説明

DAPBI含有アラミドクラムを製造する方法

N−メチルピロリドンとc重量%の塩化カルシウムとを含有する混合物中において、
i)aモル%のp−フェニレンジアミン、
ii)bモル%の5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、および
iii)90〜110モル%のテレフタロイルジクロリド、
を共重合させることによって、p−フェニレンテレフタルアミド単位と2−(p−フェニレン)ベンゾイミダゾールテレフタルアミド単位とを含有する芳香族ポリアミドを含んでなる組成物を得るための方法において、
cは1〜20であり、a:bは1:20〜20:1であり、a+bは100モル%であり、そしてi)、ii)およびiii)は合わせて前記混合物の1〜20重量%を構成し、
積b×cは215未満であり、
前記組成物は、相対粘度ηrelが少なくとも4であるクラムであり、そして
前記クラムは、少なくともその95%が0.7〜15mmの平均粒径を有する非粘着性粒子として定義される、
ことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−メチルピロリドン(NMP)と塩化カルシウムの混合物中においてp−フェニレンジアミン(PPD)と、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール(DAPBI)と、テレフタロイルジクロリド(TDC)とを共重合させることによって、p−フェニレンテレフタルアミド単位と2−(p−フェニレン)ベンゾイミダゾールテレフタルアミド単位とを含有する芳香族ポリアミドを含んでなる組成物を得るための方法、および、前記組成物に関する。さらに本発明は、前記組成物から精製芳香族ポリマーを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アラミドポリマーを製造するための方法は、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,172,938号には、N−メチルピロリドンと塩化カルシウムの混合物中においてジアミンと芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物の混合物を重合させることによる、芳香族ポリアミドが説明されている。この参考文献の実施例34では、p−フェニレンジアミン(PPD)と5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール(DAPBI)の混合物、および、2重量%の塩化カルシウム(CaCl)を含有するN−メチルピロリドン(NMP)中のテレフタロイルジクロリド(TDC)を用いて、重合反応が行われている。粉末状の粘土のような生成物が得られたが、この物質のろ過には問題がある。この参考文献による生成物は、もっと一般的な言葉で言えば、スラリー、ペースト、粉末または寒天として得られることが明らかとなった。
DAPBI含有ポリマーのスピンドープを製造する他の製法は、米国特許第5,646,234号および4,018,735号によって知られている。米国特許第5,646,234号にはスピンドープを製造するための方法が開示されており、この方法において塩化カルシウムを含むハロゲン化アルカリ金属が添加剤として使用されることも開示されている。しかしながら、添加剤を全く用いない場合については非常に具体的な優先傾向が示されており、これに従い、具体的な例ではそのような添加剤は用いられていない。さらに、この参考文献に従って塩化カルシウムを用いる場合、その量は、ペースト等の形成を防ぐ上で許容される量よりもはるかに多くなり得る。米国特許第4,018,735号の実施例のいずれにも、塩化カルシウムの使用、および、N−メチルピロリドンとの併用が示唆される具体的な添加剤は開示されておらず、そのため、この参考文献のポリマーは、ペースト、粉末等の形態で得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、そのような反応を実施してクラム(crumb)またはクラム状材料の形態にある組成物を得るための条件を提供することである。本発明において用いられる「クラム」または「クラム状」という用語は、粘着性が無く、平均粒径が100μmよりも大きく、通常は1mmよりも大きく、かつ、さらに細かく粉砕することが可能な粉末または粒子をポリマー混合物が含有することを意味する。本発明に関する「クラム」という用語は、非粘着性粒子、すなわち、互いに粘着し合うことがなく、かつ、少なくともその95%が0.7〜15mm、好ましくは1〜7mm、の平均粒径を有する粉末中の粒子として定義される。
