DBF信号処理用遅延回路
【課題】 DBF(ディジタルビームフォーミング)信号処理装置を構成する素子数Nやビーム数Mを変更した場合は回路の再設計が必要であり、開発期間の長期化やコストが増加するなどの課題があった。
【解決手段】 N個の入力側シフトレジスタと、この入力側シフトレジスタの各々と接続され、入力側選択信号を入力して前記入力側選択信号により指定された前記入力側シフトレジスタ内のデータを抽出して出力するN個の入力側マルチプレクサと、この入力側マルチプレクサと接続され、切換制御信号を入力して指定された出力先に前記入力側マルチプレクサから入力されたデータを出力する出力先選択回路と、出力先選択回路に接続されたN個の出力側シフトレジスタと、出力側シフトレジスタに接続され、出力側選択信号により選択された前記出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサとを備える。
【解決手段】 N個の入力側シフトレジスタと、この入力側シフトレジスタの各々と接続され、入力側選択信号を入力して前記入力側選択信号により指定された前記入力側シフトレジスタ内のデータを抽出して出力するN個の入力側マルチプレクサと、この入力側マルチプレクサと接続され、切換制御信号を入力して指定された出力先に前記入力側マルチプレクサから入力されたデータを出力する出力先選択回路と、出力先選択回路に接続されたN個の出力側シフトレジスタと、出力側シフトレジスタに接続され、出力側選択信号により選択された前記出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はコーナーターン処理方式でマルチビームを形成するDBF信号処理装置に用いられる遅延回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の受信素子を用いて外部から到来する電波を受信し、且つ各受信素子で受信した電波を信号処理によって合成することにより、到来方向毎に信号を弁別する技術として、ディジタルビームフォーミング( Digital Beam Forming :DBF )と呼ばれる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
N個の素子(以下、N素子と略す)からM本のビーム(以下、Mビームと略す)を形成する一般的なDBF信号処理装置は、N個のA/D変換器とデジタル直行検波器と、1個の積和演算器と、M個のデジタル直行変調器とD/A変換器から構成され、N素子の信号は積和演算器に集約される。素子数Nやビーム数Mが大きく大規模のDBF信号処理装置を構成する場合は、積和演算器が大きくなり、1つのLSIで構成することが不可能となるため分割処理が必要となる。
分割処理の方法の一つとして、コーナーターン方式がある。コーナーターン方式を採用したDBF信号処理装置は、積和演算器の入力側と出力側に各1個のスイッチ回路を設け、スイッチ回路を設けることで積和演算器を小さいブロックに分割するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−284944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコーナーターン方式を採用したDBF信号処理装置では、コーナーターン処理を実行するためには少なくとも2種類のスイッチ回路が必要であり、個々にそのスイッチ回路を設計する必要があるという課題があった。
また、設計したスイッチ回路の動作も固定であるため汎用性が無いという課題があった。すなわち、DBF信号処理装置の仕様である素子数Nやビーム数Mを変更した場合は回路の再設計が必要であり、開発期間の長期化やコストが増加するなどの課題があった。
【0005】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、素子数Nやビーム数Mに変更があった場合であっても対応可能な、汎用性の高いDBF信号処理用遅延回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のDBF信号処理用遅延回路は、入力データをクロック毎にレジスタ内で移動するN個の入力側シフトレジスタと、前記入力側シフトレジスタの各々と接続され、前記クロック毎に入力側選択信号を入力して前記入力側選択信号により指定された前記入力側シフトレジスタ内のデータを抽出して出力するN個の入力側マルチプレクサと、前記入力側マルチプレクサと接続され、前記クロック毎に切換制御信号を入力して前記切換制御信号により指定された出力先に、前記入力側マルチプレクサから入力したデータを出力する出力先選択回路と、前記出力先選択回路に接続され、前記出力先選択回路から前記クロック毎に入力したデータをレジスト内で移動するN個の出力側シフトレジスタと、前記出力側シフトレジスタに接続され、出力側選択信号により選択された前記出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサと、前記入力側選択信号と前記切換制御信号と前記出力側選択信号により、前記入力側マルチプレクサと前記出力先選択回路と前記出力側シフトレジスタの動作を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、素子数Nやビーム数Mに関して汎用性の高いDBF信号処理用遅延回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。
【図2】実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。
【図3】実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の各構成要素のデータの推移を表わした図である。
【図4】実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の信号処理の経過を示した図である。
【図5】実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。
【図6】実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路の信号処理の経過を示した図である。
【図7】従来からの一般的なDBF信号処理装置の構成を示した図である。
【図8】従来のコーナーターン方式を採用した場合のDBF信号処理装置の構成を示した図である。
【図9】従来のDBF信号処理装置において、16素子×16ビームでDBF信号処理装置を構成した場合のコーナーターン用回路の構成図である。
【図10】従来のDBF信号処理装置におけるコーナーターン用スイッチ回路の構成例を示した図である。
【図11】従来のコーナーターン用スイッチ回路の動作を示した図である。
【図12】従来のコーナーターン用スイッチ回路の構成例を示した図である。
【図13】従来のコーナーターン用スイッチ回路の動作を示した図である。
【図14】従来のコーナーターン用スイッチ回路のコーナーターン処理の動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従来のDBF信号処理装置の構成と動作について図を用いて説明を行った後、本発明に係るDBF信号処理用遅延回路について説明する。
