DC/DCコンバータ、ソーラー充電システム、及び移動体
【課題】高効率化を図ることができる双方向DC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】DC/DCコンバータは、第1DC/DCコンバータ部と、前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備える。前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1である。
【解決手段】DC/DCコンバータは、第1DC/DCコンバータ部と、前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備える。前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DC変換を行うC/DCコンバータ並びにこれを備えたソーラー充電システム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DC変換を行うことができるDC/DCコンバータは従来から種々の構成が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている電源装置(双方向DC/DCコンバータ)は、図29に示すように、プッシュプル回路101と、トランス102と、フルブリッジ回路103と、コンデンサ104と主バッテリ105との間に設けられる昇圧チョッパ回路とを備える構成である。
【0003】
特許文献1に開示されている電源装置は、補機バッテリ100から主バッテリ105への充電時に、リレー接点106を遮断し、プッシュプル回路101→トランス102→フルブリッジ回路103(整流回路として使用)→昇圧チョッパ回路の経路で昇圧動作を行う。また、特許文献1に開示されている電源装置は、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電時に、リレー接点106を導通させ、フルブリッジ回路103→トランス102→プッシュプル回路101の経路で降圧動作を行う。
【0004】
なお、特許文献1に開示されている電源装置は、ハイブリッド電気自動車用に用途が限定されている。このため、特許文献1に開示されている電源装置では、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電が主用途であり、補機バッテリ100から主バッテリ105への充電は主として主バッテリ105の残量不足時に補機バッテリ100からエンジン始動用モータへの逆送電するために行われる。したがって、特許文献1に開示されている電源装置は、大電力の伝送を必要としないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−50402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、近年の自動車搭載電池の大容量化に伴い、電力伝送の高効率化が求められている。特に電気自動車は航続距離が大きな課題となっており、電気を効率よく使うシステムが不可欠となってきている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている電源装置では、デューティ制御の詳細が示されておらず、補機バッテリ100及び主バッテリ105の様々な状態に応じて常に高効率の動作を行うための手法は特許文献1に何ら開示も示唆もされていない。
【0008】
また、特許文献1に開示されている電源装置では、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電時に、フルブリッジ回路103及びトランス102のみで降圧を行っているため、降圧倍率を広範囲に制御することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、高効率化を図ることができるDC/DCコンバータ並びにこれを備えたソーラー充電システム及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係るDC/DCコンバータは、第1DC/DCコンバータ部と、前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備え、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部である構成(第1の構成)とする。
【0011】
また、上記第1の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記固定倍率DC/DCコンバータ部はトランスを有する絶縁型DC/DCコンバータ部であり、前記可変倍率DC/DCコンバータ部は非絶縁型DC/DCコンバータ部である構成(第2の構成)としてもよい。
【0012】
また、上記第1または第2の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記第1DC/DCコンバータ部は前記可変倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第2DC/DCコンバータ部は前記固定倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第1DC/DCコンバータ部と前記第2DC/DCコンバータ部との接続点に接続される負荷回路を備え、前記負荷回路は動作状態と非動作状態との切り替えが可能な負荷回路であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に降圧動作を行うDC/DCコンバータ部である構成(第3の構成)としてもよい。
【0013】
また、上記第1〜第3のいずれかの構成のDC/DCコンバータにおいて、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に双方向DC/DCコンバータ部である構成(第4の構成)としてもよい。
【0014】
また、上記第4の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記DC/DCコンバータが前記固定倍率DC/DCコンバータ部から前記可変倍率DC/DCコンバータ部への電力伝送動作を開始する前に、前記可変倍率DC/DCコンバータ部が、前記可変倍率DC/DCコンバータ部から前記固定倍率DC/DCコンバータ部へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、前記固定倍率DC/DCコンバータ部と前記可変倍率DC/DCコンバータ部との接続点の電圧を徐々に上昇させる構成(第5の構成)としてもよい。
【0015】
また、上記第1〜第5のいずれかの構成のDC/DCコンバータにおいて、前記第1DC/DCコンバータ部の動作周波数と前記第2DC/DCコンバータ部の動作周波数とが互いに異なる構成(第6の構成)としてもよい。
【0016】
また、本発明に係るソーラー充電システムは、太陽電池と、前記太陽電池から出力される電力を蓄える第1蓄電装置と、前記第1蓄電装置よりも電圧が大きい第2蓄電装置と、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間の電力伝送を行う双方向DC/DCコンバータとを備え、前記双方向DC/DCコンバータが上記第1〜第6のいずれかの構成のDC/DCコンバータである構成とする。
【0017】
また、本発明に係る移動体は、上記構成のソーラー充電システムを備える構成とする。
【0018】
また、上記構成の移動体において、前記ソーラー充電システムが備える第2蓄電装置から出力される電力を移動体の駆動用電力として用いる構成とすることが望ましい。更に、前記第2蓄電装置の電圧を前記第1蓄電装置の電圧より高くすることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るDC/DCコンバータは、第1DC/DCコンバータ部と、前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備え、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部である構成である。このような構成によると、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的小さいけれども最高効率は比較的低いDC/DCコンバータを可変倍率DC/DCコンバータ部に用い、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的大きいけれども最高効率は比較的高いDC/DCコンバータを固定倍率DC/DCコンバータ部に用いることにより、電力伝送元及び電力伝送先間の状態にかかわらず、高い効率で電力伝送元から電力伝送先への電力伝送を行うことが可能となる。
【0020】
このため、本発明によると、高効率化を図ることができるDC/DCコンバータ並びにこれを備えたソーラー充電システム及び移動体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図3】本発明に係るDC/DCコンバータが備える固定倍率DC/DCコンバータ部の一構成例を示す図である。
【図4】図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部が有する各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図8】図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの一構成例を示す図である。
【図9】昇圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を示すタイムチャートである。
【図10】降圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を示すタイムチャートである。
【図11A】第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図11B】第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の変形例を示す図である。
【図12】第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図13】昇圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図14】昇圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の電流経路を示す図である。
【図15】降圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図16】降圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の電流経路を示す図である。
【図17】第3好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図18】第4好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図19】第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図20】電気自動車用ソーラー充電システムの概略構成例を示す図である。
【図21】第1好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。
【図22】第1好適例に係るプッシュプル回路の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図23】第1好適例に係るプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図24】図30に示す従来のサージ電圧抑制手段を有するプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図25】トランジスタ駆動用ドライバの電源構成の第1実施例を示す図である。
【図26】トランジスタ駆動用ドライバの電源構成の第2実施例を示す図である。
【図27】第2好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。
【図28】第2好適例に係るプッシュプル回路の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図29】特許文献1に開示されている電源装置の構成を示す図である。
【図30】従来のサージ電圧抑制手段を有するプッシュプル回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0023】
まず、本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータは、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2とを備えている。本発明の第1実施形態では、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2に供給する。固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2は、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。
【0024】
制御回路CNT1は、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2が常に同一の倍率でDC/DC変換を行うように、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2に対して制御信号S3を出力する。制御信号S3としては例えば固定デューティ信号が挙げられる。
【0025】
また、制御回路CNT1は、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV2が電池B2の状態に応じて適切な倍率でDC/DC変換を行うように、電池B2の状態に関する情報信号S1に基づいて制御信号S2を生成し、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV2に対して制御信号S2を出力する。情報信号S1としては例えば電池B2の電圧に関する情報信号が挙げられ、制御信号S2としては例えば可変デューティ信号が挙げられる。
【0026】
DC/DCコンバータは回路方式によって効率の良い変換倍率が異なる。このため、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータのように、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2とを2段組み合わせる構成とし、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的小さいDC/DCコンバータを可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1に用い、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的大きいDC/DCコンバータを固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2に用いることにより、2つの電池B1及びB2間の状態にかかわらず、高い効率で電池B1から電池B2への電力伝送を行うことが可能となる。
【0027】
したがって、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1には、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的小さいDC/DCコンバータである非絶縁型チョッパ回路を用いることが望ましく、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2には、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的大きい絶縁型DC/DCコンバータ(トランスを備えるDC/DCコンバータ)を用いることが望ましい。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図2は本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図2に示す本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータは、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2との配置を入れ替えた構成である。したがって、本発明の第2実施形態では、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1に供給し、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1は、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。
【0029】
制御回路CNT1の制御内容、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1及び固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の好適例については本発明の第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0030】
ここで、本発明に係るDC/DCコンバータが備える固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の一構成例を図3に示し、図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2が有するトランジスタTL1及びTL2のON、OFF切り替えのタイミングチャートを図4に示す。
【0031】
図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2は、コンデンサCLと、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2と、トランスTR1と、ダイオードDH1及びDH2と、コンデンサCHとを備えている。
【0032】
トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の一次巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の一次巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースはコンデンサCLの一端に接続され、コンデンサCLの他端はトランスTR1の一次巻線のセンタータップに接続される。
【0033】
トランスTR1の二次巻線の一端にはダイオードDH1のアノードが接続され、トランスTR1の二次巻線の他端にはダイオードDH2のアノードが接続され、ダイオードDH1及びDH2の各カソードはコンデンサCHの一端に接続され、コンデンサCHの他端はトランスTR1の二次巻線のセンタータップに接続される。
【0034】
図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2においては、図4に示す通り、トランジスタTL1のみがONである期間ton1からトランジスタTL1及びTL2がともにOFFである期間toff1を経て、トランジスタTL2のみがONである期間ton2に移行し、トランジスタTL2のみがONである期間ton2からトランジスタTL1及びTL2がともにOFFである期間toff2を経て、トランジスタTL1のみがONである期間ton1に移行する動作を繰り返している。
【0035】
図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2では、下記の(1)式に示す関係が成立するとき、大電力かつ高効率での電力伝送が可能となる。ただし、下記の(1)式中のtonはton=ton1+ton2であり、下記の(1)式中のtoffはtoff=toff1+toff2である。
ton/(ton+toff)>0.7 ・・・(1)
【0036】
