
本明細書において特許請求される発明の一次被覆を以下においてはCA一次被覆と呼ぶこととする。
【0052】
一次被覆を調製した後で、光ファイバの表面上に直接それを適用してよい。線引は、ウェットオンドライ・モードまたはウェットオンウェット・モードのいずれかを用いて実施する。ウェットオンドライ・モードとは、液状の一次被覆をウェットで適用し、次いで放射線を照射してその液状の一次被覆を硬化させて線材上の固体層とすることを意味している。一次被覆を硬化させた後に、二次被覆を適用し、次いで同様にして硬化させる。ウェットオンウェット・モードとは、液状の一次被覆をウェットで適用し、次いで二次被覆をウェットで適用し、次いで一次被覆と二次被覆の両方を硬化させる。
【0053】
二次被覆を硬化させた後に、インキ被覆の層を適用してもよい。次いで、被覆し、そのインキ付着させた光ファイバを、他の被覆し、そのインキ付着させた光ファイバと「リボンアセンブリー」の中に並べて置き、放射線硬化性マトリックス被覆を用いて、それらの光ファイバをリボンアセンブリーの中の所望の位置に保持する。
【0054】
以下の実施例を用いて本発明をさらに説明するが、それらが本発明の範囲を限定すると考えてはならないことは言うまでもない。
【0055】
[実施例]
[引張強さ、伸びおよび弾性率の試験方法]
硬化させたサンプルの引張物性(引張強さ、破断時伸びパーセント、および弾性率)は、インストロン(Instron)モデル4201万能試験機を使用して求める。フュージョン(Fusion)UV処理機を使用して、材料の75−μm膜を硬化させることによって、試験のためのサンプルを調製する。サンプルは、窒素雰囲気中1.0J/cmで硬化させる。幅0.5インチ、長さ5インチの試験片を、その膜から切り出す。それぞれの試験片の正確な厚みを、マイクロメーターを用いて測定する。
【0056】
比較的に軟らかい被覆(たとえば、弾性率が約10MPa未満のもの)の場合には、被覆をドローダウンし、ガラスプレートの上で硬化させ、そのガラスプレートからメスを用いて個々の試験片を切り出す。インストロン(Instron)で2ポンドのロードセルを用い、弾性率は、応力−歪みプロットの2.5%伸びのところで最小二乗法を用いて計算する。硬化させた膜は、試験前に23.0±0.1℃、相対湿度50.0±0.5%で約16時間〜24時間の間、コンディショニングさせる。
【0057】
比較的に硬い被覆の場合には、その被覆をマイラー(Mylar)フィルムの上でドローダウンし、トゥイング・アルバート(Thwing Albert)0.5インチ精密サンプルカッターを用いて試験片を切り出す。インストロン(Instron)では20ポンドのロードセルを使用し、2.5%伸びのところでその点の割線から弾性率を計算する。硬化させた膜は、試験前に23.0±0.1℃、相対湿度50.0±0.5%で約16時間〜24時間の間、コンディショニングさせる。
【0058】
試験片の試験をする場合、そのゲート長さが2インチであり、クロスヘッド速度が1.00インチ/分である。すべての試験は、23.0±0.1℃の温度および50.0±0.5%の相対湿度で実施する。すべての測定値は、少なくとも6個の試験片の平均値から求める。
【0059】
[DMA試験方法]
それらの試験サンプルについて、レオメトリック・サイエンティフィック・インコーポレーテッド(Rheometric Scientific Inc.)製のRSA−II装置を用いて、動的機械分析(DMA)を実施する。独立膜試験片(典型的には、長さ約36mm、幅12mm、厚み0.075mm)を、装置のグリップに取り付けて、温度をまず80℃とし、その温度で約5分間維持する。80℃における後者の保持時間(soak period)の間に、サンプルを元の長さから約2.5%延伸させる。この時間の間にさらに、そのサンプルの素性、その寸法、および具体的な試験方法についての情報を、接続したパソコンにインストールしてあるソフトウェア(RSI・オーケストレーター(RSI Orchestrator))に入力する。
【0060】
すべての試験は、周波数1.0ラジアン、2℃ステップでの動的温度ステップ法を用い、保持時間5〜10秒、初期歪み約0.001(ΔL/L)で実施し、一つの実施態様においてはL=22.4mmであり、自動張力(autotension)および自動歪み(autostrain)オプションを作動させる。自動張力は、試験の間ずっとサンプルが張力条件下に保持されるように設定し、自動歪みは、サンプルがガラス転移を通り過ぎて、軟らかくなったときに歪みの増大を許すように設定する。5分間の保持時間が経過した後、サンプルオーブンの中の温度を20℃ステップで下げて、出発温度典型的には−80℃または−60℃に到達させる。試験を開始する前に、試験の最終温度をソフトウェアに入力しておいて、サンプルのデータが、ガラス領域から、転移領域を通過して、ゴム領域の中にまで広がるようにする。
【0061】