図7は従来からの一般的なDBF信号処理装置200の構成図であり、N素子からMビームを形成するDBF信号処理装置である。N個の入力端子1に入力された素子IF信号は、A/D変換器402によりデジタル信号に変換され、デジタル直行検波器403に入力される。デジタル直行検波器403は入力された素子IFデジタル信号に、+1、±0、−1、±0を掛け合わせ、FIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答 )フィルタにより高調波成分を除いた、素子ベースバンドデジタル信号に変換する。
このN個の素子ベースバンド信号は積和演算器404に入力され、積和演算器404によりビーム毎のウエイトを掛け合わされ、M個のビームベースバンド信号に変換される。ビームベースバンド信号は、デジタル直行変調器405により、+1、±0、−1、±0が掛け合わされ、ビームIF信号に変換される。ビームIF信号は、D/A変換器406によりアナログ信号に変化され、出力407に出力される。
【0010】
図7に示すとおりDBF信号処理装置によりN個の素子信号からM個のビーム信号を生成するためには、全素子の信号を積和演算器404に集約する必要がある。
素子数Nとビーム数Mが少ない場合は、積和演算器404の入力側にN個のデジタル直行検波器403を接続し、積和演算器404の出力側にはM個のデジタル直行変調器405を接続することで実現可能であるが、素子数Nやビーム数Mが大きく大規模なDBF信号処理装置を構成する場合は積和演算器404が大きくなり、1つのLSIで構成することが現実的には不可能となる。この対策として積和演算器404を分割して処理する分割方式が挙げられる。
【0011】
分割処理の一つとしてコーナーターン方式と呼ばれる方式がある。図8はコーナーターン方式を採用したDBF信号処理装置の構成例である。N個の素子信号からM個のビーム信号を生成するDBF信号処理装置であり、積和演算器505の入力側と出力側にスイッチ回路504、506が設けられる。このようにスイッチ回路504、506を積和演算器505の前後に設けることにより、積和演算器を小さいブロック(積和演算器505)に分割することができる。
N個の入力端子501にはDBF信号処理装置外部から素子IF信号が入力される。N個のA/D変換器502は入力された素子IF信号をデジタル信号に変換する。N個のデジタル直交検波器503は、デジタル信号に+1、±0、−1、±0を順に乗算し、内部のFIRフィルタにて高調波成分を除いた素子ベースバンド信号を生成する。スイッチ回路504は素子ベースバンド信号の素子毎に時間順の信号と、時間毎に素子順の、素子ベースバンド直列信号に変換し、積和演算器505に出力する。
積和演算器505は所望のビームを得るために必要なM種類のウエイトを素子順に入力される入力信号に掛け合わせ、M個のビームベースバンド直列信号を生成し、生成したビームベースバンド直列信号をビーム順に出力する。ここで、積和演算器が生成するビームベースバンド直列信号はスイッチ回路504にて時間別に分けられているため、ある時間におけるM個の信号であり時間順とはなっていない。すなわち、別の時間の信号は別の積和演算器505にて演算されている。
積和演算器505より出力されたビームベースバンド直列信号は、スイッチ回路506に入力され、時間別ビーム順の直列信号からビーム別時間順の信号に並べ変え、デジタル直交変調器507にビームベースバンド信号を出力される。
デジタル直交変調器507はビームベースバンド信号に、+1、±0、−1、±0を順に乗算し、ビームIF信号に変換する。D/A変換器508はビームIF信号をアナログ信号に変換する。上記の処理を行うことにより、N個の素子IF信号から、M個のビームIF信号を生成することが出来る。
このように、スイッチ回路504とスイッチ回路506により行われる信号の並べ替えの処理をコーナーターンと呼ぶ。
【0012】
次にコーナーターン方式によるスイッチ回路504、506の動作を説明する。
図9は図8で説明したDBF信号処理装置において素子数N=16、ビーム数M=16とした場合のスイッチ回路504の構成例を示したものである。図9では4入力−4出力遅延1のスイッチ回路601と、4入力−4出力4遅延のスイッチ回路602を組み合わせている。
まず、図9のスイッチ回路601の動作を説明する。
図10はスイッチ回路601の構成である。従来のスイッチ回路はLSIで実現され、遅延は最も単純なレジスタ遅延で行っている。図10に示す(a)〜(d)の接続を、(a)→(b)→(c)→(d)→(a)→・・・の順で1クロック毎に切り替える。図10のスイッチ回路601の入力と出力の様子を図11に示す。図11に示すとおり、図10のスイッチ回路601は入力信号を4信号ずつの転置行列にして出力する。
次に、図9のスイッチ回路602の動作を説明する。図12は図9のスイッチ回路602の構成である。図12に示す(a)〜(d)の接続を、(a)→(b)→(c)→(d)→(a)→・・・の順で4クロック毎に切換る。図13に図12のスイッチ回路の入力と出力の様子を示す。図13に示すとおり、図12のスイッチ回路は、入力信号4信号を1つの組として、転置行列に変換して出力している。
図14は、図9のスイッチ回路601に16素子の信号を入力した場合の出力との関係を示した図である。図14(a)が入力信号である。素子を示すアルファベットA〜Pと、時間を示す数字で入力信号を表している。A1は素子1の1番目のデータ、A2は素子1の2番目のデータで、他も同様である。図14(a)の入力信号を図9のスイッチ回路601に入力したときの出力として図14(b)の中間出力が得られる。図10、図11で示したとおり、4入力毎に転置行列化した信号が出力される。
【0013】
次に、この図14(b)で表わされる中間出力は図9のスイッチ回路602に入力されるが、このとき図9に示した接続の入れ替えが実行される。図14(c)はスイッチ回路602に入力される信号を示している。A〜Pの時間1の信号が全て同一のスイッチ回路602に入力されていることがわかる。時間2〜16についても、時間毎に同一のスイッチ回路に入力されていることがわかる。
スイッチ回路602に入力された信号は図12、図13で説明したとおり、4信号を一組として転置行列化されて出力される。転置行列化された出力結果を図14(d)に示す。A〜Pの素子の時間1の信号が一列に素子順に並べ替えられているのがわかる。また、出力は素子ベースバンド直列信号として後段の積和演算器に入力される。
なお、回路の動作は、DBF信号処理装置を構成する素子数、ビーム数、スライス分割数等の設計仕様に基づいて決定される。DBF信号処理装置を構成する素子数、ビーム数によっては、入力数と出力数が異なる場合もある。
【0014】
このように、従来のコーナーターン方式を用いたDBF信号処理装置は、N個のA/D変換器とデジタル直交検波器と、積和演算器と、積和演算器の前後に設けられたスイッチ回路と、M個のデジタル直交変調器とD/A変換器から構成される。しかしながら、素子数Nやビーム数Mは固定であり、これらを変更する場合は回路の再設計が必要で開発の長期化及びコストの増大の原因となっていた。
【0015】
実施の形態1.