上記の(1)式に示す関係が成立しない場合、短いオン時間(ton)に負荷に応じた大電流が流れることになり、抵抗損が増大するために効率が低下する。したがって、制御回路CNT1(図1及び図2参照)は、上記の(1)式に示す関係が成立するような制御信号S3を生成することが望ましい。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図5は本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図5に示す本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータは、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータに負荷回路LD1を追加した構成である。
【0038】
なお、本実施形態では、電池B1の電圧が電池B2の電圧よりも高く、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1及び固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2がそれぞれ降圧動作を行うようにしている。
【0039】
負荷回路LD1は動作状態と非動作状態との切り替えが可能な負荷回路である。負荷回路LD1を例えば図5に示すように抵抗RLD1及びNチャネルMOSFETであるトランジスタTLD1によって構成される直列回路とした場合、トランジスタTLD1をONにすることで負荷回路LD1は動作状態となり、トランジスタTLD1をOFFにすることで負荷回路LD1は非動作状態となる。
【0040】
本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータでは、負荷回路LD1を常時非動作状態にすると、降圧動作開始時において、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2との接続点の電圧が0[V]から所望の電圧値に上昇する過渡期に固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の出力電圧が0[V]に近い電圧しか得られない状態では、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1の出力が実質的にフローティング状態となり、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1の動作が異常もしくは不安定になる場合がある。
【0041】
そこで、降圧動作開始時において、負荷回路LD1を動作状態にして、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1の出力がフローティング状態となることを回避する。そして、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1が安定動作し、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の出力から負荷電流が得られる状態となった後に、負荷回路LD1を動作状態から非動作状態に切り替えて、本来の電池B1から電池B2への電力伝送を行うようにする。
【0042】
次に、本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図6は本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータは、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータを双方向DC/DCコンバータに変形したものである。
【0043】
図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータは、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4とを備えている。なお、本実施形態では、電池B1の電圧が電池B2の電圧よりも低くなっている。
【0044】
本発明の第4実施形態では、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に供給し、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。一方、電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、電池B2から供給される電圧をDC/DC変換して可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に供給し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4から供給される電圧をDC/DC変換して電池B1に供給する。
【0045】
制御回路CNT2は、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4が常に同一の倍率でDC/DC変換を行うように、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に対して制御信号S3を出力する。制御信号S3としては例えば固定デューティ信号が挙げられる。なお、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合と電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合とでそれぞれ異なる固定倍率が設定される。
【0046】
また、制御回路CNT2は、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が電池B2の状態に応じて適切な倍率でDC/DC変換を行うように、電池B2の状態に関する情報信号S1に基づいて制御信号S2を生成し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に対して制御信号S2を出力する。また、制御回路CNT2は、電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が電池B1の状態に応じて適切な倍率でDC/DC変換を行うように、電池B1の状態に関する情報信号S4に基づいて制御信号S2を生成し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に対して制御信号S2を出力する。情報信号S1としては例えば電池B2の電圧に関する情報信号が挙げられ、情報信号S4としては例えば電池B1の電圧に関する情報信号が挙げられ、制御信号S2としては例えば可変デューティ信号が挙げられる。
【0047】
可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3及び固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の好適例については可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1及び固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の好適例と同様であるため、説明を省略する。ただし、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を絶縁型DC/DCコンバータ(トランスを備えるDC/DCコンバータ)にする場合、双方向でのDC/DC変換を可能とするために、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を図7に示す通りトランスと、当該トランスの低電圧側巻線に接続される第1スイッチング回路と、当該トランスの高電圧側巻線に接続される第2スイッチング回路とによって構成する。
【0048】
図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータによると、2つの電池B1及びB2間の状態にかかわらず、高い効率で電池B1と電池B2との間の双方向電力伝送を行うことが可能となる。
【0049】
なお、図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの電池B2から電池B1への電力伝送開始時に直ちに固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させると、電池B2の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の降圧倍率を乗じた値と、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧との差が大きければ、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4において大きな突入電流が発生してしまう。
【0050】
この突入電流を抑制するために、電池B2から電池B1への電力伝送を開始する前に、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧を徐々に上昇させるようにすることが望ましい。そして、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧が、電池B2の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の降圧倍率を乗じた値に達してから、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させることがより望ましい。
【0051】
次に、本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図7は本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータは、図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との配置を入れ替えた構成である。したがって、本発明の第5実施形態では、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に供給し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。一方、電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、電池B2から供給される電圧をDC/DC変換して固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に供給し、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から供給される電圧をDC/DC変換して電池B1に供給する。
【0052】
制御回路CNT2の制御内容、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3及び固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の好適例については本発明の第4実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
なお、図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの電池B1から電池B2への電力伝送開始時に直ちに固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させると、電池B1の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の昇圧倍率を乗じた値と、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧との差が大きければ、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4において大きな突入電流が発生してしまう。
【0054】
この突入電流を抑制するために、電池B1から電池B2への電力伝送を開始する前に、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧を徐々に上昇させるようにすることが望ましい。そして、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧が、電池B1の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の昇圧倍率を乗じた値に達してから、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させることがより望ましい。
【0055】
ここで、図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの一構成例を図8に示す。図8に示す構成例では、第1スイッチング回路11と、トランスTR1と、第2スイッチング回路12とによって構成される回路が固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に相当し、昇降圧チョッパ回路13が可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に相当する。
【0056】
第1スイッチング回路11は、降圧動作時に平滑用のコンデンサとして機能するコンデンサCLと、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2によって構成されトランスTR1の低圧側巻線に接続されるプッシュプル回路とを備えている。トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースは電池B1の負極に接続される。電池B1の正極はトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。また、電池B1の正極と負極との間にコンデンサCLが設けられる。
【0057】
第2スイッチング回路12は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTH1〜TH4によって構成されトランスTR1の高圧側巻線に接続されるフルブリッジ回路と、昇圧動作時に平滑用のコンデンサとして機能するコンデンサCHとを備えている。トランスTR1の高圧側巻線の一端にはトランジスタTH1のソース及びトランジスタTH2のドレインが接続され、トランスTR1の高圧側巻線の他端にはトランジスタTH3のソース、トランジスタTH4のドレイン、及びトランジスタTH5のドレインが接続されている。トランジスタTH1のドレイン及びトランジスタTH3のドレインがコンデンサCH1の一端に接続される。トランジスタTH2のソース及びトランジスタTH4のソースがコンデンサCHの他端に接続される。
【0058】
昇降圧チョッパ回路13は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTC1及びTC2と、インダクタLC1と、コンデンサCC1とによって構成され、電池B1から電池B2への充電が行われるときにトランジスタTC1が同期整流素子として動作し、電池B2から電池B1への充電が行われるときにトランジスタTC2が同期整流素子として動作する。但し、同期整流素子はOFF状態を保ち、同期整流素子に並列接続された(寄生)ダイオードのみを動作させても良い。
【0059】
なお、各トランジスタのソース−ドレイン間には並列にダイオード(以下、並列ダイオードと呼ぶ)が接続されているが、この並列ダイオードは各トランジスタの寄生ダイオード(内蔵ダイオード)または外的に並列接続されたダイオード等であってもよい。
【0060】
図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータは、昇圧動作時に、電池B1から出力される直流電圧を上記プッシュプル回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって昇圧し、トランジスタTH1及びTH2によって整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を昇降圧チョッパ回路13で更に昇圧して電池B2に供給する。
【0061】
また、図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータは、降圧動作時に、電池B2から出力される直流電圧を昇降圧チョッパ回路13によるDC/DC変換で降圧し、上記フルブリッジ回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって降圧し、トランジスタTL1及びTL2によって整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を電池B1に供給する。
【0062】
昇圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を図9に示し、降圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を図10に示す。
【0063】
図9に示すタイミング例では、トランジスタTH1、TH2、及びTC1を同期整流素子として動作させている。また、図10に示すタイミング例では、トランジスタTL1、TL2、及びTC2を同期整流素子として動作させている。また、昇降圧チョッパ回路13は、トランジスタTC2のスイッチング動作により昇圧を行う。この昇圧動作時に、トランジスタTC1の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTC1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。また、昇降圧チョッパ回路13は、トランジスタTC1のスイッチング動作により降圧を行う。この降圧動作時に、トランジスタTC2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTC2をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。昇圧動作時、降圧動作時のいずれにおいても、トランジスタTC1をONにする期間とトランジスタTC2をONにする期間を交互に繰り返すが、トランジスタTC1及びTC2の同時ONを防止するためにデッドタイムを設けている。なお、本実施例では、同期整流によりダイオード素子通過分の損失を低減しているが、同期整流は必ずしも必要ではなく、昇降圧チョッパ回路13に流れる電流が十分に小さい場合、同期整流を行わず、昇圧動作時は、トランジスタTC1を常にOFFにし、トランジスタTC2のみをスイッチング動作させ、降圧動作時は、トランジスタTC2を常にOFFにし、トランジスタTC1のみをスイッチング動作させてもよい。
【0064】
図9及び図10に示すタイミング例では、第1スイッチング回路11と、トランスTR1と、第2スイッチング回路12とによって構成される回路の動作周波数と昇降圧チョッパ回路13の動作周波数とが互いに異なる設定にしている。このような設定によると、第1スイッチング回路11と、トランスTR1と、第2スイッチング回路12とによって構成される回路(固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に相当)と昇降圧チョッパ回路13(可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に相当)のそれぞれにおいて最も効率の良い動作周波数で動作させることができ、本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータ全体としての効率をより一層高くすることが可能となる。
【0065】
以下、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の好適構成例について説明する。説明を簡単にするために電池B1及びB2を固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に接続する形態で説明を行う。すなわち、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に関する説明を省略し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3の昇降倍率を1倍と仮定する。
【0066】