試験をスタートさせ、完了するまで進行させる。試験が終了した後に、引張貯蔵弾性率=E’、引張損失弾性率=E’’、およびtanデルタのすべて温度に対してのグラフが、コンピューターのスクリーン上に現れる。それぞれの曲線のデータポイントを、ソフトウェア中のプログラムを使用して平滑化させる。このプロットで、ガラス転移を表す3つの点を同定する:
1)E’=1000MPaとなる温度;
2)E’=100MPaとなる温度;
3)tanデルタ曲線におけるピークの温度。
【0062】
tanデルタ曲線に二つ以上のピークが含まれている場合には、それぞれの温度を測定する。そのグラフから得られるもう一つの数値が、ゴム領域におけるE’の最小値である。この値は、平衡弾性率Eとして報告される。
【0063】
[ドライおよびウェット接着性の測定]
ドライおよびウェット接着性の測定は、インストロン(Instron)モデル4201万能試験機を使用して実施する。75μmの膜を、研磨したTLCガラスプレートの上にドローダウンさせ、フュージョン(Fusion)UV処理機を用いて硬化させる。サンプルは、窒素雰囲気中1.0J/cmで硬化させる。
【0064】
それらのサンプルは、温度23.0±0.1℃、相対湿度50.0±0.5%で7日間かけてコンディショニングする。コンディショニングをした後、ドローダウンの方向に、メスを用いて長さ6インチ、幅1インチの8個の試験片を切り出す。試験片の4個にはタルクの薄い層を適用する。それぞれのサンプルの端から1インチを、ガラスから折り返す。ガラスを、インストロン(Instron)上の水平支持部に固定し、試験片の端部をその支持部に取り付けたプーリーに貼り付け、クロスヘッドの直下に位置させる。ワイヤをサンプルの折り返した末端に取付け、試験片に沿わせてから、プーリーを通過させて試験片とは直角の方向に走らせる。そのワイヤの自由端を、インストロン(Instron)の上側のジョーにくわえさせてから、運転を始める。その試験は、平均の力の値(単位:g力/インチ)が比較的一定になるまで続ける。クロスヘッド速度は10インチ/分である。ドライ接着性は4個の試験片についての平均値である。
【0065】
次いで、残りの4個の試験片を、23.0±0.1℃、相対湿度95.0±0.5%で24時間かけてコンディショニングする。ポリエチレン/水スラリーの薄い層をその試験片の表面に付着させる。次いで、先のパラグラフと同様にして試験する。ウェット接着性は4個の試験片についての平均値として報告する。
【0066】
[水感受性]
組成物の層を硬化させて、UV硬化させた被覆のテストストリップ(1.5インチ×1.5インチ×0.6ミル)を得る。そのテストストリップを秤量し、脱イオン水を入れたバイアルの中に入れ、次いでそれを23℃で3週間保存する。たとえば、30分間、1時間、2時間、3時間、6時間、1日間、2日間、3日間、7日間、14日間、および21日間のように、一定の間隔を置いて、テストストリップをバイアルから取り出し、紙タオルを用いて穏やかにたたいて乾燥させ、再秤量する。水吸収パーセントを、100(浸漬後重量−浸漬前重量)/(浸漬前重量)として報告する。ピーク水吸収は、3週間の浸漬期間の間に到達した最高の水吸収値である。3週間の期間が終了したら、そのテストストリップを60℃のオーブン中で1時間乾燥させ、デシケータ中で15分間冷却し、再秤量する。水抽出可能物パーセントを、100(浸漬前重量−乾燥後重量)/(浸漬前重量)として報告する。水感受性を、|ピーク水吸収|+|水抽出可能物|として報告する。3本のテストストリップについて試験して、試験の精度を改良する。
【0067】
[屈折率]
硬化させた組成物の屈折率は、ベッケ線(Becke Line)法で求めるが、この方法では、硬化させた組成物の細かく切断したストリップの屈折率を、既知の屈折特性を有する浸液と一致させることが必要である。その試験は、589nmの波長を有する光を用い、顕微鏡下23℃で実施する。
【0068】
[粘度]
粘度は、フィジカ・MC10・ビスコメーター(Physica MC10 Viscometer)を使用して測定する。試験サンプルをチェックして、もしも過剰の量の気泡が存在しているようならば、それらの気泡のほとんどを除去するための工程を採用する。この段階では全部の気泡を除去することは必ずしも必要ではないが、それは、サンプルを取り付ける操作でも幾分かの気泡が生じるからである。
【0069】
装置を従来のZ3システムに設定し、それを使用する。サンプルを使い捨てのアルミニウムカップの中に、シリンジを用いて、17cc秤り込む。カップの中のサンプルをチェックして、過剰の量の気泡が含まれているようならば、それを直接的な手段たとえば遠心分離を用いるか、あるいは充分な時間をかけて、液体本体から気泡を逃げ出すようにして、気泡を除去する。液体の表面上の気泡は問題とはならない。
【0070】