次に、本発明に係る実施の形態1のDBF信号処理用遅延回路について説明する。
図1は、この発明に係る実施の形態1のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。この遅延回路は、従来の図9のスイッチ回路601、602に相当する回路である。
図1において、1はN×(N−1)段以上の入力側シフトレジスタであり、クロック毎にデータをシフトさせてレジスタ内のデータに遅延時間を付加する。2は入力側N入力1出力の入力側マルチプレクサ(MUX)であり、入力側選択信号1i(iは1〜Nまでの入力番号)によりどの入力を出力するかを制御される。3はN×(N−1)段以上の出力側レジスタであり、クロック毎にデータをシフトさせてレジスタ内のデータに遅延時間を付加する。4は出力側N入力1出力の出力側マルチプレクサであり、出力側選択信号2j(jは1〜Nまでの入力番号)で、どの入力を出力するかを制御される。5は出力先選択回路であり切換制御信号30が入力される度に出力先を切り換えていく。DBF信号処理装置の動作を制御する制御装置(図示せず)は、入力側選択信号1iと出力側選択信号2jと切換制御信号の各信号を、制御入力側マルチプレクサ、出力側マルチプレクサ、出力先選択回路の各々に対して出力する。
【0016】
一例としてN=4とした本実施の形態の遅延回路により図10で説明した回路を模擬する。入力#1は入力信号をそのまま出力するよう、マルチプレクサ2に入力側選択信号11を与える。入力#2は1段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号12を与える。入力#3は2段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号13を与える。入力#4は3段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号14を与える。
ここで、出力#1からは3段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号21を与える。出力#2からは2段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号22を与える。出力#3からは1段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号23を与える。出力#4からは出力先選択回路5の出力がそのまま出力されるよう、出力側選択信号24を与える。
この状態で、出力先選択回路5に1クロック毎に出力先を切替えるよう切換制御信号30入力することにより、図10の回路を模擬することができる。
【0017】
別の例として、従来の図12の回路を本実施の形態の遅延回路の構成により模擬する。入力#1は入力信号をそのまま出力するよう、マルチプレクサ2に入力側選択信号11を与える。入力#2は4段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号12を与える。入力#3は8段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号13を与える。入力#4は12段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号14を与える。
続いて、出力#1からは12段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号21を与える。出力#2からは8段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号22を与える。出力#3からは4段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号23を与える。出力#4からは出力先選択回路5の出力がそのまま出力されるよう、出力側選択信号24を与える。
この状態で、出力先選択回路5に4クロック毎に出力先を切替えるよう切換制御信号を入力することにより、図12の回路を模擬することができる。
【0018】
このように、本実施の形態のDBF信号処理用遅延回路は、N個の入力側シフトレジスタと、各々の入力側シフトレジスタと接続され入力側選択信号により選択された入力側シフトレジスタ内のデータを出力するN個の入力側マルチプレクサと、N個のマルチプレクサと接続され、切換制御信号によりマルチプレクサから入力されたデータを指定された出力先に出力する出力先選択回路と、出力先選択回路に接続されたN個の出力側シフトレジスタと、各出力側レジスタに接続され、出力側選択信号により選択された出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサと、回路の動作を制御し、入力側選択信号と出力側選択信号と切換制御信号の各信号を入力側マルチプレクサ、出力側マルチプレクサ、出力先選択回路の各々に対して出力する制御部とから構成される。
制御装置は、入力側選択信号により入力側シフトレジスト内のデータを選択し、選択したデータの出力先を選択された出力先シフトレジスタに切換え、出力側選択信号により先に切換えられた出力先シフトレジスタ内のデータを選択して出力するようにした。
このようにして、本実施の形態のDBF信号処理用遅延回路はコーナーターン処理に必要な動作を行うことができる。
これにより、素子数Nやビーム数Mを変更する場合であっても制御部の処理プログラムを変更することで対応が可能なため、回路設計を新たに行うことが不要となり、開発期間の短縮及びコストを抑えることができる。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態1ではシフトレジスタを用いて各データに遅延時間を付加していたが、実施の形態2では、遅延時間の付加をメモリを使用する処理に変更する。
図2は、実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。この遅延回路は、従来の図9のスイッチ回路601、602に相当する回路である。図2において、201はカウンタであり1クロック毎にカウントアップする。なお、カウンタ制御信号が入力されると0となる。202は入力側の読み出しアドレス生成器であり、カウンタの値に(N−1)を足し、アドレス最大値を超えた場合はNを引いた値を出力する。203は入力側の書き込みアドレス生成器であり、カウンタの値にそれぞれ与えられた係数と遅延制御信号の値を変え合わせて入力側メモリ204に出力する。なお、Iは遅延数を表し、アドレス最大値Mを超えた場合はMを引く。204は入力側のメモリであり各入力に設ける。205は出力側の読み出しアドレス生成器であり、カウンタの値に(N−1)を足してアドレス最大値Nを引いた値を出力する。206は入力側の書き込みアドレス生成器であり、カウンタの値にそれぞれ与えられた係数と遅延制御信号の値を変え合わせて出力側メモリ7に出力する。なお、Iは遅延数を表しアドレス最大値Mを超えた場合はNを引く。7は出力側メモリであり、各出力に設ける。208は出力先選択回路であり、切換制御信号が入力される毎に出力先を切替えていく。