図11Aは第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2によって構成されトランスTR1の低圧側巻線に接続されるプッシュプル回路と、巻線比(低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比)が1:NであるトランスTR1と、NチャネルMOSFETであるトランジスタTH1〜TH4によって構成されトランスTR1の高圧側巻線に接続されるフルブリッジ回路と、当該フルブリッジ回路と電池B2との間に設けられるNチャネルMOSFETであるトランジスタTH5並びにコンデンサCH1及びCH2とを備えている。
【0067】
トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースは電池B1の負極に接続される。電池B1の正極はトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。なお、電池B1の正極と負極との間にコンデンサを設け、降圧動作時に平滑用のコンデンサとして機能させてもよい。
【0068】
トランスTR1の高圧側巻線の一端にはトランジスタTH1のソース及びトランジスタTH2のドレインが接続され、トランスTR1の高圧側巻線の他端にはトランジスタTH3のソース、トランジスタTH4のドレイン、及びトランジスタTH5のドレインが接続されている。トランジスタTH1のドレイン及びトランジスタTH3のドレイン並びにコンデンサCH1の一端が電池B2の正極に接続され、トランジスタTH2のソース及びトランジスタTH4のソース並びにコンデンサCH2の一端が電池B2の負極に接続される。そして、コンデンサCH1の他端及びコンデンサCH2の他端がトランジスタTH3のソースに接続される。なお、各トランジスタのソース−ドレイン間のダイオードは並列ダイオードである。また、電池B2は電池B1よりも高電圧の電池である。また、インダクタPL1、PL2、SL1はトランスTR1の寄生インダクタである。但し、インダクタSL1は、トランスTR1に接続された(トランスTR1の寄生インダクタ以外の)外的インダクタを含んでいてもよい。この場合、インダクタSL1のインダクタンスを調整することによって出力電圧の制御範囲を変化させることができる。同様に、インダクタPL1、PL2に外的インダクタを接続することによって出力電圧の制御範囲を変化させることもできるが、トランジスタTL1、TL2がOFFするときに発生するサージのエネルギーが更に大きくなるため、好ましくない。一方、高電圧側に位置するインダクタSL1を流れる電流は相対的に小さくなるため、サージの影響を受けにくい。即ち、出力電圧の制御範囲を変化させるためにインダクタを追加する場合は、インダクタSL1に対して行うのが好ましい。また、インダクタSL1の代わりに図11Bに示すようにインダクタSL2を設けてもよい。
【0069】
図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部は、昇圧動作時にトランジスタTH5を常時ONにして、電池B1から出力される直流電圧を上記プッシュプル回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって昇圧し、トランジスタTH1及びTH2とトランジスタTH5とコンデンサCH1及びCH2とによって構成される倍電圧整流回路で整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を電池B2に供給する。トランスTR1の巻線比(低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比)が1:Nであるため、第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでの(インダクタPL1,PL2,SL1による電圧変化を除く)固定昇圧倍率は2N倍である。尚、トランジスタTL1およびTL2のゲート駆動電圧のデューティを変化させることにより、寄生インダクタに流れる電流iの変化率(di/dt)(>0)を変化させ、出力電圧および出力電流を制御することができる。
【0070】
また、図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部は、降圧動作時にトランジスタTH5を常時OFFにして、電池B2から出力される直流電圧を上記フルブリッジ回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって降圧し、トランジスタTL1及びTL2によって整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を電池B1に供給する。トランスTR1の低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比(巻線比)が1:Nであるため、第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでの(寄生インダクタの効果を除く)固定降圧倍率は1/N倍である。尚、トランジスタTH1、TH2、TH3、TH4のゲート駆動電圧のデューティを変化させることにより、寄生インダクタに流れる電流iの変化率(di/dt)(>0)を変化させ、出力電圧および出力電流を制御することができる。
【0071】
図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、電池B1とトランスの低圧側巻線との間に設ける回路をプッシュプル回路にしているが、電池B1とトランスの低圧側巻線との間に設ける回路はプッシュプル回路に限定されることはなく、例えば、図12に示す第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部のように電池B1とトランスの低圧側巻線との間に設ける回路をNチャネルMOSFETであるトランジスタTL1〜TL4によって構成されるフルブリッジ回路にしてもよい。なお、図12において図11Aと同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0072】
図12に示す第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部も図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部と同様に、各トランジスタのソース−ドレイン間には並列ダイオードが接続される。また、図12に示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部で用いられたトランスTR1(低圧側巻線にセンタータップが設けられているトランス)の代わりに、トランスTR2(低圧側巻線にセンタータップが設けられていないトランス)を用いている。トランスTR2においてもトランスTR1と同様に低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比を1:Nとする。
【0073】
ここで、好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の固定昇圧倍率が固定降圧倍率の逆数よりも大きい理由について説明する。
【0074】
例えば、電池B1の電圧をVsub、その電圧範囲をVsub_min(最小) 〜 Vsub_max(最大)、電池B2の電圧をVmain、電圧範囲をVmain_min(最小)〜 Vmain_max(最大)、トランスの低圧側巻線と高圧側巻線等で決まるデューティに依存しない固定昇圧倍率をα、トランスの巻線比等で決まるデューティに依存しない固定降圧倍率を1/β、トランスの全寄生インダクタンスに等価なインダクタンス(トランス高電圧側に設置)をL、トランス高電圧側巻線に流れる電流をIとする。
この場合、昇圧動作において、
Vmain = αVsub − L(dI/dt)
が成り立つ。
スイッチング損失を低減するため、トランジスタTL1、TL2のスイッチングをゼロ電流スイッチング(若しくは、十分小さい電流値でのスイッチング)とすると、トランジスタTL1、TL2のいずれか一方がオン状態のときの(dI/dt)は正となるため、
Vmain = αVsub − L(dI/dt) < αVsub
が成り立つ。電池B1および電池B2の電圧範囲を考慮すると、
Vmain_max < αVsub_min ・・・(数式1)
となるように固定昇圧倍率(例えば、トランスの巻線比)を選ぶ必要がある。
【0075】
次に、降圧動作において、
Vsub = (1/β){Vmain − L(dI/dt)}
が成り立つ。
スイッチング損失を低減するため、トランジスタTH1、TH2、TH3、TH4のスイッチングのうち、トランス端子間に生じる電圧の向きを反転させるスイッチングをゼロ電流スイッチング(若しくは、十分小さい電流値でのスイッチング)とすると、トランジスタTH1とTH4がオン状態(オフ状態)且つトランジスタTH2とTH3がオフ状態(オン状態)のときの(dI/dt)は正となるため、
Vsub = (1/β){Vmain − L(dI/dt)} < (1/β)Vmain
が成り立つ。電池B1および電池B2の電圧範囲を考慮すると、
Vsub_max < (1/β)Vmain_min・・・(数式2)
となるように固定降圧倍率(例えば、トランスの巻線比)を選ぶ必要がある。
【0076】
双方向DC−DCコンバータにおいては、数式1と数式2は同時に満たされる必要があるから、数式1、数式2より、
Vsub_max < (1/β)Vmain_min < (α/β)Vsub_min
∴ (α/β) > (Vsub_max/Vsub_min)>1・・・(数式3)
が成り立つ。従って、固定昇圧倍率αおよび固定降圧倍率(1/β)をトランスの巻線比だけで決めるとすると、昇圧時のトランスの巻線比を1:α、降圧時のトランスの巻線比を1:β(<α)とするなど、昇圧時と降圧時とで異なる巻数比を採用する必要あり、回路構成が非常に複雑となる。一方、図11Aの回路は、トランスTR1の巻線比が1:Nなので、α=2N、β=Nの場合に相当し、数式3を満たす。即ち、図11Aの回路は、昇圧時と降圧時でトランスの巻線比を変える必要がないため、簡単な回路構成によって双方向DC−DCコンバータを構成することができる。
【0077】
次に、昇圧動作時における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートを図13に示す。
【0078】
トランジスタTL1をONにしてトランスTR1の低圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の高圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTH5及びTH1を通る電流が流れる(図14参照)。このとき、トランジスタTH1の寄生ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTH1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。同様に、トランジスタTL2をONにしてトランスTR1の低圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の高圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTH2及びTH5を通る電流が流れる。このとき、トランジスタTH2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTH2をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0079】
トランジスタTL1をONにする期間とトランジスタTL2をONにする期間とが交互に繰り返されるが、トランジスタTH1及びTH2が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまうので、トランジスタTH1及びTH2の同時ONを防止するために、トランジスタTH1及びTH2が共にOFFになる期間(デッドタイム)を設けている。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0080】
次に、降圧動作時における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートを図15に示す。
【0081】
トランジスタTH1及びTH4をONにしてトランスTR1の高圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の低圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTL1を通る電流が流れる(図16参照)。このとき、トランジスタTL1の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTL1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。同様に、トランジスタTH3及びTH2をONにしてトランスTR1の高圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の低圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTL2を通る電流が流れる。このとき、トランジスタTL2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTL2をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0082】
トランジスタTH1及びTH4をONにする期間とトランジスタTH2及びTH3をONにする期間とが交互に繰り返されるが、トランジスタTH1及びTH2が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまい、トランジスタTH3及びTH4が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまうので、トランジスタTH1及びTH2の同時ON並びにトランジスタTH3及びTH4の同時ONを防止するために、トランジスタTH1〜TH4が共にOFFになる期間(デッドタイム)を設けている。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0083】
図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部や図12に示す第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部のように、トランジスタTH5を1つのMOSトランジスタのみで構成した場合、例えば、降圧動作開始時等において、コンデンサCH2が充電されたままの状態にてトランジスタTH4がONしたときに、トランジスタTH5の寄生ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡し、大きな電流が流れてしまい、コンデンサCH2、トランジスタTH4、及びトランジスタTH5がダメージを受けてしまう。
【0084】
そこで、例えば、図17に示す第3好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部や図18に示す第4好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を採用することが望ましい。なお、図17及び図18において図11Aと同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0085】
図17に示す第3好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、トランジスタTH5をソース同士が接続され共通のゲート制御信号がゲートに供給される2つのNチャネルMOSFETによって構成する。これにより、トランジスタTH4がONしたときであっても、トランジスタTH5の内蔵ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡されなくなる。
【0086】
また、図18に示す第4好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、コンデンサCH2に並列に抵抗RH1及びトランジスタTH6によって構成される放電回路が設けられている。降圧動作時の初期において、トランジスタTH4をONにする前に、トランジスタTH6をONにしてコンデンサCH2の両端電圧が略0[V]になるまで抵抗RH1による放電を実施した後にトランジスタTH6をOFFにし、その後トランジスタTH4をONにする。これにより、トランジスタTH4がONになって、トランジスタTH5の内蔵ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡されても大きな短絡電流が流れなくなる。
【0087】
次に、図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部について説明する。図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部はノーマリーオンデバイスを用いることを特徴としている。
【0088】
GaN系トランジスタ、SiC系トランジスタ等の化合物パワーデバイスはゲート容量が小さく、かつ、オン抵抗が低いという特徴を有しているため、Si系パワーデバイスに代わる次世代パワーデバイスとして期待されている。当該化合物パワーデバイスは、低抵抗のP型活性層を形成することが難しいため、現状ではノーマリーオンN型デバイスが一般的である。ノーマリーオンデバイスを用いた場合、ノーマリーオンデバイスを駆動するドライバが故障したときに当該ノーマリーオンデバイスがON状態にとなる可能性が高いため、ノーマリーオンデバイスを駆動するドライバが故障したときでも短絡等が生じないように配慮する必要がある。
【0089】
そこで、図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、トランジスタTH1及びTH3にノーマリーオンデバイスを用いている。これにより、トランジスタTH1における小ゲート容量によるスイッチング損の低減及び低オン抵抗による抵抗損の低減の両立と、トランジスタTH3における小ゲート容量によるスイッチング損の低減及び低オン抵抗による抵抗損の低減の両立とが可能となる。また、故障によりトランジスタTH1及びTH3のいずれかが短絡したとしても、電池B2の正極−負極間の短絡とならないので、安全性が確保される。図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、トランジスタTH1及びTH3をノーマリーオンデバイスとし、トランジスタTH2及びTH4をノーマリーオフデバイスとする構成であるが、この構成とは逆に、トランジスタTH1及びTH3をノーマリーオフデバイスとし、トランジスタTH2及びTH4をノーマリーオンデバイスとする構成でも構わない。なお、ノーマリーオンデバイスに化合物トランジスタを用いた場合、例えばGaN系トランジスタであればソース−ドレイン間に内蔵ダイオードが形成されず、また例えばSiC系トランジスタであればソース−ドレイン間に形成される内蔵ダイオードの性能が良好でないため、図19に示すようにノーマリーオンデバイス(トランジスタTH1及びTH3)に並列にダイオードを接続することが望ましい。
【0090】
本発明に係るDC/DCコンバータは、例えば図20に示す電気自動車用ソーラー充電システムに適用することができる。
【0091】
図20に示す電気自動車用ソーラー充電システムは、複数の太陽電池セルが配置されているソーラーパネル1と、ソーラーパネル1の出力電力が最大になるようにソーラーパネル1の出力電圧を制御するMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御部2と、サブバッテリ4を管理して制御する制御回路3と、ソーラーパネル1の出力電力を蓄えるサブバッテリ4と、サブバッテリ4から出力される直流電圧をDC/DC変換してメインバッテリ7に供給するDC/DCコンバータ5と、メインバッテリ7を管理して制御する制御回路6と、サブバッテリ4よりも容量が大きいメインバッテリ7とを備えている。また、図20においては図示していないが、DC/DCコンバータ5内の各スイッチング素子のON、OFFを制御するための制御信号を生成する回路(上述した説明における制御回路CNT1や制御回路CNT2等)も電気自動車内に設けられている。
【0092】
