説明

DNAマイクロアレイの生産のための再使用可能な基質

【課題】生体高分子アレイの電気化学的合成のための方法を提供する。
【解決手段】a)電極アレイを提供する工程、b)多孔膜を提供する工程、c)電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含むモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬を提供する工程、d)前記多孔膜と前記電極アレイを物理的に接触させる工程、e)前記電極アレイの選択電極に電位を適用し、結合部位の保護基を脱保護する工程、及び前記多孔膜及び前記電極アレイを前記液体試薬と物理的に接触させ、モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが電気化学的に脱保護された結合部位に結合する工程、ならびにf)生体高分子アレイを取り出す工程を含む、多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む生体高分子アレイの電気化学的生産のための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学的工程及び多孔膜を含む生体高分子アレイの生産のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固相上での核酸及びペプチドの合成はこの20年の間に確立された方法となっている。最も普及している核酸合成の方法は、個々のヌクレオチド構築ブロックを3’又は5’方向に反復縮合することによってオリゴヌクレオチド鎖を作り上げる、例えば非特許文献1に記載のホスホルアミダイト法である。3つの反応性ヌクレオチド基:リボース糖の5’ヒドロキシル基、核酸塩基アデニン、グアニン及びシトシンのアミノ基(チミンは保護基を必要としない)、並びにヌクレオチド3’リン酸残基のリン酸基、を保護するために様々な直交保護基が使用される。例えば、非特許文献2及び非特許文献3によれば、4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル(DMT)基が5’ヒドロキシルのための標準保護基、2−シアノエチル保護基がリン酸残基のための標準、及び様々なアシル基が核酸塩基のアミノ官能基のための標準となっている。次にこれらの保護基は、合成中又は合成後のいずれかに、様々な条件下で開裂させられる。DMT基は、次のホスホルアミダイトが結合できるヒドロキシル基を生成するために合成中に開裂除去される。指定された他の保護基は、いかなる副反応又は副産物も防ぐために合成の終了時まで残存する。合成の終了時に、完成したオリゴヌクレオチドを塩基処理によって脱保護し、それによって2−シアノエチル保護基及びアシル保護基を開裂させる。
【0003】
本質的には、バイオチップを生産する2つの方法、すなわちオリゴヌクレオチドプローブのオフチップ及びオンチップ合成がある。オフチップ合成に関しては、前述した標準試薬を用いて市販のシンセイサイザーでオリゴヌクレオチドを生産し、その後チップ上に固定する。オンチップ合成については、やはり前述した標準試薬を使用してオリゴヌクレオチドをチップ上で直接生産する。オフチップ合成では、HPLC又は質量分析法などの分析方法によってオリゴヌクレオチドの品質を分析することができ、また必要に応じて、精製によって品質を改善することができる。オンチップ合成の場合は、限られた品質管理しか適用できず、精製は全く不可能である。オンチップ合成についての品質管理は、一般にオリゴヌクレオチドの末端の、その後検出し、定量することができる(主として蛍光)標識の共有結合によってのみ可能である。
【0004】
技術水準は既に、空間的に指定可能な(addressable)電気化学的オンチップ合成によるアレイの製造を述べている。CIS BIO Internationalは、電子伝導性コポリマー及び電気化学的カップリング手法を用いることによってアレイを合成する方法を記述している(特許文献1)。このアレイは1つ以上の電極を備えた装置から成り、電極の表面は前記伝導性コポリマーで被覆される。それ故、伝導性コポリマーと合成されたポリマーは直接電極に結合する。合成後、伝導性コポリマーを、結合しているヌクレオチドポリマーと共にハイブリダイゼーション反応及びその検出のために使用する。
【0005】
Montgomeryは、少なくとも1つの電極を含む基質上の特定位置へのモノマーの電気化学的配置を用いたポリマーの製造のための合成方法を述べている(特許文献2)。基質はその表面に、少なくとも1つの保護された化学官能基を担持する少なくとも1つの分子に近接した少なくとも1つの電極を提供する。Montgomeryはまた、特許文献3において基質上の特定位置で別々のポリマー又は核酸の多様な配列を製造するための電気化学的固相合成を述べている。その特許は、少なくとも1つの分子に近接した少なくとも1つの電極をその表面に有する基質上の特定位置での物質の電気化学的配置のための方法を特許請求しており、ここで、前記分子は前記基質の表面に直接結合しているか又はリンカー分子を介して前記基質の表面に結合しているか又は前記基質をおおう物質の層に結合している。
【0006】
多数のポリマーを合成するためのもう1つの試みがSouthern(特許文献4)によって開示されている。Southernは、表面を電気化学的に修飾することによって選択部位でポリマーを合成するための方法を述べており、この方法は、表面をおおう電解質及び前記表面に隣接する電極のアレイを含む。合成方法の各々の工程において、電極のアレイを、表面を修飾するために機械的に表面に隣接して配置する。次に電極のアレイを機械的に除去し、その後表面を選択モノマーと接触させる。その後の反応のために、電極のアレイを再び機械的に表面に隣接して配置する。この方法は、必要な正確さを提供しながら、電極を繰り返し表面に位置づけるために多大の制御を必要とする。
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0 691 978号
【特許文献2】国際公開第WO 98/01221号公報
【特許文献3】米国特許第6,093,302号
【特許文献4】国際公開第WO 93/22480号公報
【非特許文献1】Beaucage, S.L.およびCaruthers, M.H., Tetrahedron Lett. 22 (1981) 1859−1862
【非特許文献2】Buchi, H.およびKhorana, H.G., J. Mol. Biol. 72(1972), 251−288
【非特許文献3】Souveaux, Methods in Molecular Biology, 第26巻、1章より、Protocol for Oligonucleoside Conjugates, S. Agrawal(編)、Human Press Inc., Totowa, N. J.(1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術に鑑みて、本発明は、それによって生産後に電気装置と生体高分子アレイが分離される、支持体上の生体高分子アレイの電気化学的合成のための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明の要旨は以下である:
[1] 以下の工程:
a)選択的に指定可能な電極を含む電極アレイを提供する工程、
b)電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む多孔膜を提供する工程、
c)モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬を提供する工程であって、ここで該生体高分子構築ブロックは任意に電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む、工程、
d)前記多孔膜と前記電極アレイを物理的に接触させる工程、
e)−前記電極アレイの少なくとも1つの選択電極に電位を適用し、それによって電気化学的反応が、前記選択電極上に配置された、前記適用電位で電気化学的に不安定である電気化学的に不安定な保護基を含む結合部位の保護基を脱保護する工程、及び
−前記多孔膜及び前記電極アレイを前記液体試薬と物理的に接触させ、それによって前記液体試薬のモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが電気化学的に脱保護された結合部位に結合する工程
を含む、少なくとも1つの生産サイクルを実施する工程、ならびに
f)前記電極アレイから、前記多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む、生産された生体高分子アレイを取り出す工程
を含む、多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む生体高分子アレイの電気化学的生産のための方法;
[2] 工程e)において前記液体試薬の前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが、すべての生産サイクルで前記多孔膜の電気化学的に脱保護された結合部位に結合する、[1]記載の方法;
[3] 工程e)において前記液体試薬の前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが、前記多孔膜の電気化学的に脱保護された結合部位及び/又は多孔膜に結合した前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックの電気化学的に脱保護された結合部位に結合する、[1]記載の方法;
[4] 工程e)の生産サイクルで電位を適用するときに、前記多孔膜と前記電極アレイを液体溶液と物理的に接触させる、[1]〜[3]いずれか記載の方法;
[5] 工程e)の2つの連続する生産サイクルで、異なる群の電極を選択する及び/又は異なる電位を適用する及び/又は異なる液体試薬を提供する、[1]〜[4]いずれか記載の方法;
