説明

DC−DCコンバータ

【課題】不適合なDC−DCコンバータが接続されたことを、出力側に接続する負荷へ伝達可能なDC−DCコンバータを提供する。
【解決手段】高圧側出力線と低圧側出力線のいずれかにシャント抵抗を直列に配線し、シャント抵抗両端の電位差を表す電圧信号を、負荷へ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流入力電圧を変換し、一対の出力線間に接続する負荷へ安定した直流出力電圧を出力するDC−DCコンバータに関し、更に詳しくは、負荷に流れる出力電流の電流値を、DC−DCコンバータ側から出力するDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
DC−DCコンバータは、不安定な直流入力電圧を安定した所定出力電圧に変換する変換器として、携帯電話機、携帯音楽プレーヤ等の携帯電子機器の充電器やACアダプタに用いられている。
【0003】
図4は、従来のDC−DCコンバータのうちから絶縁フライバック型DC−DCコンバータ100の一例を示すもので(特許文献1)、図中、1aは、直流電源のの高圧端子、1bは、低圧端子であり、2aは、トランス2の一次巻線、2bは、トランス2の二次出力巻線である。
【0004】
間欠発振素子3は、トランス2の一次巻線2aと、直流電源1に対して直列に接続され、通常は、一定周波数で一次巻線2aと低圧端子1b間を開閉するように連続動作し、制御端子3aに一定の電流を流す休止制御信号が入力されている間は、一次巻線2aと低圧端子1b間を切断させた状態で休止する。
【0005】
39は、後述する出力側に設けられたフォトカプラ発光素子35とフォトカップルするフォトカプラ受光素子であり、間欠発振素子3の制御端子3aと直流電源1の低圧端子1b間に接続される。
【0006】
トランス2の二次側(出力側)には、整流平滑化回路を構成する整流用ダイオード4と平滑コンデンサ13が設けられ、二次出力巻線2bの出力を整流平滑化して、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に出力している。
【0007】
一対の出力線20a、20b間には、その出力電圧と出力電流を監視し、いずれかが所定値に設定する設定電圧若しくは設定電流を越えた際に、図中のフォトカプラ発光素子35を発光させる電圧監視回路と電流監視回路からなる出力監視回路が設けられている。
【0008】
上述の間欠発振素子3は、連続動作している間に、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に発生する出力電力と出力電流が徐々に上昇するように、開閉動作の周波数とオンデューティが設定されている。高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に負荷が接続された状態で、上昇する出力電圧が設定電圧を越えると、誤差増幅器33aの反転入力端子に入力される分圧抵抗30,31の中間タップ32の電位も上昇し、電圧監視用基準電源34aの第1比較電圧との電位差が反転増幅され、フォトカプラ発光素子35の発光しきい値を越える電位となる。
【0009】
また、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に接続された負荷によって、出力電流が設定電流を越えて上昇した場合も、低圧側出力線20bに直列に接続される電流検出用抵抗43の出力電流による電圧降下が増加して誤差増幅器33bの反転入力端子に入力される電圧が上昇し、電流監視用基準電源34bの第2比較電圧との電位差が反転増幅され、フォトカプラ発光素子35の発光しきい値を越える電位となる。
【0010】
その結果、出力電圧若しくは出力電流のいずれかが設定電圧若しくは設定電流を越える限り、フォトカプラ発光素子35は発光し続け、これらの値を超えたことを示すリミット信号がフォトカプラ受光素子39に連続して出力される。
【0011】