本発明に係るDC/DCコンバータを図20に示す電気自動車用ソーラー充電システムに適用する場合、DC/DCコンバータ5を本発明に係るDC/DCコンバータにすればよい。本発明に係るDC/DCコンバータが双方向DC/DCコンバータである場合にはメインバッテリ7から出力される直流電圧をDC/DC変換してサブバッテリ4に供給することも可能になる。この場合、サブバッテリ4は上述した説明での電池(低電圧側)B1に対応し、サブバッテリ4は上述した説明での電池B1に対応し、メインバッテリ7は上述した説明での電池(高電圧側)B2に対応する。
【0093】
電気自動車に設けられているインバータ8は、メインバッテリ7から出力される直流電圧をモータ駆動用交流電圧に変換する。電気自動車に設けられているモータ9は、インバータ8から出力されるモータ駆動用交流電圧によって回転駆動する。モータ9の回転により電気自動車の駆動輪が回転する。電気自動車の制動時にモータ9で発生する回生エネルギーは制御回路6によって回収され、メインバッテリ7に蓄えられる。また、サブバッテリ4から出力される直流電圧はヘッドライト等の電源としても利用される。
【0094】
図20においては、本発明に係るDC/DCコンバータを備えたソーラー充電システムを電気自動車用ソーラー充電システムとしたが、他の移動体(例えばバイク等)用のソーラー充電システムとすることも当然可能である。
【0095】
ここで、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部において、前記トランスの低電圧側巻線に接続されるスイッチング回路にプッシュプル回路を採用した場合、前記トランスの低電圧側巻線の寄生インダクタに起因するサージ電圧を抑制する手段をプッシュプル回路に設けることが高効率化の観点から望ましい。
【0096】
以下、上記のサージ電圧を抑制する手段について説明する。
【0097】
図21は第1好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2と、ダイオードDAC1及びDAC2と、NチャネルMOSFETであるトランジスタTAC1及びTAC2とを備えている。
【0098】
トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースは電池B3の負極に接続される。なお、図21では、トランスTR1の低圧側巻線の寄生インダクタンスを寄生インダクタンスPL1及びPL2として図示している。また、各トランジスタのソース−ドレイン間には並列ダイオードが接続されているが、この並列のダイオードは各トランジスタの寄生ダイオード(内蔵ダイオード)または外的に並列接続されたダイオード等であってもよい。
【0099】
ダイオードDAC1のアノードはトランジスタTL1のドレインに接続され、ダイオードDAC1のカソードはトランジスタTAC1のドレインに接続され、トランジスタTAC1のソースは電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。同様に、ダイオードDAC2のアノードはトランジスタTL2のドレインに接続され、ダイオードDAC2のカソードはトランジスタTAC2のドレインに接続され、トランジスタTAC2のソースは電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。
【0100】
図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL1のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の一端との接続点AからダイオードDAC1を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とをトランジスタTAC1が切り替え、当該経路が導通しているときにトランスTR1の寄生インダクタPL1に起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分はダイオードDAC1を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に還流される。同様に、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL2のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の他端との接続点BからダイオードDAC2を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とをトランジスタTAC2が切り替え、当該経路が導通しているときにトランスTR1の寄生インダクタPL2に起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分はダイオードDAC2を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に還流される。
【0101】
したがって、トランジスタTL1がONからOFFに切り替わる時点でトランジスタTAC1がON状態であり、トランジスタTL2がOFFからONに切り替わる時点でトランジスタTAC1がOFF状態であり、トランジスタTL2がONからOFFに切り替わる時点でトランジスタTAC2がON状態であり、トランジスタTL1がOFFからONに切り替わる時点でトランジスタTAC2がOFF状態である必要がある。このため、トランジスタTL1、TL2、TAC1、及びTAC2のON、OFF切り替えは例えば図22に示すようなタイミングで行うとよい。図22に示すようなタイミングでトランジスタTL1、TL2、TAC1、及びTAC2のON、OFF切り替えを行う場合、トランジスタTAC1の制御端子に供給する制御信号はトランジスタTL1の制御端子に供給する制御信号を遅延させるだけで生成することができ、トランジスタTAC2の制御端子に供給する制御信号はトランジスタTL2の制御端子に供給する制御信号を遅延させるだけで生成することができるので、トランジスタTAC1の制御端子に供給する制御信号及びトランジスタTAC2の制御端子に供給する制御信号の生成が容易である。
【0102】
ここで、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を図23に示す。また、比較のため、図30に示す従来のサージ電圧抑制手段(ツェナーダイオードZD1及びZD2)を有するプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を図24に示す。図23及び図24それぞれにおいて、太線は接続点Aの電圧を示しており、細線は接続点Bの電圧を示している。また、図23及び図24それぞれにおいて、電池B1の電圧は12Vとした。
【0103】
図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路によると、トランスTR1の寄生インダクタPL1に起因する接続点Aの電圧上昇及びトランスTR1の寄生インダクタPL2に起因する接続点Bの電圧上昇を大幅に低減することができる。このため、接続点A、接続点Bの電圧がトランジスタTAC1、TAC2の耐圧を越えて上昇し、トランジスタTAC1、TAC2を破壊するのを防ぐことが出来る。また、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路によると、トランスTR1の寄生インダクタPL1及びPL2に起因するサージ成分を回路の外部に捨てることなく、接続点A→ダイオードDAC1→トランジスタTAC1→トランスTR1のセンタータップ→寄生インダクタPL1→接続点A、または、接続点B→ダイオードDAC2→トランジスタTAC2→トランスTR1のセンタータップ→寄生インダクタPL2→接続点Bの電流経路で還流させているため、寄生インダクタPL1、PL2に溜まったエネルギーを(ツェナーダイオード等で消費することなく)高電圧側に転送することができ、従って、損失を大幅に低減することができる。
【0104】
次に、トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成例について説明する。
【0105】
トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成の第1実施例を図25に示す。図25において図21と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。なお、図25に記載している電圧値は一例である。
【0106】
図25に示す第1実施例では、トランジスタTAC1及びTAC2をそれぞれノーマリーオフトランジスタとしている。例えば、電池B1の電圧が12Vの場合、トランジスタTAC1駆動用のゲートドライバDV1は、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC1の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧の電源(例えば24V電源)を必要とし、トランジスタTAC2駆動用のゲートドライバDV2は、トランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC2の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧の電源(例えば24V電源)を必要とする。そこで、図25に示す第1実施例では、トランジスタTL1のドレイン電圧を抵抗R1及び逆流防止用ダイオードD1を経由して更にコンデンサC1により平滑して直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV1に接続し、トランジスタTL2のドレイン電圧を抵抗R2及び逆流防止用ダイオードD2を経由して更にコンデンサC2により平滑して直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV2に接続している。また、図示はしていないが、ゲートドライバDV1にはトランジスタTAC1をOFFするための電圧の電源(例えばトランジスタTAC1のソース端子)も接続し、ゲートドライバDV2にはトランジスタTAC2をOFFするための電圧の電源(例えばトランジスタTAC1のソース端子)も接続する。なお、図25に示す第1実施例とは異なり、トランジスタTL1のドレイン電圧を用いて直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV2に接続し、トランジスタTL2のドレイン電圧を用いて直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV1に接続することも可能である。このようなトランジスタTAC1、TAC2を駆動するための電源電圧が得られるのは、図23に示すように、トランジスタTAC1オフ時のトランジスタTAC1のドレイン電圧、および、トランジスタTAC2オフ時のトランジスタTAC2のドレイン電圧が、電池B1の電圧(例えば、12V)の約2倍(例えば、約24V)となるからである。
【0107】
このような電源構成によると、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC1の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧を生成するための特別な回路(例えば、電池B3の出力電圧を倍の電圧に昇圧する回路)及びトランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC2の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧を生成するための特別な回路(例えば、電池B3の出力電圧を倍の電圧に昇圧する回路)を設ける必要がないため、簡易な回路構成となる。
【0108】
トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成の第2実施例を図26に示す。図26において図21と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。なお、図26に記載している電圧値は一例である。
【0109】
図26に示す第2実施例では、トランジスタTAC1及びTAC2をそれぞれノーマリーオントランジスタとしている。この場合、トランジスタTAC1駆動用のゲートドライバDV3は、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)より大きい電圧の電源を必要とせず、トランジスタTAC2駆動用のゲートドライバDV4は、トランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)より大きい電圧の電源を必要としない。そこで、図26に示す第2実施例では、他の制御回路用電源(例えば5V電源)をゲートドライバDV3及びDV4に接続している。すなわち、他の制御回路用電源(例えば5V電源)を他の制御回路(例えば他のトランジスタを駆動するためのドライバ、センサ等)とゲートドライバDV3及びDV4とで共用するようにする。また、図示はしていないが、ゲートドライバDV3にはトランジスタTAC1をONするための電圧の電源(例えば12V電源)も接続し、ゲートドライバDV4にはトランジスタTAC2をONするための電圧の電源(例えば12V電源)も接続する。
【0110】
このような電源構成によると、ゲートドライバDV3及びDV4専用に電源を設ける必要がないため、電源回路を構成する部品点数を削減することができる。また、図26に示す第2実施例においてノーマリーオントランジスタであるトランジスタTAC1及びTAC2として、GaN系トランジスタやSiC系トランジスタ等のオン抵抗がSi系トランジスタよりも小さい化合物トランジスタを用いることで、さらに損失を低減することができる。なお、トランジスタTAC1及びTAC2に化合物トランジスタを用いた場合、例えばGaN系トランジスタであればソース−ドレイン間に内蔵ダイオードが形成されないため、図26においてはトランジスタTAC1及びTAC2の並列ダイオードを図示していないが、図25と同様にトランジスタTAC1及びTAC2と並列な位置にダイオードが接続されていても良い。
【0111】
次に、第2好適例に係るプッシュプル回路について説明する。図27は第2好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。図27において図21と同一の部分には、図11A中のトランジスタTAC1及びTAC2を図27ではトランジスタTAC1A及びTAC2Aに変更した以外は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0112】
図27に示す第2好適例に係るプッシュプル回路は、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路からダイオードDAC1及びDAC2を取り除き、その代わりに同期整流用トランジスタTAC1B及びTAC2Bを設けた構成である。同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減することができるので、より一層高効率化を図ることができる。
【0113】
図27に示す第2好適例に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL1がONからOFFに切り替わった後でトランジスタTAC1BがOFFからONに切り替わり、トランジスタTAC1AがONからOFFに切り替わる前にトランジスタTAC1BがONからOFFに切り替わり、トランジスタTL2がONからOFFに切り替わった後でトランジスタTAC2BがOFFからONに切り替わり、トランジスタTAC2AがONからOFFに切り替わる前にトランジスタTAC2BがONからOFFに切り替わる必要がある。このため、トランジスタTL1、TL2、TAC1A、TAC2A、TAC1B、及びTAC2BのON、OFF切り替えは例えば図28に示すようなタイミングで行うとよい。
【0114】
図27に示す第2好適例に係るプッシュプル回路におけるトランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成例は、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0115】
なお、上述した各実施形態及び上記の各変形例の内容は、矛盾がない限り、任意に組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 ソーラーパネル
2 MPPT制御部
3 制御部
4 サブバッテリ
5 DC/DCコンバータ
6 制御回路
7 メインバッテリ
8 インバータ
9 モータ
11 第1スイッチング回路
12 第2スイッチング回路
13 昇降圧チョッパ回路
B1〜B3 電池
CL、CH、CH1、CH2、C1、C2 コンデンサ
CNT1、CNT2 制御回路
CNV1 可変倍率DC/DCコンバータ部
CNV2 固定倍率DC/DCコンバータ部
CNV3 可変倍率双方向DC/DCコンバータ部
CNV4 固定倍率双方向DC/DCコンバータ部
DH1、DH2、D1、D2、DAC1、DAC2 ダイオード
DV1〜DV4 ゲートドライバ
LD1 負荷回路
RLD1、R1、R2 抵抗
S1、S4 情報信号
S2、S3 制御信号
TL1〜TL4、TLD1 トランジスタ
TH1〜TH6 トランジスタ
TAC1、TAC2 トランジスタ
TR1、TR2 トランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DC変換を行うC/DCコンバータ並びにこれを備えたソーラー充電システム及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DC変換を行うことができるDC/DCコンバータは従来から種々の構成が提案されている。例えば、特許文献1に開示されている電源装置(双方向DC/DCコンバータ)は、図29に示すように、プッシュプル回路101と、トランス102と、フルブリッジ回路103と、コンデンサ104と主バッテリ105との間に設けられる昇圧チョッパ回路とを備える構成である。
【0003】
特許文献1に開示されている電源装置は、補機バッテリ100から主バッテリ105への充電時に、リレー接点106を遮断し、プッシュプル回路101→トランス102→フルブリッジ回路103(整流回路として使用)→昇圧チョッパ回路の経路で昇圧動作を行う。また、特許文献1に開示されている電源装置は、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電時に、リレー接点106を導通させ、フルブリッジ回路103→トランス102→プッシュプル回路101の経路で降圧動作を行う。
【0004】
なお、特許文献1に開示されている電源装置は、ハイブリッド電気自動車用に用途が限定されている。このため、特許文献1に開示されている電源装置では、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電が主用途であり、補機バッテリ100から主バッテリ105への充電は主として主バッテリ105の残量不足時に補機バッテリ100からエンジン始動用モータへの逆送電するために行われる。したがって、特許文献1に開示されている電源装置は、大電力の伝送を必要としないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−50402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、近年の自動車搭載電池の大容量化に伴い、電力伝送の高効率化が求められている。特に電気自動車は航続距離が大きな課題となっており、電気を効率よく使うシステムが不可欠となってきている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている電源装置では、デューティ制御の詳細が示されておらず、補機バッテリ100及び主バッテリ105の様々な状態に応じて常に高効率の動作を行うための手法は特許文献1に何ら開示も示唆もされていない。
【0008】
また、特許文献1に開示されている電源装置では、主バッテリ105から補機バッテリ100への充電時に、フルブリッジ回路103及びトランス102のみで降圧を行っているため、降圧倍率を広範囲に制御することが困難であった。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、高効率化を図ることができるDC/DCコンバータ並びにこれを備えたソーラー充電システム及び移動体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係るDC/DCコンバータは、第1DC/DCコンバータ部と、前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備え、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部である構成(第1の構成)とする。