【0020】
実施の形態1と同様に、例としてN=4として図10のスイッチ回路を模擬する。
図3は実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の各構成要素のデータの推移を表わした図である。図4は実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の信号処理の経過を示した図であり、(a)は入力側の遅延処理の様子を、(b)は出力側の遅延処理の様子を示す。
以下では、図3、図4を用いて、実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路による回路動作の模擬について説明する。
ここで、アドレス最大値MはM=3とする。また遅延制御信号Iは、I=1とする。カウンタは0→1→2→3→0→・・・となるようにカウンタ制御信号を入力する。入力側読み出しアドレス生成器2は、カウンタの値に3を足した値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。入力#1の書き込みアドレス生成器203は、カウンタと同じ値を出力する。入力#2の書き込みアドレス生成器203は、カウンタの値に1を加えた値を出力する。すなわち、1→2→3→0→1→・・・と遷移する。入力#3の書き込みアドレス生成器203は、カウンタの値に2を加えた値を出力する。すなわち、2→3→0→1→2→・・・と遷移する。入力#4の書き込みアドレス生成器203は、カウンタの値に3を加えた値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。入力側メモリ4には、各入力が指定のアドレスに書き込まれる。出力側読み出しアドレス生成器205は、カウンタの値に3を足した値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。出力#1の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値に3を足した値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。出力#2の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値に2を足した値を出力する。すなわち、2→3→0→1→2→・・・と遷移する。出力#3の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値に1を足した値を出力する。すなわち、1→2→3→0→1→・・・と遷移する。出力#4の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値をそのまま出力する。出力側メモリ207には、出力先選択回路の各出力が指定のアドレスに書き込まれる。出力先選択回路は切換制御信号により1クロックずつ出力先が切替えられる。
このように、カウンタ1と、アドレス生成器202と、入力側の書き込みアドレス生成器203と、入力側メモリ204と、出力側の読み出しアドレス生成器205と、入力側の書き込みアドレス生成器206と、出力側メモリ207と、出力先選択回路208からなるDBF信号処理装置によってもコーナーターン処理に必要な動作を行うことが可能である。これにより、素子数Nやビーム数Mを変更する場合であっても回路の再設計が不要であり、開発の期間短縮及び開発コストを抑えることができる。
【0021】
実施の形態3.
実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路では、スイッチ回路をLUT(LUT:ルックアップテーブル)と切換回路を用いて構成され、出力先の選択に外部から書き換え可能なメモリを使用することにより、出力先を動的に変更可能となるようにした。
図5は、実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。この遅延回路は、従来の図9のスイッチ回路601、602に相当する回路である。
図5において、301は出力先選択回路、302は接続先選択LUT(LUT:ルックアップテーブル)、303は状態遷移LUTである。接続選択LUTは、各入力と出力の接続の組み合わせを保持し、また状態遷移LUT303は、カウンタ値に応じた接続選択LUTの番号を保持する。304は切換回路であり出力先を切り換える。
スイッチ回路は、状態遷移LUT303で指定された接続選択LUTを用いて、入力と出力の接続を切り替える。接続選択LUTと状態遷移LUT303を外部から書き換え可能とすることで、接続されるビーム形成回路を任意に変更可能となる。なお、接続先選択LUT302はN種必要となる。汎用化のためには、できるだけ多くの接続先選択LUT302があるとよい。
【0022】
図6は、4入力4出力で1クロック毎に遅延させたデータを入力した場合の遅延回路の回路動作を示す。なお、遅延処理には、実施の形態1または2を使用する。
カウンタが0である間、状態遷移LUT303は接続選択LUT(1)を指定しているので、入力#1は出力#1に、入力#2は出力#2に、入力#3は出力#3に、入力#4は出力#4に接続されている。
次にカウンタが1になると、状態遷移LUT303は接続選択LUT(2)を指定しているので、入力#1は出力#2に、入力#2は出力#1に、入力#3は出力#4に、入力#4は出力#3に接続が切り替わる。
カウンタが2の場合は、状態遷移LUT303は接続選択LUT(3)を指定しているので、入力#1は出力#3に、入力#2は出力#2に、入力#3は出力#1に、入力#4は出力#4に接続が切り替わる。
カウンタが3の場合は、状態遷移LUT303は接続選択LUT(4)を指定しているので、入力#1は出力#4に、入力#2は出力#3に、入力#3は出力#2に、入力#4は出力#1に接続が切り替わる。
