説明

DC/DCコンバータならびにそれを用いた電源装置および電子機器

【課題】制御回路に対する電源電圧の変動を抑制する。
【解決手段】トランスT1は、1次コイルL1、2次コイルL2および1次コイルL1側に設けられた補助コイルL3を有する。第1出力キャパシタCo1は、その一端の電位が固定される。第1ダイオードD1は、第1出力キャパシタCo1の他端と2次コイルL2の一端との間に、そのカソードが第1出力キャパシタCo1側となる向きで設けられる。スイッチングトランジスタM1は、1次コイルL1の経路上に設けられる。第2出力キャパシタCo2の一端の電位は固定される。第2ダイオードD2およびマスク用スイッチSW3は、第2出力キャパシタCo2の他端と補助コイルL3の一端との間に直列に設けられる。制御回路10は、その電源端子に第2出力キャパシタCo2に生ずる電圧を受け、スイッチングトランジスタM1のオン、オフを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
テレビや冷蔵庫をはじめとするさまざまな家電製品、あるいはラップトップ型コンピュータ、携帯電話端末やPDA(Personal Digital Assistants)をはじめとする電子機器は、外部からの電力を受けて動作し、また外部電源からの電力によって内蔵の電池を充電可能となっている。そして家電製品や電子機器(以下、電子機器と総称する)には、商用交流電圧をAC/DC(交流/直流)変換する電源装置が内蔵され、あるいは、電源装置は、電子機器の外部の電源アダプタ(ACアダプタ)に内蔵される。
【0003】
電源装置は、交流電圧を整流する整流回路(ダイオードブリッジ回路)と、整流された電圧を降圧して負荷に供給する絶縁型のDC/DCコンバータと、を備える。
図1は、本発明者が検討したDC/DCコンバータ100rの構成を示す図である。DC/DCコンバータ100rの具体的構成を当業者によく知られた一般的な技術とみなしてはならない。
【0004】
DC/DCコンバータ100rは、その入力端子P1には、その前段に設けられた整流回路(不図示)からの直流の入力電圧VINが入力される。DC/DCコンバータ100rは、入力電圧VINを降圧して出力端子POUTに接続される負荷(負荷)に供給する。
【0005】
DC/DCコンバータ100rは、主としてスイッチングトランジスタM1、トランスT1、第1ダイオードD1、第1出力キャパシタCo1、制御回路10r、フィードバック回路20rを備える。DC/DCコンバータ100rは、トランスT1の1次側領域と2次側領域が電気的に絶縁されていなければならない。フィードバック回路20rは、出力電圧VOUTを分圧する抵抗R1、R2と、シャントレギュレータ22、フォトカプラ24を備える。
【0006】
シャントレギュレータ22は、分圧された出力電圧VOUT’と、出力電圧VOUTの目標値に応じた基準電圧VREFとの誤差を増幅する誤差増幅器である。フォトカプラ24は、出力電圧VOUTと目標電圧との誤差に応じたフィードバック信号を、制御回路10rにフィードバックする。制御回路10rは、出力電圧VOUTが目標値と一致するようにスイッチングトランジスタM1のオン、オフのデューティ比をパルス変調を用いて制御する。
【0007】
制御回路10rは、10V程度の電源電圧VCCで動作可能であるところ、これを入力電圧VIN(140V程度)を用いて駆動すると、効率が悪化する。一方、DC/DCコンバータ100rによって降圧された電圧VOUTはトランスT1の2次側に発生することから、この電圧VOUTを1次側に設けられた制御回路10rに供給することはできない。
【0008】
そこでトランスT1の1次側には、補助コイルL3が設けられる。補助コイルL3、第2ダイオードD2および第2出力キャパシタCo2は、制御回路10rに対する電源電圧VCCを生成するための補助的なDC/DCコンバータとして機能する。このDC/DCコンバータ100rでは、電源電圧VCCは、出力電圧VOUTに比例し、その比例係数は、トランスT1の2次コイルL2と補助コイルL3の巻き線比で定まる。
CC=VOUT×N/N
ここで、Nは2次コイルL2の巻き数、Nは補助コイルL3の巻き数である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−098571号公報
【特許文献2】特開平2−211055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、このようなDC/DCコンバータ100rについて検討し、以下の課題を認識するに至った。たとえばDC/DCコンバータ100rが、テレビに搭載される場合を考える。現状、テレビのスタンバイ状態における消費電力は、0.3W以下に抑えることが求められている。将来では、さらに低い消費電力、たとえば0.1W以下に抑えることが要求される。
【0011】
スタンバイ状態における電子機器全体の消費電力を低減するためには、負荷であるマイコンやその他の信号処理回路の消費電力を下げる必要がある。このためのひとつのアプローチとして、スタンバイ状態においてDC/DCコンバータ100rの出力電圧VOUTを、通常状態よりも低下させることが考えられる。
【0012】
たとえば通常状態において、DC/DCコンバータ100rの出力電圧VOUTが12Vであり、スタンバイ状態においてこれを6Vまで低下させるとする。2次コイルL2と補助コイルL3の巻き線比が1:1であるとすると、通常状態において12Vであった電源電圧VCCが6Vに低下する。そうすると、制御回路10rの動作保証電圧であるVCC=10Vを大きく下回るため、DC/DCコンバータ100全体が機能しなくなる。
【0013】
あるいは、制御回路10rは動作可能であるとしても、DC/DCコンバータ100の効率が低下する。なぜなら、スイッチングトランジスタM1のゲート信号の振幅は、電源電圧VCCに依存するところ、電源電圧VCCが低下するとスイッチングトランジスタM1のゲート信号の振幅が小さくなり、スイッチングトランジスタM1のオン抵抗が増大するためである。
【0014】