フォトカプラ受光素子39は、フォトカプラ発光素子35からのリミット信号を受光している間、間欠発振素子3の制御端子3aから直流電源1の低圧端子1bに一定の電流が流れるので、制御端子3aには、休止制御信号が連続して入力される状態となる。その間間欠発振素子3の開閉動作が休止し、トランス3の1次巻き線2aに流れる電流が遮断され、トランス3の二次出力巻線2bに蓄積される励磁エネルギーが徐々に負荷により消費されていくので、設定電圧若しくは設定電流を越えていた出力電圧若しくは出力電流は、減少し、設定電圧若しくは設定電流以下となる。
【0012】
その結果、フォトカプラ発光素子35は発光を停止し、フォトカプラ受光素子39がリミット信号を受光しなくなるので、間欠発振素子3は、再び連続開閉動作を繰り返し、出力電圧と出力電流をそれぞれ設定電圧と設定電流とする定電圧制御と定電流制御が行われる。
【0013】
また、一対の出力線間の出力電圧が何らかの原因で設定電圧を超えその動作を停止させた場合に、異常動作信号を負荷へ出力するDC−DCコンバータも知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3391774号公報
【特許文献2】特開2005−323437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この種の従来のDC−DCコンバータは、充電器やACアダプタとして、その出力定格に適合する負荷である電子機器に接続して使用されるが、近年の電子機器は、汎用のUSB(Universal Serial Bus)コネクタを介して充電器やACアダプタと接続する構成が採用されているので、適合しないDC−DCコンバータとも誤接続する可能性がある。負荷の消費電力を越えた出力定格のDC−DCコンバータに誤接続すると、負荷側からDC−DCコンバータの動作を停止させたり、その動作を制御する手段がないので、負荷の内部で余剰電力を消費しなければならず、異常発熱による火傷や火災発生の危険が生じるものであった。
【0016】
このような問題が予測されるにもかかわらず、特許文献1に記載のDC−DCコンバータに代表される従来のDC−DCコンバータには、不適合な負荷が接続された場合にその誤接続状態を負荷側へ出力手段がなく、特許文献2に記載されたDC−DCコンバータであっても、自らの異常動作を負荷側へ出力するだけであり、定格出力の正常動作をしながら、上記危険が発生する恐れがあるような誤接続を、負荷側へ伝達する手段は備えていなかった。
【0017】
一方、負荷側で、DC−DCコンバータの出力線に接続する内部配線に、図4の電流検出用抵抗43に相当するシャント抵抗を直列に接続し、その電圧降下からDC−DCコンバータの出力電流が定格電流と異なる場合にDC−DCコンバータの誤接続を表示部へ表示し、使用者へ警告すること方法が考えられる。しかしながら、一般に充電器としてDC−DCコンバータを負荷へ接続する場合には、出力電流(充電電流)が1A程度と大きく、負荷の内部に接続するシャント抵抗の電圧降下を無視できず、負荷内部のバッテリー等は、定電圧出力制御するDC−DCコンバータの出力電圧未満の電圧で充電されることとなり、充電電圧不足の問題が生じる。特に、リチュウムイオン電池は、充電電圧を厳しく管理して充電する必要があり、DC−DCコンバータ側の出力電圧を設定電圧に定電圧制御しても、出力電流の変化で充電電圧が変動するものとなるので、上述のように、負荷側で出力電流を監視して、不適合なDC−DCコンバータとの接続を検出することは実用上困難なものとなっている。
【0018】
また、負荷内部の各回路は、一般的に接地レベルのDC−DCコンバータの低圧側出力線20bの電位を基準電位として動作するので、出力電流を表す図4の電流検出用抵抗43による電圧降下は負極性で表され、負荷側へ出力しても通常の負荷側比較回路では検出できない。電流検出用抵抗43による電圧降下を正極性で表すように、電流検出用抵抗43を高圧側出力線20aに直列に接続すると、出力電圧に対して出力電流を表すシャント抵抗の電圧降下が小さいため、出力電圧変動の影響を受け、高精度で出力電流を検出できないという問題があり、結局、DC−DCコンバータ側から負荷へ出力電流の値を伝達する障害となっていた。
【0019】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、不適合なDC−DCコンバータが接続されたことを、出力側に接続する負荷へ伝達可能なDC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【0020】