出力#1に注目した場合、カウンタ0で入#1にA1の信号が入力されその時の出力先に選択されているため、次クロックにてA1が出力される。次にカウンタが1になると入力#2が出力先に選択されているため、カウンタ1のときに入力#2に入力されたB1の信号が出力される。以上を繰り返すことにより、出力先選択回路の機能を満たすことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 入力側シフトレジスタ、2 入力側マルチプレクサ、3 出力側レジスタ、4 出力側マルチプレクサ、5 出力先選択回路、1i(i=1〜n) 入力側選択信号、2j(j=1〜n) 出力側選択信号、30 切換制御信号、201 カウンタ、202 アドレス生成器、203 入力側の書き込みアドレス生成器、204 入力側のメモリ、205 出力側の読み出しアドレス生成器、206 入力側の書き込みアドレス生成器、207 出力側メモリ、208 出力先選択回路、301 出力先選択回路、302 接続先選択LUT(LUT:ルックアップテーブル)、303 状態遷移LUT、304 切換回路。
【技術分野】
【0001】
この発明はコーナーターン処理方式でマルチビームを形成するDBF信号処理装置に用いられる遅延回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の受信素子を用いて外部から到来する電波を受信し、且つ各受信素子で受信した電波を信号処理によって合成することにより、到来方向毎に信号を弁別する技術として、ディジタルビームフォーミング( Digital Beam Forming :DBF )と呼ばれる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
N個の素子(以下、N素子と略す)からM本のビーム(以下、Mビームと略す)を形成する一般的なDBF信号処理装置は、N個のA/D変換器とデジタル直行検波器と、1個の積和演算器と、M個のデジタル直行変調器とD/A変換器から構成され、N素子の信号は積和演算器に集約される。素子数Nやビーム数Mが大きく大規模のDBF信号処理装置を構成する場合は、積和演算器が大きくなり、1つのLSIで構成することが不可能となるため分割処理が必要となる。
分割処理の方法の一つとして、コーナーターン方式がある。コーナーターン方式を採用したDBF信号処理装置は、積和演算器の入力側と出力側に各1個のスイッチ回路を設け、スイッチ回路を設けることで積和演算器を小さいブロックに分割するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−284944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコーナーターン方式を採用したDBF信号処理装置では、コーナーターン処理を実行するためには少なくとも2種類のスイッチ回路が必要であり、個々にそのスイッチ回路を設計する必要があるという課題があった。
また、設計したスイッチ回路の動作も固定であるため汎用性が無いという課題があった。すなわち、DBF信号処理装置の仕様である素子数Nやビーム数Mを変更した場合は回路の再設計が必要であり、開発期間の長期化やコストが増加するなどの課題があった。
【0005】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、素子数Nやビーム数Mに変更があった場合であっても対応可能な、汎用性の高いDBF信号処理用遅延回路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のDBF信号処理用遅延回路は、入力データをクロック毎にレジスタ内で移動するN個の入力側シフトレジスタと、前記入力側シフトレジスタの各々と接続され、前記クロック毎に入力側選択信号を入力して前記入力側選択信号により指定された前記入力側シフトレジスタ内のデータを抽出して出力するN個の入力側マルチプレクサと、前記入力側マルチプレクサと接続され、前記クロック毎に切換制御信号を入力して前記切換制御信号により指定された出力先に、前記入力側マルチプレクサから入力したデータを出力する出力先選択回路と、前記出力先選択回路に接続され、前記出力先選択回路から前記クロック毎に入力したデータをレジスト内で移動するN個の出力側シフトレジスタと、前記出力側シフトレジスタに接続され、出力側選択信号により選択された前記出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサと、前記入力側選択信号と前記切換制御信号と前記出力側選択信号により、前記入力側マルチプレクサと前記出力先選択回路と前記出力側シフトレジスタの動作を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、素子数Nやビーム数Mに関して汎用性の高いDBF信号処理用遅延回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。
【図2】実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。
【図3】実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の各構成要素のデータの推移を表わした図である。
【図4】実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の信号処理の経過を示した図である。
【図5】実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。
【図6】実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路の信号処理の経過を示した図である。
【図7】従来からの一般的なDBF信号処理装置の構成を示した図である。
【図8】従来のコーナーターン方式を採用した場合のDBF信号処理装置の構成を示した図である。
【図9】従来のDBF信号処理装置において、16素子×16ビームでDBF信号処理装置を構成した場合のコーナーターン用回路の構成図である。
【図10】従来のDBF信号処理装置におけるコーナーターン用スイッチ回路の構成例を示した図である。
【図11】従来のコーナーターン用スイッチ回路の動作を示した図である。
【図12】従来のコーナーターン用スイッチ回路の構成例を示した図である。
【図13】従来のコーナーターン用スイッチ回路の動作を示した図である。
【図14】従来のコーナーターン用スイッチ回路のコーナーターン処理の動作を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
従来のDBF信号処理装置の構成と動作について図を用いて説明を行った後、本発明に係るDBF信号処理用遅延回路について説明する。
図7は従来からの一般的なDBF信号処理装置200の構成図であり、N素子からMビームを形成するDBF信号処理装置である。N個の入力端子1に入力された素子IF信号は、A/D変換器402によりデジタル信号に変換され、デジタル直行検波器403に入力される。デジタル直行検波器403は入力された素子IFデジタル信号に、+1、±0、−1、±0を掛け合わせ、FIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答 )フィルタにより高調波成分を除いた、素子ベースバンドデジタル信号に変換する。
