説明

DC/DCコンバータ

【課題】
負荷に応じて定電流又は定電圧出力となるDC/DCコンバータを提供する。
【解決手段】
パルス幅変調器によって出力電圧のフィードバック制御を行うスイッチング方式DC/DCコンバータに、該DC/DCコンバータから負荷に供給される出力電流に応じて、出力電流が規定値以上になると出力電圧を下げ、出力電流が規定値以下になると出力電圧を高くする手段を付加する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、入力直流電圧を変圧して出力するDC/DCコンバータに関し、特にインダクタにエネルギーを蓄積して電圧変換を行うスイッチング方式非絶縁型DC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
インダクタに誘導エネルギーを蓄えて電圧変換を行う非絶縁型DC/DCコンバータには昇圧型、降圧型、昇降圧型がある。
【0003】
昇圧型DC/DCコンバータの従来の一般的構成を図5(a)に示す。図5において、51は昇圧型DC/DCコンバータ、52は直流電源、53は負荷である。DC/DCコンバータ51は、パルス幅変調器511、(以下、PWM:Pulse Width Modulator)、トランジスタ512、インダクタ513、逆流防止ダイオード514、分圧用抵抗515と516、平滑用キャパシタ517から成る。
【0004】
PWM511はスイッチングコントローラ、あるいはDC/DCコントローラとも呼ばれる。その内部構成を図5(b)に示す。図5(b)において、51aは誤差増幅器、51bは基準電圧源、51cは三角波発生器、51dはコンパレータ、51eはANDゲートである。
【0005】
図5(a)のDC/DCコンバータ51は以下のように動作する。先ず、抵抗515と516によって分圧された出力電圧をPWM511内部の基準電圧源51bの電圧(以下、基準電圧Vr)と比較する。もしFB端子の電圧が基準電圧Vrよりも低い場合にはトランジスタ512を駆動するパルス幅を広げ、より多くのエネルギーをインダクタ513に蓄える。次に、インダクタ513に蓄えられたエネルギーはトランジスタ512がオフの期間にダイオード514を介して出力に送られ、出力電圧を高くする。
【0006】
逆に、PWM511のFB端子の電圧が基準電圧Vrよりも高い場合は、トランジスタ512を駆動するパルス幅は狭くなり、インダクタ513に蓄えられるエネルギーは少なくなる。従って出力に送られるエネルギーも減り、出力電圧は低下する。
【0007】
上述の動作説明から明らかなように、図5(a)のDC/DCコンバータ51は入力直流電源52の電圧や出力に接続される負荷53には関係なく、出力電圧Voが、[数1]:
【数1】

となるように出力をフィードバック制御する。ここで、R(515)とR(516)それぞれ抵抗515と516の抵抗値、VrはPWM511内部の基準電圧である。
【0008】
フィードバック制御されたDC/DCコンバータは入力電圧電源や負荷の値如何に拘わらず出力電圧を一定に保つ動作をするので、スイッチングレギュレータとも呼ばれる。このレギュレータはシリーズレギュレータよりもはるかに変換効率が高いので、直流電圧を変圧するのに広く用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
DC/DCコンバータは電力変換効率が高いため、直流電源の電圧を二次電池を充電するのにふさわしい電圧に変換する手段として好適である。しかしながら、従来の定電圧出力DC/DCコンバータでは、充電される二次電池の電圧が低い場合には極めて大きな充電電流が流れ、二次電池の寿命を損ね、場合によっては発熱による破損を惹き起こす。又、DC/DCコンバータも発熱し、焼損する場合もある。
【0010】
上記問題を避けるため、二次電池の充電方式として、充電初期は定電流(CC:Constant Current)で、充電が進行した後は定電圧(CV:Constant Voltage)で充電するCC/CV方式が推奨されている。
【0011】
電圧変換手段としてDC/DCコンバータを用いてCC/CV充電を行うには2つの方法がある。1つは、従来の定電圧出力DC/DCコンバータにCC/CV充電回路を接続する方法である。理に忠実なこの方法はコストが高く、また、CC回路の電力損失が大きくて充電効率が低い等の問題がある。
【0012】
他の1つは、DC/DCコンバータ自体を定電圧出力ではなく、負荷に応じてCC/CV出力とする方法である。その試みが[特許文献1]と[特許文献2]に開陳されている。いずれの試みも出力電流と出力電圧が重み付け加算された電圧を帰還する方法であり、出力電流の増大に伴って出力電圧が直線的に下降する線型特性のためCC/CV特性とは程遠い。
【0013】
【特許文献1】特開2003−237427号公報
【特許文献2】特開2007−183714号公報
【0014】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、出力電流に対して出力電圧を非線型に変化させることによってCC/CV出力特性のDC/DCコンバータを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
DC/DCコンバータをCC/CV出力特性とするためには出力電流を検出し、出力電流がある規定値以上となった場合には定電流出力とし、規定電流以下では定電圧出力とすればよい。
【0016】
請求項1に係る発明は、電流によって抵抗値が非線型に変化する電流制御非線型抵抗を用いて上記CC/CV出力特性のDC/DCコンバータを具現するものであり、その様式図を図1に示す。
図1において、11はCC/CV出力特性のDC/DCコンバータ、12は直流電源、13は負荷である。DC/DCコンバータ11の基本構成と動作は図5(a)と同じであるが、図5(a)の抵抗515の代わりに電流制御非線型抵抗115が用いられている。
【0017】
いま、電流制御非線型抵抗115の抵抗値R(115)を、[数2]:
【数2】