[6] 前記保護基が、適用電位によって電極表面に生成される電気化学的試薬によって脱保護される、[1]〜[5]いずれか記載の方法;
[7] 前記保護基が、前記電位を適用することによって開裂される、[1]〜[5]いずれか記載の方法;
[8] 更に、多孔膜に結合した生体高分子構築ブロックの保護基に結合した検出可能標識を検出する付加的な工程を含む、[1]〜[7]いずれか記載の方法;
[9] 前記多孔膜が、多孔性無機材料、好ましくは多孔質ガラス材料、多孔性プラスチック材料、多孔性ケイ素材料又は他の多孔性ポリマー又は多孔性コポリマー材料を含む、[1]〜[8]いずれか記載の方法;
[10] 前記多孔膜が、多孔性有機材料、好ましくはセルロース又はニトロセルロースを含む、[1]〜[8]いずれか記載の方法;
[11] 前記生体高分子構築ブロックが核酸構築ブロックである、[1]〜[10]いずれか記載の方法;
[12] 前記核酸構築ブロックの保護基が、酸不安定性保護基、好ましくはピクシル基(pixyl groups)又はトリチル基、最も好ましくは4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル(「DMT」)又は4−モノメトキシトリフェニルメチル(MMT)、又は塩基不安定性保護基、好ましくはレブリニル基又はシリル基、最も好ましくはtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)又はtert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)である、[11]記載の方法;
[13] 前記生体高分子構築ブロックがペプチド構築ブロックである、[1]〜[10]いずれか記載の方法;
[14] 前記ペプチド構築ブロックの前記保護基が、塩基不安定性保護基、好ましくはフルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)又は酸不安定性保護基、好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)である、[13]記載の方法;
[15] 多孔膜、および[1]〜[14]いずれか記載の方法によって生産されるモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む、生体高分子アレイ;
[16] 前記生体高分子構築ブロックは核酸構築ブロック、好ましくはDNA、RNA又はPNA構築ブロックである、[15]記載の生体高分子アレイ;
[17] 前記生体高分子構築ブロックはペプチド構築ブロック、好ましくはアミノ酸構築ブロックである、[15]記載の生体高分子アレイ;
[18] 生体分子を含む試料の分析のための、[15]〜[17]いずれか記載の生体高分子アレイの使用;
[19] 前記生体分子は核酸分子又はタンパク質である、[18]記載の使用;
[20] 試料の前記分析が、蛍光手法、化学発光手法、電気化学的手法又は質量分析手法に基づく分析である、[18]〜[19]いずれか記載の使用;
[21] 生体高分子アレイの結合生体高分子が、生体分子を含む試料の前記分析の前に、前記生体高分子アレイから開裂される、[18]〜[20]いずれか記載の使用;ならびに
[22] 電極アレイ、多孔膜、電位を適用するための装置及び試薬を含む、[1]〜[14]いずれか記載の方法を実施するためのキット。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、それによって生産後に電気装置と生体高分子アレイが分離される、支持体上の生体高分子アレイの電気化学的合成のための方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の簡潔な説明
先行技術に鑑みて、本発明は、それによって生産後に電気装置と生体高分子アレイが分離される、支持体上の生体高分子アレイの電気化学的合成のための方法に関する。
【0012】
本発明の1つの主題は、以下の工程:
a)選択的に指定可能な電極を含む電極アレイを提供すること、
b)電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む多孔膜を提供すること、
c)任意に、電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む、モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬を提供すること、
d)前記多孔膜と前記電極アレイを物理的に接触させること、
e)−前記電極アレイの少なくとも1つの選択電極に電位を適用し、それによって電気化学的反応が、前記選択電極上に配置された、前記適用電位で電気化学的に不安定である電気化学的に不安定な保護基を含む結合部位の保護基を脱保護すること、及び
−前記多孔膜及び前記電極アレイを前記液体試薬と物理的に接触させ、それによって前記液体試薬のモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが電気化学的に脱保護された結合部位に結合すること
を含む、少なくとも1つの生産サイクルを実施すること、ならびに
f)前記電極アレイから、前記多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む、生産された生体高分子アレイを取り出すこと
を含む、多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む生体高分子アレイの電気化学的生産のための方法である。
【0013】
本発明の選択的実施形態では、工程a)〜c)をこれらの工程の任意の他の可能な連続順序で実施する。
【0014】
一般に、本発明は、生体高分子アレイの製造のための多孔膜の使用に関する。本発明において使用する「生体高分子」という用語は、特に、DNA、RNAのような核酸またはペプチド核酸(PNA)もしくはロックされた核酸(LNA)のような核酸類似体あるいはそれらの組み合わせに関する。しかし、「生体高分子」という用語はまた、ペプチド及びペプチド類似体並びに炭水化物などの他の生体高分子種又はそれらの任意の組み合わせに関する。「生体高分子アレイ」という用語は、本発明において、多数の異なる生体高分子種が空間的に分配された様式で固体支持体に結合していることを指し示すために使用される。
【0015】
本発明全体を通じて生体高分子アレイの支持体は多孔膜であるが、前記多孔膜の材料は、ガラス、ガラス繊維、プラスチック、金属酸化物及びケイ素誘導体などの無機材料又はセルロースなどの有機材料から選択される。一般に、この多孔性材料の表面が前記生体高分子のための結合部位を含む限り又はこの多孔性材料の表面が前記生体高分子のための結合部位で官能基化されうる限り、すべての多孔性材料が本発明の範囲内で可能である。
【0016】
本発明の方法は、多孔膜に結合した多数の異なる生体高分子種を提供するが、前記生体高分子は、モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックで構成される。これらの生体高分子構築ブロックは、例えば核酸分子の場合はヌクレオチド、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド、アミノ酸の場合はペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチドである。ポリマー構築ブロックは、任意に生体高分子種の合成のために必要な付加的成分を含む液体試薬として提供される。好ましくは、前記ポリマー構築ブロックは水性緩衝液中又は有機溶媒中で提供される。
【0017】
多数の生産サイクルで固体支持体上の生体高分子アレイを生産するための2つの主要な手法がある。第一の手法では、完全な生体高分子をオフチップで合成し、その後単一工程で多孔膜上の所望スポットに結合する。これを、本発明全体を通じて結合サイクルと称する。異なる生体高分子種を有する空間的に分配されたスポットのアレイを実現するためには、各生体高分子種に関して別々の結合サイクルを実施しなければならない。第二の手法はオンチップ合成であり、各々の生体高分子をモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから1以上の工程で多孔膜上で合成する。この手順の各工程を、本発明全体を通じて合成サイクルと称する。
【0018】
多孔膜上での生体高分子種の合成又は結合は、本発明全体を通じて電気化学的手法によって実施され、生体高分子アレイの電気化学的生産と称する。生体高分子アレイの電気化学的生産を実現するために、1以上の合成サイクルの場合は、多孔膜並びにポリマー構築ブロックは保護基によって保護された結合部位を有していなければならないが、これらの保護基は電気化学的に不安定である。生体高分子アレイの電気化学的生産に関して、それぞれの合成又は結合サイクルは、電位を多孔膜に適用して、適用電位で電気化学的に不安定であり、多孔膜の一定部分及び/又は既に多孔膜に結合している特定のポリマー構築ブロックに位置する結合部位のそれらの保護基を電気化学的に脱保護する、という少なくとも1つの状況を含む。保護基の脱保護は、保護基全体を開裂することにより、保護基の一部を開裂することによって、又は保護基内の立体配座変化によって起こりうる。電気化学的に不安定な保護基の電気化学的脱保護は、適用電位による直接脱保護並びに適用電位によって電極アレイの特定電極の表面に生成される媒介物質による脱保護を含む。特定の保護基の脱保護後に、モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを前記の脱保護した結合部位に結合することができる。
【0019】
電極アレイは、固体支持体及び1以上の個別電極の配列を含む。適切な電気伝導率を有する限り、及び一定の電位範囲にわたって電気化学的に安定である、すなわち金属材料又は半導体材料である限り、いかなる材料もこれらの個別電極に使用できる。個別電極の固体支持体に関しては、個別電極間の短絡を回避する特性を有する限り、いかなる材料も使用できる。