そのようなクラムは、例えば、製品がTwaron(登録商標)(テイジントゥワロン社)およびKevlar(登録商標)(デュポン社)の商品名で知られているPPDおよびTDCをベースとして全芳香族ポリアミドを調製する方法で知られている。NMP/CaCl中での重合後、容易に凝固、洗浄および乾燥させることができるクラムが得られる。前記得られる生成物は、硫酸に溶かして、繊維やフィルムのごとき所望の形状に成形することができる。
【0004】
考察の対象であるモノマー、すなわち、DAPBI(5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール; CAS reg. no:7621−86−5)をジアミン混合物に添加する目的は、例えばPPDおよびTDCとの重合の直後に、繊維またはフィルムへと直接成形することができる好適なポリマー溶液を得ることである。これにより、DAPBIは、アラミドポリマーを溶液中に溶けたままにしておくのに好適なコモノマーであると見なされる。これまでに、特定の割合のPPD、DAPBIおよびCaClを選択することによって粉末、ペースト、ドウ(dough)等の形成を防止することができることが分かっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、
N−メチルピロリドンとc重量%の塩化カルシウムとを含有する混合物中において、
i)aモル%のp−フェニレンジアミン、
ii)bモル%の5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、および
iii)90〜110モル%のテレフタロイルジクロリド、
を共重合させることによって、p−フェニレンテレフタルアミド単位と2−(p−フェニレン)ベンゾイミダゾールテレフタルアミド単位とを含有する芳香族ポリアミドを含んでなる組成物を得るための方法において、
cは1〜20であり、a:bの比は1:20〜20:1であり、a+bは100モル%であり、そしてi)、ii)およびiii)は合わせて前記混合物の1〜20重量%を構成し、
積b×cは215未満であり、
前記組成物は、相対粘度ηrelが少なくとも4であるクラム(crumb)であり、そして
前記クラムは、少なくともその95%が0.7〜15mmの平均粒径を有する非粘着性粒子として定義される、
ことを特徴とする前記方法に関する。
【0006】
本発明の他の目的は、十分に高い相対粘度ηrelを有するポリマーを含んでなるクラムを得ることである。本発明の方法によれば、少なくとも4、より好ましくは4〜7、最も好ましくは少なくとも5の相対粘度ηrelが得られる。b×cが少なくとも50、より好ましくは少なくとも80である共重合のための混合物を得ることがさらに好ましい。
【0007】
本発明の他の目的は、前記得られたクラムを水で凝固および洗浄した後、乾燥させることによって精製芳香族ポリアミドを製造するための方法を得ることである。前記乾燥工程は、標準的な方法、例えば周囲条件、に従って、または高温および/または低圧において実施することができる。このようにして得られた材料は、例えば硫酸、NMP、NMP/CaCl、ジメチルアセトアミド等の溶媒に溶かすことによってスピンドープを製造するのに好適である。前記ドープは、繊維、フィルム等の如き成形品を製造するのに用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
下記実験において、本発明の態様を例証する。
一般的な重合法
DAPBI(ex Spektr T.T.T., Russia)を真空下において160℃で1時間乾燥させた。PPD(テイジントゥワロン社)、TDC(蒸留したてのもの)、NMP/CaClおよびNMP(共にテイジントゥワロン社製)は購入時のままの状態(含水量:80ppm)で用いた。
ガラス器具を、空気循環オーブン内で、120℃で1時間、予備乾燥させた。汚れの無い乾燥した2lフラスコに、機械式攪拌器と、N注入口および排出口と、真空供給とを設けた。N流れは、通常、40〜60ml/minであった。溶媒の大部分(400ml)と、予め正確に計量したアミンとを、反応器に慎重に投入した。反応器を閉めて、窒素で2回パージした。混合物を150rpmで30分間攪拌し、60℃まで加熱し、そして0.5時間攪拌することによって、前記アミンをしっかりと溶解または分散させた。前記フラスコを氷水で5〜10℃まで冷却した。前記冷却剤を取り除いた後、攪拌器の速度を320rpmに設定し、そして予め正確に計量した量の酸塩化物をじょうごを介して前記容器へと投入した。すべての場合において、アミンと酸塩化物の総数のモル比は1であった。酸塩化物の入ったフラスコとじょうごとを、残っている溶媒(50ml)で洗浄した。前記容器を閉めて、混合物を少なくとも30分間反応させた(40〜60ml/minの窒素フラッシュ)。攪拌を止め、反応容器を取り除いた。