測定用カップ中の液体の中にボブを穏やかに下げていき、そのカップとボブを装置に取り付ける。5分間待って、サンプルの温度が循環液の温度と平衡に達するようにする。次いで、所望の剪断速度が得られるように、回転速度を所望の値に設定する。所望の値の剪断速度は、予想されるサンプルの粘度範囲から、当業者ならば容易に求めることができる。剪断速度は典型的には、50sec−1または100sec−1である。
【0071】
計器盤が粘度の値を示すが、その粘度の値が15秒間ほとんど変化しない(相対変動2%未満)場合には、その測定を完了させる。そうでない場合には、温度がまだ平衡値に達していないか、あるいはその物質が剪断によって変化を受けている可能性がある。後者の場合には、サンプルの粘度的性質を規定するために、剪断速度を変化させてさらに試験をする必要がある。結果は、3個の試験サンプルの平均粘度値として報告する。結果は、センチポアズ(cps)またはミリパスカル・秒(mPa・s)のいずれで報告してもよい(これらは、等価である)。
【0072】
[実施例1]
特許請求の範囲に記載の本発明のこの組成物を作成し、試験する。
【0073】
【表3】

【0074】
カッコの中の数字は、それぞれの試験における標準偏差を表している。
【0075】
特許請求の範囲に記載の本発明の放射線硬化性一次被覆の硬化させた膜の一つの実施態様は、約−25℃〜約−45℃にtanデルタTgにピークを有しているが、特許請求の範囲に記載の本発明の放射線硬化性一次被覆の硬化させた膜のまた別な実施態様は、約−30℃〜約−40℃にtanデルタTgにピークを有している。
【0076】
特許請求の範囲に記載の本発明の放射線硬化性一次被覆の硬化させた膜の一つの実施態様は、約0.50MPa〜約1.2MPaの弾性率を有している。特許請求の範囲に記載の本発明の放射線硬化性一次被覆の硬化させた膜のまた別な実施態様は、約0.6MPa〜約1.0MPaの弾性率を有している。
【0077】
[線引タワーシミュレーターの説明および試験方法]
光ファイバ被覆開発の初期の頃には、新規に開発された一次および二次被覆はすべて、最初にそれらの硬化膜の物性についての試験を行ってから、ファイバ線引タワーでの評価にかけていた。線引を要求された被覆全部の中から、線引タワーで試験されたのは多くともそれらの30%であったと推測されるが、その理由は、コストがかかることと、スケジュール調整が困難であったためである。被覆が最初に配合されたときからガラスファイバに適用されるまでの時間は、典型的には約6ヶ月であり、そのために製品開発サイクルが大いに遅れることとなった。
【0078】
光ファイバのための放射線硬化させた被覆の技術においては、一次被覆または二次被覆のいずれかをガラスファイバに適用したときに、その性質が、同一の被覆の硬化膜のフラットな膜特性とは異なっていることが多いのは、よく知られていることである。ファイバ上の被覆とフラットな膜の被覆とでは、サンプルサイズ、形状、暴露UV強度、UV全受光量、加工速度、基材の温度、硬化温度、および場合によっては窒素不活性条件の面で異なっていることがその理由であろうと考えられる。
【0079】
より信頼性の高い被覆開発のルートとより速やかな展開時間とを可能とするための、ファイバを製造する際に類似の硬化条件を与える装置が開発されてきた。このタイプの代替の塗布および硬化装置では、容易に使用できること、メンテナンスの手間がかからないこと、および再現性のある性能が得られることが必要とされた。その装置の名前が、「線引タワーシミュレーター」であり、以後においては「DTS]と略す。線引タワーシミュレーターは、自家用に設計したものであって、実際のガラスファイバ線引タワー要素を詳しく検討した上で製作されている。すべての寸法(ランプの位置、被覆ステージの間の距離、被覆ステージの間のギャップ、UVランプなど)は、ガラスファイバ線引タワーの再現となっている。このことは、ファイバ線引産業において使用されている加工条件を模倣するのに役立っている。
【0080】
一つの公知のDTSには、5個のフュージョンF600ランプ(2個は、上側被覆ステージ用、3個は下側用)が備えられている。それぞれのステージの第二のランプが、15〜135度の間の任意の角度で回転することが可能となっていて、硬化プロフィールをより詳しく検討することが可能となっている。
【0081】
公知のDTSで使用されている「コア」は、130.0±1.0μmのステンレス鋼線材である。各種のサプライヤーからの、各種の設計のファイバ線引アプリケーターが、評価に利用できる。この構成によって、工業的な生産現場に実在しているのと類似の条件で、光ファイバ被覆に適用することが可能となる。
【0082】