【0020】
個別電極の配列は、各電極が選択的に指定可能な電極であるように設計される。それ故、個別電極の配列の設計は、電位によって一定数の電極をグループとして同時に指定するか又はそれ自体の上にある各電極を指定する選択を提供する。
【0021】
前記電極アレイの各電極は多孔膜上の一定領域を規定し、その領域では、前記電極での適用電位によって電気化学的反応が起こりうる。それ故、各電極は多孔膜上の個別スポットに対応し、各々の個別スポットは、生体高分子アレイの電気化学的生産後に、生産方法によって規定される一定の生体高分子種を含む。
【0022】
生産サイクルのために、電極アレイ、多孔膜及び液体試薬を物理的に接触させる。電極アレイと多孔膜は、密接に且つ規定された側面整列で互いに可逆的に結合する。電極アレイと多孔膜の層間は、適用電位又は媒介物質が保護基に到達して脱保護を遂行することを保証するように最適化しなければならない。結合又は合成サイクルを実施するときは、電極アレイと多孔膜の組合せを、例えばフローチェンバーのような液体試薬に液浸する。
【0023】
本発明のもう1つの局面は、多孔膜及び本発明に従った方法によって生産されるモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む生体高分子アレイである。
【0024】
本発明に従った生体高分子アレイは多数の生産サイクルで生産されるが、あらかじめ合成した生体高分子種を多数の電気化学的結合サイクルで多孔膜上の所望スポットに結合するか又は各々の生体高分子種をモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから多数の電気化学的合成サイクルで多孔膜の所望スポットで合成する。あるいは、生体高分子アレイの電気化学的生産のために結合サイクルと合成サイクルの組合せを使用する。
【0025】
本発明のさらにもう1つの局面は、生体分子を含む試料の分析のための、本発明に従った生体高分子アレイの使用に関する。
【0026】
本発明全体を通じて生体分子は、例えば核酸分子又はポリペプチドである。生体高分子アレイが、例えば多数の異なるポリヌクレオチドプローブを含む場合、前記生体高分子アレイを使用して、プローブと標的の間の特異的ハイブリダイゼーション反応を検出することによって溶液中の対応する相補的ポリヌクレオチド標的の存在を確認することができる。そのようなハイブリダイゼーション反応を検出するための可能な手法は当業者に既知であり、例えば蛍光手法、化学発光手法、電気化学的手法又は質量分析手法がある。加えて、生産された生体高分子を、生体高分子アレイの電気化学的生産後に開裂することができ、それ故、生体高分子アレイの生産は、少量の生体高分子を制御された様式で合成するための方法である。
【0027】
本発明はまた、電極アレイ、多孔膜、電位を適用するための装置及び本発明に従った方法を実施するための試薬を含むキットに関する。
【0028】
本発明に従ったキットは、多孔膜上で生体高分子アレイの電気化学的生産を実施するために必要なすべての成分を含む。多孔膜自体に加えて、多数の選択的に指定可能な電極を備えた電極アレイ、モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬、及び選択電極又は選択電極群に電位を適用するための装置が、本発明に従った方法を実施するために必須である。電位を適用するためのそのような装置は、例えば当業者に既知の標準的電位差計である。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明の1つの主題は、以下の工程:
a)選択的に指定可能な電極を含む電極アレイを提供すること、
b)電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む多孔膜を提供すること、
c)任意に電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む、モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬を提供すること、
d)前記多孔膜と前記電極アレイを物理的に接触させること、
e)−前記電極アレイの少なくとも1つの選択電極に電位を適用し、それによって電気化学的反応が、前記選択電極上に配置された、前記適用電位で電気化学的に不安定である電気化学的に不安定な保護基を含む結合部位の保護基を脱保護すること、及び
−前記多孔膜及び前記電極アレイを前記液体試薬と物理的に接触させ、それによって前記液体試薬のモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが電気化学的に脱保護された結合部位に結合すること
を含む、少なくとも1つの生産サイクルを実施すること、ならびに
f)前記多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む、生産された生体高分子アレイを前記電極アレイから取り出すこと
を含む、多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む、生体高分子アレイの電気化学的生産のための方法である。
【0030】
多数の電気化学的生産サイクルにより、生体高分子アレイを多孔膜上で生産する。生体高分子としての核酸又はアミノ酸に関しては、オフチップ並びにオンチップ合成を実施するための可能な手順は当業者に既知である。例えば核酸は、当技術分野で公知のように(Beaucage, S.L.およびCaruthers, M.H., Tetrahedron Lett. 22 (1981) 1859−1862)ホスホルアミダイト又はホスホネート構築ブロックから合成しうる。
【0031】
本発明に従った好ましい方法では、工程e)において前記液体試薬の前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックは、すべての生産サイクルで前記多孔膜の電気化学的に脱保護された結合部位に結合する。
【0032】
この好ましい方法では、短いオリゴマー構築ブロックから長いポリマー構築ブロックまでにわたる任意の長さのオフチップ合成生体高分子を多孔膜に結合する。それ故、多孔膜の各々の結合部位では、多孔膜の前記結合部位の脱保護及び所望生体高分子構築ブロックの連続的結合を含む1つの結合サイクルだけが実施される。各々が異なる生体高分子内容物を有するスポットのアレイを作製するために、各々の異なる生体高分子について別々の結合サイクルを実施しなければならないが、各々の結合サイクルにおいて、好ましくは異なる選択電極の上に位置する、他の結合部位は脱保護されなければならない。本発明のこの好ましい方法では、1個のオリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックだけを多孔膜の各結合部位に結合するので、この実施形態のためには前記生体高分子構築ブロックに電気化学的に不安定な保護基を与える必要はない。それにもかかわらず、この実施形態においても、生体高分子構築ブロックの副反応を防ぐために生体高分子構築ブロックの結合部位を保護することが必要な場合もあるが、ここでは保護基は電気化学的に不安定である必要はない。
【0033】
本発明に従ったもう1つの好ましい方法では、工程e)において前記液体試薬の前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックは、前記多孔膜の電気化学的に脱保護された結合部位及び/又は多孔膜に結合した前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックの電気化学的に脱保護された結合部位に結合する。
【0034】
オンチップ合成の場合は、合成は空間指定合成であるが、異なる生体高分子種を支持体から離れた異なる場所で合成する。一般に、これらの方法は、通常は前記結合部位の前記保護基を開裂し、さらなる生体高分子構築ブロックを結合する選択を提供するためにそれ自体が保護された結合部位を有するモノマー、オリゴマー又はポリマー構築ブロックを前記脱保護結合部位に結合することによる、支持体上の保護された結合部位の脱保護を含む。保護基の空間的脱保護に基づく空間的に指定された(spatial directed)生体高分子合成のための方法は、光依存性合成、電気化学的合成及びマイクロリソグラフィーを含む。保護基なしで空間指定合成を実施するための他の可能性は、ポリマー構築ブロックを含む液体試薬を、インクジェットピン印刷、マイクロチャネル沈着及び物理的障壁による限局によって支持体の選択部分に位置づけることを含む。
【0035】
この実施形態では、多孔膜及び/又は生体高分子構築ブロックの脱保護結合部位への一定のモノマー、オリゴマー又はポリマー構築ブロックのそれぞれの結合を、本発明全体を通じて合成サイクルと称する。1つの合成サイクルでは、一定の種類の前記モノマー、オリゴマー又はポリマー構築ブロックを、多孔膜の脱保護結合部位及び既に多孔膜に結合しているポリマー構築ブロックの脱保護結合部位に平行して結合することができるが、該脱保護結合部位は1以上の電極の上に位置しうる。最初のモノマー、オリゴマー又はポリマー構築ブロックが多孔膜のすべての結合部位に結合した後、さらなるすべての合成サイクルにおいて、そのポリマー構築ブロックは、既に多孔膜に結合しているポリマー構築ブロックの脱保護結合部位にだけ結合する。
【0036】
一定数の生産サイクル後、電気化学的に生産された生体高分子アレイを電極アレイから取り出す。生体高分子アレイの生産は、結合サイクルだけ又は合成サイクルだけ又は両方の種類のサイクルを含みうる。例えば特定の生体高分子は、オフチップ合成してアレイの特定のスポットに結合し、アレイの他のスポットの他の生体高分子は、特定数の合成サイクルでオンチップ合成する。
【0037】