このN個の素子ベースバンド信号は積和演算器404に入力され、積和演算器404によりビーム毎のウエイトを掛け合わされ、M個のビームベースバンド信号に変換される。ビームベースバンド信号は、デジタル直行変調器405により、+1、±0、−1、±0が掛け合わされ、ビームIF信号に変換される。ビームIF信号は、D/A変換器406によりアナログ信号に変化され、出力407に出力される。
【0010】
図7に示すとおりDBF信号処理装置によりN個の素子信号からM個のビーム信号を生成するためには、全素子の信号を積和演算器404に集約する必要がある。
素子数Nとビーム数Mが少ない場合は、積和演算器404の入力側にN個のデジタル直行検波器403を接続し、積和演算器404の出力側にはM個のデジタル直行変調器405を接続することで実現可能であるが、素子数Nやビーム数Mが大きく大規模なDBF信号処理装置を構成する場合は積和演算器404が大きくなり、1つのLSIで構成することが現実的には不可能となる。この対策として積和演算器404を分割して処理する分割方式が挙げられる。
【0011】
分割処理の一つとしてコーナーターン方式と呼ばれる方式がある。図8はコーナーターン方式を採用したDBF信号処理装置の構成例である。N個の素子信号からM個のビーム信号を生成するDBF信号処理装置であり、積和演算器505の入力側と出力側にスイッチ回路504、506が設けられる。このようにスイッチ回路504、506を積和演算器505の前後に設けることにより、積和演算器を小さいブロック(積和演算器505)に分割することができる。
N個の入力端子501にはDBF信号処理装置外部から素子IF信号が入力される。N個のA/D変換器502は入力された素子IF信号をデジタル信号に変換する。N個のデジタル直交検波器503は、デジタル信号に+1、±0、−1、±0を順に乗算し、内部のFIRフィルタにて高調波成分を除いた素子ベースバンド信号を生成する。スイッチ回路504は素子ベースバンド信号の素子毎に時間順の信号と、時間毎に素子順の、素子ベースバンド直列信号に変換し、積和演算器505に出力する。
積和演算器505は所望のビームを得るために必要なM種類のウエイトを素子順に入力される入力信号に掛け合わせ、M個のビームベースバンド直列信号を生成し、生成したビームベースバンド直列信号をビーム順に出力する。ここで、積和演算器が生成するビームベースバンド直列信号はスイッチ回路504にて時間別に分けられているため、ある時間におけるM個の信号であり時間順とはなっていない。すなわち、別の時間の信号は別の積和演算器505にて演算されている。
積和演算器505より出力されたビームベースバンド直列信号は、スイッチ回路506に入力され、時間別ビーム順の直列信号からビーム別時間順の信号に並べ変え、デジタル直交変調器507にビームベースバンド信号を出力される。
デジタル直交変調器507はビームベースバンド信号に、+1、±0、−1、±0を順に乗算し、ビームIF信号に変換する。D/A変換器508はビームIF信号をアナログ信号に変換する。上記の処理を行うことにより、N個の素子IF信号から、M個のビームIF信号を生成することが出来る。
このように、スイッチ回路504とスイッチ回路506により行われる信号の並べ替えの処理をコーナーターンと呼ぶ。
【0012】
次にコーナーターン方式によるスイッチ回路504、506の動作を説明する。
図9は図8で説明したDBF信号処理装置において素子数N=16、ビーム数M=16とした場合のスイッチ回路504の構成例を示したものである。図9では4入力−4出力遅延1のスイッチ回路601と、4入力−4出力4遅延のスイッチ回路602を組み合わせている。
まず、図9のスイッチ回路601の動作を説明する。
図10はスイッチ回路601の構成である。従来のスイッチ回路はLSIで実現され、遅延は最も単純なレジスタ遅延で行っている。図10に示す(a)〜(d)の接続を、(a)→(b)→(c)→(d)→(a)→・・・の順で1クロック毎に切り替える。図10のスイッチ回路601の入力と出力の様子を図11に示す。図11に示すとおり、図10のスイッチ回路601は入力信号を4信号ずつの転置行列にして出力する。
次に、図9のスイッチ回路602の動作を説明する。図12は図9のスイッチ回路602の構成である。図12に示す(a)〜(d)の接続を、(a)→(b)→(c)→(d)→(a)→・・・の順で4クロック毎に切換る。図13に図12のスイッチ回路の入力と出力の様子を示す。図13に示すとおり、図12のスイッチ回路は、入力信号4信号を1つの組として、転置行列に変換して出力している。
図14は、図9のスイッチ回路601に16素子の信号を入力した場合の出力との関係を示した図である。図14(a)が入力信号である。素子を示すアルファベットA〜Pと、時間を示す数字で入力信号を表している。A1は素子1の1番目のデータ、A2は素子1の2番目のデータで、他も同様である。図14(a)の入力信号を図9のスイッチ回路601に入力したときの出力として図14(b)の中間出力が得られる。図10、図11で示したとおり、4入力毎に転置行列化した信号が出力される。
【0013】
次に、この図14(b)で表わされる中間出力は図9のスイッチ回路602に入力されるが、このとき図9に示した接続の入れ替えが実行される。図14(c)はスイッチ回路602に入力される信号を示している。A〜Pの時間1の信号が全て同一のスイッチ回路602に入力されていることがわかる。時間2〜16についても、時間毎に同一のスイッチ回路に入力されていることがわかる。
スイッチ回路602に入力された信号は図12、図13で説明したとおり、4信号を一組として転置行列化されて出力される。転置行列化された出力結果を図14(d)に示す。A〜Pの素子の時間1の信号が一列に素子順に並べ替えられているのがわかる。また、出力は素子ベースバンド直列信号として後段の積和演算器に入力される。
なお、回路の動作は、DBF信号処理装置を構成する素子数、ビーム数、スライス分割数等の設計仕様に基づいて決定される。DBF信号処理装置を構成する素子数、ビーム数によっては、入力数と出力数が異なる場合もある。
【0014】
このように、従来のコーナーターン方式を用いたDBF信号処理装置は、N個のA/D変換器とデジタル直交検波器と、積和演算器と、積和演算器の前後に設けられたスイッチ回路と、M個のデジタル直交変調器とD/A変換器から構成される。しかしながら、素子数Nやビーム数Mは固定であり、これらを変更する場合は回路の再設計が必要で開発の長期化及びコストの増大の原因となっていた。
【0015】
実施の形態1.