本発明のある態様はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、出力電圧を低下させても動作可能な、あるいは高効率を維持可能な絶縁型のDC/DCコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある態様は、絶縁型のDC/DCコンバータに関する。このDC/DCコンバータは、1次コイル、2次コイルおよび、1次コイル側に設けられた補助コイルを有するトランスであって、補助コイルは、2次コイルに生ずる電圧に第1係数を乗じた第1電圧を発生する第1端子と、2次コイルに生ずる電圧に第1係数より大きな第2係数を乗じた第2電圧を発生する第2端子とを有している、トランスと、その一端の電位が固定され、その他端が出力端子に接続された第1出力キャパシタと、第1出力キャパシタの他端と2次コイルの一端との間に、そのカソードが第1出力キャパシタ側となる向きで設けられた第1ダイオードと、1次コイルの経路上に設けられたスイッチングトランジスタと、その一端の電位が固定された第2出力キャパシタと、第2出力キャパシタの他端と補助コイルの第1端子との間に、そのカソードが第2出力キャパシタ側となる向きで設けられた第2整流素子と、第2出力キャパシタの他端と補助コイルの第2端子との間に、そのカソードが第2出力キャパシタ側となる向きで設けられた第3整流素子と、出力端子の出力電圧が第1レベルとなる第1モードにおいて、第2整流素子を含む第1経路を選択し、出力電圧が第1レベルより低い第2レベルとなる第2モードにおいて、第3整流素子を含む第2経路を選択する選択回路と、その電源端子に第2出力キャパシタに生ずる電圧を受け、スイッチングトランジスタのオン、オフを制御する制御回路と、を備える。
【0016】
補助コイルの第2端子に生ずる電圧の振幅は、補助コイルの第1端子に生ずる電圧の振幅よりも大きい。したがって第2経路が有効なときに第2出力キャパシタに生ずる電圧は、第1経路が有効なときに第2出力キャパシタに生ずる電圧よりも大きくなる。つまり、通常状態では第1経路を有効としておき、出力電圧のレベルを低下させた場合には、第2経路を有効とすることにより、出力電圧を低下させても、制御回路の電源端子に適切なレベルの電源電圧を供給できる。あるいは、制御回路に対する電源電圧が低下しないことにより、スイッチングトランジスタのオン抵抗の低下を抑制し、DC/DCコンバータの効率が悪化するのを防止することができる。
【0017】
補助コイルは、巻き線の途中にタップが設けられたひとつのコイルを含み、タップが第1端子であり、その一端が第2端子であってもよい。
この場合、回路面積やコストの増大を抑えることができる。
【0018】
補助コイルは、2つのコイルを含み、一方のコイルの一端が第1端子であり、他方のコイルの一端が第2端子であってもよい。
【0019】
ある態様において、第1、第2モードの切りかえは、本DC/DCコンバータの負荷によって制御され、かつ負荷は、モードを示す制御信号を生成可能に構成されてもよい。DC/DCコンバータは、負荷からの制御信号を、トランスの2次側から1次側に伝送する制御用フォトカプラをさらに備えてもよい。選択回路は、制御信号にもとづき制御されてもよい。
この態様によれば、負荷によってモードの切りかえが制御され、さらに各モードに応じて選択回路を適切な状態に設定できる。
【0020】
ある態様のDC/DCコンバータは、出力電圧と所定の基準電圧との誤差に応じた誤差信号を生成する誤差増幅器と、誤差増幅器からの誤差信号を受け、誤差信号に応じたフィードバック信号をトランスの2次側から1次側に伝送するフィードバック用フォトカプラと、をさらに備えてもよい。制御回路は、フィードバック信号にもとづき、スイッチングトランジスタのオン、オフを制御してもよい。
【0021】
ある態様のDC/DCコンバータは、出力電圧を切りかえ可能な分圧比により分圧して誤差増幅器に出力する分圧回路をさらに備えてもよい。分圧回路の分圧比は、第1、第2モードに応じて切りかえられてもよい。
この態様では、分圧回路の分圧比に応じて、出力電圧を切りかえることができる。
【0022】
分圧回路の分圧比は、DC/DCコンバータの負荷によって切りかえられ、かつ負荷は、モードを示す制御信号を生成可能に構成されてもよい。DC/DCコンバータは、負荷からの制御信号を、トランスの2次側から1次側に伝送する制御用フォトカプラをさらに備えてもよい。選択回路は、制御信号にもとづき制御されてもよい。
この態様によれば、負荷によってモードの切りかえが制御され、さらに各モードに応じて選択回路を適切な状態に設定できる。
【0023】
選択回路は、第2出力キャパシタの他端と補助コイルの一端との間に、第3整流素子と直列に設けられた第1スイッチを含んでもよい。
【0024】
第1スイッチは、そのコレクタが第2出力キャパシタ側となるように配置されたPNP型バイポーラトランジスタを含んでもよい。
【0025】
選択回路は、第2出力キャパシタの他端と補助コイルのタップとの間に、第2整流素子と直列に設けられた第2スイッチをさらに含んでもよい。
【0026】
本発明の別の態様は、電子機器である。この電子機器は、マイコンと、その出力電圧をマイコンに供給する上述のいずれかの態様のDC/DCコンバータと、を備える。本電子機器の通常状態において、DC/DCコンバータは、第1レベルの出力電圧を生成し、本電子機器のスタンバイ状態において、DC/DCコンバータは、第1レベルより低い第2レベルの出力電圧を生成する。
【0027】
この態様によれば、スタンバイ状態における消費電力を低減できる。
【0028】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明のある態様によれば、出力電圧を低下させても動作可能な絶縁型のDC/DCコンバータを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明者が検討したDC/DCコンバータの構成を示す図である。
【図2】実施の形態に係る電子機器の構成を示す回路図である。