本発明に従った方法は、生産された生体高分子アレイを電極アレイから取り出す可能性を提供するので、概して高価な電極アレイを数倍使用することができる。本発明の好ましい実施形態では、電極アレイを、2以上の生体高分子アレイ、より好ましくは20以上の生体高分子アレイ、最も好ましくは100以上の生体高分子アレイの生産ために使用する。
【0038】
本発明に従ったもう1つの好ましい方法では、工程e)の生産サイクルで電位を適用するときに、前記多孔膜と前記電極アレイを液体溶液と物理的に接触させる。
【0039】
物理的に接触している電極アレイと多孔膜を、保護結合部位の脱保護の間、液体溶液に液浸する。本発明の1つの実施形態では、この液体溶液は、一定の塩濃度を有し、任意に付加的な成分を有する水溶液である。本発明のもう1つの実施形態では、液体溶液は、有機溶媒及び任意に酸化還元対などの付加的な成分を含む。両方の場合に、液体溶液は、電極アレイの電極と多孔膜及び/又はポリマー構築ブロックの結合部位の保護基との間の連結体(connection)である。電極アレイの選択電極に一定の電位を適用すると、前記液体溶液の成分が制御された様式で適用電位に反応し、前記選択電極の上に配置された所望結合部位だけが脱保護される。
【0040】
本発明に従ったさらにもう1つの好ましい方法では、前記結合部位を保護するために種々の電位で電気化学的に不安定な種々の保護基を使用する。
【0041】
本発明に従ったこの好ましい方法では、生体高分子アレイの生産のために種々の保護基を使用するが、前記の種々の保護基は種々の電位で電気化学的に不安定である。例えば多孔膜の結合部位の保護のために、1種類以上の保護基を使用することは、多孔膜の1個別スポットにおいて1種類以上の生体高分子の混合物を生産する可能性を提供する。ここで、特定の電極に第一の電位を適用すると、その電位で電気化学的に不安定な、前記電極の上に配置された保護基を特徴とする多孔膜の結合部位の分画だけが脱保護される。第一の高分子種のカップリング後、第二の電位を適用することによって次の分画の結合部位が脱保護され、前記第二電位は第二の種類の保護基を電気化学的に脱保護する。
【0042】
加えて、1種類以上の保護基を使用する、前記で概説した手順は、合成サイクルを含む生体高分子アレイの生産のためにも使用できる。
【0043】
本発明の好ましい方法によれば、工程e)の2つの連続する生産サイクルでは、異なる群の電極を選択する及び/又は異なる電位を適用する及び/又は異なる液体試薬を提供する。
【0044】
同じ生産サイクルを2回実施することができないので、2つの連続生産サイクルの間では1以上又はすべての生産パラメータを変更しなければならない。2つの連続生産サイクルの間で変更できる生産パラメータは、選択電極、適用電位及び液体試薬である。2つの連続生産サイクルの間でこれらのパラメータのいかなる変更も実施可能であり、例えば同じ電位を異なる電極に適用するが、異なる液体試薬を提供するか又は同じ電位を異なる電極に適用するが、同じ液体試薬を提供するか又は他の電位を同じ電極に適用するが、異なる液体試薬を提供する。各々の生産サイクルは特定の組合せの生産パラメータを有するが、生産サイクルの進行は、例えば必要な生産サイクルの数又は試薬を交換しなければならない回数に関して、最適化することができる。生産サイクルの生産パラメータに関する多数の異なる組合せの故に、一定の生体高分子アレイを生産するために1つ以上の可能性が存在しうる。
【0045】
本発明に従ったもう1つの好ましい方法は、2つの連続生産サイクルの間に前記多孔膜を洗浄する付加的な工程を含み、それによって非結合モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬が前記多孔膜から除去される。
【0046】
液体試薬は、多孔膜上に存在する脱保護された結合部位よりもはるかに多くのモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む。それ故、液体試薬は生産サイクル後も生体高分子構築ブロックを含有する。多孔膜から液体試薬を完全に除去することは困難であるので、生産サイクル後に生体高分子構築ブロックを含まない溶液で多孔膜を洗浄することが好ましい。洗浄工程は、多孔膜を電極アレイと物理的に接触させて実施する。さもなければ洗浄工程後に多孔膜を電極アレイ上に再配列しなければならないからである。最終生産サイクル後にのみ、選択的に多孔膜を洗浄のために電極アレイから取り出し得る。
【0047】
本発明の好ましい方法では、前記多孔膜を、生体高分子アレイの電気化学的生産後に1回だけ前記電極アレイから取り出す。
【0048】
本発明の好ましい方法によれば、前記保護基は、適用電位によって電極表面に生成される電気化学的試薬によって脱保護される。
【0049】
保護基は、一定の電位に暴露されると不安定でありえ、前記適用電位のために直接脱保護が起こる。あるいは、保護基はある電気化学的試薬と接触すると不安定でありえ、保護基を前記電気化学的試薬に暴露したときに脱保護が起こる。例えば保護基が酸性又は塩基性条件で不安定であれば、電位を適用することにより電極表面で生成されるH+又はOH-イオンによって結合部位の環境を変化させることが可能である。
【0050】
本発明のもう1つの好ましい方法によれば、前記保護基は前記電位を適用することによって開裂される。
【0051】
保護基の脱保護は様々な様式で起こりうる。1つの好ましい選択法では、結合部位への保護基の結合が不安定であり、保護基全体を開裂することによって脱保護が起こる。もう1つの好ましい選択法では、保護基自体が不安定であり、保護基の一部を開裂することによって又は保護基内での立体配座変化によって脱保護が起こる。
【0052】
本発明に従ったさらにもう1つの好ましい方法は、多孔膜に結合した生体高分子構築ブロックの保護基に結合した検出可能標識を検出する付加的な工程を含む。
【0053】
多孔膜及び/又はポリマー構築ブロックの結合部位を保護する保護基は、検出可能標識で官能基化されうる。そのような標識は、例えば蛍光標識、電気化学的標識又は放射性標識を含む。あるいは、保護基自体が検出可能でありえ、検出可能な基による官能基化を必要としない。前記標識のシグナルが結合部位の保護状態と脱保護状態について異なる場合は、前記検出可能基の検出を品質管理のために使用することができる。
【0054】
保護基全体の開裂を含む脱保護の場合は、標識は結合部位の保護状態においてのみ検出されうる。それ故、検出可能標識を検出することによって脱保護工程の効率を分析することができ、シグナルなしは100%の脱保護に相当する。加えて、生体高分子構築ブロックが標識保護基を特徴とする場合も、前記構築ブロックの脱保護結合部位への結合の品質を分析することができる。ここでは、生体高分子構築ブロックのカップリング後に検出可能標識を検出し、大きなシグナルは高いカップリング効率に相当する。より定量的に品質管理を実施するために、各々の工程の前後に検出可能標識を検出する。
【0055】
本発明の好ましい方法によれば、前記電位は、グループとして又は個別に前記電極アレイの前記電極に適用される。
【0056】
本発明に従った電極アレイは、1以上の個別電極を含む。前記電極アレイの設計は、前記電極の任意のグループを選択するか又は各電極を個別に選択する可能性を提供する。この設計は、特定の生体高分子構築ブロックを任意の群の電極に平行して結合することができるので、生産サイクルの数又は試薬を交換しなければならない回数に関して生産手順の最適化に向けて最大限の柔軟性を与える。
【0057】
本発明のもう1つの好ましい方法によれば、前記電極アレイは、金属電極又は半導体電極である電極を含む。
【0058】
本発明の範囲内で、適切な電気伝導率を有する限り及び一定の電位範囲にわたって電気化学的に安定である限り、すべての材料が電極アレイの個別電極のために可能である。好ましくは、個別電極のための材料は金属材料又は半導体材料である。個別電極の固体支持体として、個別電極間の短絡を回避する特性を有する限り、いかなる材料も使用できる。固体支持体は、好ましくはガラス、プラスチック、金属酸化物又はシリカのような他のケイ素誘導体で作られる。
【0059】
本発明に従った好ましい方法では、前記多孔膜は、多孔性無機材料、好ましくは多孔質ガラス材料、多孔性プラスチック材料、多孔性ケイ素材料又は他の多孔性ポリマー又は多孔性コポリマー材料を含む。
【0060】
好ましくは、多孔膜は、例えばガラス繊維のようなガラスで作られるか、又はポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリルニトリル(PAT)、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)又はポリスチレンのような高分子プラスックから作られる。
【0061】
多孔膜の材料に関しては、それがモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックのための結合部位を有すること、あるいは前記結合部位で官能基化されうることが重要である。生体高分子構築ブロックのための多孔膜の好ましい結合部位は、ヒドロキシル(OH)基、アミノ(NH2)基又は当業者に既知の他の反応基のような基である。
【0062】
さらに、多孔膜の材料は最適細孔径を有していなければならない。第一に、多孔材料の細孔の大きさは、本発明に適用可能であるために最小値を有していなければならない。さもなければ生体高分子構築ブロックが拡散によって多孔膜の結合部位に達することができないからである。他方で、細孔径は、好ましくは最大値よりも小さい。さもなければ多孔膜の低い表面積のために多孔膜上の生体高分子の密度が低下するからである。多孔膜上の生体高分子の密度が小さすぎると、連続実験における潜在的ハイブリダイゼーション反応はもはや検出不能である。非多孔性平面支持体の表面での生体高分子合成の場合は、一般に、特定の検出手法を実施するのに十分な生体高分子の密度を得ることが困難である。多孔膜の細孔径は、好ましくは1〜300μm、より好ましくは1〜100μm、最も好ましくは1〜50μmである。
【0063】