線引タワーシミュレーターはすでに、光ファイバ上の放射線硬化性被覆の解析を拡張するために使用されている。2003年には、被覆の強さ、硬化度、および各種環境下におけるファイバの性能を表すのに利用することができる、一次被覆のインサイチュ弾性率を測定するための方法が、P.A.M.スティーマン(P.A.M.Steeman)、J.J.M.スロット(J.J.M.Slot)、H.G.H.ファン・メリック(H.G.H.van Melick)、A.A.F.v.d.ベン(A.A.F.v.d.Ven)、H.カオ(H.Cao)およびR.ジョンソン(R.Johnson)によって、ザ・プロシーディングズ・オブ・ザ・52nd・IWCS(Proceedings of the 52nd IWCS)、p.246(2003)に報告されている。2004年には、スティーマン(Steeman)らが、より早い線引速度での被覆の加工性を予測するために、レオロジー的高剪断プロファイルをいかに使用することができるかについて報告している(P.A.M.スティーマン(P.A.M.Steeman)、W.ゾエテリエフ(W.Zoetelief)、H.カオ(H.Cao)、およびM.ブルタース(M.Bulters)、ザ・プロシーディングズ・オブ・ザ・53rd・IWCS(Proceedings of the 53rd IWCS)、p.532(2004))。線引タワーシミュレーターを使用して、光ファイバ上の一次および二次被覆の性質をさらに検討することができる。
【0083】
[線引タワーシミュレーター試験方法]
[一次被覆におけるアクリレート不飽和反応%(%RAU一次試験方法として省略)]
光ファイバまたは金属線材の上の内側の一次被覆の上での硬化度を、ダイヤモンドATR付属品を使用したFTIRによって測定する。FTIR装置パラメータは次の通りである:コアッデッドスキャン100、解像度4cm−1、DTGS検出器、スペクトル範囲4000〜650cm−1、信号対ノイズ比を改良する目的でデフォルトのミラー速度を約25%抑制。二つのスペクトルが必要であって、その一つは、ファイバまたは線材の被覆に相当する未硬化の液状被覆のスペクトルであり、もう一つは、ファイバまたは線材の内側の一次被覆のスペクトルである。コンタクトセメントの薄膜を、3ミルのマイラー(Mylar)フィルムの1インチ平方の小片の中央部分に塗りつける。そのコンタクトセメントが粘着性となってから、光ファイバまたは線材の小片をその中にいれる。そのサンプルを低倍率の光学顕微鏡の下に置く。ファイバまたは線材の上の被覆を、鋭利なメスを使用してガラスまでスライスする。次いでその被覆を、ファイバまたは線材の上側で長さ方向に約1センチメートルの切り目を入れて、その切断が滑らかであること、および外側の被覆が一次被覆の中に折り込まれていないことを確認する。次いで、その被覆をコンタクトセメントの上に広げて、ガラスまたは線材に隣り合う一次被覆がフラットな膜として暴露されるようにする。ガラスファイバまたは線材を、一次被覆が暴露されている領域から取り去る。
【0084】
液状の被覆のスペクトルは、被覆を用いてダイヤモンド表面を完全に覆った後で得られる。その液状物は、可能であるならば、ファイバまたは線材を被覆するために用いたのと同一のバッチとするべきであるが、最低限の条件としても、同一の配合物でなければならない。スペクトルの最終的なフォーマットは、吸光度とするべきである。マイラー(Mylar)フィルムの上に暴露された一次被覆を、ファイバまたは線材の軸が赤外線光束の方向と平行になるようにして、ダイヤモンドの中心部の上に載せる。サンプルの後ろから圧力をかけて、結晶に良好な密着性が得られるようにするべきである。得られるスペクトルに、コンタクトセメントからのいかなる吸光度も含まれないようにするべきである。コンタクトセメントのピークが観察された場合には、フレッシュなサンプルを調製するべきである。複数のサンプルを調製し、全部のサンプルの調製が完全に済んでからスペクトルを測定するよりは、サンプルを調製した直後にスペクトルを測定することが重要である。スペクトルの最終的なフォーマットは、吸光度とするべきである。
【0085】
液状物および硬化させた被覆のいずれの場合においても、アクリレートの二重結合ピーク(810cm−1)と参照ピーク(750〜780cm−1領域)の両方のピーク面積を測定する。ピーク面積はベースライン法を用いて測定するが、それには、ピークの両側の吸収極小に対して接線となるようにベースラインを選ぶ。次いで、ピークより下でベースラインより上の面積を求める。液状物と硬化させたサンプルではその積分限界が同一ではないが、(特に参照ピークでは)似たようなものである。
【0086】
液状物と硬化させたサンプルの両方について、アクリレートのピーク面積の参照ピーク面積に対する比を求める。反応したアクリレート不飽和パーセント(%RAU)として表される硬化度は、次式に従って計算する:
【数1】


[式中、Rは、液状サンプルの面積比であり、Rは硬化させた一次被覆の面積比である]
【0087】
[一次被覆のインサイチュ弾性率]