【図3】図2の制御回路の構成例を示す回路図である。
【図4】第2の変形例に係るスイッチ制御部の構成を示す回路図である。
【図5】図5は、第2の変形例に係るDC/DCコンバータの通常モードにおける動作を示す波形図である。
【図6】変形例に係るトランスの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0032】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0033】
図2は、実施の形態に係る電子機器1の構成を示す回路図である。
電子機器1は、たとえばテレビや冷蔵庫、エアコンなどの家電製品やコンピュータである。電子機器1は、マイコン2、信号処理回路4、DC/DCコンバータ100、整流回路102を備える。電子機器1は、互いに絶縁される1次側と2次側に分けられている。整流回路102およびDC/DCコンバータ100の半分は1次側に配置され、電子機器1の半分と、マイコン2、信号処理回路4は2次側に配置される。
【0034】
整流回路102は、たとえばダイオード整流回路であり、商用交流電圧などの交流電圧VACを受け、それを全波整流し、キャパシタC1により平滑化して直流電圧VDC(=VIN)を生成する。VAC=100Vのとき、VDC=144Vとなる。
【0035】
DC/DCコンバータ100は、その入力端子P1に直流の入力電圧VINを受け、これを降圧して出力端子P2から出力する。DC/DCコンバータ100と整流回路102の間には、図示しないPFC(Power Factor Correction)回路を設けてもよい。出力端子P2からの出力電圧VOUTは、マイコン2および信号処理回路4に出力される。マイコン2は、電子機器1全体を統合的に制御する。信号処理回路4は、特定の信号処理を行うブロックであり、たとえば外部機器との通信を行うインタフェース回路や、画像処理回路、音声処理回路などが例示される。現実の電子機器1においては、その機能に応じて複数の信号処理回路4が設けられることはいうまでもない。マイコン2の動作保証電圧はたとえば6Vであり、信号処理回路4の動作保証電圧は、マイコン2のそれよりも高い12Vであるとする。
【0036】
この電子機器1は、通常状態(通常モードともいう)とスタンバイ状態(スタンバイモードともいう)が切りかえ可能となっている。通常モードにおいては、マイコン2および信号処理回路4が動作する。したがって、DC/DCコンバータ100は、入力電圧VINを12V(第1レベル)に降圧し、マイコン2および信号処理回路4へと出力する。スタンバイモードにおいては、信号処理回路4は非動作状態となり、信号処理回路4のみが動作すればよい。したがって電子機器1全体の消費電力を低減するために、DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTを第1レベル(12V)よりも低い6V(第2レベル)に低下させる。
【0037】
本実施の形態において、通常モードとスタンバイモードの切りかえは、マイコン2が行うものとする。またマイコン2は、モードを示す制御信号STB(STB信号ともいう)を生成する。制御信号STBはスタンバイモードにおいてアサート(ハイレベル)、通常モードにおいてネゲート(ローレベル)される。
【0038】
以上が電子機器1の全体構成である。続いて、このような電子機器1に好適に利用可能なDC/DCコンバータ100について説明する。
【0039】
DC/DCコンバータ100は、主としてトランスT1、第1ダイオードD1、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第1出力キャパシタCo1、第2出力キャパシタCo2、スイッチングトランジスタM1、制御回路10、フィードバック回路20、フォトカプラ30、選択回路16を備える。
【0040】
トランスT1は、1次コイルL1、2次コイルL2および1次コイル側に設けられた補助コイルL3を有する。1次コイルL1の巻き数をN、2次コイルL2の巻き数をNとする。また補助コイルL3の巻き数をND2とする。補助コイルL3にはタップTPが設けられており、タップTPより低電位側の巻き数をND1とする。
補助コイルL3のタップTP(第1端子N3aともいう)には、2次コイルL2に生ずる電圧Vに第1係数(巻き線比ND1/N)を乗じた第1電圧VD1が発生する。また補助コイルL3の一端(第2端子N3b)には、2次コイルL2に生ずる電圧Vに第1係数より大きな第2係数(ND2/N)を乗じた第2電圧VD2が発生する。本実施の形態では、N:ND1:ND2=1:1:2とする。
【0041】
スイッチングトランジスタM1、1次コイルL1、2次コイルL2、第1ダイオードD1、第1出力キャパシタCo1は、第1のコンバータ(メインコンバータ)を形成する。第1出力キャパシタCo1の一端の電位は接地されて固定されている。第1ダイオードD1は、第1出力キャパシタCo1の他端と2次コイルL2の一端N2との間に、そのカソードが第1出力キャパシタCo1側となる向きで設けられる。2次コイルL2の他端は接地されて電位が固定されている。
【0042】
スイッチングトランジスタM1は、1次コイルL1の経路上に設けられる。スイッチングトランジスタM1のゲートには、抵抗R10を介して制御回路10からのスイッチング信号OUTが入力される。
【0043】
スイッチングトランジスタM1、1次コイルL1、補助コイルL3、第2ダイオードD2、第3ダイオードD3、第2出力キャパシタCo2は、第2のコンバータ(補助コンバータ)を形成する。
【0044】
第2出力キャパシタCo2の一端の電位は固定される。第2ダイオード(第2整流素子)D2は、第2出力キャパシタCo2の他端と補助コイルL3のタップTP、すなわち第1端子N3aの間に設けられる。補助コイルL3の一端は接地され、その電位は固定されている。第2ダイオードD2は、そのカソードが第2出力キャパシタCo2側となる向きで配置される。
【0045】
第3ダイオード(第3整流素子)D3は、第2出力キャパシタCo2の他端と補助コイルL3の第2端子N3bの間に設けられる。第3ダイオードD3は、そのカソードが第2出力キャパシタCo2側となる向きで配置される。