膜の厚さに関しては、最適値は本発明の範囲内にある。非常に薄い多孔膜は生体高分子アレイ上に小さな密度の生体高分子しか提供せず、連続実験における潜在的ハイブリダイゼーション反応が検出不能でありうる。他方で、膜が厚くなりすぎると、電極アレイの電極と多孔膜の遠く離れた末端にある結合部位の保護基との間の連絡が妨げられるので、電気化学的生産はもはや不可能である。多孔膜の厚さは、好ましくは1〜1000μm、より好ましくは1〜500μm、最も好ましくは1〜200μmである。
【0064】
一般に、多孔膜自体の材料は、生産サイクルのために必要な処理に対して安定でなければならない。
【0065】
本発明に従ったもう1つの好ましい方法では、前記多孔膜は多孔性有機材料、好ましくはセルロース又はニトロセルロースを含む。
【0066】
多孔性有機材料で作られた多孔膜も好ましい。本発明のための好ましい多孔性有機材料は、セルロース又はニトロセルロース材料である。この種の多孔膜の必要条件に関しては、無機材料で作られた多孔膜に関して概説したのと同じ記述が有効である。
【0067】
本発明のもう1つの好ましい方法では、前記多孔膜は、生体高分子アレイの電気化学的生産後にサブユニットに分割可能であり、前記サブユニットは、結合生体高分子を有する1以上の個別スポットを含み、前記サブユニットの少なくとも2個は同一である。
【0068】
本発明に従ったこの好ましい方法は、例えば大量の同一生体高分子アレイを必要とする場合に適用できる。多数の生産サイクルを実施するが、いくつかの電極についての生産サイクルは同じである。同じ生産サイクルで処理する電極は、生じる生体高分子アレイが個別スポットの同一配列を有するサブユニットを含むように、均一な様式で配列される。これらのサブユニットも均一な様式で配列されるので、生体高分子アレイは、特に切断することによって、断片に分割することができ、多数の個別のより小さな生体高分子アレイを提供する。
【0069】
あるいは、本発明に従ったこの好ましい方法で2以上の異なるサブユニットを生産することができ、各々のサブユニットは個別スポットの異なる配列を含む。
【0070】
本発明の好ましい方法によれば、前記多孔膜を前記電極アレイの上部の規定された側面位置に固定する。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、多孔膜は側面構造を持たないが、その周囲全体にわたって均一である。それ故、生体高分子構築ブロックが多孔膜に結合して生体高分子アレイを形成する、空間的に分配された個別スポットは、電気化学的生産のために使用される電極アレイによって及び電極アレイと多孔膜の相対的位置によってのみ規定される。その結果として、生体高分子アレイの完全な電気化学的生産の間を通じて、電極アレイに対して多孔膜の固定位置を確保することが重要である。
【0072】
本発明のもう1つの好ましい方法によれば、前記電極アレイの上部に固定された前記多孔膜をフローチェンバーに入れる。
【0073】
本発明に従った電気化学的生産工程のために、多孔膜を取り巻く溶液又は液体試薬を数回交換しなければならない。これはフローチェンバーを使用して効率的に実施することができる。本発明の範囲内のフローチェンバーは、電極アレイの側面位置と多孔膜が固定されるように電極アレイ並びに多孔膜を含む、液体入口と液体出口を備えた閉鎖チェンバーである。
【0074】
本発明に従った好ましい方法では、前記生体高分子構築ブロックは核酸構築ブロックである。
【0075】
本発明に従ったより好ましい方法では、前記核酸構築ブロックはDNA、RNA又はPNA構築ブロックである。
【0076】
核酸構築ブロック又はより好ましくはDNA、RNA又はPNA構築ブロックを生体高分子構築ブロックとして使用するとき、生体高分子アレイは、核酸アレイ又はより好ましくはDNA、RNA又はPNAアレイである。
【0077】
核酸構築ブロックを使用する本発明に従った好ましい方法では、前記核酸構築ブロックの保護基は、酸不安定性保護基、好ましくはピクシル基(pixyl groups)又はトリチル基、最も好ましくは4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル(「DMT」)又は4−モノメトキシトリフェニルメチル(MMT)、又は塩基不安定性保護基、好ましくはレブリニル基又はシリル基、最も好ましくはtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)又はtert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)である。
【0078】
保護基は、官能基が望ましくない様式で反応することを防ぐために官能基に結合される化学基である(例えばヒドロキシル基内の酸素、アミノ基の窒素又はチオール基の硫黄に結合され、それによって水素を置換する)。保護基は、分子自体の生物活性、例えば核酸構築ブロックの核酸への結合、を破壊することなく除去されうるという事実によってさらに定義される。適切な保護基は当業者に既知である。本発明に従った好ましい保護基は、ジメトキシトリチル(DMT)基、モノメトキシトリチル(MMT)基、トリフルオロアセチル基、レブリニル基又はシリル基である。
【0079】
ヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの5’末端のヒドロキシル基のための好ましい保護基は、例えばトリチル基、例えばジメトキシトリチル(DMT)から選択される。
【0080】
環外アミノ基の好ましい保護基は、アシル基、最も好ましくはベンゾイル基(Bz)、フェノキシアセチル又はアセチル又はホルミル、及び例えばN,N−ジアルキルホルムアミジン基、好ましくはジメチル基、ジイソブチル基及びジ−n−ブチルホルムアミジン基のようなアミジン保護基である。
【0081】
好ましいO−保護基は、アロイル基、ジフェニルカルバモイル基、アシル基及びシリル基である。これらの中でベンゾイル基が最も好ましい。好ましいシリル基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル及びtert−ブチルジメチルシリルのようなトリアルキルシリル基である。もう1つの好ましいシリル基は、トリメチルシリル−オキシ−メチル基(TOM)(国際公開公報第99/09044号)である。さらに、好ましい保護基は、オルトニトロ−ベンジル、2−(4−ニトロフェニル)エトキシカルボニル(NPEOC)、2−ニトロフェニル−プロピルオキシ−カルボニル(NPPOC)(Giegrich, H.ら、Nucleosides & Nucleotides 17(1998)1987-1996)及びアリルオキシカルボニルのような光感受性化合物である。
【0082】
本発明に従ったもう1つの好ましい方法では、前記生体高分子構築ブロックはアミノ酸構築ブロックである。
【0083】
前記アミノ酸構築ブロックを用いて多孔膜上にポリペプチドを合成することが可能である。好ましくは、前記ポリペプチドは20アミノ酸まで、より好ましくは50アミノ酸までの長さを有する。これらのポリペプチドは、例えばタンパク質の機能性分画でありえ、それ故生体高分子アレイは、スクリーニング適用のための一定量の種々の機能性タンパク質分画を含むポリペプチドアレイである。
【0084】
ペプチド構築ブロックを使用する本発明に従った好ましい方法では、前記ペプチド構築ブロックの前記保護基は、塩基不安定性保護基、好ましくはフルオレニルメトキシカルボニル(FMOC)又は酸不安定性保護基、好ましくはtert−ブチルオキシカルボニル(BOC)である。
【0085】
本発明に従ったさらにもう1つの好ましい方法では、多孔膜への生体高分子の結合は特定条件下で不安定である。
【0086】
本発明に従ったこの好ましい方法では、多孔膜に結合した生体高分子は、生体高分子アレイの電気化学的生産後に遊離されうる。それ故、本発明のこの実施形態では、生体高分子アレイの生産は、少量の生体高分子を制御された様式で合成する方法である。加えて、生体高分子アレイの生産は、少量ずつ多数の異なる生体高分子を平行して合成する方法である。
【0087】
本発明のこの実施形態に関して、多孔膜への生体高分子の結合は特定条件下で不安定である。最終生産サイクルまでは生体高分子の制御された開裂は必要ないので、多孔膜への生体高分子の前記結合は、生産サイクルの間に適用される条件に対して安定でなければならない。多孔膜からの生体高分子の開裂は、電位、照射又は化学処理を用いて実施することができる。生体高分子のための可能な開裂性リンカーは、スクシニルリンカー、オキサリルリンカー又はヒドロキノンリンカー(Q−リンカー)のような塩基不安定性成分、あるいは2−ニトロベンジル−スクシニルリンカー又はベラトロール−カーボネートリンカーのような光不安定性成分、あるいはチオ−スクシニルリンカーのような還元条件下で開裂可能なリンカー、あるいはトリチル基の誘導体、例えば4,4’−ジメトキシトリチル基の誘導体のような酸不安定性成分である。
【0088】
多孔膜と生体高分子の間のリンカー基は、好ましくは保護基を除去するために使用する電位とは異なる電位を適用することによって開裂される。これは、合成の完了後に電気化学的反応によって様々な合成された高分子、例えば核酸配列を除去することを可能にする。
【0089】
本発明のもう1つの局面は、多孔膜及び本発明に従った方法によって生産されるモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む生体高分子アレイに関する。
【0090】
本発明の範囲内で、前記生体高分子アレイは、あらかじめ合成した生体高分子を1以上の結合サイクルで多孔膜に結合することによってあるいは1以上の合成サイクルでモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから生体高分子を多孔膜上で合成することによって生産できる。本発明の選択的実施形態では、生体高分子アレイは、1以上の結合サイクルと1以上の合成サイクルを用いて生産される。
【0091】
本発明に従った生体高分子アレイは、多孔膜及び前記多孔膜に結合した1種以上の生体高分子を含む。本発明の1つの実施形態では、各々の生体高分子種を、多孔膜上の空間的に分離された個別スポットに配置する。あるいは、個別スポットは1以上の生体高分子種を含みうる。