また、簡単な構成で、出力電流を表す電圧信号を正極性で負荷へ出力し、負荷側の比較回路で検出可能としたDC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載のDC−DCコンバータは、直流電源に直列に接続されるスイッチング素子と、スイッチング素子の開閉動作により直流電源から流れる電流が断続し、負荷に接続する一対の高圧側出力線と低圧側出力線間に、直流電源の入力電圧を異なる直流出力電圧に変換を出力するインダクタと、高圧側出力線と低圧側出力線間の出力電圧に応じてスイッチング素子を開閉制御し、出力電圧を定電圧制御する定電圧制御回路とを備えたDC−DCコンバータであって、
高圧側出力線と低圧側出力線のいずれかにシャント抵抗を直列に配線し、シャント抵抗両端の電位差を表す電圧信号を、負荷へ出力することを最も主要な特徴とする。
【0022】
負荷に出力される電圧信号は、シャント抵抗が直列に接続された高圧側出力線若しくは低圧側出力線に流れる出力電流を表すので、負荷側で、内部負荷への電圧を変動させずに、入力される電圧信号からDC−DCコンバータの出力電流を検出できる。
【0023】
また、請求項2に記載のDC−DCコンバータは、シャント抵抗を、低圧側出力線に直列に配線し、高圧側出力線とシャント抵抗の入力側に接続する低圧側出力線間に、一方を高圧側出力線に接続させたバッファ抵抗と、シャント抵抗の両端の電位差より高い定電圧を発生させる定電圧回路素子とを直列に接続し、定電圧回路素子とバッファ抵抗との直列接続点から電圧信号を出力することを特徴とする。
【0024】
負荷に接続する低圧側出力線の電位を基準電位として、シャント抵抗の入力側の電位は、低圧側主力線に流れる出力電流に比例する負極性の電位で表されるが、定電圧回路素子を介して定電圧回路素子とバッファ抵抗との直列接続点から出力される電圧信号は、正極性で負荷に流れる出力電流を表す。
【0025】
定電圧回路素子は、出力電圧の変動に依存しない定電圧を発生し、出力電圧の変動に応じてバッファ抵抗の電圧が変化する。
【0026】
また、請求項3に記載のDC−DCコンバータは、定電圧回路素子がシャントレギュレータであることを特徴とする。
【0027】
シャントレギュレータは、負荷と並列に接続され、負荷に出力される直流出力電圧の変動に依存しない定電圧を発生し、数Vの直流出力電圧以下で、シャント抵抗の両端の電位差以上の定電圧を容易に生成できる。
【0028】
また、請求項4に記載のDC−DCコンバータは、シャント抵抗両端の電位差から検出する低圧側出力線に流れる出力電流に応じてスイッチング素子を開閉制御し、前記出力電流を定電流制御する定電流制御回路を更に備えたことを特徴とする。
【0029】
正極性の電圧信号を出力するために用いるシャント抵抗を定電流制御回路の電流検出用抵抗に利用する。
【発明の効果】
【0030】
請求項1の発明によれば、負荷のバッテリーへの充電電圧を低下させたり、変動させずに、負荷側で接続しているDC−DCコンバータの出力電流を検出できる。
【0031】
負荷側で、DC−DCコンバータの出力電流から、異なる定格出力のDC−DCコンバータとの誤接続を検出でき、使用者に注意を喚起させることにより、負荷の異常発熱の危険を未然防止できる。
【0032】
請求項2の発明によれば、DC−DCコンバータから出力される電圧信号は、低圧側出力線の基準電位に対して正極性で、負荷に流れる出力電流を表すので、低圧側出力線の電位を基準電位として動作する負荷側の通常の比較回路でDC−DCコンバータから出力される出力電流を容易に検出できる。
【0033】
シャント抵抗は、低圧側出力線に直列に接続されるので、低圧側出力線の電位を基準電位として比較する出力電流を表す電位が出力電圧の変動に影響せず、高精度で出力電流を検出できる。
【0034】
請求項3の発明によれば、出力電圧が数V、出力電流が1A程度の定格のDC−DCコンバータから、正極性の電圧信号を出力するための定電圧回路素子として適している。
【0035】