【0046】
選択回路16は、出力電圧VOUTが第1レベル(12V)となる通常モードにおいて、第2ダイオードD2を含む第1経路12を選択して有効とし、出力電圧VOUTが第1レベルより低い第2レベル(6V)となるスタンバイモードにおいて、第3ダイオードD3を含む第2経路14を選択して有効とする。具体的には選択回路16は、第2出力キャパシタCo2と補助コイルL3の第2端子N3bとの間に、第3ダイオードD3と直列に設けられた第1スイッチSW1を含む。第1スイッチSW1がオフのとき第1経路12が有効となる。第1スイッチSW1がオンのときには、第2ダイオードD2と第3ダイオードD3がOR回路として機能し、第2端子N3bの電圧VD2と、第1端子N3a(タップTP)の電圧VD1の間には、VD2>VD1なる関係が成り立つため、第2経路14が有効となる。
【0047】
たとえば第1スイッチSW1は、コレクタが第2出力キャパシタCo2側となるように配置されたPNP型バイポーラトランジスタである。PNP型バイポーラトランジスタのベースエミッタ間は、抵抗を介して接続されており、そのベースには、制御回路10からのマスク信号MASK1が入力される。MASK1端子がハイインピーダンス状態のとき、第1スイッチSW1はオフとなり、MASK1端子がローレベルとなると、第1スイッチSW1がオンとなる。第1スイッチSW1は、PチャンネルMOSFETで構成してもよいし、別の素子で構成してもよい。
【0048】
第1経路12が有効となる通常モードにおいて、第2出力キャパシタCo2には、巻き線比(ND1/N)に応じた電源電圧VCC1が発生する。
CC1=ND1/N×VOUT …(1)
また、第2経路14が有効となるスタンバイモードにおいて、第2出力キャパシタCo2の電圧VCC2は、式(2)で与えられる。
CC2=ND2/N×VOUT …(2)
【0049】
制御回路10は、その電源端子VCC(8番ピン)に、第2出力キャパシタCo2に生ずる第2電圧VCCを受ける。なお、第2のコンバータが正常に動作する前の期間、制御回路10の電源端子VCCには、抵抗R11を介して直流電圧VDCが供給される。
【0050】
制御回路10は、出力電圧VOUTのレベルが目標値に近づくようにスイッチング信号OUTのデューティ比をパルス幅変調(PWM)、パルス周波数変調(PFM)などを利用して調節し、スイッチングトランジスタM1を制御する。スイッチング信号OUTの生成方法は特に限定されない。
【0051】
制御回路10のフィードバック端子FB(2番ピン)には、フォトカプラを含むフィードバック回路20を介して、出力電圧VOUTに応じたフィードバック信号VFBが入力される。キャパシタC3は、位相補償を目的として設けられる。
【0052】
たとえばフィードバック回路20は、シャントレギュレータ22、フォトカプラ24、分圧回路26を含む。
分圧回路26は、DC/DCコンバータ100の出力電圧VOUTを分圧比Kにて分圧する。シャントレギュレータ22は、分圧された出力電圧VOUT’(=VOUT×K)と、所定の基準電圧VREFの誤差を増幅し、誤差に応じた電流IFBを出力する。シャントレギュレータ22の出力電流IFBの経路には、フォトカプラ24の入力側の発光ダイオードが設けられる。フォトカプラ24は、出力電圧VOUT’と基準電圧VREFの誤差に応じたフィードバック信号VFBを、制御回路10のFB端子に出力する。抵抗R21、R22は、フォトカプラ24の発光ダイオードを適切にバイアスするために設けられる。
【0053】
制御回路10は、フィードバック信号VFBを受け、分圧された出力電圧VOUT’が基準電圧VREFと一致するようにデューティ比が調節されるスイッチング信号OUTを生成し、スイッチングトランジスタM1を駆動する。
分圧回路26の分圧比をKとするとき、フィードバックによって、出力電圧VOUTは、
OUT=VREF/K …(1)
を満たすように安定化される。
【0054】
本実施の形態において通常モードとスタンバイモードを切りかえるために、分圧回路26は、その分圧比Kが2値で切りかえ可能に構成され、この分圧比Kは、マイコン2からの制御信号STBにより制御される。
【0055】
分圧回路26は、出力端子P2と接地端子の間に直列に設けられた第1抵抗R1および第2抵抗R2を含み、その一方、具体的には第2抵抗R2は可変抵抗となっている。第2抵抗R2は、抵抗R2aと、それと並列に設けられた抵抗R2bおよびスイッチSW3を含む。通常モードでは、制御信号STBがローレベルであるためスイッチSW3がオフし、分圧比Kは、
=R1/R2=R1/R2a
となる。スタンバイモードではスイッチSW3がオンし、分圧比K
=R1/R2=R2/(R2a//R2b)
となる。「//」は、並列抵抗の合成インピーダンスを示す。
【0056】
出力電圧VOUTは、式(3)で与えられるため、分圧比Kを切りかえることにより、出力電圧VOUTを切りかえることができる。たとえばVREF=2.5Vのとき、K=12/2.5、K=6/2.5を満たすように、抵抗R1、R2a、R2bの抵抗値を決めればよい。
【0057】
マイコン2がモードに応じて生成する制御信号STBは、制御用フォトカプラ30に入力される。制御用フォトカプラ30は2次側で発生した制御信号STBを1次側に伝送する。制御回路10のスタンバイ端子STBには、制御信号STBが入力される。制御回路10は、SBT信号に応じてMASK1端子の電圧を変化させ、第1スイッチSW1のオン、オフ状態を切りかえる。
【0058】
続いて制御回路10の具体的な構成例を説明する。なお制御回路10の構成は本発明において特に限定されるものではない。
【0059】
たとえば制御回路10は、第1出力キャパシタCo1に生ずる出力電圧VOUT、スイッチングトランジスタM1(1次コイルL1)に流れる電流IM1および補助コイルL3のタップTPに生ずる第1電圧VD1に応じて、スイッチング信号OUTを発生する。
【0060】