【0092】
本発明に従った生体高分子アレイの好ましい実施形態では、前記生体高分子アレイは、10以上、より好ましくは100以上、最も好ましくは1000以上の個別スポットを含む。
【0093】
本発明に従った生体高分子アレイのもう1つの好ましい実施形態では、前記個別スポットは、スポット間の距離が103μm以下、より好ましくは500μm以下、又は最も好ましくは50μm以下で、均一に多孔膜上に配置される。
【0094】
本発明に従った好ましい生体高分子アレイでは、前記生体高分子構築ブロックは核酸構築ブロック、好ましくはDNA、RNA又はPNA構築ブロックである。
【0095】
本発明に従ったもう1つの好ましい生体高分子アレイでは、前記生体高分子構築ブロックはペプチド構築ブロック、好ましくはアミノ酸構築ブロックである。
【0096】
本発明に従った生体高分子アレイは、好ましくは核酸アレイ、又はより好ましくはDNA、RNA又はPNAアレイである。あるいは、本発明に従った生体高分子アレイは、好ましくはポリペプチドアレイである。
【0097】
本発明のさらにもう1つの局面は、生体分子を含む試料の分析のための、本発明に従った生体高分子アレイの使用に関する。
【0098】
多数の異なる生体高分子種を含む生体高分子アレイは、試料を前記生体高分子種の対応する結合パートナーの存在に関して分析する、スクリーニング適用に適する。
【0099】
本発明に従った生体高分子アレイの好ましい使用においては、前記生体分子は核酸分子又はタンパク質である。
【0100】
核酸を生体高分子とする場合、生産される核酸アレイは、試料中の標的核酸の検出のため又は核酸配列決定のために使用できる。核酸アレイに関する適用は、ウイルス又は細菌感染の分析、一塩基多型(SNP)の検出、未知の核酸分子の配列決定又は遺伝子発現プロファイリングを含む。
【0101】
ポリペプチドを生体高分子とする場合、生産されるポリペプチドアレイは、例えば抗体のスクリーニングのために使用できる。ポリペプチドはタンパク質の機能性部分であり、一定の抗体に対する多数の前記機能性部分の親和性をスクリーニングすることができる。
【0102】
本発明に従った生体高分子アレイのもう1つの好ましい使用では、試料の前記分析は、蛍光手法、化学発光手法、電気化学的手法又は質量分析手法に基づく分析である。
【0103】
多孔膜上のプローブ生体高分子への試料中の標的分子の潜在的結合は、当業者に既知の多数の異なる手法を用いて検出することができる。支持体上の結合反応を視覚化するための広く普及している手法は、蛍光分光法の使用である。ここでは、例えば標的分子をフルオレセイン、テキサスレッド、Cy5及びCy3などの蛍光染料で標識し、多孔膜の特定の個別スポットにおける前記染料の存在が、試料中の対応する標的分子の存在についての指標である。多孔膜の蛍光は、例えばCCDカメラによって視覚化される。分析目的のために生体高分子アレイの多孔膜を固体支持体上に置くことが好ましい。例えば生体高分子アレイを、標準カバースライドなどのガラス製支持体上に固定した後、その構築物を、例えばCCDカメラを含む検出装置に入れる。あるいは、生体高分子アレイを支持枠によって固定し、両側から溶液にアクセス可能な生体高分子アレイを提供する。
【0104】
質量分析(MS)手法では、プローブ生体高分子と標的分子からの潜在的複合体を、当業者に既知の市販のMS装置によって分析する。
【0105】
電気化学的手法の場合は、例えば標的分子を、フェロセン誘導体又はオスミウム錯体などの電気化学的標識で標識し、多孔膜の特定の個別スポットにおける前記染料の存在が、試料中の対応する標的分子の存在についての指標である。
【0106】
多孔膜からの電気化学的シグナルは、例えば電位差計と組み合わせた電極アレイによって検出される。
【0107】
本発明に従った生体高分子アレイのより好ましい使用によれば、前記電気化学的手法を、前記電極アレイと物理的に接触している本発明に従った前記生体高分子アレイに関して実施する。
【0108】
本発明に従ったこの好ましい方法では、生産される生体高分子アレイは、例えば電気化学的手法で結合反応を検出するために本発明に従った電極アレイと、物理的に接触している。このために、多孔膜は、多孔膜の各々の個別スポットが電極アレイの個別電極の上にあるように電極アレイ上に配置されていなければならない。本発明の範囲内で可能な電気化学的手法は、電流測定手法、ボルタメトリー手法及びインピーダンス分光法を含む。
【0109】
例えば1以上のサブユニットに分割された多孔膜の場合には、分析目的のための電極アレイは、電気化学的生産の間に使用する電極アレイとは異なることに留意しなければならない。
【0110】
本発明に従った生体高分子アレイのもう1つの好ましい使用によれば、生体高分子アレイの結合生体高分子を、生体分子を含む試料の前記分析の前に、前記生体高分子アレイから開裂する。
【0111】
多孔膜に結合した生体高分子は生体高分子アレイの電気化学的生産後に遊離されうるので、開裂性リンカーを使用する場合は、前記多孔膜上の規定位置において少量ずつ多数の異なる生体高分子を合成するために本発明を使用し、その後さらなる適用のために生体高分子を開裂することが可能である。
【0112】
それ故、例えばマルチウエルプレート上に生体高分子アレイを置き、多孔膜上の多数のスポットを前記マルチウエルプレートのウエルと整列して、生体高分子リンカーを制御された様式で開裂した後、合成された生体高分子を前記ウエルに注入することが可能である。
【0113】
本発明に従った生体高分子アレイのより好ましい使用によれば、生体高分子アレイの結合生体高分子はプライマー対であり、分析は標的分子のPCR増幅である。
【0114】
本発明に従った使用のこのより好ましい実施形態では、多孔膜を使用して多数の異なるプライマー対を合成し、その後、標的分子の多数の異なるPCR増幅を平行して実施するために前記プライマー対をマルチウエルプレートのウエルに注入する。
【0115】
合成されたプライマー対を制御された様式で多孔膜からマルチウエルプレートのウエルに移すために、多孔膜の合成されたプライマー対を有するスポットを打ち出して(punch out)、生体高分子リンカーを開裂する前にこれらの部分をマルチウエルプレートのウエルに移すことが好ましい。
【0116】
本発明のもう1つの局面は、電極アレイ、多孔膜、電位を適用するための装置及び試薬を含む、本発明に従った方法を実施するためのキットに関する。
【0117】
電位を適用するための装置は、例えば電位差計である。好ましくは、電位差計の機構は、適用電位の厳密な制御を可能にするために対電極及び基準電極を含む3電極配置を提供する。しかし、対電極だけを有する2電極機構も適用できる。当業者に既知である、多数の電極に電位を適用するための多くの異なる機構が存在する。これらの機構の1つの顕著な特徴は対電極の設計である。本発明の範囲内で、対電極をチェンバーカバーに組み込むこと並びにそれを電極アレイ上に置くことが可能である。
【0118】
キットの試薬は、モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬、2つの連続する生産サイクルの間に多孔膜を洗浄するための溶液並びに電気化学的脱保護工程のために必要な液体溶液を含む。
【0119】
本発明に従った好ましいキットは、フローチェンバー及び液体ポンプを付加的に含む。
【0120】
生体高分子アレイの電気化学的生産のために多数の生産サイクルを実施しなければならず、また前記生産サイクルは一般に多孔膜と物理的に接触している試薬の少なくとも1回の交換を含むので、キットがフローチェンバー及び液体ポンプも含むことが好ましい。本発明の範囲内のフローチェンバーは、電極アレイの側面位置と多孔膜が固定されるように電極アレイ並びに多孔膜を含む、液体入口と液体出口を備えた閉鎖チェンバーである。チェンバー内の試薬を効率的に交換するために液体ポンプ、例えばぜん動ポンプを使用する。
【実施例】
【0121】
実施例1
多孔膜の2つの異なる位置における2つの異なる蛍光染料の結合
【0122】
2つの異なる蛍光スポットを生成するために2つの異なる蛍光染料を基質の2つの異なる位置に結合する。この実施例では、Cy5及びCy3蛍光染料の結合を述べる。この実験のために、2つの金電極を有する電極アレイ、無機多孔膜、標準DNA合成試薬、蛍光染料のホスホルアミダイト、及び活性電極で酸性媒質を電気化学的に生成するための緩衝液を含む、自製反応チェンバーを使用する。
【0123】
多孔膜を反応チェンバー内の電極の近くに入れる。多孔膜自体はいかなる保護基も伴わない結合部位だけを有するので、5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトを出発基として多孔膜に結合する。このために、5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトを活性化物質と共にチェンバーに充填して、膜の官能基と反応させる。
【0124】
その後溶液を除去し、第一カップリング工程からの三価リン分子をより安定な五価リン分子へと酸化するために酸化工程を実施する。次に、酸化溶液を反応チェンバーから洗い流し、緩衝液をチェンバーに満たす。電極の1つに電位を適用して、活性化された電極に近接する多孔膜のその部分の保護基を開裂する。その後、緩衝液を再びチェンバーから洗い流し、Cy5−ホスホルアミダイトを活性化物質と共にチェンバーに満たして、多孔膜の脱保護結合部位と反応させる。特定のインキュベーション時間後、ホスホルアミダイト溶液を洗い流し、リン分子を安定化するためにもう1つの酸化工程を実施する。酸化溶液を緩衝液と交換した後、電極アレイの他の電極に電位を適用して、この第二電極に近接する基質のその部分から保護基を開裂する。次の工程では、Cy3−ホスホルアミダイトを活性化物質と共にチェンバーに満たして、多孔膜の脱保護結合部位で反応させる。
【0125】