二重被覆された(ソフトな一次被覆およびハードな二次被覆)ガラスファイバまたは金属線材ファイバ上の一次被覆のインサイチュ弾性率をこの試験方法によって測定する。この試験についての詳細な検討は、スティーマン(Steeman)P.A.M.;スロット(Slot)J.J.M.;メリック(Melick)N.G.H.van ;ベン(Ven)A.A.F.van de;カオ(Cao)H.およびジョンソン(Johnson)R.(2003)に見出すことができる。光ファイバについてのインサイチュ一次被覆弾性率の機械的分析は、「プロシーディングズ・52nd・インターナショナル・ワイヤー・アンド・ケーブル・シンポジウム(Proceedings 52nd International Wire and Cable Symposium)」(IWCS、フィラデルフィア(Philadelphia)、USA、2003年11月10〜13日))p.41の中に記載の手順に従って求めることができる。
【0088】
サンプルを調製するためには、ファイバの末端から約2cmの位置で、剥離工具を用いて短い長さ(約2mm)の被覆層を剥がす。剥離された被覆の端からファイバ末端までが正しく8mmになるようにそのファイバを切断して、そのもう一つの端部を形成させる。次いで、その8mmの被覆されたファイバの部分を、論文[1]の図6に模式的に示されているような金属サンプル固定具(metal sample fixture)の中に挿入する。その被覆されたファイバを固定具中のマイクロチューブの中に埋め込むが、そのマイクロチューブは、二つの半円筒状の溝から構成されていて、その直径は標準的なファイバの外径(約245μm)とほぼ同じになるように作られている。ねじを締めて、ファイバをしっかりと保持するが、その二次被覆の表面にかかる保持力は均質であって、被覆層に何の顕著な変形も起きない。次いで、ファイバを組み入れた固定具を、DMA(動的機械分析)装置のレオメトリックス・ソリッズ・アナライザー(Rheometrics Solids Analyzer)(RSA−II)に載せる。その金属固定具を底部のグリップにくわえさせる。上側のグリップを締めていって、被覆されたファイバの上側部分に圧力をかけて、それが被覆層を押しつぶすようにする。固定具とファイバは、垂直方向にまっすぐになっていなければならない。埋め込まれていないファイバの部分は、それぞれのサンプルで一定の長さ(本発明者らの試験では6mm)となるように調節するべきである。歪みオフセットを調節して、軸のプリテンションがほとんどゼロになるように設定する(−1g〜1g)。
【0089】
一次被覆の剪断弾性率Gを測定するための剪断サンドイッチ形状設定を選択する。剪断サンドイッチ試験のサンプルの幅Wは、次式に従って計算して0.24mmであると入力する。
【数2】


式中、RとRは、それぞれ、むき出しのファイバと一次被覆の外半径である。標準的なファイバの形状としては、R=62.5μm、R=92.5μmを用いて計算する。サンプル長さ8mm(埋め込み長さ)および厚み0.03mm(一次被覆厚み)を、剪断サンドイッチ形状に入力する。試験は室温(約23℃)で実施する。使用する試験周波数は、1.0ラジアン/秒である。剪断歪みεは、0.05に設定する。動的時間掃引を行って、断貯蔵弾性率Gを求めるための四つのデータポイントを得る。報告しているGは、全部のデータポイントの平均値である。
【0090】
こうして測定した剪断弾性率Gを、論文[1]に記載されている補正法に従って補正する。その補正法には、埋め込まれた部分および埋め込まれていない部分のガラスの伸びを配慮することが含まれている。その補正手順の中では、むき出しのファイバの引張弾性率(E)を入力する必要がある。ガラスファイバの場合には、E=70GPaである。線材ファイバの場合で、ステンレス鋼S314線材を使用している場合には、E=120GPaである。そうして補正されたGを、実際のRとRの値を用いてさらに調整する。ガラスファイバの場合、RおよびRの値を含むファイバ形状は、PK2400ファイバ・ジオメトリー・システム(Fiber Geometry System)により測定する。線材ファイバの場合、直径130μmのステンレス鋼S314線材を使用したときにはRは65μmであり、Rは顕微鏡下で測定する。最後に、ファイバ上の一次被覆についてのインサイチュ弾性率E(引張貯蔵弾性率)を、E=3Gに従って計算する。報告しているEは、三つの試験サンプルの平均値である。
【0091】
[光ファイバ上の一次被覆および二次被覆のT測定のためのインサイチュDMA]
二重被覆されたガラスファイバ上、または金属線材ファイバ上の一次および二次被覆のガラス転移温度(T)は、この方法により測定する。それらのガラス転移温度は、「チューブTg」と呼ばれる。
【0092】
サンプルを調製するためには、ファイバから完全な被覆チューブとして長さ約2cmの被覆層を被覆されたファイバの一端から剥離させるために、まず被覆されたファイバの一端を剥離用工具と共に液体Nの中に少なくとも10秒間浸漬させ、次いで、その被覆層がまだ硬いうちに素早く被覆チューブを剥離させる。
【0093】