検出抵抗Rsは、スイッチングトランジスタM1に流れる電流IM1を検出するために設けられる。検出抵抗Rsに生ずる電圧降下(検出信号)Vsは、制御回路10の電流検出端子(CS端子:3番ピン)に入力される。また、制御回路10の補助コイルL3のタップTPの電圧VD1は、抵抗R4およびキャパシタC4を含むローパスフィルタを介して、ZT端子(1番ピン)に入力される。
【0061】
図3は、図2の制御回路10の構成例を示す回路図である。制御回路10は、オフ信号生成部52、オン信号生成部54、駆動部56およびスイッチ制御部70を備える。
【0062】
オフ信号生成部52は、検出信号Vsをフィードバック信号VFBと比較するコンパレータを含み、スイッチングトランジスタM1がオフするタイミングを規定するオフ信号Soffを生成する。オフ信号生成部52よって生成されるオフ信号Soffは、スイッチングトランジスタM1に流れる電流IM1が、フィードバック信号VFBに応じたレベルに達するとアサートされる。
【0063】
たとえば出力電圧VOUT’が基準電圧VREFより低くなると、フィードバック信号VFBは高くなり、オフ信号Soffがアサートされるタイミングが遅くなって、スイッチングトランジスタM1のオン期間Tonが長くなり、その結果出力電圧VOUTが上昇する方向にフィードバックがかかる。反対に出力電圧VOUT’が基準電圧VREFより高くなると、フィードバック信号VFBは低くなり、オフ信号Soffがアサートされるタイミングが早くなって、スイッチングトランジスタM1のオン期間Tonが短くなり、その結果、出力電圧VOUTが低下する方向にフィードバックがかかる。
【0064】
オン信号生成部54は、オフ信号Soffがアサートされた後アサートされるオン信号Sonを発生する。図3のオン信号生成部54は、補助コイルL3のタップTPの電位VD1を、所定レベルVthと比較するコンパレータを含む。オン信号生成部54は、タップTPの電位VD1が所定レベルVthまで低下すると、オン信号Sonをアサートする。
【0065】
スイッチングトランジスタM1がオンすると、1次コイルL1に電流IM1が流れ、トランスT1にエネルギーが蓄えられる。その後、スイッチングトランジスタM1がオフすると、トランスT1に蓄えられたエネルギーが放出される。オン信号生成部54は、補助コイルL3に発生する電圧VD1を監視することにより、トランスT1のエネルギーが完全に放出されたことを検出できる。オン信号生成部54は、エネルギーの放出を検出すると、再びスイッチングトランジスタM1をオンすべく、オン信号Sonをアサートする。
【0066】
駆動部56は、オン信号SonがアサートされるとスイッチングトランジスタM1をオンし、オフ信号SoffがアサートされるとスイッチングトランジスタM1をオフする。駆動部56は、フリップフロップ58、プリドライバ60、ドライバ62を含む。フリップフロップ58は、セット端子およびリセット端子それぞれにオン信号Sonおよびオフ信号Soffを受ける。フリップフロップ58は、オン信号Sonおよびオフ信号Soffに応じて状態が遷移する。その結果、フリップフロップ58の出力信号Smodのデューティ比は、出力電圧VOUTが目標値VREFと一致するように変調される。図3では、駆動信号Smodおよびスイッチング信号OUTのハイレベルは、スイッチングトランジスタM1のオンに対応付けられ、それらのローレベルはスイッチングトランジスタM1のオフに対応付けられる。
【0067】
プリドライバ60は、フリップフロップ58の出力信号Smodに応じてドライバ62を駆動する。ドライバ62のハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタが同時にオンしないように、プリドライバ60の出力信号SH、SLにはデッドタイムが設定される。ドライバ62からは、スイッチング信号OUTが出力される。
【0068】
スイッチ制御部70は、STB信号を受け、それに応じて、MASK1端子の状態を変化させる。具体的にはSTB信号がローレベルのときには、MASK1端子をハイインピーダンスとし、第1スイッチSW1をオフする。STB信号がハイレベルとなると、MASK1端子をローレベルとし、第1スイッチSW1をオンする。スイッチ制御部70は、オープンドレイン形式もしくはオープンコレクタ形式で構成され、その出力段には、出力トランジスタ76が設けられる。ロジック回路71は、SBT信号がローレベルのとき出力トランジスタ76のゲート信号S1をローレベルとし、STB信号がハイレベルのとき、ゲート信号S1をハイレベルとする。
【0069】
以上がDC/DCコンバータ100の構成である。続いてその動作を、通常モードとスタンバイモードに分けて説明する。
1.通常モード
通常モードにおいてマイコン2はSTB信号をネゲート(ローレベル)する。このとき、分圧回路26の分圧比は第1の値Kに設定され、出力電圧VOUTは12Vとなるようにフィードバックがかかる。
【0070】
また補助コンバータに着目すると、STB信号がネゲートされるため、第1スイッチSW1がオフし、第1経路12が有効となる。その結果、制御回路10の電源端子VCCには、式(1)で与えられる電源電圧VCC1が供給される。VOUT=12V、ND2/N=1であるとき、VCC1=12Vとなり、制御回路10に対して十分な電源電圧が供給される。
【0071】
2.スタンバイモード
スタンバイモードにおいてマイコン2はSTB信号をアサートする。このとき、分圧回路26の分圧比は第2の値Kに設定され、出力電圧VOUTは6Vとなるようにフィードバックがかかる。マイコン2の消費電力は、その電源電圧VOUTとその動作電流の積で与えられるところ、マイコン2の電源電圧VOUTを低下させることにより、消費電力を低下させることができる。
【0072】
また補助コンバータに着目すると、STB信号がアサートされるため、第1スイッチSW1がオンし、第2経路14が有効となる。その結果、制御回路10の電源端子VCCには、式(2)で与えられる電源電圧VCC2が供給される。VOUT=12V、ND/N=2であるとき、VCC2=12Vとなり、スタンバイモードにおいても、制御回路10に対する電源電圧VCCは低下せず、十分な電源電圧が供給される。出力電圧VOUTを低下させるスタンバイモードにおいて、電源電圧VCCが低下しないことにより、制御回路10の動作が不安定となるのを防止できる。