【0011】
また、上記第1の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記固定倍率DC/DCコンバータ部はトランスを有する絶縁型DC/DCコンバータ部であり、前記可変倍率DC/DCコンバータ部は非絶縁型DC/DCコンバータ部である構成(第2の構成)としてもよい。
【0012】
また、上記第1または第2の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記第1DC/DCコンバータ部は前記可変倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第2DC/DCコンバータ部は前記固定倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第1DC/DCコンバータ部と前記第2DC/DCコンバータ部との接続点に接続される負荷回路を備え、前記負荷回路は動作状態と非動作状態との切り替えが可能な負荷回路であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に降圧動作を行うDC/DCコンバータ部である構成(第3の構成)としてもよい。
【0013】
また、上記第1〜第3のいずれかの構成のDC/DCコンバータにおいて、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に双方向DC/DCコンバータ部である構成(第4の構成)としてもよい。
【0014】
また、上記第4の構成のDC/DCコンバータにおいて、前記DC/DCコンバータが前記固定倍率DC/DCコンバータ部から前記可変倍率DC/DCコンバータ部への電力伝送動作を開始する前に、前記可変倍率DC/DCコンバータ部が、前記可変倍率DC/DCコンバータ部から前記固定倍率DC/DCコンバータ部へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、前記固定倍率DC/DCコンバータ部と前記可変倍率DC/DCコンバータ部との接続点の電圧を徐々に上昇させる構成(第5の構成)としてもよい。
【0015】
また、上記第1〜第5のいずれかの構成のDC/DCコンバータにおいて、前記第1DC/DCコンバータ部の動作周波数と前記第2DC/DCコンバータ部の動作周波数とが互いに異なる構成(第6の構成)としてもよい。
【0016】
また、本発明に係るソーラー充電システムは、太陽電池と、前記太陽電池から出力される電力を蓄える第1蓄電装置と、前記第1蓄電装置よりも電圧が大きい第2蓄電装置と、前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間の電力伝送を行う双方向DC/DCコンバータとを備え、前記双方向DC/DCコンバータが上記第1〜第6のいずれかの構成のDC/DCコンバータである構成とする。
【0017】
また、本発明に係る移動体は、上記構成のソーラー充電システムを備える構成とする。
【0018】
また、上記構成の移動体において、前記ソーラー充電システムが備える第2蓄電装置から出力される電力を移動体の駆動用電力として用いる構成とすることが望ましい。更に、前記第2蓄電装置の電圧を前記第1蓄電装置の電圧より高くすることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るDC/DCコンバータは、第1DC/DCコンバータ部と、前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備え、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部であり、前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部である構成である。このような構成によると、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的小さいけれども最高効率は比較的低いDC/DCコンバータを可変倍率DC/DCコンバータ部に用い、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的大きいけれども最高効率は比較的高いDC/DCコンバータを固定倍率DC/DCコンバータ部に用いることにより、電力伝送元及び電力伝送先間の状態にかかわらず、高い効率で電力伝送元から電力伝送先への電力伝送を行うことが可能となる。
【0020】
このため、本発明によると、高効率化を図ることができるDC/DCコンバータ並びにこれを備えたソーラー充電システム及び移動体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図3】本発明に係るDC/DCコンバータが備える固定倍率DC/DCコンバータ部の一構成例を示す図である。
【図4】図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部が有する各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図7】本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図8】図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの一構成例を示す図である。
【図9】昇圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を示すタイムチャートである。
【図10】降圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を示すタイムチャートである。
【図11A】第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図11B】第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の変形例を示す図である。
【図12】第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図13】昇圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図14】昇圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の電流経路を示す図である。
【図15】降圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図16】降圧動作における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の電流経路を示す図である。
【図17】第3好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図18】第4好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図19】第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。
【図20】電気自動車用ソーラー充電システムの概略構成例を示す図である。
【図21】第1好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。
【図22】第1好適例に係るプッシュプル回路の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図23】第1好適例に係るプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図24】図30に示す従来のサージ電圧抑制手段を有するプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を示す図である。
【図25】トランジスタ駆動用ドライバの電源構成の第1実施例を示す図である。
【図26】トランジスタ駆動用ドライバの電源構成の第2実施例を示す図である。
【図27】第2好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。
【図28】第2好適例に係るプッシュプル回路の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図29】特許文献1に開示されている電源装置の構成を示す図である。
【図30】従来のサージ電圧抑制手段を有するプッシュプル回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0023】
まず、本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図1は本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータは、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2とを備えている。本発明の第1実施形態では、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2に供給する。固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2は、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。
【0024】
制御回路CNT1は、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2が常に同一の倍率でDC/DC変換を行うように、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2に対して制御信号S3を出力する。制御信号S3としては例えば固定デューティ信号が挙げられる。
【0025】
また、制御回路CNT1は、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV2が電池B2の状態に応じて適切な倍率でDC/DC変換を行うように、電池B2の状態に関する情報信号S1に基づいて制御信号S2を生成し、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV2に対して制御信号S2を出力する。情報信号S1としては例えば電池B2の電圧に関する情報信号が挙げられ、制御信号S2としては例えば可変デューティ信号が挙げられる。
【0026】
DC/DCコンバータは回路方式によって効率の良い変換倍率が異なる。このため、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータのように、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2とを2段組み合わせる構成とし、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的小さいDC/DCコンバータを可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1に用い、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的大きいDC/DCコンバータを固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2に用いることにより、2つの電池B1及びB2間の状態にかかわらず、高い効率で電池B1から電池B2への電力伝送を行うことが可能となる。
【0027】
したがって、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1には、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的小さいDC/DCコンバータである非絶縁型チョッパ回路を用いることが望ましく、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2には、変換倍率の変化に対する効率の変化が比較的大きい絶縁型DC/DCコンバータ(トランスを備えるDC/DCコンバータ)を用いることが望ましい。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図2は本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図2に示す本発明の第2実施形態に係るDC/DCコンバータは、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータの可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2との配置を入れ替えた構成である。したがって、本発明の第2実施形態では、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1に供給し、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1は、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。
【0029】
制御回路CNT1の制御内容、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1及び固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の好適例については本発明の第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0030】
ここで、本発明に係るDC/DCコンバータが備える固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の一構成例を図3に示し、図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2が有するトランジスタTL1及びTL2のON、OFF切り替えのタイミングチャートを図4に示す。
【0031】
図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2は、コンデンサCLと、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2と、トランスTR1と、ダイオードDH1及びDH2と、コンデンサCHとを備えている。
【0032】
トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の一次巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の一次巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースはコンデンサCLの一端に接続され、コンデンサCLの他端はトランスTR1の一次巻線のセンタータップに接続される。
【0033】
トランスTR1の二次巻線の一端にはダイオードDH1のアノードが接続され、トランスTR1の二次巻線の他端にはダイオードDH2のアノードが接続され、ダイオードDH1及びDH2の各カソードはコンデンサCHの一端に接続され、コンデンサCHの他端はトランスTR1の二次巻線のセンタータップに接続される。
【0034】
図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2においては、図4に示す通り、トランジスタTL1のみがONである期間ton1からトランジスタTL1及びTL2がともにOFFである期間toff1を経て、トランジスタTL2のみがONである期間ton2に移行し、トランジスタTL2のみがONである期間ton2からトランジスタTL1及びTL2がともにOFFである期間toff2を経て、トランジスタTL1のみがONである期間ton1に移行する動作を繰り返している。
【0035】
図3に示す構成の固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2では、下記の(1)式に示す関係が成立するとき、大電力かつ高効率での電力伝送が可能となる。ただし、下記の(1)式中のtonはton=ton1+ton2であり、下記の(1)式中のtoffはtoff=toff1+toff2である。
ton/(ton+toff)>0.7 ・・・(1)
【0036】
上記の(1)式に示す関係が成立しない場合、短いオン時間(ton)に負荷に応じた大電流が流れることになり、抵抗損が増大するために効率が低下する。したがって、制御回路CNT1(図1及び図2参照)は、上記の(1)式に示す関係が成立するような制御信号S3を生成することが望ましい。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図5は本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図5に示す本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータは、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータに負荷回路LD1を追加した構成である。
【0038】
なお、本実施形態では、電池B1の電圧が電池B2の電圧よりも高く、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1及び固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2がそれぞれ降圧動作を行うようにしている。
【0039】
負荷回路LD1は動作状態と非動作状態との切り替えが可能な負荷回路である。負荷回路LD1を例えば図5に示すように抵抗RLD1及びNチャネルMOSFETであるトランジスタTLD1によって構成される直列回路とした場合、トランジスタTLD1をONにすることで負荷回路LD1は動作状態となり、トランジスタTLD1をOFFにすることで負荷回路LD1は非動作状態となる。
【0040】
本発明の第3実施形態に係るDC/DCコンバータでは、負荷回路LD1を常時非動作状態にすると、降圧動作開始時において、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1と固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2との接続点の電圧が0[V]から所望の電圧値に上昇する過渡期に固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の出力電圧が0[V]に近い電圧しか得られない状態では、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1の出力が実質的にフローティング状態となり、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1の動作が異常もしくは不安定になる場合がある。
【0041】
そこで、降圧動作開始時において、負荷回路LD1を動作状態にして、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1の出力がフローティング状態となることを回避する。そして、可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1が安定動作し、固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の出力から負荷電流が得られる状態となった後に、負荷回路LD1を動作状態から非動作状態に切り替えて、本来の電池B1から電池B2への電力伝送を行うようにする。
【0042】
次に、本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図6は本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータは、図1に示す本発明の第1実施形態に係るDC/DCコンバータを双方向DC/DCコンバータに変形したものである。
【0043】
図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータは、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4とを備えている。なお、本実施形態では、電池B1の電圧が電池B2の電圧よりも低くなっている。
【0044】