【0009】
クラム状生成物を脱イオン水(demi−water)と一緒にゆっくりとCondux LV1515/N3凝集沈殿装置に投入し、混合物をRVSフィルターで回収した。得られた生成物を5リットルの脱イオン水で4回洗浄し、2リットルのガラスビーカーに回収し、そして真空下において80℃で24時間乾燥させた。
サンプルを室温において硫酸に溶かした。硫酸96%(0.25%m/V)中のサンプル溶液の流動時間を、25℃においてウベローデ粘度計で測定した。同一条件下において、溶媒の流動時間も測定した。その後、2つの測定した流動時間の比として相対粘度を算出した。
【0010】
結果
TDCを添加した後、温度が急速に上昇し、40℃〜70℃の間でその最大値に達した。
下記表は、ポリマー混合物が、容易に凝固および洗浄され得るクラム状塊になったいくつかの例を示している。クラムを得るためには、本発明に従ってDAPBI含有量、モノマー濃度およびCaCl濃度のバランスをとる必要がある。相対粘度、固有粘度および外観(クラムまたはその他)を下記表に示す。PPD、DAPBIおよびTDCは合わせて混合物の約10〜12重量%を構成する。
比較例I〜IIIにおいて、ポリマー混合物は、高いCaCl濃度のため、ドウ(dough)ポリマー塊または弾性のある「チューイングガムのような」塊になった。実施例IVでは、まず沈殿物が形成され、その後、その沈殿物がドウのような塊になった。クラムを得るにはCaCl濃度が低過ぎた。実施例Vでは、(固有粘度が1.93である米国特許第4,172,938号による、表参照)粉末状の物質が得られたが、凝固後のろ過が非常に困難な物質であった。前記粉末状物質は、クレーのような物質であった。
【0011】
【表1】

【0012】
前記表は、本発明の条件が満たされたときの有利な性質を示している。例えば、(米国特許第4,172,938号による)比較例Vは、積b×cの値が請求範囲内(39.2)にあるのに対し、相対粘度が4未満(1.56)である。クラムは全く形成されず、(粒径が平均粒径である0.7mmよりもはるかに小さい)が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−メチルピロリドンとc重量%の塩化カルシウムとを含有する混合物中において、
i)aモル%のp−フェニレンジアミン、
ii)bモル%の5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾール、および
iii)90〜110モル%のテレフタロイルジクロリド、
を共重合させることによって、p−フェニレンテレフタルアミド単位と2−(p−フェニレン)ベンゾイミダゾールテレフタルアミド単位とを含有する芳香族ポリアミドを含んでなる組成物を得るための方法において、
cは1〜20であり、a:bは1:20〜20:1であり、a+bは100モル%であり、そしてi)、ii)およびiii)は合わせて前記混合物の1〜20重量%を構成し、
積b×cは215未満であり、
前記組成物は、相対粘度ηrelが少なくとも4であるクラムであり、そして
前記クラムは、少なくともその95%が0.7〜15mmの平均粒径を有する非粘着性粒子として定義される、
ことを特徴とする前記方法。
【請求項2】
N−メチルピロリドンと塩化カルシウムとの混合物中において、p−フェニレンジアミンと、5(6)−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾイミダゾールと、テレフタロイルジクロリドとを共重合させることによって得られる、p−フェニレンテレフタルアミド単位と2−(p−フェニレン)ベンゾイミダゾールテレフタルアミド単位とを含有する芳香族ポリアミドを含んでなる組成物であって、相対粘度ηrelが少なくとも4であるクラムであることを特徴とする前記組成物。
【請求項3】
前記クラムの相対粘度ηrelが4〜7である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項2または3に記載のクラムを水中で凝固および洗浄した後、乾燥させることによって、精製芳香族ポリアミドを製造する方法。

【公表番号】特表2007−511649(P2007−511649A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540256(P2006−540256)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012760
【国際公開番号】WO2005/054337
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(501469803)テイジン・トゥワロン・ビー.ブイ. (48)
【Fターム(参考)】