DMA(動的機械分析)装置:レオメトリックス・ソリッズ・アナライザー(RSA−II)を使用。RSA−IIの場合、RSAIIの二つのグリップの間のギャップは最大で1mmまで拡張することができる。そのギャップは、歪みオフセットを調節することによって、まず最小レベルに調節する。ねじによって開口端に折り曲げて固定された金属プレートで作られた単純なサンプル支持具を使用して、被覆チューブサンプルを下端からしっかりと保持する。その固定物を下側グリップの中央までスライドさせ、グリップを固定する。ピンセットを使用して、その被覆チューブを、上側グリップを通して直立位置にまでまっすぐにする。上側グリップを閉じて固定する。オーブンを閉じ、温度調節媒体としての液体窒素を用いて、二次被覆のためのTよりも高い値かまたは100℃にオーブン温度を設定する。オーブン温度がその温度に到達したら、歪みオフセットを調節して、プリテンションが0g〜0.3gになるようにする。
【0094】
DMAの動的温度ステップ試験では、試験周波数を1.0ラジアン/秒に設定し、歪みが5E−3であり、温度の増分が2℃であり、保持時間(soak time)が10秒である。
【0095】
形状のタイプは円筒を選択する。形状の設定は、二次インサイチュ弾性率試験で使用したものと同じであった。サンプル長さは、金属固定物の上端と下側グリップのとの間の被覆チューブの長さであって、本願発明者らの試験においては11mmである。次式に従って、その直径(D)は0.16mmと入力する:
【数3】


[式中、RとRはそれぞれ、二次被覆と一次被覆の外半径である]標準的なファイバの形状としては、R=122.5μm、R=92.5μmを用いて計算する。
【0096】
動的温度ステップは、出発温度(今回の試験では100℃)から一次被覆のTまたは−80℃より低い温度までの間で実施する。実験の後で、tanδ曲線からのピークを、一次被覆のT(低い方の温度に相当)および二次被覆のT(高い方の温度に相当)として報告する。注意すべきは、測定されたガラス転移温度、特に一次ガラス転移温度は、ファイバ上の被覆層のガラス転移温度の相対的な値と考えるべきであるということであるが、その理由は、被覆チューブの複雑な構造からのtanδのシフトがあるからである。
【0097】
[線引タワーシミュレーター実施例]
本発明の特許請求の範囲に記載の一次被覆および市販されている放射線硬化性二次被覆の各種の組成物を、線引タワーシミュレーターを用いて線材に適用する。線材は、5種類の速度、750メートル/分、1200メートル/分、1500メートル/分、1800メートル/分、および2100メートル/分で走らせる。
【0098】
線引は、ウェットオンドライ・モードまたはウェットオンウェット・モードのいずれかを用いて実施する。ウェットオンドライ・モードとは、液状の一次被覆をウェットで適用し、次いでその液状の一次被覆を硬化させて線材上の固体層とすることを意味している。一次被覆を硬化させた後に、二次被覆を適用し、次いで同様にして硬化させる。ウェットオンウェット・モードとは、液状の一次被覆をウェットで適用し、次いで二次被覆をウェットで適用し、次いで一次被覆と二次被覆の両方を硬化させる。
【0099】
本明細書において特許請求される一次被覆および市販されている放射線硬化性二次被覆の各種の組成物について、いくつかの実験を実施する。線材の上で硬化させた一次被覆について、初期%RAU、初期インサイチュ弾性率、および初期チューブTgについての試験をする。次いで被覆された線材を、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせる。次いで線材の上で硬化させた一次被覆を、1ヶ月エージングさせて、%RAU、インサイチュ弾性率およびエージング後のチューブTgを試験する。
線引タワーシミュレーターの設定条件:
・ツァイデル(Zeidl)ダイを使用する。1度用にはS99、2度用にはS105。
・750、1000、1200、1500、1800、および2100m/分の速度とする。
・ウェットオンドライプロセスでは5個のランプを使用、ウェットオンウェットプロセスでは3個のランプを使用する。
(2)1度被覆では、600W/inのDフュージョンUVランプを100%で使用する。
(3)2度被覆では、600W/inのDフュージョンUVランプを100%で使用する。
・2回の被覆のための温度は30℃である。ダイもまた30℃に設定する。
・二酸化炭素レベルは、それぞれのダイで7リットル/分である。
・窒素レベルは、それぞれのランプで20リットル/分である。
・1度被覆のための圧力は、25m/分で1バールであるが、1000m/分では3バールまで上げる。
・2度被覆のための圧力は、25m/分で1バールであるが、1000m/分では4バールまで上げる。
【0100】
線材の上の本明細書において特許請求される発明の硬化された放射線硬化性一次被覆は、以下のような性質を有していることが見出された。
【0101】
【表4】

【0102】