【0073】
また、スイッチングトランジスタM1のゲート信号の振幅(ハイレベル電圧)は、電源電圧VCCと実質的に等しい。したがって図1の回路のように、電源電圧VCCが低下すると、スイッチングトランジスタM1を十分にオンさせることができず、損失が大きくなりDC/DCコンバータ100の効率が悪化する。これに対して本実施の形態に係るDC/DCコンバータ100によれば、電源電圧VCCが低下しないため、変換効率の悪化を抑制できる。
【0074】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0075】
(第1の変形例)
選択回路16は、第2出力キャパシタCo2と補助コイルL3のタップTPとの間に、第2ダイオードD2と直列に設けられた第2スイッチ(SW2)をさらに備えてもよい。この場合、制御回路10には、第2スイッチSW2を制御するためのMASK2端子を追加すればよい。図3のスイッチ制御部70は、スタンバイモードにおいて第2スイッチSW2がオフするように、STB信号に応じてMASK2端子の状態を制御する。
【0076】
(第2の変形例)
実施の形態では、通常モードとスタンバイモードとで、第1スイッチSW1を固定的にオン、またはオフとする場合を説明したが、本発明はそれには限定されない。この変形例において選択回路16は、第1スイッチSW1および第2スイッチSW2を備える。また、各モードにおいて有効とされる経路上のスイッチを、スイッチング信号OUTと同期してスイッチングする。
【0077】
すなわち通常モードでは第1スイッチSW1は固定的にオフされ、第2スイッチSW2はスイッチング信号OUTと同期してスイッチングされる。制御回路10は、少なくとも、スイッチングトランジスタM1がオフしてから所定期間(マスク期間ΔTという)の間、スイッチSW2をオフする。制御回路10は、マスク期間ΔTに加えて、スイッチングトランジスタM1のオン期間Tonの間、第2スイッチSW2をオフしてもよい。
【0078】
制御回路10はスイッチングトランジスタM1のオン期間Tonおよびマスク期間ΔTにおいて、MASK2端子をハイインピーダンス(オープン)とする。そうすると第2スイッチSW2はオフとなる。マスク期間ΔTが経過した後のスイッチングトランジスタM1のオフ期間Toffにおいて、制御回路10はMASK2信号をローレベルとし、第2スイッチSW2をオンさせる。
【0079】
反対にスタンバイモードでは、第2スイッチSW2は固定的にオフされ、第1スイッチSW1がスイッチング信号OUTと同期してスイッチングされる。
【0080】
図4は、第2の変形例に係るスイッチ制御部70aの構成を示す回路図である。スイッチ制御部70aは、オン信号Sonおよびオフ信号Soffの少なくとも一方と同期したマスク信号MASK1、MASK2を発生する。具体的にはスイッチ制御部70は、遅延回路72、論理ゲート74、ANDゲート78、79、出力トランジスタ76、77を備える。
【0081】
遅延回路72は、図3で説明したローサイド駆動信号SLを、マスク時間ΔT遅延させる。論理ゲート(NOR)74は、遅延されないローサイド駆動信号SLと遅延されたそれの否定論理和を生成する。論理ゲート74の出力がハイレベルの期間、有効な経路のスイッチがオンし、ローレベルの期間、そのスイッチはオフする。
【0082】
ANDゲート78は、論理ゲート74の出力と、STB信号の論理積S1を生成し、出力トランジスタ76のゲートに出力する。またANDゲート79は、論理ゲート74の出力と、STB信号(反転論理)の論理積S2を生成し、出力トランジスタ77のゲートに出力する。
【0083】
続いて第2の変形例の動作を説明する。図5は、第2の変形例に係るDC/DCコンバータの通常モードにおける動作を示す波形図である。図5の縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。図4には、上から順に、スイッチング信号OUT、1次コイルL1の一端N1の電位V、2次コイルL2の一端N2の電位V、補助コイルL3のタップTPの電位VD1、マスク信号MASK2が示される。
【0084】
まず、メインコンバータに着目する。制御回路10によって、スイッチング信号OUTが生成され、スイッチングトランジスタM1はオンとオフを交互に繰り返す。スイッチングトランジスタM1がオンの期間、電圧Vは接地電圧付近に固定される。
【0085】
スイッチングトランジスタM1がオフすると、1次コイルL1に逆起電力が発生し、電圧Vが大きく跳ね上がる。VDC=140Vのとき、ピーク電圧はその2倍の280V程度に達する場合もある。スイッチングトランジスタM1がオフすると、1次コイルL1に蓄えられたエネルギーが、電流として第1ダイオードD1を介して第1出力キャパシタCo1に転送される。
【0086】
2次コイルL2の一端には、1次コイルL1の電圧Vに比例した、つまり急峻なピークを有する電圧Vが発生する。2次コイルL2の一端と第1出力キャパシタCo1は、第1ダイオードD1を介してカップリングされる。したがって第1出力キャパシタCo1の容量値が小さければ、出力電圧Voutは電圧Vに追従し、VOUT=V−Vfを満たすように上昇するはずである。ここでVfは第1ダイオードD1の順方向電圧である。ところが、第1出力キャパシタCo1の容量値は十分に大きいため、出力電圧Voutの上昇はほとんど発生せず、一定に保たれる。
【0087】
続いて、補助コンバータに着目する。補助コイルL3の電圧VD1にも、電圧Vと同様のリップルノイズが生ずる。マスク信号MASK2は、図5に示すように、スイッチングトランジスタM1がオフした後のマスク期間ΔTの間、ハイレベルとなり、第2スイッチSW2がオフする。このマスク期間ΔTは、電圧Vにリップルノイズが発生する期間とオーバーラップしている。
【0088】