請求項4の発明によれば、定電流制御回路の電流検出用抵抗をシャント抵抗として利用できるので、定電圧回路素子とバッファ抵抗を接続するだけで、出力電流を表す正極性の電圧信号を負荷へ接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施の形態に係るDC−DCコンバータ10の概略を示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施の形態に係るDC−DCコンバータ50の回路図である。
【図3】バイポーラトランジスタ60を定電圧回路素子として用いたDC−DCコンバータ70の回路図である。
【図4】従来のDC−DCコンバータ100を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施の形態に係るDC−DCコンバータ10を図1を参照して説明する。本実施の形態に係るDC−DCコンバータ10は、図4に示す従来のフライバック型DC−DCコンバータ100と基本構成は同一であり、従来のDC−DCコンバータ100に定電圧回路素子7とバッファ抵抗8を設けたものである。従って、従来のDC−DCコンバータ100と共通する回路及び回路素子については、同一の番号を付し、その詳細な説明は省略する。尚、DC−DCコンバータ10にも定電圧制御回路の電圧監視回路、交流負帰還素子を備えているが、図1ではこれらの構成の図示を省略している。
【0038】
本実施の形態では、DC−DCコンバータ10が100Vの商用交流電源に接続して、5V、1Aの定格出力で負荷である携帯電話機40を充電する充電器に内蔵されているものとして説明する。従って、図中、1は、100Vの商用交流電圧を整流して得られる電圧が変動する可能性のある不安定な直流電源であり、その高圧端子1aと低圧端子1b間の直流入力電圧は、141Vとなっている。2aは、トランス2の一次巻線、2bは、トランス2の二次出力巻線であり、一次巻線2aは、間欠発振素子3と、直流電源1に対して直列に接続されている。
【0039】
間欠発振素子3は、発振器とその発振及び休止を制御する制御素子と、トランス2の1次巻き線2aの電流を断続するスイッチング素子とを内蔵するものであり、制御素子は、通常、発信器から出力される一定の周波数でスイッチング素子を開閉制御し、制御端子3aに一定の電流を流す休止制御信号が入力されている間、発信器の発振を休止し、スイッチング素子を開制御するように動作する。
【0040】
間欠発振素子3の制御端子3aと直流電源1の低圧端子1bの間には、トランス2の二次側に設けられたフォトカプラ発光素子35とフォトカップルするフォトカプラ受光素子39が接続され、トランス2の二次側から負荷40へ出力される出力電圧と出力電流の信号を絶縁されたトランス2の一次側へ帰還させ、間欠発振素子3の間欠発振動作を制御している。
【0041】
トランス2の二次出力巻線2bの両端は、負荷40に接続する高圧側出力線20aと低圧側出力線20bに接続し、二次出力巻線2bに発生する出力は、高圧側出力線20aに直列に接続される整流用ダイオード4と二次出力巻線2bに並列に接続される平滑コンデンサ13とから構成される整流平滑化回路により整流平滑化され、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に出力される。14は、負荷40の負荷変動に対して出力電圧の安定を得るためのコンデンサであるが、必須なものではない。
【0042】
一対の出力線20a、20b間には、その出力電圧と出力電流を監視し、いずれかが所定の設定電圧若しくは設定電流を越えた際に、図中のフォトカプラ発光素子35を発光させる電圧監視回路と電流監視回路からなる出力監視回路が設けられているが、上述の通り、電圧監視回路の図示とその説明は省略する。
【0043】
電流監視回路は、低圧側出力線20bにシャント抵抗11を直列に接続し、シャント抵抗11の出力側一端を誤差増幅器33bの反転入力端子に、入力側他端を電流監視用基準電源34bを介して非反転入力端子に入力している。これによって、低圧側出力線20bに流れる出力電流は、シャント抵抗11の両端の電位差で表され、誤差増幅器33bで電流監視用基準電源34bの第2比較電圧と比較して、所定の設定電流を越えたかどうかを判定する。