本発明の第4実施形態では、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に供給し、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。一方、電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、電池B2から供給される電圧をDC/DC変換して可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に供給し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4から供給される電圧をDC/DC変換して電池B1に供給する。
【0045】
制御回路CNT2は、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4が常に同一の倍率でDC/DC変換を行うように、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に対して制御信号S3を出力する。制御信号S3としては例えば固定デューティ信号が挙げられる。なお、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合と電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合とでそれぞれ異なる固定倍率が設定される。
【0046】
また、制御回路CNT2は、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が電池B2の状態に応じて適切な倍率でDC/DC変換を行うように、電池B2の状態に関する情報信号S1に基づいて制御信号S2を生成し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に対して制御信号S2を出力する。また、制御回路CNT2は、電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が電池B1の状態に応じて適切な倍率でDC/DC変換を行うように、電池B1の状態に関する情報信号S4に基づいて制御信号S2を生成し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に対して制御信号S2を出力する。情報信号S1としては例えば電池B2の電圧に関する情報信号が挙げられ、情報信号S4としては例えば電池B1の電圧に関する情報信号が挙げられ、制御信号S2としては例えば可変デューティ信号が挙げられる。
【0047】
可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3及び固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の好適例については可変倍率DC/DCコンバータ部CNV1及び固定倍率DC/DCコンバータ部CNV2の好適例と同様であるため、説明を省略する。ただし、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を絶縁型DC/DCコンバータ(トランスを備えるDC/DCコンバータ)にする場合、双方向でのDC/DC変換を可能とするために、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を図7に示す通りトランスと、当該トランスの低電圧側巻線に接続される第1スイッチング回路と、当該トランスの高電圧側巻線に接続される第2スイッチング回路とによって構成する。
【0048】
図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータによると、2つの電池B1及びB2間の状態にかかわらず、高い効率で電池B1と電池B2との間の双方向電力伝送を行うことが可能となる。
【0049】
なお、図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの電池B2から電池B1への電力伝送開始時に直ちに固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させると、電池B2の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の降圧倍率を乗じた値と、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧との差が大きければ、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4において大きな突入電流が発生してしまう。
【0050】
この突入電流を抑制するために、電池B2から電池B1への電力伝送を開始する前に、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧を徐々に上昇させるようにすることが望ましい。そして、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧が、電池B2の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の降圧倍率を乗じた値に達してから、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させることがより望ましい。
【0051】
次に、本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータについて説明する。図7は本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの構成を示す図である。図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータは、図6に示す本発明の第4実施形態に係るDC/DCコンバータの可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との配置を入れ替えた構成である。したがって、本発明の第5実施形態では、電池B1から電池B2への電力伝送を行う場合、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、電池B1から供給される電圧をDC/DC変換して可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に供給し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4から供給される電圧をDC/DC変換して電池B2に供給する。一方、電池B2から電池B1への電力伝送を行う場合、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3は、電池B2から供給される電圧をDC/DC変換して固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に供給し、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4は、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から供給される電圧をDC/DC変換して電池B1に供給する。
【0052】
制御回路CNT2の制御内容、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3及び固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の好適例については本発明の第4実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
なお、図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの電池B1から電池B2への電力伝送開始時に直ちに固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させると、電池B1の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の昇圧倍率を乗じた値と、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧との差が大きければ、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4において大きな突入電流が発生してしまう。
【0054】
この突入電流を抑制するために、電池B1から電池B2への電力伝送を開始する前に、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3が、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3から固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧を徐々に上昇させるようにすることが望ましい。そして、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3と固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4との接続点の電圧が、電池B1の電圧に固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の昇圧倍率を乗じた値に達してから、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4を動作させることがより望ましい。
【0055】
ここで、図7に示す本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの一構成例を図8に示す。図8に示す構成例では、第1スイッチング回路11と、トランスTR1と、第2スイッチング回路12とによって構成される回路が固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に相当し、昇降圧チョッパ回路13が可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に相当する。
【0056】
第1スイッチング回路11は、降圧動作時に平滑用のコンデンサとして機能するコンデンサCLと、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2によって構成されトランスTR1の低圧側巻線に接続されるプッシュプル回路とを備えている。トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースは電池B1の負極に接続される。電池B1の正極はトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。また、電池B1の正極と負極との間にコンデンサCLが設けられる。
【0057】
第2スイッチング回路12は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTH1〜TH4によって構成されトランスTR1の高圧側巻線に接続されるフルブリッジ回路と、昇圧動作時に平滑用のコンデンサとして機能するコンデンサCHとを備えている。トランスTR1の高圧側巻線の一端にはトランジスタTH1のソース及びトランジスタTH2のドレインが接続され、トランスTR1の高圧側巻線の他端にはトランジスタTH3のソース、トランジスタTH4のドレイン、及びトランジスタTH5のドレインが接続されている。トランジスタTH1のドレイン及びトランジスタTH3のドレインがコンデンサCH1の一端に接続される。トランジスタTH2のソース及びトランジスタTH4のソースがコンデンサCHの他端に接続される。
【0058】
昇降圧チョッパ回路13は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTC1及びTC2と、インダクタLC1と、コンデンサCC1とによって構成され、電池B1から電池B2への充電が行われるときにトランジスタTC1が同期整流素子として動作し、電池B2から電池B1への充電が行われるときにトランジスタTC2が同期整流素子として動作する。但し、同期整流素子はOFF状態を保ち、同期整流素子に並列接続された(寄生)ダイオードのみを動作させても良い。
【0059】
なお、各トランジスタのソース−ドレイン間には並列にダイオード(以下、並列ダイオードと呼ぶ)が接続されているが、この並列ダイオードは各トランジスタの寄生ダイオード(内蔵ダイオード)または外的に並列接続されたダイオード等であってもよい。
【0060】
図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータは、昇圧動作時に、電池B1から出力される直流電圧を上記プッシュプル回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって昇圧し、トランジスタTH1及びTH2によって整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を昇降圧チョッパ回路13で更に昇圧して電池B2に供給する。
【0061】
また、図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータは、降圧動作時に、電池B2から出力される直流電圧を昇降圧チョッパ回路13によるDC/DC変換で降圧し、上記フルブリッジ回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって降圧し、トランジスタTL1及びTL2によって整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を電池B1に供給する。
【0062】
昇圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を図9に示し、降圧動作時における図8に示す構成例の本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータの各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミング例を図10に示す。
【0063】
図9に示すタイミング例では、トランジスタTH1、TH2、及びTC1を同期整流素子として動作させている。また、図10に示すタイミング例では、トランジスタTL1、TL2、及びTC2を同期整流素子として動作させている。また、昇降圧チョッパ回路13は、トランジスタTC2のスイッチング動作により昇圧を行う。この昇圧動作時に、トランジスタTC1の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTC1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。また、昇降圧チョッパ回路13は、トランジスタTC1のスイッチング動作により降圧を行う。この降圧動作時に、トランジスタTC2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTC2をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。昇圧動作時、降圧動作時のいずれにおいても、トランジスタTC1をONにする期間とトランジスタTC2をONにする期間を交互に繰り返すが、トランジスタTC1及びTC2の同時ONを防止するためにデッドタイムを設けている。なお、本実施例では、同期整流によりダイオード素子通過分の損失を低減しているが、同期整流は必ずしも必要ではなく、昇降圧チョッパ回路13に流れる電流が十分に小さい場合、同期整流を行わず、昇圧動作時は、トランジスタTC1を常にOFFにし、トランジスタTC2のみをスイッチング動作させ、降圧動作時は、トランジスタTC2を常にOFFにし、トランジスタTC1のみをスイッチング動作させてもよい。
【0064】
図9及び図10に示すタイミング例では、第1スイッチング回路11と、トランスTR1と、第2スイッチング回路12とによって構成される回路の動作周波数と昇降圧チョッパ回路13の動作周波数とが互いに異なる設定にしている。このような設定によると、第1スイッチング回路11と、トランスTR1と、第2スイッチング回路12とによって構成される回路(固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に相当)と昇降圧チョッパ回路13(可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に相当)のそれぞれにおいて最も効率の良い動作周波数で動作させることができ、本発明の第5実施形態に係るDC/DCコンバータ全体としての効率をより一層高くすることが可能となる。
【0065】
以下、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4の好適構成例について説明する。説明を簡単にするために電池B1及びB2を固定倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV4に接続する形態で説明を行う。すなわち、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3に関する説明を省略し、可変倍率双方向DC/DCコンバータ部CNV3の昇降倍率を1倍と仮定する。
【0066】
図11Aは第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を示す図である。図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2によって構成されトランスTR1の低圧側巻線に接続されるプッシュプル回路と、巻線比(低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比)が1:NであるトランスTR1と、NチャネルMOSFETであるトランジスタTH1〜TH4によって構成されトランスTR1の高圧側巻線に接続されるフルブリッジ回路と、当該フルブリッジ回路と電池B2との間に設けられるNチャネルMOSFETであるトランジスタTH5並びにコンデンサCH1及びCH2とを備えている。
【0067】
トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースは電池B1の負極に接続される。電池B1の正極はトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。なお、電池B1の正極と負極との間にコンデンサを設け、降圧動作時に平滑用のコンデンサとして機能させてもよい。
【0068】
トランスTR1の高圧側巻線の一端にはトランジスタTH1のソース及びトランジスタTH2のドレインが接続され、トランスTR1の高圧側巻線の他端にはトランジスタTH3のソース、トランジスタTH4のドレイン、及びトランジスタTH5のドレインが接続されている。トランジスタTH1のドレイン及びトランジスタTH3のドレイン並びにコンデンサCH1の一端が電池B2の正極に接続され、トランジスタTH2のソース及びトランジスタTH4のソース並びにコンデンサCH2の一端が電池B2の負極に接続される。そして、コンデンサCH1の他端及びコンデンサCH2の他端がトランジスタTH3のソースに接続される。なお、各トランジスタのソース−ドレイン間のダイオードは並列ダイオードである。また、電池B2は電池B1よりも高電圧の電池である。また、インダクタPL1、PL2、SL1はトランスTR1の寄生インダクタである。但し、インダクタSL1は、トランスTR1に接続された(トランスTR1の寄生インダクタ以外の)外的インダクタを含んでいてもよい。この場合、インダクタSL1のインダクタンスを調整することによって出力電圧の制御範囲を変化させることができる。同様に、インダクタPL1、PL2に外的インダクタを接続することによって出力電圧の制御範囲を変化させることもできるが、トランジスタTL1、TL2がOFFするときに発生するサージのエネルギーが更に大きくなるため、好ましくない。一方、高電圧側に位置するインダクタSL1を流れる電流は相対的に小さくなるため、サージの影響を受けにくい。即ち、出力電圧の制御範囲を変化させるためにインダクタを追加する場合は、インダクタSL1に対して行うのが好ましい。また、インダクタSL1の代わりに図11Bに示すようにインダクタSL2を設けてもよい。
【0069】