マスク期間ΔTの間、第2スイッチSW2がオフするため、電圧VD1のリップルノイズは第2出力キャパシタCo2には印加されないため、第2出力キャパシタCo2の容量が小さい場合であっても第2電圧VCCの上昇を抑制することができる。
【0089】
この変形例の利点を説明する。第2スイッチSW2が設けられない場合、あるいは設けられていても通常モードにおいて固定的にオンされる場合、通常モードにおいて補助コイルL3、第2ダイオードD2、第2出力キャパシタCo2が直接接続される。このとき電圧Vのリップルノイズが第2電圧VCCにも現れる。なぜなら第2出力キャパシタCo2の容量値はそれほど大きくないからである。
【0090】
第2電圧VCCにリップルノイズが発生する場合、制御回路10の過電圧保護(OVP)が不要に働くおそれがあるため、過電圧保護のしきい値電圧の設計が難しくなる。あるいは、制御回路10に必要とされる耐圧が高くなるため、コストが高くなる要因となっていた。
【0091】
これに対してこの第2の変形例に係るDC/DCコンバータ100によれば、第2電圧VCCが大きく上昇するという問題を解決できるため、制御回路10の設計が容易となり、あるいはコストを下げることができる。
【0092】
第1スイッチSW1、第2スイッチSW2に関しては、以下の変形例が例示される。
たとえばスイッチSW1、SW2は、トランスファゲートで構成してもよい。また第1スイッチSW1と第3ダイオードD3は入れ替えてもよいし、第2スイッチSW2と第2ダイオードD2は入れ替えてもよい。
【0093】
第2の変形例では、マスク期間ΔTが固定される場合を説明したが、1次コイルL1、2次コイルL2、補助コイルL3に発生する電圧V、V、VD1のいずれかにもとづいて、マスク期間ΔTの長さを動的に制御してもよい。
【0094】
さらに、スイッチングトランジスタM1のオン期間Tonにおいて、補助コイルL3から第2出力キャパシタCo2には電流が流れないため、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2はオフしてもよいし、オンしてもよい。当業者であれば、必要なマスク信号MASKを発生するためのさまざまなスイッチ制御部70を設計することができる。たとえばスイッチ制御部70は、オン信号Son、オフ信号Soff、変調信号Smod、ハイサイド駆動信号SH、ローサイド駆動信号SLのいずれか、あるいはそれらの組み合わせにもとづいて生成できる。また、遅延回路72に代えて、あるいはそれに加えて、ワンショット回路やカウンタ、タイマを利用してもよい。
【0095】
(その他の変形例)
実施の形態では、トランスT1の補助コイルL3が単一の巻き線で構成される場合を説明したが本発明はそれに限定されない。図6は、変形例に係るトランスT1の構成を示す回路図である。
補助コイルL3は、2つのコイルL3a、L3bを含む。一方のコイルL3aの一端が第1端子N3aであり、他方のコイルL3bの一端が第2端子N3bである。この構成では、コイルL3a、L3bそれぞれの巻き数をND1、ND2とすればよい。
つまり補助コイルL3は、2次コイルL2の電圧Vに対して異なる係数を乗じた第1電圧VD1、第2電圧VD2を生成できればよく、他の構成であってもよい。
【0096】
実施の形態では、分圧比Kを切りかえることにより出力電圧VOUTを切りかえる場合を説明したが、それに代えて、基準電圧VREFを切りかえてもよい。
【0097】
実施の形態では、シャントレギュレータ(誤差増幅器)22がトランスT1の2次側に設けられる場合を説明したが、この誤差増幅器は、1次側に設けてもよく、さらには制御回路10に内蔵してもよい。
【0098】
実施の形態では、トランスT1の2次側の負荷(マイコン)がモードを制御される場合を説明したが、本発明はそれに限定されず、1次側に設けられた回路が、モードを制御してもよい。この場合、モードを示す制御信号を、フォトカプラによって1次側から2次側に伝送すればよい。
【0099】
当業者であれば、制御回路10にはさまざまなタイプが存在すること、またその構成が本発明において限定されるものでないことは理解される。
たとえば図3のオン信号生成部54として、コンパレータに代えて、所定のオフ時間Toffを測定するタイマ回路を用いてもよい。エネルギーの放出に要する時間をあらかじめ見積もることにより、オフ時間Toffを固定することも可能である。この場合、エネルギー効率の悪化と引き替えに、回路を簡略化できる。
【0100】
実施の形態では、DC/DCコンバータ100が電子機器1に搭載される場合を説明したが、本発明はそれに限定されず、さまざまな電源装置に適用することができる。たとえばDC/DCコンバータ100は、電子機器に電力を供給するACアダプタにも適用可能である。この場合の電子機器としては、ラップトップ型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、携帯電話端末、CDプレイヤなどが例示されるが、特に限定されない。
【0101】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0102】
P1…入力端子、P2…出力端子、Co1…第1出力キャパシタ、Co2…第2出力キャパシタ、D1…第1ダイオード、D2…第2ダイオード、D3…第3ダイオード、T1…トランス、L1…1次コイル、L2…2次コイル、L3…補助コイル、M1…スイッチングトランジスタ、100…DC/DCコンバータ、10…制御回路、12…第1経路、14…第2経路、16…選択回路、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、20…フィードバック回路、22…シャントレギュレータ、24…フィードバック用フォトカプラ、R1…第1抵抗、R2…第2抵抗、SW3…スイッチ、26…分圧回路、30…制御用フォトカプラ、70…スイッチ制御部、1…電子機器、2…マイコン、4…信号処理回路、102…整流回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次コイル、2次コイルおよび前記1次コイル側に設けられた補助コイルを有するトランスであって、前記補助コイルは、前記2次コイルに生ずる電圧に第1係数を乗じた第1電圧を発生する第1端子と、前記2次コイルに生ずる電圧に前記第1係数より大きな第2係数を乗じた第2電圧を発生する第2端子とを有している、トランスと、