三価リン分子をより安定な五価リンに変換するための最終酸化工程後、多孔膜の個別スポットへの2つの異なる蛍光染料の結合が完了する。結合手順を分析するために、多孔膜を電極から取り出し、蛍光装置で分析する。多孔膜の蛍光パターンは2つの分離したスポットを示し、1つのスポットは662nmの特徴的なCy5波長で発光し、他方は563nmの特徴的なCy3波長で発光する。
【0126】
実施例2
膜上の2つの異なる位置における2つの異なるオリゴヌクレオチドの合成及び相補的標的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション
【0127】
実施例1の機構を用いて、2つの異なるオリゴヌクレオチドを基質の2つの異なる位置で合成する。この実施例では、多孔膜の2つの異なる位置における(dA)15−mer及び(T)15−merオリゴヌクレオチドの合成を述べる。
【0128】
多孔膜を反応チェンバー内の電極の近くに置く。最初に、T−ホスホルアミダイトを膜の官能基に結合し、その後実施例1で説明したように安定化する。次に、第一電極に電位を適用して、活性化された電極に近接する保護基を開裂する。緩衝液をチェンバーから洗い流した後、次の5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトを活性化物質と共にチェンバーに満たして、多孔膜に結合した5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトの脱保護結合部位と反応させ、この位置で鎖を伸長する。第一電極で(T)15−merオリゴヌクレオチドが合成されるまでこの合成手順を反復する。
【0129】
(T)15−merオリゴヌクレオチドが完了したとき、第二電極における(dA)15−merオリゴヌクレオチドの合成を開始する。手順は、5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトの代わりにA−ホスホルアミダイトを使用して、先に概説した(T)15−merの合成と同様である。最後に、2個の異なるオリゴヌクレオチドである(T)15−mer及び(dA)15−merオリゴヌクレオチドを、2つの異なる位置で膜に結合する。
【0130】
多孔膜上の合成産物を、相補的オリゴヌクレオチドに結合した蛍光染料を使用するハイブリダイゼーション実験によって分析する。最初に、Cy5染料で標識した(dA)15−merオリゴヌクレオチドを膜にハイブリダイズし、Cy5−(dA)15−merは、この位置の蛍光シグナルによって明らかにされるように、(T)15−merで官能基化された多孔膜のスポットにのみハイブリダイズする。第二に、Cy3染料で標識した(T)15−merオリゴヌクレオチドを膜にハイブリダイズする。Cy3−(T)15−merは(dA)15−merにハイブリダイズし、(dA)15−merが結合している多孔膜の位置においてのみ蛍光シグナルを与える。
【0131】
実施例3
多孔膜の2つの異なる位置における2つの異なる蛍光染料の結合
【0132】
2つの異なる蛍光染料(Cy5とCy3)を基質の2つの異なる位置に結合して、2つの異なる蛍光スポットを生成した。この実験のために、2つの金電極を有する電極アレイ、無機多孔膜、標準DNA合成試薬(Roth and ProligoからのDMT−ホスホルアミダイト、活性化物質DCI及びProligoからのキャッピング試薬、Promochemからのアセトニトリル、Applied Biosystemsからの酸化試薬を含む)、蛍光染料のホスホルアミダイト(Amersham Biosciencesより)及び活性化された電極で酸性媒質を電気化学的に生成するための電気化学的に活性な緩衝液を含む自製反応チェンバー(容積400μl、高さ0.9mm)を使用した。自製反応チェンバーは、底部に陽極として組み込まれた2つの金電極(各々の電極の直径は1.8mmで、3mmの距離をおいて配置されている)と共にPEEK材料で作製した。チェンバーカバーは、電気化学的機構の陰極を構成する金被覆アルミニウムで作られ、2つの液体出入口を含んだ。
【0133】
この実施例では、PolyAN PP膜(PolyAn GmbH, Berlin, Germanyより;材料:ポリプロピレン、厚さ:160μm、細孔径:0.2μm)を、その表面の共有結合ヒドロキシル官能基と共に反応チェンバー内の電極の近くに置いた。多孔膜自体はいかなる保護基も伴わない結合部位だけを有するので、5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトを出発基として多孔膜に結合した。このために、5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトの0.05M溶液(Roth,カタログ番号2222,2、アセトニトリル中)0.5mlを、活性化物質DCI(アセトニトリル中の0.25M 4,5−ジシアノイミダゾール、Proligo, カタログ番号L380018)0.5mlと共にチェンバーに2分間満たして、膜の官能基と反応させた。
【0134】
その後溶液を洗い流し、次いでアセトニトリル0.5mlでの洗浄工程を実施する。次に、第一結合工程からの三価リン分子をより安定な五価リン分子に酸化するためにテトラヒドロフラン(Applied Biosystems, カタログ番号401732、インキュベーション時間1分)中の0.02Mヨウ素溶液2.0mlによる酸化工程を実施した。
【0135】
次に、酸化溶液を反応チェンバーから洗い流し、市販のキャッピング溶液(テトラヒドロフラン中Tac無水物1.0mlの混合物;(Proligo, カタログ番号L370018)及びテトラヒドロフラン中の1−メチルイミダゾール1.0ml(Roth, カタログ番号2256,2))を使用して、反応チェンバー内でキャッピング反応を2分間実施した。反応チェンバーから混合物を遊離した後、アセトニトリル5.0mlによる2回の洗浄工程を実施し、その後電気化学的に活性な緩衝液をチェンバーに満たした。電極の1つに電位を適用して、活性化された電極に近接する多孔膜のその部分の保護基を開裂した。この実験では、−300μAの電流で60秒間、非ブロック化を実施した。
【0136】
その後、電気化学的活性緩衝液を再びチェンバーから洗い流し、0.05M Cy5−ホスホルアミダイト(Amersham Biosciences, カタログ番号27−1801−02)0.3mlと活性化物質としてのDCI(アセトニトリル中の0.25M 4,5−ジシアノイミダゾール、Proligo, カタログ番号L380018) 0.7mlの混合物をチェンバーに満たして、多孔膜の脱保護結合部位で反応させた。2分間のインキュベーション時間後、ホスホルアミダイト溶液を洗い流し、アセトニトリル5.0mlによる2回の洗浄工程及びリン分子を安定化するためのもう1つの酸化工程を実施した。
【0137】
酸化溶液の除去及びアセトニトリル5.0mlによる2回の連続洗浄工程後に、チェンバーに再び電気化学的活性緩衝液を満たし、電極アレイの第二電極に電位(再度−300μAで60秒間)を適用して、この電極に近接する基質のその部分から保護基を開裂させた。次の工程では、0.05M Cy3−ホスホルアミダイト(Amersham Biosciences, カタログ番号27−1789−01)0.3mlと活性化物質としてのDCI(アセトニトリル中の0.25M 4,5−ジシアノイミダゾール、Proligo, カタログ番号L380018) 0.7mlの混合物をチェンバーに満たして、多孔膜の脱保護結合部位で2分間反応させた。
【0138】
アセトニトリルによるさらなる洗浄工程、三価リン分子をより安定な五価リンに変換するための酸化工程及びアセトニトリルによる最終洗浄工程後に、多孔膜の個別スポットへの2つの異なる蛍光染料の結合が完了した。蛍光手順を分析するために、多孔膜を電極から取り出し、市販の蛍光装置(Roche Diagnostics GmbHのLumi−Imager)で分析した。多孔膜の蛍光パターンは2つの分離したスポットを示した(図1参照、スポットの直径は約3〜4mmである)。図1aは、Lumi−Imager の600nmチャネルで記録し(500ミリ秒)、662nmの特徴的な波長を有するCy5スポットだけが可視である。図1bは、Lumi−Imager の520nmチャネルで記録し(500ミリ秒)、ここでは両方のスポットが可視である。Cy3の特徴的な波長が563nmであり、両方の蛍光染料の発光スペクトルの故に両方のスポットがこのチャネルにおいて可視である。
【0139】
図2は、標準デジタルカメラで記録した膜の灰色画像を示し、2つのスポットの異なる色が明らかである。
【0140】
実施例4
多孔膜上での標識オリゴヌクレオチドの合成
【0141】
この実施例では、実施例3の機構を用いてオリゴヌクレオチド、(T)5−merオリゴヌクレオチドを基質の2つの異なる位置で合成した。前記の2つの位置の各々で電気化学的パラメータに関して異なる合成を実施した。
【0142】
この実験のために、Medifab PET 07/15−9 膜(Sefar, Rueschlikon, Switzerlandより;材料:ポリエチレンテレフタレート、厚さ:55μm、細孔径:15μm)を、その表面の共有結合ヒドロキシル官能基と共に使用した。実施例1におけるように、膜を反応チェンバー内の電極の近くに置いた。最初に、5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトを膜の官能基に結合し、その後実施例3に説明されるように安定化した。
【0143】