とすると、出力電流Iがしきい電流値Ithよりも低い場合には、出力電圧Vは、[数3]:
【数3】

となる。ここで、VrはPWM111の内部基準電圧である。
【0018】
一方、出力電流Iがしきい電流Ithよりも大きい場合には、出力電圧Vは、[数4]:
【数4】

となる。
【0019】
ここで、R(I,L)>R(I,M)・・・・(5)
とすれば、出力電流Iがしきい電流Ithよりも大きくなると、出力電圧Vが低下し、出力電流Iを下げる。逆に、出力電流Iがしきい電流Ithよりも低いと出力電圧Vが高くなり、出力電流を高くする。従って、I>Ithとなる負荷の場合にはI=IthとなるようにDC/DCコンバータは定電流出力動作をする。
【0020】
一方、負荷が軽くてI<Ithの場合は、DC/DCコンバータの出力電圧Vは式(4)の定電圧出力となる。
【0021】
請求項2に係る発明は、出力電流に応じてオン・オフする電流スイッチを用いてCC/CV出力特性のDC/DCコンバータを具現するために成されたものであり、模式図を図2に示す。
【0022】
図2において、21はDC/DCコンバータ、22は直流電圧源、23は負荷である。DC/DCコンバータ21はPWM211、トランジスタ212、インダクタ213、逆流防止ダイオード214、分圧抵抗215と216、平滑キャパシタ217、電流制御スイッチ218、プルアップ抵抗219で構成されている。電流制御スイッチ218は電流検出端子18aと18b、出力端子18cを備へ、出力電流Iがしきい電流を越えると電流検出端子81cの出力電圧を0(接地)にし、出力電流Iがしきい電流以下の場合には出力端子を開放にする。
【0023】
PWM211の内部構成は図5(b)と同じであり、FB端子の電圧がPWM211内部の基礎電圧Vrと一致するように、トランジスタ212の駆動パルスのパルス幅を制御する。
【0024】
出力電流Ioがしきい電流Ithよりも低い場合には、PWM211のEN端子は“H”となり、DC/DCコンバータ21は正常の動作をし、出力電圧Vは、[数6]:
【数6】

となるように電圧制御して、定電圧を出力する。ここで、R(215)とR(216)はそれぞれ抵抗215と216の抵抗値、VrはPWM211の内部基準電圧である。
【0025】
一方、出力電流Iがしきい電流Ithよりも大きい場合は、電流制御スイッチ218の出力は0Vとなり、EN端子が“L”となるのでPWM211は動作を停止する。この時のDC/DCコンバータ21の出力電圧Vは、[数7]:
【数7】

となる。ここで、VINは直流電源22の電圧、Vはダイオード214の順方向電圧降下である。
【0026】
DC/DCコンバータ21は昇圧型であるので、式(7)の電圧は式(6)の電圧よりも低い。従って、出力電流Ioがしきい電流Ithよりも大きくなると出力電圧Voが下がり、出力電流Iを下げる。出力電流Iがしきい電流Ithよりも下がると、今度はDC/DCコンバータ21は正常の動作をして出力電圧Vを高くし、これによって出力電流Iを大きくする。この一連の動作を高速で繰り返すことによって、DC/DCコンバータ21は定電流を出力する。
【0027】
なお、本発明手段は降圧型や昇降圧型DC/DCコンバータにも適応できることは明らかである。
【発明の効果】
【0028】
以上述べたように、本発明によれば出力電流によって自動的にDC/DCコンバータを定電流又は定電圧動作させることができるので、本発明は二次電池の高速充電回路に極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、具体的な回路図によって本発明の実施形態を説明する。
なお、図1〜図5において、符号の最初の数字は図番、2番目の数字はブロック番号を示す、共通するブロックには同じ数字を符し、重複する説明を避ける。
【第1実施形態】
【0030】
図3は本発明の第1の実施形態であって、電流制御非線型抵抗の一つの具体的な構成を示している。315がその電流制御非線型抵抗であり、電流検出抵抗315a、分圧抵抗315bと315c、及びトランジスタ315dから成る。
【0031】
出力電流Iが、[数8]:
【数8】