【0044】
出力電流を定電流制御する目標値となる設定電流は、シャント抵抗11の抵抗値、若しくは電流監視用基準電源34bの第2比較電圧を変更することによって、任意の値に設定することができる。一方、シャント抵抗11には出力電流が流れるので、シャント抵抗11には小抵抗値の抵抗が用いられ、ここでは、出力電流を1Aに定電流制御するために設定電流を1Aとして、抵抗値0.3Ωのシャント抵抗11と、0.3Vの電流監視用基準電源34bを用いている。
【0045】
誤差増幅器33bの出力側には、フォトカプラ発光素子35が接続され、フォトカプラ発光素子35は、電気抵抗36を介して高圧側出力線20aに接続して、駆動電源の供給を受けている。従って、低圧側出力線20bに流れる出力電流が設定電流を越える間、フォトカプラ発光素子35は連続発光し、発光により設定電流を超えたことを示すリミット信号がフォトカプラ受光素子39に出力される。
【0046】
シャント抵抗11の入力側の低圧側出力線20bには、定電圧回路素子となるシャントレギュレータ7の低圧側が接続され、シャントレギュレータ7の他側の高圧側は、バッファ抵抗8を介して高圧側出力線20aに接続している。シャントレギュレータ7は、流れる電流にかかわらず、その両端に定電位差を発生させる回路素子で、その電位差は、出力電流が流れるシャント抵抗11の電位差より大きく、定電圧制御する出力電圧より小さい定電位を発生させる定電圧回路素子を用いる。ここでは、出力電圧が5V以下で動作し、少なくとも出力電流が4A以下で、高圧側の電位が正極性の電位となるように、低圧側に対して高圧側の電位が+1.25Vとなるシャントレギュレータを用いている。
【0047】
高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間の出力電圧は、定電圧制御回路により定電圧制御されるものの、負荷の変動や入力電圧の変化による一時的な変動があるので、バッファ抵抗8に流れる電流が変化し、その電圧降下が出力電圧の変動に伴って変化することにより、直列に接続されたシャントレギュレータ7の電位差が定電位に保たれる。
【0048】
シャントレギュレータ7とバッファ抵抗8との直列接続点は、信号線Dを介して負荷40に接続し、シャントレギュレータ7の高圧側の電位を電圧信号として負荷40へ出力している。
【0049】
このように構成されたDC−DCコンバータ10の動作は、高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間の出力電圧とこれらの出力線に流れる出力電流が、所定の設定電圧と設定電流を越えていない間は、間欠発振素子3が一定の周波数で発振し、二次出力巻線2bに発生する出力電力若しくは出力電流が上昇する。
【0050】
高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に接続された負荷40によって、シャント抵抗11に流れる出力電流が設定電流を越えると、誤差増幅器33bの反転入力端子に入力される電圧が電流監視用基準電源34bの第2比較電圧を越え、第2比較電圧との電位差が反転増幅され、フォトカプラ発光素子35の発光しきい値を越える電位となる。
【0051】
出力電流が設定した設定電流を越える限り、フォトカプラ発光素子35は発光し続け、これらの値を超えたことを示すリミット信号をフォトカプラ受光素子39へ連続して出力する。フォトカプラ受光素子39は、フォトカプラ発光素子35からのリミット信号を受光している間、間欠発振素子3の制御端子3aから直流電源1の低圧端子1bに一定の電流が流れるので、制御端子3aには、休止制御信号が入力された状態となる。その結果、間欠発振素子3は、フォトカプラ受光素子39がリミット信号を受光している間、発振器の発振を休止し、内蔵のスイッチング素子は開動作する。
【0052】
間欠発振素子3のスイッチング素子が開動作すると、トランス3の1次巻き線2aに流れる電流が遮断され、トランス3の二次出力巻線2bには、出力電力が発生しないので、設定電流を越えていた出力電流は、徐々に設定電流以下となる。その結果、フォトカプラ発光素子35は発光を停止し、フォトカプラ受光素子39がリミット信号を受光しなくなるので、間欠発振素子3は、再び発振を繰り返し、負荷40の電力に応じた安定した出力が得られ、出力電流は設定電流に定電流制御される。