したがって、第一および第二の層を用いて被覆された線材を記述し特許請求することが可能であるが、ここでその第一の層が、その線材の外側表面と接触状態にある特許請求の範囲に記載の本発明の硬化された放射線硬化性一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
ここで、その線材の上の硬化された一次被覆は、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質を有する:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃。
【0103】
この情報を用いることにより、第一および第二の層を用いて被覆された光ファイバを記述し特許請求することが可能となるが、ここで、その第一の層が、光ファイバの外側表面と接触状態にある、特許請求の範囲に記載の本発明の、硬化された放射線硬化性一次被覆であり、その第二の層が、その一次被覆の外側表面と接触状態にある、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
ここで、前記ファイバの上の前記硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質を有する:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃。
【0104】
放射線硬化性二次被覆は、光ファイバのために市販されている放射線硬化性二次被覆であれば何であってもよい。そのような市販されている放射線硬化性二次被覆は、DSM・デソテック・インコーポレーテッド(DSM Desotech Inc.)その他(たとえば、ヘキシオン(Hexion)、ルバンティックス(Luvantix)およびファイケム(PhiChem)などであるが、これらに限定される訳ではない)から入手可能である。
【0105】
本明細書に引用された、公刊物、特許出願、および特許を含めたすべての参考文献は、それぞれの文献が個別にかつ具体的に参照することにより本明細書に組み入れられ、その内容全てに言及されているのと同じ程度に、参照により本明細書に援用されたものとする。
【0106】
本発明を記述する文脈においては(特に添付の特許請求の範囲の文脈においては)、不定冠詞の「a」および「an」ならびに定冠詞の「the]ならびに類似の指示語は、本明細書において特に断らない限り、あるいは文脈において明白に矛盾することがない限り、単数と複数の両方を包含するものと受け取るべきである。「comprising」、「having」、「including」、および「containing」という用語は、特に断らない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むが、それらに限定される訳ではない」ことを意味する)と受け取るべきである。本明細書において数値の範囲を示す場合には、本明細書において特に断らない限り、その範囲内に入るそれぞれ個別の数値を引用することの単に簡便法として使用しているものであって、それぞれの個別の数値が、本明細書において独立して引用されたかのごとくに組み入れられているものとする。本明細書に記載されたすべての方法は、本明細書において特に断らない限り、あるいは文脈において明白に矛盾することがない限り、各種適切な順序で実施することが可能である。本明細書で提供されたいずれかおよび全部の例、または例示語(たとえば、「たとえば」)の使用は、本発明をより明瞭に説明することを単に意図したものであり、特に断らない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいずれの文言も、本発明の実施に対して不可欠である、特許請求されていない要素を示しているものと受け取ってはならない。
【0107】
本発明の好ましい実施態様を本明細書に記載したが、それらは、本発明を実施するための、本発明者らが知りうる最良の形態を含んでいる。これまでの記述を読めば、それらの好ましい実施態様の変更は当業者にとっては明らかであろう。本発明者らは、そのような変更例を当業者が適切に採用することを期待し、また本発明者らは、本明細書に具体的に記載されたのとは別な方法で本発明を実施できると考えている。したがって、本発明には、適用法によって許されることとして、本明細書に添付の特許請求の範囲に記載の主題のすべての変更と等価物が含まれている。さらには、すべての可能な変更において、本明細書において特に断らない限り、あるいは文脈において明白に矛盾することがない限り、詳述の構成要素のいかなる組合せ物も本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線硬化性一次被覆組成物であって:
A)オリゴマー;
B)希釈剤モノマー;
C)光重合開始剤;
D)抗酸化剤;および
E)接着促進剤;
を含み、
前記オリゴマーが:
i)ヒドロキシエチルアクリレート;
ii)芳香族イソシアネート;
iii)脂肪族イソシアネート;