図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部は、昇圧動作時にトランジスタTH5を常時ONにして、電池B1から出力される直流電圧を上記プッシュプル回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって昇圧し、トランジスタTH1及びTH2とトランジスタTH5とコンデンサCH1及びCH2とによって構成される倍電圧整流回路で整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を電池B2に供給する。トランスTR1の巻線比(低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比)が1:Nであるため、第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでの(インダクタPL1,PL2,SL1による電圧変化を除く)固定昇圧倍率は2N倍である。尚、トランジスタTL1およびTL2のゲート駆動電圧のデューティを変化させることにより、寄生インダクタに流れる電流iの変化率(di/dt)(>0)を変化させ、出力電圧および出力電流を制御することができる。
【0070】
また、図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部は、降圧動作時にトランジスタTH5を常時OFFにして、電池B2から出力される直流電圧を上記フルブリッジ回路で交流電圧に変換し、トランスTR1によって降圧し、トランジスタTL1及びTL2によって整流することで、DC/DC変換を行い、当該DC/DC変換後の電圧を電池B1に供給する。トランスTR1の低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比(巻線比)が1:Nであるため、第1好適構成例に係る双方向DC/DCコンバータでの(寄生インダクタの効果を除く)固定降圧倍率は1/N倍である。尚、トランジスタTH1、TH2、TH3、TH4のゲート駆動電圧のデューティを変化させることにより、寄生インダクタに流れる電流iの変化率(di/dt)(>0)を変化させ、出力電圧および出力電流を制御することができる。
【0071】
図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、電池B1とトランスの低圧側巻線との間に設ける回路をプッシュプル回路にしているが、電池B1とトランスの低圧側巻線との間に設ける回路はプッシュプル回路に限定されることはなく、例えば、図12に示す第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部のように電池B1とトランスの低圧側巻線との間に設ける回路をNチャネルMOSFETであるトランジスタTL1〜TL4によって構成されるフルブリッジ回路にしてもよい。なお、図12において図11Aと同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0072】
図12に示す第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部も図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部と同様に、各トランジスタのソース−ドレイン間には並列ダイオードが接続される。また、図12に示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部で用いられたトランスTR1(低圧側巻線にセンタータップが設けられているトランス)の代わりに、トランスTR2(低圧側巻線にセンタータップが設けられていないトランス)を用いている。トランスTR2においてもトランスTR1と同様に低圧側巻線と高圧側巻線との巻数比を1:Nとする。
【0073】
ここで、好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の固定昇圧倍率が固定降圧倍率の逆数よりも大きい理由について説明する。
【0074】
例えば、電池B1の電圧をVsub、その電圧範囲をVsub_min(最小) 〜 Vsub_max(最大)、電池B2の電圧をVmain、電圧範囲をVmain_min(最小)〜 Vmain_max(最大)、トランスの低圧側巻線と高圧側巻線等で決まるデューティに依存しない固定昇圧倍率をα、トランスの巻線比等で決まるデューティに依存しない固定降圧倍率を1/β、トランスの全寄生インダクタンスに等価なインダクタンス(トランス高電圧側に設置)をL、トランス高電圧側巻線に流れる電流をIとする。
この場合、昇圧動作において、
Vmain = αVsub − L(dI/dt)
が成り立つ。
スイッチング損失を低減するため、トランジスタTL1、TL2のスイッチングをゼロ電流スイッチング(若しくは、十分小さい電流値でのスイッチング)とすると、トランジスタTL1、TL2のいずれか一方がオン状態のときの(dI/dt)は正となるため、
Vmain = αVsub − L(dI/dt) < αVsub
が成り立つ。電池B1および電池B2の電圧範囲を考慮すると、
Vmain_max < αVsub_min ・・・(数式1)
となるように固定昇圧倍率(例えば、トランスの巻線比)を選ぶ必要がある。
【0075】
次に、降圧動作において、
Vsub = (1/β){Vmain − L(dI/dt)}
が成り立つ。
スイッチング損失を低減するため、トランジスタTH1、TH2、TH3、TH4のスイッチングのうち、トランス端子間に生じる電圧の向きを反転させるスイッチングをゼロ電流スイッチング(若しくは、十分小さい電流値でのスイッチング)とすると、トランジスタTH1とTH4がオン状態(オフ状態)且つトランジスタTH2とTH3がオフ状態(オン状態)のときの(dI/dt)は正となるため、
Vsub = (1/β){Vmain − L(dI/dt)} < (1/β)Vmain
が成り立つ。電池B1および電池B2の電圧範囲を考慮すると、
Vsub_max < (1/β)Vmain_min・・・(数式2)
となるように固定降圧倍率(例えば、トランスの巻線比)を選ぶ必要がある。
【0076】
双方向DC−DCコンバータにおいては、数式1と数式2は同時に満たされる必要があるから、数式1、数式2より、
Vsub_max < (1/β)Vmain_min < (α/β)Vsub_min
∴ (α/β) > (Vsub_max/Vsub_min)>1・・・(数式3)
が成り立つ。従って、固定昇圧倍率αおよび固定降圧倍率(1/β)をトランスの巻線比だけで決めるとすると、昇圧時のトランスの巻線比を1:α、降圧時のトランスの巻線比を1:β(<α)とするなど、昇圧時と降圧時とで異なる巻数比を採用する必要あり、回路構成が非常に複雑となる。一方、図11Aの回路は、トランスTR1の巻線比が1:Nなので、α=2N、β=Nの場合に相当し、数式3を満たす。即ち、図11Aの回路は、昇圧時と降圧時でトランスの巻線比を変える必要がないため、簡単な回路構成によって双方向DC−DCコンバータを構成することができる。
【0077】
次に、昇圧動作時における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートを図13に示す。
【0078】
トランジスタTL1をONにしてトランスTR1の低圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の高圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTH5及びTH1を通る電流が流れる(図14参照)。このとき、トランジスタTH1の寄生ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTH1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。同様に、トランジスタTL2をONにしてトランスTR1の低圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の高圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTH2及びTH5を通る電流が流れる。このとき、トランジスタTH2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTH2をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0079】
トランジスタTL1をONにする期間とトランジスタTL2をONにする期間とが交互に繰り返されるが、トランジスタTH1及びTH2が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまうので、トランジスタTH1及びTH2の同時ONを防止するために、トランジスタTH1及びTH2が共にOFFになる期間(デッドタイム)を設けている。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0080】
次に、降圧動作時における第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の各トランジスタのON、OFF切り替えのタイミングを示すタイミングチャートを図15に示す。
【0081】
トランジスタTH1及びTH4をONにしてトランスTR1の高圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の低圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTL1を通る電流が流れる(図16参照)。このとき、トランジスタTL1の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTL1をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。同様に、トランジスタTH3及びTH2をONにしてトランスTR1の高圧側巻線に電流を流すと、トランスTR1の低圧側巻線に起電力が発生してトランジスタTL2を通る電流が流れる。このとき、トランジスタTL2の並列ダイオードに電流が流れるタイミングに合わせてトランジスタTL2をONにして同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減する。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0082】
トランジスタTH1及びTH4をONにする期間とトランジスタTH2及びTH3をONにする期間とが交互に繰り返されるが、トランジスタTH1及びTH2が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまい、トランジスタTH3及びTH4が同時にONになると大きな短絡電流が流れてしまうので、トランジスタTH1及びTH2の同時ON並びにトランジスタTH3及びTH4の同時ONを防止するために、トランジスタTH1〜TH4が共にOFFになる期間(デッドタイム)を設けている。これにより、より一層高効率化を図ることができる。
【0083】
図11Aに示す第1好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部や図12に示す第2好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部のように、トランジスタTH5を1つのMOSトランジスタのみで構成した場合、例えば、降圧動作開始時等において、コンデンサCH2が充電されたままの状態にてトランジスタTH4がONしたときに、トランジスタTH5の寄生ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡し、大きな電流が流れてしまい、コンデンサCH2、トランジスタTH4、及びトランジスタTH5がダメージを受けてしまう。
【0084】
そこで、例えば、図17に示す第3好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部や図18に示す第4好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部の構成を採用することが望ましい。なお、図17及び図18において図11Aと同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0085】
図17に示す第3好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、トランジスタTH5をソース同士が接続され共通のゲート制御信号がゲートに供給される2つのNチャネルMOSFETによって構成する。これにより、トランジスタTH4がONしたときであっても、トランジスタTH5の内蔵ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡されなくなる。
【0086】
また、図18に示す第4好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、コンデンサCH2に並列に抵抗RH1及びトランジスタTH6によって構成される放電回路が設けられている。降圧動作時の初期において、トランジスタTH4をONにする前に、トランジスタTH6をONにしてコンデンサCH2の両端電圧が略0[V]になるまで抵抗RH1による放電を実施した後にトランジスタTH6をOFFにし、その後トランジスタTH4をONにする。これにより、トランジスタTH4がONになって、トランジスタTH5の内蔵ダイオード及びトランジスタTH4を介してコンデンサCH2が短絡されても大きな短絡電流が流れなくなる。
【0087】
次に、図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部について説明する。図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部はノーマリーオンデバイスを用いることを特徴としている。
【0088】
GaN系トランジスタ、SiC系トランジスタ等の化合物パワーデバイスはゲート容量が小さく、かつ、オン抵抗が低いという特徴を有しているため、Si系パワーデバイスに代わる次世代パワーデバイスとして期待されている。当該化合物パワーデバイスは、低抵抗のP型活性層を形成することが難しいため、現状ではノーマリーオンN型デバイスが一般的である。ノーマリーオンデバイスを用いた場合、ノーマリーオンデバイスを駆動するドライバが故障したときに当該ノーマリーオンデバイスがON状態にとなる可能性が高いため、ノーマリーオンデバイスを駆動するドライバが故障したときでも短絡等が生じないように配慮する必要がある。
【0089】
そこで、図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、トランジスタTH1及びTH3にノーマリーオンデバイスを用いている。これにより、トランジスタTH1における小ゲート容量によるスイッチング損の低減及び低オン抵抗による抵抗損の低減の両立と、トランジスタTH3における小ゲート容量によるスイッチング損の低減及び低オン抵抗による抵抗損の低減の両立とが可能となる。また、故障によりトランジスタTH1及びTH3のいずれかが短絡したとしても、電池B2の正極−負極間の短絡とならないので、安全性が確保される。図19に示す第5好適構成例に係る固定倍率双方向DC/DCコンバータ部では、トランジスタTH1及びTH3をノーマリーオンデバイスとし、トランジスタTH2及びTH4をノーマリーオフデバイスとする構成であるが、この構成とは逆に、トランジスタTH1及びTH3をノーマリーオフデバイスとし、トランジスタTH2及びTH4をノーマリーオンデバイスとする構成でも構わない。なお、ノーマリーオンデバイスに化合物トランジスタを用いた場合、例えばGaN系トランジスタであればソース−ドレイン間に内蔵ダイオードが形成されず、また例えばSiC系トランジスタであればソース−ドレイン間に形成される内蔵ダイオードの性能が良好でないため、図19に示すようにノーマリーオンデバイス(トランジスタTH1及びTH3)に並列にダイオードを接続することが望ましい。
【0090】
本発明に係るDC/DCコンバータは、例えば図20に示す電気自動車用ソーラー充電システムに適用することができる。
【0091】
図20に示す電気自動車用ソーラー充電システムは、複数の太陽電池セルが配置されているソーラーパネル1と、ソーラーパネル1の出力電力が最大になるようにソーラーパネル1の出力電圧を制御するMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御部2と、サブバッテリ4を管理して制御する制御回路3と、ソーラーパネル1の出力電力を蓄えるサブバッテリ4と、サブバッテリ4から出力される直流電圧をDC/DC変換してメインバッテリ7に供給するDC/DCコンバータ5と、メインバッテリ7を管理して制御する制御回路6と、サブバッテリ4よりも容量が大きいメインバッテリ7とを備えている。また、図20においては図示していないが、DC/DCコンバータ5内の各スイッチング素子のON、OFFを制御するための制御信号を生成する回路(上述した説明における制御回路CNT1や制御回路CNT2等)も電気自動車内に設けられている。
【0092】
本発明に係るDC/DCコンバータを図20に示す電気自動車用ソーラー充電システムに適用する場合、DC/DCコンバータ5を本発明に係るDC/DCコンバータにすればよい。本発明に係るDC/DCコンバータが双方向DC/DCコンバータである場合にはメインバッテリ7から出力される直流電圧をDC/DC変換してサブバッテリ4に供給することも可能になる。この場合、サブバッテリ4は上述した説明での電池(低電圧側)B1に対応し、サブバッテリ4は上述した説明での電池B1に対応し、メインバッテリ7は上述した説明での電池(高電圧側)B2に対応する。
【0093】
電気自動車に設けられているインバータ8は、メインバッテリ7から出力される直流電圧をモータ駆動用交流電圧に変換する。電気自動車に設けられているモータ9は、インバータ8から出力されるモータ駆動用交流電圧によって回転駆動する。モータ9の回転により電気自動車の駆動輪が回転する。電気自動車の制動時にモータ9で発生する回生エネルギーは制御回路6によって回収され、メインバッテリ7に蓄えられる。また、サブバッテリ4から出力される直流電圧はヘッドライト等の電源としても利用される。
【0094】
図20においては、本発明に係るDC/DCコンバータを備えたソーラー充電システムを電気自動車用ソーラー充電システムとしたが、他の移動体(例えばバイク等)用のソーラー充電システムとすることも当然可能である。
【0095】
ここで、固定倍率双方向DC/DCコンバータ部において、前記トランスの低電圧側巻線に接続されるスイッチング回路にプッシュプル回路を採用した場合、前記トランスの低電圧側巻線の寄生インダクタに起因するサージ電圧を抑制する手段をプッシュプル回路に設けることが高効率化の観点から望ましい。
【0096】
以下、上記のサージ電圧を抑制する手段について説明する。
【0097】
図21は第1好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路は、NチャネルMOSFETであるトランジスタTL1及びTL2と、ダイオードDAC1及びDAC2と、NチャネルMOSFETであるトランジスタTAC1及びTAC2とを備えている。
【0098】
トランジスタTL1のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の一端に接続され、トランジスタTL2のドレインはトランスTR1の低圧側巻線の他端に接続され、トランジスタTL1及びTL2の各ソースは電池B3の負極に接続される。なお、図21では、トランスTR1の低圧側巻線の寄生インダクタンスを寄生インダクタンスPL1及びPL2として図示している。また、各トランジスタのソース−ドレイン間には並列ダイオードが接続されているが、この並列のダイオードは各トランジスタの寄生ダイオード(内蔵ダイオード)または外的に並列接続されたダイオード等であってもよい。
【0099】
ダイオードDAC1のアノードはトランジスタTL1のドレインに接続され、ダイオードDAC1のカソードはトランジスタTAC1のドレインに接続され、トランジスタTAC1のソースは電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。同様に、ダイオードDAC2のアノードはトランジスタTL2のドレインに接続され、ダイオードDAC2のカソードはトランジスタTAC2のドレインに接続され、トランジスタTAC2のソースは電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップに接続される。
【0100】