の場合は、トランジスタ315dはオフとなっている。ここで、R(315a)は抵抗315aの抵抗値、VBEはトランジスタ315dのベース・エミッタ間のしきい電圧で通常0.55〜0.6Vである。
【0032】
トランジスタ315dがオフの状態での出力電圧Vは、[数9]
【数9】

となる。式(9)から明らかのように、DC/DCコンバータ31は内部抵抗がR(315a)の定電圧源と見做すことができる。
【0033】
一方、出力電流Ioが、[数10]:
【数10】

の場合は、トランジスタ315dはオンとなり、抵抗315bを短絡する。この時、DC/DCコンバータ31の出力電圧Voは、[数11]:
【数11】

となり、式(10)の電圧よりも低くなる。
【0034】
ここで、しきい電流Ithを、[数12]:
【数12】

とすると、出力電流IがIthよりも大きくなるとDC/DCコンバータ31の出力電圧Vが低下するので出力電流Iも低くなる。出力電流が低下してしきい電流Ith以下になるとDC/DCコンバータ312の出力電圧Vは高くなり、出力電流Iを大きくする。この一連の動作を高速で繰り返すので、出力電流Iはしきい電流Ithとなる。即ち、DC/DCコンバータ31は定電流源となる。
【0035】
図4は本発明の第2の実施形態であり、電流制御スイッチの一つの具体的な構成を示している。図4において、418が電流制御スイッチであり、電流制御スイッチ418は、電流検出抵抗418c、基準電圧源418b、コンパレータ418aから成る。
【0036】
DC/Dcコンバータ41は、出力電流Ioが小さくて抵抗418cの端子間電圧が基準電圧源418bの電圧よりも低い場合はPWM411のEN端子電圧が“H”となるので通常の昇圧動作を行う。この正常動作状態ではDC/DCコンバータ41は抵抗418cを内部抵抗とする電圧源と見做すことができる。
【0037】
一方、出力電流Iがしきい電流Ic、[数13]:
【数13】

よりも大きい場合には、これまでの説明から明らかのように、DC/DCコンバータは出力電流がIcの定電流源となる。ここで、Vbは基準電圧源418bの電圧、R(418c)は抵抗418cの抵抗値である。
【0038】
以上述べた実施形態の電流制御非線型抵抗や電流制御スイッチを用いれば、昇圧型のみならず、降圧型や昇降圧型DC/DCコンバータも定電流/定電圧出力とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】電流制御非線型抵抗を用いるDC/DCコンバータの構成。
【図2】電流制御スイッチを用いるDC/DCコンバータの構成。
【図3】本発明の第1の実施形態の回路図。
【図4】本発明の第2の実施形態の回路図。
【図5】従来のDC/DCコンバータの回路図(a)とパルス幅変調器(PWM)の内部構成(b)。
【符号の説明】
11、21、31、41、51:DC/DCコンバータ
12、22、32、42、52:直流電源
13、23、33、43、53:負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧を分圧し、その分圧出力を基準電圧と比較してパルス幅変調を行うことによって該出力電圧を一定に保つスイッチング方式DC/DCコンバータにおいて、
該DC/DCコンバータから負荷に供給される電流に応じて抵抗値が非線型に変化する電流制御非線型抵抗を該DC/DCコンバータの出力分圧回路のハイサイド側に設けたことを特徴とするDC/DCコンバータ。
【請求項2】
パルス幅変調器をフィードバック制御に用いて定電圧を出力するスイッチング方式DC/DCコンバータにおいて、
該DC/DCコンバータから負荷に流れる負荷電流を検出し、負荷電流が規定電流以上になると該DC/DCコンバータの動作を停止する手段を設けたことを特徴とするDC/DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−95513(P2012−95513A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252292(P2010−252292)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(505283393)電子システムデザイン株式会社 (21)
【Fターム(参考)】