iv)ポリオール;
v)触媒;および
vi)重合防止剤
の反応生成物であり、
前記触媒がオルガノビスマス触媒であり;
前記オリゴマーが、少なくとも約4000g/molから約15,000g/mol以下までの数平均分子量を有し、そして
前記放射線硬化性被覆組成物の硬化膜が、約−25℃〜約−45℃のピークtanデルタTgと、約0.50MPa〜約1.2MPaの弾性率とを有する、放射線硬化性一次被覆組成物。
【請求項2】
光ファイバを被覆するための方法であって、
a)ガラス線引タワーを運転してガラス光ファイバを製造する工程と;
b)請求項1に記載の放射線硬化性一次被覆組成物を用いて前記ガラス光ファイバを被覆する工程と
を含む方法。
【請求項3】
前記ガラス線引タワーを、約750メートル/分〜約2100メートル/分の間の線速度で運転して、ガラス光ファイバを製造する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第一および第二の層を用いて被覆された線材であって、
前記第一の層が、前記光ファイバの外側表面と接触状態にある、請求項1に記載の硬化された放射線硬化性一次被覆であり、前記第二の層が、前記一次被覆の外側表面と接触状態にある、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
前記線材の上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃
を有する、線材。
【請求項5】
第一および第二の層を用いて被覆された光ファイバであって、
前記第一の層が、前記光ファイバの外側表面と接触状態にある、請求項1に記載の硬化された放射線硬化性一次被覆であり、前記第二の層が、前記一次被覆の外側表面と接触状態にある、硬化された放射線硬化性二次被覆であり、
前記光ファイバの上の硬化された一次被覆が、最初の硬化後と、85℃、相対湿度85%で1ヶ月間エージングさせた後には以下の性質:
A)%RAU:約84%〜約99%;
B)インサイチュ弾性率:約0.15MPa〜約0.60MPaの間;および
C)チューブTg:約−25℃〜約−55℃
を有する、光ファイバ。
【請求項6】
放射線硬化性一次被覆組成物であって:
オリゴマー;
希釈剤モノマー;
光重合開始剤;
抗酸化剤;および
接着促進剤;
を含み、
前記オリゴマーが、i)ヒドロキシエチルアクリレート;ii)芳香族イソシアネート;iii)脂肪族イソシアネート;iv)ポリオール;v)触媒;およびvi)重合防止剤の反応生成物であり、
前記オリゴマーが、少なくとも約4000g/molから約15,000g/mol以下までの数平均分子量を有し、
前記放射線硬化性一次被覆組成物の硬化膜が、約−25℃〜約−45℃のピークtanデルタTgと、約0.50MPa〜約1.2MPaの弾性率とを有し;そして、
前記触媒が、スルホン酸、非限定的に挙げれば、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸、CAS27176−87−0;およびメタンスルホン酸、CAS75−75−2;アミノまたは有機塩基触媒、非限定的に挙げれば、たとえば、1,2−ジメチルイミダゾール、CAS1739−84−0;およびジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、CAS280−57−9(強塩基);およびトリフェニルホスフィン;ジルコニウムおよびチタンのアルコキシド、非限定的に挙げれば、たとえばジルコニウムブトキシド,(テトラブチルジルコネート)CAS1071−76−7;およびチタンブトキシド(テトラブチルチタネート)CAS5593−70−4;ならびにイオン性液状ホスホニウム、イミダゾリウム、およびピリジニウム塩、非限定的に挙げれば、たとえば、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、CAS No.374683−44−0;1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、CAS No.284049−75−8;およびN−ブチル−4−メチルピリジニウムクロリド、CAS No.125652−55−3;およびテトラデシル(トリヘキシル)ホスホニウムからなる群から選択される、放射線硬化性一次被覆組成物。

【公表番号】特表2010−509450(P2010−509450A)
【公表日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536355(P2009−536355)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/025479
【国際公開番号】WO2008/076297
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】