【0053】
ここで、DC−DCコンバータ10の低圧側出力線20bが接続する負荷40内部の各回路は、一般的に接地レベルである低圧側出力線20bの電位を基準電位として動作するので、基準電位に対して、シャント抵抗11の入力側、すなわちシャントレギュレータ7の低圧側の電位は、出力電流の電流値に比例する負極性の電位となる。例えば、低圧側出力線20bに設定電流が流れているとすれば、シャント抵抗11の抵抗値0.3Ωに設定電流の1Aを乗じた−0.3Vの電位となる。
【0054】
シャントレギュレータ7は、低圧側に対して高圧側に+1.25Vの定電位差を発生し、また、シャント抵抗11の抵抗値が0.3Ωであるので、出力電流が4.16A以下であれば、高圧側の電位、すなわち、電圧信号として負荷40に出力される信号線Dの電位は、基準電位に対して正極性となり、その電位は、低圧側出力線20bに流れる出力電流が上昇するほど低下する電位となる。例えば、低圧側出力線20bに1Aの設定電流が流れていれば、+0.95Vであり、設定電流以上の1.2Aが流れれば、+0.89Vの電位が電圧信号として信号線Dから負荷40へ出力される。
【0055】
負荷40側では、信号線Dの電位が正極性であるので、基準電位と比較する正極性の差電圧を容易に所定の電位差と判別することができる。定格1Aの出力電流を出力するDC−DCコンバータ10を充電器として用いる負荷40では、信号線Dの電位が基準電位に対して+0.95Vの前後であれば、適合するDC−DCコンバータ10が接続されているものと認識できる。一方、負荷40の充電時の消費電力に対して過大な定格出力のDC−DCコンバータが誤接続された場合には、DC−DCコンバータ10の設定電流より大きい出力電流がシャント抵抗11に流れ、信号線Dの電位が+0.95Vより低下する。また、逆に定格出力の小さいDC−DCコンバータが誤接続された場合には、出力電圧が上昇するとともに、シャント抵抗11に流れる出力電流は設定電流より小さくなり、信号線Dの電位が+1.25Vを上限として+0.95Vより上昇する。従って、負荷40において、信号線Dの電位から適合するDC−DCコンバータ10以外のDC−DCコンバータと誤接続したことを検出でき、そのような場合に図示しない表示器等による警告手段で「異なるDC−DCコンバータ」が誤って接続されたことを操作者へ伝達させることができる。
【0056】
尚、上記実施の形態では、低圧側出力線20bの基準電位に対して、出力電流を表す信号線Dの電位を正極性とするために、シャントレギュレータ7を用いたが、負荷40において、出力電流を負極性の電位で表しても判別できるものであれば、図2に示すように、シャント抵抗11の入力側に信号線Dを直接接続し、基準電位に対して負極性の電位で表す電圧信号を負荷40へ出力するDC−DCコンバータ50であってもよい。
【0057】
また、定電圧回路素子として、シャントレギュレータ7を用いたが、出力電流が流れるシャント抵抗11の電位差より大きく、定電圧制御する出力電圧より小さい定電位を両端に発生させる定電圧回路素子であれば、高圧側出力線20aから低圧側出力線20bの方向を順方向とするダイオードをシャントレギュレータ7に代用してもよい。ダイオードの順方向電圧降下Vfは、略0.6Vの定電位であるので、図1のシャントレギュレータ7にダイオードを代用すれば、負荷40の内部抵抗に対して充分に高い例えば4.7kΩのバッファ抵抗8を直列に接続し、1Aの設定電流が流れた際に、信号線Dから出力電流を表す正極性の+0.3Vの電位の電圧信号を出力することができる。
【0058】
更に、定電圧回路素子として、バイポーラトランジスタ60を用いることもできる。図3は、NPN型トランジスタ60をシャントレギュレータ7に代えて用いたDC−DCコンバータ70の回路図であり、ベース−コレクタ間とベース−エミッタ間にそれぞれ1kΩのバイアス抵抗61、62が接続され、また、バッファ抵抗8の抵抗値は、NPN型トランジスタ60を介して大きな電流が流れないように、負荷40の内部抵抗に対して充分に高い3.8kΩとなっている。
【0059】