次に、本発明に係る実施の形態1のDBF信号処理用遅延回路について説明する。
図1は、この発明に係る実施の形態1のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。この遅延回路は、従来の図9のスイッチ回路601、602に相当する回路である。
図1において、1はN×(N−1)段以上の入力側シフトレジスタであり、クロック毎にデータをシフトさせてレジスタ内のデータに遅延時間を付加する。2は入力側N入力1出力の入力側マルチプレクサ(MUX)であり、入力側選択信号1i(iは1〜Nまでの入力番号)によりどの入力を出力するかを制御される。3はN×(N−1)段以上の出力側レジスタであり、クロック毎にデータをシフトさせてレジスタ内のデータに遅延時間を付加する。4は出力側N入力1出力の出力側マルチプレクサであり、出力側選択信号2j(jは1〜Nまでの入力番号)で、どの入力を出力するかを制御される。5は出力先選択回路であり切換制御信号30が入力される度に出力先を切り換えていく。DBF信号処理装置の動作を制御する制御装置(図示せず)は、入力側選択信号1iと出力側選択信号2jと切換制御信号の各信号を、制御入力側マルチプレクサ、出力側マルチプレクサ、出力先選択回路の各々に対して出力する。
【0016】
一例としてN=4とした本実施の形態の遅延回路により図10で説明した回路を模擬する。入力#1は入力信号をそのまま出力するよう、マルチプレクサ2に入力側選択信号11を与える。入力#2は1段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号12を与える。入力#3は2段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号13を与える。入力#4は3段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号14を与える。
ここで、出力#1からは3段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号21を与える。出力#2からは2段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号22を与える。出力#3からは1段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号23を与える。出力#4からは出力先選択回路5の出力がそのまま出力されるよう、出力側選択信号24を与える。
この状態で、出力先選択回路5に1クロック毎に出力先を切替えるよう切換制御信号30入力することにより、図10の回路を模擬することができる。
【0017】
別の例として、従来の図12の回路を本実施の形態の遅延回路の構成により模擬する。入力#1は入力信号をそのまま出力するよう、マルチプレクサ2に入力側選択信号11を与える。入力#2は4段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号12を与える。入力#3は8段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号13を与える。入力#4は12段目のレジスタ出力がマルチプレクサ2から出力されるように入力側選択信号14を与える。
続いて、出力#1からは12段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号21を与える。出力#2からは8段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号22を与える。出力#3からは4段目のレジスタの出力が選択されるよう、出力側選択信号23を与える。出力#4からは出力先選択回路5の出力がそのまま出力されるよう、出力側選択信号24を与える。
この状態で、出力先選択回路5に4クロック毎に出力先を切替えるよう切換制御信号を入力することにより、図12の回路を模擬することができる。
【0018】
このように、本実施の形態のDBF信号処理用遅延回路は、N個の入力側シフトレジスタと、各々の入力側シフトレジスタと接続され入力側選択信号により選択された入力側シフトレジスタ内のデータを出力するN個の入力側マルチプレクサと、N個のマルチプレクサと接続され、切換制御信号によりマルチプレクサから入力されたデータを指定された出力先に出力する出力先選択回路と、出力先選択回路に接続されたN個の出力側シフトレジスタと、各出力側レジスタに接続され、出力側選択信号により選択された出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサと、回路の動作を制御し、入力側選択信号と出力側選択信号と切換制御信号の各信号を入力側マルチプレクサ、出力側マルチプレクサ、出力先選択回路の各々に対して出力する制御部とから構成される。
制御装置は、入力側選択信号により入力側シフトレジスト内のデータを選択し、選択したデータの出力先を選択された出力先シフトレジスタに切換え、出力側選択信号により先に切換えられた出力先シフトレジスタ内のデータを選択して出力するようにした。
このようにして、本実施の形態のDBF信号処理用遅延回路はコーナーターン処理に必要な動作を行うことができる。
これにより、素子数Nやビーム数Mを変更する場合であっても制御部の処理プログラムを変更することで対応が可能なため、回路設計を新たに行うことが不要となり、開発期間の短縮及びコストを抑えることができる。
【0019】
実施の形態2.
実施の形態1ではシフトレジスタを用いて各データに遅延時間を付加していたが、実施の形態2では、遅延時間の付加をメモリを使用する処理に変更する。
図2は、実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。この遅延回路は、従来の図9のスイッチ回路601、602に相当する回路である。図2において、201はカウンタであり1クロック毎にカウントアップする。なお、カウンタ制御信号が入力されると0となる。202は入力側の読み出しアドレス生成器であり、カウンタの値に(N−1)を足し、アドレス最大値を超えた場合はNを引いた値を出力する。203は入力側の書き込みアドレス生成器であり、カウンタの値にそれぞれ与えられた係数と遅延制御信号の値を変え合わせて入力側メモリ204に出力する。なお、Iは遅延数を表し、アドレス最大値Mを超えた場合はMを引く。204は入力側のメモリであり各入力に設ける。205は出力側の読み出しアドレス生成器であり、カウンタの値に(N−1)を足してアドレス最大値Nを引いた値を出力する。206は入力側の書き込みアドレス生成器であり、カウンタの値にそれぞれ与えられた係数と遅延制御信号の値を変え合わせて出力側メモリ7に出力する。なお、Iは遅延数を表しアドレス最大値Mを超えた場合はNを引く。7は出力側メモリであり、各出力に設ける。208は出力先選択回路であり、切換制御信号が入力される毎に出力先を切替えていく。
【0020】
実施の形態1と同様に、例としてN=4として図10のスイッチ回路を模擬する。
図3は実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の各構成要素のデータの推移を表わした図である。図4は実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路の信号処理の経過を示した図であり、(a)は入力側の遅延処理の様子を、(b)は出力側の遅延処理の様子を示す。
以下では、図3、図4を用いて、実施の形態2のDBF信号処理用遅延回路による回路動作の模擬について説明する。
ここで、アドレス最大値MはM=3とする。また遅延制御信号Iは、I=1とする。カウンタは0→1→2→3→0→・・・となるようにカウンタ制御信号を入力する。入力側読み出しアドレス生成器2は、カウンタの値に3を足した値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。入力#1の書き込みアドレス生成器203は、カウンタと同じ値を出力する。入力#2の書き込みアドレス生成器203は、カウンタの値に1を加えた値を出力する。すなわち、1→2→3→0→1→・・・と遷移する。入力#3の書き込みアドレス生成器203は、カウンタの値に2を加えた値を出力する。すなわち、2→3→0→1→2→・・・と遷移する。入力#4の書き込みアドレス生成器203は、カウンタの値に3を加えた値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。入力側メモリ4には、各入力が指定のアドレスに書き込まれる。出力側読み出しアドレス生成器205は、カウンタの値に3を足した値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。出力#1の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値に3を足した値を出力する。すなわち、3→0→1→2→3→・・・と遷移する。出力#2の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値に2を足した値を出力する。すなわち、2→3→0→1→2→・・・と遷移する。出力#3の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値に1を足した値を出力する。すなわち、1→2→3→0→1→・・・と遷移する。出力#4の書き込みアドレス生成器206は、カウンタの値をそのまま出力する。出力側メモリ207には、出力先選択回路の各出力が指定のアドレスに書き込まれる。出力先選択回路は切換制御信号により1クロックずつ出力先が切替えられる。
このように、カウンタ1と、アドレス生成器202と、入力側の書き込みアドレス生成器203と、入力側メモリ204と、出力側の読み出しアドレス生成器205と、入力側の書き込みアドレス生成器206と、出力側メモリ207と、出力先選択回路208からなるDBF信号処理装置によってもコーナーターン処理に必要な動作を行うことが可能である。これにより、素子数Nやビーム数Mを変更する場合であっても回路の再設計が不要であり、開発の期間短縮及び開発コストを抑えることができる。
【0021】
実施の形態3.