次に、電気化学的に活性な緩衝液(実施例3参照)をチェンバーに満たし、第一電極(図3における左のスポットに相当する)に電位(−450μAで60秒間)を適用して、活性化された電極に近接する保護基を開裂した。電気化学的活性緩衝液をチェンバーから洗い流した後、次の5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトを活性化物質としてのDCIと共にチェンバーに満たして、多孔膜に結合した5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトの脱保護結合部位と反応させ、この位置で鎖を伸長した。合成サイクルを完了するために、次の工程を実施例3で説明したように実施した:アセトニトリルによる洗浄工程、酸化工程、アセトニトリルによる別の洗浄工程、キャッピング工程及びアセトニトリルによる最終洗浄工程。最終洗浄工程後に、所望オリゴヌクレオチドの第一合成サイクルが完了した。(T)4−merオリゴヌクレオチドが合成されるまでこの合成手順を反復した。最終合成工程に関して、その後合成産物を視覚化するためにCy5染料で標識した5’−DMT−T−3’−ホスホルアミダイトを使用した。
【0144】
その後、第二電極(図3における右のスポットに相当する)での(dT)5−merオリゴヌクレオチドの合成を開始した。手順は、先に概説した第一オリゴヌクレオチドの合成と同様であるが、この電極に関しては各々の電気化学的脱保護工程の反応時間を30秒だけに短縮した。
【0145】
図3から、左スポットの蛍光強度が右スポットのものよりも高いことは明白である。これは脱保護工程の低い収率を示すと考えられ、反応時間を60秒から30秒に短縮したとき、正しく合成されるオリゴヌクレオチドの量の低下を生じさせる。
【0146】
実施例5
多孔膜上でのオリゴヌクレオチドの合成及び標識した相補的標的とのハイブリダイゼーション
【0147】
この実施例では、実施例3の機構を用いて多孔膜上で20−merオリゴヌクレオチド(配列:5’−GG ACA CGT ATC GCA CAC CCA-3’)を合成した。この実験のために再びMedifab PET 07/15−9 膜(Sefar, Rueschlikon, Switzerlandより;材料:ポリエチレンテレフタレート、厚さ:55μm、細孔径:15μm)を使用した。合成は、60秒の脱保護時間及び−300μAで、実施例4で概説したように実施した。合成の最後に、膜を濃アンモニア溶液5.0mlと共に室温で1時間ファルコンチューブにおいてインキュベートし、核酸塩基及びリン酸残基からすべての保護基を開裂して、表面に結合した非保護オリゴヌクレオチドを遊離させた。
【0148】
多孔膜上の合成産物を、一方は5’末端で及び他方は3’末端で、各々Cy5蛍光染料に結合している、同じ配列を有する2つの相補的オリゴヌクレオチドの1:1混合物を使用したハイブリダイゼーション実験によって分析した(配列:5’−TGG GTG TGC GAT ACG TGT CC−3’)。最初に、3×SSPE、0.05%Tween 20を含む緩衝液中でのプレハイブリダイゼーション工程を、水で2回洗った後ファルコンチューブにおいて10分間実施した。プレハイブリダイゼーション工程に使用したのと同じ緩衝液中で、前述した相補的Cy5標識オリゴヌクレオチド混合鎖とのハイブリダイゼーション工程を実施した。インキュベーションを室温で20時間実施した。その後、次の工程で洗浄手順を実施した:3×SSPE、0.05%Tween 20により室温で5分間、0.5×SSPE、0.05%Tween 20により室温で5分間、0.5×SSPEにより室温で5分間。最終洗浄工程後、600nmチャネル(500ミリ秒)でのLumi−Imager 及び515−560nmチャネルでの蛍光顕微鏡で検出を行った。
【0149】
図4は、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドを含むスポットの縁における膜の大きく拡大した蛍光顕微鏡画像を示す。この図では膜の構造までもが明らかである。今やスポットのそばに検出可能な蛍光が存在するので、膜全体が染料標識標的と接触していても、前記染料標識標的は、結合した合成オリゴヌクレオチドを有する多孔膜の部分にだけ結合した。その後のデハイブリダイゼーションと徹底的な洗浄後、完全な多孔膜は再びいかなる蛍光強度も有さない。
【0150】
参考文献
Beaucage, S.L. およびCaruthers, M.H., Tetrahedron Lett. 22 (1981) 1859-1862
Buchi, H. およびKhorana, H.G., J.Mol.Biol. 72 (1972), 251-288
EP 0 691 978
Giegrich, H.ら, Nucleosides & Nucleotides 17 (1998) 1987-1996
Souveaux, : Methods in Molecular Biology, Vol. 26, Chap.1中, Protocol for Oligonucleoside Conjugates, S. Agrawal (編), Human Press Inc., Totowa, N.J. (1994)
US 6,093,302
WO 93/22480
WO 98/01221
WO 99/09044
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】600nm(図1a)及び520nm(図1b)で記録した、異なる結合蛍光染料を有する2つのスポットに関する多孔膜の蛍光画像。
【図2】市販のデジタルカメラで記録した、異なる結合蛍光染料を有する2つのスポットに関する多孔膜の写真。
【図3】種々の電気化学的パラメータで合成されるCy5標識オリゴヌクレオチドを有する2つのスポットに関する多孔膜の蛍光画像。
【図4】相補的な、Cy5標識オリゴヌクレオチドとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを有する1つのスポットに関する多孔膜の蛍光画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)選択的に指定可能な電極を含む電極アレイを提供する工程、
b)電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む多孔膜を提供する工程、
c)モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックを含む液体試薬を提供する工程であって、ここで該生体高分子構築ブロックは任意に電気化学的に不安定な保護基を担持する生体高分子構築ブロックのための結合部位を含む、工程、
d)前記多孔膜と前記電極アレイを物理的に接触させる工程、
e)−前記電極アレイの少なくとも1つの選択電極に電位を適用し、それによって電気化学的反応が、前記選択電極上に配置された、前記適用電位で電気化学的に不安定である電気化学的に不安定な保護基を含む結合部位の保護基を脱保護する工程、及び
−前記多孔膜及び前記電極アレイを前記液体試薬と物理的に接触させ、それによって前記液体試薬のモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが電気化学的に脱保護された結合部位に結合する工程
を含む、少なくとも1つの生産サイクルを実施する工程、ならびに
f)前記電極アレイから、前記多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む、生産された生体高分子アレイを取り出す工程
を含む、多孔膜及びモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む生体高分子アレイの電気化学的生産のための方法。
【請求項2】
工程e)において前記液体試薬の前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが、すべての生産サイクルで前記多孔膜の電気化学的に脱保護された結合部位に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程e)において前記液体試薬の前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックが、前記多孔膜の電気化学的に脱保護された結合部位及び/又は多孔膜に結合した前記モノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックの電気化学的に脱保護された結合部位に結合する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程e)の生産サイクルで電位を適用するときに、前記多孔膜と前記電極アレイを液体溶液と物理的に接触させる、請求項1〜3いずれか記載の方法。
【請求項5】
工程e)の2つの連続する生産サイクルで、異なる群の電極を選択する及び/又は異なる電位を適用する及び/又は異なる液体試薬を提供する、請求項1〜4いずれか記載の方法。
【請求項6】
前記生体高分子構築ブロックが核酸構築ブロックである、請求項1〜5いずれか記載の方法。
【請求項7】
前記生体高分子構築ブロックがペプチド構築ブロックである、請求項1〜5いずれか記載の方法。
【請求項8】
多孔膜、および請求項1〜7いずれか記載の方法によって生産されるモノマー、オリゴマー又はポリマー生体高分子構築ブロックから成る結合生体高分子を含む、生体高分子アレイ。
【請求項9】
前記生体高分子構築ブロックが核酸構築ブロックである、請求項8記載の生体高分子アレイ。
【請求項10】
前記生体高分子構築ブロックがペプチド構築ブロックである、請求項8記載の生体高分子アレイ。
【請求項11】
生体分子を含む試料の分析のための、請求項8〜10いずれか記載の生体高分子アレイの使用。
【請求項12】
前記生体分子が核酸分子又はタンパク質である、請求項11記載の使用。
【請求項13】
生体高分子アレイの結合生体高分子が、生体分子を含む試料の前記分析の前に、前記生体高分子アレイから開裂される、請求項11〜12いずれか記載の使用。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−91005(P2006−91005A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−242851(P2005−242851)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】