図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL1のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の一端との接続点AからダイオードDAC1を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とをトランジスタTAC1が切り替え、当該経路が導通しているときにトランスTR1の寄生インダクタPL1に起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分はダイオードDAC1を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に還流される。同様に、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL2のドレインとトランスTR1の低圧側巻線の他端との接続点BからダイオードDAC2を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に至る経路の導通と遮断とをトランジスタTAC2が切り替え、当該経路が導通しているときにトランスTR1の寄生インダクタPL2に起因するサージ成分が発生すれば、当該サージ成分はダイオードDAC2を経由して電池B3の正極及びトランスTR1の低圧側巻線のセンタータップとの接続点に還流される。
【0101】
したがって、トランジスタTL1がONからOFFに切り替わる時点でトランジスタTAC1がON状態であり、トランジスタTL2がOFFからONに切り替わる時点でトランジスタTAC1がOFF状態であり、トランジスタTL2がONからOFFに切り替わる時点でトランジスタTAC2がON状態であり、トランジスタTL1がOFFからONに切り替わる時点でトランジスタTAC2がOFF状態である必要がある。このため、トランジスタTL1、TL2、TAC1、及びTAC2のON、OFF切り替えは例えば図22に示すようなタイミングで行うとよい。図22に示すようなタイミングでトランジスタTL1、TL2、TAC1、及びTAC2のON、OFF切り替えを行う場合、トランジスタTAC1の制御端子に供給する制御信号はトランジスタTL1の制御端子に供給する制御信号を遅延させるだけで生成することができ、トランジスタTAC2の制御端子に供給する制御信号はトランジスタTL2の制御端子に供給する制御信号を遅延させるだけで生成することができるので、トランジスタTAC1の制御端子に供給する制御信号及びトランジスタTAC2の制御端子に供給する制御信号の生成が容易である。
【0102】
ここで、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を図23に示す。また、比較のため、図30に示す従来のサージ電圧抑制手段(ツェナーダイオードZD1及びZD2)を有するプッシュプル回路の接続点Aの電圧と接続点Bの電圧をシミュレーションで求めた結果を図24に示す。図23及び図24それぞれにおいて、太線は接続点Aの電圧を示しており、細線は接続点Bの電圧を示している。また、図23及び図24それぞれにおいて、電池B1の電圧は12Vとした。
【0103】
図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路によると、トランスTR1の寄生インダクタPL1に起因する接続点Aの電圧上昇及びトランスTR1の寄生インダクタPL2に起因する接続点Bの電圧上昇を大幅に低減することができる。このため、接続点A、接続点Bの電圧がトランジスタTAC1、TAC2の耐圧を越えて上昇し、トランジスタTAC1、TAC2を破壊するのを防ぐことが出来る。また、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路によると、トランスTR1の寄生インダクタPL1及びPL2に起因するサージ成分を回路の外部に捨てることなく、接続点A→ダイオードDAC1→トランジスタTAC1→トランスTR1のセンタータップ→寄生インダクタPL1→接続点A、または、接続点B→ダイオードDAC2→トランジスタTAC2→トランスTR1のセンタータップ→寄生インダクタPL2→接続点Bの電流経路で還流させているため、寄生インダクタPL1、PL2に溜まったエネルギーを(ツェナーダイオード等で消費することなく)高電圧側に転送することができ、従って、損失を大幅に低減することができる。
【0104】
次に、トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成例について説明する。
【0105】
トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成の第1実施例を図25に示す。図25において図21と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。なお、図25に記載している電圧値は一例である。
【0106】
図25に示す第1実施例では、トランジスタTAC1及びTAC2をそれぞれノーマリーオフトランジスタとしている。例えば、電池B1の電圧が12Vの場合、トランジスタTAC1駆動用のゲートドライバDV1は、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC1の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧の電源(例えば24V電源)を必要とし、トランジスタTAC2駆動用のゲートドライバDV2は、トランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC2の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧の電源(例えば24V電源)を必要とする。そこで、図25に示す第1実施例では、トランジスタTL1のドレイン電圧を抵抗R1及び逆流防止用ダイオードD1を経由して更にコンデンサC1により平滑して直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV1に接続し、トランジスタTL2のドレイン電圧を抵抗R2及び逆流防止用ダイオードD2を経由して更にコンデンサC2により平滑して直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV2に接続している。また、図示はしていないが、ゲートドライバDV1にはトランジスタTAC1をOFFするための電圧の電源(例えばトランジスタTAC1のソース端子)も接続し、ゲートドライバDV2にはトランジスタTAC2をOFFするための電圧の電源(例えばトランジスタTAC1のソース端子)も接続する。なお、図25に示す第1実施例とは異なり、トランジスタTL1のドレイン電圧を用いて直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV2に接続し、トランジスタTL2のドレイン電圧を用いて直流電圧を得る電源(例えば24V電源)をゲートドライバDV1に接続することも可能である。このようなトランジスタTAC1、TAC2を駆動するための電源電圧が得られるのは、図23に示すように、トランジスタTAC1オフ時のトランジスタTAC1のドレイン電圧、および、トランジスタTAC2オフ時のトランジスタTAC2のドレイン電圧が、電池B1の電圧(例えば、12V)の約2倍(例えば、約24V)となるからである。
【0107】
このような電源構成によると、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC1の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧を生成するための特別な回路(例えば、電池B3の出力電圧を倍の電圧に昇圧する回路)及びトランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)にトランジスタTAC2の閾値電圧を超える電圧を加えた電圧を生成するための特別な回路(例えば、電池B3の出力電圧を倍の電圧に昇圧する回路)を設ける必要がないため、簡易な回路構成となる。
【0108】
トランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成の第2実施例を図26に示す。図26において図21と同一の部分には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。なお、図26に記載している電圧値は一例である。
【0109】
図26に示す第2実施例では、トランジスタTAC1及びTAC2をそれぞれノーマリーオントランジスタとしている。この場合、トランジスタTAC1駆動用のゲートドライバDV3は、トランジスタTAC1のソース電圧(例えば12V)より大きい電圧の電源を必要とせず、トランジスタTAC2駆動用のゲートドライバDV4は、トランジスタTAC2のソース電圧(例えば12V)より大きい電圧の電源を必要としない。そこで、図26に示す第2実施例では、他の制御回路用電源(例えば5V電源)をゲートドライバDV3及びDV4に接続している。すなわち、他の制御回路用電源(例えば5V電源)を他の制御回路(例えば他のトランジスタを駆動するためのドライバ、センサ等)とゲートドライバDV3及びDV4とで共用するようにする。また、図示はしていないが、ゲートドライバDV3にはトランジスタTAC1をONするための電圧の電源(例えば12V電源)も接続し、ゲートドライバDV4にはトランジスタTAC2をONするための電圧の電源(例えば12V電源)も接続する。
【0110】
このような電源構成によると、ゲートドライバDV3及びDV4専用に電源を設ける必要がないため、電源回路を構成する部品点数を削減することができる。また、図26に示す第2実施例においてノーマリーオントランジスタであるトランジスタTAC1及びTAC2として、GaN系トランジスタやSiC系トランジスタ等のオン抵抗がSi系トランジスタよりも小さい化合物トランジスタを用いることで、さらに損失を低減することができる。なお、トランジスタTAC1及びTAC2に化合物トランジスタを用いた場合、例えばGaN系トランジスタであればソース−ドレイン間に内蔵ダイオードが形成されないため、図26においてはトランジスタTAC1及びTAC2の並列ダイオードを図示していないが、図25と同様にトランジスタTAC1及びTAC2と並列な位置にダイオードが接続されていても良い。
【0111】
次に、第2好適例に係るプッシュプル回路について説明する。図27は第2好適例に係るプッシュプル回路の構成を示す図である。図27において図21と同一の部分には、図11A中のトランジスタTAC1及びTAC2を図27ではトランジスタTAC1A及びTAC2Aに変更した以外は同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0112】
図27に示す第2好適例に係るプッシュプル回路は、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路からダイオードDAC1及びDAC2を取り除き、その代わりに同期整流用トランジスタTAC1B及びTAC2Bを設けた構成である。同期整流を行うことでダイオード分の損失を低減することができるので、より一層高効率化を図ることができる。
【0113】
図27に示す第2好適例に係るプッシュプル回路では、トランジスタTL1がONからOFFに切り替わった後でトランジスタTAC1BがOFFからONに切り替わり、トランジスタTAC1AがONからOFFに切り替わる前にトランジスタTAC1BがONからOFFに切り替わり、トランジスタTL2がONからOFFに切り替わった後でトランジスタTAC2BがOFFからONに切り替わり、トランジスタTAC2AがONからOFFに切り替わる前にトランジスタTAC2BがONからOFFに切り替わる必要がある。このため、トランジスタTL1、TL2、TAC1A、TAC2A、TAC1B、及びTAC2BのON、OFF切り替えは例えば図28に示すようなタイミングで行うとよい。
【0114】
図27に示す第2好適例に係るプッシュプル回路におけるトランジスタTAC1及びTAC2駆動用ドライバの電源構成例は、図21に示す第1好適例に係るプッシュプル回路の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0115】
なお、上述した各実施形態及び上記の各変形例の内容は、矛盾がない限り、任意に組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0116】
1 ソーラーパネル
2 MPPT制御部
3 制御部
4 サブバッテリ
5 DC/DCコンバータ
6 制御回路
7 メインバッテリ
8 インバータ
9 モータ
11 第1スイッチング回路
12 第2スイッチング回路
13 昇降圧チョッパ回路
B1〜B3 電池
CL、CH、CH1、CH2、C1、C2 コンデンサ
CNT1、CNT2 制御回路
CNV1 可変倍率DC/DCコンバータ部
CNV2 固定倍率DC/DCコンバータ部
CNV3 可変倍率双方向DC/DCコンバータ部
CNV4 固定倍率双方向DC/DCコンバータ部
DH1、DH2、D1、D2、DAC1、DAC2 ダイオード
DV1〜DV4 ゲートドライバ
LD1 負荷回路
RLD1、R1、R2 抵抗
S1、S4 情報信号
S2、S3 制御信号
TL1〜TL4、TLD1 トランジスタ
TH1〜TH6 トランジスタ
TAC1、TAC2 トランジスタ
TR1、TR2 トランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1DC/DCコンバータ部と、
前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備え、
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部であり、
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部であることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記固定倍率DC/DCコンバータ部はトランスを有する絶縁型DC/DCコンバータ部であり、
前記可変倍率DC/DCコンバータ部は非絶縁型DC/DCコンバータ部であることを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1DC/DCコンバータ部は前記可変倍率DC/DCコンバータ部であり、
前記第2DC/DCコンバータ部は前記固定倍率DC/DCコンバータ部であり、
前記第1DC/DCコンバータ部と前記第2DC/DCコンバータ部との接続点に接続される負荷回路を備え、
前記負荷回路は動作状態と非動作状態との切り替えが可能な負荷回路であり、
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に降圧動作を行うDC/DCコンバータ部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に双方向DC/DCコンバータ部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記DC/DCコンバータが前記固定倍率DC/DCコンバータ部から前記可変倍率DC/DCコンバータ部への電力伝送動作を開始する前に、前記可変倍率DC/DCコンバータ部が、前記可変倍率DC/DCコンバータ部から前記固定倍率DC/DCコンバータ部へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、前記固定倍率DC/DCコンバータ部と前記可変倍率DC/DCコンバータ部との接続点の電圧を徐々に上昇させることを特徴とする請求項4に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記第1DC/DCコンバータ部の動作周波数と前記第2DC/DCコンバータ部の動作周波数とが互いに異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
太陽電池と、
前記太陽電池から出力される電力を蓄える第1蓄電装置と、
前記第1蓄電装置よりも電圧が大きい第2蓄電装置と、
前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間の電力伝送を行うDC/DCコンバータとを備え、
前記DC/DCコンバータが請求項1〜6のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータであることを特徴とするソーラー充電システム。
【請求項8】
請求項7に記載のソーラー充電システムを備えることを特徴とする移動体。
【請求項9】
前記ソーラー充電システムが備える第2蓄電装置から出力される電力を移動体の駆動用電力として用いることを特徴とする請求項8に記載の移動体。
【請求項1】
第1DC/DCコンバータ部と、
前記第1DC/DCコンバータ部から供給される電圧をDC/DC変換する第2DC/DCコンバータ部とを備え、
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の一方が固定倍率DC/DCコンバータ部であり、
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部の他方が可変倍率DC/DCコンバータ部であることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記固定倍率DC/DCコンバータ部はトランスを有する絶縁型DC/DCコンバータ部であり、
前記可変倍率DC/DCコンバータ部は非絶縁型DC/DCコンバータ部であることを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1DC/DCコンバータ部は前記可変倍率DC/DCコンバータ部であり、
前記第2DC/DCコンバータ部は前記固定倍率DC/DCコンバータ部であり、
前記第1DC/DCコンバータ部と前記第2DC/DCコンバータ部との接続点に接続される負荷回路を備え、
前記負荷回路は動作状態と非動作状態との切り替えが可能な負荷回路であり、
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に降圧動作を行うDC/DCコンバータ部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1DC/DCコンバータ部及び前記第2DC/DCコンバータ部は共に双方向DC/DCコンバータ部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記DC/DCコンバータが前記固定倍率DC/DCコンバータ部から前記可変倍率DC/DCコンバータ部への電力伝送動作を開始する前に、前記可変倍率DC/DCコンバータ部が、前記可変倍率DC/DCコンバータ部から前記固定倍率DC/DCコンバータ部へ向かう方向でのDC/DC変換を行って、前記固定倍率DC/DCコンバータ部と前記可変倍率DC/DCコンバータ部との接続点の電圧を徐々に上昇させることを特徴とする請求項4に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記第1DC/DCコンバータ部の動作周波数と前記第2DC/DCコンバータ部の動作周波数とが互いに異なることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
太陽電池と、
前記太陽電池から出力される電力を蓄える第1蓄電装置と、
前記第1蓄電装置よりも電圧が大きい第2蓄電装置と、
前記第1蓄電装置と前記第2蓄電装置との間の電力伝送を行うDC/DCコンバータとを備え、
前記DC/DCコンバータが請求項1〜6のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータであることを特徴とするソーラー充電システム。
【請求項8】
請求項7に記載のソーラー充電システムを備えることを特徴とする移動体。
【請求項9】
前記ソーラー充電システムが備える第2蓄電装置から出力される電力を移動体の駆動用電力として用いることを特徴とする請求項8に記載の移動体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2013−99069(P2013−99069A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238544(P2011−238544)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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