その一端の電位が固定され、その他端が出力端子に接続された第1出力キャパシタと、
前記第1出力キャパシタの他端と前記2次コイルの一端との間に、そのカソードが前記第1出力キャパシタ側となる向きで設けられた第1ダイオードと、
前記1次コイルの経路上に設けられたスイッチングトランジスタと、
その一端の電位が固定された第2出力キャパシタと、
前記第2出力キャパシタの他端と前記補助コイルの前記第1端子との間に、そのカソードが前記第2出力キャパシタ側となる向きで設けられた第2整流素子と、
前記第2出力キャパシタの他端と前記補助コイルの前記第2端子との間に、そのカソードが前記第2出力キャパシタ側となる向きで設けられた第3整流素子と、
前記出力端子の出力電圧が第1レベルとなる第1モードにおいて、前記第2整流素子を含む第1経路を選択し、前記出力電圧が前記第1レベルより低い第2レベルとなる第2モードにおいて、前記第3整流素子を含む第2経路を選択する選択回路と、
その電源端子に前記第2出力キャパシタに生ずる電圧を受け、前記スイッチングトランジスタのオン、オフを制御する制御回路と、
を備えることを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記補助コイルは、巻き線の途中にタップが設けられたひとつのコイルを含み、前記タップが前記第1端子であり、その一端が前記第2端子であることを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記補助コイルは、2つのコイルを含み、一方のコイルの一端が前記第1端子であり、他方のコイルの一端が前記第2端子であることを特徴とする請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記第1、第2モードの切りかえは、本DC/DCコンバータの負荷によって制御され、かつ前記負荷は、モードを示す制御信号を生成可能に構成され、
本DC/DCコンバータは、前記負荷からの前記制御信号を、前記トランスの2次側から1次側に伝送する制御用フォトカプラをさらに備え、
前記選択回路は、前記制御信号にもとづき制御されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記出力電圧と所定の基準電圧との誤差に応じた誤差信号を生成する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器からの前記誤差信号を受け、前記誤差信号に応じたフィードバック信号を前記トランスの2次側から1次側に伝送するフィードバック用フォトカプラと、
をさらに備え、
前記制御回路は、前記フィードバック信号にもとづき、前記スイッチングトランジスタのオン、オフを制御することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記出力電圧を切りかえ可能な分圧比により分圧して前記誤差増幅器に出力する分圧回路をさらに備え、
前記分圧回路の分圧比は、前記第1、第2モードに応じて切りかえられることを特徴とする請求項5に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記分圧回路の分圧比は、本DC/DCコンバータの負荷によって切りかえられ、かつ前記負荷は、モードを示す制御信号を生成可能に構成され、
本DC/DCコンバータは、前記負荷からの前記制御信号を、前記トランスの2次側から1次側に伝送する制御用フォトカプラをさらに備え、
前記選択回路は、前記制御信号にもとづき制御されることを特徴とする請求項6に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項8】
前記選択回路は、前記第2出力キャパシタの他端と前記補助コイルの前記第2端子との間に、前記第3整流素子と直列に設けられた第1スイッチを含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のDC/DCコンバータ。
【請求項9】
前記選択回路は、前記第2出力キャパシタの他端と前記補助コイルの前記第1端子との間に、第2整流素子と直列に設けられた第2スイッチをさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項10】
前記第1スイッチは、そのコレクタが前記第2出力キャパシタ側となるように配置されたPNP型バイポーラトランジスタを含むことを特徴とする請求項8に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項11】
商用交流電圧を直流電圧に変換するAC/DCコンバータと、
前記直流電圧を受け、それを降圧した電圧を負荷に供給する請求項1から10のいずれかに記載のDC/DCコンバータと、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項12】
マイコンと、
その出力電圧を前記マイコンに供給する請求項1から10のいずれかに記載のDC/DCコンバータと、
を備え、
本電子機器の通常状態において、前記DC/DCコンバータは、前記第1レベルの前記出力電圧を生成し、
本電子機器のスタンバイ状態において、前記DC/DCコンバータは、前記第1レベルより低い前記第2レベルの出力電圧を生成することを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−130122(P2012−130122A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278084(P2010−278084)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】