実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路では、スイッチ回路をLUT(LUT:ルックアップテーブル)と切換回路を用いて構成され、出力先の選択に外部から書き換え可能なメモリを使用することにより、出力先を動的に変更可能となるようにした。
図5は、実施の形態3のDBF信号処理用遅延回路の構成図である。この遅延回路は、従来の図9のスイッチ回路601、602に相当する回路である。
図5において、301は出力先選択回路、302は接続先選択LUT(LUT:ルックアップテーブル)、303は状態遷移LUTである。接続選択LUTは、各入力と出力の接続の組み合わせを保持し、また状態遷移LUT303は、カウンタ値に応じた接続選択LUTの番号を保持する。304は切換回路であり出力先を切り換える。
スイッチ回路は、状態遷移LUT303で指定された接続選択LUTを用いて、入力と出力の接続を切り替える。接続選択LUTと状態遷移LUT303を外部から書き換え可能とすることで、接続されるビーム形成回路を任意に変更可能となる。なお、接続先選択LUT302はN種必要となる。汎用化のためには、できるだけ多くの接続先選択LUT302があるとよい。
【0022】
図6は、4入力4出力で1クロック毎に遅延させたデータを入力した場合の遅延回路の回路動作を示す。なお、遅延処理には、実施の形態1または2を使用する。
カウンタが0である間、状態遷移LUT303は接続選択LUT(1)を指定しているので、入力#1は出力#1に、入力#2は出力#2に、入力#3は出力#3に、入力#4は出力#4に接続されている。
次にカウンタが1になると、状態遷移LUT303は接続選択LUT(2)を指定しているので、入力#1は出力#2に、入力#2は出力#1に、入力#3は出力#4に、入力#4は出力#3に接続が切り替わる。
カウンタが2の場合は、状態遷移LUT303は接続選択LUT(3)を指定しているので、入力#1は出力#3に、入力#2は出力#2に、入力#3は出力#1に、入力#4は出力#4に接続が切り替わる。
カウンタが3の場合は、状態遷移LUT303は接続選択LUT(4)を指定しているので、入力#1は出力#4に、入力#2は出力#3に、入力#3は出力#2に、入力#4は出力#1に接続が切り替わる。
出力#1に注目した場合、カウンタ0で入#1にA1の信号が入力されその時の出力先に選択されているため、次クロックにてA1が出力される。次にカウンタが1になると入力#2が出力先に選択されているため、カウンタ1のときに入力#2に入力されたB1の信号が出力される。以上を繰り返すことにより、出力先選択回路の機能を満たすことができる。
【符号の説明】
【0023】
1 入力側シフトレジスタ、2 入力側マルチプレクサ、3 出力側レジスタ、4 出力側マルチプレクサ、5 出力先選択回路、1i(i=1〜n) 入力側選択信号、2j(j=1〜n) 出力側選択信号、30 切換制御信号、201 カウンタ、202 アドレス生成器、203 入力側の書き込みアドレス生成器、204 入力側のメモリ、205 出力側の読み出しアドレス生成器、206 入力側の書き込みアドレス生成器、207 出力側メモリ、208 出力先選択回路、301 出力先選択回路、302 接続先選択LUT(LUT:ルックアップテーブル)、303 状態遷移LUT、304 切換回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データをクロック毎にレジスト内で移動するN個の入力側シフトレジスタと、
前記入力側シフトレジスタの各々と接続され、前記クロック毎に入力側選択信号を入力して前記入力側選択信号により指定された前記入力側シフトレジスタ内のデータを抽出して出力するN個の入力側マルチプレクサと、
前記入力側マルチプレクサと接続され、前記クロック毎に切換制御信号を入力して前記切換制御信号により指定された出力先に、前記入力側マルチプレクサから入力したデータを出力する出力先選択回路と、
前記出力先選択回路に接続され、前記出力先選択回路から前記クロック毎に入力したデータをレジスト内で移動するN個の出力側シフトレジスタと、
前記出力側シフトレジスタに接続され、出力側選択信号により選択された前記出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサと、
前記入力側選択信号と前記切換制御信号と前記出力側選択信号により、前記入力側マルチプレクサと前記出力先選択回路と前記出力側シフトレジスタの動作を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするDBF信号処理用遅延回路。
【請求項1】
入力データをクロック毎にレジスト内で移動するN個の入力側シフトレジスタと、
前記入力側シフトレジスタの各々と接続され、前記クロック毎に入力側選択信号を入力して前記入力側選択信号により指定された前記入力側シフトレジスタ内のデータを抽出して出力するN個の入力側マルチプレクサと、
前記入力側マルチプレクサと接続され、前記クロック毎に切換制御信号を入力して前記切換制御信号により指定された出力先に、前記入力側マルチプレクサから入力したデータを出力する出力先選択回路と、
前記出力先選択回路に接続され、前記出力先選択回路から前記クロック毎に入力したデータをレジスト内で移動するN個の出力側シフトレジスタと、
前記出力側シフトレジスタに接続され、出力側選択信号により選択された前記出力側レジスタ内のデータを出力する出力側マルチプレクサと、
前記入力側選択信号と前記切換制御信号と前記出力側選択信号により、前記入力側マルチプレクサと前記出力先選択回路と前記出力側シフトレジスタの動作を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするDBF信号処理用遅延回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−199726(P2011−199726A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66016(P2010−66016)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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