高圧側出力線20aと低圧側出力線20b間に5Vの出力電圧が発生し、NPN型トランジスタ60が遮断状態にあるとすると、バイアス抵抗62に生じる分電圧によってベース電圧VBEが動作電圧の0.6Vを越え、トランジスタ60は能動状態に移行する。このときバイアス抵抗62に流れる電流は、ベース電圧VEBが0.6Vでほぼ変化しないので、0.6mAで変化せず、一方、バイアス抵抗61を介してベースに流れるベース電流は、コレクタ電流に比べて無視できるほど小さいので、バイアス抵抗61とバイアス抵抗62に流れる電流はほぼ等しく、コレクタ−ベース間の電圧VCBも0.6Vの定電圧となる。その結果、コレクタ−エミッタ間の電圧VCEは1.2Vで安定し、シャント抵抗11の入力側の負極性の電位に対して、信号線Dが接続する電位は、+1.2V上昇し、正極性の電位で出力電流を表すことができる。
【0060】
以上の実施の形態は、絶縁フライバック型のDC−DCコンバータで説明したが、絶縁フォワードバック型やチョークコンバータ等他のDC−DCコンバータであってもよい。
【0061】
また、出力電流を検出するシャント抵抗を、出力電流の定電流制御に用いる電流検出用抵抗と兼ねたが、別に設けてもよい。
【0062】
また、定電圧回路素子を用いる場合には、出力電圧によって変動しない定電圧の加算電圧が得られる素子であれば、インピーダンスの低いツェナーダイオード等の上述以外の素子を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、充電器から出力される充電電流を内部回路で検出することが困難な被充電機器を充電する充電器に適している。
【符号の説明】
【0064】
1 直流電源
2a トランスの一次巻線(インダクタ)
2b トランスの二次巻線(インダクタ)
3 間欠発振素子(スイッチング素子、定電圧制御回路)
7 シャントレギュレータ(定電圧回路素子)
8 バッファ抵抗
10、50、70 DC−DCコンバータ
11 シャント抵抗
20a 高圧側出力線
20b 低圧側出力線
60 トランジスタ(定電圧回路素子)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源に直列に接続されるスイッチング素子と、
スイッチング素子の開閉動作により直流電源から流れる電流が断続し、負荷に接続する一対の高圧側出力線と低圧側出力線間に、直流電源の入力電圧を異なる直流出力電圧に変換を出力するインダクタと、
高圧側出力線と低圧側出力線間の出力電圧に応じてスイッチング素子を開閉制御し、出力電圧を定電圧制御する定電圧制御回路とを備えたDC−DCコンバータであって、
高圧側出力線と低圧側出力線のいずれかにシャント抵抗を直列に配線し、
シャント抵抗両端の電位差を表す電圧信号を負荷へ出力することを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
シャント抵抗を、低圧側出力線に直列に配線し、
高圧側出力線とシャント抵抗の入力側に接続する低圧側出力線間に、一方を高圧側出力線に接続させたバッファ抵抗と、シャント抵抗の両端の電位差より高い定電圧を発生させる定電圧回路素子とを直列に接続し、
定電圧回路素子とバッファ抵抗との直列接続点から電圧信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項3】
定電圧回路素子は、シャントレギュレータであることを特徴とする請求項2に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項4】
シャント抵抗両端の電位差から検出する低圧側出力線に流れる出力電流に応じてスイッチング素子を開閉制御し、前記出力電流を定電流制御する定電流制御回路を更に備えたことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−259650(P2011−259650A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133657(P2010−133657)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【Fターム(参考)】